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AI勤務表は看護の「質」と「満足度」をどう変える?【論文から学ぶ看護の新常識】第36回

AI勤務表は看護の「質」と「満足度」をどう変える?AIが作成した勤務表は、従来の手動作成より優れているのか。Hye Won Kang氏らが行った比較研究により、AIで作成した勤務表に、仕事の質を維持し、職務満足度を向上する効果がある可能性が示された。BMC Nursing誌2025年7月1日号に掲載の報告。仁荷大学病院看護AIスケジューリングシステム(IH-NASS)導入後のシフト看護師の仕事の質と職務満足度研究チームは、仁荷大学病院看護AIスケジューリングシステム(IH-NASS)の導入後の仕事の質を組織・個人の両方の視点から比較し、IH-NASSに対する看護師の認識と仕事の質に焦点を当てて看護師の職務満足度に影響を与える要因を分析した。韓国の三次大学病院でIH-NASSが導入された14病棟のシフト勤務看護師253名が対象となった。従来の手動スケジュール(2022年12月、後ろ向き研究)と、IH-NASSによって作成されたスケジュール(2023年12月、前向き研究)のデータを比較し、看護師の一般特性、IH-NASSに対する認識(利便性、満足度、公平性)や職務満足度を調査・分析した。主な結果は以下の通り。組織の視点:IH-NASSで作成したスケジュールは、従来の手動スケジュールと比較して、日勤勤務の経験1年未満の看護師数が有意に減少した(t=2.70、p=0.018)。個人別の視点:深夜勤-休み-準夜勤(NOE)シフトの数が有意に少なかった(t=2.64、p=0.009)。さらに、2日以上の連続休日(t=-3.78、p<0.001)、2回以上の夜勤後の2日以上の休日(t=-2.13、p=0.034)、土日休み(t=-2.24、p=0.026)、および日曜休み(t=-3.50、p<0.001)が有意に多かった一方、平日の非社交的な時間帯(深夜勤や早朝勤務など)のシフトは少なかった(t=2.74、p=0.007)。職務満足度への影響:シフト勤務看護師の職務満足度に影響を与える要因には、IH-NASSへの満足度、IH-NASSの利便性に対する認識、および不健康な勤務スケジュール下でのNOEシフト回数、過度の眠気、学歴、睡眠時間があげられ、これらが合わさって職務満足度のばらつきの約27%を説明した。AIベースのスケジューリングは、仕事の質を維持しながら、人員配置を最適化し、看護師のポジティブな認識を高め、職務満足度を向上させることができる。今回は、韓国の大学病院で導入されたAI勤務表作成システム(IH-NASS)の導入効果に関する最新論文を紹介します。このAIシステムは、従来、看護師長などが手作業で作成してきた勤務表の限界を克服するために、17年以上の臨床経験を持つ看護師7名とIT専門家2名のチームによって開発されたものです。このシステムの目的は、単なる自動化ではなく、勤務の最適化です。看護師の希望勤務はもちろん、シフトごとの必要人数、次の勤務まで最低14時間の間隔を確保、5日連続勤務後の2日間休日といった健康に配慮した条件がアルゴリズムに組み込まれています。また人員の経験値に偏りが出ないよう、「1年未満」「1~3年」「3年以上」と経験年数ごとにスタッフを分類しています。IH-NASS導入前後の勤務表を比較した結果、日勤における経験1年未満の看護師配置の有意な減少、2日以上の連続休日や、連続夜勤後の2日以上の休日数、土日休みが増加しました。これは、限られた人員数の中でも勤務を最適化することで看護師の生活の質を向上させたと考えられます。また導入後の調査では、「IH-NASSに対する満足度」「利便性」、そして「NOEシフトの少なさ」が看護師の仕事満足度を向上させる要因であることが示されました。手作業での勤務表作成は、多大な時間的コストに加え、公平性の担保が難しいという課題があります。IH-NASSのように個人の希望を反映しつつ、組織として必要な熟練度バランスを客観的に確保するAIは、看護師の業務負担を軽減するだけでなく、不満の矛先がAIに向けられることで、管理者の精神的負担が軽減でき、スタッフ間の無用な軋轢も防げるかもしれません。さらに経験の浅い看護師が日勤に過度に配置されるリスクをAIが管理することで、主要な治療が行われる日勤帯の熟練度バランスが保たれ、部門全体の看護の質や患者の安全性が担保される可能性もあります(もちろん夜間の人員バランスも重要です)。日本でも、看護師向けの勤務表作成サービスいくつかリリースされています。看護師がより良い環境で働き続けるためにも、こうしたテクノロジーが普及することを期待しています。論文はこちらKang HW, et al. BMC Nurs. 2025;24(1):792.

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認知機能低下リスクを考慮した高齢者の適切な睡眠時間は

 睡眠時間は、認知機能に重要な役割を果たしており、認知機能の低下と密接に関連している。しかし、中国人を対象に睡眠時間と認知機能の関係について検討した研究は、これまで十分ではなかった。中国・北京中医薬大学のGuolin Guo氏らは、中国の中高年における睡眠時間と認知機能の関連性を評価するため、横断的研究を実施した。JMIR Human Factors誌2025年9月8日号の報告。 China Health and Retirement Longitudinal Study 2020に参加した1万5,526例のデータを用いて、エピソード記憶、思考力、総合的認知機能を含む3つの複合指標を用いて認知機能の評価を行った。また、対面インタビューにより、自己申告による夜間の睡眠時間のデータも取得した。人口統計学的、ライフスタイル、健康関連の共変量を考慮し、多重一般化線形回帰モデルを用いて調整した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象1万5,526例のうち、女性は53.02%(8,232例)、男性は46.98%(7,294例)、平均年齢は61.5±9.27歳であった。・1晩の睡眠時間が4時間以下(β=-1.85、95%信頼区間[CI]:-2.07~-1.62)、5時間(β=-0.55、95%CI:-0.78~-0.33、p<0.001)、9時間(β=-1.78、95%CI:-2.17~-1.39)、10時間以上(β=-3.01、95%CI:-3.39~-2.63)と回答した人は、認知機能と有意な負の相関関係が認められた。・調整モデルでは、10時間以上の長時間睡眠が全般的な認知機能に対する悪影響がより顕著であり(β=-3.01、95%CI:-3.39~-2.63、p<0.001)、次いで4時間以下の極端に短い睡眠(β=-1.85、95%CI:-2.07~-1.62、p<0.001)が顕著であった。 著者らは「睡眠時間と全般的な認知機能低下の間に逆U字型の関係があることが明らかとなった。これは、睡眠時間が短い場合でも長い場合でも、認知機能を注意深くモニタリングする必要があることを示唆している。したがって、公衆衛生戦略においては、とくに文化的に特有の状況において、加齢に伴う認知リスクを軽減するために、適度な睡眠の促進を優先すべきである」と結論付けている。

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2型糖尿病の全死亡、亜鉛欠乏で増加

 亜鉛不足が心不全の予後に関連することはいくつかの研究より報告されているが、今回、台湾・Chi Mei Medical CenterのYu-Min Lin氏らは、2型糖尿病患者における亜鉛欠乏が全死亡および心血管系合併症リスクを有意に高めることを明らかにした。 本研究はTriNetXが保有するデータベースを用いて、後ろ向きコホート研究を実施。亜鉛測定が行われていた18歳以上の2型糖尿病患者を亜鉛欠乏群(血清亜鉛<70μg/dL)と対照群(70~120μg/dL)に分類し、傾向スコアマッチング(PSM)を行った。主要評価項目は全死亡および心血管疾患の複合アウトカム(脳血管合併症、不整脈、炎症性心疾患、虚血性心疾患、その他の心疾患[心不全、非虚血性心筋症、心停止、心原性ショック]、血栓性疾患)で、各ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・適格患者2万3,041例のうち亜鉛欠乏患者は9,503例、亜鉛正常値患者は1万3,538例で、PSM後、各群に7,886例が割り付けられた。・対照群と比較した場合、亜鉛欠乏群での全死亡はHR:2.08(95%CI:1.72~2.51、p<0.001)、心血管アウトカムの複合はHR:1.15(95%CI:1.08~1.24、p<0.001)といずれの発生率も高かった。・亜鉛欠乏群では、不整脈(HR:1.20、95%CI:1.10~1.32、p<0.001)、炎症性心疾患(HR:1.54、95%CI:1.07~2.21、p<0.001)、そのほかの心機能障害(HR:1.23、95%CI:1.08~1.40、p<0.001)の発生率も上昇した。 本結果を踏まえ研究者らは、「2型糖尿病患者の管理において、血清亜鉛値をモニタリングし、対処することの潜在的な臨床的重要性を強調する」としている。

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喘息・COPD吸入器が温室効果ガス排出量を増大/JAMA

 米国における吸入器関連の温室効果ガス排出量は過去10年間で24%増加し、全体の98%を定量噴霧式吸入器が占めることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のWilliam B. Feldman氏らによる観察研究で明らかにされた。吸入器は喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主要な治療手段であるが、定量噴霧式吸入器には多量の温室効果ガス排出につながるハイドロフルオロアルカン噴射剤が含まれる。米国連邦政府は国際条約義務に基づきハイドロフルオロカーボン(HFC)の段階的削減を進めているが、排出量などの現状把握は不十分であった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年10月6日号で報告された。米国の2014~24年の連続横断研究 本研究は、2014~24年の米国における吸入器関連の温室効果ガス排出の規模、発生源、社会的コストの定量化を目的とする連続横断研究である(筆頭著者のFeldman氏は、この領域の研究に当たり米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。 米国の外来向け医薬品市場全体の集計調剤データを、吸入器別の温室効果ガスの推定排出量と関連付け、喘息およびCOPDの治療用に承認された全吸入器の排出量を推定した。57のブランド名の吸入器が解析に含まれた。10年間で16億個の吸入器を調剤 2014~24年に、米国で調剤された吸入器は合計16億個であった。内訳は、定量噴霧式吸入器が11億個(70%)、乾燥粉末吸入器が4億900万個(26%)、ソフトミスト吸入器が5,800万個(4%)だった。 調剤された吸入器の85%を3つの治療薬クラスが占めており、短時間作用型β刺激薬(SABA)が7億8,400万個(50%)、吸入コルチコステロイド-長時間作用型β刺激薬(ICS-LABA)が4億1,200万個(26%)、ICSが1億5,100万個(10%)であった。 最も多く使用された薬剤はalbuterol(日本ではサルブタモールと呼ばれる、7億7,300万個[49%])であった。また、吸入器の85%を4社が製造していた。総排出量は2,490万メトリックトンCO2e 10年間に16億個の吸入器が排出した温室効果ガスの総量は、二酸化炭素(CO2)換算で2,490万メトリックトンCO2e(mtCO2e)と推定された。年間排出量は、2014年の190万mtCO2eから2024年には230万mtCO2eへと24%増加した。また、調査期間中の総排出量の98%を定量噴霧式吸入器が占めた。 10年間の温室効果ガス排出量は、SABAが1,450万mtCO2e(58%)、ICS-LABAが750万mtCO2e(30%)、ICSが230万mtCO2e(9%)であった。また、総排出量の87%を3つの吸入薬が占めており、albuterolが57%、ブデソニド・ホルモテロールが23%、フルチカゾンプロピオン酸エステルが6%だった。全体で57億ドルの社会的コスト 吸入器による温室効果ガス排出の社会的コストは、全体で57億ドル(下限35億ドル、上限100億ドル)と推定された。排出量の増加に伴い、これらのコストは2014年の3億9,000万ドル(下限2億2,900万ドル、上限7億300万ドル)から2024年には5億8,800万ドル(3億6,100万ドル、10億ドル)へと増加した。 著者は、「喘息およびCOPDの治療に承認された吸入器は、過去10年間にわたり温室効果ガス排出の一因となっていた。これらの排出削減を目指す施策立案者と規制当局は、現在市販されている低排出代替品の使用拡大を奨励し、乾燥粉末製剤のICS-ホルモテロールを米国市場に導入するとともに、経済的負担を増大させずに、低排出の定量噴霧式吸入器製品への移行を促すべきである」としている。

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小細胞肺がん1次治療、タルラタマブ上乗せで1年OS率80.6%(DeLLphi-303)/ESMO2025

 PS0/1の進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)の標準治療は、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬、およびPD-L1阻害薬単剤による維持療法である。この標準治療による全生存期間(OS)中央値は12~15ヵ月と報告されており、さらなる治療成績の向上を目的として、タルラタマブの上乗せが検討されている。1次治療でのタルラタマブの安全性・有効性を検討する国際共同第Ib試験「DeLLphi-303試験」では、タルラタマブの上乗せ方法の1つとして、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬を1サイクル実施後にタルラタマブを上乗せし、維持療法にもタルラタマブを上乗せする治療法が検討されている(パート2、4、7)。その結果、タルラタマブ開始後のOS中央値は未到達、1年OS率80.6%と良好な治療成績が示されたことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)でMartin Wermke氏(ドイツ・ドレスデン工科大学)により報告された。DeLLphi-303試験パート2、4、7の概要試験デザイン:国際共同第Ib相試験対象:1次治療としてプラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬の併用療法を1サイクル実施したED-SCLC患者96例投与方法:タルラタマブ(20mg、3週ごと)+プラチナ製剤(カルボプラチンAUC5、各サイクルのday1)+エトポシド(100mg/m2、各サイクルのday1~3)+PD-L1阻害薬(アテゾリズマブ1,200mgまたはデュルバルマブ1,500mg、3週ごと)を3サイクル→タルラタマブ(同)+PD-L1阻害薬(同)を病勢進行まで評価項目:[主要評価項目]用量制限毒性、治療中に発現した有害事象(TEAE)、治療関連有害事象(TRAE)[副次評価項目]OS、無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)など 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は63.0歳(範囲:37~86)、男性の割合は67%、PS1の割合は55%であった。ベースライン時に脳転移、肝転移を有していた割合はそれぞれ16%、45%であった。標的病変の径の和の中央値は82.3mmであった。PD-L1阻害薬の内訳はアテゾリズマブ56例、デュルバルマブ40例であった。・追跡期間中央値13.8ヵ月時点における治療期間中央値は46週(四分位範囲:14~60)であった。・用量制限毒性は3例(いずれもアテゾリズマブ使用集団)に認められた。・Grade3、4のTRAEの発現割合は、それぞれ43%、35%であった。死亡に至ったTRAEは1例報告された(カルボプラチン+エトポシドに関連する敗血性ショックと判定)。・タルラタマブの中止に至ったタルラタマブに関連するTRAEは6%に発現した。・サイトカイン放出症候群(CRS)のほとんどがサイクル1に発現し、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)はすべてサイクル1に発現した。これらのほとんどはGrade1/2であった。・タルラタマブ開始時を基準としたORRは71%(CRは5%)で、DOR中央値は11.0ヵ月であった。DCRは82%であった。・タルラタマブ開始後のOS中央値は未到達で、1年OS率は80.6%であった。・同様に、PFS中央値は10.3ヵ月であり、1年PFS率は43.1%であった。 本試験結果について、Wermke氏は「ED-SCLCの1次治療におけるプラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬へのタルラタマブ上乗せは、管理可能な安全性プロファイルと生存に関する有望な成績を示した。これは、タルラタマブ上乗せの有用性を標準治療との比較により検証する国際共同第III相試験『DeLLphi-312試験』の実施を支持する結果である」とまとめた。

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胃がん周術期、FLOT+デュルバルマブはPD-L1発現にかかわらず最終OSを改善(MATTERHORN)/ESMO2025

 MATTERHORN試験は、2025年の米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、切除可能な胃がん患者を対象に、術前術後療法のFLOTにPD-L1阻害薬デュルバルマブを上乗せすることの有用性を報告し注目を集めた。10月17~21日に行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)では、Josep Tabernero氏(バルデブロン大学・スペイン)が本試験の全生存期間(OS)の最終解析結果を含む、最新データを発表した。・国際共同二重盲検ランダム化第III相試験・対象:切除可能なStageII~IVA期局所進行胃がん/食道胃接合部腺がん 948例・試験群:術前術後にFLOT+デュルバルマブ1,500mgを4週ごと2サイクル、術後にデュルバルマブ1,500mg 4週ごと10サイクル(デュルバルマブ群)474例・対照群:術前術後にFLOT+プラセボを4週ごと2サイクル、術後にプラセボを10サイクル(プラセボ群)474例・評価項目:[主要評価項目]無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、病理学的完全奏効(pCR)率、安全性など・データカットオフ:2024年12月20日 EFS、pCR、病理学的奏効(MPR)率の改善は報告、論文化済み。今回の発表では、最終OS、PD-L1発現レベルなどサブグループ別のOS、pCR・MPR・リンパ節転移とEFSとの関連について報告された。 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は両群とも未到達(NR)だったものの、デュルバルマブ群はプラセボ群と比較して統計学的に有意なOSの改善を示した(ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]: 0.63~0.96、p=0.021)。・デュルバルマブ群の統計学的に有意なOSの改善傾向は、人種、腫瘍部位、ECOG-PSなど、主なサブグループ間において一致していた。PD-L1<1%、PD-L1≧1%のHRはともに0.79で、PD-L1発現にも依存せずOSを延長することが確認された。・デュルバルマブ群はプラセボ群よりもリンパ節転移が陰性である率が高かった(58.2%対44.8%、オッズ比:1.72、95%CI:1.30~2.27)。・pCR/MPR達成例においては、デュルバルマブ群のEFS改善効果が顕著だった(pCR例のHR:0.29、MPR例のHR:0.32)。 これらの結果より、Tabernero氏は「デュルバルマブ群はプラセボ群に比べ、OSを統計的に有意に延長した。この効果はPD-L1陰性/陽性を問わず一貫していた。病理学的奏効(pCR/MPR)およびリンパ節陰性化は、EFS改善と強く相関していた。術前術後療法としてのデュルバルマブ+FLOTは、切除可能胃がんの新たな標準候補と考えられる」とまとめた。

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HER2+早期乳がんの術前療法、T-DXd→THPが標準治療を上回るpCR率(DESTINY-Breast11)/ESMO2025

 DESTINY-Breast11試験において、再発リスクの高いHER2陽性(+)早期乳がん患者の術前療法として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)投与後のパクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(THP療法)は、ドキソルビシン+シクロホスファミド投与後にTHP療法を行う現在の標準治療(ddAC-THP療法)に比べて、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある病理学的完全奏効(pCR)の改善を示したことを、ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのNadia Harbeck氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。 DESTINY-Breast11試験は、高リスクのHER2+早期乳がん患者における術前療法としてのT-DXdの有効性と安全性を検討する第III相試験。患者は、(1)T-DXdのみを投与する群、(2)T-DXdに続いてTHPを投与する群、(3)ddACに続いてTHPを投与する群のいずれかに無作為に割り付けられた。なお、独立データモニタリング委員会の勧告により、T-DXd単独群への登録は2024年3月12日に中止された。・試験デザイン:第III相多施設共同非盲検無作為化試験・対象:高リスク(cT3以上でN0~3またはcT0~4でN1~3または炎症性乳がん)で未治療のHER2+早期乳がん患者・試験群(T-DXd-THP群):T-DXd(5.4mg/kg、3週間間隔)を4サイクル→THP療法を4サイクル 321例・対照群(ddAC-THP群):ddAC療法を4サイクル→THP療法を4サイクル 320例・評価項目:[主要評価項目]盲検下中央判定によるpCR(ypT0/Tis ypN0)[副次評価項目]盲検下中央判定によるpCR(ypT0 ypN0)、無イベント生存期間(EFS)、無浸潤疾患生存期間、全生存期間、安全性など・データカットオフ:2025年3月12日 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の年齢中央値はT-DXd-THP群50歳およびddAC-THP群50歳、アジア人が49.8%および49.1%、HER2ステータス IHC3+が87.2%および88.4%、HR+が73.5%および73.4%、cT0~2が54.8%および58.8%、リンパ節転移ありが89.4%および87.8%であった。・主要評価項目であるpCR率は、T-DXd-THP群67.3%、ddAC-THP群56.3%であった。絶対差は11.2%(95%信頼区間[CI]:4.0~18.3、p=0.003)であり、T-DXd-THP療法は統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるpCRの改善を示した。このベネフィットはHR+でもHR-でも同様に認められた。・残存腫瘍負荷(RCB)インデックス0~Iとなったのは、T-DXd-THP群81.3%、ddAC-THP群69.1%であった。このベネフィットもHR+でもHR-でも同様に認められた。・EFSはT-DXd-THP群で早期から良好な傾向がみられた(ハザード比:0.56、95%CI:0.26~1.17)。24ヵ月EFS率は、T-DXd-THP群96.9%(95%CI:93.5~98.6)、ddAC-THP群93.1%(95%CI:88.7~95.8)であった。・Grade3以上の有害事象(AE)はT-DXd-THP群37.5%およびddAC-THP群55.8%、重篤なAEは10.6%および20.2%に発現した。治療中断に至ったAEは37.8%および54.5%であった。・薬剤関連と判断された間質性肺疾患/肺臓炎はT-DXd-THP群4.4%(Grade3以上:0.6%)およびddAC-THP群5.1%(同:1.9%)、左室機能不全は1.3%(同:0.3%)および6.1%(同:1.9%)に発現した。 これらの結果より、Harbeck氏は「T-DXd-THP療法はddAC-THP療法よりも有効性が高く、毒性が少ない術前療法であり、高リスクのHER2+早期乳がんの新たな標準治療候補となる可能性がある」とまとめた。

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HR 0.40、シスプラチン不適格MIBCへの周術期EV+ペムブロリズマブ追加でEFS改善(KEYNOTE-905)/ESMO2025

 シスプラチン不適格または投与を拒否した筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者において、術前・術後のエンホルツマブ ベドチン(EV)+ペムブロリズマブの追加は、根治的膀胱全摘除術(RC)+骨盤リンパ節郭清術(PLND)のみと比較して、無イベント生存期間(EFS)を有意に改善した。ベルギー・アントワープ大学のChristof Vulstake氏が、第III相KEYNOTE-905試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で報告した。・対象:シスプラチン不適格(Galsky criteriaによる)または投与を拒否したMIBC患者(T2~T4aN0M0またはT1~T4aN1M0、ECOG PS 0~2)・試験群(EV+Pem群):EV(1.25mg/kg、3週ごと1・8日目)×3サイクル+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)×3サイクル→RC+PLND→EV×6サイクル+ペムブロリズマブ×14サイクル 170例・対照群:RC+PLNDのみ 174例※同試験は当初、術前ペムブロリズマブ→RC+PLND→術後ペムブロリズマブ投与群(ペムブロリズマブ群)と対照群との2アームで開始されたが、2020年にEV+Pem群が追加された。2022年にはペムブロリズマブ群への無作為化を中止、EV+Pem群と対照群に1:1の割合で無作為に割り付けられ、対照群では術後ニボルマブ投与が可能となった。今回は、EV+Pem群と対照群の結果が報告されている。・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるEFS[重要な副次評価項目]OS、中央判定による病理学的完全奏効(pCR)・層別化因子:シスプラチン適格性(不適格vs.適格だが投与拒否)、臨床病期(T2N0 vs. T3/T4aN0 vs.T1~T4aN1)など[探索的評価項目]pCRステータスごとのEFS・観察期間中央値25.6ヵ月(データカットオフ:2025年6月6日) 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はEV+Pem群74.0歳vs.対照群72.5歳、シスプラチン不適格が83.5%vs.79.9%、T3/T4aN0が78.2%vs.75.9%、ECOG PS 2の患者が12.4%vs.14.9%含まれた。・BICRによるEFS中央値は、EV+Pem群NR(95%信頼区間[CI]:37.3~NR)vs.対照群15.7ヵ月(95%CI:10.3~20.5)で、EV+Pem群で統計学的有意に改善した(ハザード比[HR]:0.40、95%CI:0.28~0.57、片側p<0.0001)。なお、対照群の16.7%が術後ニボルマブ投与を受けていた。・OS中央値は、EV+Pem群NR(95%CI:NR~NR)vs.対照群41.7ヵ月(95%CI:31.8~NR)で、EV+Pem群で統計学的有意に改善した(HR:0.50、95%CI:0.33~0.74、片側p<0.0002)。12ヵ月OS率は86.3%vs.75.7%、24ヵ月OS率は79.7%vs.63.1%。EV+Pem群の4.7%、対照群の26.4%が次治療を受けていた。・EV+Pem群におけるEFSおよびOSベネフィットはすべてのサブグループで一貫していた。・pCR率はEV+Pem群57.1%(95%CI:49.3~64.6)vs.対照群8.6%(95%CI:4.9~13.8)、推定差48.3%(95%CI:39.5~56.5、片側p<0.000001)となり、EV+Pem群で統計学的有意に改善した。・pCRが得られた症例におけるEFSはEV+Pem群NR vs.対照群41.2ヵ月(HR:0.43、95%CI:0.16~1.06)、non-pCR症例では26.1ヵ月vs.14.2ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.51~1.14)であった。・投与サイクル中央値は術前EV+ペムブロリズマブが3.0サイクル、術後EVが6.0サイクル、術後ペムブロリズマブが12.0サイクルであった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はEV+Pem群71.3%vs.対照群45.9%で発現した。EV+Pem群でみられた主なGrade3以上のTEAEは尿路感染、貧血などで、これまでに報告されている安全性プロファイルと一致し、新たな安全性上の懸念は報告されていない。・有害事象による手術遅延はEV+Pem群4.0%vs.対照群0.6%で発生した。 Vulstake氏は、本試験はシスプラチン不適格のMIBC患者において手術療法と比較し周術期療法の有効性を示した初の第III相試験であるとし、高いアンメットニーズを抱えた同患者集団における新たな標準治療となる可能性を示したとまとめている。

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DLBCL 1次治療の動向と課題、今後の展望/日本血液学会

 第87回日本血液学会学術集会で企画されたシンポジウム「B細胞リンパ腫に対する新規治療」において、九州大学の加藤 光次氏が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する1次治療の動向と課題、今後の展望について講演した。標準治療はPola-R-CHOPへ DLBCLは悪性度が高いが治癒も望める疾患であり、1次治療の成否が予後を大きく左右する。1次治療は20年以上にわたりR-CHOP療法が標準治療であったが、「約30%の患者が再発または治療抵抗性となる点が大きな課題であった」と加藤氏は指摘した。 そのような中、ポラツズマブ ベドチンとR-CHOPを併用するPola-R-CHOPをR-CHOPと比較した国際共同第III相POLARIX試験において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、その効果は5年時点でも維持されていることを紹介した。この結果は国内の大規模リアルワールドデータ研究によっても裏付けられつつあり、Pola-R-CHOPは新たな標準治療として確立しつつあると述べた。DLBCL 1次治療における3つの課題 しかしながら、このような進歩にもかかわらず、治癒可能なDLBCLの1次治療には3つの重要な臨床的課題に直面していると加藤氏は述べ、1)初回治療抵抗性が残ること、2)初回治療後も20~30%が再発すること、3)患者の半数以上が70~80歳以上の高齢であることを挙げた。 なかでも高齢者治療は喫緊の課題である。リアルワールドデータでは、80歳以上の患者に対してもPola-R-CHOPは良好な奏効率(ORR:87.3%)を示しているが、実際には副作用を懸念して化学療法(とくにシクロホスファミドやドキソルビシン)が半量となっている場合が多く、最適な治療強度をいかに維持するかが鍵となると指摘した。 この課題に対し、日本では高齢者機能評価を導入し、高齢患者の治療前状態(Fit/Frail)を評価するG-POWER試験や、減量レジメン(R-mini-CHOP)とポラツズマブ ベドチンの併用を検討するPOLAR mini-CHP試験などが進行中であることを紹介した。分子サブタイプに基づく個別化医療へ 治療抵抗性や再発の根本的な原因として、加藤氏は、DLBCLが単一の疾患ではなく、生物学的に多様な不均一性を持つことを挙げた。 近年、DLBCLはABC型、GCB型といった従来の分類に加え、より詳細な分子サブタイプに分類されるようになり、特定のサブタイプに合わせた分子標的治療の開発が進行している。POLARIX試験のサブ解析においても、Pola-R-CHOPによるPFS改善は、DLBclassによる特定の分子サブタイプ(C5)で顕著であったことが報告されている。加藤氏は、これらの分子サブタイプ分類は、リスク層別化を強化し、今後プレシジョン・メディシンのアプローチにつながると期待を示した。今後の展望~ctDNAと新規薬剤 加藤氏は今後の展望として、治療効果をより早期かつ正確に判断するため、循環腫瘍DNA(ctDNA)や微小残存病変(MRD)評価の重要性を語った。POLARIX試験において、治療1コース後にctDNA量が多い患者は予後が悪かったことが報告されている。治療の早期にctDNAをモニタリングし、その後の再発リスクを予測することで、治療のescalationやde-escalationを判断するresponse-adapted strategyへの期待を語った。 加藤氏はその一例として第II相ZUMA-12試験を挙げ、1次治療早期に効果不十分な高リスク患者に対して、早期にCAR-T細胞療法に切り替えた場合、完全奏効率が86%と有望な成績が得られたことを紹介した。 現在、1次治療として二重特異性抗体、CAR-T療法、BTK阻害薬などの多くの新しい治療法が開発されている。加藤氏は「2028年には何を選ぶべきか決断を迫られるだろう」と予測し、さらに「将来の治療選択は、分子サブタイプ、患者特異的因子、response-oriented approachによって導かれるだろう」と述べ、講演を終えた。

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薬物療法で効果不十分の呼吸苦【日常診療アップグレード】第41回

薬物療法で効果不十分の呼吸苦問題87歳男性。肺がんが進行し、慢性的な呼吸困難が徐々に進行している。発熱や咳の増悪、喀血はないが、呼吸困難のため不安が増悪している。既往歴は高血圧である。オキシコドンの徐放性製剤とレスキューのための速放性製剤は使用している。バイタルサインは正常で、安静時の酸素飽和度は97%である。左上肺部と右下肺部の呼吸音が減弱している。呼吸苦を改善する目的で携帯用扇風器の購入を勧めた。

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「チーム医療」の落とし穴【こんなときどうする?高齢者診療】第14回

高齢者診療の実践に直結するヒントを、CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロンアーカイブズ」からお届けします。今回は“チーム医療”に潜む誤解と、その乗り越え方を考えます。2025年1月と2月の対談で、千葉大学大学院看護学研究院・専門職連携教育研究センター長の酒井郁子教授をゲストにお迎えしました。大学院・大学で専門職連携の教育を行い、病院ではその実装に尽力する酒井さんとの対話を通して見えてきた“連携の落とし穴”と、現場で実践できるヒントをご紹介します。チーム内で「話がかみ合わない」の正体は?カンファレンスで「なんだか話がかみ合わない」と感じたことはありませんか? 立場や職種によって見えている風景が違う―そんな“違和感”の正体に迫ります。「チーム医療」の場面を思い浮かべるとき、ある人は医師が指示し多職種がサポートする姿を想像するかもしれません。またある人は、ある場面では医師が指揮をとり、別の場面では看護師が采配を振るうといった、その場に適した権限委譲が行われることをチーム医療だと思うかもしれません。実は、「チーム医療」という言葉に“チームがかみ合わない理由”のヒントがあります。「チーム医療」は日本独特の言い方で、これが混乱のもとになっています。からまった認識をほぐすために、まず多職種連携と専門職連携の違いを確認しましょう。多職種連携(multidisciplinary collaboration)各専門職が独立した役割で並列的に協働。複数の職業の併存があり、それぞれの職種の平等な権利と固有性の維持が目的。専門職連携(interprofessional collaboration)専門領域を越えて役割や情報を柔軟に共有し、相互補完的に協働。複数の職業の相互作用、交流、対話が焦点で、関係性の構築および相互変容が目的。どちらも患者中心の医療が目的ですが「多職種連携」と「専門職連携」は背景にある哲学や制度的基盤が大きく異なります。「多職種連携」と「専門職連携」をスポーツに例えると多職種連携と専門職連携の違いを理解しようとすると、「多職種連携」はポジションがある程度特化されたアメリカンフットボールや野球。「専門職連携」は状況に応じて役割が変わるサッカーやバスケットボールに例えるとわかりやすいかもしれません。「多職種連携」はもともとアメリカで生まれた考え方。独立した専門性のプロフェッショナルが集合して、高度な医療を提供するものです。それぞれがその専門性を極め、職種や領域で明確に役割分担を行って医療が成立するという考え方です。一方「専門職連携」は、アメリカ型の医療提供体制へのアンチテーゼとしてイギリスで生まれました。国民皆保険のイギリスでは、すべての人に高度な医療を提供することではなく、専門性をオーバーラップさせて平均的な医療をすべての人に提供することが、その根底にある目標です。そして、日本で使われてきた「チーム医療」というタームは、そもそも、multidisciplinary collaborationがアメリカから日本に入ってきたときに、日本文化的に改造されたものです。医師がほかのすべての健康関連専門職に対して上位に立って指示を出すという意味が強く打ち出されており、医師とコメデイカルという言い方もこの流れの一部として生まれたものです。このような意味を深く考慮せず、チーム医療という用語を使い続けた結果、チーム医療といいながら専門職連携になっていたり、もともとのmultidisciplinary collaboration のように医師が上位にくることがない連携のありようであったり、といろいろな連携が意図せずに「含まれてしまった」ため、ミスリードが生じやすくなっています。あなたの職場の“連携スタイル”はどちらでしょうか?教育を受けた時代によってチーム医療に対する考えが異なると知ることも、現場でよくあるチームが機能しない状況がなぜ起きるのかを理解するきっかけになるかもしれません。日本では、平成初期までアメリカ型の多職種連携で教育が行われていました。そのため、複数の慢性疾患を同時に有する多疾患併存の高齢者が増え、臓器別の専門医が集まって治療をしても患者の健康問題を解決できないという壁にぶつかります。その解決策として2010年ごろからイギリス型専門職連携の考え方が導入されて今に至ります。例えば1985年頃を境に教育のアプローチが大きく変わっており、現在40代以上の医療者は「医師中心の医療」、30代以下は「協働を前提とした医療」を学んできた可能性があります。職種を問わず、1980年代後半生まれの方たちが専門職連携教育を受けた最初の世代ですから、このあたりを境目に認識の違いがあるという前提を持っていると、チーム間で話がかみ合わないことに納得がいくのではないでしょうか。大切なのは「どちらが優れているか」ではなく、「いまこの現場で、どちらがふさわしいか」です。急性期病院では明確な役割分担が求められる多職種連携が、地域包括ケアでは柔軟な連携が必要な専門職連携が適しています。このように、医療の場面や対象によって最適なスタイルが異なるのです。どちらの形が適した領域にいるとしても、世代間で認識にズレがあることに自覚的でいるのは、医師にとって大変重要なポイントです。認識にズレがある中でも、チーム内の信頼関係を育てるコツ現在の卒前教育ではどの職種のコアカリキュラムにも専門職連携が導入されており、タスク変化に応じてリーダーシップを委譲し、それが患者のベネフィットになるという体験をするようにデザインされています。このような教育体験のない世代が権限委譲を行うことは、個人競技しか経験のない選手に突然チームスポーツをするよう求めるようなものです。とはいえ、現場でよりよい連携を試みることは必要。そこで、いまからでも身に付けられるマインドセットと職種間コミュニケーションのコツを紹介します。「これは私の仕事じゃないけど、いま必要だから動こう」そんな柔軟さが、信頼あるチームを育てます。自分の仕事を自分で調整して協働するマインドセットを育てることが重要です。具体的には、(1)自分の専門性の境界を明確にする、(2)他職種の専門性を理解する、(3)患者利益を最優先にした柔軟な役割調整を行う、という3つのステップから始めてみましょう。こうしたチーム内の信頼関係を育てていくために必要になるのが、職種間コミュニケーションです。これは、特定の職種に頼らずすべての職種で学び育てるべきものです。そしてすでに卒業している皆さんも学び成長させることができるスキルです。例えば、緊急時には簡潔で要点を絞った情報を、多職種カンファレンスでは背景情報も含めた詳細を、患者・家族には専門用語を避けたわかりやすい言葉で伝えるなど、活用できるスキルは多くあります。さまざまな医療職種連携の成功は、それぞれ個人の認識の違いを理解し、それぞれの強みを活かした協働体制を構築することにあります。まずは自分のチームがどちらのスタイルを基本としているかを観察し、メンバー間の対話から始めることをお勧めします。連携のズレ”を乗り越えた先にこそ、高齢者にとって「よりよいケア」が生まれてくるでしょう。 ※今回のトピックは、2024年度2月度に配信した、千葉大学大学院 看護学研究院 酒井郁子氏との対談の内容をまとめたものです。CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロンアーカイブズ」でより詳しい解説やディスカッションをご覧ください。

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どう診る? 小児感染症-抗菌薬・抗ウイルス薬の使い方

小児感染症の抗菌薬・抗ウイルス薬の使い方に自信がつく! 臨床現場に必携の1冊「小児診療 Knowledge & Skill」第2巻小児科診療において、感染症治療は抗菌薬や抗ウイルス薬の基礎的知識が不可欠である。一方で、感染症には多様なバリエーションがある。エビデンスやガイドラインに忠実に従うだけでは対応が困難な場面に遭遇したときに、どう対応するか?本書は病院で診療する医師がよく遭遇する感染症、とりわけ抗微生物薬による治療が考慮されるものを中心にとりあげた総論にて感染症の診断と治療の基本的なアプローチ、細菌感染症に対する抗菌薬の使い方、新しい診断法や治療をふまえた抗ウイルス薬の使い方を解説各論にて個別の感染症の診断と治療を解説という特色で、各疾患に造詣の深い医師が執筆。トピックスや臨床的な疑問を含め通常の成書よりも一歩踏み込んだ内容とした。単なる知識の羅列ではなく、読者が明日の診療で「どう考え、どう動くか」の手がかりとなるような情報となっている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するどう診る? 小児感染症-抗菌薬・抗ウイルス薬の使い方定価8,800円(税込)判型B5判(並製)頁数368頁発行2025年10月総編集加藤 元博(東京大学)専門編集宮入 烈(浜松医科大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第289回 植物抽出物の育毛剤が無作為化試験で目に見えて効果あり

植物抽出物の育毛剤が無作為化試験で目に見えて効果ありスキンケア化粧水によく使われる熱帯原産の植物ツボクサ(Centella asiatica)抽出物、インスリン増殖因子1(IGF-1)、線維芽細胞増殖因子7(FGF-7)、カフェイン、ビタミンを含む育毛液のわずか2ヵ月足らずの使用による有望な効果が、健康な成人60人が参加したプラセボ対照無作為化試験で示されました1,2)。抜け毛や薄毛の悩みは万国共通で、多ければ男性の2人に1人、女性の3~4割が生涯に少なくともいくらかの男性型脱毛症(AGA)を呈するようです。日本では全年齢の男性のおよそ10人に3人にAGAが生じ、50歳以上になると半数近い40%ほどに認められるようになります3)。AGAは単なる見た目の問題にとどまらず、心理的な負担、不安、自信低下と関連し、生きづらさや人付き合いの困難さえ招くことがあります。ミノキシジルやフィナステリドがAGA治療の定番として広く使われていますが、効果を得るには長期の投与を必要とします。毛髪の成長期を引き伸ばすミノキシジルの投与をやめることは、しばしば数ヵ月以内にしっぺ返しの脱毛をもたらします。フィナステリドは性機能障害、ホルモン関連の害を引き起こすことがあり、妊婦が曝露すると胎児に奇形が生じる恐れがあります。そのような欠点があるミノキシジルやフィナステリドに代わるAGA治療として、毛包を刺激する増殖因子の研究が始まっています。なかでも真皮乳頭細胞の増殖、毛髪成長期の延長、毛包再生を促すIGF-1とFGF-7は主要な生理活性因子と目されています。身近な植物成分のカフェインはそのIGF-1活性を促し、毛髪成長期を長くして毛がより長く丈夫に生えるのを助けることが知られています。カフェインは脱毛予防を謳うシャンプーによく含まれています。やはり植物成分のパントテン酸(ビタミンB5)やその派生物Dパンテノールも発毛調節作用があるらしく、前者は毛包の成長を促し、後者は毛乳頭細胞の増殖を促進することが示されています。市販の頭皮ローションの成分にもなっているツボクサ抽出物は毛根を丈夫にする働きが報告されています。また、毛包を好調にし、毛乳頭細胞を発生させる働きもあるようです。さらには、発毛を促す化合物アラリアジオール(araliadiol)がツボクサから精製されてもいます。台湾・Schweitzer Biotech Companyの研究者は幾重もの仕組みで発毛を促すことを目指してそれら成分をひとまとめにした育毛液を開発し、まずは健康な成人を募った無作為化試験でその効果のほどを検討しました。被験者60人にはプラセボか4種類のローションのいずれかが投与されました。4種類のローションはいずれも下地としてカフェインとパンテノールを含み、その1つは他に有効成分を加えず、あとの2つには長時間作用するようにしたIGF-1/FGF-7かツボクサ由来の細胞外小胞(EV)も加えられました。残りの1つはIGF-1/FGF-7とツボクサ由来EVのどちらも含むSchweitzer Biotech Companyにとって本命の全部込み育毛液です。いずれも1mLが晩の洗髪後の頭皮に56日間1日1回塗布され、プラセボを含むどの投与群も頭髪の状態の改善を示しました。なかでも全部込みの育毛液が同社の狙いどおり最も効果的で、調べた指標のどれも有意に改善しました。たとえば、頭髪の密度が目に見えて改善し、プラセボ群を2倍くらい上回って25%ほど上昇しました。60人ばかりの小規模試験結果であり、より長期の大人数の試験での検討が今後必要です。そのような今後の検討次第で植物由来EVと増殖因子IGF-1/FGF-7の組み合わせは頭皮や毛髪の調子を維持する普段使いの手当てとなりうるかもしれません1)。 参考 1) Chang TM, et al. A 56-Day Randomized, Double-Blinded, and Placebo-Controlled Clinical Assessment of Scalp Health and Hair Growth Parameters with a Centella asiatica Extracellular Vesicle and Growth Factor-Based Essence. medRxiv. 2025 Sep 12. 2) Serum based on plant extracts boosts hair growth in weeks / NewScientist 3) Tsuboi R, et al. J Dermatol. 2012;39:113-120.

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日本の中学生のピロリ検査、陽性率1.2%で半数は家族感染

 日本は胃がんの罹患率が高く、胃がんの大きな原因であるヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)の感染率は40%である。成人のH. pylori検査と除菌は一般的になり、近年では若年層を対象とした集団に対する検査が拡大している。日本の義務教育制度での定期健康診断を活用し、中高校生を対象とした包括的な検査が複数の自治体で実施されている。神奈川県横須賀市で実施された、中学生を対象としたH. pylori検査と除菌についての報告が、Journal of Gastroenterology and Hepatology誌2025年10月号に掲載された。 本研究では、2019~21年の3年間に、横須賀市の中学2年生を対象としたH. pylori検査プログラムについて検証した。このプログラムは2段階アプローチを採用しており、まず尿中抗体検査を実施し、続いて尿素呼気試験による確認を行った。感染が確認された生徒は除菌治療を受け、その後のフォローアップ検査で結果を確認した。参加率、治療効果、副作用、家族内感染調査に関するデータが分析された。 主な結果は以下のとおり。・2019~21年に、横須賀市の中学生9,879例がH. pylori検査の対象となり、計6,270例が尿抗体検査を受けた。うち266例(4.2%)がH. pylori抗体陽性であった。その後、231例が確認の尿素呼気試験を完了し、73例(1.2%)が陽性と診断された。・除菌治療の1次治療はアモキシシリン+クラリスロマイシン+エソメプラゾールの3剤併用(PAC療法)、2次治療はアモキシシリン+メトロニダゾール+エソメプラゾールの3剤併用(PAM療法)だった。1次治療後の成功率は52.9%であり、2次治療後に94.7%に上昇した。軽度の有害事象(主に下痢)は、1次治療の27.0%、2次治療の22.0%で報告された。・家族調査では、陽性が確定した生徒の48.5%に少なくとも1人のH. pylori陽性の家族がおり、治療と並行して家族内感染への対策の重要性が示された。 研究者らは「日本の都市部在住の中学生におけるH. pyloriの有病率は1.2%と低く、3年間の検診受診率は63.5%と、国内他都市の報告値よりも低かった。1次治療および2次治療後の除菌率は全体で94.7%であったが、1次治療の除菌成功率が低く、対策の必要性が示唆された。より良い成果を得るためには、検査参加率および追跡調査を強化するためのより体系的なプログラムが必要である」としている。

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アブレーション後の再発予防、スタチンが最適か~ネットワークメタ解析

 心房細動(AF)はアブレーションや薬物療法を実施しても再発率が高く、大きな臨床課題となっている。AFの再発リスクには炎症が影響しているともされ、抗炎症作用を有する薬剤が再発抑制の補助療法として注目されている。今回、米国・ユタ大学のSurachat Jaroonpipatkul氏らは、コルヒチンとスタチンが炎症と心房リモデリングの軽減における潜在的な役割を担い、アブレーション後早期での最も有望な治療法であることを示唆した。Journal of Cardiovascular Electrophysiology誌オンライン版2025年7月9日号掲載の報告。 本研究では、アブレーション後のAF再発予防における抗炎症作用の有効性を評価するため、アブレーション後のAF再発を検討したランダム化比較試験に対し、PRISMA-NMAガイドラインに基づくシステマティックレビューとネットワークメタ解析を実施した。対象試験で投与されていたのは、コルヒチン、スタチン(アトルバスタチン)、コルチコステロイド(メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン)、ACE阻害薬(ペリンドプリル)、アスコルビン酸であった。今回、直接比較と間接比較を統合させ、治療成績の順位付けは累積順位曲線下面積(Surface Under the Cumulative Ranking、SUCRA)を、エビデンスの質はCINeMA(Confidence in Network Meta-analysis)を用いて評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・21試験群を対象とした13研究の2,283例が解析対象となった。・プラセボと比較し、コルヒチンとスタチンはAF再発率を有意に減少させ(コルヒチンのリスク比[RR]:0.59[95%信頼区間:0.46~0.77、p<0.001]、スタチンのRR:0.57、[同:0.38~0.86、p=0.008])、スタチンはSUCRAランキングで最高の評価を得た。・コルヒチンは、CRPやIL-6などの炎症マーカーを抑制させることで、早期再発率を顕著に減少させる有効性を示した。・コルチコステロイドとACE阻害薬は再発率に有意な影響を与えず、アスコルビン酸には効果が認められなかった。・対象研究間の異質性は最小限であり、感度分析により堅牢性が確認された。 なお、本研究の限界として、研究間でのAF再発定義のばらつきや治療エビデンスが少ない試験を対象とした点などがあった。

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若者の片頭痛、30年間で世界的な負担が急増

 片頭痛は、10〜24歳のAYA世代の心身的健康に重大な影響を及ぼす疾患である。中国・北京中医薬大学のYanPi Li氏らは、1990〜2021年のAYA世代における片頭痛の発症率、有病率、障害調整生存年(DALY)の世界的傾向を評価し、予防および政策の指針となるエビデンスを提供するため、本研究を実施した。Frontiers in Neurology誌2025年9月1日号の報告。 過去30年間(1990〜2021年)の204の国と地域におけるAYA世代の片頭痛負担を性別、年齢、社会人口統計指数(SDI)、地域、年別に層別化した世界疾病負担(GBD)2021研究より、データを取得した。本評価では、発症率、有病率、DALYの分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・過去30年間で、AYA世代における片頭痛の世界的負担は、絶対症例数で著しく増加していた。・発症率は23.50%、有病率は24.82%、DALYは24.94%の増加が認められた。・これらが増加しているにもかかわらず、全体の罹患率および年齢調整罹患率(ASR)は、比較的安定しており、人口増加と高齢化が主要な要因であることが示唆された。・女性および高SDI地域では、負担が一貫して高かった。しかし、増加率は男性のほうが高く、男女間の格差は徐々に縮小していた。・年齢別では、10~14歳の罹患率が最も高く(45.9%)、次いで20~24歳の有病率(39.8%)、DALY負担(39.9%)が高かった。・21地域のうち、年齢調整発生率(ASIR)は西ヨーロッパ(人口10万人当たり2,272.50人)、年齢調整有病率(ASPR:人口10万人当たり2万7,542.29人)および年齢調整DALY率(ASDR:人口10万人当たり1,011.78人)は中南米の熱帯地域が最も高かった。・国別では、ベルギーのASIR(人口10万人当たり2,758.02人)が最も高く、ブラジルではASPR(人口10万人当たり2万7,592.69人)およびASDR(人口10万人当たり1,013.43人)が最も高かった。・2035年までの予測では、ASIR、ASPR、ASDRはさらに上昇すると予測された。 著者らは「世界の片頭痛負担は急増しており、SDIの高い地域で片頭痛の負担が大きい一方、SDIの低い地域では過小診断の可能性が示唆された。10~14歳の若年層、とくに女性で発症率が高い要因として、ホルモンや社会的要因の影響が考えられる。今後、ASRの低下が予測されるものの、症例数自体は増加傾向にあり、医療アクセス、性別に応じた対策、学校主導プログラムなどの精密な介入が求められる。片頭痛ケアと予防への公平なアクセスを促進するとともに、大気汚染、長時間のスクリーンタイム、慢性的ストレス、学業のプレッシャーなど、新たなリスク要因に関する研究を推進するためにも、世界規模での緊急の取り組みが必要とされる」と結論付けている。

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HER2変異陽性NSCLCの1次治療、ゾンゲルチニブの奏効率77%(Beamion LUNG-1)/ESMO2025

 ベーリンガーインゲルハイムは、2025年9月19日にゾンゲルチニブについて「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)」を適応として、厚生労働省より製造販売承認を取得した。本承認は、国際共同第Ia/Ib相試験「Beamion LUNG-1試験」の既治療コホートの結果に基づくものである。本承認により、ゾンゲルチニブは既治療のHER2遺伝子変異陽性NSCLCに対する治療選択肢の1つとなったが、1次治療における有用性は明らかになっていなかった。そこで、Sanjay Popat氏(英国・Royal Marsden Hospital)が、本試験の1次治療コホートの結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。HER2遺伝子変異陽性の進行NSCLCの1次治療は、免疫チェックポイント阻害薬±化学療法が標準治療であり、1次治療におけるHER2標的療法の有用性は確立していない。 本試験は第Ia相と第Ib相で構成され、第Ib相の中間解析の結果から1日1回120mgの用量が選択された。今回は、第Ib相の未治療のHER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性NSCLC患者コホート(コホート2)のうち、1日1回120mgの用量で投与された患者74例の結果が報告された。有効性の主要評価項目は中央判定による奏効率(ORR)とし、副次評価項目は病勢コントロール割合(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)とした(いずれも中央判定)。 主な結果は以下のとおり。・ゾンゲルチニブ 1日1回120mgによる治療を受けた患者(74例)の年齢中央値は67歳(範囲:35~88)、65歳以上75歳未満の割合は40%、75歳以上の割合は18%であった。女性の割合は50%、アジア人の割合は46%であった。元/現喫煙者の割合は35%、脳転移を有する割合は30%であった。・有効性の主要評価項目である中央判定によるORRは77%(CRは8%)であり(期待値40%に対する片側p<0.0001)、主要評価項目を達成した。DCRは96%であった。・奏効が認められた患者(57例)のうち、データカットオフ時点で47%がゾンゲルチニブによる治療を継続していた。・6ヵ月PFS率は80%、6ヵ月DOR率は79%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は18%であった。主なTRAEは下痢(54%)、皮疹(23%)、ALT増加(18%)、AST増加(16%)、味覚異常(16%)であり、多くがGrade1~2であった。Grade4/5のTRAEは認められず、間質性肺疾患(ILD)/肺臓炎は2例に発現した(いずれもGrade2)。減量に至った有害事象(AE)の発現割合は15%、治療中止に至ったAEの発現割合は9%と低かった。 本結果について、Popat氏は「ゾンゲルチニブは、未治療のHER2遺伝子変異陽性の進行NSCLC患者において、統計学的有意かつ臨床的に意義のある治療効果を示した」とまとめた。なお、HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性NSCLCの1次治療におけるゾンゲルチニブの有用性を検証する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-2試験」が進行中である。

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進行尿路上皮がん、アベルマブ維持療法前の化学療法3サイクルvs.6サイクル(DISCUS)/ESMO2025

 局所進行または転移を有する尿路上皮がんにおける、アベルマブ維持療法前のプラチナ化学療法の治療サイクル数について、3サイクルは6サイクルと比較してQOLが有意に良好であり、中間解析時点における全生存期間(OS)はともに18.9ヵ月であった。スペイン・Anderson Cancer Center MadridのEnrique Grande氏が、医師主導の第II相国際共同試験であるDISCUS試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で報告した。なお、本結果はAnnals of Oncology誌オンライン版2025年10月17日号に同時掲載された。・対象:進行がんに対する全身療法歴のない局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者(ECOG PS 0~2)・3サイクル群:ゲムシタビン(21日ごと1・8日目に1,000mg/m2)+シスプラチン(同1日目に70mg/m2)またはカルボプラチン(同1日目にAUC4.5または5)×3サイクル後にアベルマブ維持療法を最大2年 133例・6サイクル群:ゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチン×6サイクル後にアベルマブ維持療法を最大2年 134例・評価項目:[主要評価項目]ベースラインから6サイクル完了時点までのGHS/QoLスコアの変化、OS[副次評価項目]GHS/QoLスコア悪化までの時間、無増悪生存期間(PFS)、奏効割合(ORR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は、年齢中央値が両群で71歳、男性が3サイクル群75%vs.6サイクル群70%、肝転移ありが両群で19%、ゲムシタビン+シスプラチン療法が42%vs.40%と両群でバランスがとれていた。・治療を完遂した患者の割合は、3サイクル群78%vs.6サイクル群40%であった。アベルマブ維持療法を受けた患者の割合は、74%vs.56%であった。・ベースラインから6サイクル完了時点までの平均GHS/QoLスコア変化は、3サイクル群0.0(95%信頼区間[CI]:-5.9~5.2)vs.6サイクル群-8.5(95%CI:-14.1~-2.9)であり、3サイクル群で統計学的に有意に良好であった(群間差:+8.5ポイント、95%CI:0.7~16.3、p=0.016)。・GHS/QoLスコアはすべてのスクリーニング時点で3サイクル群で良好な傾向がみられたが、GHS/QoLスコア悪化までの時間は、3サイクル群4.8ヵ月vs.6サイクル群3.5ヵ月(ハザード比[HR]:0.81、95%CI:0.46~1.43)となり、統計学的有意差は認められなかった。・中間解析時点におけるOS中央値は、3サイクル群18.92ヵ月vs.6サイクル群18.86ヵ月であった(HR:1.15、95%CI:0.72~1.86、p=0.56)。・PFS中央値は、3サイクル群8.0ヵ月vs.6サイクル群9.0ヵ月であった(HR:1.053、95%CI:0.725~1.527、p=0.788)。・ORRは、3サイクル群24%vs.6サイクル群27%であった。・Grade3~4の治療関連有害事象は、3サイクル群3%vs.6サイクル群11%に発現した。 Grande氏はOSについて、3サイクル投与群では6サイクル投与群と比較して優越性は示されず、非劣性を示すには検出力不足であったとし、より多くの患者がアベルマブ維持療法に進んでいることから、長期的な有効性につながる可能性があるとした。OS解析は進行中となっている。

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超早産児の1次呼吸補助、非侵襲的高頻度振動換気法が有望/BMJ

 呼吸窮迫症候群を呈する超早産児(extremely preterm infant)の1次呼吸補助では、経鼻的持続陽圧呼吸療法(NCPAP)と比較して非侵襲的高頻度振動換気法(NHFOV)で、出生後72時間以内に侵襲的機械換気を必要とした新生児の割合が有意に低く、安全性に有意差は認められなかったことが、中国・重慶医科大学附属児童医院のYang Li氏らNHFOV study groupによる検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年10月6日号に掲載された。中国のNICUの無作為化対照比較試験 研究チームは、2022年8月~2024年8月に、中国の20の新生児集中治療室(NICU)の参加の下で無作為化対照比較優越性試験を実施した(中国国家重点研究開発計画などの助成を受けた)。 呼吸窮迫症候群と診断され、NCPAPを受けている出生から2時間以内の超早産児(在胎期間24週0日から28週6日まで)342例を、1次呼吸補助としてNCPAPを継続する群(172例、在胎週数中央値27.0週、出生時体重中央値970g、女児39.5%)またはNHFOVに切り換える群(170例、27.0週、990g、43.5%)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、出生後72時間以内の治療失敗(侵襲的機械換気が必要な病態と定義)とした。7日以内の治療失敗も少ない 出生後72時間以内の治療失敗は、NCPAP群で172例中48例(27.9%)に発生したのに対し、NHFOV群では170例中27例(15.9%)と有意に低率であった(リスク群間差:-12.0%ポイント、95%信頼区間[CI]:-20.7~-3.4、p=0.007)。 治療失敗の最も頻度の高い原因は、低酸素症(NHFOV群11.2%[19/170例]vs.NCPAP群18.6%[32/172例])で、有意差はないもののNHFOV群でリスクが低い傾向を認めた(リスク群間差:-7.4%ポイント、95%CI:-14.9~0.1、p=0.05)。次いで頻度の高い原因として、重症無呼吸(2.3%vs.5.2%、p=0.16)、重症呼吸性アシドーシス(1.2%vs.2.3%、p=0.42)、緊急挿管(1.2%vs.1.7%、p=0.66)がみられ、いずれも両群間に有意な差はなかった。 また、生後7日以内の治療失敗の発生は、NHFOV群で有意に良好であった(21.2%[36/170例]vs.33.7%[58/172例]、リスク群間差:-12.5%ポイント、95%CI:-21.9~-3.2、p=0.008)。これら以外の副次アウトカム(サーファクタント治療、気管支肺異形成症、気管支肺異形成症と死亡の複合、介入期間など)には、両群間に有意差はなかった。重篤な有害事象の頻度は同程度 重篤な有害事象については、気道閉塞の原因となる粘稠な分泌物(NHFOV群7.1%vs. NCPAP群5.8%、p=0.64)、介入後の空気漏出症候群(0.6%vs.2.3%、p=0.18)、院内死亡(5.3%vs.7.0%、p=0.52)のいずれにおいても、両群間に有意差はみられなかった。 著者は、「これらの結果は、NHFOVが超早産児の1次呼吸治療として実行可能で、有益性をもたらす可能性を示しており、われわれのこれまでの理解を前進させるものである」「重要な点として、本研究のデザインはNHFOVとNCPAPを比較する際の主要な歴史的限界とされる気道圧の変動性に対処しており、両モダリティ間で同等の圧力範囲を維持することで、より直接的かつ臨床的に意義のある比較を可能にした」としている。

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