高齢者の認知症発症率、人種や民族で異なる/JAMA

55歳以上の約187万人を平均約10年間追跡したところ、認知症発症率は人種/民族によって有意に異なることが認められた。米国・カリフォルニア大学のErica Kornblith氏らが、米国退役軍人保健局(VHA)医療センターで治療を受けた患者を対象とした後ろ向きコホート研究の結果を報告した。米国では、VHAで治療を受ける患者を含めて人種/民族の多様化が進んでおり、公衆衛生上の重要な課題である認知症は人種/民族的マイノリティの高齢者で発症率が高くなる可能性が示唆されていた。著者は、「人種/民族による差異の原因機序を理解するためには、さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA誌2022年4月19日号掲載の報告。
55歳以上の約187万人について人種/民族と認知症発症との関連性を検討
研究グループは、1999年10月1日から2019年9月30日(最終追跡調査日)までにVHA医療センターで治療を受けた55歳以上の成人患者計949万9,811例から、各年度5%を無作為抽出(重複者は除外)し、無作為抽出日(ベースライン)前2年間ならびに追跡期間にそれぞれ1回以上の診察を受けた適格患者186万9,090例について解析した。National Patient Care Databasesから人口統計学的情報と認知症診断、Vital Status File Databasesから死亡に関する情報を入手し、居住地の郵便番号から米国疾病予防管理センター(CDC)による地域区分を特定した。人種/民族は、アメリカ先住民/アラスカ先住民、アジア人、黒人、ヒスパニック系、および白人の5つに分類した。ベースライン期間に認知症が認められた人、性別のデータが欠損している人、人種/民族が“その他”または不明の人は解析から除外した。
主要評価項目は、認知症の診断(ICD-9または10)。年齢を時間軸とし、死亡の競合リスクを考慮したFine-Gray比例ハザードモデルを用い、人種/民族と認知症診断までの時間との関連を検討した。
平均約10年間追跡、人種/民族間で有意差あり、黒人とヒスパニック系で高い
解析対象186万9,090例の患者背景は平均(±SD)年齢69.4±7.9歳、女性4万2,870例(2%)、アメリカ先住民/アラスカ先住民6,865例(0.4%)、アジア人9,391例(0.5%)、黒人17万6,795例(9.5%)、ヒスパニック系2万663例(1.0%)、白人165万5,376例(88.6%)であった。平均追跡調査期間10.1年において、24万3,272例(13%)が認知症を発症した。年齢調整後の認知症発症率(1,000人年当たり)は、アメリカ先住民/アラスカ先住民14.2(95%信頼区間[CI]:13.3~15.1)、アジア人12.4例(11.7~13.1)、黒人19.4例(19.2~19.6)、ヒスパニック系20.7例(20.1~21.3)、白人11.5例(11.4~11.6)であった。
白人に対する完全補正後ハザード比は、アメリカ先住民/アラスカ先住民1.05(95%CI:0.98~1.13)、アジア人1.20(1.13~1.28)、黒人1.54(1.51~1.57)、ヒスパニック系1.92(1.82~2.02)であった。米国のほとんどの地域で、年齢補正後認知症発症率は黒人およびヒスパニック系で高く、アメリカ先住民/アラスカ先住民、アジア人および白人は類似していた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
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人種差別と認知症(解説:岡村毅氏)
コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏
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