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ステロイド外用薬を「短期使用薬」とするのは誤認、OTC薬給付見直しで声明/日本皮膚科学会ほか

 日本皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会、日本アレルギー友の会は2026年9月3日、3団体共同で「OTC類似薬の保険給付見直し案に関する共同声明」を発表した。声明はステロイド外用薬を「急性増悪時の短期使用薬」とするのは誤認と指摘するなど、全9項目からなる。 「OTC類似薬の保険給付見直し案に関する共同声明」は以下のとおり。1. 声明の趣旨 政府が検討を進める「OTC類似薬の保険給付見直し案」について、皮膚科医療の専門性および患者の生活実態の観点から重大な懸念があるため、3団体は共同して本声明を公表する。 本見直し案は、単なる薬剤費負担の問題ではなく、我が国の皮膚科診療のあり方そのものに影響する制度であり、国民の健康に直結する重大な課題である。2. 制度趣旨との齟齬 見直し案には、アトピー性皮膚炎をはじめとする重症・慢性疾患が多数含まれている。これは「軽症疾患の自己治療を促す」という制度趣旨と整合せず、なし崩し的な対象拡大である。3 .医学的誤認に基づく制度設計 皮膚科治療の根幹であるステロイド外用薬が「急性増悪時の短期使用薬」と誤認されている。 診療ガイドラインは、寛解維持のための計画的外用を推奨しており、外用薬は「塗り薬」ではなく皮膚バリア治療という医療行為である。 医学的誤認に基づく負担増は、制度として成立しない。4. 皮膚科医療の基盤への影響 負担増により標準治療の継続が困難となれば、再燃・重症化が増加し、受診抑制・自己判断・誤用・経皮感作という連鎖が生じる。 皮膚科医療の基盤が揺らぎ、国民の安全性に直結する。5. 歴史的教訓と現在の誤情報 1990年代の「悪魔の薬」報道は科学的根拠のない恐怖を全国に拡散し、受診中断・重症化が続出した。 その後、臨床皮膚科医会と患者団体が協働し、誤情報を是正し標準治療を回復してきた。 しかし現在も「脱ステ」「民間療法」「高額サプリ」等の誤情報がSNSで拡散し、若年層の受診遅延・重症化が続いている。 外用薬の負担増は、誤情報に流される患者をさらに増やす。6. 公衆衛生上の重大な懸念 茶しずく石けん事件では、加水分解コムギ末による経皮感作により全国1,800人以上が食物アレルギーを新規発症した。 皮膚バリア破綻が公衆衛生事案を引き起こすことは明確である。 皮膚は免疫の入口であり、皮膚科医療は国民医療の基盤である。7. 患者・家族の生活実態 アトピー性皮膚炎は痛み、痒み、睡眠障害、皮膚裂傷、浸出液などにより生活を深刻に損なう疾患である。 外用薬は「生きるための薬」であり、寛解維持のための計画的外用が不可欠である。 負担増は治療中断・再燃・重症化を招き、誤情報に惑わされる危険性は今も続く。8. 3団体共同の要望 1. 軽症疾患と中等症・重症・慢性疾患を区別し、なし崩し的な対象拡大を行わないこと。 2. ステロイド外用薬を「短期使用薬」と誤認した負担増を撤回すること。 3. 皮膚科診療の根幹を損なわない制度設計を行うこと。 4. 検討過程に当事者の声を適切に反映すること。9. 総括 本見直し案は、皮膚科医療の基盤と国民の健康に直結する制度である。 3団体は、国民の安全を守る観点から、慎重な再検討を強く求める。

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第311回 生活保護の頻回受診対策、指定の医療機関以外は原則紹介へ/厚労省

<先週の動き> 1.生活保護の頻回受診対策、指定の医療機関以外は原則紹介へ/厚労省 2.インフルエンザ全国で拡大、8月に流行入り ワクチン前倒しも可能に/厚労省 3.病床数適正化、1床当たり410万円補助 第2回申請は9月30日まで/厚労省 4.精神医療も地域医療構想へ、2028年度末までに策定/厚労省 5.病院建て替え・高額設備投資に支援要望 2027年度税制改正へ提言/日医 6.大学病院による地域病院承継へ 藤田学園と聖霊会が基本合意/愛知県 1.生活保護の頻回受診対策、指定の医療機関以外は原則紹介へ/厚労省厚生労働省は、生活保護受給者が指定された医療機関以外を受診する際、原則として紹介状を必要とする仕組みを検討することが明らかになった。生活保護受給者の過剰な受診を抑え、適正受診につなげる狙いで、2026年内に議論を取りまとめる方針。日本経済新聞の報道によると、現在も生活保護受給者の受診先は福祉事務所が指定しているが、受給者が別の医療機関を希望した場合、その受診が医学的に妥当かどうかを行政が判断することは難しかった。検討案では、日常的に受診する医療機関をあらかじめ定め、別の医療機関を受診する場合には、原則として日常的に受診する医療機関からの紹介を求める。受診先の選択に医師の判断を取り入れることで、頻回受診や重複受診の抑制と、継続的な健康管理の両立を図る。生活保護の医療扶助を巡っては、国会でも適正化を求める議論が続いている。6月の参院厚生労働委員会では、日本維新の会の猪瀬 直樹氏が、自己負担がないことが頻回受診や多剤・重複投薬につながっていると指摘し、制度の見直しを要求。生活保護受給者にも定額または定率の自己負担を求める案を示した。厚労省は自己負担導入には慎重な一方で、受診ルールや医療機関との連携を通じた適正化を進める方向だ。生活保護受給者は約200万人で、その半数以上が65歳以上。2024年度の医療扶助費は1兆8,600億円に上り、生活保護費全体の約半分を占めている。また、同じ病気で同一月に同一診療科を15日以上受診し、医師らが必要以上と判断した頻回受診者は9,371人だった。今後は、必要な医療へのアクセスを確保しつつ、紹介機能やかかりつけ医機能を活用して受診行動をどこまで適正化できるかが焦点となる。 参考 1) 生活保護の受給者、指定の受診先以外なら原則紹介必須に厚労省検討(日経新聞) 2) 医療費「生活保護受給者に自己負担を」維新・猪瀬氏上野厚労相「必要な受診抑制」と慎重(産経新聞) 3) 厚生労働省が「生活保護」最新調査結果を発表、2世帯に1世帯が高齢者世帯に。生活保護の「受給条件・保護費の決まり方・医療費の仕組み」を解説(LIMO) 2.インフルエンザ全国で拡大、8月に流行入り ワクチン前倒しも可能に/厚労省厚生労働省は、インフルエンザが例年より大幅に早く全国的な流行期に入ったとして警戒を呼びかけている。8月17~23日の定点医療機関当たり報告数は1.11人となり、流行開始の目安である1.00人を超えた。全国約3,000の定点医療機関からの報告患者数は4,094人で、前年同期の1,183人を大きく上回った。前シーズンからの流行が継続していた2023年を除外すると、1999年の現行統計開始以降で2009年に次ぐ2番目の早さとなっている。さらに8月24~30日は1.76人、患者数6,543人と前週の約1.6倍に増え、39都道府県で前週を上回った。地域別では沖縄県8.50人、岩手県4.33人、新潟県3.58人、神奈川県2.99人、青森県2.88人などで高く、局地的な夏季流行ではなく全国的な広がりがみられる。愛知県も1.10人で流行入りを発表し、前年より約1ヵ月半早い。京都府は2.26人、宮城県は2.44人で、学校では学級・学年閉鎖も相次いでいる。宮城県では0~14歳が患者の半数超を占め、夏休み明けの学校再開後の感染拡大が懸念されている。早期流行の原因は現時点で明らかではない。南半球など海外からのウイルス流入、冷房下の密閉空間、夏季にはインフルエンザを疑いにくく感染が見逃されやすいことなどが可能性として指摘されている。流行株についても現時点では確定しておらず、今後の全国的な病原体解析が必要となる。厚労省は、一時的に定点当たり1.00人を下回る可能性はあるものの、過去には一度流行入りすると冬のピークへ向かう例が多いとして推移を注視している。異例の流行を受け、厚労省は65歳以上と一定の基礎疾患がある60~64歳を対象とする定期接種について、自治体の判断で例年より繰り上げて実施するのは法令上可能である旨を周知した。9月中には今季供給見込みの6割超にあたる約3,147万回分が出荷される見通し。今季ワクチンはA型2種類、B型1種類の3価で、ワクチンの主目的は重症化予防。高齢者や基礎疾患患者などハイリスク層への接種が重要となる。医療機関では、発熱患者の増加を前提とした診療体制の確認に加え、手洗い、マスク、換気など基本的な感染対策の徹底が求められる。今季は冬の本格流行前から患者増加が始まっており、ワクチン接種時期や院内感染対策を例年の感覚で判断せず、早めに備える必要がある。 参考 1) インフルエンザ患者数 前週比1.6倍に増加“基本的な対策を”(NHK) 2) インフル、夏に異例の早さで全国流行入り 厚労省が警戒呼びかけ(Science Portal) 3) インフルエンザ予防接種「前倒し可能」 厚労省が自治体に周知(日経新聞) 3.病床数適正化、1床当たり410万円補助 第2回申請は9月30日まで/厚労省厚生労働省は9月1日、「病床数適正化緊急支援事業」の今後のスケジュールを示し、第2回の医療機関から都道府県への申請期限を9月30日とした。第3回は11月30日を予定しているが、申請状況や予算の状況によっては実施しない可能性があるとしており、活用を検討している医療機関は早めの対応が求められる。都道府県から厚労省への提出期限は、第2回が10月30日、第3回が12月28日。同事業は、2025年度補正予算で3,490億円を確保し、人口減少や医療需要の変化を踏まえて病床数の適正化を進める医療機関を支援するもの。病院の一般病床、療養病床、精神病床や有床診療所を対象に、削減する病床1床当たり410万4,000円を補助し、休床病床を削減する場合は半額の205万2,000円とする。第2回までの申請が多く、予算が枯渇すれば第3回目は行われない可能性もある。その一方で、厚労省は病床削減については参院の附帯決議などを踏まえ、「医療費削減ありき、数字ありき」で進めるものではないことを改めて強調している。各地域の医療の質の確保を前提に、人口減少に応じた合理的な病床数削減という考え方の下、地域の実情や医療提供体制への影響を十分に精査するよう求めている。さらに、医療機関の連携・再編・集約化を進める際にも、地域の医療ニーズを踏まえた対応が必要としている。また、制度に基づいて病床を削減した場合、厚生労働省令で定める場合を除き、都道府県は医療計画上の基準病床数を削減することになる。病床削減は個々の医療機関の経営改善だけでなく、地域全体の病床機能や将来の医療提供体制にも影響するため、地域医療構想との整合性を含めた慎重な判断が必要だ。病床再編を予定する医療機関は、第3回を待たず、第2回期限の9月30日を念頭に都道府県との調整を進める必要がある。 参考 1) 病床数適正化緊急支援事業の今後のスケジュールについて(厚労省) 2) 「削減病床1床あたり410万4000円」補助する病床適正化支援、2回目受付は「2026年9月30日まで」、3回目は実施しない可能性も(Gem Med) 4.精神医療も地域医療構想へ、2028年度末までに策定/厚労省厚生労働省は9月2日、2040年ごろを見据えた新たな地域医療構想に精神医療を位置付けるため、「精神医療に関する地域医療構想検討ワーキンググループ」の初会合を開いた。精神医療を含む地域医療構想の策定ガイドラインは2026年度末をめどに作成し、都道府県はこれを踏まえて2028年度末までに新たな構想を策定する。なお、一般医科の医療機関機能報告は2026年10月であるが、精神科医療機関を対象とした医療機関機能・病床機能の報告は2027年10月に始まる予定となっている。新たな地域医療構想に精神医療が位置付けられたのは、2025年12月の改正医療法成立を受けたもの。同ワーキンググループでは、精神医療の構想区域の設定、精神科病院の医療機関機能報告、必要病床数の推計方法などを議論し、2026年度内に結論を得る方針。背景には、高齢化に伴う身体合併症を持つ精神疾患患者の増加や、入院患者の年齢構成・疾病構造の変化がある。厚労省は精神科医療機関の対応力向上に加え、一般医療との連携強化を進め、精神症状を早期に安定させる体制や身体疾患を含めた診療体制の構築を目指す。また、病床や医療機関の役割を明確にし、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築も加速させる。初会合では「精神・身体合併症診療機能」の設定を求める意見が出たほか、一般医療の構想区域との整合性を重視すべきとの指摘もあった。その一方で、精神科病院や精神病床のない二次医療圏もあるため、複数の医療圏を一体として扱うなど柔軟な区域設定を求める声も出た。精神医療でも今後、単なる病床数の調整にとどまらず、急性期対応、身体合併症診療、外来・在宅支援、一般医療との連携を含めた地域での役割分担がより明確に求められることになる。人口減少に伴う患者数や病床利用率の変化も見据え、各精神科医療機関には、自院が地域で担う機能を早い段階から整理しておくことが重要となる 参考 1) 第1回精神医療に関する地域医療構想検討ワーキンググループ(厚労省) 2) 精神医療含む地域医療構想、28年度末までに策定へ ガイドラインは26年度末 厚労省(CB news) 3) 精神医療を含めた地域医療構想策定ガイドラインは今年度末に。精神医療を含めた医療機関機能報告は令和9年10月から(route “hckn”) 5.病院建て替え・高額設備投資に支援要望 2027年度税制改正へ提言/日医日本医師会は9月3日、2027年度の「医療に関する税制要望」を公表した。今回の要望では、病院の建て替えや高額設備投資に伴う消費税負担への「特段の対応」を新たに盛り込み、税制措置だけでなく補助金や融資など予算措置と一体で支援するよう求めている。要望は8月24日に厚生労働省へ提出された。現在、社会保険診療は消費税非課税のため、病院が建物や医療機器を購入した際の消費税は仕入税額控除の対象とならず、医療機関が負担する仕組みとなっている。日医は、とくに大規模な建て替えや設備投資では一時的な消費税負担がキャッシュフローを悪化させ、病院経営を圧迫すると指摘。診療所においては非課税のまま診療報酬上の補てんを継続しつつ、病院においては軽減税率による課税取引に改めることを求め、それまでの間、高額投資に別途支援措置を講じるよう要望している。設備投資関連では、地域医療構想に適合する病院建物の特別償却制度について、税額控除の導入や特別償却率の引き上げに加え、新たに病院・診療所用建物(鉄骨鉄筋コンクリート造など)の法定耐用年数について、現行の39年から31年へ短縮するよう求めた。高額医療機器についても、対象となる取得価額を160万円まで引き下げ、即時償却または10%の税額控除を選択できる制度への拡充を要望している。さらに、医療DXに伴う電子カルテや医療情報システムなどへの投資について、即時償却または10%の税額控除、固定資産税の軽減措置の創設を要求。働き方改革では勤務時間短縮用設備の税制優遇拡充、医師不足地域では医療従事者の所得税軽減なども盛り込んだ。日医は、物価や人件費、建築費が上昇する中、税制だけでは医療機関の投資余力を確保できないとしており、年末の与党税制改正大綱に向け政府・与党への働きかけを強める方針。 参考 1) 令和9年度医療に関する税制要望(日本医師会) 2) 令和9年度医療に関する税制要望について-今村英仁常任理事(同公式チャンネル)【動画】 3) 病院の高額投資に伴う消費税対応を要望 税制と予算セットで日医(CB news) 6.大学病院による地域病院承継へ 藤田学園と聖霊会が基本合意/愛知県愛知県の学校法人藤田学園と社会福祉法人聖霊会は、名古屋市昭和区の聖霊病院(194床、22診療科)の事業を藤田学園が承継することで8月31日に基本合意した。名古屋市の許認可など必要な手続きを経て、2027年4月1日の運営移行を目指す。病床数や診療科は原則維持し、訪問看護ステーションも引き継ぐ。残留を希望する職員は継続雇用する方針で、患者への診療提供を途切れさせずに経営基盤を強化する狙い。聖霊病院は1945年開院。内科、整形外科、精神科、緩和ケア科などを備え、初期医療から終末期医療まで担ってきた。約20年前の建て替えなどに伴う負債が2026年8月時点で約16億円残り、物価高や医療機器などへの投資負担、人材確保の難しさも重なって、自力での経営改善が困難となっていた。数年前から承継先を探し、緩和ケアやリハビリなど両法人の重点分野が重なることから協議が進んだ。藤田学園は藤田医科大学病院など複数の病院を運営し、グループ全体で計2,364床を有する。今回の承継は、地域医療再編の波が都市部にも及んでいることを示しており、厚生労働省の調査では、2024年度の一般病院の損益率はマイナス7.3%で、赤字施設は約7割。帝国データバンクによると、2026年上半期の医療機関倒産は39件と前年同期を上回った。物価・人件費の上昇、設備投資負担、医師・看護師不足が重なる中、中小病院単独での経営維持は難しさを増している。国も地域医療連携推進法人や病床削減支援などを通じ、病院間の連携・再編や経営効率化を後押ししている。藤田学園は愛知県内で地域医療連携推進法人の運営にも関わっており、今回の承継では大学病院グループの経営基盤と人材供給力を生かし、地域の診療機能を維持する考えだ。今後、都市部でも地域病院が大学病院や大規模医療法人の傘下・連携下に入る事例が増える可能性がある。 参考 1) 社会福祉法人聖霊会聖霊病院並びに聖霊病院訪問看護ステーションの事業承継について(聖霊病院) 2) 藤田学園 名古屋の聖霊病院を承継へ…基本合意 来年4月の移行目指す(読売新聞) 3) 名古屋 聖霊病院 藤田学園が運営引き継ぐ 経営基盤の改善へ(NHK) 4) 名古屋市昭和区の聖霊病院の事業、藤田学園が承継へ診療体制は維持(中日新聞)

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組織的なスポーツ活動で自閉症スペクトラム症の子どもの運動能力が向上

 自閉症スペクトラム症(ASD)の子どもは運動能力の課題を抱えていることが少なくないが、組織的なスポーツ、特に武道や水中トレーニングによって、運動能力が向上する可能性が報告された。米オールド・ドミニオン大学のSonia Khurana氏らが行ったシステマティックレビューの結果であり、詳細は「Developmental Medicine & Child Neurology」に7月22日付で掲載された。 ASDの診断基準に、運動能力に関する項目は含まれていない。しかし、最近報告されたメタ解析から、ASDの子どもの50~88%が、バランス感覚、手と目の協調性、微細運動の制御、手先の器用さなどに、何らかの困難を抱えていると推定されている。これらの困難は日常生活に影響を与えたり、社会参加または仲間や介護者との交流の妨げとなったり、遊んでいる最中に感じる不安を増大させたりする可能性がある。 ASDの子どもの運動能力の障害と社会的な障害の関連性を示唆する報告があり、一方では近年、身体活動介入の有用性を示唆する報告も増えている。特に、競技上のルールが定められていて、グループでのトレーニングが行われることの多い組織的なスポーツは、運動能力の向上とともに社会性の醸成にもつながると考えられる。これらを背景としてKhurana氏らは、ASDの子どもの運動能力に対する組織的なスポーツの有用性を、システマティックレビューで検討した。 PubMedやWeb of Scienceなどの文献データベースを、それぞれの収載開始時から2025年11月まで検索し、ASDの子どもに対して組織的なスポーツ介入を実施した研究を抽出した。ランダム化比較試験6件、非ランダム化比較試験5件、計11件の研究を抽出した。イランからの報告が3件、ポルトガルから2件、米国や中国、台湾、オーストラリア、スイス、スペインから各1件であり、研究参加者の平均年齢は4~13歳で、参加者数は14~56人だった。介入に用いられたスポーツは、武道、体操とトランポリン、水中トレーニング、その他などに分類された。 解析の結果、武道はバランス感覚、全体的な運動能力、物体操作能力を一貫して改善し、特に太極拳や武道の型(Kata)で顕著な効果が認められた。水中トレーニングでも、バランス感覚、移動能力、物体操作能力に大きな改善が認められた。体操とトランポリンは、バランス感覚と両側協調性を向上させ、卓球は粗大運動能力を向上させた。解析対象とした全ての介入カテゴリーで、最も一貫して改善した運動領域は、バランス感覚だった。 論文の責任著者であるKhurana氏は、「組織的なスポーツを基盤とした介入は、ASDの子どもたちの運動能力の発達をサポートする。そのことにより、レクリエーション上の効果にとどまらないメリットをもたらす可能性がある」と述べている。ただし研究チームは、「これらの効果を確認し、エビデンスに基づいた推奨事項を策定するためには、より大規模で質の高い研究が必要」としている。

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在胎不当過小児、生後14日以内開始の多面的介入が発育を改善/JAMA

 在胎不当過小(SGA)児において、生後14日以内に開始した多面的介入が、12ヵ月齢時の体重および年齢別体重Zスコアの改善に結びついたことが、インド・Society for Applied StudiesのRanadip Chowdhury氏らSmall Babies Trial Study Groupによる無作為化試験の結果で示された。世界中で年間約2,300万児がSGA児として生誕しており、南アジアにおける有病率は40%だという。SGA児は低栄養や発達遅滞のリスクが高く、成長や神経発達を促す多面的介入が必要と示唆されており、研究グループは、正期産SGA児の乳児期に実施する、母子への多面的介入の有効性を検証した。JAMA誌オンライン版2026年7月27日号掲載の報告。インド・南デリーの低・中所得地域で無作為化試験 研究グループは、インド・南デリーの低・中所得地域で、個人単位の無作為化試験を行った。正期産SGA児を出生日から14日以内に登録し、多面的介入群または通常ケア群に1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月間追跡評価した。 多面的介入群には、健康・栄養・刺激・心理社会的支援をパッケージ化した介入(例:フィールドワーカーによる定期的な複数回かつ必要に応じた頻回の家庭訪問調査、ビタミンD、鉄製剤などの提供、改訂WHO/UNICEF Care for Child Developmentを用いた月齢に応じた遊び、responsive care[応答的ケア]など)が提供された。通常ケア群には、既存の公的プログラム(ルーチンの産後の経過観察、成長モニタリング、予防接種など)が提供された。 2023年1月14日~2024年7月31日に対象の募集を行い、追跡評価を完了したのは2025年8月6日であった。 主要評価項目は、12ヵ月時の体重および年齢別体重Zスコアであった。副次評価項目は、線形成長、神経発達(Bayley乳幼児発達検査スコア[第3版]を用いて評価)、貧血、死亡などであった。評価者は、割り付けについて盲検化されていた。12ヵ月時の平均体重、介入群8.0kg、通常ケア群7.8kg 1,300例(介入群647例、通常ケア群653例)が無作為化され、1,261例(97%、それぞれ633例と628例)が12ヵ月間の追跡評価を完了した。無作為化時のベースラインの特性は両群で類似しており、平均日齢6日、男児が48.1%であった。 12ヵ月時で、平均体重は介入群8.0kg(SD 0.9)、通常ケア群7.8kg(SD 0.9)であった(平均群間差:0.22kg、95%信頼区間[CI]:0.11~0.32)。平均年齢別体重Zスコアは、それぞれ-1.3(SD 0.9)と-1.6(SD 1.0)であった(平均群間差:0.24、95%CI:0.14~0.35)。 介入群のほうが以下の有病率が低かった。低体重(23.9%vs.32.6%、リスク群間差:-8.75%ポイント、95%CI:-13.70~-3.80)、発育阻害(20.1%vs.27.2%、リスク群間差:-7.17%ポイント、95%CI:-11.85~-2.49)、消耗症(13.9%vs.19.4%、リスク群間差:-5.52%ポイント、95%CI:-9.63~-1.41)および貧血(34.0%vs.72.5%、リスク群間差:-38.49%ポイント、95%CI:-44.36~-32.61)。 また、介入群のほうが、以下のスコアがより高かった。認知機能スコア(平均群間差:1.73、95%CI:0.32~3.14)、言語スコア(平均群間差:2.74、95%CI:1.51~3.98)、運動機能統合スコア(平均群間差:2.32、95%CI:1.25~3.38)。 死亡は、介入群では5例、通常ケア群では9例報告された。

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親の離婚を経験した子どもは成人期のうつ病リスクが高い

 親が離婚した子どもは、親が婚姻関係を維持していた子どもと比べて成人期にうつ病と診断されるオッズが41%高いことが、7月29日付で「Psychiatry Research」に掲載された論文で示された。ただし、親の精神疾患や物質使用を考慮すると、この関連は大幅に弱まったという。論文の筆頭著者であるティンデール神学大学(カナダ)心理学分野のMary Kate Schilke氏は、「親の離婚そのものが子どもの将来のうつ病リスクを高めると考える人もいるだろう。しかし今回の研究結果は、ことはそれほど単純ではない可能性を示している。離婚に伴いしばしば生じる家庭内の問題、特に親の精神疾患や物質使用は、子どもの長期的なうつ病リスクを説明する上で離婚そのものよりも重要な因子と考えられる」と述べている。 今回の研究では、州保健局と米疾病管理予防センター(CDC)が実施する横断調査である行動リスク要因監視システム(Behavioral Risk Factor Surveillance System;BRFSS)の公開データ(2021~2024年)を用いて、小児期に虐待を経験していない12万8,264人を対象に、親の離婚と成人期のうつ病や精神的苦痛との関連を検討した。対象者の72.5%は親が婚姻関係を維持しており、25.8%は親が離婚しており、1.7%は親が一度も結婚していなかった。対象者の15.5%は生涯のどこかの時点でうつ病の診断を受けており、11.4%は過去1カ月間に頻繁な精神的苦痛(frequent mental distress;FMD)があったと報告した。 解析の結果、親が離婚した群では親が婚姻関係を維持していた群と比べて、生涯のどこかの時点でうつ病の診断を受けるオッズが41%高かった(オッズ比1.41、95%信頼区間〔CI〕1.32~1.51)。ただし、親の精神疾患や物質使用を考慮すると関連は弱まり、オッズ比はそれぞれ1.13(95%CI 1.05~1.21)、1.21(95%CI 1.13~1.30)となった。さらに、両方の要因を同時に考慮すると、うつ病診断との関連は統計学的に有意ではなくなった。 過去1カ月のFMDとの関連についても、親が離婚した群では親が婚姻関係を維持していた群と比べて、FMDのオッズが55%高かった(オッズ比1.55、95%CI 1.43~1.67)。ただし、うつ病の診断と同様、親の精神疾患や物質使用を考慮すると関連は弱まり、オッズ比はそれぞれ1.32(95%CI 1.21~1.43)、1.36(95%CI 1.26~1.48)となった。両方の要因を同時に考慮した場合でも、FMDとの関連は有意なままであった(オッズ比1.24、95%CI 1.14~1.34)。 また、親が一度も結婚していなかった群では、親が婚姻関係を維持していた群と比べて、生涯のうつ病診断のオッズが31%高かった(オッズ比1.31、95%CI 1.06~1.62)。しかし、親の精神疾患や物質使用などを考慮すると関連は弱まり、統計学的に有意ではなくなった。過去1カ月間のFMDについても、親が一度も結婚していなかった群では、親が婚姻関係を維持していた群と比べてFMDのオッズが92%高かった(オッズ比1.92、95%CI 1.52~2.44)。 論文の共著者である米テキサス大学アーリントン校ソーシャルワーク学部のPhilip Baiden氏は、「精神疾患や物質使用障害に苦しむ親を支援することは、子どもの長期的な健康を改善する最も効果的な方法の一つかもしれない。今回の研究結果は、家族が利用しやすい精神保健サービスや物質使用に関する支援サービスの重要性を浮き彫りにしている」と述べている。 一方、論文の共著者であるトロント大学ソーシャルワーク学部のEsme Fuller-Thomson氏は、「今回の研究は、子どもの将来の精神的健康に影響を及ぼすのは、親の婚姻状況そのものよりも、成長過程でどのような問題を経験したかであることを示唆している。親の精神疾患や物質使用を減らすための取り組みは、親自身にとどまらず、子どもの精神的健康にも恩恵をもたらし、世代を超えて精神的健康の改善につながる可能性がある」と話している。

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第310回 インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省

<先週の動き> 1.インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省 2.OTC類似薬77成分に25%の特別負担 がん・難病患者への配慮を/患者団体 3.医療費5年連続最高、49.2兆円に 75歳以上が4割、介護費も12兆円に/厚労省 4.来年度の概算要求、過去最大36兆5,803億円 医療DXに約930億円/厚労省 5.医療DX工程表を提示 28年度に200床以上病院の電子カルテほぼ100%へ/厚労省 6.「9月の給与払えない」公立病院の資金繰り危機が表面化/日野市 1.インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省厚生労働省は8月28日、インフルエンザが全国的な流行シーズンに入ったと発表した。8月17~23日の第34週に全国約3,000ヵ所の定点医療機関から報告された患者数は4,094人、定点当たり1.11人となり、流行開始の目安である1.00人を上回った。感染症法施行後の1999年以降では、前年から流行が継続していた2023年を除き、2009年に次いで2番目に早い流行入りで、昨年の第39週より5週早い。全国の定点当たり報告数は第30週0.24人、第31週0.37人、第32週0.52人、第33週0.69人、第34週1.11人と、7月下旬以降増加が加速している。都道府県別では沖縄県4.43人が最多で、岩手県2.10人、青森県2.08人、神奈川県1.99人、埼玉県1.83人、千葉県1.80人などで高かった。東京都は1.49人で、患者の5割弱を10歳未満、8割弱を20歳未満が占めており、夏休み明けの学校・家庭内での感染拡大が懸念される。その一方で、愛知県は0.74人と現時点では流行開始目安を下回っている。厚労省の資料によると、第34週には全国約500ヵ所の基幹定点からインフルエンザによる入院患者167人が報告され、うちICU入室9人、人工呼吸器使用5人だった。高齢者や基礎疾患のある人では重症化リスクが高く、医療機関受診時や高齢者施設訪問時などにはマスク着用が推奨される。手洗い、咳エチケットなど基本的感染対策も重要となる。インフルエンザワクチンには発症抑制および重症化予防の効果があり、とくに高齢者や基礎疾患保有者への接種が重要とされる。定期接種の対象は(1)65歳以上の高齢者、(2)60~64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能障害やHIVによる免疫機能障害など(日常生活が極度に制限される障害)を有する者であり、新型コロナワクチンとの同日接種も可能である。 専門家は10月以降の速やかなワクチン接種を推奨している。また、新型コロナも同週に定点当たり1.18人と前週(1.12人)から増加傾向にあり、医療機関においては例年より早いインフルエンザ対応と重複流行への備えが求められる。 参考 1) インフルエンザの発生状況をお知らせいたします(厚労省) 2) インフルエンザ、全国で流行入り 2009年に次ぎ2番目の早さ(産経新聞) 3) インフルエンザが流行入り、1999年以降で2番目に早く・沖縄が最多…専門家「ワクチンを受けにいって」(読売新聞) 4) 昨年より5週早く、インフル流行開始目安到達東京都(CB news) 2.OTC類似薬77成分に25%の特別負担 がん・難病患者への配慮を/患者団体2027年3月から、OTC医薬品と同一成分などの医療用医薬品「OTC類似薬」について、患者に薬剤費の25%を特別料金として求める一部保険外療養制度が始まる。対象は2026年8月時点で77成分1,042品目(解熱鎮痛薬ロキソプロフェン、抗アレルギー薬フェキソフェナジン、保湿剤ヘパリン類似物質など)。残る75%部分には従来通り保険給付と自己負担が適用される。中間とりまとめでは、がん患者、指定難病患者、公費負担医療の対象者、入院患者、一定の長期使用などは条件付きで特別負担の対象外とする方針。ただし、がん治療終了後の短期・中期使用は扱いが曖昧で、患者団体から見直しを求める声が出ている。全国がん患者団体連合会は、乳房切除後疼痛症候群、リンパ浮腫に伴う疼痛、薬物療法後の関節痛や末梢神経障害、皮膚障害など、治療終了後にも鎮痛薬や外用薬、保湿剤などが必要となるケースを提示した。とくに問題となるのが「年間おおむね50週以上」とされる長期使用の判定である。同じ病態でも頓用・間欠投与となる患者では基準を満たさず、追加負担となる可能性がある。また、皮膚科や整形外科、かかりつけ医など、がん診療医以外が処方する場合に「がん治療との関連性」を判断しにくい点も指摘されているほか、処方時点で将来の使用期間を予測することも困難である。小児がん経験者は、治療終了後も内分泌障害や神経障害、心腎機能障害などの晩期合併症を長期間抱え、頓用薬を生涯使用する例もある。患者団体は、50週という期間だけでなく、治療歴、臓器機能、医師管理下での使用、代替可能性などを総合的に判断するよう求めている。厚労省は9月中に対象外となる患者の範囲などを取りまとめる予定。医療現場では、対象判定に加え、患者説明、処方箋・レセプト対応、システム改修も必要となるため、実務上分かりやすい基準作りが求められる。 参考 1) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(厚労省) 2) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ(同) 3) 全国がん患者団体連合会提出資料(同) 4) 対象外の範囲設定で「柔軟運用」求める声 医療保険部会 OTC類似薬の一部保険外療養巡る議論で(CB news) 5) 「OTC類似薬を使用する場合、患者特別負担がいくらになるのか」の具体例提示し、国民の不安を軽減せよ-社保審・医療保険部会(Gem Med) 3.医療費5年連続最高、49.2兆円に 75歳以上が4割、介護費も12兆円に/厚労省厚生労働省は、2025年度の概算医療費(速報値)が前年度比2.6%増の49兆2,000億円となり、5年連続で過去最高を更新したと発表した。受診延べ日数は0.7%減少した一方で、医療技術の高度化や抗がん剤など高額薬剤の使用増加が医療費を押し上げた。増加率2.6%の内訳は、医療技術の高度化など「それ以外の影響」が2.9%増、高齢化の影響が0.6%増、人口増の影響が0.5%減、診療報酬改定などの影響が0.39%減となった。診療種類別では、入院が2.3%増、入院外が1.6%増、歯科が3.5%増、調剤が3.9%増。歯科では貴金属価格上昇(歯科用貴金属医療費が10.1%増)、調剤では腫瘍用薬やホルモン剤などの使用増が影響した。年齢別では、75歳以上の医療費が20兆3,000億円(3.9%増)で全体の41.3%を占め、1人当たり医療費は98万9,000円と、75歳未満(26兆5,000億円、1人当たり26万1,000円)の3.8倍に達した。その一方で、2024年度の介護費は、高額介護サービス費などを含め12兆952億円となり、前年度比3.2%増加した。介護保険制度開始時の2000年度と比べると3.3倍の規模で、要介護・要支援認定者は720万7,000人に達した。介護給付費は居宅サービス3.4%増、地域密着型2.6%増、施設3.6%増となり、施設サービスの伸びも目立った。第1号被保険者の認定率は19.7%で、都道府県別では大阪府24.3%、茨城県16.5%と1.47倍の差がある。1人当たり介護給付費も29万6,300円と3.5%増えた。団塊世代が全員75歳以上となり、今後は85歳以上人口の比率上昇と現役世代の減少が同時に進む。医療・介護の複合ニーズが増す中、サービス確保や人材確保、質の向上に加え、給付の効率化と地域差の検証など、制度の持続可能性をどう確保するかが一段と重要になる。2027年度には介護報酬改定も予定されており、増大する需要と担い手不足をどう両立させるかが焦点となる。 参考 1) 医科医療費(電算処理分)の動向 ~令和7年度版~(厚労省) 2) 医療費総額49.2兆円、5年連続で過去最高を更新…高齢化・医療技術の高度化など要因(読売新聞) 3) 25年度の概算医療費、2.6%増49.2兆円 医療高度化で増加(日経新聞) 4) 2024年度の介護費、高額介護サービス費など含めれば12兆952億円で、前年度から3.2%の増加-介護保険事業状況報告(Gem Med) 4.来年度の概算要求、過去最大36兆5,803億円 医療DXに約930億円/厚労省厚生労働省は2027年度予算の概算要求として、2026年度当初予算比1兆5,370億円増の36兆5,803億円を計上した。要求段階では過去最大で、このうち年金・医療などの社会保障関係費は33兆6,872億円。高齢化などによる自然増として3,397億円を見込む。今回の特徴は、要求上限のない「『強く豊かな日本』投資枠」に1兆337億円を計上した点である。重点分野として、創薬・先端医療分野に約1,969億円(うち創薬スタートアップ支援・人材育成に355億円、治験・臨床試験体制強化に155億円、AI創薬環境整備に541億円)、感染症危機対応医薬品等の確保支援に2,129億円を要求した。医療DXの推進には934億円を要求し、標準仕様準拠の認証電子カルテの普及支援(604億円)やクラウドネイティブ化、全国的なデータ連携基盤整備を進める。さらに医療機関のサイバーセキュリティ対策や、医療・福祉分野におけるAI・ICTを活用した生産性向上・データ共有推進(829億円)などを盛り込んだ。その一方で、医療機関にとって最大の焦点となる物価・人件費高騰への対応は、診療報酬上の加算を含め金額を示さない「事項要求」とされた。2027年度の介護・障害福祉報酬改定も同様で、具体額は年末の予算編成で決まる。前年度の概算要求でも、物価高など重要政策は予算編成過程で検討する仕組みが示されており、病院経営が厳しさを増す中、年末にどこまで実効性ある財政支援が盛り込まれるかが注目される。 参考 1) 厚労省予算要求、最大の36兆円 創薬強化や福祉人材確保(共同通信) 2) 厚生労働省 概算要求で過去最大の36兆5,803億円を計上(NHK) 3) 厚労省概算要求、過去最大の36兆5千億円 投資枠で創薬力強化(朝日新聞) 4) 厚労省の概算要求は過去最大の33兆7,929億円に-『強く豊かな日本』投資枠に1兆337億円(日本医事新報) 5.医療DX工程表を提示 28年度に200床以上病院の電子カルテほぼ100%へ/厚労省厚生労働省は8月27日の社会保障審議会医療部会・医療保険部会を開き、医療DXの今後の工程を示す「医療情報化推進方針(案)」と電子カルテ情報共有サービスの進捗を報告した。第1期の対象期間は2026年10月1日~2030年3月31日までの3年半で、9月末までに厚生労働大臣が官報告示する予定。社会保険診療報酬支払基金は10月1日に「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(DX審査支払機構)」へ改組され、同方針に基づく中期計画を策定する予定。電子カルテ情報共有サービスは現在、全国10地域でモデル事業を実施中で、2026年度冬をめどに全国運用を開始する。共有対象はまず診療情報提供書、退院時サマリ、健診結果報告書の3文書と、傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査、処方の6情報。モデル事業では、感染症情報を患者への説明前に共有する場合の扱いや、院内コードと共有用コードの対応などの課題を検証している。運用開始時には、全国721の地域医療支援病院を対象に、電子診療録等情報の提供・利用体制の整備を努力義務とする方針であり、冬までに省令で規定する。運用開始後は普及状況を踏まえて対象を拡大する考えで、医療部会では特定機能病院や災害拠点病院、救急病院などへの拡大を求める意見も出された。厚労省の資料でも、まず地域医療支援病院を指定し、その後、普及計画の効果を見ながら努力義務の対象拡大を検討するとしている。同時に電子カルテ自体の普及も加速する。2027年度から共有サービスなどに対応する「認証クラウドネイティブ型電子カルテ」および「標準型電子カルテ(導入版)」の導入を進め、2028年度までに療養病床等が中心の病院を除く200床以上病院で普及率約100%、2030年末までに全医療機関で普及率約100%を目指す。オンプレミス型からクラウド型への移行により、業務効率化、セキュリティ強化、データの二次利用を含めた共有を推進する。医療・介護情報の連携も段階的に拡大する。2026年度から介護情報基盤を標準化対応済み自治体から順次開始し、2028年度をめどに全自治体へ広げる。あわせて2028年度には医科・DPC向け共通算定モジュールの請求支援機能や労災版モジュールの運用開始、電子カルテ情報を創薬等に二次利用するデータベースの運用開始を目指す。電子カルテ情報共有サービスでは2027年度に訪問看護指示書・計画書・報告書等を共有対象に加え、2029年度には歯科情報にも拡大する予定である。その一方で、医療部会では電子カルテの新規導入・更新費、クラウド利用時の通信費、停電や回線断絶時の事業継続性などへの懸念が相次いだ。厚労省は2027年度予算概算要求で、新規導入だけでなく更新・買い替えも含む支援を盛り込む方針。医療DXは構想段階から全国実装へ移りつつあり、医療機関には今後数年間で、システム更新時期や費用、地域連携、災害・サイバー対策を一体的に見据えた対応が求められる。 参考 1) 医療情報化推進方針案等について(厚労省) 2) 医療DXの進捗状況等について(同) 3) 2028年度までに療養除く200床以上病院で、30年度までに全医療機関で「電子カルテ導入率100%」を目指す-社保審・医療部会等(Gem Med) 4) 電子カルテ情報共有、地域医療支援病院に努力義務運用開始後に対象拡大検討 厚労省方針(CB news) 6.「9月の給与払えない」公立病院の資金繰り危機が表面化/日野市東京都日野市は、市立病院で9月の給与支払いに必要な資金が不足するとして、緊急に1億円を貸し付ける。医師、看護師ら約700人の給与は約2億7,000万円。9月の5連休で給与支給が18日に前倒しされる一方で、診療収入の入金は24日となるため、一時的に資金がショートする見通しとなった。ただし、朝日新聞の報道で原因とされている連休は直接のきっかけにすぎず、背景には長年の経営悪化がある。日野市立病院は300床の地域医療支援病院で、二次救急、周産期、災害・感染症医療などを担う。2023年策定の経営強化プランでは、病床利用率を高めて経常黒字化を目指していた。しかし、2026年5月の経営再建支援報告書によると、コロナ禍では補助金により黒字を維持したものの、補助金終了と人件費増で2023年度の経常利益率はマイナス15.2%、2024年度はマイナス18.6%、約14億円の赤字に悪化した。医業収支の赤字も約17億7,200万円で、同規模病院と比べ下位4分の1を下回る水準だった。収益面では、2024年度の病床稼働率は62.0%、DPC症例の1日単価は5万8,453円。黒字化には、単価を維持したままなら稼働率89.5%、稼働率を維持するなら1日単価8万4,401円が必要と試算され、現状との差は大きい。救急応需率も2024年度55.2%にとどまり、東京消防庁からの搬送要請を約半分断っていた。さらに、2024年度の経常収益約77億円に対し、損益分岐点は約90億円で、黒字化には約13億円の増収が必要とされた。赤字の積み重ねで手元資金が細り、市は昨年度10億円を貸し付け、今年度も別途10億円を支援する方針だった。そこへ入出金の6日間のずれが重なり、追加融資が必要となった。今回の事例は、低い病床稼働率(62.0%)、低水準の救急応需率、診療単価の低迷と高い固定費により、短期の資金ギャップを吸収できない財務体質に陥っていた結果といえる。日野市立病院は2026年4月に地方公営企業法「全部適用」へ移行して経営強化を進めていたが、全国自治体病院協議会の2025年度決算調査でも自治体病院の84%(有効回答494病院中)が経常赤字に陥っている実態が示されており、公立病院の経営難が決算上の赤字にとどまらず、日々の運転資金や給与支払いに直結する危機的局面を迎えていることを示している。 参考 1) 日野市立病院経営強化プラン(日野市立病院) 2) 令和7年度日野市立病院 経営再建支援業務委託報告書(日野市) 3) 日野市立病院「9月の給与払えない」財政難に連休も影響、市が支援へ(朝日新聞)

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2~5歳児にインフルワクチンが有効、米国では秋生まれに感染が少ない

 2~5歳児において、秋生まれの小児はインフルエンザワクチンの接種を受ける可能性が高く、インフルエンザと診断される可能性が低いという研究結果が、「JAMA Pediatrics」に6月1日掲載された。 米マサチューセッツ総合病院のChristopher M. Worsham氏らは、2016~2023年の各インフルエンザシーズンについて、秋生まれと夏生まれの2~5歳児におけるインフルエンザワクチン接種の有効性を検討した。 その結果、対象となった各インフルエンザシーズンにおいて、秋生まれの小児はインフルエンザワクチンの接種を受ける可能性が高く、インフルエンザと診断される可能性が低いことが分かった。秋生まれの小児では夏生まれの小児に比べて、インフルエンザワクチン接種率がシーズンにより絶対値で8.6~12.5パーセントポイント高く、インフルエンザ診断率は1.0~1.4パーセントポイント低かった。インフルエンザ以外のウイルス感染症の診断率に差は認められなかった。誕生日の時期の健診をきっかけにワクチン接種を受けた小児100人当たり、インフルエンザの診断例はシーズンにより9~14例少なかった。 上席著者で米ハーバード大学医学大学院のAnupam B. Jena氏は、「知りたいこと、理解したいことの全てについてランダム化比較試験を行うことは不可能である。しかし、世の中には膨大なデータがあり、今回のようなランダム化比較試験に近い状況がそのデータの中に埋もれ、発見されるのを待っている」と述べている。 なお、1人の著者がヘルスケア関連企業との、2人の著者が出版・メディア関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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第328回 ウクライナ侵攻4年半、失われた医療者たちの数

イラン情勢が膠着状態にある中、2022年2月24日に始まったロシアの一方的な軍事侵攻により4年半以上も継続しているロシア・ウクライナ戦争は、今、変化が生じている。ウクライナ領内での戦闘は、ロシアがやや有利な状態が長らく続いていたが、ウクライナ軍が長距離ドローン攻撃能力を進化させた結果、前線から遠く離れたロシア領内の製油施設、民間企業のメガ物流センター、軍用空港などへのウクライナによる攻撃が激化している。これにより、ロシア国内ではガソリン流通などにも影響が及んでおり、ロシアはウクライナ都市部のインフラなどへのミサイル攻撃強化で応酬している。こうしたロシアによるインフラ攻撃には、開戦当初から医療機関も含まれている。これまで同地でどの程度の被害が起きたのかをまとめてみたい。ウクライナ、今の医療状況まず、開戦前のウクライナの医療施設数は、ウクライナ国家統計局2021年末のデータによると、病院が約1,200施設、外来医療施設が約8,200施設あったとされている。ちなみにこの数字には、2014年にロシアが事実上の併合を行ったクリミア自治共和国内の医療施設は含まれていない。また、同じ2014年に一部地域でロシアの傀儡(かいらい)政権が成立したドネツク州、ルハンシク州に関しては、同統計局が公表している過去からの医療施設数推移を見ると、同年を境に医療施設数が急減している。これらのことから、開戦直前の2021年の医療施設数は、ウクライナ領内でウクライナ政府の実効支配が及んでいた地域のデータであると推定できる。さて、このうちどのくらいの医療施設が被害を受けたかだが、ウクライナ保健省が今年4月にキーウ州で再建されたクリニックに関してニュースリリース1)を発表。その中で全土2,500施設以上が被害を受け、このうち完全に破壊された施設は328施設に上るとの記述がある。この施設数については病院かクリニックかの区分は未記載だが、おそらくはその両方を合わせたものであると推定できる。ウクライナで医療支援を行う人道支援NGO「Migrant Offshore Aid Station(MOAS)」のサイトでは、今年2月時点のウクライナ保健省の発表として、前述の被害施設数に関して、より細かなデータとして2,562施設と記述している。こうした被害は、現在のロシアによる占領地域がある東部から南部のハルキウ、ドネツク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソン、ミコライウの各州に集中しているという。実は前述の国家統計局のデータは、一部では稼働状況の有無を含めていないものとの指摘もあるが、ざっくり言えば、開戦前のウクライナ全土の医療機関のうち2割程度が被害を受けた計算になる。今年2月時点では、このうち725施設が完全に復旧し、324施設は修復中となっている。医療施設への攻撃として代表的なものとしては、2024年7月8日、首都キーウへのミサイル攻撃で発生したオフマトディト小児病院の被災事例がある。世界保健機関(WHO)によると同病院は、3次救命救急機能を有するウクライナ最大の小児医療施設。攻撃時には約600人の患者と約600人の職員がいたとされ、毒物学部門と外傷部門が完全に破壊され、集中治療部門、腫瘍部門なども大きな被害を受けた。WHOの後日の集計によると、この攻撃により9人が死亡、71人が重傷と報告されている。ただし、ウクライナの地元メディア「THE KYIV INDEPENDENT」2)の報道では、この時の人的被害は死者33人、負傷者121人となっている。この場合、情報源の多さや報道の継続性などを考えると、実態に近いのは後者と考えるのが自然である。また、WHOは、今年2月に開戦からの丸4年間で医療施設への攻撃は少なくとも2,881件が確認され、その結果、医療者と患者を合わせた被害は死者が233人、負傷者が930人と発表3)している。これ以外に医療者のマンパワー不足も指摘されている。これは医療者の近隣諸国や国内での避難やそれに伴う離職、徴兵による一時離職やその後の戦死、医療者を目指す若年者の減少などが起きていることが要因と考えられている。もっともこの点については、明確な数字が示されたものはほとんどない。一方、ウクライナでは戦争前から日本と同様、医療者の地域偏在が問題化していたとされる。WHOが公表している「ウクライナにおける保健医療労働市場の初期分析結果」というレポート4)によると、開戦から約1年半後の2023年9月時点では、ウクライナの人口の30%が農村地域に居住しているものの、これら地域で働くのは医療者はプライマリ医の17.8%、専門医の3.2%、看護師の7.4%に過ぎないと記述されている。これは戦争による医療者の移動も含めた複合的な要因によるものとされる。また、WHO欧州事務局が2024年に公表したレポート5)では、ウクライナでは国内のプライマリケア医の50%以上が50歳以上、29%が60歳以上であり、4分の1が定年退職年齢に達していることが明らかにされている。ウクライナの65歳以上の高齢者比率は日本よりも低く約19%だが、ベースでは少子高齢化問題に悩まされる日本と同様、医療者の地域偏在や高齢化問題を抱えていることがわかる。そこに加えてこの戦争である。医療者の絶対的な不足や地域偏在、高齢化についてはこれらレポートの公表から現在までに約3年が経過していることを考えれば、こうした問題がより深刻化していることは確実だろう。参考1)Ministry of health of Ukraine:Primary healthcare outpatient clinic in the Kyiv region has been rebuilt after occupation and has resumed operations2)THE KYIV INDEPENDENT:Ukrainian doctors transplant organs of deceased girl amid Russian strikes, saving 3 children3)WHO:Attacks on Ukraine’s health care increased by 20% in 20254)WHO:Results of initial health labour market analysis in Ukraine5)WHO:WHO/Europe releases new report with data on nursing shortages in Ukraine

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鎌状赤血球症へのアルギニン療法、疼痛発作時間を短縮せず/JAMA

 鎌状赤血球症に伴う急性疼痛発作を有する小児および若年成人において、アルギニン療法はプラセボと比較し、疼痛発作消失までの時間を短縮しなかった。米国・エモリー大学のClaudia R. Morris氏らPediatric Emergency Care Applied Research Network(PECARN)が、同国の小児病院10施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「Sickle Cell Disease Treatment With Arginine Therapy trial:STArT試験」の結果で示された。鎌状赤血球症患者において、急性疼痛発作は救急外来受診や入院の主な原因であるが、米国食品医薬品局(FDA)により承認された治療薬は存在しない。急性疼痛発作中に患者は急性アルギニン欠乏を呈し、発作消失までの時間の延長や非経口オピオイドの総投与量が増加する。単施設で行われた複数の第II相無作為化試験では、アルギニンは安全でオピオイド使用量を減少させ、心肺機能を改善し、入院期間を短縮することが示されていた。JAMA誌オンライン版2026年8月19日号掲載の報告。アルギニンvs.プラセボで疼痛発作消失までの時間を評価 研究グループは、鎌状赤血球症(遺伝子型を問わず)と確定診断され、非経口オピオイドの投与を要する急性疼痛で救急外来を受診した3~21歳の患者を対象とした。 対象患者を、救急外来での初回オピオイド静脈内投与後12時間以内にアルギニン群またはプラセボ群に無作為に割り付け、初回投与量として200mg/kgを静注後、8時間ごとに100mg/kg静注を最大21回または退院までのいずれか早いほうまで継続した。 主要評価項目は、疼痛発作消失までの時間(試験薬初回投与から非経口オピオイド最終投与までの時間で定義)、副次評価項目は、非経口オピオイドの総投与量(初回投与から最終投与までの期間における静注モルヒネ投与換算量[mg/kg])、疼痛スコアおよび患者報告アウトカムなどであった。両群間で有意差はなく、試験は早期中止に 2021年6月21日~2024年6月13日に、274例が無作為化され、このうち271例が試験薬の投与を受けた(アルギニン群129例、プラセボ群142例)。患者背景は、平均年齢14.3歳(SD 4.3)、51%が男性、92%が黒人であった。 第2回中間解析において、疼痛発作消失までの時間中央値は、アルギニン群60.8時間(四分位範囲[IQR]:34.8~109.0)、プラセボ群65.8時間(IQR:31.1~111.1)で、有意差は認められなかった(絶対群間差:7.2時間、95%信頼区間:-21.6~35.9)。したがって、本試験は無益性のため早期中止となった。 副次評価項目である非経口オピオイド総投与量、疼痛スコアおよび患者報告アウトカム、ならびに安全性のいずれも、両群間で有意差は認められなかった。

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父親の超加工食品摂取が新生児の体格に関連か

 健康な妊娠の準備というと、通常は母親に焦点が当てられる。しかし、新たな研究で、父親の超加工食品(UPF)の摂取量は新生児の身体計測値と関連する可能性が示された。サンパウロ大学(ブラジル)のDaniela Sartorelli氏らによるこの研究結果は、「Nutrition Research」7月号に掲載された。Sartorelli氏は、「赤ちゃんの誕生前後を通じて、母親の栄養状態や健康についてはこれまでも注目されてきたが、父親の食生活がもたらす影響についてはほとんど語られてこなかった。この研究結果は、それが子どもの健康にも極めて重要であることを示している」と述べている。 本研究では、過体重の妊婦を対象にしたランダム化比較試験の対照群から抽出した43組の父親、母親である妊婦、および新生児を対象に、父親のUPF摂取量と新生児の身体計測値および体脂肪量との関連が検討された。父親のUPF摂取量は、24時間食事思い出し法の2回分のデータを基に推定され、総摂取カロリーに占める割合(E%)として表した。 父親のUPF摂取割合は平均30±15%であった。解析の結果、父親のUPF摂取割合が高いほど、新生児の出生体重が増加し、出生時のポンデラル指数も高いという関連が見られた。また、腸骨稜上部や大腿部の皮下脂肪厚が厚いこととも関連していた。しかし、新生児の体脂肪量との関連は有意ではなかった。 一方、母親の食事の影響の現れ方は異なっており、妊娠16週までのUPF摂取割合が高いほど、出生体重、出生時の身長、頭囲、ポンデラル指数が低いという関連が認められた。 出生体重が多いことや生後早期の体脂肪量が多いことは、成人期における心血管・代謝性疾患のリスク因子と考えられている。研究グループは、UPFを多く含む食事が体内で炎症を引き起こし、精子の質に影響を及ぼすとともに、子どもに受け継がれる遺伝子の発現に変化をもたらす可能性があると考えている。また、父親の食習慣が胎児の発育に重要な役割を果たすインスリン様成長因子(IGF)-IIの働きを変化させる可能性についても言及している。 研究グループは、今回の結果は、健康づくりや家族計画に関する指導において、母親だけでなく父親も対象に含めることの重要性を裏付けるものだとしている。

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児童生徒のサングラス・カラーレンズの使用に関する見解/日本眼科学会ほか

 児童生徒の学校生活におけるサングラス・カラーレンズなどの使用について、日本眼科学会、日本眼科医会、日本弱視斜視学会、日本小児眼科学会、日本近視学会、日本視能訓練士協会が共同で見解を発表した。 近年の紫外線対策への関心の高まりを受け、学校での着用を巡る議論が増えているが、今回の発表では「一律の常用は推奨せず、個々の特性や疾患に応じた個別配慮を求める」という方針が示されている。主要なポイントを以下に整理する。通常の眼鏡レンズにもUVカット機能がある 紫外線防御効果はレンズの色や濃さではなく、レンズに備わったUVカット性能によって決まる。視力矯正のための透明レンズでもUVカット機能を備えたものが多く、紫外線を十分にカットできる。紫外線対策の基本は環境の工夫 子供の紫外線対策は、つばのある帽子の着用や日陰の利用、活動時間などの環境の工夫が基本となる。医療として遮光眼鏡やカラーレンズ眼鏡が必要な子供 眼疾患による羞明(まぶしさ)、術後の管理、片頭痛、感覚過敏などの理由により、医師の判断の下で遮光眼鏡やカラーレンズ眼鏡を使用している子供がいる。これらは、まぶしさ、見えにくさや病気の誘発の原因となる光の一部を抑えるための医療的配慮であり、学校生活や社会生活において適切な理解と配慮が望まれる。学校生活での日常的な着用について 健康な目の子供に対して、薄い色を含むカラーレンズの使用を学校生活全般で日常的に推奨する十分な科学的根拠はない。学校生活では、学習活動や実験、体育活動、登下校時の安全確認など、色や明暗、コントラストを正確に認識することが求められる場面が多い。近視対策には屋外活動が大切 屋外活動は、近視の発症や進行を抑えるために有効であると報告されている。帽子の着用や日陰の利用、UVカット機能のある眼鏡やサングラスによる紫外線対策を行っても、近視予防に必要な光環境を保つことは可能。適切な紫外線対策を行いながら、積極的に屋外で活動する時間を確保することが大切である。 同見解は子供のサングラスやカラーレンズ眼鏡の使用を一律に制限するものではなく、子供の目の健康を守るためには、一人ひとりの目の状態や生活環境、活動内容に応じた適切な対応が大切であるとしている。

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ビレーズトリ14.4、気管支喘息の適応で承認/AZ

アストラゼネカは2026年8月24日、ビレーズトリ14.4エアロスフィア56吸入/120吸入(一般名:ブデソニド[BUD]/グリコピロニウム臭化物[GLY]/ホルモテロールフマル酸塩[FOR]160/14.4/4.8μg)について、成人および12歳以上の小児における気管支喘息の治療薬として、製造販売承認を取得したと発表した。同剤は、吸入ステロイド薬、長時間作用性吸入抗コリン薬、長時間作用性β2刺激薬の3剤を単一吸入器に配合した固定用量配合剤である。本承認は、コントロール不良の喘息患者を対象とした国際共同第III相試験「KALOS試験」および「LOGOS試験」の結果に基づくもの。KALOS試験とLOGOS試験は、同一デザインで実施された試験で、4,311例が組み入れられた。日本の施設も参加したKALOS試験において、BUD/GLY/FOR 160/14.4/4.8μg群はBUD/FOR(MDI製剤)群と比較し、主要評価項目である投与12~24週時のトラフ1秒量(FEV1)のベースラインからの変化量が有意に42mL改善した(95%信頼区間[CI]:10~74、p=0.011)。また、主要な副次評価項目である12~24週のFEV1 AUC0-3のベースラインからの変化量についても、有意に65mL改善した(95%CI:30~101、p<0.001)。KALOS試験における有害事象の発現割合は、BUD/GLY/FOR 160/14.4/4.8μg群51.5%(306/594例)、同160/7.2/4.8μg群58.8%(201/342例)、BUD/FOR(MDI製剤)群51.2%(310/606例)、BUD/FOR(pMDI製剤)群57.5%(346/602例)であり、各治療群間で同程度だった。両試験において、BUD/GLY/FOR 160/14.4/4.8μgに関する安全性または忍容性に関する新たなシグナルは認められなかった。なお、現在ビレーズトリは「ビレーズトリエアロスフィア」として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の適応で販売されている。今回の「ビレーズトリ14.4エアロスフィア」の製造販売承認に伴い、「ビレーズトリエアロスフィア」は「ビレーズトリ7.2エアロスフィア」へ販売名を変更し、流通開始後に「ビレーズトリエアロスフィア」は販売を終了する予定としている。

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乳児の言語学習、アイコンタクトが重要な手がかりに

 子どもの言語学習では、話しかける際に目を合わせること(アイコンタクト)が重要である――新たな研究で、このような可能性が示唆された。アイコンタクトは、話し手と乳児の脳活動の同期に関与し、乳児はアイコンタクトを手がかりに重要な情報を選択していることが、英ケンブリッジ大学のVictoria Leong氏らによる研究で明らかになった。この研究の詳細は、7月22日付で「Nature Communications」に掲載された。Leong氏は、「親は、アイコンタクトや子どもの名前を呼ぶことなどの社会的な手がかりを使う必要性を意識しなければならない。こうした手がかりは、単に子どもの注意を向けさせるだけではなく、学習プロセスそのものを活性化させるからだ」と述べている。 Leong氏らの過去の研究では、乳児と大人がアイコンタクトを取ると、双方の脳活動の同期が見られることが示されていた。しかし、こうした社会的手がかりが、乳児の学習において情報選択の「ゲート」として機能する神経メカニズムについては、明らかになっていなかった。 そこで研究グループは、シンガポールと英国で平均月齢9.4ヵ月の乳児47人を対象に実験を行い、アイコンタクトの有無で学習のしやすさや話者との脳活動パターンの同期が変わるかを調べた。実験では、順応フェーズとして、成人の話者が、3種類の異なる人工言語を話す動画を乳児に見せた。人工言語は、それぞれ12種類の音節から構成され、3つの音節からなる4種類の単語(例:「pe-tu-do」)が含まれていた。研究グループは、これらの人工言語を、1)話者の視線が見える、2)視線が不明瞭、3)視線が見えない、の3条件で提示した。なお、この動画を録画する際に、話者の脳波も測定された。 次の検証フェーズでは、人工言語を構成する「単語」と、単語の境界をまたいで音節を組み合わせた「非単語」を乳児に提示し、単語と非単語への注視時間の差から学習効果を評価した。研究グループは、乳児が人工言語の規則を学習していれば、既知の単語よりも未知の「非単語」を長く見ると予想した。 乳児の人工言語学習の程度が高いほど、話者と乳児の脳活動の同期(神経カップリング)が強く、その同期の程度は乳児の人工言語の学習成績を予測する上で、乳児自身の脳活動よりも有用であることが示された。ただし、そのような強い神経カップリングが見られたのは、乳児が話者の視線を完全に見ることができる条件に限られていた。Leong氏は、「乳児には3種類の言語を聞かせたが、実際に学習した言語は選択的であった。乳児は、単なる受動的な情報吸収者ではない。3種類の言語をすべて聞いたが、学習したのは話者の目を見ることができた条件下で提示された言語だけだった」と述べている。 また、脳活動の同期の程度は、学習を予測する上では、実験中に乳児が示した個々の脳活動よりも重要であった。論文の共著者であるケンブリッジ大学心理学科のKaili Clackson氏は、「乳児がスクリーンを注意深く見つめているように見えても、アイコンタクトがなければ、学習すべき情報として選択されにくかった。脳活動の同期は、情報が選択的に取り込まれていることを示している」とニュースリリースで述べている。この現象は、ケンブリッジとシンガポールの両方で確認されており、特定の文化に固有のものではなく、文化を超えて共通する特徴である可能性が示唆された。 ただし、注意を向ける必要性を伝える社会的な手がかりは、アイコンタクトだけではない。笑顔を見せること、指差し、乳児の名前を呼ぶことなども、その役割を果たし得ると研究グループは述べている。このような手がかりは、子どもと大人のアイコンタクトがあまり重視されない、あるいは好ましくないとされる文化では、言語発達においてより重要な役割を果たす可能性があるという。Clackson氏は、「こうした手がかりは非常に強力だ。新しい情報を伝える前にこのような手がかりを取り入れることで、『これは大事なことだから、しっかり聞いてね』というメッセージを乳児に伝えることができる」と述べている。

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第333回 藍色光で近視予防?

室内光には乏しくて、日光には豊富な波長の藍色光(indigo light)の近視予防効果が、ヒトに似た眼を持つ動物での検討で示されました1-3)。今や世界の28億人ほどが近視を患い、2050年には48億人ほどに増えると予想されています。近視は小児期に眼球の前後が本来の球状を超えて長くなりすぎ、眼の後方で光を感知する網膜の手前に光の焦点が来てしまうことで生じます。そのせいで遠くのものが不鮮明になります。近視はたいてい幼少期に始まって思春期に進行します。眼鏡やコンタクトレンズが必要になるだけならまだしも、高度の近視は網膜剥離、緑内障、黄斑変性などの失明を招きうる事態へとやがて進展する恐れがあります。小児の近視増加の原因解明の取り組みで2つのことが明らかになっています。その1つは屋外でより多くの時間を過ごすことは近視を防ぐらしいということです。もう1つはその逆で、屋内でより長く過ごすとどうやら近視になりやすいようです。屋内光に足りない要素を補うべく、赤色光を小児の眼に当てる治療の効果が無作為化試験で示されています4)。それらの試験で赤色光は眼球の伸長を減らす効果を示していますが、予防効果はないようです。それに、安全性の懸念があります。霊長類に近い小型哺乳類のツパイを使った今回の新たな研究によると、赤色光とは違って藍色の光こそ近視を予防する効果があるようです。ツパイの眼は構造や特徴がヒトに似通います。それに、ヒトと同じように夜間に眠って昼間の視力を必要とします。先立つマウスの検討で、波長360~400nmの紫色光が網膜の光感知タンパク質のOPN5を刺激して近視を防ぎうることが示されています。一方、今回の新たな研究で、ツパイの眼のレンズはヒトと同様に成熟するにつれて波長400nmに満たない光をあまり通さないようになることが判明しました。そこでより長い波長を試したところ、ツパイのOPN5は現代の室内光に乏しく、自然光により豊富な波長419~446nmの藍色光で活性化することが突き止められました。ツパイの室内環境での光に藍色光をより多く含めると、凹レンズ眼鏡(minus-lens wear)が誘導する近視を完全に防げました。藍色光の範囲外の紫や青色の波長の効果は完全ではなく部分的でした。今回の報告の責任著者のシンシナティ大学のRichard Lang氏を一員とするLumenarosは、教室の光を日光により似せる手段に取り組んでいます3)。もし効果があるなら、藍色が豊富な室内光の採用は小児の近視を生じ難くする安全で手広く実行できる手段となりそうです。一方、筆頭著者のアラバマ大学のRafael Grytz氏が設立したElectric Indigoは、もっと直接的な手段に取り組んでいます。それは藍色光を放つ眼鏡の開発5)です。宿題をしているときや朝ごはんを食べているときなどにその眼鏡をかけることで、子供たちの眼に藍色光をしばし届けることがやがて可能になるかもしれません3)。まだヒトに試す段階に至っておらず、臨床試験で効果や安全性を検証する必要があります。参考1)Grytz R, et al. Cell Rep Med.2026 Aug 18. [Epub ahead of print]2)Restoring a missing slice ofsunshine to indoor light may help prevent myopia / Eurekalert3)Could indigo light preventnearsightedness in children? / Science4)Bullimore MA, et al. InvestOphthalmol Vis Sci. 2025;66:39.5)Myopia and Indigo Light: GrytzPushes Boundaries in Vision Research / University of Alabama

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双極性障害の個別化治療の意思決定に、EBI-BDツールが有用/BMJ

 双極性障害は、平均余命の短縮や治療順守率の低さと関連しており、その一因として薬剤の忍容性の低さや患者の意思決定への関与が不十分であることが挙げられるが、共有意思決定の改善に寄与する、エビデンスに基づく意思決定支援ツールは限られているという。スペイン・バルセロナ大学のMichele De Prisco氏らは、U-REACH(living umbrella review, evaluation, analysis, and communication hub)計画の枠組みに基づいて開発されたEBI-BD(evidence based interventions for bipolar disorder)のツールが、双極性障害の個別化治療の意思決定に有益であることを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年8月11日号で報告された。プラットフォーム構築のためのリビングアンブレラレビュー 研究グループは、双極性障害における全年齢層および気分(mood)の各段階における治療戦略のエビデンスの確実性を系統的に評価し、共有意思決定を推進するためのオープンアクセス型ウェブプラットフォームを構築する目的で、利用可能なすべてのメタ解析のエビデンスを継続的に統合するリビングアンブレラレビュー(living umbrella review)を実施した(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。 2024年11月19日の時点で医学データベースに登録された関連文献を検索した。対象は、薬物療法、栄養補助食品療法、心理社会的介入、脳刺激療法、概日リズムに基づく治療に関する無作為化比較試験のネットワークメタ解析またはペアワイズメタ解析を含む系統的レビューであった。77研究の解析結果をウェブ上で公開 77件の研究が選定基準を満たした(ネットワークメタ解析21件、ペアワイズメタ解析56件)。これには、116種の個別の治療法(薬物療法74種、脳刺激療法18種、栄養補助食品療法13種、心理社会的介入8種、概日リズムに基づく治療3種)が、単剤療法、増強療法(施行中の治療レジメンへの追加の介入)、併用療法(2つの異なる介入を同時に開始)として含まれ、さらに5つの対照介入が行われた。 これらの研究は133項目のアウトカム(有効性アウトカム45項目、安全性アウトカム88項目)を評価しており、2,510件のメタ解析が行われた。GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluations)に基づくエビデンスの確実性は、「高」が236件、「中」が827件、「低」が986件、「非常に低」が461件だった。 研究グループは、情報共有ハブとしてEBI-BDプラットフォームを開発し、選好に基づく評価ツール(12の介入と17の安全性アウトカム)を含め、解析結果のすべてを無料で公開している(https://ebibd-database.org)。 今回の解析結果の一部を下記に示す。複数のアウトカム(主要、副次)に関して、プラセボまたは通常治療に比べ優れた有効性を示した介入は、病相によって異なった。 著者は、「U-REACHフレームワークは、複雑なエビデンスを統合するだけでなく、臨床医による実践的な意思決定を推進し、EBI-BDプラットフォームに組み込まれたデジタルツールは、臨床医と患者間のエビデンスに基づく共有意思決定の支援に有用である」「このリビングレビューは、双極性障害の臨床ケアを継続的に改善するための基盤となり、新たなエビデンスが現れた際には迅速に適応することが可能である」としている。・抑うつエピソードに有効な介入 成人:cariprazine、ルラシドン、オランザピン、クエチアピン(3つのアウトカムに関して有効)、divalproexまたはバルプロ酸、fluoxetine、ラモトリギン、lumateperone、オランザピンとfluoxetineの併用、ケタミン(増強療法)(2つのアウトカムに関して有効)。 小児・青年:ルラシドン(2つのアウトカムに関して有効)、オランザピンとfluoxetineの併用(3つのアウトカムに関して有効)。・躁病エピソードに有効な介入 成人:アリピプラゾール、アセナピン、cariprazine、ハロペリドール、リチウム、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、タモキシフェン(3つのアウトカムに関して有効)、カルバマゼピン、divalproexまたはバルプロ酸、ziprasidone、クエチアピン(増強療法)、リスペリドン(増強療法)(2つのアウトカムに関して有効)。 小児・青年:アリピプラゾール、アセナピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン(2つのアウトカムに関して有効)。・維持期に有効な介入 成人:集団心理教育(3つのアウトカムに関して有効)、アリピプラゾール(長時間作用型注射薬も含む)、アセナピン、divalproexまたはバルプロ酸、リチウム、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンの長時間作用型注射薬(2つのアウトカムに関して有効)。 小児・青年:有効な介入はない。・複数の病相を通じて有効な介入 成人:divalproexまたはバルプロ酸、オランザピン(増強療法としても)、クエチアピン(増強療法としても)(以上、3つの病相で有効)、cariprazine(2つの病相[抑うつ、躁病]で有効)、認知行動療法(増強療法)、ラモトリギン(以上、2つの病相[抑うつ、維持期]で有効)、アリピプラゾール(増強療法および長時間作用型注射薬としても)、アセナピン、リチウム、パリペリドン、リスペリドン(増強療法および長時間作用型注射薬としても)(以上、2つの病相[躁病、維持期]で有効)。 小児・青年:有効な介入はない。

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MRIが耳の中の鉄球を吸いこんだ【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第312回

MRIが耳の中の鉄球を吸いこんだ異物論文専門医として毎日PubMedを眺めている私ですが、今回はいつもと少し勝手が違いました。というのも、異物を取り出したのが医師ではなく、MRIそのものだったからです。「MRI室に金属を持ち込んではいけない」これは医療者なら誰もが叩き込まれる大原則です。ペースメーカー、動脈瘤クリップ、体内に残った金属片。強力な磁場は、それらを一瞬で凶器に変えてしまいます。ところが今回の論文は、その磁力が「隠れていた異物」のほうを暴いてしまった、という逆転劇でした。Mckinnon K, et al. An unexpected ferromagnetic foreign body in a paediatric researchparticipant undergoing 3T MRI. BMJ Case Rep. 2024;17:e258969.舞台はイギリス。早産で生まれた子供の脳の発達を追う縦断研究に、男児が参加していました。その日、研究用の脳MRIを撮る予定でした。研究チームは、当然ながら安全対策を徹底していました。書面と口頭による安全チェックリスト、金属の有無の確認、髪や肌の視触診。撮影前には「安全のための小休止」まで設け、子供には磁場のない模擬スキャナーで予行演習までさせる念の入れよう。ここまでやれば、まず金属が紛れ込む余地はなさそうに思えます。さて、いよいよ本番。母親が男の子を抱き上げ、ボア(あの筒の穴)をのぞかせてあげました。その瞬間、スタッフは見ました。何かが、ヒュンとボアの中へ飛んでいくのを。すぐに子供と母親をMR環境の外へ避難させ、ボアの中を調べてみると、そこには直径5mmの鉄球が転がっていたのです。耳の中に入っていた鉄球が、MRIの磁力にヒュンッと引き抜かれて飛んでいったのでした。幸い、耳に外傷はありませんでした。考えてみれば、これはかなり際どい出来事です。3テスラという磁場は、地磁気のおよそ数万倍。強磁性体であれば、たとえ5mmの小さな鉄球でも、磁石に引かれて弾丸のように振る舞います。飛び出す向きやタイミングが少し違っていれば、外耳道や鼓膜を傷つけていたかもしれません。驚いたのは親御さんです。鉄球のことなどまったく知らず、子供自身も「耳に何か入れた」とは一言も言っていませんでした。ただ、よくよく振り返ってみると、ここ2週間ほど、聞こえがおかしいかも、という違和感がうっすらあったそうです。犯人は、ずっとそこにいたわけです。MRI撮影時は、本人も家族も知らない金属が、するりとすり抜けてしまうことがある。それを、身をもって(というかMRIをもって)教えてくれた1例です。

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第73回 インフルエンザワクチンが変わる? 米国で世界初の「mRNAインフルワクチン」承認

新型コロナワクチンでおなじみになった「mRNAワクチン」という技術。これをインフルエンザに応用したモデルナのワクチン「mRNA-1010(商品名:mFLUSIVA)」が、この夏、米国で承認されました1)。対象は50歳以上の成人で、米国では2026~27年シーズンからの接種開始が見込まれています。製造期間が「6ヵ月」から「6週間」に皆さまご存じのとおり、従来のインフルエンザワクチンの多くは、鶏の卵の中でウイルスを育てて作られています。この方法では製造に約6ヵ月かかるため、「今年はどの型が流行するか」という予測を、流行の半年も前、2~3月頃には決めてしまわなければなりません。ところがインフルエンザウイルスは絶えず姿を変えるため、秋になってみたら別の型が流行していて、ワクチンとの「ミスマッチ」が起きてしまうことがあります。一方、mRNAワクチンはウイルスの設計図にあたる遺伝情報を合成して作るため、製造は約6週間で済むとされます。流行の直前まで中身を調整できるわけですから、予測が外れるリスクを減らせるのではと期待されているのです。「27%減」は何を意味するのか承認の根拠となった臨床試験には、米国を含む11ヵ国で50歳以上の約4万1,000人が参加しました。半分の方がmRNAワクチンを、残り半分が従来型ワクチンを接種し、約半年間の経過をみたところ、検査で確定したインフルエンザの発症はmRNA群で約2.0%、従来型群で約2.8%。相対的にみてmRNA群が約27%少なかった、という結果です2)。ここで少し立ち止まってみたいのですが、この「27%」は割合の比較であって、「接種した人の27%が発症を免れる」という意味ではありません。100人当たりでいえば、発症が約0.8人減った計算になります。小さな差に見えるかもしれませんが、社会全体でみれば入院や死亡の減少につながりうる差ですし、リスクの高い65歳以上に限った解析でも同程度の効果が確認されています。副反応は、注射部位の痛みや倦怠感、頭痛などが従来型よりやや多かったものの、大半は軽度から中等度で、一時的なものだったと報告されています。まだわからないこと、私たちにできることもちろん、限界もあります。データはまだ1シーズン分だけで、米国で65歳以上の標準とされる「高用量ワクチン」との直接比較は行われていません。免疫能の低下した方やフレイルのある高齢者での効果も、まだ確立していません。そのため65歳以上への承認は条件付きの「迅速承認」で、今後2シーズンかけて約40万人規模の市販後試験で効果が検証される予定です。ソーシャルメディアなどでは「mRNAワクチンは効かない」といった根拠のない主張も聞かれますが、mRNAワクチンが中心だった新型コロナワクチンは、控えめに見積もっても世界で250万人以上の命を救ったと推計されており、データはむしろ逆の結果を示しています3)。日本では、インフルエンザに対するmRNAワクチンはまだ承認されていません。当面は従来型ワクチンでの接種が続きますが、米国では65歳以上は人口の2割弱ながら、インフルエンザ関連死亡の70~85%を占めるとされます。高齢の方にとって毎年の接種が大切であることは、これまでと変わりません。新しい技術の続報を待ちながら、今シーズンもまずは現行のワクチンで備えましょう。1)Rubin R. What to know about the mRNA flu vaccine, newly approved by the FDA. JAMA. 2026 Aug 14. [Epub ahead of print]2)Leroux-Roels I, et al. Efficacy and safety of an mRNA seasonal influenza vaccine in adults. N Engl J Med. 2026;394:1803-1813.3)Ioannidis JPA, et al. Global estimates of lives and life-years saved by COVID-19 vaccination during 2020-2024. JAMA Health Forum. 2025;6\:e252223.

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よくかめる小学生ほど体力が高い傾向、男子でより顕著

 子どもの口腔機能は、食べることだけでなく全身の発育や健康との関わりも注目されている。今回、日本の小学生約1,200人を対象とした研究で、よくかめる小学生ほど体力が高い傾向があり、その関連は男子でより顕著であることが明らかになった。研究は大阪大学大学院歯学研究科有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座の平松里彩氏、高阪貴之氏らによるもので、詳細は7月6日付で「Journal of Dentistry」に掲載された。 子どもの体力は、現在の健康状態だけでなく将来の健康にも影響するとされ、体力に関わる要因を明らかにすることは公衆衛生上の重要な課題となっている。一方、咀嚼機能は食物をかみ砕いて栄養を摂取する上で重要な役割を果たすだけでなく、成人や高齢者では身体機能やフレイル、生活の質(QOL)との関連も報告されている。しかし、子どもの咀嚼能力と体力との関連については十分な検討が行われておらず、特に総合的な体力との関連や男女差を調べた研究は限られていた。こうした背景から、著者らは日本の小学生を対象に、総合体力スコアを用いて咀嚼能力と体力との関連を検討し、さらに男女差についても解析した。 研究では、大阪MELON研究(Mastication research in Elementary school student teaching applying LONgitudinal Study)の一環として、大阪市内29校の市立小学校に通う小学4年生1,225人(男子608人、女子617人)を対象とした。2023年4月~2024年3月に身体測定や歯科検診を実施し、咀嚼能力と体力との関連を調べた。咀嚼能力は、色が変化するガムを1秒に1回のペースで1分間かんでもらい、60回咀嚼後の色の変化を専用アプリで解析して評価した。体力については、握力、上体起こし、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、立ち幅跳び、ソフトボール投げの7項目を測定し、これらを基に総合体力スコアを算出した。さらに、身長や体重の影響を考慮した統計解析を行い、咀嚼能力と総合体力スコアとの関連を検討した。 解析の結果、咀嚼能力は、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、ソフトボール投げ、および総合体力スコアと有意に関連していた。男女別では、男子で上体起こし、20mシャトルラン、ソフトボール投げ、総合体力スコアとの関連が認められ、女子では20mシャトルランとの関連が認められた。 さらに、身長や体重などを考慮した解析では、全体および男子で咀嚼能力と総合体力スコアとの有意な関連が認められたが、女子では有意な関連はみられなかった。ただし、性別によって関連の強さが異なることを示す統計的な差は認められなかった。著者らは、女子で明確な原因が認められなかった背景として、発達段階や生活習慣など今回評価していない要因が影響した可能性を挙げている。 著者らは、咀嚼能力は口腔機能の指標にとどまらず、学童期の身体的な発達や機能状態とも関連する可能性があると指摘している。今回の研究は横断研究であるため因果関係は明らかにできないものの、子どもの健全な成長を支える観点から、適切な咀嚼習慣や口腔機能の発達を促すことの重要性が示唆されたとしている。

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ADHD治療薬、種類により体重への影響は異なる

 注意欠如・多動症(ADHD)の治療で広く用いられる2種類の中枢神経刺激薬、dexamphetamine(デキサアンフェタミン、デキストロアンフェタミン)とメチルフェニデートは、いずれも同程度に症状を改善するものの、体重に与える影響には違いが見られ、dexamphetamine群ではより体重が減少する傾向が認められたことが、臨床試験で示された。シドニー大学(オーストラリア)小児科・小児保健学分野のAlison Poulton氏らによるこの試験の詳細は、7月7日付で「Journal of Paediatrics and Child Health」に掲載された。 ADHDは、注意を持続することや衝動を抑えることなどに困難が生じる神経発達症である。ADHDを有する小児では、学校生活、友人関係の構築、集中力の維持など、日常生活のさまざまな場面で困難が生じる。世界では2021年時点で、20歳未満でのADHD患者数は約4700万人と推定されている。米国では3~17歳の約12%がADHDと診断されている一方、オーストラリアでは約8%とされている。2023年にオーストラリアでADHD治療薬を処方された18歳未満の人の数は、10年前と比べて約2.5倍に増加したという。 この研究では、これまで中枢神経刺激薬による治療を受けていなかったADHDの小児100人(平均年齢9.08歳、男児73%)を対象に、dexamphetamineまたはメチルフェニデートのいずれかを投与する群に50人ずつランダムに割り付け、有効性と副作用を比較した。薬の投与開始後は4週間の用量調整期間を設け、その間は毎週、教師が学校でIOWA Conners評価尺度で症状を評価した。その後は、臨床判断に基づいて用量調整や薬の変更を行い、対象者を12カ月間追跡した。 その結果、いずれの群も全ての評価時点でADHD症状が有意に改善し、両群間で効果に有意差は認められなかった。12カ月時点で62人が割り付けられた薬の使用を継続しており、患者・保護者による薬の選好にも有意差は認められなかった。さらに、3カ月時点で両群ともに体重減少が認められたが、減少幅はdexamphetamine群の方がメチルフェニデート群より大きかった(1.44 kg対0.31 kg)。12カ月時点では、メチルフェニデート群ではベースラインから1.26 kg増加したのに対し、dexamphetamine群では0.84 kg減少していた。一方、12カ月時点の身長増加量は、メチルフェニデート群で4.9 cm、dexamphetamine群で4.4 cmで、両群間に有意差は認められなかった。 Poulton氏は、「大きな違いは、dexamphetamineを服用した小児で、体重減少がより大きかったことだ。これは治療薬を選択する際や成長を経過観察する際に考慮すべき重要な点である」とニュースリリースで述べている。

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