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第229回 高額療養費制度の自己負担の引き上げ案、政府が修正を検討/政府

<先週の動き>1.高額療養費制度の自己負担の引き上げ案、政府が修正を検討/政府2.医療存続のためJA県厚生連に19億円支援、経営改革が課題/新潟県3.東京女子医大元理事長を再逮捕 不正支出1.7億円、還流の疑い/警視庁4.若手医師の過労死、甲南医療センターの院長ら不起訴処分に/神戸地検5.維新の会、医療費4兆円削減と社保料6万円減を提案/国会6.28億円の診療報酬不正請求発覚、訪問看護で虚偽記録横行/サンウェルズ1.高額療養費制度の自己負担の引き上げ案、政府が修正を検討/政府政府は、高額な医療費の自己負担を軽減する「高額療養費制度」の見直し案について、修正を検討している。政府案では、2025年8月から3段階に分けて自己負担の上限額を引き上げる方針だったが、長期治療を必要とするがん患者などから「受診抑制につながる」との懸念が相次ぎ、負担軽減に向け、見直し案の修正が求められていた。高額療養費制度は、医療費が一定額を超えた場合に、患者の自己負担額に上限を設ける仕組み。政府の見直し案では、70歳未満の年収約370~770万円の層で、1ヵ月の自己負担限度額が現行の8万100円から最終的に13万8,600円に引き上げられる予定だった。さらに、12ヵ月以内に3回以上限度額を超えた場合、4回目以降は負担を軽減する「多数回該当」制度についても、上限額が4万4,400円から7万6,800円に引き上げられることになっていた。この見直し案に対し、全国がん患者団体連合会などの患者団体が強く反発し、12ヵ月以内に6回以上限度額を超えた場合、7回目以降の負担を現行水準に据え置く案を提案。政府はこれを参考に、長期治療を受ける患者の負担増を抑える方向で修正を検討している。また、患者団体からの意見聴取が行われなかったことも問題視され、国会では見直し案の凍結や再検討を求める声が上がった。これを受け、石破 茂首相は「患者の理解を得ることが必要」とし、福岡 資麿厚生労働大臣が患者団体との意見交換を行う方針を示した。野党側も見直し案に強く反対し、立憲民主党は高額療養費の負担引き上げを凍結する修正案を国会に提出予定。新型コロナウイルスワクチンの基金や予備費を財源に充当できると主張している。一方、政府は「制度の持続可能性を確保するために負担増は必要」との立場を維持しており、今後の調整が注目される。全国保険医団体連合会の調査では、がん患者の約半数が自己負担増による「治療の中断」を検討し、6割以上が「治療回数の削減を余儀なくされる」と回答。生活面では、8割以上が「食費や生活費を削る」とし、子供の教育への影響も懸念されている。政府は今後、長期治療を受ける患者の負担軽減を含めた修正案をまとめるが、財源確保の問題もあり、与野党の調整は難航する可能性が高い。高額療養費制度の持続性と患者負担のバランスをどう取るか、引き続き議論が続く見通し。参考1)「治療諦めろというのか」子育て中のがん患者 高額療養費見直し案に(毎日新聞)2)高額療養費引き上げ凍結を 立民、財源はコロナ基金(日経新聞)3)高額療養費の負担増なぜ見直し? 政府・与党、患者に配慮(同)4)高額療養費、負担引き上げで「治療断念」検討も がん患者ら調査(朝日新聞)5)子どもを持つがん患者さんに高額療養費アンケート 記者会見で中間報告(保団連)2.医療存続のためJA県厚生連に19億円支援、経営改革が課題/新潟県新潟県内で11病院を運営するJA県厚生連が経営危機に直面し、2025年度中にも運転資金が枯渇する恐れがあることを受け、県と病院所在の6市が総額19億円の財政支援を行う方針を決定した。6日に県庁で開かれた会合で、新潟県は国の交付金を活用しながら10億円程度を負担し、6市は約9億円を拠出することを表明。これにより、当面の資金不足は回避される見込みとなった。県厚生連は、人口減少に伴う患者数の減少が影響し、2023年度決算で35億9,000万円の赤字を計上。2024年度は職員の賞与削減など緊急対策を実施しているが、12月時点で45億6,000万円の赤字が見込まれている。病院運営に必要な運転資金は月額90億円に上るため、早急な財政支援が求められていた。会合では、県の花角 英世知事が「持続可能な経営には抜本的な改革が必要」と述べ、病院再編を含めた地域医療の効率化を求めた。6市を代表して糸魚川市の米田 徹市長は、「県として3ヵ年の財政支援を継続して欲しい」と要望し、国に対しても診療報酬制度の見直しを求める姿勢を示した。県厚生連の塚田 芳久理事長は「さらなる経営改革を進め、県民に安心できる医療を提供しながら安定経営の確保に努める」と表明。年度内に2025年度から3年間の経営計画を策定し、経営改善を図る方針という。しかし、長期的な経営安定には根本的な改革と継続的な財政支援が不可欠であり、今後の動向が注目されている。参考1)県厚生連へ19億円支援 県と6市方針 病院運営危機受け(読売新聞)2)JA県厚生連に19億円 25年度分 県と6市が支援表明(毎日新聞)3)新潟県、病院経営危機のJA県厚生連への支援を10億円規模で調整 2025年度の運転資金枯渇は回避できる見通し(新潟日報)3.東京女子医大元理事長を再逮捕 不正支出1.7億円、還流の疑い/警視庁東京女子医科大学の建設工事を巡る背任事件で、警視庁は3日、元理事長の岩本 絹子容疑者(78)を再逮捕した。岩本容疑者は2020年から翌年にかけて、足立区に新設された大学付属病院「足立医療センター」の建設工事に関連し、「建築アドバイザー報酬」名目で約1億7,000万円を大学から1級建築士の男性に支払わせ、損害を与えた疑いが持たれている。うち約5,000万円が岩本容疑者に還流されていたとみられる。岩本容疑者は1月、新校舎建設を巡る背任容疑で逮捕されていた。警視庁の調べによると、同様の手口で1億1,700万円の不正支出が行われ、そのうち約3,700万円が還流されたとされる。これにより、架空の「建築アドバイザー報酬」による大学の損害は総額3億円超に上る可能性がある。捜査関係者によると、建築士の男性は大学から受け取った資金の一部について元女子医大職員を通じて岩本容疑者に現金で渡していた。元職員の女性は岩本容疑者の直轄部署に所属しており、容疑者の指示の下、資金移動を担っていたとみられる。大学側が承認した建設に関係する稟議書によると、建築士への支払いは施工費(約264億円)の0.7%に相当し、理事会で承認されていた。しかし、実際には業務実態が乏しく、大学関係者からは「理事会での異議申し立てが困難な状況だった」との証言も出ている。さらに、内部文書の解析から、理事長自らが申請者兼承認者となっていたことも判明し、不正の組織的な側面が浮かび上がっている。警視庁は、還流資金がブランド品購入など私的な用途に充てられた可能性もあるとみており、資金の流れや関係者の役割について捜査を進めている。岩本容疑者の認否は明らかにされていないが、背任の疑いは一層強まっている。参考1)本日2/3(月)元理事長の再逮捕について(女子医大)2)東京女子医大元理事長、背任容疑で再逮捕…業務実態ない男性への報酬で1・7億円の損害与えた疑い(読売新聞)3)東京女子医大の女帝再逮捕 内部文書で明らかになった“デタラメやりたい放題”の仕組み「女子医大には元理事長の手足となって動いた人間たちがたくさんいる」(文春オンライン)4.若手医師の過労死、甲南医療センターの院長ら不起訴処分に/神戸地検2022年に神戸市の甲南医療センターで勤務していた専攻医・高島 晨伍さん(当時26歳)が長時間労働を苦に自殺した問題で、神戸地検は4日、労働基準法違反の疑いで書類送検されていた病院運営法人「甲南会」と院長ら2人を不起訴処分とした。検察は不起訴の理由を明らかにしていない。西宮労働基準監督署の調査では、高島さんの亡くなる直前の1ヵ月間の時間外労働が113時間を超えていたと認定されていた。高島さんの母は「非常に残念。この結果が若手医師の労働環境改善を阻むものであってはならない」とコメント。病院側は「事実に基づく捜査を経ての判断」と述べるにとどまった。この問題は、医師の働き方改革とも密接に関係し、2024年4月から医師の時間外労働に上限規制が導入され、基本的には年間960時間(月80時間)が上限とされた。しかし、研修医や特定の医療機関では、最大で年間1,860時間(月155時間)までの時間外労働が認められており、現場の実態との乖離が指摘されている。また、医療現場では「自己研鑽」として学会準備や研究活動が労働時間に含まれず、事実上の無償労働が横行しているとの批判もある。厚生労働省の通達では「上司の指示がある場合は労働」とされるが、実際には上司の関与が曖昧なケースも多く、勤務時間の過少申告につながる恐れがあると指摘されている。さらに、病院側は「宿日直許可制度」を利用し、夜間の長時間勤務を労働時間に含めない運用を行っている。この制度の適用件数は2020年の144件から2023年には5,000件を超え、病院経営の抜け道として使われているのが実情である。若手医師の過重労働は、医療の安全性や医師不足の深刻化にも影響を及ぼす。すでに「地域医療の維持よりも働きやすさを求め、美容医療などに転職する若手医師が増えている」との指摘もあり、医療界全体のモラルハザードが懸念さている。医師の長時間労働は、単なる労働問題ではなく、患者の安全にも直結する。自己犠牲を前提とした医療制度の見直しが急務となっている。参考1)甲南医療センター若手医師の過労自死 労基法違反疑いの院長ら不起訴処分 神戸地検(神戸新聞)2)若手医師の過労死、労基法違反疑いの病院運営法人や院長ら不起訴 神戸地検、理由明かさず(産経新聞)3)医師不足に拍車をかける「偽りの働き方改革」(東洋経済オンライン)5.維新の会、医療費4兆円削減と社保料6万円減を提案/国会日本維新の会は2月7日、政府の2025年度予算案への賛成条件として、医療費の年間約4兆円削減と国民1人当たりの社会保険料を約6万円引き下げる改革案を提示した。これにより、高校授業料無償化と並び、社会保障制度の見直しを求める構え。自民・公明両党は慎重な対応をみせており、今後の協議の行方が注目されている。維新の青柳 仁士政調会長は、自民・公明両党の政調会長との会談で、医療費削減策として「市販薬と類似する医薬品(OTC類似薬)の保険適用除外」「医療費窓口負担の見直し」「高額療養費の自己負担限度額の判定基準再検討」などを提案。さらに、社会保険加入が義務付けられる「年収106万円・130万円の壁」問題への対応も要請した。維新は、これらの改革を2025年度から実施すれば、年間4兆円の医療費削減が可能であり、国民の社会保険料負担を1人当たり年間6万円減らせると主張している。とくに、OTC類似薬の保険適用除外については、湿布や風邪薬など、処方薬として購入すれば1~3割の自己負担で済むが、全額自己負担とすることで約3,450億円の医療費削減が見込まれると試算。さらに、窓口負担割合の見直しでは、所得に加え、預貯金や株式などの金融資産を考慮する仕組みを導入し、資産の多い高齢者の負担を増やすことを提案した。また、電子カルテと個人の健康情報を統合する「パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)」の普及促進も掲げ、医療コストの効率化を狙う。一方、維新は医療費削減策だけでなく、社会保険料負担軽減のための年収の壁問題にも言及。現在、51人以上の企業に勤めるパート労働者は年収106万円を超えると社会保険加入が義務付けられ、130万円を超えると企業規模に関係なく加入が求められる。この制度が労働時間の抑制を生み、人手不足を助長しているとの指摘もあり、維新は政府に対策を求めた。自民党は、まずは高校授業料無償化の議論を優先し、維新の予算案への賛成を取り付けたい考えだが、維新は「高校無償化と社会保険料引き下げの両方が必要条件」と主張し、交渉は難航する可能性がある。自民・公明両党は改革案の具体的な影響を精査するとして回答を留保しており、維新の提案が実現するかは不透明だ。政府は社会保障費の増大に対応するため、医薬品の公定価格(薬価)引き下げによる財源捻出を続けている。しかし、薬価改定による削減効果は限界に達しつつあり、新たな医療費抑制策が求められる状況。維新の提案がこの課題にどう影響を与えるのか、今後の国会審議に注目が集まる。参考1)維新が医療費4兆円削減、社会保険料は6万円引き下げ提案 新年度予算案賛成の条件に(産経新聞)2)「市販品類似薬を保険外に」維新、社保改革で具体案 自公に提案、予算賛成の条件(日経新聞)3)高額療養費の「自己負担の上限引き上げ」見直しへ…政府・与党、がん患者らに反発広がり(読売新聞)4)少数与党国会、厚労省提出法案の「熟議」を注視(MEDIFAX)6.28億円の診療報酬不正請求発覚 訪問看護で虚偽記録横行/サンウェルズパーキンソン病専門の有料老人ホーム「PDハウス」を運営する東証プライム上場のサンウェルズ(金沢市)が、全国のほぼ全施設で診療報酬の不正請求を行っていたことが、7日に公表された特別調査委員会の報告書で明らかになった。調査の結果、不正請求額は総額28億4,700万円に上ると試算されている。報告書によると、サンウェルズは全国14都道府県で約40ヵ所の「PDハウス」を運営。訪問看護事業において、実際には数分しか訪問していないにもかかわらず、30分間訪問したと虚偽の記録を作成し、診療報酬を請求するなどの不正が横行していた。また、実際には1人で訪問しているにもかかわらず、2人で訪問したと装い、加算報酬を請求するケースも確認された。さらに、特定の入居者に対し、必要がないにもかかわらず毎日3回の訪問を行い、過剰な請求を行っていたことも判明。現場の職員の間では「訪問回数を減らせばペナルティーが科される」という認識が広まり、不正が慣例化していた可能性が高い。経営陣はこうした問題について複数回の内部通報を受けていたものの、実態把握に動かなかったとされる。サンウェルズは当初、不正の疑惑を全面否定していたが、昨年9月の報道を受けて特別調査委員会を設置。今回の調査結果を受け、「多大なご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げます。再発防止策を速やかに策定し、信頼回復に努める」と謝罪のコメントを発表した。一方で、同社の経営陣にはインサイダー取引の疑惑も浮上している。昨年7月、サンウェルズは不正の指摘を受けながらも、東証プライム市場へ移行し、野村證券を主幹事とする株式の売り出しを実施。社長の苗代 亮達氏は個人で34億円の売却益を得ていた。市場関係者からは「不正を認識したまま株式を売却した可能性がある」として、金融商品取引法違反の疑いも指摘されている。今回の不正請求問題は、サンウェルズだけでなく、業界全体にも波紋を広げる可能性がある。ホスピス型老人ホームの需要が高まる中で、制度の見直しや行政のチェック体制の強化が求められている。参考1)特別調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ(サンウェルズ社)2)約28億4,700万円の不正請求と調査委が試算…金沢市に本社の「サンウェルズ」の訪問看護事業めぐり(石川テレビ)3)老人ホームのサンウェルズ、ほぼ全施設で不正請求 調査委が報告書(毎日新聞)4)ほぼ全施設で不正請求 PDハウス運営サンウェルズ 調査委報告書 過剰訪問看護で28億円(中日新聞)5)東証プライム上場サンウェルズが老人ホームほぼ全てで介護報酬不正請求!社長の「インサイダー取引」疑惑に発展か(ダイヤモンドオンライン)

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ゴキブリのせいで多剤耐性菌が院内アウトブレイク【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第275回

ゴキブリのせいで多剤耐性菌が院内アウトブレイク院内感染対策において、私たちは常に新たな課題に直面しています。コロナ禍で注目されたテーマなので、いろいろな研究やエビデンスが出てきました。今回ご紹介する事例は、都市部の病院のICUで発生した、20ヵ月に及ぶ奇妙な多剤耐性エンテロバクターのアウトブレイクです。この事例がとくに注目に値するのは、標準対策では制御できなかった感染拡大が、まさかのアイツによって引き起こされていたことです。タイトルに書いちゃってますが…。っていうか、この連載、ゴキブリ論文多くない?Hanrahan J, et al. Invasion of superbugs: Cockroach-driven outbreak of multidrug-resistant Enterobacter in an ICU.Antimicrob Steward Healthc Epidemiol. 2024 Oct 1;4(1):e155.アウトブレイクは、隣接する病室の2人の患者から多剤耐性エンテロバクターが検出されたことから始まりました。医療スタッフはただちに接触予防策、手指衛生の強化、個々の医療機器の使用徹底など、標準的な感染対策プロトコールを適用しました。しかし、これらの対策にもかかわらず、新たな感染例が次々と確認されていきました。環境調査では、ベッドサイドキャビネット、マットレス、ベッド柵、ゴミ箱の蓋、人工呼吸器、吸引装置など、多くの環境表面から多剤耐性エンテロバクターが検出されました。徹底的な消毒清掃を実施しましたが、一部の病室では繰り返し清掃が必要な状況が続きました。このアウトブレイクの謎を解く重要な手がかりとなったのは、現場の看護師の観察眼! 看護師の1人が病室でゴキブリを目撃していたという報告を受け、捕獲したゴキブリを用いた培養検査を実施しました。その結果、多剤耐性エンテロバクターに加えて、多剤耐性緑膿菌、MRSA、MSSA、アスペルギルス、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌など、複数の院内感染の原因となる微生物が検出されたのです。耐性菌ゴキブリや!最終的に、このアウトブレイクでは入院患者131名中25名(19.5%)が多剤耐性エンテロバクターに感染または保菌していました。感染までの平均期間は14.5日(±10.7日)で、最短でわずか3日というありさまでした。害虫駆除の専門家による対策強化後、一時的に新規感染例は抑制されましたが、13ヵ月後に再びゴキブリが発見され、その1週間後に新たな感染例が確認されました。いや、この害虫ほんまに何やねん…。この論文が声高に書いているのは、病院環境における害虫の存在を決して軽視してはならないということです。とくにゴキブリはさまざまな病原体の媒介者となる可能性があり、比較的清潔な病院が多い日本の医療機関でも注意が必要です。

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ワクチン接種後の免疫抑制療法患者のリスクを抗体の有無で評価(解説:栗原宏氏)

本研究のまとめ・免疫抑制療法患者において、抗SARS-CoV-2スパイク抗体(抗S Ab)陽性者は感染・入院リスクが低い・感染リスク要因:年齢が若い(18~64歳)、子供との同居、感染対策の実施・入院リスク要因:併存疾患の存在強み(Strong Points)・3つの異なる免疫抑制患者群におけるCOVID-19リスクを大規模データで解析・抗S Abの有無と感染・重症化リスクの関連を明確化・実臨床データとリンクし、健康アウトカムに関する実証的な証拠を提供限界(Limitations)・因果関係ではなく相関関係の分析に留まる・治療介入(抗ウイルス薬、モノクローナル抗体)の影響が不明確・ワクチンの種類や接種時期の詳細な分析が不足・行動要因(マスク着用、社会的距離)の影響が考慮されていない可能性 本研究は、免疫抑制患者におけるSARS-CoV-2スパイク抗体の有無が、感染および入院率にどのような影響を与えるかを評価する約2万人規模のコホート研究である。 免疫抑制療法では、ワクチン接種後の免疫応答が低下する可能性があり、COVID-19感染リスクが高いと考えられる。 英国の全国疾病登録データを用い、以下の3つの免疫抑制患者群において抗体の影響を評価した。1)固形臓器移植(SOT)2)まれな自己免疫性リウマチ疾患(RAIRD)3)リンパ系悪性腫瘍(lymphoid malignancies)主な結果と臨床的意義 いずれの群でも、抗体陽性者のCOVID-19感染率・入院率は、年齢・人種・既存疾患などを調整しても有意に低かった。より具体的には、抗体陰性者の感染リスクは1.5〜1.8倍、入院リスクは2.5〜3.5倍高かった。 これらの結果から、免疫抑制患者に対し抗体検査を活用することで、高リスク群を特定し、追加ワクチン接種や早期治療などの対応を提供できる可能性が示唆された。 しかし、本研究は相関関係の分析に留まるため、・「抗体ができやすい人=健康状態が良く感染リスクが低い」・「抗体ができにくい人=強力な免疫抑制療法を受けており感染・重症化リスクが高い」といった因果関係の逆転の可能性も考慮する必要がある。 また、本研究では、ワクチンの種類・接種回数の影響、抗体価の高低、行動習慣(通勤・外出頻度)の影響は評価されていない。感染リスク要因の考察 感染リスク要因として、年齢が若いこと、子供との同居、感染対策の実施が挙げられた。「感染対策をしている人の感染リスクが高い」という結果は直感的に意外だが、これは 「感染リスクが高い人ほど対策をしているが、免疫が弱いため、それでも感染しやすい」という背景を反映しているという可能性がある。 本研究は、免疫抑制患者における抗S Abの有無とCOVID-19感染・入院リスクの相関を示し、免疫抑制患者のCOVID-19管理戦略を考えるうえで重要な知見を提供していると考えられる。

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コロナワクチン、免疫抑制患者への接種継続は必要か?/Lancet

 英国・NHS Blood and TransplantのLisa Mumford氏らは、英国の全国疾病登録を用いた前向きコホート研究において、免疫抑制状態にあるすべての人は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防戦略を継続的に受ける必要があることを示した。英国では、免疫が脆弱と考えられる人々に対し、年2回のCOVID-19ワクチンブースター接種が推奨されている。著者らは、3回以上のワクチン接種を受けた免疫抑制状態にある患者において、抗SARS-CoV-2スパイク蛋白IgG抗体(抗S抗体)と感染リスクおよび感染の重症度との関連を集団レベルで調査した。結果を踏まえて著者は、「大規模に実施可能な抗S抗体の評価は、免疫抑制状態にある人々のうち最もリスクの高い人々を特定可能で、さらなる個別化予防戦略のメカニズムを提供するものである」とまとめている。Lancet誌2025年1月25日号掲載の報告。固形臓器移植、希少自己免疫性リウマチ性疾患、リンパ系悪性腫瘍患者を対象に評価 研究グループは、英国の全国疾病登録を用いて固形臓器移植(SOT)患者、希少自己免疫性リウマチ性疾患(RAIRD)患者、リンパ系悪性腫瘍患者を特定して研究への参加者を募集した。抗S抗体のラテラルフロー検査を行うとともに社会人口学的および臨床的特性に関するアンケート調査を実施した後、英国国民保健サービス(NHS)のデータを用いて6ヵ月の追跡調査を行った。 アウトカムは、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19関連入院とした。SARS-CoV-2感染は主に英国健康安全保障庁(UKHSA)のデータを用いて特定し、COVID-19による入院および治療に関する記録で補完した。COVID-19関連入院は、検査陽性から14日以内の入院と定義した。抗S抗体陽性、COVID-19の感染や入院のリスク低下と関連 2021年12月7日~2022年6月26日に登録された適格患者2万1,575例を解析対象とした(SOT患者8,466例、RAIRD患者6,516例、リンパ系悪性腫瘍患者6,593例)。 抗S抗体陽性率は、SOT患者77.0%(6,519/8,466例)、RAIRD患者85.9%(5,594/6,516例)、リンパ系悪性腫瘍患者79.3%(5,227/6,593例)であった。 抗S抗体検査後6ヵ月間のSARS-CoV-2感染は、全体で3,907例(18.1%)に認められ、COVID-19関連入院は556例(2.6%)に発生した。そのうち17例(<0.1%)が感染後28日以内に死亡した。 感染率は社会人口学的および臨床的特性によって異なるが、多変量補正解析の結果、抗S抗体の検出は感染発生率の低下と独立して関連しており、発生率比(IRR)はSOT患者集団で0.69(95%信頼区間[CI]:0.65~0.73)、RAIRD患者集団で0.57(0.49~0.67)、リンパ系悪性腫瘍患者集団で0.62(0.54~0.71)であった。 また、抗S抗体陽性はCOVID-19関連入院のリスク低下とも関連しており、IRRはSOT患者集団で0.40(95%CI:0.35~0.46)、RAIRD患者集団で0.32(0.22~0.46)、リンパ系悪性腫瘍患者集団で0.41(0.29~0.58)であった。

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AMLへのベネトクラクス、ex vivoの感受性が奏効と生存延長を予測/Blood

 急性骨髄性白血病(AML)、とくに再発/難治性AMLにおいて、ベネトクラクスが奏効する可能性が高い患者を特定することは難しい。今回、フィンランド・ヘルシンキ大学のSari Kytola氏らによる前向き多施設共同第II相試験(VenEx)において、ex vivoベネトクラクス感受性は治療反応性と強く相関し、生存期間延長を予測することが示され、再発/難治性AMLや2次性AMLでベネトクラクス+アザシチジン併用療法の対象となる患者選択に有益であることが示唆された。Blood誌2025年1月23日号に掲載。 本試験では、未治療例(48例)、再発/難治性例(39例)、既治療の2次性AML例(17例)の計104例を対象とした。主要評価項目は、最初の3サイクルの間のex vivo感受性試験実施患者の完全寛解(CR)または不完全な血液学的回復を伴うCR(CRi)の割合、主な副次的評価項目はex vivo薬剤感受性、反応、生存率における関連とした。 主な結果は以下のとおり。・ベネトクラクスの感受性は104例中102例で評価され、結果はサンプル採取から3日(中央値)以内に得られた。・未治療例では、ex vivo感受性例のCR/CRi割合は85%、全生存期間(OS)中央値は28.7ヵ月であったのに対し、ex vivo抵抗性例では5.5ヵ月であった(p=0.002)。・再発/難治性例では、ex vivo感受性例のCR/CRi割合は62%、OS中央値9.7ヵ月であったのに対し、ex vivo抵抗性例では3.3ヵ月だった(p<0.001)。・単変量および多変量解析において、ex vivoベネトクラクス感受性は良好な治療反応および生存の最も強い予測因子であった。

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“医者”になりたいです【Dr. 中島の 新・徒然草】(565)

五百六十五の段 “医者”になりたいです2025年になったばかりというのに、もう1月も終わろうとしています。何とまあ月日の経つのは早いですね。さて、私はよくYouTubeで評論家の岡田 斗司夫氏のしゃべっているのを聴いています。その岡田氏が先日「おたくの王様論」というチャンネルで面白いことを言っていました。動画のタイトルは「【岡田斗司夫と医者】※患者を救いたいと思えない..昔いじめてたやつが急患で運ばれてきた..医者の僕と高卒の彼女..【切り抜き】」という長いもの。YouTubeのタイトル画面には「患者に言えない医者の本音」とあったのでドキッとしつつ、つい聴いてしまいました。その動画の中で岡田 斗司夫氏に質問してきたのは卒後10年弱の内科医。質問者は「医学に対する知的好奇心から医学部を志し、今でも医学の勉強が楽しくて仕方がない」という立派な先生です。ところが「患者にはまったく興味がなく『患者を救いたい』という気持ちになったことがありません」というのがこの先生の悩み。とはいえ、診療に手を抜くことはなく、転勤に伴って追いかけてくる患者さんやお手紙を送ってくる人が何人もいるというくらい患者満足度の高い人です。しかし、いくら患者さんに感謝されても、やりがいや幸福感はないのだとか。そして周囲の熱意あふれるお医者さんたちをうらやましく思い、「『患者を救いたい』という、医師として当たり前の感情を抱くのに、なにか方法はありますでしょうか。“医者”になりたいです」という悩みを持っているとのことでした。これに対して岡田 斗司夫氏はいろいろと回答しているわけですが、複雑過ぎて何を言っているのか、私にはよく理解できませんでした。さて、もし私がこの先生にアドバイスするなら……今さら「患者を救いたい」という感情を持つ必要なんかない、というのが回答になりますね。自分が患者だったら、むしろこういう医師に診てもらいたいです。この先生の医学や診療に対する熱意というのは、たとえてみれば精巧なプラモデルを作るみたいなものではないでしょうか。「救いたい」という動機でも「精巧なプラモデルを完成させたい」という動機でも、患者さんにとっては同じことです。むしろ「救いたい」よりも「完璧に遂行したい」という動機のほうが、仕事に没頭できるはず。この先生、せっかく一生懸命にやって結果も良く、患者さんにも感謝されているのですから、それで十分です。「救いたい」などという邪心が入ってしまったら、むしろ結果が悪くなったりしないかな。ただ、僭越ながら一つだけアドバイスさせていただくなら……目の前の疾患にベストの治療を行うのは1つの目標ではありますが、その患者さんの人生を可能なかぎり満足感のあるものにする、というのも、もう1つの目標だと思います。この第1の目標と第2の目標に対する診療はほぼ一致するわけですが、いつも一致するわけではありません。われわれ医師が悩まされるのは、そういう時ですね。「“医者”になりたいです」などという邪念にとらわれる暇があったら、そのエネルギーをこういった悩みの解決に使ったほうがいいのでは?読者の皆さまもそれぞれに思うところがあることでしょう。私自身もいろいろと考えさせられた悩み相談でした。最後に1句若者の 邪心を払う 睦月かな

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“添付文書に従わない経過観察”の責任は?【医療訴訟の争点】第8回

症例薬剤の添付文書には、使用上の注意や重大な副作用に関する記載があり、副作用にたりうる特定の症状が疑われた場合の処置についての記載がされている。今回は、添付文書に記載の症状が「疑われた」といえるか、添付文書に記載の対応がなされなかった場合の責任等が争われた京都地裁令和3年2月17日判決を紹介する。<登場人物>患者29歳・女性妊娠中、発作性夜間ヘモグロビン尿症(発作性夜間血色素尿症:PNH)の治療のためにエクリズマブ(商品名:ソリリス)投与中。原告患者の夫と子被告総合病院(大学病院)事案の概要は以下の通りである。平成28年(2016年)1月妊娠時にPNHが増悪する可能性を指摘されていたため、被告病院での周産期管理を希望し、被告病院産科を受診。4月4日被告病院血液内科にて、PNHの治療(溶血抑制等)のため、エクリズマブの投与開始(8月22日まで、薬剤による副作用はみられず)7月31日出産のため、被告病院に入院(~8月6日)8月22日午前被告病院血液内科でエクリズマブの投与を受け、帰宅昼過ぎ悪寒、頭痛が発生16時55分本件患者は、被告病院産科に電話し、午前中にエクリズマブの投与を受け、その後、急激な悪寒があり、39.5℃の高熱があること、風邪の症状はないこと等を伝えた。電話対応した助産師は、感冒症状もなく、乳房由来の熱発が考えられるとし、本件患者に対し、乳腺炎と考えられるので、今晩しっかりと授乳をし、明日の朝になっても解熱せず乳房トラブルが出現しているようであれば、電話連絡をするよう指示した。21時18分本件患者の母は、被告病院産科に電話し、熱が40℃から少し下がったものの、悪寒があり、発汗が著明で、起き上がれないため水分摂取ができず脱水であること、手のしびれがあること、体がつらいため授乳ができないこと等を伝えた。21時55分被告病院産科の救急外来を受診し、A医師が診察。診察時、血圧は95/62 mmHgであり、SpO2は98%、脈拍は115回/分、体温は36.3℃(17時に解熱鎮痛剤服用)、項部硬直及びjolt accentuation(頭を左右に振った際の頭痛増悪)はいずれも陰性であった。22時45分乳腺炎は否定的であること、エクリズマブの副作用の可能性があること等から、被告病院血液内科に引き継がれ、B医師が診察した。診察時、本件患者の意識状態に問題はなく、意思疎通可能、移動には介助が必要であるものの短い距離であれば介助なしで歩行可能であった。血液検査(22時15分採血分)上、白血球、好中球、血小板はいずれも基準値内であった。23時30分頃経過観察のため入院となった。8月23日4時25分本件患者の全身に紫斑が出現、血圧67/46mmHg、血小板数3,000/μLとなり、敗血症性ショックと播種性血管内凝固症候群(DIC)の病態に陥った。抗菌薬(タゾバクタム・ピペラシリン[商品名:ゾシンほか])が開始された。10時43分敗血症性ショックとDICからの多臓器不全により、死亡。8月24日本件患者の細菌培養検査の結果が判明し、血液培養から髄膜炎菌が同定された。8月29日薬剤感受性検査の結果、ペニシリン系薬剤に感受性あることが判明した。実際の裁判結果本件では、(1)エクリズマブの副作用につき血液内科の医師が産科の医師に周知すべき義務違反、(2)8月22日夕方に電話対応した助産師の受診指示義務違反、(3)8月22日夜の救急外来受診時の投薬義務違反等が争われた。本稿では、このうちの(3)救急外来受診時の投薬義務違反について取り上げる。本件で問題となったエクリズマブの添付文書には、以下のように記載されている。※注:以下の内容は本件事故当時のものであり、2024年9月に第7版へ改訂されている。「重大な副作用」「髄膜炎菌感染症を誘発することがあるので、投与に際しては同感染症の初期徴候(発熱、頭痛、項部硬直、羞明、精神状態の変化、痙攣、悪心・嘔吐、紫斑、点状出血等)の観察を十分に行い、髄膜炎菌感染症が疑われた場合には、直ちに診察し、抗菌薬の投与等の適切な処置を行う(海外において、死亡に至った重篤な髄膜炎菌感染症が認められている。)。」「使用上の注意」「投与により髄膜炎菌感染症を発症することがあり、海外では死亡例も認められているため、投与に際しては、髄膜炎菌感染症の初期徴候(発熱、頭痛、項部硬直等)に注意して観察を十分に行い、髄膜炎菌感染症が疑われた場合には、直ちに診察し、抗菌剤の投与等の適切な処置を行う。髄膜炎菌感染症は、致命的な経過をたどることがある」この「疑われた場合」の解釈につき、患者側は、「疑われた場合」は「否定できない場合」とほぼ同義であり、症状からみて髄膜炎菌感染症の可能性がある場合には「疑われた場合」に当たる旨主張した。対して、被告病院側は、「疑われた場合」に当たると言えるためには、「否定できない場合」との対比において、「積極的に疑われた場合」あるいは「強く疑われた場合」であることが必要である旨を主張した。このため、添付文書に記載の「疑われた場合」がどのような場合を指すのかが問題となった。裁判所は、添付文書の上記記載の趣旨が、エクリズマブは髄膜炎菌を始めとする感染症を発症しやすくなるという副作用を有し、髄膜炎菌感染症には急速に悪化し致死的な経過をたどる重篤な例が発生しているため、死亡の結果を回避するためのものであることを指摘し、以下の判断を示した(=患者側の主張を積極的に採用するものではないが、被告病院側の主張を排斥した)。積極的に疑われた場合または強く疑われる場合に限定して理解することは、その趣旨に整合するものではない少なくとも、強くはないが相応に疑われる場合(相応の可能性がある場合。他の鑑別すべき複数の疾患とともに検討の俎上にあがり、鑑別診断の対象となり得る場合)を含めて理解する必要がある添付文書の警告の趣旨・理由を強調すると、可能性が低い場合かほとんどゼロに近い場合(単なる除外診断の対象となるにすぎない場合)を含めて理解する余地があるその上で、裁判所は、以下の点を指摘し、本件は添付文書にいう「疑われた場合」にあたるとした。『入院診療計画書』には、「細菌感染や髄膜炎が強く疑われる状況となれば、速やかに抗生剤を投与する」ために入院措置をとった旨が記載されており、担当医は、髄膜炎菌感染症を含む細菌感染の可能性について積極的に疑っていなくとも、相応の疑いないし懸念をもっていたと解されること(CRPや白血球の数値が低い点はウイルス感染の可能性と整合する部分があるものの)ウイルス感染であれば上気道や気管の炎症を伴うことが多いのに、本件でその症状がなかった点は、これを否定する方向に働く事情であり、ウイルス感染の可能性が高いと判断できる状況ではなかったといえること(CRPや白血球の数値が低いことは細菌感染の可能性を否定する方向に働き得る事情ではあるものの)細菌感染の場合、CRPは発症から6~8時間後に反応が現れるといわれており、それまではその値が低いからといって細菌感染の可能性がないとは判断できず、疑いを否定する根拠になるものではないこと。同様に、白血球の数値も重度感染症の場合には減少することもあるとされており、同じく細菌感染の疑いを否定する根拠になるものではないことそして、裁判所は「細菌感染の可能性を疑いながら速やかに抗菌薬を投与せず、また、(省略)…細菌感染の可能性について疑いを抱かなかったために速やかに抗菌薬を投与しなかったといえるから、いずれにしても速やかに抗菌薬を投与すべき注意義務に違反する過失があったというべき」として、被告病院担当医の過失を認めた。この点、被告病院は「すぐに抗菌薬を投与するか経過観察をするかは、いずれもあり得る選択であり、いずれかが正しいというものではない」として医師の裁量である旨を主張したが、裁判所は、以下のとおり判示し、添付文書に従わないことを正当化する合理的根拠とならないとした。「あえて添付文書と異なる経過観察という選択が裁量として許容されるというためには、それを基礎づける合理的根拠がなければならないところ、細菌感染症でない場合に抗菌薬を投与するリスクとして、抗菌薬投与が無駄な治療になるおそれ、アレルギー反応のリスク、肝臓及び腎臓の障害を生じるリスク、炎症の原因判断が困難になるリスクが考えられるが、これらのリスクは、髄膜炎菌感染症を発症していた場合に抗菌薬を投与しなければ致死的な経過をたどるリスクと比較すると、はるかに小さいといえるから、添付文書に従わないことを正当化する合理的根拠となるものではない」注意ポイント解説本件では、添付文書において「髄膜炎菌感染症が疑われた場合には、直ちに診察し、抗菌薬の投与等の適切な処置を行う」となっているところ、抗菌薬の投与等がなされないまま経過観察となっていた。そのため、「疑われた場合」にあたるのか、あたるとして経過観察としたことが医師の裁量として許容されるのかが問題となった。添付文書の記載の解釈について判断が示された比較的新しい裁判例である上、添付文書でもよく目にする「疑われた場合」に関する解釈を示した裁判例として注目される。「疑われた場合」の判断において本判決は、その記載の趣旨が、エクリズマブは髄膜炎菌を始めとする感染症を発症しやすくなる副作用を有し、髄膜炎菌感染症は急速に悪化し致死的な経過をたどる例があり、そのような結果を避けるためであることを理由とする。そのため、本判決の判断が、他の薬剤の添付文書の解釈でも同様に妥当するとは限らない。とくに、可能性が低い場合かほとんどゼロに近い場合(単なる除外診断の対象となるに過ぎない場合)を含めて理解する余地があるかについては、生じうる事態の軽重によりケースバイケースで判断されることとなると考えられる。しかしながら、一定の悪しき事態が生じうることを念頭に添付文書の記載がなされていることからすると、添付文書に「疑われた場合」とある場合は、強くはないが相応に疑われる場合(相応の可能性がある場合。他の鑑別すべき複数の疾患とともに検討の俎上にあがり、鑑別診断の対象となり得る場合)を含めるものとされる可能性が高いと認識しておくことが無難である。また、本判決は、添付文書と異なる対応をすることが医師の裁量として許容されるかについて、生じうるリスクの重大性を比較しており、生じ得るリスクの重大性の比較が考慮要素の一つとして斟酌されることが示されており参考になる。もっとも、添付文書の記載に従ったほうが重大な結果が生じるリスクが高い、という事態はそれほど多くはないと思われるうえ、そのような重大な事態が生じるリスクが高いことを立証することは容易ではないと考えられる。このため、前回(第7回:造影剤アナフィラキシーの責任は?)にコメントしたように、添付文書の記載と異なる使用による責任が回避できるとすれば、それは必要性とリスク等を患者にきちんと説明して同意を得ている場合がほとんどと考えられる(ただし、医師の行ったリスク説明が誤っている場合には、患者の同意があったとして免責されない可能性がある)。なお、本件薬剤の投与にあたり、患者に「患者安全性カード」(感染症に対する抵抗力が弱くなっている可能性があり、感染症が疑われる場合は緊急に診療し必要に応じて抗菌剤治療を行う必要がある旨が記載されたもの)が交付されており、診療にあたりすべての医師に示すように伝えられていたものの、このカードが示されなかったという事情がある。しかし、裁判所は、患者からは本件薬剤の投与を受けている旨の申告がされており、このカードの記載内容は添付文書にも記載されているとして、患者からカードの提示がなかったことが医師の判断を誤らせたという関係にはないとしている。医療者の視点本判決の焦点は、添付文書の記載の解釈でした。しかし、一臨床医としてより重要と考えた点は、「普段使用することが少ない薬剤であっても、しっかりと添付文書を確認し、副作用や留意点に目を通しておく必要がある」ということです。本件においても、関係した医療者がエクリズマブという比較的新しい薬剤の副作用を熟知していれば、あるいは処方した医師や薬剤師から情報共有がなされていれば、このような事態は回避できたかもしれません。エクリズマブの適応疾患は非常に限られており、使用経験のある医師は少ないと考えられます。たとえそのような稀にしか使用されることがない薬剤であっても、その副作用を熟知しておかなければならない、という教訓を示した案件と考えました。昨今は目まぐるしい速度で新薬が発表されています。常に知識・情報をアップデートしていないと、本件のようなトラブルを引き起こしかねません。多忙な勤務の中、各科の学会誌やガイドラインを熟読することは困難です。医療系のウェブサイトやSNSなどを有効的に活用し、効率よく情報を刷新していくことも重要と考えます。Take home message普段使用することが少ない薬剤であっても、その副作用や留意点を熟知しておく必要がある。添付文書に「疑われた場合」とある場合は、強くはないが相応に疑われる場合(相応の可能性がある場合。他の鑑別すべき複数の疾患とともに検討の俎上にあがり、鑑別診断の対象となり得る場合)を含めるものとされる可能性が高い。副作用と疑われる症状が発症した場合、副作用であることを念頭に添付文書の推奨に従って対応することが望ましく、もし添付文書と異なる対応をする場合、患者や家族に十分な説明を行う必要がある。キーワード添付文書(能書)の記載事項と過失との関係最高裁平成8年1月23日判決が、以下のように判断しており、これが裁判上の確立した判断枠組みとなっているため、添付文書の記載と異なる対応の正当化には医学的な裏付けの立証が必要であり、それができない場合には過失があるものとされる。「医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである」

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骨髄線維症、移植後30日目の変異消失が予後に関連/NEJM

 骨髄線維症患者において、移植後30日目におけるドライバー遺伝子変異の消失は、その種類に関係なく再発および生存に良好な影響を及ぼすことを、ドイツ・ハンブルグ・ エッペンドルフ大学医療センターのNico Gagelmann氏らが明らかにした。同種造血幹細胞移植は骨髄線維症に対する唯一の治癒的治療法である。この疾患の病態生理学的特徴はドライバー遺伝子変異であるが、移植後の変異の消失の影響は不明であった。NEJM誌2025年1月9日号掲載の報告。ドライバー遺伝子変異をモニタリング、予後との関連を評価 研究グループは、2000~23年にハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターにて初回移植を受けた原発性骨髄線維症または二次性骨髄線維症(真性多血症または本態性血小板血症に続発)の患者324例を対象に、移植前および移植後30日目、100日目、180日目にドライバー遺伝子変異をモニタリングし、変異の消失と再発および生存に及ぼす影響を検討した。 全例、移植の前処置には低強度ブスルファン+フルダラビンを用い、移植片対宿主病の予防は移植前に抗Tリンパ球グロブリン、移植後にカルシニューリン阻害薬(シクロスポリンAまたはタクロリムス)とミコフェノール酸モフェチルまたはメトトレキサートの併用投与を行った。 主要エンドポイントは、再発および無病生存期間(DFS)の2つとした。副次エンドポイントは全生存期間(OS)であった。移植後30日目の変異消失が予後に関連 患者背景は、年齢中央値が60歳、62%が原発性骨髄線維症であった。また、ドライバー遺伝子変異は、JAK2変異238例(73%)、CALR変異73例(23%)、MPL変異13例(4%)に認められ、58%の患者が移植前にJAK阻害薬による治療を受けていた。 移植後30日目には、JAK2変異の42%(101/238例)、CALR変異の73%(53/73例)、MPL変異の54%(7/13例)が遺伝子変異の消失を認めた。移植後100日目の変異消失はそれぞれ63%(117/185例)、82%(60/73例)、100%(13/13例)であり、移植後180日目はJAK2変異が79%(134/169例)、CALR変異が90%(62/69例)であった。 再発の1年累積発生率は、移植後30日目に変異が消失した患者で6%(95%信頼区間[CI]:2~10)、消失しなかった患者で21%(15~27)であった。 6年DFS率および6年OS率は、移植後30日目に変異が消失した患者でそれぞれ61%および74%、消失しなかった患者で41%および60%であった。 移植後30日目の変異消失は従来のドナーキメリズムよりも奏効の指標として優れ、再発や進行のリスク低下と独立して関連していることが示唆された(ハザード比:0.36、95%CI:0.21~0.61)。多変量解析の結果、移植後30日目の変異消失の影響は、ドライバー遺伝子変異の種類(JAK2、CALR、MPL)よりも大きいことが示唆された。

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第248回 自家NK細胞療法を自費で行うクリニックに改善命令、敗血症発症は「生来健康」な成人の衝撃、厚労省は新たなガイダンス作成へ

「生来健康」な成人が「免疫力のアップ」を目的に細胞療法を自費で受け、敗血症にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。キャンプインを目前にして野球が盛り上がってきました。日本のNPBでは複数の有名選手の不倫問題やトレバー・バウアー投手の横浜DeNAベイスターズ復帰が話題となっていますが、MLBでは佐々木 朗希投手(23)のロサンゼルス・ドジャース入団や、イチロー氏の米国野球殿堂入りなど、こちらも話題が盛り沢山です。個人的には中日ドラゴンズからポスティングシステムで MLBを目指していた小笠原 慎之介投手(27)のワシントン・ナショナルズ入りが興味を引きました。日刊スポーツなどの報道によれば、2年総額350万ドル(約5億4,300万円)で、今季年俸が150万ドル(約2億3,300万円)、来季年俸が200万ドル(約3億1,000万円)、中日への譲渡金はわずか70万ドル(約1億900万円)だそうです。同じくポスティングシステムで千葉ロッテマリーンズからドジャースに移籍した佐々木投手は、マイナー契約ながら契約金は今年の国際FAで最高額の6,500万ドル(約10億100万円)で、ロッテへの譲渡金は25%の約2億5,000万円だそうです。小笠原投手、中日で9年間に46勝(昨年は5勝)していますが、随分安く見られたものです。小笠原投手はまだ若く、カーブやチェンジアップを得意とする投手です。昨シーズンのシカゴ・カブス・今永 昇太投手ばりの活躍を期待したいところです。ちなみに、ワシントン・ナショナルズは2004年まではカナダが本拠地のモントリオール・エクスポズでした。現在の球場、ナショナルズ・パークはワシントンD.C.にあり、地下鉄利用でアクセスも良く、ドジャー・スタジアムのようには混まない上に、とても美しい球場です。ワシントンD.C.出張や旅行の折にはぜひ訪れてみて下さい。さて今回は、昨年10月に発生し、年末に厚生労働省が改善命令を出した東京の自由診療クリニックで起きた再生医療による敗血症事例について書いてみたいと思います。1月24日に開かれた厚生労働省の再生医療等評価部会でも、国立感染症研究所からその詳細が報告されましたが、敗血症を発症した2例ともなんと「生来健康」な成人で、「免疫力のアップ、がんの予防」を目的にクリニックを訪れていました。昨年10月にはクリニックなどに対し再生医療の提供を一時停止させる緊急命令この事例が最初の報道されたのは昨年の10月です。がん予防などを目的に都内のクリニックで自分のNK(ナチュラルキラー)細胞を採取、培養後に再び自分の体に戻す細胞療法を受けた人が重大な感染症にかかり入院したとして、厚生労働省は10月25日、クリニックなどに対し再生医療の提供を一時停止させる緊急命令を出しました。10月26日付の朝日新聞などの報道によれば、自由診療による細胞療法を提供していたのは医療法人輝鳳(きほう)会THE K CLINIC(東京都中央区)です。このクリニックで細胞療法を受けた2人が入院治療を要する重大な感染症を発症しました。細胞加工物を製造した同法人の池袋クリニック培養センター(東京都豊島区)において原因とみられる細菌が検査で検出されたとのことです。この事例については、10月24日に輝鳳会から厚労省に報告があり、同省は再生医療安全性確保法に基づいて、クリニックと培養センターに対し「悪性腫瘍の予防に対する自家NK細胞療法」の提供とその細胞加工物の製造の一時停止を命じました。調査の結果2人の細胞加工物の残液から細菌確認、12月に衛生管理体制の再検討や改善計画の提出などを求める改善命令この問題については厚労省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)、国立感染症研究所が調査を進め、12月24日に改めて、THE K CLINICの管理者・橋口 華子氏、池袋クリニックの管理者・甲 陽平氏、池袋クリニック培養センターを管理する輝鳳会(理事長・久藤 しおり氏)に対し、再生医療安全性確保法に基づいた改善命令を出しました。この時公表された調査結果によれば、患者2人がTHE K CLINICで自家NK細胞療法を受けたのは9月30日でした。その帰宅中に2人とも体調不良となり、病院に緊急搬送され、敗血症の診断でICUに入院しました。2人とも健康な成人で、池袋クリニック培養センターにおいて別々(1人は投与4ヵ月前、1人は投与1ヵ月前)に細胞採取(採血)が行われ、培養後にTHE K CLINICで投与を受けました。10月3日、細胞加工物を製造した池袋クリニック培養センターの細胞培養加工施設が、2人に投与した細胞加工物の無菌試験検体が陽性となったことを報告。その後、同検体から好気性グラム陰性桿菌(Pseudoxanthomonas mexicana)が同定されたとのことです。THE K CLINICは当該療法の計画の審査を行う認定再生医療等委員会へ本事例の発生を報告、10月24日に輝鳳会から厚労省に報告 が行われ、10月25日の緊急命令に至ったものです。厚労省、PMDA、国立感染症研究所の調査でも、2人の細胞加工物の残液から細菌(Pseudoxanthomonas mexicana)が確認され、同菌が敗血症発症の原因と考えられるとしました。汚染原因としては、採血時又は無菌試験検体準備時の汚染や、細胞培養過程での交差汚染の可能性が高いとしました。また、培養センターでは、点検整備の記録の作成が行われないなど複数の法令違反があり、無菌試験の一部を目視で行うなど不適切な体制もあったとのことです。同省は改善命令で、衛生管理体制の再検討や、改善計画の提出などを求めました。なお、この培養センターの運営は組織培養用培地の製造・販売等を行うバイオ企業に全面的に任せていたようです。不適切な温度管理下での輸送が汚染された最終投与物内の細菌増殖に影響を与えた可能性もなお、1月27日に開かれた再生医療等評価部会では、国立感染症研究所は上述したような事故の原因に加え、池袋の培養センターからTHE K CLINICへの「不適切な温度管理下での輸送が、汚染された最終投与物内の細菌増殖に影響を与えた可能性は否定できなかった」ともしました。その上で、再発防止に向けて、1.細胞培養加工施設における操作毎の手指衛生を中心とした適切な清潔操 作と環境の清掃や消毒の手順書の作成2.手順に関する定期的な職員の研修・訓練の確実な実施3.迅速かつ信頼できる無菌試験体制の確立4.搬送時の適切な温度管理5.治療後の適切な健康観察6.適切な逸脱管理、時に認定再生医療等委員会への迅速な報告7.各手順における適切な記録と保管の7項目を提言しました。厚労省はこの提言も踏まえ、こうした感染事故等の再発を防止するために、再生医療を提供する医療機関などに向け、通知やガイダンスを発出する方針とのことです。1月28日付の日経バイオテクは、「部会では、CPCにおける清潔操作の徹底や無菌試験の実施法、細胞などの温度管理、問題が発生した際の報告体制などについて、既存のガイダンスに盛り込んだり、新たにガイダンスを作成したりすることが検討された」と書いています。自家NK細胞療法は再生医療等安全性確保法で比較的リスクの低い第3種再生医療等に位置付けそれにしても、「がんにかからない(あるいは再発しないため)ために免疫力をアップさせる」という触れ込みで自家NK細胞療法を自由診療で行う医療機関(主に美容クリニックや、がん免疫療法を看板に掲げるクリニック)がなんと多いことでしょう。今回の場合、「生来健康」だった人が敗血症にかかって死にかけているわけですから、本末転倒と言えます。なお、一部の情報では、敗血症を発症したのは日本人ではなく、中国からわざわざ再生医療を受けに来た人のようです。男女の性別はわかっていません。自家NK細胞療法については、その科学的根拠は確立していないにもかかわらず、自由診療での提供が拡大しているのは、その提供自体は再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法)で認められているためです。自家NK細胞療法は、同法で比較的リスクの低い第3種再生医療等に位置付けられており、その高額な治療費や曖昧なエビデンスが批判されることはありましたが、提供禁止までには至っていません。ちなみに、「第189回 エクソソーム療法で死亡事故?日本再生医療学会が規制を求める中、真偽不明の“噂”が拡散し再生医療業界混乱中」で書いたエクソソーム療法も美容クリニックなどの自由診療で広がっています。しかし、日本では細胞培養上清液やエクソソームは細胞断片であり細胞には当たらないと整理されており、今のところ、再生医療等安全性確保法の対象外です。「第189回」では、エクソソームなどの細胞外小胞は「交差汚染管理が不十分な場合などに敗血症等重篤な事故を引き起こす可能性がある」(再生医療等評価部会・岡野 栄之氏資料より)との意見を紹介しましたが、今回は、第3種再生医療等のカテゴリーにある自家NK細胞療法で、その敗血症が起こってしまったわけです。「再生医療等安全性確保法が厳しいルールを定めていようとも、クリニックが実際にそれを守らなければ、安全性も絵に描いた餅」と週刊新潮今回の敗血症事例の発生で、美容クリニックなどで行われている細胞療法やエクソソーム療法などに対する世間の目が厳しくなる可能性があります。実際、週刊新潮の2025年1月16号は、「『専門家からすると“自殺行為”』 事故多発の再生医療の闇…」と題する記事を掲載、今回のTHE K CLINICで起きた事故を報じるとともに、「安確法(再生医療等安全性確保法)が厳しいルールを定めていようとも、クリニックが実際にそれを守らなければ、当然、安全性も絵に描いた餅に終わってしまう。冒頭で紹介したクリニックはその最たる問題例といえる。(中略)安確法は事実上骨抜きになっているといってよく、一般の患者にとって『本当に安全な再生医療』を見抜くことはほとんど不可能なのである」と書いています。さらに同記事は、再生医療等安全性確保法の対象外のエクソソーム療法や幹細胞培養上清液治療にも言及、「インターネットで検索すると、アンチエイジングや傷ついた組織の修復、育毛、疲労回復に免疫調節作用など、夢のような効果がうたわれている。(中略)現実には『夢のような治療』とは程遠い劣悪な製品が横行し、命の危険にさらされる恐れすら否定できないのが実態」と書くとともに、一般社団法人・再生医療安全推進機構の代表理事を務める香月 信滋氏の「現在の日本で表立って上清液治療やエクソソーム治療を提供している約700ヵ所の医療施設のうち、患者自身の細胞を使用していると明確に公表している施設はほとんどありません。それどころか8割以上が他人の細胞由来か、下手をすれば人間の細胞由来ではない恐れすらあります。また、専門家の調査によって、エクソソームとうたいながらエクソソームが全く含まれていない“謎の液体”が使用されている悪質な例も判明した」とのコメントも紹介しています。確固たるエビデンスもないまま、美容医療やがん予防における自由診療としてマーケットを広げつつある再生医療ですが、厚生労働省には安全性確保のため今まで以上の規制強化とともに、消費者側が悪徳医療機関の“詐欺”に遭わないようにするための何らかの対策も、ぜひ講じてもらいたいと思います。

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イサツキシマブの新規システムによる皮下投与、多発性骨髄腫治療で静注に非劣性(IRAKLIA)/サノフィ

 再発・難治性多発性骨髄腫患者を対象に、ポマリドミド・デキサメタゾン併用療法(Pd)に追加してイサツキシマブ(商品名:サークリサ)をオン・ボディ・デリバリー・システム(OBDS)用いて皮下投与する方法と、同剤を静注する方法を比較した無作為化非盲検第III相IRAKLIA試験において、複合主要評価項目である客観的奏効率(ORR)などを達成し、皮下投与の静注に対する非劣性が示された。 IRAKLIA試験は、再発・難治性多発性骨髄腫患者を対象に、Pdレジメンにイサツキシマブの固定用量をOBDSで皮下投与を追加する集団と、体重換算用量を静注追加する集団を比較した無作為化非盲検ピボタル第III相試験。 試験には世界252施設から531例が登録され、皮下投与群と静注群に無作為に割り付けられ、皮下投与群にはイサツキシマブの固定用量を、静注群には体重換算用量が投与された。結果、主な副次評価項目であるVGPR(very good partial response)以上の奏効率、注入に伴う反応の発現率および第2サイクルにおけるトラフ濃度を達成した。 なお、皮下投与は、Enable Injections社のenFuseハンズフリーOBDSを用いて行われた。この装置は、自動薬物送達技術を用いて、格納式の注射針から大容量薬剤の皮下投与を可能にしている。

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「別れた後が地獄」職場内恋愛経験者は約半数!/医師1,000人アンケート

 医師は、結婚したい職業ランキングで上位の常連となっている。では、医師の結婚・恋愛事情は、どのようになっているのだろうか。CareNet.comでは、20~40代の医師1,003人を対象に、結婚・恋愛事情に関するアンケートを実施した(2024年12月25~31日実施)。本アンケートでは、パートナーの有無や出会いのきっかけ・取り組み、パートナーの方の職業、職場内恋愛の経験について聞いた。また、職場内恋愛のエピソードも募集した。特定のパートナーがいる割合は約85% 「配偶者を含む特定のパートナー(結婚/恋愛)の有無」を聞いたところ、「いる」と回答した割合は全体で84.7%であり、男性87.5%、女性73.6%であった。年代別にみると、20代68.3%、30代83.9%、40代90.1%であり、年代が上がるほど「いる」と回答した割合が高い傾向にあった。出会いのきっかけは職場や学校が多い 次に「パートナーとの出会いのきっかけ」を聞いた。その結果「職場の同僚」が最も多く、34.7%であった。次点で「学校(大学・高校)」が多く20.9%であった。「マッチングアプリ・婚活サイト」の割合は6.9%であり、20代では20.2%にのぼった。少数ながら「患者」という回答も得られた(0.2%)。 「パートナーの職業(交際当初)」については、約70%を医療者が占めた。内訳は「看護師」が27.3%、「医師」が26.2%、「薬剤師」が4.1%、「その他の医療者」が11.9%であった。男性では「看護師」が多く(33.1%)、女性では「医師」が多かった(52.7%)。 特定のパートナーはいないと回答した方の「パートナー探しの取り組み」について聞いたところ、約半数(46.5%)が「パートナーは求めていない」と回答した。パートナー探しの取り組みとして多かったものは「友人・知人に紹介を求める」「合コン・イベント・飲み会へ参加する」「マッチングアプリ・婚活サイトを利用する」であった。職場内恋愛経験者は約半数 また、「職場内恋愛の経験」についても聞いた。その結果、「ある」と回答した割合は47.8%にのぼった。男性50.1%、女性38.3%であり、男性のほうが職場内恋愛経験者が多い傾向にあった。年代別にみると、20代29.3%、30代45.0%、40代55.6%であり、年代が上がるほど職場内恋愛経験者が多い傾向にあった。 「職場内恋愛のエピソード(自身の経験以外でも可)」を募集したところ、「職業への理解があるし当直の大変さなども共有できる」といったポジティブなコメントも得られたが、「別れた後が地獄」などの職場内恋愛の難しさ・気まずさに関するコメントも得られた。そのほか、「看護師長に出禁を食らっていた」「医師がモテるというのは幻想」など、さまざまなコメントが寄せられた。【ポジティブな意見・エピソード】・仕事内容(忙しいこと)を理解してくれて助かる(40代男性、放射線科)・職業への理解があるし当直の大変さなども共有できる(20代女性、臨床研修医)・看護師である妻と同じ寮に住んでおり、インフルエンザに罹患したときにいろいろと世話をしてくれて恋に落ちた(30代男性、腫瘍科)【バレる/バレない】・秘密にしてたのに、コロナで濃厚接触者になりバレてしまった(30代男性、精神科)・研修医の頃、同期の研修医がこっそりと病棟看護師さんと付き合っていたが、周りには全員知れ渡っていた。院内でのゴシップは隠せないことを研修医のころに学んだ(30代男性、泌尿器科)・結婚するまでばれなかった(30代男性、血液内科)・指導が厳しいことで有名な先生が特定の研修医にのみ優しい、当直によく一緒に入っているなど噂があり、「あの先生に限って」とみんな笑っていたが、臨床研修終了後に入籍していて驚いた(40代女性、内科)【職場内恋愛の難しさ・気まずさ】・お互いのシフトを完全に把握しているため、閉塞感・圧迫感がすごかった。不安になることも多々あった(20代男性、腎臓内科)・部内恋愛をしたことがあるが、別れた後が地獄だったので二度としないと誓った(20代男性、糖尿病・代謝・内分泌科)・医局内で付き合ってる人が、ケンカや別れた時に正直、周りの人は空気が悪く、迷惑だと思う(40代女性、整形外科)・自分の周囲だと離婚率が高いので、その後が地獄。大抵は女性側が離れていくが、男性側も居心地は当然悪くなる(40代女性、内科)・同期の職員が付き合っていたが、別れた後の気まずさで片方は退職してしまった(30代男性、血液内科)【医師と看護師の関係】・看護師さんを一生懸命口説き落とした人がいる(30代男性、血液内科)・看護師さんから積極的に誘われる(30代男性、精神科)・看護師と医師で付き合っている人は多かった(30代男性、糖尿病・代謝・内分泌科)【不倫】・不倫バレ、職場追放の話を複数聞いて、自分では絶対しないと心に誓った(40代男性、総合診療科)・不倫している医師と看護師が忘年会で喧嘩を始め、なかなかの修羅場であった(40代男性、放射線科)・結婚しているにもかかわらず、いろんな若い女医さんに手を出している医師がいた。最終的には奥さんにばれて慰謝料を請求されたうえで離婚していた(30代女性、呼吸器内科)【交際や出会いのきっかけ】・行きつけの居酒屋が一緒で仲良くなり結婚した(30代男性、形成外科)・当直と夜勤が被ったのがきっかけ(40代男性、小児科)・院長の紹介(40代男性、耳鼻咽喉科)・研修医の同期同士で結婚した(40代男性、麻酔科)・受付のお姉さんに手を出してそのまま結婚した人がいた(30代女性、放射線科)・病院見学に来た学生と研修医が交際し、結婚(30代男性、放射線科)・医師同士での結婚は学生時代から付き合っていたパターンが多い(30代女性、精神科)・真面目に働いていると職場以外で出会う機会がない(40代男性、小児科)【その他のエピソード】・今まで朝早く来ていた人が来なくなって、気が付いたら看護師さんと2人でゆっくり出てくるようになって、当直も同じ日に合わせていた。その後、別の病院に同時に異動したがすぐに別れた(30代男性、呼吸器外科)・自分と別れた恋人が、1年後に後輩から届いた年賀状で結婚していて、驚いたと同時に複雑な感情となった(40代男性、精神科)・後輩女性医師は出入りしている担当MRと結婚し、夫は主夫となり、妻は専門医を取った(40代女性、外科)・同級生に各フロアに友達を作っていた猛者がいたが、看護師長に出禁を食らっていた(40代男性、呼吸器内科)・何もなさすぎて残念ながら書くことがない。巷で言われるような医師がモテるというのは幻想(20代男性、放射線科)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。https://www.carenet.com/enquete/drsvoice/cg005085_index.html

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新素材PICC、デバイス不具合を改善するか/NEJM

 末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)留置のために紹介された患者では、標準的なポリウレタンPICCと比較して新素材の疎水性PICCおよびクロルヘキシジンPICCはいずれも、非感染性または感染性合併症によるデバイス不具合のリスクが低減しなかったことが、オーストラリア・クイーンズランド大学のAmanda J. Ullman氏らが実施した「PICNIC試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2025年1月9日号で報告された。ブリスベンの3病院で無作為化対照比較優越性試験 PICNIC試験は、標準的なポリウレタンPICCと比較して、2つの技術革新(疎水性PICC、クロルヘキシジンPICC)を用いると合併症によるデバイスの不具合のリスクが低減するとの仮説の検証を目的とする、実践的な無作為化対照比較優越性試験であり、2019年9月~2022年12月にオーストラリア・ブリスベンの3つの病院(成人施設2、小児施設1)で参加者の適格性の評価を行った(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]の助成を受けた)。 PICC留置を目的に紹介された成人および小児患者を、疎水性PICC、クロルヘキシジンPICC、標準的なポリウレタンPICCを留置する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付け、8週間追跡した。 主要アウトカムはデバイス不具合とした。デバイス不具合は、PICCの機能を停止させるか、意図した治療が完了する前に抜去する必要が生じるほど重度な感染性(PICC関連血流感染、局所感染)または非感染性(症候性静脈血栓症[画像で確認]、カテーテルの断裂または破損[肉眼または画像で確認]、カテーテルの閉塞[完全、部分])の合併症の複合と定義した。デバイス不具合は標準的な素材と差がない 1,098例を登録した。178例(16.2%)が小児(平均[±SD]年齢12[±3]歳)、920例(83.8%)が成人(57[±15]歳)であった。疎水性PICC群に365例(50.7[±22.3]歳、女性39.5%)、クロルヘキシジンPICC群に365例(50.4[±21.7]歳、40.0%)、標準的ポリウレタンPICC群に368例(49.7[±21.7]歳、40.5%)を割り付けた。患者の53.8%が3つ以上の併存疾患を有し、41.0%が過去に中心静脈カテーテル留置を受けていた。本試験の挿入型PICCは、ほとんどが一般的なダブルルーメンの5.0~5.5Frで、多くは尺側皮静脈に挿入された。 デバイス不具合は、疎水性群で358例中21例(5.9%)、クロルヘキシジン群で363例中36例(9.9%)、標準的ポリウレタン群で359例中22例(6.1%)に発生した。群間のリスク差は、疎水性PICC群と標準的ポリウレタン群で-0.2%ポイント(95%信頼区間[CI]:-3.7~3.2、p=0.89)、クロルヘキシジン群と標準的ポリウレタン群では3.8%ポイント(-0.1~7.8、p=0.06)と、いずれの比較でも有意な差を認めなかった。 また、標準的ポリウレタン群との比較におけるデバイス不具合のオッズ比は、疎水性群が0.96(95%CI:0.51~1.78)、クロルヘキシジン群は1.71(0.98~2.99)だった。合併症は数値上クロルヘキシジン群で多い PICC留置期間中のあらゆる原因による合併症は、疎水性群で77例(21.5%)、クロルヘキシジン群で140例(38.6%)、標準的ポリウレタン群で78例(21.7%)に発生した。オッズ比は、疎水性群と標準的ポリウレタン群の比較で0.99(95%CI:0.69~1.42)、クロルヘキシジンと標準的ポリウレタン群で2.35(1.68~3.29)であった。 あらゆる原因による有害事象は、疎水性群で12例(3.4%)、クロルヘキシジン群で4例(1.1%)、標準的ポリウレタン群で7例(1.9%)に発現した。介入に起因する有害事象は認めなかった。 著者は、「これらの知見は、多因子によるPICCの機能障害を予防することの複雑さを反映しており、PICCの種類によるデバイス不具合やカテーテル由来血流感染の発生率に明確な差はなかった」「今回の結果はPICC素材に関するこれまでの勧告とは対照的で、これらの勧告の多くは検出力不足または確実なアウトカム評価を欠く観察研究に基づいている」「本研究では、カテーテル閉塞はクロルヘキシジンPICCで頻度が高かったがその原因は不明であり、今後、閉塞の修正可能および修正不可能なリスクのさらなる検討を要する」としている。

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再発・難治性MMへのtalquetamab+teclistamab、第Ib-II相で有望(RedirecTT-1)/NEJM

 イスラエル・テルアビブ・ソウラスキー医療センターのYael C. Cohen氏らRedirecTT-1 Investigators and Study Groupが、再発・難治性の多発性骨髄腫に対するtalquetamab+teclistamab併用療法の安全性と有効性を評価するRedirecTT-1試験の第Ib-II相の結果を報告した。Grade3/4の感染症の発現頻度がそれぞれの単剤療法と比べて高率であったが、すべての用量群において高い割合の患者で奏効が観察され、推奨された第II相レジメンでは持続的な奏効が示された。talquetamab(抗Gタンパク質共役受容体ファミリーCグループ5メンバーD:GPRC5D)およびteclistamab(抗B細胞成熟抗原)は、CD3を標的としT細胞を活性化する二重特異性抗体薬であり、3種類の標準的な前治療歴を有する再発または難治性の多発性骨髄腫の治療薬として承認されている(本邦では承認申請中)。NEJM誌2025年1月9日号掲載の報告。第Ib-II相試験で、有害事象と用量制限毒性を評価 第Ib-II相試験は、多施設共同非無作為化非盲検試験として現在も進行中である。適格被験者の募集は、カナダ、イスラエル、韓国で行われた。第I相の用量漸増試験では、5つの用量群を評価。その結果を踏まえて第II相試験では、talquetamab 0.8mg/kg+teclistamab 3.0mg/kgの隔週投与が推奨レジメンとされた。 第Ib-II相試験の主要な目的は、有害事象と用量制限毒性の評価であった。Grade3/4の有害事象96%、奏効率は推奨レジメン群で80% 2020年12月9日~2023年4月26日に116例がスクリーニングされ、2024年3月15日時点で94例が治療を受け、そのうち44例に推奨された第II相レジメンが用いられた。 追跡期間中央値は20.3ヵ月(範囲:0.5~37.1)、推奨された第II相レジメンを受けた患者の追跡期間中央値は18.2ヵ月(0.7~27.0)であった。5つの全レジメン群において、計49例(52%)が併用療法を継続していた。年齢中央値は64.5歳、診断後期間中央値は6.1年、前治療歴中央値は4種類であった。 用量制限毒性は3例に発生した(第II相レジメン群のGrade4血小板減少症1例を含む)。 5つの全レジメン群で最も多くみられた有害事象は、サイトカイン放出症候群、好中球減少症、味覚の変化、皮疹を除く皮膚障害であった。 Grade3/4の有害事象は全レジメン群で96%に発現し、最も多くみられたのは血液学的事象であった。Grade3/4の感染症は64%に発現した。 奏効が認められた患者の割合は、第II相レジメン群で80%(髄外病変を有する患者では61%)、5つの全レジメン群で78%であった。奏効が持続している患者の割合は、18ヵ月時点で第II相レジメン群86%(髄外病変を有する患者では82%)、5つの全レジメン群77%であった。

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高腫瘍量濾胞性リンパ腫1次治療に対するモスネツズマブ皮下注の評価(MITHIC-FL1)/ASH2024

 高腫瘍量濾胞性リンパ腫(HTB-FL)の1次治療に対する、CD20/CD3二重特異性抗体モスネツズマブ皮下注射の多施設第II相試験の結果が第66回米国血液学会(ASH2024)で発表された。 初発進行期のHTB-FLでは、抗CD20抗体併用化学療法が行われる。一方、近年の研究で、FLは深い免疫抑制状態を特徴とし、腫瘍内のT細胞の機能不全が臨床経過に影響するとの報告もある1)。そのような中、CD3陽性T細胞に、CD20陽性FL細胞を認識させ排除させるCD20/CD3二重特異性抗体が、FL治療の鍵を握る選択肢2)として期待される。・試験デザイン:第II相多施設試験・対象:未治療のCD20陽性Stege II~IVのHTB-FL(Grade1~3A)GELF規準により治療が必要とされる患者・介入:mosunetuzumab 21日サイクル(1サイクル目:day1に5mg、day8、15に45mg、2~8サイクル:45mg)→完全奏効(CR)症例:経過観察、部分奏効症例:45mgを17サイクルまで継続投与、PR未満症例:試験中止・評価項目【主要評価項目】CR割合(Lugano分類による効果判定)【副次評価項目】奏効割合(ORR)、安全性、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)など 主な結果は以下のとおり。・2022年6月~2024年7月に78例が登録された。・カットオフ(2024年11月1日)時点の追跡期間中央値は13.3ヵ月。・有効性評価対象76例のORRは96%で、CR割合は80%であった。86%(65例)の患者が最小でも80%の腫瘍量減少を示した。・12ヵ月推定PFS割合は91%であった。・12ヵ月CR割合は90%であった。・12ヵ月推定OS割合は99%であった。・頻度の多い(≧20%)治療中発現有害事象(TEAE)は、注射部位反応(70%)、感染症(56%)、サイトカイン放出症候群(CRS)(54%)、発疹、皮膚乾燥などであった。・CRSを発現した症例は42例、そのうち40例はGrade1、残りの2例はGrade2だった。CRSの48%が1サイクルのday1に発現していた。・免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)、腫瘍崩壊症候群は認められなかった。

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ヘモクロマトーシス、HFE C282Yホモ接合体は糖尿病リスク高い/BMJ

 トランスフェリン飽和度またはフェリチンが正常、あるいはこれら両方が正常のヘモクロマトーシス患者は、ほとんどのガイドラインでHFE遺伝子型の判定が推奨されていないという。デンマーク・コペンハーゲン大学のMathis Mottelson氏らが、HFE遺伝子C282Yホモ接合体を有するヘモクロマトーシス患者は糖尿病のリスクが増加しており、糖尿病でC282Yホモ接合体の非保有者と比較して、糖尿病でC282Yホモ接合体の保有者は死亡率が高く、この集団の死亡の3割近くは糖尿病に起因する可能性があることを示した。研究の成果は、BMJ誌2024年12月9日号で報告された。デンマークの3つの集団の前向きコホート研究 研究グループは、血漿中の鉄、トランスフェリン飽和度、フェリチン濃度が正常であっても、HFE遺伝子C282Yホモ接合体を保有するヘモクロマトーシス患者は、糖尿病、肝疾患、心疾患のリスクが高いか否かを検証し、これらの疾患を持つC282Yホモ接合体の非保有者と比較して、保有者は死亡率が高いか否かについて検討する目的で、前向きコホート研究を行った(Capital Region of Denmarkなどの助成を受けた)。 解析には、デンマークの3つのコホート研究(Copenhagen City Heart Study、Copenhagen General Population Study、Danish General Suburban Population Study)のデータを用いた。 HFE遺伝子のC282Y変異およびH63D変異の有無を評価した13万2,542例(このうち422例がC282Yホモ接合体)を対象とし、研究への登録から最長27年間、前向きに追跡した。トランスフェリン飽和度、フェリチンが正常でも糖尿病リスクが高い C282Yホモ接合体の非保有者と比較した保有者の疾患別罹患率のハザード比(HR)は、糖尿病が1.72(95%信頼区間[CI]:1.24~2.39、p=0.001)、肝疾患が2.22(1.40~3.54、p<0.001)で、心疾患は1.01(0.78~1.31、p=0.96)であった。 年齢層別の5年間の糖尿病絶対リスクは、C282Yホモ接合体を保有する女性で0.54~4.3%、非保有女性で0.37~3.0%、保有男性で0.86~6.8%、非保有男性で0.60~4.8%であった。 試験登録時に得られた1回の血液サンプルの鉄、トランスフェリン飽和度、フェリチン濃度の値に基づく解析では、C282Yホモ接合体を有する集団は、トランスフェリン飽和度が正常(HR:2.00、95%CI:1.04~3.84)、またはフェリチンが正常(3.76、1.41~10.05)であっても糖尿病のリスクが上昇しており、フェリチンとトランスフェリン飽和度の両方が正常(6.49、2.09~20.18)でも糖尿病リスクが高かった。糖尿病による死亡の人口寄与割合は27.3% 糖尿病でC282Yホモ接合体を保有する集団では、糖尿病で非保有の集団よりも全死因死亡のリスクが高かったが(HR:1.94、95%CI:1.19~3.18)、糖尿病のないC282Yホモ接合体保有集団では死亡率は増加しなかった。 C282Yホモ接合体を保有する集団の死亡のうち、特定の疾患を有する集団における超過死亡を除外した場合に理論的に予防が可能な死亡の割合(人口寄与割合)は、糖尿病で27.3%(95%CI:12.4~39.7)、肝疾患で14.4%(3.1~24.3)であった。 一方、糖尿病や肝疾患のリスクは、H63Dヘテロ接合体、H63Dホモ接合体、C282Yヘテロ接合体、C282Y/H63D複合ヘテロ接合体を保有する集団では増加しなかった。 著者は、「これらの結果は、将来の遺伝性ヘモクロマトーシスの診療ガイドラインでは、C282Yホモ接合体を保有する集団においては糖尿病の発見と治療を優先することが重要となる可能性を示すものである」としている。

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アカラブルチニブ、フィルムコーティング錠の登場で胃酸分泌抑制薬との併用が可能に/AZ

 アストラゼネカは、2024年12月27日、アカラブルチニブのフィルムコーティング錠(商品名:カルケンス錠)が、成人慢性リンパ性白血病(CLL)(小リンパ球性リンパ腫[SLL]を含む)患者を対象とした治療薬として、製造販売承認を取得したと発表。 同承認は、消化管のpH条件にかかわらず薬物がすべて溶出するように改善した溶解性プロファイルを有するアカラブルチニブのフィルムコーティング錠に対するもので、海外の健康被験者を対象に行ったD8223C00013試験の結果に基づくものである。 既存のアカラブルチニブカプセルは、pH4を超える条件下では溶解性が低いことに関連して、国内添付文書では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、H2受容体拮抗薬および制酸薬とは併用注意となっていた。しかし、血液がん患者の20〜40%は、胃内pHを変化させる薬剤の投与を受けていると推定されており、同カプセル剤の使用は制限されていた。 今回の承認で錠剤が胃酸分泌抑制薬とともに服用できるようになり、アカラブルチニブの服薬レジメンの簡素化が期待できるという。・製品名:カルケンス錠100mg・一般名:アカラブルチニブマレイン酸塩水和物・効能又は効果:慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)・用法及び用量:通常、成人にはアカラブルチニブとして1回100mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

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テクリスタマブ、再発/難治多発性骨髄腫に承認/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、2024年12月27日、BCMA/CD3標的二重特異性抗体テクリスタマブ(商品名:テクベイリ)について、「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能又は効果として製造販売承認を取得したと発表した。 テクリスタマブはT細胞表面に発現するCD3受容体と骨髄腫細胞表面に発現するBCMAの両方に結合し、免疫系を活性化させるT細胞リダイレクト二重特異性抗体で、投与前の希釈が不要な皮下注製剤である。 今回の承認は、海外第I/II相MajesTEC-1試験4および国内第I/II相MMY1002試験の結果に基づくもの。両試験は、成人の再発/難治多発性骨髄腫(R/R MM)患者を対象にテクリスタマブの全奏効率(ORR)、最良部分奏効(VGPR)、完全奏効(CR)などの有効性および安全性を評価している。 MajesTEC-1試験は、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬および抗CD38抗体を含む少なくとも3つの標準治療歴を有する成人外国人のR/R MM患者を対象に、テクリスタマブの有用性を評価する第I/II相用量漸増単群非盲検多施設共同用量拡大試験。追跡期間中央値 30.4ヵ月において、ORR63%、CR以上46%を示した。有害事象は、好中球減少症(全Grade72%)、貧血(全Grade55%)、血小板減少症(全Grade42%)、リンパ球減少症(全Grade36%)、感染症(全Grade79%)などであった。MMY1002試験は成人日本人のR/R MM患者を対象に、テクリスタマブの有用性を評価する第I/II相用量漸増単群非盲検多施設共同試験。追跡期間中央値14.3か月において、ORR76.9%、VGPR以上76.9%、CR以上65.4%を示した。安全性に関する所見はMajesTEC-1の結果と一貫していた。

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ポラツズマブ ベドチン+R-CHPのDLBCL1次治療、5年追跡でも有効性確認 (POLARIX)/ASH2024

 未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する、ポラツズマブ ベドチンとR-CHPレジメンの併用は5年追跡結果でも、引き続き無増悪生存期間(PFS)ベネフィットが示された。 中等度または高リスクのDLBCLにおいてPola-R-CHPレジメンとR-CHOPレジメンを比較するPOLARIX試験の5年追跡結果 (カットオフ2024年7月5日) が第66回米国血液学会(ASH2024)で報告された。・試験デザイン:国際無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験・対象:未治療の成人(18~80歳)DLBCL(IPI指標2〜5)・試験群:ポラスズマブ ベドチン+シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾン +リツキシマブ→リツキシマブ (Pola-R-CHP、440例)・対照群:シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン+リツキシマブ→リツキシマブ(R-CHOP、439例)・評価項目:【主要評価項目】治験担当医評価のPFS【副次評価項目】治験担当医評価の無イベント生存期間(EFS)、PET-CTによる完全奏効(CR)割合、盲検下独立中央判定(BICR)評価の全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値54.9ヵ月における5年PFS割合はPola-R-CHP群64.9%、R-CHOP群59.1%と、引き続きPola-R-CHP群で有意な改善を示した(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.62~0.97)。・5年CR持続(DOCR)割合はPola-R-CHP群71.8%、R-CHOP群66.5%であった(HR:0.75、95%CI:0.57〜1.00)。・5年OS割合は、Pola-R-CHP群82.3%、R-CHOP群79.5%であった(HR:0.85、95%CI:0.63〜1.15)。・後治療を受けた割合はPola-R-CHP群38.3%、R-CHOP群61.7%だった。 拡大集団では中国の121例が追加され、合計1,000例(Pola-R-CHP群500例、R-CHOP群500例)が評価された。・拡大集団におけるPFSのHRは0.80(95%CI:0.65〜0.98)、無病生存率のHRは0.81(95%CI:0.63〜1.05)、OSのHRは0.83(95%CI:0.62〜1.10)であった。・拡大集団におけるGrade3~5の有害事象(AE)発現率はPola-R-CHP群98.0%、R-CHOP群98.6%、Grade3/4のAE発現はそれぞれ62.6%と60.2%、Grade5の発現はそれぞれ2.8%と2.0%で、Pola-R-CHP群とR-CHOP群で同等だった。 5年追跡データの結果でも、Pola-R-CHPは未治療の中または高リスクDLBCL患者に対する標準治療であることが確認された。

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ザヌブルチニブ、再発/難治慢性リンパ性白血病などB細胞性悪性腫瘍に承認/BeiGene Japan

 BeiGene Japanは、2024年12月27日、新たなBTK阻害薬ザヌブルチニブ(商品名:ブルキンザ)が、慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫含む)、原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫を適応症として厚生労働省より承認されたことを発表した。 今回の承認は、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)患者を対象にザヌブルチニブの有用性を評価したALPINE試験とSEQUOIA試験、原発性マクログロブリン血症/リンパ形質細胞リンパ腫(WM/LPL)患者を対象としたASPEN試験の3つの第III相臨床試験に基づいている。さらに、日本人患者を対象とした第I/II相臨床試験(BGB-3111-111)の結果は、ザヌブルチニブのプロファイルを裏付けるものであった。 再発・難治CLL/SLL患者652例を対象に行われた海外第III相臨床試験ALPINE試験では、ザヌブルチニブ群のイブルチニブ群に対する非劣性および優越性が示された。 未治療のCLL/SLL 患者589例を対象に行われたザ海外第III相臨床試験SEQUOIA 試験では、ザヌブルチニブ群のベンダムスチン/リツキシマブ(BR)群に対する優越性が示された。 WM/LPL患者229例を対象に行われた海外第III相臨床試験ASPEN試験では、ザヌブルチニブ群のイブルチニブ群に対する優越性は示されなかった。 ザヌブルチニブは、バイオアベイラビリティ、半減期、選択性を最適化することにより、BTKタンパクを完全かつ持続的に阻害するよう設計された経口投与のBTK阻害薬。同剤は他のBTK阻害薬とは異なる薬物動態を示し、多くの疾患関連組織において悪性B細胞の増殖を阻害することが報告されている。

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