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アルコール依存症の再発率はどの程度?

 アルコール依存症は、早期死亡や障害の主要な要因である。インドでは、男性の約9%にアルコール依存症がみられるといわれている。アルコール依存症の短期アウトカムには、いくつかの臨床的要因が関与している可能性がある。インド・Jawaharlal Institute of Postgraduate Medical Education and ResearchのSushmitha T. Nachiyar氏らは、アルコール依存症患者の短期アウトカムについて調査を行った。Indian Journal of Psychological Medicine誌オンライン版2025年9月26日号の報告。 対象は、ICD-10 DCR基準に基づくアルコール依存症男性患者122例。アルコール依存症の重症度(SADQ)、断酒動機(SOCRATES)、全般認知能力(MoCA)、前頭葉認知能力(FAB)などの社会人口学的および臨床的パラメーターに基づき評価した。その後、過去30日間の飲酒について、タイムライン・フォローバック法を用いて1ヵ月および3ヵ月時点でフォローアップ調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・患者の平均年齢は40.6±7.6歳。・アルコール摂取期間は18.56±7.22年、平均摂取量は1日当たり14.14±8.62単位であった。・SADQスコアは25.13±12.01であり、中等度の依存症と評価された。・MoCAスコアが低かった患者は67.2%(82例)、FABスコアが低かった患者は22.1%(27例)。・1ヵ月後の再発率は約30%、3ヵ月後の再発率は50%であった。・1ヵ月後の再発率と関連していた因子は、依存症発症時の年齢が若いことであった(p=0.012)。・3ヵ月時点で禁酒の継続と関連する因子は、既婚(p=0.040)、過去の禁酒歴(p=0.003)、MoCAスコア(26超)の高さ(p=0.042)であった。 著者らは「アルコール依存症患者の約30%は1ヵ月以内に再発し、50%は3ヵ月後までに再発することが確認された。依存症発症時の年齢が若いことは、1ヵ月後の再発を予測し、既婚であること、過去の禁酒歴、全般認知能力が良好であることは3ヵ月後の禁酒を予測することが示唆された」としている。

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アルツハイマー病治療薬が自閉症にも有効か

 アルツハイマー病治療薬として2003年に米食品医薬品局(FDA)に承認されたメマンチンが、自閉症スペクトラム障害(ASD)の小児や若者の社会的機能を高めるのに役立つ可能性のあることが、新たな小規模臨床試験で明らかになった。社会性の障害に改善が見られた割合は、メマンチンを投与した群では56%であったのに対し、プラセボを投与した群では21%だったという。米マサチューセッツ総合病院のGagan Joshi氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月1日掲載された。Joshi氏は、「メマンチンに反応を示した試験参加者は、ASDの軽度の特徴は引き続き見られたものの、社会的コンピテンスが向上しASD症状の重症度も軽減した」とMass General Brighamのニュースリリースで述べている。 アルツハイマー病などの神経変性疾患では、脳の学習や記憶に大きな役割を果たす興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰に作用し、NMDA受容体が過剰に活性化した状態になっている。メマンチンは、このように過活性化されたNMDA受容体の働きを抑制することで神経細胞の損傷を防ぐ作用を持つ。Joshi氏らは、一部のASD患者は脳内のグルタミン酸濃度が異常に高いことから、メマンチンがこうしたASD患者にも有効かもしれないと考えた。 そこでJoshi氏らは今回、知的障害のないASDの若年者(8〜17歳)を対象に、社会性の障害に対するメマンチンの安全性と有効性を評価した。42人の参加者(平均年齢13.2歳、男性76.2%)が、12週間にわたりメマンチンまたはプラセボを投与する群に21人ずつランダムに割り付けられた。主要評価項目は治療に対する反応とし、これは保護者や教師などによるSRS-2(Social Responsiveness Scale-Second Edition)総合スコアの25%以上の改善、または臨床医によるCGI-I(Clinical Global Impression-Improvement)スケールによる評価で2点以下の場合と定義した。 試験を完了した参加者は、メマンチン群16人、プラセボ群17人の計33人だった。まず、試験期間中に少なくとも1回は再評価を受けた35人(メマンチン群16人、プラセボ群19人)を対象に解析した結果、治療に対する反応が認められたのは、メマンチン群で56.2%(9/16人)であったのに対し、プラセボ群では21.0%(4/19人)であった(オッズ比4.8、95%信頼区間1.1〜21.2)。メマンチンの認容性は良好で、有害事象の発生件数もプラセボ群と同程度だった。 次に、グルタミン酸を豊富に含む領域である前帯状皮質前部(pgACC)のグルタミン酸濃度に関するデータが得られたがASD患者37人と健康な対照16人を対象に、pgACCのグルタミン酸濃度が治療反応のバイオマーカーになり得るかを検討した。その結果、ASD群では健康な対照に比べてpgACCでのグルタミン酸濃度が有意に高く(95.5IU vs 76.6IU、P<0.001)、正常より1標準偏差以上高い参加者の割合は54%に上った。グルタミン酸の濃度が高かった参加者での治療反応率は、メマンチン群の80%(8/10人)であったのに対し、プラセボ群では20%(2/10人)であった。 Joshi氏は、「メマンチンが効いた患者は、社会参加が活発になったことが分かった」と話しつつも、「この薬がASDの治療にどれほど役立つ可能性があるのかをより正確に評価するには、さらなる研究が必要だ」との見解を示している。その上で同氏は、「より大規模な臨床試験の実施が、より幅広いASD患者集団におけるメマンチンの反応を評価するのに役立つ可能性がある」と述べている。

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学校給食の無償化で子どもの高血圧リスク低下

 米国で進められてきた学校給食の無償化が、子どもたちの高血圧リスクの抑制につながっているとする研究結果が、「JAMA Network Open」に9月25日掲載された。米カリフォルニア大学アーバイン校のJessica Jones-Smith氏らの研究によるものであり、無償化を始めた学校では高血圧の子どもの割合が、5年間で約11%減少したと見込まれるという。研究者らは、給食無償化による栄養状態の改善に加えて、体重に及ぼした影響が、この改善を促進した可能性が高いとしている。 論文の上席著者であるJones-Smith氏は、「給食無償化は、高血圧リスクと密接な関連のある小児肥満の減少と関連している。より健康的な食事が直接的に血圧へ好ましい影響を与えることに加えて、BMIが高い子どもが減ることに伴う間接的影響という二つの経路で、高血圧リスクが抑制されたと言える」と解説している。なお、研究者らが背景説明の中で述べているところによると、小児期の高血圧は成人期まで継続することが多く、将来的に心臓病や腎臓病のリスクを高める可能性が高いとのことだ。 米国では2010年に学校給食に対する栄養要件が強化され、低所得地域の学校に給食を無償で提供するプログラムがスタートし、これを採用する学校が増加してきている。本研究は、12州(主としてカリフォルニア州とオレゴン州)の児童・生徒の医療記録を用いた縦断的観察研究として実施された。解析対象は1,052校の4~18歳の児童・生徒15万5,778人であり、給食の無償化の開始前後で高血圧の子どもの割合の変化を求め、無償化プログラム未導入の学校での変化と比較して、差分の差(difference in differences;DD)を検討するという手法で行われた。主要評価項目は、収縮期血圧または拡張期血圧が、年齢・性別・身長に基づく90パーセンタイル以上の子どもの割合とした。 その結果、主要評価項目である高血圧の子どもの割合は、給食無償化により-2.71パーセントポイント(PP)という有意な差(DD)が生じたと計算された(95%信頼区間-5.10~-0.31〔P=0.03〕)。このDDは、高血圧の子どもの割合が5年間で約11%減少するという変化に相当する(-10.8%〔同-20.4~-1.2〕)。また、副次評価項目の一つとして設定されていた、血圧が集団全体の95パーセンタイル以上の子どもの割合についても、DDが-2.48PPと有意であった(同-4.69~-0.27〔P=0.03〕)。 論文の筆頭著者である米ワシントン大学のAnna Localio氏は、「多くの州で給食無償化の拡大を目指す法案が検討されており、われわれの研究結果は各州の政策決定に役立つ可能性がある」と述べている。一方で研究者らは、「残念ながら食糧支援プログラムが縮小される動きもあり、無料で学校給食にアクセス可能な環境が脅かされている」と指摘。Localio氏も、「学校給食無償化への資金削減は、子どもたちの健康増進にはつながらない」と語っている。

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60歳以上における全原因心肺系・心血管系疾患入院予防に対する2価RSVワクチンの効果(解説:寺田教彦氏)

 本論文は、デンマークにおける全国規模の無作為化比較試験(DAN-RSV試験)の事前規定サブ解析で、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチン接種による「全原因心肺系入院のみならず、呼吸器疾患の下流に位置する全原因心血管系入院の予防効果」を評価したものである。同試験の主要エンドポイントはRSV関連呼吸器疾患による入院で、結果は別の論文で報告されている「60歳以上への2価RSVワクチン、RSV関連呼吸器疾患による入院を抑制/NEJM」。 本論文の評価項目として、副次エンドポイントは全原因心肺系入院、探索的エンドポイントとして心血管疾患の各項目である、心不全、心筋梗塞、脳卒中、心房細動による入院が設定された。 RSVは乳幼児期に細気管支炎や肺炎を引き起こし、小児死亡の主要な原因の1つとされてきた。RSVワクチンは、1960年代にワクチン関連疾患増悪(Vaccine-associated enhanced disease,VAED)が問題となり、開発が停滞したこともあったが、構造生物学的解析によってpre-fusion型F蛋白が同定され、現在は高い中和抗体誘導能を有するワクチンが実用化されている。 近年、RSVは小児以外に高齢者や慢性心疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息などの慢性呼吸器疾患などがある人々でも重症化し、肺炎や死亡に関与することが注目され、CDCでは75歳以上やRSV重症化のリスクがある50~74歳にもRSVワクチン接種を推奨している(RSV Vaccine Guidance for Adults)。 日本の高齢者に対するRSVの公的な疫学情報はなく、高齢者に対するRSVワクチンは、一部自治体で補助制度はあるが、現行は任意接種の立ち位置である。2025年10月現在、日本ではRSVワクチンとして、アブリスボ(ファイザー、bivalent preFワクチン)とアレックスビー(グラクソ・スミスクライン、単価preFワクチン)が承認されており、本研究はアブリスボの効果が評価されている(感染症情報提供サイト. 病原微生物検出情報[IASR] Vol. 46 p123-124: 2025年6月号.)。 本研究結果で、アブリスボを60歳以上に接種した場合、全原因心肺系入院は有意に減少(ワクチン有効性:9.9%、95%信頼区間:0.3~18.7%)したが、全原因心血管疾患入院での有意な減少は示せなかった。今回の結果からも、RSVワクチンの有効性は示されており、適応のある高齢者に対して引き続き接種を推奨すべきだろう。 また、心血管系疾患による入院抑制効果は統計学的有意に達しなかったが、全原因心肺系入院における絶対率減少(2.90/1,000人年)は呼吸器疾患入院単独の絶対率減少(1.87/1,000人年)より大きく、これは減少した入院患者の一部に心血管系疾患による入院患者が含まれている可能性も考えられた。それにもかかわらず、本研究で有意差が示せなかった理由としては、本試験が心血管アウトカムを主要評価項目として設計されておらず、心血管イベントの発生数も限られるため、統計学的検出力が十分でなかった可能性もある。 本研究の特徴は、気道感染症ワクチンによる全原因心血管疾患による入院予防効果を探索的に検討した点にある。RSV感染は、呼吸器炎症や酸素化障害を介して心不全増悪や急性冠症候群を誘発しうることが知られており(Woodruff RC, et al. JAMA Intern Med. 2024;184:602-611.)、感染予防を通じた2次的な心血管イベント抑制の可能性が期待されている。医療経済的にも、心血管イベント抑制が実証されれば費用対効果はさらに高まり、公的補助の拡大に向けた重要な根拠となるだろう。 RSV以外のCOVID-19やインフルエンザウイルスといった気道感染症も、高齢者において有害な心血管イベントを誘発することが指摘されている。今後は、感染症ワクチンの評価項目として、単なる感染予防・重症化予防にとどまらず、「感染を契機とする心血管イベント」を包括的に評価する研究設計が増えるかもしれない。 日本における高齢者に対するRSVワクチンという視点では、2025年4月から急性呼吸器感染症(ARI)が5類感染症として報告対象になった。日本における高齢者のRSV感染症の疾病負荷が明らかになれば、RSVワクチンの公的補助や接種勧奨が拡大されることも期待される。

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経口選択的心筋ミオシン阻害薬aficamtenは症候性の閉塞性肥大型心筋症患者においてβ遮断薬よりも臨床的に有効である(解説:原田和昌氏)

 Cohen、Braunwaldらの約60年前のエキスパートオピニオンと限定的なエビデンスにより、β遮断薬は症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)の第1選択の治療として使い続けられてきた。一方、経口選択的心筋ミオシン阻害薬であるaficamtenの上乗せは標準治療と比較して左室流出路圧較差を軽減し、運動耐容能を改善してHCMの症状を軽減することが第III相二重盲検比較試験であるSEQUOIA-HCM試験により示された。今回、スペイン・CIBERCVのGarcia-Pavia氏らMAPLE-HCM研究者たちは、HCMの治療においてβ遮断薬単剤投与とaficamtenの単剤投与との臨床的有益性を比較する目的で、国際共同第III相二重盲検ダブルダミー無作為化試験であるMAPLE-HCM試験を実施した。 年齢18~85歳、左室壁厚が15mm以上(疾患の原因となる遺伝子変異またはHCMの家族歴がある場合は13mm以上)のHCMと診断され、LVEFが60%以上、かつ安静時の左室流出路圧較差が30mmHg以上、またはバルサルバ法で誘発時の左室流出路圧較差が50mmHg以上の患者175例を世界71施設で登録した。ダブルダミー法により、被験者をaficamten(漸増)+プラセボ群、またはメトプロロール(漸増)+プラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、24週間投与した。aficamten群は88例、メトプロロール群は87例で、平均年齢58歳、58.3%が男性であった。ベースラインの安静時の平均左室流出路圧較差は47mmHg、誘発時の平均左室流出路圧較差は74mmHgで、平均LVEFは68%、NYHA心機能分類II群が70.3%を占めた。NT-proBNP値中央値は468pg/mLであった。 メトプロロール単剤に比べaficamten単剤は、主要エンドポイントである最高酸素摂取量の改善に関して優越性を示し、副次エンドポイントである症状の軽減や安静時および誘発時の左室流出路圧較差、NT-proBNP値、左房容積係数の改善と関連した。有害事象の発現状況は同程度であった。 現在のガイドラインではHCMに対してマバカムテンが推奨されているが、本試験の結果により、aficamtenはβ遮断薬中心の標準治療に代わって、HCMの第1選択ないしは単剤治療として推奨される可能性がある。逆に、β遮断薬はHCMの安静時および誘発時の左室流出路圧較差、NT-proBNP値、左房容積係数をいずれも改善しないことが明らかになった。もっとも、Braunwald先生らの名誉のために付け加えると、β遮断薬でKCCQ-CSSやNYHA心機能分類がわずかに改善する傾向はみられた。

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ESMO2025 レポート 消化器がん(下部消化器編)

レポーター紹介2025年10月17~21日に、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)がドイツ・ベルリンで開催され、後の実臨床を変えうる注目演題が複数報告された。国立がん研究センター東病院の坂東 英明氏が消化器がん領域における重要演題をピックアップし、結果を解説する。上部消化器編は こちら4.【大腸がん】CheckMate 8HW試験のupdate(#LBA29)切除不能MSI-H/dMMR大腸がんに対してNIVO+IPIの有効性を検証したランダム化第III相試験であるCheckMate 8HW試験。各施設で行われたMSI/MMR判定より中央判定でMSI-H/dMMRと判定された症例における解析では、NIVO+IPIの化学療法もしくはNIVO単剤と比較したPFSの有効性の差がより明らかになっていた。今回は、事前に計画されていた、中央判定でMSI-H/dMMRと判定された症例における1次治療におけるNIVO+IPI vs.NIVOのPFS最終解析と、すべての治療におけるNIVO+IPI vs.NIVOのOS最終解析の結果が報告された。1次治療におけるNIVO+IPI vs.NIVOのPFSは事前に設定されたp<0.0383の閾値に到達しなかったものの、HRは0.69(95%CI:0.48~0.99、p=0.0413)と臨床的に意義のある差を認めた。OSにおいてもすべての治療ラインにおけるNIVO+IPI vs.NIVOのOSはHR:0.61(95%CI:0.45~0.83)と良好な結果であったが、予測されていたイベントの69%しか発生しておらず、immatureな結果であった。いずれにしても、これらの結果はNIVO+IPIがMSI-H/dMMR大腸がんにおける標準治療であることを支持するものである。5.【大腸がん】BREAKWATER試験のctDNA解析(#729MO)切除不能BRAF V600E変異大腸がんの1次治療としてmFOLFOX6+エンコラフェニブ+セツキシマブ(EC)とECと化学療法+ベバシズマブの3群を比較したBREAKWATER試験では、すでに奏効率(ORR)、PFS、OSにおいて有効性が検証されている。今回は事前に設定されていたBRAFの変異アレル頻度(variant allele frequency:VAF)に基づくctDNA検査と組織検査の一致、治療効果、治療に対する耐性との関係を解析した。ctDNA検査はGuardant Infinityが用いられた。組織のBRAF変異とctDNAのBRAF変異は高い一致が認められ、tumor burden(転移巣の腫瘍径の総和)とctDNAの検出には関連性が認められた。ctDNAのVAFにかかわらず、mFOLFOX6+ECは他治療と比較して良好なORRとOSを認めた。経時的な測定ではmFOLFOX6+EC症例で最も速やかなVAFの低下とその後の治療経過でも低下の維持が認められ、2コース目Day15におけるctDNA未検出が良好なOSと関連するとともに、そのような症例がmFOLFOX6+EC症例で最も多く認められた。mFOLFOX6+EC症例はEC症例より長期の治療が可能であったにもかかわらず、治療終了時のKRAS、NRAS、MAP2K1変異、MET遺伝子増幅など耐性獲得変異などの検出がより少なかった。これらの結果は、mFOLFOX6+ECの標準治療としての地位をより強化するものである。6.【大腸がん】DESTINY-CRC02試験の最終解析(#737MO)切除不能HER2陽性大腸がんに対して抗HER2抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の有効性を検討した多施設共同第II相試験であるDESTINY-CRC02試験は、HER2陽性(IHC 3+またはIHC 2+/ISH+)122例を対象に、T-DXd 5.4mg/kgおよび6.4mg/kg(各40例、追加42例)を3週ごとに投与し、主要評価項目は独立中央判定による確定奏効率(confirmed ORR:cORR)であった。最終解析では、追跡期間中央値が5.4mg/kg群14.2ヵ月、6.4mg/kg群12.7ヵ月に延長され、主要評価項目のcORRはそれぞれ37.8%(95%CI:27.3~49.2)および27.5%(14.6~43.9)と、5.4mg/kg群でより高い奏効率を示した。PFSは中央値5.8ヵ月vs.5.5ヵ月、OSは15.9ヵ月(12.6~18.8)vs.19.7ヵ月(9.9~25.8)であり、奏効期間(duration of response:DOR)は両群とも5.5ヵ月であった。安全性では、Grade3以上の有害事象が5.4mg/kg群で42.2%、6.4mg/kg群で48.7%に認められ、間質性肺疾患(ILD)はそれぞれ9.6%(主にGrade1~2)、17.9%と用量依存的な増加を示したが、新たな安全性シグナルは確認されなかった。これらの結果から、T-DXd 5.4mg/kgが有効性と安全性のバランスに優れた推奨用量と結論付けられた。この結果は標準治療後のHER2陽性大腸がんにおけるT-DXdの有用性を確立するものである。7.【大腸がん】STELLAR-303試験(#LBA30)現時点でMSI-H/dMMR以外の転移を有する大腸がんに対して免疫チェックポイント阻害薬がOSを有意に改善した第III相試験は存在しない。zanzalintinibはTAM kinase、MET、VEGFレセプターを阻害するマルチキナーゼ阻害薬であり、STELLAR-001試験でzanzalintinibとアテゾリズマブ(Atezo)の併用で良好な治療効果と許容される毒性を認めていた。その結果に基づき、ランダム化非盲検第III相試験であるSTELLAR-303試験が前治療のある転移性大腸がんに対して実施された。MSI-H/dMMR以外の標準治療終了後の転移性大腸がん901例をzanzalintinib+Atezo群(451例)とレゴラフェニブ群(450例)に1:1に割り付け、主要評価項目は、ITT症例におけるOSと肝転移を持たない症例におけるOSとdual primaryとなっていた。ITT症例におけるOS中央値でzanzalintinib+Atezo群10.9ヵ月vs.レゴラフェニブ群9.4ヵ月(HR:0.80、95%CI:0.69~0.93、p=0.0045)と統計学的に有意な差を認めた。肝転移のない症例においても中間解析でOS中央値15.9ヵ月vs.12.7ヵ月(HR:0.79、95%CI:0.61~1.03、p=0.087)と良好な傾向が認められた。サブグループ解析でもすべてのサブグループで試験治療が良好な傾向であり、肝転移ありの症例でも良好な結果であった。PFSにおいても、中央値でzanzalintinib+Atezo群3.7ヵ月vs.レゴラフェニブ群2.0ヵ月(HR:0.68、95%CI:0.59~0.79)と良好な結果であった。安全性においてはGrade3の有害事象がzanzalintinib+Atezo群56%vs.レゴラフェニブ群33%であったが、治療関連死は両群ともにまれであった。zanzalintinib+AtezoはMSI-H/dMMR以外の転移性大腸がんにおいて今後の治療オプションとなりうるが、治療効果の上乗せは大きくなく(中央値で1.5ヵ月)、日本は参加していない試験であり、今後各国での承認および本邦における導入の動向が注目される。8.【結腸がん】DYNAMIC-III試験(#LBA9)StageIII切除後結腸がんの標準治療は、リスクに応じて3~6ヵ月のオキサリプラチンベースの術後補助化学療法である。DYNAMIC-III試験はctDNAの結果を基にStageIIIの結腸がんに対してctDNA-positive症例には治療のescalation(ASCO 2025で報告済み)、ctDNA-negative症例には治療のde-escalationを実施する治療の有効性を検証するランダム化第II/III相試験である。今回、ctDNA-negative症例に治療のde-escalationを実施するコホートの結果が報告された。ctDNAの情報を基に治療を実施する群(事前に治療を規定して、ctDNAの結果を基にde-escalation)と主治医判断の下に治療を実施する群(ctDNAの結果はブラインド)に1:1に割り付けた。主要評価項目は3年RFSであり、非劣性マージンを7.5%とし、750例が必要と算出された。ctDNA-negative症例が75%と想定され、トータルで1,002例がランダム化された。ctDNA-negative cohortでは752例が対象となり、3~6ヵ月のオキサリプラチンベースの治療が行われた症例がde-escalation群で34.8%、標準治療群で88.6%(RR:0.41、p<0.001)と有意に少なく、治療関連の入院、Grade3~4の治療関連の有害事象も有意に少ない結果であった。3年RFSはde-escalation群で85.3%、標準治療群で88.1%であり、非劣性マージンである7.5%の95%CIの下限を満たさない結果であった。臨床的なLow Risk(T1-3N1)とHigh Risk(T4 and/or N2)の比較では、High Risk群でde-escalation群がより不良な結果であった。ctDNA陰性例と陽性例の比較では、陰性→陽性群でctDNA量が少ない群の順番でRFSが良好であった。ctDNAの情報を基にしたde-escalationの戦略はさらなる検討が必要と結論付けられた。

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第267回 “VUCA”の時代、医局とどう向き合うか? キャリアの途中で迷う若手医師たちへ

若手医師のキャリア観の変化先日、リクルートメディカルキャリアによる「医師のキャリア観に関する実態調査」が公表されました。これによると、医師免許取得当初の理想像は「専門医として技術を高めたい」(48.0%)が最多、キャリアで重視しているのは全体では「収入の高さ」(29.6%)が最多でした。その一方で、20~40代では「家庭やプライベートとの両立」も高い割合を占め、生活と仕事の両立志向が強いことが明らかになっています。また、30代では結婚や育児といったライフステージの変化を契機にキャリアを見直す割合が突出しており、若手世代では早い段階からキャリアに対する迷いが生じていることも示されています。大学医局離れと新しいキャリア志向こうした背景の中、キャリア形成に伴い転勤や大学院進学、専門医資格の取得といったイベントを経て一人前になる過程で、プライベートにも大きな変化が訪れます。以前であれば、初期臨床研修の間に、先輩の勧めなどで大学医局へ入局、その後は医局の指示するタイミングで大学院への進学や学位審査、併せて専門医の取得といった流れも自然でした。しかし、近年は、最初から大学医局に入らないという選択をする医師が増えています。令和7年度の医師研修制度マッチング結果によると、2000年代に7割が大学病院で研修していたのに対し、現在では約65%が市中病院での研修を希望するようになりました。大学病院での研修を希望する医学生の割合は、低下の一途をたどり、そのためか「医局人事」に縛られないキャリアを求める傾向が強まっています。実際に筆者の身近にも大学医局未入局のまま後期臨床研修を修了して、学会に所属しながら一般病院で働いている医師がいますが、大学医局には現在も所属していません。専門医制度と自由診療への流れ新臨床研修制度の導入から21年、若手医師の中には市中病院から大学医局に入局しても、転勤先について交渉する機会がないまま希望しない病院への異動をきっかけに退局するなど、大学医局人事によってコントロールされるのを望まない医師が増えたのは当然だと思います。さらにコロナ禍の後に繰り返し報道される医療機関の経営悪化や、専門医機構による専門医研修義務化などが加わり、専門医制度に疑問に感じる医師も少なくありません。とくに最近は初期臨床研修後に専門医を取得せず、美容系に代表される自由診療に参入する医師が年間200人以上とされ、「直美」現象として知られるようになりました。形成外科や皮膚科の専門医としてのトレーニングを積む前に美容医療業界に進むケースも多く、美容医療に従事する医師たちがSNSで繰り返し情報発信をするのも「バラ色のキャリア」として映っているのかもしれません。美容医療ブームの裏側:自由診療のリスクしかし、実際の自由診療は競争が激しく、歩合制による給与体系であるなどプレッシャーも強い世界です。SNSで集客し、医師以外のスタッフが「カウンセリング」と称して施術内容を決定するなど、不適切な事例も報告されています。こうした問題を受け、厚生労働省は「美容医療の適切な実施に関する検討会」を設け取りまとめ案をもとに、先日「美容医療に関する取扱いについて」を各都道府県などに通知しました。内容については本稿の「第252回 「『直美』現象はいつまで続くか? 美容医療の現状と医師キャリアの未来」にも書いたように、通知ではカルテ記載や医療安全管理体制の整備、患者保護の徹底など、当然のことが明記されています。こうした医師として当たり前のことを学ばないうちに自由診療の世界に飛び込むと、医療事故や訴訟などでキャリアを失うリスクもあります。VUCA時代に生きる若手医師へさて、表題に挙げた“VUCA”とは、「Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った言葉で、将来予測が困難な時代を意味します。筆者が初期研修を受けた平成一桁の時代は、まだインターネットが発展途上であり、情報は紙媒体が中心でのんびりしたものでした。今はSNSの発達で医師向けの情報が洪水のように溢れ、若手医師もその影響を大きく受けています。医師としての労働環境は他職種と大きく異なり、大学医局に所属すれば研究とアルバイト生活の両立で経済的にも厳しい。そんな現実に直面して、キャリアに迷うのは当然のことかもしれません。大学医局という「居場所」の再評価筆者自身、大学院を卒業して循環器専門医として急性期病院に戻った後、せっかく大学院で学んだ経験をもとに新薬開発に関与したいと考え、いったん臨床を離れて大手製薬企業で約10年間、臨床開発の仕事に携わりました。その間も専門医資格の更新を続け、大学医局との交流が途絶えなかったのは、当時の医局長が筆者の考えを理解して、「退局」ではなく「医局人事から離れる」形にしてくれたおかげです。結果として、再び臨床に戻るときにも医局長や教授に連絡をとり、再就職もスムーズでした。もちろん大学医局については「閉鎖的」とか「古い」システムであり問題もまったくないわけではないのですが、相談できる上司や同僚の存在は大きな支えになります。今は女性医師も増え、以前よりも風通しが良くなり、相談できる環境も整いつつあります。キャリア形成に必要な「相談先」-失敗事例から学ぶ診療科によっては医局員の一斉退局などをきっかけに医局崩壊が話題になることもありますが、医師が自由診療に転じても、そこでの関係はライバル同士です。保険診療のように互いに支え合う関係は築きにくいのが現実です。今からちょうど20年前に筆者も将来に迷いを抱き、大学医局人事から離れて製薬企業に勤務し合計10年にわたりましたが、他業界での経験を経て、再び病院で勤務医として働く今、日々患者さんと向き合えることに喜びを感じています。振り返れば、当時の筆者のわがままを受け止め、相談に乗ってくれた上司や大学医局の先輩方に心から感謝しています。今迷いの中にいる医師の皆さまに問いますが、臨床研修を終えて社会に飛び出す前に、上司や先輩、研修同期に相談してみましたか? SNSで見かけた「高待遇」など美味しい話に飛びついていませんか?よく言われているように「うまい話には裏がある」のです。ここに事例を紹介します。ある若手医師が後期臨床研修の途中で、病院も大学医局も辞めて、在宅医療を行うために退職したいと申し出ました。次の転勤先の人事も決まりかける時期の出来事で、上司や医局長も含め大騒ぎになりました。それでも決心が固かったのか大学医局を退局、後期研修の病院も退職しました。その医師は5年目にして次の月からある自由診療のクリニックで院長になっていました。大手チェーンのクリニックなので順調にいくのかと思っていましたが、集客がうまくいかなかったのか、院長就任後わずか1年でそのクリニックは閉院となってしまいました。東京や大阪にも分院があるクリニックでしたが、その医師は結局、保険診療に戻りました。専門医ではないので、今も肩書きを何も持たない状態で当初と別の診療科で勤務医をされています。今後、地方の高齢者人口の増加とさらなる少子化により急性期病院を中心に病院同士の再編も進み、確実に医療を取り巻く環境は変化します。医師として長く続けるためのキャリアについては、外部のキャリアカウンセラーという名の転職サービスに相談する前に、まず先輩医師や指導医、大学医局に相談することをおすすめします。

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機内における急病人の発生頻度は?~84の航空会社での大規模調査

 2025年には約50億人が民間航空機を利用すると予測されている。航空機内での急病(機内医療イベント)は、医療資源が限られ、専門的な治療へのアクセスが遅れるという制約の中で対応が必要となる。米国・デューク大学のAlexandre T. Rotta氏、MedAireのPaulo M. Alves氏らの研究グループは、84の航空会社が参加した大規模な国際データを分析し、機内医療イベントの発生頻度や、航空機の目的地変更につながる要因などを明らかにした。JAMA Network Open誌2025年9月29日号に掲載。 本研究では、2022年1月1日~2023年12月31日の期間に地上支援センターへ報告された、航空会社84社7万7,790例の機内医療イベントを対象に観察コホート研究が実施された。 主な結果は以下のとおり。・全7万7,790例の機内医療イベントにおいて、その発生頻度は乗客100万人当たり39例、フライト212便当たり1例の割合であった。・急病になった乗客は、女性が54.4%、年齢中央値43歳(IQR 27~61)であった。・機内医療イベントによる航空機の目的地変更は1.7%(1,333例)発生した。・全イベントのうち312例(0.4%)が死亡し、年齢中央値69歳(IQR 55~79)であった。急性心疾患による死亡が276例(88.5%)を占め、これらの死亡例において心肺蘇生法が実施されていた。・医療経験を持つ乗客ボランティアは、32.9%(2万5,570例)の医療イベントを支援した。また、目的地変更となった1,333例のうち1,056例(79.2%)、死亡に至った312例のうち246例(78.9%)でボランティアの関与があった。・目的地変更の主な原因は、神経系疾患(542例、40.7%)と心血管系疾患(359例、26.9%)であった。・目的地変更のオッズが高かったのは、脳卒中疑い(調整オッズ比[aOR]:20.35、95%信頼区間[CI]:12.98~31.91)、急性心疾患(aOR:8.16、95%CI:6.38~10.42)、意識変容(aOR:6.96、95%CI:5.98~8.11)であった。・全イベントにおける主な医療介入として、酸素療法(40.8%)、非麻薬性鎮痛薬(15.2%)、制吐薬(14.9%)が使用された。 本研究により、機内医療イベントは従来考えられていたよりも頻繁に発生していることが示された。世界的に航空旅客数が増加し続ける中、機内医療イベントは今後も避けられない課題であり、著者らはこれらの知見が、航空会社の方針、乗務員の訓練、緊急時対応プロトコルの改善に役立つ可能性があると結論付けている。

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認知症/MCI患者に対する抗コリン薬の使用率は?

 認知機能が低下している高齢者は、抗コリン作用を有する薬剤の累積使用による副作用の影響を受けやすいとされている。しかし、このような患者における入院リスクに関する研究は依然として限られており、入院の具体的な原因に焦点が当てられていない場合が多い。マレーシア・University MalayaのRenuka Rahoo氏らは、軽度認知障害(MCI)または認知症の高齢者における抗コリン薬の負担とその役割、さらに入院リスクおよび入院理由との関連を調査した。Clinical Interventions in Aging誌2025年9月25日号の報告。 本後ろ向き研究は、2022年に物忘れ外来を受診したMCIまたは認知症の高齢者を対象に実施した。社会人口学的情報、併存疾患、認知機能評価、機能評価、神経精神症状、服薬歴に関するデータを電子カルテから収集した。抗コリン薬による負担は、抗コリン作用負荷(ACB)スコアを用いて評価した。ACBスコアと入院リスクとの関連を評価するため、Cox比例ハザード分析を用いた。入院の根本原因は、異なるACBスコア群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった高齢者は合計657例、平均年齢は80.66±7.39歳。・抗コリン薬の使用率は35.5%、ACBスコアの平均値は0.8±1.3であった。・ACBスコアが高い高齢者は、抗コリン薬による負担のない場合と比較し、介護施設入居、神経精神症状の発現、認知機能および身体機能の低下、処方薬数の増加との関連が認められた。・単変量解析では、ACBスコアが1~2の高齢者は、入院リスクが高かった(ハザード比:1.84、95%信頼区間:1.17~2.90)。しかし、交絡因子を調整後、この関連性は減少した。・入院理由は、肺炎(5.7%)が最も多く、次いで急性腎障害(3.8%)、せん妄(2.6%)、転倒(2.6%)であった。・とくに、重篤な心血管イベントまたは褥瘡感染で入院した高齢者は、ACBスコアが有意に高かった。 著者らは「MCIまたは認知症の高齢者の3人に1人は抗コリン薬を使用しており、これは健康状態を悪化させる可能性がある」とし「これらの知見は、この脆弱な集団における抗コリン薬の負担を最小限に抑えるために、定期的な服薬レビューと減薬戦略の重要性を強調している」と結論付けている。

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シフト勤務は腎結石のリスク増加と関連

 シフト勤務で働く人は、腎結石の発症リスクが高いようだ。新たな研究で、シフト勤務者では、非シフト勤務者と比較して腎結石の発症リスクが15~22%高く、この傾向は、特に50歳未満の人や肉体労働をほとんどあるいは全くしない人で顕著なことが示された。中国中山大学の疫学者であるYin Yang氏らによるこの研究の詳細は、「Mayo Clinic Proceedings」10月号に掲載された。 Yang氏らは、「この研究結果は、シフト勤務が腎結石発症のリスク因子として考慮されるべきであることを示唆するとともに、シフト勤務者の間で腎結石の発症予防を目的とした健康的なライフスタイルを推進する必要性を強調するものだ」と結論付けている。 腎臓結石は、尿に含まれているシュウ酸カルシウムなどの物質が腎臓内で塊となってできる硬組織である。腎結石が尿管に下降すると(尿管結石)、鋭い痛みや吐き気などを引き起こすことがある。 今回の研究でYang氏らは、UKバイオバンク参加者22万6,459人(平均年齢52.55±7.07歳)のデータを用いて、シフト勤務と腎結石発症との関連を検討した。対象者の16.13%(3万6,537人)がシフト勤務に従事していた。 中央値13.7年の追跡期間中に2,893人が腎結石を発症していた。解析の結果、シフト勤務者では非シフト勤務者と比較して腎結石の発症リスクが15%高いことが明らかになった(ハザード比1.15、95%信頼区間1.04〜1.26)。シフト勤務者の中で最もリスクが高いのは夜間勤務者であった(同1.22、1.08〜1.38)。媒介分析からは、シフト勤務と腎結石発症との関連を媒介する因子として、喫煙、睡眠時間、座位時間、BMI、水分摂取量のあることが示された。さらにサブグループ解析からは、シフト勤務と腎結石発症との関連は、50歳未満の人(同1.32、1.14〜1.52)と重度の肉体労働をほとんどあるいは全く行わない人(同1.27、1.09〜1.47)で顕著に高いことが示された。 この研究の付随論評を執筆した米メイヨー・クリニックの腎臓専門医Felix Knauf氏は、シフト勤務が人間の睡眠・覚醒サイクル(概日リズム)に与える影響も、腎結石リスクの一因となっている可能性が高いとの見方を示している。同氏は、「人の体内時計は、水分バランスや体内の化学反応を調節するシステムの制御に役立っている。したがって、シフト勤務が腎結石の形成を促進するという本研究で観察された影響は、少なくとも部分的には、シフト勤務が概日リズムを乱すことによる影響を反映していると言える」との考えを示し、「この研究結果は、勤務スケジュールの柔軟性の向上など、腎結石のリスク要因を改善するための取り組みを模索する必要があることを浮き彫りにしている」と指摘している。 Yang氏も、「シフト勤務者の健康的な生活習慣をサポートすることは、彼らの泌尿器の健康に大きな影響を与える可能性がある」としてKnauf氏に同意を示している。またYang氏は、「職場における健康促進活動には、体重管理、水分摂取量の増加、健康的な睡眠習慣、座位時間の減少、禁煙の重要性を強調する教育プログラムを組み込むことが有効だ。これらの介入は、シフト勤務が腎結石形成に及ぼす悪影響を軽減し、労働者の健康を改善する可能性を秘めている」と話している。

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45〜49歳の成人において局所限局期大腸がんの罹患率が上昇

 45〜49歳の成人において、局所限局期の大腸がん(CRC)の罹患率が2019年から2022年にかけて上昇し、CRCスクリーニング検査の受診率も2019年から2023年にかけて上昇したことを示す2報の研究結果が、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に8月4日掲載された。 米国がん協会(ACS)のElizabeth J. Schafer氏らは、55歳未満の成人(合計21万9,373人)におけるCRC罹患率の傾向を検討した。解析の結果、20〜39歳のCRC罹患率は、2004年以降一貫して年率1.6%で上昇し、40〜44歳および50〜54歳では、2012年以降年率2.0%~2.6%で上昇していた。45〜49歳では、2004〜2019年は年率1.1%増であったが、2019〜2022年は年率12.0%増に加速していた。この急増は局所限局期での診断の増加が主因であり、その罹患率は2019年が10万人当たり9.4人、2021年には11.7人、2022年には17.5人へと増加した。 一方、同協会のJessica Star氏らは、45〜49歳の成人における2019年から2023年にかけてのCRCスクリーニング受診率の変化を検討した。解析の結果、スクリーニング受診率は、2019年の20.8%、2021年の19.7%から、2023年には33.7%に上昇していた(2019年と比較した2023年の調整受診率比〔APR〕1.62)。より詳しくは、大腸内視鏡検査の実施率はそれぞれ19.5%、17.8%から27.7%に上昇し(APR 1.43)、便検査は1.3%、2.7%から7.1%に上昇していた(APR 5.37)。 Star氏は、「若年成人における大腸がんスクリーニング検査の受診率の上昇は好ましいことであり、早期診断の増加につながっている可能性がある。しかし道のりはまだ長い。45〜49歳における大腸がんのスクリーニング受診率は依然として理想的とは言えず、教育歴や保険加入状況が受診率上昇の公平性を妨げている」と述べている。

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質の低い睡眠は脳の老化を早める

 質の低い睡眠は脳の老化を加速させ、その一部は全身の炎症を介して引き起こされている可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。睡眠の質を5段階で評価するスコアが低い人ほど脳の老化が早いことが示されたという。カロリンスカ研究所(スウェーデン)の神経生物学、ケア科学、社会学分野のAbigail Dove氏らによるこの研究結果は、「eBioMedicine」に9月30日掲載された。 Dove氏は、「健康的な睡眠スコアが1点低下するごとに、脳年齢と実年齢の差は約6カ月拡大した。睡眠不足の人の脳は、脳年齢が実年齢より平均で1歳進んでいるようだ」と同研究所のニュースリリースの中で述べている。 この研究では、英国の一般住民を対象とした大規模コホート研究であるUKバイオバンクの参加者から抽出した2万7,500人(平均年齢54.7歳、女性54.0%)を対象に、健康的な睡眠パターンと脳年齢との関係、さらにその関係が全身の炎症によってどの程度媒介されるのかが検討された。参加者の睡眠の質は、健康的な睡眠の特徴(朝型、7〜8時間の睡眠時間、不眠がない、いびきをかかない、日中の過度な眠気がない)のスコア(0〜5点)を合計し、睡眠パターンを健康的(4〜5点)、中間(2〜3点)、不健康(0〜1点)の3群に分類した。試験開始時の睡眠パターンは、不健康が898人(3.3%)、中間が1万5,283人(55.6%)、健康的が1万1,319人だった。炎症レベルは、血液サンプルを用いて、複数の炎症マーカーを組み合わせた「INFLAスコア」で評価した。脳年齢は、平均8.9年間の追跡後に脳MRIからAIモデルで推定し、脳年齢から実年齢を引いた脳年齢ギャップ(BAG)を算出した。 健康的な睡眠スコアを連続変数として解析した結果、スコアが低いほどBAGが有意に大きく、健康的な睡眠スコアが1点低下するごとに脳年齢が実年齢より約0.48歳高くなる傾向が認められた。睡眠パターンを3群に分類して解析すると、睡眠パターンが「健康的」に分類された人と比較して、「中間」に分類された人ではBAGが0.24歳、「不健康」に分類された人では0.50歳、それぞれ有意に高いことが明らかになった。さらに媒介分析では、INFLAスコアがこれらの関連の6.81%と10.42%を媒介していることが示された。 Dove氏は、「われわれの研究結果は、睡眠不足は脳の老化を加速させる可能性があり、その根本原因の一つが炎症であることを示唆している。睡眠の質は調整可能であることから、より健康的な睡眠によって脳の老化の加速、ひいては認知機能の低下さえも防ぐことができる可能性がある」と話している。 Dove氏らは、睡眠不足は、主に睡眠中に働く脳の老廃物除去システムを阻害する可能性があると指摘する。その結果、アルツハイマー病と関連付けられているアミロイドβやタウタンパク質など、脳内の有害物質の濃度が上昇する可能性があるのだという。さらに、睡眠不足は心臓の健康に影響を及ぼし、それが脳の健康に悪影響を及ぼしている可能性も考えられるとしている。 ただし研究グループは、本研究において睡眠不足と脳の老化の関連は示されたものの、直接的な因果関係が証明されたわけではないと指摘している。

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花粉の飛散量が増えると自殺者が増える?

 季節性アレルギーは多くの人にとって厄介なものだが、それが命に関わる可能性があると考える人はほとんどいないだろう。しかし新たな研究で、花粉の飛散量の増加に伴い自殺者数が増加し、特に精神疾患患者への影響は大きいことが明らかにされた。米ミシガン大学社会調査研究所のJoelle Abramowitz氏らによるこの研究結果は、「Journal of Health Economics」12月号に掲載予定。Abramowitz氏らは、季節性アレルギーを原因とする身体的苦痛は睡眠を妨げ、精神的苦痛を増大させ、それが自殺増加の一因となっている可能性が高いと推測している。 Abramowitz氏は、「本研究期間中に、米国では約50万人が自殺した。この研究で新たに得られたデータに基づくと、この期間に花粉が最大1万2,000人の死亡の一因となった可能性があると推定された。これは、年間で約900人から1,200人の死亡に相当する」とミシガン大学のニュースリリースの中で述べている。 この研究でAbramowitz氏らは、米国の34の大都市圏に含まれる186の郡で、2006年から2018年の間に集計された自殺件数と毎日の花粉飛散量のデータを用いて、両者の関連を検討した。花粉の飛散レベルを4段階に分けて検討した結果、飛散レベルが上がるにつれて自殺者数も増加することが明らかになった。具体的には、飛散レベルが最も低い場合と比較して、2番目のレベルでは自殺者数は4.5%、3番目のレベルでは5.5%、4番目の最も高いレベルでは7.4%増加していた。精神疾患やその治療歴のある人では、花粉レベルが最も高い日には自殺者数が8.6%増加していた。さらに、花粉の飛散量が多い日には、Googleでの「アレルギー」「うつ症状」に関する検索が増加することも示された。 こうした結果を受けて研究グループは、「この結果は、季節性アレルギーを単なる厄介物として扱うのではなく、もっと真剣に受け止めるべきであることを示している」と述べている。また、Abramowitz氏は、「すでに脆弱な状態にある人では、小さな刺激でも大きな影響を及ぼす可能性がある」と話している。 Abramowitz氏らは、「花粉の飛散予測をより正確にし、季節性アレルギーがメンタルヘルスに与える影響について広く周知することで、人々が自身を守る手段を取れるようになり、命が救われる可能性がある」と述べている。同氏らは、気候変動が進み花粉の季節が長期化して激しくなるにつれて、このことはさらに重要になるだろうと指摘している。 Abramowitz氏は、「花粉などの小さな環境変化に対する反応やメンタルヘルス全般について、われわれは意識を高めるべきだ。本研究結果を踏まえると、医療従事者は患者のアレルギー歴を把握しておくべきだろう。アレルギーと自殺リスクの上昇との関連は、他の研究でも示されている。この研究がより個別化されたケアにつながり、最終的には命を救うことにつながることを願っている」と話している。

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歯みがきで命を守る?手術2週間前の口腔ケアが肺炎予防に効果

 高齢患者や基礎疾患を持つ患者においては、術後肺炎をはじめとする感染症対策が周術期管理上の大きな課題となる。今回、愛媛大学医学部附属病院の大規模後ろ向き解析で、術前2週間以上前からの体系的な口腔ケアが術後肺炎の発症抑制および入院期間短縮に有効であることが示された。研究は愛媛大学医学部附属病院総合診療サポートセンターの古田久美子氏、廣岡昌史氏らによるもので、詳細は9月3日付けで「PLOS One」に掲載された。 近年、周術期管理や麻酔技術の進歩により、高齢者や重篤な基礎疾患を持つ患者でも侵襲的手術が可能となった。その一方で、合併症管理や入院期間の短縮は依然として課題である。術後合併症の中でも肺炎は死亡率や医療費増大と関連し、特に重要視される。口腔ケアは臨床で広く行われ、病原菌抑制を通じて全身感染症の予防にも有効とされる。しかし、既存研究は対象集団が限られ、最適な開始時期は明確でない。このような背景を踏まえ、著者らは術前口腔ケアについて、感染源除去や細菌管理、歯の脱落防止のために少なくとも2週間の実施が必要であると仮説を立てた。そして、手術2週間以上前からの口腔ケアが術後肺炎予防に有効かを検証した。 本研究では、2019年4月~2023年3月の間に愛媛大学医学部附属病院で手術および術後管理を受けた成人患者1,806人を対象とした。患者は口腔ケア介入の時期に基づき、手術の少なくとも2週間前に体系的な口腔ケアを受けた群(早期介入群)と、手術の2週間以内に口腔ケアを受けた、もしくは口腔ケアを受けなかった群(後期介入群)の2群に分類した。主要評価項目は、院内感染症のDPCコードを用いて特定された術後感染症(術後肺炎、誤嚥性肺炎、手術部位感染症、敗血症など)の発生率とした。副次評価項目は術後入院期間および入院費用であった。選択バイアスを最小化するために、傾向スコアマッチング(PSM)および逆確率重み付け(IPTW)が用いられた。 解析対象1,806人のうち、257人が早期介入群、1,549人が後期介入群だった。年齢、性別、手術の種類など14の共変量を用いたPSMの結果、253組のマッチペアが特定された。PSMおよびIPTW解析の結果、早期介入群では、後期介入群に比べて術後肺炎の発生率が有意に低いことが示された(PSM解析:リスク差 −5.08%、95%CI −8.19~−1.97%、P=0.001;IPTW解析:リスク差 −3.61%、95%CI −4.53~−2.68%、P<0.001)。 さらに、IPTW解析では早期介入群の入院期間は後期介入群より短く、平均で2.55日短縮されていた(95%CI −4.66~−0.45日、P=0.018)。医療費に関しても早期介入群で平均5,385円の減少が認められた(95%CI -10,445~-325円、P=0.037)。PSM解析では同様の傾向が認められたものの、統計的に有意ではなかった。 著者らは、「本研究の結果は、手術の少なくとも2週間前から体系的な術前口腔ケアを実施することで、術後肺炎の発症を有意に減少させ、入院期間を短縮できることを示している。さまざまな統計解析手法でも一貫した結果が得られたことから、標準化された術前口腔ケアプロトコルの導入は、手術成績の改善に有用な戦略となり得る」と述べている。 本研究の限界については、測定されていない交絡因子が存在する可能性があること、単一の施設で実施されたため、研究結果の一般化には限界があることなどを挙げている。

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左心耳閉鎖術?(解説:後藤信哉氏)

 心房細動の症例は、長期間の観察期間内の脳卒中リスクが高い。心房細動による血流うっ滞が血栓形成に寄与している可能性はある。血流うっ滞による血栓形成は、うっ滞が最も重症になる心耳から始まる可能性がある。そこで左心耳を閉じてしまえば心房細動の脳梗塞予防が可能かもしれないとの仮説につながる。 カテーテルアブレーションを受ければ左房の内膜側に損傷ができるので血栓イベントリスクが上昇する。一時的に抗凝固薬を使用するのは血栓イベント予防に有効と考えられる。左心耳閉鎖が有効であるためには、アブレーションにより傷ついた内膜からの血栓が左心耳にて成長している必要がある。本研究では重篤な出血イベント発現リスクを仮説検証のエンドポイントにしている。全身の凝固機能が低下する抗凝固薬使用時には出血イベントリスクが増加する現実に、本研究でも抗凝固療法群の重篤な出血イベント発現リスクは18.1%と左心耳閉鎖群の8.5%よりも高かった。この結果は予想通りである。 問題の血栓イベントリスクは、36ヵ月の総死亡・脳卒中・全身塞栓症にて定義された。有効性エンドポイント発現率は5.3%と5.8%で両群間に差がなかった。抗凝固薬を使用すると重篤な出血イベントリスクは増える。しかし、現実世界では多くの症例が抗凝固介入を受けている。総死亡・脳卒中・全身塞栓症にて定義される血栓イベントリスクは、抗凝固薬使用時の重篤な出血イベントリスクよりもはるかに低い。左心耳閉塞が血栓イベントリスクに及ぼす効果は未知である。心房細動に対する過剰な抗凝固薬投与の反省の時代が来るかもしれない。

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第35回 特別編 ネクソムラボ特別企画『どうすればよかったか?』上映会を開催

統合失調症を発症した実姉とその家族を20年にわたって記録した映画『どうすればよかったか?』*の上映会が2025年9月21日、東京慈恵会医科大学で開催された。千葉大学病院次世代医療構想センターセンター長 特任教授の吉村 健佑氏と浜松医科大学教授の大磯 義一郎氏が共同代表を務める、「次世代社会医学オープンラボNexSoM Labo(ネクソムラボ)」が企画し、東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座教授の越智 小枝氏の協力のもと開催された。*映画『どうすればよかったか?』ドキュメンタリー監督の藤野 知明氏が、統合失調症の症状が現れた実姉と、彼女を精神科の受診から遠ざけた両親の姿を20年にわたって自ら記録したドキュメンタリー。NexSoM Laboは、コロナ禍が一段落したことを契機に2023年度に立ち上がった組織であり、全国の医療系学生・若手医療従事者が社会医学に触れる機会を提供している。第1回のイベントではオンライン双方向参加型のセミナーを、第2回のイベントではグループワークを通した学生の交流を行い、今回の上映会が第3回目のイベントとなった。第2回イベントの様子精神疾患患者へのバイアスを映画で考える今回の上映会は3部構成で開催された。第1部では映画の上映、第2部では共同代表で精神科医でもある吉村氏と映画『どうすればよかったか?』監督の藤野 知明氏による対談企画、第3部では懇親会が行われた。対談企画では、吉村氏から統合失調症治療の歴史と現状、精神疾患に関する法的制度の解説が行われた。また、藤野監督からは、映画の各シーンにおける制作の意図、当時の思いなどが語られた。対談企画中の様子(左から司会を務めた浜松医科大学3年の高木氏、共同代表の吉村氏、監督の藤野氏)【吉村氏による解説】統合失調症の無治療期間が長くなるほど、症状改善が難しくなる。1952年、世界初の抗精神薬であるクロルプロマジンが登場して以降、統合失調症が治療可能な疾患へと変遷していくが、第1世代薬が効かない患者も一定数いる上にパーキンソン症状などの副作用がみられた。1996年以降、非定型抗精神病薬(第2世代)が開発され、現在ではLAI(持続性注射製剤)や部分作動薬(アリピプラゾール)、難治性統合失調症治療薬(クロザピン)など、多くの選択肢があり治療効果が上がっている。しかし、いまだに統合失調症患者に対する偏見は根強く社会復帰の障害となっている。とくに精神科医以外の医師や看護師からの統合失調症の患者に対する偏見が強く、一般医療従事者の約4割が「統合失調症患者は危険である」というステレオタイプのイメージを持っている。また、医学生の多くが「統合失調症患者は社会生活に適応できない」といった否定的なイメージを持っている。【対談企画でのトピック】実家を離れることとなった1992年、「このままでは何も残らない」という思いから帰省ごとに家族の姿を記録するようになった。人々が受け入れがたい事実に直面した際の反応を映しているものであり、周りの人々つまり実弟である監督や両親が中心となった映画である。統合失調症の姉をもつ家族の状況を映画として世の中に出し、統合失調症と取り巻く家族について理解を深める機会を作ったことが、「どうすればよかったか?」に対する問ではないだろうか。(吉村氏)参加した学生からは、以下の感想が寄せられた。家族とは何なのか、家族外には言えない秘密を抱えているかもしれない当事者と家族を支援する在り方とは何なのか考えさせられた」(千葉大4年)答えのない問いをディスカッションしながら考えることができた」(浜松医大3年)ネクソムラボでは、第4回イベントとして、2026年春に能登でのフィールドワークを企画しているという。ネクソムラボ学生代表で浜松医科大学3年の高木 柊哉氏は「能登の復興状況を実際に見ることで、災害医療の現状や課題を肌で感じる機会になるよう企画をしている」と語っている。関連リンクNexSoM Labo『どうすればよかったか?』公式ページ

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ESMO2025 レポート 消化器がん(上部消化器編)

レポーター紹介2025年10月17~21日に、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)がドイツ・ベルリンで開催され、後の実臨床を変えうる注目演題が複数報告された。国立がん研究センター東病院の坂東 英明氏が消化器がん領域における重要演題をピックアップし、結果を解説する。下部消化器編は こちら1.【食道がん】SKYSCRAPER-07試験(#2094O)食道扁平上皮がんにおいて、切除不能症例および切除可能症例の術後治療としての免疫チェックポイント阻害薬は、すでに本邦で薬事承認されている。一方、切除不能局所進行症例(遠隔転移はないが、局所進行のため切除できない症例)の標準治療は根治的な化学放射線療法であるが、免疫チェックポイント阻害薬を追加することによる有効性の上乗せはまだ検証されていなかった。TIGITは活性化T細胞、NK細胞、制御性T細胞に発現する共抑制因子というものであり、その阻害抗体薬であるtiragolumab(Tira)はPD-L1抗体であるアテゾリズマブ(Atezo)との併用で治療効果が期待されていた。ランダム化二重盲検第III相試験であるSKYSCRAPER-07試験では、StageII~IVAおよび鎖骨上リンパ節転移のみのIVBの食道扁平上皮がん症例を、根治的化学放射線療法の後にTira+Atezo、Atezo+プラセボ、プラセボ+プラセボに1:1:1に割り付けて、1年間の維持療法を実施した。主要評価項目はTira+Atezo群とプラセボ群の主治医が判断した無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)と全生存期間(overall survival:OS)、Atezo+プラセボ群とプラセボ群のOSであり、Tira+Atezo群とプラセボ群の主治医が判断したPFS→OS→Atezo+プラセボ群とプラセボ群のOS、の順番で検定を行う計画であった。結果は、残念ながらTira+Atezo群とプラセボ群の主治医判定のPFSが中央値20.8ヵ月vs.16.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.82、p=0.0942)、OSが中央値38.6ヵ月vs.36.4ヵ月(HR:0.91、p=0.4772)と有効性を検証することができなかった。一方でAtezo+プラセボ群とプラセボ群では、主治医判定のPFSが中央値29.1ヵ月vs.16.6ヵ月(HR:0.74、p=0.0113)、OSが中央値未到達vs.36.4ヵ月(HR:0.69、p=0.0085)と有意な治療効果の上乗せを認めた。Tiraの追加による免疫関連有害事象の増加が認められたが、許容される範囲であった。根治的放射線化学療法後のAtezoによる治療効果の上乗せが認められたが、残念ながら統計学的に検証することはできなかった。TIGITの阻害はdetrimentalな効果があることが示唆され、TIGIT阻害薬のこの対象における開発はしばらく進まなそうである。一方でAtezo単剤の有効性は示されており、実臨床での使用が強く望まれる。2.【胃がん】MATTERHORN試験(#LBA81)切除可能胃・胃食道接合部がんを対象としたFLOT+デュルバルマブとFLOT+プラセボを比較したランダム化二重盲検第III相試験であるMATTERHORN試験は、すでに主要評価項目である無イベント生存期間(event-free survival:EFS)が有意に改善したことが報告されている。OSについても中間解析で良好な結果が報告されているが、今回、OSの最終解析結果が報告された。併せて病理学的な効果とEFSの関係についても報告された。3年OSが68.6%vs.61.9%と改善を認め、両群ともに中央値に到達していなかった(HR:0.78、p=0.021)が、事前に設定されたP値(p<0.0499)に到達しており、OSにおいても有効性が検証された。サブグループ解析でも一貫して効果が認められ、PD-L1発現にかかわらず治療効果の上乗せが認められた。病理学的完全奏効(pCR)、主要病理学的奏効(MPR)が得られた症例は一貫してEFSが良好である一方で、ypNにかかわらず、EFSの上乗せが認められた。今後本邦でも、デュルバルマブが胃がん周術期治療に組み込まれる見込みである。本邦においてはFLOT療法の臨床現場での導入が課題である。3.【胃がん】FORTITUDE-101試験(#LBA10)進行胃・胃食道接合部がんにおいてFGFR2bが高発現していることが報告されており、bemarituzumabはFGFR2bを標的とした抗体薬である。第II相試験であるFIGHT試験でbemarituzumab+mFOLFOX6はFGFR2b高発現のHER2陰性胃・胃食道接合部がんにおいて良好な治療効果が認められており、今回第III相試験であるFORTITUDE-101試験の結果が報告された。本試験では、FGFR2bが免疫染色で2+/3+と高発現した(後に≧10%発現の症例に適格性変更)HER2陰性の前治療のない胃・胃食道接合部がんを対象に、bemarituzumab+mFOLFOX6(全体で275例、FGFR2b≧10%が159例)vs.プラセボ+mFOLFOX6(全体で267例、FGFR2b≧10%が165例)に1:1で割り付けが行われた。主要評価項目はFGFR2b≧10%症例におけるOSであり、観察期間中央値11.8ヵ月でbemarituzumab+mFOLFOX6群で中央値17.9ヵ月vs.プラセボ+mFOLFOX6で中央値12.5ヵ月(HR:0.61、p=0.005)と中間評価の時点で優れた結果であった。PFSにおいてもbemarituzumab+mFOLFOX6群で中央値8.6ヵ月vs.プラセボ+mFOLFOX6で中央値6.7ヵ月(HR:0.71、p=0.019)と優れた結果である一方、奏効割合では45.9%vs.44.8%と両群で大きな差を認めなかった。観察期間中央値19.4ヵ月のフォローアップの結果では、bemarituzumab+mFOLFOX6群で中央値14.5ヵ月vs.プラセボ+mFOLFOX6で中央値13.2ヵ月、HR:0.82(0.62~1.08)で治療効果の上乗せが検証できなかった。安全性においては視力障害、角膜障害、貧血、好中球減少、吐き気、corneal epithelial defect(角膜上皮障害)、ドライアイなどが高く認められたが、全体的には許容されるものであった。今後、FOLFOX+ニボルマブにbemarituzumabの上乗せを検証するFORTITUDE-102の結果が報告され、bemarituzumabの有効性と安全性の情報がさらに充実することが期待される。

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第286回 医師も誤解している?マダニによるSFTSの傾向と対策

INDEXマダニによるSFTSの発生率、過去最高に冬も要注意!?SFTSに対するアンコンシャスバイアス治療薬への期待度マダニによるSFTSの発生率、過去最高に今年はダニ媒介感染症の重症熱性血小板減少症候群(略称・SFTS)の患者報告が過去最高を記録している。国立健康危機管理研究機構が発表している感染症発生動向調査週報1)の最新データとなる2025年第42週(10月13~19日)時点では、従来の過去最多である2023年の134例を上回る174例の患者が発生。また、今年はこれまで患者報告がなかった北海道、秋田県、栃木県、茨城県でも孤発的な事例が報告されている。改めて基礎知識を整理すると、SFTSは日本では2013年に初確認されたダニが媒介するSFTSウイルスを原因とする新興の人畜共通感染症である。潜伏期間は6~14日で、主な症状は発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)、頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹。特徴的な点は、病名でもわかるように検査値での顕著な血小板減少(10万/mm3未満)である。そしてSFTSで何よりも恐ろしいのは致死率が10~30%で、国内に常在する感染症の中では劇症型溶血性レンサ球菌感染症の致死率約30%に次ぐことだ。徐々に患者報告数も報告地域も拡大する中、一般人、医療者ともに対岸の火事とは言えなくなっている。以前の本連載で新型コロナウイルス感染症が今も高齢者で猛威を振るっていることを記事化したが、この取材に応じてくれた岡山大学病院感染症内科准教授の萩谷 英大氏との取材時間は約2時間におよんだ。実はこのうちの約半分は新型コロナから脱線し、萩谷氏が日常診療で接するSFTSの話となった。これがきっかけで私が理事を務めるNPO法人・日本医学ジャーナリスト協会でも10月10日に萩谷氏にSFTSをテーマに講演をしてもらったが、その内容の中にはかなり示唆に富むものが多かったので、今回はその内容を紹介したい。冬も要注意!?講演では、萩谷氏が2013~22年までに国内報告されたSFTS803例の解析結果を紹介した。それによると、この10年間の都道府県別の報告増加率のトップ5は順に三重県、島根県、岡山県、大分県、熊本県。患者発生率と環境要因との関連を解析した結果では、西日本で有意差があった環境要因は農地面積と農業人口であり、2022年までの発生件数を2ヵ月単位で分析すると、発生ピークは5~6月で、流行期は5~10月だった。ここまでは医療者もおおむね違和感はなく受け入れられるだろう。しかし、今回の萩谷氏の講演ではSFTSの意外な一面も“明らか”にされた。まず、前出の解析結果のように一般的にSFTSはマダニの活動期である春から秋にかけて発生する感染症だと考えられているが、実は真冬でもSFTSは発生しているのだ。たとえば直近の2024年の感染症発生動向調査週報によると、第2週(1月8~14日)に島根県と山口県で各1例、年末の第51週(12月16~22日)に長崎県で1例が報告されている。春から秋の時期と比べれば数は少ないが、こと西日本では通年で警戒しなければならない感染症なのである。また、講演の中で紹介された和歌山県での野生(野生化)動物のSFTSウイルス抗体陽性率調査の結果によると、アライグマ、アナグマ、シカ、ノウサギでは30%以上、ハクビシンで20%以上にものぼる。一般的な理解は、こうした動物を吸血したマダニが動物の移動とともに人間の生活圏に近い藪や草むらなどで落下して定着し、そこに入り込んだ人間がこうしたマダニに咬まれることで患者が発生しているというもの。これはおおむね正しいだろうが、萩谷氏が講演内で提示した自験例2例はこの理解の範疇をやや超えるものだった。SFTSに対するアンコンシャスバイアス2例のうち1例は同じマダニが媒介する日本紅斑熱の患者、もう1例がSFTSである。前者の患者は岡山市中心部在住、後者の患者は岡山県西部在住で、ともに問診ではマダニに咬まれるような野山に入った形跡はなかったという。しかし、よくよく話してみると、日本紅斑熱の患者は「ちょうどそのころお墓参りに行きました…」と語り、聞き出してみると墓地のある場所はダニ媒介感染症の好発地域、そしてSFTSの患者は自宅住所を地図上で検索してみると、その自宅が山に隣接する形で存在していた。つまり実際の推定感染地点は、私たちが一見SFTSと無縁と思っている場所にも点在しているのである。ちなみに萩谷氏によれば、西日本地域でSFTSの診療経験が一定以上ある医師にとっては、風評被害などが考えられるため公には明らかにしないものの、周辺のダニ媒介感染症好発地域はほぼ頭に入っており、患者の居住地や移動先などの地名を聞くと、ある程度はSFTSの可能性が判別できるという。また、前出の野生動物のSFTS抗体陽性率のデータ提示の際、萩谷氏が併せて提示したのが複数のマダニに咬まれた鳥の写真。マダニは哺乳類だけでなく、鳥類や爬虫類まで吸血することは知られている。このことから北海道の孤発例については「渡り鳥などにくっついたマダニが本州から北海道に移動して上陸したのだろうと個人的には想像している」と話した。これらを総合すると、SFTSに対して私たちがおぼろげに抱く「マダニの活動が活発な春から秋にかけて野山に入ることで感染しやすく、西日本に多い感染症」というイメージは、半ばアンコンシャスバイアスになっていることを自覚しなければならない。治療薬への期待度一方、過去の本連載でも触れたが、SFTSについては2024年に抗ウイルス薬のファビピラビル(商品名:アビガン)が承認された。この点について萩谷氏は「ウェルカムな部分はあるものの、本当に良いのか?とも思っている」との見解を示した。その理由は▽薬価が1錠3万9,862円で10日間の標準治療(90錠)の薬剤費総額が約360万円▽これまでの臨床試験が単群で投与群の致死率が医師主導治験で17.4%、企業治験で13%にとどまる、からだ。萩谷氏は「今回の承認は既存の対症治療での致死率が最大30%で、それよりも低い致死率を達成したことでアビガンが承認されたと理解している。しかし、十分とは言えないエビデンスの中で360万円の治療を全例に行う気持ちにはなれないのが正直なところ」と話した。いずれにせよ患者報告が拡大する中で、今回の萩谷氏の話はSFTSが思った以上に厄介な疾患であり、決して油断が許されない現状があることを何よりも雄弁に物語っている。 参考 1) 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト:感染症発生動向調査週報一覧

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日本人における気圧の変化と片頭痛との関係

 獨協医科大学の辰元 宗人氏らは、日本の健康保険請求データベースの大規模データと気象データを照合し、気圧変化の大きい季節が片頭痛発症に及ぼす影響を調査するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。Frontiers in Neurology誌2025年9月10日号の報告。 本研究では、JMDC請求データと日本の気象データを用いて分析した。片頭痛の診断歴を有する患者を対象とし、片頭痛と最初に診断された医療機関の所在地に基づいて8つの地域サブグループに分類した。片頭痛発症までの期間(各季節の初日からトリプタンが処方されるまでの期間と定義)を、気圧変化が最も大きい季節と最も小さい季節で比較した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、2万6,777例。・8つの地域全体において、夏季の気圧変化が最も小さかった。・一方、7つの地域では冬季に最も大きな気圧変化がみられ、1つの地域では秋季に最も大きな気圧変化がみられた。・いずれの地域においても、気圧変化が最も大きかった季節と最も小さかった季節の間で生存曲線に差は認められなかった。・Cox回帰分析では、性別と年齢を含む最小調整モデルにおいて、気圧変化が最も大きかった季節のハザード比は0.970(95%信頼区間[CI]:0.951〜0.989)であった。・一方、8つの共変量を含む完全調整モデルでは、気圧変化が最も大きかった季節のハザード比は1.294(95%CI:1.007〜1.663)であった。 著者らは「本研究では、気圧変化の大きい季節と片頭痛発症との間に有意な関連は認められなかった。今後の研究では、より詳細な分析を行うために、都道府県レベルを超えて、より詳細な居住地データを検討する必要がある」としている。

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がん治療のICI、コロナワクチン接種でOS改善か/ESMO2025

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、多くのがん患者の生存期間を延長するが、抗腫瘍免疫応答が抑制されている患者への効果は限定的である。現在、個別化mRNAがんワクチンが開発されており、ICIへの感受性を高めることが知られているが、製造のコストや時間の課題がある。そのようななか、非腫瘍関連抗原をコードするmRNAワクチンも抗腫瘍免疫を誘導するという発見が報告されている。そこで、Adam J. Grippin氏(米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンもICIへの感受性を高めるという仮説を立て、後ろ向き研究を実施した。その結果、ICI投与前後100日以内にCOVID-19 mRNAワクチン接種を受けた非小細胞肺がん(NSCLC)患者および悪性黒色腫患者は、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)が改善した。本研究結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表され、Nature誌オンライン版2025年10月22日号に掲載された1)。 本発表では、切除不能StageIIIまたはStageIVのNSCLC患者884例および転移を有する悪性黒色腫患者210例を対象とし、ICI初回投与の前後100日以内のCOVID-19 mRNAワクチン接種の有無で分類して解析した結果が報告された。また、COVID-19 mRNAワクチン接種が抗腫瘍免疫応答を増強させ得るメカニズムについて、前臨床モデル(マウス)を用いて検討した結果とその考察も紹介された。 主な結果は以下のとおり。【後ろ向きコホート研究】・NSCLC患者(接種群180例、未接種群704例)において、ICI初回投与の前後100日以内にCOVID-19 mRNAワクチンを接種した群は、StageやPD-L1発現状況にかかわらずOSが延長した。各集団のハザード比(HR)、95%信頼区間(CI)は以下のとおり(全体およびStage別の解析は調整HRを示す)。 全体:0.51、0.37~0.71 StageIII:0.37、0.16~0.89 StageIV:0.52、0.37~0.74 TPS 1%未満:0.53、0.36~0.78 TPS 1~49%:0.48、0.31~0.76 TPS 50%以上:0.55、0.34~0.87・悪性黒色腫患者(接種群43例、未接種群167例)においても、ICI初回投与の前後100日以内にCOVID-19 mRNAワクチンを接種した群は、OS(調整HR:0.37、95%CI:0.18~0.74)およびPFS(同:0.63、0.40~0.98)が延長した。・NSCLC患者において、生検前100日未満にCOVID-19 mRNAワクチンを接種した群は、未接種群、100日後以降接種群と比較してPD-L1 TPS平均値が高かった(31%vs.25%vs.22%)。同様に、生検前100日未満にCOVID-19 mRNAワクチンを接種した群はPD-L1 TPS 50%以上の割合も高かった(36%vs.28%vs.25%)。【前臨床モデル】・免疫療法抵抗性NSCLCモデルマウス(Lewis lung carcinoma)と免疫療法抵抗性悪性黒色腫モデルマウス(B16F0)において、COVID-19 mRNAワクチンとICIの併用は、ICI単独と比較して腫瘍体積を縮小した。・COVID-19 mRNAワクチンは、IFN-αの産生を増加させた。・悪性黒色腫モデルマウスにおいて、IFN-αを阻害するとCOVID-19 mRNAワクチンとICIの併用の効果は消失した。・COVID-19 mRNAワクチンは、複数の腫瘍関連抗原について、腫瘍反応性T細胞を誘導した。・COVID-19 mRNAワクチン接種によりCD8陽性T細胞が増加し、腫瘍におけるPD-L1発現も増加した。 COVID-19 mRNAワクチン接種が抗腫瘍免疫応答を増強させ得るメカニズムについて、Grippin氏は「免疫学的にcoldな腫瘍に対して、COVID-19 mRNAワクチンを接種するとIFN-αが急増し、腫瘍局所での自然免疫が活性化される。その活性化により腫瘍反応性T細胞が誘導され、これらが腫瘍に浸潤して腫瘍細胞を攻撃すると、腫瘍はT細胞応答を抑制するためにPD-L1の発現を増加させる。そこで、COVID-19 mRNAワクチンとの併用でICIを投与し、PD-1/PD-L1の相互作用を阻害することで、患者の生存期間の改善が得られるというメカニズムが示された」とまとめた。 なお、今回示された効果を検証するため、無作為化比較試験「Universal Immunization to Fortify Immunotherapy Efficacy and Response(UNIFIER)試験」が計画されている。

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