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「自分には関係ない」「定年後にはアリかな」…“僻地医療”、どうお考えですか?

高齢化が進む日本。過疎化も手伝って、全国各地で増加中なのが「限界集落」です。“人口の50%以上が65歳以上の高齢者となって、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落”のことだそうですが、こういった地域の増加に伴ってますます重要になっているのが「僻地医療」。身も心もその地に…の“Dr.コトー”のイメージが強い僻地医療、しかし実際はドクターヘリや交代医師派遣、巡回診療など、現地に常駐する以外の形で僻地をサポートしている先生方も多くいらっしゃいます。今回はそんな僻地医療に対する先生のお考えを聞いてみました!コメントはこちら結果概要医師の3割以上が 『僻地医療に携わった経験がある』僻地医療に関する経験を尋ねたところ、全体の63.8%は『携わったことがない』と回答。現在『常勤で携わっている』が全体の7.5%。パートタイム、巡回、ドクターヘリなど『常勤以外』で携わっている医師が4.8%、「医局からの派遣」などで『以前携わっていた』とした医師は23.9%。全体の3割以上が何らかの形で僻地医療に携わった経験を持つことが明らかとなった。30代以下の約半数『条件次第で考えたい』、年を重ねる毎に『関心はあるが携われない』増加現在携わっていない(経験者含む)医師に対し、今後の考えを尋ねたところ、『将来的には考えたい』7.9%、『勤務体制次第』12.1%、『待遇次第』14.7%という結果となり、全体の34.7%が検討の可能性があると回答。30代以下では48.9%に上った。一方、“携われない”と回答した人の割合は30代以下で51.1%、60代以上で76.9%と年代と共に上昇。『全く関心がない』とする人は逆に減る傾向にあり「気持ちはあるが体力がついていかない」など、『関心はあるが携われない』人が多く見られた。若手「都市部でキャリアアップしたい」、中堅 「子供の教育が」、ベテラン「専門科以外自信がない」『携われない/関心がない』と回答した医師にその理由を尋ねたところ、『教育・介護などで住まいを移せない』36.1%、『多忙で余裕がない』32.8%、『開業しているため』27.1%などと続き、『自分が携わる必要があると思わないため』は7.2%であった。若手医師から「僻地ではキャリアアップにつながる仕事ができない」、ベテラン医師からは「医師が少ない中では診療科を問わず広く診る必要があるが、もう自分の専門科以外を診る自信がない」といったコメントが寄せられた。濃密な人間関係、ひとりにかかる重い責任…現状打開の鍵のひとつは“チーム制”携わるにあたってのハードルとして、経験者から「人員・設備不足の中で都市部と同レベルの医療を求められ、訴訟社会の今はリスクが高すぎる」「プライバシーがない・よそ者扱いされるなど人間関係の難しさ」といったことが挙げられた。ひとりの医師に24時間の負担をかけるのではなく、チーム制・輪番・期間限定などの体制を組めば携わる医師が増え、状況が改善するのでは、といった意見も複数見られた。設問詳細現在、全国各地で高齢化が進み、中山間地域・離島を中心とした地方では、過疎化と共に“限界集落”※が増加しているといわれています。※人口の50%以上が65歳以上の高齢者となって、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落このような状況下、僻地診療所や小規模な病院による医療提供のほかに、診療所と大規模病院の連携・一時的な交代医師派遣・専門医による巡回診療・ドクターヘリの出動なども含めたかたちの“僻地医療”の充実が望まれています。医療分野における“僻地“とは:厚生労働省により『交通条件及び自然的、経済的、社会的条件に恵まれない山間地、離島その他の地域のうち、医療の確保が困難である地域。無医地区、無医地区に準じる地区、僻地診療所が開設されている地区等が含まれる』と定義されていますそこで先生にお尋ねします。Q1.現在、僻地医療に携わっていらっしゃいますか常勤で携わっている常勤以外(パートタイム・巡回・ドクターヘリなど)で携わっている以前携わっていた携わったことがない(「以前携わっていた」「携わったことがない」の回答者のみ)Q2.僻地医療に携わることについて、先生のお考えに近いものをひとつお選び下さい将来的には考えたい勤務体制(期間/曜日限定、要請時のみなど)次第で考えたい待遇(報酬・休息時間など)次第で考えたい関心はあるが携われない全く関心がない(「関心はあるが携われない」「全く関心がない」回答者のみ)Q3.僻地医療に携われない・関心のない理由をお聞かせ下さい(複数回答可)開業しており、自分の交代要員がいないため多忙で他の業務に携わる余裕がないため診療科を問わず総合的な診療を行うことが不安なため自分の専門科の必要性が薄いと思うため設備の充実していない施設での医療提供が不安なため医療技術が遅れないか不安なため住民・風土に馴染めるか不安なため僻地の生活環境で暮らせないと思うため子供の教育・親の介護など、現在の住まいを移せないため自分が携わる必要があると思わないためその他Q4.コメントをお願いします(現在携わっている/以前携わっていた先生はその内容、充実している点・困った点など日々感じることやエピソード、携わっていない先生は理由・懸念点、そのほか僻地医療に関わることであればどういったことでも結構です)2013年4月26日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「住民にとっては無医村解消であっても、自分にとっては無医村なのが心配。医療はチームで考えるべき」(青森県,50代,循環器科)「僻地病院で約1週間単位での交代勤務をしている。常勤はやはりつらいと感じる。1週間交代での勤務は、医師によって「先送り診療」が生じ患者さんに不利益が生じることがある。もう少し長いスパンでの交代も望ましいかと思う。」(北海道,40代,産婦人科)「満足できる報酬と住民の理解が得られる事が最低条件。住民が「自分たちの税金で雇っている」という感覚で、いつでも診察を要求したり、生活を見張っていたりするような地域では、医師は居着かないのでは」(宮崎県,50代,循環器科)「赴任に関しては、ある程度の行政指導などの強制力(1-2年間くらい?)が必要なのかも」(福岡県,50代,外科)「僻地の方は病院へ2時間移動はざらですから、診療所が近くにあると喜ばれる。これだけでもやりがいに」(愛知県,50代,麻酔科)「本当に医療を必要に感じている人は自ら都会へ足を運びます。僻地医療という閉鎖的な響きを払拭し、各都市間で横の連携を深めないと、この時代に「あかひげ先生」を奨励してもしょうがないと思う」(北海道,40代,消化器科)「島に一人の医師でした。かなり重圧…」(京都府,50代,内科)「学会専門医や単位がいつとれるのか、維持できるのか?大学におけるインセンティブがとれるのか、不安になったことがあります。そのとき思ったのが交代制。必ず期間を区切ること、将来のキャリアアップにつなげることができれば、地域医療に一時的にかかわるのは悪くないと思いました」(北海道,40代,内科)「基幹病院の立場から協力しています。僻地の先生から無理難題を押し付けられることもありますが、できる範囲でこれからも協力したいと思います」(愛媛県,60代以上,脳神経外科)「東北の沿岸部で常勤。自然が豊かで、ダイビング・釣りなどできる。困ったのは、医師も住民も権利意識が強いこと、医療のレベルが低いこと(正しい医療より、保険点数重視)。今の病院・前の勤め先も津波でえらい目にあったが、楽しく前向きに仕事してます」(岩手県,60代以上,内科)「私のような特殊領域を専門とする医師は僻地の医療機関に常勤医としては不要である。但し、僻地の診療所の非専門医からのコンサルテーションは積極的に受託している。現在は当該医療機関の医師と私の個人的信頼感に基づいているが、公的ネットワーク(病理組織の遠隔診断のような)の構築が必要と思われる。」(京都府,50代,その他)「強制的にやっても無理でしょう。志のある人にやってもらえばいいと思う」(神奈川県,60代以上,消化器科)「広範囲の疾患に対応する必要があり、経験豊富な医師でないと務まらない」(秋田県,50代,内科)「一番の懸念は『一人きりの医師』として拘束される時間。それが解決できれば考える余地はある」(鹿児島県,50代,麻酔科)「期間限定ならかまいません。いろいろなところでの医療に携われるのは経験にもなって良いと思う」(北海道,40代,精神・神経科)「以前携わっていたのは風光明媚な所で、勤務ものんびりしていた。家族としては幸せだったらしいが、キャリアとしてはこのままではだめだという意識が常にあり、結局短期間でそこを離れることになった」(福島県,40代,内科)「定義によっては僻地とみなされない地域で勤務しています。子弟の教育に不利で、ちょっとした研究会への参加が困難。県庁所在地(むしろ医学部所在地か)や中央へ行くことが多く移動で疲労する。食事をする店もありません」(広島県,40代,内科)「非常勤で勤務していた先で、治療が必要な患者さんを診ても送り先を探すのに苦労した。人口も医療資源も少ない地域では現実的にできることは限られるし、勤務のストレスは大きくなる。医局制度があった当時のほうがまだよかったが、もう戻らない」(愛知県,40代,神経内科)「定年退職後、僻地とはいえませんが九州から北海道東部の重症心身障害児施設へ月に1週間けいれん患者の診療に行っています。そもそも重症心身障害児医療に従事する医師が少ない上に道東地区は医師の絶対数が少ない。多くの重症心身障害児を一人の医師が診て、巡回診療もしている。何とかならないかと愚考しています」(大分県,60代以上,小児科)「週2回、へき地のコミュニティーセンターの1室で1時間診療を行なっている。検査は心電図しかないが、患者さんには喜んでもらっています」(香川県,60代以上,循環器科)「常勤。郷里ではありますが、人間関係が濃厚すぎて…」(長崎県,40代,内科)「短期ボランティアで各地に行きます。外からの継続的な支援が、ずっと僻地医療に関わっている医療者の助けになればと」(神奈川県,30代以下,内科)「自分の老後にボランティア感覚で貢献したいとは思うが、現役バリバリのときはキャリアアップにつながる仕事をしたいので僻地医療をしているヒマはない」(京都府,30代以下,呼吸器科)「以前は数年おき交代の派遣で維持されていたが,医局制度の崩壊により片道切符になった」(石川県,40代,循環器科)「僻地医療は24時間の対応が必要でボランティア的な要素が大きい。自分の郷里若しくはお世話になった地域等でなければなかなかモチベーションを保てないのではないか。」(埼玉県,60代以上,内科)「50代後半にもなって僻地で生活したいとは思わない。24時間オンコールのような状態で、患者の転送システムもうまくいっている地域はごくわずかであろう。年収が3倍にでもしてくれないと」(宮城県,40代,内科)「へき地ではないが、田舎での勤務は経験あります。月に1週間、1年くらい通いました。どんな飲食店にいっても顔を知られていて、人々の話を時間的に並べるとその日の自分の行動が丸わかりになる。ちょっとしんどかった1年でした」(京都府,50代,呼吸器科)「僻地で長期間を経れば、現在の医療について行かれなくなり、離任した頃には次の行く先を失ってしまう。一定期間での確実な交代が不可欠であり、全く無関係の医師が行くことも好ましくない。かつてのように、医局単位で同門者から脈々と勤務者が派遣されることは、連続性という意味でも、非常に好ましい制度であったように感じている。」(東京都,50代,呼吸器科)「子供が成長して、一緒にいなくてもよくなれば考えるかも」(神奈川県,40代,小児科)「僻地医療の重症受け入れ機関で働いていたが、かかりつけ医との役割分担が不十分で、何でもかんでも大きな病院という患者が多く、体制づくりが必要と感じた」(千葉県,30代以下,総合診療科)「専門バカになっており、ジェネラリストとしてやっていけるかどうかが不安」(東京都,40代,神経内科)「家族の生活や子供の教育を考えると、一家揃って僻地に赴くことは現時点で不可能。ひとりで一手に引き受けるのも負担が大きく、複数の担当者でチームとして診療に当たれるような体制が望まれる」(福岡県,40代,泌尿器科)「離島での産科医療は、即断即決で常に背水の陣にあり、重圧を常に感じる。特に悪天候の折には、ヘリも高速ボートも使えず覚悟がいる」(佐賀県,60代以上,産婦人科)「以前は大学からのパートで僻地に行っていた。当時より高齢化しており、長期的には都市部に医療資源を集めるべきだと思うので、そちらに計画的に移ってもらうのが理想。それとは別に、医師全員が研修医の時期など一定期間必須で携わるべきだと思う。総合科の医療はそこにあるので勉強になる」(徳島県,40代,消化器科)「以前、僻地の公立病院に勤務。盆と正月は最悪。都会から患者の息子ら帰省、東京並みの医療を求めてクレーム。「しばらく見ないうちにこんなに弱っている。いったい今まで何を管理していたのか!」老親「先生、すみませんねえ」と申し訳なさそうに言うも、お亡くなりになれば、文句を言ってくるのは都会の息子らなので、もうこんな僻地ではやってられないと退職、都会に避難。僻地に住むなら、僻地で提供できる医療の範囲をわきまえてほしい」(大阪府,40代,呼吸器科)「妻帯者が通勤困難な僻地に単身赴任するのは家庭崩壊に繋がる為、独身の医師でないと務まらないと思われる」(宮城県,40代,循環器科)「お手伝いが出来ればいくらでもしたいという気持ちはあるが、かなりの専門性が問われるようになり、大変厳しい時代になっていると思う」(東京都,50代,皮膚科)「そもそも医療に限らず十分なサービスを望むものはそれが充実した地域に移住すべきだと考えています。僻地に住むのは、不便であることを含めて住むということ。よって、医療サービスを無理して僻地に持っていく必要は全くないと思う」(福岡県,40代,皮膚科)「若い時期は自分の能力を向上させるため僻地にとどまることができないと思うし、年をとると体力的に役立つことができなくなるしで、結局僻地医療に従事できなかった。 一度僻地に行くと交代の医師がいない限りやめることができない懸念があるので、派遣の形でも交代医師を確保する体制が必要だと思います。僻地医療の良さもあるはずですので、誰もが一度は経験する機会を制度として組み込むのも良いかと思う」(神奈川県,60代以上,精神・神経科)「5km四方に医療機関はなく救急車もないような山奥の寒村に、短期間ではあったが一人でいた。数十年前の話では参考にもならないだろうが、オートバイで峠を越えての往診で帰路の降雨で峠を越せず、患者宅に戻り車を預けて熊でも出そうな夜の山道を帰ってきて半日を消費し、その間の外来患者さんを診られなかったことや、簡単な手術と思ってもたった一人で実施したことなどを振り返ると、何も起こらなかったのはただ幸運だっただけ。実は冷や汗ものだったので、若気の至りでもなければ出来る事ではない」(東京都,60代以上,産婦人科)「私自身はいい思い出しかありません。住民の方も優しい方が多かったですし、むしろ地域病院で臨床力をつけたと思っています」(和歌山県,50代,内科)「単なる人員確保として高額な給与を提示したり、医学生や研修医の囲い込みを図っているようにしか見えないが、非効率な上に役にたたず、問題だらけだと思う。一番良いのは「経験もあって」「人脈もしっかりしていて」「自分の家族、特に子育てを終了している」一般に定年を過ぎた老人医師でグループを形成し(一人や二人にすべて押し付けるのではなく!)週2~3日程度の勤務であれば、人は集まると思うし実際の役に立つ。資源(老人医師)の有効活用にもなる。そういう勤務なら田舎暮らししようという気になる連中はたくさん知っている。 あとは、過疎地域の社会生活をどうやって成り立たせて行くのか、統廃合するのか、もっと高い視点から俯瞰した行政のビジョンと手腕が必要である。けして小手先の対応策に逃げないでほしい」(長野県,50代,外科)「常勤です。田舎なのでのんびりしてますが、子供を通わせたい進学校は遠く、いずれ息子を下宿させるか、自分が単身赴任するかを選ばなくてはいけなくなっています。 買い物も週に2回車で40分かかるスーパーに行ってますが、更に奥の部落からだと1時間半、救急車が指定病院に到着するまでも同じくらい掛かります」(秋田県,40代,内科)「自分の診療所を閉めたら考えたいが、その時自分は役に立たないかもしれません」(東京都,50代,内科)「僻地にも医師は不足していると思うが、都会でも医師が充実しているところは一部で、現職場では全くの人材不足。また、やはり家族の問題が大きい。自分一人なら良いが、家族も一緒には連れて行けないし離れて暮らすつもりはない」(兵庫県,40代,内科)「僻地医療の充実に必要なコストと僻地に住む人が病院にアクセスできるよう道路整備を行うコストを比較してよりコストパフォーマンスの高い方法を選択すると良いのでは?僻地に常勤医は医療資源の無駄遣いのように思います。医療の不充実などのデメリットを承知の上で住んでいると思う。限られた予算ですべての要求を満たすことは不可能でしょ」(広島県,30代以下,整形外科)「僻地に都市並みの医療機関は必要ない。現状の僻地医療は補助金で運営されているのが現状であり、受益者負担になっていない。一票の格差同様、極めて不平等である」(北海道,40代,内科)「スタッフが多かった頃は離島の応援業務に出ていましたが、今は人数的に不可能です。離島に関しては、常勤を希望するDrが不在の場合は、回り持ちで応援するシステムを構築するのが理想だと思います。」(京都府,50代,産婦人科)「現在常勤である。敷居は高くないので、多くの先生方に積極的に関わって頂きたい」(長野県,50代,呼吸器科)「24時間365日の待機体制。1日外来数100名。有床診で重症者多数。深夜0時以降も毎日のように呼び出され、週1~2回は地域の集会にも呼ばれる。感謝されることもあるが、「当然」と思っている住民が多く、身が持たない。離島の診療所で2年間勤務したが、一時期は医師を辞めることも考えたくらいで、疲弊して帰ってきた。今は地方の病院勤務だが、二度と関わりたくない」(鹿児島県,40代,内科)「放射線治療をずっとやってきたので、大病院での勤務が続いたが、定年退職後は総合診療医としてへき地医療を考えている」(岡山県,60代以上,放射線科)「僻地医療に機会があれば一度は携わりたいと思います。しかし僻地医療に携わるためには総合内科としてのスキルがある程度必要であり、ある程度医療経験が必要であり、若いうちに行くことは難しいと思います。逆に30-40歳になると家庭があり難しい面もあると考えます」(香川県,30代以下,内科)「40才前半で医局より派遣。学位と引き換えでしたが。すべて1人ということで24時間勤務。対応をある程度断らないと自分の体がもたない。自分の体と、家庭、使命感のはざまでした。3~4人で埋めればなんとかなるのだろうが。人件費等を考えると、へき地医療は公立病院の使命ではないか。公費、税金でマイナスを補てんしているのですから。めんどくさいことはすべてお断り、9時~5時ただいるだけというような公立病院は廃止して、その分へき地医療に充てればよい。」(東京都,50代,内科)「家族のため現在は難しいのですが、その状況が変化すれば考えてみたいです。好きな地方があるのでそこへ行きたいです」(東京都,30代以下,泌尿器科)「結局、余所者という立場からは脱却できないのではないかという懸念がある。高待遇で呼ばれても、村長が『自分より高い給料はけしからん』といって待遇が変われば、それらの付加価値はすぐなくなるであろう。それに対して地元民が擁護してくれるとは思えず、結局使い捨てになるのではないか?自然の中でのんびりは幻想だと思う」(滋賀県,40代,小児科)「以前の勤務先で、無医地区での健診を行っていた。その際は自分の専門範囲のみ、1日ずつだったので、大きな支障はなかった。しかし、とかくそうした地域では、一人の医師に広範囲の役割を求められるので、長期にわたって「何でも屋になれ」と言われると、まったく自信がないしお役に立てない。」(北海道,40代,小児科)「山間部のへき地病院に大学から派遣されたことがあるが、給与は自治医大出身の先生の半分以下。同じ仕事をしているのに、とやる気が失われた。公平な対応が必要では」(佐賀県,40代,内科)「現在の職場を辞められないため無理ですが、嫌いではありません。またやってみたい気持ちはあります」(秋田県,40代,外科)「以前関わっていたが、地域住民・行政の理解が得られないことが多々あり、責任の押し付けをされる、協力してもらえない等、精神的に過酷な状況に追い込まれる医療であった」(北海道,40代,循環器科)「僻地において医療だけを充実させることは無理 すべてのインフラに対する投資が必要。投資をしないならば僻地から住民を都市部に移動させるしか選択枝は無い」(京都府,40代,皮膚科)「不定期の診療では、患者さんの変化に応じた医療の提供が難しい」(北海道,50代,泌尿器科)「24時間身をささげる覚悟(在宅死の看取りなど)はないが、慢性疾患の管理であれば考えたい」(熊本県,30代以下,循環器科)「現在携わっており、200床程度の病院、常勤医は18名のみ。小児科医師は私一人でして、限界を感じながらも奮闘中です」(熊本県,60代以上,小児科)「勤務は総合病院ですが、地理的に僻地。一番困るのは、信頼されていないこと。手術適応の患者は都会での手術を希望し、面倒くさい検査やその後の経過観察のみを要求します。そのため、紹介する時は終診として、今後の診察を拒否させてもらっています。医師としての態度が歪んでいると批判されるかもしれませんが、歪みの原因は患者側にもあると思っています」(青森県,40代,泌尿器科)「僻地医療の過疎化は以前からあったが、厚労省主導の新臨床研修制度により、ますますひどくなったのが現実。今や、東京の一人勝ちでしょう?何故各県に一医大を作って行ったのか、その原点に戻るべきじゃないのかな。僻地医療はその延長線上にあるんだから」(千葉県,40代,循環器科)「輪番制で強制的にいく制度を作るしかないと考えます」(北海道,50代,内科)「私は400床程度の急性期病院の院長です。近隣の国保の診療所にて週一度、半日の代診をしています。人口3000人余のこの地域は、地理条件的にへき地とはいえませんが常勤の医師がいません。しかし交通事情が良いので、住民は近郊の町の医療機関にかかっており、診療所を利用する方は多くありません。在宅医療などのニーズ把握が十分でなく、潜在的なニーズ把握調査を行ってくれる保健師などもおらず受身の代診医の限界を感じています。行政に働き掛けていますが、なかなかうまくいきません」(香川県,60代以上,外科)「病院の医師の数が少なく、研究会や講演会、学会などに参加する機会がほとんど与えられなかった。そのあたりの改善がはかられたら、うれしいです。」(大阪府,40代,精神・神経科)「現在の仕事に加えての僻地医療に関しては、まず時間を割くことが困難。 個人で関わるのではなくチームやグループで対応しないと個人の負担があり途中で疲弊してしまうのではないだろうか。現在の医療の実態・限界・経営面なども僻地に暮らす住民も含め相談し検討する必要がありと思われる。」(福岡県,40代,内科)「患者さんも僻地と認識しているので、当院でできる治療であっても、都会に行ってしまう傾向が残念」(北海道,30代以下,内科)「医療のみならず生活を支える様々なインフラの整備が困難となっており、医師・スタッフを派遣すれば問題が解決するわけではないと考える。経済性や効率面などから、居住地の集約化の議論が避けられないのでは」(岡山県,40代,血液内科)「子育てが落ち着き、ある程度の設備が整っていれば、一度は携わってみたいと思う」(三重県,30代以下,眼科)「皮膚科以外は全く診療不能なため、自分は無理」(神奈川県,40代,皮膚科)「できない、やるべきでないのに田舎でも高次医療を求められる」(広島県,40代,内科)「『リタイアしたら考えても良い』『リタイアしたら、もう医療はしたくない』との思いの間で揺れています。しかし実際に赴任するとなると、引っ越しや家族の説得、新たな人間関係の構築など、煩わしいことがいっぱいあるため、なかなか踏み出せないのが実情。そういう思いの高齢の先生方が実は多いのでは?そこをクリアできれば潜在的な供給源はあるようにも思う」(大阪府,60代以上,内科)「僻地医療は専門分野をまたいで様々な疾患を広く浅く診られなくてはいけない。 その点が足かせになっているのではないか」(秋田県,40代,消化器科)「以前過疎地に勤務していた先輩が、地域の政治対立に巻き込まれ辞任せざるをえなくなったのを経験しました。秋田の医師追い出し事件や愛媛での町立病院高給訴訟など、僻地住民が自分の土地に医療を必要としているのか、疑問に感じる事件を多々目にします。必要だと思ってもらえないなら、誰もそんな所に行きたくないのでは」(愛媛県,40代,代謝・内分泌科)「中山間地域の在宅医療に関わっています。今後高齢化が更に進むと病院へ足を運ぶことが困難な患者が更に増えていくため巡回診療等も必要ではないかと考えています」(静岡県,50代,外科)「関わっていた当時(約20年前)に比べると、必要な医療情報の入手は格段に容易となった。都市部の「地域医療」とは異なった独特の魅力を持つ「僻地医療」は、将来の選択肢の一つである」(北海道,50代,整形外科)「僻地医療の限界を、患者や住民、マスコミがある程度理解しないと医師は減り続けると思う。都会の高度医療圏と同じレベルの医療を受けることを当然としている人々が多すぎる」(北海道,40代,循環器科)「僻地にコストをかけて十分な医療を提供するのは国家にとってかなりの負担になる。住民にもしっかり負担させるべき」(長崎県,30代以下,皮膚科)「都市部の多忙な病院勤務で空き時間がないため携われていないし、子供の教育の問題で僻地に赴くことができない 年に何回か1~2週間ずつであれば行ける可能性がある」(兵庫県,50代,外科)「研修医です。将来携わる予定です。日本では在学中にそういう経験をする機会が少ないからか、僻地医療を見下したり興味がないと言い切れる先生が多いことを悲しく思っています」(石川県,30代以下,内科)「以前携わっていたが、とにかくよそ者に対する住民の目がうるさい」(静岡県,50代,呼吸器科)「地方で開業していますが、患者さんのブランド志向や家族の入院施設入所志向は強く、時間外診療とか往診等で苦労しても知らないうちに入院していたり、急に入院目的の紹介を頼まれたりして、自分の時間を削ったのにと思ったりします。心底信頼されるとか金銭になるとかの見返りを求めない方なら良いが、いろいろな意味で僻地診療は困難と思います(政府は在宅在宅といいますが、若い方で親の在宅医療を希望される方は今はごく少数派)」(広島県,50代,内科)「当科の診療には高度な検査機器が必要なため,僻地現場での精査・加療は困難である.むしろ,地域のネットワークでドクターヘリなどが広く準備される環境が望ましいと考える」(石川県,50代,脳神経外科)「奥能登など人口の著しい減少地帯では、もう手遅れではないかと思う。医師の倫理観だけでは何もできない。社会的な対応が必要である。」(富山県,50代,精神・神経科)「時々代診に行くのを楽しみにしています。普段は専門領域のみですが、代診で幅広い領域を診察したり、往診に行ったりするのは医師になった原点を思い出すことにもなりいい経験です。豪雪だと、行き帰りが大変で困りますが」(福井県,40代,循環器科)「携わるべき人材の育成をしないと成り立たない。自治医大が出来た時には各県から2名ずつ程、奨学金を貰って卒業し卒業後は県に戻るとなっていたが、結局お金を払って自分の選んだコースへ進む人が大部分で僻地へは行かない状況です。『僻地医療大学』でも作って、卒業したら20年位は僻地医療への従事義務を負わせる事にでもしないと解決出来ないと思います」(神奈川県,60代以上,泌尿器科)「30年間専門科のみの診療を行ってきており、言ってみれば大学卒業直後の研修医より他の診療科の知識が乏しい。自分の専門科として僻地病院で勤務するのなら可能だろうが、総合診療、一般救急を担当することは困難と考える」(新潟県,50代,産婦人科)「研修医のときに関わりました。結構楽しく充実した日々でしたが、自分の生活もあり長期では出来ないと思いました」(千葉県,30代以下,精神・神経科)「伊豆諸島のひとつに1ヶ月間いた。当時の住民人口約700人プラス観光客に対して、医師は自分一人。診療所の勤務は月曜から土曜の午前中だけであったが、交代の医師が来るまで島に缶詰なので、一人で24時間オンコール体制であった。夜中にステルベンがあったり、緊急でヘリや船をチャーターして患者を本土に送ったりしたときは大変で早く戻りたかったが、のんびりした時間が心地よく、帰る頃には『もう少し居たい」と思うようになった。」(東京都,50代,呼吸器科)「現在常勤。行政や議会が医療崩壊の実態に無理解で、自分たちのこととして考えていない。行政は医療になるべく金をかけまいとし、病院をお荷物であるかのように扱う。 定期的に医師の交替があるのに、住民は「田舎に来る医師は都市部よりレベルが低い」と信じ込んでいる。へき地であっても、コンビニ受診、クレームも多い。開業医は夜間診ないで中核病院に押し付ける。医師偏在があるのに大学は医師を引き上げて都市部へ異動させる」(大分県,50代,外科)「医療に対する目が厳しく、こちらが良しと考え行った治療も、結果が悪ければ訴えられる時代であり、困難な症例の場合、相談する医師のいない僻地ではリスクが大きすぎる。」(兵庫県,50代,代謝・内分泌科)「人口3000人程度の村の診療所に勤務していたが(診療所の2階に居住)、夜間・休日に遠方へ出かけた際、時間外の診察に応じられなかったことがある。特に義務があるわけでもないし、緊急の診察依頼でもなかったが(風邪程度)、拘束されている感じがしてかなりストレスだった。代診も頼めず、研修などを急遽中止したこともある」(鳥取県,40代,内科)「子供の教育を考えると難しい。子供を犠牲にしてまで僻地医療に貢献しなければならない、とは思わない。非常勤で月に何回か手伝いに行くという形でなら,もしくは報酬次第では手伝いに行きたい、という医師は多いだろう」(東京都,30代以下,小児科)「都会で生活している身には正直あまり考えたことない内容でしたが、僻地医療は大切だと思います。ただ、小規模な病院をたくさん作るよりは、基幹病院を充実させ、そことの連携を図る方が重要だと考えます」(大阪府,30代以下,呼吸器科)「地方都市の郊外で開業していますが、当医院より山奥はまさに僻地で、限界集落ばかりです。人口が少なく、医療機関の新規立地は困難。開業医も高齢化しつつあり、医療格差が広がっていると思います。僻地医療にインセンティブでもないとやっていられない」(新潟県,50代,内科)「できれば協力したいと考えている方ですが、休みの予定が全く立たないような勤務は私の年齢では無理です。ある程度の医師のいる施設や、非常勤や外来だけであれば将来的には可能」(熊本県,50代,循環器科)「医療圏に僻地を含んだ総合病院に勤務していた。僻地からの患者は、医療を受けず/受けられず、いよいよ重症という時になってようやく救急車で運ばれてくる、というパターンが多かった」(東京都,30代以下,代謝・内分泌科)「四十数年前に大学の医局から派遣されたことがある。大都会での研修ばかりでなく、制度として昔のように大学から赴任させる制度の復活が望まれる」(兵庫県,60代以上,小児科)「自分の専門性が活かせるとは思うが、家族の理解が得られない」(京都府,50代,総合診療科)「僻地自治体の取り組みに温度差が大きく、すぐに医師が辞めてしまう話を聞きます。地域住民も意識が低いようです。給与を多くすると住民が離れ、安いと誰も赴任してきません。私の元本籍地の現状です」(京都府,50代,産婦人科)「以前に僻地医療を行っていたことがあるが、特権意識がある、あるいは赴任してくる医師を小馬鹿にしたような意識がある方が住民の一部におられる。住民も街の医療機関への志向が強いようであり、医療機関がそこにある必要性がないのであろう」(広島県,50代,脳神経外科)「僻地勤務ですが,地域救急病院への搬送は遠くても40分以内で可能です。加齢と共に勤務は大変になってきましたが、気力のある限りは留まりたいと考えています」(岐阜県,60代以上,内科)「週一回、大学より山奥へ土日の一泊で行っていた。急患の手術必要時は麓まで下ろしていた。空気はうまいし人は温かかった」(徳島県,60代以上,内科)「自分は携わっていませんが、実家がへき地の診療所なので苦労は聞いています。家族含めて住民とその土地の雰囲気に慣れるか、教育レベルを維持できるか、給料格差に対して妬みなど受けないかなど気を使うことが多いようで、自分にはできないなと思います」(埼玉県,50代,代謝・内分泌科)「赴任期間が長くなると、近隣の市中病院との医療レベルの差が顕著に。意識的な自己研鑽の時間が必要になると思う」(青森県,50代,皮膚科)

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キャッスルマン病〔Castleman's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義キャッスルマン病は多様な病態を呈する多クローン性リンパ増殖疾患であり、臨床的に限局型と多中心(全身)型に大きく分類される。限局型では無症状で経過することが一般的であるが、多中心(全身)型では多くが血清IL-6の上昇に伴う全身倦怠感、発熱、貧血、高CRP血症、低アルブミン血症、高γグロブリン血症などの多彩な症状を伴う。欧米では、human immunodeficiency virus(HIV)感染を基礎としたhuman herpes virus(HHV)-8の感染が原因となっている症例が多いが、わが国ではHIV感染と関連のないHHV-8陰性の症例がほとんどである。■ 疫学1)患者数希少な疾患であり、国内に約1,500人と推測する資料もあるが、正確な数は不明である。2)病型臨床的には限局型(localized type/unicentric Castleman's disease: UCD)と多中心(全身)型(multicentric Castleman's disease: MCD)に分類される。病理学的には、形態からhyaline-vascular type(HV type)とplasma cell type(PC type)に分類されるが、両者の中間型(mixed type)も見受けられる。一般的に限局型はHV typeの病理像を示し、多中心型はPC typeの病理像を示すことが多い。割合としてはHV typeが全体の約90%を占め、残りの約10%がPC typeまたは中間型とされている。上述の通り、限局型は無症状で経過することが多く発症年齢が若年の傾向があるが、多中心(全身)型はIL-6産生の亢進に伴う多彩な症状を呈することが多く、50~60代の中・高年に好発がみられる。■ 病因欧米ではHIV感染による免疫不全を背景としたHHV-8感染が基礎となるケースが多く、IL-6のviral homologyであるvIL-6がHHV-8によって産生されることが病因と考えられている。また、HIV感染のない症例でもHHV-8が陽性の症例が多い。一方、わが国ではHIV感染を伴う例は珍しく、HHV-8自体もほとんどの症例で検出されない。まったく別の病因が関係しているものと考えられるが、いまだ不明な点が多く、特定はされていない。■ 症状1)限局型典型的には縦隔リンパ節の腫脹がみられるが、他のリンパ節やリンパ節以外の部位に病変を形成することもしばしばある。周囲臓器の圧迫に伴う症状が出ることはあるが基本的には無症候性であり、画像検査で偶然発見されるケースもある。まれに多中心型のような症状を呈するもの例もみられる。2)多中心(全身)型多中心型では全身リンパ節腫脹がみられ、IL-6の過剰産生に伴うリンパ球・形質細胞の増加、慢性炎症、血管新生などにより、以下の表に示すような多彩な症状がみられる。リンパ節以外に肺、腎、神経、皮膚などにも病変を形成することがある。画像を拡大する■ 予後限局型は無症候で経過し、完全切除により予後は非常に良好である。一方、多中心(全身)型は、日本人の多くは緩徐な経過を辿るケースが多いが、時に進行性のものもある。ステロイド治療によりコントロール良好な例もあるが、多くは抗IL-6受容体抗体の適応になることが多い。また、治療抵抗性となり多臓器不全に陥って死亡するケースも存在する。HIV陽性例では陰性例よりも急速に進行することが多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断1)限局型一般的に症状はないが、血液検査所見は正常範囲のものと炎症反応や貧血を伴うものがある。後者では病変部の摘出で正常化するものが多い。病変部の切除生検による病理組織診断が行われる。2)多中心(全身)型診断基準は確立されていない。症状も多彩で非特異的であるため、臨床経過や血液検査所見、画像所見を総合的に判断する必要がある。鑑別疾患としては、悪性リンパ腫、POEMS症候群、膠原病、感染症、IgG4関連疾患などが挙げられる。画像を拡大する画像を拡大する■ 病理診断最終的な確定診断は病理組織診断で行われる。上述のように、形態からHV typeとPC typeに分けられる。HV typeは以下に挙げる特徴的な所見を有することが多いが、PC typeの病理組織像は非特異的な所見が主体で、膠原病や薬剤に対する反応性リンパ節腫脹、IgG4関連疾患などと鑑別が困難なことが多い。そのため、キャッスルマン病は、初診から確定診断に至るのに長期間を要する場合もまれではない。臨床所見、血液検査結果、画像所見などとで総合的に判断する必要がある。画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)キャッスルマン病の治療については、症例数の少なさもあり無作為化試験が組まれたことはなく、標準的な治療法は確立されていないのが現状である。限局型は、完全切除によりほぼ全例で治癒が見込まれる。全身型についてはステロイドの投与が基本であるが、ステロイド抵抗例では、抗IL-6受容体抗体(トリシズマブ)の適応となる。■ 限局型一般的に無症候性で予後良好であるが、悪性リンパ腫などの腫瘍との鑑別が必要となるため、病理組織による確定診断の意味も含め、病変部を切除することが多い。症状がある場合でも完全切除により症状の消失が期待できる。第1選択は完全切除であり、切除が難しい場合には局所放射線治療が選択されることもある。■ 全身型症状がある場合は、一般的にはステロイドの全身投与が行われる。無症状の場合は経過観察も選択肢となる。海外ではリツキシマブ(商品名:リツキサン)が使用されることがあるが、日本ではキャッスルマン病に対する使用については、まだ保険適応となっていないのが現状である。免疫抑制薬や化学療法が選択されることがあるが、見解の一致を得ない。抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブ(同:アクテムラ)が2005年に承認されてからは、ステロイド抵抗例で使用され、効果を挙げている。HIV陽性例についてはリツキシマブや抗がん剤などが使用されるが、わが国でのHIV陽性例はまれであり、知見は少ない。4 今後の展望全身型キャッスルマン病の治療には、ステロイドを用いるのが一般的であるが、ステロイド抵抗性の症例や耐糖能に問題のある症例では管理が難しくなる。近年では、抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブの有効性が示されてきており、今後はこのような分子標的薬がkey drugに加わっていくと考えられる。5 主たる診療科血液内科、免疫内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報社会福祉法人 復生あせび会(希少疾病患者の会)1)Van Rhee F, et al. Clinical advances in hematology & Oncology. 2010; 8: 486-498.2)本田元人. HIV感染症とAIDSの治療. 2012; 3: 12-18.3)西本憲弘. 実験医学. 2010; 28: 2026-2031.

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リハビリテーション中の転倒事故で死亡したケース

リハビリテーション科最終判決平成14年6月28日 東京地方裁判所 平成12年(ワ)第3569号 損害賠償請求事件概要脳梗塞によるてんかん発作を起こして入院し、リハビリテーションを行っていた63歳男性。場所についての見当識障害がみられたが、食事は自力摂取し、病院スタッフとのコミュニケーションは良好であった。ところが椅子坐位姿勢の訓練中、看護師が目を離したすきに立ち上がろうとして後方へ転倒して急性硬膜下血腫を受傷。緊急開頭血腫除去手術が行われたが、3日後に死亡した。詳細な経過患者情報既往症として糖尿病(インスリン療法中)、糖尿病性網膜症による高度の視力障害、陳旧性脳梗塞などのある63歳男性経過1997年1月から某大学病院に通院開始。1998年9月14日自らが購入したドイツ製の脳梗塞治療薬を服用した後、顔面蒼白、嘔吐、痙攣、左半身麻痺などが出現。9月15日00:13救急車で大学病院に搬送。意識レベルはジャパンコーマスケール(JCS)で300。血圧232/120mmHg、脈拍120、顔面、下腿の浮腫著明。鎮静処置後に気管内挿管し、頭部CTスキャンでは右後頭葉の陳旧性脳梗塞、年齢に比べ高度な脳萎縮を認めた。02:00その後徐々に意識レベルは上昇し(JCS:3)抜管したが、拘禁症候群のためと思われる「夜間せん妄」、「ごきぶりがいる」などの幻覚症状、意味不明の言動、暴言、意識混濁状態、覚醒不良などがあり、活動性の上昇がなかなかみられなかった。9月19日ベッド上ギャッジ・アップ開始。9月20日椅子坐位姿勢によるリハビリテーション開始。場所についての見当識障害がみられたものの、意識レベルはJCS 1~2。「あいさつはしっかりとね、しますよ。今日は天気いいね」という会話あり。看護記録によれば、21:00頃覚醒す。その後不明言動きかれ、失見当識あり夜間時に覚醒、朝方に入眠する。意味不明なことをいう時もある朝方入眠したのは、低血糖のためか?BSコントロールつかず要注意ES自力摂取可も手元おぼつかないかんじあり。呂律回らないような、もぐもぐした口調。イスに移る時めまいあるも、ほぼ自力で移動可ES時、自力摂取せず、食べていてもそしゃくをやめてしまう。ボオーッとしてしまう。左側に倒れてしまうため、途中でベッドへ戻す時々ボーッとするのは、てんかんか?「ここはどこだっけ」会話成立するも失見当識ありES取りこぼし多く、ほとんど介助にて摂取す9月21日09:00全身清拭後しばらくベッド上ギャッジ・アップ。10:30ベッド上姿勢保持のリハビリテーション開始。場所についての見当識障害あり「俺は息子がいるんだ。でもね、ずっと会っていないんだ」「家のトイレ新しいんだよ。新しいトイレになってから1週間だから、早くそれを使いたいなあ。まだ駄目なの?仕方ないねえ。今家じゃないの?そう。病院なの。じゃあ仕方ないねえ」11:00担当医師の回診、前日よりも姿勢保持の時間を延ばし、食事も椅子坐位姿勢でとるよう指示。ベッドから下ろしてリハビリ用の椅子(パラマウント社製:鉄パイプ製の脚、肘置きのついた折り畳み式、背もたれの高さは比較的低い)に座らせた。その前に長テーブルを置いて挟むように固定し、テーブルの脚には左右各5kgの砂嚢をおいた。12:00看護師は「食事を取ってくるので動かないでね」との声かけに頷いたことを確認し、数メートル先の配膳車から食事を取ってきた。準備された食事は自力でほぼ全部摂取。食事終了後、看護師は患者に動かないよう声をかけ、数メートル先の配膳車に下膳。12:30食後の服薬および歯磨き。このときも看護師は「歯磨きの用意をしてくるから動かないでね」、「薬のお水を持ってくるから動かないでね」と声をかけ、患者の顔や表情を観察して、頷いたり、「大丈夫」などと答えたりするのを確認したうえでその場を離れた。13:00椅子坐位での姿勢保持リハビリが約2時間経過。「その姿勢で辛くないですか」との問いに患者は「大丈夫」と答えた。13:10午後の検査予定をナース・ステーションで確認するため、「動かないようにしてね」と声をかけ、廊下を隔て斜め向かい、数メートル先のナース・ステーションへ向かった。その直後、背後でガタンという音がし、患者は床に仰向けで後ろ側に転倒。ただちに看護師が駆けつけると、頭をさすりながらはっきりした口調で「頭打っちゃった」と返答。ところが意識レベルは徐々に低下、頭部CTスキャンで急性硬膜下血腫と診断し、緊急開頭血腫除去術を施行。9月24日20:53死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.予見可能性坐位保持リハビリテーションはまだ2日目であり、長時間のリハビリテーションは患者にとって負担になることが予見できた。さらに場所についての見当識障害があるため、リハビリテーション中に椅子から立ち上がるなどの危険行動を起こして転倒する可能性は予見できた2.結果回避義務違反病院側は下記のうちのいずれかの措置をとれば転倒を回避できた(1)リハビリテーション中は看護師が終始付き添う(2)看護師が付添いを中断する際、リハビリテーションを中断する(3)長時間の坐位保持のリハビリテーションを回避する(4)車椅子や背丈の高い背もたれ付きの椅子を利用する、あるいは壁に近接して椅子を置くなど、椅子の後方に転倒しないための措置をとる(5)リハビリテーション中に立ち上がれないように、身体を椅子にベルトなどで固定する病院側(被告)の主張事故当時、患者は担当看護師と十分なコミュニケーションがとれており、「動かないようにしてね」という声かけにも頷いて看護師のいうことを十分理解し、その指示に従った行動を取ることができた。そして、少なくとも、担当看護師がナース・ステーションに午後の検査予定を確認しにいき戻ってくるまでの間、椅子坐位姿勢を保持するのに十分な状態であった。当時みられた見当識障害は場所についてのみであり、この見当識障害と立ち上がる動作をすることとは関係はない。したがって本件事故は予測不可能なものであり、病院側には過失はない。裁判所の判断1. 予見可能性事故当時、少なくとも看護師に挟まれた状態では自分で立っていることが可能であったため、自ら立ち上がり、または立ち上がろうとする運動機能を有していたことが認められる。そして、看護師の指示に対して頷くなどの行動をとったとしても、場所的見当識障害などが原因で指示の内容を理解せず、あるいはいったん理解しても失念して、立ち上がろうとするなどの行動をとること、その際に体のバランスを失って転倒するような事故が生じる可能性があることは、担当医師は予見可能であった。2. 結果回避義務違反転倒による受傷の可能性を予見し得たのであるから、担当医師ないし看護師は、テーブルを設置して前方への転倒を防ぐ方策だけではなく、椅子の後ろに壁を近接させたり、付添いを中断する時は椅子から立ち上がれないように身体を固定したり、転倒を防止するために常時看護師が付き添うなどの通常取り得る措置によって、転倒防止を図ることが可能であった(現に5kgの砂嚢2個を脚に乗せたテーブルを設置して前方への転倒防止策を講じていながら後方への転倒防止策は欠如していた)ので、医療行為を行う上で過失、債務不履行があった。2,949万の請求に対し、1,590万円の支払命令考察病院内の転倒事故はすべて医療過誤?今回の患者は、インスリンを使用するほどの糖尿病に加えて、糖尿病性網膜症による視力障害も高度であり、以前から脳梗塞を起こしていた比較的重症のケースです。そして、医師の許可なく服用したドイツ製の治療薬によって、顔面蒼白、嘔吐、左半身麻痺、てんかん発作を発症し、大学病院に緊急入院となりました。幸いにも発作はすぐに沈静化し、担当医師や看護師は何とか早く日常生活動作が自立するように、離床に向けた積極的なリハビリテーションを行ないました。このような中で起きたリハビリ用椅子からの転倒事故です。その直前の状況は、「ここはどこだっけ」といった場所に関する見当識障害はあったものの、担当医師や看護師とはスムーズに会話し、食事も自力で全量摂取していました。はたして、このような患者を担当した場合に、四六時中看護師が付き添って看視するのが一般的でしょうか。ましてや、看護師が離れる時は患者が転倒しないように椅子に縛り付けるのでしょうか?もし今回の転倒前にもしばしば立ち上がろうとしたり、病院スタッフの指示をきちんと守ることができず事故が心配される患者の場合には、上記のような配慮をするのが当然だと思います。しかし、今回の患者は、とてもそのような危険が迫っていたとはいえなかったと思います。ところが、判決では「場所に関する見当識障害」があったことを重要視し、この患者の転倒事故は予見可能である、そして、予見可能であるのなら転倒防止のための方策を講じなければならない、という単純な考え方により、100%担当医師の責任と判断しました。実際に転倒現場に立ち会わなかった医師の責任が問われているのですから、きわめて厳しい判決であると思いますし、このような考え方が標準とされるならば、軽度の認知症の患者はすべて椅子やベッドに縛り付けなければならない、などという極論にまで発展してしまうと思います。最近では、高齢者ケアにかかわるすべてのスタッフに「身体拘束ゼロ作戦」という厚生労働省の指導が行われていて、身体拘束は、「事故防止の対策を尽くしたうえでなお必要となるような場合、すなわち切迫性、非代替性、一時性の三つの要件を満たし、「緊急やむを得ない場合」のみに許容される」としています。確かに、身体拘束を減らすことは、患者の身体的弊害(関節拘縮や褥瘡など)、精神的弊害(認知障害や譫妄)、社会的弊害をなくすことにつながります。ところが実際の医療現場で、このような比較的軽症の患者に対し一時的にせよ(看護師が目を離す数秒~数十秒)身体拘束をしなかったことを問題視されると、それでなくても多忙な日常業務に大きな支障を来たすようになると思います。ただ法的な問題としては、「利用者のアセスメントに始まるケアのマネジメント過程において、身体拘束以外の事故発生防止のための対策を尽くしたか否かが重要」と判断されます。つまり、入院患者の「転倒」に対してどの程度の配慮を行っていたのか、という点が問われることになります。その意味では、患者側が提起した、(1)リハビリテーション中は看護師が終始付き添う(2)看護師が付添いを中断する際、リハビリテーションを中断する(3)長時間の坐位保持のリハビリテーションを回避する(4)車椅子や背丈の高い背もたれ付きの椅子を利用する、あるいは壁に近接して椅子を置くなど、椅子の後方に転倒しないための措置をとる(5)リハビリテーション中に立ち上がれないように、身体を椅子にベルトなどで固定するという主張も(若干の行き過ぎの感は否めませんが)抗弁しがたい内容になると思います。事故後の対応そのような考え方をしてもなお、このケースは不可抗力という側面が強いのではないかという印象を持ちます。今回事故が起きたのは大学病院であり、それなりに看護計画もしっかりしていたと思いますし、これが一般病院であればなおさら目の行き届かないケースがあり、事故発生のリスクはかなり高いと思います。そして、今回のケースが院内転倒事故に対する標準的な裁判所の判断になりますので、今後転倒事故で医事紛争にまで発展すると、ほとんどのケースで病院側の過失が認められることになるでしょう。とはいうものの、同様の転倒事故で裁判にまでいたらずに解決できるケースもあり、やはり事故前の対策づくりと同様に、事故後の対応がきわめて重要な意味をもちます。まずは入院時に患者および家族を教育し理解を得ることが肝心であり、転倒が少しでも心配されるケースにはあらかじめ家族にその旨を告知し、病院側でも転倒の可能性を念頭に置いた対応を行うことが望まれます。と同時に、高齢者を多く扱う施設では賠責保険を担当する損害保険会社との連携も重要でしょう。たとえば、小さな子供を扱う保育園や幼稚園では、子供同士がぶつかったり転倒したりなどといった事故が頻繁に発生します。その多くがかすり傷程度で済むと思いますが、中には重度の傷害を負って病院に入院となるケースもあります。そのような場合、保護者から必ずといって良いほど園の管理責任を問うクレームがきますが、保母さんにそこまで完璧な対応を求めるのは困難ではないかと思います。そこで施設によっては、治療費や慰謝料を「傷害保険」でまかなう契約を保険会社と交わして事故に備えるとともに、場合によってはその保険料を家族と折半するなどのやり方もあると思います。このような方法をそのまま病院に応用できるかどうかは難しい面もありますが、結局のところ最終的な解決は「金銭」に委ねられるわけですから、「医療過誤」ではなく不慮の傷害事故として解決する方が、無用なトラブルを避ける意味でも重要ではないかと思います。リハビリテーション科

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少女へのHPVワクチン、2回接種で効果十分?/JAMA

 少女(9~13歳)へのHPVワクチン接種による免疫獲得について、6ヵ月間隔で2回の接種を受けた群が、6ヵ月以内で3回接種を受けた若い女性(16~26歳)に対し非劣性であったことが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のSimon R. M. Dobson氏らによる無作為化試験の結果、示された。カナダでは2007年に、学校で接種が受けられる4価HPVワクチンプログラムが導入されたが、当初から高コストの問題が懸案事項となっており、2回投与の可能性が模索されていたという。Dobson氏らは、コスタリカで行われた先行研究で少女への2回投与による免疫獲得の成績が良好であったことを踏まえて、本検討を行った。JAMA誌2013年5月1日号掲載の報告より。少女2回接種群と3回接種群、若い女性3回接種群を比較 研究グループは本検討において、HPVワクチンの2回接種を受けた少女のHPV16型および18型に対する平均抗体価が、3回接種を受けた女性に対し非劣性であるかを調べることを目的とした。 試験は、2007年8月~2011年2月の間に多施設共同で行われ、830例のカナダ人女性が参加し、675例(81%)からフォローアップの血液サンプル提供を受けた。 試験では、少女(9~13歳)の被験者群は4価HPVワクチン「0、2、6ヵ月の3回接種群」(261例)か、「0、6ヵ月の2回接種群」(259例)に1対1の割合で割り付け、若い女性(16~26歳)の被験者群については「0、2、6ヵ月の3回接種」(310例)のみを行い、各群について0、7、18、24、36ヵ月時点で抗体価を測定した。 主要アウトカムは、7ヵ月時点での、2回接種少女群の3回接種女性群に対するHPV16型および18型の幾何平均抗体価(GMT)比の非劣性で、95%信頼区間[CI]の下限値>0.5を非劣性の定義とした。 副次アウトカムでは、2回接種少女群vs. 3回接種少女群のGMT比の非劣性(および36ヵ月の非劣性の持続)が検討された。2回接種少女群の非劣性示されるが、接種後24~36ヵ月で効果が失われる型も 結果、2回接種少女群の3回接種女性群に対するGMT比の非劣性が示された。HPV16型は2.07(95%CI:1.62~2.65)、HPV18型は1.76(同:1.41~2.19)だった。 また、2回接種少女群の3回接種少女群に対するGMT比の非劣性も示された。HPV16型は0.95(同:0.73~1.23)、HPV18型は0.68(同:0.54~0.85)だった。3回接種少女群の7ヵ月時点のGMT値は、HPV16型7,736mMU/mL(同:6,651~8,999)、HPV18型は1,730mMU/mL(同:1,512~1,980)であった。 GMT比について2回接種少女群の3回接種女性群に対する非劣性は、36ヵ月時点においても4型すべてについて持続していた。 2回接種少女群の3回接種少女群に対する非劣性は、7ヵ月時点では4型すべてにおいて認められたが、HPV18型については24ヵ月時点で、HPV6型については36ヵ月時点で非劣性ではなくなっていた。 著者はこの点の結果を踏まえて、接種回数を減らす勧告を出す前に、ワクチン効果の持続期間についてのデータを積み上げる必要があると報告をまとめている。

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急性期精神疾患に対するベンゾジアゼピン系薬剤の使用をどう考える

 興奮を伴う急性期の精神疾患患者に対し、ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)の使用は一般的である。オーストラリア・カンバーランド病院のDonna Gillies氏らは、急性期精神疾患に対するBZDと抗精神病薬の有用性をCochrane Schizophrenia Groupレジストリ(2012年1月)に基づくレビューにて、比較検討した。その結果、BZD単独による効果は不良で、抗精神病薬との併用においても明確なアドバンテージがみられないことを報告した。結果を踏まえて、著者は「BZDをその他の薬剤に追加することによる明確なアドバンテージはみられず、むしろ不測の有害事象を起こす可能性がある。第一世代抗精神病薬を単独で使用することを正当化するのは難しく、本分野におけるより質の高い研究が望まれる」とまとめた。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2013年4月30日発表の報告。 急性期精神疾患、とくに暴力行為あるいは激越を認める場合には緊急の薬理学的鎮静が求められ、いくつかの国ではBZD(単独または抗精神病薬との併用)がしばしば用いられている。本研究では、問題行動のコントロールおよび精神症状の軽減におけるBZDとプラセボ、またはBZDと抗精神病薬の効果を比較検討した。Cochrane Schizophrenia Groupレジストリ(2012年1月現在)を検索し、急性精神病患者を対象としBZD(単独または抗精神病薬との併用)と抗精神病薬(単独またはその他の抗精神病薬、BZD、抗ヒスタミン薬との併用)を比較したすべての無作為化臨床試験(RCTs)を抽出した。対となる変数のアウトカムに対しては、相対リスク(RR)と固定効果モデルによる95%信頼区間[CI]を算出した。連続変数のアウトカムに対しては、群間平均差(MD)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・臨床試験21件、1,968例について検討した。・BZDとプラセボの比較試験(1件)で、中期(1~48時間)の「改善なし」のリスクはプラセボ群でより高かったが、大半のアウトカムは2群間で有意差を認めなかった(102例、1試験、RR:0.62、95%CI:0.40~0.97、エビデンスレベル:きわめて低い)。・BZDと抗精神病薬の比較試験で、中期における「改善なし」の患者数に2群間で差はみられなかった(308例、5試験、RR:1.10、95%CI:0.85~1.42、エビデンスレベル:低)。しかし、BZD群では中期の錐体外路症状の出現が少なかった(536例、8試験、RR:0.15、95%CI:0.06~0.39、エビデンスレベル:中)。・BZD+抗精神病薬とBZD単独の比較試験において、2群間に有意差は認められなかった。・BZD+ハロペリドールとハロペリドール単独の比較試験において、中期の改善に差は認められなかったが(155例、3試験、RR:1.27、95%CI:0.94~1.70、エビデンスレベル:きわめて低い)、併用療法群でより大きな鎮静がみられた(172例、3試験、RR:1.75、95%CI:1.14~2.67、エビデンスレベル:きわめて低い)。ただし、併用療法群はオランザピン(60例、1試験、RR:25.00、95%CI:1.55~403.99、エビデンスレベル:きわめて低い)またはジプラシドン(60例、1試験、RR:4.00、95%CI:1.25~12.75、エビデンスレベル:きわめて低い、国内未承認)との比較では改善がみられなかった。・ハロペリドール+ミダゾラムとオランザピンの比較では、改善、鎮静および行動において併用療法が優れるといういくつかのエビデンスが認められた。関連医療ニュース ベンゾジアゼピン系薬剤の使用で抗精神病薬多剤併用率が上昇?! 統合失調症治療にベンゾ併用は有用なのか? ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性

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Dダイマー検査の年齢調整カットオフ値、静脈血栓塞栓症の診断精度を改善/BMJ

 臨床的に静脈血栓塞栓症(肺塞栓症、深部静脈血栓症)の疑いが高くない50歳以上の患者に対するDダイマー検査のカットオフ値として、従来の基準値に代えて年齢調整値を用いると、高い感度を維持したまま特異度が改善され、高精度に本症の除外診断が可能になることが、オランダ・ユトレヒト大学病院のHenrike J Schouten氏らの検討で示された。Dダイマーは血栓形成に対し高い感度を示すため、臨床的に静脈血栓塞栓症の可能性が高くない患者における本症の除外診断に有用とされるが、可能性が高い患者では本検査の結果にかかわらず画像検査を要する。一方、Dダイマーは加齢にともなって上昇するため、高齢患者の診断に従来のカットオフ値を用いると偽陽性率が上がり、特異度が低下することから、新たなカットオフ値として年齢調整値の導入が進められている。BMJ誌オンライン版2013年5月3日号掲載の報告。Dダイマー検査カットオフ値の診断精度をメタ解析で評価 研究グループは、静脈血栓塞栓症が疑われる50歳以上の患者におけるDダイマー検査カットオフ値の診断精度の評価を目的に、系統的なレビューとメタ解析を行った。 対象は、静脈血栓塞栓症が疑われる高齢患者に対し、従来の基準値(500μg/L)と年齢調整値(年齢×10μg/L)の双方のカットオフ値を用いたDダイマー検査および標準的検査を行った試験とした。データベースを検索して2012年6月21日までに発表された論文を選定し、筆頭著者と連絡を取った。 臨床的に静脈血栓塞栓症の可能性が高くない患者について、2×2分割表を作成し、年齢層、Dダイマー検査カットオフ値別の層別解析を行った。Dダイマー検査に年齢調整カットオフ値を適用することで特異度が実質的に上昇 5つの後ろ向き試験の13のコホート(肺塞栓症7コホート、深部静脈血栓症6コホート)に含まれた1万2,497例がメタ解析の対象となった。 従来のカットオフ値の特異度は、年齢が上がるに従って低下した。すなわち、51~60歳が57.6%、61~70歳が39.4%、71~80歳が24.5%、>80歳は14.7%であった。年齢調整カットオフ値の特異度は全年齢層で従来のカットオフ値よりも高値を示し、それぞれ62.3%、49.5%、44.2%、35.2%だった。 従来のカットオフ値の感度は、51~60歳が100%、61~70歳が99.0%、71~80歳が98.7%、>80歳は99.6%であったのに対し、年齢調整カットオフ値ではそれぞれ99.4%、97.3%、97.3%、97.0%であり、大きな変化はなく良好であった。 著者は、「Dダイマー検査に年齢調整カットオフ値を適用することで、感度にはほとんど影響を及ぼさずに特異度が実質的に上昇し、これによって50歳以上の臨床的に静脈血栓塞栓症の疑いが低い患者に対する本検査の臨床的有用性が改善された」と結論し、「メタ解析の対象はすべて後ろ向き試験であり、日常診療への導入には、今後、費用効果の検討や有効性に関する前向きの試験を行う必要がある」と指摘している。

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スマホアプリで悪性黒色腫リスクの評価は可能なのか?

 高性能なカメラ機能や多彩なアプリケーションを搭載するなど、多機能を誇るスマートフォン。Joel A. Wolf氏らは、そんなスマートフォンに搭載されているアプリケーション(スマホアプリ)のうち4本について、皮膚の病変部の撮影画像を評価し、ユーザーに悪性度をフィードバックする機能を検証した。その結果、アプリによって判定結果が大きく異なり、4本のうち3本のアプリは、悪性黒色腫の30%以上を「問題なし」と誤って分類した。著者は、「監督官庁の認可を受けていないこれらのアプリケーションに頼って、診察の代わりとすることは、悪性黒色腫の診断を遅らせ、ユーザーに害悪をもたらすことになるであろう」と結論した。JAMA Dermatology誌2013年4月号(オンライン版2013年1月16日号)の掲載報告。 研究グループは、ケースコントロール診断精度研究にて、4本のスマホアプリについて検証した。大学の皮膚科部門にて、委員会認定皮膚科医による組織学的診断で確認された色素性皮膚病変(悪性黒色腫60例、良性対照病変128例)を入手して行われた。いずれもルーチンケアの一貫としての病変除去を受けた患者から、生検前に入手したものであった。  主要評価項目は、4本のスマホアプリの感度、特異度、陽性または陰性適中率とした。各アプリは、非医療者のユーザーが皮膚病変について良性か悪性かを判定できるよう設計されたものであった。 主な結果は以下のとおり。・検証した4本のスマホアプリの感度は、6.8%から98.1%までにわたった。・特異度は、30.4%から93.7%にわたった。・陽性適中率は33.3%から42.1%にわたり、陰性適中率は65.4%から97.0%にわたった。・最も感度が高かったアプリは、委員会認定皮膚科医に、解析のために撮影画像を直接的に送付するタイプのものであった。・一方、最も低かったのは、画像を解析する自動アルゴリズムが組み込まれたタイプのものであった。

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ソホスブビル、既治療の遺伝子型2、3型HCV感染患者に有効/NEJM

 ペグインターフェロン(PEG)+リバビリン(RBV)療法が適応外または無効な、遺伝子型2、3型C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者に対し、ソホスブビル(SOF)+RBV療法は高い有効性と安全性を示すことが、米国ワイルコーネル大学(ニューヨーク市)のIra M. Jacobson氏らの検討で明らかとなった。欧米では現在、これらの患者の治療選択肢として承認されたレジメンはない。ソホスブビルはHCV特異的NS5Bポリメラーゼのヌクレオチド誘導体阻害薬で、in vitroではすべての遺伝子型のHCVを抑制し、第II相試験で2、3型HCV感染患者に対する有効性が確認されている。NEJM誌オンライン版2013年4月23日号掲載の報告。2つの第III相試験で、12週投与とプラセボまたは16週投与を比較 研究グループは、遺伝子型2、3型の慢性HCV感染患者に対するソホスブビル(SOF)+リバビリン(RBV)療法の有用性を評価する2つの無作為化第III相試験(POSITRON試験、FUSION試験)を行った。 POSITRON試験では、インターフェロンを含むレジメンが適応外の患者(有害事象で治療を中止した患者や禁忌例など)を対象に、12週のSOF+RBV療法とプラセボの比較が行われた。 2012年3月~5月の間に4ヵ国(米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)63施設から278例が登録され、SOF+RBV群に207例(平均年齢52歳、男性57%、肝硬変15%)、プラセボ群には71例(52歳、48%、18%)が割り付けられた。 FUSION試験は、インターフェロンを含むレジメンによる前治療が無効であった患者を対象とし、16週と12週のSOF+RBV療法の比較を行った。 2012年5月~7月までに3ヵ国(米国、カナダ、ニュージーランド)67施設から201例が登録され、16週投与群に98例(平均年齢54歳、男性68%、肝硬変33%)、12週投与群(54歳、71%、35%)には103例が割り付けられた。 主要評価項目は、いずれの試験も治療終了後12週の持続的なウイルス学的著効(SVR)とした。3型の肝硬変例、前治療無効例では長期投与が有効な可能性も POSITRON試験のSVR率は、SOF+RBV群が78%と、プラセボ群の0%に比べ有意に良好であった(p<0.001)。FUSION試験のSVR率は、16週投与群が73%、12週投与群は50%であり、有意な差が認められた(p<0.001)。 両試験ともに、2型よりも3型HCV感染患者でSVR率が低かった(POSITRON試験のSOF+RBV群:93 vs 61%、FUSION試験の16週投与群:94 vs 62%、12週投与群:86 vs 30%)。3型では、肝硬変なしよりも肝硬変ありの患者でSVRが低かった(68 vs 21%、63 vs 61%、37 vs 19%)。 全体として、最も頻度の高い有害事象は頭痛、疲労感、悪心、不眠であった。治療中止率はPOSITRON試験のSOF+RBV群が2%、FUSION試験の16週投与群が0%、12週投与群は1%だった。安全性プロフィールは肝硬変ありとなしの患者で類似しており、16週投与群と12週投与群の間にも差はなかった。 著者は、「PEG+RBV療法が適応外または無効の2、3型HCV感染患者の治療において、SOF+RBV療法は12週投与、16週投与ともに有効であった。とくに2型および非肝硬変患者に対する効果が高く、3型では16週投与が12週投与よりも優れていた(SVR:62 vs 30%)」とまとめている。

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ケアホーム高齢者のうつ傾向、運動療法による介入では改善しない/Lancet

 ケアホームに入所するうつ症状を呈する高齢者に対し、中程度の強度の運動プログラムを行ったが、症状の改善は認められなかったことが、英国・ウォーリック大学のMartin Underwood氏らによる集団無作為化試験の結果、報告された。結果を踏まえて著者は「これら虚弱高齢者の精神的治療については、何か別の戦略が必要である」と指摘している。Lancet誌オンライン版2013年5月1日号掲載の報告より。施設単位で介入群と対照群に無作為化し、うつ症状の改善について評価 ケアホーム入所者ではうつ病がよくみられ、不良な予後と関連していることが知られる。著者らは、運動療法はうつ病に対して有望かつリスクの低い介入と考え、中等度の強度の運動プログラムがうつ症状を改善するとの仮説を立て実証を試みた。 試験は、ロンドン北東部と、コヴェントリーおよびウォーリックシャーの2地域にあるケアホームで行われ、入所者65歳以上を試験適格とした。ホーム単位で、介入群と対照群への無作為化を行い(2008年12月15日~2010年4月9日の間)、介入群には、ケアホーム職員に対するうつ病への気づきのトレーニングと、45分間の理学療法士による出張エクササイズセッション(週2回)が施設単位で行われ、また日常生活がより活動的になるように日々の生活が見直された。対照群には、うつ病への気づきのトレーニングのみが行われた。 主要アウトカムは、高齢者うつ病スケール15(GDS-15)によるうつ病症状の程度とし、12ヵ月間にわたってフォローアップが行われた。運動プログラムの介入によって、むしろうつ症状が悪化? 無作為化時点でのベースラインデータは、78施設(介入群35、対照群43)891例から成った。出張集団エクササイズは3,191セッション行われ、平均して被験者(うつ症状あり)5人、非被験者(うつ症状のなかった入所者)5人が参加して行われた。 ベースラインでGDS-15スコアを有した入所者は765例中374例(49%)であり、765例のうち484例(63%)が12ヵ月間のフォローアップを完了した。 結果、12ヵ月時点のスコアは、介入群のほうが対照群よりも0.13ポイント(95%信頼区間[CI]:-0.33~0.60)高かった(悪かった)ことが示された。 また、ベースラインでうつ病が認められた入所者におけるスコアは、6ヵ月時点では介入群のほうが対照群よりも0.22ポイント(同:-0.52~0.95)高かった。 試験終了時の断面解析の結果、介入群の対照群に対するうつ病の存在に関するオッズ比は0.76(95%CI:0.53~1.09)で、有意差は示されなかった(p=0.1304)。

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慢性蕁麻疹の血小板活性化、重症度と相関

 慢性蕁麻疹と血小板活性化との関連について、これまで十分に検討した報告はほとんどみられていない。インド・医学教育研究大学院ジャワハル研究所(JIPMER)のLaxmisha Chandrashekar氏らは、健康な対照との比較による横断的研究を行った。その結果、慢性蕁麻疹患者における血小板活性化は有意で、とくに自己反応性を有する患者で顕著であったことを報告した。Platelets誌オンライン版2013年4月15日号の掲載報告。 研究対象は、慢性蕁麻疹患者45例と、年齢・性をマッチさせた健康な対照45例であった。蕁麻疹重症度スコアを用いて、疾患重症度を評価し、患者群の被験者については全員に自己血清皮内検査(autologous plasma skin test:APST)を行った。 血小板数および指標は、血液自動レーザー光分析器によって算定した。また全被験者について、血小板凝集能と血漿可溶性P-セレクチン値を評価した。 主な結果は以下のとおり。・対照群と比較して慢性蕁麻疹患者群では、平均血小板容積(MPV)と血小板分布幅(PDW)の値が有意に高いことが観察された。・血小板凝集能と血漿可溶性P-セレクチン値は、対照群と比較して慢性蕁麻疹患者群で有意に高かった。・蕁麻疹重症度スコアは、血小板凝集能と血漿可溶性P-セレクチン値と明らかな関連性が認められた。・APST陽性患者はAPST陰性患者との比較において、血小板凝集能と血漿可溶性P-セレクチン値が有意に高かった。血小板活性化は自己免疫反応を有する群でとくに有意であった。

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中国で見つかった鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症の疫学調査(コメンテーター:小金丸 博 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(97)より-

2013年3月に中国で鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの人への感染例が初めて報告されて以降、中国から継続して感染者が発生している。4月には中国帰りの男性が台湾で発症し、中国以外から初めて報告された。本稿執筆時点では日本国内での感染例は報告されていないが、国内発生時に冷静に対応できるよう準備しておく必要がある。  本論文は、4月17日までに確定した鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症82例の臨床情報と、濃厚接触者の追跡調査をまとめた報告である。 鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの感染は、リアルタイムRT-PCR法、ウイルス分離、血清学的検査のいずれかで確認した。確定診断された患者の平均年齢は63歳(範囲:2~89歳)で、46%が65歳以上であった。5歳未満は2例のみで、どちらも軽い上気道症状を呈するのみだった。性別は男性が73%と多かった。  情報が得られた77例のうち、4例が家禽を扱う労働者であった。59例で動物との接触歴があり、そのうち45例に鳥との接触歴を認めた。 確定診断された82例のうち、81例は入院加療され、17例がARDSや多臓器不全で死亡した。発症から死亡までの期間の中央値は11日だった。軽症だった4例はすでに退院した。情報が得られた64例のうち、41例でオセルタミビルが投与された。発症から投与開始までの期間の中央値は6日だった。  感染患者との濃厚接触者1,251名を7日間追跡調査した。呼吸器症状を呈した19名(研修医1名を含む)で咽頭スワブ検体を用いてリアルタイムRT-PCR法が行われたが、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスは1例も検出されなかった。  同一家族内で複数の患者が発生した3事例のうち、調査中の1事例を除く2事例の調査の結果では、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒト-ヒト感染は否定できなかった。 本論文のポイントの1つは、確定患者に重症例が多いことである。通常の季節性インフルエンザと比較すれば死亡率は高そうである。ただし、もともと原因微生物不明の肺炎患者を対象とした調査であり、重症例が選択的に拾い上げられていた可能性が高い。調査範囲が拡大され、症状の軽い患者も報告されるようになってきており、本当の重症度は今後判明していくだろう。 もう1つのポイントは、濃厚接触者にヒト-ヒト感染が起きていることが確認されなかったことである。現時点では、鳥インフルエンザA(H7N9)はあくまで鳥に感染するインフルエンザである。同一家族内での感染事例が存在し、限定的なヒト-ヒト感染が起こっている可能性は否定できないが、パンデミックを起こす可能性は低いと推測する。 鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症は、人にとって未知の感染症であり、感染源、感染経路、検査診断、治療法、重症度などは依然として明らかとなっていないため、今後も個々の症例を集積していく必要がある。

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生年月日でわかるあなたの風疹感染リスク! ワクチン接種済んでますか?

現在、大都市を中心に風疹の感染拡大が懸念されている。国立感染症研究所の発表によれば5月1日現在で5,442人(2012年では2,392人)の患者が報告され、昨年の2倍以上の感染者が確認されている。とくにワクチン接種を受けていない20~50代の成人を中心に感染が拡大、厚生労働省が中心となり、今後さまざまな施策が準備、施行される予定である。今回、この風疹の感染拡大とその対応について大曲 貴夫氏に話を聞いた。今回の風疹流行の原因について教えてください風疹は、実は2011年頃からじわじわと患者数は増えてきていました。原因としては、ワクチン未接種の免疫がない方が、人口密集地域で感染し、一気に拡大したと考えられています。現在、広くワクチン接種が呼びかけられていますが、接種のモデルタイプはどのような方ですか?やはりワクチン接種歴がないとされる20~50代の成人の方(とくに男性)です(図)。母子手帳などで過去のワクチン接種の正確な確認ができない場合は、未接種と考えてワクチン接種をした方がいいでしょう。よく、家族の方が、「子どもの頃に風疹をした」と言っていても、風疹かどうか曖昧な場合がほとんです。罹患した確実な証拠がない、あるいはワクチンの接種歴が分からないのであれば、まずはワクチンを接種すべきと考えた方がよいと思います。生年月日ごとの風疹含有ワクチンの定期接種の状況画像を拡大する風疹が引き起こす、成人や妊婦への影響について教えてください成人の方であれば、発疹、発熱、リンパ節の腫れなどが現れます。風疹は飛沫感染するために、他人に感染させないように症状が軽くても会社や学校を休まねばなりません。また、特に妊婦さん(妊娠24週頃まで)が、風疹に感染すると胎児の死亡、流早産につながったり、先天性風疹症候群を発症し、胎児が心疾患や難聴、白内障などの障害を持った状態で生まれてきます。そのため、妊婦さんやこれから妊娠を希望される方には、特に気をつけてもらいたいと思います。妊娠予定の方は、パートナーと共にワクチン接種を受け、その周囲の人も風疹にならないための配慮が必要です。現行のワクチン接種の問題点について教えてください現在の風疹ワクチンの接種については、大きく3つの問題があります。1つ目はワクチン接種の診療科の問題、2つ目は接種するワクチンの問題、3つ目は経済的な問題です。1つ目の問題は、どの診療科でワクチンを接種するかです。小児科が推奨されていますが、小児科に成人の方が集中する事態も問題であり、かといって一般内科のクリニックには、風疹ワクチンが用意されていないのが実情ではないでしょうか。地域の基幹病院などが推奨されますが、多忙な社会人が受診しやすい夜間や週末の診療はしていないところが多いです。もう少し接種へのアクセスがよくなればということが挙げられます。例えば東京都では、医療機関案内サービス「ひまわり」などで情報の提供を行っています。2つ目の接種するワクチンの問題ですが、風疹ワクチンだけではなくMRワクチンでも良いというのは、実はあまり知られていません。どちらかが自院に用意されているのであれば、接種を希望する方に勧めた方がよいということです。 過去に麻疹になったことがあったり、ワクチン接種済みの方が追加接種となっても、特に問題はありません。どちらもしっかり免疫をつけることができる、そして費用的にもお得です。3つ目は経済的な問題です。現在、各自治体が風疹への問題意識を持ってワクチン接種の助成を行っています。これは良い施策だと思いますが「妊娠を希望する女性とその配偶者」というように、非常に狭い枠での助成となっています。財政的な問題もあると思いますが、インフルエンザの予防接種並みに気軽に接種できるくらいまで、財政支援などの対応をいただきたいと思います。今後、地域の医療従事者が貢献できることを教えてください1つには、地域のワクチン対象者への啓発と誘導です。風疹の問題点は、飛翔感染で多くの人にも感染させることです。自分だけでなく、家庭、職場、学校でも迷惑をかけるということを、医療従事者が、何度も繰り返し説明していくことでワクチン接種の重要性を伝えていく必要があります。とくに妊娠適齢の女性の方は、先天性風疹症候群について詳しく知りません。今、ワクチン接種しておかないとどうなるのか、メリット・デメリットを含めて医療従事者が、外来の機会を通じて説明して、接種ができる医療機関へ誘導していくことが大事だと考えます。もちろん国立国際医療センター病院では、ワクチンを常備していますので、こうした医療機関を医療従事者が知っておくことも大切です。次は、ワクチン接種へのアクセス改善と接種時の問題発生への備えです。理想的には、なるべく多くの医療機関にワクチンを揃えてもらいたいと思います。また、ワクチン接種の時に、何らかの副反応が起る可能性もあります。一般的には発疹、紅斑、発熱などですが、重大な副反応であるアナフィラキシー様症状が出た場合の対応手順と緊急搬送先の確認など、再度チェックしていただきたいと思います。最後に風疹対策は、今行うことで先天性風疹症候群を防ぎ、子どもの未来を救うことになります。この点を医療に携わる方は意識していただければと思います。国立感染症研究所 風疹 参考 東京都感染症情報センター「ストップ 風疹」 参考 東京都医療機関案内サービス「ひまわり」 

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COPDの重症度と冠状動脈疾患との関係は?

 長期間の喫煙歴があるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者ではCACS(冠動脈カルシウムスコア)が高くなることが認められたが、COPDの重症度と冠動脈カルシウムスコアとの間に相関関係は認められないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のThomas Rasmussen氏らによって報告された。European heart journal cardiovascular Imaging誌オンライン版2013年5月2日号の掲載報告。 冠動脈疾患(CAD)はCOPD患者において、最も頻度の高い死因であることが報告されているが、COPDの重症度とCADとの関係については明確ではなかった。 本研究は長期間の喫煙歴があった患者を対象に、COPDの有無や重症度と冠動脈カルシウム沈着の量(冠動脈疾患や心臓リスクの指標となる)がどのように関係しているのかを調べることを目的とした横断研究である。 デンマークの肺がんスクリーニング試験から、無症候性のCADで長期間の喫煙歴を有する患者を抽出し、GOLD(the Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)の基準により、肺機能のステージ分類を行った。無症候性のCADと心臓リスクの指標となる冠動脈カルシウム沈着はマルチスライスCTとCACSによって評価された。 対象患者はCACSにより5つの群に分類された。対象患者1,535例のうち、41%が非COPD、28%が軽度、31%が中等度から重度のCOPDであった。年齢、性別、高血圧、脂質異常症、喫煙の継続による多変量解析で、COPDの重症度とCACSとの関連を検討した。 この結果、非COPD患者に対する軽度のCOPD患者、中等度から重度のCOPD患者のオッズ比はそれぞれ1.28(1.01~1.63) 、1.32(1.05~1.67)であった。

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統合失調症へのアリピプラゾール持効性注射剤、経口剤との差は?

 オーストリア・インスブルック医科大学のW Wolfgang Fleischhacker氏らは、統合失調症患者の維持療法としてのアリピプラゾール持効性注射剤の月1回投与製剤(ARI-OM、国内未承認)の、長期安全性と忍容性について無作為化試験を行った。その結果、経口剤に匹敵する安全性および忍容性プロファイルが認められたことを報告した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2013年4月22日号の掲載報告。 ARI-OMの長期の安全性と忍容性を評価することを目的としたピボタル試験は、4期から構成された。第1期は切り替え期として経口投与によるアリピプラゾール投与が行われ(4~6週間)、第2期は経口剤による安定化を図る治療期とした(4~12週間)。第3期はARI-OMの安定化を図る治療期とし、最初の2週は経口剤の同時投与が行われた(12~36週)。そして第4期に、52週の無作為二重盲検プラセボ対照による維持治療の検討を行った。安全性の評価は全試験期間を対象とし、有害事象の初回発生までの時間とした。錐体外路症状の客観的測定、空腹時の代謝指標および体重の測定が行われた。 主な結果は以下のとおり。・登録被験者数は、第1期633例、第2期710例(210例は第2期から参加)、第3期は576例、第4期は403例であった。・第4期の被験者の内訳は、ARI-OM群269例、プラセボ群134例であった。・すべての試験期において、5%超の有害事象の発生が認められたのは、不眠、頭痛、不安症、アカシジア、体重の増加、注射部位の痛み、振戦であった。・頭痛、傾眠、吐気の初回発生は、治療導入後4週間以内にピークに達していた。・錐体外路症状の発生は、すべての試験期で同程度であった。・体重の予想外の変化や空腹時代謝指標の変化は、すべての試験期にわたっているわけではなかった。・ARI-OMは、統合失調症の維持療法におけて、経口アリピプラゾールと同等の安全性と忍容性プロファイルを有することが認められた。関連医療ニュース ・統合失調症、双極性障害の急性期治療に期待!アリピプラゾール筋注製剤 ・アリピプラゾール筋注に関するコンセンサス・ステートメント(英国) ・統合失調症患者における持効性注射剤:80文献レビュー

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中高年の初回肩関節脱臼、救急外来で徒手整復後の上腕骨大結節骨折の発生頻度

 先行研究において、肩関節脱臼の整復操作に伴う医原性上腕骨頸部骨折の症例報告がなされている。英国・王立バークシャー病院のAtoun Ehud氏らはその有病率を調べることを目的とした後ろ向きコホート研究を行った。その結果、40歳以上の初回肩関節前方脱臼患者において、上腕骨大結節骨折の合併率は21%で、これらの患者における徒手整復時の医原性上腕骨頸部骨折の発生頻度は26%と高率であることを明らかにした。Journal of Orthopaedic Trauma誌2013年4月号の掲載報告。 本研究の目的は、40歳以上の初回肩関節前方脱臼患者における徒手整復後の医原性上腕骨頚部骨折の有病率を調査することであった。 対象は40歳以上の初回肩関節前方脱臼患者92例(平均66.6歳)で、救急外来で救急医療医により、意識下鎮静のもと徒手整復が行われた。  骨折の有無はX線写真にて確認し、医原性骨折は整復後のX線写真にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・92例中19例(20.7%)は、最初のX線写真において上腕骨大結節骨折を合併していると診断された。・整復後のX線写真において、5例(5.4%)が整復後上腕骨頸部骨折と診断された。この5例は全例、最初のX線写真において上腕骨大結節骨折を認めた。 ・最初のX線写真における上腕骨大結節骨折所見と医原性上腕骨頸部骨折の発生には、有意な関連性が認められた(p<0.0001)。・医原性上腕骨頸部骨折患者の予後は不良であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる

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脳卒中既往例は、10~20年後の死亡率が非常に高い(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(96)より-

一過性脳虚血発作(TIA)を含めた脳卒中急性期を30日以上生存しえた例の、長期予後を検討した追跡観察研究である。発症時期は18~50歳であり、高齢発症の脳卒中症例は除かれている。脳卒中の原因の中ではアテローム血栓、あるいはその疑いがもっとも多く、次いで心原性塞栓、ラクナ梗塞とつづく。リスク因子としては喫煙、高血圧が多い。 脳卒中既往例では、非既往例に比べて脳卒中が発症しやすいことはよく知られている。本試験は発症後20年間で、TIAでも24.9%、脳梗塞例では26.8%が死亡し、オランダ国民の推定死亡率よりも各々2.6倍、3.9倍高いという結果を示している。 注目すべきは、死亡原因として心臓死が26.2%、悪性腫瘍が23.4%とそれぞれ1番目2番目を占め、脳梗塞は13.8%に過ぎないことである。このことは、脳卒中既往例においては脳卒中の再発ばかりに気をとられるのではなく、心筋梗塞の発症にも十分気をつけなければいけないことを意味している。すなわち、禁煙指導、脂質管理、血糖管理によるtotal vascular managementが重要であることを示している。また悪性腫瘍が多いことは、リスク因子としての喫煙が関係しているのかもしれない。 本試験は観察研究であるため、観察期間中の血圧管理、喫煙率などには触れていないが、得られたデータが実地臨床に与える教訓は大きい。

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第14回 添付文書 その3:抗がん剤副作用訴訟の最高裁判所判決を読み解く!

■今回のテーマのポイント1.添付文書の記載が適切かを判断する際には、(1)副作用の程度及び頻度、(2)当該医薬品を処方する者の知識、能力、(3)添付文書の記載内容について検討する。また、この3つの要因間には相関関係があると考えられる2.医薬品に対する医療界と司法との認識には、なお相当のギャップがある。今後も積極的かつ持続的な情報公開、相互理解が必要である3.本件最高裁判決は、企業側が勝訴したものの、5名中3名の裁判官が抗がん剤の副作用被害についても副作用被害救済を行うべきと意見している。ドラッグ・ラグの加速や萎縮医療が生じないよう速やかに抗がん剤を対象除外医薬品から外すべきと考えるindex最高裁判決をレビューする各裁判官の補足意見を検討する裁判例のリンク最高裁判決をレビューする第13回で取り扱ったイレッサ(一般名:ゲフィチニブ)訴訟の最高裁判所(以下、最高裁)判決が4月12日に出されました。結果は、裁判官全員一致で製薬企業側の勝訴となりました。ただ、全裁判官から補足意見が出されており、本件問題に対する司法の逡巡が見て取れます。今回は、すこし趣を変えて最高裁判決および補足意見を丁寧にみていきたいと思います。また、同時に法律家がどのように判断していくのかもご理解いただけたらと考えています。まずは、最高裁判決をみてみましょう。「医薬品は、人体にとって本来異物であるという性質上、何らかの有害な副作用が生ずることを避け難い特性があるとされているところであり、副作用の存在をもって直ちに製造物として欠陥があるということはできない。むしろ、その通常想定される使用形態からすれば、引渡し時点で予見し得る副作用について、製造物としての使用のために必要な情報が適切に与えられることにより、通常有すべき安全性が確保される関係にあるのであるから、このような副作用に係る情報が適切に与えられていないことを一つの要素として、当該医薬品に欠陥があると解すべき場合が生ずる。そして、前記事実関係によれば、医療用医薬品については、上記副作用に係る情報は添付文書に適切に記載されているべきものといえるところ、上記添付文書の記載が適切かどうかは、(1)上記副作用の内容ないし程度(その発現頻度を含む)、(2)当該医療用医薬品の効能又は効果から通常想定される処方者ないし使用者の知識及び能力、(3)当該添付文書における副作用に係る記載の形式ないし体裁等の諸般の事情を総合考慮して、上記予見し得る副作用の危険性が上記処方者等に十分明らかにされているといえるか否かという観点から判断すべきものと解するのが相当である」(( )番号は原文なし、筆者による加筆。以下同様)判決はいわゆる法的三段論法によって書かれます。すなわち、まず、抽象的に記載されている法律を具体的事例に対する法規範となるよう解釈します(大前提)(図1)。図1 法的三段論法画像を拡大する本判決では、まず、「製造物責任法2条2項:この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう」における「欠陥」(当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること)とは、医療用医薬品については、どのように解釈すべきかが示されています。本判決では、医療用医薬品においても製造物責任法(PL法)が適用されることを前提として、医療用医薬品における「欠陥」の一つの類型として、引渡し時点で予見しうる副作用について、(1)副作用の程度及び頻度(2)当該医薬品を処方する者の知識、能力(3)添付文書の記載内容等を総合的に考慮して、医薬品を安全に使用するための情報が処方者に十分明らかにされていないことがあると判示しています。製造物責任法2条2項と見比べていただければ、最高裁が条文に忠実に法解釈をしていることがわかると思います。そして、次にこの大前提に本件事実が該当するか否かを判断します(小前提(あてはめ))。本判決では、下記のように判示し、本事案は欠陥の要件に該当しないことから欠陥があるとはいえない(結論)としました。「前記事実関係によれば、(1)本件輸入承認時点においては、国内の臨床試験において副作用である間質性肺炎による死亡症例はなく、国外の臨床試験及びEAP副作用情報における間質性肺炎発症例のうち死亡症例にイレッサ投与と死亡との因果関係を積極的に肯定することができるものはなかったことから、イレッサには発現頻度及び重篤度において他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎の副作用が存在するにとどまるものと認識され、(3)被上告人は、この認識に基づき、本件添付文書第1版において、「警告」欄を設けず、医師等への情報提供目的で設けられている「使用上の注意」欄の「重大な副作用」欄の4番目に間質性肺炎についての記載をしたものということができる。(2)そして、イレッサは、上記時点において、手術不能又は再発非小細胞肺がんを効能・効果として要指示医薬品に指定されるなどしていたのであるから、その通常想定される処方者ないし使用者は上記のような肺がんの治療を行う医師であるところ、前記事実関係によれば、そのような医師は、一般に抗がん剤には間質性肺炎の副作用が存在し、これを発症した場合には致死的となり得ることを認識していたというのである。そうであれば、上記医師が本件添付文書第1版の上記記載を閲読した場合には、イレッサには上記のとおり他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎の副作用が存在し、イレッサの適応を有する患者がイレッサ投与により間質性肺炎を発症した場合には致死的となり得ることを認識するのに困難はなかったことは明らかであって、このことは、「重大な副作用」欄における記載の順番や他に記載された副作用の内容、本件輸入承認時点で発表されていた医学雑誌の記述等により影響を受けるものではない。・・・以上によれば、本件添付文書第1版の記載が本件輸入承認時点において予見し得る副作用についてのものとして適切でないということはできない」このように、本件の最高裁判決では、製造物責任法の条文を忠実に解釈した上で、本事案における添付文書の記載に不適切な点はなかったと判示しています。一方、本件地裁判決において原告側が勝訴したのは、法解釈(大前提)においては最高裁判決と相違なかったものの、小前提(あてはめ)において、(2)当該医薬品を処方する者の知識、能力を低く見積もったことから、(3)添付文書の記載内容が詳細に求められることとなり、結果として適切な情報として不足したという判断がなされたからと考えられます。そして、前回紹介した高裁判決及び最高裁判決においては、(2)を高く評価(肺がん専門医または肺がんに係る抗がん剤治療医)したことから、(3)に求められる水準が下がり、結果として、求められる適切な情報が提供されていたと判断されています。このことからわかるように、医療用医薬品の欠陥判断における、(1)~(3)の要件はそれぞれ独立した要件ではなく、(2)が高くなれば(3)は低くてよく、逆に(2)が低ければ、(3)は高く求められるという負の相関関係があると考えられます。また、同様に、(1)と(3)の間には正の相関関係があると考えられます(図2)。図2 医療用医薬品において添付文書に求められる適切な副作用情報に関する各要因間の関係画像を拡大する各裁判官の補足意見を検討する:司法の常識とは!?次に各裁判官の補足意見をみていきましょう。補足意見とは、多数意見に賛成であるが意見を補足したい場合に、判決となった多数意見と別に各裁判官の個別意見を表示するもので、最高裁判決においてのみ認められています(裁判所法11条)。本判決では、裁判長以外全員が補足意見を出しており、結論は同じでも各裁判官の考えに少しずつ相違があることが読み取れます。〔1〕欠陥認定の基準時と事後の知見について「製造物責任法2条に定める「欠陥」は、当該製造物が「通常有すべき安全性を欠いていることをいう」と定義されているところ、その安全性具備の基準時は、あく迄、当該製造物が流通におかれた時点と解すべきものである。製造物が流通におかれた時点においては、社会的にみて、「通常有すべき安全性」を具備していたにも拘ず、事後の知見によってその安全性を欠いていたことが明らかになったからといって、遡及的に流通におかれた時点から「欠陥」を認定すべきことにはならない(事後の知見によって安全性を欠いていることが明らかになった後に流通におくことについては、製造物責任が問われ得るが、それ以前に流通しているものは製造物責任の問題ではなく、回収義務、警告義務等の一般不法行為責任の有無の問題である)」(田原睦夫補足意見)「後に判明した結果を前提に具体的な記載を求めるとすれば被上告人に不可能を強いることになり法の趣旨に反することになろう」(大谷剛彦、大橋正春補足意見)製造物責任法4条1号は、「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと」の場合には免責すると定め、開発危険の抗弁を認めています。ただし、前回解説したように、「科学又は技術に関する知見」は、入手可能な世界最高の科学技術の水準とされており、非常に限定されています。しかし、開発危険の抗弁が非常に限定的に用いられるべきといっても、後で判明した当時は知る由もなかった知見によって欠陥認定することはさすがに認められないと補足意見は述べています。これは、一見すると当たり前のことのように思われますが、製造物責任法が、無過失責任を求めている以上、製品によって利益を得ている企業がいかなる場合においても責任をとるべきであるという学説は根強く存在しており、この点につき補足意見を述べたこととなります。この欠陥認定の基準時の問題は、順次症例数を増やしながら開発、使用される医薬品にとっては非常に重要な問題であり、この点について意見としてではありますが明確に述べられたことは意義があるといえます。また、裁判は事件が発生した後に行われることから、常に「後知恵バイアス」がかかります。医療訴訟でも2000年代前半には、結果からみて「あの時こうすべきだった」として病院側を敗訴させた判決がいくつか出され、医療界が混乱する原因となりました。医療と司法の相互理解が進む中、「後知恵バイアス」の危険性について、司法は常に意識する必要があるものと考えます。〔2〕医薬品に対する理解「医薬品、殊に医療用医薬品は、身体が日常生活において通常摂取しないものを、その薬効を求めて摂取するものであるから、アレルギー体質による反応等を含めて、一般に何らかの副作用を生じ得るものである。医療用医薬品のうち汎用的に用いられるものについては、その求められる安全性の水準は高く、副作用の発生頻度は非常に低く、又その副作用の症状も極めて軽微なものに止まるべきものであり、かかる要件を満たしている医薬品は、「通常有すべき安全性」が確保されていると言えよう。次に、一般に医療用医薬品は、薬効が強くなれば、それと共に一定程度の割合で副作用が生じ得るものである。当該医薬品の副作用につき、医師等は一定の用法に従うことによりその発生を抑止することができ、あるいは発生した副作用に対し、適切に対応し、またその治療をすることが出来るのであれば、かかる副作用が生じ得ること及びそれに対する適切な対応方法等を添付文書に記載することによって、「通常有すべき安全性」を確保することが出来ると言って差支えないと考える」(田原睦夫補足意見)これは、医療用医薬品の副作用について述べている部分を抜粋したものです。医療界の人ならばギョッとする文章ですが、現時点における最高裁判事の医療への理解はこの水準であることが理解できます。当たり前のことですが、医薬品である以上、風邪薬でも致死的な副作用は生じます。市販薬ですら、年数件の死亡事例があります。(一般用医薬品による重篤な副作用について)行き過ぎた安全神話が2000年代前半の医療バッシングを後押ししたことは記憶に新しいところです。「安全であればいいなあ」が「安全に決まっている」になり、その結果、「悪しき結果が生じた場合には犯人がいるに違いない」とされ、医療崩壊が生じました。しかし、このような認識のギャップは専門領域においては必然的に生じるものであり、その解決策は決して相手を非難することではなく、積極的な情報開示を行い、相互理解を進めることです。医療界には、積極的かつ継続的な情報開示と対話が求められているものと考えます。〔3〕製造物責任法の適用について「しかし、薬効の非常に強い医薬品の場合、如何に慎重かつ適切に使用しても、一定の割合で不可避的に重篤な副作用が生じ得る可能性があることは、一般に認識されているところである。そうであっても、副作用の発生確率と当該医薬品の効果(代替薬等の可能性を含む。)との対比からして、その承認が必要とされることがある。その場合、「慎重投与や不可避的な副作用発生の危険性」については添付文書に詳細に記載すべきものではあるが、その記載がなされていることによって当該医薬品につき「通常有すべき安全性」が確保されていると解することには違和感がある(その記載の不備については、不法行為責任が問われるべきものと考える)。他方、かかる危険性を有する医薬品であっても、その薬効が必要とされる場合があり、その際に、かかる重大な副作用の発生可能性が顕在化したことをもって、当該医薬品の「欠陥」と認めることは相当ではない。上記のように副作用が一定の確率で不可避的に発生し得る場合には、「通常有すべき安全性」の有無の問題ではなく、「許された危険」の問題として捉えるべきものであり、適正に投与したにも拘ず生じた副作用の被害に対しては、薬害被害者救済の問題として考えるべきものではなかろうか」(田原睦夫補足意見)「イレッサが、手術不能又は再発非小細胞肺がんという極めて予後不良の難治がんを効能・効果として、第Ⅱ相の試験結果により厚生労働大臣の承認がなされ、要指示医薬品、医療用医薬品とされた上で輸入販売が開始されたのは、有効な新薬の早期使用についての患者の要求と安全性の確保を考慮した厚生労働大臣の行政判断によるものであり、その判断に合理性がある以上は、その結果について医薬品の輸入・製造者に厳格な責任を負わせることは適当ではない。その一方で、副作用が重篤であり、本件のように承認・輸入販売開始時に潜在的に存在していた危険がその直後に顕在化した場合について、使用した患者にのみ受忍を求めることが相当であるか疑問が残るところである。法の目的が、製造者の責任を規定し、被害者の保護を図り、もって国民生活の向上と国民経済の健全な発展に寄与することにあるならば、有用性がある新規開発の医薬品に伴う副作用のリスクを、製薬業界、医療界、ないし社会的により広く分担し、その中で被害者保護、被害者救済を図ることも考えられてよいと思われる」(大谷剛彦、大橋正春補足意見)前回解説したように、医薬品の副作用被害には、すでに無過失補償制度である医薬品副作用被害救済制度が存在します(表)。しかし、「制度の穴」として抗がん剤や免疫抑制剤等の対象除外医薬品による副作用被害や添付文書違反等があることから、除外対象事由に該当する患者・家族は、泣き寝入りするか訴訟をするしかない状況にあります。表 医薬品副作用被害救済制度除外事由画像を拡大する今回の最高裁判決は、製造物責任法を適用した上で、製薬企業側の勝訴としました。しかし、補足意見の形で、5名中3名の最高裁判事が抗がん剤による副作用被害についても、副作用被害救済制度に組み入れるべきと述べました。第1審敗訴によって「抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会」が立ち上がり、第2審勝訴によって同検討会は、抗がん剤による副作用被害を除外事由から外すことを見送りました。しかし、この最高裁判決により、ボールは今、再び医療界、製薬業界および厚労行政に返ってきました。このまま除外事由として放置した場合には、次に同種の訴訟が起きた際にどう転ぶかはわかりません。一時の勝訴にあぐらをかき、最高裁からのメッセージを見て見ぬふりをすることは、本訴訟の一連の流れの中で懸念してきたドラッグ・ラグの加速や萎縮医療を自らの手で致命的なところまで押しやることになりかねないということを真摯に自覚すべきと考えます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)最判平成25年4月12日(未収載)

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鳥インフルエンザは怖くない!でも備えは万全に!!

連日報道される中国で発生した鳥インフルエンザA(H7N9)(以下、鳥インフル(H7N9)記す)。WHO(世界保健機構)の発表によれば、131人の確定患者、32名の死亡と報告されている(5月9日現在)。折しもゴールデンウイークでの海外への大量渡航や行楽地への人口の集中があったことから、わが国での感染流行が危惧されていた。今回、医師、医療従事者がこの鳥インフル(H7N9)に、どのように対応したらよいか大曲貴夫氏に話を聞いた。今回の鳥インフル(H7N9)の特徴や感染経路について教えてください今回の鳥インフル(H7N9)は、鳥では重症化しないのに(高病原性ではない)ヒトで重症化していることが言えます。死亡率は現時点での報告によると約20%です。一見死亡率が高いようにみえますが、これについては今後精査が必要だと考えています。また、感染経路については、トリからの感染がほぼ確定しており、現在ヒトからヒトの感染は確認されていません。中国でも生鳥を扱う市場を閉鎖する対策をとったことで、感染者が格段に減少したとの見方もあるため、感染ルートがトリ-ヒトだけなのであれば、このまま終息に向かう可能性も高いと思われます。今回の鳥インフル(H7N9)は、市販の迅速キットで検出できるものでしょうか市販の迅速キットの性能は不明です。ただし通常の鼻腔内や上気道の検体採取では、PCR法を用いても陰性反応が出るレポートもあります。確定には、下気道・肺からの検体採取が必要だと考えています。よって、迅速キットで上咽頭から検体をとって検査しても、陰性になる可能性が高いと推測します。現在、症状から疑って、気道分泌物を用いてPCR法で診断する方法しかないように思われます。診療時のポイントについて教えてくださいこれは今回の鳥インフル(H7N9)だけではないのですが、「最も大切なことは、疾病を思いつくこと!」です。患者さんが、急な発熱、倦怠感で来院した場合、病歴聴取の時に渡航歴がないかどうか聞くことが重要です。問診で「渡航歴を聞く」ことは、実際の医療現場では意外と軽んじられています。そこで中国渡航歴があれば、鳥インフル(H7N9)の可能性も考え、診療をすすめていきます。このように適切な問診をすることで、可能性のある疾患を思いつくことが出来るかどうか、ここが早期発見のポイントとなります。診断で確定患者がいた場合の治療やその後の措置について教えてください実際には、鳥インフル(H7N9)ウイルスによる感染と確定診断がつくまでには、少し時間がかかります。よって現実には、まだ確定診断がついていない状況で、患者さんの症状を診て、治療をどうするかを決めることになります。お年寄りや基礎疾患のある重症化が懸念される患者さんには、WHOが推奨しているように早期に抗インフルエンザ薬の処方をした方がよいかもしれません。ただし抗インフルエンザ薬の効果は、まだ十分検討されていませんので、その点は念頭に置くべきですね。診療時に医療従事者が気をつける点について教えてください鳥インフル(H7N9)に限らず、呼吸器症状を訴える患者さんを診療するときに大事なことは、患者からウイルスをもらわないことです。そのため、呼吸器症状のある患者を診療する場合には、サージカルマスクを着用し、手指衛生に気を配ること。これらを、今だけ実施するのではなく、常日頃から実践し、診療スタッフ全員で習慣化しておくことが大事だと考えます。実際に鳥インフル(H7N9)の疑い例を診療する場合、感染対策をどうするかについては、実はさまざまな意見があります。ただ、実際の診療では、患者さんの中国渡航歴がわかるまで、時間がかかることもあります。それがわかるまで、医療者は何も対策をしていなかった・・・では意味がありません。鳥インフル(H7N9)の疑い例を診療する場合には、状況がはっきりするまではN95マスクを着用すべきと言う意見もあります。しかし、症状のない患者に対応する場合に、濃厚接触の無い時点で長時間の着用勤務が難しいN95マスクの着用を標準にする根拠は乏しいです。仮にN95マスクをつけていなかったとしても、サージカルマスクをつけて接していれば、かなり感染を防御できるはずです。呼吸器症状・発熱のある方の診療では、サージカルマスクを着用し、手指衛生に気を配ること。これらを、今だけ実施するのではなく、常日頃から実践しておくことが、まずは重要でしょう。それと鳥インフル(H7N9)疑いの患者さんがいる場合は、待合室を分けたり、別室で待っていただくなどの配慮も必要になります。実際に、鳥インフル(H7N9)を強く疑う場合に医療者が取るべき感染対策は、それぞれの現場の特性に合わせて考える必要があります。事前に感染対策の専門家に相談して、対応を決め、スタッフで共有しておくことが大切でしょう。不安を訴える方への健康相談について、教えてください医療者がきちんと鑑別、対応し、安心させることが重要です。医療者が舞い上がると、患者さんにも伝わり、周囲や社会にも誤解を与えますので気をつけたいところですね。今回の鳥インフル(H7N9)が行政より検疫感染症に指定されました(5/6より施行)。これに伴い今後、医療従事者が行わなければいけない事項などについて教えてください鳥インフル(H7N9)だと確定した患者さんがいる場合、担当した医師は直ちに保健所に届出を行う必要があります。また、状況によっては患者さんの転院や入院を行う必要がでてきます。今回の指定は、入院勧告や就業制限が罰則つきでできる、強制力のあるものです。患者さんに対してもその点を十分説明しないと、納得頂けないでしょう。「今回の鳥インフル(H7N9)流行について」最後に一言お願いします重症例が多いと報道されています。しかし、冷静に構えてもらいたいと思います。繰り返しになりますが、診療にあたる医療者は、普段から感染防止対策の習慣化を心がけておくことが大切です。例えばN95マスクを装着する場合もありますが、このマスクの着用には少しテクニックが必要ですから、普段からその練習をしておく、あるいは連携する医療機関や保健所などの行政機関との連絡体制の確認など、今回のような事態にきちんと対応できるように備えておくことが大切です。「特別な状況だから、特別な対策をする」と言うことは簡単ですが、実はこれは極めて非現実的です。日頃から対策を適切に行えるよう、準備しておくことが必要と思います。国立感染症研究所 鳥インフルエンザ特集ページ 

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