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アリピプラゾール長時間作用型注射剤で治療された患者の臨床経過

 抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)は、統合失調症および関連疾患患者の治療を維持し、アドヒアランスを確保するうえで、効果的な治療オプションである。アリピプラゾールLAIは、治療アドヒアランスを改善し、再発を軽減することが可能な非定型抗精神病薬である。スペイン・Health Centre Los AngelesのJuan Carlos Garcia Alvarez氏らは、6ヵ月間のアリピプラゾールLAI治療による、精神症状や社会機能の改善、副作用の軽減、抗精神病薬併用の減少に対する効果について、評価を行った。International Journal of Psychiatry in Clinical Practice誌オンライン版2020年1月14日号の報告。 アリピプラゾールLAIを開始または切り替えを行った統合失調症スペクトラム障害患者53例を対象に、多施設共同プロスペクティブ研究を実施した。アリピプラゾールLAIの評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、Udvalg for Kliniske Undersogelser scale for side effects、機能の全体的評価尺度(GAF)、臨床全般印象度-統合失調症(CGI-SCH)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾールLAI治療は、PANSSのすべてのドメインを有意に改善した(p<0.05)。・6ヵ月間のアリピプラゾールLAI治療後、有害事象の重症度に有意な改善が認められた(p<0.05)。・ベースラインから6ヵ月目までの機能評価スコアに、有意な差が認められた(p=0.0002)。・アリピプラゾールLAI治療により、重症患者の割合が減少した(CGI-SCH)。・6ヵ月の治療後、プロラクチン濃度は、正常化された(43.0→14.7ng/mL)。・6ヵ月間のアリピプラゾールLAI治療後、精神病薬の併用は有意に減少した。 著者らは「6ヵ月間のアリピプラゾールLAI治療は、代謝プロファイルに影響を与えることなく、臨床症状を改善し、抗精神病薬の併用も減少させた。この研究結果は、アリピプラゾールの有効性、安全性に関するこれまでのデータを裏付けている。アリピプラゾールLAIは、統合失調症スペクトラム障害患者における治療アドヒアランスの最適化に役立つ可能性がある」としている。

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米国2019-nCoV感染1例目、発熱・咳症状9日目に肺炎/NEJM

 中国・湖北省武漢市でアウトブレークが始まった新型コロナウイルス「2019-nCoV」は、瞬く間に拡大し複数の国で新たな感染例の確認が報告されている。米国疾病管理予防センター(CDC)のMichelle L. Holshue氏らは、2020年1月20日に米国で確認された1例目の感染例について、疫学的および臨床的特徴の詳細をNEJM誌オンライン版2020年1月31日号で発表した。その所見から、「本症例で鍵となるのは、パブリックな注意喚起を見た後に患者が自発的に受診をしたこと、患者の武漢市への渡航歴を地域の医療提供者および郡・州・連邦の公衆衛生担当官が共有し、感染拡大の可能性を認識して、患者の迅速な隔離と検査および入院を許可したことだ」と述べ、「本症例は、急性症状を呈し受診したあらゆる患者について、臨床家が最近の渡航歴または病人との接触曝露歴を聞き出し、そして2019-nCoVのリスクがある患者を適切に識別し迅速に隔離して、さらなる感染を抑制する重要性を強調するものである」とまとめている。渡航歴を考慮し、ただちにクリニックからCDCへと報告が上がる 米国の2019-nCoV感染1例目は、1月19日にワシントン州スノホミッシュ郡の緊急ケアクリニックを受診した35歳男性。咳、主観的発熱の既往は4日間。クリニックに入ると待合室でマスクを着け、約20分待った後、診察室に入った。患者は、家族に会いに武漢市に行き15日に帰ってきたことを申し出、米国CDCの注意喚起を見て、自身の症状と渡航歴を鑑み受診したと話した。高トリグリセライド血症歴はあったが、健康な非喫煙者だった。 診察の結果、熱は37.2度、血圧134/87mmHg、心拍110回/分、酸素飽和度96%。ラ音を認めたため胸部X線検査を行ったが異常は認められなかった。迅速インフルエンザウイルス検査(A、B)の結果は陰性。鼻咽頭スワブ検体を採取し(あらゆる結果が48時間以内に判明する)、渡航歴を考慮してただちに郡・州の保健当局に通知。州当局は臨床担当医とともにCDCの緊急オペレーションセンターに通知した。患者が武漢海鮮卸売市場には行っておらず病人との接触もないと話したが、CDCは「persons under investigation」を基に要検査例と判断。ガイダンスに従い、鼻咽頭および口咽頭スワブ検体を収集。患者は退院したが家族とは隔離し郡保健所がモニタリングにあたった。 翌1月20日にリアルタイムPCR検査の結果、2019-nCoV陽性が確認された。患者は郡医療センターに隔離入院となった。入院時も入院後もバイタルはほぼ安定、しかし入院5日目に肺炎を呈す 患者は入院時、持続性乾性咳嗽と2日間の悪心および嘔吐の既往を認めたが、息切れ、胸痛の訴えはなく、バイタルサインは正常範囲を示していた。入院後、支持療法(悪心に対する2Lの生理食塩水とオンダンセトロン投与)を受けたが、入院2~5日目(疾患6~9日目)のバイタルサインはほとんどが安定していた。 入院2日目に腹部不快感と下痢症状を呈するが翌日に回復。入院3日目に胸部X線検査を行ったが、異常所見を認めなかった。しかし、入院5日目(疾患9日目)の夜から呼吸器症状に変化がみられ、胸部X線検査で左肺下葉に肺炎の所見を認めた。入院6日目に酸素吸入を開始、バンコマイシン、セフェピムの投与も開始。その日の胸部X線検査で両肺に陰影、ラ音を認める。担当医は他施設での報告例を参照し、7日目の夕方に治験中の抗ウイルス薬remdesivirの静脈投与を開始。有害事象は観察されなかった。同日夕方にバンコマイシン投与は中止、セフェピムは翌日に中止している。 入院8日目(疾患12日目)に患者の臨床症状は改善し、支持療法も中止となった。入院11日目の1月30日現在も入院は続いているが、熱は低下(36度台)し、重症度が低下した咳を除き、あらゆる症状が改善した。

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PCI対CABG:どちらが優れている?(解説:上田恭敬氏)-1187

 2008年から2015年の間に1,201症例の血行再建が必要なLMT症例を登録し、PCIとCABGのいずれが優れているかを検討した多施設無作為化比較非劣性試験(NOBLE試験)の5年フォローアップの結果が報告された。主要エンドポイントであるMACCEは全死亡、心筋梗塞、再血行再建術、脳卒中の複合エンドポイントである。 カプラン・マイヤー解析による5年MACCEは、PCI群で28%、CABG群で19%となり、非劣性の要件を満たさず、CABGの優位性(p=0.0002)が示された結果となった。エンドポイントの構成成分を見ると、全死亡と脳卒中に有意な群間差はないものの、心筋梗塞がPCI群で8%、CABG群で3%(HR:2.99、95%CI:1.66~5.39、p=0.0002)、再血行再建術がPCI群で17%、CABG群で10%(HR:1.73、95%CI:1.25~2.40、p=0.0009)といずれもCABG群で少ない結果であった。 この結果を解釈する際には、PCIのデバイスや技術の進歩によってPCI群の成績改善がどれだけ達成されているかという問題と、MACCEにつながる全身的なリスクコントロールがどれだけ達成されているかという問題を考える必要がある。 前者については、本試験ではアンギオガイドのPCIが行われているが、ULTIMATE試験の結果によれば、IVUSを適切に使用することで、再狭窄などのイベントが3分の1程度にまで低下する可能性があることが示されている。また、本試験では一部で第1世代のDESが使用されており、最新のDESを使用すれば、PCI群の成績はさらに向上することが期待される。 後者については、動脈硬化の進行によってプラーク破裂が生じて冠動脈が閉塞しても、閉塞部位よりも末梢にバイパス血管がつながれていれば心筋梗塞には至らないため、CABGには心筋梗塞の予防効果があるといえる。同様に、CABGには再血行再建術を予防する効果もあるが、動脈硬化の進行を十分に抑制できる薬物療法を実施できれば、この点におけるCABGのメリットは小さくなる。 また、本来、PCIは繰り返す施行が必要となる代わりに、CABGのような大きな侵襲を伴わないことがメリットであるので、主要エンドポイントに再血行再建術を入れるべきではないとの考えもあるだろう。 上述の2つの問題点を考えると、本試験は多少時代遅れの試験といえるだろうが、そのことについては本論文のDiscussionにおいて議論されていない。さらに、PCIの優位性を示すためには、厳格な薬物療法が重要であることを、もっと認識すべきではないだろうか。将来、真のOptimal medical therapyとOptimal PCIが実施された条件下で、PCIとCABGの比較試験が行われることを期待する。

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うつ病とその後の認知症診断との関連~コホート研究

 うつ病は、認知症リスクの増加に関連する疾患である。しかし、これまでの研究においてはフォローアップ期間の短さ、家族要因の調整不足が、うつ病と認知症との関連に影響を及ぼしていた可能性がある。スウェーデン・ウメオ大学のSofie Holmquist氏らは、家族要因を調整したうえで35年以上のフォローアップを実施し、うつ病とその後の認知症との関連を調査した。PLOS medicine誌2020年1月9日号の報告。 2005年12月31日の時点でスウェーデン在住であり50歳以上の334万1,010人より、2つのコホートを形成した。うつ病と認知症の診断を特定するため、1964~2016年のSwedish National Patient Registerのデータを検索した。コホート1では、うつ病患者11万9,386例と非うつ病対照群を1対1でマッチさせた集団一致コホート研究を実施した。コホート2では、うつ状態が異なる同性の兄弟5万644例を対象とし、兄弟コホートを実施した。 主な結果は以下のとおり。・コホート1では、平均フォローアップ期間10.41年(範囲:0~35年)に、認知症と診断された患者は9,802例であった。・うつ病患者の5.5%、非うつ病対照群の2.6%で認知症が発症しており(調整オッズ比[aOR]:2.47、95%CI:2.35~2.58、p<0.001)、アルツハイマー病(aOR:1.79、95%CI:1.68~1.92、p<0.001)よりも、血管性認知症(aOR:2.68、95%CI:2.44~2.95、p<0.001)との関連が強かった。・認知症診断との関連は、うつ病診断後、最初の6ヵ月間で最も強かった(aOR:15.20、95%CI:11.85~19.50、p<0.001)。その後、急激に減少するものの、20年以上のフォローアップ期間にわたり持続していた(aOR:1.58、95%CI:1.27~1.98、p<0.001)。・コホート2においても同様に、認知症診断との関連はうつ病診断後、最初の6ヵ月間で最も強く(aOR:20.85、95%CI:9.63~45.12、p<0.001)、その後は急激に減少するものの、20年以上のフォローアップ期間にわたり持続していた(aOR:2.33、95%CI:1.32~4.11、p<0.001)。・調整モデルには、性別、ベースライン時の年齢、市民権、地位、世帯収入、ベースライン時の診断を含めた。・主要な研究方法論的制限は観測データであり、これらの関連性は因果関係を示すものではない。 著者らは「うつ病は、診断から20年以上経過しても認知症発症リスクの増加と関連しており、家族要因を調整してもなお、その関連性は残存している。認知症発症リスク低下に対し、うつ病の予防と治療の成功が有用であるか検証するためには、さらなる研究が求められる」としている。

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胃がん家族歴ありH.pylori感染者、除菌でリスク低下/NEJM

 第1度近親者に胃がんの家族歴があるHelicobacter pylori感染者では、H. pyloriの除菌治療によって胃がんのリスクが低下することが、韓国・国立がんセンターのIl Ju Choi氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年1月30日号に掲載された。H. pylori感染と胃がんの家族歴は、胃がんの主要なリスク因子とされる。第1度近親者に胃がん罹患者がいるH. pylori感染者の胃がんリスクが、H. pylori除菌治療で低下するかは明らかではなかった。除菌治療の有無で胃がん発生を比較する単一施設の無作為化試験 本研究は、韓国の単一施設(国立がんセンター、高陽市)で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2004年11月~2011年12月の期間に患者登録が行われた(韓国・国立がんセンターの助成による)。 対象は、年齢40~65歳、第1度近親者に1人以上の胃がん患者がいるH. pylori感染者であった。胃がんや他臓器のがんの既往歴のある患者や、H. pylori除菌治療歴のある患者は除外された。 被験者は、H. pylori除菌治療を行う群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。H. pylori除菌治療は、ランソプラゾール(プロトンポンプ阻害薬)30mg+アモキシシリン1,000mg+クラリスロマイシン500mgが、1日2回、7日間投与された。 主要アウトカムは胃がんの発生とした。事前に規定された副次アウトカムは、追跡期間中のH. pylori除菌の状況別の胃がんの発生であった。胃がんリスクが55%、除菌達成例では73%低下 1,838例が無作為化の対象となり、除菌治療群に917例(平均年齢48.8±6.0歳、男性49.9%)、プラセボ群には921例(48.8±6.3歳、49.1%)が割り付けられた。1,676例(修正ITT集団、除菌治療群832例、プラセボ群844例)が主要アウトカムの解析に含まれた。主要アウトカム評価の追跡期間中央値は9.2年(IQR:6.2~10.6)、全生存率評価の追跡期間中央値は10.2年(8.9~11.6)だった。 胃がんは、除菌治療群が832例中10例(1.2%)で発生し、プラセボ群の844例中23例(2.7%)と比較して、頻度が有意に低かった(ハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.21~0.94、log-rank検定のp=0.03)。試験期間中に、1例の胃がんの予防に要する治療必要数(NNT)は65.7(95%CI:35.1~503.8)であった。胃がん発生例33例のうち、30例(90.9%)がStageI、3例(9.1%)はStageIIだった。 H. pylori除菌の状況別の胃がんの発生は、1,587例(H. pylori除菌達成例608例、持続感染例979例)で評価が可能であった。胃がんは、H. pylori除菌達成例が608例中5例(0.8%)で発生し、持続感染例の979例中28例(2.9%)に比べ、頻度が有意に低かった(HR:0.27、95%CI:0.10~0.70)。胃がんが発生した除菌治療群の10例のうち、5例(50.0%)にH. pyloriの持続感染が認められた。持続感染例では、除菌治療群とプラセボ群で胃がんの発生は類似していた。 除菌治療群の917例中16例(1.7%)およびプラセボ群の921例中18例(2.0%)が死亡し、全生存率に関して両群間に有意な差はなかった。また、胃がんによる死亡はみられなかった。 薬剤関連有害事象は全般に軽度であり、頻度は除菌治療群がプラセボ群よりも高かった(53.0% vs.19.1%、p<0.001)。除菌治療群で多い有害事象は、味覚変化(32.3% vs.3.5%、p<0.001)、悪心(6.6% vs.3.2%、p=0.001)、下痢(22.3% vs.6.1%、p<0.001)、腹痛(4.6% vs.0.9%、p<0.001)であり、有意差はないが消化不良(7.9% vs.6.1%)の頻度も高かった。 著者は、「本試験の結果からは、除菌が達成されなかった患者の胃がんリスクは、除菌治療群とプラセボ群で同様と考えられる。したがって、これらのデータは、test-treat-testアプローチ(検査の適応があり、検査結果が陽性の者は誰もが治療を受けるべきで、治療終了後は検査で除菌を確認)が推奨するように、除菌成功の確認の必要性を強調するものである」としている。

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HER2陽性転移乳がんに対するカペシタビン+トラスツズマブに対するtucatinibの上乗せ(HER2CLIMB試験):無増悪生存期間においてプラセボと比較して有意に良好(7.8ヵ月vs.5.6ヵ月)(解説:下村 昭彦 氏)-1185

 本試験は、経口チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であるtucatinibのカペシタビン+トラスツズマブへの上乗せを検討した二重盲検第III相比較試験である。主要評価項目は最初に登録された480例における独立中央判定委員会による無増悪生存期間(PFS)で、RECIST v1.1を用いて評価された。PFS中央値は7.8ヵ月vs.5.6ヵ月(ハザード比:0.54、95%CI:0.42~0.71、p<0.001)でありtucatinib群で有意に良好であった。副次評価項目である全登録症例におけるOS中央値は21.9ヵ月vs.17.4ヵ月(ハザード比:0.66、95%CI:0.5~0.88、p=0.005)であり、こちらもtucatinib群で有意に良好であった。 OSの延長を認めたことから、学会発表の場でも非常にインパクトが大きく、同日NEJM誌へ論文掲載された。同日に発表されたT-DXdとも対象が重なっており、今後の臨床での使用については議論が活発になるであろう。異なった試験間で単純な比較をすることはできないが、T-DXdのPFS中央値が16.4ヵ月であることを考えると、T-DXdが好んで使われる可能性は高いだろう。 現在、HER2陽性転移乳がんに対して使うことのできるTKIとしてラパチニブがあるが、本剤が承認された際にはTKIとしてはtucatinibが優先的に使われるであろう。その理由としては、(1)現在標準治療の1つであるカペシタビン+トラスツズマブへの上乗せ効果を証明した試験であること、(2)本試験の対象がトラスツズマブ、ペルツズマブおよびトラスツズマブ エムタンシンによる治療歴を対象としており現在の実臨床に即していること、である。 残念なことに、この試験には日本からは参加できておらず、現時点でtucatinibが国内で承認される見込みは低い。米国食品医薬品安全局への申請は進められており、Breakthrough Therapyに指定されている。

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境界性パーソナリティ障害とADHDの関係に対する環境の影響

 近年の研究において、小児期の注意欠如多動症(ADHD)から成人期の境界性パーソナリティ障害(BPD)への移行が示唆されている。一般的な遺伝的影響が知られているが、生涯を通じてある疾患から別の疾患へ移行する可能性に対する環境要因の影響に関するエビデンスは、ほとんどない。スペイン・Hospital Universitary Vall d'HebronのNatalia Calvo氏らは、ADHD児におけるBPD発症リスク因子として、小児期のトラウマの影響を検証するため、既存のエビデンスのレビューを行った。Borderline Personality Disorder and Emotion Dysregulation誌2020年1月6日号の報告。 文献検索には、PubMed、Science Direct、PsychInfoを用いた。疫学および臨床サンプルよりBPDとADHDとの関係および小児期のトラウマの影響に関する研究を選択した。 主な結果は以下のとおり。・検索条件に一致した研究は、4件のみであった。・すべての研究は、小児期のトラウマをレトロスペクティブに分析しており、ADHDの有無にかかわらず、BPD成人患者を最も頻繁に検討していた。・分析されたエビデンスは、小児期のトラウマ数と臨床的重症度の高さとの関連を示唆していた。・分析された研究のうち3件では、感情的および性的なトラウマを経験したADHD児において、成人期のBPD発症リスクの増加が認められた。 著者らは「ADHD児におけるトラウマイベント、とくに感情的なトラウマの経験は、成人期のBPD発症リスクの増加と関連する可能性が示唆された。しかし、このことをリスク因子と見なすには、縦断的研究のような、より多くの研究が必要とされる。これらの研究から得られたエビデンスは、両疾患に関連する機能障害を軽減するための早期介入プログラムを開発するうえで役立つかもしれない」としている。

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トラスツズマブ エムタンシン既治療のHER2陽性転移乳がんに対するtrastuzumab deruxtecan(DESTINY-Breast01):単アームの第II相試験で奏効率は60.9%(解説:下村 昭彦 氏)-1184

 本試験は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)既治療のHER2陽性乳がんにおけるtrastuzumab deruxtecan(DS-8201a, T-DXd)の有効性を検討した単アーム第II相試験である。主要評価項目である独立中央判定委員会による奏効率(objective response rate:ORR)は60.9%と非常に高い効果を示した。病勢制御率(disease control rate:DCR)は97.3%、6ヵ月以上の臨床的有用率(clinical benefit rate:CBR)は76.1%であった。 ご存じのように、2018年のASCOで第I相試験の拡大コホートの結果が発表され、HER2陽性乳がんにおいて奏効率が54.5%、病勢制御率が93.9%と非常に高い効果が報告され、治療効果が期待されていた薬剤の1つである。T-DXdは抗HER2抗体であるトラスツズマブにトポイソメラーゼ阻害剤であるexatecanの誘導体を結合した新しい抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)製剤である。1抗体当たりおよそ8分子の殺細胞性薬剤が結合しており、高比率に結合されている。 HER2陽性転移乳がんの標準治療は、1次治療でペルツズマブ+トラスツズマブ+タキサン療法、2次治療でT-DM1が行われていることが多い。3次治療以降はトラスツズマブ+化学療法もしくはラパチニブ+化学療法などが行われることが多く、治療効果は限定的であった。こういった日本を含む世界の現状から、T-DXdは非常に期待されている薬剤であり、2019年12月には米国食品医薬品安全局による承認を受けている。国内でもすでに承認申請が行われており、早期の承認が待たれている。また、T-DXdは国内企業が開発しており、学会発表や論文の筆頭・共著に国内の研究者が多数参加していることが特徴である。 一方で注意も必要である。Grade3以上の有害事象は50%以上の症例で確認されている。血液毒性や悪心嘔吐が頻度の高い有害事象であるが、13.6%で薬剤性肺障害が報告されている(Grade3は1例のみ)。薬剤の特性として肺障害が起きやすいことは指摘されていたが、実際に投与された症例でも薬剤性肺障害の頻度が高いことが示されている。治療関連死のリスクもあるため、今後実臨床下で使用する際には十分薬物療法の経験を積んだ専門医が治療に関わる必要があるだろう。 現在、T-DM1後の症例を対象として抗HER2薬+化学療法と直接比較を行う第III相試験、T-DM1との直接比較を行う第III相試験が行われており、目を離せない薬剤である。

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低用量アスピリン、早産と周産期死亡を抑制/Lancet

 低~中間所得国の未経産妊婦では、妊娠早期(6週0日~13週6日)に低用量アスピリンを投与することで、妊娠37週未満と34週未満の早産および胎児の周産期死亡の発生が改善されることが、米国・Christiana CareのMatthew K. Hoffman氏らが行った二重盲検プラセボ対照無作為化試験「ASPIRIN試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年1月25日号に掲載された。低~中間所得国では、早産は新生児死亡の原因として頻度が高い状態が続き、その負担は過度に大きいという。低用量アスピリンの妊娠高血圧腎症の予防に関するメタ解析により、とくに妊娠16週未満の時期に投与を開始すると早産の発生が低下する可能性が示唆されている。6つの低~中間所得国の無作為化試験 本研究は、6ヵ国(インド、コンゴ、グアテマラ、ケニア、パキスタン、ザンビア)の7施設が参加し、2016年3月23日~2018年6月30日の期間に患者登録が行われた(米国Eunice Kennedy Shriver国立小児保健発達研究所[NICHD]の助成による)。 対象は、18~40歳(コンゴ、ケニア、ザンビアは倫理審査委員会の許可があれば≧14歳の未成年者を含めた)の未経産の単胎妊娠女性であった。 被験者は、妊娠6週0日~13週6日の期間に、低用量アスピリン(81mg/日)またはプラセボの錠剤を投与される群に無作為に割り付けられた。妊娠36週7日または分娩まで、研究者、医療従事者、患者には治療割り付け情報がマスクされた。 主要アウトカムは、早産(妊娠≧20週0日~<37週0日の分娩数)の発生とした。早産11%、34週未満の早産25%、周産期死亡14%のリスク低減 1万1,976例(低用量アスピリン群5,990例、プラセボ群5,986例)の妊婦が登録され、1万1,544例(5,780例、5,764例)が主要アウトカムの解析に含まれた。>29歳は全体の2.2%であり、ベースラインの患者背景や国別の患者の割合は両群でほぼ同様であった。アドヒアランス(服薬順守率90%以上の患者の割合)は、低用量アスピリン群85.3%、プラセボ群84.4%であり、両群とも高かった。 妊娠37週未満の早産の割合は、低用量アスピリン群が11.6%(668/5,780例)と、プラセボ群の13.1%(754/5,764例)に比べ有意に低かった(リスク比[RR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.81~0.98、p=0.012)。 胎児の副次アウトカムのうち、周産期死亡(周産期[妊娠20週~産後7日以内]の死亡、1,000出産当たりの死亡数:45.7件vs.53.6件、RR:0.86、95%CI:0.73~1.00、p=0.048)、胎児消失(fetal loss、妊娠16~20週の死産と妊娠20週~産後7日以内の周産期死亡、1,000妊娠当たりの死亡数:52.1件vs.60.8件、0.86、0.74~1.00、p=0.039)、妊娠34週未満の早産(3.3% vs.4.0%、0.75、0.61~0.93、p=0.039)の割合は、いずれも低用量アスピリン群で有意に良好であった。 また、母親の副次アウトカムでは、高血圧性疾患(妊娠高血圧腎症、子癇、妊娠高血圧)を有する妊娠34週未満の早産(0.1% vs.0.4%、0.38、0.17~0.85、p=0.015)が、低用量アスピリン群で有意に良好だった。その他の副次アウトカムの発生は両群間で類似していた。 1つ以上の重篤な有害事象を発症した患者の割合(低用量アスピリン群14.0% vs.プラセボ群14.4%、p=0.568)には、両群間で差は認められなかった。母親の出血性合併症(分娩前の出血[0.6% vs.0.6%、p=0.815]、分娩後の出血[0.8% vs.0.7%、p=0.481]、上部消化管出血[0.1% vs.<0.1%、p=0.216])や、貧血(0.4% vs.0.4%、p=0.893)の発生にも差はみられなかった。また、母親の死亡(0.2% vs.0.2%、p=0.514)および新生児の生後28日以内の死亡(2.7% vs.3.2%、p=0.138)の頻度にも差はなかった。 著者は、「これらの知見は、既報のメタ解析の結果と一致する。今回の試験はサンプルサイズが大きいため、さまざまな低~中間所得国の多様な女性集団で、利益を明確に示すことができた」とし、「アスピリンは低コストで忍容性も高く、われわれのレジメンは世界のさまざまな臨床現場で容易かつ安全に導入が可能と示唆される」と指摘している。

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Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 医療関連感染症編

第1回 医療関連感染症診療の原則と基本第2回 カテーテル関連血流感染症第3回 カテーテル関連尿路感染症第4回 院内肺炎第5回 手術部位感染第6回 クロストリジウム・ディフィシル感染症第7回 免疫不全と感染症第8回 発熱性好中球減少症第9回 細胞性免疫不全と呼吸器感染 あの医療者必携のベストセラー書籍「感染症プラチナマニュアル」のレクチャー版!岡秀昭氏による大人気番組「感染症プラチナレクチャー」の第2弾は医療関連感染症編です。医療関連感染症は、どの施設でも避けることのできない感染症であり、その対策にはすべての医療者が取り組まなくてはなりません。この番組では、医療関連感染症診療の原則と、その診断・治療・予防について臨床の現場で必要なポイントに絞って岡秀昭氏が解説していきます。2019年4月の診療報酬改定で、抗菌薬適正使用を推進するため、入院患者を対象とした「抗菌薬適正使用支援加算」が新設されています。その中心を担うAST(抗菌薬適正使用推進チーム)やICTはもちろん、その他の医療者の教育ツールとしてもご活用ください。さあ、ぜひ「感染症プラチナマニュアル2019」を片手に本番組をご覧ください。※書籍「感染症プラチナマニュアル」はメディカル・サイエンス・インターナショナルより刊行されています。該当書籍は以下でご確認ください。amazon購入リンクはこちら ↓【感染症プラチナマニュアル2019】第1回 医療関連感染症診療の原則と基本初回は、医療関連感染症診療の原則と基本について解説します。基本的に原則は市中感染症編と“いっしょ”です。この番組を見る前にDr.岡の感染症プラチナレクチャー市中感染症編 第1回「感染症診療の8大原則」をご覧いただくとより理解が深まります。ぜひご覧ください。入院患者の感染症は鑑別診断が限られるため、一つひとつ確認しながら進めていけば、診断は比較的容易です。まずは、その鑑別診断について、考えていきましょう。第2回 カテーテル関連血流感染症今回のテーマはカテーテル関連血流感染症(CRBSI:catheter related blood stream infection)です。重要なことは、医療関連感染のCRBSIは「カテーテル感染」ではなく、「血流感染」であるということです。そのことをしっかりと頭に入れておきましょう。番組では、CRBSIの定義、診断、治療そして予防について詳しく解説します。第3回 カテーテル関連尿路感染症今回のテーマはカテーテル関連尿路感染症(CAUTI:Catheter-associated Urinary Tract Infection)です。院内感染が疑われた患者さんに膿尿・細菌尿がみられたら尿路感染症と診断していませんか?とくに医療関連感染で起こる尿路感染症は、特異的な症状を呈さないことも多く、Dr.岡でさえ、悩みながら、自問しながら、診断する大変難しい感染症です。その感染症にどう立ち向かうか!明快なレクチャーでしっかりと確認してください。第4回 院内肺炎今回のテーマは院内肺炎(HAP:hospital-acquired pneumonia)です。医療関連感染である院内肺炎は診断が非常に難しく、また、死亡率が高く、予後の悪い疾患です。その中で、どのように診断をつけ、治療を行っていくのか、診断の指針と治療戦略を明快かつ、詳細に解説します。また、医療ケア関連肺炎(HCAP:Healthcare-associated pneumonia)に関するDr.岡の考えについてもご説明します。第5回 手術部位感染今回のテーマは手術部位感染(SSI:Surgical Site Infection)です。手術部位感染の診断は簡単でしょうか?確かに、手術創の感染であれば、見た目ですぐに感染を判断することができますが、実は「深い」感染はかなり診断が難しく、手術部位や手術の種類によって対応も異なります。もちろん、手術を行った科の医師が対応すべきことですが、基本的なことについて理解しておきましょう。第6回 クロストリジウム・ディフィシル感染症今回はクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI:Clostridium Difficile Infection)です。院内発症の感染性腸炎はほとんどがCDIであり、それ以外だと非感染性(薬剤、経管栄養など)になります。CDIの診断と抗菌薬治療、そして感染予防について、明快にレクチャーします。とくに抗菌薬選択に関しては、アメリカのガイドラインだけに頼らない、岡秀昭先生の経験を基にした臨床での対応方法をお教えします。第7回 免疫不全と感染症免疫不全だからといって、ひとくくりにして、一律に広域抗菌薬を開始したり、やみくもにβ-Dグルカンやアスペルギルス抗原をリスクのない患者で測定するようなプラクティスをしていませんか?本当に重要なのは、まずは、どのような免疫不全かを判断すること。そのうえで、起こりうる病態、病原微生物を考えていきましょう。第8回 発熱性好中球減少症今回は発熱性好中球減少症(FN: Febrile Neutropenia)についてです。発熱性好中球減少症は診断名ではなく、好中球が減少しているときにおこる発熱の状態のことです。白血病やがんの化学療法中に起こることがほとんどです。FNは感染症エマージェンシーの疾患ですので、原因微生物や、臓器を特定できなくても、経験的治療を開始します。どの抗菌薬で治療を開始すべきか、またどのように診断をつけていくのか、治療効果の判断は?そして、また、その治療過程についてなど、岡秀昭先生の経験を交え、詳しく解説します。第9回 細胞性免疫不全と呼吸器感染最終回!今回は細胞性免疫不全者の呼吸器感染(肺炎)について、解説します。細胞性免疫不全者の呼吸器感染は、多様な微生物が原因となりうるため、安易に経験的治療を行わず、まずは微生物のターゲットを絞ることが重要となります。番組では、原因となる微生物の分類、そして、臨床像やCT画像で微生物を鑑別するポイントや、必要となる検査など、臨床で必要となる知識をぎゅっとまとめて、しっかりとお教えします。

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乳房温存術後の早期乳がん患者に対して加速乳房部分照射(APBI)は勧められるか?-RAPID試験の結果から(解説:岩瀬俊明氏)-1182

 加速乳房部分照射(Accelerated Partial Breast Irradiation:APBI)とは、乳房温存術後の乳房内再発の約70%以上の症例が切除後の腫瘍床周囲から発生することから、全乳房照射(Whole Breast Irradiation:WBI)の代わりに腫瘍床のみに部分照射を行う方法である。 メリットとしては1.線量を増加して短期間に照射を終えられる2.照射野を縮小することで有害事象を軽減できる3.短期間の治療により治療費を軽減できる(小線源治療を除く) デメリットとしては1.小線源治療や術中照射を選択した場合、手技の煩雑さや治療を受けられる施設が限られる2.長期的な有害事象、局所再発率や生存率が不明などが挙げられる。 現在乳がん診療ガイドラインでは“APBIは長期のエビデンスがまだ十分でなく、行わないことを弱く推奨する”とされている。一方で臨床の場では仕事または家族のケアのためにスケジュールを調整しながら放射線治療に通わなければならない乳がん患者は多く、APBIの潜在的な需要は大きい。 RAPID試験は乳房温存術後の2,135例の早期乳がん患者において乳房内再発(Ipsilateral Breast Tumor Recurrence:IBTR)を1次アウトカムに設定し、APBI後のIBTRがWBIに対して劣らない、という仮説に基づいたランダム化第III相非劣性試験である。非劣性マージンはハザード比の90%信頼区間の上限の2.02に設定された。結果としてAPBI群のハザード比は1.27(90%信頼区間:0.84~1.91)と非劣性が示され、2次アウトカムであるdisease-free survival、 event-free survival、overall survivalも両群で有意な差を認めなかった。一方で、APBI群では晩期有害事象の増加や整容性の低下が認められた。 本試験のポイントは以下のとおりである。1.対象が腫瘍径<3cm、リンパ節転移陰性、小葉がんは除外など、再発リスクが低い症例だった2.APBIは三次元外照射のみを用いた(総線量38.5Gyを10分割し、2回/日)3.晩期有害事象は乳房硬化と毛細血管拡張が多かった4.APBI後7年目の整容性の評価では、WBI群(15%)に対して約2倍のAPBI群の患者(31%)が整容性をFairまたはPoorと評価していた 本試験で示されたのは、APBI後のIBTRはWBIに劣らないものの、短縮治療のベネフィットは晩期有害事象と整容性に対してトレードオフの関係にある、ということであろう。今回長期予後が得られたことで、晩期有害事象と整容性の低下を許容できるならば、本邦でも再発低リスク乳がん患者に対して三次元外照射によるAPBIが治療の選択肢になる可能性はある。ただ、本試験にアジア人は1~2%しか参加しておらず、欧米人との体格の違いによるアウトカムへの影響は不明である。また試験デザインは異なるものの、NSABP B-39/RTOG 0413ではAPBIのWBIに対する同等性は示されなかった(別コラムを参照)。 現在整容性と晩期有害事象の改善を目的に、1回/日の三次元外照射を用いた試験が進行中である。今後も日本人に最適なAPBIの方法を臨床試験の枠内で検討していくことが望まれる。

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イノシシに肛門を突き破られた男性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第156回

イノシシに肛門を突き破られた男性photoACより使用出会っちゃいけない野生動物の第1位は当然クマですが、日本の猟師がこぞって上位に挙げる動物の中にイノシシがいます。2019年12月に、東京都足立区でイノシシが出没したというニュースが流れたのは記憶に新しいところ。今日は、そんなイノシシに肛門を突き破られた症例を紹介します。去年の干支がイノシシだったんだから、去年この論文を紹介すればよかった、と後悔しているワタクシ。Okano I, et al.Penetrating Anorectal Injury Caused by a Wild Boar Attack: A Case Report.Wilderness Environ Med. 2018 Sep;29(3):375-379.理由はわかりませんが、野生のイノシシによる外傷は、医学論文の世界ではほとんど報告されていません1)。イノシシ外傷がコワイのは「キバ」です。イノシシには上顎と下顎にそれぞれ天に向かってそそり立つキバ(犬歯)があるのですが、とくに下顎のキバはかなり鋭利で、スパっと切れるのです(写真)。写真. 野生のイノシシの犬歯(黒:上顎犬歯、白:下顎犬歯)(文献1より引用)画像を拡大するオスはキバで攻撃してきますが、メスは咬みついてくるそうです。そのため、「イノシシに肛門を突き破られた」というタイトルを読んで、ああオスにやられたんだなと思った医師は、かなり獣医学通と言えるでしょう。この症例報告は、83歳の男性が野生のイノシシに襲われ病院に搬送されたというものです。来院時すでに出血性ショックの状態でした。大腿深動脈と坐骨神経を損傷しており、広範囲に皮膚軟部組織が挫滅しており、腸骨骨折、気胸まで合併していました。そして、もっともひどかったのは肛門直腸損傷だったそうです。ブスっとイカれたんでしょうな、ブスっと。ひどい損傷だったため、便流変更術が行われました。彼は回復までにデブリードマンを含め、複数回の手術を受けたそうです。創部は浅そうに見えても、かなり深いところまで軟部組織の損傷がみられることがイノシシ外傷の特徴とされています2)。イノシシなどの野生動物による外傷の場合、洗浄とデブリードマンだけでなく、破傷風の予防とガス壊疽への移行を予防する必要があります。みなさんもイノシシに出会ったら、キバにご注意を!1)Kose O, et al. Management of a wild boar wound: a case report. Wilderness Environ Med. 2011 Sep;22(3):242-5.2)進来塁ら. 多発イノシシ外傷の2例. 創傷. 2017;8(4):150-4.

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TAVRの大動脈弁置換術の5年転帰/NEJM

 手術リスクが中等度の重症大動脈弁狭窄症患者において、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)と外科的大動脈弁置換術(SAVR)の5年後では、死亡または後遺障害を伴う脳卒中の発生率に有意差は確認されなかった。米国・シダーズ・サイナイ医療センターのRaj R. Makkar氏らが、無作為化試験「Placement of Aortic Transcatheter Valves(PARTNER)2コホートA試験」の結果を報告した。重症大動脈弁狭窄症で手術リスクが中等度の患者における、TAVR後の長期的な臨床転帰や生体弁機能については、SAVRと比較したデータが不足していた。NEJM誌オンライン版2020年1月29日号掲載の報告。中等度リスクの重症大動脈弁狭窄症患者約2,000例でTAVR vs.SAVR 研究グループは2011年12月~2013年11月の期間に、57施設において中等度の手術リスクがある重症の症候性大動脈弁狭窄症患者2,032例を登録した。予定された経大腿動脈アクセスまたは経胸腔アクセス(それぞれ76.3%と23.7%)で患者を層別化し、TAVR群またはSAVR群のいずれかに無作為に割り付け、臨床アウトカム、心エコーおよび健康状態の転帰について5年間追跡調査を行った。 主要評価項目は、全死亡または後遺障害を伴う脳卒中(修正Rankinスコア2点以上で、ベースライン時から脳卒中後30日/90日までに1点以上の上昇)とした。統計解析はintention-to-treat集団を対象とし、log-rank検定とKaplan-Meier法を用いた。TAVR群とSAVR群で死亡や後遺障害を伴う脳卒中の発生率に有意差なし 5年時において、全死亡または後遺障害を伴う脳卒中の発生率にTAVR群とSAVR群との間で有意差は確認されなかった(47.9% vs.43.4%、ハザード比[HR]:1.09、95%信頼区間[CI]:0.95~1.25、p=0.21)。 経大腿動脈アクセスのコホートでは同様の結果であったが(44.5% vs.42.0%、HR:1.02、95%CI:0.87~1.20)、死亡または後遺障害を伴う脳卒中の発生率は、経胸腔アクセスのコホートにおいてはTAVR群がSAVR群よりも高率であった(59.3% vs.48.3%、1.32、1.02~1.71)。 5年時点では、TAVR群がSAVR群と比較して、軽度以上の弁周囲大動脈弁逆流の割合が高値であった(33.3% vs.6.3%)。施術後の再入院率はTAVR群がSAVR群よりも高く(33.3% vs.25.2%)、大動脈弁の再介入率もTAVR群がSAVR群よりも高かった(3.2% vs.0.8%)。5年時点の健康状態の改善は、TAVR群とSAVR群で類似していた。 なお、本試験で使用された医療機器(SAPIEN XT)は、現在は臨床使用されていない。

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乳房温存術後の早期乳がん患者に対して加速乳房部分照射(APBI)は勧められるか?-NSABP B-39/RTOG 0413試験結果から(解説:岩瀬俊明氏)-1181

 加速乳房部分照射(Accelerated Partial Breast Irradiation:APBI)とは、乳房温存術後の乳房内再発の約70%以上の症例が切除後の腫瘍床周囲から発生することから、全乳房照射(Whole Breast Irradiation:WBI)の代わりに腫瘍床のみに部分照射を行う方法である。 メリットとしては1.線量を増加して短期間に照射を終えられる2.照射野を縮小することで有害事象を軽減できる3.短期間の治療により治療費を軽減できる(小線源治療を除く) デメリットとしては1.小線源治療や術中照射を選択した場合、手技の煩雑さや治療を受けられる施設が限られる2.長期的な有害事象、局所再発率や生存率が不明などが挙げられる。 現在乳がん診療ガイドラインでは“APBIは長期のエビデンスがまだ十分でなく、行わないことを弱く推奨する”とされている。一方で臨床の場では仕事または家族のケアのためにスケジュールを調整しながら放射線治療に通わなければならない乳がん患者は多く、APBIの潜在的な需要は大きい。 NSABP B-39/RTOG 0413は乳房温存術後の4,216例の早期乳がん患者において乳房内再発(Ipsilateral Breast Tumor Recurrence:IBTR)を1次アウトカムに設定し、APBI後のIBTRがWBIに対して同等である、という仮説に基づいたランダム化第III相同等性試験である。同等性マージンはハザード比の90%信頼区間の上限の1.5に設定された。結果としてAPBI群のハザード比は1.22(90%信頼区間:0.94~1.58)と同等性は示されなかった。2次アウトカムであるrecurrence-free intervalはAPBI群が有意に短縮していたが、distant disease-free interval、overall survivalでは両群間で有意な差を認めなかった。有害事象に関しては両群に有意な差は認めなかった。 本試験のポイントは以下のとおりである。1.対象が40歳以下、腋窩リンパ節転移3個まで、多中心性がんや小葉がんなど、再発リスクが高い症例を含んでいた2.APBIは三次元外照射に加えて小線源治療も用いた3.同等性は示されなかったもののAPBI後10年目でのIBTRの違いはわずか0.7%だった(recurrence-free intervalに関しても<1.6%) 本試験で示されたのは、同等とまではいかないものの、ある程度局所再発リスクが高い患者でもAPBIはWBIにかなり近い割合でIBTRを予防することができる、ということであろう。本試験の結果は統計学的にはネガティブであったが、10年目のIBTRの絶対差は1%以内である。今回、より再発リスクの低い症例を対象としたRAPID試験と併せて長期予後が得られたことで(別コラムを参照)、本邦でも再発低リスク乳がん患者に対してAPBIが治療の選択肢になる可能性はある。ただ、RAPID試験と同様にアジア人の参加が少なかったことや小線源治療の侵襲性、コストなど検討の余地がある。 本試験の整容性に関しては有意差がなかったと2019年の北米放射線学会にて追加報告があり、おそらくは27%の症例が小線源治療を受けていたことに起因すると考えられる。小線源治療は三次元外照射よりも整容性の面で優れていることが報告されており、今後も小線源治療を含め日本人に最適なAPBIの方法を臨床試験の枠内で検討していくことが望まれる。

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日本人統合失調症患者における長時間作用型抗精神病薬の使用と再入院率~全国データベース研究

 統合失調症患者に対する抗精神病薬の長時間作用型持効性注射剤(LAI)について、現在の処方状況および臨床結果を調査することは重要である。国立精神・神経医療研究センターの臼杵 理人氏らは、日本での統合失調症患者に対する抗精神病薬LAIについて、その処方割合と再入院率に関する調査を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2019年12月25日号の報告。 日本のレセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて、オープンデータセットを作成した。統合失調症の患者レコードを使用した。分析(1)において、2015年2月~2017年3月に精神科施設を受診した外来患者に対する抗精神病薬の処方割合を調査した。分析(2)においては、精神科施設を初回退院後90日以内に抗精神病薬LAIによる治療を受けた患者を対象に、退院後365日間の再入院率を調査した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬による治療を受けた統合失調症外来患者のうち、LAIの処方割合は3.5%であった。・再入院率は、統合失調症患者全体で41.0%、定型抗精神病薬LAIの単独療法を受ける患者で36.2%、非定型抗精神病薬LAIの単独療法を受ける患者で23.5%であった。 著者らは「日本での統合失調症治療において、抗精神病薬LAIは、まだ十分に普及していない。非定型抗精神病薬LAIは、定型抗精神病薬LAIと比較し再入院率が低かった。本結果は、今後の研究を行ううえで重要な基本情報となりうるが、集約データベースとデータベースの構造によって一般化可能性が制限されると考えられるため、解釈には注意が必要である」としている。

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新型コロナウイルスのゲノムの特徴/Lancet

 2019年12月に中国・武漢市で患者が報告され、その後、病原体として同定された新型コロナウイルス(2019-nCoV)について、中国疾病予防管理センターのRoujian Lu氏らがゲノム配列を調べた。その結果、2019-nCoVはSARS-CoVとは異なり、ヒトに感染する新たなβコロナウイルスと考えられた。系統解析では、コウモリがこのウイルスの最初の宿主である可能性が示唆されたが、武漢市の海鮮卸売市場で販売されている動物はヒトでのウイルス出現を促進する中間宿主である可能性が示された。さらに構造解析から、2019-nCoVがヒトのアンジオテンシン変換酵素(ACE)2受容体に結合できる可能性が示唆された。Lancet誌オンライン版2020年1月30日号に掲載。 著者らは、入院患者9例(うち8例は海鮮卸売市場を訪れた症例)の気管支肺胞洗浄液サンプルと培養分離株の次世代シークエンシングを行った。これらの症例から全体および部分的な2019-nCoVゲノムシークエンスを取得し、2019-nCoVゲノムとほかのコロナウイルスの系統解析を用いてウイルスの進化について同定し、可能性のある起源を推定した。 主な結果は以下のとおり。・9例から得られた2019-nCoVの10のゲノム配列は非常に類似し、同一性は99.98%以上だった。・2018年に中国東部の舟山で収集された2匹のコウモリ由来の重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルス(bat-SL-CoVZC45、bat-SL-CoVZXC21)は、2019-nCoV と88%の同一性であった。しかし、SARS-CoV(約79%)およびMERS-CoV(約50%)とは同一性は低かった。・系統解析により、2019-nCoVはβコロナウイルス属サルべコウイルス亜属に分類され、最も近縁のbat-SL-CoVZC45およびbat-SL-CoVZXC21より比較的長い分岐長を有し、SARS-CoVとは遺伝的に異なることが認められた。・ホモロジーモデリングから、2019-nCoVはキーである残基におけるアミノ酸変化にもかかわらず、受容体結合ドメイン構造がSARS-CoVと似ていることがわかった。

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3人に1人が臨床試験の結果を公表していなかった(解説:折笠秀樹氏)-1178

 臨床試験を実施しても結果を公表しないのは資源の無駄に当たるとともに、参加された被験者へも無責任ということで、2007年に米国FDAは法律(FDAAA)を取りまとめた。2017年には施行され、2018年1月から完全実施となった。その法律によると、臨床試験は終了後1年以内に登録サイトへ結果を公表しなければならない。米国で登録サイトというと、ほぼすべてが「ClinicalTrials.gov」に当たる。終了とは何かというと、最後の観察測定が取られた時点を指す。いわゆるLPO(Last Patient Out)から1年以内ということであり、データの固定時ではない。 2018年1月に本法律が完全実施されたため、2018年3月~2019年9月に「ClinicalTrials.gov」へ登録された全試験、4,209試験を調査対象とした。終了後1年以内の公表率は40.9%にすぎなかった。1年以降でも公表された割合は63.8%だった。せっかく臨床試験を実施しても、何も公表していないのが3分の1もあった。ヘルシンキ宣言によると、35条に事前登録、36条に結果の公表は研究者の責務と書かれている。これを守っていない研究者が3人に1人もいるという実態が明らかになった。 この法律に違反すると、1日遅れるごとに1万ドル(約100万円)、主宰者(スポンサー)から徴収することになっている。1ヵ月遅れたら3,000万円にもなる。これはFDAによる法律のため、実際には国の認可を求める製薬企業が対象と思われる。そのためか、製薬企業の遵守率(終了1年以内公表率)は高かった。政府主導では31.4%なのに、製薬企業では45~50%程度だった。大企業(ノバルティス、ギリアド、グラクソ・スミスクライン、ファイザー、ロシュ、アストラゼネカ)では、92~100%というほぼ完璧な遵守率だった。 多くの臨床試験を実施しているMD Anderson Cancer CenterやNational Cancer Instituteでも30%程度の遵守率だったが、Sloan Kettering Cancer Centerは91.7%、University of North Carolina at Chapel Hillは81.3%と高い施設もあった。それでも、最終的公表率でみると80%以上だった。また、臨床試験を数多く実施している主宰者では公表率は高く、あまり行っていないところでは低かった。 終了1年以内と最終的公表率の違いをみると、企業主導では50.3%が64.5%へ増えただけなのに、政府主導では31.4%が74.2%へ急増していた。企業主導ではFDAの法律を意識しており、終了1年以内の公表率が高かったのだろう。政府主導では1年以内は守っていないが、最終的には論文化など公表しておかないとグラント申請に影響するため、最終的な公表率は高かったと思われる。

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慢性炎症性皮膚疾患、帯状疱疹リスクと関連

 アトピー性皮膚炎や乾癬などの慢性炎症性皮膚疾患(CISD)と帯状疱疹の関連が示された。米国における横断研究の結果、帯状疱疹ワクチン接種が低年齢層で推奨されているにもかかわらず、多くのCISDで帯状疱疹による入院増大との関連が認められたという。米国・ノースウェスタン大学フェインバーグ医学院のRaj Chovatiya氏らが報告した。CISD患者は、帯状疱疹の潜在的リスク因子を有することが示されていたが、CISDの帯状疱疹リスクについては、ほとんど知られていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、CISDに特異的なワクチンガイドラインを確立する必要があるだろう」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年1月17日号掲載の報告。 研究グループは、CISDと帯状疱疹の関連を明らかにする目的で、2002~12年の全米入院患者サンプル(Nationwide Inpatient Sample)のデータを用いて、米国の入院患者の代表コホート(小児と成人6,808万8,221例)について解析を行った。 年齢、性別、人種/民族、保険状況、世帯収入、および長期の全身性コルチコステロイド使用を含む多変量ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・帯状疱疹による入院と、アトピー性皮膚炎(補正後オッズ比[OR]:1.38、95%信頼区間[CI]:1.14~1.68)、乾癬(4.78、2.83~8.08)、天疱瘡(1.77、1.01~3.12)、類天疱瘡(1.77、1.01~3.12)、菌状息肉症(3.79、2.55~5.65)、皮膚筋炎(7.31、5.27~10.12)、全身性強皮症(1.92、1.47~2.53)、皮膚エリテマトーデス(1.94、1.10~3.44)、白斑(2.00、1.04~3.85)、サルコイドーシス(1.52、1.22~1.90)との関連が認められた。・扁平苔癬(補正前OR:3.01、95%CI:1.36~6.67)、セザリー症候群(12.14、5.20~28.31)、限局性強皮症(2.74、1.36~5.51)、壊疽性膿皮症(2.44、1.16~5.13)は、二変量モデルにおいてのみオッズ比の上昇が示された。・60歳未満および50歳未満の感度解析でも、類似の結果が示された。・CISDにおける帯状疱疹の予測因子は、「女性」「慢性症状がより少ない」「長期にわたるコルチコステロイドの全身使用」などであった。

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米国うつ病患者の薬物療法と治療パターン

 ケアの潜在的なギャップを特定するためには、リアルワールドで患者がどのように治療されているか理解することが不可欠である。米国・Janssen Research & DevelopmentのDavid M. Kern氏らは、現在の米国におけるうつ病に対する薬理学的治療パターンについて解析を行った。BMC Psychiatry誌2020年1月3日号の報告。 2014年1月~2019年1月に、4つの大規模な米国レセプトデータベースよりうつ病患者を特定した。対象は2回以上のうつ病診断歴またはうつ病入院患者で、最初のうつ病診断の1年以上前および診断後3年間にデータベースへの登録がある患者を適格とした。対象患者に対する治療パターンは、薬剤クラスレベル(SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬、その他の抗うつ薬、抗不安薬、催眠鎮静薬、抗精神病薬)で、利用可能なすべてのフォローアップ期間中に収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象のうつ病患者は、26万9,668例であった。・フォローアップ期間中に、薬理学的治療を行っていなかった患者の割合は29~52%であった。・治療を行っていた患者の約半数は、2つ以上の異なるクラスの薬剤で治療が行われていた。また、3クラス以上の薬剤で治療が行われていた患者は4分の1、4クラス以上の薬剤で治療が行われていた患者は10%以上であった。・最も一般的な第1選択薬はSSRIであったが、多くの患者において抗うつ薬治療前に、抗不安薬、催眠鎮静薬または抗精神病薬による治療が行われていた。・クラス間の併用による治療は、第1選択薬での治療の約20%から第4選択薬での治療の40%の範囲内で認められた。 著者らは「うつ病と診断された多くの患者は治療を受けていない。また、治療を受けていた患者の多くは、最初の治療が抗うつ薬以外の薬剤によって行われていた。半数以上の患者は、フォローアップ期間中に複数のタイプの治療を受けており、多くの患者において初回治療が最適ではなかった可能性が示唆された」としている。

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