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どうやって信頼性を確保するか! 臨床試験成績の読み方!?

7月14日(土)NPO法人 臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)が主催する「第3回 J-CLEARセミナー」が、東京大学医学部附属病院において開催された。当日は全国より会員、関係者など約60名が参加した。今回のテーマとして「臨床試験成績の読み方-信頼性の観点から-」が掲げられ、巷間で問題となっている医学論文の信頼性や研究データの解析手法の問題点など、テクニカルな面も含め講演が行われた。特別講演臨床研究のmisconduct特別講演として山崎茂明氏(愛知淑徳大学 人間情報学部 教授)を講師に迎え、「臨床研究のmisconduct」というテーマで講演が行われた。講演では、「misconduct(不正行為・違法行為)」をキーワードに、論文やトライアルの問題を「点」として捉えるのではなく、さまざまな要因に起因する「線」によるミスと捉え、理解していこうというものであった。Misconductといかに向き合うかについては、これを「病気」になぞらえ、防ぐためには個人や環境への介入と予防のための教育が重要だと述べた。次にmisconductの定義について、「科学におけるmisconduct」とは、「捏造、改ざん・偽造、盗用」のことを指し、その他の逸脱行為として「資金の不正流用、各種ハラスメント」等があると説明した。そして、misconductの発生率について、1997年には1万件あたり約5件(0.05%)であったが、2005年のある調査では、3,247名に調査した結果、うち33%がmisconductに何らかの関与をしたとのレポートを紹介した。次にmisconductを防止する鍵は、「発表倫理」を考えることであり、発表倫理はさらに2つに分けられると説明した。それは「オーサーシップ」と「レフェリーシステム」である。まず、「オーサーシップ」の種類4つとそれぞれ考え得るリスクを述べた。ギフトオーサーシップ:儀礼的に名前が共著として載るリスク→撤回論文になった場合、不名誉な記録が残る名誉オーサーシップ:慣例で名前が共著として載るリスク→撤回論文になった場合、不名誉な記録が残るゴーストオーサーシップ:著者資格があるのに著者に記載されないリスク→EBMの情報源でなくなるゲストオーサーシップ:著者資格はないがゲストの肩書などを利用して意図的に信頼性を高める。メーカの記事等で散見されるリスク→論文の信頼性の著しい低下その上で、たとえばこれからのオーサーシップは、貢献度に応じて、映画のエンドクレジットのように名前を表出させてはどうかと提案が行われた。次にレフェリーシステムについて、従来は“Peer Review”が信頼性を維持してきたことに触れ、最近ではこのやり方が揺らいできていること、そこで“Open Peer Review”が採用されるようになってきたと述べた。そこでは審査論文は親展文書として送られ、ライバル研究者への審査依頼禁止を要望できるなど、編集システムの段階でさらにmisconductを防止できるようにシステムが築かれていると説明し、講演を終えた。わが国の臨床試験の課題1)オープン試験における問題点はじめに、植田真一郎氏(琉球大学大学院 薬物作用制御分野 教授)が「オープン試験における問題点」と題して問題提起を行った。オープン試験は、元来、治療方針の比較(例.生活習慣指導の臨床試験)に適した試験であり、薬効の比較にはむかない試験である。薬剤の比較試験は二重盲検で行うべきであるが、わが国では治験を除いて、そのほとんどがオープン試験で行われているのが現状。また、本来エンドポイントは、試験の目的によって決まるはずであるが、現状は症例集積性と検出力から決まっている。その結果、複合エンドポイントが採用されることが多い。複合エンドポイントのコンポーネントとして、時に主観的なものが設定されることが多い。例えば、狭心症の発症、心不全による入院、経皮的冠動脈インターベーション(PCI)の施行などである。問題なのはオープン試験の複合エンドポイントのコンポーネントとして主観的なエンドポイントが含まれてしまっていることである。オープン試験では主治医は、患者がどちらの治療を受けているかを知っているので、対照群で主観的なエンドポイントがより多く発生することで結果に影響を及ぼすと指摘。また、イベント元(主治医)からデータセンターへの報告が担保されていないなど問題があると言及した。そこであるべき研究試験体制としての組織を説明後、OCTOPUS研究による質の保証を述べた。すなわち、「ランダム化は最小化法で、CRC(治験コーディネーター)を派遣し第三者によるデータ転記、独立したモニタリング委員会とイベント評価委員会、そして試験事務局の独立が担保されなければならない」と説明した。そして、わが国で多く実施されているオープン試験の質を担保する方策として、「研究目的の整合性、適正なモニタリング・監査、アウトカムの評価の厳密化、データ管理とトレーサビリティ、公的研究での資金サポートが重要だ」とのべ、発表を終えた。2)Spinについて桑島巌氏(東京都健康長寿医療センター 顧問)が、「Spinについて」と題して臨床試験の目的と結果の齟齬について説明した。「Spin」とは「回転させる」から転じた用語で、臨床試験において「主要なエンドポイントに関して統計学的には有意でなかったにも関わらず、試験薬が有効であったかのように印象付ける、あるいは有意でなかったことから注意を逸らせるような報告内容」であり、 2010年にJAMA誌に発表され、この報告によるとspin率は37.5%、本文の考察部分でのspin率は43.1%であったと紹介した(参考記事「RCT論文、『有意差なし』なのにタイトル曲解18%、要約結論曲解58%」)。次に2つの循環器系の臨床試験を例にspinの具体例を説明した。ある試験では、1次エンドポイントにおいて結果が出なかったために、2次エンドポイントを強調して発表した例や、別の試験では、有意差が得られなかった結果に対し、仮説が成立していた患者群だけの後付け解析を別の研究論文として発表された例等があると解説した。そして、「臨床研究論文は、プライマリエンドポイントを主眼に発表し、読者を惑わすことがあってはならない」と発表を終えた。3)オープン試験における信頼性保証の方策景山茂氏(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 薬物治療学研究室 教授)が、「オープン試験における信頼性保証の方策」と題して、わが国における心血管イベントを対象とした最近の自主臨床試験の特徴を中心に説明を行った。一つは、「複合エンドポイントの採用」で、利点として多重性を避け、サンプルサイズを小さくし、追跡期間を短くすることができる半面、結果の解釈が難しく、オープン試験に適さない情報が採用される場合もあると指摘した。もう一つは、「PROBEデザインの採用」であり、はじめにPROBEデザインで行われた欧米、日本の主な研究を例示。次に、PROBEデザインの課題として(1)適切なエンドポイントの選択、(2)エンドポイント委員会の機能強化、(3)第三者の介入(CRCのサポート)、(4)CONSORT声明の改善(オープン試験では責任医師の症例数を申告させるなど)、(5)モニタリングと監査の5つを挙げ、今後の改善すべき点を示した。また、医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)についても触れ、その目的は「被験者の人権、安全、福祉の保護」と「治験の科学的な質とデータの信頼性の確保」にある。両方を実現するためにも「臨床研究に関する倫理指針」へのデータの信頼性保証の方策の記載、試験機関でのモニタリングと監査部門の設置、ガイドラインに基づく不正行為告発等の受付体制の整備などを提起した。総合討論続いて総合討論となり、会場からさまざまな質問や問題提起が行われた。一例として「トライアル研究の問題点は何か」という質問に対して、「薬効の厳密評価と治療法の評価の方法は違う研究。前者は治験、後者は標準治療と厳格治療を比較したUKPDSに代表されるようなもの」という回答がなされた。また、「研究試験の外的妥当性を高める方策は?」と問われたところ「RCTそのものに制限があるので、例外を考える。現場で評価が出ない時は、それ以外で考えることも必要。検討される結果の事前確率を考えて、具体的には事前統計を見積もって、事後確率も考えていく」や「外的妥当性の向上として、サブブロック解析をした方がよい。層別解析で行う」など複数の回答が寄せられていた。最後に代表の桑島氏が「3時間半の盛り上がる研究会となった。今後も、今回の発表内容などを日ごろの研究試験の際に参考にしてもらいたい」と挨拶し、セミナーを終了した。※NPO法人 臨床研究適正評価教育機構とは、2010年に発足した臨床研究を適正に評価するために必要な啓発・教育活動を行い、我が国の臨床研究の健全な発展に寄与することをめざした組織。毎年セミナー、シンポジウムなどの勉強会が開催され、出版物の刊行も行っている。●詳しくはNPO法人 臨床研究適正評価教育機構まで http://j-clear.jp/

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