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わかる統計教室 第1回 カプランマイヤー法で生存率を評価する セクション3

インデックスページへ戻る第1回 カプランマイヤー法で生存率を評価するセクション3 カプランマイヤー法の生存曲線を描いてみるセクション1 セクション2いよいよ前回の表を基にグラフを作ってみましょう。生存曲線のグラフというと難しいと思われる方も多いかもしれませんが、今回のように簡単なデータから取り組み、自身で描いてみれば、カプランマイヤー法の生存曲線がきちんと理解できるようになります。■必ず下り階段状になる生存曲線もう一度、前回計算した累積生存率の表をみてみましょう。下表が、観察期間8ヵ月間の患者数10例の「死亡」「打ち切り」を調べ、累積生存率を算出したものです。まず時期を横軸、累積生存率を縦軸にとり、値をプロットしてみましょう。そして、プロットする際の記号に「●」や「×」を使ってください。この時の「●」「×」には、次のようなルールが決められています。その時期に死亡が1例でも出現した場合は「●」、打ち切りが出現した時期は「×」です。その時期に死亡と打ち切りの両方が出現した場合は、死亡を優先します。0ヵ月では全員生存しているので生存率は100%で、その時の記号は「■」とします。次に進みましょう。「■」あるいは「●」を始点に、横線を引きます。終点は次の●がある時期です。そして縦線を引き、すべての線を結べば、生存曲線の出来上がりとなります。■プロットされる点が多い場合は?プロットされる点が多い場合は、「●」や「×」を省略したり、すべて「■」で描いたりする場合もあります。誰かが死亡するまでは、生存患者の数は一定になります。プロットした線は、階段の踏面(フミヅラ)状態、そして、死亡者が出現するとその時期は階段の蹴上(ケアゲ)状態になるということです。ここで1つ注意するポイントがあります。各時期での対象患者数(n数)を、必ず記載しなければなりません。これは忘れてはいけないポイントです。カプランマイヤー法を理解するためにも、ぜひ一度、簡単なデータを使ってご自身でグラフを作成することをお勧めします。一般的に医療現場で平均生存期間として使われる値は、カプランマイヤー法の生存曲線で生存率が50%になる時期です。これを専門用語では「生存期間中央値」といいます。この事例での生存期間中央値は、観察後6ヵ月目ということになります。■今回のポイント1)生存曲線の描き方は意外に簡単!2)各時期のn数は必ず記載すべし!インデックスページへ戻る

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ACC/AHA2013のスタチン適格基準は適切か/JAMA

 ACC/AHAガイドライン2013では、脂質管理のスタチン治療対象について新たな適格基準が定められた。同基準について米国・マサチューセッツ総合病院のAmit Pursnani氏らは、コミュニティベースの1次予防コホート(フラミンガム心臓研究被験者)を対象に、既存のATP IIIガイドラインと比較して適切なスタチン使用をもたらしているかを検証した。その結果、新ガイドライン適用で、心血管疾患(CVD)や不顕性冠動脈疾患(CAD)のイベントリスク増大を、とくに中等度リスク者について、より正確かつ効果的に特定するようになったことを報告した。JAMA誌2015年7月14日号掲載の報告より。フラミンガム心臓研究の被験者2,435例を対象にATP IIIと比較検証 検討は、フラミンガム心臓研究の第2および第3世代コホートから被験者を抽出して行われた。スタチン治療未治療で、2002~2005年に冠動脈石灰化(CAC)について多列検出器CT(MDCT)検査を受け、CVD発症について中央値9.4年間追跡を受けた2,435例を対象とした。 スタチン治療の適格性について、フラミンガムリスク因子とATP IIIのLDL値に基づき定義する一方、プールコホート解析においてはACC/AHAガイドライン2013に準拠した。 主要アウトカムは、CVD(心筋梗塞、冠状動脈性心疾患[CHD]による死亡、虚血性脳卒中)の発症とし、副次アウトカムは、CHD、CAC(Agatstonスコアで評価)であった。治療適格者14%から39%に、CVDイベントリスク者3.1倍から6.8倍に 2,435例(平均年齢51.3[SD 8.6]歳、女性56%)において、ATP IIIによるスタチン治療適格者は14%(348/2,435例)であったのに対し、ACC/AHAガイドライン2013規定では39%(941/2,435例)であった(p<0.001)。 これら被験者のCVDイベント発生は74例(非致死的心筋梗塞40例、非致死的虚血性脳卒中31例、致死的CHDイベント3例)であった。 スタチン治療適格者の非適格者と比較したCVDイベント発生に関するハザード比は、ATP IIIを適用した場合(3.1、95%信頼区間[CI]:1.9~5.0、p<0.001)も、ACC/AHAガイドライン2013を適用した場合(6.8、同:3.8~11.9、p<0.001)もそれぞれ有意に高値であったが、ACC/AHAガイドライン2013を適用した場合のほうが有意に高値であった(p<0.001)。 同様の結果は、CHDに関する中等度のフラミンガムリスクスコアを有する被験者を対象とした、CVDイベント発生のハザード比に関する検討においてみられた。 ACC/AHAガイドライン2013ガイドライン適用による新たなスタチン治療適格者(593例[24%])のCVDイベント発生率は5.7%、治療必要数(NTT)は39~58例であった。 なお、CACを有する被験者において、ATP IIIよりもACC/AHAガイドライン2013を適用した場合にスタチン治療適格者となる傾向がみられた。CACスコア0超(1,015例)では63% vs.23%であったのに対し、100超(376例)では80% vs.32%、300超(186例)では85% vs.34%であった(すべてのp<0.001)。ACC/AHAガイドライン2013によるスタチン治療適格者でCACスコア0の低リスク群(306/941例[33%])のCVD発生率は1.6%であった。

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市中肺炎の入院例における年齢・病原体を調査/NEJM

 米国疾病管理予防センター(CDC)のSeema Jain氏らは、市中肺炎による入院について詳細な調査を行った。その結果、高齢者で入院率が高いこと、最新の検査法を駆使したが大半の患者で病原体を検出できなかったこと、一方で呼吸器系のウイルス感染が細菌感染よりも検出頻度が高かったことなどを報告した。米国では、市中肺炎が成人の感染症による入院および死亡の要因であることは知られていたが、詳細は不明であった。NEJM誌オンライン版2015年7月14日号掲載の報告。市中肺炎による入院患者の病原体を調査 研究グループは、シカゴ、ナッシュビルの5病院にて、18歳以上の市中肺炎による入院について調べるアクティブ住民ベースのサーベイランスを行った。直近の入院や重度免疫抑制状態にある患者は除外した。 血液、尿、呼吸器検体を系統的に集めて培養検査、血清学的検査、抗原検出、遺伝子検査を行い、また試験担当の放射線科医が個別に胸部X線写真をレビューした。 そのうえで、年齢と病原体別に市中肺炎入院の住民ベース発生率を算出した。病原体が検出されたのは38% 2010年1月~2012年6月の間に、サーベイ適格成人としてスクリーニングを行った3,634例のうち2,488例(68%)を登録した。 そのうちX線検査で肺炎の所見が認められた患者は2,320例(93%)で、患者の年齢中央値は57歳(四分位範囲:46~71)であった。 集中治療を要した患者は498例(21%)、死亡は52例(2%)であった。 病原体は、肺炎のX線所見と細菌およびウイルス両検査について検体が入手できた2,259例の患者において、853個(38%)が検出された。530例(23%)で1つ以上のウイルスが、247例(11%)で細菌が、また59例(3%)で細菌とウイルスの病原体が、そして17例(1%)で真菌類またはマイコバクテリウム属の細菌がそれぞれ検出された。 最も検出頻度が高かった病原体は、ヒトライノウイルス(患者の9%で検出)、インフルエンザウイルス(6%)、肺炎連鎖球菌(5%)であった。 肺炎の年間罹患率は、成人1万人当たり24.8例(95%信頼区間:23.5~26.1)であり、年齢別にみると65~79歳(成人1万人当たり63.0例)、80歳以上(同164.3例)で高率であった。病原体別にみた罹患率は、年齢とともに増大が認められた。

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コーヒー摂取でメラノーマリスク減少?

 カフェインおよびカフェイン入りコーヒーを摂取する量が多いほど、メラノーマの発症リスクが減少する可能性が、米国・ハーバード大学医学部のShaowei Wu氏らによって報告された。Epidemiology誌2015年7月10日掲載の報告。 カフェインはこれまで、紫外線誘発性の発がんを抑制すること、メラノーマ細胞の成長を抑制することが示唆されていた。Wu氏らはカフェイン摂取、コーヒー消費とメラノーマ発症リスクについて調査するため、3つの大規模コホート試験を調査した。 調査に用いられた試験は、1991~2009年のNurses' Health Study II(女性、8万9,220例)、1980~2008年のNurses' Health Study(女性、7万4,666例)、1986~2008年のHealth Professionals Follow-up Study(男性、3万9,424例)であった。 Cox比例ハザードモデルを用いて、メラノーマと食物摂取の関連について95%信頼区間とハザード比を調査した。 主な結果は以下のとおり。・調査は400万人年超のフォローアップ中、2,254例のメラノーマ患者が特定された。・カフェイン摂取量は393mg/day以上と、60mg/day未満で比較を行った。・リスク因子による補正後、カフェイン総摂取量が多い群ではメラノーマ発症リスクが少なかった(HR=0.78、95%CI=0.64~0.96、傾向のp=0.048)・この相関は女性のほうが男性よりも顕著であった(女性:HR=0.70、95%CI=0.58~0.85、傾向のp=0.001、男性:HR=0.94、95%CI=0.75~1.2、傾向のp=0.81)。・カフェイン摂取量が多い群では、高頻度で日光に暴露されている部位のメラノーマ発症が少なく(頭部、首、四肢:HR=0.71、95%CI=0.59~0.86、傾向のp=0.001)、日光暴露が少ない部位(肩、背中、臀部、腹部、胸部:HR =0.90、95%CI =0.70~1.2、傾向のp=0.60)よりも顕著であった。・上記の相関は、カフェイン入りコーヒー摂取量では同様の結果を示した一方、カフェイン抜きコーヒーの摂取量ではみられなかった。

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抗精神病薬の単剤化は望ましいが、難しい

 統合失調症治療において、抗精神病薬の多剤併用を支持するエビデンスはほとんどなく、また診療ガイドラインでこれを推奨していないにもかかわらず、広く普及したままである。米国・サウスフロリダ大学のRobert J Constantine氏らは、2種類の抗精神病薬による治療で安定している患者を対象に、1種類の抗精神病薬への切り替え効果を検討するため、無作為化比較試験を行った。Schizophrenia research誌2015年8月号の報告。 7つの地域精神保健センターからエントリーした、2種類の抗精神病薬での併用治療により安定している成人統合失調症外来患者104例を対象に、多剤併用療法を継続する群(多剤継続群)と抗精神病薬の単剤療法に切り替える群(単剤切り替え群)に無作為に割り付けた。60日ごとに症状と副作用の評価を行い、1年間追跡した(合計7回評価)。評価項目は、症状(PANSS、CGI)と副作用(EPS、代謝関連、その他)の時間経過における違いとし、各群への割り当てと時間を関数として、ITT分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・単剤切り替え群は、多剤継続群と比較し、症状の増加がより大きかった。・これらの違いは、試験開始6ヵ月目に出現した。・試験期間1年間における全原因中止率は、単剤切り替え群(42%)のほうが、多剤継続群(13%)と比較して高かった(p<0.01)。・副作用に関しては、多剤継続群においてSimpson Angus合計スコアが単剤切り替え群と比べて大幅に減少した以外では、いずれの時点においても単剤切り替え群と比較して差は認められなかった。 結果を踏まえ、著者らは「2種類の抗精神病薬で安定している慢性期統合失調症患者に対する単剤療法への切り替えには、注意が必要である。多剤併用の中止にあたっては、多剤併用療法に移行する前に単剤療法で効果不十分な患者を対象とした、エビデンスに基づく治療(たとえばクロザピンや持効性注射剤など)の適切な試験が行われるべきである」とまとめている。関連医療ニュース 難治例へのクロザピン vs 多剤併用 急性期統合失調症、2剤目は併用か 切り換えか:順天堂大学 抗精神病薬の変更は何週目が適切か  担当者へのご意見箱はこちら

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STAR AF II:持続性心房細動に対する左房内アブレーションは善か?悪か?(解説:矢崎 義直 氏)-388

 STAR AF IIは持続性心房細動に対し、肺静脈隔離のみ施行した群と、肺静脈隔離に加え左房の線状焼灼またはCFAEアブレーションを追加した群との治療効果を比較したtrialである。持続性心房細動のみを対象とし、無作為割り付けでアブレーション方法を比較した大規模臨床試験はまだ少なく注目を集めていたが、予想外の結果となった。 多くのガイドラインでは持続性心房細動は肺静脈隔離だけでは根治は困難であり、左房内の不整脈基質に対する追加アブレーションを推奨しているが、本試験において主要エンドポイントである平均18ヵ月間の洞調律維持効果は、追加焼灼群は肺静脈隔離のみの群に優らなかった。追加焼灼群では手技時間、透視時間ともに長くなり、本試験では1例ではあるが死亡例もあった。 この結果は、すべての持続性心房細動に追加焼灼が不要というメッセージではなく、個々の症例によって肺静脈隔離で十分か、それとも不整脈基質へのアブレーションも必要なのか、ターゲットを見極めてアブレーション方法を選択することが重要ということになる。本試験の対象は限定的であり、左房径5cm以上の症例や、3年以上持続した心房細動症例を除いているため、不整脈基質に対するアブレーションを本当に必要とする症例が除外された可能性はある。なお、肺静脈隔離の精度は洞調律維持に大きく寄与するため、そもそも2群間の再発例のうち、肺静脈の再伝導率に差がなかったかが重要なポイントである。このことは今回明記されておらず、今後、持続性心房細動治療に関するさらなるエビデンスの構築が必要である。

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Vol. 3 No. 4 高尿酸血症と循環器疾患 高血圧とのかかわり

川添 晋 氏鹿児島大学大学院心臓血管・高血圧内科学はじめに高尿酸血症は、痛風関節炎や痛風腎など尿酸塩沈着症としての病態とは別に、心血管疾患のリスクになることが次々と報告され、メタボリックシンドロームの一翼としての尿酸の重要性が認識されるようになってきた。最近では、高尿酸血症が高血圧発症のリスクとなることや、尿酸低下療法によって心血管イベントが抑制される可能性を示唆する報告もなされている。本稿では、血圧上昇や高血圧性臓器合併症と尿酸との関連を疫学と機序の両面から概説するとともに、高血圧症を合併した高尿酸血症に対する薬物治療を行う際の注意すべき点について解説する。高尿酸血症と高血圧血圧上昇と血清尿酸値との疫学の歴史は意外に古い。1800年代後半には、痛風の家族歴を持つ高血圧患者が多いことや、低プリン食が高血圧と心血管病を予防することが報告されている。最近の報告では、高尿酸血症が高血圧発症のリスクとなることが国内外の疫学調査から明らかとなっている。米国における国民健康栄養調査にて、血清尿酸値が上昇するにつれて高血圧の有病率は上昇し、血清尿酸値6.0mg/dL以下では24.5%であるのに対して10.0mg/dLでは84.7%に高血圧が合併していた1)。わが国における調査でも、高血圧患者は男性で34.1%、女性で16.0%に高尿酸血症が合併していたと報告されている2)。高尿酸血症と高血圧発症に関する国内外11研究の成績をまとめたメタアナリシスでは、高尿酸血症患者における高血圧発症の相対リスクは1.41と有意に高く、1mg/dL の尿酸値の上昇により高血圧発症リスクは13%上昇するとの結果であった3)(本誌p.29図を参照)。尿酸値上昇自体が高血圧のリスクとなることが明確に示されたことになる。また小規模の研究ではあるが、アロプリノールによる尿酸降下療法にて24時間血圧が有意に下がるとの介入試験の結果も報告されている4)。尿酸が血圧を上昇させるメカニズムについてもさまざまな知見が得られている(本誌p.30図を参照)5)。尿酸によるNO(一酸化窒素)産生低下とレニン・アンジオテンシン系の産生亢進を伴った血管内皮機能低下に起因した腎血管収縮により血圧が上昇すると報告されている6, 7)。このタイプの高血圧は、食塩抵抗性で尿酸値を下げることにより降圧を認めることが特徴であるが6)、別のタイプもあることが推察されている。高尿酸血症は動脈硬化性変化による腎微小循環障害をきたし、塩分感受性で腎依存性、血清尿酸値非依存性の高血圧が形成される8)。微小循環の損傷に起因する病態においては、直接尿酸が血管平滑筋細胞に対して増殖反応を促し、レニン・アンジオテンシン系を賦活化し、CRPや単球走化性蛋白-1(MCP-1)といった炎症関連物質の産生を刺激することが報告されている9)。高血圧性臓器合併症と尿酸日本高血圧学会やヨーロッパ高血圧学会のガイドラインでは、高血圧性臓器合併症の有無でリスクの層別化を行うことを推奨している。Viazziらは、このような臓器合併症の重症度と血清尿酸値との関連性を横断研究にて検討している。これによると、ヨーロッパ高血圧学会のガイドラインに準拠した高血圧性臓器合併症が重症になるにしたがって、血清尿酸値が高値となっていくことが示されている。さらに古典的心血管危険因子で補正後も、心肥大や頸動脈不整の危険因子となることが示唆されている。またSystolic Hypertension in the Elderly Program(SHEP)10)やThe Losartan Intervention for Endpoint Reduction in Hypertension(LIFE)11) といった大規模臨床試験のサブ解析において、血清尿酸値と心血管イベントの発症との間に関連があることが示されている。われわれは669名の本態性高血圧症を対象に前向きに検討を行い、尿酸値が心血管疾患と脳卒中の発症の予測因子となるかどうかの検討を行った12)。平均7.1年のフォローアップ期間に脳卒中71例、心血管疾患58例が発生し、64例が死亡した。生存曲線では、尿酸値が最も高かった群(8.0mg/dL以上)では有意に脳卒中と心血管疾患の発症が多く(p=0.0120)、死亡率も高かった(p=0.0021)。古典的な心血管疾患のリスク因子で補正した後も、血清尿酸値は心血管疾患(相対リスク1.30, p=0.0073)、脳卒中および心血管疾患(相対リスク1.19, p=0.0083)、死亡(相対リスク1.23, p=0.0353)、脳卒中および心血管疾患による死亡(相対リスク1.19, p=0.0083)の有意な予測因子であった(本誌p.31図を参照)。また、血清尿酸値が心血管疾患リスクに与える影響は、女性においてより強かった。しかしながら、大規模疫学調査のなかには、Framingham Heart研究13)やNIPPON DATA 8014)のように、他の心血管危険因子で補正を行うと血清尿酸値の心血管死に対する影響が減弱するか喪失すると結論づけている報告もいくつか認められる。また血清尿酸値と心血管疾患の間のJカーブ現象の報告もあり15)、この分野に関しては今後のさらなる検討が必要と考えられる。高血圧治療の最終的な目標は臓器合併症、すなわち心血管イベント発症や腎機能悪化に伴う透析などの回避であることはいうまでもない。臓器合併症予防のためには、蓄積されつつある知見を踏まえて、血圧のみならず血清尿酸値も含めた管理を行う必要がある。高血圧症例における高尿酸血症の管理高血圧患者における血清尿酸値上昇が腎障害や心血管事故発症と関連することから、日本痛風・核酸代謝学会による『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』16)に準じて、総合的なリスク回避をめざした6・7・8ルールに基づく尿酸管理が推奨されている(本誌p.32図を参照)。高尿酸血症を合併する高血圧では、血清尿酸値7mg/dL以上でエネルギー摂取制限、運動習慣、節酒等の生活指導を開始する。8mg/dL以上では、生活習慣の修正を行いながら尿酸降下薬の開始を考慮する。降圧療法中の血清尿酸値の目標は6mg/dL以下をめざす。この際、降圧剤が尿酸代謝に及ぼす影響も考慮することが望まれる(本誌p.32図を参照)。サイアザイド系利尿薬やループ利尿薬は高尿酸血症を増長し、痛風を誘発することがあるため注意が必要である。Ca拮抗薬とロサルタンは高血圧患者の痛風発症リスクを減少させることが知られている17)。大量のβ遮断薬およびαβ遮断薬の投与は血中尿酸値を上昇させる。ACE阻害薬、Ca拮抗薬、α遮断薬は血清尿酸値を低下させるという報告と、影響を与えないとする報告がある。ARBの1つであるロサルタンは、腎尿細管に存在するURAT1の作用を阻害することによって血中尿酸値を平均0.7mg/dL低下させる18, 19)。重症高血圧患者におけるβ遮断薬のアテノロールに対するロサルタンの標的臓器保護作用の有意性を示したLIFEでは、ロサルタンの降圧を超えた臓器保護作用のうち29%は尿酸値の改善によることが示唆されている11)。最近使用頻度が増えているARB/利尿薬合剤には、ヒドロクロロチアジド6.25mgまたは12.5mgが使用されているが、尿酸管理の観点からはより低用量の製剤を使用するか、尿酸排泄増加作用を有するARBであるロサルタンを含む合剤の使用が望ましい。高血圧合併高尿酸血症患者の病型は排泄低下型が多いことから、ベンズブロマロンなどURAT1阻害薬が有用であることが多い。キサンチンオキシダーゼ阻害薬のアロプリノールは、これまで唯一の尿酸生成抑制薬として40年間にわたり全世界で用いられてきた。しかしアロプリノールの活性代謝産物であるオキシプリノールは腎排泄性であり、血中半減期が長く体内に蓄積しやすいため、腎機能障害ではオキシプリノールの血中濃度が上昇し20)、汎血球減少症などの重篤な副作用の出現に関係するとされる。高血圧患者には腎機能低下を合併する症例が多いためアロプリノール使用に関してはこの点に注意が必要である。本邦において2011年から臨床使用可能となったフェブキソスタットは、肝腎排泄型であるため腎機能障害者においても用量調節が不要であるとされている。おわりに高尿酸血症が高血圧発症や心血管疾患のリスク因子であるというエビデンスが蓄積されてきている。高血圧診療の場では、糖尿病や脂質異常症などの既知のリスクに加えて、尿酸値も意識して総合的な管理を行うことが求められている。文献1)Choi HK et al. Prevalence of the metabolic syndrome in individuals with hyperuricemia. Am J Med 2007; 120: 442-447.2)宮田恵里ほか. 高血圧患者における高尿酸血症の実態と尿酸動態についての検討. 血圧 2008; 15: 890-891.3)Grayson PC et al. Hyperuricemia and incident hypertension: a systematic review and meta-analysis. Arthritis Care Res 2011; 63: 102-110.4)Feig DI et al. Effect of allopurinol on blood pressure of adolescents with newly diagnosed essential hypertension: a randomized trial. JAMA 2008; 300: 924-932.5)大野岩男. 高血圧のリスクファクターとしての尿酸. 高尿酸血症と痛風 2010; 18: 31-37.6)Mazzali M et al. Elevated uric acid increases blood pressure in the rat by a novel crystal-independent mechanism. Hypertension 2001; 38:1101-1106.7)Sanches-Lozada LG et al. Mild hyperuricemia induces vasoconstriction and maintains glomerular hypertension in normal and remnant kidney rats. Kidney Int 2005; 67: 237-247.8)Watanabe S et al. Uric acid, hominoid evolution,and the pathogenesis of salt-sensitivity. Hypertension 2002; 40: 355-360.9)Johnson RJ et al. A unifying pathway for essential hypertension. Am J Hypertens 2005; 18: 431-440.10)Franse LV et al. Serum uric acid, diuretic treatment and risk of cardiovascular events in the Systolic Hypertension in the Elderly Program (SHEP). J Hypertens 2000; 18: 1149-1154.11)Hoieggen A et al. The impact of serum uric acid on cardiovascular outcomes in the LIFE study. Kidney Int 2004; 65: 1041-1049.12)Kawai T et al. Serum uric acid is an independent risk factor for cardiovascular disease and mortality in hypertensive patients. Hypertens Res 2012: 35: 1087-1092.13)Culleton BF et al. Serum uric acid and risk for cardiovascular disease and death : the Framingham Heart Study. Ann Intern Med 1999;131: 7-13.14)Sakata K et al. Absence of an association between serum uric acid and mortality from cardiovascular disease: NIPPON DATA 80, 1980-1994 . National Integrated Projects for Prospective Observation of Non-communicable Diseases and its Trend in the Aged. Eur J Epidemiol 2001; 17: 461-468.15)Mazza A et al. Serum uric acid shows a J-shaped trend with coronary mortality in non-insulin-dependent diabetic elderly people. The CArdiovascular STudy in the ELderly(CASTEL). Acta Diabetol 2007; 44: 99-105.16)日本痛風・核酸代謝学会. ガイドライン改訂委員会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版. メディカルレビュー社, 東京, 2010.17)Choi HK et al. Antihypertensive drugs and risk of incident gout among patients with hypertension:population based case-control study. BMJ 2012;344: d8190.18)Iwanaga T et al. Concentration-dependent mode of interaction of angiotensin II receptor blockers with uric acid transporter. J Pharmacol Exp Ther 2007; 320: 211-217.19)Enomoto A et al. Molecular identification of a renal urate anion exchanger that regulates blood urate levels. Nature 2002; 417: 447-452.20)佐治正勝. アロプリノール服用患者における血中オキシプリノール濃度と腎機能. 日腎会誌 1996; 38: 640-650.

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やめられない理由はタバコの値段?

タバコの価格と収入推移1957年(昭和32年)に新発売されたホープ(10本入り)40円大卒国家公務員の初任給1957年(昭和32年)… 9,200円19.7倍2014年(平成26年) …181,200円出典:人事院2015年(平成27年)に発売されているタバコ(20本入り)の平均価格 420 ~ 430円10本入り40円 × 19.7(倍)= 10本入り788円20本入りだと、約1,600円相当になるはず…現在のタバコは、まだまだ安過ぎる!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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オンライン症状チェッカーは有用か/BMJ

 インターネットを介した自己診断およびトリアージアドバイスツールの利用が増大しているが、いずれも有用でないことが明らかにされた。これまで、それらツールの臨床的パフォーマンスを十分に評価した検討は行われていなかったが、米国ハーバード・メディカル・スクールのHannah L Semigran氏らが、一般公開されている23のツールについて監査試験(audit study)を行い報告した。トリアージアドバイスは、大体がリスクを回避するものであったという。BMJ誌オンライン版2015年7月8日号掲載の報告。23のフリーツールの診断およびトリアージ能を検証 オンライン症状チェッカー(患者の自己診断やトリアージを補助するコンピュータアルゴリズムを用いたツール)の診断およびトリアージの精度を確認する検討は、一般公開されている英語版のフリーツールで、幅広い症状に対するアドバイスを提供している23個を対象とした。 「緊急治療が必要(例:肺塞栓症)」「非緊急治療が適切(例:中耳炎)」「セルフケアが適切(例:ウイルス性上気道感染症)」の3カテゴリに等分できる45の標準的患者像を用いてチェッカー機能を評価した。 主要評価項目は、診断能については、770例の標準的患者像評価において、チェッカーが最初の診断で正確な診断を提示したか、または可能性があるとして提示した上位20に正確な診断を含んでいるかで評価した。またトリアージの推奨能については、532例において、3カテゴリを正しく推奨できたかどうかで評価した。トリアージアドバイスは概してリスク回避型 結果、チェッカー23個が、最初の診断で正確な診断を提示したのは34%(95%信頼区間[CI]:31~37%)、上位20の診断に正しい診断を提示したのは58%(同:55~62%)であった。また、適切なトリアージアドバイスを提示したのは57%(同:52~61%)であった。 トリアージ能は症状の緊急度によってばらつきがみられ、緊急治療が必要な症例については80%(95%CI:75~86%)、非緊急症例は55%(同:47~63%)、セルフケア症例については33%(同:26~40%)であった(p<0.001)。 標準的患者評価における適切なトリアージアドバイス能は、23個のツール全体で33%(95%CI:19~48%)~78%(同:64~91%)に及んだ。 著者は、「症状チェッカーはトリアージ、診断のいずれの能力も不十分であった。トリアージアドバイスは、セルフケアが適切である症状に対して治療を勧告するというように、大体がリスクを回避するものであった」と述べている。

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脳卒中後、認知機能は急速に低下/JAMA

 脳卒中は認知機能を急速に低下させることが米国・ミシガン大学のDeborah A. Levine氏らによる前向き研究の結果、明らかにされた。認知機能の低下は脳卒中サバイバーの主要な障害要因であるが、これまで脳卒中後の認知機能の変化がどれほどなのかは不明であった。検討では6年間の追跡において、脳卒中は認知機能を加速度的かつ持続的に低下していくことも明らかになったという。JAMA誌2015年7月7日号掲載の報告より。脳卒中サバイバーの認知機能の変化を評価 検討は、前向きコホート研究Reasons for Geographic and Racial Differences in Stroke(REGARDS)の参加者のうち、ベースラインで認知障害がみられなかった45歳以上2万3,572例を対象とした。被験者は米国大陸に居住しており、2003~2007年に登録され2013年3月31日まで追跡を受けた。追跡期間中央値は6.1年(四分位範囲:5.0~7.1年)で、その間に515例が脳卒中サバイバーとなり、残る2万3,057例は脳卒中が未発症であった。 研究グループは、脳卒中サバイバーの認知機能の変化を評価し、発症前の機能の変化と比較した。 主要アウトカムは、総合的な認知機能の変化(6項目スクリーナー[Six-Item Screener: SIS]のスコア範囲0~6で評価)とした。副次アウトカムは、新たな学習能における変化(Consortium to Establish a Registry for Alzheimer Disease Word-List Learningのスコア範囲0~30で評価)、言語記憶(Word-List Delayed Recallのスコア範囲0~10で評価)、実行機能(Animal Fluency Testのスコア範囲0以上で評価)、認知機能障害(SISスコア5未満[障害あり] vs.5以上[障害なし]で評価)などであった。すべての評価は、高スコアほど認知機能が良好であることを示した。脳卒中は総合的な認知機能、新たな学習能、言語記憶の急速な低下と関連 結果、脳卒中は、総合的な認知機能(0.10ポイント、95%信頼区間[CI]:0.04~0.17)、新たな学習能(1.80ポイント、同:0.73~2.86)、言語記憶(0.60ポイント、0.13~1.07)の急速な低下と関連していた。 脳卒中被験者は非脳卒中被験者と比較して、総合的な認知機能[0.06ポイント(95%CI:0.03~0.08)/年の差が拡大]、実行機能[同0.63ポイント(同:0.12~1.15)]の低下がより急速であった。一方で、新たな学習能、言語記憶ではそうした加速はみられず、発症前と比較しても軌跡の有意な変化はみられなかった。 サバイバーにおける脳卒中後の認知障害リスクは、脳卒中直前と比較して急激に上昇したが、統計的な有意差はみられなかった(オッズ比1.32、95%CI:0.95~1.83、p=0.10)。しかしながら認知障害の発生が、脳卒中前と比べて脳卒中後のほうが有意に早まっていた(オッズ比/年:1.23、95%CI:1.10~1.38、p<0.001)。 ベースラインのあらゆる共変量について平均値を有した70歳代の黒人女性において、追跡3年時点における脳卒中が、より重度の認知障害と関連していることも明らかになった。認知障害発生率の絶対差でみると、3年時点4.0%(95%CI:-1.2~9.2%)、6年時点は12.4%(同:7.7~17.1%)であった。

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経口抗精神病薬とLAI併用の実態調査

 統合失調症患者における持効性注射剤(LAI)と経口薬の同時処方の頻度および期間について、米国・ペンシルベニア大学のJalpa A Doshi氏らが調査を行った。診療ガイドライン推奨のLAI治療は、一般的にはアドヒアランス不良の患者に対するモノセラピー選択肢と見なされている。LAI治療を受けている患者の、経口抗精神病薬の同時処方の割合や経過に関するデータは限定的であった。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2015年8月号の掲載報告。 研究グループは、医療費請求データベースに基づく観察的研究により、LAI治療を受けているメディケイド受給患者340例について、経口薬の同時処方の頻度および期間を調べた。具体的には、統合失調症患者で、直近にアドヒアランス不良および入院の既往がある患者について調べた。調査には、第1世代の抗精神病薬デポ製剤(フルフェナジンデカン酸エステル、ハロペリドールデカン酸エステル)と、最新の使用可能な注射剤(LAIリスペリドン、パリペリドンパルミチン酸エステル)の両方を含んだ。 主な結果は以下のとおり。・LAI治療を開始した全患者のうち、75.9%が退院後6ヵ月の間に経口抗精神病薬の同時処方を受けていた。・同時処方を受けていた患者は、LAI薬と同一の経口薬を処方されている頻度が高かった。一方で、第1世代のLAI使用者の多くが、第2世代の経口薬を同時処方されていた。・同時処方率が最も低かったのは、パリペリドンパルミチン酸エステルの処方群であった(58.8%)。一方で最も高かったのは、LAIリスペリドンの処方群であった(88.9%)。・経口薬とLAI処方の重複は、概して期間が長期(30日超など)になると発生しており、またLAIにより重複が生じている日の割合が顕著(50%超)であった。 これらの結果を受けて著者らは、「さらなる研究でそのような処方がなされた理由を調べ、また日常診療におけるさまざまな抗精神病薬治療の至適な役割を、明らかにする必要があることが強調された」とまとめている。関連医療ニュース 初回エピソード統合失調症、LAIは経口薬より優る 統合失調症、デポ剤と抗精神病薬併用による効果はどの程度 アリピプラゾール持続性注射剤の評価は:東京女子医大  担当者へのご意見箱はこちら

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熱中症になっちまった【Dr. 中島の 新・徒然草】(077)

七十七の段 熱中症になっちまった梅雨が明け、いよいよ夏本番。猛暑による熱中症のニュースが日本各地から報じられています。かくいう私も熱中症になってしまったので、その時の様子をお話ししましょう。先日のこと。女房とともに山に登りました。大病を患った後のことなので、慎重にゆっくりと歩きます。幸か不幸か雲一つない晴れ渡った空の下、高度2,700メートル付近を過ぎたあたりで、息が切れるわけでもないのに、なんだか全身がだるくなってきたのです。すでに女房は100メートルほど先を歩いていたので、そこまで行ってから休もうと思いましたが、それが間違いでした。目標としたところまで行ってから岩の上に腰を下ろしたのですが、いつまで経ってもだるさが取れません。 女房 「大丈夫?」 中島 「大丈夫じゃないみたい」 女房 「ええっ!」 中島 「目の前がやけに眩しくて、なんか白っぽく見える」 今思えば、すでに症状が出ていました。 女房 「お茶飲む?」 中島 「いや、全然喉が渇いてない」 女房 「シャツを脱ぐ?」 中島 「いや、全然暑くない」 女房 「何言ってるのよ! 汗びっしょりじゃない」 確かにスキンヘッドの頭から絶えず汗が……というより、どんどん噴き出してきます。まるでサウナに入ったみたいな状態といえばわかりやすいかもしれません。見かねた女房に無理やりお茶を飲まされ、服を1枚むしりとられました。すると少し楽になってきたので、歩いて下ることにしました。風の吹く日陰にしばらく座っていると徐々に体が楽になり、ようやく生き返りました。帰りの車の中。中島「いったいあの時はどうしちまったのかなあ」女房「あれ熱中症じゃないの」中島「熱中症?」女房「アンタは髪の毛がないから、頭が全面太陽光パネルになっているのよ。そりゃあ熱中症にもなるわ」後でネットで調べてみると、熱中症の症状として「立ちくらみや目眩がする、汗のかきかたがおかしい」など、まさしく私の経験したとおりの症状が紹介されていました。また、本来なら喉が渇いて水分補給をしたり、暑さを感じて着ているものを脱いだりするはずが、そのような自覚症状が全くありませんでした。ということは身体調整機能も壊れていたのかもしれません。後で考えれば、帽子を被ること、長袖シャツを着ること、こまめに水分補給することなどを心掛けておくべきでした。皆さんも太陽の照りつける日に外出する際には、くれぐれも御注意ください。自分自身が患者になってしまったら大変なことですから。最後に1句炎天下 日光くらって ダウンする

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難治性うつ病、抗うつ薬変更とアリピプラゾール追加、どちらが有用か

 うつ病患者において、アリピプラゾール増強療法と他の抗うつ薬への切り替えについて有効性や忍容性を直接比較した研究はない。韓国・高麗大学校のChangsu Han氏らは、外来うつ病患者を対象に、アリピプラゾール増強療法と他の抗うつ薬への切り替えの治療効果を比較するため、6週間の評価者盲検無作為化直接比較試験を行った。Journal of psychiatric research誌2015年7-8月号の報告。 抗うつ薬不応な外来うつ病患者を対象とし、アリピプラゾール増強療法(AA)群、他の抗うつ薬への切り替え(SW)群のいずれかに無作為に割り付けた。抗うつ薬不応の定義は、現在のうつ病エピソードで少なくとも6週間の適切な抗うつ薬治療を行ったにもかかわらず、ハミルトンうつ病評価尺度17項目版(HDRS-17)の合計スコアが14以上とした。主要評価項目は、モンゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)の合計スコアのベースラインから治療終了までの変化量とした。副次評価項目は、事前に定義された治療終了時の反応率と寛解率、HDRS-17合計スコア、Iowa Fatigue Scale(IFS)、Sheehan Disability Scale(SDS)のベースラインから治療終了までの変化量、治療終了時に臨床全般印象-改善度(CGI-I)が1または2であった患者の割合とした。忍容性は、Barnes Akathisia Rating Scale(BARS)、Arizona Sexual dysfunction scale(ASEX)を用い評価し、有害事象数を両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者101例は、AA群52例、SW群49例に無作為に割り付けられた。・ベースラインからのMADRSスコアの平均変化量は、AA群で有意に高く、-8.7の違いがあった(p<0.0001)。両群間の差は、2週間目で認められた。・治療反応者および寛解者の割合は、AA群(60%、54%)のほうがSW群(32.6%、19.6%)と比較して、有意に高かった(各々p=0.0086、p=0.0005)。・ほとんどの副次的評価項目において、AA群はSW群と比較し、より良好な臨床転帰を示した。・忍容性は、両群間で同等であった。 通常の抗うつ薬治療で不応なうつ病患者に対して、アリピプラゾール増強療法は、他の抗うつ薬への切り替え投与と比較して、全体的に有益な臨床転帰を示した。この結果を踏まえ、著者らは「本研究の方法論における欠点を考慮し、適切な検出力のある、より厳密な対照を置いた臨床試験の実施が必要である」とまとめている。関連医療ニュース 治療抵抗性うつ病患者が望む、次の治療選択はどれ 難治性うつ病にアリピプラゾールはどの程度有用か 日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法:名古屋大学  担当者へのご意見箱はこちら

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リンチ症候群の子宮内膜がんリスク、低下させるのは?/JAMA

 DNAミスマッチ修復(MMR)遺伝子変異キャリアであるリンチ症候群の女性について調べたところ、「初潮年齢が遅い」「生産児あり」「ホルモン避妊薬の1年以上使用」が、いずれも子宮内膜がんリスクの低下と関連することが明らかにされた。オーストラリア・メルボルン大学のSeyedeh Ghazaleh Dashti氏らが、リンチ症候群の女性1,128例について行った後ろ向きコホート試験の結果、報告した。現状では、リンチ症候群の子宮内膜がんリスクを低下する方法としては、子宮摘出術のみが明らかになっている。JAMA誌7月7日号掲載の報告より。初潮、最初と最後の出産、月経閉止年齢、ホルモン避妊薬の使用などを調査 研究グループは、1997~2012年の大腸がん患者の家族レジストリ(Colon Cancer Family Registry)を基に、リンチ症候群の女性1,128例について後ろ向きコホート試験を行い、ホルモン因子と子宮内膜がんとの関連を検証した。被験者は、米国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド在住だった。 被験者について、初潮、最初と最後の出産、月経閉止のそれぞれの年齢、生産児数、ホルモン避妊薬の使用や月経閉止後のホルモン服用の有無について調べた。 主要アウトカムは、自己申告による子宮内膜がんの診断だった。1年以上のホルモン避妊薬の使用でリスクは0.39倍に その結果、被験者のうち子宮内膜がんを発症したのは、133例だった(罹患率:0.29/100人年、95%信頼区間:0.24~0.34)。 初潮年齢が13歳以上、生産児1人以上、1年以上のホルモン避妊薬の使用は、いずれも子宮内膜がん発症リスクの低下に関連していた(それぞれ、ハザード比:0.70、0.21、0.39)。 一方で、最初と最後の出産年齢や月経閉止の年齢、月経閉止後のホルモン服用は、いずれも子宮内膜がん発症リスクとは関連が認められなかった。

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骨粗鬆症薬2剤、投与順序で効果に差/Lancet

 閉経後骨粗鬆症の女性に対し、骨粗鬆症治療薬テリパラチド(商品名:フォルテオ)2年投与後にデノスマブ(同:プラリア)を2年投与した場合は、股関節部や大腿骨頚部の骨密度は継続的に増加するのに対し、デノスマブ2年投与後にテリパラチドを2年投与した場合の増加率は低下することが報告された。米国・マサチューセッツ総合病院のBenjamin Z. Leder氏らが、すでに実施したデノスマブとテリパラチドに関する無作為化試験「DATA」試験の、予定されていた延長試験として行った「DATA-Switch」の結果、明らかにした。Lancet誌オンライン版2015年7月2日号掲載の報告。2年投与後に切り替えを行い4年時点の前・後脊椎骨の骨密度の変化率を評価 DATA試験では、閉経後骨粗鬆症の女性94例を無作為に3群に分け、1群にはテリパラチド(1日1回20mg)を、別の群にはデノスマブ(6ヵ月に1回60mg)を、もう1つの群にはその両者を、それぞれ24ヵ月間投与した。DATA試験の結果、テリパラチドとデノスマブの併用は、いずれか一方の単独投与に比べ、骨密度が有意に増大することを示した。 同グループは2011年9月27日~2013年1月28日にかけて、DATA-Switch試験を開始した。DATA試験でテリパラチド群だった被験者はデノスマブを、デノスマブ群はテリパラチドを、併用群にはデノスマブを、それぞれ投与した。 主要評価項目は、4年時点の前・後脊椎骨の骨密度の変化率で、修正intention-to-treat解析で評価した。脊椎骨密度変化率に群間差はみられなかったが… その結果、48ヵ月時点の脊椎骨密度の平均変化率は、テリパラチド→デノスマブ群(27例)が18.3%(95%信頼区間:14.9~21.8)、デノスマブ→テリパラチド群(27例)が14.0%(同:10.9~17.2)、併用→デノスマブ群(23例)が16.0%(同:14.0~18.0)と、各群間で有意差はみられなかった(テリパラチド→デノスマブ群 vs.デノスマブ→テリパラチド群のp=0.13、テリパラチド→デノスマブ群 vs.併用群のp=0.30、デノスマブ→テリパラチド群 vs.併用群のp=0.41)。 副次アウトカムの股関節部骨密度変化率は、テリパラチド→デノスマブ群が6.6%、併用→デノスマブ群が8.6%と、デノスマブ→テリパラチド群の2.8%より高率だった(それぞれp=0.0002、p<0.0001、併用→デノスマブ群 vs.テリパラチド→デノスマブ群のp=0.0446)。 同様に大腿骨頚部骨密度変化率についても、テリパラチド→デノスマブ群が8.3%、併用→デノスマブ群が9.1%と、デノスマブ→テリパラチド群の4.9%より高率だった(それぞれp=0.0447、p=0.0336)。なお併用→デノスマブ群 vs.テリパラチド→デノスマブ群の有意差はみられなかった(p=0.67)。 橈骨密度変化率は、テリパラチド→デノスマブ群は0.0%と変わらなかった。デノスマブ→テリパラチド群が-1.8%と減少し、併用→デノスマブ群は2.8%と増加した(テリパラチド→デノスマブ群 vs.併用→デノスマブ群のp=0.0075、デノスマブ→テリパラチド群 vs.併用→デノスマブ群のp=0.0099)。 デノスマブ→テリパラチド群の1例で、治療に関連すると思われた腎結石が認められた。 以上の結果を踏まえて著者は、「閉経後骨粗鬆症患者の導入および継続治療について、これらの結果を考慮するべきだろう」と指摘している。

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薬剤師業務 対物から対人業務へ 第8回日本在宅薬学会学術大会

 7月19・20日、第8回日本在宅薬学会学術大会が幕張メッセ国際会議場(千葉県千葉市)で開催された。2日間で1,184人が参加し、「理論から実践へ」をテーマに、8シンポジウム34演題と一般演題78題が発表された。 基調講演には厚生労働省の鈴木 康裕氏が登壇した。団塊の世代が75歳以上となる2025年問題に触れ、高齢者の割合増加に伴い生活習慣病患者の割合が増え、服薬の機会が増加していくという社会環境の変化について説明した。それにより深刻化が懸念される残薬問題に関しては効果や安全面だけでなく、医療費の有効活用の面からも課題であるという見解を示した。また、国は今後病床数を増やさない方針であるため、在宅医療や介護人材の確保が急務であり、3~4年以内に体制をつくる必要性について説明した。 医薬分業の現状については、期待されてきた薬局の「かかりつけ機能」が十分に発揮されていない状況を指摘し、薬剤師業務は物販業務から対人業務へ転換が求められているとした。そして、来年の調剤報酬改定以降、医薬品の供給に関する点数を減らし、かかりつけ機能や在宅サービスに関わる業務の評価を上げていく方向性を示した。 日本医師会と合同開催されたシンポジウム1では、医師、看護師、薬剤師がそれぞれの立場から地域包括ケアに求められる連携について意見を述べた。在宅医療に取り組む薬剤師からは、薬剤師が処方提案したことで褥瘡が改善されたケースや減薬につながった症例が報告された。また、医師や看護師からは、患者本人の能力を超える薬剤管理が必要な処方がされた症例や、複数の医療機関からの多剤併用による有害事象などのケースについて発表がされ、より積極的な薬剤師の介入を求める声が聞かれた。また、退院支援の協力事例や病院と薬局の合同勉強会による知識や情報共有の改善事例の発表がされ、病診連携や薬薬連携強化の重要性が確認された。 学会理事長の狭間 研至氏は会見にて、薬剤師の在り方が変わるということは薬剤師だけの問題ではなく、治療方針や治療結果に関わることであるため、医師をはじめ、他職種の人々と共に考えていく必要があるとの考えを示した。そして、今回日本医師会より後援を受け、合同シンポジウムを開催できたことを評価し、来年度以降も議論を続けていきたいとした。 また、今年1月に17名が認定された在宅療養支援認定薬剤師制度について触れ、認定要件の1つとして課された症例報告から薬剤師が介入することで在宅医療の結果が変わってきていることや、学会のホームページに公開されている認定薬剤師の情報から、実際に在宅医との連携が始まったことを例に挙げ、薬剤師による在宅療養支援が実践の時代に入ってきているという所感を述べた。一方で、薬剤師の在宅業務が軌道に乗っている例はまだ少数であるため、求められる知識・技能教育の提供に加え、今後は経営面での課題解決支援や、公的な形で行政や教育機関へ実態をフィードバックしていく方針を示した。

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すべての1型糖尿病患者にインスリンポンプ療法を施行すべきか?(解説:住谷 哲 氏)-387

 1型糖尿病患者は、インスリン分泌が枯渇しているため、インスリン投与が必須となる。現在では基礎インスリンとボーラスインスリンを組み合わせた、インスリン頻回注射療法[MDI:Multiple daily injections、(BBT [Basal-bolus treatment]ともいう)]を用いたインスリン強化療法が主流である。しかし、生理的インスリン補充のために必要となる基礎インスリンの調節は、MDIにおいては困難である。一方、インスリンポンプ療法(CSII [continuous subcutaneous insulin infusion]ともいう)は、自由に基礎インスリン量を調節できるために、MDIと比較して低血糖の少ない、より変動の少ない血糖コントロールが可能であるとされる。 これまでに、血糖コントロール指標や低血糖の頻度などの代用アウトカム(surrogate outcomes)を両治療法において比較した報告は多数あるが、心血管イベントや総死亡などの真のアウトカム(true outcomes)を比較した報告はほとんどなく、本論文は貴重である。その結果、インスリンポンプ療法によりMDIと比較して、総死亡が27%減少することが示され、衝撃的である。 本論文の結果が真実であれば、すべての1型糖尿病患者にインスリンポンプ療法を行うことが正当化されると思われるが、そうだろうか。 まず、本研究は観察研究であり、厳密には因果関係を証明することはできない。観察研究での因果関係の強さを推定する際には、介入の生物学的妥当性を考える必要があるが、この論文ではインスリンポンプ療法による重症低血糖の減少が可能性の1つとして挙げられている。 これまでに本論文の著者らにより、1型糖尿病患者における重症低血糖の頻度と、その後の心血管死との関連が報告されていることから、この推論は支持されると思われる1)。加えて、仮想的交絡因子(hypothetical confounders)を用いた統計学的解析により、治療選択によるバイアス(treatment allocation bias)も可能な限り排除されている。さらに、スウェーデンではほぼ100%の1型糖尿病患者が本研究で用いられたレジストリに登録されており、選択バイアス(selection bias)の可能性もほとんどない。以上から、本論文で示されたインスリンポンプ療法と総死亡も含めた心血管イベントリスクの減少との間には、因果関係がかなりの確率で存在すると考えられる。 筆者の外来にも多数の1型糖尿病患者さんが通院しているが、インスリンポンプ療法を施行しているのはごく一部である。わが国ではスウェーデンとは異なり治療費の問題もあるが、現実的にはインスリンポンプ療法に移行するには大きな壁があるように感じている。さらに、いったんインスリンポンプ療法に移行しても、その後にMDIに戻る患者も存在する。 本論文によれば、インスリンポンプ療法の壁が小さいと考えられるスウェーデンにおいても、インスリンポンプ療法を行っている患者は全体のわずか13.4%であり、きわめて少ない。つまり、現実にはインスリンポンプ療法が継続できる患者とできない患者が存在しており、後者が大部分を占めている。この両患者群の違いは単純ではなく、患者側のみならず、医療者側も含めた多数の複雑に絡み合った要因に依存していると思われる。 著者らも述べているが、インスリンポンプ療法の生理学的作用のみによる結果と単純に考えることはできず、インスリンポンプ療法が長期にわたって継続できることこそが、総死亡を含めた心血管イベントのリスク減少につながるとするのが正しい解釈であろう。 今後はインスリンポンプ療法の可否について、すべての1型糖尿病患者と医療提供者との間のshared decision makingが必要になると思われる。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第22回

第22回:成人の頸部リンパ節腫脹について監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 プライマリケアの現場で、頸部リンパ節腫脹はそれ自体を主訴に受診する場合のほか、急性疾患に罹患して受診した際に気付かれる、時に見られる症候の一つです。 生理的な範疇なのか、反応性なのか、それとも悪性なのかの区別をつけることが、臨床的には重要になります。 以下、American Family Physician 2015年5月15日号1)より原則として、経過が急性・亜急性・慢性かで鑑別を考える。急性【外傷性】外傷性の場合、組織や血管系の損傷による。少量であれば自然軽快するが、大きく、急性に増大する場合はすぐに処置や外科的精査を要する。剪断力が追加されると偽性動脈瘤の形成・動静脈瘻の形成につながる。その場合はスリルや雑音を伴った柔らかい、拍動性腫瘤として触れる。【感染・炎症性】最も多い原因である。歯や唾液腺のウイルス・細菌によるものが代表的である。性状は腫脹、圧痛、発赤や熱感を伴う。可動性がある。ウイルス性の上気道症状は1~2週続くことが一般的だが、リンパ節腫脹は上気道症状改善後3~6週以内に治まってくることが多い。そのため、上気道症状改善後にも頸部腫脹が続くことで心配して受診する患者さんもいる。病原ウイルスはライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザが多い。生検が適応になるのは、4~6週経っても改善しなかったり、夜間の寝汗・発熱・体重減少・急速な腫瘤増大といった悪性を示唆する所見があったりする場合である。よって、この点について病状説明を行うべきと考える。細菌性感染では、頭部・頸部がフォーカスの場合に主に頸部リンパ節腫脹を来す。肺外結核も頸部リンパ節腫脹を起こす。びまん性、かつ両側性にリンパ節腫脹があり、多発し、可動性もなく、硬く圧痛もなく、胸鎖乳突筋より後ろの後頸三角地帯に存在していることが特徴である。疑えば、ツベルクリン反応を行うべきだが、結果が陰性だからといって否定はできない。亜急性週~月単位の経過で気付かれる。ある程度は急速に増大しうるが、無症候性に増大するため発症スタートの段階では気付かれない。成人で持続する無症候性の頸部腫瘤は、他の疾患が否定されるまでは悪性を考えるべきである。喉頭がんなどでは診断が遅れる事で生存率が下がるため、家庭医にとって頭頸部がんの一般的な症状については認識しておくことが最重要である。【悪性腫瘍】頭頸部の原発性悪性腫瘍で最も多いのは上気道消化管の扁平上皮がんである。よくある症状としては、改善しない潰瘍・構音障害・嚥下障害・嚥下時痛・緩いもしくは並びの悪い歯・咽頭喉頭違和感・嗄声・血痰・口腔咽頭の感覚異常がある。悪性疾患を示唆するリンパ節の性状は、硬い・可動性がない・表面不整であることが多い。上気道消化管がんのリスクファクターとしては、男性・アルコール・タバコ・ビンロウの実(betel nut:東南アジアではガムを噛むようによく使用されている)である。口腔咽頭がんのリスクファクターは頭頸部扁平上皮がんの家族歴・口腔衛生不良である。扁平上皮がんの一部はヒトパピローマウイルス感染との関連も指摘されている(とくにHPV-16がハイリスク)。病変は急速に腫大し、嚢胞性リンパ節(持続性頸部リンパ節過形成)、口蓋・舌扁桃の非対称性、嚥下障害、声の変化、咽頭からの出血といった症状を来す。集団としてリスクが高いのは、35歳~55歳の白人男性で喫煙歴・重度のアルコール常用者・多数の性交渉相手(とくにオーラルセックスを行っている場合)の存在である。唾液腺腫瘍の80%近くが良性であり、耳下腺由来である。これらの腫瘍は一側性で無症候性、緩徐に増大し可動性のある腫瘤である。一方、悪性腫瘍では、急速増大、可動性がなく、痛みを伴い、脳神経(とくにVII)も巻き込むという違いがある。黒色腫のような皮膚がんもまた局所のリンパ節に転移する。局所のリンパ節腫脹を説明しうる原発の頭頸部がんが存在しない場合、臨床医は粘膜に関わる部位(鼻・副鼻腔・口腔・鼻咽頭)の黒色腫を検索するべきである。まれに基底細胞がんや扁平上皮がんからの転移でリンパ節腫脹を来すこともある。発熱、悪寒、夜間寝汗、体重減少といった全身症状は遠隔転移を示唆しうる。頸部リンパ節腫脹を来す悪性腫瘍の原発部位は肺がん、乳がん、リンパ腫、子宮頸がん、胃食道がん、卵巣がん、膵がんが含まれる。頸部はリンパ腫の好発部位であり、無痛性のリンパ節腫脹で出現して急速に進行し、その後有痛性へと変わる。びまん性のリンパ節腫脹や脾腫よりも先に全身症状が出現することが多い。転移によるリンパ節腫脹と比べ、リンパ腫の性状は弾性軟で可動性がある。Hodgkinリンパ腫では二峰性の年齢分布(15~34歳、55歳以上)があり、節外に症状が出る事はまれである。Non-Hodgkinリンパ腫では高齢者で多く、咽頭部の扁桃輪のようにリンパ節外にも症状が出る。リウマチ性疾患では唾液腺腫大を来すのは3%、頸部リンパ節腫脹を来すのは4%存在する。唾液腺腫大や頸部リンパ節腫大を来すリウマチ性疾患にはシェーグレン症候群やサルコイドーシスがある。慢性小児期から存在する先天性腫瘤がほとんどで、緩徐に進行し成人になっても持続している。慢性の前頸部腫瘤の原因として最も多いのは甲状腺疾患であるが、進行が緩徐であることがほとんどである。びまん性に甲状腺腫大がみられた場合、バセドウ病・橋本病・ヨード欠乏による可能性があるが、甲状腺腫を誘発するリチウムのような物質曝露によるものも考える。傍神経節腫は神経内分泌腫瘍で、側頸部の頸動脈小体の化学受容体・頸静脈・迷走神経を巻き込む。通常無症候性だが、機能性になる時はカテコラミン放出の結果として顔面紅潮・動悸・高血圧を起こす。診断的検査は血漿もしくは24時間蓄尿でカテコラミン・メタネフリンを測定する事である。診断手段成人の持続する頸部腫瘤に対しては、まず造影CTを選択する。大きさ・広がり・位置・内容などに関して評価しうる初期情報が得られるためである。加えて、造影剤は腫大していない悪性リンパ節を同定する助けにもなり、血管とリンパ節の区別の一助になりうる。造影CTでの精査は頸部腫瘤の評価に対しては第1選択として推奨される。しかし、ヨードを用いた造影剤検査は甲状腺疾患の病歴のある、もしくは転移性甲状腺がんの心配のある患者へは避けるべきである。PET-CTは予備的診断として使用するには効果的でなく、悪性腫瘍の最終的な評価目的で使用すべきである。超音波検査はCTの代わり、もしくは追加で行われるとき、嚢胞性疾患と充実性疾患との区別に有用であり、結節の大きさや血流の評価にも有用である。CTと超音波の使い分けとして、より若年で放射線被曝を減らしたい場合に超音波を選択する。また、造影剤腎症を避けるために腎疾患が基礎疾患にある方へは造影剤使用を控える。FNAB(fine needle aspiration biopsy:穿刺吸引生検)については、施行に当たり重要な構造物を含んでいないことが確認できていれば進めていく。FNABでは、細胞診、グラム染色、細菌培養、抗酸菌培養を通じて得られる情報が多い。FNABでの悪性腫瘍診断については、感度77~97%、特異度93~100%である。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) James Haynes, et al. Am Fam Physician. 2015; 91: 698-706.

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妊娠前後のSSRIは出生異常と関連するか/BMJ

 妊娠前後のパロキセチンおよびfluoxetineの使用により新生児の右室流出路狭窄のリスクが高まるが、他の選択的セロトニン再取り込み薬(SSRI)ではこのような関連はみられないことが、米国疾病管理予防センター(CDC)のJennita Reefhuis氏らの調査で明らかとなった。再生産年齢(reproductive age)および妊娠中の女性のSSRI使用が増加しているが、SSRIと出生異常の関連については相反する報告があり、妊娠中のSSRI使用のリスクとベネフィットの評価は十分ではないという。BMJ誌オンライン版2015年7月8日号掲載の報告。文献と症例対照研究のデータをベイズ法で解析 研究グループは、妊娠前後のSSRIの使用と出生異常の関連を評価した文献をレビューし、症例対照研究であるNational Birth Defects Prevention Study(NBDPS)のデータと合わせて解析を行った。 1997~2009年の出産予定者の出生証明書および出産した病院の記録を調査し、出生異常児の母親1万7,952例と出生異常のない児の母親9,857例を同定した。 このうち妊娠前の1ヵ月以内および妊娠3ヵ月までにSSRI[シタロプラム、エスシタロプラム、fluoxetine(国内未承認)、パロキセチン、セルトラリン]の使用歴がある女性について解析を行った。 情報をより強固なものにするために、ベイズ法を用いて文献から得られた個々の知見を集約し、NBDPSのデータを用いてこれらの知見をアップデートした。これまでに報告されているSSRIによる出生異常との関連を評価した。関連のある出生異常も絶対リスクは低い 最も使用頻度の高いSSRIはセルトラリンであった。セルトラリンとの関連が報告されている5つの出生異常は、この調査ではいずれも関連はなかった。また、シタロプラム、エスシタロプラムについても、特定の出生異常との関連は認めなかった。 パロキセチンは次の5つの出生異常との関連が示された。無脳症(事後オッズ比[OR]:3.2、95%信用区間[CrI]:1.6~6.2)、心房中隔欠損症(1.8、1.1~3.0)、右室流出路狭窄(2.4、1.4~3.9)、腹壁破裂(2.5、1.2~4.8)、臍帯ヘルニア(3.5、1.3~8.0)。 また、fluoxetineは、右室流出路狭窄(事後OR:2.0、95%CrI:1.4~3.1)および頭蓋縫合早期癒合症(1.9、1.1~3.0)と有意な関連が認められた。 これまでにSSRIとの関連が報告されている他の9つの出生異常については、この調査では関連を認めなかった。また、この調査で関連が確認された出生異常の絶対リスクの上昇は小さく、パロキセチンによる無脳症および右室流出路狭窄の絶対リスクは依然として低かった。 著者は、「SSRIと出生異常の関連については、今後も精密な調査を継続する必要がある。今回の解析は、現時点で出生異常のリスクを最小化する最も安全な妊娠中の治療選択肢とともに、母親の適切なうつ病治療を提示するのに役立つであろう」と指摘している。

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糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、2つ以上の罹患歴があると…/JAMA

 糖尿病、脳卒中、心筋梗塞のうち2つ以上の罹患歴を有する場合を、心代謝性疾患の多疾病罹患(cardiometabolic multimorbidity)と呼ぶ。このような集団は、罹患歴がない場合に比べ死亡リスクが相乗的に増大することが、英国・ケンブリッジ大学のEmanuele Di Angelantonio氏らEmerging Risk Factors Collaboration(ERFC)の研究グループの検討で示された。近年、心代謝性疾患の多疾病罹患の有病率が急速に上昇している。3疾患の個々の死亡リスクについては多数のエビデンスが存在するが、複数の疾患の罹患歴がある場合の生存に関するエビデンスはほとんどないという。JAMA誌2015年7月7日号掲載の報告。参加者約120万人、死亡数約13万5,000人のデータを解析 研究グループは、ERFCおよび英国Biobankのデータを用いて、心代謝性疾患の多疾病罹患が生存に及ぼす影響の評価を行った(英国医学研究審議会[MRC]などの助成による)。 ERFC(登録期間:1960~2007年、参加者:68万9,300人、91コホート、死亡数:12万8,843人、最新フォローアップ:2013年4月)の個々の患者データを用いて、年齢と性別で補正した死亡率およびハザード比(HR)を算出した。 次いで、ERFCから得られたHRを英国Biobank(登録期間:2006~10年、参加者:49万9,808人、死亡数:7,995人、最新フォローアップ:2013年11月)のHRと比較した。さらに、算出された死亡に対する年齢特異的HRを、米国の年齢特異的死亡率に適用することで累積生存率を推算した。 ERFCの参加者のベースラインの平均年齢は53±9歳、女性が51%であり、英国Biobankはそれぞれ57±8歳、55%であった。60歳時の余命が2疾患罹患で12年、3疾患では15年短縮 ERFCのうちベースライン時に糖尿病、脳卒中、心筋梗塞の罹患歴のない参加者(対照群)における性別で補正した年齢60歳時の死亡率は、1,000人年当たり6.8であった。 これに対し、糖尿病の罹患歴のある集団の1,000人年当たりの死亡率は15.6で、脳卒中は16.1、心筋梗塞は16.8であり、いずれも対照群の2倍以上となった。 さらに、糖尿病と心筋梗塞の双方の罹患歴がある場合の死亡率は32.0/1,000人年、糖尿病/脳卒中は32.5、脳卒中/心筋梗塞は32.8と、対照群の約5倍近くとなり、3疾患の罹患歴がある場合は59.5と約9倍近くにまで上昇した。 対照群と比較した全死因死亡のHRは、糖尿病の罹患歴がある集団では1.9(95%信頼区間[CI]:1.8~2.0)、脳卒中は2.1(2.0~2.2)、心筋梗塞は2.0(1.9~2.2)で、糖尿病/心筋梗塞は3.7(3.3~4.1)、糖尿病/脳卒中は3.8(3.5~4.2)、脳卒中/心筋梗塞は3.5(3.1~4.0)であり、3疾患すべての罹患歴がある場合は6.9(5.7~8.3)であった。 これらERFCで得られたHRは、登録の時期がより最近である英国BiobankのHRと類似していた。また、HRは、さらに脂質や収縮期血圧、BMI、喫煙、食事、社会経済的地位で補正しても、ほとんど変化しなかった。 60歳時の余命は、2つの疾患に罹患した場合は12年(男性:12年、女性:13年)短くなり、3疾患すべてに罹患すると15年(14年、16年)短縮すると推定された。また、男性の余命の短縮には心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞)の影響が大きかったのに対し、女性では糖尿病の関与が大きかった。 著者は、「糖尿病、脳卒中、心筋梗塞の罹患歴のある集団の死亡率は、個々の疾患でほぼ同じであった。これらの疾患の罹患歴が複数あると死亡率が相乗的に増大し、多疾病罹患者の余命は実質的に減少した」とまとめ、「これらの結果は、心血管疾患の1次予防と2次予防のバランスを取る必要があることを強調するものである」「ERFCは47年間の18ヵ国、91コホートの個々の参加者のデータに基づくことから、一般化の可能性は高いと考えられる」と指摘している。

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