腹壁ヘルニア修復術、ロボット手術は入院日数短縮せず/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2020/08/05

 

 腹壁ヘルニアの修復術では、ロボット手術と腹腔鏡手術で術後90日までの入院日数に差はなく、ロボット手術は手術時間が2倍近く長く、医療費が有意に高額であることが、米国・McGovern Medical School at UTHealthのOscar A. Olavarria氏らの検討で示された。研究の詳細は、BMJ誌2020年7月14日号に掲載された。腹壁ヘルニア修復術におけるロボット手術と腹腔鏡手術を比較した、米国のデータベースを用いた後ろ向き研究では、術後の入院期間はロボット手術で短く、臨床アウトカムに差はないと報告されている。これらの知見を裏付けるために、無作為化対照比較試験の実施が望まれていた。

入院日数を評価する実践的無作為化対照比較試験

 本研究は、米国・ヒューストン市の集学的なヘルニア専門病院が参加した実践的な二重盲検無作為化対照比較試験であり、2018年4月~2019年2月の期間に患者登録が行われた(Intuitive Surgicalから研究者主導の助成金による支援を受けた)。

 登録期間中に、連続的に受診した患者のうち、待機的な低侵襲ヘルニア修復術が適切と判定された124例を対象とした。被験者は、腹壁ヘルニア修復術としてロボット手術を受ける群(65例)または腹腔鏡手術を受ける群(59例)に無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは、術後90日までの入院日数とした。副次アウトカムには、救急診療部の受診、手術室入室時間、創部合併症、ヘルニア再発、再手術、腹壁QOL、費用が含まれた。

手術時間:141分vs.77分、費用差:2,767米ドル

 ベースラインの全体(124例)の平均年齢は49.1(SD 13.1)歳で、85例(69%)が女性であった。ヒスパニック系が77%、アフリカ系米国人が12%、白人が8%で、平均BMIは32.1、肥満者(BMI>30)が69%を占めた。腹部手術歴は81%に認められ、瘢痕ヘルニアが81%、再発例は19%だった。123例(99%)が、90日のフォローアップを完了した。

 術後90日までの入院日数(術後入院と再入院の合計)は両群とも0日であり、有意な差は認められなかった(p=0.82)。

 副次アウトカムのうち、救急診療部の受診(ロボット手術群11% vs.腹腔鏡手術群9%)、創部合併症(20% vs.19%)、ヘルニア再発(0% vs.0%)、再手術(0% vs.2%)については、両群間に有意な差はなかった。

 一方、手術室入室時間は、ロボット手術群が141(SD 56)分と、腹腔鏡手術群の77(37)分に比べ有意に長かった(平均差:62.89分、95%信頼区間[CI]:45.75~80.01、p≦0.001)。

 費用は、ロボット手術群が1万5,865米ドル(1万2,746ポンド、1万4,125ユーロ)であり、腹腔鏡手術群の1万2,955米ドルと比較して高額であった(費用比:1.21、95%CI:1.07~1.38、補正後絶対費用群間差:2,767米ドル、95%CI:910~4,626、p=0.004)。

 ロボット手術群では、術中に不注意による腸切開が2件認められたが、腹腔鏡手術群では発生しなかった。

 modified Activity Assessment Scale(mAAS、1[不良]~100[完全]点、臨床的に意義のある最小変化量[MCID]:7点)による腹壁QOLスコア(中央値)は、ベースラインから1ヵ月後までに、ロボット手術群で3点改善し、腹腔鏡手術群では15点の改善が得られた(群間差:11.00点、95%CI:-0.33~21.08、p=0.06)。

 著者は、「ロボット手術による腹壁ヘルニア修復術の広範な採用が推奨されるようになる前に、より大規模な多施設共同試験を行う必要がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)