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HER2陽性胃がん2次治療、T-DXdがラムシルマブ+パクリタキセルを上回る(DESTINY-Gastric04)/ASCO2025

 切除不能または転移のあるHER2陽性胃がんに対する標準的な1次治療は、トラスツズマブ+化学療法の併用である。最近のKEYNOTE-811試験の結果に基づき、CPS 1以上であればペムブロリズマブ併用も推奨される。その後の2次治療の標準治療はラムシルマブ+パクリタキセルまたはペムブロリズマブだが、ペムブロリズマブは今後1次治療で使われることが見込まれ、ラムシルマブ+パクリタキセルが実質的な標準治療の位置付けとなる。 DESTINY-Gastric04試験は、現在は切除不能HER2陽性胃がんの3次治療以降に承認されているADC・トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)を、2次治療としてラムシルマブ+パクリタキセル併用療法と直接比較した試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏が本試験の結果を発表し、この内容はNEJM誌オンライン版2025年5月31日号に同時掲載された。・試験デザイン:国際共同無作為化第III相試験・対象:前治療歴のあるHER2陽性の切除不能胃がんまたは胃食道接合部腺がん・試験群:T-DXd 6.4mg/kgを3週ごと(T-DXd群)・対照群:ラムシルマブ+パクリタキセル(RAM+PTX群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・494例がT-DXd群に246例、RAM+PTX群に248例に1対1に割り付けられた。中間解析のデータカットオフ日(2024年10月24日)時点で、T-DXd群18.9%、RAM+PTX群の18.5%が治療を継続していた。アジアからの参加者は23%だった。・OS中央値はT-DXd群で14.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.1~16.6)、RAM+PTX群で11.4ヵ月(95%CI:9.9~15.5)、ハザード比(HR)は0.70(95%CI:0.55~0.90)でT-DXd群が有意に延長した。設定されたいずれのサブグループでも同様の傾向だった。・PFS中央値はT-DXd群で6.7ヵ月(95%CI:5.6~7.1)、RAM+PTX群で5.6ヵ月(95%CI:4.9~5.8)、HRは0.74(95%CI:0.59~0.92)で、こちらも有意な延長を示した。ORRはT-DXd群44.3%対RAM+PTX群29.1%で、こちらも有意な結果が示された。・治療期間の中央値は、T-DXd群5.4ヵ月、RAM+PTX群で4.6ヵ月だった。薬剤関連有害事象の発現率はT-DXd群で93.0%、RAM+PTX群で91.4%、うちGrade3以上は50.0%と54.1%だった。・Grade3以上でよくみられたのは、T-DXd群では好中球減少症(28.7%)と貧血(13.9%)、RAM+PTX群では好中球減少症(35.6%)、貧血(13.7%)、白血球減少症(12.4%)であった。薬剤関連間質性肺疾患または肺臓炎はT-DXd群の13.9%、RAM+PTX群の1.3%に認められた。 設楽氏は「HER2陽性胃がんにおいて、T-DXdはラムシルマブとパクリタキセルの併用療法と比較してOSを有意に延長し、PFS、ORR、DORにも改善が見られた。有害事象は両群で多く認められたが、既知の重大なリスクであるT-DXd投与に伴う間質性肺疾患または肺臓炎は低レベルであった。本試験の結果はT-DXdが切除不能HER2陽性胃がんの2次治療の標準治療となることを示すものだ」とした。 現地で発表を聴講した相澤病院・がん集学治療センターの中村 将人氏は「HER2陽性胃がんの2次治療が変わる、まさにプラクティスチェンジとなる発表だった。OSのHRをはじめ、PFS、ORRとも申し分のないデータだ。T-DXdはすでに実臨床で使われており、有害事象も既知の範囲であり、今後の承認が見込まれる」とコメントした。

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DLBCLの予後予測、1次治療後のPhasED-Seqを用いたctDNAによるMRDが有用~前向き多施設共同研究/ASCO2025

 1次治療を受けるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の予後予測に、治療終了時におけるPhasED-seq(phased variant enrichment and detection sequencing)を用いた循環腫瘍DNAによる測定可能残存病変(ctDNA-MRD)検出が有用であることが、全国規模の前向き多施設共同研究で示された。オランダ・Amsterdam UMC Location Vrije UniversiteitのSteven Wang氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。 本研究では、オランダとベルギーの50施設を超える医療機関で1次治療を受けるDLBCL患者の前向きリアルワールドコホートにおいてctDNA-MRDを評価した。患者は根治目的の1次治療(R-CHOPまたはDA-EPOCH-R)を受け、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)におけるMRDの有無の予後予測的意義を評価した。フェーズドバリアントはベースラインのサンプル(FFPE検体または治療前の血漿サンプル)から同定し、ctDNA-MRD検出には治療終了時の血漿サンプルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・登録された172例のうち評価可能な患者は163例で、うち160例(98%)でフェーズドバリアントの同定に成功した。年齢中央値は67歳(範囲:18~88歳)、男性が64%であった。DLBCLが90%、高悪性度B細胞リンパ腫/変異型低悪性度非ホジキンリンパ腫が9%、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫/血管内大細胞型B細胞リンパ腫が2%であった。90%がR-CHOP療法を受け、免疫化学療法の6サイクルを完了した。 ・治療終了時のctDNA-MRD陽性は、PFS(ハザード比[HR]:11.03、95%信頼区間[CI]:6.27~19.40、p<0.0001)およびOS(HR:7.38、95%CI:3.72~14.62、p<0.0001)の予後不良を予測した。・Ann Arborステージが進行期もしくはIPIスコアが高い患者は、治療終了時にctDNA-MRD陽性となる可能性が高かった。・標準的な予測因子であるIPIスコアと治療終了時のPET-CTとの比較において、IPIスコア(HR:1.61、95%CI:0.93~2.79、p=0.086)、PET-CT(HR:5.31、95%CI:2.87~9.82、p<0.0001)に比べ、ctDNA-MRD(HR:11.03、95%CI:6.27~19.40、p<0.0001)が最もPFSの予後を予測した。・治療終了時にPETで完全代謝寛解(CMR)を達成していない患者における3年PFSは、ctDNA-MRD陰性で64%、陽性で4%であった。CMRを達成した患者の3年PFSは、ctDNA-MRD陰性で89%、陽性で36%で、再発の大部分が1次治療後1年以内であった。・治療終了時のctDNA-MRDと1次治療後の再発時期との相関関係をみたところ、1年以内に再発した患者の80%はctDNA-MRDが陽性であるのに対し、1年を超えて再発した患者のうち陽性は22%だった。 Wang氏は「これらの結果は1次治療中のDLBCL患者におけるctDNA-MRDの予後予測の価値を明らかにし、ctDNA-MRDがPET-CTを超える残存病変のエビデンスを提供することが示された」とし、「本研究は1次治療中のDLBCL患者における奏効評価の標準的な構成要素として、PhasED-seqによるctDNA-MRDの統合を支持するもの」と結論した。

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ED-SCLCへのアテゾリズマブ+化学療法、維持療法にlurbinectedin上乗せでPFS・OS改善(IMforte)/ASCO2025

 PS0/1の進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)の標準治療は、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬であり、維持療法としてPD-L1阻害薬単剤での投与を継続する。カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブによる治療の維持療法に、lurbinectedinを上乗せすることで、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が改善することが示された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Luis Paz-ares氏(スペイン・Hospital Universitario 12 de Octubre)が、海外第III相無作為化比較試験「IMforte試験」のOSの中間解析およびPFSの主解析の結果を報告した。本結果は、Lancet誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された1)。・試験デザイン:海外第III相無作為化比較試験(13ヵ国96施設で実施)・対象:1次治療としてカルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブを4サイクル実施後に病勢進行がみられず、維持療法への移行が可能であったED-SCLC患者・試験群(lurbinectedin+アテゾリズマブ群):維持療法としてlurbinectedin(3.2mg/m2、3週ごと)+アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと) 242例・対照群(アテゾリズマブ群):維持療法としてアテゾリズマブ(同上) 241例・評価項目:[主要評価項目]独立判定委員会(IRF)評価によるPFS、OS[副次評価項目]治験担当医師評価によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は、lurbinectedin+アテゾリズマブ群65歳(範囲:38~85)、アテゾリズマブ群67歳(同:35~85)であり、65歳未満の割合は、それぞれ48.8%、37.3%であった。導入療法開始時に肝転移を有していた割合は、それぞれ41.3%、39.0%であった。・導入療法(カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ)のORRは、lurbinectedin+アテゾリズマブ群87.3%、アテゾリズマブ群88.6%であった。・無作為化後のIRF評価によるPFS中央値は、lurbinectedin+アテゾリズマブ群5.4ヵ月、アテゾリズマブ群2.1ヵ月であり、lurbinectedin+アテゾリズマブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.43~0.67、p<0.0001[有意水準α=0.001])。12ヵ月PFS率は、それぞれ20.5%、12.0%であった。・IRF評価によるPFSのサブグループ解析では、いずれのサブグループにおいてもlurbinectedin+アテゾリズマブ群が優位な傾向がみられた。・無作為化後のOS中央値は、lurbinectedin+アテゾリズマブ群13.2ヵ月、アテゾリズマブ群10.6ヵ月であり、lurbinectedin+アテゾリズマブ群が有意に改善した(HR:0.73、95%CI:0.57~0.95、p=0.0174[有意水準α=0.0313])。12ヵ月OS率は、それぞれ56.3%、44.1%であった。・OSのサブグループ解析でも、ほとんどのサブグループにおいてlurbinectedin+アテゾリズマブ群が優位な傾向がみられた。・無作為化後のベースライン時を基準としたORRは、lurbinectedin+アテゾリズマブ群19.4%(CRは4例[2.3%])、アテゾリズマブ群10.4%(CRは1例[0.5%])であった。DOR中央値は、それぞれ9.0ヵ月、5.6ヵ月であった。・Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は、lurbinectedin+アテゾリズマブ群25.6%、アテゾリズマブ群5.8%であり、lurbinectedin+アテゾリズマブ群で多い傾向にあった。ただし、試験薬の中止に至ったTRAEの発現割合はそれぞれ6.2%、3.3%であり、大きな増加はみられなかった。また、安全性に関する新たなシグナルは認められなかった。・lurbinectedin+アテゾリズマブ群では、発熱性好中球減少症(1.7%vs.0%)やGrade3/4の感染症および寄生虫症(6.6%vs.5.0%)が多い傾向にあった。 本結果について、Paz-ares氏は「IMforte試験は、ED-SCLC患者への1次治療の維持療法において、PFSおよびOSを改善した初の第III相試験である。1次治療の維持療法において、lurbinectedin+アテゾリズマブが新たな標準治療となる可能性を強調するものであった」とまとめた。 本試験に日本は参加していないが、SCLC患者の治療選択肢の向上に向けて、メルクバイオファーマは日本におけるlurbinectedinのライセンス、開発、商業化に関する契約をPharmaMarと締結したことが、2025年4月に発表されている。

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第266回 一般消費者向けDTC検査サービスに新ガイドライン、医師資格を持たない事業者が検査結果に基づき個人の疾患の罹患可能性を通知するのは医師法違反

厚生労働省と経済産業省が「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」を改正こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、八ヶ岳山麓にリタイア後住んでいる大学時代のクラブの先輩宅で開かれた麻雀大会に参加するため、長野県原村まで車を飛ばして行って来ました。大学卒業後、40年以上たって老年となった人間たちが11人集まり、麻雀卓2卓で2日間、メンバーを適当に変えながら各人半荘5~6回戦ってトータル点数を競うというものです。集まったメンツは学年にして4学年の幅があり、皆、それなりの年齢ということで健康状態もさまざまでした。がんについて言えば、参加した11人中4人が罹患していました。2人がこの3年ほどの間に食道がんの手術を受けて、1人は大腸がんの放射線治療と化学療法を昨年経験済みでした。さらにもう1人は、胃がんを5年前に内視鏡手術で取っていました。この人数、多いのか少ないのかはよくわかりませんが、最近、高校時代の同級生など同世代と飲むと大体3人中1人はがんの経験者ですから、ほぼ平均的と言えるでしょう。ただ、私のクラブ、食道がんがやや多過ぎますね。ちなみに、この4学年の幅の中のクラブの在籍者総数は大体40人ほどで、自殺者1人、ALSによる死亡1人、山での遭難死(落石が頭部直撃)1人です。コホート研究ではないですが、ある大学クラブの卒業生の“その後”としては、それなりに平均的な結果と言えるのではないでしょうか。ま、いずれにせよ、これから、今回のメンバーの中からもがん患者は出てくるでしょう。がんはエイジングの結果ですから仕方ありません。なお、麻雀大会の私の成績は2位でした。優勝は逃しましたが、親で「リーチ、ツモ、ドラ8」の倍満を上がったのはいい思い出になりました。ということで今回は、公表から少々時間が経ってしまいましたが、3月末に厚生労働省と経済産業省が改正した「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」について書いてみたいと思います。今回の改正では、非臨床の一般消費者向け(Direct to Consumer:DTC)検査サービスについての記載が大幅に追加、医師法に違反しないようにとの注意喚起が行われました。いい加減なエビデンスしかないのに「がんが見つかる」などと喧伝し、多くの問題点が指摘されてきたDTC検査サービスはこれで駆逐されるのでしょうか?厚労省のヘルスケアスタートアップPT報告書を機にガイドライン改正へ非臨床のDTC検査サービスとは民間事業者が検体(血液、尿、唾液など)をもとに病気のリスクなどを判定する検査サービスを指します。本連載でも「第88回 がんが大変だ! 検診控え依然続き、話題の線虫検査にも疑念報道(前編)」「第89回 がんが大変だ! 検診控え依然続き、話題の線虫検査にも疑念報道(後編)」などでその問題点を繰り返し指摘してきました。昨年7月の「第223回 厚労省ヘルスケアスタートアップPT報告書を読む(後編) あの一般向けがんリスク判定会社もターゲットか?消費者向けの各種検査サービス、医師法に照らし合わせて総点検へ」では、厚生労働省の「ヘルスケアスタートアップ等の振興・支援策検討に関するプロジェクトチーム」が公表した最終報告書の内容を紹介、「医師法違反という観点から法令違反の恐れがある事例がまとめられ、検査の結果(リスク判定)を消費者にフィードバックする際の表現についてもガイドラインが設けられる可能性があります」と書きました。それが実行に移されたのが、今回の「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」の改正というわけです。「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めた医師法第17条との関係について法解釈同ガイドラインにはさまざまな関連法令と照らし合わせて、DTC検査サービスはどこまで行っていいのかについての法解釈が記されています。最重要と考えられる「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めた医師法第17条との関係については次のように記されています。「医師法第 17 条により、民間事業者は、医業に該当しない範囲で検体採取や検査(測定)後のサービス提供を実施する必要があり、採血等の医行為に該当する行為や、検査(測定)結果に基づく疾患の罹患可能性の提示や診断等の医学的判断を行うことはできない。このため、採血等の検体採取については、民間事業者ではなく、利用者自らによって行われる必要がある。また、民間事業者は、検査(測定)結果に基づく疾患の罹患可能性の提示や診断等の医学的判断を行うことはできないため、検査(測定)後のサービス提供については、検査(測定)結果の事実や検査(測定)項目の一般的な基準値、検査(測定)項目に係る一般的な情報を通知することに留めなければならず、利用者から見て事実や一般的な基準値・情報が示されているということが客観的に認識可能な程度に医学的・科学的根拠が示された通知内容としなければならない」つまり、「医師資格を持たない事業者が検査結果に基づいて個人の疾患の罹患可能性を通知することは医師法違反」と明確に位置付けたわけです。さらに、医師などではない民間事業者が行う検査後のサービス提供は、「検査結果の事実や検査項目の一般的な基準値、検査項目に係る一般的な情報を通知することに留め、客観的に認識可能な程度に医学的・科学的根拠が示された通知内容としなければならない」点についても明文化しました。「一般的な情報の通知に留めよ」というルールは非常に重いと考えられます。ガイドラインではさらに突っ込んで、「検査結果の事実と検査項目の基準値やリスク分類との相対的な位置付けのように、一見すると客観的な事実を提示しているかのような内容であったとしても、当該基準値や当該リスク分類の設定について、なんらの医学的・科学的根拠が通知内容に示されていない場合や、一般的な基準値と言えない値に基づいている場合には、客観的な事実を提示しているとは評価できない」「検査項目が基準値内にあることをもって、利用者が健康な状態であることを断定するといった利用者個人の健康状態の医学的評価は行ってはならない」「検査項目が基準値外にあることをもって、利用者個人の疾患の罹患可能性を提示してはならない」とも記述しています。それだけDTC検査サービス事業者の検査結果の通知に関する不適切事例が多かったということなのでしょう。医師法17条に違反する4例示す、「一般的な情報提供である」等の注意書きをしていたとしても個人の疾患の罹患可能性を通知することは違法なお、同ガイドラインには医師法17条に違反する例として、次の4つを例示しています。1.検体を採取する際に、無資格者である民間事業者が利用者から検体を採取する場合。2.無資格者である民間事業者が、利用者に対して、個別の検査(測定)結果を用いて、利用者の健康状態を評価する等の医学的判断を行った上で、食事や運動等の生活上の注意、健康増進に資する地域の関連施設やサービスの紹介、利用者からの医薬品に関する照会に応じたOTC医薬品の紹介、健康食品やサプリメントの紹介、より詳しい健診を受けるように勧めることを行う場合。3.無資格者である民間事業者が、利用者に対して、利用者の個別の検査(測定)結果を用いて、当該利用者個人の疾患の罹患可能性を通知する場合。なお、形式的に「これは一般的な情報提供である」等の注意書きをしていたとしても、利用者の個別の検査(測定)結果を用いて、当該利用者個人の疾患の罹患可能性を通知することは違法となる。4.無資格者である民間事業者が、利用者に対して、利用者の個別の検査(測定)結果が、疾患の罹患や健康状態の医学的評価に係るリスク分類のいずれに属するかを通知する場合で、当該リスク分類の根拠となる基準値について、実質的になんらの医学的・科学的根拠が示されていない場合や、民間事業者等が恣意的に設定している場合。冷静さを装うDTC検査サービス事業者同ガイドラインの改正は今後、DTC検査サービス事業者にどんな影響を及ぼすでしょうか。4月18日付けの日経バイオテクは「厚労省と経産省、DTC検査ガイドラインでは 『医学的診断と誤解させない情報提示を』」と題する記事を発信、「同ガイドラインは大幅に改正されたものの、DTC検査ビジネスへの影響は大きくはなさそうだ」と書いています。同記事は、同ガイドライン に対するDTC検査サービスを提供する複数の事業者のコメントを紹介しています。「明確に論拠が示され、誤認を防ぐ対策が加えられたと理解している」(ジーンサイエンス、東京都千代田区)、「ジーネックスでは一般的な情報提供としての疾患の罹患リスクに言及することはあるが、事業者側の目線だけではなく、社会的・法的・論理的な観点を重視して、利用者の健康維持に関して望まれているサービスを提供していきたい」(ジーネックス、東京都港区)、「今回の改正でサービスの内容に大きな変更は予定していない」(Craif、東京都文京区)と一見冷静な対応に見えます。また、一般社団法人の遺伝情報取扱協会も、同協会のウェブサイトで同ガイドラインの改正に対する見解を公表、同協会が策定する「個人遺伝情報を取扱う企業が遵守すべき自主基準」と合致する内容であるとコメントしています。どの事業者も、「われわれはきちんとやってきているので、動揺していない」と冷静さを装っているようです。「事実上の『野放し』状態から一歩進んだ」ものの「課題はまだ残されている」「23種類のがんを判定できる」などと宣伝して全国展開しているHIROTSUバイオサイエンス(東京都千代田区)の線虫がん検査キット「N-NOSE」に対し、厳しい批判報道を行ってきたNewsPicksは、4月18日付で「厚労省ガイドライン改定で検査ビジネス『野放し』終えんか」と題する記事を発信しています。同記事は、ガイドライン改正に対する識者の評価やDTC検査サービス事業者へのアンケートを紹介、「結果報告書の通知に関するルールが明確化されたことで、検査ビジネスは、事実上の『野放し』状態から一歩進んだ。利用者の保護やサービスの健全な発展に向けた土台が整い始めたと言える。 だが、ガイドラインの解釈が事業者により分かれる可能性があるうえ、検査自体の有効性という『本丸』には踏み込んでいないという点でも、課題はまだ残されている」と記事を結んでいます。医師法違反の実際の事例が出てくれば、「野放し」状態は一掃に向かうのではおそらく、法律での規定ではなく、強制力が弱いガイドライン(指針)である点が、まだ事業者にある種の余裕を生んでいるのかもしれません。今後、ガイドラインに基づいて、医師法違反の実際の事例が摘発されれば、「野放し」状態は一掃に向かうのではないでしょうか。そう言えば、一時、テレビや東京の地下鉄の車内掲示などでよく目にした線虫がん検査のCMや広告を最近目にしません。やはり少なからぬ影響が出ているのかもしれません。ちなみに、冒頭に書いた麻雀大会に参加したクラブの仲間たちの中に、DTC検査サービスを利用した人間は誰もいませんでした。おそらく、今彼らにがん関連のDTC検査サービスを受けさせ、仮に“陽性”が出て精密検査を受けさせれば、何人かでがんが見つかることでしょう。また、“陰性”だった人間にも精密検査を受けさせれば、やはり何人かでがんが見つかるでしょう。なにせ、みんなもう老人なのですから。

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術後ctDNA陽性StageIII結腸がんへの治療強化、RFS改善は得られず(DYNAMIC-III)/ASCO2025

 術後にctDNAが検出されると再発リスクが高いことは多くの研究で報告されている。DYNAMIC-IIIはStageIIIの結腸がん患者を対象に、術後のctDNA検出に基づいた補助化学療法と標準治療を比較した試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Peter MacCallum Cancer Centre(オーストラリア)のJeanne Tie氏が、本試験の1次解析結果を報告した。ctDNA陽性であれば治療強化、陰性であれば減弱し、それぞれを標準治療と比較する試験デザインで、今回はctDNA陽性例の解析が発表された。・試験デザイン:多施設共同ランダム化第II/III相試験・対象:切除可能なステージIIIの結腸がん患者・試験群:治療強化ストラテジー(化学療法なし→5FU/カペシタビン、5FU/カペシタビン→6ヵ月のオキサリプラチンベースの2剤療法、3ヵ月の2剤療法→6ヵ月の2剤療法または3ヵ月内のFOLFOXIRI、6ヵ月の2剤療法→3ヵ月内のFOLFOXIRIをリスクに応じて選択:ctDNA情報提供群)129例・対照群:ctDNA検査の結果は非表示、医師選択による治療(標準療法群)130例・評価項目:[主要評価項目]2年無再発生存期間(RFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・961例の適格症例において259例(27%)がctDNA陽性で、ctDNA情報群と標準治療群に1対1で割り付けられた。このうち高リスク(T4、N2)はctDNA情報群77例(60%)、標準治療群69例(53%)で、観察期間中央値は42.2ヵ月だった。・129例のctDNA情報提供群において、115例(89%)が治療強化ストラテジーを受け、うち65例(50%)が3ヵ月内のFOLFOXIRI、56例(44%)が6ヵ月の2剤療法を受けた。130例の標準治療群では14例(11%)がフルオロピリミジン単剤、112例(86%)がオキサリプラチン併用2剤療法であった。・主要評価項目である2年RFSはctDNA情報提供群で52%(90%信頼区間[CI]:44~59)、標準治療群で61%(90%CI:54~68%)であった。HRは1.11(90%CI:0.83~1.48)であり、ctDNA情報提供群での優越性は認められなかった。・ctDNA情報提供群でFOLFOXIRIとFOLFOX/CAPOXを受けた症例の3年RFSは同等であった(47%対51%、HR:1.09)。再発リスクはctDNA量とともに増加し、腫瘍由来のctDNA量を四分位したときの3年RFSは、それぞれ78%、63%、36%、22%であった。・治療関連入院率は、治療強化群と標準治療群で類似していた(オッズ比:1.21)。補助化学療法後のctDNA解析は進行中となっている。 Tie氏は「本試験はStageIII結腸がんを対象に、ctDNA情報に基づく戦略を検討した最初のランダム化研究だった。検出可能なctDNAの予後意義を確認し、ctDNA負荷量が増加するにつれて再発リスクが増加するという新たな知見を得た。しかし、ctDNAに基づく治療強化はRFSを改善しなかった。ctDNA陽性患者における今後の研究では、ほかの治療強化戦略を検証すべきだ」とした。 現地で聴講した相澤病院・がん集学治療センターの中村 将人氏は「ctDNAによって術後補助療法の強度を変える、というのは魅力的なストラテジーだが、今回の結果はネガティブだった。同様のアプローチの試験は米国・欧州などにおいても進行中であり、中でも日本でCIRCULATE-Japanが行うALTAIR試験(ctDNA陽性の治癒切除後の大腸がん患者を対象に、FTD/TPI療法とプラセボとを比較する無作為化二重盲検第III相試験)の結果に注目している」とコメントした。

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HER2+進行乳がん1次治療のT-DXd+ペルツズマブ、進行/死亡リスクを44%減(DESTINY-Breast09)/ASCO2025

 HER2+の進行または転移を有する乳がん患者の1次治療として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+ペルツズマブ併用療法の有用性を評価した第III相DESTINY-Breast09試験の中間解析の結果、現在の標準治療よりも無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを、米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。 DESTINY-Breast09試験は、HER2+の進行または転移を有する乳がん患者の1次治療として、T-DXd単独またはT-DXd+ペルツズマブ併用療法の有効性と安全性を、標準治療であるタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(THP療法)と比較評価することを目的として実施された。対象は、HER2+(IHC 3+またはISH+)の進行または転移を有する乳がんと診断され、進行・転移病変に対する化学療法またはHER2標的療法の治療歴がない、または内分泌療法歴が1ラインのみの患者であった。術前または術後補助療法として化学療法またはHER2標的療法の治療歴があっても、進行・転移までの期間が6ヵ月を超える場合は対象となった。 主要評価項目はRECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、主要副次評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は治験責任医師によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、2次治療開始後のPFS(PFS2)、安全性であった。 今回は、T-DXd+ペルツズマブ併用療法vs.THP療法の中間解析結果が報告された(データカットオフ:2025年2月26日)。 主な結果は以下のとおり。・T-DXd+ペルツズマブ群は383例、THP群は387例であった。年齢中央値は、54歳(範囲:27~85)/54歳(同:20~81)、アジア人が49.1%/49.4%、IHC 3+が83.0%/81.4%、HR+が54.0%/54.0%、de novoが52.2%/51.7%、PIK3CA変異陽性が30.3%/31.3%、脳転移ありが6.5%/5.7%、術前または術後補助療法歴ありが43.3%/43.7%であった。・主要評価項目であるBICRによるPFS中央値は、T-DXd+ペルツズマブ群40.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:36.5~NC)、THP群26.9ヵ月(同:21.8~NC)であり、T-DXd+ペルツズマブ群において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.56[95%CI:0.44~0.71]、p<0.00001)。24ヵ月PFS率は70.1%および52.1%であった。・治験責任医師によるPFS中央値は、T-DXd+ペルツズマブ群40.7ヵ月(95%CI:36.5~NC)、THP群20.7ヵ月(同:17.3~23.5)であった(HR:0.49[95%CI:0.39~0.61]、p<0.00001)。24ヵ月PFS率は68.6%および43.7%であった。・PFSのベネフィットはサブグループ間で一貫していた。・BICRによるORRは、T-DXd+ペルツズマブ群85.1%(95%CI:81.2~88.5)、THP群78.6%(同:74.1~82.5)であった。完全奏効率は、15.1%および8.5%であった。・BICRによるDOR中央値は、T-DXd+ペルツズマブ群39.2ヵ月(95%CI:35.1~NC)、THP群26.4ヵ月(同:22.3~NC)であった。・OSデータおよびPFS2データは未成熟であったが、T-DXd+ペルツズマブ群で良好な傾向がみられた。・Grade3以上の治療関連有害事象は、T-DXd+ペルツズマブ群54.9%、THP群52.4%に発現し、重篤な試験治療下における有害事象は27.0%および25.1%に発現した。間質性肺疾患/肺臓炎は、T-DXd+ペルツズマブ群46例(12.1%、Grade5が2例[0.5%])およびTHP群4例(1.0%、すべてGrade1/2)に発現した。T-DXd+ペルツズマブ群の安全性は既知のプロファイルと一致していた。 これらの結果より、Tolaney氏は「DESTINY-Breast09試験において、T-DXd+ペルツズマブ併用療法は統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるPFSの改善をもたらした。HER2+進行乳がん患者の新たな第1選択の標準治療となる可能性がある」とまとめた。

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小細胞肺がん2次治療、タルラタマブがOS・PFS改善(DeLLPhi-304)/ASCO2025

 2ライン以上の治療歴を有する小細胞肺がん(SCLC)患者を対象とした国際共同第II相試験「DeLLphi-301試験」1)において、タルラタマブが良好な成績を示したことを受け、本邦では「がん化学療法後に増悪した小細胞肺癌」の適応で2025年4月16日に発売された。また、『肺癌診療ガイドライン2024年版』では、全身状態が良好(PS0~1)な再発SCLCの3次治療以降にタルラタマブを用いることを弱く推奨することが記載されている2)。より早期におけるタルラタマブの有用性を検討する試験として、SCLCの2次治療におけるタルラタマブの有用性を化学療法との比較により検証する国際共同第III相試験「DeLLphi-304試験」が進行中である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Charles M. Rudin氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)が、本試験の第1回中間解析の結果を報告した。本試験において、タルラタマブは化学療法と比較して全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を改善することが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された3)。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:プラチナ製剤を含む化学療法±抗PD-1/PD-L1抗体薬による1次治療を受けたSCLC患者(無症候性の脳転移は治療歴を問わず許容)・試験群(タルラタマブ群):タルラタマブ(1日目に1mg、8、15日目に10mgを点滴静注し、以降は2週間間隔で10mgを点滴静注) 254例・対照群(化学療法群):化学療法(トポテカン、アムルビシン、lurbinectedinのいずれか)※ 255例・評価項目:[主要評価項目]OS[主要な副次評価項目]PFS、患者報告アウトカム[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など※:日本はアムルビシン 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は、タルラタマブ群64歳、化学療法群66歳であった。脳転移を有する割合は、それぞれ44%、45%であり、肝転移については、それぞれ33%、37%であった。1次治療で抗PD-1/PD-L1抗体薬による治療を受けた割合は、いずれの群も71%であった。・主要評価項目のOS中央値は、タルラタマブ群13.6ヵ月、化学療法群8.3ヵ月であり、タルラタマブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.60、95%信頼区間[CI]:0.47~0.77、p<0.001)。1年OS率は、それぞれ53%、37%であった(追跡期間中央値はそれぞれ11.2ヵ月、11.7ヵ月)。・OSのサブグループ解析において、化学療法無治療期間が6ヵ月未満(化学療法抵抗性)の集団を含めて、いずれのサブグループでもタルラタマブ群が良好な傾向にあった。とくに脳転移を有する集団でタルラタマブ群が優位であった(HR:0.45、95%CI:0.31~0.65)。・PFS中央値は、タルラタマブ群4.2ヵ月、化学療法群3.7ヵ月であり、タルラタマブ群が有意に改善した(HR:0.71、95%CI:0.59〜0.86、p=0.002)。1年PFS率は、それぞれ20%、4%であった。・ORRは、タルラタマブ群35%、化学療法群20%であり、DOR中央値は、それぞれ6.9ヵ月、5.5ヵ月であった。・患者報告アウトカムの息切れ、咳についてもタルラタマブ群が化学療法群と比べて有意に改善した(それぞれp<0.001、p=0.012)。胸痛については、有意差がみられなかったもののタルラタマブ群が良好な傾向にあった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は、タルラタマブ群27%、化学療法群62%であった。治療中断または減量に至ったTRAEの発現割合は、タルラタマブ群19%、化学療法群55%であった。・タルラタマブの注目すべき有害事象であるサイトカイン放出症候群(CRS)は、タルラタマブ群の56%に発現したが、そのうちの98%はGrade1/2であった。またCRSの多くが投与2回目までに発現した。・免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は、タルラタマブ群の6%に発現したが、1例を除いてGrade1/2であった。1例はGrade5であった。 本結果について、Rudin氏は「タルラタマブがSCLCの2次治療における標準治療となることを支持するものであり、DeLLphi-304試験はSCLCの2次治療の標準治療を塗り変えるだけでなく、肺がん領域におけるBiTE(二重特異性T細胞誘導)抗体による免疫療法の活用法に、新たな時代を切り拓くものであると考えている」とまとめた。

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PD-L1陽性の未治療進行TN乳がん、SG+ペムブロリズマブがPFSを改善(ASCENT-04/KEYNOTE-D19)/ASCO2025

 PD-L1を発現する未治療で手術不能の局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、サシツズマブ ゴビテカン(SG)+ペムブロリズマブ併用療法の有効性と安全性を評価した第III相ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験の結果、SG+ペムブロリズマブは化学療法+ペムブロリズマブよりも無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを、米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。・試験デザイン:国際共同非盲検ランダム化第III相試験・対象:PD-L1を発現する(CPS≧10、22C3アッセイ)、未治療(根治治療の完了から6ヵ月以上経過)で手術不能の局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者 443例・試験群:サシツズマブ ゴビテカン(21日サイクルの1・8日目に10mg/kg)+ペムブロリズマブ(21日サイクルの1日目に200mg) 221例・対照群:医師選択の化学療法(ゲムシタビン+カルボプラチン、パクリタキセル、nab-パクリタキセル)+ペムブロリズマブ※ 222例 ※病勢進行時はSGへのクロスオーバーが許容・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、BICRによる奏効率(ORR)、BICRによる奏効期間(DOR)、安全性、QOL・データカットオフ:2025年3月3日 主な結果は以下のとおり。・443例が両群に1:1に無作為に割り付けられ、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで投与が継続された。追跡期間中央値は14.0ヵ月(範囲:0.1~28.6)であった。・年齢中央値はSG+ペムブロリズマブ群54歳、化学療法+ペムブロリズマブ群55歳、両群ともにde novoが34%、6~12ヵ月以内の再発が18%、12ヵ月以上前の再発が48%であった。以前の治療歴は、タキサン系が52%/51%、ゲムシタビン+カルボプラチンが48%/49%、PD-(L)1阻害薬が4%/5%であった。・主要評価項目であるBICRによるPFS中央値は、SG+ペムブロリズマブ群11.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.3~16.7)、化学療法+ペムブロリズマブ群7.8ヵ月(同:7.3~9.3)であり、SG+ペムブロリズマブ群において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.65[95%CI:0.51~0.84]、p<0.001)。12ヵ月PFS率は、48%および33%であった。・治験担当医評価のPFS中央値は、SG+ペムブロリズマブ群11.3ヵ月(95%CI:9.2~14.6)、化学療法+ペムブロリズマブ群8.3ヵ月(同:7.3~9.3)であった(HR:0.67[95%CI:0.52~0.87]、p=0.002)。12ヵ月PFS率は、48%および36%であった。・ORRは、SG+ペムブロリズマブ群60%(95%CI:52.9~66.3)、化学療法+ペムブロリズマブ群53%(同:46.4~59.9)であった(オッズ比:1.3[95%CI:0.9~1.9])。完全奏効は13%および8%であった。・DOR中央値は、SG+ペムブロリズマブ群16.5ヵ月(95%CI:12.7~19.5)、化学療法+ペムブロリズマブ群9.2ヵ月(同:7.6~11.3)であった。・OSデータは未成熟(成熟度26%)であったが、SG+ペムブロリズマブ群において良好な傾向がみられた。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)は、SG+ペムブロリズマブ群71%、化学療法+ペムブロリズマブ群70%に発現した。10%以上に発現したGrade3以上のTEAEは、SG+ペムブロリズマブ群では好中球減少症(43%)と下痢(10%)で、化学療法+ペムブロリズマブ群では好中球減少症(45%)や貧血(16%)、血小板減少症(14%)であった。新たな安全性シグナルは認められなかった。・SG+ペムブロリズマブ群では、TEAEによる治療中止が化学療法+ペムブロリズマブ群よりも少なかった(12%および31%)。 これらの結果より、Tolaney氏は「ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験の結果は、SG+ペムブロリズマブ併用療法がPD-L1陽性の未治療進行トリプルネガティブ乳がん患者に対する新たな標準治療となる可能性を支持するものである」とまとめた。

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BRAF V600E変異mCRC、エンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6は新たな1次治療に(BREAKWATER)/ASCO2025

 BREAKWATERは、BRAF V600E変異転移大腸がん(mCRC)における、1次治療としてのエンコラフェニブ+セツキシマブ+化学療法と標準治療を比較評価する試験である。2025年1月に行われた米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025)では、主要評価項目の1つである奏効率(ORR)の主解析結果、全生存期間(OS)の中間解析結果の報告が行われ、ORRはEC+mFOLFOX6群が有意に高く(60.9%vs.40.0%)、OSのハザード比(HR)も0.47と大きな差が付いたことに注目が集まっていた。これまでの本試験の報告に基づき、本レジメンはBRAF V600E変異mCRCに対し、米国食品医薬品局(FDA)から1次治療を含む早期承認を取得している。 2025年5月30日に始まった米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)では、Vall d'Hebron University Hospital(スペイン・バルセロナ)のElena Elez氏が、本試験の無増悪生存期間(PFS)の主解析結果およびOS、安全性などの更新データを報告した。この内容は2025年5月30日のNEJM誌オンライン版に同時掲載された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のBRAF V600E変異mCRC患者637例・試験群:エンコラフェニブ300mg1日1回経口投与、セツキシマブ500mg/m2、mFOLFOX6を2週間ごと投与(EC+mFOLFOX6群:236例)・対照群:医師選択による化学療法±ベバシズマブ(標準治療群:243例)※当初はEC群を含めた試験デザインだったものを2群にプロトコール変更・評価項目:[主要評価項目]PFS、ORR[副次評価項目]OS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2025年1月6日)におけるPFS中央値はEC+mFOLFOX6群12.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.2~15.9)、標準治療群7.1ヵ月(95%CI:6.8~8.5)、HRは0.53(95%CI:0.407~0.677)と、EC+mFOLFOX6群が有意に延長した。・更新されたOS中央値はEC+mFOLFOX6群30.3ヵ月(95%CI:21.7~未到達)、標準治療群15.1ヵ月(95%CI:13.7~17.7)、HRは0.49(95%CI:0.375~0.632)と、こちらもEC+mFOLFOX6群が有意に延長した。・ORRはEC+mFOLFOX6群65.7%、標準治療群37.4%だった。・治療関連有害事象は、Grade3/4がEC+mFOLFOX6群で76.3%、標準治療群で58.5%に発生した。Grade5は標準治療群の1例だった。頻度の高いものは悪心、貧血、下痢だった。 Elez氏は「本試験は二重の主要評価項目を達成した。EC+mFOLFOX6群は標準治療群と比較して臨床的に意味のある、かつ統計学的に有意なPFSおよびOSの改善を示し、毒性は管理できる範囲内だった。EC+mFOLFOX6は、BRAF V600E変異mCRCの1次治療における新たな標準治療となるだろう」とまとめた。  現地で聴講した相澤病院・がん集学治療センターの中村 将人氏は「今回のOSのアップデートに注目していたが、HRが0.49と非常に良い結果だった。予後不良の代表的例であるBRAF変異においてOSが30ヵ月を超える時代が来たことは感慨深い。BRAF V600E変異mCRCの2次治療にはEC+ビニメチニブの3剤併用療法があるが、本レジメンはビニメチニブを使わず、後治療に残しておけることにも意味がある。日本において本レジメンの承認はこれからだが、いずれの薬剤もすでに臨床で使われているものであり、明日からの実臨床を変える結果だと感じた」とコメントした。

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EGFR陽性NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブが新たな1次治療の選択肢に/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、2025年3月27日にアミバンタマブ(商品名:ライブリバント)とラゼルチニブ(同:ラズクルーズ)の併用療法について、「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応で、厚生労働省より承認を取得し、2025年5月21日にラゼルチニブを販売開始した。ラゼルチニブの販売開始により、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で、アミバンタマブ+ラゼルチニブが使用可能となった。そこで、2025年5月22日にメディアセミナーが開催され、アミバンタマブ+ラゼルチニブが1次治療で使用可能となったことの意義や、使用上の注意点などを林 秀敏氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 主任教授)が解説した。EGFRとMETを標的とし、EGFR-TKIのアンメットニーズを満たす可能性 『肺癌診療ガイドライン2024』では、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCの1次治療として第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のオシメルチニブ単剤を強く推奨している(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:A)1)。 しかし、第3世代EGFR-TKIによる治療でも耐性が生じてしまうことも報告されている。耐性機序としては、TP53遺伝子変異、EGFR遺伝子変異(C797S変異)、MET遺伝子増幅などがある。MET経路はEGFR経路とクロストークすることが知られており、EGFR-TKIによってEGFR経路を阻害してもMET経路が活性化してしまうことで、がん細胞は増殖・生存すると考えられている。 そこで開発されたのが、EGFRとMETを標的とする二重特異性抗体アミバンタマブである。アミバンタマブは、EGFRおよびMETに結合することで、それらへのリガンド結合を阻害し、MET経路の活性化を抑制することが期待される。また、免疫細胞上に存在するFcγ受容体を介して抗体依存性細胞傷害活性を惹起することによっても、抗腫瘍活性を示すことが考えられている。オシメルチニブ単剤と比較してPFSとOSを改善 未治療のEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者を対象として、アミバンタマブ+ラゼルチニブ、ラゼルチニブ単剤とオシメルチニブ単剤を比較した国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」2)において、アミバンタマブ+ラゼルチニブ群は、オシメルチニブ単剤群と比較して無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が有意に改善したことが報告されている。本試験の結果を基に、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLCの1次治療として、アミバンタマブ+ラゼルチニブの製造販売が承認された。PFSおよびOSの結果は以下のとおり(アミバンタマブ+ラゼルチニブ群vs.オシメルチニブ単剤群)。<PFS(主要評価項目)>・PFS中央値23.72ヵ月vs.16.59ヵ月(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.58~0.85、p=0.0002)・2年PFS率48%vs.34%<OS(重要な副次評価項目)>・OS中央値未到達vs.36.73ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.61~0.92、p=0.0048)・死亡が認められた割合40.3%vs.50.6%注意すべき副作用とその対処法 アミバンタマブ+ラゼルチニブの使用において注意すべき副作用として、皮膚障害、静脈血栓塞栓症、インフュージョンリアクションなどがある。これらについて、林氏は「発現頻度が高く、注意が必要となるが、十分にマネジメント可能である」と述べる。そこで、林氏はこれらの対処法を紹介した。 皮膚障害については、非常に発現が多いこともあり、医師による患者教育が重要となると林氏は指摘する。実際には、皮膚の保湿をしっかりと行い、皮疹が発現したときにはすぐに外用薬を使用するように指導するほか、低刺激の洗浄剤を用いて体をきれいに保つことを指導するという。洗浄剤について、林氏は「子供用のシャンプーの使用をおすすめすることもある」と述べ、低刺激のものを選ぶことの重要性を強調した。 静脈血栓塞栓症は、MARIPOSA試験のアミバンタマブ+ラゼルチニブ群の37%に発現したことが報告されており、留意が必要な有害事象である。これについては、予防的抗凝固薬の投与により発現が抑えられることがわかってきており、今回の承認にあたって添付文書に「治療開始4ヵ月間は、アピキサバン1回2.5mgを1日2回経口投与すること」と記載されている。 インフュージョンリアクションは初回投与時(1サイクル目の1日目)に発現することが多く、対策としては、とくに最初の2回目の投与まではデキサメタゾンを用いると林氏は述べた。EGFR-TKI耐性後のアミバンタマブ+化学療法も使用可能に オシメルチニブ単剤療法で病勢進行が認められたEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA-2試験」3)の結果から、EGFR-TKIによる治療後に病勢進行が認められたNSCLC患者に対し、カルボプラチンおよびペメトレキセドとの併用においてアミバンタマブが使用可能となったことも2025年5月19日に発表されている。MARIPOSA-2試験において、アミバンタマブ+化学療法群は化学療法群と比較して、主要評価項目のPFSが有意に延長し(HR:0.48、95%CI:0.36~0.64、p<0.001)、PFS中央値はアミバンタマブ+化学療法群6.28ヵ月、化学療法群4.17ヵ月であった。 以上から、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の1次治療および2次治療でアミバンタマブが使用可能となった。これを受け、林氏は「EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の生存期間の改善のために、アミバンタマブが今後幅広く使用されることが期待される」と締めくくった。

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「がんと栄養」に正しい情報を!がん患者さんのための栄養治療ガイドライン発刊

 日本栄養治療学会(JSPEN)は2025年2月、『がん患者さんのための栄養治療ガイドライン 2025年版』(金原出版)を刊行した。JSPENが患者向けガイドラインを作成するのは初めての試みだ。5月14日には刊行記念のプレスセミナーが開催され、比企 直樹氏(北里大学医学部 上部消化管外科学)と犬飼 道雄氏(岡山済生会総合病院 内科・がん化学療法センター)が登壇し、ガイドライン作成の経緯や狙いを解説した。【比企氏】 世の中には「〇〇を食べると健康に良い」といった根拠の乏しい情報があふれている。とくにがんに関しては、科学的根拠のない栄養療法や補助食品の情報があふれており、患者や家族が正しい情報を得ることに苦労している。一方で、最近ではがん治療と栄養療法に関連した研究が増え、「どの栄養素を、どれだけ摂取すれば、どんな効果があるか」に関するエビデンスが蓄積されてきた。実際、がんの薬物療法や手術治療において、栄養治療が副作用の軽減や合併症の予防に寄与することが明らかになっている。こうした背景から、患者さんが正しい情報を得られるよう、情報を整理するために作成されたのがこのガイドラインだ。 JSPENは約2万4,000名の会員を抱える世界最大級の臨床栄養学の学会であり、会員の職種は医師、看護師、薬剤師、管理栄養士など多岐にわたる。実際、医療現場において栄養治療はNST(栄養サポートチーム)として多職種で担うことが多く、こうした医療者向けに昨年10月に『がん患者診療のための栄養治療ガイドライン 総論編』(金原出版)を刊行した。入院期間中はNSTが支援できるだろうが、外来治療中や退院後に不安になったときに、今回の患者向けガイドラインを使ってもらえればと考えている。患者さんの目に留まりやすいようポップな雰囲気の表紙にし、イラストを使うなどの工夫をした。全国のがん診療連携拠点病院を中心に1,000冊以上を寄付する取り組みも行っており、ぜひ手にとっていただきたい。【犬飼氏】 本ガイドライン作成に先立ち、がん患者へのアンケートを行った。334人から回答があり、Webアンケートだったこともあり、乳がんや血液がんの比較的若年層が多かった。「がん治療中の悩み」として多く挙がった項目としては、「リハビリテーションや運動療法、生活の仕方」が最多で29%、「食事のメニュー」が23%、「薬物療法の際の食事や栄養」が20%だった。口腔状態(9%)や手術後の栄養(5%)の項目は挙げる人が比較的少なかった。術後の栄養指導は診療報酬加算があり、医療機関が一般的に行っていることが不安解消につながったのではと分析している。 栄養に関するアンケートのつもりが、「リハビリに関する悩み」が最多という結果を受け、ガイドラインでは46のQ&Aのうち、リハビリに関するものを9つ設定した。また、口腔に関する悩みは少なかったものの、口腔環境が食欲不振や味覚障害に影響することを知らない人も多いと考え、口腔関連で7つのQ&Aを設定した。その他が栄養に関するQ&Aという構成だ。 がん薬物療法では、副作用の重症度を評価する指標であるCTCAEを使って、副作用の程度にかかわらず、それに応じた栄養治療の必要性が示されている。「がんになると体重が減って当たり前」と考える患者や家族も多いが、体重を維持することでQOL向上や副作用の軽減、治療の成績や予後の改善につながることがわかっている。こうした背景から、「がん治療中、体重は維持したほうがよいですか?」というQ&Aを設け、体重維持の重要性を強調している。がんによる体重減少には「食べられないで痩せる」と「食べていても痩せる」という2つの要因があり、前者はうつや吐き気、味覚障害、口内炎などが原因であることも多く、介入による改善が期待できる。ただし、「体重を減らすな、しっかり食べろ」と言うだけでは、食欲不振などで食べられず、ストレスを感じる患者・家族もいるだろう。そうした場合にお勧めの食品や調理法を提示し、栄養剤や点滴などの方法もあることを紹介した。 がん治療前に口腔ケアをすることで、手術の合併症や口内炎の悪化を防ぐことも知ってほしい。体力低下には有酸素運動が有効で、患者には「栄養・運動・社会参加」のバランスが大切であることを伝えている。「がん治療のさまざまな場面で、多職種が適切に栄養治療をサポートする」というメッセージを込めた。このガイドラインが、患者や家族が医療者に悩みを相談するきっかけになればと考えている。『がん患者さんのための栄養治療ガイドライン 2025年版』定価:2,420円(税込)判型:B5判頁数:144頁(カラー図数:34枚)発行:2025年2月編集:日本栄養治療学会目次・1章 がんにならないために・2章 がんになったら・3章 薬物療法が始まったら・4章 手術が決まったら・手術をしたら・5章 がん治療後について・6章 緩和医療において書籍情報はこちら

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早期HER2+乳がん、術後化療+トラスツズマブへのペルツズマブ上乗せでOS改善(APHINITY)/ESMO BREAST 2025

 HER2陽性乳がんに対する術後化学療法+トラスツズマブへのペルツズマブの上乗せを検証した第III相APHINITY試験の最終解析の結果、ペルツズマブの上乗せにより全生存期間(OS)が有意に改善したことを、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2025、5月14~17日)で報告した。 APHINITY試験は、HER2陽性の手術可能な早期乳がん患者(4,804例)を対象に、術後療法として化学療法+トラスツズマブにペルツズマブを上乗せした際のプラセボに対する無浸潤疾患生存期間(iDFS)における優越性を検証したプラセボ対照無作為化比較試験。中間解析において、ペルツズマブ群では、プラセボ群よりもiDFSの有意な改善を示した。今回は、追跡期間中央値11.3年の最終解析結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・死亡はペルツズマブ群205例(8.5%)、プラセボ群247例(10.3%)に発生した(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.69~1.00、p=0.0441[有意水準はp≦0.0496])。・10年OS率は、ペルツズマブ群91.6%、プラセボ群89.8%であった。・リンパ節転移陽性患者(HR:0.79、95%CI:0.64~0.97)ではペルツズマブ上乗せによるOSの有意な改善が認められたが、リンパ節転移陰性患者(HR:0.99、95%CI:0.66~1.49)では認められなかった。・ホルモン受容体陽性患者(HR:0.76、95%CI:0.60~0.97)ではペルツズマブ上乗せによるOSの有意な改善が認められたが、ホルモン受容体陰性患者(HR:0.94、95%CI:0.70~1.26)では認められなかった。・中間解析で認められたペルツズマブ上乗せによるiDFSの改善は11.3年時点でも維持されていた(HR:0.79、95%CI:0.68~0.92)。・10年iDFS率は、ペルツズマブ群87.2%、プラセボ83.8%であった。・リンパ節転移陽性患者ではペルツズマブ上乗せによるiDFSのベネフィットは引き続き臨床的に意義のあるものであったが、リンパ節転移陰性患者ではベネフィットは認められなかった。・心臓に対する新たな安全性シグナルは特定されなかった。 これらの結果より、Cortes氏は「リンパ節転移陰性の場合には化学療法+トラスツズマブを引き続き術後補助療法として選択すべきであるが、リンパ節転移陽性の場合にはペルツズマブも投与すべきである」とまとめた。

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進行・再発子宮頸がんに対するチソツマブ べドチン発売/ジェンマブ

 ジェンマブは2025年5月21日、がん化学療法後に増悪した進行または再発の子宮頸がんに対する治療薬として、チソツマブ べドチン(遺伝子組換え)(商品名:テブダック点滴静注用40mg)を発売したことを発表した。本剤は、組織因子を標的とするヒトモノクローナル抗体に、プロテアーゼ切断可能なリンカーを用いて微小管阻害薬モノメチルアウリスタチンE(MMAE)を共有結合させた、進行または再発の子宮頸がんに対するファースト・イン・クラスの抗体薬物複合体(ADC)である。 チソツマブ べドチンは、国際共同無作為化非盲検第III相試験(innovaTV 301/SGNTV-003試験)などの成績に基づいて承認された。innovaTV 301/SGNTV-003試験では、化学療法の前治療歴がある進行または再発の子宮頸がん患者502例(日本人患者101例を含む)を対象として、治験担当医師が選択した化学療法単剤との比較において、主要評価項目である全生存期間を統計学的有意に延長した。<製品概要>商品名:テブダック点滴静注用40mg一般名:チソツマブ ベドチン(遺伝子組換え)効能又は効果:がん化学療法後に増悪した進行又は再発の子宮頸癌効能又は効果に関連する注意:1.本剤の1次治療における有効性及び安全性は確立していない。2.本剤の術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない。用法及び用量:通常、成人にはチソツマブ ベドチン(遺伝子組換え)として1回2mg/kg(体重)を30分以上かけて、3週間間隔で点滴静注する。ただし、1回量として200mgを超えないこと。なお、患者の状態により適宜減量する。薬価:テブダック点滴静注用40mg 252,241円製造販売承認日:2025年3月27日薬価基準収載日:2025年5月21日発売日:2025年5月21日製造販売元:ジェンマブ株式会社

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EGFR陽性NSCLC、EGFR-TKI後のアミバンタマブ+化学療法が承認/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年5月19日、アミバンタマブ(商品名:ライブリバント)と化学療法の併用療法について「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に対する用法及び用量の一部変更の承認を取得したことを発表した。本承認により、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)による治療後に病勢進行が認められた非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し、カルボプラチンおよびペメトレキセドとの併用においてアミバンタマブが使用可能となる。 本承認は、オシメルチニブ単剤療法で病勢進行が認められたEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA-2試験」の結果1)に基づくものである。本試験において、アミバンタマブ+化学療法群は化学療法群と比較して、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し(ハザード比:0.48、95%信頼区間:0.36~0.64、p<0.001)、PFS中央値はアミバンタマブ+化学療法群6.3ヵ月、化学療法群4.2ヵ月であった。また、確定奏効率はアミバンタマブ+化学療法群53%、化学療法群29%であった。<今回追加された「効能又は効果に関連する注意」「用法及び用量」「用法及び用量に関連する注意」の主な記載>2)・効能又は効果に関連する注意 EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療後に増悪した患者に対してカルボプラチン及びペメトレキセドナトリウムと併用する場合は、臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。[17.1.3参照]・用法及び用量EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌にはA法、EGFR遺伝子変異(エクソン20挿入変異を除く)陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌にはA法又はB法を使用する。 A法:カルボプラチン及びペメトレキセドナトリウムとの併用において、3週間を1サイクルとし、通常、成人にはアミバンタマブ(遺伝子組換え)として以下の用法及び用量で点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。 <略>B法:ラゼルチニブメシル酸塩との併用において、4週間を1サイクルとし、通常、成人にはアミバンタマブ(遺伝子組換え)として以下の用法及び用量で点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。<略>・用法及び用量に関連する注意EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療歴のないEGFR遺伝子変異(エクソン20挿入変異を除く)陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対するA法の有効性及び安全性は確立していない。 本剤、ラゼルチニブ、カルボプラチン及びペメトレキセドナトリウムの併用投与は行わないこと。

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コロナ入院患者の院内死亡リスク、オミクロン後もインフルの1.8倍超/感染症学会・化学療法学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、オミクロン株流行以降、重症度が低下したとする報告がある一方、インフルエンザと比較すると依然として重症度が高いとの報告もある。国内の死亡者数においても、5類感染症移行後、COVID-19による死亡者数はインフルエンザの約15倍に上ると厚生労働省の統計で報告されている。こうした背景から、長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの研究グループは、COVID-19患者の入院中の死亡リスクをインフルエンザ患者と比較評価した。本結果は、5月8~10日に開催された第99回日本感染症学会総会・学術講演会/第73回日本化学療法学会総会 合同学会にて、前田氏が発表した。 本研究は、徳洲会メディカルデータベースを用いた後ろ向きコホート研究として実施された。DPCシステムに加入する50施設のデータから、18歳以上で入院契機病名がCOVID-19またはインフルエンザである患者を対象とした。解析対象期間は、インフルエンザ患者が2018年1月~2022年12月、COVID-19患者が2020年3月~2022年12月。両検査陽性者、入院時病名と検査結果の不一致例、COVID-19患者における抗体投与目的と考えられる短期入院例、転帰不明例は除外された。統計解析には、競合リスクを考慮した原因別ハザードモデルを使用し、インフルエンザ患者と比較したCOVID-19患者の院内死亡ハザード比を算出した。年齢、性別、チャールソン併存疾患指数(CCI)、高齢者施設入所の有無、入院医療機関を調整因子とした。90日超の入院は90日で打ち切りとした。また、COVID-19の流行時期による臨床状況の変化を考慮し、以下の3期間に分けて解析を行った。・I期:流行開始~ワクチン導入前(2020年3月~2021年2月)・II期:ワクチン導入後~オミクロン株流行前(アルファ株、デルタ株流行期)(2021年3月~2021年12月)・III期:オミクロン株流行期(2022年1月~2022年12月) 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、COVID-19入院患者1万8,336例、インフルエンザ入院患者2,657例。年齢中央値は、COVID-19患者のI期(3,695例):65歳(四分位範囲:48~78)、II期(5,959例):55歳(44~71)、III期(8,682例):80歳(68~88)、インフルエンザ患者:82歳(74~88)。・院内死亡割合は、インフルエンザ患者で5.9%に対し、COVID-19患者ではIII期(オミクロン株流行期)が9.1%であった。I期は6.3%、II期は5.5%であった。・人工呼吸器やHFNC/NPPVの使用割合は、アルファ株やデルタ株が流行したII期が最も高かった。 -人工呼吸器の使用:COVID-19 II期 7.8%vs.インフルエンザ 3.5% - HFNC/NPPVの使用:COVID-19 II期 8.8%vs.インフルエンザ 0.6%・入院期間は、COVID-19の全期間とインフルエンザでほぼ同様の約10日であった。・インフルエンザと比較したCOVID-19の院内死亡ハザード比は、I期:1.51(95%信頼区間[CI]:1.16~1.96)、II期:2.21(1.73~2.83)、III期:1.85(1.53~2.24)であり、II期が最も高かった。・入院時に酸素投与が必要であった患者に限定した場合も、I期:1.76(95%CI:1.18~2.64)、II期:2.17(1.50~3.14)、III期:2.01(1.53~2.65)となり、同様の傾向が認められた。 前田氏は本研究の結果について「COVID-19入院患者は、インフルエンザの入院患者と比較して、全期間を通じて院内死亡リスクが高いことが明らかになった。入院時に酸素投与を受けた患者に限定した解析でも同様の結果であり、入院時点で一般に入院適応があると考えられる患者に限定しても、COVID-19の死亡リスクが高いことが示唆された。新型コロナワクチン導入後の期間においては、入院患者が若年であり、入院時点でワクチン接種が完了していない集団であった可能性が考えられるが、本研究ではワクチン接種歴のデータが含まれていないため、今後の検討課題としたい」と結論付けた。

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東北大学医学部 臨床腫瘍学分野【大学医局紹介~がん診療編】

川上 尚人 氏(教授)西條 憲 氏(講師)石川 史織 氏(大学院生)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴東北大学は、国際卓越研究大学として創薬を重点戦略に掲げており、腫瘍内科はその出口となる治療開発の最前線を担います。当科では「患者さんから教わり、学び、患者さんに還元する」をモットーに、がん診療に根ざした臨床的疑問を起点として、新たな治療法やエビデンスを創出できる腫瘍内科医の育成を目指しています。こうした目標のもと、当科では診療に加えて治験や特定臨床研究への関与を通じた実践的な学びを重視しています。とくに、専攻医の段階から症例報告や原著論文の執筆に取り組み、学会参加や発表を積極的に支援することで、将来の専門性・研究力へとつなげます。地域のがん診療における医局の役割宮城県内のすべてのがん診療連携拠点病院が当科の関連施設であり、診療と教育の両面で地域医療の中核的役割を果たしています。腫瘍救急、緩和ケア、ゲノム医療まで幅広い領域に対応できる環境が整っており、多様な臨床力を実地で身につけることができます。今後医局をどのように発展させていきたいか今後は、キャリア支援やメンター制度をさらに充実させていきます。一人ひとりの挑戦を後押しし、それぞれの強みが活かされる組織をつくることで、地域に根ざしながらも世界と勝負できる腫瘍内科医を輩出してまいります。同医局でのがん診療・研究のやりがいと魅力腫瘍内科医には、2つの重要な側面が求められます。進行がんの患者さんとそのご家族に寄り添う人間味あふれる臨床医としての側面と、病態や治療法について客観的かつ論理的に考察する科学者としての側面です。がん薬物療法の分野では、臨床と基礎研究が密接に連携しており、日々の診療で感じる課題や疑問が、研究の出発点となり、新たなシーズとなります。われわれは臨床と基礎の双方の視点から得られたデータをもとに、こうした課題の解決に取り組んでいます。このように、臨床医と科学者としての両側面が融合することが、腫瘍内科の大きな魅力です。そして、その視点を養うことは、医師としての視野を広げ、より高いレベルへと成長するための原動力となります。当科では、腫瘍内科医としての診療スキルはもちろんのこと、この多角的な視点を磨くことを重視しています。ともに世界に向けて、新たなエビデンスを発信していきましょう!力を入れている治療/研究テーマ当科では、多くの治験を含む臨床試験に参加しているほか、独自の特定臨床研究も展開しております。それだけでなく、新規バイオマーカー開発などのトランスレーショナル研究、そしてアンメットメディカルニーズに基づいたまったく新しい作用機序を持った新規抗がん薬開発の前臨床研究にも取り組んでいます。カンファレンスの様子これまでの経歴2020年に東北大学医学部を卒業後、宮城県の大崎市民病院で初期研修を2年間行いました。初期研修修了後に当科に入局し、大崎市民病院で1年半専攻医として診療に携わったのちに東北大学病院に戻ってきました。現在は内科専門研修プログラムを修了し、大学院生として研究を行っています。同医局を選んだ理由元々がんに興味があり医学部を志したこともあり、がん診療に携わることのできる科を希望していました。初期研修で腫瘍内科をローテートした際、積極的な化学療法のみならず、病棟での全身管理や緩和医療の大切さを学びました。そして双方が必要とされる腫瘍内科にやりがいを感じ、腫瘍内科を志望しました。私は岩手県出身であり、東北地方のがん診療を支えたいと思い、母校である東北大学の腫瘍内科への入局を決意しました。現在学んでいること大学院生として研究室に所属し、大腸がんの研究を行っています。データを用いた後方視的な臨床研究から細胞やマウスを用いた基礎研究まで、自分の興味に沿った幅広い研究ができるため非常に取り組み甲斐があります。学会発表や論文作成についても上級医の手厚い指導のおかげで多くの機会をいただきました。ぜひ「BedsideからBenchへ、BenchからBedsideへ」を掲げる腫瘍内科で、一緒にがん治療を発展させていきましょう!東北大学大学院医学系研究科・医学部 臨床腫瘍学分野住所〒980-8575 仙台市青葉区星陵町4-1問い合わせ先dco@grp.tohoku.ac.jp医局ホームページ東北大学大学院医学系研究科 臨床腫瘍学分野専門医取得実績のある学会日本内科学会(内科専門医、総合内科専門医)日本臨床腫瘍学会(がん薬物療法専門医)日本がん治療認定医機構(がん治療認定医)研修プログラムの特徴(1)患者さん一人ひとりと向き合う、実践的な腫瘍内科研修固形がんを中心に、主治医グループの一員として実際の診療を担当し、知識・技術だけでなく「寄り添う力」を育てます。(2)臨床と研究を両立し、世界と戦える医師へ「BedsideからBenchへ、BenchからBedsideへ」の理念のもと、臨床経験を積みながら大学院での研究活動にも取り組み、医学の発展に貢献できる力を養います。(3)国内外で学びを深める、充実の学会支援制度若手医師の学会発表・国際交流を積極的に支援し、新たな知見を取り入れながら成長できる環境を整えています。詳細はこちら(初期研修/後期研修)

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がん診療に携わるすべての人のレベルアップ目指しセミナー開催/TCOG

 東京がん化学療法研究会(TCOG)は、第25回臨床腫瘍夏期セミナーをオンラインで開催する。 同セミナーは、がん診療に携わる医師、薬剤師、看護師、臨床研究関係者、製薬会社、CROなどを対象に、治療の最新情報、臨床研究論文を理解するための医学統計などさまざまな悪性腫瘍の基礎知識から最新情報まで幅広く習得できるよう企画している。セミナー概要・日時:2025年7月18日(金)~19日(土)・開催形式:オンライン(ライブ配信、後日オンデマンド配信を予定)・定員:500人・参加費:15,000円(2日間)・主催・企画:特定非営利活動法人 東京がん化学療法研究会・後援:日本医師会、東京都医師会、東京都病院薬剤師会、日本薬剤師研修センター、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本産科婦人科学会、日本医療薬学会、日本がん看護学会、西日本がん研究機構、North East Japan Study Group・交付単位(予定):日本薬剤師研修センターによる単位(1日受講:3単位、2日受講:6単位)、日本医療薬学会 認定がん専門薬剤師・がん指導薬剤師認定単位(7/18受講:2単位、7/19受講:2単位)、日本看護協会 認定看護師・専門看護師:「研修プログラムへの参加」(参加証発行)、日本臨床腫瘍薬学会 外来がん治療認定薬剤師講習(研修)認定単位(1日受講:3単位、2日受講:6単位)プログラム(要約)7月18日(金)9:30~16:509:30~10:55【がん薬物療法 TOPICS】 胃がん化学療法、ASCOにおける肺癌最新の話題11:05~12:30【医学統計】 臨床研究のための統計学の基本知識、臨床に生かすために知っておきたい医学統計13:50~15:15【最新のがん薬物療法I】 膵がん・胆道がん、大腸がん化学療法 ガイドライン改定を踏まえて15:25~16:50【妊孕性と家族性腫瘍】 遺伝性腫瘍~遺伝学的診断と遺伝カウンセリング、CAYAがん患者等に対する妊孕性温存/がん・生殖医療の現状と課題7月19日(土)9:30~16:509:30~10:55【がんにおける新規抗体医薬】 二重特異性抗体(バイスペシフィック抗体)の特徴と臨床成績、抗体薬物複合体(ADC)11:05~12:30【TOPICS 2】 MRDが拓く癌治療の新しいストラテジー、ctDNAによるがん種横断的なMRD検査の時代へ13:50~15:15【最新のがん薬物療法II】 子宮頸がん・子宮体がん薬物療法のトピックス、泌尿器がんに対する薬物療法UpDate202515:15~16:50【緩和医療と支持療法】 骨転移の緩和ケア、コミュニケーション/遺族ケア/気持ちのつらさガイドラインのエッセンス申し込みはTCOG「臨床腫瘍夏期セミナー」ページから「臨床腫瘍夏期セミナー」プログラム

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グローバルなリアルワールドエビデンスに期待(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 本研究は、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち、PD-L1陽性(TPS≧1%)でEGFR変異やALK転座がない症例を対象に、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブと、新規の二重特異性抗体ivonescimab(PD-1+VEGFに対する抗体)の有効性と安全性を比較した多施設ランダム化第III相試験「HARMONi-2試験」の報告である。中間解析時点での主要評価項目は無増悪生存期間PFSで、ivonescimab群で有意に延長が認められた(中央値11.1ヵ月vs.5.8ヵ月、HR:0.51、p<0.0001)。このPFSの改善効果はPD-L1 TPS 1~49%、TPS≧50%、扁平上皮がん、非扁平上皮がんを含む主要なサブグループで一貫していた。また奏効率ORRはivonescimab群で50%、ペムブロリズマブ群で39%、病勢コントロール率DCRはそれぞれ90%と71%であった。重篤な免疫関連有害事象(irAE)は両群で同程度であり、高血圧や蛋白尿などのVEGFに関連する有害事象はivonescimab群でやや多いものの管理可能な範囲であった。とくにベバシズマブが従来禁忌とされてきた扁平上皮がんでも、出血性合併症の増加は認められなかった。 本研究の最大のメリットは、「免疫治療の単剤療法」においてペムブロリズマブを上回る有効性を示した点である。とくに、PD-L1 TPS 1~49%の集団で有効性を示した初の免疫単剤であること、扁平上皮がんにも使用可能な抗VEGF併用薬であること、速い奏効と高い病勢コントロール率の3点は肺がん診療において重要かつ実践的であると考えられる。 PD-L1陽性肺がんに対するペムブロリズマブの初回治療の効果を検証した「KEYNOTE-042試験」ではTPS 1~49%の患者でPFS延長は示されなかったが、本試験では同群に対してHR 0.54と有意なPFS延長を示した。これにより、これまで「PD-L1低発現群で免疫治療の単剤治療は避けるべき」とされてきた症例に対する新たな選択肢の可能性を示した。また従来血管新生阻害薬であるベバシズマブは出血リスクから扁平上皮がんでは禁忌とされていたが、ivonescimabは同様の抗VEGF作用を有しながら出血性合併症は問題とならなかった。扁平上皮がんの1stラインにおける免疫薬単剤治療の選択肢が広がる点は、臨床的に非常に有用と考えられる。そして本研究におけるivonescimab群の奏効までの期間中央値は1.5ヵ月であり、治療早期に効果を期待したい症例に有利に働く。 本研究の有用性は十分に示されていると考えられるが、日本の実臨床で活かすためにはまだまだ問題点がある。まずすべての症例が中国人であり、外的妥当性に課題がある。薬物代謝や腫瘍の特性、人種差を考慮すると、日本人を含むグローバルな症例に対して本研究と外挿するには慎重な姿勢が求められる。また現時点で評価期間が短く、OSは未成熟な点である。他の臨床試験でも同様であるがPFS延長=延命とは限らず、今回の中間解析ではPFSの延長がそのまま予後改善につながるかどうかは現時点では不明である。比較対象がペムブロリズマブ単剤であることも問題である。昨今の進行非小細胞肺がんの標準治療は、プラチナ製剤を含む化学療法と免疫治療を組み合わせる複合免疫療法がスタンダードである。グローバルな標準治療と乖離しており、本試験の比較対象がペムブロリズマブ単剤であることは、比較の「厳しさ」に欠ける可能性がある。 ivonescimab群では目立った免疫関連有害事象こそ認められないものの、Grade3以上の高血圧や蛋白尿といった抗VEGFに由来する有害事象は一定数認められた。実臨床では、とくに腎障害リスクのある症例や高齢者では慎重な管理が必要と考えられる。 さまざまな問題点が指摘される本研究であるが、扁平上皮肺がんやPD-L1低発現群など治療選択肢が限られる症例に対しては期待できる結果が報告された。今後のグローバルなリアルワールドエビデンスに期待が持てる新規薬剤となるのであろう。

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局所進行上咽頭がんの1次治療、補助化学療法+CCRT vs.CCRT/BMJ

 N2~3期の上咽頭がん患者において、同時併用化学放射線療法(CCRT)の前にドセタキセル+シスプラチンによる補助化学療法(NACT)を4サイクル行うことにより、CCRTのみ行った場合と比較し、遠隔転移のリスクが低下するとともに全生存期間が改善し、毒性は管理可能であることが示された。中国・中山大学がんセンターのWei-Hao Xie氏らが、中国の3次医療機関6施設で実施した第III相無作為化比較試験の結果を報告した。局所進行上咽頭がんに対する補助化学療法+同時併用化学放射線療法の有効性は確立されていなかった。BMJ誌2025年4月15日号掲載の報告。主要評価項目は、5年DMFS率とOS率 研究グループは、未治療のT1~4/N2~3/M0上咽頭がんと病理診断された70歳以下の患者を、CCRT群またはNACT+CCRT群に、N病期で層別化して1対1の割合で無作為に割り付けた。 NACT+CCRT群では、1サイクル3週間としてドセタキセル75mg/m2を1日目に、シスプラチン37.5mg/m2を2~3日目に、最大4サイクル投与することとし、最初の2サイクルで完全奏効または部分奏効が得られた患者はさらに2サイクル投与した後、CCRTを行った。CCRTは、強度変調放射線治療(IMRT)とシスプラチン40mg/m2の週1回静脈内投与とした。 主要評価項目は、中央判定による5年間の無遠隔転移生存(DMFS)率および全生存(OS)率とし、ITT解析を行った。安全性については、NACT、CCRT、および全期間中のGrade3以上の急性毒性の発現、ならびに登録から5年後の晩期毒性を評価した。5年DMFS率は91.3%vs.78.2%、5年OS率は90.3%vs.82.6% 2016年2月23日~2019年2月18日に192例が登録され、同意を撤回した6例を除く186例が無作為化された(NACT+CCRT群93例、CCRT群93例)。 追跡期間中央値76.9ヵ月(四分位範囲:65.4~85.9)において、遠隔転移はNACT+CCRT群で9例(10%)、CCRT群で20例(22%)に認められ、5年DMFS率はそれぞれ91.3%(95%CI:85.4~97.2)、78.2%(95%CI:69.8~86.6)であり、NACT+CCRT群が有意に高かった(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.19~0.87、p=0.02)。 また、死亡はNACT+CCRT群9例(10%)、CCRT群22例(24%)に認められ、5年OS率はそれぞれ90.3%(95%CI:84.2~96.4)、82.6%(75.0~90.2)であった(HR:0.38、95%CI:0.18~0.82、p=0.01)。 Grade3/4の急性毒性は、NACT+CCRT群で60例(65%)とCCRT群で46例(51%)に観察された(p=0.05)。主なGrade3/4の急性毒性は、白血球減少症(NACT+CCRT群46例[50%]vs.CCRT群26例[29%]、p=0.004)、好中球減少症(43例[47%]vs.10例[11%]、p<0.001)であった。晩期毒性はいずれも両群間で有意差は認められなかった。

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「胃癌治療ガイドライン」改訂のポイント~薬物療法編~/日本胃癌学会

 2025年3月、「胃癌治療ガイドライン」(日本胃癌学会編)が改訂された。2021年から4年ぶりの改訂で、第7版となる。3月12~14日に行われた第97回日本胃癌学会では、「胃癌治療ガイドライン第7版 改訂のポイント」と題したシンポジウムが開催され、外科治療、内視鏡治療、薬物療法の3つのパートに分け、改訂ポイントが解説された。改訂点の多かった外科療法と薬物療法の主な改訂ポイントを2回に分けて紹介する。本稿では薬物療法に関する主な改訂点を取り上げる。「外科治療編」はこちら【薬物療法の改訂ポイント】原 浩樹氏(埼玉県立がんセンター 消化器内科) 内科系(薬物療法)については非常に多くの改訂があった。多くはガイドラインを一読すれば理解いただけると思うが、多くの方が関心を持っているであろうMSI、CPS、CLDN18、HER2といったバイオマーカーとそれに基づく治療選択と、今後避けて通れない高齢者診療に関する新たな推奨に絞って、改訂ポイントを紹介する。CQ12 切除不能進行・再発胃癌に対する一次化学療法CQ12 HER2陰性の切除不能進行・再発胃癌の一次治療において免疫チェックポイント阻害剤は推奨されるか?・HER2 陰性の切除不能な進行・再発胃癌/食道胃接合部癌において、一次治療として、化学療法+免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブまたはペムブロリズマブ)併用療法を行うことを強く推奨する。バイオマーカー(PD-L1[CPS]、MSI/MMR、CLDN18)や患者の全身状態を考慮する。(合意率100%、エビデンスの強さA)CQ13 切除不能進行・再発胃癌におけるバイオマーカーCQ13-1 バイオマーカーに基づいて一次治療を選択することは推奨されるか?・切除不能進行・再発胃癌患者に対し、バイオマーカーに基づいて一次治療を選択することを強く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さA) HER2陰性切除不能進行・再発胃癌の一次治療として、「推奨される化学療法レジメン」として新たに承認された抗CLDN18.2抗体のゾルベツキシマブ、チェックポイント阻害薬(ICI)のニボルマブ・ペムブロリズマブ、それぞれの化学療法との併用レジメンが追加された。「条件付きで推奨される化学療法レジメン」としてはSOX+ペムブロリズマブが追加となった。各レジメンの推奨根拠となった試験を紹介する。・ニボルマブ+化学療法/CheckMate 649PD-L1 CPS≧5の患者群における全生存期間(OS)中央値は、ニボルマブ+化学療法群で14.4ヵ月、化学療法単独群で11.1ヵ月であり、ハザード比(HR)は0.71であった。CPS≧1集団、全体集団でも改善傾向は見られたものの効果は低減する傾向だった。一方、MSI-H症例では強いOS延長効果が確認され、HRは0.34だった。ただし、MSI-Hは全体の3~4%という希少な集団である一方で、CPS<5の集団にもMSI-H症例が隠れていることに留意が必要だ。・ペムブロリズマブ+化学療法/KEYNOTE-859CPS≧1、CPS≧10、全体集団いずれにおいてもOSの有意な改善が示された。CheckMate 649試験と同様に、CPS値が高いほどHRが改善する傾向が見られた。CPS高値例にICIの効果が高いことは明らかだが、カットオフ値をどこに定めるべきかについては、引き続き議論が必要だろう。・ゾルベツキシマブ+化学療法/SPOTLIGHT・GLOW 両試験とも、ゾルベツキシマブ+化学療法群(mFOLFOX6またはCAPOX)は、主要評価項目である無増悪生存期間および重要な副次評価項目であるOSに対し統計的に有意な延長を示した。 昨年、日本胃癌学会から「切除不能進行・再発胃癌バイオマーカー検査の手引き」1)が発表された。この手引きでは一次薬物療法開始前に4つのバイオマーカー(HER2、PD-L1、MSI、CLDN18)をすべて測定することを強く推奨している。ただし、施設の状況や患者の状態によっては、すべての検査が実施できない場合もあるだろう。そうした場合は、一次療法開始に不可欠なバイオマーカーであるHER2とCLDN18検査を優先して実施することが推奨される。 HER2陰性の推奨レジメンは、CLDN18陽性の場合は6つ、陰性の場合は4つあり、この使い分けが論点となっている。ガイドライン作成委員会の中で一番議論となったのがHER2陰性+CLDN18陽性のケースだ。CPS<1では抗PD-1抗体による生存延長効果がほとんどないことを考慮すると、 ・CPS<1:ゾルベツキシマブを優先 ・CPS≧1:ゾルベツキシマブおよびICI2剤のいずれも選択肢と考えられる。ここからは私見になるが、CPS≧10はICI優先、1≦CPS<10はゾルベツキシマブがやや優先かと考えている。実臨床においてはバイオマーカーのみならず、年齢、PS、全身状態、患者希望などを総合的に考慮したうえで、治療方針を決定することになる。CQ10 高齢者CQ10-2 全身化学療法の適応を決める際に、年齢を考慮することは推奨されるか?・高齢の切除不能進行・再発胃癌症例では、患者の全身状態や意欲を慎重に評価したうえで、患者本人が状態良好(fit)かつ意思決定能力を有し治療意欲があれば、化学療法を計画するときに年齢を考慮することを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さB) 日本の胃がん患者の85%が65歳以上という現状があるが、主要な臨床試験における65歳以上の参加者は3分の1程度である。一方、「一般的な若年者と同じ標準治療を受けることは難しいが、何らかの治療は受けられる」という「vulnerable」という多数派層が存在し、この層に向けた治療戦略が必要だ。この層を対象に減量投与の非劣性を報告する試験や、高齢者の状態を評価する「G8」スコア別に薬剤の有用性を評価する試験など、エビデンスも集積しつつある。高齢者の化学療法においては減量や薬剤選択による投与継続をはじめ、適切な個別化戦略が一層重要となる。

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