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第132回 エーザイのアルツハイマー病薬の第III相試験成功

エーザイのアルツハイマー病薬lecanemab(レカネマブ)が第III相試験(Clarity AD)で有望な認知機能低下抑制効果を示し、試験の主要目標やその他の副次目標一揃いを達成しました1,2)。lecanemabはアルツハイマー病の特徴として知られる脳のアミロイドβ(Aβ)病理の解消を目指すモノクローナル抗体です。-0.45点の意義Clarity AD という名称の同試験は2019年3月に始まり3)、早期アルツハイマー病患者1,795人が参加しています。lecanemabは2週間に1回静注され、18ヵ月時点の主要評価項目・CDR-SB点数上昇(悪化)をプラセボに比べて有意に抑制しました。CDR-SBは数ある認知症検査の1つで、もともとはアルツハイマー病の初めの病状を把握する検査として使われていましたが、10年ほど前の米国FDA方針以降臨床試験の転帰として受け入れられるようになっています4)。医師は患者自身、その介護者、家族からの情報や記憶や問題解決能力などの患者向け検査結果に基づいてCDR-SBの点数を計算します。CDR-SBの点数の幅は0~18点で、点数が高いほど病状が悪いことを意味します。そのCDR-SB得点の上昇をプラセボに比べて差し引きで0.45点、率にして27%減少させたことをエーザイは有意義(clinically meaningful)な結果であるとみなしました3)。一方、University College Londonの精神科医Rob Howard氏に言わせるとその差は小さすぎてプラセボとほとんど見分けが付きません5)。以前に同氏等は患者の日常に有意義な結果とみなすにはプラセボと少なくとも0.5かそれ以上の差が必要と主張していました5,6)。また、lecanemabが今回の第III相試験で示した認知機能低下の抑制を患者やその家族がどれほど実感したかはまだ判断不可能であり6)、そのためにはさらに情報が必要です。今後の追加情報はさておき、アナリストが成功水準とした率にして20~25%以上の対プラセボCDR-SB上昇抑制を上回る27%抑制をlecanemabは達成していますし、同剤が米国FDA承認を逃すというのはおよそありえなさそうです4)。影の立役者・北方の変異他のAβ標的抗体が軒並み難抗する中でlecanemabが大一番の第III相試験の成功にとうとう漕ぎ着けたのはなぜか? それは遡ること20年以上前に発表されたAβ前駆タンパク質変異の発見がだいぶ貢献しているようです。北方の(Arctic)国スウェーデンの人から見つかったその変異はアークティック変異(E693G)と呼ばれ、Aβのアミノ酸配列の22番目を変える変異であり、Aβ凝集(Aβプロトフィブリル)形成を促してアルツハイマー病を誘発します7)。Aβプロトフィブリルを除去するlecanemabは他でもないそのアークティック変異の発見者であるLars Lannfelt氏等が設立したスウェーデン拠点のBioArctic社とエーザイの共同研究によって誕生しました。lecanemabが認識するAβアミノ酸配列(エピトープ)は最初から16番目と、プロトフィブリルを形成したときの21~29番目領域です。その性質ゆえlecanemabは神経にどうやら有毒らしい可溶性Aβプロトフィブリルをより容易に優先して認識します3)。ライバルの足音lecanemabはClarity AD試験結果を含まない第II相試験結果を拠り所に取り急ぎの承認申請(Accelerated Approval)が米国FDAに提出されており、その審査結果は来年2023年1月6日までに判明します。取り急ぎではない不動の承認(traditional/full approval)を目指す申請も来年3月31日までになされる予定です。来月11月29日にはClarity AD試験結果の詳細がアルツハイマー病臨床試験会議(CTAD:Clinical Trials on Alzheimer‘s Disease)で発表されます。その会議ではRoche(ロシュ)の抗Aβ抗体gantenerumab(ガンテネルマブ)の第III相試験結果も発表され、さらに来年2023年中にはEli Lilly(イーライ・リリー)の抗Aβ抗体donanemabの大一番(ピボタル)試験結果も明らかになる見込みです4)。興味深いことに、lecanemabと同様にロシュのgantenerumabもアークティック変異を反映するAβアミノ酸22番目を含む領域を認識します。ただしlecanemabがAβプロトフィブリルに特異的なのに比べてgantenerumabはより非特異的であり、Aβ単量体にもより結合します8)。lecanemabの課題Clarity AD試験の被験者選択基準の1つは脳にアミロイド病変があることであり、その確認にはたいていPET撮影を必要とします。そういう画像診断の要件は同剤普及の足かせになるかもしれません4)。lecanemabの用法である隔週での静注も使用を諦める理由になるかもしれませんが、エーザイは投与がより容易なその皮下注射の臨床試験をすでに始めています1,2)。参考1)抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体「レカネマブ」について、1,795人の早期アルツハイマー病当事者様を対象としたグローバル大規模臨床第III相CLARITY AD検証試験において、統計学的に高度に有意な臨床症状の悪化抑制を示し、主要評価項目を達成 / エーザイ2)LECANEMAB CONFIRMATORY PHASE 3 CLARITY AD STUDY MET PRIMARY ENDPOINT, SHOWING HIGHLY STATISTICALLY SIGNIFICANT REDUCTION OF CLINICAL DECLINE IN LARGE GLOBAL CLINICAL STUDY OF 1,795 PARTICIPANTS WITH EARLY ALZHEIMER'S DISEASE / PRNewswire3)Topline Results of Clarity AD Conference for Media and Investors / Eisai4)Lecanemab can; now the wait for details begins / Evaluate5)Alzheimer’s drug slows mental decline in trial - but is it a breakthrough? / Nature6)Alzheimer’s drug results are promising - but not a major breakthrough / NewScientist7)Nilsberth C, et al. Nat Neurosci. 2001;4:887-93. 8)Science of the amyloid-b cascade and distinct mechanisms of action of lecanemab / BioArctic

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日本人高齢者の睡眠時間と認知症リスクとの関係~NISSINプロジェクト

 大阪公立大学の鵜川 重和氏らは、身体的および社会的に自立した日本人高齢者における毎日の睡眠時間と認知症発症リスク(高血圧、糖尿病、心血管疾患などの併存疾患の有無にかかわらず)との関連を調査するため、日本人の年齢別コホートを行った。その結果、日々の習慣的な睡眠時間は、将来の認知症発症リスクの予測因子であることが示唆された。Sleep Medicine誌オンライン版2022年9月3日号の報告。 64~65歳の日本人1,954人(男性:1,006人、女性:948人)を含むプロスペクティブコホート研究を実施した。1日の睡眠時間、症状、人口統計学的因子、ライフスタイル特性に関するデータは、ベースラインアンケート調査および健康診断調査(2000~05年)より収集した。認知症発症は、厚生労働省が提唱する全国標準化認知症尺度を用いて確認した。認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、競合リスクモデルを用いた。死亡例も競合イベントとして扱った。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値は15.6年であり、その間に認知症を発症した人は260人であった。・併存疾患がなく、1日6~7.9時間の睡眠時間の人と比較し、認知症リスクが高かった人の特徴は以下のとおりであり、併存疾患と睡眠時間との間に有意な相関が認められた(いずれもp<0.001)。 ●1日の睡眠時間が6時間未満(HR:1.73、95%CI:1.04~2.88) ●併存疾患があり1日の睡眠時間が8時間未満(HR:1.98、95%CI:1.14~3.44) ●併存疾患があり1日の睡眠時間が8時間程度(HR:1.44、95%CI:1.03~2.00) ●併存疾患があり1日の睡眠時間が8時間以上(HR:2.09、95%CI:1.41~3.09)

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第118回 介護保険制度持続のため、負担と給付の見直しの議論開始

<先週の動き>1.介護保険制度持続のため、負担と給付の見直しの議論開始/厚労省2.医療人材確保のためにも働き方改革とデジタル化推進を/厚労省3.画期的な医薬品の早期の導入のために新しい薬価算定方式を/厚労省有識者会議4.かかりつけ医機能について議論開始/社会保障審議会5.大麻成分を含む医薬品の国内使用可能へ/厚労省6.イベルメクチン、コロナウイルス治療に有効性見出せず/興和1.介護保険制度持続のため、負担と給付の見直しの議論開始/厚労省厚生労働省は社会保障審議会介護保険部会を9月26日に開催し、介護保険制度における給付と負担についての本格的な議論に着手した。今年の6月に閣議決定された「骨太方針2022」には、持続可能な社会保障制度の構築するため、給付と負担のバランスの確保や、能力に応じた負担の在り方の検討などといった文言が盛り込まれており、介護保険サービスの利用者負担を原則2割とすることや、現役世代並み所得(3割負担)の判断基準の見直しを含んだ議論を行い、今年の12月までに取りまとめを行い、2024年の医療・介護報酬改定までに介護保険制度の改正を行う方針。(参考)給付と負担に関する指摘事項について(厚労省)「給付と負担」検討開始、介護保険部会 次期制度改正見据え(CB news)介護「給付と負担」見直し着手 2割負担の拡大など論点(日経新聞)2.医療人材確保のためにも働き方改革とデジタル化推進を/厚労省厚生労働省は9月30日に「医療介護総合確保促進会議」を開催した。2024年度から新たに第8次医療計画や介護保険事業計画が始まるのに合わせて、今後、団塊の世代が後期高齢者となり働き手が減少していく日本の人口構造の変化に対応して、地域医療構想の実現に向け、人材確保と構造改革のためには、医療のデジタル化の促進を行うことが求められる。年度内に総合確保方針の改正案をまとめ、2024年度の医療計画の策定などに向けて具体化を進める。(参考)第17回医療介護総合確保促進会議(厚労省)3.画期的な医薬品の早期の導入のために新しい薬価算定方式を/厚労省有識者会議厚生労働省は、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を9月29日に開催した。この中で、物価高で不採算品目への配慮を求める意見が出されたほか、既存の医薬品では治療困難な領域の疾患に対して新たな治療手段を提供する革新的な医薬品や医療ニーズの高い医薬品の日本への早期導入を進めるためにも、欧米と比較して、日本の薬価が低く抑えられている現状を見直すために、イノベーションを評価できる新算定方式の導入を求める意見が再生医療イノベーションフォーラムから出された。(参考)有識者検討会 物価高で不採算品目への配慮求める声相次ぐ 日薬連、GE薬協に次いで卸連も(ミクスオンライン)医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会 資料(厚労省)4.かかりつけ医機能について議論開始/社会保障審議会厚生労働省は、9月29日に社会保障審議会の医療部会を開催した。これまで「第8次医療計画等に関する検討会」において、かかりつけ医機能の定義やかかりつけ医機能を発揮させるための具体的な仕組みなどについて、議論をしてきたが影響が大きいため、上位会議体である「社会保障審議会・医療部会」での話し合いを行うことになった。2024年に第8次医療計画が始まるのに合わせ、初回はフリートークで行われたが、財務省が検討を求めているかかりつけ医の登録制や、英国で採用されている「人頭払い」の導入には日本医師会などの委員が反対し、賛成意見はでなかったが、今後の動きに注目したい。(参考)第91回社会保障審議会医療部会「かかりつけ医機能について」(厚労省)「かかりつけ医機能」制度整備、法改正視野 社保審医療部会でも議論開始(CB news)かかりつけ医機能は医療部会で議論!「全国の医療機関での診療情報共有」でかかりつけ医は不要になるとの意見も-社保審・医療部会(Gem Med)5.大麻成分を含む医薬品の国内使用可能へ/厚労省厚生労働省は9月29日に厚生科学審議会の大麻規制検討小委員会を開催し、大麻取締法の改正に向けた方向性について取りまとめた。大麻所持者の検挙の増加などを踏まえ、これまでは罰則規定のなかった「使用罪」を新設するほか、医療用に大麻由来のカンナビジオールを含む難治性てんかんの治療薬の使用を解禁する方針を確認した。近年、日本を除く先進主要国では承認されており、現在国内でも臨床試験を実施している。(参考)第4回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会大麻成分含む医薬品、国内使用に向け取締法改正へ 厚労省(産経新聞)大麻「使用罪」を新設=医療用解禁へ-取締法改正で骨子案・厚労省専門委(時事通信)6.イベルメクチン、コロナウイルス治療に有効性見出せず/興和興和株式会社は、9月26日、東京都内で記者会見を開き、軽症の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症を対象疾患として、抗寄生虫薬「イベルメクチン」の第III相臨床試験を進めていたが、今回の臨床試験の結果、主要評価項目において、統計的有意差が認めらず、開発を中止することを発表した。2021年7月から治験開始を発表、同年11月から今年の8月にかけ、日本とタイにおいて軽症患者1,030人を対象に二重盲検試験で実施していたが、投与開始4日前後で、37.5度以上の発熱や咽頭痛、筋肉痛などの症状は軽くなったが、統計的に有意差は認められなかった。一方、死亡例はなく、重症化例もほとんど認められず、安全性には問題はなかった。(参考)イベルメクチン「有効性見いだせず」 コロナ治療薬の臨床試験(朝日新聞)イベルメクチン コロナ治療薬の承認申請を断念 有効性見られず(NHK)興和 新型コロナウイルス感染症患者を対象とした「K-237」(イベルメクチン)の第III相臨床試験結果に関するお知らせ

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lecanemabが早期アルツハイマー病の症状悪化を抑制、今年度中の申請目指す/エーザイ・バイオジェン

 エーザイ株式会社とバイオジェン・インクは2022年9月18日付のプレスリリースで、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabについて、脳内アミロイド病理が確認されたアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)および軽度AD(これらを総称して早期ADと定義)を対象とした第III相Clarity AD試験において、主要評価項目ならびにすべての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成したと発表した。 Clarity AD試験は、早期AD患者1,795例を対象とした、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化グローバル臨床第III相検証試験。被験者は、lecanemab 10mg/kg bi-weekly投与群またはプラセボ投与群に1:1で割り付けられた。ベースライン時における被験者特性は両群で類似しており、バランスがとれていた。被験者登録基準においては、幅広い合併症あるいは併用治療(高血圧症、糖尿病、心臓病、肥満、腎臓病、抗凝固薬併用など)を許容している。試験実施地域は日本、米国、欧州、中国。 主要評価項目はベースラインから投与18ヵ月時点でのCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)の変化。主な副次評価項目はベースラインから投与18カ月時点での、アミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積、ADAS-cog14(Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale 14)、ADCOMS(Alzheimer’s Disease Composite Score)およびADCS MCI-ADL(Alzheimer's Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment)。 lecanemab:可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体で、ADを惹起させる因子の1つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されている。 今回発表されたClarity AD試験の主な結果は以下のとおり。・intent-to-treat(ITT)集団における解析の結果、投与18ヵ月時点での全般臨床症状の評価指標であるCDR-SBスコアの平均変化量は、lecanemab投与群がプラセボ投与群と比較して-0.45となり27%の悪化抑制を示し(p=0.00005)、主要評価項目を達成した。・また、CDR-SBは投与6ヵ月以降すべての評価ポイントにおいてlecanemab投与群がプラセボ投与群と比較して統計学的に高度に有意な悪化抑制を示した(全評価ポイントでp<0.01)。・副次評価項目であるアミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積、ADAS-cog14、ADCOMSおよびADCS MCI-ADLの投与18ヵ月時点での変化についても、すべての項目においてプラセボと比較して統計学的に高度に有意な結果を示した(p<0.01)。・抗アミロイド抗体に関連する有害事象であるアミロイド関連画像異常(ARIA)について、ARIA-E(浮腫/浸出)の発現率は、lecanemab投与群で12.5%、プラセボ投与群で1.7%だった。そのうち症候性のARIA-Eの発現率は、lecanemab投与群で2.8%、プラセボ投与群で0.0%だった。・ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、大出血、脳表ヘモジデリン沈着)の発現率は、lecanemab投与群で17.0%、プラセボ投与群で8.7%だった。症候性ARIA-Hの発現率は、lecanemab投与群で0.7%、プラセボ投与群で0.2%だった。ARIA-Hのみ(ARIA-Eを発現していない被験者でのARIA-H)はlecanemab投与群(8.8%)とプラセボ投与群(7.6%)で差はみられなかった。・ARIA(ARIA-Eおよび/またはARIA-H)の発現率はlecanemab投与群で21.3%、プラセボ投与群で9.3%であり、総じてlecanemabのARIA発現プロファイルは想定内であった。 本試験結果については、2022年11月29日にアルツハイマー病臨床試験会議で発表し、査読付き医学誌で公表する予定となっているほか、同社では本試験結果をもとに2022年度中の米国フル承認申請、および日本、欧州での承認申請を目指している。

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認知症リスク低下に寄与する1日当たりの歩数

 認知症予防ガイドラインでは身体活動を推奨しているが、認知症の発症と歩数やその強度との関連は明らかになっていない。南デンマーク大学のBorja Del Pozo Cruz氏らは、英国成人を対象に毎日の歩数やその強度とすべての原因による認知症発症との関連を調査した。その結果、歩数が多いほどすべての原因による認知症発症リスクが低く、1日当たり1万歩を少し下回る程度の歩数が、最も効果的であることが示唆された。JAMA Neurology誌オンライン版2022年9月6日号の報告。 UK Biobankの集団ベース・プロスペクティブコホート研究(2013年2月~2015年12月)を実施し、フォローアップ期間は6.9年、データ分析は2022年5月に行った。10万3,684人中、有効な歩数データを有する40~79歳の成人7万8,430人を分析対象に含め、認知症発症はレジストリベースで2021年10月までに確認した。歩数計から得られた1日の歩数、1分当たり40歩未満の偶発的な歩数、1分当たり40歩以上の意図的な歩数、1日の最も歩数の多い30分間(ピーク30分間)における1分当たりの歩数(必ずしも連続とは限らない)を分析した。主要アウトカムは、致死的および非致死的な認知症の発症とし、入院記録またはプライマリケア記録と関連付けて収集するか、死亡記録の死因を参照した。歩数との用量反応関連を評価するため、Spline Cox回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象者は、平均年齢61.1±7.9歳、男性3万5,040人(44.7%)、女性4万3,390人(55.3%)、アジア人881人(1.1%)、黒人641人(0.8%)、混合人種427人(0.5%)、白人7万5,852人(96.7%)、その他または特定不能629人(0.8%)。・7万8,430人中866人が認知症を発症した(フォローアップ期間中央値:6.9年[6.4~7.5年]、平均年齢:68.3±5.6歳、男性:480人[55.4%]、女性:386人[44.6%]、アジア人:5人[0.6%]、黒人:6人[0.7%]、混合人種:4人[0.4%]、白人:821人[97.6%]、その他:6人[0.7%])。・分析では、1日の歩数と認知症発症との間に非線形の関連が認められた。・最大のリスク低下が認められた歩数は9,826歩(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.39~0.62)であり、リスクの低下が認められた最小の歩数は3,826歩(HR:0.75、95%CI:0.67~0.83)で、リスク低下は最大のリスク低下の50%であった。・偶発的な歩数で最もリスク低下が認められたのは3,677歩(HR:0.58、95%CI:0.44~0.72)、同じく意図的な歩数では6,315歩(HR:0.43、95%CI:0.32~0.58)、ピーク30分間の歩数では1分当たり112歩(HR:0.38、95%CI:0.24~0.60)であった。

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悪化するその慢性頭痛、MOHの可能性は?【知って得する!?医療略語】第20回

第20回 悪化するその慢性頭痛、MOHの可能性は?薬が原因になる頭痛があると聞きました。鎮痛薬の過剰な使用による頭痛があり、MOHと呼ばれています。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】MOH【日本語】鎮痛薬使用過多による頭痛 (薬物乱用頭痛)【英字】medication-overuse headache【分野】脳神経【診療科】脳神経外科【関連】慢性片頭痛実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。外来で慢性片頭痛患者の求めに応じて鎮痛薬を処方していると、いつの間にか鎮痛薬の処方量や処方頻度が増えていることがあります。そのような時、薬剤の使用過多による頭痛(MOH:medical-overuse headache)の可能性を疑う必要があります。MOHは国際頭痛分類(ICHD)では、物質またはその離脱による頭痛として二次性頭痛に分類されます。同分類は第2版(ICHD-2)までは「薬物乱用頭痛」と訳されていました。しかし、「薬物乱用頭痛」は、まるで非合法な薬剤を乱用しているようなイメージが連想されるため、第3版(ICHD-3)からは「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」に翻訳が変更されています。MOHは片頭痛や緊張型頭痛で市販薬を含む鎮痛薬を過剰に服用することで生じる頭痛です。最初は月に数回程度の頭痛で鎮痛薬を服用していたものが、気付いたらほぼ連日にわたり頭痛薬を服用しているというものです。薬剤の使用過多は、薬の鎮痛効果の減弱を招き、さらに服用量が増えるという悪循環を招きます。MOHが生じるメカニズムは、痛みの調節系の異常だけではなく、薬物依存を形成する神経系と類似した機序の関与も推定されています。日本では市販の複合鎮痛薬によるMOHが主流を占める一方で、近年はトリプタン乱用頭痛の増加が指摘されています。ICHD-3によれば、MOHの診断基準は、慢性的な頭痛が月に15日以上存在し、1種類以上の治療薬を3ヵ月以上にわたり定期的に乱用し、ほかに最適なICHD-3の診断がないこと、となっています。MOHの治療原則は、使用過多になっている鎮痛薬の中止です。MOHが疑われる場合、患者さんにMOHの可能性を伝え、乱用している薬剤を中止し離脱を試みます。まずは患者さんにMOHについて説明し、使用過多の薬剤中止と予防薬を含めた代替薬の提案をします。MOH患者は、患者自身も薬が効かなくなっていることに薄々気付いていることも多く、中止に向けて努力してくれる方も少なくありません。しかし、筆者の経験上は多用していた鎮痛薬をスパッと止められないケースも多いのが現状です。軽い頭痛による鎮痛薬の使用を控え、「頭痛になるのでは…」という予期不安での薬剤使用を控えることから始めてもらう場合もあります。なお、うまく鎮痛薬の使用から離脱できても慢性頭痛が増悪する場合は、MOHは否定的となり、診断を考え直す必要があります。片頭痛に緩徐進行性(たとえば、肥厚性硬膜炎など)の二次性頭痛が併存する可能性も念頭に置く必要があると考えられ、必要に応じて画像のフォローも必要だと考えます。1)国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版:二次性頭痛2)五十嵐 久佳.神経治療. 2019;36:229-232.3)濱田 潤一. 臨床神経. 2011;51:1150-1152.

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人工甘味料の種類別、心血管疾患リスクとの関連は/BMJ

 人工甘味料の摂取量の増加に伴って心血管疾患のリスクが上昇し、なかでもアスパルテームは脳血管疾患、アセスルファムカリウムとスクラロースは冠動脈性心疾患のリスクと関連することが、フランス・ソルボンヌ パリ北大学のCharlotte Debras氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年9月7日号に掲載された。NutriNet-Sante研究のデータを用いた前向きコホート研究 研究グループは、あらゆる食事(飲料、卓上甘味料、乳製品など)由来の人工甘味料(全体、種類別[アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース])と、心血管疾患(全体、脳血管疾患、冠動脈性心疾患)の関連の評価を目的に、住民ベースの前向きコホート研究を行った。 解析には、ウェブベースのNutriNet-Sante研究(2009~21年)の参加者(10万3,388人、平均[±SD]年42.2±14.4歳、女性79.8%、追跡期間中央値9.0年[90万4,206人年])のデータが用いられた(NutriNet-Sante研究はフランス保健省などの支援を受けた)。 人工甘味料の消費量で、非消費(6万5,028人[62.90%])、低消費量(1万9,221人[18.59%])、高消費量(1万9,139人[18.51%])の3つの群に分けられた。低消費量と高消費量は、男女別の中央値(男性16.44mg/日、女性18.46mg/日)を基準に分類された。 主要アウトカムは、人工甘味料と心血管疾患リスクの関連とされ、多変量補正後Coxハザードモデルを用いて評価が行われた。砂糖に代わる健康的で安全な物質とはいえない 人工甘味料の総摂取量の増加に伴い、心血管疾患のリスクが有意に上昇した(イベント数1,502件、ハザード比[HR]:1.09、95%信頼区間[CI]:1.01~1.18、p=0.03)。心血管疾患の絶対罹患率は、10万人年当たり高消費量群が346件、非消費群は314件だった。 また、とくに人工甘味料の総摂取量は脳血管疾患リスクと強い関連を示した(イベント数777件、HR:1.18、95%CI:1.06~1.31、p=0.002)。脳血管疾患の罹患率は、10万人年当たり高消費量群が195件、非消費群は150件だった。 人工甘味料の種類別では、アスパルテームの摂取が脳血管疾患リスクの増加と関連し(HR:1.17、95%CI:1.03~1.33、p=0.02)、罹患率は10万人年当たり高消費量群が186件、非消費群は151件であった。 また、アセスルファムカリウム(HR:1.40、95%CI:1.06~1.84、p=0.02)とスクラロース(1.31、1.00~1.71、p=0.05)は冠動脈性心疾患(イベント数730件)のリスクの増加をもたらし、アセスルファムカリウムの罹患率は10万人年当たり高消費量群が167件、非消費群は164件で、スクラロースはそれぞれ271件および161件だった。 著者は、「これらの結果は、人工甘味料が心血管疾患の予防のための修正可能なリスク因子である可能性を示唆する。多くの食品や飲料に含まれ、多くの人びとが毎日消費しているこれらの食品添加物は、砂糖に代わる健康的で安全な物質と考えるべきではなく、これはいくつかの保健機関の現時点での見解と合致する」としている。

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第131回 感染症後の体調不良(sickness behavior)を誘発する脳神経を同定

感染症は病原体を直接の原因とはしない食欲低下、水分を摂らなくなる(無飲症)、倦怠感、痛み、寒気、体温変化などのとりとめのない種々の症状や生理反応を引き起こします。ともすると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状の一因かもしれないそういう体調不良(sickness behavior)に寄与する脳の神経がマウス実験で同定されました1)。よく知られているとおり人体は絶えずある種の均衡を保とうとし、体温、食欲、睡眠などを調節しています。われわれが日々健康に生きられるのも恒常性と呼ばれるその均衡のおかげです2)。しかし病気になってその均衡が崩れると上述したような一連の症状や生理的反応が生じます。sickness behaviorの少なくとも幾らかは脳幹に端を発することが先立つ研究で示唆されています3)。今は米国バージニア州のJanelia Research Campusに籍を置くAnoj Ilanges氏やその同僚はさらに突き詰めて脳幹のどこがsickness behaviorの発端なのかを同定することを目指しました。最初にIlanges氏らは細菌感染と同様にsickness behaviorを引き起こす細菌毒素・リポ多糖(LPS)をマウスに注射し、続いて脳のどこが活性化するかをFOSと呼ばれるタンパク質を頼りに探りました。FOSは神経発火の後で発現することが多く、神経活動の目安となります2)。そのFOSがLPS注射マウスの脳幹で隣り合う2つの領域・孤束核(NTS)と最後野(AP)に多く認められました。LPSに反応するとみられるそれら2領域を活性化したところLPSがなくともsickness behaviorが生じ、NTS- AP領域こそsickness behaviorに寄与する神経の在り処であることが確かになりました。さらなる研究によりそれら神経はタンパク質(神経ペプチド)ADCYAP1を発現していることも判明し、ADCYAP1発現神経を活性化するとNTS- AP領域の活性化の時と同様にLPSが誘発するsickness behaviorが再現されました。また、それらADCYAP1発現神経を阻害するとLPS投与後に見られる食欲低下、無飲症、運動低下を解消とはいかないまでも和らげることができました。sickness behaviorに寄与するのはNTS- AP領域の神経のみというわけではなさそうで、今回の報告と同様にNatureに掲載された別のチームの最近の研究では発熱、食欲低下、暖を取る行動などのsickness behavior症状に視床下部の神経が不可欠なことが示されています4)。今回の研究で対象外だった睡眠障害や筋痛などの他のsickness behaviorの出どころの検討も興味深いところです2)。NTS-AP領域は脳と各臓器の連絡路・迷走神経からの信号を直接受け取り、血中に放たれたタンパク質などの体液性信号を感知することが知られています。今回の研究ではsickness behaviorを引き起こすNTS-AP神経の反応がどの生理成分を頼りにしているのかはわからず仕舞いでした。ウイルスや非細菌感染症でもNTS-AP神経が果たして活性化するのかどうかも調べられていません。ロックフェラー大学在籍時に今回の研究を手掛けたIlanges氏は今の職場であるJanelia Research Campusで続きに取り組む予定であり、他の研究者の加勢も期待しています。Ilanges氏等の今回の結果は何らかの理由でsickness behaviorが解消しない患者の治療の開発に役立ちそうです。たとえば慢性的に不調の患者の食欲を回復させる薬が実現するかもしれません。また、広い意味では感染症への対抗に脳の役割が不可欠なことを示した今回の成果を契機にADYAP1発現神経活性化後の脳の反応、sickness behaviorの持続の調節の仕組み、COVID-19の罹患後症状などの感染後慢性症状へのNTS-AP経路の寄与の検討5)などのさまざまな研究が今後続いていくでしょう2)。参考1)Ilanges A, et al.Nature.2022;609:761-771.2)Research Pinpoints the Neurons Behind Feeling Ill / TheScientist3)Konsman JP, et al. Trends Neurosci.2002;25:154-9. 4)Osterhout JA, et al.Nature.2022;606:937-944.5)Infection Activates Specialized Neurons to Drive Sickness Behaviors / Genetic Engineering & Biotechnology News.

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夜間ブルーライトカット眼鏡による片頭痛予防効果

 片頭痛は有病率の高い一次性頭痛であり、現役世代で発症しやすいことから、生産性の低下による社会的損失につながることが問題視されている。国際頭痛分類第3版(ICHD-3、ベータ版)の診断基準では、片頭痛の発作時には過敏、とくに光過敏が認められ、光が頭痛の誘発因子であることが示唆されている。獨協医科大学の辰元 宗人氏らは、片頭痛発作の悪化につながる内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)への光刺激を減少させる夜間のブルーライトカット(Blue Cut for Night:BCN)眼鏡を開発し、その効果を検証した。その結果、ipRGCへの光刺激を減少するBCN眼鏡の使用は、片頭痛発作の軽減に有用である可能性が示唆された。Internal Medicine誌オンライン版2022年8月20日号の報告。 片頭痛患者10例を対象に、BCN眼鏡の使用を4週間実施した。BCN眼鏡の使用前後の頭痛日数とHeadache Impact Test-6(HIT-6)スコアを比較した。 主な結果は以下のとおり。・頭痛日数は、BCN眼鏡を使用する前の8.7±5.03日から、使用4週間後には7.0±4.37日へ減少する傾向が認められた。・副作用は認められなかった。

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理解されない患者の苦悩、新たなガイドライン、治療薬に期待

 2022年9月15日、アレクシオンファーマは「重症筋無力症ガイドライン改訂と適正使用に向けて」と題した重症筋無力症(以下、MG)の現状と新たなガイドラインに関するメディアセミナーを開催し、鈴木 重明氏(慶應義塾大学医学部神経内科 准教授)から「MGの現状」について、村井 弘之氏(国際医療福祉大学医学部 脳神経内科学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 脳神経内科 部長)から「2022年5月のMG診療ガイドラインの改訂ポイントとユルトミリス適応追加の意義」について、それぞれ講演が行われた。MGの現状と患者の負担 鈴木氏は講演で、MGの現状、症状、それに伴う患者負担などを解説した。MGは、日本全国で約30,000人の患者がいると推定される最も頻度の高い神経免疫疾患で、近年では、高齢発症の患者が増加傾向にある。患者の20%は眼症状のみの眼筋型、80%が全身型とされており、疲れやすいこと(易疲労性)と筋力低下などの症状に日内変動がみられることが本疾患の特徴とされている。MGの症状で最も代表的なのが眼瞼下垂である。これに加え、目の焦点が合わない(斜視)、物が二重に見える(複視)など目の症状は多く、最初に眼科を受診するケースも多いという。このほか、構音障害や嚥下障害、椅子から立ち上がれない、腕が上がらないなどの全身症状は、患者の日常生活をさまざまな角度から脅かし、呼吸が苦しいなどのケースでは、非常に重篤なクリーゼにつながることもある。これらの症状は、一定ではなく波があることが多い。朝は調子が良く、夜にかけて症状が悪くなる、活動によりすぐ疲れてしまうものの、休むと回復する、などである。症状の波が悪化に向かった場合、レスキュー治療が必要となってしまうことから、患者は次の症状増悪への不安や、先の予定の立てにくさなどに悩まされることになる。また、周囲から理解されない、就労が困難になる、限られた日常診療で気付かれない(症状がないように見えてしまい診断に至らない)など、患者は非常につらい状況に置かれていると鈴木氏は述べた。MG診療ガイドライン改訂のポイント 2022年5月、MG診療ガイドラインが改訂された(『重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022』)。今回の改訂では、(1)MGの新しい分類を示した、(2)MGの診断基準を改訂した、(3)漸増・漸減の高用量経口ステロイドは推奨しないと明記した、(4)難治性MGを定義した、(5)分子標的薬(補体阻害薬)を追加した、(6)LEMS(ランバート・イートン筋無力症候群)を初めて取り上げ診断基準を示した、(7)MGとLEMSの治療アルゴリズムを示した、の7つがポイントであると村井氏は言う。新しいMGの分類では、MGを眼筋型(OMG)と全身型(gMG)に分け、全身型をAChR抗体陽性の早期発症(g-EOMG)、後期発症(g-LOMG)、胸腺腫関連(g-TAMG)、AChR抗体陰性のMuSK抗体陽性(g-MuSKMG)、抗体陰性(g-SNMG)に分けることで全6つに分類された。また、新たな診断基準では、「支持的診断所見(血漿浄化療法によって改善を示した病歴がある)」が加わった。治療を行っていくうえでの基本的な考え方として、患者のQOLやメンタルヘルスを良好に保つことが重要視され、MM-5mg(経口プレドニゾロン5mg/日以下でminimal manifestationsレベル)の治療目標は踏襲、かつ完全寛解や早期MM-5mgに関連しないことから、漸増・漸減による高用量経口ステロイド療法は推奨されないと明記された。難治性MGについては、「複数の経口免疫治療薬による治療」あるいは「経口免疫治療薬と繰り返す非経口速効性治療を併用する治療」を一定期間行っても「十分な改善が得られない」あるいは「副作用や負担のため十分な治療の継続が困難である」場合と定義された。新たなMG診療ガイドラインと治療薬への期待 分子標的薬が加わったことで、治療戦略も変化した。現在では、胸腺摘除はあまり行われなくなり、ステロイドは初期から少量、免疫抑制薬の投与も初期から開始し、ステロイドを増量する代わりにEFT(早期速効性治療戦略)を繰り返していき、症状の波が抑えられない場合、分子標的薬を投与するといった治療の流れに変わってきた。今回の改訂版ガイドラインを参考にすることで、以前のようにステロイドを何十mgも使用することはなくなるだろうと、村井氏は強調した。 MGに対する新たな治療選択肢として加わったユルトミリスは、8週に1回の投与で症状の波を抑え、安定化が期待できることから、頻回な通院が大変な患者に対してとくに期待される薬剤である。村井氏は、今後MGに対してさまざまな分子標的薬が登場することが見込まれており、MG診療は新たなステージに入っている、だからこそMG患者を見逃さず、治療に結び付けていくことが重要だと訴え、講演を締めくくった。

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認知症の急性興奮症状を軽減する感覚に基づく介入

 認知症患者の興奮症状の発生を長期間にわたり軽減するための介入として、感覚に基づく介入(Sensory-based Intervention)が一般的に行われている。しかし、この介入の即効性に関するエビデンスは十分ではない。香港理工大学のDaphne Sze Ki Cheung氏らは、認知症患者の興奮症状軽減に対して使用されている感覚に基づく介入を特定し、これら介入の即時効果を調査した。その結果、認知症患者において興奮症状軽減に対する感覚に基づく介入の即時効果を検討した研究はかなり不足しているものの、音楽関連の介入における限られたエビデンスは有望である可能性が示唆された。Aging & Mental Health誌オンライン版2022年9月8日号の報告。 PRISMA ガイドラインに従い、システマティックレビューを実施した。Embase、Medline、PsycINFO、CINAHLより、2022年3月2日までに公表された研究を検索した。介入中または介入開始15分以内に測定した興奮症状の軽減効果を評価した。分析には、英語で公表されたランダム化比較試験または準実験的研究を含めた。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした研究は9件(ランダム化比較試験:2件、クロスオーバー試験:1件、準実験的研究:6件)であった。・すべての研究は西欧諸国で実施されており、対象者総数は246例であった。・音楽関連介入は、7件の研究で調査されており、副作用が発現することなく、興奮症状の軽減に効果的であることが示唆された。・すべての研究において、方法論的制限(単一群デザイン、盲検化、サンプルサイズの小ささ、正確性が不十分に報告された結果など)があった。・認知症患者の興奮症状に対する感覚に基づく介入効果を確認するためには、より厳密な研究が求められる。

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睡眠の質と片頭痛との関係

 睡眠状態と片頭痛は密接に関連しているといわれている。しかし、睡眠の質と片頭痛発症リスクとの関連をシステマティックに評価した研究はほとんどなく、性差や年齢差についてもよくわかっていない。中国・北京中医薬大学のShaojie Duan氏らは、睡眠の質と片頭痛発症リスクとの関連およびその性差や年齢差について調査を行った。また、睡眠の質と片頭痛患者の苦痛、重症度、身体障害、頭痛への影響、QOL、不安、抑うつ症状との関連も併せて調査した。その結果、睡眠の質の低下は、片頭痛発症リスクや片頭痛関連の苦痛と有意かつ独立して関連していることが明らかとなった。著者らは、睡眠の質の評価をより充実させることで、片頭痛患者の早期予防や治療に役立つであろうとまとめている。Frontiers in Neurology誌2022年8月26日号の報告。 対象は、片頭痛患者134例および年齢・性別がマッチした健康対照者70例。睡眠の質の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。睡眠の質と片頭痛発症リスク、頭痛関連の苦痛との関連を評価するため、ロジスティック回帰分析および線形回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛患者における睡眠の質の低下は、健康対照者と比較し有意に多くみられた(p<0.001)。・さまざまな交絡因子で調整した後でも、睡眠の質が低下している場合の片頭痛リスクは、睡眠の質が良好な場合の3.981倍であった。・サブグループ解析では、睡眠の質と片頭痛リスクの間に対し相加的に有意な影響を及ぼす因子として、性別、年齢、教育レベルが特定された(p for interaction<0.05)。また、女性、35歳以上の集団、教育レベルが低い場合において、より強い相関が認められた。・多変量線形回帰分析では、睡眠の質の低下が、片頭痛患者の苦痛、重症度、頭痛への影響、QOL、不安、抑うつ症状に有意かつ独立して関連していることが示唆された(p for trend<0.05)。

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成年後見制度の診断書を依頼されたら【コロナ時代の認知症診療】第19回

重度の認知症なのに、見逃されてしまいがちなケース認知症者をよくお世話している介護者にとって一番腹立つ台詞だとよく聞くものがある。「認知症だと聞いていたが、話してみたらおかしくない。これなら普通ではないか? どこがおかしいの?」といった発言である。認知症を専門としていない医師や、公証人ですらこのようなことをおっしゃることがある。そんな発言の理由は簡単である。認知症、とくにアルツハイマー型認知症の人では、まず見た目に愛想がよい。会話のうえではもっともらしくその場に合わせた態度をとる。また何か不都合な点が出ても上手に取り繕うことができる。さらに同伴の方などがいれば振り返って「そうでしょう、ねえあなた」という感じで振舞うこともできる。どれも教科書レベルで、アルツハイマー病型認知症者の対応上の特徴と記載されている。ところが多くの人は、認知症になると、暴言・暴力、徘徊・行方不明、便こねなどいわゆるBPSDが現れるものと思っている。だから穏やかな常識的対応に接すれば拍子抜けする。こうしたところから実際には重度の認知症なのに、認知症を知らない人からは、上のように言われてしまっても不思議ではない。成年後見制度の3つのランクとは?さて認知症を専門としていない医師でも、成年後見制度の診断書に記載を求められることが増えてきた。さらに鑑定書の作成が求められるケースもある。そこで前回は任意後見について紹介したが、今回は法定後見への対応の基本を述べてみたい。まず法定後見制度の利用は、認知症として事例性が明らかになってから出てくるのが普通である。たとえば、不必要で高額なものを契約した、通帳を繰り返しなくす、ATMが使えなくなった、明らかに財産管理ができなくなったなどである。前回も述べたように、こうした実態から経済的に判断能力がないため、財産管理や福祉サービスの契約が1人ではできないと考えられる人を裁判所が守ってくれるのが成年後見制度である。これには、補助、保佐、後見と3つのランクがある。まず難しいのは、こうしたランクは、MMSEや改訂長谷川式の点数から決められるのではないことである。つまり認知症の程度と経済的な判断力や意思能力が相関するわけではない。ではどのような区切りでもって3つを分けたらいいのだろうか。これに対する最高裁判所の公式文章1)では、補助支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することが難しい場合がある保佐支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない後見支援を受けても契約等の意味・内容をみずから理解し判断することができないとある。もっともこれでは具体的に見えてこない。よくよく探したら神戸家庭裁判所による具体的な記述2)があった。補助重要な財産行為(不動産・自動車の売り買いや自宅の増改築、金銭の貸し借り等)について、自分でできるかもしれないが、できるかどうか危惧がある保佐日常の買い物程度は単独でできるが、重要な財産行為(不動産・自動車の売り買いや自宅の増改築、金銭の貸し借り等)は自分ではできない後見日常的に必要な買い物も自分ではできず、誰かに代わってやってもらう必要があるとされる。主治医意見書作成のポイントさて診断書作成、ランク(3類型)決定で用いることができる診療録など手持ちの内部的資料と介護保険認定調査の結果など外部資料がある。今回は前者について説明する。手持ち資料の代表は、診療録である。また主治医意見書に加えてMMSEや改定長谷川式の成績、そして画像・血液検査データなどがある。診療録からは、ざっくりと3類型のどのレベルかの印象はつかめるかもしれない。とくに経済行為や契約に関わる出来事、たとえば不要な高額商品の契約や銀行でのトラブルなどにふれた記載には注意すべきだ。一方で、主治医意見書は大切である。とくに3.心身の状態に関する意見(1)日常生活の自立度等について、(2)認知症の中核症状、(3)認知症の行動・心理症状(BPSD)、これらがポイントとなる。MMSEや改訂長谷川式は簡易スクリーニング検査であって認知症の診断や重症度の評価をするものではない。しかしざっくりと重症度を知るのには有用である。それだけに1年に1度はこれらをやっておくと評価の定量的・縦断的な資料になり得る。なお画像検査などのデータは認知症の診断には役立っても3類型決定にはあまり有用でないだろう。本テーマに関連して、認知症の重症度をざっくりと判定するための、ある程度の信頼性を有する根拠について言及しておく。DSM5によれば、軽度 手段的日常生活動作の困難(例:家事、金銭管理)中等度基本的な日常生活動作の困難(例:食事、更衣)重度 完全依存とある。簡単であるだけにかえって評価が難しいと感じられるかもしれないが、質問したり観察したりすることは容易だろう。参考1)裁判所「成年後見制度における鑑定書・診断書作成の手引」2)神戸家庭裁判所「診断書(成年後見用)の作成を依頼された医師の方へ」

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認知症と肥満・糖尿病

 米国では、肥満、糖尿病、認知症などの慢性疾患が増加している。これら慢性疾患の予防や適切なマネジメント戦術に関する知見は、疾患予防のうえで重大かつ緊要である。米国・テキサス工科大学のAshley Selman氏らは、認知症と肥満および糖尿病との関連についての理解を深めるため、それぞれの役割を解説し、新たな治療法についての情報を紹介した。International Journal of Molecular Sciences誌2022年8月17日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・肥満、糖尿病、認知症の相互関係は、さらに解明されつつある。・肥満、糖尿病、認知症の発症に関連する炎症状態の一因として、加齢、性別、遺伝的要因、後天的要因、うつ病、高脂質の西洋型食生活が挙げられる。・この炎症状態は、食物摂取の調節不全およびインスリン抵抗性につながる可能性がある。・肥満は糖尿病発症につながる基礎疾患であり、後に、2型糖尿病(type 2 diabetes mellitus:T2DM)の場合には“3型(type 3 diabetes mellitus:T3DM)”すなわちアルツハイマー病へ進行する可能性がある。・肥満とうつ病は、糖尿病と密接に関連している。・認知症の発症は、ライフスタイルの改善、植物性食品ベースの食事(地中海式食事など)への変更、身体活動の増加により予防可能である。・予防のために利用可能ないくつかの外科的および薬理学的介入がある。・新たな治療法には、メラノコルチン4受容体(MC4R)アゴニストsetmelanotideやPdia4阻害薬が含まれる。・これらの各分野における現在および今後の研究は保証されており、新たな治療選択肢やそれぞれの病因に関する理解を深めることが重要である。

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日本人高齢者における片頭痛有病率~糸魚川翡翠研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、日本人高齢者の頭痛、片頭痛、慢性連日性頭痛、痛み止めの使い過ぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)の有病率を調査するためアンケート調査を実施し、3ヵ月間の頭痛の有病率とその特徴を明らかにしようと試みた。結果を踏まえ著者らは、日本人高齢者の頭痛有病率は諸外国と比較し、決して高いものではないが、片頭痛による社会経済的損失は重大であり、疾患の理解、適切な治療や予防などが重要であると報告している。また、高齢者は、さまざまな併存疾患に関連する重度な頭痛といった特徴を持つ可能性が示唆された。Journal of Clinical Medicine誌2022年8月11日号掲載の報告。 2019年、3回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の待機時間を利用し、新潟県・糸魚川市の糸魚川総合病院と能生国民健康保険診療所で、65歳以上の高齢者を対象にアンケート調査を実施した。片頭痛および薬物乱用頭痛の定義には、国際頭痛分類第3版を用いた。慢性連日性頭痛は、1ヵ月に15日以上の頭痛発生と定義した。K-means++法を用いて、クラスタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・有効回答者2,858例における有病率は、頭痛11.97%、片頭痛0.91%、慢性連日性頭痛1.57%、薬物乱用頭痛0.70%であった。・鎮痛薬の併用や非オピオイド鎮痛薬の使用頻度が高かった。・予防薬を使用していた片頭痛患者は1例のみであった。・K-means++法を用いて薬物乱用頭痛患者332例を4つのクラスターに分類したところ、各クラスターの頭痛に下記の特徴が認められた。 ●クラスター1:緊張型頭痛様 ●クラスター2:薬物乱用頭痛様 ●クラスター3:脳卒中・脂質異常症・うつ病などを既往に持つ重症な頭痛 ●クラスター4:光恐怖症や音恐怖症を持つ片頭痛様

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認知症の興奮症状に対するモンテッソーリケアの有効性~メタ解析

 子供の主体性や尊厳を尊重する幼児教育理論であるモンテッソーリ教育を、高齢者や認知症介護に取り入れたモンテッソーリケアは、西欧諸国において興奮症状の治療に有用な非薬理学的介入であることが報告されている。しかし、アジア人を対象とした研究のほとんどはサンプルサイズが小さく一貫性が認められていないため、その結果の信頼性は制限されている。中国・The Third Hospital of QuzhouのLingyan Xu氏らは、アジア人認知症患者における認知症関連興奮症状に対するモンテッソーリケアの有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、アジア人認知症患者に対するモンテッソーリケアは、標準ケアと比較し、とくに身体的攻撃性による興奮症状を減少させる可能性が示唆された。しかし著者らは、本研究では、身体的非攻撃行動や言葉による攻撃行動に対する有効性が認められなかったことから、身体的攻撃性に対する効果の信頼性についても、今後のさらなる検討が求められるとしている。Medicine誌2022年8月12日号の報告。 プロスペクティブランダム化臨床研究(RCT)より、利用可能なデータを抽出した。身体的攻撃行動、身体的非攻撃行動、言葉による攻撃行動のアウトカムをプールした。データソースは、Medline、Embase、Cochrane Library、China National Knowledge Infrastructure(CNKI)、WanFang、China Science and Technology Journal Database(VIP)。適格基準は、アジア人認知症患者における認知症関連興奮症状に対するモンテッソーリケアの有効性を評価するため実施されたプロスペクティブRCTとした。独立した2人の研究者が、該当文献より利用可能なデータ(ベースライン特性およびアウトカム)を抽出した。モンテッソーリケアと標準ケアの有効性を比較するため、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)およびNurses’ Observation Scale for Inpatient Evaluation(NOSIE)を含む測定尺度を用いた。加重平均差を用いたプール分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、合計460例が含まれた。・モンテッソーリケアによる興奮症状のプールされた平均差は、標準ケアと比較し、-3.86(95%CI:-7.38~-0.34、p=0.03)であった。・モンテッソーリケアによる各症状のプールされた平均差は、以下のとおりであった。 ●身体的攻撃行動:-0.82(95%CI:-1.10~-0.55、p<0.00001) ●身体的非攻撃行動:-0.81(95%CI:-1.68~0.55、p=0.07) ●言葉による攻撃行動:0.38(95%CI:-0.92~1.68、p=0.57)

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第128回 承認済のホルモン薬でダウン症候群患者の認知機能が改善

新生児800人当たり1人に生じるダウン症候群は21番染色体が1つ余分になることを原因とします。ダウン症候群の不調はさまざまで、若くしてのアルツハイマー病様病態に起因する認知機能低下、性成熟前の嗅覚障害、生殖困難などをもたらします。高齢の女性ほどダウン症候群の子を出産することが多く、たとえば45歳の女性の30に1つの妊娠でダウン症候群が生じます。出生前診断を機会にダウン症候群の妊娠を断つことを選べますが、米国の多くの州では中絶の方針を最近変えており、もう間もなく何百万人もの女性がその選択が不可能になります。高齢出産も増えていることから、今後ダウン症候群で生まれてくる子が増えることは間違いないようです。より多くのダウン症候群患者が自立生活を営めるように学習や意思疎通を改善する治療薬の検討が試みられてきましたがまだ成功していません。マウスでは有望な結果が得られた薬は数多くあれども、臨床試験で認知機能を改善することが示されたことはこれまでありませんでした。しかしとうとう小規模ながらある薬が臨床試験で効果を発揮しました。それは不妊治療に広く使われているホルモン・ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)です。視床下部の神経から間欠的に放出されるGnRHは哺乳類の生殖制御の元締めの役割を担います。生涯に渡ってGnRHは下垂体に放出されて黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの放出を促し、それらが男性の精巣や女性の卵巣に作用します。下垂体ではなく学習や記憶に必要な海馬や大脳皮質に伸びるGnRH生成神経もあることが知られていますが、その生理的な役割はこれまでよくわかっていませんでした。臨床試験を実施した研究チームはまずはマウスの実験で海馬や大脳皮質に伸びるそれらGnRH生成神経の働きを調べました1)。その結果、ダウン症候群を模すマウスはGnRH発現に難があり、小さなポンプでGnRHを間欠的に投与するか海馬や皮質などの認知中枢に伸びるGnRH生成神経の機能を回復させたところ物体認識記憶や嗅覚が回復しました。アルツハイマー病もGnRH神経機能障害を特徴の一つとします。果たして間欠的なGnRH投与はアルツハイマー病を模すマウスの認知機能も改善しました。マウスに投与されたGnRHはヒトにすでに広く使われている薬剤Lutrelefです。日本では性腺機能低下症の治療薬(商品名:ヒポクライン)として販売されています。20~50歳の男性のダウン症候群患者7人を募って実施された下調べの臨床試験でもLutrelefが投与されました。マウス実験のときと同様に被験者には小さなポンプが皮下に植え込まれ2)、そのポンプから2時間ごとにLutrelefが投与されました。6ヵ月後、嗅覚は改善しなかったものの1人を除く6人の認知機能が改善し、作業記憶(ワーキングメモリー)、注意、言語の理解が向上しました。また、MRI造影で脳を調べたところ海馬や皮質などの認知に携わる脳領域の神経連結が増えていました。その下調べ試験結果を受けてLutrelefの開発はすでに次の段階に進んでおり、ダウン症候群の男女32人を募るプラセボ対照試験が進行中です3)。今回発表された試験での認知機能改善は僅かですが、親に様子を尋ねたところ変化が実感されています3)。たとえばある親は電話で息子と話しやすくなったと報告しています。街で目当ての場所を目指すなどの日常生活を助けうる物覚えや注意持続が改善したとの報告もありました。研究者が目指すのはダウン症候群患者が日々を暮らしやすくなるようになることです。GnRHの可能性は広く、アルツハイマー病などの神経変性疾患への効果を調べる臨床試験も必要と研究者は示唆しています4)。参考1)Manfredi-Lozano M,et al. Science. 2022 Sep 2;377:eabq4515.2)Boosting cognition with a hormone / Science3)Restoring a key hormone could help people with Down syndrome / Science4)A therapy found to improve cognitive function in patients with Down syndrome / Eurekalert

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再発性多発性硬化症の再発率をublituximabが低減/NEJM

 再発性多発性硬化症の治療において、抗CD20モノクローナル抗体ublituximabはピリミジン合成阻害薬teriflunomideと比較して、96週の期間における年間再発率を低下させ、MRI上の脳病変を減少させる一方で、障害の悪化リスクを抑制せず、インフュージョンリアクションを増加させることが、米国・スタンフォード大学のLawrence Steinman氏らが実施した「ULTIMATE I/II試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年8月25日号で報告された。10ヵ国の無作為化実薬対照第III相試験 ULTIMATE I/II試験は、再発性多発性硬化症患者におけるublituximabの有効性と安全性を、teriflunomideとの比較において評価することを目的とする、同一デザインの2つの二重盲検ダブルダミー無作為化実薬対照第III相試験であり、2017年9月~2018年10月の期間に、10ヵ国の104の施設で参加者の登録が行われた(米国・TG Therapeuticsの助成による)。 対象は、年齢18~55歳、再発性多発性硬化症(McDonald診断基準[2010年改訂版]を満たす)と診断され、過去2年間に少なくとも2回の再発がみられるか、スクリーニングの前年に1回の再発またはMRI検査で少なくとも1つのガドリニウム増強病変(あるいはこれら双方)が認められ、脳MRIで多発性硬化症に一致する異常所見が確認された患者であった。 被験者は、ublituximabの静脈内投与(1日目に150mg、それ以降は15日、24週、48週、72週目に450mg)とプラセボの経口投与を受ける群、またはteriflunomideの経口投与(14mg、1日1回、95週目の最終日まで)とプラセボの静脈内投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは多発性硬化症の年率換算の再発率とされ、1人年当たりの確定再発数と定義された。階層的に順序付けされた6項目の副次エンドポイントが設定された。約半数でインフュージョンリアクションが発現 ULTIMATE I試験に549例(ublituximab群274例、teriflunomide群275例)、ULTIMATE II試験に545例(272例、273例)が登録された。modified intention-to-treat集団における4つの群の平均年齢の幅は34.5~37.0歳で、女性の割合の幅は61.3~65.4%であった。追跡期間中央値は95週だった。 年間再発率は、ULTIMATE I試験ではublituximab群が0.08、teriflunomide群は0.19(率比:0.41、95%信頼区間[CI]:0.27~0.62、p<0.001)、ULTIMATE II試験ではそれぞれ0.09および0.18(0.51、0.33~0.78、p=0.002)であり、両試験ともublituximab群で有意に低かった。 ガドリニウム増強病変数の平均値は、ULTIMATE I試験ではublituximab群が0.02、teriflunomide群は0.49(率比:0.03、95%CI:0.02~0.06、p<0.001)、ULTIMATE II試験ではそれぞれ0.01および0.25(0.04、0.02~0.06、p<0.001)であり、いずれの試験でもublituximab群で有意に少なかった。 2つの試験の統合解析では、12週の時点での障害の悪化の割合は、ublituximab群が5.2%、teriflunomide群は5.9%(ハザード比[HR]:0.84、95%CI:0.50~1.41、p=0.51)、24週時はそれぞれ3.3%および4.8%(0.66、0.36~1.21)であり、いずれも両群間に有意な差は認められなかった。 有害事象の統合解析では、ublituximab群の89.2%、teriflunomide群の91.4%で少なくとも1件の有害事象が発現し、Grade3以上の有害事象はそれぞれ21.3%および14.1%で認められた。 最も頻度の高い有害事象は、ublituximab群がインフュージョンリアクション(47.7%)で、次いで頭痛(34.3%)、鼻咽頭炎(18.3%)、発熱(13.9%)、悪心(10.6%)の順であり、teriflunomide群は頭痛(26.6%)、鼻咽頭炎(17.9%)、脱毛(15.3%)、インフュージョンリアクション(12.2%)、下痢(10.6%)の順であった。重篤な有害事象はそれぞれ10.8%および7.3%で、重篤な感染症は5.0%および2.9%で発現し、いずれもublituximab群で多かった。 著者は、「2つの試験とも、teriflunomideの先行研究に比べ障害の悪化の割合が低かったが、これは両試験の2つの群とも年率に換算した再発率が低かったため、再発に伴う障害の悪化の割合が低くなったことが原因の可能性がある」と指摘し、「既存の抗CD20モノクローナル抗体などの疾患修飾薬による治療との比較を含め、再発性多発性硬化症におけるublituximabの有効性と安全性を明らかにするために、より大規模で長期の試験が求められる」としている。

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超加工食品の摂取と認知症リスク

 超加工食品の摂取が、うつ病、心血管疾患、すべての原因による死亡といった健康への悪影響と関連することを示唆するエビデンスが増加している。しかし、超加工食品が認知症と関連しているかは、よくわかっていない。中国・天津医科大学のHuiping Li氏らは、UK Biobankのデータを用いて、超加工食品と認知症発症との関連を調査した。その結果、超加工食品の摂取量が多いほど認知症リスクが上昇し、超加工食品の一部を未加工食品または最小限の加工食品に置き換えることで、認知症リスクが低下することを報告した。Neurology誌オンライン版2022年7月27日号の報告。 ベースライン時に認知症でない55歳以上の参加者7万2,083人を対象に、2回以上の24時間食事評価を行い、2021年3月までフォローアップした。超加工食品の定義は、NOVA分類に従った。アルツハイマー病および血管性認知症を含むすべての原因による認知症は、病院と死亡の電子記録を連携させることにより確認した。食事の超加工食品の割合とその後の認知症リスクとの関連を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。超加工食品を同等の割合で未加工食品または最小限の加工食品に置き換えた場合の認知症リスクを推定するため、代替分析法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間(71万7,333人年、中央値:10.0年)に認知症を発症した参加者は518例であり、そのうちアルツハイマー病は287例、血管性認知症は119例で認められた。・完全調整モデルでは、超加工食品の摂取と認知症リスクとの関連が認められた。 ●すべての原因による認知症(超加工食品の摂取量が10%増加した場合のハザード比[HR]:1.25、95%信頼区間[CI]:1.14~1.37) ●アルツハイマー病(HR:1.14、95%CI:1.00~1.30) ●血管性認知症(HR:1.28、95%CI:1.06~1.55)・食事の超加工食品の10%に当たる量を未加工食品または最小限の加工食品に置き換えた場合、認知症リスクが19%低下すると推定された(HR:0.81、95%CI:0.74~0.89)。

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糖尿病性神経障害性疼痛、併用薬による効果の違いは?/Lancet

 糖尿病性末梢神経障害性疼痛(DPNP)に対する鎮痛効果は、アミトリプチリン+プレガバリン、プレガバリン+アミトリプチリン、デュロキセチン+プレガバリンで同等であり、単剤療法で効果不十分な場合に必要に応じて併用療法を行うことで、良好な忍容性と優れた鎮痛効果が得られることが、英国・シェフィールド大学のSolomon Tesfaye氏らが英国の13施設で実施した多施設共同無作為化二重盲検クロスオーバー試験「OPTION-DM試験」の結果、示された。DPNPに対しては、多くのガイドラインで初期治療としてアミトリプチリン、デュロキセチン、プレガバリン、ガバペンチンが推奨されているが、最適な薬剤あるいは併用すべきかについての比較検討はほとんど行われていなかった。OPTION-DM試験は、DPNP患者を対象とした過去最大かつ最長の直接比較のクロスオーバー試験であった。Lancet誌2022年8月27日号掲載の報告。DPNP患者140例を対象に、DN4の7日間平均疼痛スコアを評価 OPTION-DM試験の対象は、改訂トロント臨床神経障害スコア(mTCNS)が5以上の遠位対称性多発神経障害、および神経障害性疼痛4項目質問票(DN4)で7日間の1日平均疼痛(NRS)スコア(範囲0~10)が4以上の神経障害性疼痛を3ヵ月以上有する18歳以上のDPNP患者である。施設で層別化したブロックサイズ6または12の置換ブロック法を用い、アミトリプチリン+プレガバリン(A-P)、プレガバリン+アミトリプチリン(P-A)、デュロキセチン+プレガバリン(D-P)の3つの治療法を各16週間、次の順序で投与する6通りの投与群に、1対1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。A-P→D-P→P-A、A-P→P-A→D-P、D-P→A-P→P-A、D-P→P-A→A-P、P-A→D-P→A-P、P-A→A-P→D-P。 3つの治療法はいずれも、第1治療期6週間、第2治療期10週間から成り、第1治療期は単剤療法(A-PではA、D-PではD、P-AではP)を行い、6週後に7日間平均NRSスコアが3未満の奏効例は第2治療期も単剤療法を継続し、非奏効例では第2治療期に併用療法を行った。各治療期は最初の2週間を用量漸増期として、アミトリプチリン25mg/日、デュロキセチン30mg/日、プレガバリン150mg/日から投与を開始し、1日最大耐量(アミトリプチリン75mg/日、デュロキセチン120mg/日、プレガバリン600mg/日)に向けて用量を漸増した。 主要評価項目は、各治療法の最終週(16週時)に測定された7日間平均NRSスコアの治療群間差であった。 2017年11月14日~2019年7月29日に252例がスクリーニングされ、140例が6通りの治療順に無作為に割り付けられた。3つの治療法(A-P、P-A、D-P)で有効性に差はなし 無作為化された140例中、130例がいずれかの治療法を開始し(84例が少なくとも2つの治療法を完遂)、主要評価項目の解析対象となった。 16週時の7日間平均NRSスコア(平均±SD)はいずれも治療法も3.3±1.8であり、ベースライン(130例全体で6.6±1.5)から減少した。各治療法の平均差は、D-P vs.A-Pで-0.1(98.3%信頼区間[CI]:-0.5~0.3)、P-A vs.A-Pで-0.1(-0.5~0.3)、P-A vs.D-Pで0.0(-0.4~0.4)で、有意差は認められなかった。併用療法を受けた患者では、平均NRSスコアの減少が単剤療法を継続した患者より大きかった(1.0±1.3 vs.0.2±1.5)。 有害事象は、3つの治療法を比較すると(A-P vs.D-P vs.P-A)、P-Aではめまい(12% vs.16% vs.24%、p=0.036)、D-Pでは悪心(5% vs.23% vs.7%、p=0.0011)、A-Pでは口渇(32% vs.8% vs.17%、p=0.0003)の発現率が有意に高かった。

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