心血管疾患、発症率や死亡率に性差/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/05/29

 

 心血管疾患の治療は、1次予防に関しては男性より女性で多く行われており、2次予防については反対の傾向がみられたものの、心血管疾患の既往の有無にかかわらず男性より女性のほうが、一貫してアウトカムは良好であることが観察された。カナダ・マックマスター大学のMarjan Walli-Attaei氏らが、27ヵ国の35~70歳、20万2,072人が参加した大規模前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiological(PURE)研究」の解析結果を報告した。主に高所得国の研究では、男性と比較して女性は心血管疾患に対するケアをあまり受けておらず死亡リスクが高い可能性があることが報告されているが、リスク因子、1次あるいは2次予防の服薬、心血管疾患の発症、死亡を系統的に報告している研究はほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2020年5月20日号掲載の報告。

PURE研究の約20万人について解析

 研究チームらは、アジア、アフリカ、欧州、南米、北米および中東の6地域27ヵ国(高所得国、中所得国および低所得国を含む)1,030地域の都市部および地方に在住の35~70歳の男女を対象に、社会人口統計学的特性、リスク因子、使用薬剤、心臓の検査と治療に関する情報を収集し解析した。

 3期にわたって参加者が登録され(第1期17ヵ国15万7,705人、第2期4ヵ国1万785人、第3期4ヵ国9,321人および南米で進行中のコホート2万4,261人)、解析対象は2005年1月6日~2019年5月6日に登録された計20万2,072人となった。このうち、第1期および第2期に登録された16万8,490人について、心血管疾患の発症および死亡を追跡調査した。

 20万2,072人のうち、女性は11万9,799人、男性は8万2,273人で、平均年齢(±SD)はそれぞれ50.8±9.9歳および51.7±10歳、追跡期間中央値は全体で9.5年(四分位範囲:8.5~10.9)であった。

男女差は中低所得国で顕著

 心血管疾患リスクは、2つの異なるリスクスコア(INTERHEARTおよびFramingham)を用いた場合でも、女性が男性より低かった。健康的な生活習慣や有効な薬物治療などの1次予防は、男性より女性で高頻度に行われていた。

 心血管疾患の発症率(/1,000人年)は、女性4.1(95%信頼区間[CI]:4.0~4.2)、男性6.4(6.2~6.6)で(補正ハザード比[aHR]:0.75、95%CI:0.72~0.79)、全死亡率は女性4.5(95%CI:4.4~4.7)、男性7.4(7.2~7.7)であり(aHR:0.62、95%CI:0.60~0.65)、いずれも女性が低値であった。

 2次予防治療、心臓検査、冠動脈血行再建は、各国すべてのグループの冠動脈疾患を有する参加者について、女性のほうが男性より頻度が低かった。女性は男性に比べて心血管疾患イベントの再発リスクが低く(再発率/1,000人年は女性20.0[95%CI:18.2~21.7]、男性27.7[25.6~29.8]、aHR:0.73[95%CI:0.64~0.83])、新規心血管疾患イベント後の30日死亡率も低かった(女性22% vs.男性28%、p<0.0001)。

 治療とアウトカムにおける女性と男性の違いは、心血管疾患既往の有無にかかわらず、高所得国ではわずかであったが中低所得国では顕著であった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 有馬 久富( ありま ひさとみ ) 氏

福岡大学医学部 衛生・公衆衛生学 教授

J-CLEAR会員