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「ストレス食い」の悪影響、ココアで軽減の可能性

 ストレスから、ついクッキーやポテトチップス、アイスクリームなどの脂肪分の多い食べ物に手が伸びてしまう人は、ココアを飲むことで健康を守ることができるかもしれない。新たな研究で、脂肪分の多い食事を取るときに、フラバノールが豊富に含まれているココアを一緒に飲むことで、脂肪が身体に与える影響、とりわけ血管に与える影響の一部を打ち消すことができる可能性が示されたという。英バーミンガム大学のRosalind Baynham氏らによるこの研究の詳細は、「Food & Function」11月18日号に掲載された。 Baynham氏は、「フラバノールは、ベリー類や未加工のココア、さまざまな果物や野菜、お茶、ナッツ類に含まれている化合物の一種だ。フラバノールは健康に有益で、特に血圧を調節して心血管の健康を守ることが知られている」と説明している。フラバノールは、フラボノイド系化合物に分類されるポリフェノールの一種。緑茶の成分として知られるカテキン、エピカテキン、エピガロカテキンなどが、代表的なフラバノールに含まれる。 Baynham氏らは今回の研究で、18〜45歳の健康な成人23人(平均年齢21.57±4.11歳、男性11人、女性12人)に、バタークロワッサン2個(1個67g)、チェダーチーズ1切れ半(37.5g)、牛乳250mLの朝食を取ってもらった。さらに、この朝食に加えてフラバノール含有量の多いココア(1サービングあたりエピカテキン150mg、総フラバノール695mg)を飲む群と、フラバノール含有量が少ないココア(1サービングあたりエピカテキン6.0mg未満、総フラバノール5.6mg)を飲む群のいずれかにランダムに割り付けた。その後、参加者にストレスのかかる数学のテストを課し、血管機能と心臓の活動のモニタリングを行った。Baynham氏は、「このストレステストは、日常生活で遭遇するストレスと同様、心拍数と血圧の有意な上昇を誘発したことが確認された」とバーミンガム大学のニュースリリースの中で述べている。 その結果、低フラバノールのココアと一緒に脂肪分の多い食品で構成された朝食を取った人では、テストによってストレスがかかると血管機能が低下し、この機能低下はテストから90分後まで続いていることが確認された。一方、高フラバノールのココアはこのような血管機能の低下を抑えることが示された。高フラバノールのココアを飲んだ人では、低フラバノールのココアを飲んだ人と比べて、ストレステストから30分後と90分後の時点で測定した血管機能が有意に高いことが確認された。 論文の上席著者であるバーミンガム大学栄養科学のCatarina Rendeiro氏は、「この研究で、フラバノールが豊富に含まれる食品を飲んだり食べたりすることが、不健康な食品の選択によって血管系にもたらされる悪影響の一部を軽減する方法になり得ることが示された。このことは、われわれがストレスフルな時期に何を食べ、飲むべきかについて、より多くの情報に基づき判断するのに役立つ」と話している。 Baynham氏らは、加工度ができるだけ低いココアパウダーを探すか、緑茶や紅茶を飲むことを勧めている。ガイドラインでは、1日に400〜600mgのフラバノールの摂取を推奨している。これは、紅茶か緑茶を2杯飲むか、ベリー類やリンゴに純度の高いココアを組み合わせることで達成できる。 共著者でバーミンガム大学生物心理学教授のJet Veldhuijzen van Zanten氏は、「現代人の生活はストレスが多い。ストレスが人々の健康や経済活動に及ぼす影響については、すでに良く知られている。したがって、ストレスの症状から身を守るためにわれわれが変えられることがあるなら、どんなことでも有益だ」と話す。その上で同氏は、「ストレスを感じるとついおやつに手が伸びてしまう人や、プレッシャーのかかる仕事や時間がないことを理由にインスタント食品に頼りがちな人では、こうした小さな変化を取り入れることで大きな違いが生まれる可能性がある」と話している。

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“Real-world”での高齢者に対するRSVワクチンの効果(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

 60歳以上の高齢者に対する呼吸器合胞体ウイルス(RSV:Respiratory Syncytial Virus)に対するワクチンの薬事承認を可能にした第III相臨床試験の結果に関しては以前の論評で議論した(CLEAR!ジャーナル四天王-1775)。今回は実臨床の現場で得られたデータを基に高齢者に対するRSVワクチンの“Real-world”での効果(入院、救急外来受診予防効果)を検証し、高齢者に対するRSVワクチン接種を今後も積極的に推し進めるべき根拠が提出されたかどうかについて考察する。RSVのウイルス学的特徴 RSVは本邦において5類感染症に分類されるParamyxovirus科のPneumovirus属に属するウイルスである。RSVはエンベロープを有する直径150~300nmのフィラメント状の球形を示すネガティブ・センス一本鎖RNAウイルスで、11個の遺伝子をコードする約1万5,000個の塩基からなる。自然宿主はヒトを中心とする哺乳動物である。ヒトRSVの始祖は1766年頃に分岐し、2000年以降に下記に述べる複数のA型ならびにB型に分類される亜型が形成された(IASR. 国立感染症研究所. 2022;43:84-85.)。A型、B型を特徴付けるものはRSVの膜表面に存在する糖蛋白(G蛋白)の違いである。G蛋白は宿主細胞との接着に関与し、宿主の免疫に直接さらされるためRSVウイルスを形成する構造の中で最も遺伝子変異を生じやすく、A型、B型には約20種以上の亜型が報告されている(A型:NA1、NA2b、ON1など、B型:BA7、BA8、BA9、BA10など)。しかしながら、A型とB型ならびにそれらの亜型によって病原性が明確に異なることはなく、A型、B型が年の単位で交互に流行すると報告されている。G蛋白によって宿主細胞と接着したRSVは、次項で述べるF蛋白(1,345個のアミノ酸で構成)を介して宿主細胞と融合し細胞内に侵入する。 新生児においては母親と同程度のRSV抗体(母体からのIgG移行抗体)が認められるが、その値は徐々に低下し生後7ヵ月で新生児のRSV抗体は消失する。すなわち、RSV液性抗体の持続期間は約6ヵ月と考えなければならない。これ以降に認められるRSV抗体は生後に起こった新規感染に起因する(生後2年までに、ほぼ100%が新規感染)。それ以降、ヒトは生涯を通じてRSVの再感染を繰り返し、血液RSV抗体価は再感染に依存して上昇・下降を繰り返す。新生児の現状を鑑みると、RSV抗体が有意に存在する生後6ヵ月以内の新生児において新規のRSV感染は、より重篤な呼吸器病変を発現する場合があることが知られている。すなわち、RSVに対するワクチン接種によって形成されるRSV液性免疫は即座に感染防御を意味するものではなく、RSVを標的としたワクチン接種がより重篤な呼吸器病変を誘発する可能性があることを念頭に置く必要がある。以上の事実は、RSVワクチン接種を今後励行するか否かは、その予防効果を確実に検証した臨床試験の結果を踏まえて決定する必要があることを意味する。RSVワクチンの薬事承認 RSVに対するワクチンの開発は1960年代から始まり、不活化ワクチンの生成が最初に試みられた。しかしながら、不活化ワクチンは“抗体依存性感染増強(ADE:Antibody dependent enhancement of infection)”を高頻度に発現し、臨床的に使用できるものではなかった。それ以降、RSVの蛋白構造ならびに遺伝子解析が進められ、RSVが宿主細胞に侵入する際に本質的作用を有する膜融合蛋白(F蛋白:Fusion protein、コロナウイルスのS蛋白に相当)を標的にすることが有効な薬物作成に重要であることが示された。実際には、宿主の細胞膜と融合していない安定した3次元構造を有する膜融合前F蛋白(Prefusion F protein)が標的とされた。まず初めに膜融合前F蛋白に対する遺伝子組み換えモノクローナル抗体(mAb)であるパリビズマブ(商品名:シナジス、アストラゼネカ)が実用化され、種々のリスクを有する新生児、乳児のRSV感染に伴う下気道病変の重症化阻止薬として使用されている。 新型コロナ発生に伴い高度の蛋白・遺伝子工学技術を駆使した数多くのワクチンが作成されたことは記憶に新しい。新型コロナに対するワクチンは2種類に大別され、Protein-based vaccine(Subunit vaccine)とGene-based vaccineが存在する。これらの技術がRSVワクチンの作成にも適用され、遺伝子組み換え膜融合前F蛋白を抗原として作成されたProtein-based vaccineである、グラクソ・スミスクライン(GSK)のアレックスビー筋注用(A型、B型のF蛋白の差を考慮しない1価ワクチン)とファイザーのアブリスボ筋注用(A型、B型両方のF蛋白を添加した2価ワクチン)が存在する。一方、Gene-based vaccineとしてはModernaのmRESVIA(mRNA-1345、A型、B型のF蛋白の差を考慮しない1価ワクチン)が存在する。 GSKのアレックスビーは60歳以上の高齢者を対象としたRSV予防ワクチンとして世界に先駆け2023年5月に米国FDA、2023年9月に本邦厚生労働省の薬事承認を受けた。2024年11月、本邦におけるアレックスビーの適用が種々の重症化リスク(慢性肺疾患、慢性心血管疾患、慢性腎臓病または慢性肝疾患、糖尿病、神経疾患または神経筋疾患、肥満など)を有する50~59歳の成人にまで拡大された。一方、ファイザーのアブリスボは母子ならびに高齢者用のRSVワクチンとして2023年8月に米国FDAの薬事承認を受けた。本邦におけるアブリスボの薬事承認は2024年1月であり、適用は母子(妊娠28~36週に母体に接種)に限られ高齢者は適用外とされた。これは、アブリスボが高齢者に対して効果がないという意味ではなく、アレックスビーとの臨床的すみ分けを意図した日本独自の政治的判断である。ModernaのmRESVIA(mRNA-1345)は、2024年5月に高齢者用RSVワクチンとして米国FDAの薬事承認を受けたが本邦では現在申請中である。 以上より、2024年12月現在、本邦のRSV感染症にあっては、母子に対してはファイザーのアブリスボ、60歳以上の高齢者あるいは50歳以上で重症化リスクを有する成人に対してはGSKのアレックスビーを使用しなければならない。高齢者RSV感染に対するワクチンの予防効果―主たる臨床試験の結果Protein-based vaccineの第III相試験 60歳以上の高齢者を対象としたGSKのアレックスビーに関する国際共同第III相試験(AReSVi-006 Study)は2万4,966例を対象として追跡期間が6.7ヵ月(中央値)で施行された(Papi A, et al. N Engl J Med. 2023;388:595-608.)。ワクチンのRSV下気道感染全体に対する予防効果は82.6%であり、A型、B型に対する予防効果に明確な差を認めなかった。COPD、喘息、糖尿病、慢性心血管疾患、慢性腎臓病、慢性肝疾患などの基礎疾患を有する高齢者に対する下気道感染予防効果は94.6%と高値であった。ワクチン接種により、RSVに対する中和抗体(液性免疫)ならびにCD4陽性T細胞性免疫が発現する。しかしながら、アレックスビー接種後の液性免疫、細胞性免疫の持続期間に関する正確な情報は提示されていない。有害事象はワクチン群の71.6%に認められたが、注射部位を中心とする局所副反応が中心であった。本邦では適用外であるが、60歳以上の高齢者を対象としたファイザーのアブリスボに関する治験結果も報告されており、予防効果はGSKのアレックスビーとほぼ同等であった(国際共同第III相試験:C3671008試験、2024年1月18日ファイザー発表)。Gene-based vaccineの第III相試験 高齢者を対象としたGene-based vaccineであるModernaのmRESVIA(mRNA-1345)に関する国際共同第III相試験は、3万5,541例を対象とし、追跡期間3.7ヵ月(中央値)で施行された。RSV関連下気道感染に対する予防効果は83.7%であり、基礎疾患の有無、RSVの亜型(A型、B型)によって予防効果に明確な差を認めなかった(Wilson E, et al. N Engl J Med. 2023;389:2233-2244.)。以上の結果は、Gene-based vaccineの予防効果はProtein-based vaccineと質的・量的に同等であり、mRESVIAは本邦においても来年度には厚労省の薬事承認が得られるものと期待される。Real-worldでの観察結果 綿密に計画された第III相試験ではなく、ワクチン承認後の最初のRSV流行シーズンでの60歳以上の高齢者を対象とした“Real-world”でのRSVワクチン予防効果に関する報告が米国から提出された(Payne AB, et al. Lancet. 2024;404:1547-1559.)。この検討は、米国8州の電子カルテネットワークVISION(Virtual SARS-CoV-2, Influenza, and Other respiratory viruses Network)を用いて施行された(対象の集積は2023年10月1日~2024年3月31日の6ヵ月)。解析対象は試験期間中にVISIONによって抽出された入院症例(3万6,706例)あるいは救急外来を受診した症例(3万7,842例)であった。入院症例のうちGSKのアレックスビー、ファイザーのアブリスボを接種していた人の割合はおのおの7%、2%であった。救急外来を受診した症例にあっては、アレックスビーを接種していた人が7%、アブリスボを接種していた人が1%であった。 免疫正常者の入院者数は2万8,271例で、RSV関連入院に対するワクチンの予防効果は80%、RSV感染による重篤な転帰(ICU入院、死亡)に対するワクチンの予防効果は81%であり、重症化もワクチン接種によって明確に軽減できることが示された。免疫正常者のRSV関連救急外来受診者数は3万6,521例で、ワクチン接種の予防効果は77%であった。免疫不全患者のRSV感染による入院者数は8,435例で、免疫不全症例におけるRSV感染関連入院に対するワクチンの予防効果は73%であった。以上の結果はワクチンの種類によって影響されなかった。すなわち、第III相試験ならびにReal-worldでの観察結果は高齢者に対するRSVワクチン接種の有効性を証明した。数十年前に作成されたRSV不活化ワクチン接種時に高頻度に認められた“抗体依存性感染増強”を中心とする重篤な副反応は、現在のProtein-based vaccine、Gene-based vaccineでは発生しないことが実臨床の場で確認された。 成人におけるRSVワクチン接種の今後の課題として、以下が挙げられる。1)ワクチン接種後のIgG由来の液性免疫動態ならびにT細胞由来の細胞性免疫動態の時間的推移を確実にする必要がある。この解析を介してRSVワクチンの至適接種回数を決定できる(年2回、年1回、2年に1回など)。米国CDCは成人に対するRSVワクチンは毎年接種する必要はないとの見解を示しているが、ワクチン接種後の液性免疫、細胞性免疫の持続期間が確実にならない限り、米国CDCの推奨が正しいとは結論できない。2)ワクチン作成の本体を担うF蛋白に関して、その遺伝子変異の状況をもっと詳細にモニターするシステムを構築する必要がある。これによって今後のRSV流行時に、今年度までに作成されたワクチンをそのまま適用できるか否かを決定できる。3)ワクチン接種時期はその年の流行直前が理想的である。しかしながら、本邦においては、RSV感染が小児科定点からの報告のみであり、成人データは確実性に乏しい。今後、RSV感染症に関する流行情報を、成人を含めた広範囲な対象で収集する本邦独自のサーベイランス・システムの構築が必要である。この情報を基に、高齢者におけるワクチン接種の正しい時期を決定する必要がある。4)小児では迅速抗原検査がRSV感染の診断に有用であるが、成人では感染に伴うウイルス量が少なく迅速抗原検査の感度が低い(単独PCR検査の10~20%)。すなわち、現状では成人におけるRSV感染の簡易確定診断が難しく、RSVワクチン接種の対象となる成人を抽出するのに支障を来す。たとえば、ワクチン接種前数ヵ月以内の感染者に対してはワクチン接種を避けるべきである。5)本邦ではRSVワクチン接種の対象が50歳以上(ただし、感染による重症化リスクを有する)まで引き下げられたが、米国CDCは今年になって、本邦の考えとは逆にRSVワクチン接種の対象を75歳以上あるいは60~74歳で重症化リスクを有する高齢者に引き上げた。米国CDCの考えは、医学的側面に加え医療経済的側面を考慮した変更と考えられる。従来の対象者選択基準が正しいのか、米国CDCの新たな選択基準が正しいのか、今後の“Real-world”での観察結果が待たれる。

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「クリスマス咳嗽」の理由【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第271回

「クリスマス咳嗽」の理由クリスマスの時期になると、呼吸器内科では喘息や気管支炎の増悪で来院する人が多くなります。年末年始にかけて受診できないと困りますので、早めの軽症の状態で受診しようという理由もあるでしょうが。今日紹介するのは、まさにクリスマス咳嗽の典型ともいえる症例。Carsin A, et al.When Christmas decoration goes hand in hand with bronchial aspiration…Respir Med Case Rep. 2017 Sep 29;22:266-267.2歳2ヵ月の女児が、クリスマスの2日前に、急性の咳嗽と喘鳴を起こしました。かかりつけ医を受診したところ、両側に喘鳴があることを発見し、既往歴として喘息があったことも踏まえ、喘息の急性増悪として対応しました。吸入サルブタモールと経口プレドニゾロンで治療を行いました。しかし、治療開始3週間後も、臨床状態は変わらずの状態。ほかに何か原因があるのではないかと疑い、胸部単純X線検査が行われました。すると、なんと、左主気管支に異物が存在していました。「これは…アレだよね?」というのは誰しもわかるX線写真です。これは…LED電球です!両親によると、そういえばクリスマスツリーの装飾に使っていたLED電球が1つなくなっていたそうです。なんと、女児はLED電球を誤嚥していたのです。―――というわけで、全身麻酔のもと、気管支鏡によってLEDは無事除去されました。クリスマスの時期に誤嚥を起こすと、時期的にも喘息や気管支炎と誤診されやすいので注意が必要、と当該論文の著者は述べています。とくに今回は、喘息の既往があったため、初期治療として吸入β2刺激薬と経口ステロイドが処方されてしまいました。確かにLEDは小さいので、誤嚥しやすいと思います。中国でも右主気管支にLEDを誤嚥した事例が報告されています1)。皆さんも、お子さんのクリスマス咳嗽にはご注意を!1)Lau CT, et al. A light bulb moment: an unusual cause of foreign body aspiration in children. BMJ Case Rep. 2015:2015:bcr2015211452.

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第242回 今話題の“直美“、美容外科学会や消費者が見限るのは時間の問題か

実は最近、複数のメディア関係の友人・知人から、同じことを聞かれた。それは「直美(ちょくび)ってやっぱり問題なんですか?」というもの。すでにご存じの方も多いと思うが、直美は医師の初期研修2年間を終了後、そのまま自由診療の美容医療に進む医師のことである。こうしたことを聞かれることが増えたのは、おそらく今年6月に厚生労働省が「美容医療の適切な実施に関する検討会」をスタートさせ、先ごろ報告書がまとまったからだろう。検討会が設置された背景には、自由診療で行われる美容医療の需要が近年増加するとともに不適切な行為によるトラブルの相談件数も増加しているからだと言われる。国内の美容医療に関わる医師数日本美容外科学会による全国美容医療実態調査1)によると、回答医療機関で行われた非外科的手技も含む美容医療の施術回数は2019年が123万回に対し、2022年は372万2,000回。回答医療機関数に違いはあるものの、単純比較では3年間で3倍強まで増加している。このうちの外科的手技は2019年が19万回、2022年が85万8,000回。こちらは4倍以上の増加だ。そもそも美容医療で外科的と非外科的な手技の違いは馴染みのない人にはわかりにくいかもしれないが、非外科的手技に含まれるものの代表格は、脱毛、ボツリヌス菌毒素注入(通称:ボトックス注射)、セルライト治療などである。この3つは非外科的と分類されてはいるが、実際のところ、非侵襲的手技とは言い難い。2022年調査の施術回数のうち、この3つの施術回数合計は152万2,000回。これに外科的手技の回数を併せれば、全国で行われている美容医療施術の実に半数以上が侵襲を伴う手技と言える。一方、美容医療に従事する医師数について、前述の検討会資料では診療科として「美容外科」「形成外科」「皮膚科」に従事する診療所の医師数の推移を医師・歯科医師・薬剤師統計に基づき示しているが、その中でも一番典型と言える美容外科の医師数は2008年を1とすると、2022年は3.2とこちらもかなり増加している。そして同統計による医師の年齢階級別割合は、診療所勤務医師全体は30代までの医師の割合が10%未満にもかかわらず、美容外科診療所に限定すると50%超、20代だけでも10%以上を占めているのだ。しかも、10年前の2012年の同データでは美容外科診療所勤務医師に占める30代までの割合は30%台。これらから直美が多いことがうかがえる。美容医療に関する相談件数もうなぎのぼり、その問題点そして国民生活センターと全国の消費生活センターなどをオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベース「全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)」に2024年3月31日までに登録された美容医療に関する相談件数は、2018年が1,741件、医療サービス全体の相談件数に占める割合が29.8%だったが、2022年にはそれぞれ5,507件、57.8%にまで急増している。美容医療に従事する医師からは批判もあると思うが、これらのデータを総合すれば、美容医療のニーズと施術増加の中で直美も増加し、その中で相談件数、いわばクレームも増加していると一般的には受け止められる。ただ、もちろんこれは非常に雑駁な捉え方で、相談件数増加の背景には、近年の消費者の権利意識の向上なども影響しているだろうし、相談のすべてが美容医療の提供側に問題があるとも言い切れないだろう。そのうえでも私見ながら直美の増加は大きな問題を内包していると、私は問い合わせを受けたメディア関係者には伝えている。その問題とは主に手技とコミュニケーション能力の2点である。経験値が物を言う手技とコミュ力まず、前述のように美容医療では、外科を除く他の診療科と比べ、成否が習熟度に依存する侵襲を伴う施術が多い。一般論で言えば、美容医療の中でも直美とそうでない医師では、施術の完成度の高さ、看過できないミスの頻度は異なるだろう。そして、頭でわかっていても納得しがたいことではあるが、医療も人が行う以上、常にミスが生じる可能性はある。しかも、美容医療は世間が思っている以上に施術のミスが不可逆的な結果、最悪は死を招くことがあるのは一部で報じられている通りだ。問題はミスが生じた時のリカバリー力である。これは才能で解決できるようなものではなく、習熟度、いわば場数が物を言う。このことはなにも美容医療に限ったことではないことは多くの人がご存じだろう。この点でとりわけ直美は問題を起こしがちになるだろう。ちなみに日本美容外科学会が規定する専門医制度では、専門医として認定する前提として▽申請時点で連続して3年以上の正会員▽形成外科専門医を有している▽申請時に4年間の形成外科専門医研修終了時から3年を経過している、とかなり厳格な定めがある。言ってしまえば、美容医療の本流医師は直美なぞ求めていないと言ってよい。もう1つのコミュニケーションだが、とくに美容医療では通常の医療よりもきめ細かなコミュニケーションが必要と考えられる。なぜならば、通常の医療と美容医療では最終目標が異なるからだ。通常の医療の最終目標は、「医学的な救命・治癒・寛解」である。多くの場合、これらには一定程度明確な指標がある。これに対して美容医療は「施術を受ける人の満足」が最終目標である。そして美容医療に限らずどのような医療にも限界はある。だが、おおむね消費者の医療に対する期待は高い。医師は常に消費者・患者の期待値を医療の現実・限界にまで引き落とすコミュニケーションが求められる。その中にあって美容医療は、ヒトの飽くなき欲望の1つである「美の追求」の実現が前提のため、施術を受ける側の期待値と医療の現実との乖離は、通常の医療に比べ、かなり大きいはずである。この期待値コントロールのコミュニケーションを間違えば、医学的には成功の範疇に入る施術でも患者からは失敗と評され、トラブルになってしまう。だからこそ熟練度の高いコミュニケーション能力が求められる。手技と比べれば、才能が解決する余地はあるかもしれないが、やはりこれとて場数である。私が前述のメディア関係者の友人・知人に伝えた内容はざっとこのような感じである。さて前述の厚生労働省の検討会だが、11月28日には報告書を公表している。この中では直美についても議論にのぼったようだが、報告書では「本検討会においては、医師の偏在是正の観点から臨床研修修了直後であるなど若手の医師が美容医療の領域に流れていること等の諸課題について指摘されたところ、かかる問題については、本検討会の議論の対象ではないものの、引き続き、厚生労働省において別途必要な検討をしていく必要がある」と記述されている。これを受けて厚生労働省はどう動くのか? せっかく“鉄が熱くなった”のだから、引き続き議論を進めてほしいと思うのだが。参考1)厚生労働省:資料1 美容医療に関する現状について

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ブータンの緩和ケアを見てきました【非専門医のための緩和ケアTips】第90回

ブータンの緩和ケアを見てきました最近は国際保健に関心のある医学生が増え、学会でも学生時代から海外で活動した発表を目にする機会があります。私自身、国際経験は多くないのですが、今年になってブータンに行く機会があり、この経験を紹介します。今回の質問学生時代にアジアのさまざまな国を旅行するのが趣味でした。訪問診療をする一方で、海外の医療にも関心を持っています。日本のように制度が整っている国ばかりではないと思うのですが、何か経験はありますか?先日、緩和ケアの指導医としてブータンに行ってきました。文化や医療システムがまったく異なる環境でさまざまなことを経験したので、そんな海外の緩和ケア事情をお伝えしたいと思います。まず、ブータンに行った経緯ですが、APHN(Asia Pacific Hospice Palliative Care Network:アジア太平洋ホスピス緩和ケアネットワーク)という団体があり、アジア各国で緩和ケアにおける研究や教育、普及啓発、ネットワーク構築に取り組んでいます。私は数年前からこの団体の活動に参加しています。この団体の取り組みでユニークなものとして、緩和ケアの体制づくりに取り組む国への支援があります。さまざまな国から指導者を派遣し、レクチャーやベッドサイドでの教育を支援するのです。今回、私はこのプログラムに参加するかたちでブータンを訪問しました。ブータンは人口約80万人、九州程度の広さの国です。以前、ブータンの国王が来日した際、「世界一の幸福度の高い国」として話題になりました。そんなブータンにおける緩和ケア事情とは、どのようなものなのでしょうか?ブータンの医療事情は、日本と比較すれば厳しい面が多くあります。心臓カテーテル検査や放射線治療を国内で実施できず、必要な患者は国外の医療機関に紹介する必要があります。実際、私が訪問診療に同行した患者は、インドでPET-CTや放射線治療を受けていました。一方で、緩和ケアについては提供体制を構築中であり、数年前に女性医師がシンガポールに1年間の研修に行き、ブータンに戻ってさまざまな体制をつくろうとしている状況です。私が参加したプログラムもこの部分を支援するためのものでした。今回のプログラムは、月~金曜日の5日間、午前中は講義とグループワークの座学、午後は訪問診療と急性期医療機関でのベッドサイドティーチングというスケジュールでした。会話はすべて英語で、私は「せん妄」と「がんに関連した大量出血の対応」のテーマで講義をしました。40人程度の受講生は医師、看護師、薬剤師などで、皆が真剣に話を聞いてくれました。質疑応答ではお互いの経験に基づく実践的な質問があり、私も日本で経験した大量出血を起こしたがん患者さんの例などをお話ししました。同じ症状や病態に対しても、医療体制や文化が異なるとアプローチが異なるのは興味深いことでした。私の講義中に多くの時間を割いたのが、「倫理的検討」をテーマにしたグループワークでした。実際に訪問診療を行い、その患者の情報を「臨床倫理の4分割」という方法を使って整理し、発表するのです。臨床倫理の4分割は日本でもよく用いられている手法で、倫理的な問題に直面した際、「医学的側面・患者の意向・周辺の状況・QOL」の4つの要素を整理しながら議論します。私たちが担当した患者は、「将来的には生まれ故郷のインドに戻りたい」という思いがありました。それを踏まえ、「家族内で終末期に関する話し合いをどのように促すか」というテーマで議論をしました。こうした複雑な内容の議論を英語で行うのはハードルが高かったのですが、良い経験になりました。ブータンは仏教国で、行政もゾンと呼ばれる寺院で行われます。訪問診療に行った際の患者の自宅でも、ベッドが日本でいうところの仏壇のようなつくりで、まるで祭壇の前に横たわっているようでした。ホテルの前にも有名な寺院があり、早朝から多くの参拝者が熱心に祈りを捧げていました。このように生活の中に宗教が文化として定着している光景は見たことがなく、緩和ケア医である私にとって非常に新鮮で大きな経験となりました。このような日常と異なる環境や文化、人々に触れることは緩和ケア医としてはもちろん、医療者としても非常に大切なことだと思います。ちなみにブータンの方々は英語が非常に堪能で、議論の際は私のほうが拙い英語で申し訳ない思いでした。それでも、お互いの考えを確認し合いながら学びを深めていく作業によって、大変さに見合うだけの絆ができたように感じました。今回のTips今回のTipsそれぞれの国で異なる緩和ケア事情を学んでみるのも楽しいですよ。世界の医療事情・ブータン/外務省

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Staphylococcus saprophyticusによる膀胱炎【1分間で学べる感染症】第17回

画像を拡大するTake home messageStaphylococcus saprophyticusは膀胱炎の原因菌として重要!Staphylococcus saprophyticus(S. saprophyticus)は、聞き慣れない方も多いと思いますが、膀胱炎の原因菌として、とくに若年女性を診るときに重要な菌の1つです。今回は、このS. saprophyticusに関して一緒に学んでいきましょう。歴史的背景S. saprophyticusは、もともとは尿培養から検出された場合でもコンタミネーションと考えられていました。しかし、1960年代からとくに若年女性においてこの菌が頻繁に検出されることが認識され、膀胱炎における大腸菌以外の主要な病原菌として注目されるようになりました。微生物学的特徴S. saprophyticusはグラム陽性球菌であり、コアグラーゼ陰性、非溶血性です。古典的には、ノボビオシンに対する耐性があることが、ほかのコアグラーゼ陰性菌と区別するための重要な特徴とされてきました。もう1つの重要な特徴がウレアーゼ産生で、この特性によって腎結石および尿管結石を形成しやすいとされています。病原因子S. saprophyticusの病原因子としては、表面関連タンパク質による尿路上皮細胞への粘着やヘマグルチニン、ヘモリシンなどの産生が知られています。これらの機序により尿路において病原性を示し、尿路感染症を引き起こします。臨床症状若年女性の膀胱炎や尿路結石で多くの報告があります。まれですが、腎盂腎炎、尿道炎、副睾丸炎、前立腺炎の報告もあります。性的に活発な若年女性では、膀胱炎の原因菌として大腸菌に続いて2番目であるとも報告されています。薬剤感受性一般的にはST合剤に優れた感受性を示すとされています。そのほか、アモキシシリン/クラブラン酸塩、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、バンコマイシンなどの感受性も報告されていますが、これらの耐性増加も報告されており、感受性試験が推奨されます。S. saprophyticusは、若年女性における膀胱炎の重要な原因菌です。尿グラム染色でグラム陽性球菌が確認された際には鑑別の1つとして本菌を考慮するようにしましょう。1)Raz R, et al. Clin Infect Dis. 2005;40:896-898.2)Widerstrom M, et al. J Clin Microbiol. 2007;45:1561-1564.3)Marrie TJ, et al. Antimicrob Agents Chemother. 1982;22:395-397.4)Olsen RC, et al. AIM Clinical Cases. 2024;3:e230613.

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SGLT2阻害薬はがん発症を減らすか~日本の大規模疫学データ

 近年、SGLT2阻害薬は実験レベルでさまざまながん種に対する抗腫瘍効果が示唆されている。臨床においても、無作為化試験や観察研究などでSGLT2阻害薬とがん発症リスクとの関係が検討されているが結論は出ておらず、一般的にがん発症率が低いことを考慮すると大規模な疫学コホートでの検討が必要となる。今回、東京大学/国立保健医療科学院の鈴木 裕太氏らが全国規模の疫学データベースを用いて、SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬を処方された患者におけるがん発症率を調べた結果、SGLT2阻害薬のほうががん発症リスクが低く、とくに大腸がんの発症リスクが低いことがわかった。Diabetes & Metabolism誌2024年11月号に掲載。 大規模疫学データベースにおいて、新規でSGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬を処方された糖尿病患者を解析した。主要評価項目はがん発生率とし、傾向スコアマッチングアルゴリズムを用いて、SGLT2阻害薬群とDPP-4阻害薬群におけるがん発症率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・2万6,823例を1:2(SGLT2阻害薬群8,941例、DPP-4阻害薬群1万7,882例)に傾向スコアマッチングした。平均追跡期間2.0±1.6年の間に1,076例ががんを発症した。・SGLT2阻害薬投与はがんリスク低下と関連し(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.70~0.91)、とくに大腸がんリスクの低下と関連していた(HR:0.71、95%CI:0.50~0.998)。・この結果は、オーバーラップ重み付け解析(HR:0.79、95%CI:0.66~0.94)、治療の逆確率重み付け解析(HR:0.75、95%CI:0.65~0.86)、導入期間の設定(HR:0.78(95%CI:0.65~0.93)を含む種々の感度解析で一貫していた。・がん発症リスクはそれぞれのSGLT2阻害薬で同程度であった。 この全国のリアルワールドデータを用いた検討結果から、著者らは「糖尿病患者におけるがん発症抑制においてはDPP-4阻害薬よりSGLT2阻害薬のほうが有利である可能性が示された」としている。

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統合失調症発症後20年間における抗精神病薬使用の変化

 統合失調症に対する抗精神病薬の短期的な治療は、有益であることが証明されている。しかし、抗精神病薬の長期的な治療に関しては議論の余地が残っており、自然主義的な研究は不十分である。デンマーク・Mental Health Center CopenhagenのHelene Gjervig Hansen氏らは、初回エピソード統合失調症患者における20年後の抗精神病薬使用状況の変化を調査するため、本研究を実施した。Psychological Medicine誌オンライン版2024年11月18日号の報告。 本研究は、初回エピソード統合失調症患者496例を含むデンマークOPUS試験(1998~2000年)の一部である。対象患者には、20年にわたり4回の再評価を行った。主要アウトカムは、投薬日数、クロザピン使用歴、精神科入院、雇用とした。 主な結果は以下のとおり。・20年間のフォローアップ期間中に、71%の患者が脱落した。・フォローアップが継続可能であった143例のうち、20年目に抗精神病薬を必要としない精神症状寛解が51例(36%)で認められた。・これらの患者群では、20年間の投薬日数が最も少なかった(平均:339±538日)。・使用された抗精神病薬に関する登録ベース分析では、416例のデータが入手可能であった。・20年間のフォローアップ調査において抗精神病薬治療を継続していた患者120例は、抗精神病薬を中止した患者296例よりも、治療日数の長さ(平均日数:5,405±1,857日vs. 1,434±1,819日、p=0.00)、クロザピン使用歴を有する(25% vs.7.8%、p=0.00)において、有意な差が認められた。・さらに、治療を中止した患者は、20年間フォローアップ期間中の就業率が有意に高かった(28.4% vs.12.5%、p=0.00) 著者らは「脱落率が高いため、本研究結果は過大評価されている可能性がある」としながらも「初回エピソード統合失調症患者の36%において、抗精神病薬治療を中止した精神症状寛解を達成していた。また、脱落のない登録ベース分析では、70%の患者が抗精神病薬を中止していた。抗精神病薬治療を継続している患者は、アウトカムが最も不良であり、より重度であることが示唆された」と結論付けている。

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導入療法後に病勢進行のないHR+/HER2+転移乳がん1次治療、パルボシクリブ追加でPFS改善(PATINA)/SABCS2024

 導入療法後に病勢進行のないホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陽性(HER2+)転移乳がん患者における1次治療として、抗HER2療法と内分泌療法へのパルボシクリブの追加は無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善した。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のOtto Metzger氏が、第III相無作為化非盲検PATINA試験の結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。・対象:HR+/HER2+転移乳がん患者(6~8サイクルの導入化学療法+トラスツズマブ±ペルツズマブ後に病勢進行なし)・試験群:パルボシクリブ125mgを1日1回経口投与(3週間)+トラスツズマブ±ペルツズマブ+内分泌療法(パルボシクリブ追加群、261例)・対照群:トラスツズマブ±ペルツズマブ+内分泌療法(抗HER2療法+内分泌療法群、257例)・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など・層別化因子:ペルツズマブ投与の有無、術後(術前)補助療法としての抗HER2療法の有無、導入療法への反応(CR/PR vs.SD)、内分泌療法の種類(フルベストラントvs.アロマターゼ阻害薬[AI]) 主な結果は以下のとおり。・患者登録は2017年6月~2021年7月に行われた。・ベースラインの患者特性は、年齢中央値がパルボシクリブ追加群53.5歳vs.抗HER2療法+内分泌療法群53.0歳、導入療法のサイクル数中央値がともに6、ペルツズマブ投与ありが96.9% vs.97.7%、術後(術前)補助療法としての抗HER2療法ありが72.8% vs.70.8%、導入療法への反応はCR/PRが68.6% vs.68.5%、内分泌療法の種類はAIが90.8% vs.91.1%であった。・治験責任医師評価によるPFS中央値は(データカットオフ:2024年10月15日)、パルボシクリブ追加群44.3ヵ月vs.抗HER2療法+内分泌療法群29.1ヵ月で、パルボシクリブ追加群における有意な改善がみられた(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.58~0.94、片側p=0.0074)。・PFSのサブグループ解析では、ペルツズマブ投与や術後(術前)補助療法としての抗HER2療法歴の有無、導入療法への反応や内分泌療法の種類によらず、パルボシクリブ追加群で良好であった。・奏効率(ORR)はパルボシクリブ追加群29.9% vs.抗HER2療法+内分泌療法群22.2%(p=0.046)、臨床的有用率(CBR)は89.3% vs.81.3%(p=0.01)でいずれもパルボシクリブ追加群で良好であった。・OS中央値(中間解析)はパルボシクリブ追加群NE vs.抗HER2療法+内分泌療法群77ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.6~1.24)、3年OS率は87.0% vs.84.7%、5年OS率は74.3% vs.69.8%であった。・パルボシクリブ追加群で最も多くみられた有害事象はGrade3の好中球減少症(63.2%)で、Grade2および3の疲労、口内炎、下痢も多くみられた。Grade4の有害事象発現率はパルボシクリブ追加群12.3% vs.抗HER2療法+内分泌療法群8.9%で有意差はなく(p=0.21)、治療関連の死亡は両群ともに報告されていない。 Metzger氏は同療法について、HR+/HER2+転移乳がん患者に対する新たな標準治療となる可能性があると結んでいる。

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慢性心血管系薬のアドヒアランス不良、リマインドメッセージでは改善せず/JAMA

 心血管系薬剤のリフィル処方を先延ばしにする患者にリマインダーのテキストメッセージを送っても、薬局の処方データに基づく服薬アドヒアランスの改善や、12ヵ月時の臨床イベントの減少は得られなかった。米国・Kaiser Permanente ColoradoのP. Michael Ho氏らが、プラグマティックな無作為化非盲検試験において示した。患者の行動変容にテキストメッセージが用いられるようになってきているが、これまで厳密な検証は行われていないことが多かった。著者は、「服薬アドヒアランスの不良には、複数の要因が関与していると考えられることから、今後の介入ではアドヒアランスに影響を与える複数の要因に対処するよう取り組む必要があるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年12月2日号掲載の報告。服薬アドヒアランスが不十分な患者を4群に無作為化、1年後のPDCを比較 研究グループは、米国の3つの医療システム(Denver Health and Hospital Authority、Veterans Administration (VA) Eastern Colorado Health Care System、UCHealth's University of Colorado Hospital)において、1つ以上の心血管関連疾患(高血圧症、脂質異常症、糖尿病、冠動脈疾患[CAD]、心房細動)の診断を有し、その治療のために1種類以上の薬剤が処方されている18歳以上90歳未満の成人患者を特定した。対象となる心血管系薬剤のリフィル処方に7日以上間隔が空いた患者を、次の4群に無作為に割り付けた。(1)一般的リマインダー群(処方間隔が空いた場合に処方を促すテキストメッセージを送信)、(2)行動ナッジ群(行動ナッジを組み込んだリマインダーメッセージを送信)、(3)行動ナッジ+チャットボット群(行動ナッジを組み込んだリマインダーメッセージに、服薬アドヒアランスの一般的な障壁を評価するチャットボットを追加)、(4)通常ケア群(テキストメッセージを送信しない)。 主要アウトカムは、無作為化後12ヵ月間における処方日数の割合(proportion of days covered:PDC)で定義したリフィルアドヒアランスであった。いずれのメッセージを送っても、送らない場合と差はなし 2019年10月~2022年4月に9,501例が無作為化され、2023年4月11日まで追跡した。このうち追跡データがない232例を除外した9,269例が解析対象となった。平均年齢は60歳、女性が47%(4,351例)、黒人が16%(1,517例)、ヒスパニック系が49%(4,564例)であり、4群の患者背景はほぼ同等であった。 12ヵ月時の平均PDCは、一般的リマインダー群62.0%、行動ナッジ群62.3%、行動ナッジ+チャットボット群63.0%、通常ケア群60.6%であった(p=0.06)。 通常ケア群との補正後絶対差は、一般的リマインダー群2.2(95%信頼区間:0.3~4.2、p=0.02)、行動ナッジ群2.0(0.1~3.9、p=0.04)、行動ナッジ+チャットボット群2.3(0.4~4.2、p=0.02)であったが、多重比較の調整後はいずれも統計学的有意差は認められなかった。 副次アウトカムである救急外来受診、入院および死亡の臨床イベントまでの期間についても、群間で差はなかった。

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進行・再発子宮体がんの新たな治療選択肢/AZ

 アストラゼネカは、2024年12月13日に「イミフィンジ・リムパーザ適応拡大メディアセミナー ~進行・再発子宮体がん治療における免疫チェックポイント阻害剤・PARP阻害剤の新たな可能性~」と題したメディアセミナーを開催した。 進行・再発子宮体がんにおける新たな治療選択肢として、イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)は「進行・再発の子宮体」、リムパーザ(一般名:オラパリブ)は「ミスマッチ修復機能正常(pMMR)の進行・再発の子宮体におけるデュルバルマブ(遺伝子組換え)を含む化学療法後の維持療法」をそれぞれ効能または効果として、本年11月22日に厚生労働省より承認を取得している。 セミナーでは、東京慈恵会医科大学産婦人科学講座 主任教授の岡本 愛光氏、同じく講師/診療医長の西川 忠曉氏が、進行・再発子宮体がん治療における現状と課題、デュルバルマブとオラパリブの臨床成績のポイントについて語った。進行・再発子宮体がん治療における現状と課題 岡本氏からは、子宮体がん治療における現状と課題が述べられた。子宮体がんの発生は40代後半から増加し50〜60代をピークとし、日本では年間約1万7,800例が診断され約2,800例が死亡している。組織型の分類では約8割が類内膜がんであり、早期の場合は比較的予後は良好であるが進行期は予後不良、5年生存率についてはStageIVで21.0%と推定されている。子宮体がんとミスマッチ修復 子宮体がんの分類は、分子遺伝学分類が行われるようになってきている。WHO分類(第5版)では、類内膜がんをPOLE-ultramutated、MMR-deficient、p53-mutant、非特異的分子プロファイル(NSMP)に区分する、分子遺伝学的分類が採用されている。 ミスマッチ修復(MMR)については、状態により免疫療法の反応性が異なるといわれており、海外のガイドラインでは、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を検討している子宮体がん患者に対してMMR欠損の検査を推奨している。 MMR機能はDNA複製の際に生じる相補的ではない塩基対合(ミスマッチ)を修復するものであり、MMR機能が低下した状態をMMR deficient(dMMR)、機能が保たれた状態をMMR proficient(pMMR)と表現している。dMMR細胞では腫瘍変異負荷(TMB)が高くICIが奏効しやすいといわれているが、pMMR細胞ではICIの効果は限定的であるとの報告がある。DUO-E試験における臨床成績 子宮体がん治療の第1選択は手術療法であるが、再発リスクが中・高リスク群では術後補助療法が行われる。ICIは、進行・再発例であり化学療法で増悪した症例に使用されるため1次治療で用いることはできなかったが、デュルバルマブとオラパリブの適応拡大により1次治療としての選択肢が増えたことになる。 西川氏は、新たに診断された進行または再発子宮体がん患者を対象とし、デュルバルマブおよびオラパリブの有用性を検討したDUO-E試験について解説した1)。本試験は、白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法群(カルボプラチン+パクリタキセル:TC群)、化学療法(TC)とデュルバルマブ併用療法の後、デュルバルマブとオラパリブによる維持療法を行うDUO-E Triplet群、デュルバルマブによる維持療法を行うDUO-E Doublet群の3群で比較検討された。 患者背景について、アジア人が約3割であった。西川氏は、組織型では多くの試験で除外されることが多いがん肉腫が約5%程度含まれており、再発例は約半分、ICIが奏効しやすいとされるdMMRは約2割であった、とコメントした。 主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、TC群9.6ヵ月に対し、DUO-E Triplet群15.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.43~0.69、p<0.0001)、DUO-E Doublet群10.2ヵ月(HR:0.71、95%CI:0.57~0.89、p=0.003)と優越性が検証された。 サブグループ解析ではMMR状態別のPFSについて検討が行われ、pMMR集団では、DUO-E Triplet群はTC群と比較してHRが0.57(95%CI:0.44~0.73)、DUO-E Doublet群はTC群と比較してHRが0.77(0.60~0.97)であり、DUO-E Doublet群と比較したDUO-E Triplet群のHRは0.76(0.59~0.99)であった。 dMMR集団では、DUO-E Triplet群はTC群と比較してHRが0.41(95%CI:0.21~0.75)、DUO-E Doublet群はTC群と比較してHRが0.42(0.22~0.80)であり、DUO-E Doublet群と比較したDUO-E Triplet群のHRは0.97(0.49~1.98)であった。本解析に対し西川氏は、「ICIが効きやすいdMMR集団ではオラパリブを併用しなくても有効性が認められた」とコメントした。 また、安全性に関して、Grade3以上の有害事象の発現率は、全試験期間ではDUO-E Triplet群67.2%、DUO-E Doublet群54.9%、TC群56.4%であり、維持療法期ではDUO-E Triplet群41.1%、DUO-E Doublet群16.4%、TC群16.6%であった。同氏は「新たな有害事象はなかったが、これまでと同様にICIによる免疫関連有害事象(irAE)やオラパリブの骨髄抑制による好中球減少症などに注意が必要だ」と付け加えた。本結果の意義と今後の展望 最後に西川氏は、「これまでの薬物療法では予後が悪かった進行・再発の子宮体がんにおいて、患者の免疫原性が活発なタイミングである1次治療にICIが使えることに意義がある。今回の適応拡大は、進行・再発の子宮体がんの1次治療における初めてのICIやPARP阻害薬を用いた複合免疫療法によるパラダイムシフトの始まりであり、それに伴い2次治療戦略の再検討も必要ではないか。分子遺伝学分類に基づく治療戦略をどのように組み立て、患者へ最大限のメリットを届けるか、という課題に向き合っていきたい」と締めくくった。

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複雑CAD併存の重症AS、FFRガイド下PCI+TAVI vs.SAVR+CABG/Lancet

 重症大動脈弁狭窄症(AS)に複雑冠動脈疾患(CAD)を併存する患者において、血流予備量比(FFR)ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)+経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は、外科的大動脈弁置換術(SAVR)+冠動脈バイパス術(CABG)に対して非劣性であることが示された。カナダ・マギル大学ヘルスセンターのElvin Kedhi氏らTCW study groupが、初となる経皮的治療と外科治療を比較した国際多施設共同前向き非盲検無作為化非劣性検証試験「TCW試験」の結果を報告した。重症AS患者では、閉塞性CADを併存していることが多い(~50%)。ESC/EACTSガイドラインでは、SAVR+CABGが推奨されている。一方、FFRガイド下PCIおよびTAVIが有効な治療選択肢となりうることも示されていた。Lancet誌オンライン版2024年12月4日号掲載の報告。治療後1年時点の複合エンドポイントを評価 TCW試験は、欧州の18施設(オランダ6、スペイン2、フランス2、ポーランド2、オーストリア1、チェコ1、ドイツ1、ギリシャ1、ポルトガル1、スロバキア1)で行われた。被験者は、70歳以上の重症ASかつ複雑CADで、on-site Heart Teamにより経皮的または外科的手術が施行可能と判断された患者。施設層別無作為化置換ブロックサイズ法を用いたコンピュータ生成シーケンス法により、1対1の割合で無作為にFFRガイド下PCI+TAVI群またはSAVR+CABG群に割り付けられた。 主要エンドポイントは、治療後1年時点の全死因死亡、心筋梗塞、障害を伴う脳卒中、臨床的に推奨される標的血管の血行再建、弁の再置換、生命を脅かすまたは障害を伴う出血の複合であった。 試験は、非劣性(マージン15%)を検定し、非劣性が検証された場合は優越性を検定した。主要解析および安全性解析は、ITT集団を対象として行った。群間リスク差-18.5、FFRガイド下PCI+TAVIの非劣性が検証 2018年5月31日~2023年6月30日に、172例が登録された(91例がFFRガイド下PCI+TAVI群、81例がSAVR+CABG群)。平均年齢は76.5歳(SD 3.9)、男性が118例(69%)、女性が54例(31%)であった。心リスク因子は両群間でバランスが取れており、SYNTAXスコアの中央値は12.0(四分位範囲:9.0~17.0)で、44/157例(28%)のみが中~高スコアを有し、128/169例(76%)が多枝CAD(2枝以上)を呈していた。 主要複合エンドポイントのアウトカムについて、FFRガイド下PCI+TAVI群(4/91例[4%])はSAVR+CABG群(17/77例[23%])に比べて良好な結果を示し(群間リスク差:-18.5[90%信頼区間[CI]:-27.8~-9.7])、非劣性が検証された(非劣性のp<0.001)。 FFRガイド下PCI+TAVI群のSAVR+CABG群に対する優越性も検証された(ハザード比:0.17[95%CI:0.06~0.51]、優越性のp<0.001)。主に全死因死亡(0/91例[0%]vs.7/77例[10%]、p=0.0025)、生命を脅かす出血(2/91例[2%]vs.9/77例[12%]、p=0.010)によるところが大きかった。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のアジア人データ(FLAURA2)/ESMO Asia2024

 2024年6月にオシメルチニブの添付文書が改訂され、EGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブと化学療法の併用療法が使用可能となった。本改訂は、オシメルチニブと化学療法の併用療法とオシメルチニブ単剤を比較する国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」1)の結果に基づくものである。欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)において、アジア人集団の治療成績が、国立台湾大学病院のJames Chih-Hsin Yang氏により報告された。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)でStageIIIB、IIIC、IVの未治療の非扁平上皮NSCLC成人患者557例(アジア人333例)試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2を3週ごと)(併用群、279例[アジア人169例])対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例[アジア人164例])評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1による治験担当医師評価に基づく無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)など アジア人集団における主な結果は以下のとおり。・併用群、単独群の年齢中央値はいずれの群も61歳で、女性の割合はそれぞれ62%、57%であった。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異がそれぞれ53%、61%で、L858R変異がそれぞれ46%、38%であった。中枢神経系(CNS)転移はそれぞれ47%、42%に認められた。・治験担当医師評価に基づくPFS中央値(データカットオフ:2023年4月3日)は、併用群25.5ヵ月(全体集団:25.5ヵ月)、単独群19.4ヵ月(同:16.7ヵ月)であった(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.51~0.94)。・盲検下独立中央判定によるPFS中央値(データカットオフ:2023年4月3日)は、併用群33.2ヵ月(全体集団:29.4ヵ月)、単独群24.7ヵ月(同:19.9ヵ月)であった(HR:0.72、95%CI:0.52~1.01)。・OS中央値(データカットオフ:2024年1月8日)は、併用群40.5ヵ月(全体集団:未到達)、単独群38.3ヵ月(同:36.7ヵ月)であった(HR:0.80、95%CI:0.57~1.12)。・治験担当医師評価に基づくORRは併用群84%(全体集団:83%)、単独群76%(同:75%)であった。・DOR中央値は併用群24.0ヵ月(全体集団24.0ヵ月)、単独群18.0ヵ月(同:15.3ヵ月)であった。・Grade3以上の有害事象は併用群67%、単独群24%に発現した(いずれの群でもGrade4/5の間質性肺疾患/肺臓炎は発現なし)。・オシメルチニブの中止に至った有害事象は、併用群10%、単独群7%に発現した。・アジア人集団において、併用群で最も多くみられた有害事象は貧血であった(アジア人集団:50%、全体集団:12%)・併用群の間質性肺疾患/肺臓炎の発現率は、アジア人集団(4%)と全体集団(3%)で同様であった。 本結果について、Yang氏は「オシメルチニブと化学療法の併用療法は、アジア人においてもEGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療の選択肢の1つとなることが支持される」とまとめた。

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切除不能肝細胞がん、アテゾ+ベバがTACEの代替となる可能性/ESMO Asia2024

 切除不能肝細胞がんにおいて、Intermediate Stage(中間期)における標準療法は塞栓療法(主にTACE療法)である。しかし、一部でTACE療法が適さない患者が存在し、その場合は全身療法が推奨となる。一方、既報のIMbrave150試験において、当時の標準化学療法のソラフェニブに対し、アテゾリズマブ+ベバシズマブが有意に予後を改善したことが報告されている。こうした背景から、切除不能な肝細胞がん患者におけるアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法のTACE療法に対する代替可能性を検討するREPLACEMENT試験が計画された。欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)において公立松任石川中央病院の山下 竜也氏が全生存期間(OS)を含む本試験の最終解析結果を発表した。・試験デザイン:多施設単群第II相試験・対象:切除不能肝細胞がん(Intermediate Stage、腫瘍個数+最大腫瘍径[cm]>7[移植不適]、TACE治療歴なし、Child-Pugh A)・試験群:アテゾリズマブ1,200mg+ベバシズマブ15mg/kg、3週ごと点滴静注・評価項目:[主要評価項目]mRECISTに基づく無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]RECIST v1.1に基づくPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DFS)、OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・2020年12月~2021年9月、74例が登録された。年齢中央値は74歳(SD 41~89)。65例(88%)が男性、CP-A5が49例(66.2%)、腫瘍個数+最大腫瘍径(cm)>11が25例(33.8%)だった。2024年3月31日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値は33.6ヵ月であった。・主要評価項目であるmRECISTに基づくPFSは9.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.1~10.2)であった。6ヵ月PFS率は66.8%(95%CI:54.7~76.4)であり、主要評価項目を達成した。・OS中央値は33.8ヵ月(95%CI:22.6~未到達)であった。・ORRは40.5%(95%CI:29.3~52.6)であった。・74例中65例(87.8%)がPFSイベントを経験し、61例(82.4%)が次治療を受けた。・Gradeを問わない治療関連有害事象は93.2%に発現した。Grade3/4の事象は33.8%に発生した。Grade3以上で多かったものは高血圧(18.9%)と蛋白尿(10.8%)であった。 山下氏らは「アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法は、Intermediate Stageの切除不能肝細胞がんでTACE不適例に対して臨床的に有意義な有効性を示した。安全性および忍容性は、既知のプロファイルと一致していた。本研究の結果により、同レジメンはTACE不適患者の代替治療となる可能性があると考えられる」とまとめた。

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対象患者選択の重要性を再認識させられた研究(解説:野間重孝氏)

 本研究はコルヒチンの虚血性心疾患に対する2次効果を検討した3つ目の研究に当たる。今回の研究に先行する2つの研究については次に示すので、ぜひご一読されたい。これは、評者自身が過去2回にわたり論文評を担当しており、内容が重複してしまう可能性があるためである。この点について、すでにご存じの方にはご容赦いただきたい。大抵の方々にとっては虚血性心疾患とコルヒチンの関係そのものに首をかしげる向きがあると考えるが、そのあたりについても評では簡単にではあるが解説した。1. COLCOT試験Tardif JC, et al. N Engl J Med. 2019;381:2497-2505.ジャーナル四天王「低用量コルヒチン、心筋梗塞後の虚血性心血管イベントを抑制/NEJM」論文評(CLEAR!ジャーナル四天王)「今、心血管系疾患2次予防に一石が投じられた」2. LoDoCo試験Nidorf SM, et al. N Engl J Med. 2020;383:1838-1847.ジャーナル四天王「コルヒチンで慢性冠疾患の心血管リスクが低下/NEJM」論文評(CLEAR!ジャーナル四天王)「コルヒチンの冠動脈疾患2次予防効果に結論を出した論文」 この2つの研究では、いずれにおいてもコルヒチンが虚血性心疾患の予後改善に寄与すると結論されている。ところが、今回のCLEAR試験では効果なしと判定された。この背景には患者選択とプロトコールが関係しているのではないかと考えたので、以下に整理しておきたい。1. COLCOT試験登録前30日以内(平均18.5日)に心筋梗塞を発症し、経皮的血行再建術を受け、強化スタチン療法を含むガイドラインに準拠した治療を受けている成人患者。2. LoDoCo2試験2014年8月4日~2018年12月3日の間に血管造影で肝疾患が確認され、6ヵ月以上安定している35~82歳の慢性冠動脈疾患患者。3. CLEAR試験ST上昇型急性心筋梗塞に対して経皮的冠動脈再建術を受けた患者で、EF<45%、糖尿病、多枝病変、心筋梗塞の既往、または60歳以上のいずれかの危険因子を有する患者。 主要エンドポイントの違いについても言及すべきだろうが、各試験とも表現は違うもののほぼ同じ事柄を挙げているので、ここではあえて問題にしないこととする。 正直なところ、評者はLoDoCo2試験の結果をみて、コルヒチンの冠動脈治療薬としての有用性が証明されたと書いたが、それは早計だったと反省している。臨床試験ではその対象が非常に大きな役割を果たす点に、もっと注目すべきであると改めて思い知らされた教訓を得たと感じている。 3試験の結果を振り返ってみると、LoDoCo2試験ではハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.57~0.83(p<0.001)と大きな差が出たのに対し、COLCOT試験では確かに差は出たもののHR:0.77、95%CI:0.61〜0.96と、確かに差はついたもののそれほど大きな差はみられなかった。そして、今回ST上昇型心筋梗塞後の患者を対象とした場合、とうとう差がみられないという結果に終わった。LoDoCo2試験が心筋梗塞患者を対象としていない点を考慮すると、急性心筋虚血を引き起こす血管損傷の有無が、試験結果の差異を生じさせた要因である可能性が示唆される。 言うまでもなく、コルヒチンは現在使用できる最も強力な消炎剤の1つである。冠動脈疾患は複合的な疾患であるが、動脈硬化と炎症の関係は盛んに論じられてはいるものの、コルヒチンが従来問題視されている危険因子と直接関係するというデータは存在しない。すると心筋梗塞と動脈の炎症との関係を考えなければならないだろう。心筋梗塞の急性期においては梗塞部位の修復と壊死組織の排除が最も重要であり、そこでは炎症が大変効果的に働いているのである。この現象は心筋梗塞に限らず、切創など身体の一部が損傷した場合にもみられる修復過程の第1段階で炎症が重要な役割を果たすことから、容易に理解できる。心筋梗塞急性期にコルヒチンを投与することはこの一連の修復過程を邪魔する、もしくは不完全なものにする可能性があるのではないか。だから、一応の鎮静を得た後とはいえ心筋梗塞後の患者にコルヒチンを投与開始したCOLCOT試験では、それほど良い成績が出ず、梗塞の関係しない患者を対象としたLoDoCo2試験では、好結果が得られたのではないだろうか。 動脈硬化炎症説はごく当たり前のように語られるようになったが、実際には動脈硬化の実際のメカニズムは解明されたわけではない。また急性心筋梗塞からの血管修復過程と動脈硬化の関係については、ほとんど何もわかっていない状態であることも知っておきたい。今回の試験のように心筋梗塞の既往、経皮的冠動脈再建術の既往、糖尿病などの他の多くの危険因子を有する患者に対する効果を論ずるのは大変難しいと言わざるを得ない。ただし、こうした患者群においても、マイナスの効果が確認されなかった点は重要である。 ただ、コルヒチンに動脈硬化の進展予防効果が期待できるということが喧伝されても実際にコルヒチンを使用した医師は、読者の皆さんも含めてほとんどいなかったのではないかと思う。コルヒチンという薬剤はリウマチ専門医でも扱い慣れた医師は少なく、治療安全域が非常に狭い薬剤である。コルヒチンが冠動脈疾患治療のメジャーな薬剤となることは、よほど大きな転換点がなければ難しいのではないかと思う。

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米医療保険会社CEO射殺事件について【Dr. 中島の 新・徒然草】(560)

五百六十の段 米医療保険会社CEO射殺事件について12月半ばになってもまだ紅葉が綺麗です。紅葉のまま年を越してしまうのでしょうか?さて、2024年12月4日のこと。アメリカの民間医療保険会社、ユナイテッドヘルスケアCEOのブライアン・トンプソン氏がニューヨークの路上で射殺される事件が発生しました。現場には「deny(否定)」「delay(遅延)」「depose(追放)」と記された薬莢が残されており、これは『Delay, Deny, Defend』という本のタイトルをもじったものではないかと考えられています。同書は民間医療保険会社の実態を暴露したもので、タイトルは保険請求に対する支払いの遅延や拒否、裁判での徹底抗戦といった彼らの行動を端的に示したものです。この薬莢メッセージから、今回の事件は医療費の支払いを巡るトラブルが原因と推測されました。12月9日、犯人とされるルイジ・マンジョーネ容疑者がペンシルベニア州のマクドナルドで逮捕されました。彼の所持品からは、犯行に使われた銃と手書きの犯行声明(マニフェスト)が見つかったと報じられています。この26歳の容疑者はペンシルベニア大学を卒業した裕福な青年ですが、背中の手術からしばらくして行方不明となり、家族から捜索願が出されていました。すぐに思い付くのは、ユナイテッドヘルスケアが支払いを渋ったのではないかということですが、実のところ彼はユナイテッドヘルスケアの加入者ですらなかったそうです。詳しい動機は今後の裁判で明らかになることでしょう。私は英語の勉強のため、YouTubeで英語ニュースをよく見ますが、この事件についても関連する動画をいくつか視聴しました。とくに驚かされたのはコメント欄です。そこには、民間医療保険会社に対する恨み辛みがあふれていました。いくつか例を挙げましょう。事前承認制度のせいで、30分の治療に対する支払い同意を得るために、毎日苦しみながら数ヵ月を無駄にした。製薬会社、そしてFDA(米国食品医薬品局)も保険会社と結託している。最大の問題は、政治家たちが医療保険会社と癒着していることだ。健康保険会社は、仲介業者というよりも医療への障壁だ。フロリダ州のある女性は、保険請求を拒否された後「次はあんたらの番よ」と電話で発言し、逮捕された。最後の女性のケースは別のニュースにもなっています。こうした怒りが噴出する背景には、主に2つの要因があると思います。1つはアメリカの医療費の高さです。たとえば、あるアメリカ人YouTuberが「本国でのおたふく風邪の治療で200万円かかった」と憤っていました。また、私の甥も以前、アメリカで大学生活を送っている時に自転車事故に遭い、救急室へ運ばれたことがあります。幸い当日帰宅できましたが、その際の医療費は4万ドル(約600万円)。保険に入ってはいたものの、相当な自己負担になったのではなかったかと思います。もう1つは保険会社の支払い渋りです。今回の事件後、医療保険各社のホームページからCEOの名前や顔写真が一斉に削除されたといいますが、それぞれに自覚があるのでしょう。何かと批判されることの多い日本の医療制度や保険制度ですが、アメリカと比較すれば優れている部分がたくさんあるものと思われます。とはいえ、わが国の医療制度や保険制度、これからも少しずつ改善を続けながら維持し続けるべきだと、改めて感じさせられた次第です。最後に1句冬紅葉(ふゆもみじ) 異国のニュース 意味深し

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mumps(ムンプス、おたふく風邪)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第17回

言葉の由来ムンプスは英語で“mumps”で、「マンプス」に近い発音になります。なお、耳下腺は英語で“parotid gland”で、耳下腺炎は“parotitis”といいます。英語での“mumps”は日本語での「おたふく風邪」のように、医療者以外でも一般的に広く使われる言葉です。“mumps”の語源は諸説あります。1つの説によると、“mumps”という病名は1600年ごろから使用され始め、「しかめっ面」を意味する“mump”という単語が複数形になったものとされています。ムンプスが引き起こす耳下腺の腫れと痛み、嚥下困難などの症状による独特の顔貌や表情からこの名前が付いたと考えられています。もう1つの説は、ムンプスでは唾液腺の激しい炎症で患者がぼそぼそと話すようになることから、「ぼそぼそ話す」を意味する“mumbling speech”が元になって“mumps”と呼ばれるようになったというものです。日本語の「おたふく風邪」も、耳下腺が腫れた様子が「おたふく」のように見えることに由来します。いずれの呼び方も、特徴的な見た目や症状から病気の名前が付けられたことがわかりますよね。ムンプスは古代から知られており、ヒポクラテスが5世紀にThasus島での発生を記録し、耳周辺の痛みや睾丸が腫脹することも記載しています。近代では、1790年に英国のロバート・ハミルトン医師によって科学的に記述され、第1次世界大戦期間中に流行し兵士たちを苦しめました。1945年に初めてムンプスウイルスが分離され、その後ワクチンが開発されたことで予防可能な疾患になりました。併せて覚えよう! 周辺単語耳下腺炎parotitis精巣炎orchitis卵巣炎oophoritis無菌性髄膜炎aseptic meningitisMMRワクチンMeasles, Mumps, and Rubella vaccineこの病気、英語で説明できますか?Mumps is a contagious viral infection that can be serious. Common symptoms include painful swelling of the jaw, fever, fatigue, appetite loss, and headache. The MMR vaccine offers protection from the virus that causes mumps.講師紹介

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映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その2)【なんで統合失調症は「ある」の?(統合失調症の機能)】Part 1

今回のキーワードお告げ(幻聴)罰当たり(被害妄想)集団統合機能集団統合仮説伝承の心理イデオロギー前回(後編・その1)、宗教体験と統合失調症は表裏一体であることがわかりました。そして、宗教体験は、統合失調症と同じ心理現象(幻覚妄想)のプラス面を見ているだけであることもわかりました。そして、統合失調症は、宗教に関連した何らかの存在理由があることをご提示しました。それでは、なぜ統合失調症は「ある」のでしょうか?今回(後編・その2)は、前回に取り上げた映画「ミスト」とドラマ「ザ・ミスト」を踏まえて、進化精神医学の視点から、統合失調症の機能に迫ります。統合失調症の機能って何?映画版に登場するカーモディさんについても、ドラマ版に登場するナタリーについても、注目する点は、お告げ(幻聴)によって結果的に使命感に目覚め、自らを導いていることです。そして、罰当たり(被害妄想)の断定によって結果的に周りに言うことを聞かせ、集団を導いていることです。ここで重要なことは、幻覚は幻視ではなく、幻聴である必要があります。幻視だと、言語化する手間がかかるため、お告げほど効果的に集団を導くことが難しくなるからです。だからこそ、統合失調症の典型的な幻覚は、幻視ではなく幻聴だと言えます。つまり、彼女たちは、幻聴と被害妄想を主症状とする統合失調症を発症していることで、結果的にみんなの気持ちを1つにして、ある意味リーダーシップを発揮していることになります。ただし、これは現代のリーダーシップ(マネジメント)ではなく、あくまで原始の時代のリーダーシップです。この原始の時代とは、人類が抽象的な思考(概念化)をするようになった約10万年前から、文明社会が生まれる約1万数千年前までの期間に遡ります。この原始の時代の生活環境は、まさに「ミスト」の世界観です。そこは、現代と違って、猛獣がうろつき、飢餓や災害に無力です。現代のように科学の知識によって、自然の仕組みを理解して、その先を予測して、コントロールすることができません。このような自然の脅威の中で生き残って子孫を残すには、より多くの人たちがまとまって協力する必要があります。そんな時に現れたのが、カーモディさんやナタリーのような統合失調症を発症した「救世主」(リーダー)だったでしょう。彼らこそが、より多くの人数の部族集団をまとめることができたでしょう。これが、統合失調症が存在する理由であり、統合失調症の起源であると考えられます。進化精神医学的に考えれば、統合失調症は原始の時代にこの集団の統合という特別な役割を担うために進化した心理機能であるという仮説が立てられます。名付けるなら、この機能は「集団統合機能」、この仮説は「集団統合仮説」です。つまり、神のお告げ(幻聴)と罰当たりの境地(被害妄想)は、部族をまとめるために必要であったというわけです。もちろん、カーモディさんやナタリーのように、神の怒りを鎮めるという口実で生け贄を差し出そうとするなど、とんでもない人権侵害であり、まったくもって不合理です。しかし、結果的にその集団はこれ以上なくまとまっていきました。そもそも、原始の時代に人権などありません。人権尊重は、個人主義が広がった現代ならではの発想であり、価値観です。次のページへ >>

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映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その2)【なんで統合失調症は「ある」の?(統合失調症の機能)】Part 2

なんで現代では統合失調症はリーダーシップを発揮できなくなったの?それでは、現代ではなぜ統合失調症はリーダーシップ(集団統合機能)を発揮できなくなったのでしょうか?その答えは、社会構造(環境)の変化です。統合失調症自体はほとんど何も変わっていないでしょう。変わったのは、社会構造の方です。どういうことでしょうか?約1万数千年前の農耕牧畜革命で文明社会が生まれ、合理的なものの考え方(合理的思考)が芽生えていきした。すると、その分、統合失調症の集団統合機能は、不合理であるため、通じにくくなっていったでしょう。それでも、シャーマンや巫女など特別な立場で、社会に溶け込んでいました。さらに時代は進み、約200年前の産業革命で科学が発展し、合理主義が広がっていきました。当時の哲学者ニーチェが言ったように、神は死んだのでした。すると、統合失調症を発症した人たちは、もはや「神のお告げが聴こえる」「悪魔が囁いている」とは言わなくなり、代わりに「頭の中のスピーカーが命令してくる」「怖い人たちの話し声が聞こえてくる」と言うようになりました。また、もはや「罰を受ける」「悪魔に操られる」とは言わなくなり、代わりに「闇の組織に狙われている」「電磁波で攻撃される」と言うようになりました。つまり、当時の社会構造(文化)の変化によって、統合失調症の幻覚妄想の表現も変わってしまったのでした。これは、語られる内容は、その時代のその社会(文化)によって、より適応的な意味づけや解釈がされ、変化していくという伝承の心理からも説明ができます。社会をまとめるのは、もともと神の存在(原始宗教)という伝承だったわけですが、現代では合理主義や個人主義がもととなった民主主義というイデオロギー(これもまた伝承)に取って変わってしまったというわけです。この詳細については、関連記事1をご覧ください。実際に、未開の部族の原始宗教においては、部族の長が預言者(シャーマン)を兼務し、宗教儀式を行っていることが多かったという調査結果が報告されています1,2)。ただ、よくよく考えれば、実はこの状況はその長がシャーマンそのものであり、統合失調症を発症していた可能性も示唆されます。古代日本の卑弥呼が呪術に長けていたことからもわかるでしょう。このことからも、もともと宗教、リーダーシップ(集団統合機能)、そして統合失調症はともに密接に関わっていることがわかります。つまり、宗教とは、もともとは統合失調症の集団統合機能が伝承によって体系化され、現代的にアレンジされたものであると言えます。宗教の起源の詳細については、関連記事2をご覧ください。現代の社会構造では、統合失調症の集団統合機能は、もはや完全に不合理なものとして「心の病」と見なされるようになりました。ただし、宗教体験として語られる場合に限っては社会的に受け入れられ続けました。ちなみに、この集団統合機能のメカニズムが現代で悪用されたものが、マインドコントロールです。この詳細については、関連記事3をご覧ください。実は、今回の「集団統合仮説」によって解ける統合失調症の謎があります。そして、その謎解きは、同時にこの仮説の根拠にもなります。どういうことでしょうか?次回に、詳しく解説します。1)「日本大百科全書(ニッポニカ)「原始宗教」の意味・わかりやすい解説」:小学館2)「ヌアー族の宗教 下」p.223、p.230、p.232:エヴァンズ・プリチャード、平凡社、1995<< 前のページへ■関連記事昔話「うらしまたろう」(その2)【隠された陰謀とは?そして精神医学的に解釈するなら?(シン浦島太郎)】Part 2ミスト(前編)【信じ込む心(宗教)】ミスト(中編)【マインドコントロール】

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第127回 年賀状出荷「急減」!そろそろ年賀状じまい?

年賀状発行枚数減少2024年10月1日から、50gまでの定形郵便物(一般的な手紙)に貼付する郵便切手が110円に、はがき代は85円に値上がりしました。燃費も高くなっており、郵便事業の業績は芳しくなく、やむを得ない決断のようです。アベノミクスの時代からデフレ脱却を掲げてきて、当時から円安も進んでいますので、私みたいな中堅のオジサンにとっては体感物価2倍の時代に入ってきました。たとえば、かつて10円で買えた“うまい棒”が、いまや15円に。わずか数円の変化でも積み重なると生活の実感は大きいものです。昨年は年賀はがき1枚63円だったものが85円ですから、もうこれを機に年賀状じまいに踏み切る人が増えるのではないでしょうか。年賀状の発行枚数は、ピーク時の2003年(約44億6,000万枚)から、2024年には約10億7,000万枚と、約4分の1にまで減少しています。単純計算すると国民1人当たり約10枚程度となり、かつての「年賀状は何十枚も書くもの」という常識は、もはや過去のものとなりつつあります。年賀状の文化が衰退していることは明らかです。年賀状だけの関係が断たれる私が高校・大学の頃は、LINEなんてものはなかったのですが、その後、近い友人はLINEでやりとりするようになりました。「もうLINEであけおめすればいいんじゃね?」という風潮がありますよね。しかし、LINEは知らないが年賀状だけのやりとりを続けていた友人…っているじゃないですか。そもそもそれを友人と定義するかどうかはともかくとして、年賀状が最後の綱だった、みたいな。そんな関係。「年賀状だけの友人」として独特の存在感があります。ここ数年で、年賀状じまいを宣言する人が増えてきました。「これを最後に、年賀状は控えます」といった挨拶が添えられた年賀状を受け取ると、一抹の寂しさを感じるものです。もちろん、年賀状をやめることで生じる心理的な距離感は、普段連絡を取り合わない相手であればさほど影響はないかもしれません。それでも、年賀状が唯一のつながりだった場合、その関係が断たれることは、どこか心に引っかかるものがあります。年賀状じまいは明言しないものの、出しても返事がめっきり来なくなった人もいます。私も、だんだんと全体の枚数が減ってきました。そのうち、私も年賀状じまいすることになるのでしょうか。生成AIに上記について相談したら、「たとえ年賀状を出さなくなったとしても、その本質的な意味である『感謝や挨拶の気持ち』を大切にすることが重要ではないでしょうか」と返ってきました。はい、そのとおりです、ド正論。

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