アトピー児のタクロリムス、がんリスク増大のエビデンスなし

提供元:ケアネット

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公開日:2020/05/27

 

 アトピー性皮膚炎(AD)児におけるタクロリムス外用薬の使用は安全なのか。長期安全性を前向きに検討した「APPLES試験」から、米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らによる、タクロリムス外用薬を6週間以上使用したAD児におけるその後10年間のがん罹患率のデータが示された。観察されたがん罹患率は、年齢・性別等を適合した一般集団で予想された割合の範囲内のものであり、著者は「タクロリムス外用薬がAD児の長期がんリスクを増大するとの仮定を支持するエビデンスは見いだされなかった」と報告している。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年4月1日号掲載の報告。

 APPLES(A Prospective Pediatric Longitudinal Evaluation to Assess the Long-Term Safety of Tacrolimus Ointment for the Treatment of Atopic Dermatitis)試験では、AD児におけるリンパ腫およびその他のがん発生の調査が行われた。対象は、16歳以前にタクロリムス外用薬の使用を開始し6週間以上使用したAD児で、同意を得て試験に登録された。がん既往児も適格とし、試験期間中、治療に関する制約はなく、APPLES試験を介して治療が提供されることはなかった。なお、患児の登録後のタクロリムス曝露は定量化されなかった。

 研究グループは、同データから、タクロリムス外用薬を6週間以上使用したAD児における10年間の悪性腫瘍発生率を定量化する検討を行った。

 がんイベントの標準化発生率比(SIR)を、性別・年齢・人種で適合した対照データ(全国がんレジストリから収集)と比較分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・試験登録は2005年5月に開始され、2012年8月までに9ヵ国(オーストリア、カナダ、フランス、ドイツ、アイルランド、オランダ、ポーランド、英国、米国)の314施設で8,071例が登録された。試験は、がん発生率に大きな変化がみられないことから、FDAが早期に終了することを承認。データの収集は2019年1月31日に終了となった。
・解析に包含されたのは、適格条件を満たした7,954例。登録時の平均年齢は7.1歳(中央値6.0歳)、登録のピークは3歳時であった。AD発症の平均年齢は2.3±SD 3.5歳、タクロリムスの初回曝露の平均(中央値)年齢は5.7(4.7)歳、使用から試験登録までの平均期間は1.8±SD 2.2年であった。登録前の推定平均曝露量は885±SD 1,963gであった。
・7,954例のうち、7例が死亡、1,454例(18.3%)が同意を得られず、また4,368例(54.9%)が10年時点でコンタクトが取れなかったなどフォローアップが完了せず、試験を完了したのは2,125例(26.7%)であった。
・4万4,629人年において、観察されたがんの発生は6例であった。1例は皮膚腫瘍(スピッツ母斑)で、その他5例は慢性骨髄性白血病、胞巣型横紋筋肉腫、虫垂カルチノイド腫瘍、脊髄腫瘍、悪性傍神経節腫であった。
・SIRは1.01(95%信頼区間[CI]:0.37~2.20)であった。
・リンパ腫の報告例はなかった。

(ケアネット)