サイト内検索|page:319

検索結果 合計:11856件 表示位置:6361 - 6380

6361.

日本におけるレビー小体型認知症の診断、治療に関する調査

 レビー小体型認知症(DLB)は、認知症患者の行動と心理症状(BPSD)を伴う進行性の認知症である。横浜市立大学の小田原 俊成氏らは、日本におけるDLB治療に関して、現在の臨床診断の状況調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2019年2月5日号の報告。 日本で認知症臨床に携わっている医師を対象に調査を行った。対象医師は、精神科医(P群)と神経内科・脳神経外科医(NS群)の2群に分けられた。DLBの診断と治療、とくにBPSD治療に関するアンケートを実施し、両群間の比較分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・P群は、NS群と比較し、バイオマーカーによる検査頻度が低く、自分自身の治療戦略を決定する頻度が高かった。・両群において、最も治療優先順位の高い症状は、幻覚もしくは妄想であった。・両群において、回答者の70%以上が、BPSDの治療に難渋していた。・非定型抗精神病薬は、P群においてより頻繁に使用されていたが、NS群でも70%の患者に使用されていた。・非定型抗精神病薬の使用が1年以上に上る患者は、3分の1を占めていた。 著者らは「本調査は、DLB患者のマネジメントをするうえで臨床医が直面する問題を浮き彫りにし、DLB患者のBPSDを効果的に治療する必要性を明らかにした」としている。■関連記事認知症のBPSDに対する治療の有効性・安全性比較~メタ解析日本における向精神薬使用とBPSDとの関連は:北大認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学

6362.

非肥満で冠動脈疾患を有する2型糖尿病の血糖管理

 非肥満者の糖尿病はインスリン抵抗性よりインスリン分泌低下による可能性が高い。それゆえ、内因性もしくは外因性のインスリン供給(IP)治療が、インスリン抵抗性改善(IS)治療よりも有効かもしれないが、最適な戦略は不明のままである。今回、国立国際医療研究センターの辻本 哲郎氏らは、非肥満で冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者の血糖コントロールについて検討したところ、IS治療のほうがIP治療より有益である可能性が示唆された。International Journal of Cardiology誌オンライン版2019年2月7日号に掲載。 著者らは、Bypass Angioplasty Revascularization Investigation in type 2 Diabetes(BARI 2D)試験データを用いて、CADを有する2型糖尿病患者におけるアウトカムイベントについて、Cox比例ハザードモデルによりハザード比(HR)と95%信頼区間(95%CI)を計算した。また、BARI 2D試験の無作為化デザインを用いて、非肥満(1,021例)および肥満(1,319例)の患者それぞれにおいてIP群とIS群を比較した。主要アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中を含む複合評価項目であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、非肥満患者231例と肥満患者295例で少なくとも1件の主要アウトカムイベントが確認された。・主要アウトカムイベントのリスクは、非肥満患者ではIS群よりIP群で有意に高かった(HR:1.30、95%CI:1.00~1.68、p=0.04)が、肥満患者では2群間に有意な差はなかった。・非肥満患者において、腹部肥満のない患者に限定しても主要アウトカムイベントのリスクはIS群よりIP群で有意に高かった(HR:1.51、95%CI:1.05~2.19、p=0.02)。・血糖コントロール戦略と非肥満患者のさまざまなサブグループとの間に有意な交互作用はみられなかった。

6363.

重症患者、気管挿管時のバッグマスク換気は有益か/NEJM

 重症成人患者の気管挿管時におけるバッグマスクを用いた陽圧換気(バッグマスク換気)の実施は、未実施の患者と比べて、酸素飽和度を上昇し高度低酸素血症の発生リスクを有意に低下することが示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJonathan D. Casey氏らが、401例の患者を対象に行った多施設共同無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年2月18日号で発表した。気管挿管中の重症成人患者における低酸素血症は最も頻度の高い合併症であり、心停止および死亡のリスクを高める可能性がある。バッグマスク換気の実施が、誤嚥リスクを増大することなく低酸素血症の予防に有効かどうかについては明らかになっていなかった。米国7ヵ所のICUで401例を対象に試験 研究グループは2017年3月15日~2018年5月6日に、米国内7ヵ所の集中治療室(ICU)を通じて、気管挿管を受ける重症患者401例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、導入から喉頭鏡検査までの間に、一方にはバッグマスク換気を行い(バッグマスク群)、もう一方には換気を行わなかった(対照群)。 主要アウトカムは、導入から気管挿管後2分間に観察された最低酸素飽和度。副次アウトカムは、酸素飽和度80%未満低下と定義した高度低酸素血症の発生率とした。高度低酸素血症発生率、バッグマスク群11%、対照群23% 登録被験者401例において、最低酸素飽和度の中央値は、バッグマスク群96%(四分位範囲:87~99)、対照群93%(同:81~99)だった(p=0.01)。 高度低酸素血症の発生率は、バッグマスク群21例(10.9%)、対照群45例(22.8%)だった(相対リスク:0.48、95%信頼区間[CI]:0.30~0.77)。 施術者の報告による挿管中に認められた誤嚥は、バッグマスク群2.5%、対照群4.0%だった(p=0.41)。気管挿管後48時間の胸部X線で認めた新たな陰影の発生率は、それぞれ16.4%、14.8%だった(p=0.73)。

6364.

第8回 呼吸の異常-1 頻呼吸の原因は?【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は呼吸の異常について取り上げたいと思います。前回お話しした救急のABCを覚えていますか?「気道(Airway)」「呼吸(Breathing)」「循環(Circulation)」でしたね。呼吸の異常に関係するAとBは、バイタルサインでいうと呼吸数です。患者さんを観察し、バイタルサインを評価することによって、気道・呼吸・循環の状態を考え、急を要するか否かを考えてみましょう。患者さんAの場合◎経過──186歳、男性。脳梗塞の既往があります。意思疎通をとることはできますが、左半身の不完全麻痺があり、ベッド上で過ごすことがほとんどです。全介助によって車いすに移乗できます。食事は、お粥と細かくきざんだ軟らかいおかずを何とか自分で食べることができますが、1か月ほど前から介助を必要とすることが多くなってきました。本日、定期の訪問日だったため、薬剤師であるあなたが患者さん宅を訪れると、「ハァハァ」と呼吸が速く、息苦しそうにしていることに気が付きました。家族(妻)から、「調子が悪そうなんですけど、お医者さんに行った方がよいでしょうか...」と相談されました。呼吸の調節さて、呼吸が速いことに気がついたあなたは、呼吸数が増加する原因を考えました。頻呼吸となる原因はいくつかあります。原因1●血液中の酸素濃度が低下、または二酸化炭素濃度が上昇したとき空気の通る気道に異常(気道異物や急性喉頭蓋炎※1など)を来したり、肺に異常(肺炎や心不全など)があると、酸素が取り込めなくなったり二酸化炭素を排出できなくなったりします。血液中の酸素濃度が低下すると、頸動脈や大動脈にある末梢化学受容器(頸動脈小体、大動脈小体)〈図1〉が刺激されます。一方、二酸化炭素濃度が上昇した時は、脳幹(延髄)にある中枢化学受容器が刺激されます。どちらも、頻呼吸となったり1回の呼吸が大きくなったりします。また、呼吸をしようとしても神経や筋の疾患(ギランバレー症候群※2や重症筋無力症、頸髄損傷など)のために、十分に胸が動かない状態でも同様です。原因2●代謝性アシドーシス腎不全などにより血液が酸性に傾いた状態を代謝性アシドーシスと言います。呼吸をすることによって、酸性の状態から正常のpHに戻そうとします。糖尿病性ケトアシドーシス※3が有名です。原因3●過換気症候群※4、ヒステリーなど精神的な問題でも呼吸が速くなります。※1 急性喉頭蓋炎細菌感染により喉頭蓋に炎症を起こす疾患。初発症状は発熱や喉の痛みだが、喉頭蓋が腫れるため気道狭窄を起こし、喘鳴や呼吸困難が現れることがある。※2 ギランバレー症候群筋肉を動かす運動神経の障害のため、手足に力が入らなくなる疾患。重症の場合には中枢神経障害性の呼吸不全が現れる。※3 糖尿病性ケトアシドーシス1型糖尿病患者ではインスリンが欠乏し、細胞は血液中からブドウ糖を取り込むことができない。そのため、脂肪酸からエネルギーを産生する。特にインスリンが絶対的に欠乏した場合(1型糖尿病発症時、インスリンの自己注射を中断した時など)は、脂肪酸代謝が亢進するためケトン体が生合成される。このケトン体により血液が酸性に傾く状態を糖尿病性ケトアシドーシスと呼ぶ。口渇、多尿、悪心・嘔吐、腹痛を引き起こし、脳浮腫、昏睡、死亡に至る場合もある。※4 過換気症候群心理的な原因により過呼吸(深く速い呼吸)となり、血液がアルカリ性に傾く。このため、眩暈、手足のしびれ、時には痙攣や意識障害が現れる。

6365.

非浸潤性乳管がん、局所治療しない場合の進行・死亡リスク

 非浸潤性乳管がん(DCIS)と診断された女性の大多数が治療を受けるため、局所治療していない女性の浸潤性乳がんへの進行および死亡リスクは不明である。今回、米国・デューク大学メディカルセンターのMarc D. Ryser氏らの研究により、局所治療を受けていないDCIS患者の浸潤がん進行リスクは限られることが示唆された。また、今回の研究コホートはDCISと診断された患者の一般集団を代表するものではないが、高齢者や併存疾患の多い患者においてとくに過剰治療の可能性があることが示唆された。Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版2019年2月13日号に掲載。 著者らは、米国国立がん研究所のSurveillance Epidemiology and End Results(SEER)Program(1992~2014)の記録で、根治切除または放射線治療を受けていないDCIS患者において、患者レベルのデータによる生存分析を行った。その後の同側浸潤がんのリスクをカプランマイヤー曲線で推定し、同側浸潤がん・対側乳がん・死亡における累積発生率を競合リスク法で推定した。 主な結果は以下のとおり。・局所治療を受けていない1,286例のDCIS患者が同定された。・診断時の年齢中央値は60歳(四分位範囲:51~74歳)、追跡期間中央値は5.5年(四分位範囲:2.3~10.6年)であった。・同側浸潤乳がんの10年リスク(net risk)は、腫瘍グレードI/IIの患者(547例)で12.2%(95%信頼区間[CI]:8.6~17.1%)、腫瘍グレードIIIの患者(244例)で17.6%(同:12.1~25.2%)、グレード不明の患者(495例)で10.1%(同:7.4~13.8%)であった。・全患者における同側浸潤がん、対側乳がん、全死亡率の10年累積発生率は、順に10.5%(95%CI:8.5~12.4%)、3.9%(同:2.6~5.2%)、24.1%(同:21.2~26.9%)であった。

6366.

インスリン治療、認知症リスクに関連か

 糖尿病は認知症の危険因子と報告されているが、糖尿病治療薬と認知症との関連についての研究は少なく結果も一貫していない。今回、インスリン、メトホルミン、スルホニル尿素(SU)類の使用と認知機能および認知症リスクとの関連について、イスラエル・ハイファ大学のGalit Weinstein氏らが5つのコホートの統合解析により検討した。その結果、インスリン使用と認知症発症リスクの増加および全般的認知機能の大きな低下との関連が示唆された。著者らは、「インスリン治療は、おそらく低血糖リスクがより高いことにより、有害な認知アウトカムの増加と関連する可能性がある」としている。PLOS ONE誌2019年2月15日号に掲載。 本研究では、フラミンガム心臓研究、ロッテルダム研究、Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究、Aging Gene-Environment Susceptibility-Reykjavik Study(AGES)およびSacramento Area Latino Study on Aging (SALSA)の5つの集団ベースのコホートの結果を統合した。各コホートにおけるインスリン、メトホルミン、SU類の使用者と非使用者との差について、認知および脳MRIを線形回帰モデルで、また認知低下および認知症/アルツハイマー病リスクを混合効果モデルおよびCox回帰分析を用いて、それぞれ評価した。結果はメタ解析手法を用いて統合され、前向き解析には糖尿病患者3,590例が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・血糖コントロール指標を含む潜在的な交絡因子を調整後、インスリン使用が、認知症発症リスクの増加(pooled HR(95%CI):1.58(1.18~2.12)、p=0.002)および全般的認知機能の大きな低下(β=−0.014±0.007、p=0.045)と関連していた。さらに腎機能を調整し、生活習慣の改善のみで治療された糖尿病患者を除いても、認知症発症との関連は変わらなかった。・インスリン使用とアルツハイマー病リスクとの間に有意な関連はみられなかった。・インスリン使用は認知機能および脳MRIに関連していなかった。・メトホルミンやSU類の使用と、脳機能および構造のアウトカムとの間に、有意な関連はみられなかった。・コホート間に有意な異質性は示されなかった。

6367.

アリピプラゾール治療と精神医学的イベントリスク

 抗精神病薬で治療されている精神疾患患者に対するアリピプラゾール初回使用に関連した潜在的な精神医学的悪化を懸念する報告がいくつかあるが、とくに長期的なアリピプラゾール使用が、重篤な精神医学的イベントリスクを増大させるかは、よくわかっていなかった。カナダ・Jewish General HospitalのFrancois Montastruc氏らは、他の抗精神病薬で治療されていた精神疾患患者に対するアリピプラゾールへの切り替えまたは追加(アリピプラゾール群)が、アリピプラゾール以外の抗精神病薬への切り替えまたは追加(非アリピプラゾール群)と比較し、重篤な精神医学的イベントと関連性が認められるかについて評価を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2019年1月30日号の報告。 2005年1月1日~2015年3月31日の期間に、集団ベースコホート研究を実施した。Hospital Episodes Statistics(HES)とOffice for National Statistics(ONS)死亡率データベースにリンクされた世界最大の電子データベースの1つである、英国Clinical Practice Research Datalink(CPRD)よりデータを収集した。抗精神病薬新規使用患者の基本コホートにおいて、傾向スコアマッチングを使用し、アリピプラゾール群と非アリピプラゾール群に1:1の割合で割り付けた。すべての患者について、精神科治療不良、コホート参加から1年、自殺以外の原因による死亡、データベースの登録終了、試験期間終了(2016年3月31日)のいずれかに至るまで、フォローアップを行った。非アリピプラゾール群と比較したアリピプラゾール群の精神科治療不良の重篤なイベント(精神医学的入院、自傷行為、自殺)のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。傾向スコアのマッチングに加えて、すべてのモデルは、年齢、コホート登録前6ヵ月間の精神医学的入院または自傷行為の件数、コホート登録前の他の抗精神病薬数、Index of Multiple Deprivationの五分位数で調整された。 主な結果は以下のとおり。・対象は、アリピプラゾール群1,643例(女性の割合:57.8%[949例]、平均年齢:42.1±16.8歳)、非アリピプラゾール群1,643例(女性の割合:53.0%[871例]、平均年齢:42.4±17.1歳)。・フォローアップ期間の2,692患者年のうち、重篤な精神科治療不良は391件であり、粗発生率は100患者年あたり14.52件(95%CI:13.16~16.04)であった。・ アリピプラゾール群は、非アリピプラゾール群と比較し、精神科治療不良率(HR:0.87、95%CI:0.71~1.06)、精神医学的入院率(HR:0.85、95%CI:0.69~1.06)、自傷行為または自殺の発生率(HR:0.96、95%CI:0.68~1.36)の増加と関連が認められなかった。・結果は、いくつかの感度分析にわたり一貫していた。 著者らは「他の抗精神病薬で治療されていた精神疾患患者に対するアリピプラゾールへの切り替えまたは追加は、アリピプラゾール以外の薬剤と比較し、精神医学的入院、自傷行為、自殺との関連は認められなかった。これらの結果は、大規模な観察研究における追試の正当性を示すものである」としている。■関連記事アリピプラゾール治療を見極めるタイミングは何週目か本当にアリピプラゾールは代謝関連有害事象が少ないのか抗精神病薬のQT延長リスク、アリピプラゾールはどうか

6368.

皮膚がんの遠隔診断、その有効性は?

 遠隔医療のもたらすさまざまな効果が期待されているが、海外では一歩進んだ検討が行われているようだ。米国・カイザーパーマネンテのS. Marwaha氏らは、皮膚病変の診断に対する遠隔皮膚診断(テレダーマトロジー)と対面診断による有効性や有用性は十分に検討されていないとして、対面診断とテレダーマトロジーによる皮膚がんの診断について後ろ向きに検討。テレダーマトロジーのほうが皮膚がん検出力の向上、生検率低下、対面診断の減少において、対面診断よりも優れている可能性が示唆された。ただし、今回の検討では、各テレダーマトロジーのワークフロー遂行力の違い、紹介を受けた医師による患者選択で、バイアスが生じた可能性があった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2019年2月1日掲載の報告。 研究グループは、対面診断2種類診断(紹介を受けた医師、非常勤の皮膚科医によるもの)と、テレダーマトロジー4種類の各ワークフローで、生検リスクおよび皮膚がんの診断について比較。プライマリケアを受診した皮膚病変を有する5万9,279例について、2017年1~6月の期間に後ろ向き研究を行った。 主な結果は以下のとおり。・1種類のテレダーマトロジーのワークフローでは、画像保管通信システムを使用して、ダーマスコープ付きデジタルカメラによる高解像度画像を大画面コンピュータモニタ(スマートフォン画面とは対照的な)に映し出して読影することができた。・同ワークフローは、紹介を受けた医師による対面診断と比較し、皮膚がん検出率が9%(95%信頼区間[CI]:2~16%)高く、生検率は4%(相対リスク[RR]:0.96、95%CI:0.93~0.99)低かった。また、対面診断のための来院は39%(RR:0.61、95%CI:0.57~0.65)減少した。・ほかのワークフローでは、有効性が乏しかった。

6369.

不安は治るのだろうか?(解説:岡村毅氏)-1010

 臨床経験のある方は十分におわかりだと思うが、不安症の人はさまざまな身体の症状を訴えてプライマリケアを受診する。したがって、精神科・心療内科のみならず、すべての科で不安な人に出会うと思っておいたほうがいいだろう。 本論文ではデュロキセチン、プレガバリン、ベンラファキシン、エスシタロプラムが優れているとされた。まずデュロキセチン、ベンラファキシン、エスシタロプラムは比較的新しく、また臨床でもよく使用されるSSRIあるいはSNRIであり、きわめて妥当な結論だろう。プレガバリンについてはオフラベルとなるためコメントは難しい。 次に、ここでは「良い」とされなかったベンゾジアゼピンとクエチアピンを振り返ってみよう。まずわが国では不安な人には圧倒的にベンゾジアゼピンが処方されてきた。本論文では、「効果は確かにあるが、依存などの有害事象があるのでダメ」とされている。ベンゾジアゼピンは認知症の危険をも増やしてしまうのではという報告もあり、悪名しかない状態であるが、脈々と処方されてきた背景は以前書いた(「悪名は無名に勝るとはいうけれど…ベンゾジアゼピンの憂鬱」)。クエチアピンとは、いわゆる「抗精神病薬」の中で最も有害事象が少ないとされるものである。とても効いたという報告があるが、当然ながら「良薬口に苦し」で、続かない方も多いようだ。 高齢者の精神医学を専門とする筆者からすれば、不安とは未来への戦慄である。それは究極的には死の恐怖であり、誰しもが持つものだ(そしてうつは過去へのとらわれだと続くわけだが、長くなるのでこの辺りでやめときます)。研究者としては「薬物で不安がなくなるわけではない」「多剤併用はこうやって生まれるのだ」「医療モデルの限界を認識せよ」という医療批判もわからなくはない。とはいえ患者さん方もそんなことは先刻承知で、「でも不安で生活が立ち行かないから、嫌だけれども病院に来たのだ」という人も多いのである。薬物治療は、必要なときには正しく行うべきであろう。抄録では最後に「つまり、全般性不安障害に対しては多様な薬物治療が選択可能なのであり、最初の薬剤でうまくいかなくても、薬物治療を諦める理由にはならない」とあるが、これはなかなか含蓄ある言葉といえる。不安と一口に言っても、さまざまな状態があるのだ。初めの薬物が効果的でなくとも、「あなたの不安は医療では何ともならないものです」と断じる前に、謙虚に次のものを検討せよということであろう。 おまけに個人的感想を…。本論文では中国のデータベース(Chinese National Knowledge InfrastructureおよびWanfang data)も対象とし、中国語を解する研究者が精査している。中国からの報告を組み入れても、排除しても解析結果に大きな変化はなく、質は悪くはないが、かの国ではプラセボではなく対照薬を用いる傾向がある、などといろいろ考察されている。世界は英語圏と中国語圏からなるのかとしみじみ思った次第である。

6370.

脊髄性筋萎縮症〔SMA:spinal muscular atrophy〕

1 疾患概要■ 概念・定義運動神経系は、脳から脊髄の上位運動ニューロンと、脊髄から筋肉の下位運動ニューロンに大別される。脊髄性筋萎縮症(SMA)では、この脊髄の運動神経細胞(脊髄前角細胞)が選択的に障害されることにより、下位運動ニューロン障害を示す疾患である。上位運動ニューロン徴候は伴わず、体幹、四肢の近位部優位の筋力低下、筋萎縮を示す1)。■ 疫学筆者らが実施した2017年の1年間における疫学調査では、有病率は総人口10万人当たり1.16、発生率は出生1万人当たり0.6であった。■ 病因SMAの原因遺伝子はSMN1(survival motor neuron 1)遺伝子であり、第5染色体長腕5q13に存在し、同領域に向反性に重複した配列のSMN2遺伝子も存在する(図)。SMN1遺伝子は両親から欠失を受け継ぎ、ホモ接合性の欠失により発症する場合が多い。SMN1遺伝子の下流にはNAIP(neuronal apoptosis inhibitory protein)遺伝子が存在する。臨床的重症度の幅は、SMNタンパク質の発現量、すなわちSMN2遺伝子がどの程度、SMNタンパク質を産生するかで説明できる。臨床像が軽症の場合、SMN1遺伝子欠失ではなく遺伝子変換によりSMN1遺伝子がSMN2遺伝子になること、すなわちSMN2遺伝子の遺伝子産物の量が多くなり、臨床症状の重症から軽症の幅の説明となっている。図 SMAの原因遺伝子(SMN1とSMN2)画像を拡大する■ 分類SMAの分類としては表に示すように、発症年齢、臨床経過に基づき、I型(OMIM#253300)、II型(OMIM#253550)、III型(OMIM#253400)、IV型(OMIM#27115)に分類される。胎児期発症の最重症型を0型と呼ぶこともある。筆者らは運動機能に基づき、I型をIa、 Ib、II型をIIa、 IIb、III型をIIIa、 IIIbにサブタイプ分類し、それぞれの亜型間で運動機能の喪失に有意差があることを示した2)。このような細分類は、薬事承認された核酸医薬品、遺伝子治療薬をはじめ、新規治療薬の長期の有効性評価に有用である。表 最高到達運動機能によるSMAの分類画像を拡大する■ 症状舌や手指の筋線維束性収縮などの脱神経の症状と近位筋優位の骨格筋の筋萎縮を伴った筋力低下の症状を示す。次に型別の症状を示す。I型:重症型、急性乳児型、ウェルドニッヒ・ホフマン(Werdnig-Hoffmann)病筋力低下が重症で全身性である。妊娠中の胎動が弱い例も存在する。発症は生後6ヵ月まで。発症後、運動発達は停止し、体幹を動かすこともできず、筋緊張低下のために体が柔らかいフロッピーインファントの状態を呈する。肋間筋に対して横隔膜の筋力が維持されているため吸気時に腹部が膨らみ胸部が陥凹する奇異呼吸を示す。支えなしに座ることができず、哺乳困難、嚥下困難、誤嚥、呼吸不全を伴う。舌の線維束性収縮がみられる。深部腱反射は消失、上肢の末梢神経の障害によって、手の尺側偏位と手首が柔らかく屈曲する形のwrist dropが認められる。人工呼吸管理を行わない場合、死亡年齢は平均6〜9ヵ月であり、2歳までに90%以上が死亡する。II型:中間型、慢性乳児型、デュボビッツ(Dubowitz)病発症は1歳6ヵ月まで。支えなしの起立、歩行ができないが、座位保持が可能である。舌の線維束性収縮や萎縮、手指の振戦がみられる。腱反射は減弱または消失。次第に側弯が著明になる。II型のうち、より重症な症例は呼吸器感染に伴って、呼吸不全を示すことがある。III型:軽症型、慢性型、クーゲルベルグ・ウェランダー(Kugelberg-Welander)病発症は1歳6ヵ月以降。自立歩行を獲得するが、次第に転びやすい、歩けない、立てないという症状が出てくる。後に、上肢の挙上も困難になる。IV型:成人発症小児期や思春期に筋力低下を示すIII型の小児は側弯を示すが、成人発症のSMA患者では側弯は生じない。それぞれの型の中でも臨床的重症度は多様であり、分布は連続性である。■ 予後I型は無治療では1歳までに呼吸筋の筋力低下による呼吸不全の症状を来す。薬物治療をせず、人工呼吸器の管理を行わない状態では、90%以上が2歳までに死亡する。II型は呼吸器感染、無気肺を繰り返す例もあり、その際の呼吸不全が予後を左右する。III型、IV型は生命的な予後は良好である。2017年のヌシネルセン(商品名:スピンラザ)の薬事承認以降、従来のSMAの予後は大きく変貌した。2020年には遺伝子補充療法オナセムノゲンアベパルボベク(同:ゾルゲンスマ)が2歳未満を適応として薬価収載された。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)上記の臨床症状からSMAを疑う。中枢神経機能障害、関節拘縮症、外眼筋、横隔膜、心筋の障害、聴覚障害、著しい顔面筋罹患、知覚障害、血清クレアチンキナーゼ値が正常上限の10倍以上、運動神経伝導速度が正常下限の70%以下、知覚神経活動電位の異常などの所見がある場合、SMAとは考えにくい。SMAにおいて、遺伝子診断は最も広く行われる非侵襲的診断方法であり、確定診断となる。末梢血リンパ球よりDNAを抽出し、SMN1遺伝子のexon 7、8の欠失の有無にて診断し、SMN2遺伝子のコピー数にて型を推定する。SMN1遺伝子のホモ接合性の欠失はI型、II型では90%以上に認められるが、III型、IV型では低く、遺伝子的多様性が考えられる。筋生検は実施されなくなっている。遺伝学的検査によって欠失・変異が同定されなかった場合に、他の疾患の可能性も考えて実施される。SMAでは、小径萎縮筋線維の大集団、群萎縮group atrophy、I型線維の肥大を示す。筋電図では高電位で幅が広いgiant spikeなどの神経原性変化を示す。SMN遺伝子を原因としないSMAにおいて、指定難病(特定疾患)の診断として筋電図が実施される。また、ヌシネルセンなどの治療・治験の有効性評価としてC-MAPが測定されることもある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)遺伝学的検査によりSMN1遺伝子の欠失または変異を有し、SMN2遺伝子のコピー数が1以上であることが確認された患者へのアンチセンスオリゴ核酸(ASO)薬であるヌシネルセン髄腔内投与3,4)の適応が認められている。乳児型では初回投与後、2週、4週、12週、以降4ヵ月ごとの投与、乳児型以外では初回投与後、4週、12週、以降6ヵ月ごとの投与である。一方、臨床所見は発現していないが遺伝学的検査によりSMAの発症が予測される場合も含み、2歳未満の患者において抗AAV9抗体が陰性であることを確認された患者への遺伝子治療薬オナセムノゲンアベパルボベク静脈内投与が認められている。これは1回投与である。これらの治療開始は、早ければ早いほど有効性も高く、早期診断・早期治療開始が重要である。ベクター製剤の投与では肝機能障害、血小板減少などの副作用が報告されている5)。投与前日からのプレドニゾロン継続投与が必須である。I型、II型では、授乳や嚥下が困難なため経管栄養が必要となる場合がある。また、呼吸器感染、無気肺を繰り返す場合は、これが予後を大きく左右する。I型のほぼ全例で、救命のためには気管内挿管、後に気管切開と人工呼吸管理が必要であったが、上記の治療により人工呼吸管理を要さない例もみられるようになった。I型、II型において、非侵襲的陽圧換気療法(=鼻マスク陽圧換気療法:NIPPV)は有効と考えられるが、小児への使用には多くの困難を伴う。また、すべての型において、筋力に合わせた運動訓練、理学療法を行う。III型、IV型では歩行可能な状態の長期間の維持や関節拘縮の予防のために、理学療法や装具の使用などの検討が必要である。小児においても上肢の筋力が弱いため、手動より電動車椅子の使用によって活動の幅が広くなる。I型やII型では胃食道逆流の治療が必要な場合もある。脊柱変形に対しては脊柱固定術が行われる場合もある。4 今後の展望核酸医薬品はRNAに作用して転写に影響を与えるため、病態修飾治療として症状が固定する前、さらには発症の前に投与することでSMAの症状の発現を抑え、軽減化もしくは無症状化する可能性がある。薬物動態の解析により、高用量による有効性が考えられ、わが国も参加して高用量投与の国際共同治験が開始されている。ヌシネルセンと同様のメカニズムを持つ低分子医薬品経口薬(risdiplam)の開発もなされ治験が実施され、有効性があったとされている。有効性が証明されれば、投与経路が経口であることから負担が軽減するという点でも期待される。アデノ随伴ウイルス(AAV9)をベクターとする遺伝子治療は、疾患の原因であるSMN1遺伝子を静脈注射1回にて投与するもので、第II、第III相試験において乳児への有効性の報告がなされ6)2歳未満を適応として保険収載された。発症前または発症後のできるだけ早期の1回投与で永続的な有効性を示すとされ、次世代のSMA治療といえる。SMAの今後の治療・発症予防としては、遺伝学的解析による新生児スクリーニングを行い、SMN1遺伝子の両アレル性の遺伝子変異を示した例に対する治療により発症抑制を行うことが必要である。これらの治療法の進歩に伴い、SMAの有効性評価の判定にはバイオマーカーの開発が重要である。SMAの有効性評価は、運動機能評価により行われるが、SMAでは年齢や型や運動機能の幅が広く均一の評価法がない。そのために、長期間の有効性を数値などで示すことができない。そこで、均一な評価としてバイオマーカーが必須であると考え、筆者らはイメージングフローサイトメトリーによる血液細胞中のSMNタンパク質量測定を考案した。長期にわたるSMA治療の有効性の指標として有用であると考えている7)。5 主たる診療科小児期発症の場合は神経小児科、15歳以上は脳神経内科が担当する。遺伝学的検査、遺伝カウンセリングは遺伝子診療部が担当する。筆者らの所属する「ゲノム診療科」では、確定診断、出生前診断などの遺伝学的検査とともに、診断・治療・療育などのコンサルトにも対応している。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 脊髄性筋萎縮症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:SMAは国の指定難病、特定疾患に認定されている。厚生労働省補助事業として、行政・福祉・助成制度をはじめとしたさまざまな情報が掲載されている)SMARTコンソーシアム (患者登録システム)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:筆者らの運営しているSMARTコンソーシアムは治療を目指す患者登録システム。実績として登録者による治験実施や新規治療の進歩があった)神経変性疾患領域における基盤的調査研究班(研究代表者:中島健二氏) 脊髄性筋萎縮症(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報SMA(脊髄性筋萎縮症)家族の会(患者とその家族および支援者の会:1999年に設立。ホームページにおける情報提供や定期的な会合など活動を行っている)1)SMA診療マニュアル編集委員会(代表 齋藤加代子)編. 脊髄性筋萎縮症診療マニュアル 第1版. 金芳堂;2012.p.1-5.2)Kaneko K, et al. Brain Dev. 2017;39:763-773.3)Finkel RS, et al. N Engl J Med. 2017;377:1723-1732.4)Mercuri E, et al. N Engl J Med. 2018;378:625-635.5)Waldrop MA, et al. Pediatrics. 2020;146:e20200729.6)Mendell JR, et al. N Engl J Med. 2017;377:1713-1722.7)Otsuki N, et al. PLoS One. 2018;13:e0201764.公開履歴初回2019年2月26日更新2021年2月2日

6371.

日本人の雇用形態と教育水準、LDL-Cに関連

 食事によるコレステロール摂取と血清コレステロールにおける良好な関係は、最近の一連のコホート研究によって疑問視されている。滋賀医科大学アジア疫学研究センターの岡見 雪子氏らは横断研究(INTERLIPID)を実施し、日本人における雇用形態と教育年数が、食事によるコレステロール摂取と血清低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)濃度との関係に、どのように関連するかを調査した。その結果、被雇用者ではなく教育水準の低い男性で、食事によるコレステロール摂取量の増加が血清LDL-C濃度の上昇と関連していた。また、雇用されている男性、教育水準の高い男性では逆相関が見られたことが明らかになった。Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌2019年2月1日号掲載の報告。 本研究では、40〜59歳の日本人1,145人のうち、106人(特別食、脂質異常症などの治療薬を使用、ホルモン補充療法の実施、およびデータ不足のため除外)を除く1,039人(男性:533人、女性:506人)を対象とした。食物からのコレステロール摂取は4回の24時間思い出し法(24HR)で評価、血清LDL-Cは酵素的分析法によって自動分析装置で測定した。アンケートでは、雇用形態と教育年数について回答を得た。 主な結果は以下の通り。・男性では、食事によるコレステロール摂取の1標準偏差(SD)上昇は、血清LDL-C濃度3.16mg/dL低下と関連していた(P=0.009;調整前モデル)。・共変量で調整後、血清LDL-Cは、被雇用者ではない男性(自営業者、専業主夫、農家、漁師、および定年退職者)、教育水準の低い男性では、コレステロール摂取量の1SD上昇ごとに、血清LDL-C濃度の上昇が認められた(β:+9.08[95%信頼区間【CI】:+0.90~+17.27]、β:+4.46[−0.97~+9.90])。これに対し、雇用されている男性、教育水準の高い男性では逆相関がみられた(β:−3.02[−5.49~−0.54]、β:−3.66[−6.25~−1.07])。■参考INTERRIPD

6372.

日本人学生のスマートフォン使用とうつ病リスク

 椙山女学園大学の西田 友子氏らは、高校生の男女ごとのスマートフォン使用とうつ病との関連性について評価を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2019年1月26日号の報告。 日本の15~19歳の高校生295人を対象に、自己管理質問票を用いて、横断的研究を実施した。うつ病は、CES-Dうつ病自己評価尺度を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・女性は、男性と比較し、1日のスマートフォン使用時間が長かった。・スマートフォン使用時間が1日3時間であった割合は、女性で44.3%、男性で22.5%であった。・女性では、オンラインチャット、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、インターネット閲覧に長時間費やしていた。・長時間のオンラインチャット(オッズ比:1.74、95%CI:1.18~2.56)およびSNS(オッズ比:1.41、95%CI:1.04~1.92)使用は、うつ病との関連が認められた。・男性は、女性と比較し、ゲームに多くの時間を費やしていた。・男性では、スマートフォン使用とうつ病との関連は認められなかった。 著者らは「スマートフォン使用には性差があり、女性ではソーシャルコンタクト、男性では娯楽のためにより多くの時間を費やす傾向が認められた。女性がオンラインコミュニケーションを使い過ぎると、うつ病リスクが高まる可能性が示唆された」としている。■関連記事スマホ依存症になりやすい性格タイプ女子学生の摂食障害への有効な対処法日本人小中学生のインターネット利用とうつ病や健康関連QOLとの関連

6373.

要するにLAD(解説:今中和人氏)-1008

 本邦の初回冠動脈バイパス術の在院死亡率は1%台で安定し、PCIなど他の治療との比較にしても、オフポンプ手術にしても、グラフト素材にしても、論点はもっぱら長期予後である。本論文は、英国を中心とする28施設での冠動脈バイパス3,102例を、内胸動脈を1本(片側)使うか2本(両側)使うかでランダム化した前向き試験の10年報告である。バイパスは平均3本で、内胸動脈はいずれも左冠動脈系に吻合された。検討項目は全死因死亡、心臓死、心筋梗塞、脳卒中、再血行再建、周術期の出血と創感染である。 2016年の5年報告*では差がつかなかったが、内胸動脈の真価は10年成績で発揮されるはず。今度こそ「両側内胸動脈は予後が良い」と証明されるとの期待のもと、“intention to treat”で解析すると、両群とも全死因死亡20%(心臓死は6%)、心筋梗塞5%弱、再血行再建10%で、5年報告同様にまったく差がなかった(創感染は両側群が3.5%と有意に多い)。 想定外だったためか、5年報告より随分掘り下げた議論が展開されている。 まず問題視されたのは、これは5年報告でも多少触れているが、クロスオーバー、つまり両側群の14%、約7例に1例が実際には内胸動脈を1本しか使っておらず(逆のクロスオーバーは2%台)、ランダム化が正しく機能しなくて術式同士の比較になっていないことである。 ところが、クロスオーバー症例を除いた“per-protocol”で比較しても、両群の予後はまったく同等だったのだ。大方の予測とも従来の観察研究とも真っ向から食い違う結果である。 そこで“as-treated”として示されたのが、橈骨動脈(RA)を内胸動脈と同等に扱ったデータ。両群とも約20%でRAを使用しているので、RAを使った症例は内胸動脈が1本でも2本でも動脈多用群とし、内胸動脈1本+静脈の症例と比較した。大いにbiasがありそうな、この“as-treated”の患者背景はわりと良くそろっており、予後も両群とも心筋梗塞や再血行再建はまったく差がなく、全死因死亡のみ有意差がついた(HR=0.81)。心臓死は明示されていない。わからなくもない群分けだが、RAについては内胸動脈に匹敵する成績の論文から静脈といいとこ勝負の論文まで幅広いので、同等扱いには違和感が残る。この件ではROMAという臨床研究が進行中だそうである。 ともかく当初の論点に戻ると、内胸動脈が片側でも両側でも冠動脈バイパスの10年予後に有意差はなかった。いろいろと考えさせてくれる論文である。 1つは冠動脈バイパスの良好な長期成績。術後も適切な内服加療を維持することで、1年以内の死亡(ほぼ心血管死であろう)2%程度を引くと、10年で心臓死が4%、再血行再建10%というのは、平均年齢63歳程度(白人が90%以上)、糖尿76%、心筋梗塞既往40%の患者群の予後として十分満足できると思われる。 もう1つは、今回は複数の観察研究と見解が異なるし、造影をしていない以上、推測の域を出ないが、10年経過して静脈グラフトはそれなりに閉塞しているはずでも、臨床的には差がなかったということは、要するにLADさえしっかり流れていれば、それ以外はあまりこだわっても仕方がないことを示唆している。とくに高齢者では、そうであろうと思われる。少なくともLADへのバイパスの質に影響しうるcompositeやsequential吻合は、できるだけ避けたほうが良いかもしれない。

6374.

重度の精神疾患患者における脂質異常症と抗精神病薬に関するメタ解析

 重度の精神疾患患者は、抗精神病薬の悪影響に関連している可能性のある代謝系の問題への罹患率やそれに伴う死亡率の上昇を来す。第2世代抗精神病薬(SGA)は、第1世代抗精神病薬(FGA)と比較し、脂質代謝異常とより関連が強いと考えられているが、このことに対するエビデンスは、システマティックレビューされていなかった。英国・East London NHS Foundation TrustのKurt Buhagiar氏らは、重度の精神疾患患者における脂質異常症リスクについて、SGAとFGAの評価を行った。Clinical Drug Investigation誌オンライン版2019年1月24日号の報告。 主要な電子データベースより2018年11月までの研究を検索した。対象研究は、重度の精神疾患患者に対するSGAとFGAを直接比較し、脂質代謝異常を主要アウトカムまたは第2次アウトカムとして評価した横断研究、コホート研究、症例対照研究、介入研究のいずれかとした。エビデンスは、PRISMA(システマティックレビューおよびメタ解析のための優先的報告項目)ガイドラインに従ってレビュー、評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・18件の研究が抽出された。・SGAとFGAにおける脂質異常症の報告は矛盾しており、研究間のばらつきが大きく、完全な定性的合成のみが実行可能であった。・クロザピン、オランザピン、リスペリドンについては、限られたメタ解析を実施するに十分なデータがあった。各薬剤ともに、FGAと比較し、脂質異常症の事例性(caseness)との関連が少し高かったが、異質性の高さが認められた(すべてI2>50%、p<0.05)。 ●クロザピン(オッズ比:1.26、95%信頼区間[CI]:1.16~1.38) ●オランザピン(オッズ比:1.29、95%CI:0.89~1.87) ●リスペリドン(オッズ比:1.05、95%CI:0.80~1.37)・クロザピンは、トリグリセリド増加とも関連が認められたが(標準平均差:0.51、95%CI:0.21~0.81、I2>=5.74%)、コレステロールとの関連は認められなかった。・オランザピンとリスペリドンは、ハロペリドールと比較し、コレステロールまたはトリグリセリドの統計学的に有意な増加との関連が認められなかった。 著者らは「研究デザインや方法論には、かなりの違いが認められた。抗精神病薬による脂質代謝異常への影響におけるSGAとFGAの相対リスクを決定するには、薬剤ごとにさまざまな悪影響を引き起こす可能性があるため、臨床的に明らかにすることは難しい可能性がある。したがって、SGAかFGAかの焦点を当てるよりも、特定の抗精神病薬の脂質代謝リスクを考慮することが重要である」としている。■関連記事非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か抗精神病薬、日本人の脂質異常症リスク比較:PMDA統合失調症治療に用いられる抗精神病薬12種における代謝系副作用の分析

6375.

性差の記述、生物医学研究で依然少ない/Lancet

 臨床医学や公衆衛生学では性差関連報告を含む論文が増えているが、生物医学研究の分野では依然として少なく、筆頭および最終著者が女性の論文は性差関連の記述を含む確率が高いことが、米国・インディアナ大学のCassidy R. Sugimoto氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2019年2月9日号に掲載された。性差は、遺伝学、細胞学、生化学、生理学的なレベルで存在することが、臨床および前臨床研究で示されているが、医学研究の対象への女性の組み入れは不十分とする多くの調査結果がある。医学研究への組み入れの男女間の格差は、その研究結果の、集団全体における効用性を著しく低下させる。一方、女性研究者の不足も指摘されているが、科学における女性の不足が、研究への組み入れや研究報告における男女格差と関連するかを評価した調査はほとんどないという。性差関連報告の推移、その著者のジェンダーとの関係性を検討 研究グループは、生物医学研究から臨床医学、さらに公衆衛生学に及ぶ健康科学全般の論文において、性差に関連する報告(sex-related reporting)はどの程度行われているか、および性差関連報告において著者のジェンダーはどのような役割を担っているかについて、学際的な計量書誌学的解析を行った(Canada Research Chairsの助成による)。 1980~2016年の期間にWeb of ScienceとPubMedにインデックスが作成された1,150万件以上の論文を調査した。特定の性差関連のMedical Subject Headings(MeSH)を含む研究を抽出するためのキーワードとして、“sex-related reporting”を使用した。 さらに、2008~16年に発表された論文について、ジェンダー割り当てアルゴリズムを用い、筆頭著者および最終著者のジェンダーを、その氏名に基づいて割り当てた。筆頭著者および最終著者のいずれかのジェンダーが決定できない論文は除外した。論文は3つの専門分野(生物医学研究、臨床医学、公衆衛生学)に分類された。 記述統計および回帰分析を用いて、著者のジェンダーと性差関連報告の関係性を評価した。インパクトファクターの低い学術雑誌への掲載が多い 1980年1月1日~2016年12月31日の期間に、性差に関連する記述を含む論文は、臨床医学では59%から67%に、公衆衛生学では36%から69%に増加した。これに対し、生物医学研究では大幅に少ないままであり、2016年でも31%だった。 性差関連報告が最も多い専門分野は、生殖医学(97%)、産婦人科学(96%)、泌尿器科学(83%)であり、最も少ないのは血液学(49%)、免疫学(42%)、薬学(24%)などの細胞や生化学に重点的に取り組む臨床医学の分野であった。 筆頭著者または最終著者が女性であることと、性差関連報告には正の相関がみられ、いずれの著者も女性の論文は性差の記述の確率が最も高く、オッズ比(OR)は1.26(95%信頼区間[CI]:1.24~1.27)であった。著者数も性差の記述と関連し、著者が2倍になると性差関連報告のORは1.96(1.94〜1.97)となった。 また、性差関連の記述のある論文は記述のない論文に比べ、インパクトファクターの低い学術雑誌に掲載される傾向が強かった。たとえば、2016年の出版物では、女性と男性の双方の記述がある論文は、掲載された学術雑誌のインパクトファクターが-0.51(95%CI:-0.54~-0.47)と低かった。 著者は、「科学の現場におけるジェンダー格差や、学術雑誌および組織レベルの性差関連報告に関する施策の欠如は、基礎研究から臨床研究への効率的な橋渡し(translation)を阻害する可能性がある」とし、「厳格かつ有効性の高い医学研究を生み出すには、科学の現場および研究対象集団(細胞株からげっ歯類、そしてヒトまで)における多様性がきわめて重要である」と指摘している。

6376.

ニボルマブ・イピリムマブ併用療法、去勢抵抗性前立腺がんに奏効を示す(CheckMate-650)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、2019年2月14日、転移のある去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者におけるニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法を評価した第II相CheckMate-650試験の中間解析データを発表した。 CheckMate-650試験は、mCRPC患者を対象に、ニボルマブ・イピリムマブ併用療法の安全性と有効性を評価する進行中の非盲検第II相臨床試験。試験は2つのコホートで構成されている。コホート1は、化学療法による治療歴がなく、第2世代ホルモン療法による治療後に病勢進行した無症候性または症候がほとんどない患者。コホート2はタキサン系抗がん剤による化学療法後に病勢進行した患者。患者は、ニボルマブ1mg/kgおよびイピリムマブ3mg/kgを計4回投与され、その後、ニボルマブ480mgを4週間ごとに投与された。主要評価項目は、奏効率(ORR)および画像診断による無増悪生存期間など。 中央値11.9ヵ月の追跡期間において、コホート1の患者32例のORRは25%であった。 また、中央値13.5ヵ月の追跡期間において、コホート2の患者30例のORRは10%であった。両コホートにおいて、腫瘍遺伝子変異量が高レベル(中央値以上)の患者や相同組換え修復異常の患者など、特定の患者のサブグループでより高いORRが示された。 全体的な安全性プロファイルは、これまでに報告されているニボルマブ・イピリムマブ併用療法の同じ投与スケジュールの試験と一貫していた。Grade3~5の治療関連有害事象は、コホート1の患者群の42%、コホート2の患者群の53%で発現した。 データは、2019年米国臨床腫瘍学会、泌尿器がんシンポジウムにおいて発表されている。

6377.

揚げ物フェチの死亡リスクは上昇する可能性高い?(解説:島田俊夫氏)-1009

 私達は生きるために、食物を摂取することによりエネルギーを獲得している。ところが、現代社会では、昔と異なり自宅で食事をする習慣が希薄になり、外食産業への依存が増していることは明らかな事実である。なかでも揚げ物は、調理の簡便性や嗜好の視点から好まれる傾向がある。とくにファストフードの普及で、フライドチキン、フライドポテト1)らが、世界中の多くの国々において、日々の生活の中で愛用されている。このような食生活環境の変化の中で、揚げ物、とくにフライドチキンや魚介類フライの摂取量増加が死亡リスク高めている可能性を、米国・アイオワ大学のYangbo Sun氏らが、閉経後女性を対象とした大規模前向きコホート研究(Women’s Health Initiative:WHI)のデータ解析結果から明らかにし、揚げ物による深刻な死亡率への影響を2019年1月23日のBMJ誌に報告した。この論文に関して私的見解をコメントする。研究要約 全米40ヵ所の臨床施設で、1993年9月~1998年9月にかけWHIに登録された50~79歳の女性10万6,966例を対象として、2017年2月まで追跡調査が行われた。自己記入式食事調査に基づき、揚げ物摂取と死亡リスクの関連性、揚げ物の種類と健康被害の大きさ、揚げ物がなぜ死亡率上昇につながるのかを調査・検証した。結果 揚げ物をまったく食べない人は、揚げ物を食べる人に比べ、多変量調整ハザード比(HR)は全病因死亡率で1.08(95%信頼区間[CI]:1.01~1.16)、心血管死亡率で1.08(95%CI:0.96~1.22)と有意であった。 フライドチキンを1週間に1食分以上食べる人のHRは全病因死亡率で1.13(95%CI:1.07~1.19)、心血管死亡率で1.12(95%CI:1.02~1.23)と有意であった。魚介類揚げ物のHRは全病因死亡率で1.07(95%CI:1.03~1.12)、心血管死亡率で1.13(95%CI:1.04~1.22)と有意であったが、がん死亡率上昇に関しては、揚げ物の総摂取量・種類別摂取量ともに関連性を認めなかった。コメント 揚げ物が全病因死亡率、心血管死亡率を増加させるとの報告は、大きな反響を社会に及ぼす可能性がある。本研究のみでは、揚げ物と死亡率の上昇の因果関係を解明することは難しいが、報告を深刻に受け止め、外食では揚げ物の摂取は極力控えることが現段階での予防策として好ましいと考える。揚げ物に使う油の使いまわしによる油質の劣化(酸化)・変性を引き起こすこと、およびサクサクした食感を出すために好んで使用されているトランス脂肪酸の添加が、このような事態に深く関与している可能性が推測される。家庭での新鮮な油の使用で同様の結果が起こるか否かは疑問で、さらなる検証が必要である。即断するのではなく、今のところは古い油や油の使いまわしを避け、油種吟味および揚げ物を食べる機会を減らす配慮が必要と考える。疑わしきは回避することが保身につながると考える。揚げ物過剰摂取の健康被害への警鐘と受け止めるべきメッセージではないか。しかしながら、異なる結果報告もあり、結論を出すには時期尚早かもしれない2)。

6378.

統合失調症患者におけるプラセボ効果~RCT複合分析

 慶應義塾大学の久保 馨彦氏らは、統合失調症患者におけるプラセボ効果を予測するため、プラセボ反応患者の特徴を調査し、プラセボによる早期改善の最適基準について探索を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌2019年2月号の報告。 抗精神病薬の二重盲検試験9件において、プラセボ群にランダム化された統合失調症患者672例のデータを分析した。6週目のプラセボ効果(PANSSスコア25%以上低下)と年齢、性別、学歴、ベースライン時のPANSS合計スコアまたはMarder 5項目スコア、1週目のPANSSスコア減少率との関連を調査するため、多重ロジスティック回帰分析を行った。また、プラセボ効果に対する1週目改善の予測力を調査した。 主な結果は以下のとおり。・1週目のPANSS合計スコアの減少率およびベースライン時のMarder思考解体スコアの低さは、その後のプラセボ効果と有意な関連が認められた。・1週目のPANSS合計スコアにおいて、プロトコルごとの分析における10%減少またはLOCF分析における15%の減少が、最も高い予測力を示した。 著者らは「これらの知見は、統合失調症患者を対象とした試験デザインを最適化するために、早期に潜在的なプラセボ反応患者を識別するうえで有益である」としている。■関連記事抗うつ薬の臨床試験におけるプラセボ効果に関する解析うつ病のプラセボ効果、そのメカニズムとは抗てんかん薬のプラセボ効果、東アジアと欧米で地域差

6379.

ニボルマブ・低用量イピリムマブ併用、腎細胞がんで継続的な生存ベネフィット示す(CheckMate-214)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、2019年2月14日、第III相CheckMate-214試験の最新の結果を発表した。同データでは、未治療の進行または転移のある腎細胞がん(RCC)患者において、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)と低用量イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法が、引き続き長期生存ベネフィットを示した。 CheckMate-214試験は、未治療の進行または転移のあるRCC患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法をスニチニブと比較評価した無作為化非盲検試験。併用療法群の患者は、ニボルマブ3mg/kgおよびイピリムマブ1mg/kgを3週間間隔で計4回投与され、その後ニボルマブ3mg/kgを2週間間隔で投与された。対照群の患者は、スニチニブ50mg/日を4週間投与後2週間休薬を病勢進行または忍容できない毒性が認められるまで継続した。試験の主要評価項目は、中~高リスク患者における全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、および奏効率(ORR)。 最短30ヵ月の追跡調査において、ニボルマブ・低用量イピリムマブ併用療法群に無作為に割り付けられた中~高リスクの患者は、スニチニブ群と比較して、引き続き有意なOSの延長を示した。また、30ヵ月時点で、ニボルマブ・低用量イピリムマブ併用療法を受けた中~高リスクの患者における治験担当医によるORRは、最短17.5ヵ月時点での前回の解析結果と比較して、改善が示された。・OS:中~高リスクの患者の30ヵ月生存率は、ニボルマブ・低用量イピリムマブ併用療法群で60%、スニチニブ群では47%であった(HR:0.66、95%CI:0.54~0.80、p<0.0001)。・ORR:ニボルマブ・低用量イピリムマブ併用療法群で42%、スニチニブ群で29%であった(p=0.0001)。・完全奏効(CR)率:ニボルマブ・低用量イピリムマブ併用療法群で11%、スニチニブ群で1%であった。 ニボルマブ・低用量イピリムマブ併用療法を受けたIntention-To-Treat(ITT、すべて無作為化)集団においても同様の結果が示され、有意な改善が認められた。・OS:ITT集団の30ヵ月生存率は、ニボルマブ・低用量イピリムマブ併用療法群で64%、スニチニブ群では56%であった(HR:0.71、95%CI:0.59~0.86、p=0.0003)。・ORR:ニボルマブ・低用量イピリムマブ併用療法群で41%、スニチニブ群で34%であった(p=0.015)。・CR率:ニボルマブ・低用量イピリムマブ併用療法群で11%、スニチニブ群で2%であった。 併用療法の全体的な安全性は、最短17.5ヵ月の追跡調査の解析結果および両剤のRCC患者におけるこれまでに報告された試験と一貫しており、長期の追跡調査でも新たな安全性シグナルや薬剤に関連する死亡例は発生しなかった。 データは、2019年米国臨床腫瘍学会、泌尿器がんシンポジウムにおいて発表されている。■関連記事進行性腎細胞がんの1次治療、ニボルマブとイピリムマブ併用が有効/NEJM

6380.

早期乳がん術後化療、dose-intenseが有益/Lancet

 早期乳がんの術後化学療法において、治療サイクル間隔の短縮、あるいは同時投与ではなく逐次投与により用量強度を高めるレジメンは、他の原因による死亡を増加させることなく、乳がんの10年再発リスクおよび死亡リスクを低下させうることが、英国・オックスフォード大学のEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)らの検討で明らかとなった。治療サイクルの間隔短縮や低用量の同時投与よりも、むしろ十分量の逐次投与による細胞傷害性化学療法の用量強度の増強は、有効性を高めるのではないかと考えられていた。Lancet誌オンライン版2019年2月7日号掲載の報告。早期乳がん女性患者3万7,298例、患者レベルでのメタ解析を実施 研究グループは、早期乳がんにおける用量強化(dose-intense)化学療法と標準スケジュール化学療法の相対的な利点とリスクを検証する目的で、2週ごと投与vs.3週ごと投与、およびアントラサイクリン系とタキサン系の逐次投与vs.同時投与の比較試験について、患者レベルでのメタ解析を実施した。 主要評価項目は、再発と乳がん死で、年齢、リンパ節転移状態および試験で層別化した標準intention-to-treat log-rank解析により、dose-intense療法と標準スケジュール療法の初回イベント率(RR)を算出した。 特定された33試験のうち26試験から個々の患者データが提供され、無作為化された4万70例のうち3万7,298例(93%)がメタ解析に組み込まれた。大半の女性が70歳未満、リンパ節転移陽性で、抗悪性腫瘍薬の総使用量は2群で類似していた。コロニー刺激因子はdose-intense療法でより多く用いられていた。dose-intense療法で、乳がん10年再発/死亡リスクが約10~15%低下 26試験全体では、乳がん再発率はdose-intense療法群が標準スケジュール療法群より低かった(10年再発リスク:28.0% vs.31.4%、RR:0.86、95%信頼区間[CI]:0.82~0.89、p<0.0001)。10年乳がん死亡率(18.9% vs.21.3%、RR:0.87、95%CI:0.83~0.92、p<0.0001)、および全死因死亡率(22.1% vs.24.8%、RR:0.87、95%CI:0.83~0.91、p<0.0001)も同様であった。再発のない死亡も、dose-intense療法群で減少が認められた(10年リスク:4.1% vs.4.6%、RR:0.88、95%CI:0.78~0.99、p=0.034)。 2週ごと投与と3週ごと投与を比較した7試験(1万4例)では、2週ごと投与で再発率が低下した(10年リスク:24.0% vs.28.3%、RR:0.83、95%CI:0.76~0.91、p<0.0001)。アントラサイクリン系とタキサン系の逐次投与と同時投与を比較した6試験(1万1,028例)では逐次投与で再発率が低く(10年リスク:28.1% vs.31.3%、RR:0.87、95%CI:0.80~0.94、p=0.0006)、投与間隔短縮と逐次投与を比較した6試験(6,532例)でも投与間隔短縮で再発率が低かった(10年リスク:30.4% vs.35.0%、RR:0.82、95%CI:0.74~0.90、p<0.0001)。 dose-intense療法における再発率低下は、エストロゲン受容体陽性および陰性患者のいずれにおいても顕著で(p<0.0001)、他の患者特性や腫瘍特性で有意差は確認されなかった。

検索結果 合計:11856件 表示位置:6361 - 6380