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フランスでの小規模試験の結果を受け、不整脈等の副作用が懸念されつつも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への効果が期待される抗マラリア薬・クロロキンやヒドロキシクロロキン。これらの薬剤を、医師や看護師等の医療従事者があらかじめ服用することでCOVID-19を予防できるかどうかを調べる、英国オックスフォード大学主催の大規模試験(COPCOV)が上手く行けば来週22日にも同国で始まります1,2)。試験は欧州・アジア・アフリカの3大陸で、医療従事者4万人を募って実施されます。アジアから参加する被験者はクロロキンかプラセボを3ヵ月間服用し、アフリカと欧州ではクロロキンではなくヒドロキシクロロキンが投与されます。被験者は1日2回体温を測り、ほかに症状があればそれらと共にアプリやウェブサイトを介して報告します。報告されたそれらデータに基づいて、クロロキンかヒドロキシクロロキン服用群とプラセボ群で、感染者の数や感染後の重症度、罹病期間が比較されます。「もしクロロキンやヒドロキシクロロキンに感染予防効果があって医療従事者がそれらを服用することができれば、医療に計り知れない恩恵をもたらす」と同試験を助成するウェルカム トラスト(Wellcome Trust)の代表Jeremy Farrar氏は言っています。COPCOV試験のような曝露前予防(PrEP)試験に加え、COVID-19患者と図らずも接触した医療従事者や家族等にヒドロキシクロロキンを短期間投与することで、COVID-19の発症を防いだりより軽症で済ませられるかどうかを調べる曝露後予防(PEP)の取り組みも始まっています。スペインのバルセロナで先月3月中旬に始まったHCQ4COV19試験では3)、COVID-19患者をHIV薬ダルナビル/コビシスタットとヒドロキシクロロキンで治療することに加えて、COVID-19患者と15分超過ごした経験がある人にヒドロキシクロロキンを7日間投与するPEPの効果も調べられています。同様の試験は米国のミネソタ州、ワシントン州、ニューヨーク州でも始まっています。先週10日、GoogleとAppleはそのようなPEP効果検証試験に役立つであろうCOVID-19接触者検出スマートフォン技術の共同開発を発表しました4,5)。行動が顕わになる恐れがあるGPSデータのような位置情報に基づくのではなく、各人が持つスマートフォンどうしがどれだけ接近したかをBluetooth通信を利用して記録することで、COVID-19患者が接触した人を突き止める機能が、数ヵ月以内に利用可能になるとのことです。上述のスペインでのHCQ4COV19試験にはCOVID-19患者への接触者1,000人以上がすでに参加しており、ヒドロキシクロロキンによるPEP群と非PEP群のひとまずの比較結果は、早くも今週15日頃に判明する見込みです。テクノロジー業界の2大巨頭が手を組んで開発されるプライバシー重視のCOVID-19接触者検出技術は、PEPの効果の更なる検証や検証後のPEPの普及を大いに助けるでしょう。参考1)Trials of drugs to prevent coronavirus infection begin in health care workers / Science2)COPCOV試験(ClinicalTrials.gov)3) HCQ4COV19試験(ClinicalTrials.gov)4)Apple and Google partner on COVID-19 contact tracing technology / Google5)AppleとGoogle、 新型コロナウイルス対策として、 濃厚接触の可能性を 検出する技術で協力 / アップル