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うつ病合併片頭痛に対するフレマネズマブの有効性〜UNITE試験

 片頭痛とうつ病は併発することが多いものの、両疾患を合併した患者における片頭痛予防に関する有効性を評価したエビデンスは限られている。米国・Albert Einstein College of MedicineのRichard B. Lipton氏らは、うつ病を合併した成人片頭痛患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、二重盲検プラセボ対照並行群間ランダム化試験であるUNITE試験を実施した。JAMA Neurology誌オンライン版2025年5月5日号の報告。 UNITE試験は、4週間のスクリーニング期間、12週間の二重盲検期間および12週間の非盲検継続試験により構成され、2020年7月9日〜2022年8月31日に12ヵ国、55施設で実施した。対象患者は、スクリーニング前12ヵ月以上にわたりDSM-V基準に基づくうつ病歴があり、スクリーニング時に活動性の抑うつ症状を呈した反復性片頭痛(EM)または慢性片頭痛(CM)の成人患者。フレマネズマブ225mgを月1回投与したフレマネズマブ群とプラセボ群に1:1でランダムに割り付けられた。継続試験に参加した患者には、フレマネズマブ675mgを四半期ごとに投与した。主要アウトカムは、12週間の二重盲検期間中における1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの変化量とした。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた540例中353例(平均年齢:42.9±12.3歳、女性の人数:310例[88%]、EM:48%、CM:52%)が適格基準を満たし、フレマネズマブ群(175例)またはプラセボ群(178例)に割り付けられた。・12週間の二重盲検期間中における1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの平均変化は、フレマネズマブ群で−5.1±0.50(95%信頼区間[CI]:−6.09〜−4.13)、プラセボ群で−2.9±0.49(95%CI:−3.89〜−1.96)であった(p<0.001)。・8週目におけるハミルトンうつ病評価尺度17項目スコアのベースラインからの平均変化は、フレマネズマブ群で−6.0±0.55(95%CI:−7.10〜−4.95)、プラセボ群で−4.6±0.54(95%CI:−5.66〜−3.55)であった(最小二乗平均差:−1.4±0.61、95%CI:−2.61〜−0.22、p=0.02)。・有害事象は、フレマネズマブによる他の試験結果と一致しており、その結果は継続試験期間を通じて維持された。 著者らは「うつ病を合併した成人片頭痛患者に対するフレマネズマブ投与は、プラセボと比較し、1ヵ月当たりの片頭痛日数および抑うつ症状の改善に寄与することが示唆された。また、新たな安全性上の懸念は認められなかった」とし、「本結果は、うつ病を合併した成人片頭痛患者を評価するために特別に設定され、単一の薬理学的介入による片頭痛と抑うつ症状の有意な改善を実証した初めてのプラセボ対照ランダム化試験である」としている。

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第270回 首や顔のマッサージで脳の老廃物除去?

首や顔のマッサージで脳の老廃物除去?脳脊髄液(CSF)排出を促す顔や首のマッサージが、やがてはアルツハイマー病などの神経疾患の治療の助けになるかもしれません。脳を浸すCSFは衝撃から脳を守ることに加えて神経伝達物質、代謝物、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経疾患と関連するアミロイドタンパク質やその他の老廃物を中枢神経系(CNS)の外へ排出する役割を担います。CSFの流れが滞ることは老化や神経変性疾患に寄与しうるとの考えを受けて、CSF排出の仕組みの研究が盛んになっています。CSFがどういう経路を経て排出されるかは関心の的の1つで、脳の周りのくも膜下腔のCSFが頭蓋の底の髄膜リンパ管から鼻咽頭リンパ網(nasopharyngeal lymphatic plexus)を経由して首の奥まったところのリンパ節に流れていくことが韓国のGou Young Koh氏らのチームが昨年報告した研究で発見されています1)。髄膜リンパ管を増やしたり減らしたりすることでCSF排出を調節することが可能となり、CSF排出を標的とする疾患の治療の可能性が見出されつつあります。たとえば、CGRP伝達が髄膜リンパ管を害することがマウスに片頭痛様の痛みを引き起こすことが示唆されており2)、CSF排出の促進が片頭痛の治療の助けになるかもしれません。別の研究ではα/β遮断薬3剤(プラゾシン、atipamezole、プロプラノロール)の併用でCSFの排出を促して外傷性脳損傷マウスの脳浮腫を減らして身のこなしを改善しうることが示されています3)。これらの降圧薬は安全性が確立していて、どうやら神経に良い働きがあるらしいことも示唆されており、なかなか使い勝手がよさそうです。Koh氏らは上述の研究の後のマウスやサルの検討でより皮膚に近い新たなCSF排出路を発見し、さらには顔や首を軽くマッサージするという何とも簡単な方法でCSF排出を促しうることを示しました4-6)。皮膚から5mmばかり下を通るそのCSF排出経路は、眼鼻口のあたりのリンパ管とそれに続く首の表在性リンパ管(superficial cervical lymphatic、scLV)を介して顎下リンパ節(submandibular lymph node、smLN)へと通じています。scLVを介してsmLNへと通じる経路を、綿棒のような器具で顔や首の皮膚を軽く叩いていわばマッサージすることでCSFの排出を促しうることが示されました。老化マウスにも有効で、マッサージした老化マウスのCSFの流れはより若いマウスと同じぐらいになりました。未発表ですがサルでも同様の結果が得られています6)。さらには死者の皮下のリンパ管の配置の検討からヒトのCSFの流れもどうやらマッサージで促せそうです。とはいえマウスやサルとヒトの体の構造は違っており、さらなる検討が必要です。それに、CSF排出促進で脳の老化を遅らせたり、神経変性疾患を予防したりできるかどうかは不明です。Koh氏はアルツハイマー病の特徴を示すマウスでCSF排出促進の効果を調べるつもりです6)。 参考 1) Yoon JH, et al. Nature. 2024;625:768-777. 2) Nelson-Maney NP, et al. J Clin Invest. 2024;134:e175616. 3) Hussain R, et al. Nature. 2023;623:992-1000. 4) Jin H, et al. Nature. 2025 Jun 4. [Epub ahead of print] 5) New non-invasive method discovered to enhance brain waste clearance / Eurekalert 6) Massaging the neck and face may help flush waste out of the brain / NewScientist

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糖尿病患者の認知症リスク低減、GLP-1薬とSGLT2阻害薬に違いは?

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)およびSGLT2阻害薬と2型糖尿病患者のアルツハイマー病およびアルツハイマー病関連認知症(ADRD)のリスクを評価した結果、両剤はともに他の血糖降下薬と比較してADRDリスクの低下と関連しており、GLP-1薬とSGLT2阻害薬の間には有意差は認められなかったことを、米国・University of Florida College of PharmacyのHuilin Tang氏らが明らかにした。JAMA Neurology誌2025年4月7日号掲載の報告。 GLP-1薬およびSGLT2阻害薬とADRDリスクとの関連性はまだ確認されていない。そこで研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1薬およびSGLT2阻害薬に関連するADRDリスクを評価するために、2014年1月~2023年6月のOneFlorida+ Clinical Research Consortiumの電子健康記録データを使用して、無作為化比較試験を模倣するターゲットトライアルエミュレーションによる検証を実施した。対象は50歳以上の2型糖尿病患者で、ADRDの診断歴または認知症治療歴がない者とした。ADRDは臨床診断コードを用いて特定した。 2型糖尿病患者39万6,963例のうち、(1)GLP-1薬と他の血糖降下薬の比較コホートが3万3,858例(平均年齢:65歳、女性:53.1%)、(2)SGLT2阻害薬と他の血糖降下薬の比較コホートが3万4,185例(65.8歳、49.3%)、(3)GLP-1薬とSGLT2阻害薬の比較コホートが2万4,117例(63.8歳、51.7%)であった。潜在的な交絡因子を調整するため逆確率重み付け(IPTW)を用いたCox比例ハザード回帰モデルで、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。(1)GLP-1薬開始群のADRD発症率は、他の血糖降下薬開始群よりも低かった。・発症率差(RD):1,000人年当たり-2.26、95%CI:-2.88~-1.64・HR:0.67、95%CI:0.47~0.96(2)SGLT2阻害薬開始群のADRD発症率は、他の血糖降下薬開始群よりも低かった。・RD:1,000人年当たり-3.05、95%CI:-3.68~-2.42・HR:0.57、95%CI:0.43~0.7(3)GLP-1薬開始群とSGLT2阻害薬開始群の間にはADRD発症率の差は認められなかった。・RD:1,000人年当たり-0.09、95%CI:-0.80~0.63・HR:0.97、95%CI:0.72~1.32 これらの結果より、研究グループは「2型糖尿病患者では、GLP-1薬とSGLT2阻害薬はどちらも他の血糖降下薬と比較してADRDのリスク低下と統計学的に有意に関連しており、両薬剤間に差は認められなかった。本研究の結果は、GLP-1薬とSGLT2阻害薬による神経保護を支持するものであり、2型糖尿病患者のADRD予防戦略における役割を示唆するものである」とまとめた。

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思春期うつ病に最も効果的な抗うつ薬は?

 中国・Capital Medical UniversityのTianwei Wu氏らは、10代の若者におけるうつ病治療に対する各種抗うつ薬の有効性を評価し、思春期うつ病に対する治療の有効性および忍容性を評価するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。BMC Psychiatry誌2025年5月10日号の報告。 対象は、各種診断基準(DSM-5、CCMD-3、DSM-4、ICD10/11)でうつ病と診断された6〜18歳の青年。2024年10月までに公表されたランダム化比較試験(RCT)を主要データベース(PubMed、Cochrane Library、Web of Science)よりシステマティックに検索した。検索に使用したキーワードは、うつ病、うつ病性障害、感情障害、青年期、若年成人、未成年者、fluoxetine、セルトラリン、パロキセチン、agomelatine、vilazodone、エスシタロプラム、ベンラファキシンとした。バイアスリスクは、Cochraneバイアスリスクツールを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・15件のRCT(1万2,258例)をネットワークメタ解析に含めた。・ほとんどの研究では、ランダム化および割り付けの盲検化に関してバイアスリスクが低かったが、盲検化やアウトカム評価の実施が不明瞭な研究もみられた。・ネットワークメタ解析では、Children's Depression Rating Scale-Revised(CDRS-R)、臨床全般印象度(CGI-S)、Child Global Assessment Scale(CGAS)などいくつかの主要指標では、agomelatine(平均差[MD]:−0.34、95%信頼区間[CI]:−0.59〜−0.09)、fluoxetine(MD:−0.31、95%CI:−0.42〜−0.21)、セルトラリン(MD:−0.27、95%CI:−0.47〜−0.06)は、プラセボと比較して、CDRS-Rスコアの有意な改善が認められた。・CGI-Sについては、セルトラリンがより有効であった(MD:−4.39、95%CI:−4.77〜−4.01)。・CGASについては、エスシタロプラムがより有効であった(MD:2.08、95%CI:1.33〜2.84)。・累積順位曲線下面積(SUCRA)値では、エスシタロプラムは、CGASおよび臨床全般印象度の改善度(CGI-I)において他の薬剤よりも優れた効果を示し(各々:96.1%、86.4%)、agomelatineは、CDRS-Rスコアの改善において他の薬剤よりも優れていた(86.4%)。・セルトラリン使用は、CGI-Iスコアの上昇抑制に対して最も可能性の高い戦略であることが示唆された(100%)。・Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコアについては、パロキセチンは、他の薬剤よりも有意に優れていた(99.9%)。 著者らは「症状重症度尺度では、agomelatineとパロキセチン、機能改善尺度ではエスシタロプラムが最も高い評価を示した。セルトラリンは、CGI-SおよびCGI-Iにおいて優位性を示した」ことから「思春期うつ病の機能回復にはエスシタロプラム、迅速な症状改善が必要な重症患者にはセルトラリンを優先すべきである」と結論付けている。

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統合失調症とうつ病における幻聴の違いは

 統合失調症および統合失調症様疾患では、4人に 3人以上の患者が幻聴を経験しているのに対し、うつ病では、6%の患者に幻聴が認められると報告されている。この2つの疾患における幻聴の鑑別は、診断および予後予測において重要である。インド・Dr D.Y. Patil Medical CollegeのTahoora Ali氏らは、統合失調症とうつ病における幻聴の特徴を比較した。Industrial Psychiatry Journal誌2025年1~4月号の報告。 対象は、3次医療の精神科センターの入院患者より抽出された統合失調症およびうつ病患者110例。社会人口統計学的情報、臨床的特徴に関連する情報、幻聴評価尺度の特徴を含む本検討のために設計されたプロフォーマを用いて、評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者とうつ病患者は、年齢、教育、職業、社会経済的地位によりマッチングされた。・統合失調症患者の幻聴は、うつ病患者と比較し、以下の項目において有意に高い評価を認めた。 ●幻聴の頻度 ●明瞭性 ●音調 ●重症度 ●注意力散漫 ●自己制御 ●苦痛 著者らは「統合失調症患者における幻聴の特徴は、うつ病患者とは大きく異なっていた。これは、診断を超えた重要な意義を示唆している。これらの幻聴の特性を臨床的に評価することは、診断精度の向上に役立つ可能性がある」と結論付けている。

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好奇心は加齢に伴い減退する?

 ある種の好奇心は、高齢になっても増していくようだ。好奇心とは一般に、新しい情報や環境を学び、経験し、探索したいという欲求のことを指す。これは、個人の比較的安定した性格的な傾向としての「特性好奇心」と、特定の物事に反応して情報を得ようとする一時的な「状態好奇心」に分けられる。新たな研究では、加齢に伴い「特性好奇心」は減退する一方で、「状態好奇心」は強まることが明らかにされた。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の心理学者であるAlan Castel氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に5月7日掲載された。 Castel氏は、「心理学の文献によると、好奇心は加齢に伴い減退する傾向がある」と話す。しかし、過去の研究結果の多くは、年齢と好奇心の関連を調査するにあたり、特性好奇心と状態好奇心の区別が十分に行われていなかったと研究グループは指摘する。 Castel氏らは今回、パイロット研究(対象者193人)と本研究(事前登録者1,218人)から成る2段階の研究を実施し、トリビア課題により状態好奇心を、アンケートにより特性好奇心を測定し、それぞれが加齢とどのように関連するのかを検討した。 その結果、年齢は状態好奇心と正の関連を示す一方で、過去の研究結果と同様、特性好奇心とは負の関連を示すことが明らかになった。これは、年齢が高くなるほど状態好奇心は強くなる一方で、特性好奇心は減退することを意味する。 Castel氏は、「本研究結果は、選択性理論に関する私の過去の研究の一部と一致している。この理論では、人は歳を重ねても、学びたいという気持ちを失うのではなく、学ぶ内容についてより選択的になるだけだと考える」と説明している。同氏はさらに、「生涯学習を見れば、この考え方が当てはまることが分かるだろう。実際、多くの高齢者が、教室で学び直したり、趣味やバードウォッチングを始めたりしている。このことは、このレベルの好奇心を維持することで、歳を重ねても頭の冴えを保てることを示していると思う」と話す。 研究グループによると、人は中年期までは学校や仕事で成功し、家族を養い、経済的に安定するために必要な知識やスキルの習得に注力する傾向がある。これは、初期の好奇心を刺激する一方でストレスの原因ともなり、幸福感を損なう可能性もあるという。つまり、人は成長に必要な情報を得るにつれて、特性好奇心に割り当てるリソースが少なくなる傾向があるということだ。しかし、子どもが独立して自分が定年を迎えると、個人的な関心ごとに時間やエネルギーを費やすようになり、その結果、状態好奇心が高まる。 Castel氏は、「人は、歳を重ねるにつれて大切なことに集中し、あまり重要でないことは忘れがちになるのかもしれない。私が話を聞いた高齢者の多くが、好奇心を持ち続けることは大切だと話していた。このことは、認知症の初期段階にある人は、かつて楽しんでいたことに無関心になる可能性があるという研究結果とも一致している」と話している。

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アセトアミノフェンを適切に使えていますか?認知症ケアと痛みの見逃し【こんなときどうする?高齢者診療】第12回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロンアーカイブズ」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。今回は、認知症患者さんの“行動の背景にある痛み”をどう捉え、どう評価し、どうケアするかという問いをテーマに、実践的な視点をご紹介します。「自傷他害のおそれがある認知症患者に対して、抗精神病薬や抗うつ薬の処方はどこまで許容されますか?」結論からお伝えしましょう。抗精神病薬は、可能な限り使わない方向でケアを組み立てることが基本です。薬に頼らない選択肢を持つことこそ、老年医学の実践といえます。理想論のように聞こえるかもしれませんが、小さな一歩から老年医学を診療やケアに取り入れられるよう、有用なツールをご紹介します。※やむをえず抗精神病薬を使う際のコツは、第10回で詳しく解説しています。“PAIN”の評価をしたか? 認知症患者は痛みを訴えられない認知機能が低下しても“痛み”は生じます。患者が痛みを感じられない、あるいは感じている痛みを伝えられないために、自傷他害やせん妄の原因になっていると気付かれていないことは多くあります。ある研究では、痛みのコントロールを適切に行った群は、対照群と比べて有意に抗精神病薬使用量の減少や認知症BPSDの出現頻度が低下したと報告されています1)。痛みのコントール、とくに本人が認知機能の低下のために訴えることのできない身体的な疼痛をコントロールすることは、認知症患者のケアに欠かせません。とはいえ、患者が訴えられない痛みをどのように見つけるのでしょうか?ここで役に立つアセスメントツールが、PAINAD(Pain Assesment in Advanced Dementia)2)です。5つの項目の観察から、痛みを定量的に評価できます。内容を見てみましょう。1.呼吸通常はゆったりとした呼吸ですが、痛みに伴って速くなります。より痛みが強くなると過換気になっていきます。2.発声うめき声・大声でわめく・泣いてしまうなどの周囲を困らせるような発声は、痛みのサインと判断します。3.顔の表情認知症患者は表情が出にくく、痛みがないときは無表情に見えます。悲しそう、おびえている、顔がゆがんでしまうなどのネガティブな表情は痛みがあると評価します。4.ボディランゲージ同じところを行ったり来たりする、繰り返し行動、握り拳を作って体につけているなど、緊張や落ち着きのなさを感じさせる行動が痛みに伴って増加します。5.なだめやすさベースラインをなだめる必要がない状態として、声掛けや体をさわるなどしないと落ち着かない、あるいはそれらをしても落ち着かないときは痛みが隠れていると考えます。PAINAD(Pain assessment in Advanced Dementia)画像を拡大する合計点:1~3点は軽度の痛み、4~6点は中等度の痛み、7~10点は高度の痛み3)このように、PAINADは認知症で言葉での訴えが難しい方でも、観察を通じて痛みの兆候を把握できるツールです。いかがですか?これならば問診ができなくても評価できそうですね。PAINADを使って痛みがありそうだと判断したら、原因疾患を探します。よくあるのは、褥瘡、軟部組織や関節の痛み、感染症、口腔内環境の悪化などです。ひとつ原因疾患を見つけても、安心してはいけません。高齢者では複数の原因が絡み合って痛みが生じていることが多いため、油断せずほかの要因も探しましょう。まず非薬物療法を検討、それでも難しいときに安全な鎮痛薬を適切に使用次に痛みにどう対処するかです。軽度の痛みであればまず理学療法などの非薬物療法と、アセトアミノフェンの併用を考慮します。高齢者は薬剤使用における副作用リスクが高く、症状が非定型に出現します。鎮痛薬の中でもNSAIDsなどのリスクの高い薬は極力使用を控える方法があるか、を常に検討しましょう。痛みがコントロールできないと高齢者のケアで相談を受けると、アセトアミノフェンを有効に使えていない場合、充分量が使われていないケースが多くあります。アセトアミノフェンは高齢者に対して最も安全性が高いとされる鎮痛薬のひとつですから、1,000mg/回、3,000mg/日でしっかりと使ってみてください。最初から1日3回の使用がためらわれる場合は、まず1日1回で様子をみてみましょう。例えば、就寝前に投与し翌朝まで様子を見る。リハビリ前に投与して動作や運動量を理学療法士に観察してもらうなどはわかりやすいかもしれません。あわせてPAINADで定量的に評価し続けることも、その後の診療・ケア計画の助けになります。許容できる範囲の痛みは何か? pain is inevitable. suffering is optional4)痛みをコントロールするときに大切なのは、「完全な無痛」を目指すのではなく、「生活に支障がない範囲で痛みを許容する」ところから始める視点です。薬を増やしすぎず、副作用の少ないケアにつながります。コミュニケーションがとれる患者なら、許容できる範囲の痛みの程度を聞き取り、痛みを完全に取り除く以外のゴールを設定しましょう。たとえば日々の生活でできるようになりたいこと、などです。疾患により痛みが生じること自体は避けられない場合もあるかもしれませんが、患者の苦しみが減るように治療やケアを行うことは可能です。痛みは減らし、苦痛をなくすことを目指していきましょう! ※今回のトピックは、2022年6月度、2023年度3月度の講義・ディスカッションをまとめたものです。CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロンアーカイブズ」でより詳しい解説やディスカッションをご覧ください。参考1)Bettina S Husebo et al. BMJ 2011;343:d4065.2)Victoria Warden,et al. J Am Med Dir Assoc. 2003 Jan-Feb;4(1):9-15.3)樋口雅也ほか.あめいろぐ高齢者診療. 129. 2020. 丸善出版4)村上春樹.走ることについて語るときに僕の語ること.2010.文藝春秋

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口唇ヘルペスウイルスがアルツハイマー病リスクと関連か

 単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)感染がアルツハイマー病(AD)発症リスクと関連しており、抗ヘルペス薬の使用がそのリスクを低減する可能性が、米国の大規模リアルワールドデータを用いた後ろ向き症例対照研究で示された。本研究は、米国・ギリアド・サイエンシズのYunhao Liu氏らにより実施された。BMJ Open誌2025年5月20日号に掲載。 本研究では、米国の大規模民間保険請求データベース「IQVIA PharMetrics Plus」を用い、2006~21年の間にADと診断された50歳以上の患者34万4,628例を特定し、年齢、性別、地域、データベース登録年、医療機関受診回数でマッチングした同数の対照者を1対1の割合で抽出し、後ろ向きマッチング症例対照研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。・AD症例群と対照群はともに、平均年齢は73±5歳、女性が65.11%であった。・AD症例群ではHSV-1感染の診断歴がある人の割合が0.44%(1,507例)だったのに対し、対照群では0.24%(823例)であった。・多変量解析で調整後、HSV-1感染の診断歴はAD発症リスクの有意な上昇と関連していた(調整オッズ比[aOR]:1.80、95%信頼区間[CI]:1.65~1.96)。・層別解析ではとくに高齢者で顕著であり、75歳以上の年齢層ではaORが2.10(95%CI:1.88~2.35)であった。・HSV-1感染の診断歴のある患者群(2,330例)において、抗ヘルペス薬を使用した人(931例、40%)は、使用しなかった人と比較してAD発症リスクが有意に低かった(調整ハザード比[aHR]:0.83、95%CI:0.74~0.92)。・抗ヘルペス薬による同様の保護効果は、AD関連認知症の解析でも認められた。・本研究において、HSV-2(単純ヘルペスウイルス2型)および水痘・帯状疱疹ウイルス感染の診断歴もADとの関連が認められたが、サイトメガロウイルスでは有意な関連はみられなかった。 著者らは、「これらの知見は、ヘルペスウイルスの予防を公衆衛生上の優先事項として捉えることの重要性をさらに強調するものであり、神経親和性ウイルスの抑制がADおよびAD関連認知症の自然経過を変えるかどうかを判断するためのさらなる研究が必要だ」と結論付けている。

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抗精神病薬の減量、D2受容体親和性と再発との関連

 抗精神病薬維持療法は、初回エピソード精神疾患の再発予防に有効であるが、抗精神病薬使用患者の多くは、寛解後に副作用、長期的な健康上の懸念、スティグマ、自立への希望から、抗精神病薬の減量または中止を望むことは少なくない。現在のガイドラインでは、抗精神病薬の漸減が推奨されているが、とくに初発エピソードから寛解した患者における最適な漸減スピードは依然として不明である。また、抗精神病薬のD2受容体親和性によっても再発リスクに影響を及ぼす可能性がある。オランダ・University of GroningenのShiral S. Gangadin氏らは、初回エピソード精神疾患患者における寛解後の抗精神病薬減量と再発リスクとの関係およびD2受容体親和性の影響を評価した。World Psychiatry誌2025年6月号の報告。 対象は、抗精神病薬を漸減した精神疾患患者227例。初回エピソードから寛解後18ヵ月以内の再発リスクおよび再発までの期間を調査した。再発は、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)、精神疾患による入院、または担当精神科医の明確な臨床判断に基づくコンセンサス基準を用いて二分的に定義した。減量スピードは、減量開始時と終了時の抗精神病薬投与量(1日当たりのオランザピン換算量)を日数で割って算出した。抗精神病薬のD2親和性に基づく分類は、パーシャルアゴニスト薬、低親和性薬、高親和性薬とした。年齢、性別、大麻使用、初回エピソードの症状持続期間、D2受容体親和性による薬剤分類の臨床的および社会人口統計学的特性の差について治療確率逆重み付けで調整した後、ロジスティック回帰分析およびCox比例ハザード回帰分析を行った。 主な内容は以下のとおり。・パーシャルアゴニスト薬使用患者54例、低親和性薬使用患者116例、高親和性薬使用患者57例。・フォローアップ期間中、減量後に再発した患者は104例(45.8%)。・平均減量スピードは75日間でオランザピン換算10mgであり、平均減量期間は124日(範囲:6〜334日)であった。・ロジスティック回帰分析では、減量スピードは再発リスクを予測しないことが示された(z=0.989、p=0.323)。・高親和性薬使用患者と比較し、低親和性薬使用患者(z=−2.104、オッズ比[OR]=0.48、p=0.035)およびパーシャルアゴニスト使用患者(z=−2.278、OR=0.44、p=0.023)は再発リスクが低かった。・減量終了から再発までの期間は、高親和性薬使用患者(平均280日)が、低親和性薬使用患者(平均351日、p=0.027)およびパーシャルアゴニスト使用患者(平均357日、p=0.040)よりも短かった。 著者らは「寛解した初回エピソード精神疾患患者における再発予測において、抗精神病薬のD2受容体親和性は、減少スピードよりも重要であった。D2受容体への親和性の高い薬剤の使用は、他の抗精神病薬と比較し、再発リスクが約2倍高かった。減量後の再発リスクの高さは、抗精神病薬を初めて選択する際、考慮すべき因子であると考えられる。初回エピソード精神疾患から寛解後、強力なD2受容体親和性を有する薬剤を使用している患者では、減量期間中に追加のモニタリングが必要であろう」としている。

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労働時間ではなく仕事の種類がうつ病リスクに影響

 労働時間や労働形態が中高年のうつ病リスクに及ぼす影響を検討した研究は、比較的少ない。中国・Hangzhou Normal UniversityのYu Zhu氏らは、とくに報告の少ない中国における労働時間や労働形態とうつ病リスクとの関連を調査するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2025年8月1日号の報告。 本研究は、2011〜20年のChina Health and Retirement Longitudinal Survey(CHARLS)のデータを用いて検討を行った。うつ病の測定には、10項目からなるCESD-10尺度を用いた。潜在成長曲線モデル(LGCM)を用いて労働時間がうつ病リスクに及ぼす影響を分析し、マルチレベル一般化推定方程式を用いて労働形態(職種および雇用形態を含む)とうつ病リスクとの関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、45歳以上の中国人3,045人。・女性労働者の平均うつ病スコアは、男性よりも高かった(9.6 vs.7.1、p<0.001)。・LGCMでは、初期の労働時間やその変化は、うつ病レベルの変化に有意な影響を及ぼさないことが示唆された。・職種別では、非農業労働者は農業労働者よりもうつ病レベルが低かった(β:−0.92[−1.14〜−0.70])。・雇用形態別では、自営業者は雇用労働者よりもうつ病レベルが高かった(β:0.59[0.38〜0.81])。・労働時間や労働形態がうつ病リスクに及ぼす影響には、男女間で差は認められなかった。 著者らは「中国人の中高年において、労働時間がうつ病リスクと有意に関連しているかどうかは明らかでないが、労働形態の違いは、うつ病リスクに影響を及ぼすことが示唆された。このことから、政府は女性、農業労働者、自営業者のメンタルヘルスにより注意を払うべきである」と結論付けている。

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日本人ASD、ADHDの自殺予防のために必要な幼少期の体験

 弘前大学の足立 匡基氏らは、自閉スペクトラム症(ASD)および注意欠如多動症(ADHD)の特性と幼少期のポジティブな経験が自殺関連行動に及ぼす複合的な影響を調査するため、日本人の青年および若年成人の大規模かつ代表的なサンプルを用いて、調査を行った。さらに、幼少期のポジティブな経験が神経多様性特性に関連するリスク軽減に役立つかについても、検討を行った。Frontiers in Psychiatry誌2025年4月30日号の報告。 対象は、16〜25歳の日本人5,000人。検証済みの尺度を用いて、ASD およびADHD特性、幼少期のポジティブな経験、自殺念慮および自殺企図を含む自殺関連行動を測定し、データを収集した。これらの変数の影響を評価するため、階層的回帰分析を複数回実施した。幼少期のポジティブな経験と神経多様性特性との間の相互作用効果を検討し、潜在的な緩和効果を検証した。 主な結果は以下のとおり。・ASD特性およびADHD特性は、自殺念慮と正の相関が認められ、両特性のレベルが高いほど、自殺リスクが最も高かった。・幼少期のポジティブな経験を組み込むことで、自殺念慮との有意な負の相関が示され、幼少期のポジティブな経験が多いほど、自殺念慮のレベルは低かった。・幼少期のポジティブな経験は、ASD特性(β:0.180→0.092)およびADHD特性(β:0.216→0.185)と自殺念慮との関連性を低下させた。・交互作用分析では、幼少期のポジティブな経験の自殺念慮に対する保護効果は、ADHD特性が高い人において、とくに顕著であった。・単純傾斜分析では、ADHD特性が低い人(β:−0.339、z=−18.61、p<0.001)、高い人(β:−0.475、z=−21.84、p<0.001)のいずれにおいても、幼少期のポジティブな経験が多いほど、自殺念慮の減少と有意な関連が認められ、ADHD特性が高い人ほどより強力な影響が示された。 著者らは「ASDおよびADHD特性は、自殺リスクに累積的かつ潜在的に複合的な影響を及ぼすことを改めて明らかにすると同時に、幼少期のポジティブな経験が重要な保護的役割を果たすことが示唆された。幼少期のポジティブな経験は、とくにADHD特性の高い人において、感情調整不全や衝動性を軽減し、自殺関連行動の減少につながる。本研究は、脆弱な集団におけるレジリエンスやメンタルヘルスを促進するための標的介入の一環として、幼少期のポジティブな経験を促進することの重要性を示唆している」と結論付けている。

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うつ病リスクに影響を及ぼす食事パターン、男女や年齢で違いがあるか?

 食生活パターンは、うつ病リスクと関連している可能性がある。男女間および年齢層別の食生活パターンの違いは報告されているものの、うつ病リスクへの影響はこれまで十分に検討されていなかった。フランス・マルセイユ大学のYannis Achour氏らは、性別および年齢層における食生活パターンとうつ病リスクとの関連性を調査し、ターゲットを絞った予防および介入戦略に役立てるため、脆弱な集団を特定することを目指し、本研究を実施した。Nutrients誌2025年5月4日号の報告。 2021〜23年に横断的オンライン国際調査ALIMENTAK研究として実施された。食生活データは検証済み食品摂取頻度質問票、うつ病データは検証済み自己申告質問票を用いて収集した。主要成分分析(PCA)を用いて、異なる食品摂取パターンを特定した。さらに食生活パターンとうつ病との関連性を評価するため、複数の潜在的な交絡因子で調整したのち、多変量解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・慢性疾患でないまたは現在向精神薬治療を行っていない参加者1万5,262人のうち、4,923人(32.2%)がうつ病群に分類された。・18〜34歳の参加者において、超加工食品摂取は、男女とも同様に、うつ病リスク上昇との関連が認められた。・18〜34歳の女性では、炭酸飲料および缶詰/冷凍食品は、うつ病リスク上昇と関連していた。●18〜34歳【超加工食品】女性のオッズ比(OR):1.21(95%信頼区間[CI]:1.15〜1.27)、男性のOR:1.21(95%CI:1.07〜1.18)【炭酸飲料】女性の調整OR:1.10(95%CI:1.06〜1.95)【缶詰/冷凍食品】女性の調整OR:1.10(95%CI:1.04〜1.15)・35〜54歳および55歳以上の参加者において、女性でのみ超加工食品とうつ病リスクとの関連が認められた。・果物、ナッツ、緑黄色野菜などの健康的な食事とうつ病リスク低下との間に有意な関連が認められた。●35〜54歳【超加工食品】女性の調整OR:1.30(95%CI:1.20〜1.42)【健康的な食事(果物、ナッツ、緑黄色野菜)】調整OR:0.82(95%CI:0.75〜0.89)●55歳以上【超加工食品】女性の調整OR:1.41(95%CI:1.11〜1.79)【健康的な食事(果物、ナッツ、緑黄色野菜)】調整OR:0.79(95%CI:0.64〜0.97) 著者らは「食生活パターンとうつ病リスクとの関連性は、男女間および年齢層間で有意な差があることが明らかとなった。これらの知見は、公衆衛生介入のより明確なターゲティングに役立つ可能性がある」と結論付けている。

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不定愁訴、魚介類の摂取不足が原因か

 女性は男性よりも原因不明の体調不良(不定愁訴)を訴える可能性が高い。今回、日本の若い女性における不定愁訴と抑うつ症状の重症度が、魚介類の摂取量と逆相関するという研究結果が報告された。研究は和洋女子大学健康栄養学科の鈴木敏和氏らによるもので、詳細は「Nutrients」に4月3日掲載された。 不定愁訴は、器質的な疾患背景を伴わない、全身の倦怠感、疲労感、動悸、息切れ、脳のもやもやなどの症状を指す。これらの症状は、検査で原因が特定できない場合が多く、心身のストレスや自律神経の乱れが関与していると考えられている。過去50年間に行われた様々な横断研究より、不健康なライフスタイルとそれに伴う栄養摂取の影響が不定愁訴に関連することが報告されている。しかし、不定愁訴と特定の食品、栄養素との関連は未だ明らかにされていない。このような背景を踏まえ、著者らは不定愁訴および抑うつ症状を定量化し、これらの症状の重症度と関連する栄養素や食品を特定することを目的として、日本の若年女性を対象とした横断的調査を実施した。 質問調査は2023年6~12月にかけて行われた。和洋女子大学に所属する18~27歳までの学部生86人が対象となり、参加者は同日に微量栄養素欠乏症関連愁訴質問票(MDCQ)、食物摂取頻度調査票(FFQg)、日本版ベック抑うつ質問票(BDI-II)の3種類の質問票に回答した。MDCQのスコアは26をカットオフとし、スコア26以下の参加者を愁訴の訴えが少ない群(LC群)、スコア27以上を訴えが多い群(HC群)とした。HC群では微量栄養素欠乏症の可能性があることを示す。BDI-IIスコアは、13をカットオフとし、13以下の参加者を抑うつ度の低い群(LD群)、14以上を抑うつ度の高い群(HD群)に分類した。2群間の比較にはMann-WhitneyのU検定を用いた。 FFQgから得られた86人の体組成、栄養摂取量は、2019年の国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)から引用した20~29歳の日本人女性のそれとほぼ同等であった。参加者はMDCQスコア(≤26:LC群、≥27:HC群)とBDI-IIスコア(≤13:LD群、≥14:HD群)に基づいて2つのグループに分類された。摂取していた栄養素について、HC群とLC群およびHD群とLD群を比較したところ、HC群とHD群ではエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ビタミンD、ビタミンB12の摂取量が有意に少ないことが分かった。これらの栄養素は日本人において主に魚から摂取されているため、両群の魚介類の摂取量を比較した。その結果、HC群の魚介類の摂取量(中央値〔範囲〕)は有意にLC群より低かった(35.9〔0~107.7〕g vs 53.8〔2.6~148.7〕g、P=0.005)。HD群とLD群を比較した場合でも、同様の低下が認められた(35.9〔0~107.7〕g vs 53.8〔0~148.7〕g、P=0.006)。 参加者はさらに、愁訴の訴えが少なくかつ抑うつ度の低いLC-LD群(MDCQ≦26かつBDI-II≦13)と愁訴の訴えが多くかつ抑うつ度の高いHC-HD群(MDCQ≧27かつBDI-II≧14)の2群に分けられた。両群の栄養素・食品摂取量を比較したところ、HC-HD群のEPA、DHA、ビタミンD、ビタミンB12の摂取量はLC-LD群よりも有意に低かった。さらに、HC-HD群では、亜鉛、セレン、モリブデン、パントテン酸といったその他の微量栄養素も有意に減少していた。食品摂取量に関しては、HC-HD群の魚介類の摂取量は、LC-LD群よりも75%低かった(12.8〔0~107.7〕g vs 53.8〔2.6~148.7〕g、P=0.001)。 本研究について著者らは、「本研究から、魚介類の摂取量は、不定愁訴の重症度および抑うつ状態に関連があることが分かった。魚介類の摂取または、EPA、DHA、ビタミンDなどの摂取が、精神神経疾患の不定愁訴およびうつ病の予防・管理に有効であるかどうかを検証するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。 本研究の限界点については、推定された栄養素および食品量は絶対値でなく概算値であったこと、食事の質や抑うつ症状の有病率に影響する社会経済的地位のような共変量を考慮していないことなどを挙げている。

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コーヒーは片頭痛予防に有効なのか?

 片頭痛は、不十分な薬物療法、不安、睡眠障害、うつ病、ストレスなど、さまざまなリスク因子の影響を受ける慢性的な神経疾患である。コーヒーは多様な生理活性作用が報告されており、急性片頭痛の症状緩和に役立つといわれているが、長期にわたる摂取を中止した場合、予期せぬ片頭痛の誘発につながる可能性がある。片頭痛患者の一部は、カフェインを潜在的な誘発因子として捉えているが、カフェインの片頭痛予防効果はいくつかの研究で示唆されている。コーヒーとその成分が片頭痛に及ぼす複雑な生理学的・薬理学的メカニズムは、依然として十分に解明されていない。中国・Shulan (Anji) HospitalのAyin Chen氏らは、コーヒーとその成分が片頭痛発症リスクに及ぼす影響を明らかにする目的で、メンデルランダム化(MR)解析を用いた調査を実施した。Neurological Research誌オンライン版2025年4月20日号の報告。 交絡因子およびバイアスリスクを低減するため、遺伝子変異を曝露量の代理指標としたMR解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・コーヒー摂取と片頭痛リスクの間に、有意な逆相関が認められた。この結果は、コーヒーが頭痛障害を予防する可能性があるという過去の疫学研究と一致している。・MR解析では、7-メチルキサンチンが片頭痛のリスク低下と関連していたのに対し、カフェ酸硫酸塩はリスク上昇と関連していた。・感度分析では、トリゴネリンを除くすべての成分について一塩基多型選択に異質性は認められず、MR-Egger法およびMR-PRESSO検定の両方で水平多面発現性や外れ値は認められなかった。 著者らは、「本結果により、コーヒーおよびその成分が片頭痛リスクに及ぼす影響が明らかとなり、有益な食事に関する推奨事項が提供される」とし、「コーヒーの保護効果は、アデノシン受容体拮抗作用と密接に関連している可能性があり、根底にあるメカニズムの解明には、さらなる研究が求められる」とまとめている。

536.

抗精神病薬の過剰治療はどう変化しているのか

 抗精神病薬による過剰治療は、副作用の観点から重要な懸念事項である。これまでの研究では、抗精神病薬の多剤併用や過剰な高用量投与に焦点が当てられてきた。オランダ・フローニンゲン大学のStijn Crutzen氏らは、潜在的な過剰治療、抗精神病薬の多剤併用、抗精神病薬の総投与量、主観的な副作用の負担について、経時的な変化をマッピングし、総投与量および多剤併用と主観的な副作用の負担との関連を調査するため、長期ケアを受けている患者を対象とした自然主義的コホート研究のデータを解析した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2025年5月7日号の報告。 自然主義的縦断的コホート研究であるPHAMOUS調査のデータ(2013~21年)を用いた。潜在的な過剰治療の定義は、リスペリドン換算5mg超の抗精神病薬投与量、または高い主観的な副作用の負担を伴う抗精神病薬の多剤併用とした。潜在的な過剰治療、多剤併用、総投与量、主観的な副作用の負担における傾向を調査し、総投与量および多剤併用と主観的な副作用の負担との関連を評価するため、混合効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・全体で、5,107例における1万5,717件の観察データを用いた。・対象患者の3分の1に過剰治療の可能性があり、経時的な変化は認められなかった。・抗精神病薬の多剤併用の頻度は増加していたが、リスペリドン換算5mg超の投与量の頻度は減少しており、主観的な副作用の負担は軽減していた。・抗精神病薬の高用量投与および多剤併用は、主観的な副作用の負担の増加と関連が認められた。 著者らは、「抗精神病薬による過剰治療の可能性がある患者は、治療変更の必要性の評価のため再調査すべきである」とし、「患者が本当に過剰治療されているかどうかの評価には、患者の病歴、再発回数、患者の希望、全体的な機能、抗精神病薬治療の減少を試みた治療歴、過去の疾患重症度を考慮する必要がある」とまとめている。

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中年期に運動量を増やすとアルツハイマー病のリスクが低下する

 中年期に運動量を増やすことが、後年のアルツハイマー病(AD)のリスク低下につながることを示唆するデータが報告された。バルセロナ国際保健研究所(スペイン)のMuge Akinci氏らの研究によるもので、詳細は「Alzheimer’s & Dementia」に4月30日掲載された。 運動習慣がADのリスクを低下させる可能性のあることは既に知られていて、ADの13%は運動不足が関与して発症するという報告もある。しかし、中年期の運動習慣の変化が高齢期のADのリスクに、どのような影響を及ぼすのかは明らかになっていない。Akinci氏らはこの点について、スペインにおけるADの患者と家族に関する研究(ALFA研究)のデータを用いた縦断的解析を行った。 解析対象者は、年齢が45~65歳でADリスク(家族歴など)を有しており、研究参加時点(ベースライン)で認知機能障害がなく、ベースラインと追跡調査時における脳画像検査データや運動習慣に関するデータに欠落のない337人(ベースライン年齢60.5±4.78歳、女性62%)。ベースラインと追跡調査の間隔は、平均4.07±0.84年だった。 運動を行っているか否か、および、世界保健機関(WHO)が推奨する運動量(週に中強度運動を150~300分または高強度運動を75~150分)を満たしているか否かにより、全体を以下のように分類した。一つ目の群は、ベースラインと追跡調査の2時点ともに運動を行っていない「座位行動維持群」で29.4%。二つ目は、2時点ともに運動はしていたもののWHOの推奨を満たしていない「非遵守群」24.3%。三つ目は、2時点ともにWHOの推奨を満たしていた「遵守群」16.9%。四つ目は、遵守から非遵守または運動せずに変化した「非遵守への変化群」13.6%。五つ目は、非遵守または運動せずから遵守に変化した「遵守への変化群」15.7%。 年齢、性別、教育歴、遺伝的リスク因子(ApoE4)の影響を調整後、「座位行動維持群」を基準として、ADの発症にかかわるアミロイドβというタンパク質の脳内の蓄積量を比較すると、「遵守への変化群」はその増加量が有意に少ないことが分かった(P=0.014)。また、「遵守群」を基準とする比較では、「非遵守への変化群」はアミロイドβの増加量が有意に多いことが分かった(P=0.014)。 論文の上席著者である同研究所のEider Arenaza-Urquijo氏は、「われわれの研究結果は、AD予防のための公衆衛生戦略として、中年期の運動を推奨することの重要性を裏付けるものだ。運動量の増加を促す介入が、将来のAD罹患率を低下させる鍵となる可能性がある」と話している。

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日本における片頭痛患者の市販薬使用状況調査〜OVERCOME第2回研究

 片頭痛患者は、さまざまな理由で市販薬(OTC)を好む傾向があるが、OTC頭痛薬の過剰使用は、薬物乱用性頭痛を引き起こす可能性がある。京都府立医科大学の石井 亮太郎氏らは、片頭痛の疫学、治療、ケアに関する観察研究であるOVERCOME(Japan)第2回研究を分析し、日本における片頭痛患者のOTC頭痛薬の実際の使用状況が適切な医療の妨げとなっている可能性について、考察を行った。The Journal of Headache and Pain誌2025年5月7日号の報告。 本研究は、成人片頭痛患者を対象に、横断的地域住民ベースの全国オンライン調査として実施された。調査内容には、片頭痛に対する処方薬およびOTC薬の使用経験、片頭痛薬の認知度、片頭痛に対する態度についての報告を含めた。1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)および1ヵ月当たりのOTC頭痛薬の使用頻度に基づきサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛患者1万9,590例(女性の割合:68.8%、平均年齢:40.5±13.1歳)の平均MHDは3.5±5.2であり、過去1年間で片頭痛のために医師の診察を受けた患者は29.0%にとどまった。・過去1年間のOTC頭痛薬の使用は、医師の診断やMHD数に関わらず、62.1%以上と高かった。・片頭痛発作時に処方薬を使用すると回答した患者のうち、通常OTC頭痛薬も使用すると回答した割合は35.2%であった。・過去1年間で医師の診察を受けた患者の51.3%は、OTC頭痛薬の使用頻度が処方薬の使用頻度と同等もしくはそれ以上であると回答した。・過去1年間で医師とOTC頭痛薬について話し合ったのは、わずか14.6%であった。・OTC頭痛薬を1ヵ月当たり10日以上使用している患者でも、片頭痛薬へのアクセスや認知度は限定的であった。18.2%がトリプタンを使用している一方で、65.5%はトリプタンについて聞いたことがないと回答した。・医師の診察を躊躇したことがあると回答した37.1%の患者において、躊躇する理由として最も多かった回答は「OTC頭痛薬で対処可能」であった(34.9%)。 著者らは「片頭痛患者は、OTC頭痛薬を頻繁に使用するが、そのことについて医師と話し合う機会は少ないことが明らかとなった。OTC頭痛薬を頻繁に使用している患者でも、片頭痛へのアクセスや認知度は低かった。片頭痛に対する薬物濫用を防ぐためにも、OTC薬の使用について話し合い、管理していく必要性が示唆された」と結論付けている。

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記念日「多様な性にYESの日」(その3)【逆になんで女性スポーツではNOなの?どうすればいいの?(競技の公平性)】Part 1

今回のキーワード西洋化病理化人権意識性別二元制テストステロン逆ドーピング前回(その2)、同性愛が遺伝しないはずなのに遺伝している謎を、進化心理学の視点から検討しました。現在、世の中では性の多様性を自然に受け入れる流れが加速しているわけですが、一方で、女性スポーツの世界では、そうではないようです。たとえば、オリンピックの女性の種目に出場する選手が、元男性のトランスジェンダー女性の場合です。また、遺伝的には男性でありながら性分化疾患による性器の見た目から女性とされてきた人の場合です。なぜなのでしょうか?今回(その3)も、5月17日の「多様な性にYESの日」に合わせて、「記念日セラピー」と称して、多様な性がNOであった歴史を踏まえて、この理由を掘り下げます。そこから、男性と女性のカテゴリーに代わる、新しいスポーツ競技の枠組みをご提案します。なんで多様な性はNOだったの?まず、性の多様性が人々にどう受け止められてきたかの歴史を、3つの時期に分けて、振り返ってみましょう。(1)原始の時代-社会に溶け込むもともとアフリカや太平洋の島々では、同性愛行動が、男性の通過儀礼の1つになっていました。アフリカの一夫多妻制の社会では、同じ夫を持つ妻たちの同性愛行動がごく日常的に行われていました1)。また、日本を含むアジア太平洋地域では、トランスジェンダーは人々に神の祝福を授けるシャーマンとして畏敬されていました2)。日本では、平安時代から、天皇、将軍、貴族、僧侶における、それぞれの同性愛関係についての記録が残っています。記録には残っていませんが、武士においても、主君と若い家来の間での同性愛はあったと考えられています。そして、江戸時代には、庶民の間での同性愛が浮世絵で描かれています。このように、原始の時代からごく最近まで同性愛は社会に溶け込んで受け入れられていました。(2)西洋化-異常扱い、病気扱いところが、紀元前1世紀以降、文明化が進んだ欧州や中東においては、当時に誕生したユダヤ教と、その後に派生したキリスト教やイスラム教によって、同性愛は「異常」として厳しく取り締まられるようになりました。その理由は、宗教はその教えによって人々の価値観を1つ(一様性)にして、社会秩序を維持する役割があったわけですが、同性愛という多様性はその価値観にそぐわなかったからです。そして、同性愛は、「異端」「魔女」などと呼ばれ、人々の結束力(同調性)を高めるための共通の敵(スケープゴート)として利用されるようになり、同性愛を死刑にする法律までもつくられました。19世紀後半になると、同性愛は、精神障害として治療・保護の対象とされ、精神科病院に強制入院させられるようになりました。その理由は、当時の産業革命によって合理的な価値観が広がり、「普通」(マジョリティ)ではない状態には原因があり、「病」としてその治療をするべきであると考えられるようになったからです(病理化)。日本でも明治になって、このような西洋的な価値観が入り込んでいきました。こうして、西洋化によって、同性愛は異常扱い、病気扱いされ、差別と偏見が文化的に刷り込まれるようになったのでした。(3)現代-人権意識の高まり20世紀後半から、米国を中心に、女性やアフリカ系米国人などへのさまざまな人権意識が高まったことで、同性愛の人たちの人権運動も活発になりました。その社会的なムーブメントから、その1の冒頭でも触れたように、1990年に同性愛、両性愛という名称がWHO(世界保健機関)の国際疾病分類(ICD-10)から除外されたのでした。その後、2018年の国際疾病分類(ICD-11)への改訂に伴い、トランスジェンダーは、「性同一性障害」から「性別不合」へと名称が変更され、さらに「精神および行動の障害」から「性の健康に関連する状態」(健康の章)へと分類が変更され、障害とはみなされなくなったのでした。なお、トランスジェンダーがこの「健康の章」に新しい名称で残された理由は、妊娠出産と同じように、ホルモン治療や性別適合手術などを引き続き保険適応にするためです。また、その1でも紹介した異性の服を着るクロスドレッシングは、DSM(米国の診断基準)ではDSM-5で異性装障害として残っていますが、ICD(WHOの診断基準)ではICD-11への改訂に伴い削除されました。これは、クロスドレッシングを受け入れるようになった現代社会では、本人たちが苦痛を感じる状況がもはや想定できなくなったからです。この点で、次のDSMの改訂で「異性装障害」という名称も削除されることが予測されます。こうして、現代では、人権意識の高まりによって再び性の多様性が受け入れられるようになってきたのです。次のページへ >>

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記念日「多様な性にYESの日」(その3)【逆になんで女性スポーツではNOなの?どうすればいいの?(競技の公平性)】Part 2

じゃあなんで現代でも女性スポーツでは受け入れられないの?性の多様性が現代社会の学問、政治、ビジネスにおいて広く受け入れられるようになってきた一方で、スポーツの世界ではあまり受け入れられていません。たとえば、2021年の東京オリンピックの女性重量挙げに出場した、元男性のトランスジェンダー女性が、IOCが定めた男性ホルモンの基準値を満たしていたにもかかわらず、非難を浴びました。また、2024年のパリオリンピックの女性ボクシングで金メダルを取った2人の選手は、生まれた時から性別は女性とされパスポートも性別は女性と明記されていましたが、性分化疾患(5α還元酵素欠損症)であることが判明して、遺伝的には男性であったことから議論を呼びました。なぜなのでしょうか? 大きく2つの理由を挙げてみましょう。(1)競技の公平性たとえば、性分化疾患の女性(遺伝的には男性)は、男性ホルモンが高ければ圧倒的に有利になってしまいます。また、トランスジェンダー女性(元男性)は、性別適合手術のあとで男性ホルモンがつくられなくなっても、以前の男性ホルモンの影響が骨格の大きさには残っていて有利になってしまう可能性があります。1つ目の理由は、男性と女性ではそれぞれの男性ホルモンの働きの違いから明らかな身体能力の差があり、身体的(遺伝的)に男性であるのに、女性競技に参加するのは不公平だと思われているから、つまり競技の公平性です。(2)性別二元制の価値観その1でも説明したように、体(身体的性)においても心(性自認)においても、人は、性スペクトラムとして連続しています。すると、どうしても男女の区別をオーバーラップする、つまり乗り越える人が現れます。しかし、現代まで続く近代オリンピックは、人間は男性と女性しかいないという19世紀当時の価値観を受け継ぎ、男女別々に行うという方式を踏襲してきました。そして、これを維持するために、かつてはトランスジェンダーや性分化疾患の選手を失格にして排除してきました。2つ目の理由は、トランスジェンダーや性分化疾患の選手たちの存在は、人間は男性と女性しかいないという固定観念を揺さぶり都合が悪いから、つまり、性別二元制の価値観です。じゃあどうすればいいの?トランスジェンダーや性分化疾患が女性スポーツで受け入れられない理由は、競技の公平性と性別二元制の価値観であることがわかりました。そして、そのような選手が非難にさらされるジレンマがあることもわかりました。それでは、どうすればいいでしょうか?その答えは、競技をもはや男女で分けるのではなく、男女の身体能力の違いを決定づける男性ホルモン(テストステロン)の数値で分けるのです。テストステロンの数値で分けると、クリアカットで曖昧な余地はありません。これは、競技によって体重で分けるのと同じです。「アンダー○○」や「マスターズ」など、年齢で分けるのとも同じです。そして、パラリンピックで障害の重症度で分けるのとも同じです。また、テストステロンの検査方法は、唾液検査と毛髪検査で代用できて、ドーピングの尿検査と同じくらい簡単に行えます。そして、唾液や毛髪の検査でテストステロンが基準値を超えていると疑われる場合はさらに血液検査を行います。このようにすると、もはや女性であるかどうかを確かめるための性器の目視検査(性分化疾患が疑われる場合はその計測や形状の評価)や性染色体検査は不要になります。そもそも、選手の性器がどうか、染色体がどうかという評価はとてもプライベートなことであり、このような検査を強制すること自体が時代遅れであり、とんでもない人権侵害です。どの数値で分けるの?テストステロンの血中の値は、男性10~30nmol/L(中央値15nmol/L)、女性0.4~2.0nmol/L(中央値0.7nmol/L)で、男性は女性の約10倍以上あり、その間に開きがあります3,4)。このグラフから、テストステロンの数値で分けるその線引き(カットオフ値)は、男性の下限、女性の上限、男女の中央値の差分から、7nmol/Lあたりが公正で妥当なのではないでしょうか?たとえばこの数値を以下のように新しいカテゴリーとして、そのまま表示するのです。男性の種目→テストステロン制限なしの種目女性の種目→テストステロン制限あり(7nmol/L以下)の種目ちなみに、現在、トランスジェンダー女性や性分化疾患の選手が女性の種目に参加するためのテストステロンの基準値は、オリンピック(IOCの規定)で10nmol/L以下、陸上競技(世界陸連の規定)と水泳競技(世界水泳連盟の規定)で2.5nmol/Lです。男女で分けるのではなく、テストステロンの数値だけで分けるとすると、IOCの基準(10nmol/L)では、その数値以下に入り込める男性が出てしまい、その選手は「制限あり」のカテゴリーでも出場できることになり、不公平です。一方で、世界陸連や世界水泳連盟の基準(2.5nmol/L)では、その数値に引っかかる女性が出てしまい、その選手は「制限なし」のカテゴリーでしか出場できなくなり、同じく不公平です。もちろん、今回ご提案する「7nmol/L」という数値の妥当性は、今後に議論されるでしょう。ただ少なくとも、3nmol/Lから9nmol/Lの間に収まるでしょう。また、テストステロンのみを指標とする妥当性についても、議論の余地があるでしょう。ただ現時点で、男女で分けるよりは公平であるということだけは言えます。今後に、テストステロンよりもさらに公平な指標のエビデンスが出てくるのなら、その時に具体的に提案されて比較検討されるべきでしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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