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第154回 日本はパワハラ、セクハラ、性犯罪に鈍感、寛容すぎる?WHO葛西氏解任が日本に迫る意識改造とは?(前編)

休職中だったWHO西太平洋地域事務局の葛西 健・事務局長とうとう解任こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ワールド・ベースボール・クラシック (WBC)が終わってしまいました。日本代表の優勝に終わった今大会ですが、栗山 英樹監督以下、コーチ陣のほとんどが北海道日本ハムファイターズ(以下、日ハム)の在籍経験者で占められていたことは特筆に値します(代表の投手コーチだった吉井 理人・ロッテ監督も日ハムの投手コーチ時代にダルビッシュ 有選手、大谷 翔平選手を指導)。時折映るブルペンには、かつて日ハムでダルビッシュ選手の球を受けていた鶴岡 慎也氏もいました(ブルペンキャッチャーとして帯同)。首脳陣や裏方の組織編成に、栗山監督が日ハム時代に一緒に働き、自身の考えや戦い方を熟知している人間たちを招集したということでしょう。今回のWBCは、野球というスポーツを超えて、組織づくりという面でもとても参考になりました。ちなみに今回日本代表にスタッフとして参加した大谷選手の通訳の水原 一平氏(元日ハム通訳)は決勝戦直後、自身のインスタグラムに「日ハム組」と題して、コーチ陣に大谷 翔平選手、ダルビッシュ 有選手、近藤 健介選手、伊藤 大海選手らの出場選手も加わった集合写真を掲載しました。総勢なんと13人、全員がにこやかに笑う写真はまるで日ハムが世界で優勝したかのようでした。さて今回は、同じ”世界”ということで、WBCならぬWHO(世界保健機関)の西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ)の葛西 健・事務局長が解任されたニュースを取り上げます。昨年8月から休職となっていた葛西氏、日本政府の強力なロビー活動も虚しく、正式に解任となってしまいました。「調査の結果、不適切な行為があったことが判明した」とWHOWHOは3月8日、職員らへの人種差別的な発言などがあったとして内部告発され、昨年8月から休職中だった葛西・西太平洋地域事務局長を解任したと発表しました。WHOが地域事務局長を解任したのは初めてだそうです。共同通信などの報道によると、葛西氏の処遇を決める地域委員会の投票では解任賛成が13票、反対が11票、棄権が1票とほぼ拮抗。その結果を踏まえ、WHOは「調査の結果、不適切な行為があったことが判明した」とし「(葛西氏の)任命を取消した」と発表しました。不適切な行為の詳細は明らかにしていません。匿名の職員30人以上がWHO執行部に苦情を申し立て内部告発についてはAP通信が昨年1月に最初に報じました。それらの報道によれば、葛西氏は部下の職員に人種差別的な発言をしたり、「攻撃的なコミュニケーションや公然の場で恥をかかせる行為」を繰り返したり、一部の太平洋地域における新型コロナウイルスの感染拡大は「文化や人種のレベルが劣ることによる能力不足」などと述べたりしたとのことです。さらに、機密情報を日本政府に漏らしたという疑いも浮上していました。匿名の職員30人以上がWHO執行部に苦情を申し立て、WHOは告発内容について調査を開始、葛西氏を休職扱いとしました。葛西氏は、調査開始当初、声明で「部下に厳しく接したことは事実だが、特定の国籍の人を攻撃したことはない。機密情報を漏洩したとの非難にも異議がある」と告発内容を否定していました。テドロス事務局長の後任の最有力候補だった葛西氏葛西氏は慶應大学医学部出身の医師で、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院を修了後、岩手県庁で働いた後、厚生省(当時)に入省しました。同省保健医療局結核感染症課の国際感染症専門官などを経て2000年からWHO西太平洋地域事務局に感染症対策医官として勤務、西太平洋地域の結核対策や、SARS対応に取り組みました。その後、厚生労働省の大臣官房国際課課長補佐としていったん日本に戻り、宮崎県福祉保健部次長などを務め、地域の医療や感染症対策などに取り組みました。2006年に再びWHOに戻り、西太平洋地域事務局感染症対策課長、WHOベトナム代表などを務め順調に出世、2019年2月、日本政府の強力な支援を受けて、地域委員会の選挙でWHO西太平洋地域事務局長に選ばれました。WHOの西太平洋地域事務局は、世界に6ヵ所あるWHOの地域事務局の一つで、日本や中国、オーストラリアなどを管轄しています。西太平洋地域事務局長には、新型インフルエンザ等対策有識者会議の会長を務める尾身 茂氏も1999年から2006年まで就いていました。葛西氏は、WHOのトップ、テドロス・アダノム事務局長の後任の最有力候補とも目されていました。2006年の選挙で尾身 茂氏が苦杯を舐めたWHO事務局長のポストの獲得は、日本政府にとっても悲願と言えることでした。今回の解任は、WHOをはじめとする国際機関のポスト獲得に注力してきた日本政府には非常に大きな痛手となりました。この方面に詳しい知人に話を聞くと、「いろいろな国際機関があるが、WHOは将来日本がトップを取れるかもしれない数少ない機関の一つだった。告発が表沙汰になってから、日本は嘆願書を出し、尾身氏をマニラに送り込むなど、強力なロビー活動を展開したがダメだった。葛西氏は否定し続けてきたが、告発が事実だった可能性は高い」と話していました。なお、松野 博一官房長官は解任が決まった翌日、9日の記者会見で、WHOが葛西氏を解任したことについて、「選挙で選ばれた局長に対する処分であり、調査・事実認定は公正公平に行われ、地域委員会、加盟国がコミットした上で行われる必要があると一貫して主張してきた」と述べる一方、「日本政府は人種差別やハラスメントを容認しないWHOの政策を支持する立場だ」とも語りました。歴代の厚労大臣がWHOに「嘆願書」ところでこの件に関し、雑誌「集中」2023年1月号は「WHO葛西 健氏の処分、対応巡り政府与党内に波紋」という記事を掲載、2022年10月に歴代の厚生労働大臣がWHOのテドロス事務局長に「嘆願書」を送っていたと報じています。同記事によれば、嘆願書は田村 憲久・元厚労相、塩崎 恭久・元厚労相、根本 匠・元厚労相、後藤 茂之・前厚労相、武見 敬三・元厚労副大臣、古川 俊治・自民党参院議員、橋本 岳・元厚労副大臣、丸川 珠代・元厚労政務官の8人の連名で、「私達は日本の国会議員として、グローバルヘルスやWHOと密接な関わりを持って来ました。私達は、WHO西太平洋事務局長の葛西 健先生に対する疑念に対するWHOの対応について懸念を共有する為に、この連名で書簡を送ります」として、「私達はこの疑惑について直接知っている訳ではないので、特にコメントしません。しかし、葛西 健先生を長年知っている私達にとって、これらの疑惑は真実から遠く離れたものでしかありません」と葛西氏に対する疑惑に疑問を呈しています。その上で、加藤 勝信厚労相が、22年9月に開催された西太平洋地域の地域委員会において、今回の内部告発や調査などについて十分な情報開示と正式な議論を求める意見を表明したにも関わらず、それに対して具体的な行動が取られていないことに懸念を表明しています。葛西氏は今回のような疑惑を招くような人物ではない、調査結果を公表してほしい、葛西氏の言い分も聞くべきだ…。歴代の厚労大臣らによる異例の嘆願書がWHOに送られたものの、結局は解任に至ってしまいました。一体、何が悪かったのでしょうか。パワハラが表沙汰になった段階でほぼほぼアウトの欧米先進国WHO内でのさまざまな事情やパワーバランスももちろん大きいと思いますが、一つにはパワハラやセクハラなどに鈍感、寛容過ぎる日本人の特性が災いした可能性があります。欧米先進国では、パワハラやセクハラについては表沙汰になった(訴えられた、告発された)段階で、ほぼほぼアウトというのが常識と言われています。そもそも複数(30人!)の人間から告発された段階で、仕事の能力以前にその人の人間性に疑問符が付けられてしまいます。ましてや多様性の象徴とも言える国際機関での差別発言は、たとえそこに悪意がなかったとしてもアウトでしょう。そのアウトさがAP通信で報道されたのは2022年1月。すぐさま火消しに入らなかった日本政府や頑なに告発内容を否定し続けた葛西氏にも非がありそうです。「解任理由が不明確」との批判もありますが、国際的には今回の解任、歓迎の声も大きいようです。医学雑誌の「The Lancet」は3月18日、「Global health experts welcome Kasai dismissal」(グローバルヘルスの専門家たち葛西氏解任を歓迎)と題する記事を掲載しているのです。(この項続く)

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3月24日 世界結核デー【今日は何の日?】

【3月24日 世界結核デーの日】〔由来〕ドイツのロベルト・コッホが結核菌を発見し演説した日にちなみ、世界保健機関(WHO)が1997年に制定。世界中でこの日の前後に結核撲滅や結核の啓発について、イベントが開催されている。関連コンテンツ結核菌特異的IFN-γ産生能とは【患者説明用スライド】マンガ喫茶で結核集団感染!【Dr. 倉原の”おどろき”医学論文】終わらない結核結核菌の新たな生き残り戦略未治療HIV結核患者、検査に基づく治療が有益/NEJMリファンピシン耐性結核に短期レジメンが有望/NEJM

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多剤耐性抗結核治療薬を用いた薬剤感受性結核の治療期間短縮トライアル(解説:栗原宏氏)

Strong point 8週間(標準治療24週の1/3の治療期間)でも非劣性が示された標準治療と比較して死亡、治療失敗、有害事象に有意差なしWeak point リファンピシン感受性結核菌に対し多剤耐性抗結核薬を使用している高額な治療コスト日本国内ではベダキリン、リネゾリドは薬剤感受性結核には適応外 結核は、発展途上国を中心に年間約1千万人が発症、約160万人が死亡する疾患である。日本国内では減少傾向ではあるものの、2021年には約1.1万人が新規に登録され、約2千人が死亡している。 結核の治療は結核菌の耐性化予防が非常に重要であり、多剤併用、長期間投与が基本となる。一方、複雑な治療方法や長期間の治療は患者の服薬アドヒアランスの低下、ひいては治療失敗、耐性化の原因にもなり得る。このような背景の下、結核治療は治療期間の短縮が模索されてきた。 1950年代前半に登場した3剤併用レジメンが24ヵ月であった。新薬の開発とともにエビデンスが積み上げられ、1980年代に登場した現在行われている標準治療レジメンでは6ヵ月になった。最近ではrifapentineを用いたレジメンで4ヵ月に短縮できたという報告もある1)。現在も短縮は模索されており、本研究もその1つである。 本研究で使用された薬剤について簡単に解説する。rifapentine(本邦未発売):いくつかの調査から治療期間の短縮が期待されている1),2)。副作用として好中球減少、肝機能障害、C.ディフィシル腸炎が知られている。ベダキリン:本邦では2018年に承認された多剤耐性結核治療薬。耐性発現を防ぐため、適正使用が強く求められ、製造販売業者が行うRAP(Responsible Access Program)に登録された医師・薬剤師のいる登録医療機関・薬局において、登録患者に対して行うこととされている。副作用としてQT延長を来す。リネゾリド:本邦ではMRSA治療薬として使用されるが、世界的には多剤耐性結核の治療薬としても用いられており、今後国内でも認可される可能性がある。副作用として骨髄抑制が有名。 本研究での対象は多剤耐性結核菌ではなくリファンピシン感受性結核菌である点、多剤耐性結核菌に対するレジメンで使用される治療薬であるベダキリン、リネゾリドを用いている点に留意する必要があるが、治療期間が8週間と標準治療24週の1/3に短縮できる可能性が示された。治療終了後96週時点で標準治療と比較して、ベダキリン+リネゾリド レジメンでは死亡例、治療失敗例の数、有害事象ともに有意な差がなかった。 一方、先行研究で治療期間短縮が有望視されているrifapentineを用いたレジメンは調査に組み込まれていたが、プロトコルにより途中で登録が中止されており評価対象とならなかった。また、完遂したレジメンのうち、日本国内でも使用可能なリファンピシンを、高用量(体重によって異なるが大まかに標準レジメンの3倍)で用いたレジメンでは非劣性を示すことができなかった。 治療期間短縮は魅力的であるが、日本国内では現時点において、多剤耐性結核治療薬であるベダキリンおよび適応外使用となるリネゾリドを用いる本レジメンは薬剤感受性結核菌の治療に直ちに適用できるものではない。日本国内における多剤耐性結核の治療成功率は40~70%とされる。開発が容易ではない多剤耐性結核治療薬は非常に貴重であり、今後も使用適応は限定されると思われる。 参考までに、本レジメンでの治療コストは、ベダキリンとリネゾリドの主要薬剤2剤で約230万円となり、結核治療としてはかなり高額になる。

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リファンピシン感受性肺結核、8週レジメンが標準治療に非劣性/NEJM

 結核の治療において、8週間のベダキリン+リネゾリドレジメンによる初期治療を含む治療戦略は標準治療に対して非劣性であり、治療期間の短縮にもつながり、安全性に明らかな懸念はないことを、シンガポール・シンガポール国立大学のNicholas I. Paton氏らがアダプティブ第II/III相無作為化非盲検非劣性試験「Two-Month Regimens Using Novel Combinations to Augment Treatment Effectiveness for Drug-Sensitive Tuberculosis trial:TRUNCATE-TB試験」の結果、報告した。結核は、通常6ヵ月間のリファンピシンベースのレジメンで治療されるが、初期治療期間の短縮を含む治療戦略により同様の治療成績が得られるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2023年2月20日号掲載の報告。高用量リファンピシン+リネゾリドまたはベダキリン+リネゾリドを検証 研究グループは2018年3月21日~2020年1月20日の期間で、インドネシア、フィリピン、タイ、ウガンダ、インドの18施設において、18~65歳のリファンピシン感受性肺結核患者675例を、標準治療(リファンピシン+イソニアジド24週、ピラジナミド+エタンブトールを最初の8週間併用)、または4つの初期治療戦略群(8週間レジメンの初期治療、臨床症状が持続する場合は12週まで治療延長、治療後モニタリングおよび再発時の再治療を含む)のいずれかに無作為に割り付けた。4つの初期治療レジメンは、高用量リファンピシン+リネゾリド、高用量リファンピシン+クロファジミン、rifapentine+リネゾリド、ベダキリン+リネゾリド(いずれもイソニアジド+ピラジナミド+エタンブトールとの併用)である。 今回は、登録が完了した高用量リファンピシン+リネゾリドとベダキリン+リネゾリドの2つの初期治療レジメンについて、標準治療に対する非劣性を検証した。 主要アウトカムは96週時点での死亡、治療継続または活動性疾患の複合で、非劣性マージン12ポイント、片側有意水準0.0125とした。ベダキリン+リネゾリド、96週後の複合エンドポイントに関して非劣性 675例中、1例は誤って無作為化されたため直ちに撤回され、intention-to-treat集団は674例であった。このうち、4例が同意撤回または追跡不能となった。 主要アウトカムのイベントは、標準治療群で181例中7例(3.9%)、高用量リファンピシン+リネゾリド群で184例中21例(11.4%、補正後群間差:7.4ポイント、97.5%信頼区間[CI]:1.7~13.2、非劣性基準を満たさず)、ベダキリン+リネゾリド群で189例中11例(5.8%、0.8ポイント、-3.4~5.1、非劣性基準を満たす)に発生した。 96週時点の平均治療期間は、標準治療群180日、高用量リファンピシン+リネゾリド群106日、ベダキリン+リネゾリド群85日であった。 Grade3/4の有害事象および重篤な有害事象の発現率は、3群で類似していた。

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自己注射可能な週1回投与のMTX皮下注「メトジェクト皮下注シリンジ」【下平博士のDIノート】第115回

自己注射可能な週1回投与のMTX皮下注「メトジェクト皮下注シリンジ」今回は、抗リウマチ薬「メトトレキサート(MTX)皮下注(商品名:メトジェクト皮下注7.5mgシリンジ0.15mL/同10mgシリンジ0.20mL/同12.5mgシリンジ0.25mL/同15mgシリンジ0.30mL)、製造販売元:日本メダック」を紹介します。本剤は、国内初の自己注射可能なMTX皮下注製剤であり、関節リウマチ患者の服薬アドヒアランスの向上に加え、誤投与・過剰投与リスクの軽減が期待されています。<効能・効果>本剤は、関節リウマチの適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得し、同年11月16日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはMTXとして7.5mgを週に1回皮下注射します。患者の状態や忍容性などに応じて適宜増量できますが、15mgを超えることはできません。4週を目安に患者の状態を十分に確認し、増量は2.5mgずつ行います。<安全性>国内第III相臨床試験(MC-MTX.17/RA試験)において、83.8%(93/111例)に臨床検査値異常を含む有害事象が認められました。5%以上に認められたものは、悪心16.2%、口内炎14.4%、関節リウマチ11.7%、上咽頭炎10.8%、ALT増加9.9%、肝機能異常9.9%、白血球数減少8.1%、上腹部痛5.4%、高血圧5.4%などでした。なお、重大な副作用として、ショック/アナフィラキシー(頻度不明)、骨髄抑制(5%以上)、感染症(0.1~5%未満)、結核、劇症肝炎/肝不全、急性腎障害/尿細管壊死/重症ネフロパチー、間質性肺炎/肺線維症/胸水、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)/皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、出血性腸炎/壊死性腸炎、膵炎、骨粗鬆症、脳症(白質脳症を含む)、進行性多巣性白質脳症(PML)(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、異常な状態となっている免疫反応や炎症反応を抑えることで、関節リウマチによる関節の腫れや痛みを改善します。2.通常、週に1回、特定の曜日に皮下注射してください。3.注射部位は大腿部・腹部・上腕部の毎回異なる部位を選び、短期間に同一部位へ繰り返して投与しないでください。4.この薬を投与している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合は医師に相談してください。5.発熱、倦怠感が現れた場合や、口内炎、激しい腹痛、嘔吐、下痢などの症状が現れた場合は直ちに医師に連絡してください。6.(妊娠可能年齢の女性やパートナーが妊娠する可能性のある男性に対して)この薬を投与中および投与終了後一定の期間は、適切な方法で避妊を行ってください。7.(授乳中の女性に対して)薬剤が乳汁中へ移行する可能性があるため、本剤の投与中は授乳しないでください。<Shimo's eyes> 関節リウマチ(RA)治療の基本は、疾患活動性を低く抑え、早期の臨床的寛解を達成・維持することです。MTXはRAの病態形成に関与する種々の細胞に対して、複数の分子作用機序を介して免疫および炎症性反応を抑制し、抗RA作用を発揮すると考えられています。日本リウマチ学会、米国リウマチ学会(ACR)、欧州リウマチ学会(EULAR)のガイドラインではMTXが第1選択薬として推奨されています。わが国においては、RAに対するMTXはこれまで経口薬のみが発売されていましたが、本剤は週1回の皮下投与のプレフィルドシリンジです。医師の管理・指導のもと、自己注射も可能です。2022年9月時点で、本剤は欧州を中心に世界49の国または地域で承認されており、2019年には欧州医薬品庁はMTXの誤投与の危険性を回避するため、RAなどの治療に対して週1回投与のMTX皮下注製剤を推奨しています。MTX経口薬から切り替えの際の投与初期量は、1週間当たりの投与量を対比させた添付文書の表などを参考に決定されます。安全性プロファイルは、注射部位反応を除いてMTX経口薬と同様と考えられています。主な副作用は白血球数減少、肝機能障害、悪心、口内炎などであり、重大な副作用である骨髄抑制、感染症、結核、劇症肝炎、肝不全、急性腎障害、尿細管壊死、重症ネフロパチー、間質性肺炎、肺線維症、出血性腸炎などに注意する必要があります。2020年10月の「医療安全情報No.167」では、MTXの過剰投与による骨髄抑制の事故が後を絶たないことを注意喚起しています。本剤の普及によって医療現場での投与過誤、あるいは患者さんの服用過誤が減少することを期待します。

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リファンピシン耐性結核、24週レジメンが標準治療に非劣性/NEJM

 リファンピシン耐性肺結核患者に対する24週間の経口治療レジメンは、従来の標準治療に対して有効性に関する非劣性が示され、安全性プロファイルも良好であった。オランダ・Operational Center AmsterdamのBern-Thomas Nyang'wa氏らが、国境なき医師団主導による多施設共同無作為化非盲検非劣性第II/III相試験「TB-PRACTECAL試験」の結果を報告した。リファンピシン耐性結核患者においては、現在のレジメンより治療期間が短くかつ有効で、副作用プロファイルも許容できる、経口治療レジメンが必要とされている。NEJM誌2022年12月22日号掲載の報告。ベダキリン+pretomanid+リネゾリド(BPaL)±モキシフロキサシン(M)またはクロファジミン(C)を標準治療と比較 研究グループは、ベラルーシ、南アフリカ共和国、ウズベキスタンの7施設において、新たに診断された15歳以上のリファンピシン耐性肺結核患者を登録した。 本試験の第1段階では、現地の標準治療と3種類の治療レジメン(BPaL、BPaLM、BPaLC)の4群に1対1対1対1の割合で、第2段階では標準治療とBPaLM群に1対1の割合で患者を無作為に割り付けた。 各治療レジメンは次のとおりである。・BPaL:ベダキリン1日400mgを2週間、その後200mgを週3回22週間、pretomanid 1日200mgを24週間、リネゾリド1日600mgを16週間、その後300mgを8週間、いずれも経口投与・BPaLM:BPaL+モキシフロキサシン1日400mgを24週間経口投与・BPaLC:BPaL+クロファジミン1日100mg(体重30kg未満の場合は50mg)を24週間経口投与 主要評価項目は、無作為化後72週時点での不良転帰(死亡、治療失敗、治療中止、追跡不能、結核再発の複合)で、非劣性マージンを12ポイントとした。BPaLMは、72週後の不良転帰に関して標準治療に対し非劣性 本試験は、2017年1月に最初の患者を無作為化し、2021年3月18日に登録を早期終了した。 登録終了時点で、第2段階として145例(標準治療群73例、BPaLM群72例)がintention-to-treat(ITT)集団(無作為化された全患者)、128例(それぞれ66例、62例)が修正ITT集団(ITT集団のうち少なくとも1回の試験薬の投与を受け、微生物学的にリファンピシン耐性結核であることが証明された患者)、90例(それぞれ33例、57例)がper- protocol集団の解析対象となった。 主要評価項目のイベントは、修正ITT解析ではBPaLM群で11%、標準治療群で48%発生し(群間リスク差:-37ポイント、96.6%信頼区間[CI]:-53~-22)、per-protocol解析ではBPaLM群で4%、標準治療群で12%発生した(-9ポイント、-22~4)。 無作為化され少なくとも1回の試験薬の投与を受けた患者(as-treated集団)において、72週以内のGrade3以上または重篤な有害事象の発現率は、BPaLM群が標準治療群より低値であった(19% vs.59%)。

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TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」【下平博士のDIノート】第113回

TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」今回は、チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬「デュークラバシチニブ錠(商品名:ソーティクツ錠6mg、製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ)」を紹介します。本剤は、TYK2を選択的に阻害する世界初の経口薬で、既存治療で効果が不十分であった患者や、副作用などにより治療継続が困難であった患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得し、同年11月16日に発売されました。光線療法を含む既存の全身療法(生物学的製剤を除く)などで十分な効果が得られず皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ場合や、難治性の皮疹や膿疱を有する場合に使用します。<用法・用量>通常、成人にはデュークラバシチニブとして1回6mgを1日1回経口投与します。なお、本剤使用前には結核・B型肝炎のスクリーニングを行い、24週以内に本剤による治療反応が得られない場合は、治療計画の継続を慎重に判断します。<安全性>国際共同第III相臨床試験(IM011-046試験)において、本剤投与群の22.0%(117/531例)に臨床検査値異常を含む副作用が発現しました。主なものは、下痢2.6%(14例)、上咽頭炎2.4%(13例)、上気道感染2.3%(12例)、頭痛1.9%(10例)などでした。なお、重大な副作用として、重篤な感染症(0.2%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の原因となる酵素の働きを抑えることで、皮膚の炎症などの症状を改善します。2.免疫を抑える作用があるため、発熱、寒気、体がだるい、咳が続くなどの一般的な感染症症状のほか、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの症状に注意し、気になる症状が現れた場合は速やかにご相談ください。3.本剤を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種ができないので、接種の必要がある場合は医師にご相談ください。4.感染症を防ぐため、日頃からうがいや手洗いを行い、規則正しい生活を心掛けてください。また、衣服は肌がこすれにくくゆったりとしたものを選び、高温や長時間の入浴はできるだけ避けましょう。<Shimo's eyes>本剤は、TYK2阻害作用を有する世界初の経口乾癬治療薬です。TYK2はヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーの分子ですが、本剤のようなTYK2だけを選択的に阻害する薬剤は比較的安全に使用できるのではでないかと期待されています。乾癬の治療としては、副腎皮質ステロイドやビタミンD3誘導体による外用療法、光線療法、シクロスポリンやエトレチナート(商品名:チガソン)などによる内服療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在、乾癬に適応を持つ生物学的製剤は下表のとおりです。また、同じ経口薬としてPDE4阻害薬のアプレミラスト(同:オテズラ)が「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬」の適応で承認されています。臨床試験において、本剤投与群ではアプレミラストを上回る有効性を示しており、この点が評価されて薬価算定では40%の加算(有用性加算I)が付きました。安全性では、結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可能性があるため注意が必要です。また、感染症の発症、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化の懸念もあるため、症状の発現が認められた場合にはすぐに受診するよう患者さんに説明しましょう。TYK2阻害薬は自己免疫疾患に対する新規作用機序の薬剤であり、今後の期待として潰瘍性大腸炎や全身性エリテマトーデスなどの幅広い疾患に適応が広がる可能性があり、注目されています。

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終わらない結核結核菌の新たな生き残り戦略

 結核は、世界で最も死亡率の高い感染症の1つである。毎年、約1,060万人が結核に罹患し、160万人が死亡する。その背景の1つとして、抗菌薬の普及により薬剤耐性を有する結核菌が増加し、治療が困難になっていることがあるといわれる。そこで、米国・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのQingyun Liu氏らの研究グループは、結核患者から単離された結核菌のゲノム解析を行った。その結果、転写因子resR遺伝子に変異があると、抗菌薬への曝露終了後に急速に再増殖を開始することが明らかになった。本研究結果は、Science誌2022年12月9日号に掲載された。 結核患者から単離された結核菌51,229株のゲノム解析から、必須転写制御因子のRv1830(resRと呼ぶ)遺伝子の変異が発見された。resR遺伝子変異を有する結核菌は、抗菌薬に対する応答性には変化がなく、耐性は示さなかったものの、抗菌薬への曝露終了後に急速な増殖が可能となっていた(この表現型を著者らは“antibiotic resilience”と呼んでいる)。また、resRは、細胞の増殖や分裂を制御する他の転写因子とともに機能することから、これらの転写因子にも変異がみられた。なお、今回発見された遺伝子変異は、抗菌薬による治療の失敗や一般的な薬剤耐性の獲得とも関連していた。

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膿疱性乾癬の現状と、新しい治療薬スぺビゴへの期待

 2022年12月8日、日本ベーリンガーインゲルハイムは「膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)のアンメットメディカルニーズと新しい治療への期待」をテーマにメディアセミナーを開催した。同セミナーで帝京大学医学部皮膚科学講座の多田 弥生氏は、GPPの現状と同年9月に承認された抗IL-36Rモノクローナル抗体「スペビゴ点滴静注450mg」(一般名:スペソリマブ[遺伝子組換え])の国際共同第II相二重盲検比較試験(Effisayil 1試験)について講演を行った。膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)とは GPPは発熱や倦怠感と共に無菌性の膿疱が現れる皮膚病である。GPPは乾癬の一種で、最も一般的な乾癬である尋常性乾癬とは症状や発症までのプロセスが異なる。全身に膿疱が現れるGPPは厚生労働省が定める指定難病の1つに指定されている1)。 GPPは乾癬全体の約1%といわれており2)、難病医療費の助成を受けている患者は全国で2,058例である(2020年現在)3)。発症年齢は男性で30~39歳と50~69歳、女性では25~34歳と50~64歳にピークがあり、女性にやや多くみられる4)。 GPPの主な治療方法には全身療法、外用療法、光線療法などがあるが、急性症状の改善を目的とした治療薬はなかった。GPPの急性症状に対する日本初の治療薬スぺビゴ そのような中、スぺビゴは急性症状の改善を目的とした、日本初の治療薬として登場した。 スぺビゴはIL-36Rに結合することにより5)、内因性リガンドによるIL-36Rの活性化と下流の炎症シグナル伝達経路を阻害し6、7)、治療効果を発揮すると考えられている。 スペビゴは点滴投与の薬剤で、過去の治療歴にかかわらずGPPの急性症状に対して使用できる。ただし、感染症や結核の既往歴、妊娠・授乳中などの場合は治療上の注意が必要となる。スぺビゴの治療は日本皮膚科学会が定める乾癬分子標的薬使用承認施設(全国で778施設[2022年10月時点])で受けることができる。中等度から重度のGPP急性症状が認められる患者を対象としたEffisayil 1試験 スペビゴの国際共同第II相二重盲検比較試験(Effisayil 1試験)の対象はERASPEN※1診断基準によりGPPと診断された18~75歳の患者53例。スぺビゴ群およびプラセボ群に2:1で無作為に割り付け、それぞれ単回投与を行った。主な結果は以下のとおり。・主要評価項目である1週時におけるGPPGA※2膿疱サブスコア0達成率について、スぺビゴ群(35例)では54.3%が達成し、プラセボ群(18例)の5.6%に対する優越性が認められた(リスク差:48.7%、95%信頼区間[CI]:21.5~67.2)。・重要な副次評価項目である1週時におけるGPPGA※2合計スコア0/1達成率は、スぺビゴ群では42.9%が達成し、プラセボ群の11.1%に対する優越性が認められた(リスク差:31.7%、95%CI:2.2~52.7)。・1週時の重篤な有害事象発現率は、スぺビゴ群で5例14.3%、プラセボ群で3例16.7%、投与中止に至った有害事象および死亡に至った有害事象は両群共に報告はなかった。※1:European Rare and Severe Psoriasis Expert Network※2:膿疱性乾癬に対する医師による全般的評価GPP治療薬スぺビゴへの期待 スぺビゴはGPPにおける急性症状の改善の効能・効果で国内初の製造販売承認を取得した。GPPは症状による身体的ストレスや不安、周囲から理解を得にくいことによる孤独感などから、精神的ストレスを抱える患者も少なくなく、アンメットメディカルニーズ解消への貢献、ひいてはQOLの向上が期待されている。多田氏は「5割以上の方が投与後1週間で膿疱が見えなくなったことは、非常に早いし効果も高い」と述べ、講演を終えた。<参考文献・参考サイトはこちら>1)難病情報センター.膿疱性乾癬(汎発型)(指定難病37).2)山本俊幸編. 乾癬・掌蹠膿疱症病態の理解と治療最前線. 中山書店;2020.3)厚生労働省. 令和2年度衛生行政報告例(令和2年度末現在).4)日本皮膚科学会膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン作成委員会. 日皮会誌. 2015;125:2211-57.5)社内資料:非臨床薬効薬理試験(in vitro、結合親和性)(CTD 2.6.2.2)[承認時評価資料]6)社内資料:非臨床薬効薬理試験(in vitro、ヒト初代培養細胞に対する作用)(CTD 2.6.2.2)[承認時評価資料]7)社内資料:非臨床薬効薬理試験(in vitro、ヒト末梢血単核球に対する作用)(CTD 2.6.2.2)[承認時評価資料]

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第115回 感染症法改正、病床確保拒否する病院に罰則を/内閣府

<先週の動き>1.感染症法改正、病床確保拒否する病院に罰則を/内閣府2.オミクロン株対応の新ワクチン、今月中に接種開始へ/厚労省3.病院のかかりつけ医機能は中小病院が中心に/日本病院会4.日本ようやく「結核低まん延国」に/厚労省5.世界初の高血圧の治療アプリが保険適用に/厚労省6.介護保険の給付が10兆円越え、高齢化で過去最高に/厚労省1.感染症法改正、病床確保拒否する病院に罰則を/内閣府岸田内閣は、9月2日に新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた、次の感染症危機に備えるための具体策をまとめた。この中で、感染症法の改正を行い、感染症発生・まん延時に備えて、都道府県に対してあらかじめ、各医療機関と具体的な役割・対応について協定を締結しておくことを求める。さらに、公立・公的医療機関などや特定機能病院・地域医療支援病院に対しては、感染症発生時に担うべき医療の提供を義務付け、応じない場合は罰則を盛り込む方針を明らかにした。また、次の感染症危機に対して、政府の司令塔機能の強化するため、司令塔機能を担う組織として「内閣感染症危機管理統括庁(仮称)」を設置を盛り込んだ法案をこの秋の臨時国会に改正案を提出し、次年度の設立を目指す。(参考)第97回 新型コロナウイルス感染症対策本部(首相官邸)政府が新たな感染症対策 医療機関に罰則、23年度中に司令塔組織(毎日新聞)政府、病床確保拒否に罰則 5年度に司令塔組織創設(産経新聞)大病院の病床確保へ法改正 実効性に課題(日経新聞)2.オミクロン株対応の新ワクチン、今月中に接種開始へ/厚労省厚生労働省は9月2日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の議論で、オミクロン株対応ワクチン接種については、接種時期や接種対象者についての方針を取りまとめた。政府はすでにオミクロン株対応ワクチンの輸入を一部前倒しして開始しており、薬事承認を経て、9月中旬開催予定の分科会において、オミクロン株対応ワクチンの接種を特例臨時接種として諮問し、オミクロン株対応ワクチン接種を開始するとしている。各自治体に対しては、接種の準備を行い、開始時期は令和4年10月半ばを目途としているが、準備ができ次第開始する。また、現在、高齢者、重症化リスクの高い人や医療従事者など4回目接種の対象者に対して行なっている従来のワクチン接種について、2価のオミクロン株対応ワクチン(BA.1対応型)へ切り替えも早期に行うこととした。(参考)第36回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(厚労省)オミクロン株に対応した新型コロナワクチンの接種体制確保について(その3)(事務連絡)新ワクチン、今月半ばにも オミクロン対応、高齢者などから(東京新聞)オミクロン株対応ワクチン、今月半ばに配送開始…高齢者ら優先で接種(読売新聞)改良ワクチン3,000万回分 オミクロン型対応 19日ごろから配送(日経新聞)3.病院のかかりつけ医機能は中小病院が中心に/日本病院会日本病院会の相澤孝夫会長は、8月29日の記者会見で「かかりつけ医機能」について、「医師個人の機能ではなく、医療機関としての機能であるとして、かかりつけ医機能を推進する病院として『地域を支えていく中小規模病院』の機能を充実・強化が必要である」と見解を述べた。具体的な機能としたのは、地域の医療機関などとの連携や在宅医療支援、介護などとの連携について示した。日本病院会では、病院のかかりつけ医機能の在り方にさらに議論を進め、厚生労働省の「第8次医療計画等に関する検討会」に見解を示す見込み。(参考)病院のかかりつけ医機能、「中小規模病院」を中心に 日病が方向性(MEDIFAX)「かかりつけ医機能」、急病対応や総合診療などが最重要要素で、中小病院で充実していくべき-日病・相澤会長(Gem Med)4.日本ようやく「結核低まん延国」に/厚労省厚生労働省は、8月30日に2021年の結核登録者情報調査年報集計結果を公表した。これによると、わが国の2021年の結核罹患率(人口10万対)について、前年と比較して0.9減少し、人口10万人あたりの活動性結核患者の発生数が10人未満の結核の低まん延国となったことが明らかとなった。わが国は過去に結核が蔓延した影響があり、結核患者の高齢化はますます進行し、新登録結核患者のうち70歳以上が占める割合は63.5%と高く、引き続き対策が求められる。(参考)2021年 結核登録者情報調査年報集計結果について(厚労省)2021(令和3)年結核年報速報(疫学情報センター)日本、結核「低まん延国」に…人口10万人あたりの患者数が初めて10人を下回る(読売新聞)国内結核患者 過去最少「結核低まん延国」に コロナ対策影響か(NHK)5.世界初の高血圧の治療アプリが保険適用に/厚労省CureApp社は、禁煙補助に続いて、世界初の高血圧治療補助アプリ「CureAppHT」を9月1日に「成人の本態性高血圧症の治療補助」で保険適用されたことを受け、即日発売した。高血圧患者の行動変容を促し、生活習慣の改善による降圧効果を図るとする医療機器として認められた。6ヵ月を限度に毎月830点(初月のみ計970点)を算定するためには200床未満の医療機関では、地域包括診療料、地域包括診療加算、高血圧症を主病とする生活習慣病管理料のいずれかの算定実績が要件とされている。一方、200床以上の医療機関では、日本高血圧学会の定める「高血圧認定研修施設」であり、かつ22年度診療報酬改定で新設された「紹介受診重点医療機関」であることが要件とされた。(参考)CureAppが高血圧の治療用アプリを承認申請、薬なしで12週後の降圧効果を確認(日経クロステック)CureApp 高血圧治療補助アプリが保険適用、即日発売 生活習慣修正をトータルサポート(ミクスオンライン)中医協総会 CureAppの高血圧治療補助アプリは「新規技術料」で評価 使用実態のフォローアップを(同)6.介護保険の給付が10兆円越え、高齢化で過去最高に/厚労省厚生労働省は、令和2年度の介護保険事業状況報告の年報を8月31日に公表した。これによると、令和2年度の保険給付関係の累計の総数は、件数1億6,303万件、費用総額10兆7,247億円と過去最高となったことが明らかになった。給付費の内訳は、居宅介護(介護予防)サービス4兆7,872億円、地域密着型介護(介護予防)サービス1兆6,459億円、施設介護サービス3兆1,629億円となっており、要介護・要支援認定者数は、令和2年度末現在で682万人と前年度より13万人増加している。介護保険の給付費は過去20年間で3倍以上の増加となっており、今後はさらに団塊の世代が75歳以上となることで、介護費の増加は加速するとみられる。(参考)令和2年度 介護保険事業状況報告(厚労省)介護給付、初めて10兆円超え 20年度、高齢化で過去最高(共同通信)介護給付費、初の10兆円超え 20年度 20年間で3倍超、厚労省(CB news)要介護・要支援認定は過去最多の682万人 厚労省が20年度の年報公表、前年度比13万人増(同)

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有害量のアルコール摂取、若年男性で多い:GBD2020/Lancet

 アルコール摂取に関する勧告は年齢および地域によって異なることを支持する強いエビデンスがあり、とくに若年者に向けた強力な介入が、アルコールに起因する世界的な健康損失を減少させるために必要であることが、米国・ワシントン大学のDana Bryazka氏らGBD 2020 Alcohol Collaboratorsの解析で明らかとなった。適度なアルコール摂取に関連する健康リスクについては議論が続いており、少量のアルコール摂取はいくつかの健康アウトカムのリスクを低下させるが他のリスクを増加させ、全体のリスクは地域・年齢・性別・年によって異なる疾患自然発生率に、部分的に依存することが示唆されていた。Lancet誌2022年7月16日号掲載の報告。年齢・男女・年別にTMRELとNDEを推定 解析には、204の国・地域における1990~2020年の死亡率と疾病負担を年齢別、性別に推計した世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)のデータを用いた。22の健康アウトカム(虚血性心疾患、脳梗塞、がん、2型糖尿病、結核、下気道感染症など)に関する疾患重み付け用量反応相対リスク曲線を構築し、21地域の15~95歳の個人について1990~2020年の期間で、5歳ごとの年齢階級別、男女別および年別に、アルコールの理論的最小リスク曝露量(theoretical minimum risk exposure level:TMREL、アルコールによる健康損失を最小化する摂取量)と非飲酒者等価量(non-drinker equivalence:NDE、飲酒者の健康リスクが非飲酒者の健康リスクと同等時点でのアルコール摂取量)を推定するとともに、NDEに基づき有害な量のアルコールを摂取している人口を定量化した。有害量のアルコール摂取は若年男性で多い アルコールに関する疾患重み付け相対リスク曲線は、地域および年齢で異なっていた。2020年の15~39歳では、TMREL(ドリンク/日:1ドリンクは純粋エタノール10g相当)は0(95%不確実性区間[UI]:0~0)から0.603(0.400~1.00)、NDEは0.002(0~0)から1.75(0.698~4.30)とさまざまであった。 40歳以上の疾患重み付け相対リスク曲線はすべての地域でJ字型であり、2020年のTMRELは0.114(95%UI:0~0.403)から1.87(0.500~3.30)、NDEは0.193(0~0.900)から6.94(3.40~8.30)の範囲であった。 2020年における有害量のアルコール摂取は、59.1%(95%UI:54.3~65.4)が15~39歳、76.9%(73.0~81.3)が男性であり、主にオーストララシア、西ヨーロッパ、中央ヨーロッパに集中していた。

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中等症以上のクローン病に対する維持療法におけるリサンキズマブの有用性:第III相試験の結果 (解説:上村直実氏)

 クローン病の治療においては、病気の活動性をコントロールして患者の寛解状態をできるだけ長く保持し、日常生活のQOLに影響する狭窄や瘻孔形成などの合併症の治療や予防が非常に重要である。最近、活動性とくに中等症から重症のクローン病に対しては、生物学的製剤により寛解導入したのち、引き続いて同じ薬剤で寛解維持に対する有用性を検証する臨床試験が多い。 今回、アジアも含めた44ヵ国で行われた国際共同試験でIL-23 p19阻害薬であるリサンキズマブの静脈内投与によりクローン病の寛解導入に有用性を示す結果を得たADVANCE試験とMOTIVATE試験において臨床効果が認められた患者を対象としてリサンキズマブ皮下投与の52週間維持療法の有効性と安全性を検証した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(FORTIFY試験)の結果が2022年5月のLancet誌に掲載された。 本研究におけるクローン病の病勢を評価する方法は先行したADVANCE試験と同じく厳密なものである。52週目の内視鏡的改善度を主要評価項目として、従来から使用されているクローン病活動指数(CDAI)と便の回数や腹痛の回数など患者の訴えに加えて炎症性バイオマーカーである高感度CRPと便中カルプロテクチンを用いている。厳密な内視鏡的な評価によって寛解維持における有用性が確認されたことは、クローン病治療で重要な寛解維持の期間をできるだけ長く保ち、生活のQOLを高めることにつながる可能性を示唆する点で重要である。今後、クローン病や潰瘍性大腸炎に対する寛解維持療法の有用性を検証する場合には臨床的寛解に加えて内視鏡検査と生検による組織学的検査および炎症性バイオマーカーが必須となると思われる。 安全性に関して炎症性腸疾患や慢性関節リウマチなど自己免疫性疾患に対する新規薬剤のリスクとして結核やB型肝炎ウイルスの再活性化が周知されつつあるが、同類の薬剤として先行してクローン病の治療に用いられているウステキヌマブの臨床治験の経過中に前立腺などのがんが認められたとの報告もあり、生物学的製剤の長期使用に関しては感染症および悪性疾患の発生には十分に注意する必要がある。

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潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法における低分子医薬品ウパダシチニブの有用性 (解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療は生物学的製剤や低分子化合物の出現により大きく変化している。すなわち、抗TNF阻害薬、インターロイキン阻害薬ウステキヌマブ、インテグリン拮抗薬ベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブやフィルゴチニブなど新規薬剤の出現で難治性UCが次第に少なくなってきている。しかし、中等度以上の活動性を有するUC症例の中にはいまだに十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される患者が少なくなく、次々に新たな作用機序を有する治療薬の追加が求められているのが現状である。 今回、新たな経口低分子化合物でJAK1選択的阻害薬であるウパダシチニブの中等度から重度UC患者を対象とした2本の寛解導入試験と引き続き施行された寛解維持試験の結果、UCの寛解導入および寛解維持に対するウパダシチニブの有効性と安全性が示された論文が2022年5月のLancet誌に掲載された。 本研究で特記すべきは有用性を検証した評価項目である。従来の臨床研究において病勢の推移に使用されてきたMayoスコア(排便回数、血便、内視鏡的粘膜所見、医師による全般評価)から主観性の高い医師による全般評価を除き内視鏡的所見と組織学的所見の評価に重点を置いたAdapted Mayoスコアを用いて、さらに粘膜の炎症状態を把握する高感度CRPと便中カルプロテクチンや患者の治療方針に影響する腸管切迫感や腹痛を新たに含む評価としている。客観的で厳密なアウトカムの評価は、試験結果の信ぴょう性を高くして、一般診療現場における有用性を期待できるものとなり、今後の臨床試験での評価モデルとなる可能性が示唆された。 JAK阻害薬であるウパダシチニブ、トファシチニブおよびフィルゴチニブは、わが国の一般診療で慢性関節リウマチ(RA)に対して比較的長い間使用されているが、UCやRAなど自己免疫性疾患に対する新規薬剤のリスクとして結核やB型肝炎ウイルスの再活性化はよく知られており、長期使用に関しては感染症および悪性疾患の発生には留意する必要がある。そのほか、血管血栓症や帯状疱疹の発生リスク上昇の可能性、進行性多巣性白質脳疾患(PML)の発現も報告されており、薬理作用に精通した患者管理が重要である。

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2種のIL-17を直接阻害する乾癬治療薬「ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター」【下平博士のDIノート】第99回

2種のIL-17を直接阻害する乾癬治療薬「ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター」提供:ユーシービージャパン(2022年4月現在)今回は、ヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体製剤「ビメキズマブ(遺伝子組換え)(商品名:ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター、製造販売元:ユーシービージャパン)」を紹介します。本剤は、乾癬の症状の原因となる炎症性サイトカインIL-17AとIL-17Fを選択的かつ直接的に阻害することで、強力な炎症抑制効果が期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2022年1月20日に承認され、同年4月20日から発売されています。なお、次のいずれかを満たす患者に投与されます。光線療法を含む既存の全身療法(生物製剤を除く)で十分な効果が得られず、皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者。難治性の皮疹または膿疱を有する患者。<用法・用量>通常、成人にはビメキズマブ(遺伝子組換え)として、1回320mgを初回から16週までは4週間隔で皮下注射し、以降は8週間隔で皮下注射します。なお、患者の状態に応じて16週以降も4週間隔で皮下注射可能です。<安全性>臨床試験で報告された主な副作用は、口腔カンジダ症(13.2%)、鼻咽頭炎(5.1%)、毛包炎(1.7%)、上気道感染(1.5%)、中咽頭カンジダ症(1.2%)、咽頭炎・結膜炎(1.1%)などでした。また、重大な副作用として、重篤な感染症、好中球数減少(各0.5%)、炎症性腸疾患(0.1%未満)、重篤な過敏症反応(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の症状の原因となる炎症性物質の働きを抑えることで皮膚の炎症などの症状を改善します。2.薬の使用により感染症にかかりやすくなる場合があるので、発熱、寒気、体がだるいなどの症状が現れた場合には、医師にご連絡ください。3.この薬を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種はできないので、接種の必要がある場合には医師に相談してください。4.口腔内や舌の痛み、白い苔のようなものが付着する、味覚がおかしく感じるなどの症状が現れた場合には、医師にお申し出ください。5.感染症を防ぐため、日頃からうがいや手洗いを行い、規則正しい生活を心掛けてください。また、衣服は肌がこすれにくくゆったりとしたものを選びましょう。高温や長時間の入浴によりかゆみが増すことがあるので、温度はぬるめにして長い入浴はできるだけ避けましょう。<Shimo's eyes>乾癬の治療として、副腎皮質ステロイドあるいはビタミンD3誘導体の外用療法、光線療法、または内服のシクロスポリン、エトレチナートなどによる全身療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在発売され乾癬に適応を持つ生物学的製剤は、本剤と同様にIL-17Aの作用を阻害するセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)、イキセキズマブ(同:トルツ)およびブロダルマブ(ルミセフ)、IL-23阻害薬のグセルクマブ(トレムフィア)、リサンキズマブ(スキリージ)、ウステキヌマブ(ステラーラ)、チルドラキズマブ(イルミア)、TNF阻害薬のアダリムマブ(ヒュミラ)、インフリキシマブ(レミケード)およびセルトリズマブ ペゴル(シムジア)などがあります。本剤の特徴は、IL-17Aに加えてIL-17Fにも結合することです。乾癬の病態において、IL-17AとIL-17Fはそれぞれ独立して炎症を増幅すると考えられているため、両方を直接阻害することで、強力な炎症抑制効果が期待できます。また、16週以降の投与間隔は8週間隔、患者さんの状態に応じて16週以降も4週間隔を選択することができます。安全性に関しては、ほかの生物学的製剤と同様に、結核の既往歴や感染症に注意する必要があります。投与に際しての安全上の留意点については、日本皮膚科学会「乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2018年版)」「ビメキズマブ使用上の注意」等で参照できると思います。本剤には2種類の剤形(シリンジ、オートインジェクター)が存在しますが、2022年6月時点においては医療機関で投与が行われます。薬局では感染症や口腔カンジダ症の兆候がないか聞き取り、必要に応じて生活上のアドバイスを伝えるなど、治療中の患者さんをフォローしましょう。参考1)PMDA 添付文書 ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/ビンゼレックス皮下注160mgオートインジェクター2)UCB Japan 医療関係者向けサイト

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リンパ節腫脹の鑑別、患者が話さない内容をしつこく聞こう!【Dr.山中の攻める!問診3step】第14回

第14回 リンパ節腫脹の鑑別、患者が話さない内容をしつこく聞こう!―Key Point―後頸部リンパ節腫脹では全身の感染症、悪性リンパ腫、頭頸部がん、菊池病を想起するEBウイルスによる伝染性単核球症では、眼瞼浮腫、頸部リンパ節腫脹、咽頭炎、肝機能障害、肝脾腫、倦怠感、頭痛が特徴である1)。Kissing diseaseと呼ばれるように唾液からの感染が原因となる。10~20代に多い症例:21歳 男性主訴)発熱、頸部腫瘤現病歴)5日前から37℃前半の発熱と咽頭痛あり。2日前から両側眼瞼の腫脹と両側頸部に腫瘤を触知することに気がついた。昨日から咽頭痛が悪化し、38℃台の発熱になったため、心配になり来院した。既往歴)なし薬剤歴)なし生活歴)飲酒:ビール500mL/毎日喫煙:10本/日(20歳~)職業:建設業身体所見)体温38.7℃、血圧142/78mmHg、心拍数98回/分、呼吸回数20回/分、意識:清明眼瞼:両側に浮腫あり口蓋扁桃:発赤腫大し白苔を認める頸部:両側の胸鎖乳突筋後方に径1~2cmのリンパ節を数個触知する。リンパ節は軟で圧痛あり腹部:平坦、軟、右肋骨弓下に肝臓を2cm、左肋骨弓下に脾臓を3cm触知する経過)血液検査:末梢血中の異型リンパ球増加あり。ASTとALTの上昇あり伝染性単核球症を考えEBウイルス抗体価を測定し、抗VCA-IgM抗体の上昇と抗VCA-IgG抗体および抗EBNA抗体の陰性を認めた新しいガールフレンドとの交際をしつこく聞いたがまったくないという。1ヵ月前に同僚たちと日本酒の回し飲みをしたとのことであった。無症状であるEBウイルス既感染者の90%は唾液にウイルスを排泄していると言われる1)NSAIDsの定期内服で症状は軽快した。脾臓破裂の可能性があるので、激しく体が接触するスポーツを1ヵ月間は避けるように指導した。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!伝染性単核球症はEBウイルスにより起こるアンピシリンの服用により皮疹が出現するサイトメガロウイルスによる伝染性単核球様症状では咽頭痛や頸部リンパ節腫脹を認めないことが多い。性的に活発な年代に多いHIVやトキソプラズマの急性感染、薬剤でも同様の症状が起こる菊池病は若年女性に好発し、頸部リンパ節腫脹、発熱、皮疹、体重減少、関節痛、肝脾腫、無菌性髄膜炎など多彩な臨床像を示す。SLEへ移行することがある【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】症状を確認する急性発症か慢性発症かどの部位のリンパ節が腫れているか発熱、体重減少(体重の5%以上の減少)、盗汗(下着を変える必要があるほどの夜間の発汗)を伴っているか【STEP2-2】診察で詳細に確認するすべての表在リンパ節を触診する。2ヵ所以上の離れたリンパ節が腫れる全身性? 局所性?腫大したリンパ節の大きさと数を記載する圧痛があれば炎症性、圧痛がなければ悪性腫瘍の可能性が高まる炎症性では柔らかく、悪性リンパ腫では消しゴムの硬さ、癌では石のような硬さであることが多い可動性なら炎症性か悪性リンパ腫、可動性がなければ癌を示唆する肝腫大と脾腫の有無を触診で確認する直径3cm以上、硬い、可動性なし、鎖骨上窩リンパ節腫大、体重減少があれば重大な疾患の可能性がある2)【STEP3】鑑別診断を想起する3)胸鎖乳突筋の後方にある後頸部リンパ節腫脹があれば、全身の感染症(EBウイルス、サイトメガロウイルス、風疹ウイルス、HIV、結核)、悪性リンパ腫、頭頸部がん、菊池病を考える鎖骨上窩リンパ節腫大があれば、第一に悪性腫瘍を疑う。左鎖骨上窩リンパ節は消化器がんの転移部位として有名である(Virchow転移)腋窩リンパ節はネコひっかき病、乳がんで腫れる鼠径リンパ節は下肢からの感染、性感染症で腫れることが多い全身性リンパ節腫脹あれば、ウイルス感染症、結核、膠原病、成人Still病、悪性リンパ腫を疑う<参考文献・資料>1)Harrison’s Principles of Internal Medicine 20th edition. 2018. p1358-1365.2)McGee Evidence-Based Physical Diagnosis 5th edition. 2022. p221-231.3)石井義洋. 卒後10年目 総合内科医の診断術. 2015. p361-370.

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医療訴訟を回避するカルテ術【Dr.倉原の“俺の本棚”】第54回

【第54回】医療訴訟を回避するカルテ術医療トラブルになったとき、証拠としてのカルテが非常に重要になります。この理由は、医療訴訟での事実認定がカルテに依存していることが挙げられるようです。医師と弁護士のダブル免許を持っている山崎 祥光氏が、北野病院で講演してきた「カルテの書き方」のスライドを、北野病院院長の吉村 長久氏が中心となって編さんされた本で、非常に完成度が高いです。『トラブルを未然に防ぐカルテの書き方』吉村 長久, 山崎 祥光/編. 医学書院. 2022年2月発売私は臨床医を約15年続けていますが、幸運なことにこれまで医療訴訟を起こされたことはありません。しかし、医療トラブルの経験はあります。進行期の悪性疾患で助かる見込みがない患者が急変して亡くなったときに、遠方から初めて会う家族がやってきて激怒したのです。私は怒りに対して申し訳ないという謝罪の意を示しましたが、これは当初「非を認めた」ととられてしまいました。終末期がんがどのようなものかを後日しっかりと説明することで納得されたのですが、「場合によっては訴訟」と言われたことは、今でも記憶に残っています。「遠方の家族も含めて、みんなで情報を共有すべきであったし、死が近づいていることを本人が家族に話しやすい方向にもっていくべきだった。あなたの怒りももっともだ」という意味での謝罪だったのですが、医療内容に関して非を認めてしまうような印象を与えてしまったようです。一番ベストな方法は、「医療責任ではなく、患者家族のつらいお気持ちに対して謝罪の意を表明した」などというカルテ記載を心掛けて、決して責任に対して謝罪したわけではないことがわかればよいそうです。その時に罵倒されることを回避できるわけではありませんが、後日医療訴訟に発展した場合の防衛策になります。この本は病状説明、同意書、処置などに関する医療トラブルの例を挙げつつ、プロによる「カルテにはこう書こう」という具体案が提示されています。医療訴訟の医学書なんて、これまでになかったので、かなり新鮮でした。「患者の病状理解が悪い」「進言するが聞き入れられず」みたいな感じで、感情を入れてカルテを書いてしまいがちな人は必読です。当院は外国人結核の患者さんがよく入院してくるんですが、片言で日本語を話す外国人のカルテに「S)大丈夫デス!」のように書いてしまう自分がいます。悪意があるわけではないのですが…。『トラブルを未然に防ぐカルテの書き方』編集吉村 長久, 山崎 祥光出版社名医学書院定価3,960円(税込)刊行年2022年

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コロナ治療薬の早見表2種(年代別およびリスク因子有無別)

年齢別で使用できるコロナ治療薬ー新型コロナ重症化リスク因子がある人ー・重症化リスク因子とは、65歳以上の高齢者、悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙、固形臓器移植後の免疫不全、妊娠後期などのこと軽症~中等症薬剤対象者内服点滴ラゲブリオパキロビッドパックロナプリーブゼビュディ(モルヌピラビル)(ニルマトレルビル・リトナビル)(カシリビマブ/イムデビマブ)(ソトロビマブ)発症から5日以内に5日間服用発症から5日以内に服用(1回に2種3錠を5日間服用)薬剤の大きさは約2cm薬の飲み合わせに注意が必要のため「お薬手帳」を持参して服用中のすべての薬を医療者に伝えましょう(とくに高血圧や不整脈治療薬、睡眠薬など)オミクロン株には無効アナフィラキシーや重篤な過敏症を起こす恐れがあるので投与~24時間は観察が必要発症から5~7日を目安に投与オミクロン株のBA.2系統には有効性減弱12歳以上かつ40㎏以上小児妊婦・授乳婦子どもを望む男女発症から7日以内に投与子供を望む男女が服用する場合、服用中と服用後4日間の避妊を推奨※※※65歳未満65歳以上※妊婦:治療上の有益性が危険性を上回る時に服用可、授乳婦:授乳の継続又は中止を検討出典:各添付文書、新型コロナウイルス感染症診療の手引き第7.2版、COVID-19 に対する薬物治療の考え方第13.1版Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.年齢別で使用できるコロナ治療薬ー新型コロナ重症化リスク因子がない人ー・薬剤が使用できる方は、重症度分類が中等症II以上(酸素投与が必要)の場合に限ります軽症※~重症薬剤対象者中等~重症点滴内服/点滴点滴内服ベクルリーステロイド薬アクテムラオルミエント(レムデシビル)(デキサメタゾン)(トシリズマブ)(バリシチニブ)投与目安は軽症者が3日間中等症以上が5日間(最大10日間)重症感染症の適応で使用発症から7日以内に使用。ステロイド薬と併用、人工呼吸器管理・ECMO導入を要する方に入院下で投与入院から3日以内に投与。総投与期間は14日間、レムデシビルと併用肝/腎機能障害、アナフィラキシーなどに注意投与目安は10日間血糖値が高い方、消化性潰瘍リスクがある方は注意が必要結核、B型肝炎の既往、糞線虫症リスクを確認。また、心疾患や消化管穿孔リスクがある方は注意が必要抗凝固薬の投与等による血栓塞栓予防を行う結核・非結核性抗酸菌症やB型肝炎リスクを確認※軽症は適応外使用小児妊婦・授乳婦子どもを望む男女3.5㎏以上※プレドニゾロン40㎎/日に変更※65歳未満65歳以上※妊婦:治療上の有益性が危険性を上回る時に服用可、授乳婦:授乳の継続又は中止を検討出典:各添付文書、新型コロナウイルス感染症診療の手引き第7.2版、COVID-19 に対する薬物治療の考え方第13.1版Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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過去のものとは言わせない~SU薬の底力~【令和時代の糖尿病診療】第6回

第6回 過去のものとは言わせない~SU薬の底力~最近、新薬に押されてめっきりと処方数が減ったSU薬。低血糖を来しやすい、血糖変動が大きくなるなど罵詈雑言を並べ立てられ、以前はあれほど活躍していたのにもかかわらず、いまや悪者扱いされている。私が研修医のころは、経口薬といえばSU薬(BG薬はあったもののほとんど使われなかった)、注射剤といえばインスリン(それも速効型と中間型の2種類しかない)、加えて経口薬とインスリンの併用などはご法度だった時代である。同じような時代を生きてきた先生方にこのコラムを読んでいただけるか不安だが、今回はSU薬をテーマに熟年パワーを披露してみたい。最近の若手医師はこの薬剤をほとんど使用しなくなり、臨床的な手応えを知らないケースも多いだろう。ぜひ、つまらない記事と思わずに読んでいただきたい。もしかしたら考え方が変わるかもしれない。SU薬は、スルホンアミド系抗菌薬を研究していた際に、実験動物が低血糖を示したことで発見されたというユニークな経緯を持つ。1957年に誕生し、第一~三世代に分けられ、現在使用されているのは第二世代のグリベンクラミドとグリクラジド、第三世代のグリメピリドである。血糖非依存性のインスリン分泌促進薬で、作用機序は膵臓のβ細胞にあるSU受容体と結合してATP依存性K+チャネルを遮断し、細胞膜に脱分極を起こして電位依存性Ca2+チャネルを開口させ、細胞内Ca2+濃度を上昇させてインスリン分泌を促進する。血糖降下作用は強力だが、DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬と違い、血糖非依存性のため低血糖には注意が必要で、日本糖尿病学会の治療ガイドには、使用上の注意として(1)高齢者では低血糖のリスクが高いため少量から投与を開始する、(2)腎機能や肝機能障害の進行した患者では低血糖の危険性が増大する、と記載されている。この2点に気を付けていただければ、コストパフォーマンスが最も良好な薬剤かと思われる。まずはこの一例を見ていただきたい。75歳男性。罹病歴29年の2型糖尿病で、併存疾患は高血圧、脂質異常症、高尿酸血症および肺非結核性抗酸菌症。三大合併症は認めていない。α-GI薬から開始し、その後グリニド薬に変更したが、14年前からSU薬+α-GI(グリメピリド1mg+ボグリボース0.9mg/日)に変更。体重も大きな増減なく標準体重を維持し、HbA1cは6%台前半で低血糖症状もなく、経過は良好であった。そこで主治医は、朝食後2時間値70~80mg/dLが時折見られることから無自覚低血糖の可能性も加味し、後期高齢者になったのを機にグリメピリドを1mgから0.5mgに減量したところ、HbA1cがなんと1%も悪化してしまった。症例:血糖コントロール(HbA1c)および体重の推移この患者には肺病変があるのでもともと積極的な運動はできず、HbA1cの季節性変動もない。また、食事量も変わりなく体重変化もないため、SU薬の減量がもっともらしい原因として考えられた。よって、慌てて元の量に戻したケースである。このような症例に出くわすことは、同世代の先生方には十分理解してもらえるだろう。いわゆる「由緒正しき日本人糖尿病」で、非肥満のインスリン分泌が少し低い患者である。これを読んでも、あえてSU薬を使う必要があるのかという反論もあろう。新しい経口糖尿病治療薬は、血糖降下作用のみならず大血管障害などに対し少なくとも非劣性であることが必要だが、最近の薬剤はむしろ大血管障害や腎症に対しても優越性を持つ薬剤が出てきているではないか。さらには、血糖依存性で低血糖が起こりにくく、高齢者にも使用しやすい。確かにそのとおりなのだが、エビデンスでいうとSU薬も負けてはいないのだ。次に説明する。最近の報告も踏まえたSU薬のエビデンス手前みそにはなるが、まずはわれわれの報告1)から紹介させていただく。2型糖尿病患者における経口血糖降下薬の左室心筋重量への影響画像を拡大するネットワークメタ解析を用いて、2型糖尿病患者における左室拡張能を左室心筋重量(LVM)に対する血糖降下薬の効果で評価した結果、SU薬グリクラジドはプラセボと比較してLVMを有意に低下させた唯一の薬剤だった(なお、この時SGLT2阻害薬は文献不足により解析対象外)。左室拡張能の関連因子として、酸化ストレス、炎症性サイトカイン、脂肪毒性、インスリン抵抗性、凝固因子などが挙げられるが、なかでも線溶系活性を制御する凝固因子PAI-1(Plasminogen Activator Inhibitor-1)の血中濃度上昇は、血栓生成の促進、心筋線維化、心筋肥大、動脈硬化の促進および心血管疾患の発症と関連し、2型糖尿病患者では易血栓傾向に傾いていることが知られている。このPAI-1に着目し、2型糖尿病患者におけるSU薬の血中PAI-1濃度への影響をネットワークメタ解析で比較検討したところ、グリクラジドはほかのSU薬に比して血中PAI-1濃度を低下させた2)。これは、ADVANCE研究においてグリクラジドが投与された全治療強化群では心血管疾患の発症が少なかったことや、ACCORD研究においてグリクラジド以外の薬剤が投与された治療強化群での心血管疾患発症抑制効果は見られなかったことなど、大規模試験の結果でも裏付けられる。また、Talip E. Eroglu氏らのReal-Worldデータでは、SU薬単剤またはメトホルミンとの併用療法はメトホルミン単独療法に比べて突然死が少なく、さらにグリメピリドよりグリクラジドのほうが少ないという報告3)や、Tina K. Schramm氏らのnationwide studyでは、SU薬単剤はメトホルミンと比較して死亡リスクや心血管リスクを増加させるが、グリクラジドはほかのSU薬より少ないという報告4)もある。過去のものとは言わせない~SU薬の底力~以上より、SU薬のドラッグエフェクトによる違いについても注目すべきだろう。SU薬は血糖降下作用が強力で安価なため、世界各国では2番目の治療薬として少量から用いられており、わが国でも、やせ型の2型糖尿病患者の2~3剤目として専門医に限らず多く処方されている。結論として、SU薬の使用時は単剤で用いるよりは併用するほうが望ましく、少量で使用することにより安全で確実な効果が発揮できる薬剤だと理解できたかと思う。また、私見ではあるが、高齢者糖尿病が激増している中で、本来ならインスリンが望ましいが、手技的な問題や家庭状況により導入が難しい例、あるいは厳格なコントロールまでは必要ないインスリン分泌の少ない例などは良い適応かと考える。おまけに、とても安価である。決してお払い箱の薬剤ではないことも付け加えさせていただく!1)Ida S, et al. Cardiovasc Diabetol. 2018;17:129.2)Ida S, et al. Journal of Diabetes Research & Clinical Metabolism. 2018;7:1. doi:10.7243/2050-0866-7-1.3)Eroglu TE, et al. Br J Clin Pharmacol. 2021;87:3588-3598.4)Schramm TK, et al. Eur Heart J. 2011;32:1900-1908.

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関節型若年性特発性関節炎〔pJIA:Polyarticular Juvenile Idiopathic Arthritis〕

1 疾患概要■ 定義・分類若年性特発性関節炎(JIA)は16歳未満に発症し6週間以上持続する原因不明の慢性関節炎の総称である。発症から6ヵ月までの臨床像から、(1)全身型、(2)少関節炎、(3)rheumatoid factor(RF)陰性多関節炎、(4)RF陽性多関節炎、(5)乾癬性関節炎、(6)腱付着部炎関連関節炎、(7)分類不能型の7病型に分類され1)、また治療の視点から、全身型、関節型、症候性の3つに整理されている(図1)。図1 JIAの病型分類と関節型JIAの位置付け画像を拡大する6歳未満に発症した原因不明の慢性関節炎は、発症から6ヵ月以内の臨床症状や検査所見から7病型に分類される。また、治療の観点から、全身型JIA、関節型JIA、症候性JIAの3つに分類するが、このうち関節型JIAとは、主に少関節炎JIA、RF陰性およびRF陽性多関節炎JIAを指し、全身型JIAで発症し、全身症状が消退しても関節炎が遷延するものも含まれる。関節型JIAとは、主に(2)少関節炎JIAと(3)RF陰性および(4)RF陽性多関節型JIAの3病型を指す。少関節炎JIAと多関節炎JIAは炎症関節の数で区分されており、前者は4関節以下、後者は5関節以上と定義されている。また、(1)全身型JIAの約20%は、その後、全身症状(発熱、皮疹など)を伴わず関節炎が遷延する経過をとるため(全身型発症多関節炎)、関節型JIAに含められている。■ 疫学わが国のJIAの有病率は小児10万人当たり8.8~11.6と報告され、推定患者数は2,893人である。また、JIAの病型の比率2)は、全身型41.2%、少関節炎20.2%、RF陰性多関節炎13.7%、RF陽性多関節炎18.2%であることから、関節型JIAの患者数は約1,700人程度と推定される。■ 病因関節型JIAの病因は不明であるが、抗核抗体陽性例が多い少関節炎JIAやRF陽性多関節炎JIAは自己免疫疾患の1つと考えられている。また、後述する生物学的製剤biologic disease modifying anti-rheumatic drugs(bDMARDs)の有効性から、関節型JIAの病態形成にTNFやIL-6などの炎症性サイトカインや、T細胞活性化が関与していることは明らかである。■ 症状1)関節症状関節は腫脹・発赤し、疼痛やこわばり、痛みによる可動域制限を伴う。関節炎は、少関節炎JIAでは大関節(膝、足、手)に好発し、多関節炎JIAではこれに小関節(指趾、頸椎など)が加わる。しかし、小児では本人からの関節症状の訴えは少ない。これは小児では痛みを具体的に説明できず、痛みを避ける動作や姿勢を無意識にとっているためと考えられる。そのため、起床時の様子や午前中の歩行容姿、乳児ではおむつ交換時の激しい啼泣などから、保護者が異常に気付くことが多い。2)関節外症状関節症状に倦怠感や易疲労感を伴う。関節症状と同様、倦怠感は起床時や午前中に強いが、午後には改善して元気になる。そのため、学校では午前中の様子をさぼりや無気力と誤解されることがある。微熱を伴うこともあるが高熱とはならず、皮疹もみられない。少関節炎JIAを中心に、JIAの5~15%に前部ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)がみられる。関節炎発症から6年以内に発症することが多く、発症リスクとして、4歳未満発症と抗核抗体陽性が挙げられている。また、発症早期には自覚症状(眼痛、羞明)に乏しい。そのため、早期診断には眼症状がなくても定期的な眼科検診が欠かせない。■ 予後適切な治療により長期寛解が得られれば、JIAの約半数は無治療寛解(off medication寛解)を達成する。ただその可能性は病型で異なり、少関節炎JIAやRF陰性多関節炎では過半数が無治療寛解を達成するが、RF陽性多関節炎JIAや全身型発症多関節炎JIAでは、その達成率は低い(図2)。完治困難例の関節予後は不良であり、不可逆的な関節破壊による機能障害が進行し、日常生活に支障を来す。しかし、わが国では2008年にJIAに対する最初のbDMARDsが認可され、今後は重篤な機能障害に至る例は減少することが期待されている。少関節炎JIAに好発するぶどう膜炎は治療抵抗性であり、ステロイド点眼で寛解しても減量や中止後に再燃を繰り返す。そのため、眼合併症(帯状角膜変性、白内障、緑内障など)が経過とともに顕在化し、視機能が障害される。ぶどう膜炎についても、2016年にbDMARDsの1つであるアダリムマブ(adalimumab:ADA)が非感染性ぶどう膜炎で認可され、予後の改善が期待されている。図2 JIAの病型別累積無治療寛解率画像を拡大する鹿児島大学小児科で治療した全身型89例および多関節型JIA196例、合計285例のうち、すべての治療を中止し、2年間寛解状態を維持したものを、無治療寛解と定義し、その累積達成率を病型毎に検討した。その結果、JIA285例全体の累積無治療寛解率は罹病期間5年で33.1%であったが、病型別の達成率では、RF陽性多関節炎JIAと全身型発症多関節型JIAで低値であった。* 全身型で発症し、全身症状消失後も関節炎が遷延する病型**全身型で発症し、疾患活動期には関節炎と全身症状を伴う病型2 診断 (検査・鑑別診断も含む)持続する原因不明の関節炎がJIAの必須要件であるが、特異的な所見に乏しいために診断基準は確立されていない。したがって、臨床症状や検査所見を参考にJIAの可能性を検討し、鑑別疾患を除外して初めて診断される。■ 臨床症状関節炎は固定性・持続性で、しばしば倦怠感や易疲労性を伴う。関節症状(関節痛、こわばり感)は起床時や朝に強く、時間とともに改善する。高熱や皮疹はみられない。■ 検査所見抗環状シトルリン化ペプチド抗体(anti-cyclic citrullinated peptide antibody :ACPA)が陽性であればRF陽性多関節炎JIAの可能性が高い。一方RFは、RF陽性多関節炎JIAでは必須であるが、他のJIA病型では陰性であり、むしろシェーグレン症候群や混合性結合組織病での陽性率が高い。したがって、ACPAやRFが陰性でもJIAを否定できず、少関節炎JIAやRF陰性多関節炎JIAの可能性を検討する必要がある。MRIや関節エコー検査における肥厚した関節滑膜や炎症を示唆する所見は、関節型JIAの早期診断に有用であるが、JIAに特異的な所見ではない。一方、X線検査による関節裂隙の狭小化や骨糜爛などの破壊像はJIAに特異性が高いものの、早期診断には役立たない。MMP-3の増加は関節炎の存在や関節破壊の進行予知に有用である。しかし、健康幼児のMMP-3はほとんどが測定感度以下であるため、正常値であっても慎重に判断する。また、MMP-3の評価にはステロイドの影響を除外する必要がある。■ 鑑別疾患小児の関節痛に対する鑑別疾患を、疼痛部位や臨床経過、随伴症状、検査所見を含めて図3に示す。図3 疼痛部位や経過、臨床所見からみた小児の関節痛の鑑別疾患画像を拡大する年齢別には、乳幼児では悪性疾患(白血病)や自己炎症性疾患、年長児では他の膠原病やリウマチ性疾患、線維筋痛症、悪性疾患(骨肉腫)などを中心に鑑別する。一方、感染症や若年性皮膚筋炎との鑑別は全年齢にわたって必要である。関節炎に発熱や皮疹を伴う場合は、皮膚筋炎や全身性エリテマトーデスなどの膠原病疾患だけでなく、全身型JIAやブラウ症候群などの自己炎症性疾患を鑑別する。特に白血病や悪性疾患については、JIAとして治療を開始する前に除外しておくことは重要である。白血病を含む小児腫瘍性疾患1,275例を検討した報告では、発症時に関節炎を伴う例が102例(8%)存在し、これを関節型JIA 655例と比較したところ、「男児」、「単関節炎」、「股関節炎」、「全身症状」、「夜間痛や背部痛」が悪性疾患のリスク所見であった。特に白血病の初期は末梢血が正常であることが多く、骨髄検査で除外しておくことが必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療目標関節型JIAの治療目標は関節炎病態に寛解を導入し、破壊性関節炎の発生や進行を抑止することである。一方、JIAの約半数は、治療寛解を長期維持した後に治療中止が可能で、その後も再燃せずに無治療寛解を維持する(図2)。そのため、関節型JIAにおいても、その最終的な治療目標は永続性のある無治療寛解(完治cure)であり、この点がRAとの最も大きな違いである。■ 治療評価1)診察時の評価関節痛や倦怠感、朝のこわばりの持続時間などで評価する。小児では訴えが不明確で評価が難しため、保護者からもたらされる日常生活の情報(歩行容姿や行動量などの変化)が参考になる。理学所見では、活動性関節炎(関節腫脹や圧痛)の数や、関節可動域の変化で評価する。検査では、炎症指標(CRP、赤沈、血清アミロイドA)やMMP-3、関節エコー所見などが参考になる。2)疾患活動性の総合評価27関節を評価するJuvenile Arthritis Disease Activity Score(JADAS)27が臨床評価に用いられている(図4)3)。RAで用いられるDAS28と異なり、少関節炎JIAで好発する足関節炎の評価が可能である。JADAS27の評価項目はVisual analog scale (VAS、0-10cm)による(1)医師および(2)患児(または保護者)の評価、(3)活動性関節炎数(0-27)、(4)標準化赤沈値([1時間値-20]/10、0-10)の4項目からなり、その合計スコア値(0-57)で評価する。なお、活動性関節炎とは、関節の腫脹または圧痛がある関節、圧痛がない場合は伸展屈曲負荷をかけた際に痛みがある関節と定義されている。また、JADAS27から標準化赤沈値を除いたスコア値を用いて、疾患活動性を寛解、低度、中等度、高度の4群にカテゴリー化するcut-off値も定義されている。3)寛解の種類と定義臨床寛解(clinical inactive disease)の定義は、(1)活動性関節炎、(2)活動性のぶどう膜炎、(3)赤沈値およびCRP値の異常、(4)発熱、皮疹、漿膜炎、脾腫、リンパ節腫脹がなく、(5)医師による総合評価が最小値で、(6)朝のこわばりが5分以下の6項目をすべて満たした状態である。また、この臨床寛解を治療により6ヵ月以上維持していれば治療(on medication)寛解、治療中止後も1年以上臨床寛解を維持していれば、無治療(off medication)寛解と分類される。図4 JADASを用いた関節型JIAの疾患活動性評価画像を拡大する医師および患児(または保護者)による総合評価、活動関節炎数、標準化赤沈値の集計したスコア値で疾患活動性を評価する。JADASには評価関節の数により、JADAS71、JADAS27、JADAS10の3つがあるが、臨床現場ではJADAS27が汎用されている。JADAS27では、DAS28で評価しない頸椎、両股関節、両足関節を評価する一方、DAS28で評価する両側の4-5MP関節、両肩関節は評価しない。疾患活動性を寛解、低活動性、中等度活動性、高度活動性の4群に分類する場合、標準化ESR値を除いた3項目の合計スコア値を用いる。その際のスコア値は、関節炎数が4関節以下の場合は、それぞれ0~1、0~1.5未満、1.5~8.5未満、8.5以上、関節炎数が5関節以上の場合は、それぞれ0~1、0~2.5未満、2.5~8.5未満、8.5以上と定義されている。■ 治療の実際(図5)4)関節型JIAの3病型のいずれも、以下の手順で治療を進める。また、治療開始後の臨床像の変化を、症状、理学所見、検査値、関節エコー、JADAS27などで評価し、治療の有効性と安全性を確認しながら治療を進める。図5 関節型JIAの治療手順画像を拡大する治療目標は無治療寛解である。予後不良因子のあるhigh risk群では、初期治療からNSAIDsにcsDMARDs(第1選択薬はMTX)を併用し、無効であれば生物学的製剤bDMARDsの追加併用を検討する。1)初期治療(1)1stステップ関節痛に対し、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)を開始するとともに、予後不良因子(RF、ACPA、関節破壊像、日常生活に重要な頸椎・股・手関節などの関節炎)の有無を検討する。JIAに保険適用のあるNSAIDsは、イブプロフェン(30~40mg/kg/日、分3、最大2,400mg/日)とナプロキセン(10~20mg/kg/日、分2、最大1,000mg/日)に限られている。また、NSAIDsで疼痛コントロールが不十分でQOLが著しく低下している場合、少量ステロイド薬(glucocorticoid:GC)を併用することがある。ただ、GCはその強い抗炎症作用でCRP値や関節痛を改善させても、関節炎病態を寛解させない。そのためGCは2ndステップの治療効果が確認されるまでの橋渡し的な使用に限定すべきであり、漫然と継続してはならない。予後不良因子がある場合は、速やかに2ndステップの治療を開始する。予後不良因子がない場合はNSAIDsのみで経過を診るが、2週間経過しても改善が得られなければ、2ndステップの治療に移行する。(2)2nd ステップ従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(conventional synthetic disease modifying anti-rheumatic drugs:csDMARDs)をNSAIDsに追加併用する。第1選択薬はメトトレキサート(methotrexate:MTX)であり、globalな標準投与量は有効血中濃度(ピーク値5.8×10-7moles/L以上)が得られる10~15 mg/m2/週(分1、空腹時投与)である5)。しかし、わが国でのJIAでの承認投与量は4~10mg/m2/週であるため、MTX10mg/m2を週1回、空腹時に分1で投与するのが一般的な投与法である。また、副作用軽減を目的にフォリアミン5mgをMTX投与翌日に投与する。このMTXの投与量10mg/m2は、平均的な体格の小学生1年生で8mg、中学生1年生で15mgに相当する。RAでの上限投与量が16mgであることを考えれば、成人より相対的に高用量であるが、これは小児では、MTXの腎排泄が成人と比べて早いためである。そのため、小児では腎障害や骨髄抑制の発生は少ない。また、高齢者に多いMTXによる肺障害も極めてまれである。小児での主な副作用は嘔気や気分不良で、中学生以降の年長児ではほぼ必発である。そのため、訴えの強い小児では制吐剤の併用、就寝前の服用、剤型の変更などを検討する。なお、DMARDsには既感染の結核やB型肝炎ウイルス(HBV)を再活性化させる可能性がある。そのため、投与開始前に結核(T-spotや胸部Xp/CT)やHBV関連抗原/抗体(HBsAg、HBsAb、HBcAb)の検査を行って感染の有無を確認する。また、トキソプラズマやサイトメガロウイルス、ニューモシスチス肺炎や他の真菌感染症(β-D-glucan)の有無を検討しておくことも必要である。MTX開始後2ヵ月経過しても十分な効果が得られない場合、MTXを他のcsDMARDs (サラゾスルファピリジン[sulfasalazine]やイグラチモド[iguratimod/商品名:ケアラム]など)へ変更する選択肢もある。しかし、海外でその推奨度は低く、またcsDMARDsの効果発現までさらに数ヵ月を要すること、わが国ではJIAに保険適用のあるcsDMARDsはMTX以外にはないこともあり、他のcsDMARDsへの変更は現実的ではない。したがって、次の治療ステップである生物学的製剤(bDMARDs)の追加併用を検討する。(3)3rdステップ関節型JIAに保険適用のあるbDMARDsは、TNF阻害薬のエタネルセプト(Etanercept :ETA)とアダリムマブ(Adalimumab:ADA)、IL-6阻害薬のトシリズマブ(Tocilizumab :TCZ/同:アクテムラ)、T細胞選択的共刺激調整剤のアバタセプト(Abatacept:ABT/同:オレンシア)の4製剤のみである(表)。表 関節型JIAに保険適用のある生物学的製剤画像を拡大するa)TNF阻害薬ETNはTNF受容体(TNF-R2)とヒトIgG1Fcとの融合蛋白製剤であり、血中のTNFα/βと結合することで標的細胞表面上のTNF R2との結合を阻害し、TNFによる炎症誘導シグナルの伝達を抑制する。半減期が短く、0.4mg/kgを週2回皮下注で投与する。JIAで認可された剤形はETNを凍結乾燥させたバイアル製剤のみであり、家族が投与前に溶解液を調合する必要があった。その後、2019年にETN注射液を容れた目盛付きシリンジ製剤(同:エタネルセプトBS皮下注シリンジ「TY」が、また2022年にはエタネルセプトBS皮下注シリンジ「日医工」)がバイオシミラー製剤としてJIAで保険適用を取得し、利便性が向上した。ADAはTNF-αに対する完全ヒト型モノクローナル抗体で、中和抗体として標的細胞上のTNFα受容体へのTNF結合を阻害する。また、TNF産生を担う活性化細胞膜上に発現したTNFαとも結合し、補体を介した細胞傷害性(ADCC)によりTNF産生を抑制する。投与量は固定量で、体重30kg未満では20mgを、体重30kg以上では40mgを、2週毎に皮下注で投与する。わが国のJIA375例を対象とした市販後調査では、投与開始24週後のDAS寛解(DAS28-4/ESR<2.6)達成率は、治療開始時の21.7%から74.7%に増加し、また難治性のRF陽性多関節炎JIAや全身型発症多関節炎JIAにおいても、それぞれ61.9%、80.0%まで増加した。この市販後調査は、前向きの全例調査であることから、臨床現場(real world)での治療成績と考えられる。b)IL-6阻害薬TCZはIL-6受容体に対するヒト化モノクローナル抗体である。細胞膜上のIL-6受容体および流血中のsoluble IL-6受容体と結合し、IL-6のシグナル伝達を阻害し、炎症病態を制御する。4週ごとにTCZ 8mg/kgを点滴静注で投与する。RAに保険適用のある皮下注製剤や、TCZと同じ作用機序をもつサリルマブ(sarilumab/同:ケブザラ)はJIAでは未承認である。多関節型JIA132例を対象とした市販後調査(中間報告)では、投与開始28週後の医師による全般評価は、著効53%、有効42%であり、あわせて90%を超える例が有効と判断された。また、投与前と投与28週後の関節理学所見の変化を57例で検討すると、疼痛関節数(平均)は5.3から1.5へ、腫脹関節数(平均)は5.6から1.6へ減少し、赤沈値も32mm/時間から5mm/時間へと改善した。c)T細胞選択的阻害薬ABTはcytotoxic T lymphocyte associated antigen-4(CTLA-4)とヒトIgG1-Fcとの融合蛋白(CTLA-4-Ig)であり、抗原提示細胞(antigen presenting cell:APC)のCD80/86と強力に結合する。そのため、APCのCD80/86とT細胞のCD28との結合で得られる共刺激シグナルが競合的に遮断され、T細胞の過剰な活性化が抑制される。1回10mg/kgを4週ごとに点滴静注で投与する。皮下注製剤はJIAでは未承認である。1剤以上のcsDMARDに不応な関節型JIA190例を対象とした海外での臨床試験では、ACRpedi 50/70/90改善の達成率は投与4ヵ月時点でそれぞれ50/28/13%であった。また、引き続き行われた6ヵ月間のdouble blind期間においてABT群はプラセボ群と比較して有意な寛解維持率を示した。さらにその後の長期投与試験では、4年10ヵ月の時点でのACRpedi 50/70/90改善達成率はそれぞれ34/27/21%であり、有効性の長期継続が確認された。2)bDMARDs不応例の治療bDMARDs開始後は、その有効性と安全性を監視する。初めて導入したbDMARDsの投与開始3ヵ月後のDAS28が2.49以下であれば、2年以上の寛解が期待できるとした報告がある。しかし、臨床所見やJADASやDAS28スコアの改善が不十分で、bDMARDs不応と思われる場合は、治療変更が必要である。その際は、作用機序の異なる他のbDMARDsへのスイッチが推奨されている。Janus kinase(JAK)阻害薬は、分子標的合成(targeted synthetic:ts)DMARDsに分類され、bDMARDs不応例に対するスイッチ薬の候補である。JAKは、IL-2、 IFN-γ、IFN-αs、IL-12、IL-23、IL-6などの炎症性サイトカインの受容体に存在し、ATPと結合してそのシグナルを伝達する。JAK阻害薬はこのATP結合部位に競合的に結合し、炎症シグナル伝達を多面的に阻害することで抗炎症作用を発揮する。また、低分子化合物であるため内服で投与される。Rupertoらは、多関節炎JIA225例(関節型JIA184例、乾癬性関節炎20例、腱付着部炎関連関節炎21例)を対象にトファシニチブ(tofacitinib:TOF/同:ゼルヤンツ)の国際臨床試験を行った。まず18週にわたりTOF5mgを1日2回投与し、ACR30改善達成例を実薬群72例とプラセボ群70例の2群に分け、その後の再燃率を44週まで検討した。その結果、TOF群の再燃率は29%と低く、プラセボ群の53%と有意差を認めた(hazard比0.46、95%CI 0.27-0.79、p=0.0031)。現在、JIAに保険適用のあるJAK阻害薬はないが、バリシチニブ(baricitinib)の国際臨床試験がわが国でも進行中である。4 今後の展望疫学研究では、JIAを含む小児リウマチ性疾患の登録が進められている(PRICURE)。臨床研究では、前述のように関節型JIAに対するJAK阻害薬のバリシチニブの国際臨床試験が進行中である。5 主たる診療科小児科であるが、わが国の小児リウマチ専門医は約90名に過ぎず、また専門医のいる医療機関も特定の地域に偏在している。そのため、他の領域に専門性を持つ多くの小児科専門医が、小児リウマチ専門医と連携しながら関節型JIAの診療に携わっている。日本小児リウマチ学会ホームページの小児リウマチ診療支援MAPには、小児リウマチ診療に実績のある医療機関が掲載されている。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本小児リウマチ学会 小児リウマチ診療支援MAP(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 若年性特発性関節炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児リウマチ性疾患国際研究組織(PRINTO)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報JIA家族会「あすなろ会」(患者とその家族および支援者の会)1)Petty RE, et al. J Rheumatol. 2004;31: 390-392.2)武井修治,ほか. 小児慢性特定疾患治療研究事業の登録・管理・評価・情報提供に関する研究, 平成19年度総括・分担研究報告書2008.2008.p.102-111.3)Consolaro A, et al. Arthritis Rheum. 2009;61:658-666.4)小児リウマチ調査検討小委員会. 全身型以外の関節炎に対する治療、若年性特発性関節炎初期診療の手引き2015. メディカルレビュー社;2015.p.59-66.5)Wallace CA, et al. Arthritis Rheum. 1989;32:677-681.公開履歴初回2022年3月23日

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ウパダシチニブ+TCS、日本人アトピー性皮膚炎患者への安全性確認

 日本人のアトピー性皮膚炎(AD)の治療として、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬ウパダシチニブ+ステロイド外用薬(TCS)併用の安全性を検討した、京都府立医科大学の加藤 則人氏らによる第III相無作為化二重盲検試験「Rising Up試験」の24週の中間解析結果が発表された。ウパダシチニブに関する既報の知見と、概して一致した結果が示され、安全性について新たなリスクは検出されなかったという。JAAD International誌2022年3月号掲載の報告。 Rising Up試験は、12~75歳の日本人の中等症~重症AD患者を対象とし、被験者を無作為に1対1対1の3群に割り付け、(1)ウパダシチニブ15mg+TCS、(2)ウパダシチニブ30mg+TCS、(3)プラセボ+TCSをそれぞれ投与した。安全性は、有害事象と検査データに基づき評価した。 主な結果は以下のとおり。・272例(成人243例、未成年29例)が無作為化を受けた(治療開始は2018年11月17日)。・重篤な有害事象の発現頻度は24週時点で、ウパダシチニブ+TCS投与の両群がプラセボ+TCS群よりも高率であったが、用量間では類似していた(15mg+TCS群:56%、30mg+TCS群:64%、プラセボ+TCS群:42%)。・ウパダシチニブ+TCS投与群はプラセボ+TCS群と比べて、にきびの発現頻度が高かった(すべて軽症~中等症、治療中止となった症例なし)。発現頻度は、15mg+TCS群13.2%、30mg+TCS群19.8%、プラセボ+TCS群5.6%。・さらに、15mg+TCS群よりも30mg+TCS群で、帯状疱疹(30mg+TCS群:4.4% vs.15mg+TCS群:0%)、貧血(1.1% vs.0%)、好中球減少症(4.4% vs.1.1%)の発現頻度が高かった。なお、これらのイベントはプラセボ+TCS群では報告されなかった。・血栓塞栓性イベント、悪性腫瘍、消化管穿孔、活動性結核、死亡の発生は報告されなかった。

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