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ASCO2020レポート 消化器がん(胆膵がん)

レポーター紹介2020年のASCOは、2020年5月29日からWebで開催された。これは、COVID-19の影響で、Virtual meetingとなったためである。Virtual meetingとは、Oral presentation、Poster discussion、Poster presentationもすべてASCOのWeb site上にスライドがUploadされ、発表者が発表内容を録音しているものを聞くだけで、相互のDiscussionがあるわけではない。Oral presentationとPoster discussionにはDiscussantが付いていて、それぞれの演題にコメントをしているが、質疑応答があるわけでもなく、ちょっと物寂しい感じが否めなかった。私も気合を入れて、現地時間の朝8時(日本時間の5月30日の夜中12時)からの開催に胸を弾ませスタンバっていたが、その前からスライドは閲覧可能であり、先んじて見ることができた。むしろ夜中12時からはアクセスが集中し過ぎて、ASCOのサイトに入れない状況であり、なんだか肩透かしを食らった感じであった。今年のASCOのテーマは「Unite & Conquer: Accelerating progress together」で、「皆で団結して、がんを征服しよう:共に進歩を加速させよう」ということで、がん研究を一緒に分かち合い、国際的な共同研究を行い、がんの克服を目指して、協力していこうという、会長の意思がよくわかる学会である。そして、本学会の会長はHoward A. Burris III先生であり、膵がんを担当している先生なら知らない人はいないはず。そうです、1997年にゲムシタビンと5FUの比較試験の報告をした先生であり、とうとう会長にまで登り詰めたんだと、非常に感慨深いものがあった。さて、今年の胆膵領域では、Oral presentationで膵がんが2演題、Poster discussionで膵がんが2演題、胆道がんが1演題、胆膵がんその他が1演題、取り上げられていた。Poster発表では、膵がんが28演題、胆道がんは14演題、神経内分泌腫瘍は8演題などであった。やはり膵がんは全世界的にも患者は増加傾向であり、治療成績も十分ではないため、喫緊の課題である。このことを反映してか演題数も多かった。とくに、Trial in progressの発表は膵がんが14演題と圧倒的に多く、次いで胆道がんが5演題、神経内分泌腫瘍が1演題であった。やはり、今後の開発は膵がんが圧倒的に注目されていることを表す結果だと思われた。膵がんmFOLFIRINOX療法とゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法による周術期化学療法の比較試験(SWOG S1505) 1)膵がんの周術期の治療は、日本ではPrep02/JSAP05試験により、ゲムシタビン(Gem)+S-1併用療法による術前補助化学療法と、S-1による術後補助化学療法が標準治療となったが、世界的には術前化学療法は標準治療としては確立していない。しかし、術前補助化学療法は、早期から遠隔転移を抑制することができ、化学療法を効率よく行うことができ、切除を行ってもすぐに再発するような予後不良な患者を除外することができ、真に切除が必要な患者を選択できるため、臨床試験としてさまざまな取り組みが世界中で試みられている。本試験は、術前術後の補助化学療法として、modified FOLFIRINOX(mFFX)とGem+ナブパクリタキセル(Gem+nab-PTX)を比較したランダム化第II相試験(SWOG S1505)であった。主な適格規準は、膵がんに対する治療歴がない切除可能膵がん患者である。mFFX(フルオロウラシル 2,400mg/m2、オキサリプラチン 85mg/m2、イリノテカン 180mg/m2、2週ごと)とGem+nab-PTX(Gem 1,000mg/m2、ナブパクリタキセル 125mg/m2、3投1休)に1対1の割合で割り付けられた。術前化学療法を12週行った後に画像評価し、切除可能と判断された場合は切除を行い、さらに術後に術前と同じレジメンの化学療法を12週間行った。主要評価項目は2年生存割合として、閾値を40%とし、検出力88%、片側αを0.05として、期待値58%を超えた治療を有望な治療と判断することとした。2015年10月から登録を開始し、2018年4月に147例の集積が完了し、最終的に102例の適格症例が登録された。mFFX群に55例、Gem+nab-PTX群に47例が割り付けられた。2年生存割合はmFFX群が43.1%、Gem+nab-PTX群が46.9%であり、両群とも閾値の40%を統計学的有意に超えることができなかった。全生存期間(中央値)は22.4ヵ月および23.6ヵ月であった。外科切除を行った患者のうち、R0切除割合は両群ともに85%であり、N0で切除できた症例はそれぞれ40%および45%であった。病理学的奏効割合はmFFX群が25%に対して、Gem+nab-PTX群が42%と若干良好であり、その分、術後の無病生存期間もmFFX群10.9ヵ月に対して、Gem+nab-PTX群14.2ヵ月と良好であった。有害事象は両群ともに同様であり、忍容可能と考えられた。コメント本試験の結果、両群ともに期待値に到達せず、“no winner(勝者はなし)”という結果になった。病理学的奏効割合はGem+nab-PTX群が40%と、mFFXの25%よりも良好であった。術後補助療法では有意な結果を示せなかったGem+nab-PTXであるが、術前補助療法としての有用性はまだ期待できる可能性が示された。本試験では、術前化学療法の有効性を示すことはできなかったが、現在、mFFXの術後治療6ヵ月と術前4ヵ月+術後2ヵ月を比較したAlliance 021806試験が進行中であり、その結果が待たれるところである。切除境界可能膵がんに対するImmediate surgeryとゲムシタビン+カペシタビン、mFFX、化学放射線療法の術前治療のランダム化第II相試験 2)切除境界可能膵がん(BR膵がん)に対するImmediate surgery(術前治療を行わない群)とゲムシタビン+カペシタビン(Gem+Cape)、mFFX、化学放射線療法の4群を比較し、どの術前治療が有効かを明らかにするランダム化第II相試験であった。主要評価項目は、R1+R0切除割合と症例集積割合で、副次評価項目は、R0切除割合、有害事象と全生存期間であった。主要評価項目のR1+R0切除割合は、Immediate surgery群で62%、術前治療群(Gem+Cape、mFFX、化学放射線療法をあわせた群)で55%であり、有意差は認めなかった(p=0.668)。また、R0切除割合もImmediate surgery群で15%、術前治療群で23%であり、有意差は認めなかった(p=0.721)。症例集積割合は、1年当たり20.74例であり、症例集積にはかなりの時間を要することが示された。12ヵ月生存割合は、Immediate surgery群で42%、術前治療群で77%であり、有意に良好であった(ハザード比:0.28、95%信頼区間[CI]:0.14~0.57、p<0.001)。また、術前治療別の12ヵ月生存割合は、Gem+Capeが79%、mFFXが84%、化学放射線療法が64%であり、mFFXが最も良好であった。Immediate surgery群と術前治療群で、切除率に差は認めなかったが、12ヵ月生存割合は術前治療で有意に良好であり、なかでもmFFXが最も良好な治療成績であった。BR膵がんに対しては、術前治療を行うことを考慮すべきであり、レジメンとしてはmFFXが良好な可能性が示された。コメント著者らは術前治療推しの結語にしているが、実際には主要評価項目は達成しておらず、副次評価項目である生存期間が良好であったのが、術前治療であったため、BR膵がんに対しては術前治療を行うことを考慮すべきと結論付けている。少しずるい感じは否めないが、BR膵がんに対するUpfront surgeryと術前化学放射線療法を比較したランダム化比較試験の結果も術前治療群で有意に良好な結果が報告されているため、その結果に引っ張られる形での結語になっている。世の中の流れ的にも、BR膵がんは術前治療ありきだし、レジメンとしても最強なレジメンであるmFFXを考慮することは十分考えられうることであり、この結語に対する皆の受け入れは良いと思われる。ESPAC-4:術後補助化学療法Gem+Cape vs.Gemの第III相試験の5年後の経過観察 3)術後補助化学療法の第III相試験(ESPAC-4)において、Gem+Cape群は、Gem群と比べて有意に良好な生存期間が示され、標準的な術後補助化学療法として確立している。今回は、ESPAC-4試験の5年の長期経過観察後の結果の発表であった。Gem群366例、Gem+Cape群364例が解析対象であり、生存期間(中央値)はGem群26.0ヵ月、Gem+Cape群27.7ヵ月であり、有意差が得られたままであった(ハザード比:0.84、95%CI:0.70~0.99、p=0.049)。多変量解析においても、切除断端陽性、術後CA19-9高値、術前CRP高値、低分化型、リンパ節転移陽性、最大腫瘍径と共に、有意な予後因子として、術後補助化学療法が選択された。術後補助化学療法のGem+CapeはGemと比べて有意に生存期間の延長に寄与することが、長期経過観察の結果からも示された。コメント大規模な術後補助化学療法の5年の長期経過観察後の発表であるが、とくに驚くことのない試験結果であり、この演題がPoster discussionであることのほうがむしろ驚きである。今年はあまり採択すべき演題がなかったのかなと思ってしまった。膵がん切除後補助化学療法Gem+nab-PTX vs.Gem aloneの第III相試験(APACT)の生存期間のUpdateと地域ごとの治療成績 4)ちょうど1年前のASCOで発表された、膵がん切除後の補助化学療法としてのGem+nab-PTXとGem aloneを比較した第III相試験(APACT)の結果は、主要評価項目である中央判定による無病生存期間の延長は認めなかったため、標準的な術後補助化学療法としては位置付けられていない。しかし、副次評価項目である全生存期間の延長を認めており、担当医判断の無病生存期間においても有意な差が認められていたため、中央判定が良くなかったのではないかとまで言われている試験であった。この試験は、全世界179施設、21ヵ国で行われたGlobal試験であり、今回、このAPACT試験の生存期間のUpdateと地域ごとの治療成績の違いについて発表された。膵がん(T1-3、N0-1、M0)に対してR0またはR1切除を行い、術後に再発を認めず、CA19-9が100 U/mL未満に低下した患者をGem+nab-PTX群432例とGem alone群434例にランダムに割り付けた。Updateされた全生存期間(中央値)は、Gem+nab-PTX群41.8ヵ月とGem alone群37.7ヵ月であり、ハザード比0.82(95%CI:0.687~0.973、p=0.232)と、主解析時点と同様の結果が得られた。欧州、北米、アジア、オーストラリアの4地域における患者背景、生存期間、有害事象の違いも報告された。患者背景では、オーストラリアの患者でPerformance statusが0の患者とR0切除割合がGem+nab-PTX群で低率であったこと以外は両群で有意差は認めなかった。また、地域ごとの違いでは、アジアの患者で、R0切除、N0の患者が最も多く認められ、投与状況では累積投与量がアジアの患者でやや多かった。生存期間は、どの地域でもGem+nab-PTX群で良好な傾向が認められており、地域によらず一定の効果が認められた。Gem+nab-PTXの生存期間(中央値)は、欧州41.8ヵ月、北米38.5ヵ月、アジア46.8ヵ月、オーストラリア31.5ヵ月と患者背景を反映してか、アジアで良好であった。有害事象に関しては、これまでの報告と同様にGem+nab-PTX群でGrade3以上の治療関連有害事象発現割合が高く、その内訳は好中球減少、貧血、白血球減少、末梢神経障害、疲労など、既知のものだった。また、地域ごとの違いはほぼ認められなかった。このように、4年の追跡調査結果は主解析と同様の結果であり、地域別の解析でも、全体での解析結果と同様の結果だった。コメント膵がん切除後の補助化学療法として、Gem+nab-PTXとGemを比較した第III相試験(APACT)の生存期間のUpdateの結果と地域による治療成績の違いを検討した結果が報告された。くしくも、このAPACT試験の生存期間のハザード比は0.82であり、ESPAC-4試験でPositiveな結果となったGem+Capeのハザード比0.84と同等からやや良好な結果が示されており、生存期間(中央値)もGem+nab-PTXは41.8ヵ月、Gem+Capeは27.7ヵ月であり、患者背景が違うため、単純に比較はできないが、APACT試験の結果が良好であった。あえてこのように並べて発表したのかはわからないが、Gem+nab-PTXの術後補助化学療法の有効性を示唆する結果であった。また、地域による治療成績の違いの検討は、肝細胞がんでは地域による違いが問題になることもあるが、膵がん切除後の補助化学療法においては、地域による患者背景や治療成績に違いはほぼないことがわかり、今後、Global試験を行ううえで、非常に重要な結果が示されたと考えている。胆道がん進行胆道がんの初回治療例に対するGem+Cisplatin+Durvalumab+Tremelimumab vs.Gem+Cisplatin+Durvalumabの第II相試験 5)切除不能または再発胆道がんの初回治療例に対して、Gem+Cisplatin(GC)+Durvalumab(D)+Tremelimumab(T)のバイオマーカーコホート30例とGC+Dコホート45例、GC+D+Tコホート46例の第II相試験の結果が韓国から報告された。奏効割合は、バイオマーカーコホート50.0%、GC+Dコホート73.4%、GC+D+Tコホート73.3%と非常に良好であり、奏効までの期間(中央値)も2.3ヵ月と良好であった。無増悪生存期間(中央値)と生存期間(中央値)はそれぞれ、バイオマーカーコホート13.0ヵ月と15.0ヵ月、GC+Dコホート11.0ヵ月と18.1ヵ月、GC+D+Tコホート11.9ヵ月と20.7ヵ月と、まだ打ち切り例が多いが、非常に良好な結果が報告された。バイオマーカーコホートで、1サイクル後のPD-L1の発現によって無増悪生存期間に違いが出る可能性が示唆された。全Gradeの有害事象は、悪心59.5%、好中球減少54.5%、掻痒55.4%に認めたが、忍容性は良好であったと解釈された。現在、GC+D vs.GCの第III相試験(TOPAZ-1: NCT03875235)が進行中であることが報告された。コメント胆道がんにおける免疫チェックポイント阻害剤は期待されており、GC+免疫チェックポイント阻害剤の併用療法の第III相試験がいくつか進行中である。今回、GCにDまたはD+Tを併用することで非常に良好な治療成績が報告されているが、現在、進行中の第III相試験は、GC+D vs.GC+プラセボの第III相試験(TOPAZ-1)であり、Tの併用はない。今後、GC+T+Dのレジメンの開発がどうなるのかは、まったくわからない状況であった。胆道がんに対するその他の治療開発は、1次治療としてGC+ペムブロリズマブvs.Gem+プラセボの第III相試験(KEYNOTE-966)、GC+Bintrafusp alfa(M7824)vs.GC+プラセボの第II/III相試験(Trap0055)が進行中であり、2次治療以降では、ゲムシタビン、シスプラチンおよびS-1の前治療歴がある胆道がん患者を対象としたニボルマブの治験、職業関連胆道がん患者を対象としたニボルマブ単剤による医師主導治験などが進行中であり、やはり注目度は高い。胆膵がんその他ctDNAと組織でのクリニカルシーケンスの比較:SCRUM-Japan GI-Screen vs. GOZILA 6)SCRUM-Japanで行われてきた組織でのクリニカルシーケンス(GI-Screen)と血液でのctDNA(GOZILA)を比較した検討結果が、JCOG肝胆膵グループの若手のホープである国立がん研究センター中央病院の大場先生から報告された。SCRUM-Japanでは、消化器がんを中心にがん遺伝子のクリニカルシーケンスの研究として行ってきた。今回、組織でのクリニカルシーケンスであるGI-Screen研究に参加された2,952例と、リキッドバイオプシーであるctDNAによるがん遺伝子検査のGOZILA研究に参加された632例の患者背景、検査結果が判明するまでの時間、同定されたActionable遺伝子異常、臨床試験への参加割合と参加までの期間、臨床試験での奏効割合と無増悪生存期間を比較検討した。患者背景では、GOZILA研究に膵がんの患者が多く登録されており、膵がんは組織が採取しにくく、リキッドバイオプシーが好まれる傾向にあることが示された。検査結果が判明するまでの時間(中央値)は、GI-Screenでは37日、GOZILAでは12日と、GOZILAで有意に短かった(p1)Davendra Sohal, Mai T. Duong, Syed A. Ahmad, et al. SWOG S1505: Results of perioperative chemotherapy (peri-op CTx) with mfolfirinox versus gemcitabine/nab-paclitaxel (Gem/nabP) for resectable pancreatic ductal adenocarcinoma (PDA). J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4504)2)Paula Ghaneh, Daniel H. Palmer, Silvia Cicconi, et al. ESPAC-5F: Four-arm, prospective, multicenter, international randomized phase II trial of immediate surgery compared with neoadjuvant gemcitabine plus capecitabine (GEMCAP) or FOLFIRINOX or chemoradiotherapy (CRT) in patients with borderline resectable pancreatic cancer. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4505)3)John P. Neoptolemos, Daniel H. Palmer, Paula Ghaneh, et al. ESPAC-4: A multicenter, international, open-label randomized controlled phase III trial of adjuvant combination chemotherapy of gemcitabine (GEM) and capecitabine (CAP) versus monotherapy gemcitabine in patients with resected pancreatic ductal adenocarcinoma: Five year follow-up. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4516)4)Michele Reni, Hanno Riess, Eileen Mary O'Reilly, et al. Phase III APACT trial of adjuvant nab-paclitaxel plus gemcitabine (nab-P + Gem) versus gemcitabine (Gem) alone for patients with resected pancreatic cancer (PC): Outcomes by geographic region. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4515)5)Do-Youn Oh, Kyung-Hun Lee, Dae-Won Lee, et al. Phase II study assessing tolerability, efficacy, and biomarkers for durvalumab (D) ± tremelimumab (T) and gemcitabine/cisplatin (GemCis) in chemo-naive advanced biliary tract cancer (aBTC). J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4520)6)Akihiro Ohba, Yoshiaki Nakamura, Hiroya Taniguchi, Masafumi Ikeda, et al. Utility of circulating tumor DNA (ctDNA) versus tumor tissue clinical sequencing for enrolling patients (pts) with advanced non-colorectal (non-CRC) gastrointestinal (GI) cancer to matched clinical trials: SCRUM-Japan GI-SCREEN and GOZILA combined analysis. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 3516)

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分子標的薬による術後アジュバントの意味【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第14回

第14回 ADAURA試験はpractice changingなのか:分子標的薬による術後アジュバントの意味1)Herbst RS, Tsuboi M, John T, et al. Osimertinib as adjuvant therapy in patients (pts) with stage IB-IIIA EGFR mutation positive (EGFRm) NSCLC after complete tumor resection: ADAURA. ASCO 2020, LBA 5.2)Hauschild A, et al. Long-term benefit of adjuvant dabrafenib + trametinib (D+T) in patients (pts) with resected stage III BRAF V600-mutant melanoma: Five-year analysis of COMBI-AD. ASCO 2020, abstract 10001.3)Joensuu H, Eriksson M, et al. Survival Outcomes Associated With 3 Years vs 1 Year of Adjuvant Imatinib for Patients With High-Risk Gastrointestinal Stromal Tumors; An Analysis of a Randomized Clinical Trial After 10-Year Follow-up. JAMA Oncol. 2020 May 29. [Epub ahead of print] 今年のASCOの目玉の1つ、完全切除NSCLC(病理病期Ib-IIIA)に対してオシメルチニブの術後補助化学療法を行ったADAURA試験。プラセボに対してプライマリエンドポイントである無存再発期間(RFS)をHR 0.17という見たことのない差でmetしたが、多くの議論が沸き上がっている。他がん腫の状況なども含め、論点を概説する。日常臨床を変えるには何が足りないか「OSを待つ必要がある」という意見も見掛けるが、完全切除のNSCLCに術後補助療法を行う目的は根治である。古くから5年生存が根治と見なされてきた経緯があるものの、近年術後再発した後の化学療法が非常に発達しているため、OSのみでは必ずしも根治の指標でない可能性がある。より厳密に根治率の改善を検証するためには長期DFS率が妥当と思われる。分子標的薬は根治をもたらすか:他がん腫での知見から今回用いられたのがオシメルチニブという分子標的薬であることには注意が必要である。他がん腫で術後補助療法に対して承認されている分子標的薬は、消化管間質腫瘍(GIST)に対するイマチニブ、悪性黒色腫に対するダブラフェニブ+トラメチニブの2レジメン。GIST:イマチニブの1年投与がプラセボに比して有意な無再発生存期間(RFS)を延長したが(HR 0.35)、OSは有意差を認めず(Dematteo RP, et al. Lancet. 2009;373:1097-1104.)。その後、high risk群を対象に3年間vs.1年間投与で前者が有意にRFSを延長した(Joensuu H, et al. JAMA. 2012;307:1265-1272.)。この発表はASCOでプレナリーとして報告されたものの、ディスカッサントからは内服中止後に再発が急増していることへの懸念が指摘された。ちょうど先頃、10年フォローアップの結果が報告された。RFSは統計学的には有意ではあるが最終的に両群の曲線が近づいている。またOSも現時点では有意に上回っているが、再発例のみの解析では再発後生存期間は同等とも報告されている。悪性黒色腫:StageIIIの悪性黒色腫を対象にダブラフェニブ・トラメチニブ併用とプラセボを比較したCOMBI-AD試験は、今回ASCOで長期成績が報告されたが(Hauschild A, #10001)、1年の投与終了後もRFSはほぼプラトーとなっていた(3/4/5年のRFS率はそれぞれ59/55/52%)。一見同じような印象を受けるドライバー変異を有するがん腫でも、それぞれの阻害剤に対する効果が異なるのだろうし、ダブラフェニブ・トラメチニブについては腫瘍免疫に対する影響も示唆されているようなので、こういった影響を考慮すべきなのかもしれない。つまり「分子標的薬で根治が得られるか」という疑問に対しては、まだ十分な答えがない状況である。EGFR陽性例でほかに参考になる知見同じ対象についてゲフィチニブがすでにDFS延長にもかかわらずOSで延長を示せなかったことから(CTONG1104試験、Wu YL, #9005)、GISTにおけるイマチニブのパターンをたどる可能性は否定できない。また、今回の解析では多くの患者がオシメルチニブ3年間投与の途中であり、イマチニブで見られた内服終了後の再発増加が認められるかは今後見ていく必要がある(ADAURAでも、よりハイリスクなStageIIIAのサブセットでは36ヵ月で再発が増えている“ようにも見える”)。なおCTONG1104試験で再発ハザード比の経時的変化を見た研究において、内服終了に近い15ヵ月前後から再発リスクが増加することも報告されている(Xu ST, IASLC 2017)。われわれのpracticeを変えるべきか現時点でpracticeを変えるにはまだ情報が不足しているという印象。一方で、HR 0.17というとんでもない数字がOSに反映される可能性は十分あるだろう。つまりGISTの試験のように「根治には十分寄与しないが、OSを延長する」ケースである。ただしこの結果が受け入れられるためには、「最終的にほとんどの症例が再発するのなら、OS延長も臨床的には意味があるのでは」という考え方の転換が必要になる。個人的には、こういった考えがコンセンサスとなるには時期尚早に感じられる。

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第12回 日医会長選巡る2通の“怪文書”、なりふり構っていられない陣営はどちらか?

日本医師会(日医)会長選挙に立候補している副会長の中川 俊男氏(68歳)が6月19日、都内で記者会見し、6つの政策提言を公表した。具体的には、(1)開かれた日本医師会へ、(2)安全と安心の公的医療保険の持続と強化、(3)平時の医療の強化、有事の医療への備え、(4)地域医療を支える医業経営基盤の安定化、(5)未来を支える医師へ、(6)政府与党との連携強化―である。「医業経営基盤の安定化」の具体策の1つとして、政策提言では「控除対象外消費税問題について、医療機関ごとの補填のバラツキを解消するために抜本的解決に取り組む」としている。この問題について日医は昨年、診療報酬を必要に応じて見直すことで対応できるとし、「解決された」とコメントしたが、中川氏は「非課税という条件の下、最大限の着地をしたが、すべての医療関係者が納得しているわけではないということも認識している」と述べた。その上で、「仮に消費税率が今後、現行の10%から増税される場合、個々の医療機関のバラツキは精緻な診療報酬や税制で補填することはできないので、課税転換を含め、あらゆる選択肢を排除せず議論したい」と説明した。現職で5選を目指す横倉 義武氏(75歳)は、政権中枢とのパイプを売りにしているが、中川氏の政策提言では「政府与党との連携強化」の具体策として、「日頃から国会議員と緊密な意見交換を実施する。組織代表候補との連携を強化し、会員との公開勉強会を開催する」としている。中川氏は「医療系の議員が中心になるとは思うが、できるだけ幅広く意見交換をしていきたい。野党の先生の意見も聞く場合もあるかもしれない」と述べた。ところで、この日の記者会見では、6月上旬に出回り始めた、中川氏と支持者を批判する“怪文書”について、意見と具体的な影響を問う質問が出た。中川氏は、「怪文書は、それ以上でも以下でもない。われわれの陣営は、同じ土俵に上がるつもりも、そのような議論にくみするつもりもない。『爽やかな選挙戦を』という提案をいただいているので、お答えするつもりはない」と話した。この怪文書は、「医師会員の良心、今こそ結集を」というタイトルで、「怒髪天」のペンネームが記されていた。冒頭、「もはや、これは『中川俊男の乱』。中川派が仕掛けたクーデターだ」と断じた上で、中川氏が当選すると「日医は永田町・霞が関との対立を深める」とし、中川氏らを「日医の歴史に残る大悪人」などと批判していた。さらに今週に入り、怪文書の第2弾が出回り始めた。ペンネームは同じ「怒髪天」で、タイトルは「『尾崎潰し』を画策していた埼玉・金井会長」だ。内容は、中川氏を支持している東京都医師会会長の尾崎 治夫氏と、埼玉県医師会会長の金井 忠男氏を仲違いさせる意図がうかがえる。中川氏がリードしているという票読み情報が流れる中、2つの怪文書を読んだ病院経営者は、「第1弾はある部分、説得力のある書き方もしていたが、第2弾は誹謗中傷だらけ。選挙戦後半になり、焦りからか、横倉陣営がなりふり構わない状況に陥っている感じがする。このような怪文書を出すことは逆効果にならないか」と話す。しかし、中川陣営も落ち着いて構えているわけにはいかない事態も起きている。今週に入り、中川氏の女性問題が流れ始めたのだ。女性は医療関係者と見られ、2人は“中川夫妻”と呼ばれているという。噂の真偽を確かめたところ、中川氏支持のある病院経営者は認めつつ、「一生懸命応援している人達はがっかりするだろう」と打ち明ける。日医会長選の投開票は6月27日。これらの“怪情報”は両陣営にとって、果たして吉と出るか、凶と出るか。結果はどうあれ、日医のおぞましい裏事情が明かされたことは確かだ。

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双極性障害における心臓突然死の発生率とリスク因子

 双極性障害患者における心臓突然死の発生率やリスク因子に関する情報は十分ではない。台湾・台北医科大学のPao-Huan Chen氏らは、双極性障害患者の心臓突然死の調査およびリスク因子の特定のため、プロスペクティブコホート研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年5月23日号の報告。 2000~16年の台湾全民健康保険研究データベースおよびHealth Death Certification Systemのデータを用いた、プロスペクティブ台湾コホート研究を実施した。本コホートに含まれた双極性障害患者は4万6,490例、そのうち467例に心臓突然死が発生した。 主な結果は以下のとおり。・層別解析では、心臓突然死の標準化死亡率(SMR)は、すべての年齢で1.00超であり、30歳未満の患者で最高値(SMR:31.96、95%CI:20.47~47.55)であった。・とくに高血圧は、50歳未満(SMR:1.85、95%CI:1.23~2.79)および50歳以上(SMR:1.44、95%CI:1.14~1.83)の両方で心臓突然死リスクを上昇させた。・静脈およびリンパ管障害(SMR:1.97、95%CI:1.23~3.16)、アルコール使用関連障害(SMR:2.34、95%CI:1.62~3.38)は、50歳未満の心臓突然死リスクを上昇させた。・うっ血性心不全(SMR:1.59、95%CI:1.13~2.23)および認知症(SMR:1.75、95%CI:1.30~2.35)は、50歳以上の心臓突然死リスクを上昇させた。 著者らは「双極性障害患者は、どの年代においても心臓突然死リスクが非常に高いため、早急に特有の予防戦略が求められる」としている。

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高悪性度神経内分泌肺がん術後補助療法、イリノテカン+シスプラチン vs.エトポシド+シスプラチン(JCOG1205/1206)/ASCO2020

 静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科の釼持 広知氏は、高悪性度神経内分泌肺がん(HGNEC)の完全切除例に対するイリノテカン+シスプラチン(IP)療法とエトポシド+シスプラチン(EP)療法の無作為化非盲検第III試験(JCOG1205/1206)の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。IP療法は従来標準治療とされてきたEP療法に対して無再発生存期間(RFS)で優越性を示せなかった。 世界保健機関(WHO)は、小細胞肺がん(SCLC)または大細胞神経内分泌肺がん(LCNEC)をHGNECと分類している。SCLCのStage1では手術と術後の補助化学療法が標準治療とされ、無作為化比較試験で評価された術後補助化学療法レジメンはないものの、EP療法が標準治療と考えられている。一方で進展型SCLCに対する日本国内での第III相試験ではEP療法に対するIP療法の優越性が示されている。・対象:完全切除された病理StageI〜IIIAのHGNEC221例・試験群:エトポシド+シスプラチン 3週ごと最大4サイクル(EP群、111例)・対照群:イリノテカン+シスプラチン 4週ごと最大4サイクル(IP群、110例)・評価項目:[主要評価項目]RFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、治療完遂率、有害事象(AE)発現率、重篤AE発現率、二次がん発生率 主な結果は以下のとおり。・RFS中央値は両群とも評価不能。3年RFS率はIP群が69.0%、EP群が65.4%であった(ハザード比[HR]:1.076、95%CI:0.666~1.738、片側検定p=0.6185)。・組織学別の3年RFS率は、SCLCではIP群66.5%、EP群65.2%で(HR:1.029、95%CI:0.544~1.944)、LCNECではIP群72.0%、EP群66.5%であった(HR:1.072、95%CI:0.517~2.222)。・病期別の3年RFS率は、StageIではIP群83.0%、EP群68.9%で(HR:0.641、95%CI:0.288~1.426)、StageII~IIIAではIP群53.1%、EP群61.6%であった(HR:1.487、95%CI:0.806~2.740)。・3年OS率はIP群が79.0%、EP群が84.1%であった(HR:1.539、95%CI:0.760~3.117、両側検定p=0.2275)。・4サイクル治療完遂率はIP群が72.7%、EP群が87.4%であった(p=0.0071)。・Grade2以上のAE発現率はIP群が81.7%、EP群が84.4%。重篤なAE発現率はIP群が1.8%、EP群が2.8%であった。 今回の結果を受けて剱持氏は「HGNEC完全切除例ではいまだEP療法が標準治療である」との見解を示した。

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ダロルタミド、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がんのOSを延長(ARAMIS試験)/ASCO2020

 遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)に対するダロルタミドのアンドロゲン遮断療法(ADT)への併用は、ADT単独に比し全生存期間(OS)の延長を示すことが、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で、フランス・Institut Gustave Roussy、University of Paris-SaclayのKarim Fizazi氏から発表された。 本試験は、二重盲検プラセボ対照の第III相試験であり、すでに主要評価項目の無遠隔転移生存期間(MFS)の有意な延長に関しては2019年に報告されている。今回の発表は、OSに関する最終解析結果の報告である。・対象:PSA倍加時間が10ヵ月以下のnmCRPC・試験群:ダロルタミド600mg×2/日+ADT(DAR群)・対照群:プラセボ+ADT(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]MFS[副次的評価項目]OS、疼痛が増強するまでの期間(TTPP)、化学療法剤導入までの期間(TTCT)、症候性骨関連事象(SSE)発現までの期間、安全性 主な結果は以下のとおり。・本試験には、DAR群955例、プラセボ群554例の計1,509例が登録された。すでに、MFSのポジティブな結果が得られたため、2018年11月から盲検化が解除され、プラセボ群から31%(170例)がダロルタミドのクロスオーバー投与を受けた(最終解析のデータカットオフは2019年11月、追跡期間中央値は29.1ヵ月)。・OS中央値は、DAR群、プラセボ群ともに未到達で、ハザード比(HR)0.69(95%CI:0.53~0.88)、p=0.003とDAR群が有意な延長を示した。3年時のOS率は、DAR群83%、プラセボ群77%だった。・TTPP中央値は、DAR群40.3ヵ月、プラセボ群25.4ヵ月、HR0.65(95%CI:0.53~0.79)、p<0.001であった。・TTCT中央値は、DAR群、プラセボ群ともに未到達で、HR0.58(95%CI:0.44~0.76)、p<0.001であった。・SSE発現までの期間の中央値も、DAR群、プラセボ群ともに未到達で、HR0.48(95%CI:0.29~0.82)、p=0.005であった。・今回報告の安全性プロファイルは、既報と差はなかった。Grade3/4の有害事象は、DAR群で26.3%、プラセボ群で21.7%であった。 最後に発表者は「本結果は、プラセボ群でのクロスオーバー投与が認められているにもかかわらず、ダロルタミドはnmCRPC患者の死亡リスクを31%低減させるという、説得力のあるデータである」と結論づけた。

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閉経後乳がん患者、術後AI+スタチンが再発リスク低下と関連

 スタチンの使用は、術後アロマターゼ阻害薬(AI)治療を受けている閉経後乳がん患者において、再発リスクの低下と関連していた。デンマーク・オーフス大学病院のSixten Harborg氏らが、集団ベースのコホート研究結果を、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2020年6月22日号に報告した。 研究者らは、2007~2017年にI~III期のホルモン受容体陽性乳がんと診断された閉経後のすべての患者を登録。術後AI治療が実施された。デンマーク国立処方レジストリから、スタチンの処方(診断後1年以上の処方)を確認し、生物学的潜伏期間を考慮し6ヵ月後からの時変曝露としてモデル化した。 追跡調査は診断7ヵ月後に始まり、再発、死亡、移住、5年経過のいずれかの最初のイベント、または2018年9月25日まで継続された。5年後の再発発生率を推定し、Cox回帰モデルを使用して、調整ハザード比(HR)を算出し、スタチン曝露群と非曝露群を比較した。 主な結果は以下のとおり。・14,773例の適格患者が登録された。・5年間の追跡期間中に、スタチン曝露群では3,163人年当たり32件の再発があり、非曝露群では45,655人年あたり612件の再発があった(1,000人年当たりの発生率:10.12[95%CI:6.92~14.28] vs.13.40[95%CI:12.36~14.51])。・多変量モデルでは、スタチンへの曝露が5年間の乳がん再発率の低下と関連していた(調整HR:0.72[95%CI:0.50~1.04])。・脂溶性スタチンへの曝露のみを考慮した場合にも、結果は同様であった(調整HR:0.70 [95%CI:0.48~1.02])。 研究者らは、交絡因子としてBMIや術後AI治療のアドヒアランスの影響などを考慮できていない点を本研究の限界として挙げつつも、AI治療を受けた早期乳がん患者が、術後レジメンに脂溶性スタチンを追加することでさらにベネフィットを得る可能性があると結んでいる。

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COVID-19、ABO血液型により重症化に違い/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が重症化し呼吸不全を来すリスクについて、ゲノムワイド関連分析(GWAS)を行い調べたところ、3p21.31遺伝子座と9q34.2遺伝子座の変異との関連性が明らかになった。9q34.2遺伝子座は血液型の遺伝子座と一致しており、血液型A型の人は、他の血液型の人に比べ重症化リスクが1.45倍高く、一方で血液型O型の人は重症化リスクが0.65倍低いことが示されたという。COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2に感染した患者にばらつきがみられることから、ドイツ・Christian-Albrechts大学のDavid Ellinghaus氏らの研究グループ「The Severe Covid-19 GWAS Group」が、イタリアとスペインの患者を対象にGWASを行い明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年6月17日号掲載の報告。イタリア・スペインの7ヵ所の病院の患者を対象に試験 研究グループは、欧州におけるSARS-CoV-2流行の中心地、イタリアとスペインの7ヵ所の病院を通じて、COVID-19患者で重症化(呼吸不全)が認められた1,980例について、GWAS試験を行った。 品質管理や外れ値の除外後、イタリアでは患者835例とその対照1,255例、スペインではそれぞれ775例と950例について、最終的な解析を行った。 合計858万2,968個の一塩基多型を解析し、2つのケースコントロールパネルについてメタ解析を行った。重症化リスク、A型は45%増、O型は35%減 COVID-19による呼吸不全との関連性(ゲノムワイドの有意水準でp<5×10-8)を示す、2遺伝子座の2つの一塩基多型、3p21.31遺伝子座のrs11385942と9q34.2遺伝子座のrs657152を検出した(それぞれのオッズ比[OR]:1.77[95%信頼区間[CI]:1.48~2.11、p=1.15×10-10]、1.32[95%CI:1.20~1.47、p=4.95×10-8])。 3p21.31遺伝子座に関連する遺伝子は、SLC6A20、LZTFL1、CCR9、FYCO1、CXCR6、XCR1だった。 一方9q34.2遺伝子座は、血液型ABOの遺伝子座と一致した。血液型に特異的な解析の結果、A型の人の重症化リスクが他の血液型の人に比べ高率だった(OR:1.45、95%CI:1.20~1.75、p=1.48×10-4)。一方で血液型O型の人は、他の血液型の人に比べ重症化リスクが低率だった(0.65、0.53~0.79、p=1.06×10-5)。

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未治療HIV結核患者、検査に基づく治療が有益/NEJM

 抗レトロウイルス療法(ART)歴のない重度免疫不全状態のHIV感染成人患者における結核治療について、検査結果に基づく治療は系統的・経験的治療と比べて24・48週後のアウトカムはいずれも同等で、Grade3/4の有害事象発生率は低いことが示された。フランス・ナント大学のFrancois-Xavier Blanc氏らSTATIS ANRS 12290 Trial Teamが、コートジボワールやウガンダなどの患者1,000例超を対象に無作為化比較試験を行い報告した。結核およびHIVの疾病負荷が高い地域において、HIV感染成人患者の多くがART開始時にはすでに重度の免疫不全状態にあり、これらの患者のART開始後の死亡率は高く、結核および侵襲性の細菌感染症が死因の多くを占めているという。NEJM誌2020年6月18日号掲載の報告。全死因死亡または侵襲性細菌感染症の複合エンドポイント発生率を比較 研究グループは、ART歴のないCD4陽性T細胞数100個/mm3未満のHIV成人患者を対象に、検査に基づく結核治療と、検査をせずに治療を始める系統的・経験的治療を比較する48週間の試験を行った。 コートジボワール(2施設)、ウガンダ(2施設)、カンボジア(1施設)、ベトナム(1施設)で集めた被験者を無作為に1対1の割合で2群に分け、一方にはスクリーニング(Xpert MTB/RIF検査、尿中リポアラビノマンナン検査、胸部X線撮影)を実施し、その結果に基づき結核治療を開始すべきかどうかを決めた(検査治療群、525例)。もう一方の群にはリファンピシン、イソニアジド、エタンブトール、ピラジナミドを2ヵ月間連日投与し、その後リファンピシンとイソニアジドを4ヵ月間連日投与する系統的・経験的治療を行った(系統的治療群、522例)。 主要評価エンドポイントは、全死因死亡または侵襲性細菌感染症の複合で、無作為化後24週以内(主要解析)または48週の時点で評価を行った。Grade3/4の薬剤関連有害事象リスク、系統的治療群は検査治療群の2.57倍 24週の時点で、全死因死亡または侵襲性細菌感染症の発生率(初回発生イベント)は、系統的治療群が19.4/100患者年、検査治療群が20.3/100患者年と、両群で同等だった(補正後ハザード比[HR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.63~1.44)。 48週時点での同発生率も、それぞれ12.8/100患者年、13.3/100患者年と同等だった(補正後HR:0.97、95%CI:0.67~1.40)。 24週の時点で、結核の確率は系統的治療群が3.0%と、検査治療群の17.9%に比べ低率だった(補正後HR:0.15、95%CI:0.09~0.26)。一方で、Grade3/4の薬剤関連有害事象の確率は、系統的治療群が17.4%と、検査治療群の7.2%に比べ高率だった(2.57、1.75~3.78)。 重篤な有害イベントの発生は、系統的治療群でより頻度が高かった。

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「ガスモチン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第5回

第5回 「ガスモチン」の名称の由来は?販売名ガスモチン®錠5mg/2.5mg、ガスモチン®散1%一般名(和名[命名法])モサプリドクエン酸塩水和物(JAN)効能又は効果○慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)○経口腸管洗浄剤によるバリウム注腸X線造影検査前処置の補助用法及び用量〈慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)〉通常、成人には、モサプリドクエン酸塩として1日15mgを3回に分けて食前または食後に経口投与する。〈経口腸管洗浄剤によるバリウム注腸X線造影検査前処置の補助〉通常、成人には、経口腸管洗浄剤の投与開始時にモサプリドクエン酸塩として20mgを経口腸管洗浄剤(約180mL)で経口投与する。また、経口腸管洗浄剤投与終了後、モサプリドクエン酸塩として20mgを少量の水で経口投与する。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由設定されていない※本内容は2020年6月24日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年4月改訂(改訂第24版)医薬品インタビューフォーム「ガスモチン®錠5mg/2.5mg、ガスモチン®散1%」2)大日本住友製薬:製品基本情報

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第12回 夏本番!冷やし中華ならぬ「抗体検査始めました」の怪

抗体保有率、東京都0.10%こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。6月19日、やっとプロ野球が開幕しました。新型コロナウイルス陽性が判明した巨人の坂本・大城両選手も開幕試合になんとか間に合ったようです。私も何試合かテレビ中継を観ましたが、やはり無観客試合はどうもしっくりきません。打撃音やキャッチングの音、選手の声が聞こえるのはいいのですが、応援なしだとなんだか草野球を観ているようで、プロらしさがあまり伝わってきません。ある中継では、「応援音声再現中」と、バックに過去に録音した応援の音を流していましたが、あれもどうなんでしょう。今年も早く神宮球場の「生ビール半額ナイター」に行きたいものです。さて、今回気になったのは、新型コロナウイルスの抗体検査に関するいくつかのニュースです。6月16日、厚生労働省は3都府県で6月1日から実施していた新型コロナウイルスの抗体保有調査の結果を公表しました。この調査は日本での抗体保有状況の把握のため、2020年6月1~7日にかけて東京都・大阪府・宮城県の一般住民それぞれ約3,000名を無作為化抽出して行われたものでした。対象者は本調査への参加に同意した一般住民(東京都1,971人、大阪府2,970人、宮城県3,009人、計7,950人)。この調査では、陽性判定をより正確に行うため、2種の検査試薬(アボット社・ロシュ社)の両方において陽性が確認されたものを「陽性」としたとのことです。その結果、抗体保有率は、東京都:0.10%(2人)、大阪府:0.17%(5人)、宮城県:0.03%(1人)でした。抗体を持っていた人の割合を、人口に対する報告感染者数の割合(5月31日時点)と比べてみると、東京で2.6倍、大阪で8.5倍、宮城で7.5倍でした。各地で無症状や医療機関を受診しないまま回復した感染者が一定数いた可能性が示唆されます。ただ、米ニューヨーク州が5月上旬に公表した住民1万5,000人を対象にした抗体検査の結果(12.3%)と比べると、日本の低さが際立ちます。これまでの感染状況を考えると当たり前と言えば当たり前の結果ですが、日本ではまだまだパンデミックの余地は残されている、と言えるでしょう。抗体検査は医療機関にとっては割のいい“臨時収入”この報道に先立つ6月12日のNHKニュースでは、「導入相次ぐ『抗体検査』 期待の一方 誤解や課題も」というタイトルで、企業やプロ野球チームなどで抗体検査の導入が進んでいる実態を伝えています。報道では、過去にウイルスに感染したかどうかを調べるため、企業や個人などで抗体検査を受ける動きが広がっている状況を伝えた上で、抗体検査が陰性証明として使えるわけではないこと、抗体陽性が感染防止につながるわけではことなど、抗体検査に関する誤解についてわかりやすく解説していました。麻疹や風疹のように、新型コロナ感染症も1回感染して抗体価が上がればもうかからない、と誤解している人は意外に多いようです。このニュースで興味深かったのは、地域の診療所などの医療機関が自費での抗体検査を始めていることでした。ニュースで紹介されていた東京の銀座のクリニックでは、5月中旬から抗体検査を始め、1ヵ月で検査を受けた人は200人にのぼったとのことです。検査費用は1万1,000円ということですから、抗体検査だけで200万円の売上になります(原価はわかりませんが、仮に中国製だとすると安価でしょう)。外来患者が減った医療機関にとっては、割のいい“臨時収入”といったところでしょうか。少し気になって、ネットで調べてみると、「新型コロナウイルスの抗体検査始めました」とホームページで告知している診療所や病院があるわ、あるわ。中にはサイトに「抗体検査が陽性であればワクチン接種したのと同じ状態ですから、再感染はしにくくなるといわれています」と書いている医療機関もありました。当然ながらどこも保険外で、検査費用は8,000円〜1万円が相場のようです。抗体あっても感染防止できるかは不明夏の到来とともに、冷やし中華のように医療機関のメニューに加わった新型コロナウイルスの抗体検査。本当に医療機関側は受診者の役に立つ、と考えて実施しているのでしょうか。そもそも、新型コロナウイルスの場合、血液中で感染防御に働く「中和抗体」がどのくらいの期間維持されるのか、抗体量がどの程度なら再感染が防げるかなど、多くのことがまだわかっていません。風疹や麻疹のように抗体ができたから大丈夫、とはいかないですし、インフルエンザのようにA型にかかったから今年はもうA型は大丈夫、ともならないのです。さらに、抗体は発症してから1週間程度で作られるため、人に感染させる可能性が高いとされる発症前後は抗体検査に引っかかりません。つまり、「個人が感染の有無を調べるための検査」というよりも、先述の厚労省の調査のように「地域での感染状況を公衆衛生学的に調べるための検査」なのです。新型コロナが存在しない2019年の検体からも陽性がもう1点、気になるのが市中の医療機関で行われている検査の精度です。現時点において、国内で承認された新型コロナウイルス感染症に対する抗体検査向けの検査試薬は存在しません。厚労省の調査で使用されたアボット社・ロシュ社のキットを含めてどれもが「研究用試薬」という位置付けです。両社のキットが厚労省の調査で採用されたのは、米食品医薬品局 (FDA)が性能を確認して緊急使用許可(EUA)を出した抗体検査のうち、日本国内で入手可能なものだったからです。少なくともこの2つのキットにはFDAのお墨付きがあるわけです。しかし、国内では、米国のEUA承認といった一定の評価がなされていない、性能がよく分からない検査試薬が数多く出回っているようです。ちなみにキットの開発企業は米国・ドイツ・中国・台湾とさまざまで、数としては中国が比較的多いようです。冷やし中華のように、「うちも始めました」とPRしている医療機関の多くは、イムノクロマト法で測定できる(専用装置を必要としない)簡易抗体検査キットを採用していると見られます。しかし、これらの簡易キットの検査性能については、感度にバラツキがある、偽陽性が多い(新型コロナウイルスが存在しなかった2019年の検体からも陽性が出たとのことです)など多くの疑問点がすでに指摘されています。政府の専門家会議も、5月に出した提言で「国内で法律上の承認を得たものではなく、期待されるような精度が発揮できない検査が行われている場合があり、注意を要する」としています。厚労省サイト「新型コロナウイルス感染症に関する検査について」では、AMED研究班が日本赤十字社の協力を得てとりまとめた「抗体検査キットの性能評価」が公表されていますので、興味のある方はそちらを参照してください。おそらく、厚労省も全国で未承認の新型コロナウイルスの簡易抗体検査キットが自由診療で使われていることを把握しているでしょう。コロナ禍による外来収入減を補うためのものとしてしばらく“お目こぼし”が続くか、あるいは「意味のない検査は止めるように」といった通知が発出され規制対象となるか、今のところ先行きは不透明です。もっとも、私なら抗体検査は受けず、そのお金で冷やし中華を10杯食べるほうを選択しますが。

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第23回 点数表は面白い!正直すぎる女性薬剤師【噂の狭研ラヂオ】

動画解説今回は群馬県高崎市 株式会社ファーマ・プラスの専務取締役 小黒佳代子先生と対談。高速で正確なピッキングの習得しか面白みを見いだせなかった大学病院、かといって興味もなかった薬局。しかし就いてしまえば、その場その場でやりがいを見つけ、熱心に活動できるのが小黒先生のスゴイところ。「私、点数表を見るのが好きなんですよ!」と笑う彼女の薬剤師人生はバイタリティに溢れていた!

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小細胞肺がんに対するデュルバルマブ+tremelimumab+化学療法の成績(CASPIAN)/ASCO2020

 スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのLuis G. Paz-Ares氏は、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の1次治療で免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体デュルバルマブ、抗CTLA-4抗体tremelimumabと化学療法の併用と、デュルバルマブ+化学療法、化学療法の3群を比較した第III相試験「CASPIAN」の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で報告した。同学会では、2つ目の実験群であるデュルバルマブ+tremelimumab+化学療法群の初回解析では全生存期間(OS)の有意な改善は認められなかったが、デュルバルマブ+化学療法では、11ヵ月追加した中央値25.1ヵ月の追跡結果においても、有意なOSの延長を示した。・対象:未治療のES-SCLC患者(WHO PS 0/1)、無症候性あるいは治療済みで安定している脳転移症例は許容・試験群: デュルバルマブ+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+EP群) デュルバルマブ+tremelimumab+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+T+EP群)・対照群:エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(EP群)・評価項目:[主要評価項目]OS[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、患者報告アウトカム(PRO)、安全性、忍容性 PFSの検定は、上記2つの試験群のOSの有意差が確認された場合に解析される。 主な結果は以下のとおり。D+T+EP vs.EP・OS中央値はD+T+EP群10.4ヵ月、EP群10.5ヵ月、2年OS率はEP群14.4%、D+T+EP群23.4%であったが、事前のp値設定≦0.0418を達成せず、統計学的有意差は認められなかった。・PFS中央値はD+T+EP群4.9ヵ月、EP群が5.4ヵ月であった。・奏効期間(DoR)はD+T+EP群5.2ヵ月、EP群が5.1ヵ月であった。・ORRはD+T+EP群が58.4%、EP群が58.0%であった。D+EP vs.EP・OS中央値はD+EP群が12.9ヵ月(95%CI:11.3~14.7)、EP群が10.5ヵ月(95%CI:9.3~11.2)でD+EP群で有意な延長が認められた(HR:0.75、95%CI:0.62~0.91、p=0.0032)。2年後OS率は、EP群14.4%に対してD+EP群22.2%であった。・PFS中央値はD+EP群が5.1ヵ月(95%CI:4.7~6.2)、EP群が5.4ヵ月(95%CI:4.8~6.2)であった(HR:0.80、95%CI:0.66~0.96)。・DoRはD+EP群共に5.1ヵ月であった。・ORRはD+EP群が67.9%、EP群が58.0%であった。・有害事象(AE)発現率はD+T+EP群が99.2%、D+EP群が98.1%、EP群が97%で、Grade3~4のAE発現率はD+T+EP群が70.3%、D+EP群が62.3%、EP群が62.8%であった。・免疫関連AEは、D+T+EP群が36.1%、D+EP群が20.0%、EP群が2.6%であった。 今回の結果についてPaz-Ares氏は「D+EP群が進展型小細胞肺がんの1次治療で新たな標準治療となることをよ支持している」との見解を示した。

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新型コロナが流行しやすい気候条件とは?

 世界的な危機をもたらしている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、気候変動や季節性と感染拡大との潜在的な関連を調査することは、予防・監視戦略に役立つ可能性がある。米国・メリーランド・スクール・オブ・メディスン大学のMohammad M Sajadi氏らは、特定の緯度、温度、湿度が観測された地域でのCOVID-19の集団発生分布は、季節性の呼吸器系ウイルスの挙動と一致していたことを明らかにした。研究者らは、気象モデリングを使用すれば、COVID-19の拡大リスクが高い地域の推定ができ、監視や封鎖のもと公衆衛生へ注力することが可能になるとしている。JAMA Network Open誌2020年6月11日号掲載の報告。 この研究ではCOVID-19の感染状況に関わらず、世界50都市の気候データを調査。感染拡大のあった都市を10例以上の死亡者が報告された地域と定義し、COVID-19が拡大した都市には、武漢(中国)、東京(日本)、大邱(韓国)、ゴム(イラン)、ミラノ(イタリア)、パリ(フランス)、シアトル(米国)、マドリード(スペイン)の8都市が該当した。これらの都市と感染拡大や影響がなかった42都市を比較した。データ集積は2020年1月~3月10日に行われた。気候データ(緯度、2ヵ月の平均気温、平均比湿、および平均相対湿度)は気象再解析データERA5から取得した。 主な結果は以下のとおり。・2020年3月10日時点、感染が拡大していた8つの都市は、いずれも北緯30~50°の狭い帯状範囲に位置していた。・それらの都市では一貫して類似の天候パターンを有し、平均気温は5〜11°C、低比湿(3〜6g/kg)で、低絶対湿度(4〜7g/m3)である点が一致していた。・ただし、近接した感染地域を予測するには、実社会での証明が不足していた。たとえば、中国・武漢(北緯30.8°)では発症者数8万757例で3,136人が死亡した。一方、ロシア・モスクワ(北緯56.0°)は発症者数10例で死亡者は0例、ベトナム・ハノイ(北緯21.2°)は発症者数31例、死亡者は0例だった。

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うつ病、不安症、PTSD歴と認知症リスク~メタ解析

 うつ病、不安症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)は認知症と関連しているといわれているが、これらが認知症のリスク因子(因果関係または前駆症状)、併存疾患、後遺症(2次的影響)であるのかはわかっていない。これまでのメタ解析では、すべての原因による認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)とうつ病や不安症との関連は調査されているものの、PTSDやレビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭型認知症(FTD)との関連は考慮されていなかった。オーストラリア・アデレード大学のJ. K. Kuring氏らは、精神疾患と認知症との関連をより理解する目的で、臨床的に有意なうつ病、不安症、PTSD歴を有する人とそうでない人におけるAD、VaD、DLB、FTD、すべての原因の認知症発症リスクを調査するためのメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年5月21日号の報告。 PubMed、EMBASE、PsycINFO、CINAHLを検索し、適格研究36件を特定した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病歴がある人は、ない人と比較し、すべての原因による認知症、ADの発症リスクが高かった。・不安症歴のある人は、ない人と比較し、すべての原因による認知症の発症リスクが高かった。・PTSD歴は、その後の認知症発症リスクとの関連が認められなかった。・なお、不安症、PTSD、DLB、FTDに関するデータは限られていた。 著者らは「うつ病や不安症は認知症のリスク因子の可能性があるが、このリスクの因果関係または前駆症状を評価するためには、成人期(若年成人、中年、高齢)にわたる縦断的研究が必要である。精神疾患の新規発症および既往歴のある高齢者における認知機能変化の定期的なスクリーニングは、認知症の早期発見に役立つ可能性がある」としている。

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再発・難治性古典的ホジキンリンパ腫に対するペムブロリズマブの成績(KEYNOTE-204試験)/ASCO2020

 カナダ・プリンセス・マーガレットがんセンターのJohn Kuruvilla氏は、再発・難治性古典的ホジキンリンパ腫に対するペムブロリズマブとブレンツキシマブ ベドチンを比較する無作為化非盲検第III相試験KEYNOTE-204の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。ぺムブロリズマブはブレンツキシマブ ベドチンに比べ無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したと報告した。・対象:自家造血幹細胞移植後の再発、自家造血幹細胞移植が不適応、1次治療後に再発した難治性古典的ホジキンリンパ腫で、国際ワーキンググループ(IWG 2007)基準の測定可能病変を有し、PS 0~1の患者(304例)・試験薬:ぺムブロリズマブ200mg3週ごと最大35サイクル(ペムブロリズマブ群、151例)・対照薬:ブレンツキシマブ ベドチン1.8 mg/kgを3週ごと最大35サイクル(ブレンツキシマブ ベドチン群、153例)・評価項目:[主要評価項目]自家造血幹細胞移植あるいは同種造血幹細胞移植後の臨床および画像所見を含んだIWG2007基準による盲検独立中央評価によるPFS[副次評価項目]自家造血幹細胞移植あるいは同種造血幹細胞移植後の臨床および画像所見を含まないIWG2007基準による盲検独立中央評価によるPFS、IWG2007基準による盲検独立中央評価による奏効率(ORR)、研究者評価によるPFS、奏効持続期間(DoR)、全症例での安全性 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目のPFS中央値は、ペムブロリズマブ群が13.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.9~19.4)、ブレンツキシマブ ベドチン群が8.3ヵ月(95%CI:5.7~8.8)で、ペムブロリズマブ群で有意な延長が認められた(ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.48~0.88、p=0.00271)。・自家造血幹細胞移植あるいは同種造血幹細胞移植後の臨床および画像所見を含まないIWG2007基準による盲検独立中央評価によるPFS中央値は、ペムブロリズマブ群が12.6ヵ月(95%CI:8.7~19.2)、ブレンツキシマブ ベドチン群が8.2ヵ月(95%CI:5.6~8.6)であった(HR:0.62、95%CI:0.46~0.85)。・研究者評価によるPFSは、ペムブロリズマブ群が19.2ヵ月(95%CI:13.8~28.1)、ブレンツキシマブ ベドチン群が8.2ヵ月(95%CI:5.7~8.6)であった(HR:0.49、95%CI:0.36~0.67)。・盲検独立中央評価によるORRは、ペムブロリズマブ群が65.6%(95%CI:57.4~73.1)、ブレンツキシマブ ベドチン群が54.2%(95%CI:46.0~62.3)で事前設定の有意差は認めなかった(p=0.0225、事前設定p<0.006)。・DoR中央値はペムブロリズマブ群が20.7ヵ月、ブレンツキシマブ ベドチン群が13.8ヵ月であった。・Grade3以上の全有害事象は、ペムブロリズマブ群が43.9%、ブレンツキシマブ ベドチン群が43.4%、Grade3以上の治療関連有害事象はそれぞれ19.6%、25.0%であった。 これらの結果から、Kuruvilla氏は「ペムブロリズマブは、自家造血幹細胞移植が不良あるいは不適応の再発・難治性の古典的ホジキンリンパ腫に対する新たな標準治療となるべきである」と述べた。

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セマグルチドのSTEP試験結果を発表/ノボノルディスクファーマ

 ノボノルディスクファーマは、セマグルチド2.4mgの第III相試験STEP2、STEP3においてプラセボ群と比較し、有意な体重減少を示し、臨床試験プログラムを完了したと6月17日に発表した。 本製剤は、ヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)ホルモンのアナログ製剤で、空腹感を軽減し、満腹感を高めることで食事量を減らし、カロリー摂取量を減らすことを助け、体重減少を促す働きをもつ。なお、本製剤および効能・効果は、日本を含めて現在開発中であり、未承認の製剤である。肥満の2型糖尿病患者を対象にしたSTEP2試験 STEP2は68週間の無作為割り付け、二重盲検、多施設共同、プラセボ対照試験。本試験では、セマグルチド2.4mgを週1回、68週間にわたって皮下投与した際のプラセボおよびセマグルチド1.0mg週1回皮下投与に対する有効性および安全性を検討した。対象者は、合併症を伴う肥満または過体重の2型糖尿病の成人1,210例を対象に、生活習慣の介入を行った上で実施した。 無作為割り付けされた全例において、セマグルチド2.4mgの皮下投与による68週間の治療群では、プラセボ群およびセマグルチド1.0mgの皮下投与群と比較して統計的に有意に優れた体重減少が示された。セマグルチド2.4mgの皮下投与群では、ベースラインにおける平均体重99.8kgから9.6%の体重減少が達成されたのに対し、プラセボ群における体重減少は3.4%、セマグルチド1.0mgの皮下投与群における体重減少は7.0%だった。さらに、セマグルチド2.4mgの皮下投与群の68.8%が68週後に5%以上の体重減少に達したのに対し、プラセボ群では28.5%だった。 また、計画書の規定通り行われた場合の治療効果を評価したところ、セマグルチド2.4mgの皮下投与群では、68週後に10.6%の体重減少が認められたのに対し、プラセボ群では3.1%、セマグルチド1.0mgの皮下投与群では7.5%の体重減少が認められた。68週後に5%以上の体重減少が認められたのは、セマグルチド2.4mgの皮下投与群で73.2%であったのに対し、プラセボ群では27.6%だった。以上で本試験では、両主要評価項目を達成した。頻回行動管理療法を併用した肥満患者を対象にしたSTEP3試験 STEP3は68週間の無作為割り付け、二重盲検、多施設共同、プラセボ対照試験。対象者は、合併症を伴う肥満または過体重の成人611例を対象に、セマグルチド2.4mgを週1回、68週間にわたって皮下投与した際のプラセボに対する効果を比較した。両治療は、毎週の行動サポート、栄養士によるカウンセリング、カロリー摂取を抑える食事療法などで定義される頻回行動管理療法と併用して行われた。 無作為割り付けされた全例において、セマグルチド2.4mgの皮下投与に頻回行動管理療法を併用した治療群では、プラセボに頻回行動管理療法を併用した治療群と比較し統計的に有意に優れた体重減少が示された。セマグルチド2.4mgの皮下投与に頻回行動管理療法を併用した68週間の治療群では、ベースラインにおける平均体重105.8kgから16.0%の体重減少が達成されたのに対し、プラセボに頻回行動管理療法を併用した治療群における体重減少は5.7%だった。さらに、セマグルチド2.4mgの皮下投与に頻回行動管理療法を併用した治療群の86.6%が68週後に5%以上の体重減少を達成したのに対し、プラセボに頻回行動管理療法を併用した治療群では47.6%だった。 また、計画書の規定通りに治験が行われた場合の治療効果を評価したところ、セマグルチド2.4mgの皮下投与に頻回行動管理療法を併用した治療群では17.6%の体重減少が認められたのに対し、プラセボに頻回行動管理療法を併用した治療群では5.0%の体重減少が認められた。5%以上の体重減少が認められたのは、セマグルチド2.4mgの皮下投与に頻回行動管理療法を併用した治療群で89.8%であったの対し、プラセボに頻回行動管理療法を併用した治療群では50.0%だった。以上から本試験でも、両主要評価項目を達成した。 安全性につきSTEP2/STEP3試験にあってセマグルチド2.4mgは、これまでの試験と同様、安全かつ忍容性が良好なプロファイルを有すると考えられた。セマグルチド2.4mg皮下投与による主な有害事象は消化器症状で、ほとんどの事象は軽度または中等度で時間の経過とともに消失した。

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長期の生物学的製剤使用、メラノーマのリスクを増大?

 炎症性疾患に対する長期にわたる生物学的製剤の使用は、メラノーマのリスクを増大するのか。英国・マンチェスター大学のShamarke Esse氏らは、システマティック・レビューとメタ解析の結果、「その可能性を否定できない」とする所見が得られたことを報告した。生物学的製剤は、炎症性疾患の治療薬として幅広く処方されるようになっている一方で、免疫が介在した炎症性疾患である炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、乾癬の患者において、長期にわたる生物学的製剤治療は従来の全身治療と比べてメラノーマのリスクを増大するのではないか、との懸念が出ている。今回の結果を踏まえ、著者は「生物学的製剤による治療の長期安全性の問題を解決するためにも、主要なリスク因子を調整した大規模な研究が必要だ」と提言している。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年5月20日号掲載の報告。 検討では、Embase、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)をデータソースとして、1995年1月1日~2019年2月7日に公開された論文を検索した。適格条件は、無作為化臨床試験、コホート試験、IBD・RA・乾癬患者におけるメラノーマリスクについて生物学的製剤治療群と従来の全身治療群を比較し定量化したネステッド・ケースコントロール試験とした。 2人のレビュアーがそれぞれ主要な試験特性とアウトカムデータを抽出。試験に特異的な推定リスクをプールし、ランダム・固定効果モデルを用いてメタ解析を行った。不均一性はI2統計法で評価した。レビューは、疫学分野における観察研究のメタアナリシス報告のためのガイドライン(MOOSE)に準じて作成された。 主要評価項目は、IBD・RA・乾癬患者における、従来全身治療群と比較した生物学的製剤治療群のメラノーマ発生のプール相対リスク(pRR)であった。 主な結果は以下のとおり。・7コホート試験が適格基準を満たし、生物学的製剤治療群3万4,029例と、同未治療の従来全身治療群13万5,370例が包含された。・生物学的製剤治療は、各疾患患者のメラノーマ発生と正の相関がみられた。ただし、統計的有意差は認められなかった。・pRRは、IBD患者群1.20(95%信頼区間[CI]:0.60~2.40)、RA患者群1.20(同:0.83~1.74)、ハザード比は乾癬患者群で1.57(95%CI:0.61~4.09)だった。・ほかのリスク因子の調整は、ほとんどの研究で行われていなかった。

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急性低酸素血症性呼吸不全、非侵襲的酸素化療法で死亡率改善/JAMA

 急性低酸素血症性呼吸不全(AHRF)の成人患者の治療において、フェイスマスク型やヘルメット型の換気などの非侵襲的な酸素化戦略は、標準的な酸素療法に比べ死亡や気管内挿管に至るリスクが低いことが、カナダ・トロント大学のBruno L. Ferreyro氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2020年6月4日号に掲載された。AHRFは、成人患者の集中治療室(ICU)入室の主な原因であり、気管内挿管や侵襲的な機械的換気を要することが多い。侵襲的な機械的換気は重症有害事象と関連しており、不必要な気管内挿管の回避はAHRF患者の管理における重要な目標とされる。近年、酸素化や換気を支援するさまざまな非侵襲的な酸素化法が開発され、気管内挿管や死亡のリスクを低減する可能性が示唆されているが、どれが最も有効な方法かは不明だという。非侵襲的戦略のネットワークメタ解析 研究グループは、AHRFの成人患者において、非侵襲的酸素化戦略と、死亡および気管内挿管との関連を評価する目的で、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(筆頭著者はヴァニエ・カナダ大学院奨学金の助成を受けた)。 2020年4月の時点で、医学データベースに登録された文献を検索した。対象は、成人AHRF患者において、高流量鼻カニューレ酸素療法、フェイスマスク型非侵襲的換気、ヘルメット型非侵襲的換気、標準的酸素療法を比較した無作為化臨床試験とした。 2人のレビュアーがそれぞれ、個々の試験のデータを抽出し、Cochrane Risk of Bias toolを用いて試験のバイアスのリスクを評価した。ネットワークメタ解析では、bayesian frameworkを使用し、リスク比(RR)およびリスク差とともに、その95%確信区間(Crl)を算出した。また、GRADE法で、得られた知見の確実性を評価した。 主要アウトカムは、90日までの全死因死亡とした。副次アウトカムは、30日までの気管内挿管であった。高流量鼻カニューレ酸素療法は死亡リスクに差がない 25件の無作為化臨床試験(3,804例、試験ごとの患者数の範囲:30~776例)が解析に含まれた。 13件はフェイスマスク型非侵襲的換気と標準的酸素療法の比較であり、4件は高流量鼻カニューレ酸素療法と標準的酸素療法、2件はフェイスマスク型非侵襲的換気と高流量鼻カニューレ酸素療法、1件はフェイスマスク型とヘルメット型非侵襲的換気、4件はヘルメット型非侵襲的換気と標準的酸素療法を比較した試験であった。残りの1件は、フェイスマスク型非侵襲的換気、高流量鼻カニューレ酸素療法、標準的酸素療法の3群の比較だった。 死亡のリスク(21件、3,370例)は、標準的酸素療法と比較して、ヘルメット型非侵襲的換気(RR:0.40、95%CrI:0.24~0.63、絶対リスク差:-0.19、95%CrI:-0.37~-0.09、確実性:低)およびフェイスマスク型非侵襲的換気(0.83、0.68~0.99、-0.06、-0.15~-0.01、中)で有意に低かった。 気管内挿管のリスク(25件、3,804例)は、標準的酸素療法に比べ、ヘルメット型非侵襲的換気(RR:0.26、95%CrI:0.14~0.46、絶対リスク差:-0.32、95%CrI:-0.60~-0.16、確実性:低)、フェイスマスク型非侵襲的換気(0.76、0.62~0.90、-0.12、-0.25~-0.05、中)、高流量鼻カニューレ酸素療法(0.76、0.55~0.99、-0.11、-0.27~-0.01、中)で有意に抑制されていた。 気管内挿管リスクについては、治療法の割付が盲検でないことによるバイアスのリスクが高いと考えられた。 著者は、「個々の治療戦略の相対的な有益性を理解するには、さらなる検討を要する」としている。

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転移のない去勢抵抗性前立腺がんに対するエンザルタミドの有効性(解説:宮嶋哲氏)-1247

 経口アンドロゲン受容体阻害薬であるエンザルタミドの有効性に関する第III相PROSPER試験の最終報告である。非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者(1,401例)を対象に、アンドロゲン除去療法(ADT)とエンザルタミド併用群を、ADTとプラセボ併用群と比較検討している。 主要評価項目である無転移生存期間(metastasis free survival:MFS)に関しては2018年にすでに報告されているが、ADT+エンザルタミド併用群でADT+プラセボ併用群と比較して有意に低い転移および死亡のリスクを示していた(HR:0.29、95%CI:0.24~0.35、p<0.001)。 今回の検討では本試験の副次的評価項目の1つである全生存率(OS)について示されている。ADT+エンザルタミド併用群ではADT+プラセボ併用群と比較して、死亡リスクが27%低下していた(HR:0.73、95%CI:0.61~0.89、p=0.001)。OSの中央値は、ADT+エンザルタミド併用群で67ヵ月、ADT+プラセボ併用群で56ヵ月であった。G3以上の有害事象はADT+エンザルタミド併用群で48%、ADT+プラセボ併用群で27%に認めたが有意差を認めず、治療期間もADT+エンザルタミド併用群で33.9ヵ月とADT+プラセボ併用群14.2ヵ月より延長していた。 今回の最終報告により、非転移性去勢抵抗性前立腺がんにおいてADTにエンザルタミドの併用療法の有効性は明らかとなった。ただし、著者らが記しているように、転移のないことの確認は既存の画像検査でしか行われていないのが問題点でもある。事実、CRPC症例の90%以上が有転移症例であることから、今回のコホートには微小転移巣を有する症例が含まれていることは否定できない。PSMA-PETなどを利用したさらなる検討に期待したい。

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