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アトピー性皮膚炎、FLG変異に人種差

 アトピー性皮膚炎(AD)とフィラグリン遺伝子(FLG)変異との関連について、米国・ペンシルベニア大学のDavid J. Margolis氏らは、軽症~中等症アトピー性皮膚炎児のコホートにおいて、FLG機能欠損(LoF)変異は人種による顕著な違いがみられること、そしてそれがADの持続と関連していることを明らかにした。ADとFLG変異の関連に関しては4つの変異が最もよく評価に使われている。今回の結果を踏まえて著者は、「従来の4つの変異を調べるだけでは不十分である。ADについてFLG LoF変異に基づく遺伝子診断テストを計画する場合は包括的に行うべきであり、最もよく試験されている変異に依存すべきではない」と指摘している。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年7月31日号掲載の報告。 研究グループは、アフリカ系とヨーロッパ系の小児におけるFLG LoF変異を包括的に詳述し、ターゲットシーケンスの結果を比較するとともに、それらの変異とADの持続との関連を調べる前向きコホート試験を行った。Pediatric Eczema Elective Registry(PEER)を用いてサブコホートの遺伝子を評価し、軽症~中等症のAD児が解析に包含された。Massively parallel sequencing(MPS)を用いて、白人種およびアフリカ系アメリカンの小児のFLG LoF変異に着目した。2005年6月~2017年7月に患者登録し、データは2019年1月25日~5月10日に解析された。主要評価項目は、FLG LoF変異と白人種およびアフリカ系アメリカンとの関連性、有するリスク、ADの持続とした。 主な結果は以下のとおり。・計741例の小児が解析に包含された。女児394例(53.2%)、男児347例(46.8%)、発症時の平均(SD)年齢は1.97(2.72)歳であった。・包含対象のうち、白人種394例(53.2%)、アフリカ系アメリカン326例(44.0%)、その他21例(2.8%)であった。・MPSにより、AD児と関連する23個のFLG LoF変異が見つかった。・全コホートにおいて、FLG LoF変異の保有児は177例(23.9%)であり、124例が白人種(白人種に占める割合31.5%)、50例がアフリカ系アメリカン(同15.3%)であった。・アフリカ系アメリカン小児と比較した白人種小児におけるあらゆるFLG LoF変異の保有オッズ比(OR)は、2.44(95%信頼区間[CI]:1.76~3.39)であった。・数種のFLG LoF変異が人種に特有のものとして見つかった(たとえば、p.S3316*とp.R826*は、白人種では認められなかった)。・FLG LoF変異保有児は、持続するADを有する傾向が認められた(OR:0.67、95%CI:0.56~0.80)。

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チャーグ・ストラウス症候群〔CSS : Churg-Strauss syndrome〕(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)

1 疾患概要■ 概念・定義チャーグ・ストラウス症候群(以下CSS)は、1951年にJacob ChurgとLotte Straussの2人の病理学者が提唱した疾患概念で、(1)気管支喘息、(2)発熱、(3)好酸球増加、および(4)特徴的な血管病理所見の4つを基本とした疾患である。特徴的な血管病理所見とは、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa: PAN)にみられるフィブリノイド壊死と、血管壁および血管外結合組織における血管周囲の好酸球浸潤および類上皮細胞と巨細胞からなる血管外肉芽腫の2つである。とくに好酸球浸潤と肉芽腫の存在により、PANとは独立した疾患とされた。その後、Chapel Hill Consensus Conferenceで、(1)気道における好酸球を多数認める肉芽腫性炎症所見、(2)小・中型血管の壊死性血管炎、(3)喘息と好酸球増多症の3項目がCSSの定義として記載された。すなわちCSSの疾患概念は、1)気管支喘息2)好酸球増加3)病理所見(血管壁への好酸球浸潤と血管外肉芽腫)の3つを有する疾患といえる。2012年に血管炎の分類が見直され、CSSはeosinophilic granulomatosis with polyangiits(EGPA)とされ、和訳では「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」とよばれることに決まった。なお、日本ではアレルギー性肉芽腫性血管炎(allergic granulomatous angiitis)という名称も使用されてきたが、今後はEGPAに統一されていくと思われる。■ 疫学英国での疫学調査で、100万人あたり1~2人程度といわれてきた。わが国では2008年に実施された全国調査でその実態が明らかとなり、年間新規患者数は約100例、受療患者数は約1,900例と推定されている。男女比は1:1.7程度で女性にやや多く、発症年齢は30~60歳に好発し、平均55歳であった。■ 病因家族内発症はほとんどないことから、遺伝的要因はほとんどないと考えられる。環境要因として、気管支喘息患者でロイコトリエン拮抗薬(leukotriene antagonist:LTA)の服用者に多いことが指摘され、LTAそのものに対するアレルギー、LTA併用によるステロイドの減量の影響、などが発症要因としていわれてきた。しかし、わが国で2008年に実施された全国調査では、LTAの服用率は約35%に過ぎず、因果関係は不明である。抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)が約40~50%の症例に検出されることから、この抗体が本症の病態に関与していると考えられる。しかし、ANCAの有無からCSSの臨床的特徴を検討した研究によると、ANCA陽性例では腎病変と末梢神経病変および組織学的に血管炎が証明された率が高く、陰性例では心病変が多かった。したがって、臓器への“好酸球浸潤”による病変と、“血管炎”による病変の2種類の病態があり、ANCA陽性群は“血管炎”が優勢、ANCA陰性例は“好酸球浸潤”が主な病態であると推察される。ただし、後者は特発性好酸球増多症候群(hypereosinophilic syndrome:HES)症例と鑑別が必要である。■ 症状臨床症状では、気管支喘息と多発性単神経炎が90%以上の症例でみられ圧倒的に高頻度である。そのほか、発熱、体重減少、筋痛、関節痛、紫斑が30%以上の症例にみられた。頻度は低いが腹痛・消化管出血(胃・腸の潰瘍)・消化管穿孔などの消化器病変、脳出血・脳硬塞、心筋梗塞・心外膜炎などの病変もみられる。検査所見では好酸球増加、白血球増加、IgE高値が90%以上にみられ、MPO-ANCAは約半数で陽性である。■ 分類CSSの中で、とくに病型の分類などはない。■ 予後約80%の症例は、適切な治療によって寛解ないし治癒するが、約20%の症例では、脳出血・脳硬塞や心筋梗塞・心外膜炎、腸穿孔、視力障害、腎不全を生じることがある。生命予後は一般に良好であるが、末梢神経障害が長年後遺症として残ることがある。また、一度寛解・治癒しても、再燃・再発を来すことがあるが、その頻度は少ない(10%以下と推定される)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)CSSは、他の血管炎、とくに顕微鏡的多発血管炎と多発血管炎性肉芽腫症(旧 ウェゲナー肉芽腫症)との鑑別が重要であり、わが国では1998年の厚生労働省の分類基準(表1)によって診断されている。しかし、国際的にはLanhamらの分類基準(表2)と米国リウマチ学会(ACR)の分類基準(表3)が使われている。最近、Wattsらによる全身性血管炎の分類アルゴリズムが提唱され、CSSはLanhamまたはACRの分類基準のいずれかを満たすものとされている。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)一般的にはステロイドで、初期治療ではプレドニゾロン(商品名:プレドニンほか)30~60 mg/日(大半が40mg/日以上)が使用され、その後症状に合わせて漸減される。脳・心臓・腸に病変を有する場合は、免疫抑制薬であるシクロホスファミド(同:エンドキサン)(内服:50~100mg/日、点滴静注:500~1,000mg/月)などを併用する。後遺症として末梢神経障害が高頻度にみられるが、これに対して高用量ガンマグロブリン療法が保険適用で使用される。2018年5月にIL-5抗体メポリズマブ(同:ヌーカラ)が承認され、上記の既存薬で効果不十分なEGPAに適用となった。4 今後の展望治療としてはステロイド療法が依然主体であるが、ステロイドの副作用を回避するため、抗IL-5抗体(メポリズマブなど)に加えて、将来は、IL-5受容体抗体(ベンラリズマブ)や抗IgE抗体(オマリズマブ)、抗CD20抗体(リツキシマブ)などの分子標的療法も試みられている。今後、原因究明のための基礎研究や疫学的研究、後遺症として残存する末梢神経障害に対する治療なども検討課題である。5 主たる診療科膠原病内科、アレルギー科、呼吸器内科、神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)難病情報センター 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2013年03月21日更新2019年08月27日

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ベンゾジアゼピンや抗コリン薬の使用と認知症発症との関連

 ベンゾジアゼピンや抗コリン薬の使用と認知症リスクの関連について、オランダ・アムステルダム大学のMelanie Hafdi氏らが、プロスペクティブコホート研究を行った。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2019年7月9日号の報告。 対象は、オランダの家庭医療116施設より募集された認知症でない70~78歳の高齢者3,526人。薬剤使用に関する情報は、ベースラインおよび2年間のフォローアップ期間中に報告され、対象者の電子カルテと照合した。抗コリン薬の曝露は、抗コリン作動性認知負荷尺度(anticholinergic cognitive burden score)により定義した。対象者は、2年ごとのフォローアップ中に認知症について評価され、電子カルテや死亡記録から情報を補填した。長期の抗コリン薬の曝露は認知症リスクとの関連が認められた ベンゾジアゼピンや抗コリン薬と認知症リスクの主な研究結果は以下のとおり。・フォローアップ期間の中央値6.7年間で、認知症を発症した高齢者は233人(7%)であった。・認知症発症率は、ベンゾジアゼピン使用者で6%、非使用者で7%であった(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~1.07)。・ベースラインおよび2年間のフォローアップ後のベンゾジアゼピン継続使用でも、ポイント推定値は実質的に変わらなかった(HR:0.60、95%CI:0.34~1.10)。・抗コリン薬使用と認知症発症率に関連は認められなかった(HR:1.01、95%CI:0.50~1.10)。・抗コリン作動性認知負荷尺度のスコアが高い抗コリン薬の継続使用者は、認知症リスクが有意に増加していたが(HR:1.95、95%CI:1.13~3.38)、抗うつ薬または抗精神病薬の使用者を除外すると、その差は認められなかった(HR:0.42、95%CI:0.06~3.01)。 著者らは「ベンゾジアゼピンの使用は、認知症リスク増加と関連が認められなかった。継続的な長期の抗コリン薬の曝露は、6年間のフォローアップ期間を通じて、認知症リスクとの関連が認められたが、この関連は、抗うつ薬または抗精神病薬の使用によって促進され、これに寄与するバイアスが示唆された。医療者は、ベンゾジアゼピンと抗コリン薬の潜在的なベネフィットと、関連する健康アウトカムへの影響を慎重に比較検討し、処方を改善することが求められる」としている。■「抗コリン薬と認知症」関連記事抗コリン薬、認知症発症と強く関連/BMJ

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大気汚染物質への長期曝露と肺気腫の関連は?/JAMA

 オゾン(O3)やPM2.5などの大気汚染物質への長期曝露と肺気腫増大の関連が定量的に明らかにされた。米国・ワシントン大学のMeng Wang氏らが2000~18年にかけて米国内6都市部で行ったコホート研究の結果で、JAMA誌2019年8月13日号で発表した。歴史的には、大気汚染物質は心血管および呼吸器疾患と関連することが示されているが、当代の大気汚染物質への曝露が肺気腫と関連しているかは明らかになっていなかった。米国6都市で約7,000例を追跡し肺気腫率の変化を調査 本検討で研究グループは、O3、PM2.5、窒素酸化物(NOx)、ブラックカーボンへの曝露と肺気腫率の変化の長期関連を調べることを目的とした。肺気腫の評価は、CT画像診断と肺機能検査に基づいた。 米国6都市(ウィンストン・セーラム、ニューヨーク、ボルティモア、セントポール、シカゴ、ロサンゼルス)で行われたMulti-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)Air and Lung Studiesの被験者を包含してコホート試験を実施。対象者は、2000年7月~2002年8月に集められた45~84歳の成人6,814例と、その後に追加された2005年2月~2007年5月に集められた257例が含まれた。最終フォローアップは2018年11月。 コホート特異的モニタリングが組み込まれている検証された空時間的モデルを用いて、居住地に特異的な大気汚染物質(O3、PM2.5、NOx、ブラックカーボン)を算出し、1999年からフォローアップ終了までの間測定した。 主要評価項目は、肺気腫率(Hounsfield単位-950未満の肺ピクセルパーセンテージで定義)。被験者は2000~07年に心臓CTスキャン評価を、2010~18年に同一領域の肺CTスキャンの評価を最高5回受けた。また、2004~2018年に肺機能検査を最高3回受けた。肺気腫率、10年間で平均0.58ポイント上昇 被験者計7,071例(補充時の平均年齢60歳[範囲:45~84]、男性3,330例[47.1%])において、5,780例がベースライン調査時~フォローアップ期間中の大気汚染物質曝露の評価を受け、少なくとも1回のフォローアップCTスキャンを受けた。また、2,772例が少なくとも1回の肺機能検査を受けた。フォローアップ期間の中央値は10年であった。 肺気腫率中央値はベースラインでは3%であったが、10年間で平均0.58ポイント上昇した。 フォローアップ期間中、PM2.5とNOxの平均環境濃度は一貫して低下したが(O3については認められなかった)、ベースラインのO3、PM2.5、NOx、ブラックカーボンの環境濃度と、10年間での肺気腫率上昇との有意な関連が認められた。O3は0.13/3ppb(95%信頼区間[CI]:0.03~0.24)、PM2.5は0.11/2μg/m3(95%CI:0.03~0.19)、NOxは0.06/10ppb(95%CI:0.01~0.12)、ブラックカーボンは0.10/0.2μg/m3(95%CI:0.01~0.18)であった。 フォローアップ期間中のO3とNOxの環境濃度は、肺気腫率上昇と有意に関連した。PM2.5については認められなかった。 ベースラインとフォローアップ期間中のO3の環境濃度は、10年間での1秒量の低下と有意に関連していた。ベースラインでは13.41mL/3ppb(95%CI:0.7~26.1)、フォローアップ中は同18.15mL/3ppb(1.59~34.71)であった。

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ビタミンD補給、がん死リスクを低下/BMJ

 成人におけるビタミンD補給は、プラセボまたは非補給と比較して、全死因死亡の低下とは関連しないが、がん死リスクを16%低下することが示された。中国・Affiliated Hospital of Chengdu UniversityのYu Zhang氏らが、無作為化試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。これまでの観察研究で、低用量のビタミンDはがんや心血管疾患といった命に関わる疾患による死亡の増大と関連することが示されていた。一方で、ビタミンD補給による死亡の減少効果に関する臨床データには一貫性がなかった。BMJ誌2019年8月12日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析で検証 研究グループは、成人においてビタミンD補給が死亡率低下と関連しているかについて、無作為化試験のシステマティックレビューとメタ解析で検証した。Medline、Embase、Cochrane Central Registerの創刊~2018年12月26日までを検索し、ビタミンD補給とプラセボまたは非補給を比較し死亡について検証した無作為化試験を包含した。独立的にデータを抽出し、試験の質を評価した。メタ解析は、固定効果モデルとランダム効果モデルを用いて、ビタミンD補給を受けている群と対照群で死亡リスク比を算出して評価した。主要評価項目は、全死因死亡であった。全死因死亡との関連はみられず 検索により、52試験・7万5,454例が特定された。包含した試験は、追跡期間中央値1.2年(IQR:0.8~3)、追跡期間3年以上14試験(5万6,429例)、女性被験者中央値71%(IQR:42~100)、被験者年齢中央値74歳(IQR:65~80)、試験地が欧州29試験(3万2,954例)、アメリカ10試験(3万1,230例)、アジア太平洋11試験(4万2,316例)などで、ベースラインの25ヒドロキシビタミンD値は、25~50nmol/Lが最も多く49試験(4万2,161例)、次いで50~75nmol/Lが30試験(1万7,410例)、<25nmol/Lが5試験(290例)、>75nmol/Lが2試験(165例)であった。 全死因死亡は8,033例で、心血管死1,331例、がん死877例、1,045例が非心血管死・非がん死であった。 ビタミンD補給は、全死因死亡と関連していなかった(リスク比[RR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.95~1.02、I2=0%)。心血管死(RR:0.98、95%CI:0.88~1.08、I2=0%)との関連もみられず、非心血管死・非がん死とも関連は認められなかった(1.05、0.93~1.18、0%)。 一方で、ビタミンD補給は、がん死リスクを統計学的に有意に低下させた(RR:0.84、95%CI:0.74~0.95、I2=0%)。 サブグループ解析において、ビタミンD3補給もD2補給も全死因死亡の統計学的に有意な低下と関連しなかったが、ビタミンD3補給試験群ではビタミンD2補給試験群よりも全死因死亡の有意な低下が認められた(相互作用のp=0.04)。 結果を踏まえて著者は、「さらに大規模な臨床試験で、ビタミンD3補給が全死因死亡を低下するかについて確認する必要がある」とまとめている。

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IL-23p19阻害薬グセルクマブ、中等症~重症の乾癬に有効/Lancet

 中等症~重症の乾癬の治療において、インターロイキン(IL)-23p19阻害薬グセルクマブはIL-17A阻害薬セクキヌマブに比べ、約1年の長期的な症状の改善効果が良好であることが、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのKristian Reich氏らが行ったECLIPSE試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月8日号に掲載された。乾癬治療薬の臨床試験では、最長でも12週または16週という短期的な有効性の評価に重点が置かれてきたが、乾癬は慢性疾患であるため、長期的なエンドポイントの評価が求められていた。2剤を直接比較する無作為化第III相試験 本研究は、グセルクマブとセクキヌマブを直接比較する二重盲検無作為化第III相試験であり、2017年4月27日~2018年9月20日の期間に、9ヵ国(オーストラリア、カナダ、チェコ、フランス、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、スペイン、米国)の142施設で実施された(Janssen Research & Developmentの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、中等症~重症の局面型皮疹を有する乾癬と診断され、光線療法または全身療法の適応とされた患者であった。中等症~重症は、乾癬面積重症度指数(Psoriasis Area and Severity Index:PASI、0~72、点数が高いほど重症)≧12、医師による全般的評価(Investigator's Global Assessment:IGA)≧3、6ヵ月以上持続するbody surface area involvement(BSA)≧10%と定義された。 被験者は、グセルクマブ(100mg、0、4週、その後は8週ごと)またはセクキヌマブ(300mg、0、1、2、3、4週、その後は4週ごと)を皮下投与する群に無作為に割り付けられ、44週の治療が行われた。フォローアップは56週まで実施された。 主要エンドポイントは、intention-to-treat集団における48週時のベースラインから90%以上のPASIの改善(PASI 90)の達成割合とした。副次エンドポイントは、12週および48週時のPASI 75、12週時のPASI 90、12週時のPASI 75、48週時のPASI 100、48週時のIGAスコア0(皮膚病変なし)、48週時のIGAスコア0または1(軽度)の達成割合であった。安全性の評価は、0~56週に1回以上の投与を受けた患者で行った。48週時PASI 90達成割合 84% vs.70%、12/48週時PASI 75達成割合は非劣性 1,048例が登録され、グセルクマブ群に534例、セクキヌマブ群には514例が割り付けられた。全体の年齢中央値は46.0歳(IQR:36.0~55.0)、女性が33%含まれた。平均罹患期間は18.4(SD 12.4)年、平均BSAは24.1(13.7)%、IGAは3(中等度)が76%、4(重度)が24%、PASIは平均値20.0(7.5)、中央値18.0(15.1~22.3)であった。 48週時のPASI 90達成割合は、グセルクマブ群が84%(451例)と、セクキヌマブ群の70%(360例)に比べ有意に優れた(差:14.2ポイント、95%信頼区間[CI]:9.2~19.2、p<0.0001)。 主要な副次エンドポイントである12週および48週時のPASI 75の達成割合は、グセルクマブ群のセクキヌマブ群に対する非劣性(マージンは10ポイント)が確認された(85%[452例] vs.80%[412例]、p<0.0001)が、優越性は認めなかった(p=0.0616)。 そのため、他の副次エンドポイントの統計学的な検定は実施されなかった(12週時のPASI 90はグセルクマブ群69% vs.セクキヌマブ群76%、12週時のPASI 75は89% vs.92%、48週時のPASI 100は58% vs.48%、48週時のIGAスコア0は62% vs.50%、48週時のIGAスコア0または1は85% vs.75%)。 全Gradeの有害事象(グセルクマブ群78% vs.セクキヌマブ群82%)、重篤な有害事象(6% vs.7%)、感染症(59% vs.65%)の頻度は両群でほぼ同等であった。頻度の高い有害事象として、鼻咽頭炎(22% vs.24%)と上気道炎(16% vs.18%)がみられた。活動性の結核や日和見感染は認めなかった。セクキヌマブ群でクローン病が3例報告された。 著者は「これらの知見は、乾癬治療の生物学的製剤の選択において、医療従事者の意思決定に役立つ可能性がある」としている。

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内側に限局する膝OAに対してはTKRよりPKRが望ましい?― TOPKAT試験より(解説:小林秀氏)-1106

 内側型の末期変形性膝関節症(膝OA)に対する人工膝関節置換手術は、TKR(total knee replacement:全置換)とPKR(partial knee replacement:単顆置換[unicompartmental knee replacement]として知られる)の2種類に大別できる。TKRの多くは十字靭帯を切除し骨切除量も多くなるが、PKRでは内側コンパートメントのみを置換するため十字靭帯も温存でき骨切除量も少なく、早期回復が可能となる。TKRは古くから行われ、安定した長期成績が報告されているが、一方で患者満足度は約80%程度とされており、人工股関節手術に比べ術後満足度が低いことが知られている。近年PKRは、手術手技が改善され、侵襲の少なさから高い術後満足度が期待され普及しつつあるが、一方で手術適応(どこまでの変形に対して適応となるか)、長期成績、合併症の問題も懸念されるためか、施設によってはまったく施行されていないという現状がある。TKRとPKRの術後成績の比較は、適応のばらつきが大きく、確固たるエビデンスがほとんど示されていなかったため、今回のTotal or Partial Knee Arthroplasty Trial(TOPKAT)試験は多施設共同無作為化比較試験であり、これらの疑問に答える大変興味深い試験となった。 結果は術後5年後のオックスフォード膝スコア(Oxford Knee Score:OKS)で有意な差はなかったが、PKRがTKRに比べ、わずかにアウトカムが良好であった。過去の報告ではPKRは再置換率が高いとされていたが、本試験においては再置換率については両群間で差がなく、合併症についてはPKRよりもTKRのほうが多いという結果であった。また費用対効果の分析でも、PKRがTKRよりも5年の追跡期間中の効果が高く、医療費が削減されたことがわかった。 以上から、PKRの適応となる内側型の末期膝OAに対してはPKRが第1選択になるという結論が得られたことは妥当な結果と考えられた。前提として手術手技をしっかりと行うことが重要なことは言うまでもないが、今後の課題としては、どこまでの変形に対してPKRを行うべきか、併発する外側コンパートメントや膝蓋大腿関節の変形をどこまで許容するか、というPKRの適応の限界を知ることが重要となるだろう。

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青年期双極性障害患者のメタボリックシンドローム有病率

 メタボリックシンドローム(MetS)の有病率は増加しており、中年期の双極性障害におけるMetSが重要な臨床的相関を示すことが報告されているにもかかわらず、青年期および若年成人におけるこの問題に関してはよくわかっていない。カナダ・トロント大学のChristine Li氏らは、青年期の双極性障害患者のMetSについて、COBY(Course and Outcome of Bipolar Youth)研究を実施し、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2019年7月30日号の報告。 2000~06年にCOBY研究に登録された青年期および若年成人の双極性障害患者162例(平均年齢:20.8±3.7歳、年齢範囲:13.6~28.3歳)を対象に、横断的レトロスペクティブ研究を実施した。MetSの定義には国際糖尿病連合の基準を用い、測定値(血圧、ブドウ糖、HDLコレステロール、トリグリセライド、胴囲)を単一時点で収集した。気分、併存疾患およびMetS評価の6ヵ月前の治療は、Longitudinal Interval Follow-Up Evaluationを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・MetS有病率は、19.8%(32例)であった。・最も一般的なMetS基準は、低HDLコレステロール(56.5%)、腹部肥満(46.9%)であった。・MetSは、COBY研究登録時のライフタイム全体機能の低さと関連が認められた(オッズ比[OR]:0.97、p=0.06)。・MetSは、過去6ヵ月間のうつ症状(OR:1.07、p=0.02)や抗うつ薬使用(OR:1.06、p=0.001)の割合と有意な関連が認められた。・躁症状や抗うつ薬以外の薬物療法との関連は認められなかった。 著者らは「青年期双極性障害患者のMetS有病率は、一般集団の2倍以上であった。さらに、MetSはうつ症状の増加と関連していた。青年期双極性障害患者のマネジメントでは、MetSリスク因子の是正に焦点を当てた治療戦略を検討する必要がある」としている。

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妊娠による子宮内膜がんリスク低下、中絶でも/BMJ

 妊娠が受胎後早期で終了しても40週(正期産)で終了しても、子宮内膜がんのリスクは顕著に減少することが明らかにされた。人工妊娠中絶で妊娠終了に至った場合と出産で妊娠が終了した場合とで、リスク低下との関連性は類似しており、妊娠による子宮内膜がんのリスク低下は妊娠初期に生じる生物学的なプロセスによって説明できる可能性も示唆されたという。デンマーク・Statens Serum InstitutのAnders Husby氏らが、デンマークの女性を対象とした全国コホート研究の結果を報告した。生涯の出産数は子宮内膜がんのリスク低下と関連があり、妊娠により抑制された月経周期数が保護的に作用することが示唆されていたが、妊孕性や妊娠累積期間、妊娠中のある特定時期に生じる過程がこの保護作用を強めるかどうかは不明であった。BMJ誌2019年8月14日号掲載の報告。デンマーク女性約231万例、妊娠約395万件について解析 研究グループは、1935~2002年の期間に生まれたすべてのデンマークの女性を対象に、Danish National Registry of Induced Abortions(人工妊娠中絶登録)、Medical Birth Registry(出生登録)、Danish Cancer Registry(がん登録)のデータを用いて全国コホート研究を実施した。 主要評価項目は、妊娠回数、種類(人工妊娠中絶または出産)、妊娠期間別の子宮内膜がん相対リスク(発生率比)で、対数線形ポアソン回帰モデルを用いて推定した。 解析対象は、デンマーク女性231万1,332例で、妊娠は計394万7,650件であった。人工妊娠中絶、出産にかかわらず、子宮内膜がんのリスクは低下 追跡期間5,734万7,622人年において、子宮内膜がんが6,743例に認められた。年齢、期間、社会経済的要因について補正した後、初回妊娠の終了が人工妊娠中絶(補正後相対リスク[aRR]:0.53、95%信頼区間[CI]:0.45~0.64)であるか、出産(aRR:0.66、95%CI:0.61~0.72)であるかにかかわらず、子宮内膜がんリスクの顕著な低下が示された。2回目以降の妊娠でも、人工妊娠中絶(aRR:0.81、95%CI:0.77~0.86)、出産(aRR:0.86、95%CI:0.84~0.89)を問わず、さらなるリスクの低下が認められた。 妊娠期間、妊娠時の年齢、自然流産、肥満、出生コホート、妊孕力、社会経済的要因により結果が変わることはなかった。 なお本研究について著者は、子宮内膜がんのリスク低下と関連が示唆されている経口避妊薬の使用歴に関するデータがないことなどを挙げて、結果は限定的だと述べている。

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大腸手術前のMOABPは有益か/Lancet

 大腸手術において、機械的腸管前処置と経口抗菌薬の併用による腸管前処置(MOABP)は、腸管前処置なし(NBP)と比較して、手術部位感染(SSI)や術後合併症は低下しないことが示された。フィンランド・ヘルシンキ大学のLaura Koskenvuo氏らが、現在推奨されているMOABPの日常的な使用について検証した前向き多施設共同無作為化単盲検並行群間試験「Mechanical and oral antibiotic bowel preparation versus no bowel preparation for elective colectomy:MOBILE試験」の結果を報告した。これまで行われたいくつかの大規模後ろ向き研究において、MOABPによりNBPと比較しSSIと術後合併症が減少することが報告されている。米国ではそれらのデータに基づいてMOABPの実施が推奨されているが、著者は今回の結果を受けて、「結腸切除術でSSIや合併症を減らすために、MOABPを推奨することは再考されるべきであると提案したい」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年8月8日号掲載の報告。前向き無作為化試験でMOABPとNBPを比較 研究グループは、フィンランドの病院4施設にて結腸切除術を受ける患者をMOABP群またはNBP群のいずれかに、施設で層別化し1対1の割合で無作為に割り付けた。治験募集担当者、担当医、執刀医、データ収集者および分析者は、治療の割り付けに関して盲検化された。また、緊急手術、腸閉塞、手術中に大腸内視鏡の使用が予定されている患者、ポリエチレングリコール・ネオマイシン・メトロニダゾールに対するアレルギーを有する患者、18歳未満および96歳以上の患者は除外された。 治験コーディネーターの看護師が患者の割り付けに関する封筒を開封し、割り付けに従って患者に指示を出し、MOABP群の患者には、術前日の午後6時前にポリエチレングリコール2Lと清澄水(脂肪や果肉などを含まない水やお茶など)1Lを飲んでもらい、午後7時に経口ネオマイシン2gを、午後11時に経口メトロニダゾール2gを服用してもらった。 主要評価項目は、術後30日以内のSSIで、修正intention-to-treat集団(無作為割り付けされ、吻合を伴う待機的結腸切除術を受けた全患者)を対象として解析するとともに、安全性についても評価した。手術部位感染症や合併症の発生は、MOABPとNBPで有意差を認めず 2016年3月17日~2018年8月20日の期間に417例が無作為割り付けされた(MOABP群209例、NBP群208例)。このうち、MOABP群13例とNBP群8例が手術前に除外され、修正intention-to-treat集団は396例(MOABP群196例、NBP群200例)である。 SSIは、MOABP群で13例(7%)、NBP群で21例(11%)に確認され(オッズ比:1.65、95%信頼区間[CI]:0.80~3.40、p=0.17)、吻合部離開はMOABP群で7例(4%)、NBP群で8例(4%)報告された。 再手術を要した症例は、MOABP群16例(8%)、NBP群13例(7%)であった。術後30日以内の死亡はNBP群で2例認められ、MOABP群では確認されなかった。 なお、著者は検出力不足であったこと、処置の特性上、盲検化が困難であったこと、吻合部離開はCT検査ではなく臨床所見や症状に基づいた評価であったことなどを挙げて、試験結果は限定的だとしている。

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short DAPTとlong DAPTの新しいメタ解析:この議論、いつまで続けるの?(解説:中野明彦氏)-1105

【はじめに】 PCI(ステント留置)後の適正DAPT期間の議論が、まだ、続いている。 ステントを留置することで高まる局所の血栓性や五月雨式に生じる他部位での血栓性イベントと、強力な抗血小板状態で危険に晒される全身の出血リスクの分水嶺を、ある程度のsafety marginをとって見極める作業である。幾多のランダム化試験やメタ解析によって改定され続けた世界の最新の見解は「2017 ESC ガイドライン」1)に集約されている。そのkey messageは、・安定型狭心症は1~6ヵ月、ACSでは12ヵ月間のDAPTを基本とするが、その延長は虚血/出血リスクにより個別的に検討されるべきである(DAPT score・PRECISE DAPT score)。・ステントの種類(BMS/DES)は考慮しない。・DAPTのアスピリンの相方として、安定型狭心症ではクロピドグレル、ACSではチカグレロル>プラスグレルが推奨される。 一方本邦のガイドラインは、安定型狭心症で6ヵ月、ACSでは6~12ヵ月間を標準治療とし、long DAPTには否定的である。 言うまでもないが、DAPTの直接の目的はステント血栓症予防である。ステント血栓症の原因は複合的で、病態(ACS vs.安定型狭心症)のほかにも、患者因子(抗血小板薬への反応性・糖尿病・慢性腎臓病・左室収縮能など)、病変因子(血管径・病変長・分岐部病変など)、ステントの種類(BMS、第1世代DES、第2世代以降のDES)、さらには手技的因子(stent underexpansion、malappositionなど)が関連すると報告されている。そしてステント血栓症は留置からの期間によって主たるメカニズムが異なり、頻度も変わる2)。1年以降(VLST:Very Late Stent Thrombosis)の発生頻度は1%をはるかに下回り、in-stent neoatherosclerosisが主役となる。またVLSTの数倍も他病変からのspontaneous MIが発症するといわれている。こうした点がDAPTの個別的対応の背景であろう。【本メタ解析について】 ステント留置後のadverse eventは時代とともに減少し、したがって数千例規模のRCT でもsmall sample sizeがlimitationになってしまう。これを補完すべく2014年頃からRCTのメタ解析が年2~3本のペースで誌上に登場してきた。本文はその最新版で、これまでで最多の17-RCT(n=46,864)を解析した。DAPTはアスピリン+クロピドグレルに限定し、単剤抗血小板療法(SAPT)はアスピリンである。従来の「short DAPT=12ヵ月以内」を細分化して「short(3~6ヵ月)」と「standard(12ヵ月)」に分離、これを「long(>12ヵ月)」と比較する3アーム方式で議論を進めている。 その結論・主張は、(1)総死亡・心臓死・脳卒中・net adverse clinical eventsはDAPT期間で差がない(2)long DAPTはshort DAPTに比して非心臓死や大出血を増やす(だからlong DAPTは極力避けたほうがいい)(3)short DAPTとstandard DAPTではACSであってもステント血栓症や心筋梗塞に差がない(だからshort DAPTでいい) などである。しかし一方、long DAPTの超遅発性ステント血栓症・心筋梗塞抑制効果についてはほとんど触れられておらず、short DAPTに肩入れしている印象を受ける。筆者が、おそらく虚血患者に接する機会が少ないであろう臨床薬理学センター所属のためだろうか? 本メタ解析の構図は「DAPTに関するACC/AHA systematic review report(2017)」3)に似ていて、これに2016年以降発表されたRCTを中心に6報加えて議論を展開している。long DAPTほど血栓性イベント抑制に勝り出血性合併症が増える結論は同じだが、ACC/AHA reportはテーラーメードを意識してかリスクによる選択の余地を強調している。 さらにいくつか気になる点がある。評者もご多分に漏れず統計音痴なので、その指摘は的を射ていないかもしれないけれど、できれば本文をダウンロードしてご意見をいただきたい。 たとえば、MIやステント血栓症はlong DAPTで有意に抑制しているのに心臓死はshort DAPTで少ない傾向にあったこと。あるいは非心臓死(有意差あり)・心臓死のOdd Ratioが共に総死亡より大きかったこと。これらは各エンドポイントが試験により含まれたり含まれなかったりしていたためらしい。 また、たとえば各試験でのevent ratioが大きく異なること。同じshort vs.standard DAPTの試験でも12ヵ月MI発症率が0%(IVUS-XPL)~3.9%(I-LOVE-IT2)と幅がある。調べてみるとperiprocedural MIを含めるかどうかなど、そもそも定義が異なるようである。 そして、例えばランダム化の時期である。short vs.standardのほとんどがPCI前後に振り分けているのに対し、standard vs.longはすべてで急性期イベントが終了した12ヵ月後に振り分けランドマーク解析している。これでもshort vs.longの図式が成り立つのだろうか?【まとめ】 DAPT有用性の議論はあのゴツイPalmaz-Schatz stentから始まった。第1世代DESも確かに分厚かった。しかし技術の粋を集め1年以内のステント血栓症が大幅に減少した現時点において、short DAPTにシフトするのは異論がないところであろう。とりわけcoronary imagingを駆使してoptimal stentingを目指すことができる本邦においては、なおさらである。しかし一方、心筋梗塞二次予防に特化したメタ解析4)では、long DAPTが致死性出血や非心臓死を増やすことなく心臓死やMI・脳卒中を有意に抑制した、との結果だった。 ステント血栓症が減ったからこそ、二次予防に抗血小板薬(DAPT)をどう活かすかという視点も必要であろう。解析の精度はさておき「short term DAPT could be considered for most patients after PCI with DES」と結論付けたSAPT(アスピリン)vs.DAPT(アスピリン+クロピドグレル)の議論はそろそろ終わりにしても良いのではないだろうか。 現在はアスピリンの代わりにクロピドグレルやP2Y12 receptor inhibitor(チカグレロル)によるSAPT、少量DOACの有効性も検討されて、PCI後の抗血栓療法は新しい時代に入ろうとしている。 木ばかりでなく森を見るようにしたいと思う。

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第27回 本当に高プリン体食は痛風の敵なのか【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 高尿酸血症や痛風の患者さんで、アルコールや肉・魚の内臓などプリン体を多く含む食品の摂取を制限されている方は多いと思います。プリン体は最終的に尿酸に代謝されるため、プリン体が多い食品を避けようというのはよく聞く話ですが、この摂取制限にどれほどの効果があるのでしょうか。プリン体制限食は尿中尿酸排泄を減らすと考えられていますが、プリン体は体内で生成される割合のほうが多いこともあり、尿酸値への影響は約1mg/dL程度と小さいことが知られています1)。さらに、尿酸値が多少高くても、必ずしも痛風発作が起こるわけではありません。無症候性高尿酸血症の結果を定量化するために、健康な男性2,046例を対象とした14.9年間にわたる追跡調査2)では、尿酸値と痛風発作の年間発症率の関係は下記のとおりでした。尿酸値9 mg/dL以上:年間発症率4.9%尿酸値7.0~8.9 mg/dL:年間発症率0.5%尿酸値7.0 mg/dL未満:年間発症率0.1%※尿酸値9 mg/dL以上の場合、痛風発作の5年累積発生率は22%。この研究では、痛風の強力な予測因子として、年齢、肥満度指数(BMI)、高血圧、コレステロール値およびアルコール摂取が指摘されています。多くの人が自覚症状がない疾患で、尿酸値と発作の発症率や食事の影響が小さいとなると、継続的なプリン体の摂取制限はなかなか難しいように思います。動物性プリン体の摂取制限は痛風発作の予防に有用しかし、プリン体制限食が急性痛風発作の発症予防に寄与するという報告もありますので紹介します。1つ目が2004年にNEJMに掲載された論文で3)、プリン体、タンパク質および乳製品の摂取が痛風発作の新規発症に及ぼす影響を前向きに調査したものです。対象はベースライン時点で痛風の既往がない男性 47,150 例で、食事要因と痛風の新規発症の関係を12年間追跡しています。研究期間中に痛風と初診断された730例のうち、各食品の摂取量が最小五分位群に対する最大五分位群の痛風の多変量補正相対リスクは次のとおりでした。肉類摂取量:1.41 (95%信頼区間[CI]1.07~1.86、p=0.02)魚介類摂取量: 1.51 (95%CI 1.17~1.95、p=0.02)乳製品摂取量の増加:0.56(95%CI 0.42~0.74、p<0.001)興味深いことに、プリン体が豊富な野菜の摂取量やタンパク質の総摂取量は痛風リスクの上昇と関連がみられませんでした。ちなみに、乳製品の摂取がリスク低減につながる理由として、尿酸とナトリウムが結合した針状結晶が関節で炎症を起こす過程を阻害するためという説があるようです4)。続いて、高プリン体食と再発性痛風発作リスクの関係を調べた症例クロスオーバー研究です5)。こちらはオンラインで募集した痛風患者633例を1年間追跡しています。平均年齢は54歳、78%が男性、88%が白人です。参加者は、痛風発作時に、発作発症日、発作の兆候、服用薬剤(抗痛風薬を含む)、発作前2日間の潜在的なリスクファクターの有無(プリン体含有食品の摂取を含む)について質問を受けています。すべての高プリン体食品(例:肉、内臓肉、肉汁、魚介類、豆類、ホウレンソウ、アスパラガス、マッシュルーム、酵母、ビール、その他ワインなどのアルコール飲料)が対象となっています。2日間の総プリン体摂取量の最小五分位群と比較して、他の各五分位群の再発性痛風発作のオッズ比の増加は、それぞれの群の低いものから1.17、1.38、2.21、4.76(p<0.001)で、動物性のプリン体摂取量については1.42、1.34、1.77、2.41(p<0.001)、植物性のプリン体摂取量については1.12、0.99、1.32、1.39(p=0.04)でした。プリン体摂取の影響は、性別、アルコール、利尿薬、アロプリノール、NSAIDs、コルヒチン服用のサブグループ間で一貫していました。高プリン体食の摂取で、再発性痛風発作のリスクが約5倍増加しており、とくに動物由来のプリン体の制限が有効であることが示唆されています。プリン体は食事由来よりも体内で生成される割合のほうが高いものの、実際にプリン体制限食では痛風発作が少ないというリスク感覚を持っておくと患者さんへ説明がしやすいかなと思います。植物性のプリン体摂取についてはあまり過敏になる必要はなさそうですが、アルコールや動物性のプリン体摂取は尿酸値への影響が直接大きくなかったとしても、痛風発作の原因になりうることや、乳製品が予防となりうることは押さえておくとよいでしょう。1)Kakutani-Hatayama M, et al. Am J Lifestyle Med. 2015;11:321-329.2)Campion EW, et al. Am J Med. 1987;82:421-426.3)Choi HK, et al. N Engl J Med. 2004;350:1093-1103.4)Dalbeth N, et al. Curr Rheumatol Rep. 2011;13:132-137.5)Zhang Y, et al. Ann Rheum Dis. 2012;71:1448-1453.

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がん患者が言い出せない、認知機能障害への対応策/日本臨床腫瘍学会

 がんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害(cancer-related cognitive impairment;CRCI)は海外で研究が進みつつあるものの、国内での認識は医療者・患者ともに低い。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「がんと関連した認知機能障害:病態解明・診断・治療/ケアはどこまで進んだか」と題したシンポジウムが開かれ、国内外の知見が紹介された。本稿では、橋本 淳氏(聖路加国際病院 腫瘍内科)、谷向 仁氏(京都大学大学院医学研究科)による発表内容を中心に紹介する。がん患者の認知機能障害は治療前で2~3割、治療に伴い最大7割以上 がんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害は、現時点で有効な評価方法や治療は確立されていないが、がんそのものによる肉体的・精神的影響によって治療前からみられるもの、化学療法や手術、内分泌療法などの治療に伴ってみられるものがあると考えられている。橋本氏は、乳がん、卵巣がん、消化器がんなどにおける海外の報告を紹介。治療前は20~30%の患者で1)、化学療法に伴うものとして17~75%の患者でみられたという報告がある(報告により認知機能の評価法が異なり、幅のある結果となっている)2~3)。 がんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害の症状としては、記憶、集中力、処理速度や実施能力の低下が報告されている。“頭に霧がかかったよう”と表現するがん患者も多いという。リスクファクターとしては、化学療法と関連する因子(血液脳関門の透過性、用量、併用療法など)のほか、年齢、閉経状態、遺伝学的因子(ApoE、COMD、BDNF)、放射線療法歴、もともとの認知予備能などが報告されているが、認知機能障害のメカニズムを示す明確なエビデンスは現状存在しない。がん化学療法と認知機能障害との関連をアンケート調査 谷向氏は、がんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害に着目するきっかけとなった症例を紹介。精神科医として緩和医療科で診察した乳がん患者(外来化学療法受療中)が、「ガスをつけっぱなしで外出してしまうことが何度かある」と話し、危機感を覚えたという。 そこで同氏は、乳がん患者会の協力を得て化学療法受療の有無と7項目の認知機能障害との関連についてアンケート調査(n=173)を実施。作業スピードが遅くなった、ものごとに集中できなくなった、不注意が増えたなどの6項目で、化学療法の有無による有意差がみられた。さらに、これらの自覚する認知機能障害について、「他者から指摘された」ことは有意に少なく、認知機能障害の項目数が増えるほど抑うつスコア(HADS)が上昇した4)。 一方で、同氏は医師62人を含むがん診療に携わる医療者約400人対象のアンケート調査も実施した。その結果、診療/面接時に毎回あるいは時々のいずれかで症状の有無を患者に「確認する」と答えた割合は、痛み・だるさ・眠気といった身体症状については80%以上、気分の落ち込み・不安といった精神症状についても65%以上だったのに対し、物忘れ・不注意・集中力低下といった認知症状については20~30%に留まっていた。がん患者の認知機能障害への感度が高くないMMSEやMOCA-J 医療者の間で理解が進まない原因の1つに、MMSEやMOCA-Jといった一般的な認知機能のスクリーニング法では、ほぼ満点の例があるなど、がんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害への感度が高くないという点がある。橋本氏は、がん患者用QOL尺度であるFACT-Cogや、作業効率や言葉の想起の低下などを検出しやすいTMT、COWA、HVLT-Rなどが推奨されていることを紹介した。 谷向氏は、がんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害の症状が軽微で、非健忘症状として現れることが多いがゆえに、家族にも医療者にも気づかれにくく、二次的な不安や抑うつなどにつながる可能性を指摘。「もう半年くらい症状が続いているが、笑われてしまうかと思って相談できなかった」という患者の言葉を紹介した。予後が改善し、社会復帰を視野に入れるがん患者が増えていく中で、作業効率の低下などは大きな障壁となりうる。同氏は、医療者側が認知機能障害にも気をかけておくとともに、そのような症状があれば相談してほしいとあらかじめ患者や家族に伝えること、認知機能障害の背景を丁寧に鑑別することの重要性を強調した。 谷向氏は連携する仲間と共同し、患者・家族に対してがんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害に関する啓発用パンフレットを作成している。認知機能障害の症状チェックリストなどを盛り込んだこのパンフレットはこちらからダウンロード可能となっている。

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情報を発信し、世界にキャッチアップせよ【Doctors' Picksインタビュー】第1回

肺がんを専門とし、治療法の急速な進化を最前線で経験してきた光冨 徹哉氏。関連学会のトップを歴任した際には、臨床と研究をつなぎ、各方面に情報を発信する取り組みを行ってきた。そして、2019年からは世界肺癌学会のプレジデント(理事長)を務める。米国に留学し、世界の研究者と交流してきた経験から、日本の研究の現状に対して強い危機感を持っているという。――肺がん治療における、大きなトレンドを教えていただけますか?肺がん治療はここ20年でダイナミックに変化しました。かつて、進行・転移性の非小細胞肺がん(NSCLC)は、患者さんの半数が約1年の間に亡くなるという予後不良のがんでした。それが、90年代後半から遺伝子変異を標的にした分子標的薬が登場し、目覚ましい効果を上げました。とくに、2002年に国内承認されたEGFRの分子標的薬ゲフィチニブの登場は衝撃的でした。それまで長年肺がん治療に関わってきましたが、一部の患者とはいえ、初めて“効く薬”に出会えた、と感じたものです。もっとも当初は遺伝子変異が効果予測因子となることはわかっておらず、変異検査が一般臨床に組み込まれるのにはだいぶ時間を要しましたが…。現在ではEGFRやALKなど特定の遺伝子変異のあるNSCLC患者の生存期間は3年以上に延びました。さらに、2018年にノーベル賞を受賞された本庶 佑先生によって腫瘍免疫におけるPD-1の役割が解明されたことにより、ニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬も臨床で使われるようになっています。こちらの治療ではまだ一部ではありますが、5年以上の長期にわたってがんがコントロールされている症例があることが特徴的です。現在では、抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を適切に選び、ある場合には組み合わせて患者さん個々人に合わせたかたちで使うという、治療の個別化が研究の大きなテーマとなっています。――2014年からの4年間は日本肺癌学会の理事長を務められ、2019年の年末からは世界肺癌学会(International Association for the Study of Lung Cancer:IASLC)のプレジデントに就任のご予定です。トップとして、どのようなことに取り組もうとお考えですか。治療方法が急速に進化、変化している状況ですので、しっかりと情報収集・発信を行っていきたいですね。日本肺癌学会では専任の広報担当者を置き、医師や患者に対する発信力を高めてきました。2019年12月に開催する日本肺癌学会学術集会でも、患者や家族向けのプログラムを作るなど、積極的な啓発活動を行おうとしています。IASLCでは、まだ欧米の研究者の発言力が強い面があるので、中国・韓国などと連携しながら、アジアの研究や研究者に光を当てる機会を増やしたいと考えています。また、近年は薬物治療の発展が目覚ましく、そこに目が行きがちですが、予防、診断、外科、放射線、緩和、さらに看護など、あらゆる職種の人がメンバーとしてのメリットを感じられるような学会にしていきたいですね。――情報を発信する立場になられて、普段していることや気を付けていることをお聞かせください。Twitterで海外の著名な医師や海外ジャーナルのアカウントをフォローしています。フォロー先には留学時代や学会でのリアルの知り合いもいますが、がん関連組織のトップなど、直接には知らない人もいますよ。興味がある標的療法や免疫療法の分野は、とくに重点的に研究者をフォローしています。プロフィールのリンクをたどればその人が発表した論文を読めますし、Twitter内の会話を見れば、新しい論文の意味を深く理解できます。話題に付随した関係者も一緒に見つかるので、気になった人を都度、追加でフォローしています。学会の直後や発表中に、聴講者が発表スライドをTwitterに投稿していることもあります。これは日本ではあまり見ない光景ですよね。現地の温度感を共有しつつ最新情報を得られるのでありがたいと思います。Twitterの情報で価値があると感じたものは、Facebookで知り合いに紹介する、医師がニュースに関するコメントを寄せ合うサイトDoctors’Picksに投稿するなど、二次的な活用もしています。私は立場上、学会や製薬会社からの情報が手に入りやすい立場にありますが、若手や中堅の方は実務に忙しく、それどころではない方もおられるでしょう。研究も論文数も増加の一途で、自分の専門分野ですら、すべての情報に目を通すことは難しい。一方で、新たな治療法や新薬が続々登場し、臨床の常識が数年で一変する時代でもあります。だからこそ、信用できる「情報の目利き」を確保し、彼ら彼女らのフィルターを通ったものを確実にチェックする、という方法で情報収集を効率化できると思います。そして、有益な情報源と出会うためには、自分も情報を発信していたほうがいい。情報は出せば入ってくるものですから。欧米の研究者・医師は総じて日本人より発信に積極的です。私も今のところ、Twitterは情報収集メインなので大きなことは言えませんが、もっと積極的に発信する人が増えるとよいと思います。日本の医師は概して炎上リスクに敏感で、それも大事なことだとは思いますが、中傷などに気を付ければ、そう大きな問題となることはないと思います。それよりも、医師仲間やそれを超えた社会に対し、自分の考えや研究・実践をアピールすることは、これまで以上に重要な意味を持つようになってきていると感じています。――教育者として医学生や若手研究者と接して、お感じになることは?やはり国際学会で大事なのは英語です。昔に比べれば、インターネットもあるし、航空券も安くなって海外との距離は格段に近くなったと思うのですが、それにしては英語力がそう伸びているわけでもないような気もします。概して、積極的に留学を希望する学生も少ない印象です。ずっと国内で日本人だけを診療して生きていく、というのであればよいのかもしれませんが、そんな時代でもないでしょう。先日、私たちの大学に中東・オマーンから短期留学生が来ましたが、非常に積極的で優秀でした。母国でも医学教育は英語で受けているので、コミュニケーションもまったく問題ありません。医学の世界の公用語は英語であり、隣国の中国、韓国の人とコミュニケーションをとるためにも必須です。このままでは日本は世界とさらに差がついてしまう、と危機感を覚えます。“医学のガラパゴス化”を危惧すると言ったら言い過ぎでしょうか。世界との差は、研究の面でも顕著です。たとえば、米国のTCGA(The Cancer Genome Atlas:がんゲノムアトラス)プロジェクト※1。NCI(米国国立がん研究所)が主導し、あらゆるがんにおけるゲノム解析を行っています。先進的な分野に目をつけ、10年以上にわたって数百億円規模の予算を掛けた国家プロジェクトとして実行する、そのスケール感には圧倒されます。そして何より、研究成果であるデータの大半を一般に公開し、世界中の誰もが使えるようにしている点が素晴らしい。米国もいろいろ問題があるとは思いますが、こうした寛容さは素晴らしいですね。翻って、日本では予算規模も少なく、さまざまなことに対する規制が多過ぎます。たとえば、一般社団法人NCD(National Clinical Database)では手術数やリスクなどの外科系データを収集しています。ですが、私たちがこのデータを研究で利用しようとすると用途やデータの出し方を細かく指定し、解析済みデータを提供してもらう必要があるのです。研究では生データを探索的に解析することで新たな視点や気付きが生まれるものですが、その自由度はありません。科研費においても、設定される研究スパンは3~5年程度が多く、短期で成果を出さねばならないという意識が働くので、研究自体が小粒かつ近視眼的になる側面が否めません。実際、2000年代半ばから、日本の論文は質量ともに急速に低下しています※2。――日本が再び世界でプレゼンスを高めるためには、何が必要でしょうか?即効性のある処方箋はありませんが、まずは医師が危機感を共有し、世界の情報を集め、キャッチアップしていくことからではと思います。語学力を高め、国際的な共同研究に参加することも重要でしょう。ここ10年で急速に力を付けてきた隣国の中国の研究者から学ぶことも多いと思います。※12006年に開始された大型がんゲノムプロジェクト。2018年までに33種のがん種について10,000を超える腫瘍の分子および臨床情報のデータセットについて、網羅的なゲノム解析を完了させた。※2文部科学省 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「科学研究のベンチマーキング」このインタビューに登場する医師は医師専用のニュース・SNSサイトDoctors’ PicksのExpertPickerです。Doctors’ Picksとは?著名医師が目利きした医療ニュースをチェックできる自分が薦めたい記事をPICK&コメントできる今すぐこの先生のPICKした記事をチェック!

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夜間・24時間血圧が、死亡リスク上昇と関連/JAMA

 夜間および24時間血圧の上昇は、死亡や心血管アウトカムのリスク上昇と関連し、他の診察室ベースの血圧や自由行動下血圧で補正しても、このリスクの上昇は維持されることが、ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のWen-Yi Yang氏らの検討で明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌2019年8月6日号に掲載された。血圧は、全死亡および心血管特異的な致死性・非致死性のアウトカムの既知のリスク因子とされる。一方、血圧インデックス(測定法、測定時間)がこれらのアウトカムと強い関連を有するかは不明だという。IDACOのデータを用いた縦断的コホート研究 研究グループは、血圧インデックスと、死亡および複合心血管イベントの関連を評価する目的で、縦断的な住民ベースのコホート研究を行った。 解析には、International Database on Ambulatory Blood Pressure in Relation to Cardiovascular Outcome(IDACO)に登録されたデータを用いた。対象は、1988年5月~2010年5月の期間に開始され、2006年8月~2016年10月の期間に最終フォローアップが行われた欧州、日本を含むアジア、南米の研究に参加した成人1万1,135例であった。 看護師/医師が測定した血圧、自動診察室血圧の評価を行い、24時間血圧、昼間(欧州と南米は午前10時~午後8時、アジアは午前8時~午後6時)または夜間(欧州と南米は午前0時~午前6時、アジアは午後10時~午前4時)の血圧、およびdipping比(夜間血圧を昼間血圧で除した値)について検討した。 主要アウトカムは、血圧の20/10mmHg上昇ごとの死亡または心血管イベントのリスクとし、多変量で補正したハザード比(HR)を算出した。心血管イベントは、心血管死、非致死的な冠動脈イベント、心不全、脳卒中の複合とした。曲線下面積(AUC)の変化により、モデル性能の改善を評価した。心血管リスク推定の至適な測定値の可能性 1万1,135例の年齢中央値は54.7歳(IQR:41.6~67.3)、女性が49.3%であった。アジア人が1,887例(17.0%)含まれた。追跡期間中央値13.8年の時点で、2,836例(18.5/1,000人年)が死亡し、2,049例(13.4/1,000人年)が心血管イベントを発症した。 全死亡および心血管イベントは、すべての測定法および測定時間において単回測定の収縮期血圧と有意な関連を示した(いずれもp<0.001)。たとえば、夜間収縮期血圧に関しては、全死亡のHRは1.23(95%信頼区間[CI]:1.17~1.28)、心血管イベントのHRは1.36(1.30~1.43)であり、24時間収縮期血圧ではそれぞれ1.22(1.16~1.28)、1.45(1.37~1.54)であった。また、自動診察室血圧の収縮期血圧では、全死亡のHRは1.08(1.04~1.12)、心血管イベントのHRは1.19(1.14~1.24)だった。 夜間収縮期血圧および24時間収縮期血圧と主要アウトカムの関連は、他のすべての収縮期血圧インデックスで補正しても、有意な差が維持されていた(HRの範囲:1.17[95%CI:1.10~1.25]~1.87[1.62~2.16])。 単回収縮期血圧インデックスを含む基本モデルは、死亡のAUCが0.83、心血管アウトカムのAUCは0.84を達成した。他の血圧インデックスを含む基本モデルに、24時間または夜間収縮期血圧を加えると、全死亡のAUCの改善が0.0013から0.0027に、複合心血管アウトカムのAUCの改善は0.0031から0.0075に増加した。一方、24時間または夜間収縮期血圧を含むモデルに、すべての収縮期血圧インデックスを加えても、モデル性能は改善されなかった。 これらの知見は、拡張期血圧に関しても、一致して認められた。 著者は、「24時間および夜間血圧は、他の血圧インデックスと比較して、モデル性能の改善度は統計学的に小さいものの、心血管リスクの推定において至適な測定値と見なしうると考えられる」としている。

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透析患者のEPO抵抗性貧血の解決になるか(解説:浦信行氏)-1102

 同時報告の保存期CKDでも述べたように(「保存期CKD患者の貧血治療が経口薬で」)、roxadustatは経口投与の低酸素誘導因子(HIF)の分解酵素阻害薬であり、結果的にHIFを安定化させて内因性エリスロポエチン(EPO)の転写を促進して腎性貧血の改善を促す。併せて、ヘプシジンの産生を抑制して、鉄利用を高める作用も持つ。 今回の透析例における第III相の結果は、EPO製剤投与群と比較して貧血改善効果は同等であった。従来のEPO製剤は、高用量を要するEPO抵抗性の症例が存在する。今回の検討ではCRPの値で2群に分けて検討しており、CRP高値群では反応性の低下からEPOの用量を多く必要としたが、roxadustat群ではCRPの高低にかかわらず良好な反応を示し、炎症に左右されない効果を発揮することが明らかとなった。 ところで、保存期CKDの成績ではあるが、従来のEPO製剤での治療でHb値を13g/dL以上にすると死亡や心不全による入院のリスクが増加し(CHOIR試験)、脳卒中リスクが増加する(TREAT試験)可能性が報告されている。しかし、リスクと相関していたのはHb値よりも高用量のEPO製剤であったとされる。この点からもHIF刺激薬は有利である可能性がある。ちなみに、炎症がヘプシジンを増加させるので、両治療群でCRP高低の2群間のヘプシジンの差を比較すると、機序の1つの解明につながる可能性があるが、残念ながらそのような解析結果は示されていない。 一方、やや気に掛かるのは、HIF刺激薬群で有害事象による中止と中断例が多いことである。本来EPO製剤投与群を2群に分けて試験に入っているので、EPO製剤による有害事象例や中断例が事前に除外されている結果なのかもしれないが、これら有害事象と中断を合わせた脱落率が15%であることは、やはり気に掛かる。

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保存期CKD患者の貧血治療が経口薬で(解説:浦信行氏)-1101

 従来、CKDに合併する腎性貧血は透析例も含めて赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が治療の主体であった。roxadustatは経口投与の低酸素誘導因子(HIF)の分解酵素阻害薬であり、結果的にHIFを安定化させて内因性エリスロポエチン(EPO)の転写を促進して腎性貧血の改善を促す。現在、roxadustatを含めて5製剤が開発中である。同時に鉄吸収や肝臓からの鉄の放出を抑えるヘプシジンの産生を抑制して、鉄利用を高める作用も併せ持つ。 今回の第III相の結果は貧血改善に著効を呈し、しかも反応も2~3週間後の早期から期待できるようだ。これにはEPO産生の増加だけでなく、EPOの受容体も活性化し、加えて鉄供給・利用も連動することによると考えられる。これまでは保存期CKDは2~4週ごとのESAの皮下または静脈注射を余儀なくされ、また、EPO抵抗性の症例もあることから、HIF刺激薬は治療利益が大きいと考えられる。また、LDLコレステロールも25.3mg/dL低下し、有意な減少であったため付加価値的要素もあるが、同時にHDLコレステロールも10mg/dL程度低下するため、その価値は大きくはなさそうである。一方でHIF刺激の結果、長期的には血管新生を惹起する可能性は否定できず、糖尿病症例の網膜症悪化や、腫瘍進展のリスクの懸念は残るので、長期的なリスクの評価が必要と考える。

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第26回 “上品な”不整脈のトリセツ【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第26回:“上品な”不整脈のトリセツ2018年8月末から隔週連載でスタートしたドキ心も今回で26回目。約一年が経過しましたが、すべては皆さまのおかげです。でもね、正直まだ全然話し足りない! 心電図には魅力的な話題があと2倍、5倍、いや10倍はあるんですよ!(ただのオシャベリなだけかも…)前2回のエッセーで途切れてしまいましたが、今回は、ここ数回で登場している「ラダーグラム」を用いて、心室期外収縮(PVC)の秘密にDr.ヒロが迫ります!症例提示68歳、男性。心筋症のため循環器科に通院中。以下に定期外来での心電図を示す(図1)。(図1)定期外来時の心電図画像を拡大する【問題1】心電図所見として正しいものを2つ選べ。1)右房拡大2)心室期外収縮3)心房期外収縮4)右室肥大5)QT延長解答はこちら2)、5)解説はこちら「心筋症」および「循環器科に定期通院」というフレーズから何らかの心臓病がありそうな准高齢者ですね。1問目はいつもと同じ。「系統的判読」で読んでいきましょう(第1回)。1)×:ここは“ピッタリ”部分の確認。「右房拡大」では、下壁誘導、つまりニサンエフでP波の“ツンッ”(尖鋭化)と増高(2.5mm以上)が特徴です。むしろ本例では、IIとV1誘導に着目すれば、以下の「左房拡大」の基準にほぼ該当します。(図2)左房拡大の診断基準杉山 裕章. 心電図のみかた・考え方(応用編).中外医学社;2014.p.26-27を改変.画像を拡大する2)○:大半を占める心拍のP波は“イチニエフの法則”を満たすので、基本的には「洞調律」でOKです。残る肢誘導2、5拍目と胸部誘導2拍目だけQRS波形が異なっています。洞周期から予想される位置よりも“先行”して出て、どう見ても異質なカタチ、幅もワイドでP波の随伴もありません。これは「心室期外収縮」(PVC)でいいでしょう。3)×:「心房期外収縮」(PAC)の場合、基本は洞収縮QRS波と同じ波形、先行P波(P'波)があるはずですが、これには該当しません。4)×:1)に続き、これも“左右違い”(笑)。正しくは「左室肥大」です。左側胸部誘導(V4~V6)でQRS波形同士が重なって見える“密集感”と“ストレイン・パターン”(strain pattern)と呼ばれる典型的なST-T変化を認めます(下行型ST低下と陰性T波の組み合わせ)。5)○:今まであまり扱わなかった“バランスよし!”の部分です。QT間隔(QRS波の「はじまり」~T波の「おわり」)を目視でR-R間隔と比べましょう(目視法)。機械に頼るのも一手です。補正値(QTc)がいずれも上限450ms(0.45秒)を大きく越えており、「QT延長」と言えます。以上、診断をまとめます。この方の基礎疾患は「肥大型心筋症」(HCM)でした。いずれの所見も“さもありなん”な典型心電図だと思います。考えられる心電図診断をまとめると次のようになります。心電図診断心室期外収縮(頻発性)左房拡大左室肥大QT延長【問題2】肢誘導からI誘導の抜粋を示す(図3)。本リズム・ストリップ(rhythm strip)のラダーグラムを描け。(図3)I誘導のみ抜粋画像を拡大する解答はこちら図4の下図(図4)肢誘導(I誘導)のラダーグラム画像を拡大する解説はこちら期外収縮のポイントである『線香とカタチと法被が大事よね』の“大事よね”は何でしたか? …ええ、回復周期(または休止期)の「代償性」です。そして、ここでも出た「ラダーグラム」! 胸部誘導では、洞収縮部分に若干のR-R間隔に不整(洞[性]不整脈?)があるため、あえて肢誘導で鋭く見やすいP波のあるI誘導をチョイスしています。洞収縮では当然QRS波の手前、そしてPVCではST部分かT波上行脚に“トンガリ”があり、これがP波です。P-P間隔はほぼ整であることもわかるでしょう。PVC直後のP波にはQRS波が続かず、この「1拍抜ける」メカニズムを描くには、「不応期」という概念が必要です。“逆行性シグナルは不応期を残す”今回のレクチャーのポイントは、“お上品”なPVCのラダーグラムを描くこと。PVCの“上品さ”とは、洞結節の活動(ペース)には干渉しないことを意味するのでした(第21回)。洞収縮のラダーグラムに関しては、すでに扱っていますから(第22回、第23回)、PVCの前後を含む(肢誘導)3~6拍目を抜き出して解説しましょう。ボクがまだまだ若手だった頃、PVCによる“脈飛び”は、洞結節、心房を経て下向き(心室方向)に伝わる興奮と、PVC起源である心室からの上向き(心房方向)興奮とが房室結節あたりで“ぶつかる”ためと思っていました。この「衝突モデル」、まったくダメかと言うとそうではないのですが、実にオシイ。今回は詳しく述べませんが、これでは説明不能な現象(間入性PVCなど)があります。洞結節にはじまる興奮は刺激伝導系という“高速道路”を通りますから、心房、房室結節までは瞬時に伝わります。ただ、心房から心室への“関所”(房室接合部)を抜けるときだけ時間がかかります。“ETC”ではなく、“料金所”で財布から小銭を出して支払っているイメージでしょうか(笑)。一方、多くのPVCは刺激伝導系から外れた“片田舎”で発生し、“下道”をノンビリと心房に向かうシグナルを送ります。この片方は「上から下」、もう片方が「下から上」のシグナルは心房と心室の“はざま”である「房室接合部」で拮抗することになります。ここは、ラダーグラムでは「A-V」フロアと表記するのでした(第22回)。P波とQRS波の時間的な前後関係を考慮すると、このゾーンに心室からの“逆走”刺激が先に到着し、一部の組織を興奮させます。ボクはこの所見を見ると、かつてのチビDr.ヒロが熱中した『ゼルダの伝説~リンクの冒険~』に登場し、勇者リンクがマスターする“上突き”と言われる技のイメージが頭をよぎります(笑)ボク的には“グサッ”と音が出んばかりに“爪痕”を残すイメージです。実際には、PVC起源からのシグナルが房室接合部のどこまで突き刺さるかは、出る場所やタイミングなどいくつかの要素が関係します。ただ、「A-V」フロア領域の一部が強制的に興奮させられた結果、その後しばらく興奮できない“休憩時間”に入るということが大事。“グサッ”と剣でやられて“ウギャー”となって、しばらく傷を癒やすのに時間を必要とし、その時間が「不応期」(refractory period)ということになります。このようにPVCからの“上突き”は体表面心電図には表れない、いわば“空想の産物”(正式名称は「不顕(または潜伏)伝導」[concealed conduction])なのですが、不整脈を理解する“キモ”の一つです。この用語は初学者には難しいかと思うので、 “上突き”でいいと思います。これより以下の話は、やや古典的な概念だと仰せの方もいるかもしれませんが、“ニバイニバーイの法則”を満たすPVCの性質を理解するのに便利なのでご紹介します。“2種類の不応期とPVCラダーグラム”不応期には2つの時相があります。まず1つ目。興奮した(“上突き”された)直後は“永遠の眠り”と思わせるような「絶対不応期」(ARP:absolute refractory period)と呼ばれる時期。この間は、いかに大きな声で呼ぼうと、体を揺り動かそうと、電気ビリビリを流そうとも房室接合部の心筋は目覚めません。この時期が一定時間続いた後、心筋たちは「相対不応期」(RRP:relative refractory period)に突入します。これが2つ目の不応期になります。房室接合部は、この時期も基本“居眠り中”で、つまり上(心房)からの電気刺激は通れないはずなのですが、タイミングなどの関係で“寝ぼけマナコ”で反応することがあります。その場合、通常よりはだいぶ減速はするものの、洞結節からの“使者”の通過を許すことになるのです。通常のPVCの多くは、回復周期が「代償性」となり、PVCを挟むR-R間隔*が洞周期の2倍となります(ニバイニバーイの法則)。そのためには、洞結節がほかに乱されず己のペースで興奮し続けることと“洞結節発”の興奮が1回遮断される必要があります。前者はPACと違って、PVCでは「リセット現象」が起こらないことで、そして後者はシグナルが房室接合部の「絶対不応期」にぶつかることで理解すればいいのです。*:より正確には「P-P間隔」ですが、おおむね「R-R間隔」で代用できるのでした(第21回)。ラダーグラムでは、PVCからの“上突き”が残す不応期の「絶対」ゾーン(ARP)にぶつかる様子を描きます。直後の「相対」ゾーン(RRP)ではありませんよ。そして同時に、PVCの影響は「房室接合部(A-V)」フロアにとどまり、洞結節の興奮ペースに影響を与えないことも理解してもらえるでしょうか。これが“干渉”しない“上品さ”なんです。以上の様子を(図5)に示すので、カラー線部分にご注目下さい。(図5)PVCラダーグラム~不応期とともに~画像を拡大する1回こそ絶対不応期の「壁」に阻まれ遮断されたものの、左から4つ目の洞結節シグナルは予定通りP波を作り、そして房室接合部から心室に通じて何もなかったかのように涼しい顔で“いつも通り”のQRS波を作ります。これを理解すれば、もう皆さんは回復周期が代償性を示す“上品な”PVCのラダーグラムを描くことができ、自然と“ニバイニバーイの法則”も理解できているはずです。「不応期」の帯を取って遠目で眺めれば、実は上からと下からの刺激が“ぶつかる”感じに相違ない様子が描写されており(図4)、未熟なかつてのDr.ヒロのイメージもあながち悪くはないのかもしれません。このラダーグラムを一度図示しておけば、PVCの重要な性質も理解でき、かなり強固な記憶として定着するかと思います。“「相対不応期」も少しだけ”ちなみに、「相対不応期」のほうはと言えば、「間入性(interpolated)PVC」と呼ばれる、やや特殊なPVCを理解するのに役立ちます。「間入性PVC」では、PVCを挟む洞収縮の距離(R-R間隔)が“ほぼ洞周期”、つまりイチバイ(1倍)に近くなります*2。きれいに“ピッタリ2倍”の「代償性PVC」とは異なり、実際には“1倍ちょっと”のR-R間隔になるケースが大半で、そのカラクリを理解するカギが「相対不応期」があります。折をみて、この点に関しても解説したいですが、今回はこれで終わりましょう。*2:P波が見えないこともありますが、「P-P間隔」なら“ピッタリ1倍”、つまり洞周期そのものです。Take-home MessagePVC起源からの“上突き”は房室接合部に不応期を残す。“ニバイニバーイの法則”も絶対不応期を意識したラダーグラム描画で理解できる!【古都のこと~三明院】三明院(さんめいいん)は、三宅八幡宮から徒歩数分の場所にあります。初めて八幡宮に行った時に、道の途中でひときわ目立つ朱色の建物に遭遇しました。神社関連施設なのかと思ったら、こちらは真言宗の「お寺」でした。明治39年(1906年)開山と京都の中では比較的新しい寺院で、当然ながら弘法大師が本尊です。ボクが気になった仏塔は多宝塔*といい、「宝(方)形造」と呼ばれる“四角錐屋根”型の上に相輪が立ち、四隅に鎖をかけるのがお決まりのデザインなのだそう。この三明院は“隠れ紅葉スポット”で、多宝塔の朱色味がより一層増して感じられる秋にぜひまた訪れようと思いました。おっと、本堂でのお参りも忘れずにね。*:釈迦と多宝如来の二仏を祀る。毎月1日にご開帳される。

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統合失調症におけるムスカリン性アセチルコリン受容体の役割

 統合失調症の病態生理において、ムスカリン受容体機能障害が重要な役割を担っていることが示唆されている。最近、神経伝達物質受容体に対する免疫反応性が、統合失調症のいくつかのケースにおいて、病原性の役割を担う可能性についても明らかとなっている。オーストラリア・クイーンズランド大学のAlexander E. Ryan氏らは、統合失調症におけるムスカリン受容体機能障害のケースをレビューし、この機能障害からムスカリン受容体標的抗体の開発が支持されるかについて検討を行った。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年7月26日号の報告。 統合失調症におけるムスカリン受容体の研究および抗ムスカリン性アセチルコリン受容体抗体の存在と潜在的な役割についてレビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・ムスカリンシグナル伝達の変化または欠乏が、統合失調症のいくつかの重要な臨床的特徴の根底にあるとのエビデンスが蓄積されている。・統合失調症における抗ムスカリン性アセチルコリン受容体抗体について調査した研究は比較的少ないが、このような抗体が一定の割合の患者に存在することが一貫して認められた。・統合失調症において、これらの抗体が病原性作用を有する、または未知の病態生理学的過程に対するバイオマーカーとして存在することが示唆された。 著者らは「高レベルの抗ムスカリン性アセチルコリン受容体抗体の存在は、統合失調症患者のサブグループを特定し、病因や臨床症状、治療に役立つ可能性がある。これまでの研究では、とくに抗精神病薬治療を長期にわたり受けている慢性期統合失調症患者を対象としている。抗精神病薬は免疫機能を調整し、受容体濃度を調整するため、今後の研究では、初回エピソード統合失調症患者における抗ムスカリン抗体の存在をスクリーニングすることが推奨される」としている。

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乳がんリンパ浮腫のセルフケア、Webとパンフレットどちらが効果的

 乳がん治療関連リンパ浮腫(breast cancer-related lymphedema:BCRL)患者のケアに対するウェブベースのマルチメディアツールを用いた介入(Web Based Multimedia Intervention:WBMI)の結果が示された。米国・ヴァンダービルト大学のSheila H. Ridner氏らによる検討で、WBMIを受けた患者は、対照(パンフレットのみ)より生物行動症状(気分)が改善し、介入に対する知覚価値も高いことが示されたという。ただし、WBMI群は完遂率が低く、他の評価項目については大きな違いはみられなかったとしている。Journal of Women's Health誌オンライン版2019年7月17日号掲載の報告。 研究グループは、BCRLを有する女性患者の症状負荷、機能、心理面の健康、費用および腕の体積に対するWBMIの効果を評価する目的で、患者をWBMI群(80例)および対照群(80例)に無作為に割り付けた。WBMIは12項目から成り、それぞれ約30分を要した。対照群へは、パンフレットを提供するのみで、読むのに約2時間を要した。 介入前および介入後1、3、6および12ヵ月時に症状負荷、心理面の健康、機能および経費に関するデータを収集し、45例のサブグループは介入前および介入後3、6および12ヵ月時に腕の細胞外液量を生体インピーダンス法で測定した。また、介入に対する知覚価値についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・介入の完遂率は、WBMI群58%、対照群77%で、統計学的に有意な差があった(p=0.011)。・Lymphedema Symptom Intensity and Distress Scale-Arm(LSIDS-A)に基づく症状の評価では、生物行動症状(気分)数はWBMIで減少を示したが、その他の症状については2群間で統計学的な有意差がなかった(効果量:0.05~0.28、p>0.05)。・他の変数の変化については、2群間で有意差は観察されなかった。・WBMIは、パンフレットよりもセルフケア情報が優れていると認識されていた(p=0.001)。 WBMIは生物行動症状を改善し、より質の高い情報と認識された。他の変数において統計的な有意に至らなかったのは、WBMI患者の介入完遂率の低さが影響している可能性があると筆者は結んでいる。

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