性差の記述、生物医学研究で依然少ない/Lancet

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 臨床医学や公衆衛生学では性差関連報告を含む論文が増えているが、生物医学研究の分野では依然として少なく、筆頭および最終著者が女性の論文は性差関連の記述を含む確率が高いことが、米国・インディアナ大学のCassidy R. Sugimoto氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2019年2月9日号に掲載された。性差は、遺伝学、細胞学、生化学、生理学的なレベルで存在することが、臨床および前臨床研究で示されているが、医学研究の対象への女性の組み入れは不十分とする多くの調査結果がある。医学研究への組み入れの男女間の格差は、その研究結果の、集団全体における効用性を著しく低下させる。一方、女性研究者の不足も指摘されているが、科学における女性の不足が、研究への組み入れや研究報告における男女格差と関連するかを評価した調査はほとんどないという。

性差関連報告の推移、その著者のジェンダーとの関係性を検討
 研究グループは、生物医学研究から臨床医学、さらに公衆衛生学に及ぶ健康科学全般の論文において、性差に関連する報告(sex-related reporting)はどの程度行われているか、および性差関連報告において著者のジェンダーはどのような役割を担っているかについて、学際的な計量書誌学的解析を行った(Canada Research Chairsの助成による)。

 1980~2016年の期間にWeb of ScienceとPubMedにインデックスが作成された1,150万件以上の論文を調査した。特定の性差関連のMedical Subject Headings(MeSH)を含む研究を抽出するためのキーワードとして、“sex-related reporting”を使用した。

 さらに、2008~16年に発表された論文について、ジェンダー割り当てアルゴリズムを用い、筆頭著者および最終著者のジェンダーを、その氏名に基づいて割り当てた。筆頭著者および最終著者のいずれかのジェンダーが決定できない論文は除外した。論文は3つの専門分野(生物医学研究、臨床医学、公衆衛生学)に分類された。

 記述統計および回帰分析を用いて、著者のジェンダーと性差関連報告の関係性を評価した。

インパクトファクターの低い学術雑誌への掲載が多い
 1980年1月1日~2016年12月31日の期間に、性差に関連する記述を含む論文は、臨床医学では59%から67%に、公衆衛生学では36%から69%に増加した。これに対し、生物医学研究では大幅に少ないままであり、2016年でも31%だった。

 性差関連報告が最も多い専門分野は、生殖医学(97%)、産婦人科学(96%)、泌尿器科学(83%)であり、最も少ないのは血液学(49%)、免疫学(42%)、薬学(24%)などの細胞や生化学に重点的に取り組む臨床医学の分野であった。

 筆頭著者または最終著者が女性であることと、性差関連報告には正の相関がみられ、いずれの著者も女性の論文は性差の記述の確率が最も高く、オッズ比(OR)は1.26(95%信頼区間[CI]:1.24~1.27)であった。著者数も性差の記述と関連し、著者が2倍になると性差関連報告のORは1.96(1.94〜1.97)となった。

 また、性差関連の記述のある論文は記述のない論文に比べ、インパクトファクターの低い学術雑誌に掲載される傾向が強かった。たとえば、2016年の出版物では、女性と男性の双方の記述がある論文は、掲載された学術雑誌のインパクトファクターが-0.51(95%CI:-0.54~-0.47)と低かった。

 著者は、「科学の現場におけるジェンダー格差や、学術雑誌および組織レベルの性差関連報告に関する施策の欠如は、基礎研究から臨床研究への効率的な橋渡し(translation)を阻害する可能性がある」とし、「厳格かつ有効性の高い医学研究を生み出すには、科学の現場および研究対象集団(細胞株からげっ歯類、そしてヒトまで)における多様性がきわめて重要である」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

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女性研究者は性差に関する論文を多く書いていた(解説:折笠秀樹氏)-1018

コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

富山大学大学院医学薬学研究部バイオ統計学・ 臨床疫学 教授

J-CLEAR評議員

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