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外傷性脳損傷への入院前トラネキサム酸投与に有益性なし(解説:中川原譲二氏)-1306

 中等度~重度の外傷性脳損傷(TBI)は、外傷性死亡および障害の最重要の原因であるが、早期のトラネキサム酸投与がベネフィットをもたらす可能性が示唆されていた。そこで、米国・オレゴン健康科学大学のSusan E. Rowell氏らが、多施設共同二重盲検無作為化試験の結果を報告した(JAMA誌2020年9月8日号掲載の報告)。入院前トラネキサム酸投与の有益性を対プラセボで評価 試験は2015年5月~2017年11月に、米国およびカナダの外傷センター20ヵ所と救急医療機関39ヵ所で実施された。適格患者は、Glasgow Coma Scaleスコア12以下および収縮期血圧90mmHg以上である15歳以上のTBI入院前患者(1,280例)で、受傷2時間以内に治療を開始する以下の3つの介入が評価された。(1)入院前にトラネキサム酸(1g)をボーラス投与し、入院後に同薬(1g)を8時間点滴投与(ボーラス継続群、312例)、(2)入院前にトラネキサム酸(2g)をボーラス投与し、入院後にプラセボを8時間点滴投与(ボーラスのみ群、345例)、(3)入院前にプラセボをボーラス投与し、入院後にプラセボを8時間点滴投与(プラセボ群、309例)。 主要アウトカムは、複合投与群とプラセボ群での6ヵ月時点の良好な神経学的アウトカム(Glasgow Outcome Scale-Extendedスコア4超[中等度障害または良好な回復])とされた。非対称有意性の閾値は、有益性が0.1、有害性は0.025とされた。副次エンドポイントは18項目で、本論文ではそのうち5つ(28日死亡率、6ヵ月時のDisability Rating Scaleスコア[0:障害なし~30:死亡]、頭蓋内出血の進行、発作の発生、血栓塞栓症イベントの発生)が報告された。6ヵ月時の良好なアウトカム、投与群65% vs.プラセボ群62% 参加1,063例のうち、割り付け治療が行われなかった96例とその他1例(登録時に収監)が除外され、解析集団は966例(平均年齢42歳、男性255例[74%]、平均Glasgow Coma Scaleスコア:8)となった。このうち819例(84.8%)について、6ヵ月フォローアップ時の主要アウトカムが解析できた。 主要アウトカムの発生は、投与群65%、プラセボ群62%であった(群間差:3.5%、有益性に関する90%片側信頼区間[CI]:-0.9%[p=0.16]、有害性の97.5%片側CI:10.2%[p=0.84])。副次エンドポイントの28日死亡率(投与群14% vs.プラセボ群17%、群間差:-2.9%[95%CI:-7.9~2.1]、p=0.26)、6ヵ月時のDisability Rating Scaleスコア(6.8 vs.7.6、-0.9[-2.5~0.7]、p=0.29)、頭蓋内出血の進行(16% vs.20%、-5.4%[-12.8~2.1]、p=0.16)については、有意差はみられなかった。トラネキサム酸の有効性に関する詳細な分析が必要 本研究では、中等度~重度のTBIに対する受傷2時間以内の入院前トラネキサム酸の投与は、Glasgow Outcome Scale-Extendedスコアで評価された6ヵ月時点の良好な神経学的アウトカムを有意に改善しなかったと結論された。一般に、中等度~重度のTBIでは、発症早期に頭蓋内出血(硬膜上出血、硬膜下出血、クモ膜下出血、出血性脳挫傷)の増大やびまん性軸索損傷に伴う微小出血などの出血性の頭蓋内病態を軽減することが、転帰の改善につながると想定され、本研究では、発症早期(入院前)に抗線維素溶解薬であるトラネキサム酸を投与することの有効性が検証されたと思われる。しかしながら、中等度~重度のTBIでは、頭蓋内圧亢進や低酸素症、低血圧症など虚血性の頭蓋内病態を引き起こす要因が転帰に大きく影響することが知られており、トラネキサム酸(2g)の入院前投与で、出血性の頭蓋内病態がどの程度軽減されたのか、虚血性の頭蓋内病態が増悪する(長期投与で指摘されている)ことはなかったのか、など詳細について分析する必要があると思われる。 

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猫と語り・猫に学び・猫とたわむれる【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】 第29回

第29回 猫と語り・猫に学び・猫とたわむれる猫、ねこ、ネコ、Cat(キャット:英語)、Chat(シャ:フランス語)、Katze(カッツェ:ドイツ語)、Gatto(ガット:イタリア語)、Gato(ガート:スペイン語)、feles(フェーレース:ラテン語)…世界中で猫は愛されています。「喜歓猫」という中国語を訳すと「猫が好き」となります。中国語でもネコは猫です。今回は、徹底的に猫について語りたいと思います。猫さまが主役として取り上げられた有名な論文をご存じでしょうか。数ある医学雑誌の中でも権威あるNEJM誌に掲載された猫「オスカー」です(NEJM. 2007;357:328-329.)。論文というよりも医療エッセイといったほうが適切かもしれません。「猫オスカーの 1 日」(A Day in the Life of Oscar the Cat)というタイトルです。読みやすい英語ですから、一読してみてはいかがでしょうか。一部分を抜粋してみます。「Slowly, he stretches first backward and then forward.」・・・オスカーが、ゆっくりと後方に前方にとストレッチする姿を描写しています。昼寝から目覚めたばかりの猫が、ストレッチした際に身体が微妙に震えているのだろうな、といった記載されていない猫特有の動きまで眼の前に浮かび上がってきます。オスカーは、老人介護ケア病棟の住人として暮らしています。子猫の時期から、居住者の死亡を予測できるという不思議な能力を持っていました。オスカーは、施設の受け持ちフロアを回診します。診察技法は、触診や聴診ではありません。ベッドに飛び乗り、「くんくん」嗅ぐのです。嗅診です。休診ではありません。嗅診するオスカーに休診日はありません。嗅診の結果、大丈夫と診断すれば病室から静かに立ち去ります。死が差し迫っていると診断した場合は、体を丸めて患者に寄り添うのです。オスカーが丸くなったところの患者は、数時間以内に死亡したといいます。オスカーが寄り添うのであれば、死期が迫った可能性があるとして、家族に連絡することが規則となったそうです。孤独死を防ぐ役割も果たしているオスカーは、不吉な猫ではありません。患者本人だけでなく、家族やスタッフの心に潤いを与える猫としてつづられています。死を迎える方の傍らに静かに寄り添う猫の姿はりりしいです。世の中はコロナ禍もあり、「ペットブーム」に拍車がかかっているようです。テレビからは美味しそうな「キャットフード」や「ドッグフード」のコマーシャルが流れてきます。私が子供の頃にも猫や犬を飼っている家はありましたが、今よりは少なかったです。間違いなく、誰も今ほどペットにお金をかけていませんでした。人間の余り物を与えられても、どの猫や犬も喜んで尻尾をふって食べていました。我が家にも、ご多聞にもれず猫がいます。保護猫を保健所から譲り受けたものです。名前はレオです。虎やライオンなどを含むネコ科の動物に君臨する王者の風格が漂う名前です。雑種のドラ猫であることは、すぐに見抜かれますが、飼い主である私にとっては、血統は問題ではありません。レオがいてくれることが大事なのです。レオがいることにより、何気ない生活の中にも会話が自然に生まれ、人と人の間に割って入り、コミュニケーションや人間関係の潤滑剤になってくれるのです。一人で悩んでいるときにも、いつの間にか猫を撫でながら独り言を言っていたりします。猫とソファの上でくつろぐと、とても暖かくて心地よいまどろみを覚えます。猫が素晴らしい役割を果たしてくれるのは何故でしょうか。過去に何が起こったかは猫にとって、さほど重要なことではない、ということです。 レオは、保健所の檻のなかで生命の危機が迫っていた時間を忘れて、今の我が家での生活に集中しています。猫が、人間よりも現在という瞬間を楽しむ存在であり、それが生きものの課題であると理解しているからです。猫は、死を恐れていないように思われます。死は肉体の苦痛から解放され、死は新しい生への移行であると知っているのです。猫は、なぜ猫という身体を選んで生まれてきたのか、なぜ今の飼主と一緒に暮らすことを選んだのか、前世はどうだったのかすべてを受容しています。後悔せず、今を生きるのです。猫は、人間よりはるかに輪廻転生という悟りの境地にいます。さすが猫さまです。入門します、弟子にしてください!読者の中にも猫と一緒に暮らす方々もおられることでしょう。小生が大好きな猫との遊び方をお伝えします。箱座りしている猫の背中の毛を引っ張ってみてください。肩甲骨付近で、背骨の真上あたりの、跳ねた毛を一本だけ引っ張るのがコツです。たくさんの毛束を引っ張っても何も起きません。眼を閉じて眠らんとするタイミングで不意打ちをかけてください。猫がビックリして、背中全体が「ザワザワ」とザワメクように動く様は一見の価値があります。騙されたと思って、たわむれてみてください。猫ライフの充実をお約束します。

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新たに診断された成人のADHDおよびASDに併存する精神疾患

 成人の注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)に併存する精神疾患は、医療費の増大を招き、場合によっては診断遅延の原因となる。ギリシャ・国立カポディストリアコス・アテネ大学のArtemios Pehlivanidis氏らは、新たに診断された成人のADHDおよび/またはASDの有病率と精神疾患の生涯併存率を比較し、それらがもたらす臨床上の課題について検討を行った。BMC Psychiatry誌2020年8月26日号の報告。成人ADHDおよびASD患者では精神疾患の併存率が高かった 対象は、新たなADHDおよび/またはASDの診断のために臨床評価を行った、認知機能が正常な成人336例。最も頻繁に併存する10の精神医学的診断の生涯併存率を調査した。対象患者を、ADHD群(151例)、ASD群(58例)、ADHD+ASD群(28例)、非ADHD+非ASD(NN)群(88例)の4つに分類した。 成人のADHDおよびASDに併存する精神疾患を調査した主な結果は以下のとおり。・各群における精神医学的診断の生涯併存率は以下のとおりであった(p=0.004)。 ●ADHD群:72.8% ●ASD群:50% ●ADHD+ASD群:72.4% ●NN群:76.1%・すべての群において、最も頻繁に併存する精神疾患は、うつ病であった。・ADHD群と非ADHD群(ASD群+NN群)の間における精神疾患の併存パターンは、物質使用障害でのみ統計学的に有意な差が認められた(p=0.001)。・双極性障害の割合は、ASD群と比較し、NN群で有意に高かった(p=0.025)。 著者らは「成人ADHDおよび/またはASD患者では精神疾患の併存率が高かったが、その中でASD患者での併存率は最も低かった。ADHD群と非ADHD群の最も有意な差は物質使用障害で認められた」とし、「ADHDおよび/またはASDの有無にかかわらず、これらの疾患が疑われるすべての患者に対して徹底的な臨床評価を行う必要性が示唆された」としている。

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植物由来VLPワクチン、インフル予防に有効な可能性/Lancet

 開発中の植物由来4価ウイルス様粒子(QVLP)インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスに起因する呼吸器疾患およびインフルエンザ様疾患を、実質的に予防する可能性があり忍容性も良好であることが、カナダ・MedicagoのBrian J. Ward氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年10月13日号に掲載された。季節性インフルエンザは、予防策として孵化鶏卵由来のワクチンなどが使用されているが、依然として公衆衛生上の大きな脅威となっている。植物をベースとするワクチン製造法は、生産性の向上や製造過程の迅速化など、現在のワクチンの限界のいくつかを解決する可能性があるという。18~64歳と、65歳以上が対象の2つの無作為化試験 研究グループは、植物から製造された遺伝子組み換えQVLPインフルエンザワクチンに関して、2017~2018年(18-64試験)と2018~2019年(65-plus試験)のインフルエンザ流行期に、北半球においてこれら2つの多施設共同無作為化臨床試験を行った(Medicagoの助成による)。 18-64試験には、アジア、欧州、北米の73施設が、65-plus試験には同地域の104施設が参加した。18-64試験は、スクリーニング時にBMI<40、年齢18~64歳で、健康状態が良好な集団を、65-plus試験は、スクリーニング時にBMI≦35、年齢65歳以上で、リハビリテーション施設や介護施設に入居しておらず、急性期または進行中の医学的な問題のない集団を対象とした。 18-64試験の参加者は、QVLPワクチン(ウイルス株当たり30μgのヘマグルチニン)またはプラセボを接種する群に、65-plus試験の参加者は、QVLPワクチン(ウイルス株当たり30μgのヘマグルチニン)または4価不活化ワクチン(QIV、ウイルス株当たり15μgのヘマグルチニン)を接種する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、18-64試験では、抗原性でマッチさせたインフルエンザウイルス株に起因する呼吸器疾患(検査で確定)の予防におけるワクチンの絶対効果(absolute vaccine efficacy)とし、達成率70%以上(95%信頼区間[CI]下限値が40%超)を目標とした。65-plus試験の主要アウトカムは、インフルエンザウイルス株に起因するインフルエンザ様疾患(検査で確定)の予防におけるワクチンの相対効果(relative vaccine efficacy)とし、非劣性(95%CI下限値が-20%超)の検証を行った。主解析はper-protocol集団で行い、安全性は治療を受けたすべての参加者で評価した。潜在的な利点がどの程度実現されるかは、承認後の研究で 18-64試験では、2017年8月30日~2018年1月15日の期間に1万160例が、QVLP群(5,077例)またはプラセボ群(5,083例)に割り付けられた。実際に治療を受けた1万136例の平均年齢は44.6(SD 13.7)歳であった。per-protocol集団は、QVLP群が4,814例、プラセボ群は4,812例だった。 抗原性でマッチさせたウイルス株に起因する呼吸器疾患の予防におけるQVLPワクチンの絶対効果は35.1%(95%CI:17.9~48.7)であり、70%以上という目標は達成されなかった。事後解析では、インフルエンザウイルスの感染力は19週間持続したが、QVLPワクチンの有効性は最長180日間持続しており、3つの期間(14~60日、61~120日、121~180日)で効果の差は認められなかった。 重篤な有害事象は、QVLP群が5,064例中55例(1.1%)で、プラセボ群は5,072例中51例(1.0%)で認められた。また、試験治療下で発現した重度の治療関連有害事象は、それぞれ4例(0.1%)および6例(0.1%)でみられた。 一方、65-plus試験では、2018年9月18日~2019年2月22日の期間に1万2,794例が、QVLP群(6,396例)またはQIV群(6,398例)に割り付けられた。実際に治療を受けた1万2,738例の平均年齢は72.2(SD 5.7)歳であった。per-protocol集団は、QVLP群が5,996例、QIV群は6,026例だった。 すべてのウイルス株に起因するインフルエンザ様疾患の予防におけるQVLPワクチンの相対効果は8.8%(95%CI:-16.7~28.7)であり、主要非劣性エンドポイントを満たした。75歳以上では、全体と比較して、相対効果が良好な傾向がみられ、インフルエンザ様疾患で38.3%(-5.2~63.9、p=0.102)、呼吸器疾患は33.4%(-3.3~57.1、p=0.241)であった。 重篤な有害事象は、QVLP群が6,352例中263例(4.1%)で、QIV群は6,366例中266例(4.2%)でみられた。このうち治療関連と判定されたのはそれぞれ1例(<0.1%)および2例(<0.1%)であった。試験治療下で発現した重度の治療関連有害事象は、1例(<0.1%)および3例(<0.1%)であった。 著者は、「これら2つの効果に関する重要な試験のデータは有望であるが、植物由来のウイルス様粒子ワクチンの潜在的な利点がどの程度実現されるかは、ヒトでの使用が承認された後に、何度かの流行期を経て広く使用されて初めて明らかになるだろう」としている。

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SGLT2阻害薬でも糖尿病患者の心血管イベントは抑制されない?(解説:吉岡成人氏)-1304

 糖尿病患者における心血管疾患のリスクを低減するためにSGLT2阻害薬が有用であると喧伝されている。米国糖尿病学会(ADA)では心血管疾患、慢性腎臓病(CKD)、心不全の既往のある患者やハイリスク患者では、血糖の管理状況にかかわらずGLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬を第一選択薬であるメトホルミンと併用することが推奨されている。欧州心臓病学会(ESC)と欧州糖尿病学会(EASD)による心血管疾患の診療ガイドラインでは、心血管リスクが高い患者での第一選択薬としてSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬を用いることも選択肢の一つであるとしている。 日本においても、循環器学会と糖尿病学会が「糖代謝異常者における循環器病の診断・予防・治療に関するコンセンサスステートメント」が公表され、糖尿病患者は心血管疾患のハイリスク群であり、心不全の合併が多いことが記されている。日本人においても欧米同様にSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を推奨すべきかの結論は得られていないというコメントはあるが、心不全ないしは心不全の高リスク患者ではSGLT2阻害薬の使用が推奨されている。 そのような背景の中、2020年6月にWebで開催されたADAにおいてSGLT2阻害薬であっても心血管イベントの抑制効果が認められない薬剤があることが報告された。日本では未発売のSGLT2阻害薬であるertugliflozinの心血管イベント抑制効果に関する臨床試験(Evaluation of Ertugliflozin Efficacy and Safety Cardiovascular Outcomes Trial:VERTIS-CV)であり、その詳細が、2020年9月23日のNEJM誌に掲載されている。 VERTIS試験の対象は冠動脈、脳血管、末梢動脈の少なくともいずれかにアテローム動脈硬化性疾患を持つ8,246例であり、平均年齢は64歳、88%が白人で糖尿病の罹病期間は平均で13年、ベースラインにおけるHbA1cは8.2%であった。平均で3.5年の追跡期間における1次評価項目(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)の発生率は実薬群、プラセボ群ともに11.9%、100人年当たりの発生率は実薬群3.9、プラセボ群4.0であり差がなかった。EMPA-REG試験においても1次評価項目はVERTIS試験とまったく同じであり、100人年当たりの発生率は、実薬群3.74、プラセボ群4.39であった。2次評価項目である心血管死、心不全での入院についても差はなかったものの、心不全での入院のみで比較をするとプラセボ群3.6%(1.1/100人年)、実薬群2.5%(0.7/100人年)であり統計学的に有意な差(ハザード比0.70、信頼区間:0.54~0.90)があった。腎関連の評価項目(腎死、腎代替療法、クレアチニンの倍加)にも有意差は認められなかった。プラセボ群との非劣性を確認するための臨床試験とはいえ、SGLT2阻害薬として従来報告されていた心血管イベントに対する抑制効果が疑問視される結果であった。なぜ、ertugliflozinでほかのSGLT2阻害薬で確認された臨床効果が認められなかったのか、単なる薬剤による違いなのかは判然としない。 ともあれ、欧米の糖尿病患者と日本の糖尿病患者では臨床的な背景も、病態も異なっている。日本人における高齢率は28%であり2型糖尿病の平均年齢は65歳を超え、死因の38%は悪性腫瘍、11%が心疾患である(中村二郎ほか. 糖尿病. 2016;59:667-684.)。一方、米国での高齢化率は14.5%にすぎず、糖尿病患者の死因の第1位は心血管疾患で34%、悪性腫瘍は20%である(Gregg EW, et al. Lancet. 2018;391:2430-2440.)。欧米のガイドラインや臨床試験の結果を日本の臨床の現場に応用する場合には、一定の距離感を保ちつつ十分に吟味する必要があると思われる。

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日本の若年性認知症の年間発症率とそのサブタイプ

 若年性認知症の発症率を調査することは、困難であるといわれている。東京都健康長寿医療センター研究所の枝広 あや子氏らは、認知症疾患医療センターの年次報告データを用いて、日本における若年性認知症の発症率について調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2020年9月28日号の報告。 認知症疾患医療センターは、日本の全国的な保健プログラムの一環として設立された認知症専門医療サービスで、2018年時点で全国に440施設存在する。これらの施設の年次報告データを用いて、2018年4月1日~2019年3月31日に新たに若年性認知症または遅発性認知症と診断された患者数、精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)による診断構成比を算出した。若年性認知症の年間発症率は、分子を患者数、分母を18~64歳の人口とし推定した。 主な結果は以下のとおり。・若年性認知症と診断された患者は1,733例であった。・若年性認知症のサブタイプの内訳は以下のとおりであった。 ●アルツハイマー型認知症:52.1% ●前頭側頭型認知症:8.9% ●血管性認知症:8.8% ●物質・薬物誘発性の神経認知障害:7.1% ●レビー小体型認知症:6.5% ●別の疾患による神経認知障害:3.9%・若年性認知症の年間発症率は、2.47/10万人年と推定された。 著者らは「本研究により、日本における若年性認知症の推定発症率が明らかとなった。全国の若年性認知症の疫学的モニタリングのためには、認知症疾患医療センターが重要な存在であることが示唆された」としている。

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最適な血行再建術を選択する新SYNTAXスコアを開発・検証/Lancet

 10年死亡ならびに5年主要心血管イベントを予測するSYNTAXスコアII 2020は、冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の恩恵を得られる個人の特定に役立ち、心臓チーム、患者およびその家族が最適な血行再建術を選択するのを支援可能であることが示された。オランダ・アムステルダム大学のKuniaki Takahashi氏らが「SYNTAXES試験」の副次解析結果を報告した。無作為化比較試験は新たな治療法の有効性を検証するゴールドスタンダードで、一般的には平均的な治療効果を示すものであるが、治療効果は患者によって異なる可能性があり、個々の患者の治療を平均的な治療効果に基づいて決定することは最適ではない可能性がある。そこで著者らは、複雑な冠動脈疾患患者において最適な血行再建術を選択する個別意思決定ツールとしてSYNTAXスコアII 2020を開発し検証した。Lancet誌オンライン版2020年10月8日号掲載の報告。10年死亡と5年主要心血管イベントを予測するSYNTAXスコアII 2020を開発 SYNTAXES試験は、2005年3月~2007年4月に北米および欧州の18ヵ国85施設で実施された医師主導型多施設共同無作為化比較試験(SYNTAX試験)の10年追跡試験である。新規の3枝または左主幹部病変を有する患者を、PCI群またはCABG群に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。主要評価項目は10年全死因死亡であった。 研究グループは、SYNTAXES試験のデータからCox回帰法を用いて10年全死因死亡を予測する臨床予後指標を開発した後、治療の割り付け(PCI/CABG)と、これまでのエビデンスに基づいて選択された事前に規定した2つの効果修飾因子(病変の種類[3枝病変か左主幹部病変]、解剖学的SYNTAXスコア)も組み合わせたCoxモデルを開発。また、同様の方法を用いて、PCI/CABGを受けた患者の主要心血管イベント(全死因死亡、非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞の複合)の5年リスク予測モデルを開発した。 次に、両モデルについて、SYNTAX試験で交差検証(1,800例)を行うとともに、FREEDOM試験、BEST試験およびPRECOMBAT試験の併合集団(3,380例)で外部検証を行い、両モデルの予測能とその差(2つの治療群の絶対リスク差を算出し、CABGとPCIの推定利益を比較)の検討を行った。C統計量を用いて識別能を、較正プロットを用いて予測と観察の一致度を評価した。SYNTAXスコアII 2020は5年主要心血管イベントの予測に関して有用な識別能 交差検証において、新たに開発されたSYNTAXスコアII 2020は、10年全死因死亡と5年主要心血管イベントの予測に関して2つの治療群で有用な識別能を示した。10年全死因死亡のC統計量は、PCIで0.73(95%信頼区間[CI]:0.69~0.76)、CABGで0.73(0.69~0.76)、5年主要心血管イベントのC統計量は、それぞれ0.65(0.61~0.69)、0.71(0.67~0.75)であった。 外部検証においても、SYNTAXスコアII 2020は5年主要心血管イベントの予測に関して、有用な識別能(PCIのC統計量は0.67[95%CI:0.63~0.70]、CABGは0.62[0.58~0.66])と良好な較正を示した。 PCIを上回ると推定されたCABGの治療有益性は試験集団の患者間で大きく異なっており、有益性の予測は良好に調整されていた。

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統合失調症と気分障害の入院患者における代謝障害の相違点

 生活習慣病と密接に関連している心血管疾患は、精神疾患患者の主な死因の1つである。統合失調症と気分障害では、症状や治療薬が異なり、代謝障害にも違いがあると考えられる。国立国際医療研究センター 国府台病院の鵜重 順康氏らは、日本における統合失調症患者と気分障害患者の生活習慣病の違いについて調査を行った。Annals of General Psychiatry誌2020年9月22日号の報告。統合失調症と気分障害の入院患者は症候性脳梗塞や脳梗塞の割合が増加 本研究は、2015~17年に実施した横断的研究である。対象は、国立国際医療研究センター 国府台病院 精神科の日本人入院患者189例(統合失調症群:144例、気分障害群:45例)。対象患者の身体疾患、グルコースと脂質の代謝状態、推算糸球体濾過量(eGFR)、脳MRIを調査した。統合失調症群と気分障害群のデータを比較するため、共分散分析またはロジスティック回帰分析を用いた。対象患者と標準対照者の数値を比較するため、厚生労働省「国民健康・栄養調査報告2015」のデータを基準値として使用した。 統合失調症と気分障害の入院患者の身体疾患などを調査した主な結果は以下のとおり。・年齢で調整した後、気分障害群のeGFRと喫煙率は、統合失調症群よりも有意に低かった。・統合失調症群と気分障害群は、標準対照者と比較し、無症候性脳梗塞と脳梗塞の割合が有意に高かった。・統合失調症の入院患者は、標準対照者の基準値と比較し、糖尿病、低HDLコレステロール血症、メタボリックシンドロームの有病率および喫煙率が有意に高かった。・気分障害群は、標準対照者と比較し、低HDLコレステロール血症の有病率が有意に高かった。・統合失調症群と女性の気分障害群は、標準対照者と比較し、空腹時血糖とHbA1cが有意に高かった。・女性の気分障害群は、標準対照者と比較し、eGFR(60mL/分未満)の有意な低下が認められた。 著者らは「統合失調症患者および気分障害患者では、グルコースや脂質の異常を伴い、無症候性脳梗塞や脳梗塞の割合が増加していた。気分障害患者では、統合失調症患者よりも、eGFRと喫煙率が有意に低かった」としている。

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PCI後プラスグレルのde-escalation法、出血リスクを半減/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行った急性冠症候群(ACS)患者に対し、術後1ヵ月間プラスグレル10mg/日を投与した後、5mg/日に減量する、プラスグレルをベースにしたde-escalation法は、1年間のネット有害臨床イベントを低減することが、韓国・ソウル大学病院のHyo-Soo Kim氏らが同国35病院2,338例を対象に行った「HOST-REDUCE-POLYTECH-ACS試験」の結果、示された。イベントリスクの低減は、主に虚血の増大のない出血リスクの減少によるものであった。PCI後のACS患者には1年間、強力なP2Y12阻害薬ベースの抗血小板2剤併用療法(DAPT)が推奨されている。同療法では早期の段階において薬剤の最大の利点が認められる一方、その後の投与期には出血の過剰リスクが続くことが知られており、研究グループは、抗血小板薬のde-escalation法が虚血と出血のバランスを均衡させる可能性があるとして本検討を行った。Lancet誌2020年10月10日号掲載の報告。韓国35病院で2,338例を無作為化、有害臨床イベント発生を比較 HOST-REDUCE-POLYTECH-ACS試験は、韓国35病院で行われた多施設共同無作為化非盲検非劣性試験。PCIを実施したACS患者を1対1の割合で無作為に2群に割り付け、全例に術後1ヵ月間プラスグレル10mg/日+アスピリン100mg/日を投与した後、一方の群ではプラスグレルを5mg/日に減量(de-escalation群)、もう一方の群には10mg/日を継続投与した(対照群)。 主要エンドポイントは、1年時点のネット有害臨床イベント(総死亡、非致死的心筋梗塞、ステント血栓症、血行再建術の再施行、脳卒中、BARC出血基準2以上の出血)の発生で、絶対非劣性マージンは2.5%とした。 主な副次エンドポイントは、有効性アウトカム(心血管死、心筋梗塞、ステント血栓症、虚血性脳卒中)と安全性アウトカム(BARC出血基準2以上の出血)だった。de-escalation群、虚血リスクの増大なし、出血リスクは半減 2014年9月30日~2018年12月18日に3,429例がスクリーニングを受け、うち1,075例がプラスグレル適応基準を満たさず、16例が無作為化エラーにより除外され、2,338例がde-escalation群(1,170例)、対照群(1,168例)に割り付けられた。 ネット有害臨床イベントの発生は、de-escalation群82例(Kaplan-Meier法による予測値:7.2%)、対照群116例(10.1%)で、de-escalation群の非劣性が示された(絶対リスク差:-2.9%、非劣性のp<0.0001、ハザード比[HR]:0.70[95%信頼区間[CI]:0.52~0.92]、同等性のp=0.012)。 de-escalation群は対照群に比べ、虚血のリスク増大はみられず(HR:0.76、95%CI:0.40~1.45、p=0.40)、出血イベントリスクは有意に減少した(0.48、0.32~0.73、p=0.0007)。

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気分障害や不安症に対するベンゾジアゼピン使用を減少させるための認知行動療法

 精神疾患の治療に、しばしばベンゾジアゼピン(BZD)が用いられる。しかし、BZDは副作用や長期的な有効性に関するエビデンスが不足しているため、多くのガイドラインにおいて、使用制限が推奨されている。また、BZDは依存性や離脱症状の問題があり、減量が困難なこともある。一方、認知行動療法(CBT)は気分障害や不安症に対する有効性が実証されている。しかし、BZDの使用率が高い日本において、BZDの効果的な減量に対するCBTの効果に関するエビデンスは、これまでほとんどなかった。国立精神・神経医療研究センターの中嶋 愛一郎氏らは、日本の精神科におけるBZDの減量に対するCBTの影響について調査を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年9月18日号の報告。 対象は、BZD抗不安薬を使用している気分障害および不安症の外来患者。2015年4月~2017年9月の国立精神・神経医療研究センターのカルテより、CBT実施中のBZD抗不安薬の使用量の変化をレトロスペクティブにレビューした(66例、平均CBTセッション数:14.6回)。CBT実施を判断するための初回診断時(ベースライン)、初回CBTセッション時、最終CBTセッション時、最終CBTセッションから3ヵ月後の4つの時点でのBZD抗不安薬の使用量を確認した。 主な結果は以下のとおり。・66例中13例はCBT実施中にBZD抗不安薬を中止し、21例は50%以上の減量を達成した。・中止、減量および評価期間との関連は、階層ベイズモデルを用いてモデル化した。その結果、ベースライン時と比較して、CBT後(オッズ比:9.79、95%CI:4.65~20.45)およびCBT3ヵ月後(オッズ比:11.53、95%CI:6.06~22.33)のBZD抗不安薬中止率に有意な差が認められた。・CBT後のBZD抗不安薬の減量においても、有意な差が認められた(推定相対リスク中央値:0.845、95%CI:0.729~0.982)。減量の中央値は、1.7mg(ジアゼパム換算)であった。 著者らは「日本人の気分障害および不安症患者に対するCBT実施は、BZD抗不安薬の減量や中止に役立つ可能性が示唆された」としている。

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心アミロイドーシス患者における心臓デバイス後のフォローアップ【Dr.河田pick up】

 アミロイドーシスは不溶性のアミロイド細繊維が細胞外に沈着し、様々な臓器障害を引き起こす。心アミロイドーシスは心臓の間質にアミロイド線維沈着し、その病態がより一層知られるようになってきている。徐脈および頻脈は、心アミロイドーシスの患者でよく見られ、心アミロイドーシスの診断につながることがあるが、心アミロイドーシス患者における伝導障害が発生した後の経過については知られていない。この研究は、米国・デューク大学のMichael R. Rehorn氏ら研究グループが、心アミロイドーシス患者と伝導障害の関係について、心臓植込み型デバイスを通して経年的に観察したものである。JACC clinical Electrophysiology誌2020年9月6日号での報告。経年的に心臓デバイスが植込まれた心アミロイドーシス患者をフォロー 本研究では、心アミロイドーシス(トランスサイレチン型アミロイドーシス心筋症[ATTR-CM]および軽鎖アミロイドーシス[AL-CA])と診断され、心臓デバイスを植込まれた患者をデューク大学のデータベースから抽出。植込み時の患者の特徴(人口動態、心アミロイドーシスの診断と関連したデータ、心臓に関する画像、心臓デバイスの種類)が記録された。心臓デバイスのデータ解析には、ペーシング、心房細動(AF)の頻度、活動レベル、リードに関する値、心室性不整脈の発生やそれらに対する治療の情報が用いられた。5年後には右室ペーシング率が96%、AFは平均17時間/日 本研究に登録されたのは、心サルコイドーシスの患者34例(ATTR-CM:7例、AL-CA:27例)。平均年齢(中央値)は75歳、平均の左心駆出率は42±13%、徐脈に対する植込みが65%、突然死の予防に対する植込みが35%であった。このうち14例(41%)については、心サルコイドーシスの診断に先行して心臓デバイスの植込みが行われていた。 3.1±4.0年のフォローアップ期間で、右室波高は減少したが、不具合にまでは至っていなかった。リードの抵抗値、ペーシング閾値には変化が見られなかった。植込み後1~5年の間に平均の心室ペーシング率は56±9%から96±1%(p=0.003)に増加し、AFの頻度は1日当たり2±1.3時間から17±3時間(p=0.0002)に増加していた。心室不整脈は、高頻度(ATTR-CM:6.7±2.3/年、AL-CA:5.1±3.2/年)に認められたが、主に非持続性の心室頻拍であった。ATTR-CMの1例のみICD(植込み型除細動器)治療を必要とした。心アミロイドーシスではデバイス植込み後も伝導障害が進行、AF頻度が有意に増加 本研究では、心臓デバイスの経年的なフォローアップにより、心アミロイドーシス患者では伝導障害が進行。AF頻度が増加し、心室ペーシングへの依存度が増すことがわかったが、リードに関する数値は安定していた。心室不整脈はよく認められるが、主に非持続性心室頻拍であった。 心アミロイドーシスそのもので心機能が低下することもあるが、さらに右室ペーシング率が高いとペーシングに伴う心筋症が起こりうる。この結果を踏まえると、心室機能が低下している場合には、当初から右室ペーシングでなく、両心室ペーシングを植込むことが検討されるべきと考える。(Oregon Heart and Vascular Institute  河田 宏)■関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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虫垂炎治療、抗菌薬は切除術の代替となるのか/NEJM

 虫垂炎の治療では、抗菌薬治療の効果は虫垂切除術に対し非劣性であるが、抗菌薬治療を受けた患者10例当たり約3例(29%)が90日後までに虫垂切除術を受けており、虫垂結石を有する患者は虫垂切除術や合併症のリスクが高いことが、米国・ワシントン大学のDavid R. Flum氏らが実施した「CODA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年10月5日号に掲載された。60年以上も前(1956年)に、虫垂炎治療における虫垂切除術の代替治療として抗菌薬治療の有効性が報告されているが、長期にわたり虫垂炎の標準治療は虫垂切除術とされてきた。また、虫垂炎の抗菌薬治療の無作為化試験がいくつか行われているが、重要なサブグループ(とくに、合併症のリスクが高いとされる虫垂結石の患者)の除外や、少ない患者数などから、その使用は限定的であった。米国の10施設が参加した実践的な無作為化非劣性試験 研究グループは、虫垂炎の治療における、抗菌薬治療の虫垂切除術に対する非劣性を検証する目的で、米国の10施設が参加した実践的な非盲検無作為化試験を行った(米国・患者中心アウトカム研究所[Patient-Centered Outcomes Research Institute]の助成による)。 対象は、救急診療部で画像検査により虫垂炎と確定された、英語またはスペイン語を話す成人(年齢18歳以上)の患者であった。被験者は、抗菌薬治療を受ける群または虫垂切除術を受ける群に無作為に割り付けられた。抗菌薬群の患者は、少なくとも24時間、抗菌薬を静脈内投与されたのち、錠剤を10日間服用した。 主要アウトカムは、European Quality of Life-5 Dimensions(EQ-5D)質問票(0~1点、点数が高いほど健康状態が良好、非劣性マージンは0.05点)で評価した30日の時点での健康状態とした。副次アウトカムには、抗菌薬群における90日以内の虫垂切除術や、両群の合併症が含まれた。解析は、虫垂結石の有無別のサブグループで行った。抗菌薬群で虫垂切除術を受けた患者の41%が虫垂結石  2016年5月~2020年2月の期間に1,552例(414例が虫垂結石を有する患者)が登録され、抗菌薬群に776例(平均年齢38.3±13.4歳、女性37%)、虫垂切除術群にも776例(37.8±13.7歳、37%)が割り付けられた。抗菌薬群の患者の51%が入院で、47%が救急診療部を退院して自宅で、2%は退院して自宅以外で治療を受けた。虫垂切除術群の96%は腹腔鏡による手術を受けた。参加施設の報告による治療のアドヒアランスは、抗菌薬群が90%、虫垂切除術群は99%だった。 30日の時点での平均EQ-5Dスコア(intention-to-treat[ITT]解析)は、抗菌薬群が0.92±0.13点、虫垂切除術群は0.91±0.13点であり、抗菌薬群の虫垂切除術群に対する非劣性が確認された(平均群間差:0.01点、95%信頼区間[CI]:-0.001~0.03)。per-protocol解析(0.01点、-0.002~0.03)および主要アウトカムの欠測値の多重代入法を用いた解析(0.01点、-0.004~0.02)でも、同様の結果が得られた。また、虫垂結石を有する患者(-0.01点、-0.03~0.02)および虫垂結石のない患者(0.02点、0.003~0.03)でも、主要アウトカムの非劣性が示された。 抗菌薬群では、48時間以内に11%、30日までに20%、90日までに29%が虫垂切除術を受けた。90日までに虫垂切除術を受けた患者のうち、虫垂結石を有する患者が41%で、虫垂結石のない患者は25%であった。 合併症の発生率は、抗菌薬群が100例当たり8.1例と、虫垂切除術群の3.5例に比べて多かった(率比:2.28、95%CI:1.30~3.98)。合併症は、虫垂結石を有する患者(100例当たり20.2例vs.3.6例、率比:5.69、95%CI:2.11~15.38)では抗菌薬群で多かったが、虫垂結石のない患者(同3.7例vs.3.5例、1.05、0.45~2.43)では両群間に差はなかった。 重篤な有害事象は、抗菌薬群が100例当たり4.0例で、虫垂切除術群は3.0例で発現した(率比:1.29、95%CI:0.67~2.50)。経皮的ドレナージは、抗菌薬群が虫垂切除術群よりも頻度が高く(100例当たり2.5例vs.0.5例、率比:5.36、95%CI:1.55~18.50)、とくに虫垂結石を有する患者で高頻度であった。また、両群の虫垂切除術を受けた患者に限定した解析では、虫垂穿孔は抗菌薬群で多かった(32% vs.16%)。抗菌薬群全体でみると、虫垂結石を有する患者が虫垂結石のない患者に比べて多かった(61% vs.24%)。 著者は、「これらのデータは、COVID-19の世界的流行中に、患者と医師が個々の患者の特性や嗜好、状況を考慮しつつ、それぞれのアプローチの利点とリスクを比較検討する際に、とくに重要な意味を持つと考えられる」としている。

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ニボルマブ+カボザンチニブの腎がん1次治療、FDAの優先審査対象に/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブとExelixis社は、2020年10月19日、米国食品医薬品局(FDA)が、進行腎細胞がん(RCC)患者に対するニボルマブとカボザンチニブの併用療法に関して、それぞれ、生物学的製剤承認一部変更申請および医薬品承認事項変更申請を受理したことを発表。 FDAは、両申請とも優先審査の対象に指定し、処方せん薬ユーザーフィー法(PDUFA)に基づく審査終了の目標期日を2021年2月20日に設定した。  これらの申請は、未治療の進行RCC患者を対象にニボルマブとカボザンチニブの併用療法とスニチニブを比較評価した第III相CheckMate-9ER試験の結果に基づいている。同試験では、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法が、対照薬であるスニチニブと比較して、全生存期間、無増悪生存期間、奏効率を含むすべての有効性評価項目で有意な改善を示した。ニボルマブとカボザンチニブの併用療法の忍容性は良好で、未治療の進行RCCにおける免疫療法薬とチロシンキナーゼ阻害薬でこれまでに報告されている安全性プロファイルと一貫していた。 同試験の結果は、2020年欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress2020)のプレジデンシャルシンポジウムで発表された。

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わが国のATLLの実態調査/日本血液学会

 成人T細胞白血病・リンパ腫はわが国の西南部で頻度が高い。成人T細胞白血病・リンパ腫の第11次全国実態調査の結果が、第82回日本血液学会学術集会で長崎大学の今泉 芳孝氏より報告された。 この疫学研究は、98施設から収集した877例のうち適格の770例を対象として解析されたもの。 主な結果は以下のとおり。・臨床病型別の生存期間中央値は、急性型8.3ヵ月、リンパ腫型10.0ヵ月、慢性型25.6ヵ月、くすぶり型60.9ヵ月であった。・急性型、リンパ腫型の予後については、生存期間の改善はわずかだったが4年生存率は改善した。・70歳未満の急性型およびリンパ腫型では、同種造血幹細胞移植を受けた群で長期予後が改善されたが、適応となる70歳未満の患者で同移植をうけた割合は3分の1程度にとどまった。・慢性型・くすぶり型の予後については、生存期間は十分な改善を認めなかった。4年生存率は慢性型でやや改善するも、くすぶり型については改善が乏しかった。・iATL-PI別にみると、予後不良因子を有する慢性型であっても、indolentな経過を示す症例が、低リスク群ではみられた。くすぶり型では、iATl-PI 中/高リスク群、皮膚病変発症例では生存が不良な傾向が認められた。

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RCTの評価はどこで行うか? ELDERCARE-AF試験の場合(解説:香坂俊氏)-1302

今回解説させていただくELDERCARE-AFはわが国で実施された試験であるが、出血ハイリスクの心房細動患者に対して抗凝固療法(ただし低用量)の有用性を確立させたという点で画期的であった。高齢者で基礎疾患のある心房細動患者には抗凝固療法(最近ではワルファリンよりもNOACと呼ばれるクラスの薬剤が使われることが多くなっている)を用いた脳梗塞予防が広く行われているが、抗凝固を行えばそれだけ出血するリスクも高くなるわけであり、そこのバランスをどう保つかということは大きな課題であった。この試験では従来からの基準ではNOACを用いることができない「出血ハイリスク」患者を対象として、何もしないか(プラセボ投与)あるいは低用量のエドキサバン(NOACの1つ、通常の1日量が60㎎ 1xであるところを15mg 1xとして用いた)を用いるかというところの比較を行った。出血ハイリスクというところをどう規定するかというところに工夫があり、この試験では80歳以上ということをまず組み入れ基準とし、そのうえで以下のうちのいずれか1つ以上を満たす患者を対象とするとした(かなり条件は厳しい):・低腎機能(creatinine clearanceが15から30mL/min)・出血の既往・低体重(45kg以下)・NSAIDを使用・抗血小板剤を使用ただこの条件の設定の仕方はなかなか見事であり、これならば誰もが「出血ハイリスク」であることに納得がいき、かつ現場で抗凝固薬の処方をためらうというところに異論がないのではないかと思われる([1])。試験の結果として、脳卒中/全身性塞栓症の発生は低用量のエドキサバン群で少なく(the annualized rate of stroke or systemic embolism was 2.3% in the edoxaban group and 6.7% in the placebo group (hazard ratio, 0.34; 95% confidence interval [CI], 0.19 to 0.61; P

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第30回 経口液剤AMX0035でALS患者の生存も改善

世界保健機関(WHO)主催の世界30ヵ国以上での無作為化試験(Solidarity)の査読前報告が先週木曜日15日にmedRxivに掲載され1,2)、残念ながらギリアド社のベクルリー(Remdesivir、レムデシビル)やその他3つの抗ウイルス薬・ヒドロキシクロロキン、カレトラ(lopinavir/ritonavir)、インターフェロン(Interferon-β1a)はどれもCOVID-19入院患者の死亡を減らしませんでした。たとえばレムデシビル投与群の28日間の死亡率は非投与対照群の11.2%(303/2,708人)とほとんど同じ11%(301/2,743人)であり1,3)、その差は有意ではありませんでした(p=0.50)。そんなSolidarity試験とは対照的に、その発表の翌16日、脳や脊髄の運動神経が死ぬことで生じる難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬候補の良いニュースがありました4-6)。先月9月初めにNEJM誌に掲載されたプラセボ対照第II相試験(CENTAUR)でALS進行を有意に抑制した神経死抑制剤AMX0035がその試験と一続きの非盲検継続(OLE)試験で今度は有意な生存延長をもたらしたのです。米国マサチューセッツ州ケンブリッジ拠点のAmylyx社が開発しているAMX0035は昔からある成分2つが溶けた経口の液剤です。成分の1つはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬・フェニル酪酸ナトリウム(sodium phenylbutyrate)、もう1つは胆汁酸・タウルソジオール(Taurursodiol)です7)。今回発表されたOLE試験に先立つCENTAUR試験にはALS患者137人が参加し、それらのうち3人に1人はプラセボ、あとの3人に2人はAMX0035を6ヵ月間服用しました。NEJM誌報告によると6ヵ月間のAMX0035服用群の体の不自由さの進行はプラセボに比べてよりゆっくりでした7)。また、AMX0035服用は腕の筋力低下も抑制しました。今回のOLE試験にはCENTAUR試験から継続して90人が参加し、全員がAMX0035を服用し、CENTAUR試験の始まりから数えて最大約3年間(35ヵ月間)追跡されました。その結果、生存期間中央値はAMX0035を最初から服用し続けた患者(56人)では25ヵ月、当初プラセボを服用した患者では18.5ヵ月であり(p=0.023)、最初からのAMX0035服用患者は当初プラセボを服用した患者に比べて有意に半年以上(6.5ヵ月)生存が延長されました8)。細胞内小器官・小胞体(ER)へのストレスや機能障害、それにミトコンドリアの機能や構造の欠損がALSの発病要因と目されており、AMX0035に含まれるフェニル酪酸ナトリウムはERがストレスを受けて誘発する毒性を緩和し、もう1つの成分タウルソジオールはミトコンドリアを助けて細胞を死に難くします7)。米国ワシントン D.C.の隣街アーリントンを本拠とするALS患者の会・ALS Association等はAMX0035をALS患者ができるだけ早く使えるようにする請願活動を先月初めに開始しており、16日のニュースによると5万人近く(4万7,000人以上)が請願に署名しています4)。参考1)Repurposed antiviral drugs for COVID-19; interim WHO SOLIDARITY trial results. medRxiv. October 15, 2020.2)Solidarity Therapeutics Trial produces conclusive evidence on the effectiveness of repurposed drugs for COVID-19 in record time / WHO 3)Remdesivir and interferon fall flat in WHO’s megastudy of COVID-19 treatments / Science4)AMX0035 Survivability Data Adds to Urgency to Make Drug Available / ALS Association5)Amylyx Pharmaceuticals Announces Publication of CENTAUR Survival Data Demonstrating Statistically Significant Survival Benefit of AMX0035 for People with ALS / BUSINESS WIRE6)Investigational ALS drug prolongs patient survival in clinical trial / Eurekalert7)Paganoni S,et al. N Engl J Med. 2020 Sep 3;383:919-930.8)Paganoni S,et al. Muscle & Nerve. 16 October 2020. [Epub ahead of print]

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ストレスに対するSNS利用の影響~日本理学療法士協会の学生調査

 藍野大学の本田 寛人氏らは、理学療法を学んでいる日本の大学生におけるインターネット依存と心理的ストレスに対するスマートフォンを用いたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の影響を調査した。Journal of Physical Therapy Science誌2020年9月号の報告。 2~4年生の理学療法を学ぶ学生247人(19~22歳)を対象に、単一大学横断的研究を実施した。毎日のスマートフォン利用時間、スマートフォンを用いたSNS利用時間、授業以外での自己学習時間に関する情報を、自己記入式アンケートにより収集した。インターネット依存と心理的ストレスの評価には、インターネット依存度テスト(IAT)と心理的ストレス反応尺度(SRS-18)を用いた。12人を除外した235人のデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・重回帰分析では、IATスコアと性別(男性)および毎日のスマートフォン利用時間との関連が示唆された。・SNS利用目的の一つである「目的のないネットサーフィン」およびIATスコアとSRS-18スコアとの関連が認められた。・その他の変数とIATスコアまたはSRS-18スコアとの関連は認められなかった。 著者らは「大学生のインターネット依存または心理的ストレスに対し、男性、毎日のスマートフォン利用時間または受動的なSNS利用が関連している可能性が示唆された」としている。

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コルヒチンの冠動脈疾患2次予防効果に結論を出した論文(解説:野間重孝氏)-1300

 評者は今回の論文に関連した他論文の論文評を昨年12月にこの欄に掲載しているため(「今、心血管系疾患2次予防に一石が投じられた」)、解説部分が前回と一部重複することを、まずご容赦いただきたい。また、先回の論文評の中で今回の論文のスタディデザイン報告をした論文(Nidorf SM, et al. Am Heart J. 2019;218:46-56.)に言及し、評者の早とちりから彼らがすでに結論を出してしまったような誤解を与える記述をしてしまいました。この点につき、この場をお借りして陳謝させていただきます。 動脈硬化が炎症と深い関係があるとする動脈硬化炎症説は、1976年にRossらが「障害に対する反応」仮説を提出したことに始まる(Ross R, et al. N Engl J Med. 1976;295:369-377.、420-425.、二部構成)。以後さまざまな仮説が提出され、議論が繰り返されたが、結局確定的なメカニズムの解明には至っていない。 コルヒチンはイヌサフラン科のイヌサフラン(Colchicum autumnale)の種子や球根に含まれるアルカロイドで、長く痛風の薬として使用されてきた。主な作用として、細胞内微小管(microtubule)の形成阻害、細胞分裂の阻害のほかに、好中球の活動を強力に阻害することによる抗炎症作用が挙げられる。ところが皮肉なことに、ここにコルヒチンが動脈硬化の進展予防に何らかの作用を持つと考えられなかった理由がある。というのは、動脈硬化炎症説を考える人たちは単球やマクロファージ、免疫系細胞には注目するが、好中球には関心を示さなかったからだ。ちなみに好中球、多核球に対してこれだけ強力な抑制作用を持つ薬剤は、現在コルヒチン以外に知られていない。結局、今世紀に至るまでコルヒチンが動脈硬化性疾患の進展予防に何らかの効果を持つとは誰も考えなかったのである。 しかし突破口は意外な方面から開かれた。ニューヨーク大学のリウマチ研究室の研究者たちが奇妙な事実に気付き報告したのだ。痛風患者に対してコルヒチンを使用していると心筋梗塞の有病率が低いというのである(Crittenden DB, et al. J Rheumatol. 2012;39:1458-1464.)。 この結果にいち早く注目したのが本論文の著者であるHeart Care Western AustraliaのNidorf SMらのグループだった。彼らは通常の治療に加え、コルヒチン錠を1日当たり0.5mg投与する治療群(282例、66歳、男性率89%)とコントロール群(250例、67歳、男性率89%)の計532例を中央値で3年間フォローアップした結果(主要アウトカムは、急性冠症候群、院外心停止、非心臓塞栓性虚血性脳卒中)、ハザード比(HR)は0.33(95%信頼区間[CI]:0.18~0.60)、NNT 11で2次予防が可能であるという驚くべき結果を得た(LoDoCo試験、Nidorf SM, et al. J Am Coll Cardiol. 2013;61:404-410.)。この試験は登録数が少ないこと、open labelで検討されていることからあくまでpilot studyだったのだが、一部の関係者の注目を集めるには十分だった。 いち早くLoDoCo pilot studyに注目したのがカナダ・モントリオール心臓研究所のグループであり、前回評者が論文評を担当した論文がこれだった(Tardif JC, et al. N Engl J Med. 2019;381:2497-2505.)。彼らは、登録日前30日以内に心筋梗塞を発症し、経皮的血行再建術を受けた症例4,745例を2群に分け、両群にいわゆる内科的至適療法(OMT)を行うとともに、一方の群にコルヒチン0.5mg/日を、もう一方にplaceboを追加投与する二重盲検試験を行った。エンドポイントを心血管死、心停止後の蘇生、心筋梗塞、脳卒中、血行再建とし、コルヒチン群で有意に発生率が低いことを証明した。この研究は注目すべきものではあったが、問題点もあった。複合エンドポイントのうち、差が出たのは脳卒中と血行再建だけで、脳卒中ではっきり差が出ていなければかなりきわどい結果になっていた可能性があったからだ。また心筋梗塞後30日以内の患者という対象設定にも問題があった。 一方、先回のpilot studyから確信を得たNidorfらのグループは、LoDoCo2試験を立ち上げた。コルヒチンが安全に投与できることが確かめられた安定狭心症5,522例を対象としてコルヒチン0.5mg/日とplaceboによる二重盲検試験を行った。この試験のデザインは前述したように、昨年別途報告された(Nidorf SM, et al. Am Heart J. 2019;218:46-56.)。そのLoDoCo試験の最終報告となるのが本論文である。この試験にも複合エンドポイントに脳卒中が含まれていたが、31%の発生減を報告できたことには十分な説得力がある(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.57~0.83、p<0.001)。また、サブ解析でも明らかな心事故発生の減少が報告された。この試験の意味深い点は、臨床的にとくに問題のない安定狭心症を対象として2次予防の成績を提出したことにある。評者が題名に「結論」という文言を使用したゆえんである。 今回の試験で著者らは対象患者の性別に偏りがあったこと、血圧や脂質など他の危険因子のデータ収集が不完全であったことを挙げているが、評者にはこれらが大きな限界とは考えられない。冠動脈疾患は典型的な多因子的疾患であり、2次予防効果をみるためには一つひとつの因子をつぶしていく必要がある。すべての因子を包括した研究が事実上不可能である以上、どれか確定的な因子(もしくは治療法)が証明できればそれは充分な前進であると評価されなければならないと考えるからである。 評者が不満に思うことを挙げるとすれば、前述のカナダのグループにおいても同様なのだが、冠動脈疾患の2次予防の検定になぜ脳卒中を複合エンドポイントに入れなければならないのか、という点である。冠動脈疾患は何度も述べているように典型的な多因子疾患である。一方、脳血管障害は、確かに危険因子は多数指摘できるが、その中において血圧の重要性が圧倒的に高く、同じ多因子疾患といっても冠動脈疾患とはその性格を大きく異にし、その進展過程・機序にも差があるからである。今回の試験においても、前回のカナダのグループの試験においても、コルヒチンは明らかに脳卒中の発生率を低下させている。だから確かに効果があることに異論はないのだが、その機序については別の議論が必要であろう。 このところコルヒチンを用いた研究が各方面で活発化していることは、J-CLEARの論文紹介に目を通していらっしゃる方々はよくご承知ではないかと思う。しかし評者の知る限り、わが国ではあまり関心が持たれていない印象がある。わが国でもこの新しい発見を有効に利用しようという動き(もしくは検証しようという動き)が早く出ることを願うものである。

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第18回 痛み診療のコツ・治療編(2)神経ブロック・その1【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第18回 痛み診療のコツ・治療編(2)神経ブロック・その1前回までは治療編(1)として、薬物療法について解説しました。今回は、神経ブロックに焦点を当てて説明していきたいと思います。神経ブロックとは神経ブロックとは、脳脊髄神経および神経節や神経叢、交感神経および神経節や神経叢に神経ブロック針を刺入して、神経に直接またはその近傍に局所麻酔薬や神経破壊薬を注入し、その薬物効果で神経の伝導機能を一時的あるいは永久的に遮断する方法です。また、神経を特殊な針を用いて高周波熱凝固し、同様に神経の伝導を遮断する方法も神経ブロックに含まれます。痛み治療における神経ブロックでは、外来患者さんの場合では運動機能を残し、痛覚のみをブロックする方法を選択します。手術時の神経麻酔(ブロック)と、この点において大いに異なります。神経ブロックの意義(1)診断的ブロック神経ブロックにより、痛みに関与する神経を診断することができます。この診断的ブロックそのものによっても痛み治療になります。(2)痛み伝導路の遮断当然のことながら、痛み伝導路の遮断によって痛みの緩和が得られます。局所麻酔薬による神経ブロックでは、効果は一時的なものと考えますが、繰り返し神経ブロックを施行することで、痛みのない時間を作ることが大切です。これにより、最初に述べた痛みの悪循環が断ち切られ、痛みから解放されます。(3)交感神経の遮断知覚神経のみならず、交感神経の遮断が生じると、当然ことながら、交感神経の過剰反応が緩和され、末梢血管が拡張し、末梢循環不全が解消されることで痛みが抑制されます。神経ブロックの種類通常よく用いられるのは、以下の種類です。脳神経ブロック:三叉神経末梢枝神経ブロック知覚神経ブロック:腕神経叢ブロック、肩甲上神経ブロック交感神経ブロック:星状神経節ブロック交感・知覚・運動神経ブロック:頸部・胸部・腰部・仙骨硬膜外ブロック などこのほか、比較的一般に施行されているのが、トリガーポイントブロックです。安全性が高く、それなりの鎮痛効果が得られます。神経ブロックの適応(1)有痛性疾患三叉神経痛や肋間神経痛などのいわゆる神経痛、末梢神経障害性疼痛、末梢循環障害性疼痛、がん性疼痛などが含まれます。(2)無痛性疾患本態性顔面神経麻痺、顔面けいれん、眼瞼けいれん、手掌多汗症、突発性難聴などが含まれます。神経ブロックに使用される薬物(1)局所麻酔薬リドカイン、メピバカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、ボプスカイン、ジブカインなどがあります。効果持続時間が薬物によって異なりますので、ブロックの目的に合わせて使います。(2)神経破壊薬エタノール(99.5%)、フェノールグリセリン、フェノール水(7%)などを用います。(3)ステロイド神経の炎症や絞扼症状が強い場合には、水溶性ステロイド薬を局所麻酔薬に適量添加します。神経ブロックの合併症局所麻酔薬中毒、アナフイラキシーショック、神経損傷、血管内注入、などが見られることがあるので、ブロック後十分な観察が必要です。患者さんに対し、あらかじめ十分な説明をしておくと共に、万一、合併症が生じた場合の緊急蘇生器具などの準備が大切です。以上、神経ブロックを取り上げ、その意義、種類、適応、使用される薬物、合併症などについて述べました。痛みを有する患者さんに接しておられる読者の皆様に、少しでもお役に立てれば幸いです。次回は神経ブロックの実際についてさらに具体的に解説します。1)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S180-S181

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