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気管支拡張症、DPP-1阻害薬brensocatibが有用/NEJM

 気管支拡張症患者において、経口可逆的ジペプチジルペプチダーゼ1(DPP-1)阻害薬brensocatib 10mgまたは25mgの1日1回投与は、プラセボと比較して肺疾患増悪の発生率を低下させ、25mg群ではプラセボと比較して1秒量(FEV1)の低下が少ないことが、英国・ダンディー大学のJames D. Chalmers氏らASPEN Investigatorsが35ヵ国390施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「ASPEN試験」の結果で示された。気管支拡張症において好中球性炎症は増悪および病勢進行リスクの増大と関連しており、brensocatibは好中球性炎症の主要なメディエーターである好中球セリンプロテアーゼを標的としている。気管支拡張症成人患者を対象とした第II相試験では、brensocatib 10mgまたは25mgの1日1回24週間投与により、プラセボと比較して、初回増悪までの期間延長および増悪率の低下が示されていた。NEJM誌2025年4月24日号掲載の報告。肺疾患増悪発生率をbrensocatib 10mg群と25mg群、プラセボ群で比較 研究グループは、スクリーニング前12ヵ月間に少なくとも2回の増悪を呈しスクリーニング時のBMIが18.5以上の18~85歳(成人)、ならびにスクリーニング前12ヵ月間に少なくとも1回の増悪を呈しスクリーニング時の体重が30kg以上の12~17歳(青少年)の気管支拡張症患者を、brensocatib 10mg群、25mg群またはプラセボ群に、成人では1対1対1、青少年では2対2対1の割合で無作為に割り付け、1日1回投与した。 主要エンドポイントは52週間における年率換算した肺疾患増悪発生率(1年当たりのイベント数)であり、副次エンドポイントは階層的検定順序に基づいた、52週間における初回増悪までの期間、52週間無増悪の患者の割合、52週時の気管支拡張薬投与後のFEV1のベースラインからの変化量、重度肺疾患増悪の年率換算した発生率、およびQOLの変化(成人のみ)とした。brensocatib群で肺疾患増悪発生率が有意に低下 2020年11月~2023年3月に1,767例が無作為に割り付けられ、brensocatibまたはプラセボを投与された1,721例(成人1,680例、青少年41例)がITT集団となった(brensocatib 10mg群583例、25mg群575例、プラセボ群563例)。 年率換算した肺疾患増悪発生率は、brensocatib 10mg群1.02、25mg群1.04、プラセボ群1.29であり、プラセボ群に対する発生率比はbrensocatib 10mg群で0.79(95%信頼区間[CI]:0.68~0.92、補正後p=0.004)、25mg群で0.81(0.69~0.94、p=0.005)であった。 初回増悪までの期間のハザード比(HR)は、10mg群0.81(95%CI:0.70~0.95、補正後p=0.02)、25mg群0.83(0.70~0.97、p=0.04)であった。また、52週間無増悪の患者の割合は、brensocatib各群48.5%(10mg群283/583例、25mg群279/575例)に対しプラセボ群40.3%(227/563例)であり、HRは10mg群で1.20(95%CI:1.06~1.37、補正後p=0.02)、25mg群で1.18(1.04~1.34、p=0.04)であった。 52週時のFEV1のベースラインからの低下(平均値±標準誤差)は、brensocatib 10mg群50±9mL、25mg群24±10mL、プラセボ群62±9mLで、プラセボ群との最小二乗平均差は10mg群11mL(95%CI:-14~37、補正後p=0.38)、25mg群38mL(11~65、p=0.04)であった。 有害事象の発現率は、brensocatib群で過角化の発現率が高かったことを除き、両群で同様であった。

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豚由来腎臓を移植されていた米国人女性から移植腎を摘出

 遺伝子編集された豚の腎臓を移植し透析治療が不要になっていた米国人女性が、拒絶反応を来し、移植腎摘出に至ったことが報じられた。移植手術から130日後のことであり、遺伝子編集された豚由来腎臓が人の体内で機能した最長記録となった。 この女性は、米国アラバマ州に住む53歳の女性、Towana Looneyさん。移植術と摘出術を行った米ニューヨーク大学ランゴン・ヘルスの発表によると、Looneyさんは現在、透析治療を再開している。 一連の手術の執刀医であるRobert Montgomery氏は、ニューヨークタイムズ紙に対して、「移植腎の摘出は、動物の臓器を人に使用するという『異種移植』の後退を意味するものではない。今回のケースは異種移植による治療を受けた患者の中で、最も長く臓器が機能した。新しい治療法の確立には時間を要する。ホームランを狙って一発で勝負がつくというものではなく、単打や二塁打を着実に積み重ねていく進歩が鍵となる」としている。 Looneyさんは、移植手術の予後に影響を与える可能性のある、ほかの病状を抱えていた。医師たちは、免疫抑制剤の投与量を増やすという積極的な治療を行えば、移植した腎臓を救うことができる可能性も考えたが、結局、Looneyさんと医療チームはそれを断念した。「一番重要なことは安全だった」とMontgomery氏は話す。 一方のLooneyさんも、「2016年以来初めて、透析治療の予定を気にせず、友人や家族と楽しい時間を過ごすことができた。この結果は誰もが望んでいたものではないが、豚の腎臓を移植後の130日間で、多くの知見が蓄積されたと確信している。そして、この経験が腎臓病克服を目指す多くの人々の助けとなり、希望を与えることを願っている」と語っている。 移植腎摘出に至った経緯は、移植後の経過観察で、Looneyさんの血液中のクレアチニンの上昇が認められたことに始まる。クレアチニンは血液中の老廃物で、通常は腎臓の働きによって体外に排泄され、血液中の濃度は一定程度以下に抑えられている。それが上昇しているということは、腎臓に問題が起こり始めている可能性が考えられた。 Looneyさんはいったんアラバマ州の病院に入院した後、ニューヨークへ飛行機で移動。改めて検査が行われ、拒絶反応の兆候が確認されて、結局、4月11日に摘出術が行われた。 移植に用いられた豚由来腎臓を開発したバイオテクノロジー企業であるUnited Therapeutics社は、拒絶反応が起こるまで移植腎は正常に機能していたと述べている。また同社はLooneyさんの勇気をたたえるとともに、豚腎臓移植の臨床試験を本年後半に開始することを公表した。この臨床試験は、当初は6人の患者を対象に開始し、その後50人にまで拡大する予定だという。 現在、米国では55万人以上が腎不全により透析治療に依存しており、約10万人が移植待機リストに登録されている。それに対して、昨年行われた腎移植は2万5,000件足らずだったとニューヨークタイムズ紙は報じている。

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複数の食品添加物の相互作用が2型糖尿病リスクを高める

 ダイエット飲料や超加工食品に使われている添加物が、2型糖尿病のリスクを高めることを示唆するデータが報告された。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)のMarie Payen de la Garanderie氏らの研究の結果であり、詳細は「PLOS Medicine」に4月8日掲載された。複数の添加物による相互作用が、リスク上昇に関与している可能性があるという。 約11万人を対象に行われたこの研究によると、人工甘味料入り飲料によく含まれている添加物の混合物(添加物の組み合わせ)は2型糖尿病のリスクを13%増加させ、同様にスナックなどの超加工食品に含まれている添加物の混合物は、リスクを8%増加させることが明らかになった。de la Garanderie氏は、「多くの製品に含まれているいくつかの添加物はしばしば同時に摂取されるが、そのような同時摂取が2型糖尿病のより高いリスクと関連していることが示唆される」と解説。「これらの添加物は修正可能なリスク因子といえ、2型糖尿病予防の新たな戦略への道を開く可能性がある」と付け加えている。 この研究では、フランスで行われている長期縦断疫学研究の参加者10万8,643人(平均年齢42.5±14.6歳、女性79.2%)を、平均7.7±4.6年間追跡したデータが解析に用いられた。参加者は、追跡開始時とその後は半年ごとに、3日間(連続していない平日2日と休日1日)、24時間の食事記録をつけ、追跡開始後最初の2年間のその記録を基に、食品添加物などの摂取量が評価された。 追跡期間中に1,131人が、新たに2型糖尿病と診断されていた。解析の結果、5種類の食品添加物混合物のうち2種類が、2型糖尿病発症リスクの有意な上昇と関連していた。その混合物の一つはダイエット飲料に使用されることのある添加物で、酸味料・酸度調整剤(クエン酸、リン酸、リンゴ酸など)、着色料(カラメル、アントシアニンなど)、甘味料(アスパルテーム、スクラロースなど)、乳化剤(ペクチン、グアーガムなど)、コーティング剤(カルナバワックス)で構成されていた。もう一つの混合物は、さまざまな超加工食品に使用されることのある添加物で、乳化剤(加工デンプンなど)、保存料(ソルビン酸カリウム)、着色料(クルクミン)で構成されていた。 研究者らは、「われわれの知る限り、この研究結果は、同時に摂取されることが多い食品添加物と2型糖尿病リスクに関する、初めての知見である」と述べている。ただし、「なぜこれらの添加物の混合物が2型糖尿病リスクを高めるのかを理解するには、さらなる研究が必要」とコメントしている。 de la Garanderie氏は、「因果関係を証明するには、この観察研究の結果だけでは不十分だ。とはいえ、実験室内で行われた最近の研究では、さまざまな添加物が相互に影響を及ぼし合う『カクテル効果』が発生する可能性が示唆されており、われわれの研究結果はそれと一致するものだ」と述べている。

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高齢の心不全患者が感染症で再入院にいたる因子とは

 心不全(HF)患者の再入院は、患者の死亡率上昇だけでなく、医療機関に大きな経済的負担をもたらす。高齢HF患者では、しばしば感染症による再入院がみられるが、この度、高齢のHF患者における感染症関連の再入院にフレイルと腎機能の低下が関連しているという研究結果が報告された。徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床薬学実務実習教育分野の川田敬氏らの研究によるもので、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に3月11日掲載された。 世界でも有数の高齢化社会を擁する日本では、高齢のHF患者が大幅に増加している。高齢者では免疫力が低下することから、高齢HF患者の感染症による再入院率も増加していくと考えられる。これまでの研究では60代や70代のHF患者に焦点が当てられてきたが、実臨床で増加している80代以上の高齢HF患者、特に感染症による再入院に関連する因子については調べられてこなかった。このような背景から、川田氏らは、高齢化が特に進む日本の高知県の急性肥大症性心不全レジストリ(Kochi YOSACOI Study)のデータを使用して、高齢HF患者の感染症による再入院に関連するリスク因子を特定した。 研究には、2017年5月から2019年12月の間に急性非代償性心不全(ADHF)でレジストリに登録された1,061名を含めた。この中から死亡した患者30名、左室駆出率、日本版フレイル基準(J-CHS)スコア、その他の検査結果などが欠落していた302名を除外し、729名を最終的な解析対象に含めた。 解析対象729名のHF患者の平均年齢は81歳(四分位範囲72.0~86.0)であった。患者は退院後2年間の追跡期間中に感染症関連の再入院を経験した121名(17%)と、感染症関連の再入院を経験しなかった患者608名に分けられた。 HF患者の感染症関連再入院に関連する因子はロジスティック回帰分析により決定した。その結果、独立した予測因子として、J-CHSスコア≧3(調整オッズ比1.83〔95%信頼区間1.18~2.83〕、P=0.007)が特定された。 次に感染症関連再入院の確率を予測するために、各患者について勾配ブースティング決定木(GBDT)モデルを構築した。GBDTモデルでは、J-CHSスコアの高さと推算糸球体濾過量(eGFR)の低下が、感染症関連再入院の増加を予測する最も重要な因子であり、それぞれ「スコア≧3」、「eGFR<35mL/min/1.73m2」の場合にリスクの増加が観察された。また、決定木分析より、感染症関連再入院のリスクは高(J-CHSスコア≧3)、中(J-CHSスコア<3、eGFR≦35.0)、低(J-CHSスコア<3、eGFR>35.0)に分類された。 本研究について著者らは、「本解析より、高齢のHF患者に発生する感染症関連の再入院は、フレイルの程度とeGFR値に関連することが示された。これらの知見は、医療提供者が高齢のHF患者の再入院リスクを適切に管理し、患者の転帰を改善するための貴重なインサイトを提供するものである」と述べた。 本研究の限界点については、観察研究でありワクチン接種などの交絡変数が考慮されていないこと、Kochi YOSACOI Studyには平均年齢81歳という高齢の患者集団が含まれており、HF患者全体に一般化することができないことなどを挙げた。

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グローバルなリアルワールドエビデンスに期待(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 本研究は、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち、PD-L1陽性(TPS≧1%)でEGFR変異やALK転座がない症例を対象に、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブと、新規の二重特異性抗体ivonescimab(PD-1+VEGFに対する抗体)の有効性と安全性を比較した多施設ランダム化第III相試験「HARMONi-2試験」の報告である。中間解析時点での主要評価項目は無増悪生存期間PFSで、ivonescimab群で有意に延長が認められた(中央値11.1ヵ月vs.5.8ヵ月、HR:0.51、p<0.0001)。このPFSの改善効果はPD-L1 TPS 1~49%、TPS≧50%、扁平上皮がん、非扁平上皮がんを含む主要なサブグループで一貫していた。また奏効率ORRはivonescimab群で50%、ペムブロリズマブ群で39%、病勢コントロール率DCRはそれぞれ90%と71%であった。重篤な免疫関連有害事象(irAE)は両群で同程度であり、高血圧や蛋白尿などのVEGFに関連する有害事象はivonescimab群でやや多いものの管理可能な範囲であった。とくにベバシズマブが従来禁忌とされてきた扁平上皮がんでも、出血性合併症の増加は認められなかった。 本研究の最大のメリットは、「免疫治療の単剤療法」においてペムブロリズマブを上回る有効性を示した点である。とくに、PD-L1 TPS 1~49%の集団で有効性を示した初の免疫単剤であること、扁平上皮がんにも使用可能な抗VEGF併用薬であること、速い奏効と高い病勢コントロール率の3点は肺がん診療において重要かつ実践的であると考えられる。 PD-L1陽性肺がんに対するペムブロリズマブの初回治療の効果を検証した「KEYNOTE-042試験」ではTPS 1~49%の患者でPFS延長は示されなかったが、本試験では同群に対してHR 0.54と有意なPFS延長を示した。これにより、これまで「PD-L1低発現群で免疫治療の単剤治療は避けるべき」とされてきた症例に対する新たな選択肢の可能性を示した。また従来血管新生阻害薬であるベバシズマブは出血リスクから扁平上皮がんでは禁忌とされていたが、ivonescimabは同様の抗VEGF作用を有しながら出血性合併症は問題とならなかった。扁平上皮がんの1stラインにおける免疫薬単剤治療の選択肢が広がる点は、臨床的に非常に有用と考えられる。そして本研究におけるivonescimab群の奏効までの期間中央値は1.5ヵ月であり、治療早期に効果を期待したい症例に有利に働く。 本研究の有用性は十分に示されていると考えられるが、日本の実臨床で活かすためにはまだまだ問題点がある。まずすべての症例が中国人であり、外的妥当性に課題がある。薬物代謝や腫瘍の特性、人種差を考慮すると、日本人を含むグローバルな症例に対して本研究と外挿するには慎重な姿勢が求められる。また現時点で評価期間が短く、OSは未成熟な点である。他の臨床試験でも同様であるがPFS延長=延命とは限らず、今回の中間解析ではPFSの延長がそのまま予後改善につながるかどうかは現時点では不明である。比較対象がペムブロリズマブ単剤であることも問題である。昨今の進行非小細胞肺がんの標準治療は、プラチナ製剤を含む化学療法と免疫治療を組み合わせる複合免疫療法がスタンダードである。グローバルな標準治療と乖離しており、本試験の比較対象がペムブロリズマブ単剤であることは、比較の「厳しさ」に欠ける可能性がある。 ivonescimab群では目立った免疫関連有害事象こそ認められないものの、Grade3以上の高血圧や蛋白尿といった抗VEGFに由来する有害事象は一定数認められた。実臨床では、とくに腎障害リスクのある症例や高齢者では慎重な管理が必要と考えられる。 さまざまな問題点が指摘される本研究であるが、扁平上皮肺がんやPD-L1低発現群など治療選択肢が限られる症例に対しては期待できる結果が報告された。今後のグローバルなリアルワールドエビデンスに期待が持てる新規薬剤となるのであろう。

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深緑の季節、医学生への助言【Dr. 中島の 新・徒然草】(579)

五百七十九の段 深緑の季節、医学生への助言気持ちのいい毎日。花粉も最近は大したことありません。1年で最も爽やかな季節ですね。こういう日は洗濯日和!私もすっかり主夫になりました。さて、先日のこと。医学生が2人、病院見学にやって来ました。いうまでもなく、夏に行われるマッチング試験に備えてのこと。あちこちの病院を見ておき、どこを受験すべきか。それを考えるためです。面接試験の秘訣を伝授しながら、若者たちと話をするのも面白いもの。中島「面接試験でアピールすべきはガクチカだな」学生1、2「やっぱりガクチカですか!」ガクチカというのは「学生時代にチカラを入れていたこと」の略です。この専門用語が通じるのは、真面目に就職活動をしている証拠。中島「クラブ活動とかボランティアとか。なんならアルバイトでもいいぞ」学生1「僕は帰宅部なんで……」中島「何か他の人と違うことがあるだろう」学生1「強いて言えば、母子家庭ということくらいですかね」中島「それや!」どんなことでもアピール材料になります。中島「仕事から疲れて帰ってくるお母さんのために」学生1「はあ」中島「家事を引き受けているんだろ? 掃除・洗濯・炊事とか」学生1「いえ、掃除を少しやっているくらいですけど」中島「今からでもいいからやったれよ、お母さんのために」学生1「でも、家事はあんまり得意じゃないんで……」中島「面接試験のために3ヵ月間だけ頑張れよ」学生1「そんなインチキしていいんですか」中島「本当に実行したらインチキでも何でもないから」学生1「わかりました!」次は学生2です。中島「クラブ活動でいろいろと人間関係のトラブルがあっただろ」学生2「山ほどありました」中島「そいつをアピールしろ」学生2「トラブルがアピールになるんですか?」中島「それを乗り越えて今の自分があります、みたいに締めくくれ」学生2「なるほど、そうですね!」そもそも面接試験は何のためにあるのか?患者さんや職場の同僚との人間関係を上手く築けるかを見るためです。医学的知識や英語の能力は筆記試験で測定可能。でも、人柄や人間関係のスキルは対面で話してみないとわかりません。親子関係やクラブ活動は社会の縮図。まずは、そこで上手くやっているのか、が基本ですね。さすがに医学生は、一を聞いたら十を知ってくれます。中島「いくら人間関係とはいえ、彼女の話とかは出さないほうが無難だぞ」医学生1「確かに『彼女が5人います』と言ったりしたらマズイですね」中島「何っ、5人もいるのか?」医学生1「いるわけないじゃないですか!」中島「そんなことを言ったら絶対に落とされるからな、注意しろよ」医学生1、2「わかりました!」彼らと話をすると、最近の若者の動向がよくわかります。オンラインゲームに嵌まっていたとか、マラソン大会に出たとか。面接の指導を装って最新知識をアップデートするのもまた一興。夏のマッチング試験、彼らの健闘を祈りたいと思います。最後に1句五月晴れ 未来の医師に アドバイス

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自ら「後医」となり学ぶ――セルフフィードバックのすすめ 【臨床留学通信 from Boston】第11回

自ら「後医」となり学ぶ――セルフフィードバックのすすめ2006年に医師となり、気が付けば今年で20年目を迎えました。研修医のときには想像もしていなかった年月が流れ、「もっと前もって計画して渡米しておけばよかった」と思うこともありますが、これもまた人生です。5月になると、いわゆる五月病とまではいかなくても、卒業直後で慣れない研修生活のなかで、何をすればよいのかわからず、気疲れから疲労困憊だったことをよく思い出します。当時は臨床研修制度が始まったばかりで、研修医の立ち位置が曖昧だったうえ、病院側にもシステムが十分に構築されていなかったことも要因だったかもしれません。私の所属していたさいたま市立病院が、2023年度のマッチングで全国1位となったのは、その後の指導医の先生方の試行錯誤と、研修後もスタッフとして活躍している同期たちの努力の賜物だと思います。19年にわたりさまざまな病院で勤務して感じるのは、国や病院、医師経験年数にかかわらず、「いかに日々を過ごすか」で大きな差が生まれるということです。そこで、新たに研修医、専修医となった方々に1つだけ伝えたいのが「セルフフィードバック」を意識してほしいということです。もちろん、ある程度までは上級医に教えてもらう必要がありますし、優秀な指導医がいれば事細かに教えてくれるかもしれません。しかし、それを「継続的な学び」に変えるには、その指導医と常に一緒にいなければならず、現実的ではありません。循環器医はなぜ心電図を読めるのか。それは単に心電図の教科書を読んでいるからだけではなく、膨大な心電図を1つずつcriteriaに従って読み、その心電図が最終的にどんな冠動脈造影や心エコーなのかを想像して読むからです。たとえば「対角枝が詰まっていたらこのような心電図になる」など、自らフィードバックします。聴診も同様で、雑音があったときに「このような弁膜症があるな」と想像し、心エコーの結果を確認して自らフィードバックをします。頸静脈の診察も、診察した後に心エコーや右心カテーテルを行った場合には、自分の計測したプレッシャーが合っているかを確認します。慣れない人には難しいIII音の聴診も、心エコーでE波の立ち上がりが早ければそれを裏付けるものだと思われますし、IV音は逆に高いA波の高さから確認が可能です。外科医の友人は「腹部CTが読めるようになったのは、CTを読んだ後に、実際にお腹を開けてどうなっているかをみて、CTに立ち返るから」と言っていました。また、救急外来で診た患者さんがその後どうなったか確認し、初期治療が適切だったかを確認するのも非常に良いフィードバックになります。「後医は名医」といわれますが、自らが「後医」となることで、見えてくるものも大きく違ってくるはずです。さらにいえば、自らが担当しなかった患者さんについても、検査結果や経過を追うことで、自分の経験の一部として蓄積することができます。手技についても、数をこなすことだけが重要なのではなく、他の人からトラブルシューティングを聞くことでも十分に学びとなります。研修病院ごとの違いはあるものの、ある程度の年数が経つと、「良い病院が良い医師を育てるとは限らない」ということも実感できるようになるのではないでしょうか。Column慶應義塾大学医学部の学生さんたち(なんと2年生!)が、ボストンを見学に訪れてくれました。臨床エリアに入るにはワクチン接種証明などの手続きが必要なため、今回はカフェでお茶をしただけでしたが、それでも留学とはどんなものかを肌で感じたいという意欲に、私も大いに刺激を受けました。彼らは、慶應の卒業生を中心に、ボストン在住の先輩たちを頼りに、さまざまな施設を訪ねて回ったそうです。マサチューセッツ総合病院の象徴でもあるBulfinch Buildingの前で写真を撮りました。画像を拡大する

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副作用の徐脈性不整脈、QT延長症候群を考えよう(2)【モダトレ~ドリルで心電図と不整脈の薬を理解~】第2回

副作用の徐脈性不整脈、QT延長症候群を考えよう(2)QuestionCa拮抗薬のベラパミルが過度に作用し、房室結節の刺激伝導が完全に遮断されると心電図波形はどのようになるでしょうか?

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第10回 年間10万人、CT検査の氾濫が生む“将来のがん”

近年、CT検査は診断能が飛躍的に向上し、急速に普及したため、米国では2023年に6,151万人に対し、約9,300万件もの検査が実施されました。人口当たりに直すと、1,000人当たり約280件となり、数字の大きさがより実感しやすいかもしれません。これは実際、世界でもトップレベルの頻度です。CT検査で用いられるX線は、細胞の損傷や遺伝子の突然変異を起こすのに十分なエネルギーを持つ「イオン化放射線」に分類され、「既知の発がん性物質」として扱われています。今回ご紹介するSmith-Bindman氏らの研究では、このCTの撮像回数から被曝量を割り出し、この被曝が米国国民の発がんにどの程度寄与するのかを推計しています1)。検査氾濫が招く10万件超のがんリスク彼らの研究モデルによれば、CT検査に伴うイオン化放射線による将来のがん発症数は、平均で年間約10万3,000件に上り、米国における年間新規がん診断の約5%を占めるという衝撃的な推計が行われました。子供では検査1件当たりのリスクが高くなるものの、検査件数そのものは成人に偏っているため、結果的に成人へのCT検査が総発がん数の約91%(約9万3,000件)を担うと報告されています。がんの内訳を見ると、肺がんが最も多く2万2,400件、次いで大腸がん、白血病、膀胱がんと続きます。女性では乳がんが5,700件と推計されました。部位別では、成人の腹部・骨盤部のCT検査が3,000万件(全検査の32%)実施され、それに由来するがんは3万7,500件と最も多く、続いて胸部CTが2,000万件(21%)で、将来のがんは2万1,500件と見積もられています。多様な分析を行ったうえでも、推計の総発がん数は8万~12万7,000件の範囲となり、推計値の不確実性を勘案しても、変わらず重要性の高い問題であると考察されています。この報告が重要なのは、単に「CTは放射線リスクを伴う」といった抽象的な議論ではなく、検査件数と年齢・部位別の実測の放射線量データを用いて、具体的な将来の発がん数を予測した点にあります。日本では――適正化への道標では、この結果を日本でどう受け止めればよいでしょうか。日本もOECD加盟国のなかでCT検査件数が常に上位にあり、米国ほどではないものの、検査回数も1人当たり高水準で推移しています。日本国内のNDBオープンデータに基づく推計では、例年人口1,000人当たり200~250件前後という高い水準です2,3)。今回の報告を参考にすると、日本で検査に伴う放射線発がんの潜在的負荷は決して無視できません。もちろんこれは、診断に必要とされる場合など、必要なCT検査をやめましょうという話ではありません。しかし、「一応、CTを撮っておきましょう」と必要性が曖昧な検査が行われていることも事実です。これについては、見直しが必要であることを改めて教えてくれる研究結果であったと思います。代替手段として超音波検査などで対応できたものもあるでしょう。また、可能な限り被曝を抑えた撮影条件を徹底し、検査部位を最小限に留めるなどの対策も重要です。結論として、本論文は「CT検査は命を救うが、利用過多は将来のがんを増やす」というトレードオフを定量的に示し、検査適正化と線量管理の徹底こそが利益と安全性の両立に不可欠であることを教えてくれます。医療者も患者も、急ぎでないCT検査の必要性を立ち止まって見極める意識がますます重要といえるのではないでしょうか。 1) Smith-Bindman R, et al. Projected Lifetime Cancer Risks From Current Computed Tomography Imaging. JAMA Intern Med. 2025 Apr 14. [Epub ahead of print] 2) Tsushima Y, et al. Radiation Exposure from CT Examinations in Japan. BMC Med Imaging. 2010;10:24. 3) 厚生労働省.【NDB】NDBオープンデータ.

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歯痕舌と血圧が関連~日本人集団

 東洋医学では舌の周囲に歯形がついた歯痕舌は体液貯留を示し、高血圧と関連する可能性があるが、歯痕舌と血圧の関連を調べた疫学研究はほとんどない。今回、順天堂大学の謝敷 裕美氏らが日本の地域住民を対象にした東温スタディにおいて検討したところ、潜在的交絡因子の調整後も歯痕舌のある人は収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)が高いことが明らかになった。American Journal of Hypertension誌オンライン版2025年4月17日号に掲載。 本研究は東温スタディ(愛媛県東温市における保健事業の評価、ならびに循環器疾患発症にかかる新たな危険因子の検索を目的とするコホート研究)に参加した30~84歳の1,681人を対象とし、歯根舌を舌画像により評価し、歯痕舌あり群と歯痕舌なし群に分けた。SBP≧140mmHgまたはDBP≧90mmHgまたは降圧薬の使用を高血圧と定義した。多変量調整ポアソン回帰分析を用いて、年齢、性別、肥満度を含む潜在的交絡因子を調整後、歯痕舌と血圧の関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・参加者のうち、326人(19.6%)が歯痕舌で、624人(51.6%)が高血圧であった。・多変量調整後のSBPの平均値は、歯痕舌なし群、歯痕舌あり群の順に126.6mmHg、129.7mmHg(p<0.01)、DBPの平均値は順に76.5mmHg、78.0mmHg(p=0.02)であった。・歯痕舌なし群に対する歯痕舌あり群の多変量調整有病率比(95%信頼区間)は、高血圧、SBPおよびDBPの最高四分位順に、1.21(1.04~1.41)、1.50(1.23~1.84)、1.25(1.03~1.53)であった。

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統合失調症の新たなアプローチとなるか? ムスカリン受容体作動薬KarXTのRCTメタ解析

 統合失調症は、陽性症状、陰性症状、認知関連症状を特徴とする複雑な精神疾患である。xanomelineとtrospiumを配合したKarXTは、ムスカリン受容体を標的とし、ドパミン受容体の遮断を回避することで、統合失調症治療に潜在的な有効性をもたらす薬剤である。エジプト・ Assiut UniversityのHazem E. Mohammed氏らは、KarXTの有効性および安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMC Psychiatry誌2025年3月31日号の報告。 2024年10月までに公表されたランダム化比較試験(RCT)をPubMed、Scopus、Web of Science、Cochraneデータベースより、システマティックに検索した。KarXTによる治療を行った成人統合失調症患者を対象としたRCTを分析に含めた。エビデンスの質の評価はGRADEフレームワーク、バイアスリスクはCochrane Risk of Bias 2.0ツールを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・4つのRCT、690例をメタ解析に含めた。・KarXTは、プラセボと比較し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計スコアの有意な低下(平均差:−13.77、95%信頼区間[CI]:−22.33〜−5.20、p=0.002)、陽性症状および陰性症状のサブスケールスコアの有意な改善を示した。・PANSSスコアの30%以上低下の割合も有意な増加が認められた(リスク比:2.15、95%CI:1.64〜2.84、p<0.00001)。・さらに、KarXTは良好な安全性プロファイルを有しており、嘔吐や便秘などの副作用は、軽度かつ一過性であった。・注目すべきことに、KarXTは、従来の抗精神病薬で頻繁に認められる体重増加や錐体外路症状との有意な関連が認められなかった。 著者らは「KarXTの独特な作用機序および忍容性は、統合失調症治療における満たされていないニーズを解決する可能性を示唆している。今後の研究において、KarXTの長期的有効性、遅発性の副作用、既存治療との有効性比較を検討していく必要がある」と結論付けている。

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未治療高齢マントル細胞リンパ腫、アカラブルチニブのベンダムスチン・リツキシマブへの上乗せでPFS延長(ECHO)/JCO

 未治療の高齢マントル細胞リンパ腫患者に対して、ベンダムスチン・リツキシマブへのアカラブルチニブの上乗せ効果を検討した第III相ECHO試験の結果について、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMichael Wang氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年5月1日号に報告した。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)はアカラブルチニブの追加で有意に延長した。 本試験は、未治療の65歳以上のマントル細胞リンパ腫患者を対象とした多施設二重盲検プラセボ対照第III相試験である。全例に導入療法としてベンダムスチン(90mg/m2、1日目と2日目)およびリツキシマブ(375mg/m2、1日目)を6サイクル(1サイクル28日)投与し、部分奏効または完全奏効が得られた患者には、維持療法として8サイクル目から30サイクル目までの偶数サイクルの1日目にリツキシマブ(375mg/m2)を投与した。アカラブルチニブまたはプラセボは、ベンダムスチン・リツキシマブとともに開始し、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで投与した。なお、病勢進行時にはアカラブルチニブ群へのクロスオーバーが認められた。主要評価項目は独立判定委員会によるPFS、副次評価項目は全奏効率と全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・計598例がアカラブルチニブ群とプラセボ群に299例ずつ無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値44.9ヵ月の時点で、PFS中央値はアカラブルチニブ群で66.4ヵ月、プラセボ群で49.6ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.57~0.94、p=0.0160)。・有用性は高リスク群を含むすべてのサブグループで認められた。・全奏効率および完全奏効率は、アカラブルチニブ群で91.0%および66.6%、プラセボ群で88.0%および53.5%であった。・OSに有意差はみられなかった(HR:0.86、95%CI:0.65~1.13、p=0.27)。・Grade3以上の有害事象は、アカラブルチニブ群で88.9%、プラセボ群で88.2%に発現した。

693.

バレニクリン、ニコチンベイピングの中止にも有効/JAMA

 中等度~重度のニコチンベイピング依存の青年において、遠隔からの簡易な行動カウンセリングにバレニクリン(α4β2ニコチン受容体部分作動薬)を併用すると、プラセボを併用した場合と比較してニコチンベイピングの中止が促進され、忍容性も良好であることが、米国・マサチューセッツ総合病院のA. Eden Evins氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年4月23日号に掲載された。3群を比較する米国の無作為化臨床試験 研究グループは、タバコを常用していない青年におけるニコチンベイピング中止に対するバレニクリンの有効性の評価を目的に、3群を比較する無作為化臨床試験を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。2022年6月~2023年11月に米国の1州で参加者を登録し、2024年5月にデータ収集を終了した。 年齢16~25歳、過去90日間に週5日以上ニコチンベイピングをしており、次の月にベイピングの回数を減らすか中止を希望し、タバコを常用(週に5日以上)しておらず、ニコチン依存(10項目のE-cigarette Dependence Inventory[ECDI]スコアが4点以上)がみられる集団を対象とした。 被験者を、バレニクリン群(7日間で1mgの1日2回投与まで漸増し12週間投与+Zoomを介した週1回20分間の行動カウンセリング+テキストメッセージによりベイピング中止支援を行うThis is Quitting[TIQ]の紹介)、プラセボ群(プラセボ+行動カウンセリング+TIQの紹介)、強化通常ケア群(TIQの紹介のみ)に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、プラセボ群と比較したバレニクリン群の最後の4週間(9週目から12週目)における生化学的に検証した継続的なベイピング中止とした。プラセボ群と強化通常ケア群には差がない 261例(平均年齢21.4歳、女性53%)を登録し、バレニクリン群に88例、プラセボ群に87例、強化通常ケア群に86例を割り付けた。254例(97.3%)が24週間の試験を完了した。TIQへの登録の割合は、バレニクリン群が41%(36/88例)、プラセボ群が36%(31/87例)、強化通常ケア群が74%(64/86例)だった。 バレニクリン群とプラセボ群の比較では、9週目から12週目までの4週間における生化学的な継続的ベイピング中止の割合は、プラセボ群が14%であったのに対し、バレニクリン群は51%と有意に優れた(補正後オッズ比[aOR]:6.5[95%信頼区間[CI]:3.0~14.1]、p<0.001)。また、9週目から24週目までの16週間における継続的なベイピング中止の割合は、プラセボ群の7%に比べバレニクリン群は28%であり、有意に良好だった(6.0[2.1~16.9]、p<0.001)。 バレニクリン群と強化通常ケア群の比較では、生化学的な継続的ベイピング中止の割合は、9週目から12週目までの4週間(51%vs.6%、aOR:16.9[95%CI:6.2~46.3])および9週目から24週目までの16週間(28%vs.4%、11.0[3.1~38.2])のいずれにおいてもバレニクリン群で高かった。 プラセボ群と強化通常ケア群の比較では、4週間(プラセボ群14%vs.強化通常ケア群 6%、aOR:2.6[95%CI:0.9~7.9])および16週間(7%vs.4%、2.0[0.5~8.5])のいずれについても、継続的ベイピング中止の割合に有意な差を認めなかった。吐き気/嘔吐、風邪症状、鮮明な夢が高頻度に 全般に、試験薬の忍容性は良好であった。試験期間中の治療関連有害事象は、バレニクリン群で76例(86%)、プラセボ群で68例(79%)、強化通常ケア群で68例(79%)に発現した。バレニクリン群の有害事象発生率は先行研究と同程度であり、同群で頻度の高い有害事象として吐き気/嘔吐症状(バレニクリン群58%vs.プラセボ群27%)、風邪症状(47%vs.34%)、鮮明な夢(39%vs.16%)、不眠(31%vs.19%)が挙げられた。 有害事象による試験薬の投与中止はバレニクリン群で2例(2%)、プラセボ群で1例(1%)に、有害事象による減量はそれぞれ4例(5%)および1例(1%)にみられた。試験薬関連の重篤な有害事象は認めなかった。また、24週の時点でニコチンベイピングから離脱した参加者で、過去1ヵ月間に喫煙(タバコ)したと報告した者はいなかった。 著者は、「ニコチンベイピングに依存する青年の多くはタバコを常用したことがなく、ベイピングを止めたいと望んでいることから、今回のこの集団におけるベイピング中止に有効で、忍容性が高い薬物療法の知見は重要と考えられる」「精神神経系の有害事象である不安(バレニクリン群25%vs.プラセボ群33%)や気分障害(25%vs.31%)はプラセボ群で多く、おそらくニコチン離脱症状の一部であるこれらの症状をバレニクリンが軽減した可能性が示唆される」としている。

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腫瘍浸潤クローン性造血、固形がんの死亡リスクと関連/NEJM

 「未確定の潜在能を持つクローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminate potential:CHIP)」は加齢に伴う病態で、がん患者における死亡率の上昇と関連する。腫瘍で変異アレル頻度(VAF)の高いCHIP変異が検出されることがあり、英国・フランシス・クリック研究所のOriol Pich氏らは、この現象を「腫瘍浸潤性クローン性造血(tumor-infiltrating clonal hematopoiesis:TI-CH)」と呼ぶ。同氏らは、今回、TI-CHは非小細胞肺がん(NSCLC)患者のがん再発や死亡のリスクを高め、固形腫瘍患者で全死因死亡のリスクを上昇させ、腫瘍免疫微小環境をリモデリングし、腫瘍オルガノイドの増殖を促すことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年4月24日号で報告された。TRACERx研究とMSK-IMPACTコホートの患者を解析 研究グループは、TRACERx研究に参加した未治療のStageIA~IIIAのNSCLC患者421例と、MSK-IMPACT汎がんコホートの75のがん種の患者4万9,351例(原発腫瘍3万1,556例、転移性腫瘍1万7,795例)において、CHIPおよびTI-CHの特徴を評価した(英国王立協会の助成を受けた)。 TI-CHと生存および再発との関連を調査し、肺腫瘍の生物学的特徴に及ぼすTET2変異CHIPの機能的影響について検討した。TI-CHにより固形腫瘍患者の死亡リスクが1.17倍に NSCLC患者では、CHIPを有する集団の42%(60/143例)にTI-CHを認めた。TI-CHは、死亡または再発のリスクが高いことの独立の予測因子であり、補正後ハザード比は、CHIPを有さない場合との比較で1.80(95%信頼区間[CI]:1.23~2.63、p=0.003)、TI-CHがなくCHIPを有する場合との比較で1.62(1.02~2.56)であった。 固形腫瘍患者では、CHIPを有する集団の26%(1,974/7,450例)にTI-CHが存在した。TI-CHがある場合の全死因死亡のリスクは、TI-CHがなくCHIPを有する場合の1.17倍(95%CI:1.06~1.29)であった。TET2変異―TI-CHの最も強力な遺伝的予測因子 TET2変異はTI-CHの最も強力な遺伝的予測因子であった。マウスでは、TET2変異が肺腫瘍細胞への単球の遊走を増強し、骨髄系細胞に富む腫瘍微小環境を強化し、腫瘍オルガノイドの増殖を促進することが示された。 著者は、「これらの結果は、加齢に伴う血液のクローン性増殖が腫瘍の進展に影響を与えるという考えを支持する」「がん診断にTI-CHが有用である可能性が示唆される」としている。

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中国で豚由来腎臓移植が成功、生存中の患者としては3人目

 遺伝子編集された豚の腎臓を移植された中国人女性が、順調に回復していることが報告された。現在、世界で豚由来腎臓移植を受けて生存しているのは、この女性が3人目となる。研究者らは、将来的には豚の肝臓が人への移植の選択肢となる可能性にも言及している。 NBCニュースなどの報道によると、この女性は69歳で、豚由来腎臓を移植される以前、8年にわたり腎不全状態にあった。手術は第四軍医大学西京病院(中国)で行われ、移植チームの一員であるLin Wang氏によると、術後の患者は現在、病院で経過観察中であり腎機能は良好で容態も良いという。 この手術は、移植治療に必要な人の臓器が不足しているという現状に対応し、豚の臓器を遺伝子編集して用いるという試みの一環として実施されたもので、臓器機能不全に対する治療法としてまだ確立されたものではない。しかし既に世界でこれまでに、この手法を用いて4人が豚由来腎臓、2人が豚由来心臓を移植されている。この試みの初期段階には移植手術後の結果が芳しくないケースもあった。ただし、より最近になって米国で豚由来腎臓移植を受けた、アラバマ州の女性とニューハンプシャー州の男性の2人は、いずれも順調に回復していることが報じられている。 さらにWang氏らの研究チームは、腎臓だけでなく、豚の肝臓を移植に用いる試みも行っている。3月26日に「Nature」に掲載されたWang氏らの論文によると、脳死患者に豚由来の肝臓を移植して10日間にわたり経過を観察した。その結果、移植した肝臓は機能をし始める兆候を示し、肝機能として重要な胆汁とアルブミンの生成も開始した。その生成量は人の肝臓よりは少なかったが、「理論的には肝不全の患者をサポートするという目的に応用できる可能性がある」と同氏は述べている。 一方、Wang氏らの研究チームとは別に、米国の研究者らは、あたかも透析装置を使って血液を濾過するかのように、豚の肝臓を体外に取り付けるという試みを始めている。この研究には関与していない、米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのParsia Vagefi氏は、「試みられている手法は、うまくいけば臓器不足解決に近づく一歩となり得る。しかし、他の優れた研究の初期段階と同様に、現時点では『答え』よりも『疑問』の方が多く存在している」と話している。 なお、Wang氏は、前述の脳死患者とは別の脳死患者に対して、人の肝臓を豚由来の肝臓に完全に置き換える試みを行っており、「現在、その結果の解析を進めている最中」と語っている。

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ADHD治療薬は心臓の健康に有害か?

 注意欠如・多動症(ADHD)の治療薬が心臓の健康に悪影響を及ぼす可能性が心配されている。こうした中、英サウサンプトン大学小児・青少年精神医学部門のSamuele Cortese氏らが実施したシステマティックレビューとネットワークメタアナリシスにおいて、ADHD治療薬が収縮期血圧(SBP)や拡張期血圧(DBP)、脈拍に及ぼす影響はわずかであることが確認された。この研究の詳細は、「The Lancet Psychiatry」5月号に掲載された。 Cortese氏らは、12の電子データベースを用いて、ADHD治療薬に関する短期間のランダム化比較試験(RCT)を102件抽出し、結果を統合して、ADHD治療薬がDBP、SBP、脈拍に与える影響をプラセボや他の薬剤との比較で検討した。これらのRCTで対象とされていたADHD治療薬は、アンフェタミン、アトモキセチン、ブプロピオン、クロニジン、グアンファシン、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート、モダフィニル、ビロキサジンであった。追跡期間中央値は7週間で、参加者として小児・青少年1万3,315人(平均年齢11歳、男子73%)と成人9,387人(平均年齢35歳、男性57%)の計2万3,702人が含まれていた。 解析の結果、小児・青少年では、アンフェタミン、アトモキセチン、メチルフェニデート、ビロキサジンがSBPやDBP、脈拍の有意な上昇と関連することが示された。なかでも、アンフェタミンによるDBPの平均上昇量1.93mmHg(95%信頼区間0.74〜3.11)と、ビロキサジンによる脈拍の平均上昇量5.58回/分(同4.67〜6.49)は、いずれもエビデンスの質が「高」と評価された。 一方、成人では、アンフェタミン、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート、ビロキサジンが、SBPやDBP、脈拍の上昇と関連していたが、いずれの指標においてもエビデンスの質は「非常に低い」と評価された。 さらに、小児・青少年においても成人においても、SBP、DBP、脈拍の上昇について、メチルフェニデートやアンフェタミンなどの中枢神経刺激薬とアトモキセチンやビロキサジンなどの非中枢神経刺激薬との間に有意な差は認められなかった。 Cortese氏は、「他の研究では、ADHD治療薬の使用が死亡リスクを低下させ、学業成績の向上に寄与することが示されている。また、高血圧のリスクがわずかに増加する可能性は示唆されているが、他の心血管リスクの増加については報告されていない。総合的に見て、ADHD治療薬使用のリスクとベネフィットの比率は安心できるものだと言えるだろう」とサウサンプトン大学のニュースリリースで述べている。 一方、論文の筆頭著者であるサンパウロ大学(ブラジル)医学部のLuis Farhat氏は、「われわれの研究結果は、中枢神経刺激性であるか否かに関わりなくADHD治療薬使用者の血圧と脈拍を体系的にモニタリングする必要性を強調するものであり、将来の臨床ガイドラインに反映されるべきだ。中枢神経刺激薬だけが心血管系に悪影響を及ぼすと考えている医療従事者にとって、これが意味することは非常に大きいはずだ」と述べている。 研究グループは、さらなる研究でADHD治療薬の長期的な影響について理解を深める必要があるとしている。Cortese氏は、「現時点では、リスクの高い個人を特定することはできないが、精密医療のアプローチに基づく取り組みが将来的に重要な洞察をもたらすことを期待している」と述べている。

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若年層の大腸がん、その臨床的特徴が調査で明らかに

 大腸がんは日本人で最も患者数が多いがんであり、一般的に50歳代から年齢が上がるにつれて罹患率も上昇することが知られている。一方で、若年層における大腸がんに関する報告は少ない。しかし、今回50歳未満の大腸がんに関する臨床病理学的所見を調査した研究結果が報告された。大腸がんの好発部位や、スクリーニングの有用性が明らかになったという。研究は札幌医科大学医学部腫瘍内科学講座/斗南病院消化器内科の岡川泰氏らによるもので、詳細は「BMC Gastroenterology」に3月11日掲載された。 近年、高所得国を中心として50歳未満で発症する若年発症型大腸がんが増加している。さらに、若年発症型大腸がんは進行期で診断されることが多く、世界的に重要な懸念事項であるが、日本から若年発症型大腸がんについて報告された研究はわずかであり、その臨床病理学的特徴は不明のままである。このような背景から、研究グループは、若年発症型大腸がんの臨床病理学的所見を調査するために単施設の後ろ向き研究を実施した。 研究には、2015年1月~2021年12月までに北海道札幌市の斗南病院で大腸がんと診断された1,207人の患者が含まれた。この中から、家族性大腸腺腫、炎症性腸疾患、大腸がんの既往のある患者などを除外した、初発の大腸がん患者731人を最終的な解析対象とした。連続変数、カテゴリ変数の比較には、ピアソンのカイ二乗検定とMann-Whitney U検定が適宜適用された。 731人のうち46人(6.3%)が50歳未満(若年発症群)で診断され、685人(93.7%)が50歳以上(高齢発症群)で診断された。若年発症群と高齢発症群の年齢の中央値は、それぞれ45歳と72歳だった。性差、肥満率は両群に差はなかったが、高血圧、脂質異常症、糖尿病、大腸がん以外の悪性腫瘍の既往は高齢発症群で有意に高かった(P<0.01)。診断機会に関しては、大腸がんスクリーニングのための免疫便潜血検査(FIT)により、若年発症群の41.3%で大腸がんが検出され、高齢発症群(26.7%)よりも有意に高かった(P=0.032)。 大腸がんの発生部位別にみると、左側大腸がんの割合は両群に差はなかったが、若年発症群の直腸がんの割合は高齢発症群より有意に高かった(45.7% vs 26.4%、P<0.01)。 診断時の臨床病期(ステージ)に関しては、両群に差はなく、若年発症群と高齢発症群でそれぞれ45.7%と55.2%が非進行期で診断された。さらに両群ともに、非進行期で診断された大腸がん患者は、診断機会としてFITで陽性となる割合が高かった。進行期の患者では自覚症状などをきっかけとして診断される可能性が高かった。 研究結果について著者らは、「本研究では日本人の若年発症型大腸がんは直腸に発生する傾向があり、高齢発症型大腸がん患者と比較してFIT陽性がきっかけで診断されることが多いことが明らかになった。自覚症状などで診断につながる場合はすでに進行期であることが多いため、FITスクリーニングについて啓発し、大腸がんの早期発見に努めることが重要なのではないか」と述べている。 本研究の限界点について、単施設の後ろ向き研究であること、カルテに基づいているため患者背景が十分に解析されていないこと、追跡期間の中央値が43.6ヵ月と短かったことを挙げている。

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オキシトシン受容体拮抗薬atosibanは48時間以内の分娩を予防するが、新生児転帰を改善せず(解説:前田裕斗氏)

 切迫早産に対する子宮収縮抑制薬の分娩延長効果、新生児転帰の改善効果をプラセボと比較したランダム化比較試験である。子宮収縮抑制薬にはβ刺激薬やCa拮抗薬など、すでに点滴製剤がさまざまにある中で、今回新たにオキシトシン受容体拮抗薬についての研究が出された背景には、(1)オキシトシン受容体拮抗薬は副作用が他薬と比べて起こりにくいこと(2)オキシトシン受容体拮抗薬の大規模な研究、とくにRCTが存在しなかったことの2点がある。 結果からは、48時間以上の妊娠期間延長(atosiban群78%vs.プラセボ群69%、リスク比[RR]:1.13、95%信頼区間[CI]:1.03~1.23)および副腎皮質ステロイドの投与完遂率(atosiban群76%vs.プラセボ群68%、RR:1.11、95%CI:1.02~1.22)については有意に認められたものの、新生児死亡ないし重大合併症をまとめた複合アウトカムについては有意な減少効果は認められなかった(atosiban群8%vs.プラセボ群9%、RR:0.90、95%CI:0.58~1.40)。 他の子宮収縮抑制薬と比較すると、Ca拮抗薬、β刺激薬ともに48時間の分娩延長効果は有意に認められており、新生児転帰の改善効果についてはβ刺激薬では認められず、Ca拮抗薬ではメタアナリシスで有意な改善が報告されている。これだけ見るとCa拮抗薬に軍配が上がりそうだが、atosibanは今回の研究でも合併症発生率が低く検出力が足りていなかった可能性があること、研究数が少なくメタアナリシスが困難であることなどから結論は出せないと考えてよい。 日本ではatosibanは未発売であるが、今後発売されれば副作用の少なさから他薬より優先的に使用される可能性はあるだろう。最後にこれは感想であるが、本研究を見ていると早産治療の限界を感じる。短期間の子宮収縮抑制薬+副腎皮質ステロイド投与という標準治療を、切迫早産疑いの妊婦におしなべて投与するだけでは効果不十分であるかもしれないと考えると、本当に早産になる症例の予測か、あるいは新規に新生児転帰を改善する治療法の出現が待たれる。

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見切り発車で抗MRSA薬を使っても大丈夫?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第3回

Q3 見切り発車で抗MRSA薬を使っても大丈夫?整形外科医です。術後感染疑いの患者で高熱が3日間続いたため、創部を洗浄して検体採取したところ、グラム陽性球菌が少量検出されました。感染症専門医にコンサルトしてバンコマイシンを開始しています。このような場合、見切り発車でバンコマイシンというのはスタンダードな方法なのでしょうか? 整形外科医の頭では、セフェム系などを投与して、培養でMRSAが出たらバンコマイシンに切り替えるという方法が浮かんでしまいますが、それは間違いでしょうか?

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第262回 “撤退戦”本格化へ 1床削減で410万円補助の「病床数適正化支援事業」、計7,000床程度の想定に全国で計5万4,000床の申請、倍率は7.7倍!

2024年度厚労省補正予算による「病床数適正化支援事業」が第1次内示こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。皆さん、ゴールデンウィークはどのように過ごされましたか。私は前半は大学時代の先輩が営む茨城県の農園に、夏野菜の定植の支援に行ってきました。びっくりしたのは農園で飼っていた犬のジロー(17歳、中型犬、雑種)がついに寝たきりとなり、家のリビングに敷かれた布団の中にいたことです。生まれてから17年間、寒い冬も含めずっと屋外で飼われてきて、最期の最期に家の中に上げてもらったわけで、それはそれで幸せな人(犬?)生だったのだろうと思った次第です。それにしても、歩けず、水晶体も脱臼して目も見えず、おむつをしている身なのに、まだまだ食欲は旺盛で、ドッグフードをばくばく食べているのには驚きました。犬は屋外より室内で飼った方が長生きすると言われていますが、ジローのタフぶりに敬服した次第です。さて今回は、「第256回  “撤退戦”が始まっていることに気付かない人々(後編)長崎大病院全病床の1割以上に当たる98床削減、国も『病床1床減らせば410万円』の補助金用意、“撤退戦”本格化の兆し」で書いた、2024年度厚生労働省補正予算による「医療施設等経営強化緊急支援事業」の中の「病床数適正化支援事業」の第1次内示が公表されたので、それについて書いてみたいと思います。第256回では「知人の医療コンサルタントは『各都道府県ともかなりの申し込みが来ているようだ』と話していました」と書きましたが、実際、相当な申請数になったようです。まさに“撤退戦”本格化と言えるでしょう。第1次内示の配分額は約294億円で、対象病床数は7,170床厚労省は4月11日、病床数適正化支援事業(予算額約428億円)の第1次内示の配分額を都道府県に通知しました。第1次内示の配分額は約294億円で、対象病床数は7,170床です。表に示したように各都道府県に100床分以上配分されています。病床数適正化支援事業(第1次内示額)/厚生労働省資料より画像を拡大する多いのは東京都539床、神奈川県411床、北海道352床、千葉県276床、茨城県260床、新潟県260床、鹿児島県253床です。各地域の病院経営者の切迫度合い、行政動向に対する敏感さ、都道府県担当者の熱心さなどさまざまな要素が影響した結果と言えそうです。なお、経営支援の緊急性が高い医療機関を対象とするため、一般会計からの繰入金のある公立病院などは支給対象から除外し、対象病床の上限数は1医療機関当たり50床とするなどの対応が取られています。約200の公立病院などから8,000床、約1,800の民間病院などから4万6,000床の申請病床数適正化支援事業は「効率的な医療提供体制の確保を図るため、医療需要の急激な変化を受けて病床数の適正化を進める医療機関に対し、診療体制の変更等による職員の雇用等の様々な課題に際して生じる負担について支援を行う」もので、期日内に病床数(一般病床、療養病床及び精神病床)の削減を行う病院又は診療所に対し、削減した病床1床につき410万4,000円が交付される、というものです。同種の補助金としては、すでに地域医療介護総合確保基金の中の病床機能再編支援事業(単独支援給付金支給事業)があります。こちらは制度区分にもよりますが1床当たり200万円程度なので、410万円は実にその倍額です。4月23日付の日本経済新聞の報道などによれば、福岡 資麿厚生労働相は22日の閣議後の記者会見で、過剰な入院用のベッドを減らした場合に支給する補助金への申請が全国で計5万4,000床に上ったことを明らかにしました。当初は計7,000床程度の削減を見込んでおり、想定の7.7倍ほどに達したとしています。また、申請数は約200の公立病院などから8,000床、約1,800の民間病院などから4万6,000床だったとのことです。次期内示は医療施設等経営強化緊急支援事業の他の事業で生じた残余も活用して6月中旬を目処に厚労省は第1次内示の配分額の算定方法について、1)一般会計の繰入等がない医療機関であって、令和4年度から3年連続経常赤字の医療機関又は令和5年度から2年連続経常赤字かつ令和6年度に病床削減済みの医療機関2)給付額(4,104千円×給付対象とする病床数)の上限は、1)の赤字額の平均の半分を目安とする3)1医療機関あたりの給付は50床を上限(次期内示以降の配分額の算定方法については、変更があり得る。との説明をしています。2)3)はより多くの病院が活用できるための配慮と考えられます。なお、期内示以降の配分額の算定方法については変更があり得るとしています。地域医療介護総合確保基金の病床機能再編支援事業(単独支援給付金支給事業)の支給を受けていた場合は、差額のみが支給されます。今回の給付額は294億円であり、約134億円がまだ残っています。次期内示は医療施設等経営強化緊急支援事業の他事業で生じた残余も活用して、6月中旬を目処に実施するとしています。公立病院を対象外としたことについて北海道などから不満も病院の病床削減意欲がこれほど高かったとは驚きですが、「一般会計の繰入等がない医療機関」という条件を付けて第1次内示では公立病院を対象外としたことは、一部で物議を醸したようです。北海道テレビは4月22日に「病床を減らす病院への国の支援事業で自治体病院が適用外になる可能性が高まり現場で困惑拡大」と題するニュースを配信しています。それによれば、「江別市立病院では、この支援事業で病床70床を削減し、およそ2億8,000万円の補助金を見込んでいました」が、第1次内示では一般会計からの繰入金のある公立病院などは支給対象から除外する方針が示されたことで、病院の事業管理者は、「ただちに納得しかねるという点があります。全国の自治体病院8割以上は赤字なのですが、そういった中で私どもも例外ではなく、これを何とかしなければならない」と語ったとのことです。北海道では病床数適正化支援事業の補助金に大きな期待をしていた公立病院が多かった模様で、4月24日付の北海道新聞によれば、鈴木 直道知事は24日の記者会見で、国が病床を削減する医療機関を支援する病床数適正化支援事業で自治体病院を実質的に対象外としたことについて、「希望する全医療機関に確実に支援が行き届くよう、全国知事会や関係団体とも連携して国に要請する」と述べたとのことです。福岡厚労相は22日の閣議後記者会見で、この点について「他の補正予算の事業や融資の拡充と合わせ、必要な支援が行き届くよう取り組む」と述べています。せっかく公立・公的含め全国の病院が「病床を減らす」ことに相当前向きになっているのです。赤字で病床削減やリストラが必要な病院は公立・公的病院が多いだけに、第2次内示や来年度以降の予算化においては、相応の対応が求められるところです。

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