高齢者へのアスピリンにうつ病予防効果なし

提供元:ケアネット

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公開日:2020/06/20

 

 うつ病は炎症の増加に関連しており、とくに高齢者においてはうつ発症前に炎症が生じる可能性がある。いくつかの前臨床データはアスピリンの潜在的な抗うつ効果を示唆しており、アスピリン治療を受けた人はうつ病の発生率が低いことを示唆する限定的な観察データもある。オーストラリア・The Institute for Mental and Physical Health and Clinical TranslationのMichael Berk氏らによる、低用量アスピリン(100mg)が健康な高齢者のうつ病リスクを低下させるかを見た研究の結果によると、リスク低下の効果は見られなかったという。JAMA Psychiatry誌オンライン版2020年6月3日号掲載の報告。

 この二重盲検プラセボ対照ランダム化試験は、高齢者におけるアスピリンが認知症と障害のない健康寿命を延長するかどうかを調べたASPREE試験のサブ解析で、事前に指定された二次転帰はうつ病だった。オーストラリアにおける70歳以上の全人種/民族、米国における70歳以上の白人および65歳以上黒人/ヒスパニック系が含まれた。参加者は、アスピリン(100mg/日)群とプラセボに群に無作為に割り付けられた。追跡期間中央値は4.7年(四分位範囲:3.5~5.6)、主要評価項目は大うつ病性のプロキシでうつ病自己評価尺度スコア(CES-D-10)の8以上だった。

 主な結果は以下のとおり。

・1万9,114例が登録され、9,525例がアスピリン、9,589例がプラセボ群に割り付けられた。平均年齢はアスピリン群で75.2(SD4.0)歳、プラセボ群で75.1(4.5)歳であった。
・女性が9,531(56.4%)で、参加者の人口統計とベースラインにおける臨床的特徴はグループ間で類似していた。
・年間7万9,886回のCES-D-10測定が行われ、参加者1人あたり平均4.2回の測定が行われた。
・年1回の通院においてCES-D-10スコア8以上となった患者の割合は、アスピリン群とプラセボ群で有意差はなかった。
・CES-D-10スコア8以上の新たな発生率(/1,000人年)は、アスピリン群で70.4、プラセボ群で69.1〔ハザード比:1.02(95%信頼区間:0.96-1.08、p=0.54)〕でこちらも有意差はなかった。

(ケアネット 杉崎 真名)