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日本での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延は、ついに4月7日、政府が7都府県に対し、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく「緊急事態宣言」を発令するに至った。報道を見ていると、今回の緊急事態宣言は東京都を中心とする感染者急増に対し、医療崩壊を懸念する日本医師会や日本看護協会などの危機意識表明に背中を押されたようにも見える。実際、この緊急事態宣言に至った舞台裏を報じた朝日新聞の「『経済ガタガタに…』揺れた政権、緊急事態宣言に動く訳」でも、政権がこうした医師会などの姿勢に根負けしたことが赤裸々につづられている。歴代内閣総理大臣の中で最長在職日数記録(第1~4次内閣)を達成し、かつての佐藤 栄作氏の最長連続在職日数記録に迫りつつある安倍 晋三氏の看板政策が、大胆な金融政策に代表される経済政策「アベノミクス」。その成果については賛否両論があるものの、安倍氏就任以降、一貫してこの中で成功していたのが株価である。2018年1月には日経平均株価が約26年ぶりの2万4,000円台を回復し、2019年末から2020年1月にかけても2万4,000円台に2度達成するなど一番目に見えた成果が、今回のCOVID-19騒動で一時は1万6,000円台まで急落した。緊急事態宣言で最も全国民に影響する外出自粛要請により、それに伴う企業活動・消費の低下は必至で、日経平均株価の1万6,000円割れも視野に入る。安倍政権の焦りは分からないわけではない。もっとも、公開データを基に感染症病床の病床使用率の参考値を公表しているサイト「新型コロナウイルス対策ダッシュボード」の最新データ(4月6日時点)を見ると、既に感染者数が特定感染症病床、一種感染症病床、二種感染症病床の合計数を超える自治体が東京都をはじめとして5都県、病床使用率70%以上100%未満が7県あるという状況では、経済重視が行き過ぎればまさに全国的な医療崩壊が現実のものになってしまう。しかし、今回の外出自粛要請がどの程度感染拡大スピードの抑止につながるか未知数なのは、誰もが承知していることだろう。ちょうど本稿執筆時点の4月8日、今回のCOVID-19の震源地となった中国湖北省・武漢市は1月23日から2ヵ月半続いた都市封鎖が解除された。解除の理由は3月の第4週に新規感染者発生がほぼゼロになったことを受けたものだが、この都市封鎖は厳しい移動制限や商業施設の閉鎖など強制力を伴うもの。また、中国ほどではないものの3月10日から全土封鎖と罰則を伴う外出禁止令を出していたイタリアでも、ようやく4月に入り感染者報告が減少し始めている。日本はこれよりも緩い措置であるため「感染抑止効果が薄いのでは?」との指摘もあるが、そもそも感染症の感染力を示す「基本再生産数」は、単純なウイルスの感染力だけでなく、流行地域の人口密度、各国の医療レベルや国民の行動様式、個人の感染防御対応などにも左右される。その意味で今回の日本での外出自粛の効果を占うなら、最短時期は東京都の小池百合子知事が初めて外出自粛を訴えた3月最終週の週末に今回のウイルスの最大潜伏期間14日間を足した4月13日以降の都内での感染者報告となるだろう。