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COVID-19、ヒドロキシクロロキンの使用は支持されない/BMJ

 ヒドロキシクロロキンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する有効な治療薬として期待され世界的に注目されていたが、リアルワールドで収集した観察データを用いた臨床研究の結果、酸素投与を要するCOVID-19肺炎入院患者へのヒドロキシクロロキン使用は、支持されないことを、フランス・パリ・エスト・クレテイユ大学のMatthieu Mahevas氏らが報告した。COVID-19による呼吸不全や死亡を予防する治療が緊急に必要とされる中、ヒドロキシクロロキンは、in vitroでCOVID-19の原因である新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抑制効果が報告され、小規模な臨床試験でも有効性が示唆されていた。BMJ誌2020年5月14日号掲載の報告。フランスの4施設におけるCOVID-19肺炎入院患者におけるヒドロキシクロロキンの有効性を後ろ向きに解析 研究グループは、2020年3月12日~31日の期間に、フランスの3次医療施設4施設に入院したCOVID-19肺炎患者全例について電子カルテをスクリーニングし、18~80歳で酸素投与を必要とするが集中治療室(ICU)への入室は必要としないSARS-CoV-2感染が確認された肺炎患者を適格症例として、入院48時間以内にヒドロキシクロロキン600mg/日の投与を開始した患者(治療群)と、ヒドロキシクロロキンを投与せず標準治療を行った患者(対照群)に分け比較した。 主要評価項目は21日時点でのICU入室を伴わない生存率、副次評価項目は全生存期間、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を伴わない生存率、酸素投与からの離脱、自宅退院またはリハビリテーション施設への転院である(すべて21日時点)。解析は、逆確率重み付け法により交絡因子を調整した。ヒドロキシクロロキン治療群と対照群とで生存率に有意差なし 主要解析の対象集団は全体で181例、治療群が84例、対照群が89例であり、入院後48時間以降にヒドロキシクロロキンの投与を開始した8例も追加された。 主要評価項目である21日時のICU入室を伴わない生存率は、治療群76%、対照群75%であった(加重ハザード比[HR]:0.9、95%信頼区間[CI]:0.4~2.1)。また、21日時点の全生存率は治療群89%、対照群91%(加重HR:1.2、95%CI:0.4~3.3)、ARDSを伴わない生存率はそれぞれ69%、74%(加重HR:1.3、95%CI:0.7~2.6)、酸素投与から離脱した患者の割合は82%、76%(加重リスク比:1.1、95%CI:0.9~1.3)であった。 治療群の8例(10%)に、治療の中止を要する心電図異常が認められた。

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心血管疾患、発症率や死亡率に性差/Lancet

 心血管疾患の治療は、1次予防に関しては男性より女性で多く行われており、2次予防については反対の傾向がみられたものの、心血管疾患の既往の有無にかかわらず男性より女性のほうが、一貫してアウトカムは良好であることが観察された。カナダ・マックマスター大学のMarjan Walli-Attaei氏らが、27ヵ国の35~70歳、20万2,072人が参加した大規模前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiological(PURE)研究」の解析結果を報告した。主に高所得国の研究では、男性と比較して女性は心血管疾患に対するケアをあまり受けておらず死亡リスクが高い可能性があることが報告されているが、リスク因子、1次あるいは2次予防の服薬、心血管疾患の発症、死亡を系統的に報告している研究はほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2020年5月20日号掲載の報告。PURE研究の約20万人について解析 研究チームらは、アジア、アフリカ、欧州、南米、北米および中東の6地域27ヵ国(高所得国、中所得国および低所得国を含む)1,030地域の都市部および地方に在住の35~70歳の男女を対象に、社会人口統計学的特性、リスク因子、使用薬剤、心臓の検査と治療に関する情報を収集し解析した。 3期にわたって参加者が登録され(第1期17ヵ国15万7,705人、第2期4ヵ国1万785人、第3期4ヵ国9,321人および南米で進行中のコホート2万4,261人)、解析対象は2005年1月6日~2019年5月6日に登録された計20万2,072人となった。このうち、第1期および第2期に登録された16万8,490人について、心血管疾患の発症および死亡を追跡調査した。 20万2,072人のうち、女性は11万9,799人、男性は8万2,273人で、平均年齢(±SD)はそれぞれ50.8±9.9歳および51.7±10歳、追跡期間中央値は全体で9.5年(四分位範囲:8.5~10.9)であった。男女差は中低所得国で顕著 心血管疾患リスクは、2つの異なるリスクスコア(INTERHEARTおよびFramingham)を用いた場合でも、女性が男性より低かった。健康的な生活習慣や有効な薬物治療などの1次予防は、男性より女性で高頻度に行われていた。 心血管疾患の発症率(/1,000人年)は、女性4.1(95%信頼区間[CI]:4.0~4.2)、男性6.4(6.2~6.6)で(補正ハザード比[aHR]:0.75、95%CI:0.72~0.79)、全死亡率は女性4.5(95%CI:4.4~4.7)、男性7.4(7.2~7.7)であり(aHR:0.62、95%CI:0.60~0.65)、いずれも女性が低値であった。 2次予防治療、心臓検査、冠動脈血行再建は、各国すべてのグループの冠動脈疾患を有する参加者について、女性のほうが男性より頻度が低かった。女性は男性に比べて心血管疾患イベントの再発リスクが低く(再発率/1,000人年は女性20.0[95%CI:18.2~21.7]、男性27.7[25.6~29.8]、aHR:0.73[95%CI:0.64~0.83])、新規心血管疾患イベント後の30日死亡率も低かった(女性22% vs.男性28%、p<0.0001)。 治療とアウトカムにおける女性と男性の違いは、心血管疾患既往の有無にかかわらず、高所得国ではわずかであったが中低所得国では顕著であった。

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テーマ、デザインともに価値を見いだせない(解説:野間重孝氏)-1233

 この研究デザインについてはpre-studyとも言える論文(Qaderdan K, et al. Am Heart J. 2015;170:981-985.)で説明されていると言うのであるが、元論文に当たってみても著者らが言うような明確といえるほどの説明はなされていない。この種の評論を書くと意地悪ジイさん扱いされてしまいそうであることを覚悟して書き込ませていただくと、最近の論文は研究デザインとその意味付けといった最も重要な部分や統計処理などを○○参照とかappendix参照などで済ませているケースが目立つ。それでその○○なりappendixに当たってみると―予想通りというか―説明不足であったり、非常にわかりづらかったりするのである。また、appendixだけで70~80ページなどというものも珍しくない。多くの雑誌でページ数や構成に厳しい注文が出されることが原因の1つであるようだ。これは執筆者の皆さんというより雑誌編集者の皆さんへ苦言を呈したい。 上記はさておき、この論文で行われた研究内容自体は決して難解なものではなく、70歳以上の高齢者のNSTEMI患者を対象として、クロピドグレル投与群とチカグレロル/プラスグレル投与群に無作為に分け、1年間フォローしたというものである。 疑問点はなぜ上記のような分け方がなされたのかという点にあるのだが、この点について著者らは何も説明していない。クロピドグレル、プラスグレルはいずれもチクロピジンと同じチエノピリジン系に属する薬剤であり、P2Y12に不可逆的に結合することで血小板凝集を抑制する薬剤である。この系統の薬剤はいわゆるプロドラッグで、肝臓で代謝を受けることにより効果を発揮する。ここでクロピドグレルがCYP2C19の多形性に大きく影響されるのに対して、プラスグレルは小腸のカルボキシエステラーゼに続いて複数の肝臓の代謝酵素(CYP3A、CYP2B6、CYP2C9、CYP2C19)によって速やかに代謝され活性化するため、効果の個体差が小さいことに加え、効果発現までの時間が大幅に短縮されていることに大きな違いがある。しかしながら、両薬がいずれもチエノピリジン系に属する薬剤であることには変わりはない。 一方チカグレロルはcyclo pentyl triazolo pyrimidine(CPTP)系に分類される薬剤で、チエノピリジン系薬剤との大きな違いは自身が活性体であって代謝を受けることなく効果を発揮すること、P2Y12への結合が可逆的である点にある。このため効果の発現が速やかであるとともに、中止により比較的短期間で血小板機能が回復することが利点である。しかしこの有利な特徴の反面、1日2回投与が必要であること、出血合併症の頻度がやや高いこと、呼吸困難等の副作用が比較的高頻度で生じることが欠点とされ、実際わが国の標準プロトコールではDAPTにおいて「何らかの理由で他の抗血小板薬が使用できない場合」に限定されて使用許可がなされている(ただし欧州ではクロピドグレルより優先順位が高く設定されている)。 上記より疑問点は容易に浮かび上がると思う。なぜクロピドグレルvs.チカグレロル/プラスグレルというデザインがなされたのかという点である。本研究では結果としてプラスグレルがチカグレロル/プラスグレル群の5%にしか投与されなかったことで、偶然クロピドグレルvs.チカグレロルの図式が成立したかに見えるのであるが(5%といえども決して無視できない数字だという意見は当然ある)、これは当初からのデザインによるものではない。さらにチカグレロルに出血性合併症が多いことはすでにPLATO試験、PEGASUS試験で明らかにされていることであり、とくに目新しい結果ではない。呼吸困難が問題になることも、ある程度当初からわかっていたことだったといえる。さらに上記のようにプラスグレルの作用には個人差があり、これがかえって結果に対して有利に働いた可能性も指摘されなくてはならないのではないだろうか。 大変にぶしつけな書き方になってしまい申し訳ないが、評者はこの研究については研究テーマ、デザイン両観点から価値を見いだすことができない。

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第37回 味覚障害に対する亜鉛の有効性と必要用量は?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 味覚障害は実に多くの原因によって起こります。少し古いデータですが、「重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性味覚障害」で紹介されている味覚障害の原因別頻度によると、薬物性味覚障害が最も多く(21.7%)、特発性(15.0%)、亜鉛欠乏性(14.5%)、心因性(10.7%)と続き、嗅覚障害、全身疾患性、口腔疾患、末梢神経障害、中枢性神経障害による味覚障害も報告されています1)。直近では、SARS-CoV-2感染による軽症COVID-19患者では味覚や嗅覚に異常を来すケースが64.4%あることが報告されているため、より不安を覚える患者さんもいるかもしれません2)。今回は、比較的頻度が高い亜鉛欠乏性味覚障害の治療に関する研究を紹介します。試験は多くありますが、コクランのシステマティックレビューがあるので、こちらを読めばまとめて概要がつかめます3)。ここでは、10試験(581例)が対象で、そのうち9試験(566例)を解析に含めています。このレビューでは、特発性か亜鉛欠乏、または慢性腎不全に起因する味覚障害に関する研究のみを対象として、9試験544例の味覚障害患者に対して、亜鉛サプリメントとプラセボで比較しています。2試験の参加者は平均年齢10歳と11.2歳の小児と青少年で、残りの7試験の参加者は成人です。システマティックレビューはアウトカムごとに評価しますが、いくつかアウトカムを取り上げましょう。1つ目にVAS質問紙を用いて味覚障害の改善を評価し、平均3ヵ月間の追跡調査期間中にVASスコアが5%以上改善したと定義した場合の2試験119例における味覚改善の患者報告アウトカムは、亜鉛群ではプラセボ群と比較して40%味覚改善が相対的に増えています。これは1,000人当たりにすると407人の改善が569人に増えたという結果です(リスク比:1.40、95%信頼区間[CI]:0.94~2.09)。ただし、ランダム化が不明瞭であったり、脱落があったりするなどエビデンスの質としてはとても低いとされています。2つ目に、特発性および亜鉛欠乏性味覚障害患者で、ろ紙ストリップ法とろ紙ディスク法で評価した味覚の改善度合いを平均3ヵ月間追跡調査した3試験366例の客観的アウトカムでは、標準化平均差(SMD):0.44、95%CI:0.23~0.65です。ただし、出版バイアス、選択バイアスおよび信頼区間が広く不精確であることから、エビデンス総体の質はとても低いとされています。なお、ろ紙ディスク法は、舌の測定部位に甘味、塩味、酸味、苦味の4つの味の溶液を浸した小さなろ紙を置き、感じた味を答えてもらうという比較的一般的に行われている試験です。実臨床では亜鉛の用量も気になるところですので、2つ目のアウトカムで引用されているわが国のSakagamiの論文を見てみましょう4)。こちらは、亜鉛含有製剤であるポラプレジンクの多施設無作為化プラセボ対照二重盲検試験です。血清亜鉛値が低い患者を含む特発性味覚障害患者の治療における亜鉛含有化合物の有効性と安全性を評価するため、味覚障害患者109例をプラセボ群と亜鉛用量の異なる3つの治療群に割り付けています。各群の患者は、プラセボ(28例)、ポラプレジンク製剤17mg(27例)、同34mg(26例)、同68mg(28例)のいずれかを12週間毎日服用しました。亜鉛の1日の平均摂取推奨量は成人男性で11mg、成人女性で8mgですので5)、亜鉛摂取量はいずれもそれを大きく上回る量です。主観的な症状のスコアは、34mg群と68mg群でプラセボ群よりも改善しました。ポラプレジンクの適応症は胃潰瘍ですが、添付文書にはフリーラジカルに対する作用や創傷治癒促進作用の記載もあり、味覚障害、嗅覚障害、皮膚障害のほか、顆粒はがん治療に伴う口内炎にうがい薬として使われることもあるので併せて押さえておくとよいでしょう6)。効果の程度や検査方法など背景を知ったうえで、患者さんに安心してもらえる説明をするための参考になれば幸いです。1)「重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性味覚障害」, 厚生労働省.2)Spinato G, et al. JAMA. 2020 Apr 22. [Epub ahead of print]3)Kumbargere Nagraj S, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017;12:CD010470.4)Sakagami M, et al. Acta Otolaryngol. 2009;129:1115-1120.5)厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』6)小林敦. 日口診誌. 2016;29:8~12.

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1分間英語スピーチ【Dr. 中島の 新・徒然草】(325)

三百二十五の段 1分間英語スピーチネットで見たある有名人。毎日テーマを決めて、英語で1分間スピーチの練習をしているのだとか。たいしたもんだ、と感心した私は、自分でもやってみることにしました。英検でもそのような形式のスピーキング試験があるそうだし。中島「1分間英語スピーチをするから、何かテーマを出してくれ」女房「そんなんできへん」中島「そう言わずに、何か出してくれよ」女房「ええー!」いきなりテーマを出してくれ、と言われても、普通は困りますよね。女房「パン屋」中島「はあ、パン屋ってか?」女房「……」中島「地球温暖化とか死刑制度の是非とか、そういうのではないわけ?」女房「……」中島「パン屋って、それショボ過ぎるがな」女房「大事じゃん、パン屋って」中島「そこまで言うんやったら、ひとつパン屋で頑張ってみよか」と、頑張ったのですが、何も出てきません。パン屋について英語で1分間語れと言われても、厳し過ぎる!日本語でも難しい。皆さんもやってみてください。その日も次の日も色々考えてみました。で、ようやく考えた1分間スピーチ。故郷の神戸は、パン屋とケーキ屋だらけ転校生に指摘されるまで気付かなかった港町の風習なのか、日本でありながら毎日の朝食はパンだったなるほど大阪に来たら、パン屋は少ない幸い、今住んでいる近所にはパン屋が幾つかあるベストは何とかいうフランス語の難しい名前覚えられないので我々は「親父パン」と呼んでいる親父の作るパン・ド・ミーが最高でも、イギリスパンは他店のほうがうまいというわけで幸せなパン屋ライフを送っている確かにパン屋は生活のインフラだと思うこれを英語に直してみると……In my hometown of Kobe, there are many bakeries and cake shops. I didn't notice this until it was pointed out by a transfer student. Perhaps it was a custom of the port town, that everyday breakfast would be bread, even in Japan. Indeed, there are fewer shops in Osaka. Fortunately, I found several bakeries in my neighborhood. The best shop has a complicated French name to pronounce. My wife and I call it "Dad's Bread" because we can't remember the exact name. The pain de mie from that shop is my favorite. However, white bread is better at other stores. Thanks to Dad's Bread, I can enjoy eating delicious bread. I think bakeries are essential to our way of life.こんな感じかな、正しいかは知らんけど。これを読み上げてみると56秒です。ちょうど良い長さですね。というわけで、1分間英語スピーチ作成。これからもやれる範囲でやってみようと思います。最後に1句パン屋でも スピーチネタに なったぞな

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東京都在住高齢者の認知症の特徴

 認知症の早期診断を促進するために、一連の政策が実施されているものの、多くの高齢者において認知症は見逃されている可能性がある。東京都健康長寿医療センター研究所の宇良 千秋氏らは、東京都内に在住の高齢者を対象に、未検出の認知症の特徴について調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2020年4月15日号の報告。 本研究では、3段階の調査を実施した。第1段階として、東京都内某所に在住する70歳以上の高齢者7,614人に対しアンケートを郵送し、5,430人分を回収した。第2段階として、2,020人にミニメンタルステート検査(MMSE)を含む対面調査を実施した。第3段階として、MMSEスコア24未満の高齢者335人中198人を往診した。認知症診断、臨床的な認知症の評価および社会的支援の必要性は、学術チームにより自宅で評価した。心理学的、社会学的、社会人口統計学的変数の評価も行った。 主な結果は以下のとおり。・198人中78人(39.4%)の高齢者が認知症であると評価された。・34人は過去に認知症と診断されていた。つまり、198人の高齢者のうち、未検出の認知症患者の割合は、56.4%であった。・認知症と診断されていない認知症の人たちには、とくに認知症診断、健康状態に関するメディカルチェック、継続的な医療と住宅支援の分野において、より複雑な社会的支援の必要性が認められた。・さらに、フレイル(要介護状態の予備群)の兆候が認められた。 著者らは「認知症と診断されていない認知症の高齢者は、住居を失う、または身体的健康を損なうリスクがあり、このことは人権に対する脅威となりうる」としている。

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FDA、ALK陽性NSCLCの1次治療としてbrigatinib承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年5月23日、ALK陽性転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療にALK阻害薬brigatinibを承認した。 この承認は、未治療のALK陽性の局所進行または転移のあるNSCLC患者におけるbrigatinibとクリゾチニブの有効性と安全性を比較した第III相ALTA-1L臨床試験の結果に基づくもの。 brigatinibの客観的奏効率(ORR)は74%、クリゾチニブでは62%であった。べースラインで測定可能な脳転移のある患者のORRは78%、クリゾチニブでは26%であった。無病生存率(PFS)中央値は、brigatinib24ヵ月、クリゾチニブ11ヵ月、ハザード比は0.49であった。 brigatinibの一般的な有害事象(AE)は、下痢(53%)、発疹(40%)、咳(35%)、高血圧(32%)、疲労(32%)、悪心(30%)、筋肉痛(28%)、呼吸困難(25%)、腹痛(24%)、頭痛(22%)など。重篤なAEは、肺炎(4.4%)、間質性肺疾患(3.7%)、発熱(2.9%)、呼吸困難(2.2%)、肺塞栓症(2.2%)、無力症(2.2%)であった。

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COVID-19、NY重症患者の死亡リスク増加因子が明らかに/Lancet

 検査で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が確認され、米国・ニューヨーク市内2ヵ所の病院に入院した重症患者257例について前向きコホート試験を行った結果、高年齢、慢性肺疾患、慢性心臓病などが入院死亡リスク増加の独立リスク因子であることが確認された。米国・コロンビア大学アービング医療センターのMatthew J. Cummings氏らが行った試験の結果で、年齢の因子では10歳増加ごとに死亡リスクは1.31倍に、慢性肺疾患は死亡リスクを2.94倍に増加することが示されたという。また、侵襲的機械換気の実施率は重症患者の79%に上っていた。2020年4月28日現在、ニューヨーク市におけるCOVID-19入院患者は4万人を超えている。現況下でのCOVID-19患者の疫学、臨床経過、および重症転帰のデータの必要性から本検討は行われた。Lancet誌オンライン版2020年5月19日号掲載の報告。臨床的リスク因子やバイオマーカーと、院内死亡率の関連を検証 研究グループは2020年3月2日~4月1日に、検査でCOVID-19が確認され、2ヵ所のニューヨーク・プレスビテリアン病院(マンハッタン区北部、コロンビア大学アービング医療センターの関連病院)に入院し、急性低酸素呼吸不全が認められた18歳以上の重症患者を対象に前向き観察試験を行った。被験者について、臨床情報やバイオマーカー、治療データを集め、死亡リスクとの関連を分析した。 主要アウトカムは、入院死亡率だった。副次アウトカムは、侵襲的機械換気の実施率と期間、昇圧薬の使用や腎代替療法の頻度、入院後の院内臨床的増悪までの期間などだった。 Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、臨床的リスク因子やバイオマーカーと、院内死亡率との関連を検証した。追跡期間は全被験者28日以上で、4月28日で追跡を打ち切った。慢性心臓病で死亡リスク1.76倍、高IL-6・高D-dimer値もリスク因子 試験対象期間中に、COVID-19が確認され2ヵ所の病院に入院した成人は1,150例で、うち重症患者は257例(22%)だった。被験者の年齢中央値は62歳(IQR:51~72)で、うち男性は67%(171例)だった。重症患者のうち82%(212例)に1つ以上の慢性疾患があり、最も多くみられたのは高血圧症(63%、162例)、次いで糖尿病(36%、92例)だった。また、46%(119例)が肥満だった。 4月28日時点で、死亡は39%(101例)、入院継続は37%(94例)だった。侵襲的機械換気を実施したのは79%(203例)で、その期間中央値は18日(IQR:9~28)、昇圧薬を使用したのは66%(170例)、腎代替療法の実施は31%(79例)だった。入院後の院内臨床的増悪までの期間中央値は、3日(IQR:1~6)だった。 多変量Coxモデル解析の結果、入院死亡に関連した独立リスク因子は、高年齢(10歳増加ごとの補正後ハザード比[HR]:1.31、95%信頼区間[CI]:1.09~1.57)、慢性心臓病(補正後HR:1.76、95%CI:1.08~2.86)、慢性肺疾患(同:2.94、1.48~5.84)、高IL-6値(十分位増加ごとの補正後HR:1.11、95%CI:1.02~1.20)、高D-dimer値(同:1.10、1.01~1.19)だった。

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アトピー児のタクロリムス、がんリスク増大のエビデンスなし

 アトピー性皮膚炎(AD)児におけるタクロリムス外用薬の使用は安全なのか。長期安全性を前向きに検討した「APPLES試験」から、米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らによる、タクロリムス外用薬を6週間以上使用したAD児におけるその後10年間のがん罹患率のデータが示された。観察されたがん罹患率は、年齢・性別等を適合した一般集団で予想された割合の範囲内のものであり、著者は「タクロリムス外用薬がAD児の長期がんリスクを増大するとの仮定を支持するエビデンスは見いだされなかった」と報告している。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年4月1日号掲載の報告。 APPLES(A Prospective Pediatric Longitudinal Evaluation to Assess the Long-Term Safety of Tacrolimus Ointment for the Treatment of Atopic Dermatitis)試験では、AD児におけるリンパ腫およびその他のがん発生の調査が行われた。対象は、16歳以前にタクロリムス外用薬の使用を開始し6週間以上使用したAD児で、同意を得て試験に登録された。がん既往児も適格とし、試験期間中、治療に関する制約はなく、APPLES試験を介して治療が提供されることはなかった。なお、患児の登録後のタクロリムス曝露は定量化されなかった。 研究グループは、同データから、タクロリムス外用薬を6週間以上使用したAD児における10年間の悪性腫瘍発生率を定量化する検討を行った。 がんイベントの標準化発生率比(SIR)を、性別・年齢・人種で適合した対照データ(全国がんレジストリから収集)と比較分析した。 主な結果は以下のとおり。・試験登録は2005年5月に開始され、2012年8月までに9ヵ国(オーストリア、カナダ、フランス、ドイツ、アイルランド、オランダ、ポーランド、英国、米国)の314施設で8,071例が登録された。試験は、がん発生率に大きな変化がみられないことから、FDAが早期に終了することを承認。データの収集は2019年1月31日に終了となった。・解析に包含されたのは、適格条件を満たした7,954例。登録時の平均年齢は7.1歳(中央値6.0歳)、登録のピークは3歳時であった。AD発症の平均年齢は2.3±SD 3.5歳、タクロリムスの初回曝露の平均(中央値)年齢は5.7(4.7)歳、使用から試験登録までの平均期間は1.8±SD 2.2年であった。登録前の推定平均曝露量は885±SD 1,963gであった。・7,954例のうち、7例が死亡、1,454例(18.3%)が同意を得られず、また4,368例(54.9%)が10年時点でコンタクトが取れなかったなどフォローアップが完了せず、試験を完了したのは2,125例(26.7%)であった。・4万4,629人年において、観察されたがんの発生は6例であった。1例は皮膚腫瘍(スピッツ母斑)で、その他5例は慢性骨髄性白血病、胞巣型横紋筋肉腫、虫垂カルチノイド腫瘍、脊髄腫瘍、悪性傍神経節腫であった。・SIRは1.01(95%信頼区間[CI]:0.37~2.20)であった。・リンパ腫の報告例はなかった。

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PD-L1陽性肺がんにおける二ボルマブ・イピリムマブ併用の長期生存ベネフィット(CheckMate-227)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、2020年5月14日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法が、進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療薬として、全生存期間(OS)ほかの有効性評価項目において持続的な改善を示した第III相CheckMate-227試験のPart1の3年間の追跡調査の結果を発表した。CheckMate-227の追跡調査、二ボルマブとイピリムマブの併用が生存ベネフィットを維持 CheckMate-227試験の中央値43.1ヵ月の追跡の結果、PD-L1発現1%以上の患者において、化学療法と比較して、二ボルマブとイピリムマブの併用療法は生存ベネフィットを維持した(HR:0.79、95%CI:0.67〜0.93)。PD-L1発現率1%以上での3年OS率は併用療法群で33%、化学療法群では22%、3年無増悪生存(PFS)率は、併用療法群で18%、化学療法群では4%であった。3年間奏効が持続したPD-L1発現1%以上の患者は、併用療法群38%、化学療法群では4%であった。 探索的解析におけるPD-L1発現1%未満の3年生存率は、併用療法群で34%、化学療法群では15%であった(HR:0.64、95% CI:0.51〜0.81)。 二ボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、NSCLCを対象とした試験でこれまでに報告されたものと一貫しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。 これらCheckMate-227の追跡調査の結果は、 2020年米国臨床腫瘍学会(ASCO)において、口頭発表される予定。

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第9回 今や54人に1人、自閉症の増加はおそらく環境要因によるものではない

スウェーデンの多数の双子を調べた新たな試験1,2)の結果、自閉症のほとんどは生来の遺伝情報に起因しているようであり、自閉症への生来の遺伝情報と環境の関与のほどは数十年変わっておらず、自閉症の増加はおそらく環境要因によるものではないと示唆されました。今回の試験では、1982~2008年に生まれた双子22,678組と、1992~2008年に生まれた双子15,280組が調べられました。その結果、それらの2群のうち前者では約24%、後者では約30%を占める一卵性双生児のどちらもが自閉症である割合は一卵性双生児ではない双子に比べて一貫して高く、およそ93%の自閉症と61~73%の自閉症特徴は生来の遺伝情報に起因すると示唆されました。今回の結果は5ヵ国の小児200万人超を解析した最近の試験報告3,4)とほぼ一致しています。昨年9月にJAMA Psychiatry誌に掲載されたその試験では、自閉症の80%ほどが遺伝情報に起因すると推定されました。自閉症の生じやすさへの親譲りの遺伝情報の寄与は、出産時の親の年齢と子の自閉症の関連の研究などで示唆されています。東京大学のWalid Yassin氏らが昨年報告した自閉症成人39人とそうでない男性37人の死後脳解析では、生まれた時の父親の年齢がより高齢な男性には、自閉症と関連する脳白質異常がより認められました5,6)。また、今年初めにCell Stem Cell誌に掲載された研究では自閉症の特徴の一つである脳肥大に寄与するらしい神経前駆細胞(NPC)過剰増殖とDNA損傷の関連が示されています7,8)。その翌月2月のNature Neuroscience誌掲載の報告では、神経の軸索を覆って絶縁し、脳内の高速の信号伝達を可能にしている脂質の鞘・ミエリンの形成に携わる細胞・オリゴデンドロサイト(OL)成熟不良と自閉症の関連が示唆されました9,10)。自閉症はここ数年で増加しています。この3月に発表された米国疾病管理予防センター(CDC)の推定では、米国の2016年の8歳児の54人に1人が自閉症であり、2014年のその割合(59人に1人)に比べて10%ほど上昇しています11)。同時に発表された4歳児の統計結果によるとより幼くして自閉症が見つかることが多くなっていることが伺われ、その傾向が続けば8歳児の自閉症有病率はおそらく今後更に上昇します。小児の自閉症が増えていることは自閉症の成人により目を向ける必要があることも示唆しています。米国でおそらく毎年75,000人ほど増えている自閉症の成人の社会参画に取り組まなければならないと、ジョージア州アトランタ市のEmory Autism Centerの長Catherine Rice氏は言っています。Rice氏は屈指の自閉症ニュースサイトSpectrumに続けてこう言っています。「ほとんどの地域には自閉症の人の数々の苦労にあまねく対処する取り組みがない。社会の一翼を担う自閉症成人が健やかに過ごせるようにする手立てが必要だ」また、上述したような研究が進めば、自閉症の負担そのものを解消する手立てもやがて見つかるでしょう。たとえばOL成熟不良と自閉症の関連が示されたことを受け、次はミエリン形成異常を示す人工脳を使ってミエリン形成を増やす化合物探しが期待できます9)。小児の自閉症が早期診断され、治療で症状が治まるようになることを同研究の著者らは望んでいます。参考1)Environmental Factors Don’t Explain Rise in Autism Prevalence / TheScientist2)Taylor MJ, et al. JAMA Psychiatry. 2020 May 6. [Epub ahead of print]3)Bai D, et al. JAMA Psychiatry. JAMA Psychiatry. 2019 Jul 17;76:1035-1043.4)Majority of autism risk resides in genes, multinational study suggests / Spectrum5)Paternal Age Linked to Brain Abnormalities Associated with Autism / TheScientist6)Yassin W, et al. Psychiatry Clin Neurosci. 2019 Oct;73(10):649-659.7)DNA Damage Linked to Brain Overgrowth in Autism / TheScientist8)Wang M, et al. Cell Stem Cell. 2020 Feb 6;26:221-233.e6.9)Phan BN, et al. Nat Neurosci. 2020 Mar;23:375-385.10)Inadequate Myelination of Neurons Tied to Autism: Study / TheScientist11)New U.S. data show similar autism prevalence among racial groups / Spectrum

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乳がん患者、治療開始の遅れが生存に及ぼす影響

 早期乳がん患者では、乳がんと診断されてから術前化学療法開始までが61日以上となると、死亡リスクの増加と関連することが示唆された。これまでに、手術や術後化学療法開始の遅れが生存に影響することが報告されてきたが、術前化学療法を必要とする患者は一般的に高リスクの腫瘍を有するため、より影響が大きい可能性が考えられた。ブラジル・Hospital Beneficencia PortuguesaのDebora de Melo Gagliato氏らは、米国・MDアンダーソンがんセンターで術前化学療法を受けた早期乳がん患者のデータを解析した。Oncologist誌オンライン版2020年5月20日号掲載の報告より。 研究者らは、1995年1月~2015年12月にMDアンダーソンがんセンターで術前化学療法を受けた原発性浸潤性乳がん患者(Stage I~III)を特定。乳がんと診断されてから術前化学療法までの時間(日数)に従って、3つのサブグループに分類した:0~30日、31~60日、および≧61日。主要評価項目は全生存期間(OS)、記述統計とCox比例ハザードモデルが用いられた。 主な結果は以下のとおり。・5,137例の患者が登録された。追跡期間中央値は6.5年。・5年OSの推定値は、診断から術前化学療法までの時間ごとに、0~30日:87%、31~60日:85%、≧61日:83%であった(p=0.006)。・多変量解析では、0~30日と比較して61日以上となると死亡リスクが増加した(31~60日:ハザード比[HR]=1.05、95%信頼区間[CI]=0.92~1.19、≧61日:HR = 1.28、95%CI=1.06~1.54)。・層別解析では、術前化学療法開始の遅れと死亡リスク増加との関連は、Stage I、II(31~60日:HR=1.22、95%CI=1.02~1.47、≧61日:HR =1.41、95%CI=1.07~1.86)およびHER2陽性(≧61日:HR=1.86、95%CI:1.21~2.86)の患者で有意に認められた。

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COVID-19関連の超過死亡算出するオンラインツール開発/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の医学的、社会的、経済的な影響は、総人口死亡率に未知の作用を及ぼしているといわれる。これまでの死亡率モデルは、高リスクの基礎疾患や、それらのより長期のベースライン(COVID-19流行以前)の死亡率は考慮されていないが、英国・University College LondonのAmitava Banerjee氏らは、さまざまな感染抑制レベルに基づくCOVID-19発生のシナリオと、基礎疾患の相対リスクに基づく死亡率の影響を考慮して、COVID-19の世界的流行から1年間の超過死亡者数を、年齢、性、基礎疾患別に推定するモデルを確立するとともに、これを算出するオンラインツールを開発し、プロトタイプを公開した(オンラインリスク計算機のプロトタイプ)。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月12日号に掲載された。電子健康記録データを用いて超過死亡を推定するコホート研究 研究グループは、英国のプライマリケアおよびセカンダリケアの電子健康記録(Health Data Research UKのCALIBER)にリンクされたデータを用いて人口ベースのコホート研究を行った(英国国立衛生研究所[NIHR]University College London病院バイオメディカル研究センターなどの助成による)。  1997~2017年の期間に、医療機関に登録された30歳以上の個人を対象に、Public Health Englandのガイドラインで定義された基礎疾患の有病率(2020年3月16日以降)を調査した。  COVID-19の世界的流行の相対的影響を、COVID-19流行前のバックグラウンド死亡率と比較した相対リスク(RR)とし、RRを1.5、2.0、3.0と仮定した場合に、完全抑制(0.001%)、部分抑制(1%)、軽減(10%)、何も対策をしない(80%)などの異なる感染率のシナリオで、COVID-19関連の超過死亡の簡略なモデルと計算ツールを開発し、各疾患の1年間の死亡率を推定した。 また、超過死亡を推算するためのオンライン公開用のプロトタイプのリスク計算機を開発した。超過死亡に直接・間接に及ぼす全体の影響の評価が必要 386万2,012人(女性195万7,935人[50.7%]、男性190万4,077人[49.3%])を対象とした。対象の20%以上が高リスクであり、そのうち13.7%が70歳以上の高齢者で、6.3%は1つ以上の基礎疾患を有する70歳以下の高齢者と推定された。 高リスク集団の1年死亡率は4.46%(95%信頼区間[CI]:4.41~4.51)と推定された。年齢と基礎疾患が複合的にバックグラウンドリスクに影響を及ぼし、疾患によって死亡率に顕著なばらつきが認められた。 英国の集団における完全抑制のシナリオでは、超過死亡者数(COVID-19流行前のベースラインの死亡との比較)は、RRが1.5の場合は2人、RRが2.0で4人、RRが3.0では7人と推定された。 また、軽減シナリオでは、RRが1.5の超過死亡者数は1万8,374人、2.0で3万6,749人、3.0では7万3,498人と推定された。何も対策をしないシナリオの超過死亡者数は、RRが1.5の場合は14万6,996人、2.0で29万3,991人、3.0では58万7,982人であった。 著者は、「これらの結果は、持続的で厳格な抑制対策とともに、基礎疾患があるため最もリスクが高い集団を対象に、さまざまな予防介入による継続的な取り組みを行う必要性を示唆する。各国は、COVID-19の世界的流行が超過死亡に直接・間接に及ぼす全体的な影響を評価する必要がある」と指摘している。

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新型コロナのピーク超えたニューヨーク、市内の状況と懸念される小児疾患【臨床留学通信 from NY】番外編4

新型コロナのピーク超えたニューヨーク、市内の状況と懸念される小児疾患こちらCOVID-19の激震地となったニューヨークでは、ピークを4月中旬に超え、私の勤めるMount Sinai Beth Israel病院の内科には、一時期は病床数(最大120)を上回る200人近くが入院していましたが、日々減少傾向にあり、5月15日現在では40人前後まで減りました。ICU患者も一時期は病床数の5倍にまで膨れ上がりましたが、現在は通常の2倍程度まで落ち着きました。これまでに感染者はトータルで30万人超、死者は2万人を超えました。ニューヨーク市内では依然、待機的手術や外来診療は禁止されていますが、ほかの郡においては徐々に再開が認められつつあります。外出禁止令(散歩やランニングは可能、レストランなどは営業停止)は今もなお続き、休校も継続中ですが、職種ごとに段階的に再開していく形になっています(建設業などは優先、レストラン、ホテルは後、娯楽系は最後)。5月11日現在における経済再開の基準は、下記のようになっています。<患者数・死者数>(1)総入院患者数が少なくとも14日間連続減少しているか、1日の新たな入院患者の数が15人以下であること(CDC基準)。(2)1日の死者数が少なくとも14日間連続減少しているか、1日の死者数が5人以下であること。(3)新たな入院患者数が10万人当たり2人未満であること。<病院のキャパシティ>(4)全ベッドのうち、少なくとも30%が常に利用可能なこと。(5)ICUベッドのうち、少なくとも30%が常に利用可能なこと。<検査と追跡>(6)1ヵ月で人口1,000人当たり30人が検査を受けていること。(7)10万人当たり30人以上の追跡要員を有していること。これらの基準の狙いは、患者数のピークおよび病院のキャパシティを政策でコントロールすることにあり、それが死亡率軽減につながるというエビデンスに基づいています1)。また検査体制、追跡体制を重視しており、第2波に備える形になっています。さらに、経済再開を準備する段階で感染者を推定するため、1万5,000人ほどの大規模な抗体検査を行っており、ニューヨーク市民の平均抗体陽性率はおよそ20%でした。一方、医療従事者は12.2%と低めに抑えられており(5月2日現在)、PPEは有効であったことが示唆されます。また、死亡者の人種別内訳も公表されており、マイノリティの被害が強く、アジア人は比較的低めではあります。ニューヨーク市における内訳は、ヒスパニック:34%(人口比29%)、黒人:28%(同22%)、白人: 27%(同32%)、アジア系:7%(同14%)でした。 抗体陽性率は、アジア系は11.1%で、ヒスパニック25.4%、黒人17.7%と比べて低めとなっています。なお、白人は7%でした。ニューヨーク市内において現在注意を呼びかけているのは、子供の川崎病に類似した多臓器系炎症性疾患(Pediatric Multi-System Inflammatory Syndrome)であり、市内で110件(うち死亡は3例)とのことです(5月16日現在)。年齢別割合は0~4歳:35%、5~9歳:25%、10~14歳:24%、15~21歳:16%となっており、性別では、男性が57%、女性が43%となっており、年齢については川崎病の好発年齢とは類似していないと考えられます。これら小児の54%において、PCR検査陽性もしくは抗体が陽性になっており、注意が呼びかけられています。1)https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/208354

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COVID-19へのヒドロキシクロロキン、気管挿管・死亡リスク抑制せず/NEJM

 米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として、ヒドロキシクロロキンが広く投与されているが、その使用を支持する頑健なエビデンスはなかったという。同国コロンビア大学のJoshua Geleris氏らは、ニューヨーク市の大規模医療センターでCOVID-19入院患者の調査を行い、本薬はこれらの患者において気管挿管や死亡のリスクを抑制しないと報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年5月7日号に掲載された。ヒドロキシクロロキンは、マラリアやリウマチ性疾患の治療に広く使用されており、抗炎症作用と抗ウイルス作用を持つことから、COVID-19に有効な可能性が示唆されている。米国では、2020年3月30日、食品医薬品局(FDA)が緊急時使用許可(Emergency Use Authorization)を発出し、臨床試験に登録されていないCOVID-19患者への使用が認可された。ガイドラインでは、肺炎のエビデンスがある入院患者に本薬の投与が推奨されており、世界中の数千例の急性期COVID-19患者に使用されているという。米国の単施設のコホート研究 研究グループは、COVID-19患者におけるヒドロキシクロロキンの使用は、気管挿管および死亡のリスクを抑制するとの仮説を立て、これを検証する目的でコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 対象は、2020年3月7日~4月8日の期間に、ニューヨーク市のマンハッタン区北部に位置する急性期病院であるニューヨーク・プレスビテリアン病院(NYP)-コロンビア大学アービング医療センター(CUIMC)に入院し、鼻咽頭または口咽頭拭い液を検体として用いた検査でSARS-CoV-2陽性の成人患者であった。 救急診療部受診から24時間以内に、気管挿管、死亡、他の施設へ転送となった患者は除外された。フォローアップは4月25日まで継続した。ヒドロキシクロロキンは、1日目に負荷投与量600mgを2回投与後、400mgを1日1回、4日間投与するレジメンが推奨された。 主要エンドポイントは気管挿管および死亡の複合としtime-to-event解析を行った。傾向スコアによる逆確率重み付けを用いた多変量Coxモデルを使用して、ヒドロキシクロロキンの投与を受けた患者と非投与患者を比較した。有益性、有害性とも排除されない、推奨はすでに削除 1,376例が解析の対象となった。フォローアップ期間中央値22.5日の時点で、346例(25.1%)に主要エンドポイントのイベントが発生した(挿管されずに死亡166例、挿管180例)。データのカットオフ時(4月25日)には、232例が死亡(66例は挿管後)し、1,025例が生存退院しており、119例は入院中(挿管なしは24例のみ)だった。 1,376例中811例(58.9%)にヒドロキシクロロキンが投与され(投与期間中央値5日)、565例(45.7%)には投与されなかった。投与群の45.8%は救急診療部受診後24時間以内に、85.9%は48時間以内に投与が開始された。 傾向スコアでマッチさせていない患者では、ヒドロキシクロロキン投与量は、年齢層や性別、人種/民族、BMI、保険の有無、喫煙状況、他の薬剤の使用状況の違いで異なっていた。また、ベースラインの重症度は、投与群が非投与群に比べて高く、動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入気酸素濃度(FIO2)比中央値は投与群が223、非投与群は360であった。 傾向スコアでマッチさせた患者は、投与群が811例、非投与群は274例だった。 未補正の粗解析では、ヒドロキシクロロキン投与群は非投与群に比べ、主要エンドポイントのイベント発生率が高かった(32.3%[262/811例]vs.14.9%[84/565例]、ハザード比[HR]:2.37、95%信頼区間[CI]:1.84~3.02)。 一方、傾向スコアによる逆確率重み付けを用いた多変量解析では、ヒドロキシクロロキンとイベント発生率に有意な関連は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.82~1.32)。 著者は、「この観察研究の結果は、デザインと95%CI値を考慮すると、ヒドロキシクロロキン治療の有益性と有害性のいずれをも排除しないが、現時点では、有効性を検証する無作為化臨床試験以外では、その使用を支持しない」としている。なお、NYP-CUIMCでは、すでにガイダンスを改訂し、COVID-19患者におけるヒドロキシクロロキン治療の推奨は削除されたという。

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切除不能肝細胞がん、アテゾリズマブ+ベバシズマブが有効/NEJM

 切除不能肝細胞がん患者において、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法はソラフェニブと比較して、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を延長した。米国・Geffen School of Medicine at UCLAのRichard S. Finn氏らが、国際共同非盲検第III相試験「IMbrave150試験」の結果を報告した。切除不能肝細胞がん患者を対象とした第Ib相試験で、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法の抗腫瘍活性と安全性が示唆されていた。NEJM誌2020年5月14日号掲載の報告。アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用vs.ソラフェニブで有効性と安全性を検証 研究グループは、2018年3月15日~2019年1月30日の期間で、全身療法未治療の切除不能肝細胞がん患者をアテゾリズマブ+ベバシズマブ群またはソラフェニブ群に2対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ許容できない毒性の発現あるいは臨床的ベネフィットの消失まで投与を継続した。 主要評価項目は、intention-to-treat(ITT)集団における独立評価委員会判定によるOSおよびPFSで、RECIST 1.1を用いて評価した。 解析対象(ITT集団)は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群336例、ソラフェニブ群165例であった。アテゾリズマブ+ベバシズマブ群でOSとPFSが有意に延長 主要解析時点(クリニカルカットオフ日2019年8月29日)で、ソラフェニブ群に対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ群の死亡のハザード比(HR)は0.58(95%信頼区間[CI]:0.42~0.79、p<0.001)であり、12ヵ月全生存率はアテゾリズマブ+ベバシズマブ群67.2%(95%CI:61.3~73.1)、ソラフェニブ群54.6%(95%CI:45.2~64.0)であった。 PFS中央値は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群6.8ヵ月(95%CI:5.7~8.3)、ソラフェニブ群4.3ヵ月(95%CI:4.0~5.6)であり、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群で有意に延長した(HR:0.59、95%CI:0.47~0.76、p<0.001)。 治験薬を1回以上投与された安全性解析対象集団において、Grade3/4の有害事象はアテゾリズマブ+ベバシズマブ群(329例)で56.5%、ソラフェニブ群(156例)で55.1%に発現した。Grade3/4の高血圧症はアテゾリズマブ+ベバシズマブ群で15.2%に確認されたが、その他のGrade3/4の有害事象の頻度は少なかった。 なお、著者は、本試験は非盲検試験であり、Child-Pugh分類Aの肝機能が保たれた患者を対象としていることなどを研究の限界として挙げている。

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循環器領域のプレシジョン・メディシンを目指して(解説:香坂俊氏)-1232

Precision Medicine(プレシジョン・メディシン)という言葉がある。個別化医療と訳されることがあるが、こちらは実はPersonalized Medicineのことであり、日本語では「精密医療」と訳されることが多い。Precision Medicineという言葉が一躍脚光を浴びるようになったのは、バラク・オバマが大統領であった時期である(遠い昔のように思われるが、2015年のことだ)。彼がその年の一般教書演説で「今後米国はPrecision Medicineの徹底を目指す」と宣言し、そしてそのために巨額の研究費を支出することが表明され、欧米の学会で取り上げられることが多くなった。この一般教書演説のときのPrecision Medicineのイメージとしては「遺伝子の情報に応じたオーダーメイド治療の実現」という側面が強い。古典的なEBMが大規模RCTの結果を「極力すべての人たちにあてはめる」ということをゴールにするとしていたとすると、Precision Medicineはさらにその先、遺伝子のタイプに応じて医療を使い分けるということをゴールにしていた(完全な個別化ではなく、遺伝子の情報によって集団をさらに小分けにするという感じ)。この医療のPrecision化はがん領域において進捗が著しく、がん患者のがん遺伝子を調べ、選択的な治療薬の投与を行うという手法で、乳がん、肺がんなどの領域で実績を上げている。一方で循環器領域では、正直いまひとつパッとしていなかったが、今回取り上げる「Genotype-Guided Strategy for P2Y12 Inhibitors(POPular Genetics試験)」が初めて抗血小板領域におけるPrecision化に道筋をつけた。この試験では、遺伝子型に応じて抗血小板薬を選択するプレシジョン群と従来通りの治療を行う群にSTEMI症例(Primary PCI実施例)をランダム化した。プレシジョン群ではCYP2C19機能喪失型アレル保有者であればプラスグレルかチカグレロル(強めの抗血小板薬)を投与し、非保有者には従来通りのクロピドグレル(普通の抗血小板薬)を投与したが、その結果として2群で塞栓系のイベントの発症率には変化がなく、プレシジョン群で出血イベントの発症率が低かった(12ヵ月のハザード比:0.78、95%CI:0.61~0.98、p=0.04)。このことは日本人のACS患者さんにとっても意義が深い。なぜならば、日本人ではとくにCYP2C19機能喪失型アレル保有者は多いとされているからである(約6人に1人)。それならばすべてのACS患者さんにプラスグレルなどの「強めの抗血小板薬」を投与すればよいかというと、東アジア人においてはこうした薬剤で出血する割合も高いとされており、そういうわけにもいかない(日本では減量されたプラスグレルが市販されているが、それでも最近の解析結果をみてみると出血する割合はクロピドグレルよりも高くなるようである:Shoji S, et al. JAMA Netw Open. 2020;3:e202004. あるいは Akita K, et al. Eur Heart J Cardiovasc Pharmacother.2019 Oct 8. [Epub ahead of print])。このように、徐々にではあるが、循環器領域においてもプレシジョン化が進みつつある。抗血小板薬や抗凝固薬の使用に関してとくに有望であるとされているが、ほかに希望が持たれている分野としてはスタチンの使用(遺伝子型に応じて副作用の発症頻度が異なる)、あるいは心不全に対するACEやARBの使用(性差が存在し、それも遺伝子型によるものではないかと推測されている)などが挙げられ、引き続き注目していきたい分野である。

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第15回 治療編(1)薬物療法・その2【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第15回 治療編(1)薬物療法・その2前回は、主として末梢性疼痛に用いられる薬物療法について解説しましたが、今回は、末梢性神経障害性疼痛への除痛適応を持つ、新薬ミロガバリンとプレガバリン、そして比較的副作用の少ない鎮痛薬ノイロトロピンについて説明しましょう。表に神経障害性疼痛の原因になりうる疾患を示しております。この中でも、末梢性神経障害性疼痛の代表症例として、糖尿病性末梢神経障害性疼痛、帯状疱疹後神経痛、椎間板ヘルニアによる慢性疼痛が挙げられます。画像を拡大する(1)ミロガバリン<作用機序>神経前シナプスの電位依存性カルシウムイオン(Ca2+)チャネルから流入したCa2+により神経が興奮して、サブスタンスP、グルタミン酸、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)など、いわゆる神経伝達物質が放出されます。このCa2+チャネルにはいくつかのサブユニットで構成されておりますが、ミロガバリンはそのうちのでもα2δサブユニットに結合することによりCa2+チャネルの活動が抑制されることでCa2+の流入が低下します。その効果により、神経伝達物質の放出が抑制されて痛みが緩和されると考えられています。<投与上の注意>1日2回投与が基準です。2.5mg、5mg、10mg、15mg錠がありますが、基本的には5mgX2で開始しますが、患者さんが少しきついと感じられた時には2.5mgX2で開始し、副作用あるいは疼痛緩和効果が見られなければ、1~2週間ごとに10mgX2、15mgX2と漸増し、最終的には1日30mgまで投与します。副作用としては、傾眠、浮動性めまい、体重増加などがあります。高齢者では転倒・骨折の恐れがあるので、細心の注意が必要です。また、自動車運転などの機械操作は回避する必要があります。(2)プレガバリン<作用機序>前述のミロガバリンと同様の作用機序、鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>ミロガバリンと同様ですが、中枢性神経障害に対する適応も有しています。元はカプセル剤でしたが、和製でOD錠になりましたので、疼痛時にはそのまま服用できるのが魅力です。25、75、150mgOD錠があり、1日4回まで、最高600mgまで処方できます。副作用もミロガバリンと同様で、眠気には注意が必要です。眠前に服用するとよく眠れるようです。(3)ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン)<作用機序>ノイロトロピンは、ワクシニアウイルスを摂取した家兎の炎症性皮膚組織から抽出した300種類以上非蛋白性生体活性物質を含んでおり、単一での効果成分は不明です。作用機序としては、下行性疼痛抑制系の活性化が考えられております。その他、抗炎症作用、興奮性神経ペプチドの放出の抑制、交感神経作用抑制、血流改善、神経保護作用などが推測されています。<投与上の注意>副作用には発疹、掻痒、悪心、眠気などが認められていますが、その発現頻度や重症度は極端に低いため、高齢者や長期療養者に対しても使いやすいことが特徴です。1日4錠(1錠4単位)を朝夕2回に分けて経口投与します。注射薬では1日1回1管を静脈内、筋肉内または皮下に注射します。以上、痛み治療の第1段階における薬物を取り上げ、その作用機序、投与における注意点などを述べさせていただきました。痛みの患者さんに接しておられる読者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。1)花岡一雄. ペインクリニック. 2013; 34: 1227-12372)花岡一雄. ペインクリニック. 2011; 143: 441-4443)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S168

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うつ病から双極性障害への転換に対する早期予測因子~コホート研究

 うつ病と双極性障害は、どちらも主要な気分障害であるが、治療戦略や予後が異なる。双極性障害患者では、初期でみられるうつ症状によりうつ病と診断されうることが、その後の治療結果に影響を及ぼす可能性がある。これまでの研究では、うつ病と診断された患者のうち、時間経過とともに双極性障害を発症する患者が少なくないと示唆されている。このような双極性障害は、治療抵抗性うつ病の一因となる可能性がある。台湾・国立中正大学のYa-Han Hu氏らは、人口ベースのコホート研究を実施し、10年間のフォローアップ期間中にうつ病から双極性障害へ診断が変更された患者の割合およびその危険因子について調査を行った。さらに、うつ病から双極性障害へ転換するリスク層別化モデルの開発を試みた。JMIR Medical Informatics誌2020年4月3日号の報告。 台湾全民健康保険研究データベースを用いて、2000年1月~2004年12月に新規でうつ病と診断された患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。すべてのうつ病患者を、次のいずれかの条件を満たすまでフォローアップした。(1)精神科医による双極性障害の診断、(2)死亡、(3)2013年12月まで。すべてのうつ病患者を、フォローアップ期間中の双極性障害への転換に従って、転換群または非転換群に振り分けた。うつ病から双極性障害へ転換するリスク層別化モデルを作成するため、最初の6ヵ月間の6つの変数(患者の特性、身体的合併症、精神医学的合併症、ヘルスケアの使用状況、疾患重症度、向精神薬の使用)を抽出し、決定木分析(classification and regression tree:CART法)を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、うつ病患者2,820例。・フォローアップ期間中に双極性障害と診断された患者は536例(19.0%)であった。・CART法により双極性障害転換リスクの有意な予測因子は、以下の5つであった。 ●最初の6ヵ月間で使用された抗精神病薬の種類 ●最初の6ヵ月間で使用された抗うつ薬の種類 ●精神科外来通院の合計回数 ●受診1回当たりに使用されたベンゾジアゼピンの種類 ●気分安定薬の使用・双極性障害への転換に関し、このCART法によるリスクによって、高リスク群、中リスク群、低リスク群に分類可能であった。・高リスク群では、うつ病患者の61.5~100%は双極性障害と診断された。・低リスク群では、うつ病患者の6.4~14.3%のみが双極性障害と診断された。 著者らは「CART法により、双極性障害へ転換する5つの有意な予測因子が特定された。これらの予測因子を用いた単純なプロセスにより転換リスクの分類は可能であり、本モデルは双極性障害の早期診断のために日々の臨床診療に適用可能である」としている。

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降圧薬の処方内容はCOVID-19予後に影響するか?(解説:冨山博史氏)-1231

はじめに COVID-19発生から半年近くが過ぎようとしている。しかし、まだまだ収束そして終息にも時間を要する。COVID-19では肺炎に加え、脳心血管疾患、血栓症など生命に影響する重大な合併症を発生する。そうした合併症は、高齢者や脳心血管疾患・悪性疾患など基礎疾患を有する症例で多い。ゆえに、そうした症例における合併症発生予防に細心の注意を払う必要がある。中国では高血圧症例でCOVID-19症例の予後が不良であることが報告された1)。SARS-CoV-2ウイルスの細胞内侵入にはangiotensin converting enzyme 2(ACE2)が重要な役割を果たす。このため、renin-angiotensin系に影響する降圧薬ACE inhibitor(ACEi)やangiotensin II receptor blocker(ARB)がACE2発現に影響し、ウイルス侵入を増悪させることが懸念されていた。しかし、懸念はあくまで仮説であり、3月13日発表の欧州高血圧学会Position Statement of the ESC Council on Hypertension on ACE-Inhibitors and Angiotensin Receptor Blockersでは、同危険性の十分な根拠がないため両降圧薬のむやみな中止・変更は控えるように推奨された。今回の知見 2019年12月から2020年3月の期間で、欧州、北米、アジアで計169の病院にCOVID-19で入院した8,910例を対象とした多施設共同登録研究が実施された2)。#COVID-19の診断:咽頭ぬぐい液のPCR検査で感染を診断#解析方法:入院後転帰の院内死亡例と生存例で降圧薬処方内容を含む臨床背景を比較#結果とコメント:生存例(8,395例、平均年齢49歳)、院内死亡例(515例、平均年齢56歳)であり、院内死亡例は高齢で男性が有意に多かった。また、これまでの報告と同様、院内死亡例で冠動脈疾患、心不全、不整脈(心疾患の院内死亡のODDS比は約2倍)、糖尿病、脂質異常症、慢性閉塞性肺疾患(院内死亡のODDS比は約3倍)、現在喫煙の合併比率が有意に高かった(脳卒中に関しては評価されていない)。本検討では、高血圧合併頻度は生存例(2,216/8,395例:26.4%)と院内死亡例(130/515例:25.2%)で有意な差を示さなかった。これは上述の中国の報告1)と異なる結果である。そしてACEiおよびARBの処方率は、生存例{ACEi(754/8,395例:9%)、ARB(518/8,395例:6.2%)}、院内死亡例{ACEi(16/515例:3.1%)、ARB(38/515例:7.4%)}であり、ARB処方頻度は両群に差はなく、ACEiはむしろ生存例での処方頻度が高かった。 本試験は、短期間の登録研究であり、すでにCOVID-19の症例である。ゆえに、COVID-19がすでに診断されている症例では、感染に関連する病態増悪を懸念してACEi・ARBの他の降圧薬への変更は必要ないことが支持される。同様の結果はイタリアからも報告されている3)。今回の研究では、ACEiおよびARBのCOVID-19の易感染性については検証されていない。しかし、同イタリアの研究では両降圧薬が易感染性にも影響しない可能性を報告している3)。 中国と欧米では蔓延するSARS-CoV-2ウイルスの亜型が異なる。この差異が高血圧合併の感染性への影響に関連した可能性は否定できない。ゆえに、今後、武漢株での感染例においても高血圧合併の有無および降圧薬の予後への影響について検証する必要がある。追記:ACE2について SARS-CoV-2ウイルスは細胞表面の受容体ACE2を介して細胞内に取り込まれる。ACE2は、膜内存在性蛋白で気管支、肺、心臓、腎臓、消化器等の多くの組織に発現している。ACE2はACE(angiotensin Iからangiotensin IIへ変換する酵素)と構造が類似しているが、別の作用を有し、angiotensin IIからangiotensin-(1-7)への変換を行う。このangiotensin 1-7は降圧や心血管保護作用を有すると考えられている。

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