うつ病とその後の認知症診断との関連~コホート研究

提供元:ケアネット

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公開日:2020/02/12

 

 うつ病は、認知症リスクの増加に関連する疾患である。しかし、これまでの研究においてはフォローアップ期間の短さ、家族要因の調整不足が、うつ病と認知症との関連に影響を及ぼしていた可能性がある。スウェーデン・ウメオ大学のSofie Holmquist氏らは、家族要因を調整したうえで35年以上のフォローアップを実施し、うつ病とその後の認知症との関連を調査した。PLOS medicine誌2020年1月9日号の報告。

 2005年12月31日の時点でスウェーデン在住であり50歳以上の334万1,010人より、2つのコホートを形成した。うつ病と認知症の診断を特定するため、1964~2016年のSwedish National Patient Registerのデータを検索した。コホート1では、うつ病患者11万9,386例と非うつ病対照群を1対1でマッチさせた集団一致コホート研究を実施した。コホート2では、うつ状態が異なる同性の兄弟5万644例を対象とし、兄弟コホートを実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・コホート1では、平均フォローアップ期間10.41年(範囲:0~35年)に、認知症と診断された患者は9,802例であった。
・うつ病患者の5.5%、非うつ病対照群の2.6%で認知症が発症しており(調整オッズ比[aOR]:2.47、95%CI:2.35~2.58、p<0.001)、アルツハイマー病(aOR:1.79、95%CI:1.68~1.92、p<0.001)よりも、血管性認知症(aOR:2.68、95%CI:2.44~2.95、p<0.001)との関連が強かった。
・認知症診断との関連は、うつ病診断後、最初の6ヵ月間で最も強かった(aOR:15.20、95%CI:11.85~19.50、p<0.001)。その後、急激に減少するものの、20年以上のフォローアップ期間にわたり持続していた(aOR:1.58、95%CI:1.27~1.98、p<0.001)。
・コホート2においても同様に、認知症診断との関連はうつ病診断後、最初の6ヵ月間で最も強く(aOR:20.85、95%CI:9.63~45.12、p<0.001)、その後は急激に減少するものの、20年以上のフォローアップ期間にわたり持続していた(aOR:2.33、95%CI:1.32~4.11、p<0.001)。
・調整モデルには、性別、ベースライン時の年齢、市民権、地位、世帯収入、ベースライン時の診断を含めた。
・主要な研究方法論的制限は観測データであり、これらの関連性は因果関係を示すものではない。

 著者らは「うつ病は、診断から20年以上経過しても認知症発症リスクの増加と関連しており、家族要因を調整してもなお、その関連性は残存している。認知症発症リスク低下に対し、うつ病の予防と治療の成功が有用であるか検証するためには、さらなる研究が求められる」としている。

(鷹野 敦夫)