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がん患者の脱毛軽減に有用な頭皮冷却装置、国内初の製造販売承認

 2020年7月10日、「抗がん剤治療の副作用による脱毛を低減・抑制する国産初の『頭皮冷却装置』発表記者会見」が開催された(株式会社毛髪クリニックリーブ21主催)。小林 忠男氏(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 招へい教授)が「乳がん化学療法患者さんにおけるリーブ21 CellGuard(セルガード、頭皮冷却装置)を用いた脱毛の軽減化について」を、渡邉 隆紀氏(仙台医療センター乳腺外科医長)が「乳がんにおける化学療法と脱毛の問題点」について講演した。 がん化学療法に伴う容姿変化が原因で治療介入に対し消極的となる患者も存在する。そのような患者のサポートを行う上でエビデンスが集約され治療に役立つのが、「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」である。これには脱毛をはじめ、爪の変形や皮膚への色素沈着などへの対応法がまとめられ、たとえば、脱毛に関しては“CQ1:脱毛の予防や重症度の軽減に頭皮冷却は有用か”の項で、頭皮冷却の推奨はC1a(科学的根拠はないが、行うように勧められる)とされている。しかし、日本は海外に比べ、医療施設への頭皮冷却装置の導入が遅れているのが現状であるー。頭皮冷却装置でがん患者の満足度アップ 小林氏は化学療法に誘発される脱毛(CIA:Chemotherapy induced-alopecia)のメカニズムについて、頭皮冷却の理論的根拠(温度低下により血管が収縮→血流低下により薬剤濃度低下、または反応速度低下→毛根細胞生存の維持)や脱毛頻度の高い抗がん剤開発と頭皮冷却の歴史を交えて解説。CIAが女性患者にもたらす影響として以下を述べた。●身体的また精神的な悪影響●心理学的な症状●ボディイメージの低下●乳房を失うよりも強いトラウマ●QOLの低下:Identityと個性に強い影響を及ぼす●治療後も持続的な髪質の変化(くせ毛・量・太さ) これらの悩みを解決するべく誕生したのがセルガードであり、この特徴として、「制御付き頭皮冷却のデジタルシステムである。頭皮温度を氷点下で維持することで毛根周囲の血管を収縮させて、毛根周辺毛細血管に到達する抗がん剤の量を抑制することができる。また、1台で2名が利用でき外来化学療法に有用」と説明した。上田 美幸氏らが第18回日本乳癌学会学術総会(2010年)で報告した『頭皮冷却キャップ装着に伴う変化 患者満足度アンケート』によると、装着の問題、使用中の気分不快、頭痛について調査し大多数で満足が得られているほか、加藤乳腺クリニックの29例を対象とした調査では、NCI-CTC scale Grade0は8例、Grade1は17例、Grade2は4例という結果が得られた。これを踏まえ同氏は、「セルガードによる頭皮冷却法がCIAに効果的であると証明された。今後、患者のQOLを向上させるだけではなく、より良い治療へ貢献する可能性がある」と語った。脱毛に関する不安、患者と医療者で大きな差 脱毛の臨床的な見解を示した渡邉氏は、がん化学療法を受けた患者の苦痛調査1,2,3,4)から「脱毛は、この30年間で常に上位に位置するほど患者の大きな悩み。また、別の調査5)でも治療時の不安において、患者は脱毛を4番目に挙げる一方、看護師は9番目、医師は12番目に挙げた」と、がん患者・看護師・医師の認識の乖離を指摘。なかでも、乳がんは患者の増加、初発年齢の若さ、適格な診断・予後の良さに加え、近年では外来化学療法が主流となっているが、体毛すべてに影響を及ぼす乳がん再発予防の治療は患者に大きな負担をもたらしている。同氏らが行った調査6)によると乳がん患者が脱毛した場合、再発毛しても頭髪8割以上の回復は60%、頭髪5~8割の回復は25%、頭髪5割未満の回復は15%で、再発毛不良部位は前頭部と頭頂部が圧倒的に多いことが明らかになった。また、ウイッグの使用期間は平均12.5±9.7ヵ月で、60ヵ月以上もウィッグを手放せない患者も存在した。このことから同氏は「脱毛程度の軽減、再発毛の促進に頭皮冷却装置の効果を期待する」と締めくくった。日本人向け脱毛防止装置で苦痛開放へ 日本での冷却装置導入の遅れに注目したリーブ21代表取締役社長の岡村 勝正氏は、「女性にとって乳がん治療はがん告知、乳房、髪の毛を失う三重の苦しみがあると言われている。欧米で発売されている頭皮冷却装置は日本人に適さないことから、脱毛で悩む日本人を救うため開発を行った」とし、「同製品は本年秋頃、全国のがん診療連携拠点病院に対してプロモーションを予定している」と話した。■参考リーブ21:頭皮冷却装置<セルガード> 1)Coates A, et al. Eur J Cancer Clin Oncol. 1983;19:203-208.2)Griffin AM, et al. Ann Oncol. 1996;7:189-195.3)Dennert MB, et al. Br J Cancer. 1997;76:1055-1061.4)Carelle N, et al. Cancer. 2002;95:155-163.5)Mulders M, et al. Eur J Oncol Nurs. 2008;12:97-102.6)Watanabe T, et al. PLoS One.2019;14:e0208118.

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CABANA試験におけるカテーテルアブレーション/薬物療法のAF再発の割合【Dr.河田pick up】

 CABANA試験は、心房細動(AF)に対しカテーテルアブレーション(CA)治療もしくは薬物療法のQOL改善効果を比較する非盲検無作為化試験であり、2009年11月~2016年4月に10ヵ国126施設で2,204例の患者が登録された。Intention to treat分析では、非有意だったものの、CAが主要評価項目である死亡、後遺障害を伴う脳卒中、重大な出血、心停止などを14%減らすことが示された。今回、米国・ワシントン大学のJeanne Poole氏ら研究グループにより、CABANA試験のサブ解析ともいえる論文が発表された。この研究の目的はCABANA試験におけるAFの再発を評価することである。JACC誌2020年6月30日号に掲載。CABANAモニターを用いて、症候性/無症候性AFを検知 試験に参加した患者は、CA群もしくは薬物療法群にランダマイズ化し、専用のCABANAモニターでフォローされた。このモニター心電図は、患者自身が症状に応じて簡易心電図を記録でき、また24時間のAF自動検知も可能である。AFの再発は、90日間のブランキング(再発の評価に含めない期間)後、30秒以上続く心房頻拍と定義された。1日におけるAFの割合の評価には、6ヵ月ごとのホルター心電図が用いられた。  CABANAモニターを使用し、90日間のブランキング後に心電図記録を提出した患者は1,240例で、登録患者の56%に相当した。治療効果の比較は、修正intention-to-treatを用いて行われた。AFの割合はCA群で有意に減少 1,240例の年齢の平均中央値は68歳で、34.4%は女性であった。43.0%の患者が発作性AFを有していた。 60ヵ月のフォローアップ期間中、症状の有無にかかわらず、すべてのAF(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.45~0.60、p<0.001)および症候性AF(HR:0.49、95%CI:0.39~0.61、p<0.001)は、CA群で有意に減少していた。 また、試験開始前のホルター心電図におけるAFの割合は48%で、試験開始後12ヵ月の時点では、CA群6.3%、薬物療法群14.4%であった。5年間のフォローアップ期間におけるAFの割合は、CA群では、すべてのAF(有症候性/無症候性を含む)の再発を48%減少させ、症状を伴うAFを51%減少させた。さらに、AFの頻度は試験開始前のAFの種類に関わらず、有意に減少した。◆◇◆◇◆ 個人的には、CA後のAF再発率と頻度を評価したこの論文は、JAMAに掲載されたCABANAスタディと同じぐらい重要だと考えます。5年間で症候性/無症候性を含めたAFの再発はCA群で52.1%でした(薬物療法群は70.8%)。正確な数値はわかりませんが、症候性AFに限って見れば、再発率は20%近くまで減っています。これらの数字は、実臨床での印象と大きな相違はありません。結局、CAのスタディの結果は、AFの定義(この研究では30秒以上を心房頻拍と定義)やモニターの実施方法に大きく依存します。また、無症候AFがいかに多く、モニターを長時間、高頻度に行えば行うほど、CAの成績は悪くなるのは明らかです。そうした観点から、CA後においても、症状ではなく、リスク(CHADS2VASC2スコアなど)に応じて抗凝固剤を続けるということは理に適っていると思われます。 CAのスタディでは、心房性頻拍の再発率にのみ着目する傾向があります。今回の論文含めたCABANA試験の結果(約50%の再発率)を見て、CAを行わない循環器内科医や内科医は、その効果を疑問視するかもしれません。CAを行う不整脈医はCAによるAFの根治を目指してはいますが、現状における第一の目的は症状の改善もしくはQOLの改善です。だからこそ、CAを実施するケースの多くはAFによる症状、もしくはQOL低下に苦しんでいる患者さんであり、適切な症例の選択が必要です。薬物療法と比較してもCAは症状の強い患者にとっては非常に有効な治療法だと考えられます。逆に、症状のない高齢者などはCAの対象ではないと考えられます。 一方で、CA後の10年を超えた長期成績は不明な点もあります。無症候でも若年、心不全、薬物療法が使えない患者に対しては、CAによりQOLや予後を改善できる可能性があるため、AFの根治を目指したCAを行うことも妥当だと考えられます。この研究からもAFに対するCAの症例選択は、個々の症状や年齢に応じた十分な検討が必要だということが言えると思います。(Oregon Heart and Vascular Institute  河田 宏)■関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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PPI服用や便秘がフレイルに影響

 フレイルと腹部症状の関連性はこれまで評価されていなかったー。今回、順天堂東京江東高齢者医療センターの浅岡 大介氏らは病院ベースの後ろ向き横断研究を実施し、フレイルの危険因子として、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用、サルコペニア、低亜鉛血症、FSSG質問表(Frequency Scale for the Symptoms of GERD)でのスコアの高さ、および便秘スコア(CSS:Constipation Scoring System)の高さが影響していることを明らかにした。Internal Medicine誌2020年6月15日号掲載の報告。 同氏らは、2017~19年までの期間、順天堂東京江東高齢者医療センターの消化器科で、65歳以上の外来通院患者313例をフレイル群と非フレイル群に分け、フレイルの危険因子を調査した。患者プロファイルとして、骨粗しょう症、サルコペニア、フレイル、栄養状態、上部消化管内視鏡検査の所見、および腹部症状の質問結果(FSSG、CSS)を診療記録から入手した。 おもな結果は以下のとおり。・対象者は、男性134例(42.8%)、女性179例(57.2%)、平均年齢±SDは75.7±6.0歳で、平均BMI±SDは22.8±3.6kg/m2だった。・そのうち71例(22.7%)でフレイルを認めた。・一変量解析では、高齢(p<0.001)、女性(p=0.010)、ヘリコバクターピロリ菌の除菌成功(p=0.049)、PPIの使用(p<0.001)、下剤の使用(p=0.008)、サルコペニア(p<0.001)、骨粗しょう症(p<0.001)、低亜鉛血症(p=0.002)、低アルブミン血症(p<0.001)、リンパ球数の低下(p=0.004)、CONUT(controlling nutritional status)スコアの高さ(p<0.001)、FSSGスコアの高さ(p=0.001)、CSSスコアの高さ(p<0.001)がフレイルと有意に関連していた。・また、多変量解析の結果でもフレイルと有意に関連していた。高齢[オッズ比(OR):1.16、95%信頼区間[CI]:1.08~1.24、p<0.001]、PPI使用(OR:2.42、95%CI:1.18~4.98、p=0.016)、サルコペニア(OR:7.35、95%CI:3.30~16.40、p<0.001)、低亜鉛血症(OR:0.96、95%CI:0.92~0.99、p=0.027)、高FSSGスコア(OR:1.08、95%CI:1.01~1.16、p=0.021)、高CSSスコア(OR:1.13、95%CI:1.03~1.23、p=0.007)。

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幸いな術後管理への道(解説:今中和人氏)-1272

 せん妄、いわゆるICU症候群は実に頭が痛い。心を込めて説得してもダメ、抑制してももちろんダメ、あれこれ鎮静薬を使っても硬い表情に異様にギラギラしたまなざしは去ることなく、「あんなに苦労して入れたA-ラインが、こんなにもアッサリと…」と激しく萎えた経験は、多くの先生にとって一度や二度ではあるまい。幻覚で大暴れしている患者さんも気の毒には違いないが、医師もナースも負けず劣らず気の毒。もちろん、臨床経過にも悪影響が及ぶ。せん妄の克服こそは、幸いな術後管理の鍵を握っている。 せん妄の原因は、従来は不安、孤立感、不眠といった心理面が重視されていたが、近年は多種多様な病態の複合的結果と捉えられている。脳血管障害などの既往、高齢、大手術といった工夫のしようもない要因、低酸素、電解質異常(とくに低ナトリウム、低カルシウム)、アシドーシス、低血糖、低心拍出、低血圧、不十分な鎮痛など、完璧に制御するのは容易でない要因が「これでもか」と並び、薬剤では利尿剤、抗不整脈薬、β遮断薬、H2ブロッカーに、ステロイド、抗生剤、麻薬、ベンゾジアゼピン、三環系抗うつ薬とくれば、一定以上の頻度でせん妄に遭遇することは避けられそうにない。 これでは、「幸いな術後管理」のほうが幻覚になってしまう。何とかせん妄を予防できないものか? 本論文はCleveland clinicを中心とする7病院における人工心肺症例約800例に対する、二重盲検無作為化試験である。すべて米国の施設だが、オフポンプCABGに積極的に取り組んでいるのか、単独CABGは1.5%のみ。55%が弁か大動脈の単独手術、45%がCABGとの複合手術であった。この800例を、麻酔後・執刀時からデクスメデトミジンか生食を持続投与する2群、各々約400例に分け、術後の新規心房細動とせん妄の発生を1次エンドポイント、急性腎障害と90日後の創部痛を2次エンドポイントと定義して比較している。デクスメデトミジンの投与量は開始時が0.1μg/kg/h、人工心肺離脱後は0.2μg/kg/h、ICUで0.4μg/kg/hに増量して24時間継続、患者さんの状態に応じて増減可、というプロトコルであった。現在、本邦では医療安全の観点からもpre-filledシリンジが多く使用されており、当院採用の製品の含有量が4μg/mLなので、体重60kgの患者さんの場合、0.1μg/kg/hは1.5mL/hに相当する。するとICUでの投与速度は6mL/hとなり、普通はまずまずしっかり鎮静されていて、過量と言うほどでもない投与速度である。 結果は期待に反し、新規心房細動は対照群34%に対して30%と有意に減少せず、せん妄は対照群12%に対して17%に発生し、有意差はないがむしろ増加、という結果であった。急性腎障害、創部痛もほぼ同数であった。ICU滞在はむしろ長くなり、臨床的に有意な低血圧が増加した。著者らはこの低血圧が、無効という結論になった一因かもしれない、と考察し、詳述してはいないが、コスト的にむしろマイナスだと示唆している。 過去には観察研究やプロトコル不統一のメタ解析では、デクスメデトミジンの有効性がちらほら報告されたが、本RCTでは全医療従事者の期待がアッサリ裏切られてしまった。そうは言っても患者さんが静穏であれば、術後管理は取り敢えずはうまくいっているわけだから、希望は捨てずに類似研究の報告を待ちたいところである。 ただ、鎮静薬持続静注の状態では食事もリハビリも始めにくいわけで、幸いな術後管理への道は、やっぱり遠い。

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渡米までのカウントダウン開始!最後まで気が抜けない事務手続き【臨床留学通信 from NY】第10回

第10回:渡米までのカウントダウン開始!最後まで気が抜けない事務手続き今回は、マッチ後から渡米までの手続きの流れについてご紹介します。一般的にマッチが決まるのは3月中旬であり、渡米までの猶予は3ヵ月しかありません。その間にビザの取得と、病院で働くために必要な書類を揃えなければならず、かなりタイトなスケジュールでした。国の情勢でも変わるビザのルールとメリット/デメリット私の場合、まずは同じ病院で働くことになる同僚達と連絡を取り合い、必要書類を確認しました。本当に事務手続きが苦手で、渡米前から現在に至るまで同僚にはいつも助けられています。ビザは大きくJ-1ビザとH-1Bビザがあります。H-1B ビザには「2年ルール」がなく、5年が経過した後はグリーンカードの申請ができます(編集部注:2020年6月22日付米国大統領令により、グリーンカードおよび就労ビザの新規発給は2020年末まで停止中)。その代わりTax returnはなく、フェローシップのマッチングにおいて受け入れてくれるプログラムが限定されるというデメリットもあります。またH-1B ビザ取得にはUSMEL Step3をパスしていることが必須条件です。一方、J-1ビザのデメリットは、7年を超えて米国に滞在することが難しく、2年での帰国、もしくは3年のwaiver(医療過疎地、軍人退役病院への勤務)を余儀なくされることです。その時点で相当な業績があればOビザ(卓越能力者ビザ)に切り替えますが、2年ルールからは逃れられません。私の場合はレジデンシーマッチ後、次の大きなフェローシップへのマッチングが主な目的となるため、J-1ビザを選択しました。それが正しかったかどうかは今でもわかりませんが、当時、どうしても永住したいという意思がなかったことに加え、Cardiologyは競争率が高く、IMG(international medical graduate)であることや、卒後年数が経過していることからも不利となることが予想され、より確実なJ-1ビザを選択しました。J-1ビザ取得に必要な書類は、厚生労働省とやりとりをしてStatement of Needと呼ばれる政府証明書をECFMG(Education Commission of Foreign Medical Graduates)に送ります。証明書の申請に必要となる主な書類は、(1)病院の契約書原本とその和訳(2)履歴書(3)保証書(J-1ビザは帰国が前提であるため、帰国後の勤務を保証してくれる書類)(4)誓約書などです。契約書類については、PDFで送られてくるものだと思って数日待っていたのですが、一向に送られて来ません。実はすべてNew Innovationというサイト(就労前に全ての書類を病院側に提出する際に使用するサイト)上に転がっていたのです。私はしばらくそのことに気付かず、貴重な時間をロスしてしまいましたので、思い込みにはくれぐれもご注意ください。さらに、書類の英訳を同僚数人で分割して行い、厚労省に郵送したのですが、日本の3~4月はちょうど年度の変わり目で担当者が代わる時期であったため、より一層時間がかかりました。ひと通りの書類を申請し、病院側のIMGの窓口担当者と連絡を取り合い、ECFMG certificate(USMEL Step2までの合格証明書)や医学部の卒業証明書をアップロードしてもらい、最終的にDS2019という書類を入手します。DS2019を入手したら、記載された番号などにより大使館の予約が出来ます。大使館ウェブサイトに必要事項を入力するわけですが、家族の分も必要で数時間かかってしまいますが、手続きを先に進めるためにはやむを得ません。また、混んでいる時期だとすぐに予約ができないこともあるため要注意です。大使館で面接を受けると、1週間ほどビザが手元に届き、晴れて渡航準備は完了です。ただし、こうした手続きは時期によって大きく変わるものなので、申請する方は必ず最新情報を入手するようにしてください。「たかが…」と思うことなかれ!事務手続きの山は最後までハード事務手続きと並行して、米国の病院で働くためのオリエンテーションをweb上で履修します。膨大な数のネット講習を受ける必要があり、ナメてかかるとIDカードがもらえなかったりするので、確実に履修しなければならず、本当に面倒でした。一連の事務作業が終わり、残りの期間は、渡米後に機会が増えるであろう米国の学会(AHAなど)への参加を見越して、病院のカテーテルデータをまとめたり、慶應関連病院のPCI registryからの論文作成1)やAHAへのSubmit2,3)をしたりしたほか、久しぶりの総合内科研修を控え、MKSAPという米国内科専門医の取得のための問題集を地道に解いて少しでもスムーズに入れるように準備をしました。参考1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30819656/2)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30212493/3)https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/circ.138.suppl_1.10930Column画像を拡大するニューヨークの新型コロナ患者はかなり減少し、現在はたまに診察する程度です。ただ3~5月のパンデミック中は途方もない多くの方々が罹患し、亡くなりました。そうした患者さんの最期にPalliative care teamの介入が有用ではないかという論文が先日オンラインとなりましたので、皆さんに共有させていただきます。不幸にも未曾有のウィルスに罹患し、治療が奏功しなかった患者さんが最期をいかに迎えるのか、いろいろと考えさせられました。参考サイト:https://twitter.com/MSBI_IM/status/1286667020751245313

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第20回 風邪コロナウイルスがSARS-CoV-2免疫を授けうる? / キャンプ場で小児にCOVID-19が大流行

風邪コロナウイルス反応T細胞がSARS-CoV-2も認識する?新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染していないのにSARS-CoV-2に反応するCD4+ T細胞が少なくとも5人に1人、多ければ2人に1人に備わっていると示唆されています。SARS-CoV-2が流行する前に25人から採取した血液検体を調べた新たなScience誌報告でもこれまでの幾つかの研究と同様にSARS-CoV-2反応T細胞が見つかり、SARS-CoV-2の142の領域(抗原決定基)がT細胞への反応と関連しました1,2)。そして、これまでにない新たな発見として、SARS-CoV-2に反応するT細胞が風邪を引き起こす馴染みのコロナウイルス(風邪コロナウイルス)4種のSARS-CoV-2に似た抗原決定基にも同様に反応しうることが示されました。この結果は、SARS-CoV-2流行前から馴染みのコロナウイルスに曝露したことでSARS-CoV-2にも反応しうるT細胞が備わったという考えを支持しています3)。また、感染前から備わるSARS-CoV-2への免疫反応はT細胞だけではなさそうです。先月23日にmedRxivに発表された報告によると、英国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が本格的に流行する前の2018~2020年初めに非感染者262人から採取した血液検体のうち15検体(6%)にはSARS-CoV-2に反応する抗体が認められました4)。さらに特筆すべきことに小児でのその割合はとくに高く、1~16歳の小児48人のうち少なくとも21人(44%)はSARS-CoV-2スパイクタンパク質に反応するIgG抗体を有していました。小児は一般的に他のコロナウイルスとの接触がより多く、それが小児にIgG抗体が多い理由かもしれません。そのようなSARS-CoV-2反応抗体は小児におけるCOVID-19感染者の多くがかなり軽症で済むことの理由の一つかもしれないと著者の1人Rupert Beale氏はツイートしています5)。ただし、SARS-CoV-2への幾ばくかの免疫で感染を絶対に防げるという保証はありませんし、悪くすると正反対の効果、免疫反応を乱して手に負えない炎症やウイルスの蹂躙を招く恐れがあります。たまたま備わったSARS-CoV-2反応T細胞はとくに高齢者にとっては有害になる恐れがあるとシンガポールの免疫学者Nina Le Bert氏は言っています3)。Le Bert氏もCOVID-19へのT細胞反応を調べている研究者の一人です。キャンプ場で小児にCOVID-19が大流行小児はSARS-CoV-2感染しても多くが軽症で済み、それに感染し難いことが示唆されている一方で、米国ジョージア州のキャンプ場で6月に発生した小児のCOVID-19大流行はどの年齢の小児も感染と無縁ではないことを改めて示しました6)。そのキャンプ場では、キャンプする小児(6~19歳、中央値12歳)の受け入れの準備のためにまずは世話係(年齢14~59歳、中央値17歳)が6月17日にキャンプ場に集まり、キャンプはその週末21日から始まりました。キャンプ場のCOVID-19食い止め対策は完全ではなく、世話係は綿製マスク着用が義務でしたがキャンプする小児のマスク着用は必須とせず、ドアや窓を開けて建物内の換気を促すこともしませんでした。6月23日に10代の世話係の1人が前の晩に寒気を覚えてキャンプ場を去り、検査の結果24日にSARS-CoV-2感染が確認されました。キャンプ場は24日から滞在者を帰宅させはじめ、27日に閉鎖しました。キャンプには世話係251人とキャンプ参加小児346人合わせて597人が集い、検査結果が判明した344人(内訳は未報告)のうち260人(76%)が陽性でした。マスクが必須ではない環境で大勢が集まって同じ部屋で寝て、勢いよく歌ったり声援したりを繰り返したことが恐らく感染を広まらせたようであり、集いの場では相手との距離を保ってマスクを絶えず装着する必要があると著者は言っています。参考1)Selective and cross-reactive SARS-CoV-2 T cell epitopes in unexposed humans. Science 04 Aug 20202)Exposure to common cold coronaviruses can teach the immune system to recognize SARS-CoV-2 / Eurekalert 3)Does the Common Cold Protect You from COVID-19? / TheScientist4)Pre-existing and de novo humoral immunity to SARS-CoV-2 in humans. bioRxiv. July 23, 20205)Rupert Beale氏ツイッター 6)SARS-CoV-2 Transmission and Infection Among Attendees of an Overnight Camp - Georgia, June 2020. MMWR. Early Release / July 31, 2020

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COVID-19へのヒドロキシクロロキン、AZM併用でも臨床状態改善せず/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者の治療において、標準治療にヒドロキシクロロキン(HCQ)単剤またはHCQ+アジスロマイシン(AZM)を併用しても、標準治療単独と比較して15日後の臨床状態を改善しないことが、ブラジル・HCor Research InstituteのAlexandre B. Cavalcanti氏らが行った「Coalition COVID-19 Brazil I試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2020年7月23日号に掲載された。HCQは、in vitroで抗ウイルス作用が確認され、小規模な非無作為化試験において、AZMとの併用で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)のウイルス量を減少させると報告されている。これらの知見に基づき、HCQはCOVID-19患者の治療に用いられているが、安全性や有効性のエビデンスは十分ではないという。3群を比較する無作為化対照比較試験 本研究は、ブラジルの55の病院が参加した非盲検無作為化対照比較試験であり、2020年3月29日~5月17日の期間に患者登録が行われ、2020年6月2日にフォローアップを終了した(Coalition COVID-19 BrazilとEMS Pharmaの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、酸素補充療法を受けていないか、最大4L/分の酸素補充を受けており、発症から14日以内の入院中のCOVID-19疑い例または確定例であった。 被験者は、標準治療を受ける群(対照群)、標準治療+HCQ(400mg、1日2回)を受ける群(HCQ群)、標準治療+HCQ(400mg、1日2回)+AZM(500mg、1日1回)を受ける群(HCQ+AZM群)に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、7日間の治療が行われた。 主要アウトカムは、修正intention-to-treat(mITT)集団(COVID-19確定例)における、7段階の順序尺度(1[入院しておらず、活動に制限がない]~7[死亡])で評価した15日後の臨床状態とした。すべての副次アウトカムにも差はない 667例が無作為割り付けの対象となり、504例がmITT解析に含まれた。221例がHCQ群、217例がHCQ+AZM群、229例が対照群に割り付けられた。全体の平均年齢は50歳、58%が男性で、42%が酸素補充療法を受けていた。 COVID-19確定例における、15日後の7段階順序尺度スコア中央値は3群とも1(IQR:1~2)であった。高スコア(臨床状態不良)の比例オッズ(OR)は、対照群と比較して、HCQ群(OR:1.21、95%信頼区間[CI]:0.69~2.11、p=1.00)およびHCQ+AZM群(0.99、0.57~1.73、p=1.00)のいずれにおいても有意な差は認められなかった。また、HCQ群とHCQ+AZM群の間にも、差はみられなかった(0.82、0.47~1.43、p=1.00)。 副次アウトカム(7日後の6段階[非入院~死亡]順序尺度、15日以内の呼吸補助なしの日数、15日以内の高流量鼻カニューレ/非侵襲的換気の使用日数、15日以内の機械的換気の使用日数、入院日数、院内死亡、15日以内の血栓塞栓症の発生割合、15日以内の急性腎障害の発生割合)のすべてで、有意差は確認されなかった。 補正後QT間隔の延長は、対照群に比べHCQ群およびHCQ+AZM群で頻度が高く、フォローアップ期間中に連続心電図検査を受けた患者は対照群で少なかった。また、肝酵素値(ALT、AST)の上昇は、対照群に比しHCQ+AZM群で高頻度であった。 著者は、「この研究の効果の点推定は、主要アウトカムに関して群間に大きな差はないことを示唆するが、試験薬の実質的な有益性および有害性のいずれかを確実に排除することはできない」としている。

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閉経後ホルモン補充療法、乳がんへの長期影響は?/JAMA

 2件の無作為化試験の長期フォローアップの解析から、子宮摘出術を受けた女性において、結合型エストロゲン(CEE)単独療法を受けた患者群はプラセボ群と比較して、乳がん発生率および乳がん死亡率の低下と有意に関連していることが明らかにされた。また、子宮温存療法を受けた女性において、CEE+メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)療法を受けた患者群はプラセボ群と比較して、乳がん発生率は有意に高く、乳がん死亡率に有意な差はみられなかった。米国・Harbor-UCLA Medical CenterのRowan T. Chlebowski氏らによる報告で、これまで閉経後ホルモン療法の乳がんへの影響は、観察研究と無作為化試験の所見が一致せず結論には至っていなかったことから、一般閉経後女性を対象としたホルモン補充療法の大規模前向き無作為化試験「Women's Health Initiative」参加者の長期追跡評価試験を行い、CEE+MPA療法またはCEE単独療法の乳がん発生・死亡への影響を調べる検討を行った。JAMA誌2020年7月28日号掲載の報告。CEE単独またはCEE+MPA療法の対プラセボ評価を20年超追跡 2件のプラセボ対照無作為化試験の長期追跡評価は、乳がんの既往がなく、ベースラインのマンモグラフィで陰性が確認された50~79歳の閉経後女性2万7,347例を対象に行われた。対象者は、1993~98年に米国内40ヵ所のセンターで登録され、2017年12月31日まで追跡を受けた。 このうち、子宮が温存されている1万6,608例を対象とした試験では、8,506例がCEE 0.625mg/日+MPA 2.5mg/日を投与され、8,102例がプラセボを投与された。また、子宮摘出術を受けていた1万739例を対象とした試験では、5,310例がCEE 0.625mg/日単独投与を、5,429例がプラセボ投与を受けた。 CEE+MPA試験は、中央値5.6年後の2002年に中止となり、CEE単独試験は中央値7.2年後の2004年に中止となっている。 主要評価項目は、乳がんの発生(プロトコールは有害性についての主要モニタリングアウトカムと規定)、副次評価項目は、乳がん死および乳がん後の死亡であった。 対象者2万7,347例はベースラインの平均年齢63.4(SD 7.2)歳で、累積フォローアップ中央値20年超において98%以上の死亡情報の入手・利用が可能であった。子宮摘出CEE単独は発生率・死亡率とも低下、子宮温存CEE+MPAは発生率上昇 子宮摘出術を受けていた1万739例において、CEE単独療法はプラセボと比較して、統計学的に有意に乳がんの発生率が低かった(238例[年率0.30%]vs.296例[0.37%]、ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.65~0.93、p=0.005)。また、乳がん死も統計学的に有意に低率だった(30例[0.031%]vs.46例[0.046%]、0.60、0.37~0.97、p=0.04)。 対照的に、子宮が温存されていた1万6,608例において、CEE+MPA療法はプラセボと比較して、統計学的に有意に乳がんの発生率が高く(584例[年率0.45%]vs.447例[0.36%]、HR:1.28、95%CI:1.13~1.45、p<0.001)、乳がん死の有意差はみられなかった(71例[0.045%]vs.53例[0.035%]、1.35、0.94~1.95、p=0.11)。

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COVID-19治癒後、8割に心臓MRIで異常所見

 最近COVID-19が治癒した100例におけるコホート研究で、心臓MRI(CMR)により78%に心臓病併発、60%に進行中の心筋炎症が認められたことを、ドイツ・フランクフルト大学病院のValentina O. Puntmann氏らが報告した。また、これらは既往歴、COVID-19の重症度や全体的な経過、診断からの期間とは関連がなかったことという。JAMA Cardiology誌オンライン版2020年7月27日号に掲載。 COVID-19の心血管系への影響は症例報告では示唆されているが、全体的な影響は不明だった。今回、著者らはCOVID-19が最近治癒した患者の心筋障害の存在を調査するために、2020年4~6月にフランクフルト大学病院COVID-19レジストリにおいて、COVID-19が最近治癒した100例を対象とした前向き観察コホート研究を実施した。COVID-19の治癒については、上気道スワブのRT-PCR検査でSARS-CoV-2消失とした。人口統計学的特徴、心臓の血中マーカー、CMRについて、年齢と性別を一致させた健康ボランティアの対照群(n=50)と危険因子を一致させた患者の対照群(n=57)と比較した。 主な結果は以下のとおり。・100例のうち、男性は53例(53%)で、年齢中央値(四分位範囲[IQR])は49(45~53)歳であった。・COVID-19診断からCMRまでの期間の中央値(IQR)は71(64~92)日であった。・COVID-19が最近治癒した100例のうち、67例(67%)が自宅で治癒し、33例(33%)が入院を必要とした。・CMRの時点で、COVID-19が治癒した71例(71%)で高感度トロポニンT(hsTnT)が検出され(3pg/mL以上)、5例(5%)で著明な増加を示した(99パーセンタイルの13.9pg/mL以上を「著明な増加」と定義)。・COVID-19治癒患者群は、健康ボランティアの対照群と危険因子を一致させた患者の対照群と比較して左室駆出率が低く、左室容積および左室心筋重量が大きく、native T1およびT2が上昇していた。・COVID-19が治癒した78例(78%)で、心筋のnative T1の上昇(73例)、心筋のnative T2の上昇(60例)、心筋のlate gadrinium enhancement(32例)、心膜のenhancement(22例)などのCMRの異常所見がみられた。・自宅で治癒した患者と病院で治癒した患者では、native T1 mappingについて、わずかだが有意な差があった(中央値[IQR]:1122 [1113~1132] ms vs.1143 [1131~1156] ms、p=0.02)が、native T2 mapping、hsTnTでは差がなかった。これらはいずれもCOVID-19診断からの日数と相関していなかった(native T1:r=0.07、p=0.47、native T2:r=0.14、p=0.15、hsTnT:r=-0.07、p=0.50)。・hsTnTは、native T1 mapping(r=0.35、p<0.001)およびnative T2 mapping(r=0.22、p=0.03)と有意に相関していた。・重症所見がみられた患者の心筋生検で、活動性のリンパ球性炎症がみられた。 この結果から著者らは、COVID-19の心血管系への長期における影響を継続的に調査する必要があるとしている。

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侮れない中国の科学力(解説:後藤信哉氏)-1271

 筆者は免疫学者でもウイルス学者でもない。ランダム化比較試験による有効性、安全性検証をリードするclinical trialistであるとともに一人の臨床医である。免疫の仕組みに詳しいわけではない。それでもウイルス表面に存在する細胞への侵入を担う蛋白を標的とした抗体ができれば感染予防ができるのではないかとの仮説は持てる。本研究は新型コロナウイルスの表面に発現しているスパイク蛋白をアデノウイルスの一種であるAd5に発現させたワクチンを用いた臨床試験の結果である。エビデンスレベルの高い二重盲検のランダム化比較試験である。対照群をプラセボとしている。タンパク質を注射すれば副反応として疼痛などが起こるのは一種当然である。プラセボとの比較は安全性比較にはハードルが高いと思う。 本研究は武漢で施行された。登録症例数は603例である。新型コロナウイルスにより壊滅的な社会的ダメージを被りながら、ワクチン開発の第II相試験の結果は今の時点で公表できるレベルにまで進めた中国の科学力は甘く見れない。本研究は単一施設の研究であるので結果の一般化にはハードルが高い。プラセボとの比較においても忍容性には大きな問題がなかった。新型コロナウイルスのスパイク蛋白に対する中和抗体は産生される。しかし、スパイク蛋白の中和抗体が新型コロナウイルス感染、重症化を予防できるか否かはわからない。 ワクチン開発への期待は高い。各種薬剤でも演繹的に有益性が期待され、phase 1、phase 2を通過した後に、phase 3にて問題が発見される例はきわめて多い。新型コロナウイルスのワクチン開発への道は遠い。古典的発想のワクチンにて解決できればよいとは考えるものの、革新的技術の開発が必要かもしれない。

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Dr.長門の5分間ワクチン学

第1回 ワクチンの基礎第2回 接種の実際第3回 被接種者の背景に応じた対応第4回 接種時期・接種間隔第5回 予防接種の法律・制度第6回 Hibと肺炎球菌第7回 麻疹・風疹・おたふく第8回 水痘・BCG・4種混合第9回 肝炎・日本脳炎第10回 インフルエンザ・ロタウイルス第11回 子宮頸がんワクチン・渡航ワクチン第12回 トラブルシューティング CareNeTV総合内科専門医試験番組でお馴染みの長門直先生が、自身の専門の1つである感染症について初講義。医療者が感じているワクチンにまつわる疑問を各テーマ5分で解決していきます。テーマは「ワクチンの基礎」をはじめとした総論5回と「麻疹・風疹・おたふく」など各論7回。全12回で完結のワクチン学を、CareNeTV初お目見えのホワイトボードアニメーションでテンポよくご覧いただけます。第1回 ワクチンの基礎医療者でも意外と知らなかったり、間違って覚えていることが多いのがワクチン接種。第1回は「ワクチンの基礎」として、まず最初に押さえておきたい、「ワクチンの種類」と「ワクチンを取り扱う上で覚えておきたいこと」をまとめました。ワクチンの種類の違いは?アジュバントの意味は?ワクチンの保存方法で気を付けたいことは?「ワクチン学」の講義時間はたったの5分。CareNeTV初お目見えのホワイトボードアニメーションでテンポよく解説していきます。第2回 接種の実際今回の「ワクチン学」のテーマは「ワクチン接種の実際」。医療者からよく質問に出る「ワクチンの接種方法」と「ワクチン接種後の対応」について確認していきます。ワクチン接種方法では、皮下注射と筋肉注射の具体的な方法を確認していきます。接種部位は?使用する針の太さは?長さは?角度は?そして、ワクチン接種後の対応については、意外と知られていないことや、間違って覚えてしまっていることを解決していきます。第3回 被接種者の背景に応じた対応被接種者が抱える背景によって、ワクチン接種の可否や気を付けておきたいことを確認していきます。今回「ワクチン学」で取り上げる被接種者の背景は8つ。(1)早産児・低出生体重児(2)妊婦・成人女性(3)鶏卵アレルギーがある人(4)発熱者(5)痙攣の既往歴のある人(6)慢性疾患のある小児(7)HIV感染症の人(8)輸血・γ-グロブリン投与中の人。それぞれに応じた対応をポイントに絞り、解説していきます!第4回 接種時期・接種間隔接種時期・接種間隔は予防接種ごとに決められています。今回は、原則と被接種者からよく聞かれる質問、そしてその対応を確認します。小児の場合、不活化ワクチンの第1期接種では、なぜ複数回接種する必要があるのか?成人や高齢者の場合は?生ワクチンで押さえておきたいポイント。被接種者からよく聞かれる質問は「感染症潜伏期間の予防接種は可能かどうか」など、3つをピックアップしました。第5回 予防接種の法律・制度法律・制度の観点から定期接種、任意接種を確認します。近年の法改正の流れ、それぞれの費用負担の違い、現在の対象疾病の種類。副反応に関する制度では、報告先と救済申請先を確認。また、医療者の中でも賛否が分かれるワクチンの同時接種についても言及します。第6回 Hibと肺炎球菌今回から各論に入ります。まずはHibワクチンと肺炎球菌ワクチン。よくある質問とそれぞれの特徴を見ていきます。よくある質問は「Hibワクチンや肺炎球菌ワクチンは中耳炎の予防になるの?」「肺炎球菌ワクチンは2つあるけどどう違うの?」。それぞれの特徴では、Hibワクチンは接種スケジュールのパターン、肺炎球菌ワクチンは2種類の成分、接種対象者と接種方法を確認していきます。第7回 麻疹・風疹・おたふく今回は生ワクチンシリーズ。麻疹、風疹、MR、ムンプスを確認します。内容は、それぞれの接種時期をはじめ、2回接種する理由、非接種者が感染者と接触した場合の対応について。そして2018年に大流行した風疹についてはより具体的に「ワクチン接種者からの感染はあるのか?」「ワクチン接種した母親の母乳を飲んだ乳児への影響」「妊娠中の女性への風疹ワクチン対応」など、よくある疑問を解決していきます!第8回 水痘・BCG・4種混合今回は水痘・BCG・4種混合ワクチン。それぞれの接種回数、接種時期をはじめ、注意すべき点について触れていきます。水痘ワクチンでは2回接種する理由を確認します。そして、医療現場で課題となりやすいBCGワクチンの懸濁の仕方については、均一に溶かすポイントを紹介。さらに、4種混合ワクチンの追加接種を忘れた場合の対応、ポリオワクチンの現状について学んでいきます。第9回 肝炎・日本脳炎今回は、肝炎、日本脳炎。肝炎は渡航ワクチンとして使われる任意接種のA型肝炎ワクチンと定期接種のB型肝炎ワクチン、そして医療保険適用となる母子感染予防のB型肝炎ワクチンについて見ていきます。それぞれの接種スケジュールとB型肝炎ワクチンの現場で迷うことを解決します。日本脳炎は、接種スケジュールの確認に加え、日本小児科学会が言及している標準的接種時期以前の発症リスクについて紹介します。 第10回 インフルエンザ・ロタウイルス今回は冬から春にかけて流行するインフルエンザ、ロタウイルス。それぞれのワクチンを接種するタイミングとおさえておきたいポイントを確認します。インフルエンザワクチンは定期接種対象者、卵アレルギーの被接種者の方への対応、予防効果について。ロタウイルスワクチンは1価と5価、それぞれの有効性、接種スケジュールの違い、接種する時期、期間を学んでいきます。第11回 子宮頸がんワクチン・渡航ワクチン今回は、女性のHPV関連疾患を予防する2種類の子宮頸がんワクチンと海外渡航者に気を付けてほしい渡航ワクチンについて触れていきます。子宮頸がんワクチンは2種類の違いとそれぞれの接種スケジュール、日本における接種率激減に対するWHOの見解を確認します。渡航ワクチンは数ある中から黄熱ワクチン、狂犬病ワクチン、髄膜炎菌ワクチンの有効性と接種推奨地域を見ていきます。第12回 トラブルシューティングワクチンは通常、定期接種ですが、不慮の事態で至急打たなければならない場合があります。最終回はそのようなワクチンの“トラブルシューティング”を取り上げます。具体的には、感染者と接触した際の緊急ワクチン接種、外傷時の破傷風トキソイド接種、針刺し時の対応です。さらに、ワクチンの接種間隔に関する規定の改正など、2019年から2020年の大きなトピックを3つ取り上げてワクチン学をまとめていきます。

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高齢者の睡眠時間と認知症発症因子はどう関連するか?

 高齢者における生活習慣因子と皮質アミロイド負荷および脳グルコース代謝の関連を調べた研究において、総睡眠時間が軽度認知障害の高齢者の脳機能と関連することを示す結果が得られた。大分大学の木村 成志氏による報告で、JAMA Network Open誌2020年7月9日号に掲載された。 本研究は2015年に開始された前向きコホート研究であり、大分県臼杵市において、認知症既往のない65歳以上の成人を対象とした。データ収集は2015年8月~2017年12月、分析は2019年6月に行われた。被験者が装着したウエアラブルセンサーにより、歩数、会話時間、睡眠などのデータを収集し、PET検査によって皮質アミロイド負荷と脳グルコース代謝を調べることで、生活習慣因子とアルツハイマー型認知症発症因子との関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・基準に該当する855例(女性538例 [62.9%]、平均[SD]年齢73.8 [5.8]歳)のうち、軽度認知障害(MCI)と診断された118例(女性66例[55.9%]、平均[SD]年齢75.7[5.8]歳)に、carbon-11 labeled Pittsburgh compound B(PiB)-PET検査とfluorine-18 fluorodeoxyglucose(FDG)-PET検査を実施した。・変化点回帰分析において、総睡眠時間(TST)が325分(5.41時間)より長い場合、TSTと脳のグルコース代謝に逆相関がみられた(B=-0.0018、95%CI:-0.0031〜-0.0007)。・TSTとFDG取り込みも逆相関していた(β=-0.287、95%CI:-0.452〜-0.121、p<0.001)。・歩数、会話時間、睡眠効率とアミロイド取り込みの間には相関関係が認められなかった。 著者らは「本研究の最も興味深い結果は、TSTが脳のグルコース代謝と逆相関していたことだ」と述べ、長過ぎる睡眠時間が認知障害の危険因子になる可能性がある、と指摘した。また、さらに大規模研究を行うことによって、高齢者の認知機能障害を遅らせるためのエビデンスに基づく新しい介入の開発につながる可能性がある、としている。

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米国Moderna社の新型コロナワクチン、サルでの有効性確認/NEJM

 開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「mRNA-1273」は、非ヒト霊長類において、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の中和活性と上気道・下気道の速やかな保護を誘導し、肺組織の病理学的変化は認められなかった。米国・ワクチン研究センターのKizzmekia S. Corbett氏らが、アカゲザルにおけるmRNA-1273の評価結果を報告した。mRNA-1273は、SARS-CoV-2の膜融合前安定化スパイクタンパク質をコードするmRNAワクチンで、第I相試験を含むいくつかの臨床試験において安全性および免疫原性が確認されているが、上気道・下気道でのSARS-CoV-2増殖に対するmRNA-1273の有効性を、ヒトと自然免疫やB細胞・T細胞レパートリーが類似している非ヒト霊長類で評価することが重要とされていた。NEJM誌オンライン版2020年7月28日号掲載の報告。mRNA-1273の2用量を4週間間隔で2回筋肉内投与し有効性を評価 研究グループは、米国国立衛生研究所(NIH)の規定を順守し、ワクチン研究センターの動物実験委員会(Animal Care and Use Committee of the Vaccine Research Center)ならびにBioqualの承認を得て本試験を実施した。 インド原産アカゲザル(雄と雌各12匹)を3群に割り付け(性別、年齢、体重で層別化)、0週目および4週目にmRNA-1273の10μg、100μgまたはリン酸緩衝生理食塩水1mL(対照)を右後脚に筋肉内投与した。その後、8週目に、すべてのサルにSARS-CoV-2(合計7.6×105PFU)を気管内および鼻腔内投与した。 抗体およびT細胞応答をSARS-CoV-2投与前に評価するとともに、PCR法を用いて気管支肺胞洗浄(BAL)液および鼻腔スワブ検体中のウイルス複製とウイルスゲノムを評価し、肺組織検体にて病理組織学的検査とウイルス定量化を実施した。高い免疫応答の誘導と感染抑制効果を確認 mRNA-1273を2回投与後4週時の生ウイルス中和抗体価幾何平均値(reciprocal 50% inhibitory dilution:log10)は、10μg投与群で501、100μg投与群で3,481であり、ヒトの回復期血清のそれぞれ12倍および84倍高値であった。ワクチン投与によって、1型ヘルパーT細胞(Th1)に依存したCD4 T細胞応答が誘導されたが、Th2またはCD8 T細胞応答は低いかまたは検出できなかった。 10μg投与群および100μg投与群のいずれも8匹中7匹で、SARS-CoV-2投与2日目にはBAL液中のウイルス複製が検出されず、100μg投与群の8匹は、SARS-CoV-2投与2日目には鼻腔スワブ検体でもウイルス複製が検出されなかった。また、いずれのワクチン投与群も、肺検体における炎症、検出可能なウイルスゲノムや抗原は限られていた。

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精神疾患の疫学研究~大規模コホート

 中国は、ここ30年の間、過去にない経済的発展と社会的変化が起きており、政策立案者や医療専門家は、モニタリングすべき重要なポイントとして、メンタルヘルスへの注目が集まっている。中国・Guangdong Academy of Medical ScienceのWenyan Tan氏らは、過去10年間で2,000万件の実臨床フォローアップ記録を用いて、広東省における精神疾患の疫学研究を実施した。BMC Medical Informatics and Decision Making誌2020年7月9日号の報告。 2010~19年の広東省精神保健情報プラットフォームより、データを収集した。このプラットフォームは、6カテゴリの精神疾患患者約60万人と統合失調症患者40万人を対象とした疾患登録およびフォローアップが標準化されている。患者の疾患経過による臨床病期分類を行い、さまざまな因子でデータを分類した。疾患に関連性の高い指標を調査するため、定量分析を行った。地域分布分析のため、結果を地図に投影した。主な結果は以下のとおり。・精神疾患発症の多くは、15~29歳で認められた。ピーク年齢は、20~24歳であった。・罹病期間が5~10年の患者が最も多かった。・疾患経過に伴い、治療効果は徐々に減少し、リスクが上昇した。・影響因子分析では、経済状況の悪化はリスクスコアを上昇させ、適切な服薬アドヒアランスが治療効果の改善に効果的であることが示唆された。・より良い教育は、統合失調症リスクを低下させ、早期治療効果を高めた。・統合失調症の地域分布分析によると、経済状況の発展や医療資源の豊富な地域では、疾患リスクが低下し、経済状況が思わしくない地域では、疾患リスクが上昇した。 著者らは「経済状況や服薬アドヒアランスは、統合失調症の治療効果やリスクに影響を及ぼしていた。経済状況の発展とより良い医療資源は、精神疾患治療に有益である」としている。

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ラメルテオンの術後せん妄予防効果~胃切除後高齢者を対象とした第II相試験

 高齢患者における胃がん症例数は増加しており、術後せん妄を予防する重要性は高まっている。静岡県立静岡がんセンターの本田 晋策氏らは、胃切除後の高齢患者における術後せん妄の予防に対するラメルテオンの有効性を評価するため、単施設プロスペクティブ第II相試験を実施した。Surgery Today誌オンライン版2020年7月8日号の報告。 対象は、75歳以上の高齢患者。手術の8日前から退院までラメルテオン8mg/日を投与した。術後せん妄の評価には、集中治療室におけるせん妄評価法(CAM-ICU)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・2015年9月~2017年7月までに83例が登録された。そのうち、適格基準を満たした76例を分析に含めた。・術後せん妄は、4例(5%)で認められた(60%信頼区間:3.0~8.7)。・信頼区間の上部マージンは閾値の13%よりも低く、帰無仮説は否定された。 著者らは「ラメルテオンの周術期投与は、胃切除後の高齢患者における術後せん妄の予防に、安全かつ実現可能であることが示唆された」としている。

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腹壁ヘルニア修復術、ロボット手術は入院日数短縮せず/BMJ

 腹壁ヘルニアの修復術では、ロボット手術と腹腔鏡手術で術後90日までの入院日数に差はなく、ロボット手術は手術時間が2倍近く長く、医療費が有意に高額であることが、米国・McGovern Medical School at UTHealthのOscar A. Olavarria氏らの検討で示された。研究の詳細は、BMJ誌2020年7月14日号に掲載された。腹壁ヘルニア修復術におけるロボット手術と腹腔鏡手術を比較した、米国のデータベースを用いた後ろ向き研究では、術後の入院期間はロボット手術で短く、臨床アウトカムに差はないと報告されている。これらの知見を裏付けるために、無作為化対照比較試験の実施が望まれていた。入院日数を評価する実践的無作為化対照比較試験 本研究は、米国・ヒューストン市の集学的なヘルニア専門病院が参加した実践的な二重盲検無作為化対照比較試験であり、2018年4月~2019年2月の期間に患者登録が行われた(Intuitive Surgicalから研究者主導の助成金による支援を受けた)。 登録期間中に、連続的に受診した患者のうち、待機的な低侵襲ヘルニア修復術が適切と判定された124例を対象とした。被験者は、腹壁ヘルニア修復術としてロボット手術を受ける群(65例)または腹腔鏡手術を受ける群(59例)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、術後90日までの入院日数とした。副次アウトカムには、救急診療部の受診、手術室入室時間、創部合併症、ヘルニア再発、再手術、腹壁QOL、費用が含まれた。手術時間:141分vs.77分、費用差:2,767米ドル ベースラインの全体(124例)の平均年齢は49.1(SD 13.1)歳で、85例(69%)が女性であった。ヒスパニック系が77%、アフリカ系米国人が12%、白人が8%で、平均BMIは32.1、肥満者(BMI>30)が69%を占めた。腹部手術歴は81%に認められ、瘢痕ヘルニアが81%、再発例は19%だった。123例(99%)が、90日のフォローアップを完了した。 術後90日までの入院日数(術後入院と再入院の合計)は両群とも0日であり、有意な差は認められなかった(p=0.82)。 副次アウトカムのうち、救急診療部の受診(ロボット手術群11% vs.腹腔鏡手術群9%)、創部合併症(20% vs.19%)、ヘルニア再発(0% vs.0%)、再手術(0% vs.2%)については、両群間に有意な差はなかった。 一方、手術室入室時間は、ロボット手術群が141(SD 56)分と、腹腔鏡手術群の77(37)分に比べ有意に長かった(平均差:62.89分、95%信頼区間[CI]:45.75~80.01、p≦0.001)。 費用は、ロボット手術群が1万5,865米ドル(1万2,746ポンド、1万4,125ユーロ)であり、腹腔鏡手術群の1万2,955米ドルと比較して高額であった(費用比:1.21、95%CI:1.07~1.38、補正後絶対費用群間差:2,767米ドル、95%CI:910~4,626、p=0.004)。 ロボット手術群では、術中に不注意による腸切開が2件認められたが、腹腔鏡手術群では発生しなかった。 modified Activity Assessment Scale(mAAS、1[不良]~100[完全]点、臨床的に意義のある最小変化量[MCID]:7点)による腹壁QOLスコア(中央値)は、ベースラインから1ヵ月後までに、ロボット手術群で3点改善し、腹腔鏡手術群では15点の改善が得られた(群間差:11.00点、95%CI:-0.33~21.08、p=0.06)。 著者は、「ロボット手術による腹壁ヘルニア修復術の広範な採用が推奨されるようになる前に、より大規模な多施設共同試験を行う必要がある」としている。

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ダパグリフロジン、2型DM合併問わずCKD患者に有益/AstraZeneca

 AstraZeneca(本社:英国ケンブリッジ)は、同社が行ったダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の第III相DAPA-CKD試験の結果を発表した。プラセボと比較し主要評価項目で腎保護を達成 慢性腎臓病(CKD)は、腎機能が低下することにより起こる重篤な進行性の疾患。最も一般的な原因疾患は、糖尿病、高血圧、糸球体腎炎で、重篤な状態になると腎障害および腎機能低下が進行し、血液透析や腎移植を必要とする末期腎不全(ESKD)となる。全世界で約7億人の患者が推定されている。 今回結果が報告されたDAPA-CKD試験は、2型糖尿病合併の有無を問わず、CKDのステージ2~4、かつ、アルブミン尿の増加が確認された4,304例のCKD患者を対象に、ダパグリフロジン10mg投与による効果と安全性をプラセボと比較検討した国際多施設共同無作為化二重盲検比較試験。 発表によるとダパグリフロジンは、成人CKD患者における、腎機能の悪化または死亡に関する主要複合評価項目(推定糸球体ろ過量[eGFR]の50%以上の持続的低下、末期腎不全への進行、心血管死、腎不全による死亡のいずれかの発生と定義)において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある効果を示し、2型糖尿病合併の有無にかかわらずCKD患者において、すべての副次的評価項目も達成した。 なお、安全性および忍容性プロファイルは、本剤の確立された安全性プロファイルと一貫。ダパグリフロジンの概要 ダパグリフロジンは、経口1日1回投与で単剤療法および併用療法の一環として使われる、ファーストインクラスの選択的SGLT2阻害剤。成人2型糖尿病患者の食事、運動療法の補助療法としての血糖コントロールの改善を適応とし、体重減少と血圧低下の副次的作用を有している。2型糖尿病患者を対象とする“DECARE-TIMI58心血管アウトカム試験”では、標準治療への追加療法で、プラセボと比較し、心不全による入院または心血管死の複合評価項目におけるリスクを低下した。 さらに、2020年5月、ダパグロフロジンは、米国において2型糖尿病合併の有無に関わらず左室駆出率が低下した(HFrEF)、成人心不全患者(NYHA心機能分類:IIからIV)の心血管死および心不全による入院のリスク低下に対する承認を取得した。 なお、わが国で承認されているダパグロフロジンの適応症は「2型糖尿病」および「1型糖尿病」。2020年8月現在で慢性腎臓病の適応を取得している国および地域はない。 現在、心不全患者を対象とした“DELIVER試験(左室駆出率が保持された心不全:HFpEF)”および“DETERMINE試験(HFrEFおよびHFpEF)”も進行中であり、同社では、「本試験は2型糖尿病合併の有無にかかわらず、慢性腎臓病患者において生存期間の改善を含む試験開始当初の想定をはるかに上回る有効性を示した最初の試験。この結果を今後、世界の科学コミュニティや保健当局と共有してきたい」と期待を寄せている。

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COVID-19抗体検査の診断精度(解説:小金丸博氏)-1266

 COVID-19の感染拡大を制御するためには、迅速かつ精度の高い診断検査が求められる。COVID-19の診断検査には主にPCR検査、抗原検査、抗体検査があるが、今回、抗体検査の診断精度をシステマティックレビューとメタ解析により検証した研究がBMJ誌に報告された。本研究の要点は、(1)抗体検査法の感度は検査法によって差があること、(2)市販の検査キットは施設内検査(in-house assay)と比べて感度が低いこと、(3)抗体検査の感度は発症後1週間以内で低く発症後3週以上で高いこと、の3点である。ELISA法の感度は84.3%(95%信頼区間:75.6%~90.9%)、LFIA法は66.0%(同:49.3%~79.3%)、CLIA法では97.8%(同:46.2%~100%)だった。プール解析した特異度は、ELISA法が97.6%、LFIA法は96.6%であり、CLIA法はプール化に適さず評価できなかった。LFIA法の感度は他の検査法より低く、特異度に関しては大きな差は認めなかった。診断精度は検査法によって差があるため、抗体検査の結果を評価する際にはどの検査法を用いたかを考慮する必要がある。 いずれの検査法も検査キットが市販されているが、それらの感度は施設内検査に比べて低かった。とくにLFIA法は、市販キットの感度が65.0%だったのに対して市販されていない検査では88.2%であり、大きな差を認めた。これらの結果から、市販の抗体検査キットを用いたpoint-of-care test(POCT:臨床現場即時検査)は現時点では推奨できないと考察されている。 検体採取のタイミングも抗体検査の結果を左右する要因となる。発症後3週以上の感度が69.9~98.9%であったのに対して、発症から1週間以内では13.4~50.3%と低かった。抗体検査は感染急性期の診断には不向きであり、感染の既往を判定する疫学調査などに用いるのが妥当と考える。 抗体検査を含め、COVID-19を診断するための検査が急速に普及しており、今後も診断精度を検証した研究が報告されることが予想される。それぞれの検査方法のメリット、デメリットを考慮し、目的に合わせて適切な時期に適切な検査を選択することが求められる。

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第19回 COVID-19流行の拡大は小児ではなく無防備な大人が招いている?

5歳未満の幼い小児の上気道の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNA量が成人をおよそ10~100倍上回ることを示した試験結果が先週木曜日(7月30日)にJAMA Pediatrics誌に掲載されました1)。試験ではSARS-CoV-2(COVID-19)の感染しやすさは調べられていませんが、著者は幼い小児が一般集団でのCOVID-19流行に加担しうるとの懸念を示しています。しかしその懸念とは対照的に、韓国での最近の試験によると、10~19歳は成人と同様に家族に感染を広げましたが、9歳以下の幼い小児から家族への感染はよりわずかでした2)。他の報告を見ても、バーモント大学の小児感染症医師Benjamin Lee氏とWilliam Raszka氏が先月中旬のPediatrics誌3)で主張している通り、小児から他人にCOVID-19を感染させることは稀なようです。スウェーデンの16歳未満のCOVID-19感染者39人を調べたところ、感染が家族の誰よりも早かった小児はわずか3人(8%;3/39人)のみで小児から家族への感染はほとんどなかったことが示唆されました4)。小児は感染源とはいえず、感染を大人に広げるのではなく大人からより感染していたようです3)。COVID-19で入院した小児10人を調べた中国での試験では、子供から感染したと思われるのは1人のみで残りの9人は大人から感染したものでした5)。フランスでの試験では9歳のCOVID-19男児が接触したクラスメート80人超が調査され、その誰も感染しませんでした6)。オーストラリアのニューサウスウェールズ州でSARS-CoV-2に感染した学生9人と大人(職員)9人に密に接した生徒735人と大人128人を調べたところ感染は2人のみでした7)。そのどちらも大人ではなく生徒であり、1人は低学年生(primary school)で大人から感染し、もう1人は高学年生(high school)で他の学友から感染したと推定されました。それらの報告の通り、小児は恐らく感染し難く滅多に他者に感染させないことを示すデータがこれまでの半年で集まっており、感染食い止め手段を講じずに集う大人こそ流行の拡大を招いているのであって小児はCOVID-19流行の主要な媒介者ではないと上述のRaszka氏は言っています8)。参考1)Heald-Sargent TA, et al. JAMA Pediatr. 2020 July 30. [Epub ahead of print]2)Contact Tracing during Coronavirus Disease Outbreak, South Korea, 20203)Lee B, et al. Pediatrics. 2020 May 26:e2020004879. [Epub ahead of print]4)COVID-19 in Children and the Dynamics of Infection in Families5)Cai J,et al.Clin Infect Dis. 2020 Feb 28. [Epub ahead of print]6)Danis K,et al. Clin Infect Dis. 2020 Jul 28;71:825-832.7)COVID-19 in schools – the experience in NSW8)Kids Rarely Transmit Covid-19, Say UVM Docs in Top Journal / University of Vermont

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日本のがん患者のカウンセリングニーズは?1万件超の電話相談を分析

 日本のがんサバイバーらのアンメットニーズを、電話相談の主訴から、男女差を主眼に解析し、その特徴をあぶりだした神奈川県立がんセンター 臨床研究所 片山佳代子氏らの研究が、Patient Education and Counseling誌2020年5月16日に掲載された。 分析されたがん患者の電話相談は10,534件。男女別相談者別にデータのコーディングを行い、複数の関連コードをまとめ主要な19のカテゴリーを生成した。属性と生成されたカテゴリーのクロス集計を行い、語句と性別の関係をコレスポンディング分析によって可視化している。またテキストマイニング手法を使い出現頻度の高かった単語「不安」と「心配」の係受け関係となるkeywordを抽出し可視化することで男女差を浮き彫りにした。 主な結果は以下のとおり。・全相談件数のうち、約7割が女性から相談であった。・男性は胃がん(11.8%)、女性では乳がん(18.4%)の相談が多く、男女共にがんの確定診断のないものからの相談が20%を占めた。・男女に共通して多かった相談カテゴリーは「治療」(各々21.6%、31.0%)、「がんの疑い」(各25.2%)、「医療者への不信感/コミュニケーションの欠如」(20.2%、20.8%)、「手術」について(19.5%、30.2%)となった。・男性は女性と比べて検査や医療施設に関する質問や、転院相談、一般的ながん情報の収集が多く、日常生活への不安や精神的なサポートのニーズは少なかった。男性サバイバーは的確な情報を収集し、自分で解決するスタイルを好むようである。医療者への不満に対して見切りも早く、そのため転院相談が多いのではないかと関連が考えられる。・男性は精神的サポートを必要としていないのか、あってもしないのかは本研究からは不明としている。・一方女性は、広範囲な事柄について直接的な支援を求めており、心配や不安に感じる事柄が多岐に渡る。妻として夫の禁煙相談や飲酒に関する相談や、遠隔地で独居している親の相談など家族の代表としての相談も多い。こうしたことを鑑みると、地域の患者会やピアサポートを紹介することは理にかなっているようである。 筆者は、日本のがんの相談支援には性別による特有のスタイルを理解し、それに対応する必要があると述べている。ピアサポーターの養成等、相談現場での活用が望まれる。 男性の場合、一般には的確な情報を渡しつつ、一方 で 嗜癖物の乱用 がないか医療現場や相談支援者が確認すること、またがん情報の発信においても、患者視点のニーズを把握し、患者目線の情報を提供するオンラインプラットフォームが必要であると述べている。

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