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不眠症とメタボリックシンドロームリスク~メタ解析

 不眠症と高血圧、高血糖、脂質異常症、肥満などのメタボリックシンドロームリスクとの関連を調査するため、中国・Third Military Medical UniversityのYuanfeng Zhang氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Clinical Neuroscience誌2021年7月号の報告。 PRISMAガイドラインに従ってメタ解析を実施した。PubMedおよびEmbaseより、不眠症とメタボリックシンドロームリスクとの関連を調査した2020年12月1日までに公表された観察研究を検索した。各研究のリスク推定値を集計し、プールされたデータのオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、ランダム効果モデルを用いた。研究の不均一性は、I2統計量を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・高血圧、高血糖、脂質異常症、肥満のメタボリックシンドロームに関連する症状を含む12件の研究を、最終的にメタ解析に含めた。・不眠症患者のメタボリックシンドロームに関連する症状のリスクは、以下のとおりであった。 ●高血圧:OR=1.41(95%CI:1.19~1.67) ●高血糖:OR=1.29(95%CI:1.11~1.50) ●脂質異常症:OR=1.12(95%CI:0.92~1.37) ●肥満:OR=1.31(95%CI:1.03~1.67) 著者らは「不眠症患者では、そうでない人と比較し、高血圧、高血糖、肥満のリスクがそれぞれ1.41倍、1.29倍、1.31倍高かった」としている。

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片頭痛へのフレマネズマブ、日本人対象の試験結果からみえる特徴は

 「片頭痛発作の発症抑制」を適応として、抗CGRPモノクローナル抗体薬フレマネズマブ(商品名:アジョビ)が6月23日に製造販売承認を取得した。7月12日にオンラインメディアセミナーが開催され(主催:大塚製薬)、寺山 靖夫氏(湘南慶育病院副院長・脳神経センター長)、坂井 文彦氏(埼玉精神神経センター・埼玉国際頭痛センター長)が登壇。同薬の片頭痛治療における位置づけと臨床試験結果について講演した。片頭痛患者さんの治療ニーズは、痛みを取り除くことだけではない? 日本における片頭痛の推計患者数は約840万人、女性は男性の3.6倍多く、20~40代の働き盛りの世代で多い疾患となっている。予兆・前兆に続くズキンズキンとした拍動性頭痛が1ヵ月に1~2回、多い人だと1週間に1回、4~72時間持続するとされ、この間の生産性は著しく低下してしまう。さらにこれらの頭痛が治まった後も、繰り返すことへの不安や焦燥感を感じる患者さんも多く、QOL低下への影響は大きい。 寺山氏は、「いま真っ盛りの頭痛の痛みに耐え、過ぎればしばらくは来ないと考えながらも、次にくる頭痛発作におびえ、頭痛によくないことを控えながら毎月毎月慎重に生きることを考える」というある片頭痛患者さんの言葉を紹介。治療に求められているのは痛みを取り除くことに加えて、QOLの改善、生活意欲の改善、そして創造性や生産性の向上ではないかと指摘した。CGRP製剤は、臨床試験結果から一度注射をすることで、3ヵ月~約1年にわたって痛みから解放される症例がみられている。同氏は「急性期治療に使えるトリプタンだけでなく、CGRP製剤を活用していくことで、片頭痛患者さんのQOLの改善につなげていけるのではないか」と期待感を示した。フレマネズマブの日本人を含む日韓国際共同臨床試験結果 続いて登壇した坂井氏は、フレマネズマブについての臨床試験として、反復性片頭痛患者を対象としたプラセボ対照二重盲検試験(日韓国際共同第IIb/III相試験)の概要と結果について解説した。<試験概要>・対象:日本人および韓国人の反復性片頭痛患者 357例・試験群: フレマネズマブ1回/12週投与群(119例):初回675mg、以降2回はプラセボ投与 フレマネズマブ1回/4週投与群(121例):225mg×3回投与 プラセボ群(117例)・主要評価項目:初回投与後12週間での1ヵ月(28日)当たりの片頭痛日数のベースラインからの平均変化量・副次評価項目:初回投与後12週間での1ヵ月当たりの片頭痛日数が50%以上減少した患者(50%レスポンダー)割合、初回投与後12週間での1ヵ月当たりの急性期頭痛治療薬の使用日数のベースラインからの平均変化量など<主な結果>・主要評価項目である1ヵ月当たりの片頭痛日数は、フレマネズマブ1回/12週投与群で-4.02日、1回/4週投与群で-4.00日であった(ともにプラセボ群と比較してp<0.0001)。・副次的評価項目である50%レスポンダー割合は、観察期間全体で1回/12週投与群で45.3%、1回/4週投与群で41.3%であった(ともにプラセボ群と比較してp<0.0001)。・1ヵ月当たりの急性期頭痛治療薬の使用日数のベースラインからの平均変化量(各群ベースラインでは約8日の使用を報告)は、1回/12週投与群で-3.29日、1回/4週投与群で-3.30日であった(ともにプラセボ群と比較してp<0.0001)。・安全性については、投与群とプラセボ群の間で有害事象の発生率に差はみられず、投与法による違いもみられなかった。重篤な有害事象についても差はみられなかった。 坂井氏は、上記結果に加え、投与開始1週間後というかなり早い段階から効果がみられたことを説明。また、効果の持続をみたHALO長期試験(国際共同第III相試験)の結果も紹介した。反復性片頭痛患者で、片頭痛日数の低下は投与後1ヵ月から12ヵ月にわたって持続していた。慢性片頭痛患者においても同様の傾向がみられている。 同氏はこれらの結果から、フレマネズマブは投与1週目からの早い効果発現と持続した有効性を示し、安全性も高く、発作頻度や重症度の低減による患者さんの支障度の低減に寄与する片頭痛発作の発症抑制薬であるとまとめている。

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日本における抗うつ薬とCBT併用療法による費用対効果

 うつ病治療において認知行動療法(CBT)の併用は、最初から行うべきか、薬物治療で寛解が得られない患者に行うべきかについて、慶應義塾大学のYoshihide Yamada氏らは、費用対効果の面から検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年6月17日号の報告。 うつ病治療において、最初からCBTと薬物療法を併用したCOMBファースト戦略と、まずは薬物療法で治療を開始し、寛解が得られない場合にCBTを併用したADファースト戦略において、どちらの治療戦略の費用対効果が高いかを調査した。分析を行うため、マルコフモデルを開発した。主要アウトカムは、104週における質調整生存率(QALY)当たりの増分費用対効果(ICER)とした。臨床パラメータに関連する不確実性と結果に対するCBTコストの影響を調査するため、それぞれ確率的感度分析とシナリオ分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・104週におけるQALY当たりのICERは、中等度のうつ病で59万1,822円(5,725米ドル)、重度のうつ病で49万9,487円(4,832米ドル)であった。・シナリオ分析では、国立保健医療研究所(NICE)が推奨する基準値(2万~3万ポンド)をはるかに下回るCBTコスト1万4,400円(139米ドル、英国のCBT単価96ポンド)に設定した場合、ICERは中等度のうつ病で114万7,518円(1万1,101米ドル)、重度のうつ病で96万8,484円(9,369米ドル)となった。・本研究の限界として、健康保険の観点から実施したモデルベースの分析であり、社会的観点からの分析では、異なる結果が得られる可能性がある。 著者らは「COMBファースト戦略は、ADファースト戦略よりも費用対効果が高いことが示唆された」としている。

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新薬aducanumabについてわかっていること【コロナ時代の認知症診療】第5回

疾患修飾薬aducanumabはこれまでと何が違うのか6月、米国の FDA によってaducanumabの承認が決定した直後から、エーザイの株価は数日ストップ高を続けた。筆者のクリニックでは幾つかの新規抗アルツハイマー病薬の治験をしているが、患者・家族の治験への姿勢も大きく変化した。つまり「治験に参加してあげてもいい」から「参加させていただけるのですか?」というトーンへと豹変したのである。これまでに5つのアルツハイマー病治療薬が承認されている。けれどもこの中の最後の薬剤は1993年に創薬された。したがってこの28年間アルツハイマー病に対する新しい治療薬開発は成功しなかった。しかも、従来の薬がsymptomatic drugs(対症療法薬)と言われるのに対して、この薬はdisease modifying drug(疾患修飾薬)と言われる。もっとわかりやすいように、世上、疾患修飾薬ではなく根本治療薬とよく言われる。それはともかく対症療法薬と疾患修飾薬の違いを図で説明してみよう。対症療法薬は、服用すればその間効果がある。けれどもある期間が過ぎて効果が切れ始めたとする。そこで薬をやめれば、急速に症状が悪化して、これまで薬を飲まなかった人と同じ状態にまで落ちていく。これに対して疾患修飾薬は、ある時点で薬を止めても、中止の時点までに得られた改善幅をその後も維持できる。画像を拡大するaducanumabにより神経細胞が100%元に戻ることはもちろんない疾患修飾薬とされるには、アルツハイマー病の病理のメカニズムの本筋に沿った薬効をもつ必要がある。本筋とは、原因物質あるいは主たる責任物質とされてきたアミロイドとタウである。アルツハイマー病と確定診断されるためにはこの両者が脳の中に確認されなくてはならない。大切なのは、アルツハイマー病がスタートするには、アミロイドが必要なことである。さてaducanumabは患者の脳の中からアミロイドβ、あるいはその集合体であるプラークなどを取り除く薬剤である。もっともこうした脳の沈着物自体が認知症の発症原因ではないことに留意が必要である。アミロイドは、単体から段階的にオリゴマー、そしてポリマーと大きくなる過程において神経毒性を発揮する。その結果、脳神経細胞が傷害されてしまうことが認知症発症の根幹となる。出刃包丁やピストルが人を殺めるように、このアミロイドあるいはタウも神経細胞を殺傷する道具だという点で共通としている。だから、aducanumabの効果は、いわばアミロイドという出刃包丁を駆逐することで神経細胞は守られることが示されたことになる。けれども本剤によって神経細胞が100%元に戻ることはもちろんない。理論的には、今残っているものがこれ以上傷害されないことで現状維持が可能だということになる。誰もが気になる効果のほどと、看過はできない副作用誰しも気になるのは効果のほどである。筆者のクリニックでは、日本における本剤の治験に関わり10名の参加者に参加していただいた。そして昨年の10月からは、第IV相試験に7名の患者さんに参加してもらっている。一方、治験とは関係なく、初診の後は、原則として半年ごとに、日本語版ADAS‐cog(Alzheimer Dementia Assessment Scale)などのテストを受験してもらっている。実は、アルツハイマー病治療薬の効果判定の世界的スタンダードはこのADAS‐cogやCDR(Clinical Dementia Rating)による点数の変化である。ところがこのテスト結果で、たとえばコントロール群よりも3点優っていたので有効と言われても普通にはピンとこない。あくまでaducanumabへの総合的な印象と当院でのテスト成績の推移から、「確かに落ちが目立たない人が多い」という私的な思いがある。雑駁な表現だが、これまでの薬が「天井から目薬」なら今度のものは「50cm上から目薬」という感じだ。なお副作用に関して、ARIA(Amyloid related Imaging abnormalities)という血管浮腫と微小出血の問題1)は看過できない。治験において、多くは無症候ながら高用量症例の41%でARIAがみられたとされる。大半が数ヵ月で改善するものの大きな障害につながりかねない怖さがある。話題沸騰の新薬であるだけに、その他の感想や質問も多い。まず年間610万円と値段が高いこと、さらに日本で承認されたら保険が適用になるのか? という質問は多い。前者には、今後第2、第3の薬剤が出てくれば下がるだろうと思っている。実際、後続の薬剤、たとえばEli Lilly社のdonanemabはFDAのBreakthrough Therapy designation(画期的治療薬指定)を6月25日に受けたとされ、審査が始まりつつあるようだ。またこの薬をいつまで続けるのかという問題がある。これは従来の対症療法薬でも言われてきたことである。理論的には従来同様、「ずっと」が答えになるのだろう。しかし現実には、ある程度以上の人数の患者さんが使ってみて、そこで観察された効果から答えが出てくるのではなかろうか。参考文献・参考情報1)How Aducanumab will impact neurology and neuroradiology practice/Quantib

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「ジェイゾロフト」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第62回

第62回 「ジェイゾロフト」の名称の由来は?販売名ジェイゾロフト錠25mgジェイゾロフト錠50mgジェイゾロフト錠100mgジェイゾロフトOD錠25mgジェイゾロフトOD錠50mgジェイゾロフトOD錠100mg一般名(和名[命名法])セルトラリン塩酸塩(JAN)効能又は効果○うつ病・うつ状態○パニック障害○外傷後ストレス障害用法及び用量通常、成人にはセルトラリンとして1日25mgを初期用量とし、1日100mgまで漸増し1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により1日100mgを超えない範囲で適宜増減する。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.MAO阻害剤を投与中あるいは投与中止後14日間以内の患者3.ピモジドを投与中の患者※本内容は2026年3月2日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2024年7月改訂(第4版)医薬品インタビューフォーム「ジェイゾロフト®錠25mg/錠50mg/錠100mg、ジェイゾロフト®OD錠25mg/OD錠50mg/OD錠100mg」

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抗精神病薬LAIの悪性症候群リスク

 精神疾患に対する抗精神病薬の長時間作用型(LAI)使用は、いくつかの良いアウトカムをもたらすが、重篤な副作用の1つである悪性症候群が発生した場合、LAIの使用がデメリットとなるかはわかっていない。米国・ザッカーヒルサイド病院のDaniel Guinart氏らは、統合失調症および/または統合失調感情障害と診断された患者における悪性症候群の発生率とアウトカムの予測因子について調査を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2021年5月20日号の報告。 フィンランドのヘルスケアエンカウンタの代表的なデータベースを用いて、1972~2017年に統合失調症および/または統合失調感情障害と診断された患者を対象に、悪性症候群の発生率およびアウトカムの予測因子を調査した。抗精神病薬の剤型(LAIと経口)およびクラス(第1世代[FGA]と第2世代[SGA])による違いを調査するため、ネステッドケースコントロールデザインを用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、悪性症候群が認められた患者172例および性別、年齢、診断が一致した対照群1,441例(年齢:58.8±13.1歳、男性の割合:59.9%)。・悪性症候群の発生率は、1.99/1万人年(1.98~2.00)であった。・悪性症候群の発生率は、抗精神病薬の剤型およびクラスで違いが認められなかった。 ●LAI対経口の調整オッズ比[aOR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.59~1.33 ●FGA経口対SGA経口のaOR:1.08、95%CI:0.66~1.76 ●FGA経口対FGA-LAIのaOR:0.89、95%CI:0.52~1.53 ●FGA経口対SGA-LAIのaOR:1.35、95%CI:0.58~3.12・悪性症候群のリスク因子は、以下のとおりであった。 ●抗精神病薬数の増加(オッズ比[OR]:5.00、95%CI:2.56~9.73) ●抗精神病薬数の減少、切り替え(OR:2.43、95%CI:1.19~4.96) ●抗精神病薬の用量の多さ(規定された1日投与量の2倍超のOR:3.15、95%CI:1.61~6.18) ●抗コリン薬の併用(OR:2.26、95%CI:1.57~3.24) ●リチウムの併用(OR:2.16、95%CI:1.30~3.58) ●ベンゾジアゼピンの併用(OR:2.02、95%CI:1.44~3.58) ●心血管疾患の合併(OR:1.73、95%CI:1.22~2.45)・悪性症候群が認められた患者の4.7%は、30日以内に死亡しており、抗精神病薬の剤型間による違いは認められなかった。また、1年以内では15.1%であった。・悪性症候群後に抗精神病薬を再投与した患者119例のうち、5例(4.2%)で再発が認められた。抗精神病薬再投与後の再発までの期間中央値は、795日(範囲:77~839日)であった。 著者らは「悪性症候群は、生命に影響を及ぼす可能性のあるリスクとなりうる。今回の結果は、死亡率を含む悪性症候群の発症またはアウトカムに関連するLAIの安全性に対する懸念を和らげるうえで役立つであろう」としている。

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そして父になる(その1)【もしも自分の子じゃなかったら!?(親子観)】Part 1

今回のキーワード親子の絆(親子観)新生児取り違え血のつながり(血縁の心理)情(子育ての心理)愛着の心理アイデンティティ現在、精子提供、卵子提供などによる生殖医療、子連れ再婚、そして赤ちゃん縁組(特別養子縁組)など、必ずしも血のつながらない親子が増えています。また、従来の里親制度、LGBTのカップルや選択的シングルマザーによる子育てなど、家族の形、親子の形が多様化しています。そんな中、皆さんは、親子の絆は何だと思いますか? やはり血のつながりでしょうか? それとも情でしょうか? さらに視点を変えて、子どもにとっての親子の絆とは何でしょうか?これらの答えを探るために、今回は、映画「そして父になる」を取り上げます。この映画を通して、親子の絆を精神医学的に解き明かしてみましょう。親子の絆とは?―親子観主人公は、野々宮良多。大企業のエリートサラリーマン。専業主婦のみどりと6歳の一人息子の慶多と一緒に都心の高級マンションに住んでいます。慶多がお受験で有名私立小学校に合格し、良多にとって人生のすべてが思い通りに進む中、慶多が生まれた里帰りの前橋の病院から1本の電話がかかります。子どもの取り違え(新生児取り違え)が発覚したのでした。そこから、野々宮家の夫婦と取り違え先の斎木家の夫婦は、親子の絆への葛藤が始まります。まず、彼らの親子の絆、つまり親子観を2つに分けてみましょう。(1)血のつながり-血縁の心理病院の事務部長から「とにかくこういうケースは、最終的には、100%ご両親が交換という選択肢を選びます。お子さんの将来を考えたら、ご決断は早いほうが良いと思います。できれば、小学校に上がる前に」と結論ありきで迫られます。その後、良多は、自分の父親から「(生みの子は)似てたか、お前に。似てたんだろう。そういうもんだよ、親子なんて。離れて暮らしたって、似てくるもんさ」「いいか、血だ。人も(競馬の)馬と同じで、血が大事なんだ。これから、どんどんその子はお前に似てくるぞ。慶多は逆にどんどん相手の親に似ていくんだ」と説かれます。そして、良多はその言葉をなぞって、慶多の生みの母親である斎木ゆかりに「これから、どんどん慶多は斎木さんの家族に似てきます。逆に、琉晴(良多の実の子)はどんどん僕らに似てきます。それでも、血がつながっていない子を今まで通り愛せますか?」と迫ります。親子観として1つ目は、血のつながりです。これは、血がつながって似ていてこそ親子は通じ合えると思う血縁の心理が根っこにあります。このプラス面は、似ていることで、親密さを感じて絆が深まることです。一方のマイナス面は、その裏返しで、見た目だけでなく、能力や性格も似てほしいと思うようになることです。これは、自分が子どもとつながっている感覚が強いため、子どもを自分の分身のようにとらえ、子どもが自分の思い通りになると思うことでもあります。これは、いわゆる「毒親」の心理です。逆に言えば、似ていなくて、思い通りにならなければ、不安が高まります。実際に、良多は、DNA検査で取り違えが確定した時、「やっぱりそういうことか」とつぶやきます。後にみどりは「あなたは、慶多があなたほど優秀じゃないのが最初から信じられなかったんでしょ」と見透かして指摘します。つまり、血のつながりにこだわることは、競走馬と同じように、親に似て優秀でなければならない、美しくなければならないという期待が強くなり、子どもをありのままに受け入れにくくなる危うさがあると言えます。なお、「毒親」の心理の詳細については、関連記事1をご覧ください。(2)情-子育ての心理良多は、小学生の時、実は両親が離婚していました。そして、父親に引き取られ、大学に入学するまで新しい母親と暮らしていた過去がありました。良多が久々にその継母に会った時、彼女は、「血なんてつながらなくたって、一緒に暮らしてたら、情は沸くし、似てくるし。夫婦ってそういうところあるじゃない。親子もそうなんじゃないかしらね。私はね、そういうつもりであなたたちを育てたんだけどなあ」と言います。また、ゆかりは、「このままってわけには行かないですかね? 全部なかったことにして」と言い出します。そして、先ほどの良多の「血がつながっていない子を今まで通り愛せますか?」という質問に対して、「愛せますよ、もちろん。似てるとか似てないとか、そんなことにこだわるのは、子どもとつながっている実感のない男だけよ」と言い返します。親子観として2つ目は、情です。これは、血がつながっていなくても一緒にいれば親子は通じ合えると思う子育ての心理が根っこにあります。このプラス面は、一緒にいることで、親密さを感じて絆が深まることです。一方のマイナス面は、生みの親が現れた場合、親子関係が複雑になります。また、親子関係がうまく行かなかった場合、虐待のリスクが高まります。実際に、生みの子(実子)に比べて育ての子(継子)が虐待死に至るリスクは、数倍から数十倍に跳ね上がることが分かっています。法律的にも、親子関係を解消できてしまう不安定さがあります(ただし特別養子縁組を除きます)。なお、虐待の心理の詳細については、関連記事2をご覧ください。次のページへ >>

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そして父になる(その1)【もしも自分の子じゃなかったら!?(親子観)】Part 2

子どもにとっての親子の絆とは?親子の絆とは、血のつながり(血縁の心理)と情(子育ての心理)があることが分かりました。しかし、実は、これは親にとっての親子観です。それでは、子どもにとっての親子の絆とは何でしょうか?慶多と琉晴は、事情を知らされず、言われるままに、休日に野々宮家と斎木家を交換して外泊が始まります。そして、やがて交換したままになるのです。ここから、彼らの親子観を同じく2つに分けて考えてみましょう。(1)情-愛着の心理野々宮家でずっと暮らすことになった琉晴は、良多がつくった野々宮家のルールのリストを読まされます。そして、納得が行かず、「なんで?」と良多に繰り返し聞き続けるのです。そして結局、家出をして、斎木家に帰ってしまいます。一方、斎木家で暮らしている慶多は、琉晴ほどはっきり抵抗しませんが、元気がなくなっていきます。子どもにとっての親子観として、1つ目は、情です。これは、血がつながっていてもいなくても、特別な誰かと一緒にいたいと思う愛着の心理です。この愛着は、生後半年から2歳までの間(臨界期)に形成されます。この時期に一番長く一緒にいた人が親(愛着対象)として刷り込まれます(親プリンティング)。そして、その親から離れることは、アルコール依存性や薬物依存症と同じように、「禁断症状」を引き起こします。つまり、愛着とは、依存行動(嗜癖)とも言えます。逆に言えば、いくら血がつながっていても、その大切な時期(臨界期)に一緒にいなければ、その親は「依存対象」(愛着対象)になりようがないので、その親から離れても「禁断症状」は出ません。実際に、琉晴がせっかく外泊に来ているのに、良多は仕事を優先してあまり構っていませんでした。慶多の生みの父親である雄大は、そんな良多を見かねて、「もっと一緒にいる時間をつくったほうがいいよ、子どもと」「俺、この半年で、良多さんが一緒にいた時間よりも、長く慶多といるよ」とたしなめています。つまり、臨床的に考えれば、新生児取り違えのあとに交換で問題が起きないのは、親プリンティングが始まる前の半年までです。半年から2歳までがグレーゾーン、2歳以降は愛着の問題のリスクが高まるでしょう。この愛着の心理から、琉晴が良多やみどりに懐くことは簡単ではないことがよく分かります。取り違えは、子どもから見れば、「親の取り違え」です。親以上に、実は子どもにとって危機的状況なのです。なお、愛着の心理の詳細については、関連記事3をご覧ください。(2)血のつながり-アイデンティティ琉晴は、良多から「おじさんが本当のパパなんだ」と告げられます。しかし、無反応です。慶多は、良多から「(慶多が成長するための)ミッション」と遠回しに伝えられただけでしたが、はっきり告げられたとしてもリアクションはおそらく同じでしょう。6歳の子どもにとって、血がつながっているかどうかは、ぴんと来ないのです。つまり、子ども心に選ぶ親は「生みの親より育ての親」であるということです。ただし、彼らが思春期になっても、彼らの親子観はそのままでしょうか?子どもにとっての親子観として、2つ目は、思春期になればやはり血のつながりです。思春期になると、より抽象的な思考ができるようになります。そして、自分のルーツや自分らしさなど、自分探しをするようになります。アイデンティティの確立です。この時に、育ての親しか知らない場合、生みの親を知りたくなるのです。これは、養子や生殖医療で生まれた子の心理でもあります。そして、これは、子どもの人権(出自を知る権利)として、すでにいくつかの先進国では制度化されており、日本でも制度化しようとする動きがあります。つまり、アイデンティティの確立とは、血がつながっていることにこだわるスイッチが入ることとも言い換えられます。なお、この真実告知のタイミングについては、愛着形成期である幼児期よりも後で、反抗期になる思春期よりも前、つまり小学校低学年の学童期が望ましいでしょう。<< 前のページへ■関連記事八日目の蝉【なぜ人を好きになれないの?毒親だったから!?どうすれば良いの?(好きの心理)】Mother(続編)【虐待】Mother(中編)【母性と愛着】

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ビタミンBと認知症リスクに関する性差~日本のメモリークリニック外来患者での調査

 認知症や認知機能障害は、重大な社会的および医学的な問題の1つである。ビタミンBと認知機能低下には明確な関係が認められるが、男女間の差に関しては、十分な評価が行われていない。昭和大学の三木 綾子氏らは、性別によるビタミンB1またはB12と認知症との関連を調査した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年4月9日号の報告。 2016年3月~2019年3月に昭和大学病院のメモリークリニック外来を受診した188例を対象に、性別によるビタミンB1またはB12と認知症との関連を調査した。認知機能の評価には、ミニメンタルステート検査(MMSE)日本語版、改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)を用いた。ビタミンレベルを測定するため、血液検査を実施した。ロジスティック回帰分析を用いて、認知症のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。ビタミンレベルに応じて3つに分類した。 主な結果は以下のとおり。・ビタミンレベルが高い女性と比較し、ビタミンレベルが低い女性では、認知症(MMSEスコア23以下)のORの有意な増加が確認された。 【ビタミンB1】OR:3.73、95%CI:1.52~9.16 【ビタミンB12】OR:2.97、95%CI:1.22~7.28・対照的に、男性ではビタミンレベルと認知症との有意な関連は認められなかった。・認知症の定義に、HDS-R(スコア20以下)を用いた場合でも、同様であった。 著者らは「認知症発症を予防するうえで、女性ではビタミンB1摂取が有効である可能性が示唆された。ビタミンレベルの低下が認知障害の前後いずれで起こるのか、高ビタミンレベルを維持すれば認知機能の悪化や認知症発症を予防できるかを明らかにするためには、今後の縦断的研究が必要とされる」としている。

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治療抵抗性片頭痛に対するフレマネズマブの有効性

 既存の片頭痛予防の2~4つのクラスを用いた治療に奏効しなかった慢性片頭痛または反復性片頭痛患者に対するフレマネズマブの月1回または四半期ごと投与の有効性を評価するため、チェコ・Vestra ClinicsのLadislav Pazdera氏らは、検討を行った。Cephalalgia誌オンライン版2021年5月14日号の報告。 既存の片頭痛予防の2~4つのクラスを用いた治療に奏効しなかった慢性片頭痛または反復性片頭痛患者をフレマネズマブ四半期ごと投与群、フレマネズマブ月1回投与群、プラセボ群にランダムに割り付けられ、12週間の二重盲検治療を実施したランダム化二重盲検プラセボ対照第IIIb相臨床試験であるFOCUS試験のデータを分析した。既存の片頭痛予防薬による治療に奏効しなかったクラス数により事前に定義したサブグループについて、12週間の二重盲検期間中における1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの変化および有害事象を評価した。 主な結果は以下のとおり。・奏効しなかったクラス数ごとの患者数の内訳は、2クラス414例、3クラス265例、4クラス153例であった。・いずれのサブグループにおいても、12週間における1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの変化は、プラセボ群と比較し、有意な改善が認められた。それぞれの、対プラセボ最小二乗平均差および95%信頼区間(CI)は以下のとおりであった。 【2クラス】 ●フレマネズマブ四半期ごと投与:-2.9(95%CI:-3.83~-1.98)、p<0.001 ●フレマネズマブ月1回投与:-3.7(95%CI:-4.63~-2.75)、p<0.001 【3クラス】 ●フレマネズマブ四半期ごと投与:-3.3(95%CI:-4.65~-1.95)、p<0.001 ●フレマネズマブ月1回投与:-3.0(95%CI:-4.25~-1.66)、p<0.001 【4クラス】 ●フレマネズマブ四半期ごと投与:-5.3(95%CI:-7.38~-3.22)、p<0.001 ●フレマネズマブ月1回投与:-5.4(95%CI:-7.35~-3.48)、p<0.001・いずれのアウトカムにおいても、サブグループと治療の交互作用(treatment-by-subgroup interaction)は観察されなかった(各々:p interaction>0.20)。・有害事象は、プラセボ群と同等であった。 著者らは「4つのクラスの既存の片頭痛予防薬を用いた治療に奏効しなかった片頭痛患者の場合でも、フレマネズマブは、プラセボと比較し、統計学的に有意な効果が認められた」としている。

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向精神薬が膀胱機能に及ぼす影響~メタ解析

 イタリア・パルマ大学のMargherita Trinchieri氏らは、向精神薬が膀胱機能に及ぼす影響を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Neurourology and Urodynamics誌オンライン版2021年5月18日号の報告。 向精神薬で治療された患者における治療誘発性尿路障害に関するランダム化比較試験を、PubMedおよびEmbaseより検索し、システマティックレビューを実施した。 主な結果は以下のとおり。・52件の研究が抽出された。・抗うつ薬治療では、畜尿症状ではなく、膀胱排尿症状の出現がより頻繁に認められた。・プール分析では、プラセボと比較し、排尿症状のオッズ比(OR)が高かった(OR:3.30、信頼区間[CI]:1.90~5.72、7,856例、p<0.001)。・排尿機能障害の割合は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と比較し、三環系抗うつ薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のほうが高かった。・抗精神病薬治療では、排尿、畜尿障害を含む不均一な尿障害との関連が認められた。・抗精神病薬治療中の認知症患者の尿失禁のORは、プラセボよりも高く(OR:4.09、CI:1.71~9.79、p=0.002)、抗精神病薬間での差は認められなかった。・排尿障害の割合は、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬との間に差は認められなかったが(OR:1.64、CI:0.79~3.39、p=0.19)、クエチアピンは、他の非定型抗精神病薬よりも排尿機能障害を起こす可能性が高かった(OR:2.14、CI:1.41~3.26、p>0.001)。 著者らは「三環系抗うつ薬またはSNRIで治療中の患者でみられる膀胱排尿障害は、泌尿器系疾患の症状ではなく、向精神薬治療による副作用の可能性がある。これらの薬剤で治療を行った患者では、尿症状の出現を積極的にモニタリングする必要がある。また、抗精神病薬治療による尿関連副作用では、状況に応じた対処が求められる」としている。

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日本人高齢者の認知症発症とソーシャルサポートとの関連

 認知症患者数は、増加を続けており、日本においても2025年には700万人に達するといわれている。認知症の発症予防やマネジメントにおいて、個人レベルの支援に加え、コミュニティレベルのソーシャルサポートが注目されている。日本福祉大学の宮國 康弘氏らは、マルチレベルの生存分析を用いて、コミュニティレベルのソーシャルサポートと認知症発症との関連を調査した。BMJ Open誌2021年6月3日号の報告。 2003年に設立された日本老年学的評価研究のプロスペクティブコホート研究を用いて、コミュニティレベルのソーシャルサポートと認知症発症との関連を調査した。対象は、公的介護保険の給付を受けていない愛知県(7市町村)在住の65歳以上の高齢者1万5,313人(男性:7,381人、女性:7,932人)。認知症発症は、ベースラインから3,436日間にわたる公的介護保険データを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・10年間のフォローアップ期間中に、認知症を発症した高齢者は1,776人であった。・高齢者に対するコミュニティレベルのソーシャルサポート(エモーショナルなサポート)が1%増加すると、社会人口統計変数や健康状態にかかわらず、認知症発症リスクが約4%減少した(HR:0.96、95%CI:0.94~0.99)。 著者らは「日本人高齢者にとって、コミュニティレベルのエモーショナルなソーシャルサポートは、認知症発症リスクを低下させる可能性が示唆された」としている。

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実臨床におけるナルメフェンの使用状況~フランスでのコホート研究

 フランス・パリ・サクレー大学のHenri-Jean Aubin氏らは、アルコール依存症患者におけるナルメフェンの実際の使用状況およびアルコールによる健康状態への影響を評価した。Alcohol and Alcoholism誌オンライン版2021年5月10日号の報告。 次の2つの補完的研究を用いて評価を行った。USE-PACT研究は、アルコール依存症のマネジメントにおけるナルメフェンの実際の有効性を評価したプロスペクティブコホート研究であり、1年間の総アルコール消費量(TAC)と大量飲酒日数(HDD)の評価を行った。USE-AM研究は、フランスの代表的なレセプトデータベースを用いたコホート研究であり、プロスペクティブ研究における母集団の外的妥当性の評価に用いた。 主な結果は以下のとおり。・USE-PACT研究に登録されたナルメフェン新規使用患者700例のうち、1年間の有効なデータを有していた患者は、256例であった。・ナルメフェン治療1年後、TACおよびHDDは、ベースラインと比較し、減少が認められた。 ●TACの平均変化:-41.5±57.4g/日 ●HDDの平均変化:-10.7±11.7日/4週間・最初の3ヵ月間のナルメフェン平均使用量は、20.0±12.0錠/4週間(中央値:1錠/日)であり、その後は用量が減少していた。・ナルメフェンを使用しなくなった患者の割合は、1ヵ月後の5%から1年後の52%へと徐々に増加していた。・USE-AM研究により、2016年にナルメフェンの1回目の医療費還付を受けた患者486例が特定された。USE-PACT研究の外的妥当性は、ベースライン特性により確認された。・USE-AMにおける最初の処方の46.3%はGPで行われており、ほとんどの患者(91.8%)は、フォローアップ中に治療を中断していた。・しかし、治療中止患者の15.2%は、その後治療を再開していた。 著者らは「フランスの実臨床における本分析では、ナルメフェン治療を行ったアルコール依存症患者は、アルコール消費量の減少が認められ、一般的に忍容性は良好であった」としている。

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統合失調症患者における持続性注射剤使用と刑事事件遭遇との関連

 統合失調症患者では、アドヒアランスが不良な場合が多い。このことが、再発リスク、健康状態の悪化、入院、治療費の高騰、暴力的および非暴力的な犯罪の発生率上昇に影響を及ぼす。米国・ケント州立大学のMadhav P. Bhatta氏らは、統合失調症または統合失調感情障害患者における持続性注射剤(LAI)抗精神病薬の使用と刑事事件遭遇との関連について、調査を行った。Journal of Health Economics and Outcomes Research誌2021年5月19日号の報告。 2010年1月1日~2016年6月15日にオハイオ州アクロンの地域精神保健センターで統合失調症または統合失調感情障害のために治療を受けた18歳以上の患者を対象に、レトロスペクティブフォローアップ研究を実施した。LAI抗精神病薬開始前後6ヵ月、1年、2年での刑事事件遭遇率を評価した。過去に逮捕歴を有する患者を対象に、サブ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、LAI抗精神病薬治療開始1、2年後に刑事事件に遭遇するリスク比(RR)は、開始前の同一期間と比較し、有意に低かった。 ●1年後のRR:0.74、95%CI:0.59~0.93、p<0.01 ●2年後のRR:0.74、95%CI:0.62~0.88、p<0.0001・月1回パルミチン酸パリペリドンのコホートにおける刑事事件遭遇率は、治療前よりも治療後に有意な減少が認められた。・過去に逮捕歴を有する患者では、LAI抗精神病薬治療開始6ヵ月、1、2年後の逮捕事例発生率は、開始前の同一期間と比較し、有意に低かった。 ●前後6ヵ月逮捕事例発生率:27件vs.85件 ●前後1年逮捕事例発生率:46件vs.132件 ●前後2年逮捕事例発生率:88件vs.196件 著者らは「LAI抗精神病薬治療を受けた統合失調症または統合失調感情障害患者では、LAI開始前と比較し、刑事事件に遭遇する可能性が有意に低かった」としている。

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脳卒中を発症する人としない人、過去10年間の軌跡

 脳卒中の兆候は10年前から表れているかもしれない。オランダ・Erasmus MC University Medical CenterのAlis Heshmatollah氏らが、脳卒中を起こした患者における発症前10年間の認知機能と日常生活動作(ADL)の軌跡、および脳卒中のない人の対応する軌跡を調査した。その結果、脳卒中を起こした患者は、そうでない人と比較して、過去10年間で認知機能とADLの急激な低下が見られた。Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry誌2021年7月6日号に掲載。 研究者らは、1990~2016年の間、オランダの人口ベースのコホート「ロッテルダム研究」から、45歳以上の参加者1万4,712人を対象に、認知機能(MMSE、15-Words Learning、Letter-Digit Substitution、Stroop、Verbal Fluency、Purdue Pegboard)および基本的ADL・手段的ADL(BADL・IADL)を、4年おきに評価した。脳卒中の発症は、2018年までの医療記録を継続的に監視することで評価され、脳卒中のある者とない者を、性別および出生年に基づいて(1:3)でマッチングした。それぞれに対応する軌跡は、調整された線形混合効果モデルを使用して構築された。 主な結果は以下のとおり。・12.5±6.8年の平均追跡期間中に、計1,662例の参加者が、初めての脳卒中を経験した。・脳卒中を発症した患者は、脳卒中のない対照群よりもすべての認知機能テストで悪いスコアを示した。認知機能およびBADLは脳卒中が診断される8年前に、IADLは7年前に、脳卒中のない対照群の軌跡から逸脱し始めた。・各スコアで見られた有意な逸脱は、MMSEで脳卒中発症の6.4年前、Stroopは5.7年前、Purdue Pegboardは3.8年前、IADLは3年前、BADLは2.2年前だった。 研究者らは、「われわれの発見は、脳内病変の蓄積が脳卒中の発症前に、すでに臨床的影響を及ぼしている可能性を示唆している」と結論している。

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日本において複数のADHD治療薬を投与された小児患者の特徴

 注意欠如多動症(ADHD)は、多動性、衝動性および/または不注意の症状を呈す疾患である。日本で使用可能なADHD治療薬は、欧米諸国に比べ限られている。また、日本の臨床現場では、処方状況の評価が十分に行われていない。東京医科歯科大学の佐々木 祥乃氏らは、日本の臨床現場におけるADHD治療薬の現在の使用状況と複数のADHD治療薬を投与された患者の特徴について、調査を行った。PLOS ONE誌2021年6月3日号の報告。 対象は、2015年4月~2020年3月に国立国際医療研究センター国府台病院の児童精神科を受診した患者。メチルフェニデート徐放剤、アトモキセチン、グアンファシンを投与した患者を調査した。複数のADHD治療薬を投与された患者の特徴を評価するため、レトロスペクティブケースコントロールデザインを用いた。3つのADHD治療薬を投与された患者は、症例群として定義した。ADHDと診断された患者と年齢、性別が一致するランダムサンプリング患者を対照群として用いた。子供から親への暴力、反社会的行動、自殺企図または自傷行為、虐待歴、登校拒否、2つの心理的評価尺度(ADHD評価尺度、東京自閉行動尺度)のデータを比較した。 主な結果は以下のとおり。・ADHD治療薬を投与された患者878例のうち、3つのADHD治療薬を投与された患者は43例(4.9%)であった。・ロジスティック回帰分析において、3つのADHD治療薬を投与された患者の特徴は以下のとおりであった。 ●重度のADHD症状 ●自閉的特徴 ●子供から親への暴力の傾向 著者らは「本調査結果は、複数のADHD治療薬の使用を防ぐためのアプローチを示唆している。薬剤の使用状況と臨床的特徴の因果関係を調査するためには、プロスペクティブ研究が必要とされる」としている。

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コウノドリ(その3)【不妊治療がうまく行かなかったら、どうすればいいの? (生殖の物語)】Part 1

今回のキーワード客観視生殖心理カウンセリングアイデンティティ確立認知再構築予防心理限界設定アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)少子化対策その2では、ドラマ「コウノドリ」を通して、生殖心理を進化心理学的に、そして文化心理学的に掘り下げました。生殖心理の3つの特徴は、子育てへの欲求、血縁への欲求、そして親アイデンティティへの欲求であることが分かりました。そして、その起源は、それぞれ哺乳(子育てへの欲求の起源)、社会脳(血縁への欲求の起源)、概念化(親アイデンティティへの欲求の起源)であることが分かりました。逆に、子どもを(多く)欲しくない3つの心理的な要因は、子育てのイメージができないから(親性の低下)、子育てで自分のやりたいことができなくなるから(生存の充実化)、子育てにお金がかかり過ぎるから(生殖の高コスト化)であることが分かりました。これらも踏まえて、それでは、不妊治療がうまく行かなかったら、どうすれば良いでしょうか? そして、少子化にどうすれば良いでしょうか? これらの答えを探るために、今回は、引き続きこのドラマを通して、これからの生殖のあり方を一緒に考えていきましょう。不妊治療がうまく行かなかったら、どうすれば良いの?その1の記事でご紹介した助産師の小松が子宮を全摘出するエピソードが、参考になります(シーズン2第7話)。鴻鳥は、手術をためらう小松を自分のピアノ演奏に呼び出し、「僕はずっと小松さんに助けられてきましたから。その恩は、忘れません」と伝えます。すると、小松は、「私、(手術することに)決めたよ。悔しいけど、仕方ない。これが私の人生だ」と開き直ります。鴻鳥は、「あまり頑張り過ぎないでください。頑張ってる小松さんも好きだけど、頑張ってない小松さんも大好きです」「みんな小松さんの味方ですから」と優しく言い添えます。すると、小松は、「私は恵まれてるねえ」「苦しい時に手を差し伸べてくれる人がこんな近くにいる」と言い、涙を流すのです。手術後、小松は、親しい同僚に「今回のことで、みんなが私を自分のことのように心配してくれて」「私は一人じゃないんだな」「私を待ってくれてる人がいる」「私の中から大事なものがなくなっちゃったけどさあ」「私には、私を支えてくれる仲間がいる」「それってさあ、すげえ心強いんだよ」と語ります。ここから、この小松のエピソードを踏まえて、不妊治療がうまく行かなかった場合の心のあり方を3つ挙げてみましょう。(1)子どもができることにとらわれていたことに気づく-客観視1つ目の心のあり方は、不妊治療を通して、子どもができることにとらわれていたことに気づくことです(客観視)。厳密には、小松は不妊治療をしていないですが、不妊になる葛藤を乗り越えています。子どもを持つことを諦めるわけですが、これは同時に「明らめる」ことができたとも言えます。「明らめる」とは、自分の子どもへのとらわれを明らかにして、自分がこれからどう生きていきたいかを明らかにするなど、自分の人生を俯瞰できることです。小松には鴻鳥をはじめとする心強い味方が何人もいました。小松と同じように、不妊治療がうまく行かなかった場合に、味方を得ることができるのが、生殖心理カウンセリングです。生殖心理の専門のカウンセラーによる自己肯定的な働きかけによって、頑張ってきた自分を慰め、自分はそのままでいいという自己肯定感を高める思考トレーニングを受けることができます。そして、悲しみや痛みを抱えて生きることが、人生の深みであり、味わいであることを悟ることができます。また、仲間づくりができるのが、自助グループやピアサポートです。これは、同じ経験をしたからこそ分かり合える仲間で、ネット上の不妊コミュニティによく見られます。自分の先輩がどういう生き方をしているかなどロールモデルを知ることもできます。ただし、注意点があります。それは、たとえば、グループにいたメンバーが妊娠した場合に速やかに脱会するなどのルール作りが必要です。そのために、ある程度の経験や知識がある先輩が必要であることです。アメリカでは、トラブル防止のため、生殖心理カウンセラーなどが入る不妊コミュニティが多いです。(2)自分が本当はどうなりたいのかに気づく-アイデンティティ確立2つ目の心のあり方は、不妊治療を通して、自分が本当はどうなりたいのかに気づくことです(アイデンティティ確立)。小松は、子宮全摘出を経験して、改めて自分を待ってくれている職場の仲間がいることを実感しました。小松と同じように、不妊治療がうまく行かなかったからこそ、気づける人生観があります。それは、繋がりは、必ずしも血の繋がりだけじゃないということです。小松のように、自分の天職を通した仲間との繋がりがあります。ドラマに登場した特別養子縁組をする夫婦のように、養子や里子との情の繋がりもあります。もちろん、夫婦の繋がりもあります。よくよく考えると、子育て期間は、実質せいぜい10年です。子どもが10歳を過ぎれば反抗期です。心理的なサポートは最低限となり、あとは金銭的なサポートが20歳前後まで続くだけです。そして、その後は親子とは言っても、大人同士の関係です。一方で、夫婦の繋がりは、50年です。夫婦の繋がりのほうが圧倒的に重みがあります。逆に言えば、もしも、子どもがあっさりできていたら、次のステージである「子育て競争」で苦しんでいただけかもしれません。子ども中心の人生になってしまい、子どもが自立したあとは、すがっていた親アイデンティティを失ってしまい、空の巣症候群や夫婦危機が訪れていたかもしれません。欧米では、男女を問わず、「あなたは何をする人ですか?」とよく聞かれます。これは、その人のアイデンティティを聞いています。多くの人は、職業、学問、ボランティアなどの社会的な活動を答えます。子育てや家事(専業主婦)は社会的な活動ではないため、そう答える人はあまりいません。とくに日本の女性は、自分が本当はどうなりたいかに気づくことによって、この質問に胸を張って答えることができるようになるでしょう。(3)生殖の物語は書き換えられることに気づく-認知再構築3つ目の心のあり方は、不妊治療を通して、生殖の物語は書き換えられることに気づくことです(認知再構築)。小松は、「お母さんにならない人生」を選びました。それでも、助産師として妊婦や職場の仲間に「お母さん」のように接しています。小松は、助産師として「お母さんになる人生」を選んだとも言えます。小松と同じように、不妊治療がうまく行かなかったとしても、生殖の物語は形を変えて続けることができます。ドラマに登場した特別養子縁組をする夫婦のように、育ての親になることもできます。甥っ子や姪っ子がいる場合は、彼らの面倒を見る、つまり自分の血縁者の子育てへのサポート役になることで、生殖の物語を続けることができます。さらには、仕事やボランティア活動の中で、子どもの教育にかかわったり、後輩育成をすることで、生殖の物語を続けて行くこともできます。なぜなら、生殖は、単に血(遺伝子)を繋げるだけでなく、教え(文化)を繋げることでもあるからです。実際に、動物の生活史戦略の観点からもそう言えます。ほとんどの動物は、生殖能力がなくなった時に寿命が尽きます。たとえば、人間に近い種であるチンパンジーのメスは、閉経33歳≒寿命35歳です。人間の男性についても、加齢とともに生殖能力は徐々に下がっていきますが、0にはならないので、動物と同じです。ところが、人間の女性は、50歳前後の閉経後に生殖能力が0になりますが、そこからさらにプラス数十年の寿命があります。これは、その女性が、祖母として、娘の子育てのサポートをすることで、包括的な生殖適応度を上げるように進化したと考えられています。そして、これは「おばあさん仮説」と呼ばれています。この点で、娘の生殖の物語は、祖母にとっての生殖の物語であるとも言えます。だからこそ、母親は娘の結婚や育児に口出しをするとも言えます。この仮説と同じように、叔母として子育てのサポートをすることで、包括的な生殖適応度が上がるので、「おばさん仮説」も成り立つでしょう。そして、叔母だけでなく、叔父も、さらにすべての男性も女性も、同じ社会の中で、子どもたちの成長や幸せに思いを馳せることで、集団としての包括的な生殖適応度が上がれば、「足長おじさん仮説」も成り立つでしょう。そう考えれば、子どもという存在は、単に誰かの子どもではなく、「社会の子ども」という発想もできます。子どもは社会を維持するために必要であるという点でも、子どもは「授かりもの」であり「社会の宝」であると言えるでしょう。そもそも、子どもは成人したら巣立つものです。この点で、たとえ養子であっても、近所の子どもであって、そして自分の子どもであっても、これから担い手となる「社会の子ども」を預かっているという発想もできます。子育ては、私物化されるものではなく、社会化されるものであるという視点です。この点で、誰かの生殖の物語は、社会の一員である別の誰かの生殖の物語に繋がっているとも言えるでしょう。次のページへ >>

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コウノドリ(その3)【不妊治療がうまく行かなかったら、どうすればいいの?(生殖の物語)】Part 2

これからの生殖のあり方は?-予防心理不妊治療がうまく行かなかった場合の3つの心の持ち方は、子どもができることにとらわれていたことに気づく(客観視)、自分が本当はどうなりたいのかに気づく(アイデンティティ確立)、生殖の物語は書き換えられることに気づく(認知再構築)であることが分かりました。これらは、不妊治療を終えた時の心の持ち方でした。それでは、不妊治療を始める時の心の持ち方は何でしょうか? この視点は、あらかじめよく知っておく、あらかじめよく考えておく、そのためにあらかじめよく伝えておくという点で、予防医学ならぬ、予防心理と言えます。ちょうど、その1の記事でご紹介した不育症の夫婦のエピソードが、参考になります(シーズン2第9話)。その夫は、寝込んでしまった妻について鴻鳥に「どうすれば、妻を笑顔にしてやれますか? 何もできないんです。苦しんでる妻に何もしてやれないんです。それが、つらいです。最初の流産の時からずっと引きずってて、何をしてやったら、妻が昔みたいに笑ってくれるのか。僕の役目は、今までのことを忘れさせてあげることなんですけど」と打ち明けます。すると、鴻鳥は「忘れなくていいんです。忘れる必要ないと思います。僕は、出産は奇跡だと思ってます。修一さん(不育症の夫)が、笑顔にしてあげたい。近くで何とかしてあげたい。必死に頑張ってる姿は、奥さんにとって一番の治療になるんだと思います。その思いはきっと明日に繋がると思います」と説きます。その話を聞いた夫は、家に帰って、妻が好きなベイビー(ピアニスト)の曲のピアノの演奏の練習を始めます。そして、妻に「ベイビーみたいにはなれないけど」と明るく言うのです。そして、妻は「なれるわけないじゃん」と微笑むのです。ここから、この不育症のエピソードを踏まえて、これからの生殖のあり方を考えてみましょう。(1)できることとできないことがあることを先に知っておく-限界設定鴻鳥の「出産は奇跡」と言うセリフがヒントになります。1つ目の心のあり方は、できることとできないことがあることを先に知っておく、つまり限界設定です。これは、不妊治療がうまく行かない可能性も考え、その場合にどうするかもあらかじめ考えておくことです。この心のあり方によって、「こんなはずじゃなかった」という心理に陥るのを防ぐことができます。そして、その1でご説明した不妊治療をやめられなくなる心理に陥るのを防ぐことができます。たとえば、体外受精の回数や期間です。研究結果によると、体外受精は6回までは回数を重ねるごとに出産する可能性が明らかに高まりますが、それ以上は高まらないことが分かっています。6回やってうまく行かなかった場合は、それ以上やってもうまく行かない可能性が高いということです。また、40歳以上の場合は、回数を重ねても可能性が高まらないことが分かっています。つまり、回数の限界は、6回まで(40歳以上は3回まで)が推奨されています。期間としては、2、3年が推奨されています。また、不妊治療は、排卵誘発や受精卵が着床しないことによる心身へのストレス負荷があります。よって、そのストレスが高まっているときは、不妊治療をとりあえず休む選択肢もあらかじめ考えておくことも必要です。とくに要注意なのは、子どもをつくることで意気投合して結婚した場合です。その1の記事でもご説明しましたが、子どもができることが当たり前の結婚生活が続くため、子どもができなければ、離婚リスクが高まります。よって、もし子どもができなかった場合の結婚生活やその期限を先に話し合うことが必要になります。養子や里子を迎えるのか、夫婦生活を充実させるのか、あるいは離婚するのかなどです。ちなみに、期限付きや条件付きの結婚は、契約結婚と呼ばれ、法的に問題はありません。ただし、この離婚リスクを考えると、結婚して専業主婦(専業主夫)になり、経済的な自立を手放すのは相当なリスクがあるのがよく分かります。それを避けるためであると考えれば、無意識的にも、ドラマの不育症の専業主婦の妻が「修ちゃん(夫)にも申し訳なくて。自分の子どもを抱かせてあげられないのがつらい。ごめんね」と涙するのも納得がいきます。また、現実的には、結婚がこのような条件付きの場合、この夫のように妻思いの男性が結婚相手になるとは限らないことも覚悟しておく必要があります。(2)今の生活をはじめとする人生そのものを楽しむ-アクセプタンス鴻鳥の「忘れなくていいんです」「笑顔にしてあげたい(が一番の治療になる)」と言うセリフがヒントになります。2つ目の心のあり方は、今の生活をはじめとする人生そのものを楽しむ、つまり、アクセプタンスです。これは、不妊治療をしてもしていなくても、子どもがいてもいなくても、そして結婚をしてもしていなくても、今生きていることそのものに意味を見いだすことです。そのために、日々のささやかな幸せを実感し、周りを幸せにするささやかな積み重ねを日々積極的にすることです。逆に、とくに要注意なのは、それまでの生活に不満を持っていて、結婚したら幸せになれる(相手が幸せにしてくれる)、子どもができたら夫婦関係が良くなる(相手が変わる)と思い込んでいる場合です。これは、結婚や出産を現状打開の切り札、つまりゴールと考えています。現実的には、結婚や出産は通過点であり、その後の結婚生活や育児生活というプロセスがあります。そのなかで、どうアクセプタンスを発揮できるかのほうが重要になります。子どもがいてもいなくても、自分たちの物語は続いています。どんな物語にしたいか、つまり何を意味付けるかは、結局、自分たち次第であることをあらかじめ話し合う必要があります。(3)幸せになるためのプロセスをいくつも見いだす-コミットメント鴻鳥の「その思いはきっと明日に繋がる」というセリフがヒントになります。3つ目の心のあり方は、幸せになるためのプロセスをいくつも見いだす、つまりコミットメントです。これは、幸せになるというゴールは1つでも、そのプロセスはいくつもあること、つまり、幸せの形は1つだけではないということに気づくことです。そして、プランB、プランCのように、複数のプロセスを常に考えることです。たとえば、不妊治療は人生をより良くするためのプロセスの1つです。そのゴールが子育てをすることなら、そのプランBは、養子や里子を迎えることです。そのプランCは、保育士などの援助職に就くことでしょう。ペットを飼うのも1つでしょう。そのゴールが血縁関係なら、そのプランBは、甥っ子や姪っ子のお世話です。そのプランCは、親戚付き合いです。逆に、とくに要注意なのは、女性が結婚して子どもができることを見越して、「寿退社」をすることです。そして、男性もそれを望むことです。なぜなら、これは、女性のアイデンティティが危うくなるだけでなく、幸せになるためのプロセスの選択肢を減らすことになってしまうからです。また、危ういのは、妊娠する前から、子どもの男女の名前、習い事、育児方針を事細かく具体的に決めてしまうことです。そして、夫婦で「パパ」「ママ」と呼び合い、「うちの○○ちゃんは」という会話練習まで日常的にすることです。もちろん、幸せを具体的に描くことは良いことですが、これらはすべて形(形式)です。中身(プロセス)ではありません。中身とは、子どもを抱っこしたり寝かしつけする喜びや、言葉を教えてあげる楽しさなどをイメージすることです。このプロセスを重視することによって、たとえ子どもができなかったとしても、養子や里子を迎える発想に転換することができます。逆に、形を重視してしまったら、形にとらわれてしまい、発想の転換が難しくなるでしょう。このように、コミットメントとは、幸せになるための選択肢をあらかじめ早い段階でいろいろ考えて、実際に行動することです。なお、アクセプタンスとコミットメントについては、関連記事1をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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コウノドリ(その3)【不妊治療がうまく行かなかったら、どうすればいいの? (生殖の物語)】Part 3

これからの社会としての生殖のあり方は?-少子化対策これからの生殖のあり方は、できることとできないことがあることを先に知っておく(限界設定)、今の生活をはじめとする人生そのものを楽しむ(アクセプタンス)、幸せになるためのプロセスをいくつも見いだす(コミットメント)ことであると分かりました。これらは、個人としての生殖のあり方でした。それでは、社会としての生殖のあり方はどうでしょうか?生殖は、個人的な問題だから社会が介入する必要はないという意見があります。一方で、その社会が少子化によって機能しなくなると、個人の生活も機能しなくなります。たとえば、介護の問題です。老後は、血縁者ではなく、福祉でみてもらうとしても、その福祉制度を支えるのは社会、つまり次世代の子どもたちです。次世代の子どもたちが少なければ、介護の制度自体が機能しなくなるでしょう。やはり、福祉をはじめとする持続可能な社会が成り立つには、次世代の子どもが減っていないことが大前提です。ちょうど、その2の記事でご紹介した鴻鳥の後輩女医の下屋のセリフが参考になります(シーズン1第6話)。それは、「女には、産みたくても産めない時があるんです。出産や子育てにはお金がかかりますし、社会に出てキャリアを積もうと思ったら、あっという間に30過ぎちゃいます」というセリフでした。さらに彼女は、「それに妊娠したら、マタハラ(マタニティハラスメント)が待ってるかもしれないんですよ」「女医は子どもを産むからあてにならないと言われるじゃないですか」と付け加えます。すると、そばにいた別の女医が「産休後に復帰できない女医もいる。要は、簡単に子どもを育てられる環境じゃないってこと」と付け加えます。そして、鴻鳥は「生みたいときに生めるのが女性のまっとうな権利なんだけどね」とまとめようとします。しかし、その別の女医は「でも、現実はそうじゃない、女にはタイムリミットがあるの」と指摘するのです。ここから、このワンシーンを踏まえて、これからの社会としての生殖への取り組み、つまり少子化対策を大きく3つ挙げてみましょう。(1)経済的なサポートその2の記事で、子どもを(多く)つくらない心理的な原因の1つに、子育てにお金がかかり過ぎる点を挙げました。1つ目の少子化対策は、子育てへの経済的なサポートです。確かに、すでに少子化対策の一環として、児童手当が支給されています。しかし、子育て支援としては、極めて限定的です。よって、妊娠・出産、保育、義務教育、医療など、成人までかかる費用をほぼ無償にすることです。そして、児童手当は、家計が潤うくらいのインセンティブをつけることです。そもそも、子どもは、社会にとって次世代の生産財です。社会がもっと抜本的に投資する必要があります。逆に、これまでの少子化対策がうまく行かなかった点として、子育て支援が限定的であったこと以外に、婚活支援に投資してしまったことが指摘されています。結婚すると自由もお金も制限されてしまうという受け身的な非婚の心理が広がってしまったため、婚活支援の効果はもはや期待できないでしょう。むしろ、効果的なのは、結婚していない人ではなく、すでに結婚をしている人への介入です。つまり、合計特殊出生率よりも、希望出生率に注目することです。これは、結婚して希望する子どもの数です。たとえば、次の4つのケースに場合分けします。1.結婚していない男女が結婚して1人目の子どもをつくる2.結婚していても子どもがいない夫婦が1人目の子どもをつくる3.結婚して子どもが1人いる夫婦が2人目をつくる4.結婚して子どもが2人いる夫婦が3人目をつくるそして、その中でどのケースが最も効率が良い国家投資になるかを考えることです(パリティ拡大率)。この点で、不妊治療の保険適用は現実的です。もちろん、希望出生率をあげることは、結果的に合計特殊出生率をあげることになります。(2)身体的なサポートその2の記事で、子どもを(多く)つくらない心理的な原因の1つに、子育てで自分のやりたいことができなくなる点を挙げました。2つ目の少子化対策は、子育てへの身体的なサポートです。確かに、保育園や学童保育所の待機児童の数は減ってきました。しかし、充分とは決して言えません。とくに母親のワンオペ育児の状況は大きく改善していません。その原因として、父親の育児協力が不十分であることが指摘されています。よって、まず0歳児からの保育園の拡充をすることです。そして、父親の育児協力を担保するため、育児休暇、育児時短勤務などを制度化することです。会社で仕事をしていない代わりに、家庭で育児という仕事をしているという発想を社会で共有することです。なぜなら、子どもは社会にとって次世代の生産財だからです。社会として、育児にもっと理解をする必要があるでしょう。(3)教育的なサポートその2の記事で、子どもを(多く)つくらない心理的な原因の1つに、子育てのイメージができない点を挙げました。3つ目の少子化対策は、子育てへの教育的なサポートです。確かに、ドラマの女医が「リミット」に触れているように、妊孕性(妊娠のしやすさ)は40歳が1つの目安であることは、かなり世の中に知れ渡りました。しかし、親性(子育てへの自信ややりがい)の個人差やその低下については、あまり世の中に知られていません。また、その親性を家庭内で育むことが難しくなっています。よって、親性を高めるのが、家庭で限界があるなら、教育制度の中で取り組むことです。たとえば、ボーイスカウト・ガールスカウトのような異学年グループを小学校の学校教育の中で取り入れることです。小学校高学年2人と小学校1年生1人の3人グループをつくって、勉強を教えるのです。週1回の生活科や道徳の教科の枠組みで可能でしょう。また、小学校の各学年から6人ずつのグループをつくって、学校のイベントを行うこともできるでしょう。さらに、中学校では、地域の幼保育園との交流を通して、乳幼児と定期的にかかわる何らかの取り組みも望まれます。子育ては、大人だけでなく、子どもも学ぶ必要があることを共通認識とする必要があります。そうすることで、未来の社会の人たちの親性が全体的に高まり、子育てへのイメージがよりできるようになります。そして、子育て自体が喜びと感じる心理は、結婚すると自由もお金も制限されてしまうという受け身的な非婚の心理を上回るでしょう。また、育児へのリアルな理解が得られることで、ドラマの下屋や別の女医が指摘する「マタハラ」はなくなるでしょう。「コウノドリ」とは?タイトルの「コウノドリ」は、「コウノトリ」に濁点が付けられています。不思議に思った人も多いでしょう。これは、実は、書籍の業界のヒットの法則として、マンガ原作者の意図により、あえてつけられたという経緯があります。ただ、同時に、生殖の当たり前から脱することが込められているようにも思えてきます。今回、生殖には、さまざまな意味合いがあることが分かりました。そのことをよく理解したとき、私たちは、単に自分の子どもをつくる「コウノトリ」としてではなく、いろんな生き方を受け入れて誰かの生殖にも思いを馳せることができる「コウノドリ」として、私たち自身の生殖の物語をより豊かに紡いでいくことができるのではないでしょうか?1)子育て支援と心理臨床18:子育て支援合同委員会、福村出版、20192)子どものいない人生の歩き方:くどうみやこ、主婦の友社、20183)不妊治療のやめどき:松本亜樹子、WAVE出版、20164)進化と人間行動:長谷川眞理子ほか、放送大学教材、20075)日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?:山田昌弘、光文社文庫、20206)一人っ子男性が「結婚」に縁遠い傾向にある理由:荒川和久、東洋経済オンライン、2020<< 前のページへ■関連記事テネット【なんで時間を考えるのが癒しになるの?(アクセプタンス&コミットメント・セラピー[ACT])】

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精神疾患治療薬と自動車運転能力~システマティックレビュー

 モビリティは、日常生活において重要な機能であるが、薬理学的な治療を行っている精神疾患患者では、交通安全に関する特定の課題を抱えている。ドイツ・kbo-Inn-Salzach-KlinikumのAlexander Brunnauer氏らは、精神疾患治療薬と自動車運転能力との関連を調査した。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2021年5月26日号の報告。 PRISMAガイドラインに従って、PubMedより1970~2020年に公表された文献をシステマティックに検索した。主要評価項目として、交通法規に従って運転するための対象患者の適合性を推定するため、路上教習でのパフォーマンス、ドライビングシミュレータでのパフォーマンス、精神運動、視覚機能を評価した。 主な結果は以下のとおり。・特定された40件の研究(精神疾患患者数:1,533例、女性の割合:38%、年齢中央値:45歳)のうち、60%以上は横断的および非盲検試験であった。・安定期の治療薬投与下において、運転関連スキルに重度の問題が認められた患者の割合は、以下のとおりであった。 ●抗精神病薬投与中の統合失調症または統合失調感情障害患者:31%(範囲:27~42.5%) ●抗うつ薬投与中の単極性または双極性障害患者:18%(範囲:16~20%)・運転能力に対し、第1世代抗精神病薬より第2世代抗精神病薬、三環系抗うつ薬より新規抗うつ薬のほうが優れることが示唆された。・多くの患者において、非鎮静または鎮静系抗うつ薬治療開始から2~4週以内に、運転スキルの有意な改善または安定が認められた。・ジアゼパムでは、治療開始後最初の3週間に運転能力の有意な悪化が確認されたが、メダゼパム(低用量)、temazepam、ゾルピデムでは、影響が認められなかった。・鎮静系抗うつ薬またはベンゾジアゼピンの長期使用患者では、明らかな路上教習での問題は認められなかった。 著者らは「臨床的に配慮した精神疾患治療薬の長期使用は、運転能力を改善または安定させることが示唆された。治療コンプライアンスを強化するため、運転能力に影響を及ぼす医薬品に関する既存の分類システムに、長期使用の影響に関する情報も盛り込む必要がある」としている。

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