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12月11日 胃腸の日【今日は何の日?】

【12月11日 胃腸の日】 〔由来〕 「いに(12)いい(11)」(胃にいい)の語呂合わせから日本大衆薬工業協会(現:日本OTC医薬品協会)が2002年に制定。師走に1年間を振り返り、大切な胃腸に負担をかけてきたことを思い、胃腸へのいたわりの気持ちを持ってもらうのが目的。胃腸薬の正しい使い方や、胃腸の健康管理の大切さなどをアピールしている。関連コンテンツ 小児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)【すぐに使える小児診療のヒント】 副作用編:下痢(抗がん剤治療中の下痢対応)【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】 2日目のカレーは食中毒のリスク【患者説明用スライド】 コーヒー摂取量と便秘・下痢、IBDとの関連は? 心筋梗塞後の便秘、心不全入院リスクが上昇~日本人データ

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領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療

腎臓と泌尿器の専門医が得意分野を紹介「小児診療 Knowledge & Skill」第3巻腎・泌尿器疾患は、尿の生成・輸送を担う腎臓・尿管、蓄尿・排泄を担う膀胱・尿道の2つの領域にわたる。一連のしくみは密接に関わり、腎臓と泌尿器の専門医がともに得意分野を紹介。日本では3歳児検尿と学校検尿の普及により、小児科医が腎疾患の早期発見に寄与している。尿路感染症、夜尿症など身近な疾患から、専門的なネフローゼ症候群、糸球体疾患まで、臨床に活かすセレンディピティ。本書のポイント小児の腎臓病学と泌尿器科学の2つの領域を横断的にまとめたとらえ方が難解な腎・泌尿器疾患を14の章立てによりシステマティックに提示し、外来から専門医につなぐタイミングをコラムでガイド専門的な画像検査所見、病理所見、症例写真を多数紹介DOHaD、先天性腎尿路異常(CAKUT)が影響する小児の腎・泌尿器疾患、出生前から始まる慢性腎臓病(CKD)への予防を見据えた画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療定価9,350円(税込)判型B5判(並製)頁数376頁発行2025年11月総編集加藤元博(東京大学 教授)専門編集張田 豊(東京大学 准教授)ご購入はこちらご購入はこちら

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第293回 佳境迎える診療報酬改定議論、「本体」引き上げはほぼ既定路線も、最大の焦点は病院と診療所間の「メリハリ」

診療報酬「本体」は引き上げの方向こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。師走となり、診療報酬改定の議論が白熱してきました。各紙報道によれば、診療報酬のうち医薬品などの「薬価」部分は小幅引き下げの見通しの一方、医師の技術料や人件費に当たる「本体」部分は2024年度改定以上の引き上げが見込まれ、全体ではプラス改定となりそうです。12月7日のNHKも、「政権幹部の1人は『高市総理大臣は、引き上げに意欲を見せており、プラス改定になる方向だ』と話すなど、人件費などに充てられる『本体』の引き上げ幅が焦点となる見通しです」と報じています。最大の関心事は病院と診療所それぞれに対する配分引き上げ幅はもちろん重要ですが、医療関係者の最大の関心事は病院と診療所、それぞれに対する配分でしょう。医療経済実態調査や財政審の「秋の建議」など、次期改定を左右する様々な発表が相次ぎ、事態は混沌としています。全国各地の病院の窮状に加え、今年は日本維新の会が自民党との連立政権に加わったことで、診療所院長が主な構成員である日本医師会にとってはいつになく厳しい状況となっています。最近では新聞だけではなくテレビでも、病院経営の苦しさが連日のように報道されています。日本医師会は「財務省の『二項対立による分断』には、絶対に乗ってはいけない」(11月29日に開かれた九州医師会連合会における日本医師会の松本 吉郎会長の発言)と警戒感をあらわにしています。特定機能病院は70.7%、高度急性期病院は69.0%が経常赤字関連する最近の発表をおさらいしましょう。まず、医療経済実態調査です。次期診療報酬の改定に向けた基礎的な資料となるものですが、病院の経営状況の悪さが改めてクローズアップされました。厚生労働省は11月26日、中医協の調査実施小委員会と総会で第25回医療経済実態調査の結果を公表しました。今回の調査は2023~24年度の経営状況が対象となり、1,167の病院(回答率50.2%)、医療法人立と個人立を合わせて2,232の診療所(同54.9%)から回答を得ています。それによると、一般病院の開設主体別では、医療法人(402施設)は2023年度がマイナス1.1%、2024年度がマイナス1.0%でほぼ横ばい、公立(130施設)はマイナス17.1%からマイナス18.5%へ悪化、国立(24施設)はマイナス5.8%からマイナス5.4%、公的(51施設)はマイナス5.5%からマイナス4.1%と若干改善したものの赤字幅は依然大きいままでした。医業損益は、病院全体で67.2%、一般病院で72.7%が赤字でした。経常損益でも病院全体で58.0%、一般病院で63.3%が赤字でした。とくに特定機能病院は70.7%、高度急性期病院は69.0%が経常赤字で、急性期病院の苦境が際立っていました。診療所経営も悪化したものの病院ほどではない一方、診療所ですが、医療法人立の無床診の損益率は2024年度が5.4%と、2023年度の9.3%から悪化しました。医療法人立の無床診の平均損益率は診療科で差が大きく、低かったのは外科(回答49施設)0.4%、精神科(25施設)1.6%、産婦人科(35施設)2.7%、整形外科(143施設)3.1%、内科(581施設)が4.2%、小児科(86施設)4.7%などでした。一方、高い収益を上げたのは耳鼻咽喉科(91施設)の9.5%、眼科(96施設)の8.7%、皮膚科(71施設)の8.1%などでした。なお、個人立の無床診療所は院長等の報酬が費用に含まれないために数値が高く出る傾向がありますが、2024年度は29.1%と、2023年度(32.3%)から低下しました。端的に言えば「病院はとても厳しい、診療所もそこそこ厳しいものの、病院ほどではない」というのが医療経済実態調査の結果ということになります。このままでは「分が悪過ぎる」と考えたのでしょうか? 日本医師会の江澤 和彦常任理事は12月3日の定例記者会見で、「病院・診療所共に経営の悪化は深刻であり、存続が危ぶまれる状況が明白になった」と指摘。「病院はすでに瀕死の状態であり、ある日突然倒産するという事態が全国で起きている」ことに危機感を示し、診療所も約4割が赤字であるとして、「規模が小さく脆弱な診療所は、これ以上少しでも逆風が吹けば、経営が立ち行かなくなる」と語り、危機に直面しているのは病院だけではないことを強調しました。財務省は「メリハリ」強調、診療所の診療報酬の適正化を提案医療経済実態調査が公表された6日後の12月2日には、財務省の財政制度等審議会(十倉 雅和会長・住友化学相談役)が、「2026年度予算の編成等に関する建議」(通称、秋の建議)を取りまとめ、片山 さつき財務相に手渡しました。秋の建議では2026年度診療報酬改定について「メリハリある診療報酬の配分を実現することは、財政当局や保険者にとって極めて重要なミッションと言えよう。これを実現するためには、医療機関の経営状況のデータを精緻に分析することが必要である。特に物価・賃金対応については、医療機関の種類・機能ごとの経営状況や費用構造に着目した上で、本来は過去の改定の際に取り組むべきであった適正化・効率化を遂行することも含め、メリハリときめ細やかさを両立させた対応を強く求めるものである」と「メリハリ」という言葉を何度も使って医療機関の種類・機能ごとに差を付けるべきだと主張しました。その上で、「1)赤字経営の診療所が顕著に増加しているという主張もあるが、医療機関の経営状況に関する厚生労働省等のデータによると、物価高騰の中でも、診療所の利益率や利益剰余金は全体として高水準を維持していること、2)他職業との相対比較における開業医の報酬水準の高さは国際的にも際立っていることなどを踏まえ、診療所の診療報酬を全体として適正化しつつ、地域医療に果たす役割も踏まえて、高度急性期・急性期を中心とする病院やかかりつけ医機能を十全に果たす医療機関の評価に重点化すべきである」と、診療報酬の病院への重点配分と診療所の診療報酬の適正化を改めて主張しています。11月に開かれた財政制度等審議会・分科会での主張とほぼ同じで、診療所をターゲットとしている点は変わりません。秋の建議の社会保障関連ではその他、「かかりつけ医機能の報酬上の評価」の再構築、リフィル処方箋の拡充、OTC類似薬を含む薬剤の自己負担の見直しなど提言しています。「かかりつけ医機能の報酬上の評価」は個々の診療報酬についても言及、かかりつけ医機能報告制度上、基本的な機能を有していない診療所の初診料・再診料の減算措置導入や、外来管理加算や特定疾患管理料、生活習慣病管理料などの適正化を求めています。なお、昨年の秋の建議まで、財務省が繰り返し提言してきた「診療報酬の地域別単価の導入」は、今回は盛り込まれませんでした。経団連、健保連、維新も「メリハリ」求めるこうした動きの中、診療報酬の「メリハリ」を求める声は各方面からも高まっています。経団連(日本経済団体連合会)は11月28日、健康保険組合連合会や日本労働組合総連合会(連合)など医療保険関係5団体と共に、上野 賢一郎・厚生労働大臣と面会し、2026年度診療報酬改定に関する共同要請を行いました。要請では、「高齢化に相当する医療費の増加に加え、医療の高度化等により医療費が高騰し続け、被保険者と事業主の保険料負担は既に限界に達している」状況下での診療報酬改定について、「基本診療料の単純な一律の引上げは、病床利用率や受療率の低下による影響を含めて医療機関の減収を医療費単価の増加によって補填する発想であり、患者負担と保険料負担の上昇に直結するだけでなく、医療機関・薬局の経営格差や真の地域貢献度が反映されず、非効率な医療を温存することになるため、妥当ではない」と従来の「単純な一律の引上げ」を批判、その上で、「優先順位を意識し、確実な適正化とセットで真にメリハリの効いた診療報酬改定を行うこと。その際には、診療所・薬局から病院へ財源を再配分する等、硬直化している医科・歯科・調剤の財源配分を柔軟に見直すこと」と、病院への重点配分を強く求めています。さらに、12月4日には日本維新の会が社会保障制度改革の推進を求める申し入れを高市 早苗首相に手渡しています。申し入れでは、2026年度診療報酬改定について、「診療所の経営状況の違いを踏まえた入院と外来のメリハリ付け、医科・歯科・調剤の固定的な配分の見直しなど診療報酬体系の抜本的な見直しを行うこと」を求めるとともに、「抜本的見直しの方向性について、中央社会保険医療協議会に任せることなく、年末に政治の意思として決定し、示すこと」を要請しました。「今やらないでいつやる?」と病院団体の関係者は思っているのでは日本医師会は「二項対立による分断」と言いますが、そもそも病院経営と診療所経営の”格差”を形作ってきた一因は日本医師会にもあるのではないでしょうか。年末に診療報酬の改定率が決まった後も、年明けの中央社会保険医療協議会総会で、2026年度診療報酬改定の答申が行われるまで「メリハリ」を巡る戦いは続くでしょう。「今やらないでいつやるんだ」と病院団体の関係者は思っているに違いありません。次期改定で本当の意味での「メリハリ」が付けられるかどうか、今後の議論の行方に注目したいと思います。

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ヌシネルセンの高用量処方はSMA患者のQOLをさらに改善する/バイオジェン

 バイオジェン・ジャパンは、2025年9月19日に脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬ヌシネルセン(商品名:スピンラザ)の高用量投与レジメンでの剤型(28mg製剤、50mg製剤)について、新用量医薬品/剤形追加の承認を取得した。わが国は世界初の両剤型の承認・販売国となり、この承認を受け、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、SMAの疾患概要、治療の変遷、患者のニーズなどに関する講演などが行われた。高用量ヌシネルセンで筋力維持などができる可能性へ 「脊髄性筋萎縮症の治療 スピンラザ高用量投与を迎えて」をテーマに、長年本疾患の研究に携わってきた齋藤 加代子 氏(東京女子医科大学名誉教授/瀬川記念小児神経学クリニック)が、SMAの疾患概要と治療の課題などを解説した。 SMAは、脊髄における前角細胞(運動神経細胞)の変性による筋萎縮と進行性筋力低下を特徴とする下位運動ニューロン病であり、発症年齢などの区分により0~IV型まで5つの型がある。 わが国の発生率は出生1万人当たり0.51例、有病率は人口10万人当たり1例とされ、8割以上の患者が2歳までに発症しているために新生児マススクリーニングが早期発見のために重要と齋藤氏は指摘する1)。 SMAの治療で使用されるヌシネルセンは、体内で生成される完全長Survival Motor Neuron(SMN)タンパクの量を継続的に増やすことで、運動ニューロン喪失の根本原因を標的にするアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)であり、運動ニューロンが存在する中枢神経系に直接投与される。 治療では開始時期により運動機能の改善効果もみられ2)、早期診断と早期治療が重要であり、現在では国の実証事業として新生児のマススクリーニング検査がほぼ全国で行われている。 こうした診療環境の中でSMAの全病型で最も多く報告されたアンメットニーズは「筋力の改善」であり、「呼吸機能と球機能(bulbar function)に関する項目(呼吸機能の改善、嚥下機能の改善など)では、I/II型のほうがIII型よりも重要である可能性が高い」と報告されている3)。また、PK/PDモデルを用いた予測では、脳脊髄液中のヌシネルセン濃度に対しニューロフィラメントの減少をはじめとする用量依存的な治療反応が示唆されていたことから高用量製剤の開発が待たれている。 そこで、高用量製剤の製品化に向け50/28mgの有効性および安全性を検討するため、3部構成のDEVOTE試験が行われた。とくにパートBでは、未治療の乳児型SMA患者(75例)および乳児型以外のSMA患者(25例)について国際共同第III相、二重盲検、並行群間比較試験が行われた。 その結果、乳児型SMA患者におけるフィラデルフィア小児病院乳児神経筋疾患検査(CHOP INTEND)総スコアについて183日目のベースラインからの変化量の最小二乗(LS)平均値は、50/28mg群15.1(95%信頼区間:12.4~17.8)、マッチングシャム処置群ー11.1(95%信頼区間:ー15.9~ー6.2)であり、LS平均値の差は26.2(95%信頼区間:20.7~31.7、p<0.0001、共分散分析および多重補完法)であったことから、優越性が検証された。 乳児型SMA患者における死亡または永続的換気までの期間について、カプランマイヤー法に基づいた期間の中央値は、50/28mg群では推定できず、12/12mg群で24.7週(95%信頼区間:14.4~NA、名目上のp=0.2775、罹患期間で層別したlog rank検定)だった。 302日目における乳児神経学的検査(HINE)第1項 哺乳/嚥下能力の低下がみられた患者の割合は、50/28mg群で6%(2/35例)、12/12mg群で33%(4/12例)であり、改善がみられた患者の割合は、50/28mg群で26%(9/35例)、12/12mg群で8%(1/12例)だった。 パートCでは日本人を含む乳児型SMA患者(2例)および乳児型以外のSMA患者18歳未満(14例)と18歳以上(24例)について、302日目における拡大Hammersmith運動機能評価スケール(HFMSE)、上肢機能モジュール改訂版(RULM)のベースラインからの変化量について評価がなされ、その結果変化量の平均値(標準誤差)は、HFMSEで1.8点(3.99点)、RULMで1.2点(2.14点)だった。 安全性は、50/28mg群では3/50例(6.0%)、12/12mg群では1/25例(4.0%)に副作用が認められ、貧血や発熱、不快などの発現が報告された一方で、本試験での死亡および投与中止に至った副作用は認められなかった。 齋藤氏はまとめとして、SMAにおいて疾患修飾治療薬3種の臨床試験が成功して実臨床で使える時代となったこと、発症抑制のための新生児マススクリーニングを拡充・推進する方針で実証事業開始されたことに触れ、最後に「ヌシネルセン高用量投与という新たな時代が今始まった」と期待を寄せた。患者の希望は「筋力アップ」 続いて「SMA家族の会」の理事長である大山 有子氏が、患者・患者家族のリアルな声と「SMA患者さん治療ニーズに関する調査結果」をテーマに講演を行った。 自身の子供がSMAI型であり、子供の日常生活を疾患介護の苦労とともに画像・動画で説明し、ヌシネルセンなどの治療薬の乳幼児期における劇的な症状改善の効果を紹介した。 次に家族会とバイオジェンが共同で行った患者・患者家族などへのアンケート内容を説明した。アンケートは、2025年9月3~14日にかけてSMA患者21人、介護者63人(計84人)に行ったもの。・「薬による治療」は96%が受けており、「治療でできるようになったこと」は「座位」、「寝返り」などの回答が多かった。・「リハビリテーション」については、「病院で実施」が69%、「自宅で実施」が76%だった。・「患者がもっとできるようになりたいこと」では、「トイレ」、「移動」などの回答が多く、「そのために必要な機能」について、「筋力」、「体幹」などの回答が多かった。

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アトピー性皮膚炎へのウパダシチニブ、増量および減量の有効性と安全性/BJD

 成人の中等症〜重症のアトピー性皮膚炎に対する、JAK1阻害薬ウパダシチニブのこれまでの主要な臨床試験では、15mg(UPA15)および30mg(UPA30)の固定用量1日1回投与による有効性と安全性が評価されてきた。カナダ・クイーンズ大学のMelinda Gooderham氏らは、日本を含む第IIIb/IV相無作為化国際多施設共同盲検treat-to-target試験を実施し、12週間の治療後の臨床反応に基づくUPA30への増量およびUPA15への減量の有効性と安全性を検討した。British Journal of Dermatology誌2025年12月号掲載の報告より。 18歳以上65歳未満の中等症〜重症のアトピー性皮膚炎患者461例が1:1の割合でUPA15群またはUPA30群に無作為に割り付けられ、12週間の二重盲検期間中1日1回経口投与された。UPA15群では、12週時点でEczema Area and Severity Index(EASI)-90未達成の患者は30mgに増量し(UPA15/30群)、EASI-90を達成した患者は15mgの投与を継続した(UPA15/15群)。UPA30群では、12週時点でEASI-90未達成の患者は30mgの投与を継続し(UPA30/30群)、EASI-90を達成した患者は15mgに減量した(UPA30/15群)。 主要有効性評価項目は、24週時点におけるEASI-90達成率で、安全性についても評価された。 主な結果は以下のとおり。・UPA15群に229例、UPA30群に232例が割り付けられた。・24週時点で、UPA15/30群の48.1%(64/133例、95%信頼区間[CI]:39.6~56.6)がEASI-90を達成し、UPA30/15群の68.5%(89/130例、95%CI:60.5~76.4)がEASI-90を維持していた。・24週時点で、UPA15/15群では74.6%(53/71例、95%CI:64.5~84.8)、UPA30/30群では29.3%(24/82例、95%CI:19.4~39.1)がEASI-90を維持していた。・24週時点で、UPA15/30群の32.5%(27/83例、95%CI:22.5~42.6)およびUPA30/15群の38.0%(38/100例、95%CI:28.5~47.5)が最悪のかゆみの数値評価尺度(WP-NRS)0または1を達成し、それぞれ20.7%(17/82例、95%CI:12.0~29.5)および35.0%(35/100例、95%CI:25.7~44.3)がEASI-90かつWP-NRS 0/1を達成した。・24週時点における試験治療下での有害事象の発現率は、UPA15/15群では43.1%(31/72例)、UPA15/30群では54.2%(78/144例)、UPA30/30群では61.5%(56/91例)、UPA30/15群では48.9%(65/133例)であった。悪性腫瘍、中央判定された静脈血栓塞栓症イベント、死亡は報告されていない。 著者らは、「12週時点のEASI-90達成状況に応じたウパダシチニブの用量漸増/減量戦略により、24週時点でのEASI-90達成および維持が可能であることが示された」とし、安全性についても既知のウパダシチニブの安全性プロファイルと一致し、新たな安全性上の懸念は確認されなかったとまとめている。

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異物除去(11):外耳道異物(4)ボタン電池【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q155

異物除去(11):外耳道異物(4)ボタン電池Q155休日夜間診療所で当直バイト中、夜22時に外耳道異物の3歳男児が受診した。同伴の両親からの聴取では「ボタン電池を入れてしまったかもしれない、おそらく挿入は受診の30分前くらいだろう」とのこと。耳鏡で見ると、明らかにボタン電池が入っている。現時点で鼓膜穿孔はなさそうだ。自分で1回鑷子を用いて除去を試みたができなかった。幸い、電池は回転していない。耳鼻科対応が可能な近隣の総合病院に紹介しようとあたってみるが、どこも対応が困難なようだ。受けてくれそうな病院は隣町の救急病院で、どう考えても救急病院まで移動で1時間はかかるだろう。どうしようか。(1)もう一度、除去を試みる(2)なるべく乾燥させることを促しながら救急搬送する(3)陰極側に薄いガーゼを留置して救急搬送する(4)酢酸を塗布して救急搬送する(5)翌日、近くの耳鼻科開業医に受診してもらう

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英語で「水ぼうそう」ってどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第41回

医学用語紹介:水痘(みずぼうそう) varicella子供のころに多くの人が経験する「水ぼうそう」。日本語でも、専門用語としては「水痘」という別の言葉が使われます。この「水痘」に当たる英語の専門用語はvaricellaですが、このままでは患者さんや心配している家族に伝わりにくいでしょう。このよくある疾患について、誰にでもわかりやすく伝えるには何と言えばよいでしょうか?講師紹介

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育児とキャリアの共存戦略―女性医師26名が語るジレンマ構造―

女性医師は仕事と子育てを両立できる?インタビューから構造的問題を分析!出産後、多くの女性が仕事と家庭のトレード・オフの問題に直面します。常勤を続ける者、離職する者、復帰を選ぶ者/選ばない者……。彼女たちの育児とキャリアに影響を与えたものは、一体何でしょうか?本書では、「女性医師」に焦点を当て、26名の当事者にインタビューを行いました。「女性医師」という専門的な職種ながら、彼女たちがぶつかる問題は、現代の日本で働く女性ならば誰しもに共通するものです。ハイキャリアな「医師」という仕事を選んだ女性でさえ、時には意にそぐわずキャリアを諦めることもある。その事実の裏にこそ、個人の「努力」だけでは埋められない構造的な問題が横たわっています。働く女性だけでなく、働く男性や家族、部下を持つ管理職や人事にまで読んでいただきたい1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する育児とキャリアの共存戦略―女性医師26名が語るジレンマ構造―定価2,178円(税込)判型四六判頁数240頁発行2025年11月著者内藤 眞弓ご購入はこちらご購入はこちら

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日本人小児におけるADHDサブタイプと肥満との関係

 福島県立医科大学の川崎 幸彦氏らは、日本人小児における注意欠如多動症(ADHD)サブタイプの特徴とBMI-SDスコアに基づく肥満との関連を明らかにするため、ADHDの小児患者を対象とした臨床調査を実施した。Brain & Development誌オンライン版2025年10月29日号の報告。 対象は、ADHDと診断された日本人小児115例。患者は、ADHDのサブタイプ別に次の3群に分類された。グループ1は不注意優勢型ADHD(ADHD-I)、グループ2は多動性・衝動性優勢型ADHD(ADHD-HI)、グループ3はこれらの複合サブタイプ(ADHD-C)。各群の臨床的特徴を分析した。 主な結果は以下のとおり。・最も多くみられたADHDサブタイプはADHD-C、次いでADHD-I、ADHD-HIであった。【ADHD-I】41例(35.7%)【ADHD-HI】6例(5.2%)【ADHD-C】68例(59.1%)・診断時および直近のフォローアップ調査では、ADHD-CのADHD評価尺度合計スコアは、ADHD-IおよびADHD-HIよりも高かった。・また、診断時のトラブルスコアおよびADHD治療薬を必要とした患者の割合はADHD-Cのほうがより高かった。・さらに、ADHD児のBMI-SDスコアは0.38±1.1と高かった。・BMI-SDスコアが2.0を超える患者の割合は、ADHD-Iで7.3%(3例)、ADHD-HIで16.7%(1例)、ADHD-Cで8.8%(6例)であり、全体で8.7%(10例)であった。 著者らは「ADHD-Cタイプの患者は、ADHD-IやADHD-HIよりも注意深いフォローアップが必要である。また、肥満を伴うADHD児の病状改善を目的として経過をモニタリングすることが重要であることが示唆された」と結論付けている。

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雷雨の日には喘息関連の救急外来受診が増える

 雷雨の最中や直後に喘息症状が急増する現象は、雷雨喘息と呼ばれている。この現象について検討した新たな研究で、雷雨の日には、実際に喘息関連の救急外来(ED)受診が大幅に増加することが示された。米カンザス大学医療センターのDiala Merheb氏らによるこの研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次学術会議(ACAAI 2025、11月6〜10日、米オーランド)で発表された。Merheb氏は、「これらの結果は、米国においても、雷雨が喘息患者に深刻な健康リスクをもたらす可能性があることを裏付けている」と述べている。 Merheb氏らによると、雷雨喘息は世界的に広く報告されている現象であり、世界アレルギー機構も認めていると研究者らは背景説明の中で述べている。しかし、米国の花粉が多い地域における雷雨喘息に関する研究は限定的であり、米国人に対する脅威は十分に理解されていないという。 この研究では、2020年1月1日から2024年12月31日の間にカンザス州ウィチタの3カ所の病院で発生した4,439件の喘息関連のED症例を分析し、雷雨との関連を検討した。雷雨日は、米国立環境情報センターの気象データを用いて調べた。 研究対象期間中に発生した雷雨日は38日で、試験対象期間のわずか2%を占めるに過ぎなかったが、雷雨日には喘息関連ED受診の14.1%(627/4,439件)が発生していた。ED受診件数の平均は、雷雨の日で17.91件であり、雷雨ではない日(3.09件)と比較して有意に多かった。 Merheb氏は、「嵐は予測不可能なので、患者と医療提供者は、喘息の行動計画に雷雨に特化した予防措置を含める必要がある」とACAAIのニュースリリースで述べている。 米ハーバード大学医学大学院によると、気象現象の展開次第で雷雨によって喘息発作が起きやすくなる可能性があるという。そのメカニズムは次のように説明されている。まず、冷たい下降気流によって花粉やカビなどのアレルゲンが濃縮され、それが湿気を帯びた厚い雲の中に巻き上げられる。雷雨の際には、風、湿気、雷によりそれらの粒子が分解され、肺の奥深くまで簡単に吸い込まれるようになる。さらに、嵐の際に突風により小さな粒子が集められることで、大量吸入の可能性が高まる。 共同研究者であるカンザス大学医療システムのアレルギー専門医であるSelina Gierer氏は、「自分の子どもが喘息持ちである人は、花粉の飛散量が多い日や寒い天候に備えるのと同じように、雷雨にも注意を払うべきだろう。誘因を理解し、明確な行動計画を立てることで、ED受診を回避することができる」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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現金給付による死亡率低下、そのメカニズムとは/Lancet

 米国・ペンシルベニア大学のAaron Richterman氏らは以前、現金給付プログラムが低・中所得国(LMIC)において、女性と幼児の死亡率を人口集団レベルで大幅に低下させることを報告している。同氏らの研究チームは今回、この死亡率の低下の背景にあるメカニズムの探索を目的に検討を行い、現金給付プログラムによって、妊産婦保健サービスの利用や子供の健康・栄養状態などに関連する12のアウトカムが大幅に改善されることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年11月10日号に掲載された。37のLMICで17のアウトカムを差分の差分分析で評価 本研究では、2段階差分の差分分析を用いて、アフリカ、中南米・カリブ海地域、東南アジアの37のLMICにおける人口動態・健康調査(DHS)の個人レベルのデータと、2000~19年の政府主導の現金給付プログラムの包括的なデータベースを統合し、プログラム導入前後で、プログラム実施国と非実施国を比較した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 現金給付プログラムが、妊産婦保健サービスの利用(3項目)、妊孕性・生殖に関する意思決定(5項目)、養育者の健康行動(3項目)、子供の健康・栄養状態(6項目)に関連する合計17項目のアウトカムに及ぼす影響を評価した。 研究対象の37ヵ国のうち、研究期間中に20ヵ国が大規模な現金給付プログラムを導入した。生児出生215万6,464人のデータと、5歳未満児95万4,202人のデータを解析の対象とした。子供の死亡率低下に4項目が直接関連 政府主導の大規模現金給付プログラムは、評価対象の17項目のうち次の12のアウトカムについて大幅な改善をもたらした。 早期妊婦健診(現金給付による絶対変化:5.0%ポイント、95%信頼区間[CI]:2.1~7.9、padjusted=0.0019)、施設分娩(同:7.3%ポイント、95%CI:3.2~11.3、同=0.0014)、有資格者による分娩介助(7.9%ポイント、3.2~12.6、0.0027)、希望妊娠(1.9%ポイント、0.5~3.2、0.014)、分娩間隔(2.5ヵ月、1.8~3.1、0.0017)、避妊ニーズの未充足(-10.3%ポイント、-15.2~-5.3、0.0006)、完全母乳育児(14.4%ポイント、13.3~15.5、0.0004)、最低限適切な食事(7.5%ポイント、5.5~9.5、0.0009)、麻疹ワクチン接種(5.3%ポイント、1.6~8.9、0.026)、男子双生児出生(男子生児出生1,000人当たり0.8人、0.3~1.4、0.023)、下痢性疾患(-6.4%ポイント、-11.7~-1.1、0.038)、低体重栄養状態(-2.0%ポイント、-3.6~-0.4、0.029)。 これらは、妊産婦保健サービスの利用、妊孕性・生殖に関する意思決定、養育者の健康行動、子供の健康・栄養状態に影響を及ぼし、施設分娩(補正後リスク比:0.89、95%CI:0.84~0.93)、有資格者による分娩介助(0.86、0.82~0.91)、分娩間隔(0.99/月の増加、0.99~0.99)、希望妊娠(0.88、0.81~0.96)の4項目は、その後の子供の生存率向上や死亡率低下に直接関連していた。早期妊婦健診(1.00、0.95~1.05)は死亡率とは関連しなかった。 一方、次の5項目には、現金給付プログラムによる統計学的に有意な改善を認めなかった。初産年齢(現金給付による絶対変化:1.6ヵ月、95%CI:-1.3~4.4、padjusted=0.48)、意図した妊娠(同:-0.2%ポイント、95%CI:-2.8~2.3、同=0.86)、主観的に小さい出生時サイズ(0.4%ポイント、-0.7~1.4、0.53)、やせ(-2.1%ポイント、-5.0~0.9、0.17)、低身長(4.3%ポイント、-0.2~8.7、0.10)。人口集団のカバー率が高いプログラムで優れた効果 主解析の結果は、多重比較法による補正後も頑健であった。また、サブグループ解析では、人口集団のカバー率が最も高い現金給付プログラムで最大の効果が観察された。 著者は、「現金給付と死亡率の因果経路における潜在的な役割を超えて、これらすべてのアウトカム自体が、きわめて重要な関心事である」「本研究は、LMICにおける主要な健康関連指標に関して、多数の国で実施された現金給付プログラムの集団全体への影響を包括的に評価した初の試みの1つである」「多くの国が現金給付プログラムの縮小または拡大を慎重に検討する中、これらの知見は、施策立案者が現金給付プログラムの健康面での恩恵を適切に判断するうえで有用と考えられる」としている。

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第271回 18.3兆円補正予算案、医療・介護1.4兆円を計上 病床削減基金と賃上げ支援を両立へ/政府

<先週の動き> 1.18.3兆円補正予算案、医療・介護1.4兆円を計上 病床削減基金と賃上げ支援を両立へ/政府 2.OTC類似薬を保険から外さず 選定療養型の負担上乗せを検討/厚労省 3.インフルエンザが記録的ペースで拡大、39都道府県で警報レベルに/厚労省 4.医師偏在是正へ、自由開業原則が転換点に 都市部抑制が本格化/政府 5.病院7割赤字・診療所も利益率半減の中、診療報酬改定の基本方針まとまる/厚労省 6.介護保険の負担見直し本格化 現役世代の保険料増に対応/厚労省 1.18.3兆円補正予算案、医療・介護1.4兆円を計上 病床削減基金と賃上げ支援を両立へ/政府政府は11月28日、2025年度補正予算案(一般会計18.3兆円)を閣議決定した。電気・ガス料金支援や食料品価格対策など物価高対応に加え、AI開発や造船業を含む成長投資、危機管理投資を盛り込んだ大型編成となった。歳入の6割超を国債追加発行で賄う一方、補正予算案は今後の国会審議で与野党の議論に付される。野党は「規模ありきで緊要性に疑問がある項目もある」とし、効果の精査を求める姿勢。厚生労働省関連では、総額約2.3兆円を計上し、その中心となる「医療・介護等支援パッケージ」には1兆3,649億円を充てる。医療現場では物価高と人件費上昇を背景に病院の67%超が赤字に陥っており、政府は緊急的な資金投入を行う。医療機関への支援では、病院に対し1床当たり計19.5万円(賃金分8.4万円・物価分11.1万円)を交付し、救急を担う病院には受入件数などに応じて500万円~2億円の加算を認める。無床診療所には1施設32万円、薬局・訪問看護にも相応の支援額を措置し、医療従事者の賃上げと光熱費上昇分の吸収を図る。介護分野では、介護職員1人当たり最大月1.9万円の「3階建て」賃上げ支援を半年分実施する。処遇改善加算を前提とした1万円に、生産性向上の取り組みで5千円、職場環境改善で4千円を積み増す仕組みで、慢性的な人材不足に対応する狙いとなっている。一方で、今回の補正予算案は「病床適正化」を強力に後押しする構造転換型の性格も持つ。人口減少に伴い全国で11万床超が不要になると見込まれるなか、政府は「病床数適正化緊急支援基金」(3,490億円)を新設し、1床削減当たり410万4千円、休床ベッドには205万2千円を支給する。応募が殺到した昨年度補正を踏まえ、今回はより広範な病院の撤退・統合を促す政策的メッセージが込められている。日本医師会は「補正は緊急の止血措置に過ぎず、本格的な根治治療は2026年度診療報酬改定」と強調するとともに、「医療機関の経営改善には、物価・賃金上昇を踏まえた恒常的な財源措置が不可欠」と訴えている。補正予算案は12月上旬に国会へ提出される予定で、与党は成立を急ぐ。一方で、野党は財源の国債依存や事業の妥当性を追及する構えで、賃上げ・病床再編など医療政策の方向性が国会審議で問われる見通し。 参考 1) 令和7年度厚生労働省補正予算案の主要施策集(厚労省) 2) 令和7年度文部科学省関係補正予算案(文科省) 3) 25年度補正予算案18.3兆円、政府決定 物価高対策や成長投資(日経新聞) 4) 補正予算案 総額18兆円余の規模や効果 今後の国会で議論へ(NHK) 5) 厚生労働省の今年度の補正予算案2.3兆円 医療機関や介護分野への賃上げ・物価高対策の「医療・介護等支援パッケージ」に約1.3兆円(TBS) 6) 令和7年度補正予算案が閣議決定されたことを受けて見解を公表(日本医師会) 7) 介護賃上げ最大月1.9万円 医療介護支援に1.3兆円 補正予算案(朝日新聞) 2.OTC類似薬を保険から外さず、選定療養型の負担上乗せを検討/厚労省厚生労働省は、11月27日に開催された「社会保障審議会 医療保険部会」において、市販薬と成分や効能が近い「OTC類似薬」の保険給付の在り方について、医療費適正化の一環として保険適用から外す方針を変更し、自己負担を上乗せとする方向を明らかにした。日本維新の会は自民党との連立政権合意書には、「薬剤の自己負担の見直しを2025年度中に制度設計する」と明記されていたため、維新側からは「保険適用から外すべき」との主張もあった。しかし、社会保障審議会・医療保険部会や患者団体ヒアリングでは、負担増による受診控えや治療中断への懸念が強く示され、11月27日の部会では「保険給付は維持しつつ、患者に特別の自己負担を上乗せする」案が厚労省から提示され、異論なく事実上了承された。追加負担の設計にあたっては、選定療養の仕組みを参考に、通常の1~3割負担に加え一定額を患者が負担するイメージが示されている。一方で、18歳以下、指定難病やがん・アレルギーなど長期的な薬物療法を要する患者、公費負担医療の対象者、入院患者などについては、特別負担を課さない、あるいは軽減する方向での配慮が必要との意見が相次いだ。低所得者への配慮と、現役世代の保険料負担抑制のバランスが論点となる。どの薬を特別負担の対象とするかも課題である。OTC類似薬といっても、有効成分が同じでも用量や効能・効果、剤形などが市販薬と異なる場合が多く、「単一成分で、用量・適応もほぼ一致し、市販薬で代替可能な医薬品」に絞るべきとの指摘が出ている。日本医師会からは、製造工程の違いによる効果の差や、個々の患者の病態に応じた代替可能性の検証が不可欠とされ、制度が複雑化して現場負担が過度に増えないよう、シンプルな設計を求める声も挙がった。同じ部会では、「効果が乏しいとのエビデンスがある医療」として、急性気道感染症の抗菌薬投与に加え、「神経障害性疼痛を除く腰痛症へのプレガバリン投与」を医療費適正化の重点として例示する案も提示された。高齢化と医療高度化で膨張する医療費のもと、OTC類似薬の特別負担導入と低価値医療の抑制を組み合わせ、保険財政の持続可能性を確保しつつ、必要な受診や治療をどう守るかが、今後の診療報酬改定・制度改革の大きな焦点となる。 参考 1) OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しの在り方について(厚労省) 2) OTC類似薬“保険給付維持 患者自己負担上乗せ検討”厚労省部会(NHK) 3) OTC類似薬、保険適用維持へ 患者負担の追加は検討 厚労省(朝日新聞) 4) OTC類似薬の保険給付維持、厚労省が軌道修正 患者に別途の負担求める方針に(CB news) 3.インフルエンザが記録的ペースで拡大、39都道府県で警報レベルに/厚労省全国でインフルエンザの流行が急拡大している。厚生労働省によると、11月17~23日の1週間に定点約3,000ヵ所から報告された患者数は19万6,895人で、1医療機関当たり51.12人と今季初めて50人を突破。前週比1.35倍と増勢が続き、現在の集計方式で最多を記録した昨年末(64.39人)に迫る水準となった。都道府県別では宮城県(89.42人)、福島県(86.71人)、岩手県(83.43人)など東北地方を中心に39都道府県で「警報レベル」の30人を超えた。愛知県で60.16人、東京都で51.69人、大阪府で38.01人など大都市圏でも増加している。学校などの休校や学級・学年閉鎖は8,817施設と前週比1.4倍に急増し、昨季比で約24倍と際立つ。流行の早期拡大により、ワクチン接種が十分に行き届く前に感染が広がった可能性が指摘されている。また、国立健康危機管理研究機構が、9月以降に解析したH3亜型からは、新たな「サブクレードK」が13検体中12検体で検出され、海外でも報告が増えている。ワクチンの有効性に大きな懸念は現時点で示されていないが、感染力がやや高い可能性があり、免疫のない層が一定数存在するとの見方がある。小児領域では、埼玉県・東京都などで入院児が増加し、小児病棟の逼迫例も報告される。インフルエンザ脳症など重症例も散見され、昨季と同様の医療逼迫が年末にかけ迫る可能性が指摘されている。専門家は、学校での換気や症状時のマスク着用、帰宅時の手洗い徹底に加え、ワクチン接種の早期検討を促している。新型コロナの感染者は減少傾向にあるが、インフルエンザの急拡大に備え、社会全体での感染対策と医療体制の確保が急務となっている。 参考 1) 2025年 11月28日 インフルエンザの発生状況について(厚労省) 2) インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移(同) 3) インフル全国で流行拡大、感染者は前週の1.35倍 新たな変異も(朝日新聞) 4) インフルエンザの患者数 1医療機関当たり 今季初の50人超え(NHK) 5) インフル感染19万人、2週連続で「警報レベル」 コロナは減少(産経新聞) 4.医師偏在是正へ、自由開業原則が転換点に 都市部抑制が本格化/政府政府は、深刻化する医師偏在を是正するため、医療法などを改正する法案を衆議院本会議で可決した。今国会中の成立が見込まれている。改正案では、都市部に集中する外来医師数を抑制し、医療資源の維持が難しい地域への医師誘導を強化する内容で、開業規制の導入は戦後初の本格的措置となる。背景には、2040年前後に85歳以上の高齢者人口が急増し、救急・在宅医療需要が著しく高まる一方、生産年齢人口は全国的に減少し、地域により医療提供体制の崩壊リスクが顕在化している構造的問題がある。改正案では、都道府県が「外来医師過多区域」を指定し、当該区域で新規開業を希望する医師に対し、救急・在宅などの不足機能への従事を要請できる仕組みを導入する。開業6ヵ月前の事前届出制を新設し、要請への不従事が続く場合は医療審議会で理由説明を求め、公表や勧告、保険医療機関指定期間の短縮(6年→3年)を可能とする強力な運用が盛り込まれた。一方、医師が不足する地域については「重点医師偏在対策支援区域」を創設し、診療所承継・開業支援、地域定着支援、派遣医師への手当増額など、経済的インセンティブを付与する。財源は健康保険者の拠出とし、現役世代の保険料負担の上昇が避けられない可能性も指摘されている。また、保険医療機関の管理者には、一定の保険診療経験(臨床研修2年+病院での保険診療3年)を要件化し、医療機関の質の担保を強化する。加えて、オンライン診療の法定化、電子カルテ情報共有サービスの全国導入、美容医療の届出義務化など、医療DXを基盤とした構造改革も並行して進める。今回の法改正は、「医師の自由開業原則」に制度的な調整を加える大きな転換点であり、診療所の新規開設や地域包括ケアとの連携、勤務環境整備に大きな影響を与えるとみられる。 参考 1) 医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について(厚労省) 2) 医師の偏在対策 医療法改正案が衆院本会議で可決 参院へ(NHK) 3) 医師偏在是正、衆院通過 開業抑制、DXを推進(共同通信) 5.病院7割赤字・診療所も利益率半減の中、診療報酬改定の基本方針まとまる/厚労省2026年度診療報酬改定に向け、厚労省は社会保障審議会医療部会を開き、令和8年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)を明らかにした。これに加えて、医療経済実態調査、日本医師会からの要望が出そろい、改定論議が最終局面に入った。骨子案は4つの視点を掲げ、このうち「物価や賃金、人手不足等への対応」を「重点課題」と位置付ける。物価高騰と2年連続5%超の春闘賃上げを背景に、医療分野だけ賃上げが遅れ、人材流出リスクが高まっているとの認識だ。一方で、24年度医療経済実態調査では、一般病院の損益率(平均値)は-7.3%、一般病院の約7割が赤字と報告された。診療所も黒字は維持しつつ損益率は悪化し、医療法人診療所の利益率は前年度のほぼ半分に低下している。急性期ほど材料費比率が高く、物価高と医薬品・診療材料費の上昇が経営を直撃している構図が鮮明になった。日本医師会の松本 吉郎会長は、26年度改定では「単年度の賃金・物価上昇分を確実に上乗せする」対応を現実的選択肢とし、基本診療料(初再診料・入院基本料)を中心に反映すべきと主張する。ベースアップ評価料は対象職種が限定されており、現場の賃上げに十分つながっていないとの問題意識だ。さらに、改定のない奇数年度にも賃金・物価動向を当初予算に自動反映する「実質・毎年改定」を提案し、物価スライド的な仕組みの恒常化を求めているが、財源にも制約があるため先行きは不明。厚生労働省が示した骨子案には、物価・賃金対応に加え、「2040年頃を見据えた機能分化と地域包括ケア」「安心・安全で質の高い医療」「効率化・適正化による制度の持続可能性」を並列して掲げる。後発品・バイオ後続品の使用促進、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し、費用対効果評価の活用など、負担増や給付適正化を通じた現役世代保険料抑制も明記されており、医療側が求める「救済一色」とはなっていない。医療部会では、病院団体から「過去2年分の賃上げの未達分も含めた上積み」や、医療DXとセットでの人員配置基準の柔軟化を求める声が上がる一方、保険者・経済界からは「視点1だけを重点課題とするのは違和感」「経営状況に応じたメリハリ配分を」との意見も出された。地域医療については、在宅医療・訪問看護や「治し支える医療」の評価、過疎地域の実情を踏まえた評価、かかりつけ医機能の強化などを通じ、2040年の高齢化ピークと医療人材不足に耐え得る体制構築をめざす。しかし、医療経済実態調査が示すように、一般病院も診療所もすでに利益率は薄く、「診療所の4割赤字から7割赤字の病院へ財源を振り替えても地域医療は守れない」とする日本医師会の主張も重くのしかかる。補正予算での物価・賃金対応は「大量出血に対する一時的な止血」に過ぎず、26年度本体改定でどこまで「根治療法」に踏み込めるかが焦点となる。この骨子案をもとにして、12月上旬に基本方針が正式決定され、年末の改定率、来年以降の中医協個別項目論議へと舞台は移る。医療機関の経営と人材確保に直結するため、次期改定に向けて「真水」の財源確保と、DX・タスクシフトを含む構造改革のバランスに注視する必要がある。 参考 1) 令和8年度診療報酬改定の基本方針 骨子案(厚労省) 2) 2026年度診療報酬改定「基本方針」策定論議が大詰め、「物価・人件費高騰に対応できる報酬体系」求める声も-社保審・医療部会(Gem Med) 3) 医療人材確保が困難さを増す中「多くの医療機関を対象にDX化による業務効率化を支援する」枠組みを整備-社保審・医療部会(同) 4) 日医・松本会長 26年度改定で賃金物価は単年度分上乗せが「現実的」 27年度分は大臣折衝で明確化を(ミクスオンライン) 5) 厚労省・24年度医療経済実態調査 医業費用の増加顕著 急性期機能高いほど材料費等の上昇が経営を圧迫(同) 6) 24年度の一般病院の損益率は▲7.3%、一般診療所は損益率が悪化-医療経済実態調査(日本医事新報) 6.介護保険の負担見直し本格化 現役世代の保険料増に対応/厚労省高齢化による介護給付費の増大を背景に、厚生労働省は介護保険サービス利用時に「2割負担」となる対象者の拡大を本格的に検討している。介護保険は、現在、原則1割負担で、単身年収280万円以上が2割、340万円以上が3割負担とされているが、所得基準を280万円から230~260万円へ引き下げる複数案が示され、拡大対象者は最大33万人に達する。介護保険の制度改正によって、年間で40~120億円の介護保険料の圧縮効果が見込まれ、財政面では国費20~60億円、給付費80~240億円の削減に寄与するとされる。現役世代の保険料負担が増す中で、所得や資産のある高齢者に応分の負担を求める狙いがある。一方、新たに2割負担となる利用者では、1割負担時に比べ最大月2万2,200円の負担増が生じるため、厚労省は急激な負担増を避ける「激変緩和策」として、当面は増額分を月7,000円までに抑える案を提示。預貯金額が一定額以下の利用者(単身300~700万円、または500万円以下など複数案)については申請により1割負担を据え置く仕組みも検討されている。資産要件の把握には、特別養護老人ホームの補足給付で用いられている金融機関照会の仕組みを参考に、自治体が認定証を交付する方式が想定されている。介護保険の自己負担率引き上げは、2015年の2割導入、2018年の3割導入以降も議論が続いてきたが、高齢者の負担増への反発で3度先送りされてきた。政府は、2025年末までに結論を出す方針を示し、現役世代の急速な負担増への対応は喫緊の課題となっている。26年度からは少子化対策による医療保険料上乗せも始まり、改革の遅れは賃上げ効果を相殺し国民負担をさらに押し上げる懸念が指摘される。今回の試算と緩和策の提示により、年末の社会保障審議会での議論が加速するとみられる。 参考 1) 介護保険料40~120億円圧縮 2割負担拡大巡り厚労省4案(日経新聞) 2) 介護保険料120億円減も 2割負担拡大で厚労省試算(共同通信) 3) 介護保険サービス自己負担引き上げで増額の上限を検討 厚労省(NHK)

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英語で「血尿」ってどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第40回

医学用語紹介:血尿 hematuria今回は「血尿」について説明します。医療現場ではhematuriaという専門用語が使われますが、患者さんとの会話ではどのような一般的な英語表現を使えばよいでしょうか?講師紹介

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子宮体がん再発後も妊孕性温存に挑戦~GL改訂も視野にクラウドファンディング実施/婦人科悪性腫瘍研究機構

 婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)の子宮体がん委員会副委員長や『子宮体がん治療ガイドライン 2023年版』の作成委員を務める山上 亘氏(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 教授)は、「子宮体癌/子宮内膜異型増殖症に対する任孕性温存治療後の子宮内再発に対する反復高用量黄体ホルモン療法に関する第II相試験」を継続するため、2025年10月16日よりクラウドファンディングを実施。第一目標金額680万円、第二目標金額980万円を達成し、現在、追加支援を募集している。一刻も早く、妊孕性温存希望者の子宮全摘回避を 『子宮体がん治療ガイドライン 2023年版』第6章のCQ29「妊孕性温存療法施行時に病変遺残がある、あるいは妊孕性温存療法後の子宮内再発に対して、保存的治療は勧められるか?」において、子宮内再発で妊孕性温存を強く希望する患者には、厳重な管理のもとに再度の黄体ホルモン療法(MPA療法)を提案することが示されている(推奨の強さ:2、エビデンスレベル:C)。しかし、本来再発例には子宮全摘出術を勧め、保存的治療を行わないことが推奨されているため、妊孕性温存を強く希望する患者であっても、子宮摘出されている例が全国的に散見されるという。そこで、山上氏らはこの状況を食い止めるため黄体ホルモン療法のエビデンス創出を目指し、再発後の子宮体がん・異型子宮内膜増殖症に対する再度の黄体ホルモン療法の有効性と安全性を検証する多施設前向き臨床試験(JGOG2051/KGOG2031)をスタートさせた。全国81施設および韓国・Korean Gynecologic Oncology Group(KGOG)協力のもと、2024年12月までに国内外から目標症例数115例の集積が完了している。 あとは経過観察、統計解析を残すところまできた本研究だが、ここに来て公的資金による継続的支援が困難となり、試験中止を余儀なくされている状況である。今後、ガイドラインに本試験結果を反映して若年者の子宮全摘出を回避する推奨を創出するためには、試験結果の論文化に向けてデータ解析をする必要があるため、追加の支援募集を始めた。これについて山上氏は、「本研究結果で再度のMPA療法の有効性が認められれば、安心して患者さんに治療選択肢を提案できるようになる。再発後も妊孕性温存を諦めないための新しい治療選択肢を確立していきたい」とし、「皆さまのお力をお借りして、本臨床試験により子宮体がん妊孕性温存療法の限界を見極めていきたい。その成果を患者さんに届け、1人でも多くの妊娠の希望を叶えたいと考える」と思いを述べた。【プロジェクト概要】・目標金額:第一目標680万円、第二目標980万円、現在追加支援募集中・募集期間:12月14日(日)午後11時まで・プロジェクトの目的:再発後の子宮体がん・子宮内膜異型増殖症に対する再度の黄体ホルモン療法の有効性と安全性を検証し、妊孕性温存希望患者への保存的治療を早期に普及させる・寄付金の使徒:データセンター費用、論文化に向けたデータ解析費用、成果発信のための国内外学会発表、論文化費用など

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急増するナッツ類アレルギー、近年はより少ない量で発症の傾向/国立成育医療研究センター

 近年、日本では木の実(ナッツ類)アレルギーの有病率が急速に増加しており、とくに、クルミアレルギーの有病率は2014年と比較して4倍以上増加し、比較的安定しているピーナッツを上回ったという。現在、ナッツ類は日本において卵に続いて2番目に多い食物アレルギーの原因となっている1)。 国立成育医療研究センターの久保田 仁美氏らの研究チームは、日本における直近10年間に発生したナッツ類アレルギー症例の調査結果から、近年ではより少ない摂取量でアレルギー症状が出ることが判明したことを報告した。同センターは2025年11月17日にプレスリリースを出し、同内容はThe Journal of Allergy and Clinical Immunology誌2026年1月号にも掲載された。 研究者らは、2013~23年の10年間に同センターの患者に対して行った1,275件のピーナッツ、カシューナッツ、クルミの経口負荷試験データを用いて、ナッツ類それぞれのED05値(アレルギー患者集団のうち、5%の人でアレルギー症状が引き起こされる量)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・2013~23年全期間のED05値は、ピーナッツ4.88mg、カシューナッツ0.53mg、クルミ4.37mgだった。・2013~19年と2020~23年のED05値を比較したところ、クルミは2019年以前は14.94mgだったが、2020年以降は3.26mgに大幅に減少しており、以前より少ない摂取量でアレルギーが引き起こされることがわかった。ピーナッツとカシューナッツは有意差は認められなかったものの、同様に減少傾向がみられた(ピーナッツ:8.87mg→4.12mg、カシューナッツ:4.29mg→0.66mg)。 研究チームは「ED05値の変化は、日本におけるクルミアレルギー患者の増加や、重症化などの変化が影響している可能性がある。食習慣がグローバル化する中で日本国内における食物アレルギーの原因食物も変化している。今回の調査で、ナッツ類のED05値は欧米で報告される値に近づきつつあり、食物アレルギーのリスク評価を定期的に見直す重要性が改めて認識された」としている。

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胎児期~2歳の砂糖制限と成人期の心血管リスクの低減効果:「自然実験」研究を批判的に吟味する!(解説:島田俊夫氏)

【背景・目的】 妊娠から2歳まで(生後1,000日間)の栄養状態は、生涯の心臓代謝システムを形成するきわめて重要な時期(胎児期の疾患起源説/DOHaD)です1-3)。中国・香港科技大学のJiazhen Zheng氏らの研究(BMJ誌2025年10月22日号に掲載)は、第二次世界大戦後の英国における砂糖配給制度(2歳未満の乳児に添加糖なし)を「自然実験」として利用し、この幼少期の砂糖制限が成人期の心血管疾患(CVD)リスクを低減することが可能か検証しています。・CVDリスク低減(量反応関係):砂糖制限への曝露期間が長いほどCVDリスクは段階的に減少し、最長曝露群(胎内+1~2年)ではCVD全体で20%、脳卒中で31%のリスク低減が確認され、CVD発症年齢は約2.53年遅延した。・メカニズム:リスク低減は糖尿病や高血圧(約31.1%)以外に、胎児期・乳幼児期の心臓代謝システムのプログラミングによる影響が重要であることを示唆した。・心機能指標:心臓MRIにより、左室駆出率(LVEF)がわずかだが“統計的に有意に高い(0.84%増)”ことが集団として検出された。―――――――――――――――――――【コメント】 本研究は、幼少期の砂糖制限が成人期の心臓の健康に長期的な利益をもたらす公衆衛生学的に重要な知見を示しました。 LVEFの0.84%という差は、測定誤差範囲内に近く、個々の患者の治療方針に影響する臨床的意義は乏しいと考えます。しかし、この結果は初期のプログラミングが集団レベルで弱いながら継続して影響を与えたことは意義深いと考えます。 研究の限界:胎児期・乳幼児期以降(青年期~老年期)の砂糖摂取情報がほぼブラックボックス状態であり、胎児期、乳幼児期以後のライフスタイルによる影響については、さらなる検討が必要。―――――――――――――――――――プライマリケアへの提言 本研究の教訓は「人生の最初の1,000日間に着目した、費用対効果の高い予防介入」の重要性です。明確なCVDイベント低減に基づき、以下の点を助言します。1. 妊娠期の助言:妊婦に対し、胎児の心臓代謝システムへの影響を考慮し、妊娠初期からの糖質制限を助言する。2. 乳幼児期(0~2歳)の徹底:添加糖の制限(ゼロ)が、将来のCVDリスクを減らす予防策の1つになることを保護者に伝え、理解を促す。3. 全世代への継続指導:青年期以降のデータが欠落しているからこそ、初期の予防努力を維持するため、生涯にわたる砂糖摂取量の適正化指導の継続の必要性を伝えることで生活習慣病の抑制につながる可能性に期待が持てる。 青年期、老年期の糖質制限情報の欠落を埋める努力が、結果の信頼性を強固にするために必要不可欠です。

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ポンペ病〔Pompe Disease〕

1 疾患概要■ 定義ポンペ病(糖原病II型)は、グリコーゲンを分解するライソゾーム酵素である酸性アルファグルコシダーゼ活性の欠損または低下によるライソゾーム病である。疾患遺伝子はGAA、遺伝形式は常染色体潜性である。ポンペ病は、「乳児型」と「遅発型」に分類され、乳児型では乳児期早期にフロッピーインファント、肥大型心筋症、呼吸不全を発症し、遅発型では幼児期以降に肢帯筋優位の筋力低下や呼吸筋の筋力低下を発症する。■ 疫学ポンペ病の発生頻度は、およそ4万人に1人と推測され、約25%が乳児型であるとされる。■ 病因GAA遺伝子の両アレル性病的バリアントにより酸性アルファグルコシダーゼが欠損または低下し、組織のライソゾーム内に分解されないグリコーゲンが蓄積し、主に心筋や骨格筋が罹患する。オートファジーの機能不全も病態に関与することが明らかにされている。■ 症状乳児型では乳児期早期にフロッピーインファント、筋力低下、肥大型心筋症、呼吸不全を発症し、進行する。肝腫大、巨舌も出現する。遅発型では発症時期は小児期から成人期までさまざまであり、肢帯筋優位の筋力低下や呼吸筋筋力低下を発症し、緩徐に進行し、歩行障害や呼吸不全を来す。鼻声、翼状肩甲、傍脊柱筋萎縮を認めることが多い。ポンペ病の症状は、多器官に及んでいることが明らかになってきており、Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群などの不整脈、脳血管障害、聴力障害、胃腸症状などを来すこともある。■ 分類酸性アルファグルコシダーゼ活性の完全欠損による乳児型と活性低下(部分欠損)による遅発型に分類される。遅発型には小児型、若年型、成人型が含まれる。■ 予後乳児型ポンペ病では、生後2ヵ月~数ヵ月に、哺乳力低下、全身の筋力低下、運動発達の遅れ、体重増加不良、心不全症状などを発症し、自然経過では、多くは1歳頃までに死亡する。酵素補充療法により生命予後が改善され、人工呼吸管理を必要とするリスクが減少している。遅発型ポンペ病の自然経過では、1歳以降に、歩行障害、運動時易疲労が出現し、運動機能障害、呼吸不全が進行し、車椅子や人工呼吸管理が必要となる。酵素補充療法により呼吸機能の悪化が抑制され、運動機能が改善されている。2 診断■ 検査所見1)乳児型ポンペ病血液検査血清CK高値(5,000IU/L程度)AST、ALT高値、BNP高値胸部X線&nbsp心拡大心電図 P波振幅増大、PR間隔短縮、QRS高電位心臓超音波検査心筋肥厚、左室駆出率低下生検筋病理所見&nbsp:生検筋病理所見ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色、多数の空胞PAS染色→空胞内PAS染色陽性物質の蓄積(グリコーゲン蓄積を示す)酸ホスファターゼ染色陽性2)遅発型ポンペ病血液検査血清CK高値骨格筋CT小児型では大腿部筋の高吸収域、成人型では低吸収または筋萎縮筋電図 筋原性変化、しばしばミオトニー放電が出現呼吸機能検査肺活量と努力肺活量の低下生検筋病理所見特徴的な所見は顕著ではない。■ 確定診断酸性アルファグルコシダーゼ活性低下またはGAA遺伝子に両アレル性の病的バリアントを認めた場合に診断確定とする。酸性アルファグルコシダーゼ活性は濾紙血、リンパ球、生検筋組織などを用いて測定される。酸性アルファグルコシダーゼ活性が低下するがポンペ病を発症しない偽欠損となるバリアントc.1726G>A(p.Gly576Ser)が存在するため診断の際に注意を要する。■ 鑑別疾患乳児型ポンペ病の鑑別すべき疾患には脊髄性筋萎縮症、先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、ミトコンドリア病などがある。遅発型ポンペ病では、肢帯型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、多発性筋炎などが挙げられる。他の筋疾患と比較し、遅発型ポンペ病では、歩行可能な時期に先行し、呼吸不全が出現することが特徴的とされる。3 治療■ 酵素補充療法ポンペ病に対し、2007年からヒト酸性アルファグルコシダーゼの遺伝子組み換え酵素製剤であるアルグルコシダーゼアルファ(商品名:マイオザイム)、2021年からアバルグルコシダーゼアルファ(同:ネクスビアザイム)による酵素補充療法が行われている。酵素はマンノース-6-リン酸(M6P)受容体を介し細胞内に取り込まれるが、アバルグルコシダーゼアルファは、横隔膜や骨格筋などへの酵素製剤の取り込みを増大させるため、酸化シアル酸残基にM6Pを結合させた改良型酵素製剤である。2025年からは遅発型ポンペ病に対し、高レベルのM6PやビスーM6P N-グリカンを結合させた酵素製剤シパグルコシダーゼアルファ(同:ポムビリティ)とポンペ病治療酵素安定化剤(シャペロン療法)としてミグルスタット(同:オプフォルダ)を併用する治療も行われるようになった。酵素製剤はいずれも2週間に1回静脈投与を行う。■ 呼吸機能の管理と治療ポンペ病の呼吸機能は、肋間筋や横隔膜の筋力低下を反映し、仰臥位の機能は座位に比し低下するので呼吸理学療法を行う。呼吸不全が進行した場合、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)または侵襲的陽圧換気療法(IPPV)を行う。遅発型ポンペ病では、歩行可能な時期に先行し呼吸不全が出現するため、呼吸機能を定期的に評価する。■ 心機能・不整脈の管理と治療乳児型では生後早期から心肥大が出現することが多い。酵素補充療法は、心肥大を改善させる。ポンペ病ではWPW症候群などの不整脈が高率に出現するため、不整脈に対する薬物療法やカテーテルアブレーションを必要とする症例がある。■ 脊柱側弯症の管理と治療脊柱側弯症に対し外科手術を行う。■ 理学療法関節の変形・拘縮予防のため、理学療法士の介入や、補装具を導入する。最大運動強度の60~70%までの有酸素運動が推奨されている。4 今後の展望(治験中・研究中の診断法や治療薬剤など)ポンペ病の新生児スクリーニング検査が広く実施されるようになっている。とくに乳児型ポンペ病においては、早期治療開始が重要であり、米国でもRUSP(Recommendation Uniform Screening Panel)により新生児スクリーニングを実施する疾患として推奨されている。2025年時点では、公費助成がある自治体は少ないが、今後さらに広がることが期待されている。ポンペ病に対する遺伝子治療の開発は、海外の臨床治験として肝臓を標的としたAAV8-GAAの静脈内投与が遅発型ポンペ病に対して実施され、心筋、骨格筋、中枢神経を標的としたAAV-9-GAAの静脈内投与が乳児型ポンペ病に対して実施された。遺伝子治療の臨床現場への導入が期待されている。5 主たる診療科・紹介すべき診療科主たる診療科:小児科(小児神経、小児循環器)、脳神経内科(運動機能、脳血管障害、白質病変)紹介すべき診療科:リハビリテーション科、循環器内科、呼吸器内科、脳外科(脳血管障害)、耳鼻咽喉科(難聴)、整形外科(脊柱側弯症)、産科(母胎管理)、遺伝子診療科など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター ポンペ病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ライソゾーム病中のポンペ病 (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)ライソゾーム病、ペルオキシゾーム病(副腎白質ジストロフィーを含む)における早期診断・早期治療を可能とする診療提供体制の確立に関する研究 (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)日本先天代謝異常学会 編集. ポンペ病診療ガイドライン2018. 診断と治療社.2018.2)Ditters IAM, et al. Lancet Child Adolesc Health. 2022;6:28-37.3)Sawada T, et al. Orphanet J Rare Dis. 2021;16:516.公開履歴初回2025年11月20日

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アナフィラキシー、日本の小児で急増している原因食物は

 2010年代後半以降、日本におけるクルミによるアナフィラキシーの発生率は急速に増加しており、とくに初回発症の幼児で顕著であることが明らかになった。世界的にクルミアレルギーの有病率が増加しているものの、クルミによるアナフィラキシーの発生動向や臨床的特徴については明らかになっていない。町田市民病院のYuna Iwashita氏らは、2011年から11年間の日本国内の小児救急外来におけるクルミによるアナフィラキシーの発生率の変化を評価し、患者の特性および症状について検討した。Pediatric Allergy and Immunology誌11月号掲載の報告。 本後ろ向き研究では、2011~21年に、日本国内の3施設の小児救急外来を受診した食物によるアナフィラキシー患者を対象とした。11年間における各原因食物の割合の変化は、コクラン・アーミテージ傾向検定を用いて評価した。患者背景および詳細な症状については、クルミによるアナフィラキシー患者(クルミ群)とその他の食物によるアナフィラキシー患者(他の食物群)で比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・食物によるアナフィラキシーで救急外来を受診した患者は計904例であった。・原因食物の内訳では、クルミによるアナフィラキシーの割合が2011年の3.2%から2021年の26.1%へと増加した(p<0.0001)。・その他の食物では有意な変化は認められなかった。・クルミ群80例と他の食物群824例を比較すると、年齢の中央値は両群とも3.9歳であった(p=0.42)。・原因食物に対するアレルギーの既往診断を受けていた患者の割合は、クルミ群では28.8%と、他の食物群の47.4%よりも低かった(p=0.006)。・消化器症状は、他の食物群(55.9%)と比較してクルミ群(72.5%)でより多く認められた(p=0.004)。

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1型糖尿病の高リスク乳児、経口インスリンの1次予防効果は?/Lancet

 膵島関連自己抗体発現リスクが高い乳児において、ヒト亜鉛インスリン結晶から製造された経口インスリンの高用量投与はプラセボと比較し、膵島関連自己抗体の発現を予防しなかった。ドイツ・Helmholtz MunichのAnette-Gabriele Ziegler氏らが、Global Platform for the Prevention of Autoimmune Diabetes(GPPAD)の7施設(ドイツ3施設、ポーランド・スウェーデン・ベルギー・英国各1施設)で実施した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Primary Oral Insulin Trial:POInT試験」の結果を報告した。1型糖尿病はインスリンを含む膵島抗原に対する自己免疫反応により発症するが、膵島関連自己抗体や疾患症状発現前の自己免疫反応予防を目的とした経口自己抗原免疫療法の有効性を評価する臨床試験は行われていなかった。Lancet誌オンライン版2025年11月11日号掲載の報告。主要アウトカムは、膵島関連自己抗体発現(2種類以上)または糖尿病発症 研究グループは、GPPAD遺伝子スクリーニングプログラムにより6歳までに2種類以上の膵島関連自己抗体発現リスクが10%超の、離乳食を開始している生後4~7ヵ月の乳児を特定し、経口インスリン群またはプラセボ群に、1対1の割合で、施設で層別化して無作為に割り付けた。すべての参加者とその家族、研究者、検査室スタッフは、研究期間中割り付けを盲検化された。 参加者には経口インスリンまたはプラセボが1日1回、7.5mgを2ヵ月間、その後22.5mgを2ヵ月間、その後67.5mgを3歳時まで投与し、ベースライン、投与開始後2ヵ月時、4ヵ月時、8ヵ月時、生後18ヵ月時、その後2024年6月28日の最終外来受診日まで6ヵ月ごとに検査を実施した。 主要アウトカムは、2種類以上の膵島関連自己抗体(IAA、GADA、IA-2A、ZnT8A)の発現(2つの中央検査施設において2回連続で陽性および少なくとも1検体で2種類目の自己抗体が確認された場合に陽性と定義)または糖尿病発症とした。副次アウトカムは、糖代謝異常または糖尿病発症であった。 適格基準を満たし割り付けられた全参加者のうち、ベースラインで主要アウトカムの要件を満たさなかった参加者を主要解析の対象とした。試験薬を少なくとも1回投与された参加者を安全性解析に含めた。経口インスリン群とプラセボ群で主要アウトカムの有意差なし 2017年7月24日~2021年2月2日に乳児24万1,977例がスクリーニング検査を受け、2,750例(1.14%)で膵島関連自己抗体発現リスクの上昇がみられ、このうち適格基準を満たした1,050例(38.2%)が2018年2月7日~2021年3月24日に無作為化された(経口インスリン群528例、プラセボ群522例)。年齢中央値6.0ヵ月(範囲:4.0~7.0)、男児531例(51%)、女児519例(49%)であった。 経口インスリン群で2例(1型糖尿病の家族歴に関する情報の誤り1例、ベースラインで2種類以上の膵島関連自己抗体を保有していた1例)が除外され、主要解析対象集団は経口インスリン群526例、プラセボ群522例であった。 主要アウトカムのイベントは経口インスリン群で52例(10%)、プラセボ群で46例(9%)に発現した。ハザード比(HR)は1.12(95%信頼区間[CI]:0.76~1.67)で両群間に有意差は認められなかった(p=0.57)。 事前に規定されたサブ解析の結果、主要アウトカムおよび副次アウトカムに関して治療とINS rs1004446遺伝子型の相互作用が認められた。非感受性INS遺伝子型を保有する経口インスリン群の参加者はプラセボ群と比較して、主要アウトカムのイベントが増加し(HR:2.10、95%CI:1.08~4.09)、感受性INS遺伝子型を保有する経口インスリン群の参加者はプラセボ群と比較して、糖尿病または糖代謝異常の発症が低下した(HR:0.38、95%CI:0.17~0.86)。 安全性については、血糖値50mg/dL未満は、インスリン群で7,210検体中2件(0.03%)、プラセボ群で7,070検体中6件(0.08%)に観察された。有害事象は、インスリン群で96.0%(507/528例)に5,076件、プラセボ群で95.8%(500/522例)に5,176件発現した。インスリン群で死亡が1例認められたが、独立評価により試験薬との関連はなしと判定された。

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小児の急性陰嚢症【すぐに使える小児診療のヒント】第8回

小児の急性陰嚢症腹痛を訴えて受診する男児の中には、急性陰嚢症が隠れている可能性があります。発症頻度は高くありませんが、診断や治療の遅れにより精巣機能を失うと将来の精神的・肉体的・妊孕性に及ぼす影響は非常に大きいため、適切な対応が求められます。症例9歳、男児。起床時からの下腹部痛と嘔吐を主訴に受診した。下痢はない。児は「吐きそう、お腹が痛い」と訴えるのみで、陰嚢の症状は問われなければ言及しなかった。診察時に左陰嚢の発赤・腫脹・圧痛を認めた。左陰嚢は挙上し横位で、精巣挙筋反射は消失していた。症状や超音波検査から精巣捻転症が強く疑われ、緊急で外科的介入が行われた。急性陰嚢症は、急性発症の陰嚢の疼痛や腫脹を主訴とする病態の総称であり、精巣捻転症、付属小体捻転症、急性精巣上体炎をはじめ多くの鑑別疾患が挙がります。原因として最も注意すべき精巣捻転症を中心にまとめてみましょう。精巣捻転症精巣捻転症は、急性陰嚢症の中でもとくに診断・治療が遅れると精巣壊死・精巣機能消失に陥る可能性のある緊急疾患です。病因として重要なのは、解剖学的な精巣の懸垂異常(suspension anomaly)です。精巣鞘膜が通常より高い位置で精索に付着していると、精巣が鞘膜腔内でぶら下がっている状態が釣り鐘のように見えるbell-clapper deformityと呼ばれる状態となり、捻転しやすくなります。左:正常、右:鞘膜腔の異常拡大(bell-clapper deformity)思春期にはアンドロゲンによって精巣容積が思春期前の5~6倍に急激に増加するため、より捻転が生じやすくなるとされています。発症は夜間や早朝に多く、寒冷刺激が誘引となるという説もあります。左右で比較すると左側に多く発症すると言われ、これは左側の精索が右側に比べて長いことが関係しているとされています。精巣温存には、発症から6時間(少なくとも12時間)以内の整復が望まれます。特徴的な症状としては、腹腔神経節が刺激されることによる悪心・嘔吐が26~69%に伴います。画像を拡大する診断のポイント「腹痛」「嘔吐」の症例も陰嚢をチェック!症状が「いつから」を明確に!精巣血流の有無だけで判断してはいけない!強く疑われる場合にはためらわず泌尿器科医に相談を!問診突然の発症か? 徐々に増悪してきたか? 朝方か日中か? 痛みが先か腫れが先か? など詳しく聴取しましょう。不完全捻転や捻転の自然解除を繰り返していることがあるため、これまでに同様のエピソードがないかも確認しておきます。また、精巣温存には6時間以内の介入が望ましいとされており、発症がいつなのかはカギになるため、はっきりさせておくことも重要です。診察精巣捻転症は「思春期の男子が陰嚢痛で受診する」と認識されがちですが、前述のとおり腹痛・悪心・嘔吐など非特異的な症状で始まることも少なくなく、初診時に陰嚢痛を訴えない例も多くみられます。とくに小児では「恥ずかしい」「うまく説明できない」ことがあり、医療者が意識的に陰嚢を診なければ見逃されることがあるので注意が必要です。腹痛や嘔吐を主訴に受診したとしても、陰嚢を確認する習慣をつけましょう。診察の手順としては、まず視診、精巣挙筋反射の確認、陰嚢皮膚および内容物の触診の順で行うのが良いとされています。1.視診まず、陰皮膚の色調、腫脹の有無、精巣の位置を確認します。皮膚の所見として、陰嚢の発赤・腫脹は精巣捻転症、付属小体捻転症、急性精巣上体炎のそれぞれにおいて起こり得る所見であり、鑑別に有用ではありません。しかし、発症から12~24時間経過していても陰嚢皮膚が比較的正常である場合には精巣捻転症である確率は低いと言えます。後述しますが、付属小体捻転症の特徴的皮膚所見として、梗塞を起こした精巣付属小体が皮膚を通して青黒い点(blue dot sign)として認める場合もあります。また、位置も重要です。一般的には左精巣は右に比べてやや低位に存在しますが、「横位・挙上」は精巣捻転症の診断において感度83%、特異度90%とともに良好であることが知られています。2.精巣挙筋反射精巣捻転症においては、精巣挙筋反射(大腿内側を刺激すると精巣が上昇する反射)は90~100%欠如するため有用です。精巣挙筋反射が同定されれば精巣捻転は否定的ですが、精巣挙筋反射が消失しているからと言って精巣捻転とは言い切れず、その他の鑑別が必要であることには注意が必要です。3.触診精巣の触診は、親指と人差し指、中指で愛護的に行います。腫脹、疼痛の有無や部位、拳上の有無、方向などを確認します。精巣上体についても腫脹、疼痛、位置を確認しましょう。TWIST(Testicular Workup for Ischemia and Suspected Torsion)スコアは身体所見と病歴のみで精巣捻転症らしさを予測できるという点が魅力です。5点以上なら精巣捻転症を強く疑い、逆に2点以下なら精巣捻転症の可能性は低いと判断されます。これのみで診断することは推奨されませんが、補助的な評価として非常に有用であると考えられます。冒頭の症例は、TWISTスコア7点と高値で、症状のみでもいかに精巣捻転症らしいかを物語っています。超音波検査精巣捻転症の最も有用な検査は超音波検査です。精索から精巣・精巣上体へのつながりを観察して、捻転部の精索がcoilingする、いわゆるwhirlpool signの有無を検索することが最も重要です。カラードプラ超音波検査で精巣血流の有無を評価することも多いですが、血流の温存された精巣捻転症も存在するため、精巣血流の有無だけで判断してはいけません(感度63~90%)。精巣上体の血流が亢進している場合においては、精巣上体炎などが疑わしく、精巣捻転は否定的です。診察時の説明と心理的配慮患者の多くは思春期であり、プライバシーへの配慮は不可欠です。診察室のドアやカーテンを閉め、バスタオルなどを準備しておくといった環境づくりを心がけましょう。保護者が同席している場合も、本人の気持ちを尊重する必要があります。腹痛のみを訴えて受診した患者に対して下着の中を確認するのは、医療者にとっても心理的ハードルが高い場面かもしれません。その際には、診察の意図を率直に伝えることが大切です。「とても大事なことなので、見逃したくないと思っていること」「早い段階では本人も気がついていないことがあること」の説明を添え、本人や保護者の理解を得てから診察を行う姿勢が望まれます。精巣温存のためには、早期診断・早期治療が何より重要です。その実現には、発症直後に受診してもらうための社会的啓発も欠かせません。近年では、学校教育における男子生徒や保護者への啓発、SNSを通じた情報発信も行われつつあります。適切な危機感と正しい知識が広まり、安心して受診できる環境が整うことを願います。今回は、いつも穏やかでいるように心掛けている小児科医たちでもピリッと緊張感が走る疾患の1つである急性陰嚢症についてお話しました。寒さも深まる今日このごろですが、暖かくしてお過ごしください。ひとことメモ:中心となる鑑別疾患■付属小体捻転症精巣垂(ミュラー管由来)や精巣上体垂(ウォルフ管由来)などの付属小体が捻転するもので、学童期や思春期に好発します。長さは1~8mm程度で有茎性のものが捻転を起こしやすく、90%が精巣垂、10%が精巣上体垂の捻転と報告されています。特徴的な皮膚所見として、10~32%でblue dot signとして観察されることがあり、同定された場合には非常に特異度の高い所見であるとされています。思春期に起きやすい理由としては、エストロゲン分泌が亢進してミュラー管由来である精巣垂が増大することなどが挙げられます。付属小体捻転症であれば原則手術の必要はなく、鎮痛薬での対応が可能です。捻転した付属小体が虚血性に壊死すれば症状は消失しますが、数週間以上かかる場合もあり、疼痛や不快感が長期に続く場合には付属小体の外科的切除を行うこともあります。■急性精巣上体炎一般的には尿路からの感染が、射精管から精管を経由して精巣上体に達し発症します。細菌性尿路感染のほかに、無菌尿の射精管への逆流による化学的刺激、ウイルス感染、外傷などの関与が指摘されています。最近の研究では、膿尿や尿培養陽性率は0~4.1%と非常に低いと言われており、検尿異常を認めないものの大半は全身のウイルス感染が先行した後の炎症性変化と考えられています。細菌性尿路感染が原因となっているものでは、乳児ではE.coliやE.faecalisなど、性活動期以降になると淋菌やクラミジアなどが起因菌となることが多く、それらを念頭に置いて治療内容を選択します。ただし繰り返す場合には、異所性尿管、尿道狭窄、後部尿道弁、膀胱尿管逆流、神経因性膀胱などの泌尿生殖器の器質的・機能的異常がないか立ち返って確認することが重要となります。参考資料 1) 急性陰嚢症診療ガイドライン2014年版 2) Pogorelic Z, et al. J Pediatr Urol. 2013;9:793-797. 3) Takeshita H, et al. Int J Urol. 2022;29:42-48. 4) Choudhury P, et al. Pediatr Surg Int. 2023;39:137.

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