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アルツハイマー病(AD)では広範な代謝異常が観察されるものの、どの代謝経路が病態進行を直接駆動しているのか、その分子メカニズムは十分に解明されていない。米国・フロリダ大学のTara R. Hawkinson氏らの研究グループは、ヒト死後脳およびADマウスを用いた解析から、脳内における過剰糖鎖付加(ハイパーグリコシル化)が病態進行の直接的な駆動因子(ドライバー)であることを突き止めた。さらに、電子カルテデータベースの解析から、関節の健康のためのサプリメントとして広く普及するグルコサミンの使用が、ADの進行加速や死亡リスク上昇に関連している可能性が示唆された。Nature Metabolism誌オンライン版2026年6月9日号に掲載。 本研究では、ヒトAD死後脳サンプルの解析およびADマウスモデルを用いた糖鎖代謝の追跡実験を行った。また、糖鎖生合成経路の阻害による影響を評価した。臨床データの検証としては、電子カルテデータベースから抽出したAD関連認知症患者2万4,481例(うちグルコサミン使用者1,896例)および軽度認知障害(MCI)患者4万1,884例(同2,750例)を対象に、追跡期間中央値1,835日における生存率やAD関連認知症への移行率を後ろ向きに解析した。 主な結果は以下のとおり。・ヒトAD患者の脳内(とくに灰白質)では、病期(Braakステージ)の進行に伴ってN-結合型糖鎖が有意に蓄積していた。・ADマウスにおいて、糖鎖生合成の阻害は社会的記憶を有意に改善させた一方で、グルコサミンの投与は脳内の糖鎖蓄積を加速させ、記憶障害を著しく悪化させた。なお、健康な野生型マウスではこの悪化は認められなかった。・電子カルテ解析の結果、グルコサミンを1年以上使用したAD関連認知症患者では、非使用者と比較して全死因死亡リスクが25%有意に上昇した(p=0.0023)。・MCI患者において、グルコサミン使用者ではAD関連認知症への移行率(疾患進行リスク)が25%有意に上昇した(p<0.001)。 著者らは、脳内の過剰糖鎖付加がADの病態を進行させる能動的なリスク因子であると指摘している。糖鎖生合成経路が新たな治療ターゲットとなる可能性を示唆する一方で、認知症リスクを抱える患者がグルコサミン使用によって病態を悪化させる潜在的リスクが懸念され、今後は厳密な臨床試験による検証が必要であると結論付けている。