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ダイエット食の無料提供と週1回のカウンセリング、肥満女性の減量に効果

市販ダイエット食の無料提供と週1回のカウンセリングが、肥満女性の長期減量に効果があることが、無作為化対照試験の結果、明らかにされた。減量を始めて2年後の体重減少が、対照群と比べて4kg以上の差があったという。米国カリフォルニア大学医学校サンディエゴ校のCheryl L. Rock氏らが、約450人の肥満女性を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月27日号(オンライン版2010年10月9日号)で発表した。なおこれまで、市販ダイエット食品の肥満予防効果について、コントロール試験で検証されたことはほとんどなかったという。対面または電話でスタッフによる週一回のコンタクト、市販ダイエット食の無料提供Rock氏らは2007年11月~2010年4月にかけて、18~69歳(平均年齢44歳)で、BMI値が25~40の女性442人を対象に2年間の追跡試験を行った。研究グループは被験者を無作為に3群に分け、そのうち2群には、毎週一回、教育を受けたスタッフによる短時間のコンタクトを、医療センターにおいて対面で、あるいは電話で提供した。また、市販ダイエット食をそれぞれに無料で提供し、加えて、電話や電子メール、ウェブサイトなどを通じたフォローアップも行った。さらに、2年の間に2回のカウンセリングを無料で提供した。残り1群は対照群として、2年間で2回の減量に関する無料カウンセリングを提供し、毎月フォローアップを行ったのみだった。24ヵ月後、対面コンタクト群では7.4kg、電話コンタクト群では6.2kgの減量効果24ヵ月後にデータが得られた被験者数は、407人だった(被験者の92%)。医療センターで毎週対面によるコンタクトをとった群では、試験開始時点と比べ24ヵ月後の体重減少幅は7.4kg(95%信頼区間:6.1~8.7)で、減少率は7.9%(同:6.5~9.3)だった。電話で毎週コンタクトをとった群では、同体重減少幅は6.2kg(同:4.9~7.6)、減少率は6.8%(同:5.2~8.4)だった。一方、対照群の同体重減少幅は2.0kg(同:0.6~3.3)、減少率は2.1%(同:0.7~3.5)と、介入を行ったニつの群に比べ有意に低かった(p

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イギリスの全国規模の電子カルテシステム導入、大幅な遅れの原因とは?

全国規模の電子カルテシステム導入による医療改革の実現には、長期にわたる複雑な反復過程を経る必要があり、システムおよび実現戦略の双方について柔軟性と地域適応性が求められることが、イギリス・エジンバラ大学のAnn Robertson氏らが実施した中間的なデータ解析で判明した。イギリス政府は、2010年中の始動を目指し、国家プログラムとして、168の急性期病院と73の精神保健トラストを通じて中央で統括する標準化された詳細な電子カルテの導入を進めているが、スケジュールが大幅に遅れているという。BMJ誌2010年10月23日号(オンライン版2010年9月2日号)掲載の報告。イギリスの2次医療における電子カルテの導入状況を評価研究グループは、イギリスの2次医療における詳細な電子カルテの実現および導入状況を調査し、その評価を行った。調査の対象は、電子カルテの早期実現に向けて中間的なデータの集積とその解析を完了したイギリス国民医療保健サービス(NHS)の5つの急性期病院と精神保健トラストであった。評価用のデータセットは、半構造的面接、書類と現場記録、観察記録、量的データであった。量的データは、社会技術的コーディングマトリックスを用い、データから浮上した新たなテーマを統合して、テーマ別に解析した。“top-down”でも“bottom-up”でもなく、“middle-out”アプローチを結果、現状として、病院の電子カルテ用アプリケーションは開発途上であり、その実現は当初の想定よりもはるかに遅れていること、概略的な項目から詳細な項目へ移行するよう標準化されたアプローチ(“top-down”アプローチ)には、各地域の活性化の支援に向けて病院トラストが要望する、より多くのバリエーションや地域独自の選択肢を許容するような展開が求められることなどが明らかになった。また、かなりの遅れや欲求不満があるとはいえ、NHSの医師も含め、電子カルテへの支持は強く、現時点で電子カルテの全国的導入を難しくしているのは、政治的、財政的な要因と受け止められていることもうかがえた。面接調査では、2次医療におけるNHSの診療記録サービスの契約を長期にわたり中央で交渉することに起因する様々な悪影響、特にNHSトラスト自身がこれらの契約の当事者ではないために生じる問題点が明らかとなった。これらの問題には、個々の利害関係者間の複雑な意思疎通経路、非現実的な機器配置スケジュール、遅延、国および地方のNHSの優先事項の変更に対し迅速に対応できないアプリケーションなどが含まれる。データの解析からは、以下の点が示唆された。(1)病院用電子カルテを実現し、政府の管理と増大する地方自治を統合するには、“middle-out”アプローチ(“top-down”でも“bottom-up”でもなく、中程から上下両方向へ展開するアプローチ)が支持される、(2)詳細な電子カルテを、地方の保健コミュニティと共有できる範囲にとどめる。著者は、「高い関心を集め、財政投資や支援を受けた早期導入施設の経験から、全国規模の電子カルテ導入による医療改革の実現には、長期にわたる複雑な反復過程を経る必要があり、システムおよび実現戦略の双方について柔軟性と地域適応性が求められることがわかった。個々の事項により適合し、より迅速な対応が可能なアプローチが新たに出現しており、このアプローチはNHSが認識しているニーズとよりよく連携しつつあり、これをさらに推し進めれば、臨床的に有用な電子カルテシステムが実現する可能性が高くなると考えられる」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

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自民族密度の高い地域への居住が、イギリスの少数民族の精神障害を軽減

イギリスに住む少数民族においては、自民族密度の高い地域に居住することで、一般的な精神障害が低減し、社会的支援の改善や差別体験の減少がもたらされることが、イギリスKing’s College London精神医学研究所のJayati Das-Munshi氏らの研究で示された。差別の経験は精神的健康に有害な影響を及ぼすのに対し、社会的支援やネットワークは保護的に作用することが示されている。自分と同じ民族の密度が高い地域で生活する人々は人種差別を経験する機会が減少し、このような生活環境は、イギリスに居住する少数民族にとって精神的、身体的な健康リスクの低減につながる可能性があるという。BMJ誌2010年10月23日号(オンライン版2010年10月21日号)掲載の報告。国の調査データを多層的に解析本研究は以下の問題の評価を目的に行われた。(1)同じ民族の人々の居住率が高い地域で生活することが、一般的な精神障害に対し保護的に作用し、差別の経験を低減して社会的支援を改善する、(2)民族密度の保護効果は、人種差別の経験の低減や社会的支援の改善によってもたらされる。イギリスの892地域から無作為に抽出された16~74歳の4,281人(アイルランド系、黒人カリブ系、インド系、パキスタン系、バングラディシュ系、白人イギリス系)を対象に、国の調査データに関して多層ロジスティック回帰モデルを用いた解析を行った。一般的精神障害は構造的面接で評価し、差別や社会的支援、ネットワークは構造的質問票で評価した。民族密度の保護効果は完全には説明できない民族密度が高い地域のほとんどが最貧地区であったが、交絡因子を補正すると、自民族密度が10%増加するごとに、一般的な精神障害のリスクが全少数民族(オッズ比:0.94、95%信頼区間:0.89~0.99、p=0.02)、アイルランド系(同:0.21、0.06~0.74、p=0.01)、バングラディシュ系(同:0.75、0.62~0.91、p=0.005)において有意に低減するとのエビデンスが得られた。いくつかの人種では、自民族密度が高い地域に住むことで差別体験の報告が減少し、社会的支援やネットワークが改善されたが、これらの因子が民族密度の保護効果をもたらすことはなかった。著者は、「イギリスに住む少数民族では、自民族密度の高い地域への居住による一般的精神障害に対する保護効果が確認された。自民族密度が高い地域で生活する人々は、社会的支援が改善され、人種差別体験が減少する可能性が示唆されるが、これらの関連性によって密度効果が完全に説明できるわけではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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世界初、ビタミンE浸漬浸透人工股関節ライナー第二世代が日本発売

バイオメット・ジャパン株式会社は1日、ビタミンE浸漬(しんせき)/浸透(しんとう)によって、高強度を保ったまま、抗酸化性、低摩耗を獲得した第二世代ハイリークロスリンクポリエチレン(以下HXLPE)採用の人工股関節ライナー「E1 HIP リングロックライナー」を、同日より日本に導入すると発表した。この製品は、世界初のビタミンEを含んだ人工股関節ライナーであり、摩耗を抑制する材料として期待されているという。E1 Antioxidant Infused Technology(ビタミンE浸漬/浸透技術)とは、1990年代後半から開発されたHXLPEを新しい世代=第二世代として進化させ、確立したもので、以下のような特徴がある。 ・HXLPE 人工股関節ライナーを、ビタミンE液に浸漬。・インプラント内の酸化反応分子(フリーラジカル)が酸素と結合する前にビタミンEと結合させ、酸化を防止、ポリエチレンの劣化を予防。・人工股関節に求められる「機械的強度」「耐摩耗性」「抗酸化性」に加え、「持続的抗酸化性」を獲得。・従来15年~20年と言われてきた人工股関節の耐用年数を、向上させる技術として注目される。同社では、第二世代HXLPE採用において、ビタミンEの安全性はもとより、強度テスト、耐摩耗性テスト、抗酸化性テストなど様々なテストにおいて、第一世代HXLPEよりも良好な結果を獲得していることを確認したため、今回、日本市場に導入したとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.biomet.co.jp/information/2010/11/post_1.html

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「法研 六訂版 家庭医学大全科」CD-ROM版を新発売

ロゴヴィスタ株式会社は1日、パソコン用電子辞典「LogoVista電子辞典シリーズ」の新作として、Windows版および、Macintosh版『法研 六訂版 家庭医学大全科』を、2010年11月26日より発売することを発表した。パソコンショップ、カメラ系量販店、大手書店、ダウンロードサイトなどで販売するとのこと。たとえば家で急病人が出たとき、どう対処すればよいのか。同製品は、2,600を超える病気やケガについて600名以上の医療専門家が執筆した最新の家庭医学事典となっている。総項目数は5,000を超え、その圧倒的な情報量で病気やケガのことがわかりやすく解説されている。また、EBMを反映した正しい治療法について、家庭向けではあるものの質的にも高い水準を保ちながら、理解しやすいよう図表を多用するなどの工夫がされており、病名や病状、部位や年齢など、あらゆる角度から検索できるつくりになっている。詳細はプレスリリースへhttp://www.logovista.co.jp/LVERP/information/news/2010-1101-daizenka6.html

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冠動脈心疾患のリスク評価におけるSNPに基づく遺伝的リスクスコアの有用性

冠動脈心疾患に関連する13の一塩基多型(SNP)に基づく遺伝的リスクスコアを用いれば、初回冠動脈心疾患の発症リスクが約70%増大しているヨーロッパ系人種の20%を同定可能なことが、フィンランド・ヘルシンキ大学のSamuli Ripatti氏らが行った症例対照研究とプロスペクティブ・コホート研究の結果から明らかとなった。冠動脈心疾患の原因は複雑であり、ライフスタイルや遺伝的因子の影響が大きく、早発性の冠動脈心疾患の家族歴は独立のリスク因子である。症例対照研究のデザインを用いた全ゲノム関連試験では、冠動脈心疾患、心筋梗塞あるいはこの双方と関連する13の遺伝子領域のSNPが同定されている。Lancet誌2010年10月23日号掲載の報告。13のSNPと冠動脈心疾患の関連を評価研究グループは、プロスペクティブなコホート研究によって、SNPと冠動脈心疾患の関連の外的妥当性を確立し、より正確にリスクを予測するための症例対照研究を実施した。最近発見された13のSNPと冠動脈心疾患の関連について検討するために、フィンランドとスウェーデンにおいて症例対照研究(冠動脈心疾患患者3,829例および非冠動脈心疾患の対照4万8,897人)およびプロスペクティブなコホート研究(心血管疾患のない3万725人)を行った。13のSNPを多座遺伝的リスクスコア(multilocus genetic risk score)でモデル化し、Cox比例ハザードモデルを用いて遺伝的リスクスコアと冠動脈心疾患発症の関連を推定した。症例対照研究では、ロジスティック回帰モデルを用いて個々のSNPと遺伝的リスクスコアの五分位数の関連について解析した。遺伝的リスクスコアと初回冠動脈心疾患の発症が相関コホート研究では、フォローアップ期間中央値10.7年の間に1,264人が初回冠動脈心疾患を発症した。遺伝的リスクスコアは初回冠動脈心疾患の発症と相関を示した。遺伝的リスクスコアの五分位数が最低の群と比較すると、最高の群は従来のリスクスコアで補正したモデルにおける冠動脈心疾患のリスクが1.66倍に上昇していた(95%信頼区間:1.35~2.04、線形傾向に対するp=0.00000000073)。家族歴で補正しても、これらの推定値に変化はなかった。遺伝的リスクスコアは従来のリスク因子や家族歴で補正してもC indexを改善せず(p=0.19)、net reclassification improvementにも影響を及ぼさなかった(2.2%、p=0.18)。しかし、integrated discrimination indexに対してはわずかな影響が確認された(0.004、p=0.0006)。症例対照研究とプロスペクティブ・コホート研究の結果は類似していた。著者は、「冠動脈心疾患に関連する13のSNPに基づく遺伝的リスクスコアを用いれば、初回冠動脈心疾患の発症リスクが約70%増大しているヨーロッパ系人種の20%を同定可能である。これら13のSNPの臨床使用の可能性については明らかではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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ADHDの遺伝学的なエビデンスが全ゲノム解析で示された

注意欠陥・多動性障害(ADHD)では巨大なコピー数多型(copy number variant:CNV)が増加していることを示す遺伝学的なエビデンスが、イギリス・カーディフ大学のNigel M Williams氏らによる全ゲノム解析によってもたらされた。ADHDは高い遺伝性を示すが、特異的な感受性遺伝子は同定されていないため、疾患ではなく主に社会的構成概念であるとする主張も消えていない。ADHDに類似の神経発達障害では、CNVとして知られる巨大で希少な染色体の欠失や複製の関連がすでに確認されているという。Lancet誌2010年10月23日号(オンライン版2010年9月30日号)掲載の報告。ADHD患児410例と対照1,156人の全ゲノム解析を実施研究グループは、ADHDの発症におけるCNVの影響を評価し、同定されたCNVがすでに自閉症や統合失調症で同定されている遺伝子座に及ぼす影響について検討した。ADHD患児410例および1958 British Birth Cohortから人種をマッチさせて抽出した対照1,156人について全ゲノム解析を行った。地域の小児精神病および小児科外来クリニックから、5~17歳の白人イギリス人家系の子どもで、ADHDあるいは多動性障害の診断基準を満たすが、統合失調症や自閉症ではない患児が登録された。ADHD群および対照群の一塩基多型(SNP)の遺伝子型を二つのアレイを用いて決定した。CNV解析は二つのアレイに共通のSNPに限定し、高品質のデータを持つサンプルだけを対象とした。ADHD群のCNVはcomparative genomic hybridization(CGH)法で確定した。全ゲノムにおける巨大で(>500kb)、希少な(集団当たりの頻度<1%)CNVの負荷は、サンプルごとのCNV数の平均値に従って評価し、有意性の評価はpermutation法で行った。同定された全CNVおよび自閉症や統合失調症との関連が確認されている20の遺伝子座の確定された領域において、特異的な関連性の検査を行った。得られた結果につき、アイスランド人のAHDH患児825例および対照3万5,243人で検証した。ADHDは単なる社会的構成概念ではないすべての解析用のデータが得られたのは、ADHD群366例および対照群1,047人であった。巨大で希少なCNVは、ADHD群で57が、対照群では78が同定され、その頻度はADHD群が対照群よりも有意に多かった(0.156 vs. 0.075、p=0.000089)。このCNVの増加は、特に知能障害がみられる患児で大きかった(0.424、p=0.000002)が、このような障害がない場合でも有意差が認められた(0.125、p=0.0077)。ADHD群では、すでに統合失調症で同定されている染色体16p13.11の過剰な複製がみられ(複数の検査で補正後のp=0.0008)、アイスランド人のサンプルでも同様の知見が得られた(p=0.031)。ADHD群で同定されたCNVは、自閉症および統合失調症の双方で報告されている遺伝子座で有意に増強されていた(それぞれp=0.0095、p=0.010)。著者は、「本研究により、ADHDでは巨大なCNVが増加していることを示す遺伝学的なエビデンスがもたらされた。これは、ADHDが単なる社会的構成概念ではないことを示唆する」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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第2回 減塩 2010 (2) 1日6gの減塩をあきらめない

前回に引き続き、第33回日本高血圧学会総会からの演題から減塩を中心にレポートする。患者の食塩摂取量を簡便に把握する方法とともに、減塩の具体的な方策についてもまだ手探り状態といえる。本総会においても画期的な試みの成果が発表された。「減塩食はまずい」からの脱却 ―第33回日本高血圧学会総会 メディカル・コメディカル合同シンポジウムより―今回の総会においても、医師自らが率先して減塩することを意図し、昨年の総会に引き続き、ランチョンセミナーで「減塩・ヘルシー弁当」が提供された。今回は福岡女子大学 早渕仁美氏らが食品加工業者10社と連携し、減塩素材を利用することで食塩量を2gに抑えた減塩弁当である。1日目のランチョンセミナーで、減塩弁当(食塩相当量:1.06g)と、それと見た目が同じ対照弁当(食塩相当量:1.73g)が、減塩弁当がどちらかは告げられずに提供され、「どちらが減塩と思うか」など参加者にアンケートの記入を依頼した。翌日のシンポジウムにおいて早渕氏よりアンケート結果(n=776)が発表された。その結果、62.1%の回答者が正答したが、自信をもって回答したのは正答回答者の51.0%であった。正答回答者において減塩弁当を対照弁当より好むと回答した割合が多く、「減塩食=まずい」というイメージ払拭の第一歩となった。早渕氏は今回の結果を踏まえ、減塩調味料や減塩加工食品を用いることで、無理なく美味しい減塩料理をつくることが可能であると述べた。日本人はしょうゆと漬物から3割の塩分をとっている ―同シンポジウムより―結核予防会の奥田奈賀子氏は、国際共同研究INTERMAPのデータを用いて日本人の食塩摂取量の寄与割合が大きい食品を検討した。その結果、高塩分加工食品36.9%(漬物10.9%、塩干物8.1%、みそ汁7.1%ほか)、高塩分調味料27.1%(しょうゆ17.2%、塩8.6%ほか)の摂取が食塩摂取全体の6割程度を占めた。高塩分摂取者の特徴としては、日本食の高塩分加工食品の摂取が多く、米飯や野菜を煮物やおひたしで食べる量が多いなど、和食中心の食事傾向が認められた。一方、低塩分摂取者では、パン、乳・乳製品などの洋風の食材の摂取が多かった。奥田氏は高塩分加工食品の摂取を控えるとともに、ご飯に合う洋風のおかずを勧めることも減塩指導に有効であると考えを示した。地域のレストランを巻き込んで美味しく減塩 ―同シンポジウムより―日下医院の日下美穂氏は2008年より広島県呉市での減塩食普及に向けての地域ぐるみの取り組みついて講演した。日下氏は、呉市内のレストランで美味しさにこだわった減塩低カロリー食を各店1点以上メニューに入れてもらうという「こだわりのヘルシーグルメダイエットレストラン」という企画を立ち上げ、活動している。企画への参加基準として食塩2~3g、カロリー400~600kcalなどを設け、栄養士が基準を満たしているかを計算・評価する仕組みをとっている。また、民間のタウン情報誌、インターネットで参加店を検索できるなど市民、患者への広報にも力を入れている。日下医院に通院している生活習慣病患者388例に意識調査をした結果、84%が「以前に比べ、塩分を控えるようになった」と回答し、328例の高血圧患者の平均血圧、目標達成率は、企画開始前に比べ、有意に改善したことも発表した。日下氏はこの企画を継続させる上で大切な事は料理人のモチベーションを保つことであり、参加店に何度も足を運ぶ努力も必要であることも述べた。現在、広島市をはじめとする広島県下の地域でも実施中であり、興味を示す他の都道府県も現れ始めているという。減塩モニタによる食塩排泄量の自己測定と減塩教室は減塩に効果的 ―同ポスター発表より―西九州大学の安武健一郎氏は、健常者に対する2回にわたる減塩教室と食塩排泄量の自己測定が、高塩分食品の摂取頻度を低下させ、食塩排泄量の最大値と変動幅を低下させることを発表した。健常者50名に対し、ベースライン時に2週間にわたって減塩モニタによる食塩排泄量の自己測定と、高塩分食品(漬物、汁物、干物、塩蔵品、麺類、外食)の摂取頻度チェックを依頼した。また、2、4ヵ月後に管理栄養士による減塩教室を実施し、減塩教室の翌日から2週間自己測定と高塩分食品の摂取頻度チェックを依頼した。その結果、2ヵ月目で外食、4ヵ月目で漬物、汁物の摂取頻度が有意に減少し、4ヵ月目の食塩排泄量の最大値、変動幅が有意に減少した。排泄量の平均値に有意な減少は認められなかったが、55歳以上の群では4ヵ月には有意に減少した。各地で食品加工企業や地域飲食店を巻き込んだ減塩への取り組みが少しずつ行われてきているが、医師個人で取り組める減塩指導の方法や支援ツールを作成するなど具体的な方策を確立していく必要がある。最後に減塩への取り組むベネフィットの大きさについて米国のシミュレーション結果があるので紹介したい。3g/日の減塩効果は年間10%の冠動脈疾患の発症が抑制できる ― NEJM誌 2010年2月18日号より―それでは減塩への取り組みがもたらすベネフィットはどれくらいか?米国では1日3gの減塩がもたらす心血管イベント、全死因死亡、医療費への影響をシミュレーションモデルにより予測している。これによると、たとえ1日1gの減塩を2010年から10年かかってでも達成できさえすれば、すべての高血圧患者への降圧薬治療よりも費用対効果が大きいことを予測した。減塩量がわずかであっても、心血管イベントの発症および医療費を抑制することが期待できそうだ。この1年の間に、減塩のベネフィットを支持するエビデンスが得られ、減塩の重要性がより一層高まってきている。それを日常臨床においてどう実行するか。今、簡便な食塩摂取量の把握と、効果的な減塩指導法が求められている。第3回は、「微量アルブミン尿」に関してレポートする。(ケアネット 藤原 健次)

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抗凝固療法のマネジメント、自己測定管理 vs 外来管理

ワルファリン(商品名:ワーファリンなど)抗凝固療法の効果を臨床で十分に享受するためのマネジメント方法について、有望な戦略と示唆されていた自宅で測定できる携帯型指穿刺装置を使った自己測定管理が、外来で行う質の高い静脈血漿検査による測定管理にまさらなかったことが報告された。全米28の退役軍人病院から約2,900人が参加した、Durham退役軍人病院のDavid B. Matchar氏らによる前向き無作為化非盲検試験「THINRS」からの報告で、NEJM誌2010年10月21日号で掲載された。これまで報告されていたほど、初発の脳卒中・大出血・死亡までの期間について、毎週行う自己測定管理が毎月の外来管理と比べ長くはなかったという。2,922例を無作為化し、初発重大イベントまでの期間を評価自己測定管理は、外来管理よりも測定頻度や患者の治療参加を高めることができ、臨床転帰が改善される可能性があるとされる。そこでTHINRS(The Home International Normalized Ratio Study)では、2003年8月~2008年5月に、人工心臓弁置換または心房細動発症のためワルファリン投与を受けており、POCT(Point of Care Testing)のINR測定機器を使う能力があった2,922例を、自宅での自己測定管理群と外来での質の高い測定管理群に無作為化し追跡した。主要エンドポイントは、初発重大イベント(脳卒中、大出血エピソード、死亡)までの期間。被験者は2.0~4.75年、合計8,730人・年が追跡された。自己測定管理群、重大イベントリスク低下の優越性なし、ただし……結果、自己測定管理群の初発重大イベントまでの期間は、外来測定管理群と比べて有意に長くはなかった(ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.75~1.04、P=0.14)。両群の臨床転帰の発生率は、自己測定管理群で軽度の出血エピソードが多かったことを除けば、同程度だった。ただ自己測定管理群は、追跡期間中のINRの目標値範囲内達成について、わずかだが有意な改善点として示された(両群間の絶対差:3.8ポイント、P

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妊婦へのDHAサプリメント、産後うつや子どもの発達に効果みられず

妊婦に対し、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含むサプリメントを投与しても、産後うつ病の改善や、子どもの認知・言語能力の発達には効果がみられないことが明らかにされた。オーストラリアWomen’s and Children’s Health Research InstituteのMaria Makrides氏らが、約2,400人の妊婦を対象に行った、無作為化二重盲検試験「DHA to Optimize Mother Infant Outcome」(DOMInO)の結果によるもので、JAMA誌2010年10月20日号で発表されている。産後6ヵ月までの母親のうつ状態と、生後18ヵ月の子どもの発育状態を評価研究グループは、2005年10月31日~2008年1月11日にかけて、オーストラリア国内5ヵ所の医療機関で、単体児妊娠21週未満の妊婦2,399人について試験を開始した。また、生まれた子ども726人についても、2009年12月16日まで追跡した。被験者妊婦は無作為に2群に分けられ、一方にはDHA 800mg/日を含む魚油サプリメントを、もう一方にはDHAを含まない野菜油カプセルを投与した。産後6週目と6ヵ月後に、エジンバラ産後うつ病評価スケール(EPDS)で、うつ状態を評価。生まれた子どもについては、ベイレイ乳幼児発達スケール(Bayley Scales of Infant and Toddler Development)で、生後18ヵ月に認知・言語能力を評価した。登録された妊婦は、96.7%が試験を完了した。産後のうつ病リスクや子どもの認知・言語能力スケールに、両群で有意差なし結果、産後6ヵ月にEPDSスコアが12超だった人の割合は、DHA群9.67%、対照群11.19%で、両群に有意差はみられなかった(相対リスク:0.85、95%信頼区間:0.70~1.02、p=0.09)。子どもの認知能力スケール総合スコアについても、両群間の補正後平均値格差は、0.01(95%信頼区間:-1.36~1.37、p=0.99)と有意差がなかった。言語能力スケール総合スコアの両群間の補正後平均値格差も、-1.42(同:-3.07~0.22、p=0.09)で有意差がなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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閉経後女性へのホルモン補充療法、乳がん死亡リスクも増加の傾向

閉経後女性への、エストロゲン+プロゲスチンのホルモン補充療法は、侵襲性乳がんやリンパ節転移陽性のリスクが増加すること、乳がんによる死亡のリスクも同併用療法とともに増加する傾向にあることが報告された。米国UCLAメディカルセンターのRowan T. Chlebowski氏らが、約1万7,000人の女性をおよそ11年追跡した「Women’s Health Initiative」(WHI)から明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月20日号で発表した。すでに発表された追跡期間約8年のWHIの結果で、エストロゲン+プロゲスチン投与により乳がんリスクが増加することは明らかになっていたが、乳がん死亡率については未報告だった。閉経後女性1万6,608人を平均11年追跡WHIは、米国内40ヵ所の医療機関を通じ、50~79歳の閉経後の女性で子宮摘出術を受けていない1万6,608人を対象に試験が行われた。被験者は無作為に2群に分けられ、一方には結合型ウマエストロゲン0.625mg/日+酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mg/日の合剤(Prempro)を投与し、もう一方の群にはプラセボが投与された。追跡は、当初2005年3月31日まで予定されていたが、それ以降、当初被験者の83%にあたる生存者1万2,788人について、2009年8月14日まで追跡した。追跡期間の平均値は、11.0年(標準偏差:2.7年)だった。プラセボ群に対し乳がん死亡1.96倍、乳がん発症後総死亡率1.57倍その結果、侵襲性の乳がんを発症したのは、プラセボ群では293人(年率0.34%)だったのに対し、エストロゲン+プロゲスチン群では385人(年率0.42%)と、1.25倍だった(95%信頼区間:1.07~1.46、p=0.004)。両群の乳がんは、組織学的所見、グレードについての差はみられなかったものの、リンパ節転移陽性となったのは、プラセボ群では43人(16.2%)だったのに対し、エストロゲン+プロゲスチン群では81人(23.7%)と、1.78倍に上った(95%信頼区間:1.23~2.58、p=0.03)。また乳がんによる死亡も、プラセボ群が12人(年率0.01%)に対し、エストロゲン+プロゲスチン群が25人(年率0.03%)と、1.96倍だった(同:1.00~4.04、p=0.049)。さらに乳がん発症後の総死亡率も、プラセボ群が31人(年率0.03%)に対し、エストロゲン+プロゲスチン群が51人(年率0.05%)と、1.57倍だった(同:1.01~2.48、p=0.045)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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新生児聴覚スクリーニング、生後2週間までに実施が発達アウトカム良好

新生児聴覚スクリーニングは、生後2週間までに行った方が、生後9ヵ月に実施するよりも、永久小児聴覚障害児の3~5歳時点での発達アウトカムが良好であることが、オランダ・ライデン大学メディカルセンターのAnna M. H. Korver氏らが、約57万人の小児を対象に行った試験で明らかになった。新生児聴覚スクリーニングは世界各国で実施されているが、同プログラム実施時期を支持する確固たるエビデンスはほとんどない。JAMA誌2010年10月20日号発表より。新生児スクリーニング実施の約34万人、生後9ヵ月スクリーニング実施の約23万人を追跡オランダでは、2002~2006年の間に、国内65地域で、生後9ヵ月時点で行う聴覚スクリーニングを、生後2週間までに行う新生児聴覚スクリーニングに切り替えが行われた。そこで研究グループは、オランダで2003~2005年に生まれた小児全員を対象に、2009年末まで追跡調査を行った。新生児聴覚スクリーニングを実施する地域で生まれた子どもは33万5,560児、生後9ヵ月聴覚スクリーニングを実施する地域で生まれたのは23万4,826児だった。追跡期間中、永久小児聴覚障害と診断されたのは、新生児スクリーニング群263児(1000児当たり0.78児)、9ヵ月スクリーニング群171児(同0.73児)だった。そのうち両群計301児(69.4%)を対象に解析が行われた。両群間には主要なコミュニケーション法や教育方法について違いはなかった。発達アウトカム、QOLともに新生児スクリーニング群のスコアが良好新生児スクリーニング群の80児、9ヵ月スクリーニング群の70児について、3~5歳時点での発達アウトカムについて評価を行ったところ、多変量解析の結果、「Child Development Inventory」により評価した全般的な発達アウトカムスコアは、新生児スクリーニング群の方が、9ヵ月スクリーニング群よりも良好だった(p=0.003)。具体的には、社会的発達については、両群の指数の差は8.8(95%信頼区間:0.8~16.7)、粗大運動に関する指数の差は9.1(同:1.1~17.1)と、いずれも新生児スクリーニング群の方が良好だった。また、生活の質(QOL)スコアも、両群の差は5.3(同:1.7~8.9)と、新生児スクリーニング群の方が良好だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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高血圧2010 第1回 減塩 2010 (1)患者さんの食塩摂取量を知る

第33回日本高血圧学会総会が10月15~17日に開催された。前回の開催以降、高血圧の領域では、レニン阻害薬、 ARBとCa拮抗薬の配合剤が発売され、これら薬剤の処方のあり方が話題になりがちではあり、本総会でもそれらを主眼としたセッションが開かれた。それらは他の情報ソースに任せるとして、ケアネットでは前回の総会が開催された 2009年10月からこの1年の間に影響力が大きい研究結果が発表された「減塩」「微量アルブミン尿」「降圧目標」の3つにテーマを絞り、学会での発表内容とこの1年間のトピックスをシリーズで採り上げたいと思う。第1回、第2回は「減塩」を採り上げる。現状:「1日6g以下」の減塩を指示している医師は3割未満 ―第33回日本高血圧学会総会より―久留米大学心臓・血管内科の甲斐久史氏らは「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」が実地医家における有用度および診療実態に関するアンケート調査結果を発表した。対象は福岡県内科医会と佐賀県医師会内科医部会の会員2,415 名に郵送し、896名から回答を得た(回答率37.1%)。1日の食塩摂取量をどのくらいに指導しているかという質問に対して、 JSH2009で推奨している「6g以下」と回答したのは30%未満であったの対し、「7g以下」が約17% 、「10g以下」が約16% 、「指示していない」が約23%にのぼった。+5g/日の食塩摂取により脳卒中が23%増える ―BMJ誌2009年12月5日号より―減塩の重要性を支持する新しい知見が昨年12月に得られた。この報告によると、塩分摂取量が多い群は、少ない群よりも脳卒中のリスクが有意に高く(相対リスク:1.23、95% 信頼区間:1.06-1.43 、p=0.007)、心血管疾患のリスクは有意差がないものの高い傾向がみられた(相対リスク:1.14 、95% 信頼区間:0.99-1.32 、p=0.07)。これは過去 40年に実施されたプロスペクティブ試験13件、19コホートをメタ解析し、17万7,025人(正常血圧者も含む、87,809 名は日本人)のデータから得られた結果で、1日の塩分摂取量が 5g多いと脳卒中のリスクが23%、心血管疾患のリスクが17%高まることを示した。弊社が実施したアンケートにおいても高血圧診療における減塩に関する重要度は他の生活習慣修正に比べて群を抜いて高い。高血圧診療において減塩が重要であると認識されているにもかかわらず、減塩指導が難しいのはなぜか。減塩指導の第一歩である食塩摂取量の評価にその一因がある。実際に患者さんの食塩摂取量を把握するのに難渋している先生方も多いと思われる。本総会でも、より簡便に、それであって正確に食塩摂取量を評価する方法について発表された。起床後第2尿は、24時間蓄尿に近い信頼性で食塩摂取量を評価できる ―第33回日本高血圧学会総会ポスター発表より―岩手県立中央病院の大本晃弘氏は、起床から臥位にならずに採取した「起床後第2尿」が簡便かつ「24時間蓄尿」に近い信頼性が得られることはすでに報告されているが、「随時尿」では食塩摂取量を過少評価することを発表した。減塩下における男性(n=53)の食塩摂取量を「24時間蓄尿」「起床後第2尿」「随時尿」によって評価したところ、それぞれ6.6±1.5g、6.2±1.7g、5.6±1.5gであり、随時尿による評価は24時間蓄尿に比べ、有意に低く評価された。女性では有意差が認められなかった。次に男性高血圧患者(n=22)において高食塩食を摂取した期間の「24時間蓄尿」「起床後第2尿」「随時尿」によって食塩摂取量を評価したところ、15.7±2.1g、16.2±2.3g、11.3±1.3gであった。これらの結果から、随時尿は24時間蓄尿に比べ、有意に低く評価し、特に高食塩摂取下では過小評価の程度が著しいことを示した。高血圧患者では正常血圧者より減塩モニタによる食塩排泄量が高値 ―第33回日本高血圧学会総会ポスター発表より―減塩モニタは、夜間尿(約8時間相当)の食塩量を電動法を用いて測定し、そこから24時間食塩排泄量を推定する。すでに減塩モニタを用いた自己測定が簡便かつ信頼性が高いことが報告されている。国立病院機構の今泉悠希氏は、減塩モニタを用いた自己測定によって高血圧患者、正常血圧者の食塩排泄量を家庭での自己測定により、30日間の平均値を比較検討した。その結果、高血圧患者の30日間平均食塩排泄量は9.1g/日と、正常血圧者の8.3g/日より高かった。特に肥満高血圧では9.6g/日と高く、非肥満群では8.1g/日と正常血圧者と同程度であり、肥満高血圧患者における減塩指導戦略の構築の必要性を訴えた。日本高血圧学会 減塩ワーキンググループの報告では、食塩摂取量の各評価法について信頼性と簡便性を比較しているが、「起床後第2尿」は、簡便性がやや劣るものの、信頼性はやや優れると評価し、「減塩モニタ」は、信頼性がやや劣るものの、簡便性が優れると評価している。診療現場で食塩摂取量を評価する目的は、正確性よりむしろ患者に減塩を継続しようという意識をもってもらうことであり、種々の評価法の特徴を把握し、診療現場に合わせて選択することが薦められている。では、減塩指導の方法についてどのような試みがみられているのだろうか。 次回は、減塩に対する試みの成果をレポートする。(ケアネット 藤原 健次)

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臨床治験データは義務的に公表すべきである

ドイツがん学会のDirk Eyding氏らは、「Reboxetineは、概して無効であり、場合によっては有害となり得る抗うつ薬である。公表されているエビデンスは、出版バイアスがかかったものである」ことをBMJ誌2010年10月16日号(オンライン版2010年10月12日号)で発表した。未発表論文を含めたプラセボまたは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)との対照試験データの、システマティックレビューとメタ解析の結果を踏まえたもので、「本結果は、過去の薬理学的データも含め臨床治験の結果は、公表を義務化する必要性があることを強調するものだ」と結論している。米国で承認されなかったreboxetineの出版バイアスの影響を調査Eyding氏らは、プラセボまたはSSRIとの比較で、うつ病の急性治療におけるreboxetineの有効性および有害事象を評価する目的で、未発表を含めた試験論文のシステマティックレビューとメタ解析を行った。reboxetineは、1997年に欧州各国で抗うつ薬として上市されたが、米国では有効性についての疑念から承認されていない。研究グループは、抗うつ薬研究は特に出版バイアスの影響があることを踏まえ、reboxetineにおける出版バイアス影響の測定を行った。解析は、2009年2月までの発表試験論文をMedline、Embase、PsycINFO、BIOSIS、Cochrane Libraryで検索する一方、ファイザー社(ドイツ)から未発表試験データも入手した。適格としたのは、大うつ病の成人へ6週間以上の急性期治療が行われた、プラセボもしくはSSRIとの比較による二重盲検無作為化試験。主要評価項目は、有効性アウトカムとして、寛解率と反応率、および有害アウトカムとして、一つ以上の有害事象または有害事象による服薬中止とした。出版バイアスの測定は、発表試験と未発表試験との比較で行われた。対プラセボ115%、対SSRIで23%有効性が過大評価解析適格となったのは13試験、被験者4,098例だった。そのうち被験者74%(3,033/4,098)分のデータは未公表のものだった。結果、reboxetineとプラセボとの比較において、寛解率に有意な差は認められなかった(オッズ比:1.17、95%信頼区間:0.91~1.51、P=0.216)。反応率については8試験で検討されていたが、メタ解析では不均一性が大きかった(I2=67.3%)が、少数の入院患者を除いた感度分析の結果、reboxetine投与を受けた患者群とプラセボ群との反応率に有意差は認められないことが示された(オッズ比:1.24、95%信頼区間:0.98~1.56、P=0.071、I2=42.1%)。SSRI〔fluoxetine、パロキセチン(同:パキシル)とcitalopram〕との比較では、reboxetineの方が、寛解率(オッズ比:0.80、95%信頼区間:0.67~0.96、P=0.015)、反応率(同:0.80、0.67~0.95、P=0.01)ともに劣性だった。有害アウトカムに関しては、reboxetineはプラセボと比べ両指標項目とも劣性で(P

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アプガースコアは脳性麻痺発症の堅密な指数である

新生児に対し行われるアプガー測定でのスコア低値は、脳性麻痺と強く関連していることが明らかにされた。関連は標準出生体重児で強く、低出生体重児ではわずかで、特に四肢麻痺との関連が強いという。ノルウェー公衆衛生研究所のKari Kveim Lie氏らが、住民ベースのコホート研究の結果、報告したもので、BMJ誌2010年10月16日号(オンライン版2010年10月7日号)で発表された。ノルウェー新生児対象に、アプガースコアと脳性麻痺発症との関連を調査Kveim Lie氏らは、出生5分後に測定されるアプガースコアと脳性麻痺との関連を、標準出生体重児と低出生体重児それぞれで評価した。また、痙性脳性麻痺の四肢麻痺、両側麻痺、片麻痺それぞれとの関連についても評価した。主要評価項目は、5歳未満での脳性麻痺発症。評価は、ノルウェーのMedical Birth Registryに登録された1986~1995年生まれの全新生児で、ノルウェー国内全小児部門の退院記録が集積されたNorwegian Registry of Cerebral Palsy in Children born 1986-95のデータとリンクし検討が行われた。対象児は、形成異常なしの単生児で1年生存が確認された54万3,064例だった。体重とは独立して、スコア4未満が発症と強く関連5歳未満で脳性麻痺が発症したのは、988例(1,000例につき1.8例)だった。全体では、アプガースコアが3未満群での発症が11%(39/369例)、一方、スコア10群の発症はわずか0.1%(162/17万9,515)で、両群間の発症差は53倍(出生時体重補正後オッズ比:53、95%信頼区間35~80)だった。出生時体重が2,500g以上では、アプガースコア4未満の群が、8超群に比べオッズ比125(95%信頼区間:91~170)と、より多く発症する傾向が認められた。一方、出生時体重が1,500g未満では、両スコア間のオッズ比は5(95%信頼区間:2~9)でほぼ同一だった。各体重群(1,500g未満、1,500~2,499g、2,500g以上)ともスコア4未満児が脳性麻痺を発症した割合が最も高く、10~17%を占めていた。アプガースコア低値は、痙性脳性麻痺の3つのサブグループそれぞれと強く関連していた。特に、四肢麻痺で関連が最も強く、補正後アプガースコア4未満対8超のオッズ比は137(95%信頼区間77~244)だった。Lie氏は、「アプガースコアは、出生直後の生命力の強さの基準となるばかりでなく、生命力を低下させる脳性麻痺発症の堅密な指数であることが示された」と結論している。

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治療学会にて「精巣腫瘍患者会創設」キックオフイベントを開催 キャンサーネットジャパン

NPO法人キャンサーネットジャパンは、精巣腫瘍サバイバーである小嶋修一氏、改發厚氏、京都府立医科大学泌尿器外科学の三木恒治教授を発起人とし、日本初の精巣腫瘍患者会を創設する。これまで個人のホームページやブログにて個別に発信されているカバーしきれない情報を、科学的根拠に基づき、集約的に、組織的に情報提供しようというもの。創設に伴い、10月30日(土)の日本治療学術集会にて、精巣腫瘍患者会の創設キックオフイベントを開催する。同イベントには、患者、家族だけでなく医療者の出席も歓迎とのこと。「精巣腫瘍患者会創設!」キックオフイベント ●概要:精巣腫瘍患者会創設に際して、患者会の趣旨や取り組みを紹介するとともに、出席者の交流を深める ●日時:平成22年10月30日(土)18時00分~ ●会場:〔メイン会場〕グランドプリンスホテル京都:地下1階 ローズルーム、〔サブ会場〕TBS放送センター ●出席者:三木 恒治(京都府立医科大学大学院医学研究科泌尿器外科学 教授)・小嶋 修一(TBSテレビ報道局解説室・精巣腫瘍経験者)・改發厚(精巣腫瘍経験者)・賛同者他 ●申し込み:10月28日(木)17時までに下記メールアドレスへE-mail: j_tag@cancernet.jp 当日は、USTREAMによるライブ映像配信を行うhttp://www.cancernet.jp/j-tag/ 詳しくはこちら http://www.cancernet.jp/eve/101030JTAG.pdf

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クロピドグレル治療中の虚血イベント再発リスクが高い患者とは?

ABCB1遺伝子3435TTホモ接合体を持つ者は抗血小板能が低下しており、特に経皮的インターベンションを施行された急性冠症候群(ACS)患者ではクロピドグレル(商品名:プラビックス)治療中の虚血イベントの再発リスクが高いことが、米国ブリガム&ウィメンズ病院循環器科のJessica L Mega氏らが実施したTRITON-TIMI 38試験の薬理遺伝学的解析で示された。クロピドグレルおよびprasugrelはP糖蛋白(P-gp)を介して細胞外に排出される。P-gpはABCB1遺伝子(MDR1遺伝子とも呼ばれる)によってコードされ、ABCB1遺伝子多型(特に3435C→T)は薬剤の輸送や効果に影響を及ぼす可能性があるという。Lancet誌2010年10月16日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。TRITON-TIMI 38試験のACS患者と他の7試験に参加した健常者を評価TRITON-TIMI 38試験の研究グループは、クロピドグレルあるいはprasugrelによる治療を受けた患者の心血管アウトカムに及ぼすABCB1遺伝子多型およびCYP2C19遺伝子変異の影響を評価した。また、健常者を対象に、これらの薬剤の薬力学/薬物動態学的(PK/PD)特性に及ぼす遺伝子型の影響について検討した。TRITON-TIMI 38試験で経皮的インターベンションを施行され、クロピドグレル(1,471例)あるいはprasugrel(1,461例)による治療を受けた急性冠症候群(ACS)患者2,932例についてABCB1遺伝子型の解析を行った。ABCB1遺伝子の3435C→T多型と治療15ヵ月までの効果に関する主要エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)の発現率の関連を解析し、ABCB1遺伝子3435C→T多型とCYP2C19機能低下型対立遺伝子の複合的な影響について評価した。さらに、他の7試験に参加した健常者321人の遺伝子型を解析し、遺伝子変異と最大血小板凝集率の関連および薬剤の活性代謝産物の血漿濃度を測定した。約半数が、クロピドグレル治療中に心血管系の有害事象の発現リスクが高いクロピドグレル群のうち、ABCB1遺伝子3435C→T多型の患者は心血管死、心筋梗塞、脳卒中のリスクが有意に高かった(p=0.0064)。Kaplan-Meier 法で算出した主要エンドポイントのイベント発生率は、3435C→T多型がTTホモ接合体の患者が12.9%(52/414例)と、3435CT/CCの患者の7.8%(80/1,057例)に比べリスクが有意に高かった(ハザード比:1.72、95%信頼区間:1.22~2.44、p=0.002)。ABCB1遺伝子3435C→T多型かつCYP2C19遺伝子のキャリアであることは、主要エンドポイント発現の独立の予測因子であり、クロピドグレルを投与されたCYP2C19機能低下型対立遺伝子、ABCB1遺伝子3435TTホモ接合体あるいはその両方を持つ患者1,454例のうち681例(47%)においてリスクが有意に上昇していた(ハザード比:1.97、95%信頼区間:1.38~2.82、p=0.0002)。健常者の検討では、3435TTホモ接合体の者は3435CT/CCの者に比べクロピドグレル投与による最大血小板凝集率の絶対低下率が7.3%劣っていた(p=0.0127)。prasugrelを投与されたACS患者および健常者では、ABCB1遺伝子型と臨床的および薬理学的なアウトカムに有意な相関は認めなかった。著者は、「ABCB1遺伝子3435TTホモ接合体を持つ者は抗血小板能が低下しており、クロピドグレル治療中の虚血イベントの再発リスクが高い」と結論し、「ABCB1遺伝子およびCYP2C19遺伝子の双方を考慮すると、経皮的インターベンションを施行されたACS患者の約半数は、標準用量のクロピドグレル治療中に心血管系の重篤な有害事象を発現するリスクの高い遺伝子型を有すると考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ACSに対するticagrelor、遺伝子型を問わずクロピドグレルよりも有効:PLATO試験サブ解析

急性冠症候群(ACS)患者の抗血栓療法では、CYP2C19遺伝子およびABCB1遺伝子の遺伝子型にかかわらず、ticagrelorがクロピドグレル(商品名:プラビックス)よりも有効なことが、スウェーデン・ウプサラ大学のLars Wallentin氏らが行ったPLATO試験の遺伝子解析で明らかとなった。本試験では、ticagrelorの高い効果とともに冠動脈バイパス術(CABG)非施行例では大出血が増加することが確認されている。一方、CYP2C19遺伝子、ABCB1遺伝子の遺伝子型がクロピドグレルの効果に影響を及ぼすことが知られているが、ticagrelorのアウトカムへの影響は解明されていなかった。Lancet誌2010年10月16日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。遺伝子型と治療アウトカムの関連を評価PLATO試験の研究グループは、ACS患者のCYP2C19遺伝子およびABCB1遺伝子の遺伝子型が、ticagrelorとクロピドグレルのアウトカムの差や各治療群内のアウトカムの違いに及ぼす影響を検討するサブ解析を行った。PLATO試験に参加したACS患者から得られたDNAサンプルを用いて、CYP2C19機能喪失型対立遺伝子(*2、*3、*4、*5、*6、*7、*8)、機能亢進型対立遺伝子*17およびABCB1遺伝子の一塩基多型(SNP)3435C→Tの解析を行った。CYP2C19遺伝子型は機能喪失型対立遺伝子の有無で、ABCB1遺伝子型は予測される遺伝子発現の程度(高発現、中発現、低発現)で層別化した。効果に関する主要評価項目は、最長12ヵ月のticagrelorおよびクロピドグレル治療後の心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとした。ticagrelorを使用すれば事前の遺伝子検査は不要に遺伝子解析には1万285例がサンプルを提供した。主要評価項目の発現率は、CYP2C19遺伝子型の有無にかかわらずticagrelor群がクロピドグレル群よりも低かった。すなわち、いずれかの機能喪失型対立遺伝子を有する患者の主要評価項目発現率はticagrelor群8.6%、クロピドグレル群11.2%(ハザード比:0.77、95%信頼区間:0.60~0.99、p=0.0380)、機能喪失型対立遺伝子を持たない場合はそれぞれ8.8%、10.0%(同:0.86、0.74~1.01、p=0.0608)であった(相互作用のp値=0.46)。ABCB1遺伝子についても、主要評価項目の発現率はすべての遺伝子型でticagrelor群がクロピドグレル群よりも低かった(高発現群との相互作用のp値=0.39、8.8% vs. 11.9%、ハザード比:0.71、95%信頼区間:0.55~0.92)。クロピドグレル群では、治療30日の主要評価項目の発現率はいずれかのCYP2C19機能喪失型対立遺伝子を有する患者が、どの機能喪失型対立遺伝子も持たない患者に比べて高く(5.7% vs. 3.8%、p=0.028)、機能喪失型対立遺伝子を持つ患者のイベント発現率は、治療早期からticagrelor群がクロピドグレル群よりも大差をもって低かった。CYP2C19機能亢進型対立遺伝子を有するクロピドグレル群の患者は、これを持たない患者や機能喪失型対立遺伝子を持つ患者に比べ、大出血の頻度が有意に高かった(11.9% vs. 9.5%、p=0.022)が、薬剤の種類と個々の遺伝子型の相互作用による大出血の程度には差を認めなかった。著者は、「ACS患者の抗血栓療法では、CYP2C19遺伝子およびABCB1遺伝子の遺伝子型にかかわらず、ticagrelorがクロピドグレルよりも有効なことが示された」と結論し、「クロピドグレルの代わりにticagrelorを使用すれば、現在の2剤併用抗血小板療法の前に行うことを推奨されている遺伝子検査は不要となる」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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准教授 高橋 寛先生「人と交わり、先端を目指せ!-ある整形外科医の挑戦-」

東邦大学医学部卒業後、関連病院に勤務。その後大学に戻る。日本整形外科学会では数々の専門医を取得。内視鏡学会技術認定医でもあり、内視鏡を駆使した手術では一目置かれている。現在、東邦大学医療センター大森病院整形外科 准教授。患者のライフスタイルを大切にした「やさしい手術」を目指す当院の整形外科では年1,100件の手術、そのうち脊椎関係が200件以上あります。大学病院なので、他の病院では手術ができないような高齢者や、糖尿病などの合併症を抱えている方が多いのが特徴です。したがって手術自体の難易度も高く、術後の管理にもかなり気を遣うケースが多々あります。また、他の病院から急に難症例を紹介されることもあります。夜に突然相談され、翌日予定されている手術までの間に執刀したこともあります。手術自体に関しても、ただ見た目をきれいに手術するだけではなく、その患者の術後の生活までを考えた手術でなければいけません。手術を受ける患者は、下は10代から上は90歳を超える方までいます。また体質やライフスタイルも人それぞれです。執刀する際は患者に適した術式や治療方法を選択し、患者にやさしい手術ができるように心掛けています。「早期離床の実現」は患者の負担を減らす昔はとにかく患者を寝かしすぎていたと思います。私が入局したての頃は、患者を3、4週間ベッドに寝かせていました。ギプスをつけている方や麻痺がある方は、寝ている期間が長ければ長いほど足に血栓ができやすくなります。患者さんの身体を起こしたとたんに血栓が肺に飛べば急性肺動脈血栓塞栓症、頭に飛べば脳塞栓を起こしてしまうという危険がありました。今では一般の方々にも有名になった、いわゆる「エコノミークラス症候群」です。当院は早期の離床が実現しています。たとえば、腰椎椎間板ヘルニアの場合、内視鏡や顕微鏡を使用することにより、これまでは骨から筋肉を剥がす必要があったものを、剥がさなくてよくなりました。この場合、患者の痛みや負担が軽減するので、手術の翌日から歩行が可能になります。患者が、高校生や大学生くらいだと早く退院したがるので、抜糸は外来で行うこともあります。手術執刀と術後管理など、治療へのアプローチ方法を少しずつ怖がることなく変えてきた成果だと思っています。整形外科でも、循環器・泌尿器・婦人科などとの連携は重要腰痛は、腰そのものが悪い場合もありますが、泌尿器、産婦人科系の疾患が原因である場合もあります。さらにはメンタル面が関係していることもあるので、主訴だけで判断すると危険です。他院で診断を受け、紹介状を持って来院する患者に関しては、その診断結果を鵜呑みにしないよう心掛けています。「単に腰痛だから整形外科」と安易な診断を受けている方も多いのですが、よく診察してみると、婦人科、循環器系の病気であることが結構あります。患者自身がストレスと感じていなくても、身体がストレスと感じていて、それが腰痛につながっていたというケースもあります。手術をする前によく診療を重ねないと大変なことになりますので、整形外科だけの判断をしないようにしています。また、高齢の方には血行障害を持っている人が多いので、ABIやTBIの検査をするようにしていますが、その検査だけでも判断がつかず、循環器科とやりとりが続く場合もあります。他の診療科も同じだとは思いますが、整形外科も他科との連携がとても重要になってきています。垣根を超えた臨床研究で今の私がある診療で一番大切なこと。それは患者との信頼関係を築きあげることだと思います。そのため、最初の診察時には患者の人柄をみます。患者は「この先生どんな人だろう」「信用できるのかな」と不安に思っています。それをやわらげ、信頼してもらうためには、こちらから話しやすい雰囲気を作ったり、話題を工夫したりする必要があります。ですから、まず患者がどのような人柄なのかをみる必要があるのです。正確な診断を下すためには、検査も大事ですが、患者の生活環境も含めて、患者のことを良く知ることが大切です。信頼関係を築けなくては正しい診断ができないのです。今の若い医師は患者に対して深入りしない傾向があります。もっと私たちが、患者と信頼関係を構築することの重要性を伝えていく必要があるのかもしれません。また、患者の人柄も様々ですから、日頃からコミュニケーション能力を磨くことが必要です。普段からいろいろな人と接し、自分の引き出しをこつこつ増やしていく、そんな地道な努力も必要だと思います。これは医学生の頃からでもできることです。是非、今の医学生には、勉強させすればよいというだけでなく、一人の大人として、きちんと人と接することができるように心がけて欲しいものです。熱意があればチャンスはいくらでもある私は図々しい性格ですから、わからないことがあるとアポイントもなしに勝手に解剖の教室や他の医局にいき、教授を捕まえて質問しています。後で、その領域の大家だった……などと気づくこともあるくらいです。若い頃も、違う医局の先輩に勝手に相談しにいっていました。関連病院に出ていた時は、夜こちらに来て、教授に論文を添削してもらったこともありました。研究や指導には厳しいですが、「これがやりたい」と頑張る人には、自分の仕事を後回しにしてでも協力してくださる先生方が多い、そう感じています。東邦大学はそんな雰囲気がありますので、今の若手も、もっと積極的であってほしいなと思っています。わからないことがあったらどんどん上級医や先輩を捕まえて聞いて欲しいですし、「これがやりたい」ということがあればもっとアピールしてもよいと思います。東邦大学の場合、成績優秀な学生ほど外へと出ていきますが、自分の出身大学で臨床研究し続けるメリットも考えた方がよいです。出身大学だからこそ自分の望んでいる研究ができる、周りからの協力が得やすいというメリットがあるはずです。また、自分を成長させるために、自分がこういう医師になりたいと思えるような人に出会ったら、その人の行動をまねたり、読んでいる書籍・参考書などを自分も読んでみたりすることをおすすめします。私も若い頃から実践していますが、自分一人で勉強していては身に付かないような知識や考え方を蓄積することができ、幅広い引き出しを持つことができます。若いうちは恥ずかしいとは思わず、いろいろな診療科の先生や先輩たちとコミュニケーションをとってほしいですね。どんな領域でも他科との連携は必要な時代です。きっと将来の財産になります。質問と回答を公開中!

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准教授 高橋 寛先生の答え

クリニックレベルでできる診察のポイントや紹介時の注意点など先生の記事大変勉強になりました。特に「主訴だけで判断すると危険です。他院で診断を受け、紹介状を持って来院する患者に関しては、その診断結果を鵜呑みにしないよう心掛けています。「単に腰痛 だから整形外科」と安易な診断を受けている方も多いのですが、よく診察してみると、婦人科、循環器系の病気であることが結構あります。」というくだりはハットしました。私の病院も腰痛患者を大きな病院へ紹介することが多々あります。精密な検査はできないまでも、クリニックレベルでできる診察のポイントや紹介時の注意点などがあれば是非教えて頂きたいと思います。宜しくお願いします。とにかく触診することです。60歳以上の方で、糖尿病、高血圧の方は多数おられます。下肢痛がひどい方の場合、血流障害があれば、下肢の皮膚温が低下しています。また必ず足背動脈の拍動はチェックすべきです。下肢の疼痛、しびれに関して、血流障害と腰椎病変が両方関与していることもままあります。手術をしたのち、残存した症状が血流障害の可能性もあります。私は何度も痛い目に遭っています。例えば76歳男性,糖尿病、高血圧の治療中の方でした。ABI正常値、足背動脈も蝕知可能、MRIではL5/Sの狭窄あり、S1神経根ブロックは有効でしたので内視鏡下手術を行いました。術後短期間は症状改善したようですが、下肢のしびれが再燃し、下肢の造影CTを行った所、立派なASOでした。術前に糖尿病科の医師に血流障害について質問したところ大丈夫と言われて鵜呑みにした結果です。最近では糖尿病、透析患者にはABIに加えTBIも検査しています。超音波骨折治療法について貴院は超音波骨折治療法の実施施設とのことですが、症例数と成績を教えていただけないでしょうか?また、この治療法は使える範囲が決まっていますが、仮にその範囲制限を考えなかった場合、範囲外の症例にも活用できそうなのでしょうか?症例数は把握しておりませんが多数行っております。成績は明らかに有効だと思います。制限が無ければ、新鮮骨折、骨切り手術、骨移植術などに対しての適応があれば良いと思います。(ヤンキース時代、松井選手が橈骨遠位端骨折に対してやってましたよね?)東邦での研修の改善ポイントについて東邦大学での研修についてお聞きします。当然良いところばかりではなく、改善する必要があることも多いと思います。高橋先生が感じる、ここは改善しなければ、と思っていらっしゃることがありましたら教えてもらいたいです。あくまで整形外科の事ですが、もっとじっくりと研修医相手に系統立てた講義をする時間を作るべきだと思います。これは研修医の先生へのお願いです。我々も人間です。興味を持ってぶつかってきてくれる人には、何でも見せるし、頑張ってお付き合いします。後期研修について現在、市中病院で研修している卒後1年目の者です。後期研修は大学でと思っております。東邦大学さんの雰囲気のよさが大変分かり参考になりました。ただ、よその大学出身でも、東邦大出身の先生と同じように扱っていただけるのでしょうか?また、現在東邦さんにいる後期研修医の中に他大学出身の先生は何割くらいいらっしゃるのでしょうか?差し支えなければ教えていただけると幸いです。正確な数は把握していないのでお答えできません。しかしながら東邦大学は、他大学の出身だからといって差別はしておりません。同等に扱っているはずです。私の部下にも他大学出身の医師がおりますが、脊椎外科の研修中であり、近日中に指導医を取得する予定です。他科にも他大学から入局し、講師以上になられている先生も多々おります。ストレスが腰痛につながるケースについて研修医なので質問が拙いかも知れませんが許して下さい。先生の記事の中にストレスが腰痛につながるケースがあるとありましたが、その症例を見分けるポイントはあるのでしょうか?ご教示宜しくお願いします。例えば、腰椎椎間板ヘルニア疑いの患者の場合です。通常はSLRテストをベッド上で行うはずです。これを疑わしい場合には、患者が座った状態で、膝関節を徐々に何気なく持ち上げます。すると本当にヘルニアの患者であれば体をのけぞらせます。これをflip testと言います。心理テストを行う事もあります。診察所見をとり、患者と話をし、画像所見と一致すれば問題ありませんが、違和感を感じた場合には医者同士で相談するのも1つの手でしょう。奇形性脱臼について出生時にすでに完全に脱臼している、奇形性脱臼についてうかがいます。治療が困難な症例だと思いますが、先端の臨床研究では何かしら研究は進んでいるのでしょうか?またこのような患者の場合、人工関節を入れることが可能なのでしょうか?身近に聞ける医師がいないため、お聞きしたいと考えました。宜しくお願いします。ごめんなさい、先天性脱臼の研究については門外漢です。しかしながら、股関節脱臼、膝蓋骨脱臼、膝関節脱臼例の経験は当科でありますが、人工関節を入れていますよ。カイロプラクティックについて腰痛は専門外なので、素人質問になって恐縮です。小さな医院で内科をやっている町医者です。腰痛持ちの患者さんから、病院で診てもらうのが良いのか?カイロプラクティックに通うのが良いのか?と質問を受けることが多々あります。もちろん病院で診察してもらうことを進めるのですが、近所に、米政府の公認の「Doctor of Chiropractic」という資格を持っているカイロプラクティック師がいるらしく、整形外科医よりもそちらの方が専門的なのでは?と聞かれ、答えに困っています。何か明確に説得する方法はないものでしょうか?ご教示お願いします。私が留学した12年前にも、アメリカでも民間療法については問題視されておりました。単なる腰痛であれば、マッサージによって局所の血流が改善したり、筋緊張が緩和されて良いこともあります。しかしながら高齢者で骨粗鬆症がある場合、外傷が無くても脊椎圧迫骨折を来すことはままあります。脊柱の変形を力任せに引っ張っても矯正できるものではありません。よく骨盤牽引をすると、椎間板腔が拡がったり、脊柱の側弯が矯正されると勘違いされている患者さんもおられます。あくまで牽引は、筋緊張を和らげるために行っているものです。整形外科をやっておりますと、民間療法に行った後、症状がかえって悪くなり、受診される方を見受けます。私たち、整形外科で完全に痛みが取れないため民間療法に行く方もおられるでしょうが、少なくとも一度は整形外科を受診し、病態、骨質等を診察、評価されることをすすめます。やさしい手術について記事拝見しました。常に新しいものを取り入れようとしているお姿感服いたします。先生が駆け出しのころと、今とで一番変わった手術、術式を挙げるとしたら何があるでしょうか?できれば患者にとって最もやさしくなった手術を知りたいです。小生、とある田舎で老人相手にクリニックやっております。腰痛患者は総合病院におくりますが、高齢の方は大きい病院に行きなさいと言うと、怖がってなかなか行きません。「●●手術は、昔はこんなに大変だったけど、今は●●することで簡単になったんだよ。だからあなたの場合もよくなるよ、安心して大きい病院で診てもらいなさい。」と言って元気付けて不安を取り除きたいと考えております。宜しくお願いします。腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症に対する手術だと思います。内視鏡を用いた方法ですと通常、翌日には離床できます。また最近、全国的に普及している棘突起縦割式の除圧術も術後疼痛が少なく、術後2,3日で離床が可能です。とにかく私が医師になった20年以上前には術後2週間の安静は普通でした。高齢の方は臥床期間が長いと、誤嚥性肺炎、褥瘡、認知症、筋力低下など様々な合併症を生じます。なるべく痛みの少ない手術を高齢者にはする事が肝心です。また最近固定術もMIS(Minimally invasive surgery)といってなるべく侵襲の少ない方法を様々検討しております。早ければこれも翌日離床可能です。私どもも、どの方法が優れているか、現在検証中です。先天的?な脊柱管の形態画像診断をしている放射線科医です。「腰痛精査」といった依頼で、腰椎 MRI を読影することが多いです。画像所見そのものにはあまり意味はないと考え、依頼内容に関連する所見を中心にレポートに列挙し、「症状に合うものを選んでください」とという気持ちでいます。ところで質問なのですが、脊柱管の狭さ、という観点から見ると、椎間板や黄色靭帯などと並んで、 先天的?な脊柱管の形態も重要に思えます。椎弓根が短いというだけでなく、左右椎弓板のなす角度が狭いこともよく経験されます。自分なりに調べたのですが、あまり系統立てて検討した報告やコンセンサスのようなものを見つけることができませんでした。何か良い資料などがありましたら教えていただけないでしょうか。よろしくお願い申し上げます。(あまり重要なことでない、普通の教科書に載っている常識である、かもしれません。そうでしたらすいません。)先生のおっしゃる通りです。脊柱管が狭くても症状がない場合は治療の対象外であり、あくまで画像所見に見合った症状、症状に見合った画像所見があるかどうか整形外科医は判断すべきです。脊柱管狭窄症の分類には先天性(発育性脊柱管狭窄症)があります。古くはVerbiestの文献が有名です。J Bone Joint Surg36B 230-2371954,Orthop 、Clin North Am 6 : 177-196 1975などでしょうか?欧米人と、東洋人の我々ではかなり脊柱のアライメント、形態は異なります。そもそも脊柱管狭窄症自体が少ないと思います。日本人の正常例を報告した文献はあると思います。アメリカでは日本と異なりなかなか画像検査にも制限があります。今後先生が多数の症例から日本人の年代毎の形態評価など行い、発表されれば高く評価されるはずです。腰椎の形成術についてお世話になります。腰椎が潰れて歩行障害を生じている人に、椎体部分にプラスチックのようなものを入れ椎体を形成し、腰痛を緩和する手術があると聞きました。聖路加病院でやっているようですが、私は熊本ですが、地方でも一般的に普及してきている手術でしょうか?治療を希望している患者がいますのでお教えいただければ幸いです。経皮的椎体形成術は1984年にフランスで血管腫に対して初めて行われた術式ですが、近年、脊椎圧迫骨折に対しても行われています。椎体形成術には、骨セメント(PMMA),リン酸カルシウム骨セメント(CPC),自家骨、ハイドロキシアパタイトを用いた方法があります。骨セメントを用いた方法は、短時間で固まり、即効性があるため普及していますが、その一方、骨セメントの脊柱管内への漏出、固まる際に発生する熱、静脈塞栓等様々な問題点も抱えております。したがってもし放射線科医が行うのであれば、脊椎外科医と緊密な連携をとっている施設で行うべきでしょう。私どもの施設に、骨セメントを用いた椎体形成術後に馬尾障害を生じた患者が緊急搬送されてきた事もあります。どんな方法も、利点、欠点はあります。患者が納得できるように説明できる医師がぃる施設をお探しになるのが良いと思います。総括若い人には未来があります。是非、高い所を目指して頑張って下さい。頑張れば必ず周りが評価します。評価されれば余計に頑張りたくなります。また整形外科に興味のある方、是非、当科も選択肢の1つとして下さい。准教授 高橋 寛先生「人と交わり、先端を目指せ!-ある整形外科医の挑戦-」

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