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4時間ごとの口腔ケア・口腔咽頭吸引でVAE発生率が減少【論文から学ぶ看護の新常識】第16回

4時間ごとの口腔ケア・口腔咽頭吸引でVAE発生率が減少4時間ごとの口腔ケアと口腔咽頭吸引が、人工呼吸器関連イベント(VAE)を有意に減少させることが、Khanjana Borah氏らの研究により示された。Acute and Critical Care誌2023年11月号に掲載された。南インドの三次医療センター集中治療室で人工呼吸器管理を必要とする患者に対する、4時間ごとの口腔咽頭吸引が人工呼吸器関連イベントに及ぼす影響:ランダム化比較試験研究チームは、機械的人工呼吸管理(MV)を受けている患者における人工呼吸器関連イベント(VAE)に対して、4時間ごとの口腔ケアおよび口腔咽頭吸引を組み合わせた介入が、標準的な口腔ケアプロトコルと比較してどのような効果をもたらすかを検証するため、ランダム化比較試験を実施した。対象は、新たに気管挿管され、72時間以上の人工呼吸器管理が予測される患者120例であり、対照群または介入群に無作為に割り付けられた。介入群には、4時間ごとにクロルヘキシジン溶液を用いた口腔ケアと口腔咽頭吸引が実施された。対照群には、標準的な口腔ケア(クロルヘキシジン溶液を用い1日3回)と必要時の口腔咽頭吸引がおこなわれた。介入後3日目および7日目には、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の評価のため気管内吸引物の検査がおこなわれた。主な結果は以下の通り。両群のベースラインにおける臨床的特徴は均質であった。VAEの発生率は、介入群(56.7%)が、対照群(78.3%)と比較して、統計的に有意に低かった(p論文はこちらBorah K, et al. Acute Crit Care. 2023;38(4):460-468.

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飲酒は膵がんに関連するのか~WHOの大規模プール解析

 アルコール摂取と膵がんリスクとの関連を示すエビデンスは国際的専門家パネルによって限定的、あるいは決定的ではないと考えられている。今回、世界保健機関(WHO)のInternational Agency for Research on Cancer(IARC)のSabine Naudin氏らは、30コホートの前向き研究の大規模コンソーシアムにおいて、アルコール摂取と膵がんリスクとの関連を検討した。その結果、性別および喫煙状況にかかわらず、アルコール摂取と膵がんリスクにわずかな正の関連が認められた。PLOS Medicine誌2025年5月20日号に掲載。 本研究における集団ベースの個人レベルのデータは、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北米の4大陸にわたる30のコホートからプールした。1980~2013年に、がんを発症していない249万4,432人(女性62%、ヨーロッパ系84%、飲酒者70%、喫煙歴なし47%)を登録(年齢中央値57歳)、1万67例が膵がんを発症した。喫煙歴、糖尿病の有無、BMI、身長、教育、人種・民族、身体活動で調整した年齢・性別による層別Cox比例ハザードモデルにおいて、アルコール摂取量のカテゴリーと10g/日増加による膵がんのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・アルコール摂取量は膵がんリスクと正の相関を示し、1日0.1~5g未満と比べた1日30g以上60g未満および1日60g以上でのHR(95%CI)はそれぞれ1.12(1.03~1.21)および1.32(1.18~1.47)であった。・男女別では、女性で1日15g以上、男性で1日30g以上の場合に関連が明らかになった。・アルコール摂取量が10g/日増加すると、膵がんリスクは全体で3%増加し(HR:1.03、95%CI:1.02~1.04、p<0.001)、喫煙経験者では3%増加した(HR:1.03、95%CI:1.01~1.06、p=0.006)が、性別(異質性:0.274)または喫煙状況(異質性:0.624)による異質性は示されなかった。・地域別では、ヨーロッパ/オーストラリア(10g/日増加によるHR:1.03、95%CI:1.00~1.05、p=0.042)および北米(HR:1.03、95%CI:1.02~1.05、p<0.001)では関連が認められたが、アジア(HR:1.00、95%CI:0.96~1.03、p=0.800、異質性:0.003)では関連は認められなかった。・アルコールの種類別では、ビール(10g/日増加によるHR:1.02、95%CI:1.00~1.04、p=0.015)とスピリッツ/リキュール(95%CI:1.03~1.06、p<0.001)は膵がんリスクとの正の関連が認められたが、ワイン(HR:1.00、95%CI:0.98~1.03、p=0.827)については認められなかった。 著者らは、「地域やアルコールの種類による関連性の違いは、飲酒習慣の違いを反映している可能性があり、さらなる調査が必要」と考察している。

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高齢者の不眠を伴ううつ病に対する薬理学的介入効果の比較〜ネットワークメタ解析

 高齢者における睡眠障害を伴ううつ病に対するさまざまな薬物治療の有効性と安全性を比較するため、中国・北京大学のJun Wang氏らは、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Psychogeriatrics誌2025年5月号の報告。 主要な国際データベース(Medline、Cochrane Library、Scopus、Embase、WHO国際臨床試験登録プラットフォーム、ClinicalTrialsなど)より、事前に設定したワードを用いて、検索した。薬物治療またはプラセボ群と比較したランダム化比較試験(RCT)を対象に含めた。ネットワークメタ解析におけるエフェクトサイズの推定には、標準平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を用いた。データ解析には、頻度主義アプローチを用いた。安全性評価には、治療中に発現した有害事象および重篤な有害事象を含めた。 主な内容は以下のとおり。・検索された文献8,673件のうち、12件のRCTが基準を満たした(3,070例)。・すべての薬物治療介入は、不眠症重症度指数(ISI)およびうつ病スコアの低下に有効的であった。・セルトラリンは、高齢のうつ病および不眠症患者におけるISIおよびハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)の改善において、最も効果的な介入である可能性が高かった。【ISI】SMD:−2.17、95%CI:−2.60~−1.75【HAM-D】SMD:−3.10、95%CI:−3.60~−2.61・安全性評価では、エスシタロプラム、zuranoloneで報告された患者数において、ゾルピデム、seltorexant、エスゾピクロンは、プラセボまたは他の治療薬と比較し、重篤な有害事象リスクが高かった。 著者らは「セルトラリンは、高齢者の睡眠障害を伴ううつ病において最適な治療選択肢である可能性が最も高かった。エスシタロプラム、zuranolone、seltorexantでは、ISI改善において、有意な効果が認められなかった。これらの結果はエビデンスに基づいた臨床実践に役立つはずである」と結論付けている。

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高額療養費制度見直しががん医療現場に与える影響/日本がんサポーティブケア学会

 2025年5月に開催された第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会において、高額療養費制度の見直しに関するセッションが行われた。同セッションでは、医療者と患者双方のパネリストが登壇し議論が行われている。がん医療における高額療養費制度見直しに対する課題の多さが感じとられた。「誰一人取り残さない」というがん対策基本法の目標は守られているのか 帝京大学の渡邊 清高氏は高額療養費制度見直しの背景と、同学会が2月26日に発表した声明について説明した。制度見直しの目的は社会保障制度の持続可能性の確保であるが、提案された見直し案には高額療養費の上限額引き上げが含まれており、患者ケアに影響を与える可能性が懸念されている。実施は見送られたものの、同学会は見直し案について、さらなる議論が必要であると共に患者と学会の声を聞くことの必要性を指摘した。 支持療法の進歩によりがん患者は治療を受けながらより長く生きられるようになった。それは一方で、長期間にわたって支持療法を含むがん治療を受けざるを得ない現状を意味する。費用を理由に患者が治療を断念することは、「誰一人取り残さない」というがん対策基本法の目標に反すると指摘し、経済的安定が不可欠であると渡邊氏は訴える。患者団体と学会から発信された現場の声が国会を動かした NPO法人希望の会の轟 浩美氏からは、高額療養費上限額引き上げに関する提言活動について説明があった。轟氏は全国がん患者団体連合会(全がん連)が患者の声をまとめ、国会議員や学会との関係構築を行っていたこと、さらに緊急アンケートを通じて実際の患者の声を集めたことが提言活動の成功に繋がったと言う。 政府が上限額引き上げを発表した前日の2024年12月24日、全がん連は厚生労働省に要請を提出し、患者の月間上限額の大幅な引き上げや「多数回該当」の上限について説明した。また、国会で現行制度下でも患者が経済的に苦しんでいる現状、費用を理由とした「受診控え」や効果が不明な安価な代替療法に頼る人もいることを強調した。 国会での理解の深化と議員からの質問が増えたことでメディア報道が広がり、そこに医学系学会からの声明が加わったことでさらに大きな影響を与えたという。とはいえ、再提案の可能性について継続的な不安があることを指摘した。政策決定における「現場視点の欠如」は深刻な課題 全がん連の天野 慎介氏は、今回の上限額引き上げにおける重要な要因は、政策決定における「現場の視点の欠如」であり、高額療養費制度を実際に利用している患者や医療専門家からの十分なヒアリングがなかったことを指摘した。がん治療が短期間であると誤解している政策立案者も少なくなく、長期的な維持療法のことを理解していないと述べる。学会はがん治療の劇的な進化とその価値を今以上に伝えて費用について理解を促進させる必要があると訴えた。 同学術集会の大会長であり、日本肺学会理事長でもある山本 信之氏は、肺がんを例に具体例を紹介した。その1つとして、EGFR遺伝子変異陽性肺がんを挙げた。EGFR変異陽性肺がんの治療は、古く安価な薬剤から、有効性が高い新しい薬剤にスタンダードが移行している。多くの肺がん患者は75歳以上で所得が低い。高額療養費の上限が引き上げられ、患者負担が上がることで、患者は安価な選択肢を選ばざるを得なくなる可能性があると述べた。 今回のセッションでは、高額療養費制度の見直しについて、医療者と患者それぞれの立場からの意見が述べられ、今後のより良い制度設計に向けて、継続的な議論と連携が必要であることが確認された。

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EGFR陽性NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブが新たな1次治療の選択肢に/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、2025年3月27日にアミバンタマブ(商品名:ライブリバント)とラゼルチニブ(同:ラズクルーズ)の併用療法について、「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺」の適応で、厚生労働省より承認を取得し、2025年5月21日にラゼルチニブを販売開始した。ラゼルチニブの販売開始により、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で、アミバンタマブ+ラゼルチニブが使用可能となった。そこで、2025年5月22日にメディアセミナーが開催され、アミバンタマブ+ラゼルチニブが1次治療で使用可能となったことの意義や、使用上の注意点などを林 秀敏氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 主任教授)が解説した。EGFRとMETを標的とし、EGFR-TKIのアンメットニーズを満たす可能性 『肺診療ガイドライン2024』では、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCの1次治療として第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のオシメルチニブ単剤を強く推奨している(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:A)1)。 しかし、第3世代EGFR-TKIによる治療でも耐性が生じてしまうことも報告されている。耐性機序としては、TP53遺伝子変異、EGFR遺伝子変異(C797S変異)、MET遺伝子増幅などがある。MET経路はEGFR経路とクロストークすることが知られており、EGFR-TKIによってEGFR経路を阻害してもMET経路が活性化してしまうことで、がん細胞は増殖・生存すると考えられている。 そこで開発されたのが、EGFRとMETを標的とする二重特異性抗体アミバンタマブである。アミバンタマブは、EGFRおよびMETに結合することで、それらへのリガンド結合を阻害し、MET経路の活性化を抑制することが期待される。また、免疫細胞上に存在するFcγ受容体を介して抗体依存性細胞傷害活性を惹起することによっても、抗腫瘍活性を示すことが考えられている。オシメルチニブ単剤と比較してPFSとOSを改善 未治療のEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者を対象として、アミバンタマブ+ラゼルチニブ、ラゼルチニブ単剤とオシメルチニブ単剤を比較した国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」2)において、アミバンタマブ+ラゼルチニブ群は、オシメルチニブ単剤群と比較して無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が有意に改善したことが報告されている。本試験の結果を基に、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLCの1次治療として、アミバンタマブ+ラゼルチニブの製造販売が承認された。PFSおよびOSの結果は以下のとおり(アミバンタマブ+ラゼルチニブ群vs.オシメルチニブ単剤群)。<PFS(主要評価項目)>・PFS中央値23.72ヵ月vs.16.59ヵ月(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.58~0.85、p=0.0002)・2年PFS率48%vs.34%<OS(重要な副次評価項目)>・OS中央値未到達vs.36.73ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.61~0.92、p=0.0048)・死亡が認められた割合40.3%vs.50.6%注意すべき副作用とその対処法 アミバンタマブ+ラゼルチニブの使用において注意すべき副作用として、皮膚障害、静脈血栓塞栓症、インフュージョンリアクションなどがある。これらについて、林氏は「発現頻度が高く、注意が必要となるが、十分にマネジメント可能である」と述べる。そこで、林氏はこれらの対処法を紹介した。 皮膚障害については、非常に発現が多いこともあり、医師による患者教育が重要となると林氏は指摘する。実際には、皮膚の保湿をしっかりと行い、皮疹が発現したときにはすぐに外用薬を使用するように指導するほか、低刺激の洗浄剤を用いて体をきれいに保つことを指導するという。洗浄剤について、林氏は「子供用のシャンプーの使用をおすすめすることもある」と述べ、低刺激のものを選ぶことの重要性を強調した。 静脈血栓塞栓症は、MARIPOSA試験のアミバンタマブ+ラゼルチニブ群の37%に発現したことが報告されており、留意が必要な有害事象である。これについては、予防的抗凝固薬の投与により発現が抑えられることがわかってきており、今回の承認にあたって添付文書に「治療開始4ヵ月間は、アピキサバン1回2.5mgを1日2回経口投与すること」と記載されている。 インフュージョンリアクションは初回投与時(1サイクル目の1日目)に発現することが多く、対策としては、とくに最初の2回目の投与まではデキサメタゾンを用いると林氏は述べた。EGFR-TKI耐性後のアミバンタマブ+化学療法も使用可能に オシメルチニブ単剤療法で病勢進行が認められたEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA-2試験」3)の結果から、EGFR-TKIによる治療後に病勢進行が認められたNSCLC患者に対し、カルボプラチンおよびペメトレキセドとの併用においてアミバンタマブが使用可能となったことも2025年5月19日に発表されている。MARIPOSA-2試験において、アミバンタマブ+化学療法群は化学療法群と比較して、主要評価項目のPFSが有意に延長し(HR:0.48、95%CI:0.36~0.64、p<0.001)、PFS中央値はアミバンタマブ+化学療法群6.28ヵ月、化学療法群4.17ヵ月であった。 以上から、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の1次治療および2次治療でアミバンタマブが使用可能となった。これを受け、林氏は「EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の生存期間の改善のために、アミバンタマブが今後幅広く使用されることが期待される」と締めくくった。

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1型ナルコレプシー、oveporextonが入眠潜時を改善/NEJM

 1型ナルコレプシーの治療において、プラセボと比較して血液脳関門を通過する経口オレキシン2型受容体選択的作動薬oveporexton(TAK-861)は、覚醒、眠気、情動脱力発作の指標に関して、用量依存性に8週間にわたり臨床的に意義のある改善をもたらし、不眠や尿意切迫の頻度が高いものの肝毒性は認めないことが、フランス・Gui de Chauliac HospitalのYves Dauvilliers氏らが実施した「TAK-861-2001試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年5月15日号で報告された。4つの用量を検討する第II相無作為化プラセボ対照比較試験 TAK-861-2001試験は、1型ナルコレプシーにおけるoveporextonの有効性と安全性の評価を目的とする第II相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2023年2~10月に米国、欧州、日本、オーストラリアで参加者の無作為化を行った(Takeda Development Center Americasの助成を受けた)。 年齢18~70歳で1型ナルコレプシーと診断された患者112例(平均年齢34歳、女性52%)を登録した。これらの患者を、oveporexton 0.5mg(1日2回)を投与する群(23例)、同2mg(1日2回)群(21例)、同2mg投与後に5mg投与(1日1回)群(23例)、同7mg投与後にプラセボ投与(1日1回)群(23例)、プラセボ(1日2回)群(22例)に無作為に割り付けた。  主要エンドポイントは、覚醒維持検査(MWT)で評価した平均睡眠潜時(入眠までに要した時間:範囲は0~40分、20分以上で正常)のベースラインから8週までの平均変化量であった。副次エンドポイントは、Epworth眠気尺度(ESS)の総スコア(範囲:0~24点、10点以下で正常)のベースラインから8週までの変化量、8週の時点における1週間の情動脱力発作の発生率、有害事象の発現などであった。睡眠潜時とESS総スコアはすべての用量で有意差 MWTによる平均睡眠潜時のベースラインから8週までの平均変化量は、oveporexton 0.5mg×2回群が12.5分、同2mg×2回群が23.5分、同2mg+5mg群が25.4分、同7mg群が15.0分、プラセボ群は-1.2分であり、プラセボ群に比べoveporextonの4つの用量群はいずれも有意に良好であった(プラセボ群と比較した補正後p値はすべての用量で≦0.001)。 8週の時点におけるESS総スコアの平均変化量は、それぞれ-8.9点、-13.8点、-12.8点、-11.3点、-2.5点と、プラセボ群に比べ4つの用量群はいずれも有意に優れた(プラセボ群と比較した補正後p値はすべての用量で≦0.004)。 また、8週の時点での1週間の情動脱力発作の発生率は、それぞれ4.24件、3.14件、2.48件、5.89件、8.76件であり、2mg×2回群と2mg+5mg群で有意差を認めた(プラセボと比較した補正後p値は、2mg×2回群と2mg+5mg群で<0.05)。不眠のほとんどは1週間以内に消失 oveporexton群では、70例(78%)に有害事象が発現した。oveporexton関連の有害事象のうち最も頻度が高かったのは、不眠(48%に発現、ほとんどが1週間以内に消失)、尿意切迫(33%)、頻尿(32%)であった。重度有害事象は7例に認めた。 重篤な有害事象として足関節果部骨折が1例(2mg+5mg群)で発現したが、試験薬との関連はなかった。有害事象による試験中止の報告はなく、自殺行動/自殺念慮、血圧や心拍数の顕著な変動も認めなかった。また、肝毒性は発現しなかった。 著者は、「この試験は他のナルコレプシー治療薬と有効性を比較するものではないが、oveporextonはMWTによる平均睡眠潜時を用量依存性に14~27分近く改善し、現在使用可能なナルコレプシー治療薬で観察されている2~12分の改善に比べ大幅に優れていた」としている。

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希少がん患者、新たな放射線治療で副作用なくがんを克服

 米ミシガン州レッドフォード在住のTiffiney Beardさん(46歳)は、2024年4月に唾液腺の希少がんと診断されて以来、困難な道のりが待ち受けていることを覚悟していた。Beardさんが罹患した腺様嚢胞がんは神経に浸潤する傾向があるため、治療の副作用として、倦怠感、顎の痛み、食事や嚥下の困難、味覚の喪失、頭痛、記憶障害などを伴うのが常だからだ。Beardさんの場合、がんが脳につながる神経にまで浸潤していたことが事態をさらに悪化させていた。 Beardさんの担当医は、頭頸部がんに使用するのは米国で初めてとなる高度な放射線治療(陽子線治療)を行った。その結果、治療中にBeardさんに副作用が出ることはなかったという。Beardさんは、「ガムボールほどの大きさの腫瘍の摘出後、合計33回の陽子線治療を受けたが、副作用は全くなく、仕事を休むこともなかった」とニュースリリースで述べている。米コアウェル・ヘルス・ウィリアム・ボーモント大学病院のRohan Deraniyagala氏らが報告したこの治療成功症例の詳細は、「International Journal of Particle Therapy」6月号に掲載された。 従来の放射線治療では、高エネルギーX線などの光子線を用いてがん細胞を死滅させるのに対し、陽子線治療では、正に帯電した水素原子の原子核(陽子)を加速器で加速させて作ったビーム(陽子線)を、がん細胞周囲の健康な組織や臓器へのダメージを極力抑えながらより正確に照射して、がん細胞を死滅させることができる。 近年、最新の放射線治療として、照射装置を回転させながら(アーク照射法)細い陽子線を腫瘍に動的に照射する「動的スポットスキャニング法による陽子アーク治療(Dynamic spot-scanning proton arc therapy)」が注目を集めているが、病院への導入は進んでいない。一方、Beardさんに実施された陽子線治療は、照射装置の回転を一定の角度で停止させて陽子線を照射する、step and shoot方式のスポットスキャニング法による陽子アーク治療である(step-and-shoot spot-scanning proton arc therapy、以下、step and shootスポットスキャンアーク治療)。 Beardさんの治療は2024年6月に開始され、3カ月間、週5日、1日30分行われた。治療は2024年8月初旬に完了した。それ以来、Beardさんはがんを克服した状態を維持している。また、研究グループによると、脳を含む体の他の部位における放射線毒性も確認されていないという。 Deraniyagala氏は、「この治療により顔の左側の皮膚が少し変色したが、喜ばしいことに、それ以外の副作用が出ることはなかった」と語る。 Deraniyagala氏はまた、他の患者もこの治療によりBeardさんと同じ結果を得ることに期待を示している。同氏は、「陽子線治療は急速に進化し続けている。Beardさんの症例では、step and shootスポットスキャンアーク治療が非常に効果的であることが示されたが、これはさらに優れた治療法の開発に向けた最新のステップに過ぎない。Beardさんがほとんど副作用を経験しなかったという事実は、この種の治療法にとって素晴らしい成果であり、今後さらに良いことが起こるという良い兆候だ」と述べている。

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原発性アルドステロン症診断のための座位生理食塩水負荷試験は有効か?

 高血圧患者の最大30%が罹患しているとされる原発性アルドステロン症の有無を確認するために広く実施されている特定の検査はしばしば不正確であることが、新たな研究で示された。カルガリー大学(カナダ)医学部准教授のAlexander Leung氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に5月6日掲載された。Leung氏は、「この不正確な検査をなくすことで診断精度が向上し、治療開始までの時間が短縮される可能性がある。これは高血圧治療の領域における大きなパラダイムシフトとなる」と述べている。 米クリーブランド・クリニックの情報によると、原発性アルドステロン症とは、血中のナトリウムとカリウムの濃度を調節するホルモンであるアルドステロンが過剰に分泌される病態を指す。原発性アルドステロン症の人では塩分が体内に蓄積されやすくなり、高血圧が生じる。 原発性アルドステロン症には有効な治療法が存在するものの、診断に至るまでのプロセスが複雑なため、原発性アルドステロン症患者のうち、実際に診断され治療を受けている患者は全体の1%に満たないとされている。研究グループによると、血液検査でアルドステロンとレニンの濃度比が基準値を超え、原発性アルドステロン症が疑われた場合には、診断を確認するために、生理食塩水負荷試験などの試験が実施される。生理食塩水負荷試験では、患者に生理食塩水を点滴で投与し、医師が血液サンプルのアルドステロン濃度を測定する。 今回の研究では座位で行う生理食塩水負荷試験(seated saline suppression test;SSST)に着目し、156人を対象にSSSTが本当に原発性アルドステロン症の診断に役立つのかを検討した。対象者は、全例が原発性アルドステロン症のスクリーニング検査で陽性となり、その結果を確認するための二次検査としてSSSTを受けた。また全ての患者が、アルドステロンを過剰に産生している副腎の外科的摘出か、アルドステロンの働きを阻害する薬剤の投与のいずれかを受けた。この治療に対する患者の反応を、患者が実際に原発性アルドステロン症であるかどうか、つまりSSSTの正確性を評価する基準とした。 その結果、SSST後のアルドステロン濃度の中央値は、治療に反応した群で329pmol/L(四分位範囲227〜525)、反応しなかった群で255pmol/L(同162〜346)と重複しており、両群を区別することはできていなかった(ROC曲線下面積62.1%)。実際には、治療に反応した患者の多くが、SSSTでは誤って「正常」に分類されていたという。 研究グループは、「SSSTによる確認検査は、スクリーニング検査で陽性を示した患者の診断にはほとんど寄与しない。むしろ、SSSTを頼りにすると、誤った情報に基づきその後の治療が決定されてしまう可能性があり、治療に反応し得る患者であっても介入の機会を逸することになるかもしれない」と指摘している。 その上で研究グループは、「原発性アルドステロン症の診断手順からルーチンの確認検査を削除することは、診断精度の向上や、ほとんどの患者の診断や治療開始までに要する時間の短縮につながる可能性のあることが、われわれの研究で示された」と結論付けている。

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自閉スペクトラム症の光過敏に新知見

 自閉スペクトラム症(ASD)は、聴覚過敏や視覚過敏などの感覚異常を伴うことが知られているが、今回、ASDでは瞳孔反応を制御する交感神経系に問題があることが新たに示唆された。研究は帝京大学文学部心理学科の早川友恵氏らによるもので、詳細は「PLOS One」に4月1日掲載された。 ASDは、様々な状況における社会的コミュニケーションの障害、ならびに行動や興味に偏りが認められる複雑な神経発達症の一つだ。発達初期に現れるこれらの症状に加え、聴覚・嗅覚・触覚などの問題に併せ、光に対する過敏性(羞明)に悩まされることが多い。 羞明はASDの視知覚における特徴的な症状であり、適切な光量を調節する瞳孔反応の問題に起因している可能性がある。瞳孔反応は瞳孔の散大(散瞳)と収縮(縮瞳)からなり、それぞれ交感神経と副交感神経により適切に制御されている。これまでの研究の多くは、対光反射の観察から「ASDでは光刺激に対して縮瞳が弱い」という結果を導いてきたが、もう一つの可能性である「暗刺激に対して過剰な散瞳が起こっている」という点については十分な研究が行われてこなかった。このような背景を踏まえ、著者らはASDにおける瞳孔反応の神経学的機序を解明するため、明条件と共に暗条件下で瞳孔反応がどのように変化するかを調査した。 本研究は、自閉症者コミュニティより募集したASD17名(ASD群)と参加者募集会社により集められた定型発達23名(TD群)で実施した。両群の感覚特性は日本版青年・成人感覚プロファイル(AASP-J)によって評価された。刺激呈示には24インチのLCDモニターを使用し、瞳孔反応のデータ取得にはサンプリングレート60Hzのアイトラッキングシステムを使用した。実験1では、薄暗い画面(2.75cd/m2)を10秒間提示した後、5秒間隔で明条件(89.03cd/m2)と暗条件(0.07cd/m2)が交互に合計24セット繰り返された。続いて行われる実験2では、薄暗い画面を10秒間提示した後、30秒間隔で明/暗条件が交互に合計10セット繰り返された。 参加者の平均年齢(±標準誤差)は、ASD群とTD群でそれぞれ38.7(±2.3)歳と37.9(±2.0)歳であり、両群間に差はなかった。また、男女比、日本版ウェクスラー成人知能検査による知能検査にも両群間で有意な差は認められなかった。AASP-Jテストでは、ASD群で「感覚過敏」および「感覚回避」スコアが高く、TD群との間に有意差が認められた(t検定、各p<0.01)。 ASD群の瞳孔反応は、特に明暗が急速に切り替わる実験1で瞬きによるデータの欠損が有意に多く(p<0.01)、その結果、評価対象例数が減少した。実験1の薄暗い状態での瞳孔径は、ASD群とTD群で有意差は認められなかった(5.7±0.5mm vs 5.8±0.3mm、p=0.8)ものの、続いて行われた実験2の薄暗い状態での瞳孔径は、ASD群が大きいままなのに対し、TD群で有意に小さくなっていた(5.9±0.3mm vs 4.9±0.3mm、p=0.01)。 明暗刺激時における、ベースラインから瞳孔径の最大変化量(最大振幅)とそれに至るまでの時間(潜時)は両群間で有意な差は認められなかった。しかし、暗条件下の散瞳開始初期の速度は、ASD群で有意に速かった。実験1では、最大振幅の37%に到達するまでの潜時はASD群で有意に速く(p=0.01)、実験2の最大振幅の37%と63%に到達するまでの潜時もASD群で有意に速かった(各p=0.03)。 本研究について著者らは「羞明を伴うことの多いASDでは、薄暗い状態で瞳孔径が大きく、暗条件では散瞳の速度が速い傾向にあることが示された。これらの結果から、ASDでは瞳孔を制御する交感神経の過剰な興奮で散瞳状態にあり、その背景として散瞳と縮瞳をバランスする青斑核の働きに問題があると考えられる。ASDの羞明は、周囲の光に合わせて瞳孔径を適切に調整できないことに起因するのかもしれない」と述べている。

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帯状疱疹ワクチンが認知症を予防する:観察研究が質の低いランダム化比較試験を凌駕するかもしれない(解説:名郷直樹氏)

 水痘ウイルスが長く神経系に留まり、認知機能などに影響を及ぼす可能性が疑われているが、ウェールズでの帯状疱疹生ワクチン(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン:シングリックスではない)と認知症予防の研究1)とほぼ同時に発表された、オーストラリアの6つの州にまたがる65の一般医(general practitioner)の電子レコードを利用した観察研究である2)。 2016年の帯状疱疹生ワクチンの無料接種が開始された時期に、ワクチン接種対象者と非接種対象者を比較し、認知症の発症との関連を見た、ビッグデータを利用したコホート研究である。 研究デザインが準実験的研究と書かれているように、観察研究でありながらさまざまな工夫がなされた研究である。まず曝露群と比較対照群の設定であるが、実際の接種者ではなく、無料の接種が始まる前に80歳の誕生日を迎えた非接種対象者と、開始後に誕生日を迎えた接種対象者を比較し、ランダム化比較試験のITT(intention to treat)を模倣した解析を行っている。 また、ランダム化されていない観察研究の最大の問題点は交絡因子の調整であるが、この研究では接種開始時期周辺2~3週間に誕生日を迎える対象者に限る解析を行うことで、交絡の危険に対処している。実際にベースラインの両群の背景はよくそろっている。さらに、データ内のワクチン接種対象外のより高齢者のうち接種対象群に最も年齢が近いグループ(1918年5月13日~1927年8月1日に出生)を対照群として追加し、この2つの解析の対象者の背景の違いを検討することでも交絡の可能性を見ている。 結果であるが、7.4年の追跡期間における新規の認知症の診断は、接種対象群で3.7%、非接種対象群で5.5%、リスク差と95%信頼区間は-1.8(-3.3~-0.4)と接種対象群で1.8%少ないというものである。この接種対象群の認知症リスクの低下は、使用する統計モデル、解析対象者の組み入れ幅、追跡期間の違いに対しても一貫して示されている。 また観察研究におけるもう1つのバイアスは、曝露時期と追跡開始時期のギャップによって曝露群にイベントが起きない時期が解析に組み入れられることで起こるimmortal time biasであるが、これも追跡開始の猶予期間を考慮した解析で同様の結果が示され、大きな問題はないと考えられる。 曝露開始前後に対象者を限ることで交絡を避け、猶予期間の考慮でimmortal time biasを避け、RCTに準じたITTに近い解析で行われたこの研究結果は、未知の交絡因子の可能性を除外できるわけではないが、質の低いRCTよりも妥当な結果かもしれない。ビッグデータの利用によって、target trial emulationと共に、今後の観察研究のひな型の1つになる研究である。

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薬機法改正で調剤業務の外部委託が実現へ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第152回

2025年5月14日、医薬品医療機器等法の一部を改正する法律案(薬機法の改正案)が参議院本会議において与野党の賛成多数で可決し、成立しました。前回の薬機法の改正は2019年でした。薬機法は5年をめどに見直しを検討することが決められているため、2024年から本改正に向けた議論が進められており、2025年2月に法案が提出されてこのたび可決されました。改正は大きく4項目あり、後発品の安定供給を確保するための基金設置や、製薬企業の責任役員の変更命令、ドラッグラグ・ロス解消に向けて医薬品開発が早期に行われるための措置などの医薬品の開発や流通に関する内容もあります。変更された項目の中で、皆さんの実務に大きく関連する可能性のある薬局機能の強化について詳しく見ていきましょう。1.調剤業務の外部委託調剤業務の一部を、別の薬局に外部委託できるようになります。薬局業界の業務フローが大きく変わる可能性がありますね。ただし、委託できるのは同じ都道府県内にある薬局です。対象となる業務は医薬品のピッキング・包装、事務作業で、患者対応や服薬指導は委託対象になりません。施行は2年以内とされています。2.若年者への購入制限ここ数年、中高生などの若年者が市販薬を乱用し、事件に発展するなどさまざまな問題が生じています。その対策として、市販薬の若年者への購入制限が設けられます。具体的には、咳止めや風邪薬など乱用の恐れのある医薬品の20歳未満への複数・大容量の販売が原則的に禁止されます。また、販売時は購入者の状況確認・情報提供を義務とします。万引きを防止するための顧客の手の届かない場所への商品陳列に関しては義務化が見送られたようですが、販売・情報提供を行う場所に継続的に専門家を配置することを求めています。施行は1年以内とされています。3.市販薬の販売規制の緩和現在でも市販薬を販売しているコンビニはありますが、薬剤師や登録販売者がその店舗にいることを条件としています。業界団体によると、市販薬を扱うコンビニは約5万7,000店のうち0.7%(23年2月時点)にとどまっているそうです。今回の改正後の具体的な方法としては、オンラインでの情報提供などを利用して購入可能にする仕組みを想定しています。薬局の薬剤師などが、ICTを活用し販売店舗の市販薬を遠隔で管理し購入者へ受け渡します。なお当面は、有資格者が所属する店舗と販売店舗は同一都道府県内にあることが条件です。有資格者のいないコンビニエンスストアでの市販薬購入が可能になるなど、小売業に新たなビジネスチャンスが生まれ、市場に大きな変化をもたらすかもしれません。施行は2年以内とされています。今回の改正薬機法の施行期日については「公布後6月以内に政令で定める日」とありますが、項目によって、施行日が異なります。「若年者への購入制限」が1年以内、「調剤業務の外部委託」「市販薬の販売規制の緩和」は2年以内とされています。次回は現状の課題を解決するための改正前回の2019年薬機法改正では何が変更されたか覚えていますか? 薬局が調剤のみならずOTC医薬品を含むすべての医薬品を安定的に提供する施設であること、薬剤師が医薬品の適正使用に必要な情報提供と薬学的知見に基づく指導を行う場所であることが規定され、調剤時に限らず必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行わなければならないとする服薬フォローアップを義務付けたのが前回の改正でした。形式上は重要な改正であった一方、残念ながら薬局・医薬品販売業の業務を大きく変えるものにはなりませんでした。今回の改正は、現状の課題を解決するための改正とも言えます。すでに目の前に困っている人がいるという状況です。若年者の医薬品の乱用は減るのか、また市販薬はアクセスしやすくなる一方で安全性は確保されるのかといった難しい問題もあります。「コンビニで売るんだったら勝手にどうぞ」というスタンスではなく、どのように安全性を確保していくのか、薬の専門家である薬剤師の関与が必要なのは間違いありません。1.医薬品等の品質及び安全性の確保の強化【医薬品医療機器等法】(1)製造販売業者における医薬品品質保証責任者及び医薬品安全管理責任者の設置を法定化する。(2)指定する医薬品の製造販売業者に対して、副作用に係る情報収集等に関する計画の作成、実施を義務付ける。(3)法令違反等があった場合に、製造販売業者等の薬事に関する業務に責任を有する役員の変更命令を可能とする。2.医療用医薬品等の安定供給体制の強化等【医薬品医療機器等法、医薬基盤・健康・栄養研究所法、麻向法、医療法】(1)医療用医薬品の供給体制管理責任者の設置、出荷停止時の届出義務付け、供給不足時の増産等の必要な協力の要請等を法定化する。また、電子処方箋管理サービスのデータを活用し、需給状況のモニタリングを行う。(2)製造販売承認を一部変更する場合の手続について、変更が中程度である場合の類型等を設ける。(3)品質の確保された後発医薬品の安定供給の確保のための基金を設置する。3.より活発な創薬が行われる環境の整備【医薬品医療機器等法、医薬基盤・健康・栄養研究所法】(1)条件付き承認制度を見直し、臨床的有効性が合理的に予測可能である場合等の承認を可能とする。(2)医薬品の製造販売業者に対して、小児用医薬品開発の計画策定を努力義務化する。(3)革新的な新薬の実用化を支援するための基金を設置する。4.国民への医薬品の適正な提供のための薬局機能の強化等【医薬品医療機器等法、薬剤師法】(1)薬局の所在地の都道府県知事等の許可により、調剤業務の一部の外部委託を可能とする。(2)濫用のおそれのある医薬品の販売について、販売方法を見直し、若年者に対しては適正量に限って販売すること等を義務付ける。(3)薬剤師等による遠隔での管理の下で、薬剤師等が常駐しない店舗における一般用医薬品の販売を可能とする。

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クラゲ刺傷【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第24回

今回はクラゲ刺傷に関してお話しします。私は幼少期、海で泳いでいるときにクラゲに刺されたことが何回かあります。大事はなく、受診はしませんでしたが、もし皆さんの外来にクラゲに刺された患者が来た場合はどうすればよいでしょうか?<症例>28歳、男性主訴たぶんクラゲに刺された。受診日に海で泳いでいたところ、足に痛みを感じて受診した。たぶんクラゲに刺されたのだろうとのこと。バイタルBP 128/42、P 82、SPO2 99%、BT 36.2℃上記のような患者が来院した場合どうしましょうか? 答えは、基本的には触手の除去と対症療法です。「えっ?」となるかもしれませんが、残念ながらそれ以上できることはありません。クラゲは全世界に1万種類いるとされ、そのうち100種類が毒を持っています1)。触手に刺胞というものが存在し、人間の皮膚などに接触すると浸透圧で破れて毒素が外に出ます。この毒素を移行させる速度は生物の中で最も早いとのことです2)。受診前の対応として、受傷時に酢で洗う、50℃くらいのお湯で洗うなどの方法があります。いずれも毒であるタンパクを分解することを目的にしています。しかし、酢は効果があるクラゲと効果がないクラゲがいて、刺胞が残っている場合は浸透圧の関係でさらに破れて毒が回る可能性があるためお勧めできません。お湯も同様です。よほどクラゲに詳しくない限り、現場ではクラゲの触手が残っているときは海水で洗い流すのが無難です(水道水だと刺胞が破れることがあります)。では受診してからはどうしましょうか? これは救急のABC(気道、呼吸、循環)のチェックと同じです。というのも、クラゲの毒の作用機序はほぼ同じですが、毒の強さが異なります。わが国で毒素の強いクラゲはカツオノエボシ(図1)とハブクラゲ(図2)が挙げられます。カツオノエボシは思わず触ってしまいそうですね。図1 カツオノエボシ図2 ハブクラゲカツオノエボシは本州の太平洋沿岸にカツオが到来する時期に海流に乗って来て、浮き袋の見た目が烏帽子に似ていることから三浦半島や伊豆半島でカツオノエボシと呼ばれるようになりました。主に本州以南の太平洋沿岸で春から秋にかけて発見され、被害は7月と8月に多いです3)。ハブクラゲは傘高20cmに達する大型のクラゲで、国内では琉球列島にのみ生息しています。傘の四隅に触手を7~9本備えていて、ハブに例えられる強烈な刺胞毒を持ち、刺されると電気が走ったような痛みとともにミミズ腫れになることもあります4)。双方とも重症化した場合、全身症状としては、局所症状の後、30~120分以内の背部痛や筋肉痛、痙攣、頭痛、嘔吐、高血圧、急性心不全、急性肺水腫、脳浮腫などを認め、死亡することもあります。全身症状は内因性カテコールアミンの上昇が関与していると考えられていて、イルカンジというクラゲによって生じるという報告があり、イルカンジ症候群と呼ばれています。受傷したとしても必ず重症化するわけではなく、カツオノエボシの重症度は軽症が66.9%、中等症が10.4%、重症が0.7%、死亡が0.05%、不明が22.0%です。いずれにせよABCに異常がある場合は、すぐに高次医療機関への転院が必要です。長くなりましたが症例に戻ります。順を追って対応しましょう。(1)ABCのチェック通常、独歩で受診する人はABCが崩れていることはないですが、万が一に備えて確認しましょう。(2)傷口の観察まず確認するのはクラゲの触手が残っていないかどうかです。残っていた場合、素手では取らず、手袋をして、さらに可能であれば鑷子で取り除きましょう。クラゲの傷であれば触手に沿った水ぶくれをみとめます。(3)治療治療は基本的には対症療法です。痛みに対しては、痛み止めの内服薬を処方します。以上が、クラゲ刺傷の処置になります。まれに重症化するクラゲに刺されることがありますが、それ以外は基本的に怖い病態ではありません。図3のように海岸に打ち上げられていることもあるので、むやみにクラゲを触るのはやめましょう。図3 打ち上げられたクラゲ1)Cegolon L, et al. Mar Drugs. 2013;11:523-550.2)Tardent P. BioEssays. 1995;17:351-362.3)稲葉大地 ほか. 医学のあゆみ. 2022;281:291-295.4)黒潮生物研究所公:ハブクラゲ

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SSI診療の最新動向を探る!

最新の知見を初学者にもわかりやすく解説「整形・災害外科」68巻5号(2025年4月臨時増刊号)整形外科の手術部位感染(SSI)の予防と治療について、「The International Consensus Meeting on Infection」の改訂作業メンバーも執筆者に加わり、最新のエビデンスを紹介しながら初学者にもわかりやすく解説している。抗菌薬については、整形外科感染症診療で頻用するものに厳選して正しい知識と使い方を紹介した。外科的アプローチについては、治療法が確立しつつある骨折関連感染症と股関節の人工関節周囲感染に絞り、治療方針、治療の実際についてまとめた。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するSSI診療の最新動向を探る!定価8,800円(税込)判型B5判頁数224頁発行2025年4月編集山田 浩司ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第268回 生まれつき重病の乳児への世界初の体内塩基編集治療がひとまず成功

生まれつき重病の乳児への世界初の体内塩基編集治療がひとまず成功生まれつきの重病の乳児に、その子専用にあつらえた体内遺伝子編集治療が世界で初めて投与されました1,2)。幸いなことに手に負えない有害事象は生じておらず、経過はひとまず順調なようです。KJと呼ばれるその男児の病気はカルバモイルリン酸合成酵素1(CPS1)欠損症と言い、病名が示すとおりCPS1欠乏を引き起こす遺伝子の異常で生じます。CPS1はミトコンドリアにある酵素で、もっぱら肝細胞で取り行われる解毒反応で必須の工程を担います。CPS1は神経毒のアンモニアと炭酸水素を組み合わせて尿素回路の基質となるカルバモイルリン酸を作ります。カルバモイルリン酸を取り込んだ尿素回路から尿素が作られて尿中へと排出されます。遺伝子の異常でCPS1が不足して用を成さなくなると、血中のアンモニアが増え、脳を害する高アンモニア血症に陥ります。治療しないままの高アンモニア血症は昏睡を引き起こして死に至る恐れがあります。KJは生後2日と経たず発症し、血中のアンモニア濃度は基準範囲9~33μmol/Lを遥かに上回る1,703μmol/Lを示していました。KJのゲノム配列を解析したところCPS1の生成を途中で終わらせてしまう変異Q335Xが見つかりました。Q335Xは塩基のグアニンをアデニンに置き換えるナンセンス変異で、本来アミノ酸を指定するコドンを停止コドンにします。そのせいでCPS1は寸足らずの短いものとなってしまいます。KJにはその変異を正す塩基編集治療が施されました。米国のフィラデルフィア小児病院の医師Kiran Musunuru氏らがペンシルバニア大学の研究者と協力して開発されたその治療はkayjayguran abengcemeran(k-abe)と呼ばれ、Cas9ニッカーゼ(Cas9n)とアデノシンデアミナーゼの複合体であるアデニン塩基編集タンパク質(ABE)を作るmRNA(abengcemeran)、ガイドRNA(gRNA)、それらを肝細胞に運ぶ脂質ナノ粒子で構成されています。k-abeのgRNAがCPS1変異領域へABEを導き、ABEのCas9n領域がまず目指す配列に結合します。続いてアデノシンデアミナーゼ領域がアデニンを脱アミノ化します。そうしてアデニン-チミン塩基対がグアニン-チミン塩基対へと変換され、寸足らずではない完全長のCPS1が作られるようになります。k-abeはマウスで遺伝子編集の効率を調べ、サルで安全性を確認した後にKJに静注されました。本年2025年の4月までにk-abeは合計3回投与され2)、安全性にこれといった難はなく、深刻な有害事象は認められていません。効果のほども見て取れ、生後7ヵ月ごろ(生後208日目)の最初のk-abe投与から7週間にKJは食事でのタンパク質摂取を増やすことができ、窒素除去薬の用量を半分に減らせました。また、CPS1の働きが回復していることを示す所見と一致する血中アンモニア濃度低下も認められています。CPS1遺伝子配列が正しく編集されているかどうかを検討するための肝臓の生検には報告の時点で至っていません。幼いKJに肝生検は危険すぎたからです。効果の持続のほど、目当ての配列以外の余計な編集やk-abeへの免疫反応の害もわかっておらず、より長期の経過観察でk-abeのさらなる安全性や有効性、それに神経の調子を検討する必要があります1,3)。 参考 1) Musunuru K, et al. N Engl J Med. 2025 May 15. [Epub ahead of print] 2) World's First Patient Treated with Personalized CRISPR Gene Editing Therapy at Children's Hospital of Philadelphia / PRNewswire 3) Gropman AL, et al. N Engl J Med. 2025 May 15. [Epub ahead of print]

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マイコプラズマ肺炎、大阪府のマクロライド耐性率は約6割

 大阪府の医療施設を対象とした調査において、2024年のMycoplasma pneumoniaeのマクロライド耐性変異率は60.2%に達していたことが報告された。マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎は2000年代から増加し、2012年前後にはM. pneumoniaeのマクロライド耐性変異率が80~90%に達した。その後、マクロライド耐性変異率は低下し、2019年前後には20~30%となった。それ以降は、COVID-19パンデミックに伴ってマイコプラズマ肺炎の報告が激減したが、2024年には再流行がみられた。そこで、宮下 修行氏(関西医科大学 内科学第一講座 呼吸器感染症・アレルギー科)らの研究チームは、大阪府の医療施設を対象として、2018~24年のマイコプラズマ肺炎の報告件数とM. pneumoniaeのマクロライド耐性変異率を調査した。本研究結果は、Respiratory Investigation誌2025年4月22日号に掲載された。 本研究は2018~24年に大阪府の36施設を受診した小児2,715例のうち、M. pneumoniaeが陽性となった367例を対象とした。鼻咽頭拭い液検体を用いてM. pneumoniaeを培養し、ダイレクトシークエンス法により23S rRNAドメインVの変異を調べた。 主な結果は以下のとおり。・2024年のM. pneumoniaeのマクロライド耐性変異率は60.2%(127/211例)であり、2018~20年と比べて有意に高かった(p<0.001)。各年の耐性変異率は以下のとおり(2021~23年は報告数が少ないため参考値)。 -2018年:17.6%(9/51例) -2019年:20.6%(13/63例) -2020年:26.7%(8/30例) -2021年:33.3%(1/3例) -2022年:33.3%(1/3例) -2023年:50.0%(3/6例) -2024年:60.2%(127/211例)・耐性変異が認められた162例中160例がA2063G変異であった。 著者らは、本研究結果について「M. pneumoniae感染症に対する抗菌薬の選択には注意が必要である」と述べている。

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研修医の自殺、研修開始後3ヵ月が最多

 米国卒後医学教育認定評議会(ACGME)が行った以前の調査によると、2000~14年の米国における研修医・フェローの主な死亡原因は自殺とがんであった1)。後続研究としてACGMEは2015~21年のデータを分析し、以前の結果と比較した。Nicholas A. Yaghmour氏らによる本研究の結果は、JAMA Network Open誌2025年5月14日号に掲載された。 主要アウトカムは前回(2000~14年)と今回(2015~21年)の2つの期間における研修医・フェローの死亡率の差であった。副次的アウトカムは一般の同年代との死亡率の比較、専門分野別の死亡原因の差異だった。 主な結果は以下のとおり。・2015~21年に370万778人の研修医・フェローが96万1,755人年分の研修に参加した。この期間に161人(女性50人[31.1%]、年齢中央値31[SD 29~35]歳)が研修中に死亡した。・47人(29.2%)が自殺、28人(17.4%)ががん、22人(13.7%)がその他の疾患、22人(13.7%)が事故、21人(13.0%)が事故による中毒で死亡した。・がんによる死亡率は、前回から今回にかけて減少した。一方、自殺を含むその他の全原因による死亡率には変化がなかった。・両期間とも、自殺による死亡は研修1年目の最初の3ヵ月間に最も多く発生し(今回:9/47人)、研修の最初の1年間での発生が3割(同:14/47人)を占めた。・今回の研修医・フェローの全原因による死亡率(自殺含む)は、同年代の比較対象群と比べて低かった。・専門分野別では、自殺の死亡率が最も高かったのは病理診断科(10万人年当たり19.76人)、がんの死亡率が高かったのは精神科(10万人年当たり9.67人)、中毒の死亡率が高かったのは麻酔科(10万人年当たり15.46人)だった。 研究者らは「両期間を比較すると、がんによる死亡率が減少した一方、全原因による死亡率は変化しなかった。両期間中に観察された、研修直後の3ヵ月における自殺数は依然として懸念される。研修医支援に向けた今後の取り組みは、とくに初期のストレスの要因と軽減に焦点を当てる必要がある」としている。

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nerandomilast、IPFとPPFの呼吸機能低下を抑制(FIBRONEER-IPF、ILD)/ATS2025

 ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害薬nerandomilastについて、国際共同第III相試験が2試験実施されている。特発性肺線維症(IPF)患者を対象とした「FIBRONEER-IPF試験」1)、進行性肺線維症(PPF)患者を対象とした「FIBRONEER-ILD試験」2)の結果が米国胸部学会国際会議(ATS2025 International Conference)で発表され、それぞれ2025年5月18、19日にNEJM誌へ同時掲載された。両試験において、nerandomilastは努力肺活量(FVC)の低下を有意に抑制した。【FIBRONEER-IPF試験】・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験・対象:%FVC(FVCの予測値に対する実測値の割合)が45%以上で、%DLco(一酸化炭素肺拡散能の予測値に対する実測値の割合)が25%以上の40歳以上のIPF(12ヵ月以内のHRCTに基づく診断を受け、UIP[通常型間質性肺炎]またはprobable UIPパターンを有する)患者1,177例試験群1(低用量群):nerandomilast低用量(9mg、1日2回) 392例試験群2(高用量群):nerandomilast高用量(18mg、1日2回) 392例対照群(プラセボ群):プラセボ 393例・評価項目[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による入院、死亡のいずれかの発生 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は70.2歳、%FVC平均値は78.2%、%DLco平均値は50.9%であった。・抗線維化薬の併用状況は、ニンテダニブが45.5%、ピルフェニドンが32.3%、併用なしが22.3%であった。・抗線維化薬の併用ありの集団は、併用なしの集団と比べて、IPF診断から試験組み入れまでの期間が長い(3.7年vs.2.8年)、%FVCが低い(77.1% vs.82.2%)、%DLcoが低い(49.6% vs.55.2%)、酸素補給の実施割合が高い(22.5% vs.16.0%)傾向にあった。・主要評価項目の52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-183.5mLであったのに対し、低用量群が-138.6mL、高用量群が-114.7mLであり、いずれもプラセボ群と比較して有意にFVCの低下を抑制した(それぞれp=0.02、p<0.001)。nerandomilast投与群では、治療開始早期からFVCの低下が抑制され、76週時まで良好な傾向にあった。・抗線維化薬の併用の有無別にみると、抗線維化薬の併用なしの集団では、52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-148.7mLであったのに対し、低用量群が-70.4mL、高用量群が-79.2mLであり、FVCの低下が抑制される傾向にあった。・ニンテダニブを併用する集団では、プラセボ群が-191.6mLであったのに対し、低用量群が-130.7mL、高用量群が-118.5mLであり、FVCの低下が抑制される傾向にあった。・ピルフェニドンを併用する集団では、プラセボ群が-197.0mLであったのに対し、低用量群が-201.8mL、高用量群が-133.7mLであり、低用量群ではFVCの低下抑制はみられなかった。この要因として、ピルフェニドンを併用する集団ではnerandimilastの血漿中濃度が低く、薬物相互作用が考えられた。・主要な副次評価項目については、低用量群、高用量群のいずれもプラセボ群と比較して有意な改善はみられなかった。ただし、高用量群で全死亡が減少する傾向がみられた。・nerandimilast投与群で最も多く発現した有害事象は下痢であった(プラセボ群16.0%、低用量群31.1%、高用量群41.3%)。下痢は、とくにニンテダニブを併用する集団で多く(それぞれ26.6%、49.5%、61.8%)、下痢による投与中止は33例にみられたが、そのうち29例がニンテダニブを併用する集団であった。【FIBRONEER-ILD試験】・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験・対象:%FVCが45%以上で、%DLcoが25%以上の18歳以上のPPF(12ヵ月以内のHRCTに基づき10%以上の線維化が認められたIPF以外の間質性肺疾患[ILD])患者1,176例試験群1(低用量群):nerandomilast低用量(9mg、1日2回) 393例試験群2(高用量群):nerandomilast高用量(18mg、1日2回) 391例対照群(プラセボ群):プラセボ 392例・評価項目[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による入院、死亡のいずれかの発生 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は66.4歳、%FVC平均値は70.1%、%DLco平均値は49.3%であった。UIPパターンまたはUIP-likeパターンを有する割合は71.4%であった。・抗線維化薬の併用状況は、ニンテダニブが43.7%であった。・PPFの分類は、自己免疫性ILDが27.6%、線維性過敏性肺炎が19.8%、分類不能型特発性間質性肺炎が19.6%、特発性非特異性間質性肺炎が19.4%、その他が13.5%であった。・主要評価項目の52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-165.8mLであったのに対し、低用量群が-84.6mL、高用量群が-98.6mLであり、いずれもプラセボ群と比較して有意にFVCの低下を抑制した(いずれもp<0.001)。nerandomilast投与群では、治療開始早期からFVCの低下が抑制され、52週時まで良好な傾向にあった。・抗線維化薬の併用の有無別にみると、抗線維化薬の併用なしの集団では、52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-154.1mLであったのに対し、低用量群が-82.3mL、高用量群が-95.2mLであり、FVCの低下が抑制される傾向にあった。・ニンテダニブを併用する集団では、プラセボ群が-180.9mLであったのに対し、低用量群が-87.8mL、高用量群が-102.9mLであり、FVCの低下が抑制される傾向にあった。・初回データベースロック時点において、主要な副次評価項目のイベント発生割合は、プラセボ群31.1%、低用量群28.0%、高用量群24.3%であり、低用量群(ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.68~1.14)、高用量群(同:0.77、0.59~1.01)のいずれもプラセボ群と比較して数値的な改善傾向はみられたが、統計学的有意差はみられなかった。全死亡は低用量群(同:0.60、0.38~0.95)、高用量群(同:0.48、0.30~0.79)のいずれも減少する傾向がみられた。・nerandimilast投与群で最も多く発現した有害事象は下痢であり、とくにニンテダニブを併用する集団で多かった(プラセボ群36.5%、低用量群48.0%、高用量群49.1%)。

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抗精神病薬投与が脳構造変化に及ぼす影響

 精神疾患の自然経過に関連する潜在的な交絡因子を考慮せずに、抗精神病薬がMRI脳構造指標に及ぼす影響を明らかにすることは困難である。しかしながら、薬物治療中の患者を対象とした横断研究および縦断研究の結果を解明し、最終的な抗精神病薬の治療効果に及ぼす生物学的メカニズムの理解を深めるためには、これらの影響をより深く理解する必要がある。英国・King's College LondonのPierluigi Selvaggi氏らは、疾患の影響がない場合に、抗精神病薬投与がMRI脳構造指標の変化と関連しているかを明らかにするため、本検討を行った。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2025年5月7日号の報告。 健康ボランティアを対象としたランダム化二重盲検カウンターバランス順序クロスオーバープラセボ対照試験を実施した。抗精神病薬を1週間投与後にプラセボを投与する群またはその逆の投与を行う群にランダムに割り付けた(24例)。抗精神病薬には、Arm1ではamisulpride(400mg/日)、Arm2ではアリピプラゾール(10mg/日)を用いた。 主な内容は以下のとおり。・amisulpride群は、プラセボ群と比較し、左被殻および右尾状核のMRI容積推定値が増加した。・アリピプラゾール群は、プラセボ群と比較し、右被殻のMRI容積推定値が増加した。・皮質容積推定値、皮質厚、皮質表面積、T1緩和時間では、影響は認められなかった。・線条体の変化は、投薬中止後数週間以内で回復した。 著者らは「2種類の異なる抗精神病薬のいずれかを短期間投与すると、T1強調MRIで測定された線条体容積が一時的に増加するが、投与中止後、皮質の変化を伴わずに急速に正常化することが明らかとなった。線条体のMRI容積の違いは、少なくとも部分的に薬理学的作用に影響を及ぼす可能性を示唆している」としている。

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治療抵抗性高血圧、amilorideはスピロノラクトンに非劣性/JAMA

 治療抵抗性高血圧の治療において、カリウム保持性利尿薬のamilorideはスピロノラクトンに対し、家庭収縮期血圧(SBP)の低下に関して非劣性が認められたことを、韓国・Yonsei University のChan Joo Lee氏らが、同国の14施設で実施した無作為化非盲検評価者盲検臨床試験の結果で報告した。これまで、治療抵抗性高血圧患者においてスピロノラクトンとamilorideの有効性を比較した無作為化臨床試験は行われていなかった。結果を踏まえて著者は、「amilorideは治療抵抗性高血圧の治療に有効な代替薬となりうることが示された」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年5月14日号掲載の報告。12週時の家庭SBPのベースラインからの変化量を評価 研究グループは、2020年11月16日~2024年2月29日に19~75歳の治療抵抗性高血圧患者(レニン-アンジオテンシン系阻害薬、Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬の3剤併用療法にもかかわらず、スクリーニング前12ヵ月以内の外来血圧モニタリングで日中の平均SBPが130mmHg以上と定義)を登録し、導入期としてアムロジピン、オルメサルタン、ヒドロクロロチアジドの固定用量3剤併用療法を4週間行った後、平均家庭SBPが130mmHg以上の患者118例を、スピロノラクトン(12.5mg/日)群(60例)またはamiloride(5mg/日)群(58例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 無作為化4週間後に平均家庭SBPが130mmHg以上、血清カリウムが5.0mmol/L未満の場合は、投与量をそれぞれ25mg/日、10mg/日に増量した。 主要エンドポイントは、12週時の家庭SBPのベースラインからの変化量の群間差とし、非劣性マージンは信頼区間(CI)の下限が-4.4mmHgとした。副次エンドポイントは、家庭および診察室でのSBP 130mmHg未満の達成率であった。変化量は-13.6±8.6mmHg vs.-14.7±11.0mmHg 118例の患者背景は、年齢中央値55歳、男性が70%であった。α遮断薬の使用(amiloride群8.6%、スピロノラクトン群0%)以外の患者背景に群間差はなかった。ベースラインの家庭血圧の平均値(±標準偏差)はamiloride群で141.5±7.9mmHg、スピロノラクトン群で142.3±8.5mmHgであった。 12週時の家庭SBPのベースラインからの変化量(平均値±標準偏差)は、amiloride群で-13.6±8.6mmHg、スピロノラクトン群で-14.7±11.0mmHg。群間差は-0.68mmHg(90%CI:-3.50~2.14mmHg)であり、amiloride群のスピロノラクトン群に対する非劣性が示された。 家庭SBP 130mmHg未満達成率はamiloride群で66.1%、スピロノラクトン群で55.2%、診察室SBP 130mmHg未満達成率はそれぞれ57.1%および60.3%であり、両群間に差はなかった。 安全性については、スピロノラクトン群では1例がめまいと急性腎障害、amiloride群では2例がめまい、1例が高カリウム血症により試験治療を中止した。両群とも試験期間中に女性化乳房を発症した患者は認められなかった。

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