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CRT後のデュルバルマブ地固めは高齢NSCLCにも有用か?

 切除不能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する化学放射線療法(CRT)後のデュルバルマブ地固め療法は、PACIFIC試験で有用性が示され、標準治療となっている。しかし、高齢のNSCLC患者における有効性・安全性は明らかになっていない。そこで、韓国・慶北大学校のJi Eun Park氏らの研究グループは、70歳以上の高齢のNSCLC患者におけるCRT後のデュルバルマブ地固め療法の有用性を検討するため、後ろ向き研究を実施した。その結果、70歳以上のNSCLC患者でも有効性は同様であったが、有害事象は多い傾向にあった。本研究結果は、Clinical Lung Cancer誌オンライン版2024年2月16日号で報告された。 本研究は、CRT後のデュルバルマブ地固め療法を受けた切除不能なStageIIIのNSCLC患者286例を対象とした後ろ向き研究で、2017年9月~2022年9月の期間に実施した。対象患者を年齢(70歳未満、70歳以上)で2群に分類し、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・70歳未満群は166例(58.0%)、70歳以上群は120例(42.0%)であった。・PFS中央値は、70歳未満群が19.4ヵ月であったのに対し、70歳以上群は17.7ヵ月であり、有意差は認められなかった。・OS中央値は、70歳未満群が未到達であったのに対し、70歳以上群は35.7ヵ月であり、有意差は認められなかった。・70歳以上群において、ECOG PS0/1のサブグループはPFSが良好で、シスプラチンを用いたCRTを実施したサブグループはOSが良好であった。一方、男性はOSが不良であった。・デュルバルマブ地固め療法を完遂した患者の割合は、70歳未満群が39.2%であったのに対し、70歳以上群は27.5%であり、完遂率は70歳以上群が有意に低かった(p=0.040)。・治療関連有害事象、Grade3/4の有害事象、治療の完全中止、治療関連死は、いずれも70歳以上群で多かった。 本研究結果について、著者らは「デュルバルマブ地固め療法は、70歳以上の高齢患者において70歳未満の患者と同様の有効性を示した。しかし、70歳以上の高齢患者では有害事象が多かった。したがって、患者選択や化学療法の選択は慎重に行うべきであり、注意深い有害事象モニタリングが必要である」とまとめた。

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閉経後早期乳がんへの術前内分泌療法、フルベストラントvs.フルベストラント+AI vs.AI/JAMA Oncol

 エストロゲン受容体(ER)陽性/ERBB2陰性の閉経後進行乳がん患者において、アナストロゾールへのフルベストラントの追加が生存率を改善させたことが報告されているが、早期乳がんにおける試験は行われていない。米国・Washington University School of MedicineのCynthia X. Ma氏らは、ER-rich/ERBB2陰性の閉経後早期乳がん患者における術前内分泌療法(NET)としてのフルベストラント単剤およびアナストロゾールとの併用療法が、アナストロゾール単剤療法に比べて優れるかどうかについて検討した第III相無作為化試験の結果を、JAMA Oncology誌オンライン版2024年1月18日号で報告した。 本試験はStageII~III、ER-rich(Allred score:6~8または>66%)/ERBB2陰性の閉経後乳がん患者が対象。アナストロゾール群(A群)、フルベストラント群(F群)、アナストロゾール+フルベストラント群(A+F群)に無作為に割り付けられ、それぞれ術前6ヵ月間の投与を受けた。 主要評価項目は内分泌感受性疾病率(ESDR)。副次評価項目は4週間のNET後のKi-67スコアの変化率(4週目のKi-67抑制効果)とされた。Ki-67スコアは4週目、および必要に応じて12週目に評価され、いずれかの時点で10%を超えた場合、術前化学療法または即時手術に切り替えられた。 主な結果は以下のとおり。・2014年2月~2018年11月までに、1,362例の女性患者(平均[SD]年齢:65.0[8.2]歳)が登録された。・評価可能な1,298例において、ESDRはA群18.7%(95%信頼区間[CI]:15.1~22.7)、F群22.8%(95%CI:18.9~27.1)、A+F群20.5%(95%CI:16.8~24.6)であった。・A群と比較して、フルベストラントを含むレジメンはどちらもESDRまたは4週目のKi-67抑制効果を有意に改善しなかった。・4週目または12週目でKi-67スコアが10%を超えた割合は、A群25.1%、F群24.2%、およびA+F群15.7%であった。・4週目または12週目でKi-67スコアが10%を超え、術前化学療法に切り替えた後、病理学的完全奏効(pCR)は167例中8例、residual cancer burden(RCB)-Iは167例中8例で確認された(pCR/RCB-I率:15.0%、95%CI:9.9~21.3)。・ベースラインのPAM50サブタイプについてデータが得られた753例(58%)において、Luminal Aは394例、Luminal Bは304例、non-Luminalは55例であった。・Luminal Bにおいて、A+F群はA群と比較して4週目のKi-67抑制効果が高かった(中央値[IQR]:-90.4%[-95.2~-81.9] vs.-76.7%[-89.0~-55.6]、p<0.001)。この傾向はLuminal Aではみられなかった。・non-Luminalの36例(65.5%)では、4週目または12週目のKi-67スコアが10%を超えていた。 著者らは今回の結果を受けて、ER-rich/ERBB2陰性の閉経後早期乳がん患者におけるNETとしての標準治療はアロマターゼ阻害薬で変更はないとしたうえで、探索的分析で明らかになったPAM50サブタイプによるNETへの反応の違いについてはさらなる検討が必要としている。

43.

切除不能肺がんに対する新アプローチ、小規模試験で有望な結果

 局所進行性で切除不能な非小細胞性肺がん(NSCLC)患者に対しては、標準的な化学療法に加え、高線量の放射線をがんに対してピンポイントで照射できる体幹部定位放射線治療(SABR、SBRTとも呼ばれる)を行うことで、患者の生存率向上が望める可能性のあることが、28人のNSCLC患者を対象にした初期段階の小規模試験で明らかになった。 研究論文の共著者である、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)放射線腫瘍学分野のBeth Neilsen氏は、「われわれが得た結果は、化学療法と、患者の腫瘍の位置や形状の治療による変化などを考慮して照射方法などを再検討しながら行うSABRの併用は、患者にとって有益なことを示すものだ」と述べている。詳細は、「JAMA Oncology」に1月11日掲載された。 Neilsen氏らによると、切除不能なNSCLC患者はこれまで、標準的な放射線治療(6週間で30回の照射)と化学療法の併用で治療されてきたが、その生存率は低かったという。同氏らは、低線量の放射線治療を何十回も行う代わりに、高線量の放射線治療を少ない回数で行う方が、腫瘍の根絶と再発防止につながるのではないかと考えた。SABRで鍵となるのが、生存率を向上させつつ健康な組織へのダメージを最小限に抑える理想的な線量を見つけることであった。 そこでNeilsen氏らは、医学的理由や患者の希望で腫瘍の切除が不能なステージIIおよびIIIのNSCLC患者28人(年齢中央値70歳、男性57%)を対象に、化学療法との併用で実施するSABRの線量をどれだけ安全に上げることができるかについての検討を行った。対象者は、化学療法とともに、放射線治療として4Gy/回を10回受けた後に、低線量(総線量25Gy;5Gy×5回照射、10人)、中線量(総線量30Gy;6Gy×5回照射、9人)、高線量(総線量35Gy;7Gy×5回照射、9人)でのSABRを受けた。追跡期間中央値は18.2カ月だった。 その結果、有害事象としてグレード3以上の急性または遅発性の非血液毒性がそれぞれ11%(3人)と7%(2人)の患者に生じたが、中線量群にグレード3以上の有害事象が生じた患者はいなかった。2人が死亡したが、いずれも高線量群の患者だった。2年間の局所制御率は、低線量群、中線量群、および高線量群の順に、74.1%、85.7%、および100.0%であった。また、2年間の全生存率は同順で、30.0%、76.2%、55.6%であった。 研究グループは、「2年間の腫瘍再発率に関しては高線量群が最も良好ではあったが、一方で、この群では副作用がより深刻だった」と述べている。これに対して、中線量群で生じた副作用は、主に疲労感、食道や肺の炎症による咽頭痛や咳などで、重篤な副作用が生じた患者はいなかったという。 研究グループは、本研究は対象者の数が少なかったため、より大規模な研究を実施して長期間の追跡を行う必要があると述べている。それでも、論文の上席著者である、UCLA放射線腫瘍学分野のMichael Steinberg氏は、「この研究が、がん関連死の主因である肺がんの治療を改善するために取り組まれている努力に貢献することは間違いない。SABRと化学療法の統合は、安全性、有効性、患者の転帰の改善という点で有望な新しいアプローチを提供するだけでなく、より効果的で個別化された治療への道も切り開かれることになる」と述べている。

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膵臓がんの治療ワクチン、初期段階の臨床試験で有望な結果

 膵臓の腫瘍は、その90%以上に悪性度を高める可能性のあるKRAS遺伝子の変異があるとされるが、この変異を有する膵臓がんに対し、実験段階にある治療ワクチンが有効である可能性が、米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター消化器腫瘍学准教授のShubham Pant氏らが実施した小規模な臨床試験で示された。現時点では「ELI-002 2P」と呼ばれているこのワクチンは、KRAS変異を有する固形がんを標的にするものだという。ELI-002 2Pを製造するElicio Therapeutics社の資金提供を受けて実施されたこの試験の詳細は、「Nature Medicine」に1月9日掲載された。 膵臓がんは自覚症状がないまま進行し早期発見が難しいことから、「サイレント・キラー」と呼ばれている。米国がん協会(ACS)によると、米国では推定で年間約6万4,000人が膵臓がんと診断され、約5万5,500人がそれによって死亡している。膵臓がんに対するファーストライン治療は手術だが、再発の可能性もある。ELI-002 2Pは、再発を予防するためにデザインされたワクチンで、免疫細胞のT細胞にKRAS変異を認識して破壊するように仕向ける。ELI-002 2Pは、患者ごとに製造することが可能だ。 今回の臨床試験は、KRAS遺伝子の変異がある膵臓がん患者20人と大腸がん患者5人の計25人(平均年齢61.0歳、女性60%)を対象に実施された。患者は、全例が腫瘍を摘出する手術を受けており、このうち7人は手術に加えて放射線治療も受けていた。Pant氏は、「膵臓がんの手術を受け化学療法を終えた患者でも、再発リスクは残る」と同がんセンターのニュースリリースで述べている。試験では、患者をコホート1〜5の5群に分け、ELI-002 2Pワクチン(0.1、0.5、2.5、5.0、10.0mg)を最大10回投与した。 その結果、ワクチンを投与された全患者の84%(21/25人)で期待されていたKRAS変異特異的T細胞反応が確認され、特に、投与量が5.0mgと10.0mgの群での割合は100%に達したことが明らかになった。腫瘍および腫瘍に関連するDNAの存在の指標となるバイオマーカーの低下も84%の患者で認められ、6人(膵臓がん患者と大腸がん患者が3人ずつ)では、バイオマーカークリアランスが確認された。患者全体での無再発生存期間は16.33カ月であったが、T細胞反応の変化量の中央値(ベースラインからの変化量が12.75倍)で二分して検討すると、中央値以上の患者では未達成であったのに対し、中央値未満の患者では4.01カ月であった。 副作用の発生率は、倦怠感が24%(6人)、注射部位反応が16%(4人)、筋肉痛が12%(3人)だったが、治療の中止や死亡に至るような重度の副作用は認められなかった。このことからPant氏は「ELI-002 2Pの安全性プロファイルは良好だった」と述べている。 Pant氏は「まだ初期段階の試験ではあるが、このワクチンによって多くの患者のがんの再発を防ぎ、生存期間を延長できる可能性があるという有望な結果が示された」と話す。同氏は、「膵臓がんは再発すると治癒に導くことが不可能であり、まさにアンメットニーズの存在する領域であるため、これらの結果の全てが素晴らしい」と喜びを表す。 ELI-002 2Pの第2相臨床試験は2024年後半に開始される予定だ。同試験ではさらに多くのKRAS変異を標的とすることになるとPant氏らは話している。

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「進行がんだから仕方がない」は使わない ~外来通院の進行がん患者へのリハビリテーション~【Oncologyインタビュー】第45回

出演:関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座 勝島 詩恵氏「進行がんだから仕方がない」。がん医療の現場で何げなく使ってしまう言葉ではないだろうか。この言葉を考え直す時期が来ているようだ。外来通院の進行がん患者へのリハビリテーション介入という新たな挑戦が始まっている。関西医科大学の勝島 詩恵氏に聞いた。進行がん患者治療の課題に立ち向かう外来通院がん患者は増加している。その反面、治療に適応するための対策は追いついていないという。外来通院ができるがん患者は、基本的に全身状態(PS)良好で身体機能が維持されているはずだが、実際は問題を抱えているケースが多い。外来通院が可能な状態であっても、進行がん患者である以上、薬物だけで治療は成立しない。患者の栄養状態、身体機能、精神面の安定があってこそ、より良いがん診療ができる。外来通院がん患者に対して、これから始まる、あるいは現在行っている治療に適合させるための介入(リハビリテーション)が必要だと考え、2020年、関西医科大学附属病院は「フレイル外来」を立ち上げた。多職種が連携した介入を実現大学病院などのハイボリュームセンターでは、連日100人を超える外来化学療法患者が受診する施設も珍しくない。そのため、主治医の診察から治療(点滴)開始まで、長い待ち時間が生じ、患者の大きな負担となっている。フレイル外来は、その待ち時間を有効利用する。患者は化学療法外来主治医の診療終了後、フレイル外来を受診する。化学療法レジメンに合わせて、月1~2回の通院が通常である。関西医科大学附属病院のフレイル外来では、腫瘍内科医(勝島氏)が診察を行い、患者の治療内容、副作用や経過などの理解を深める。それ以外にも、食欲不振や体重減少が強い患者には、栄養士への栄養指導の依頼や治療薬に関する主治医への相談を行う。介護保険申請を行っている患者や通院が困難となってきた患者には、デイケアや訪問リハビリテーションの紹介、精神的ケアや症状緩和が必要な患者には緩和ケア科と連携したサポートを行う。フレイル外来には、立ち上げからの3年間で360人の患者が紹介されている。外来の認知度と共に患者は増え、現在は月100人の患者がフレイル外来を受診する。呼吸器、消化器、乳腺などが主体であったが、最近は血液内科から造血幹細胞移植後の患者の紹介も多い。「外来の認知度が上がるにつれ、紹介が増えており、確実なニーズの増加を実感している」と勝島氏は述べる。病勢進行していなくても、半数以上が悪液質を合併していた勝島氏らは、フレイル外来を受診する進行再発肺がん患者の調査を実施した。定期的に外来通院にて化学療法を受ける肺癌患者は基本的にPS良好で、病勢もコントロールされているはずの外来患者だが、フレイル外来初診時、過半数(55.2%)が悪液質を合併していた1)。また、化学療法を受ける進行再発がん患者の悪液質は、低栄養状態、低身体活動が悪液質の臨床的特徴、もしくは、悪液質の特徴として独立した因子として抽出された。低身体活動については、10分以上続けて行う身体活動を評価する「IPAQ*」で評価できたが、従来のPSでは拾い上げられなかった1)。「医師が判断するPSは実際の活動量と乖離している可能性があるため、PSだけで判断すると危険」と勝島氏は言う。*IPAQ(International Physical Activity Questionnaire、国際標準化身体活動質問票):1週間における高強度および中等度の身体活動を行う日数および時間を質問する。治療成績向上、鍵は治療開始までの期間と悪液質の早期予防また、勝島らは、近年肺癌診療において、病期診断、病理診断に一定の時間を要し、その間に身体機能が落ちる患者がいることに着目して調査を行った。初診から治療開始までの期間が長いほど悪液質発症が高まる傾向が明らかになった。初診から治療開始までが45日以上の群では、治療開始までに悪液質発症が増加したが(初診時37%→治療開始時87%)、45日未満の群では増加しなかった(61%→61%)。悪液質の存在は化学療法の効果に悪影響を及ぼすことも示されている。悪液がない患者では、初回化学療法の病勢コントロール率(DCR)は100%、初回治療完遂率も100%であった。一方、悪液質がある患者での初回化学療法のDCRは66.7%、初回治療完遂率は58.7%と、有意差はないものの、悪液質がない患者よりも悪い傾向であった。しかし、悪液質の合併については、医療者も患者も危機意識は低い。勝島氏によれば、がんの確定診断を受けながら、治療開始までの待機期間にPSが悪化し、抗がん剤治療が受けられなくなってしまったケースも少なくないという。悪液質は決してがん終末期の病態ではなく、がん治療の早期にも現れ、抗がん剤治療に悪影響を及ぼす。迅速な診断と介入で、いかに悪液質がない状態で化学療法を実施できるかが、がん治療成功の鍵を握るといえる。これらの研究結果について勝島氏は、「多くの医療者が何となく気付いていたこと。少し全貌が明らかになった」と言う。がんリハビリテーションの質的なメリット進行再発がんリハビリテーションの真のエンドポイントは定まっていない。治療を行ったとしても最終的には病勢が進行する。そのため、体重や身体機能などの量的なエンドポイントは、いずれ達成できなくなってしまう。一方、フレイル外来通院患者の中には、病勢が進行しても受診を希望する患者も多い。そのため、進行再発がん患者へのリハビリテーションは、量的な効果だけでなく、質的な効果を持つのではないかという仮説を立てた。そして、フレイル外来通院患者に、リハビリテーションでの経験について、半構造化面接法によるインタビューを行った。その結果、がんリハビリテーションに取り組むことで、フレイル外来通院患者は「身体機能改善に対する期待感」「変化を客観的に把握できる安心感」「自分の存在意義の再確認」といったポジティブな経験をし、根治不能な進行がんとの付き合い方を見いだしていることがわかった2)。現時点でできることとはいえ、すべての施設で関西医科大学のような取り組みができるわけではない。そのような中、医療者ができることは何だろうか。まず、悪液質に対する危機意識を高めるべきだと勝島氏は強調する。また、医療者と共に患者の理解も重要だ。治療医の言葉は患者に大きな影響を与える。治療医から患者への「どれだけ動けて、痩せずに治療を受けられるか、で抗がん剤の効果も変わってくる」などの一言で、患者の理解も深まるという。多職種連携の最初の一石は医師しか投じられない。モチベーションが高い理学療法士や看護師は多いが、医師からの紹介がないと動くことはできないことも多い。勝島氏は「治療医から発信するがん悪液質診療を形作るべき」と述べる。前向き試験の取り組み前述の先行試験から、悪液質は初回治療前からでも存在し得ること、治療に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。勝島氏らは、次の段階として前向き試験を実施し、初回治療前からの運動・栄養療法が進行再発がんにおける悪液質の発症を抑制し、がん治療に良い効果を生み出すか否かを検証する予定である。今回の試験は治療前から介入するため、少なくとも化学療法の影響を受けない。交絡因子として化学療法の影響を受けないことから、がんリハビリテーションの効果をより純粋に評価できる可能性があるという。外来がんリハビリテーションの診療報酬獲得に結び付ける現在は、患者も医療者も、治療中の体重減少や身体機能低下の重要性について認識不足で、介入も遅れがちである。実際、フレイル外来には、痩せきって身体機能が落ちてから紹介されるケースも少なくないという。早期からのリハビリテーションの重要性を医療者が認識することで、治療効果が乏しくなる前に介入できる。勝島氏は、「痩せて筋力もない患者が、化学療法という大きな剣を無理やり持たされている状況が悪液質。それに対し、早期から多職種が介入して、身体機能や栄養状態、精神面を維持してもらうことで、大きな剣をしっかり振りかざすことができる」とし、「われわれの研究によって、運動療法・栄養療法という低コストの介入が、進行がん治療に寄与することが証明できれば、最終的には外来がんリハビリテーションの診療報酬獲得に結び付くかもしれない」と述べた。画像を拡大する画像を拡大する(ケアネット 細田 雅之)参考1)Katsushima U, et al. Jpn J Clin Oncol. 2024 Jan 11. [Epub ahead of print]2)勝島 詩恵ほか. Palliative Care Research.2022;17:127-134.

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ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対する次世代治療薬repotrectinib(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 ROS1融合遺伝子は非小細胞肺がんの約2%に認められるドライバー遺伝子変異である。現在、本邦でもROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対し、クリゾチニブおよびエヌトレクチニブが承認されている。「PROFILE 1001試験」においてROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対してクリゾチニブはORR 72%、PFS中央値19.2ヵ月、OS中央値51.4ヵ月という有効性を示した(Shaw AT, et al. N Engl J Med. 2014;371:1963-1971. , Shaw AT, et al. Ann Oncol. 2019;30:1121-1126.)。また同じくROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対するエヌトレクチニブ単剤療法を評価した「ALKA-372-001試験」と「STARTRK-1試験」「STARTRK-2試験」の3つの臨床試験の統合解析では、ORR 77%、PFS中央値19.0ヵ月という結果が示された。いずれも『肺癌診療ガイドライン2023年版』では推奨度「1C」という位置付けとなっている。 ただし、現在承認されているROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対する治療薬は、耐性の出現や脳転移での再発の頻度が高いことが知られている。今回紹介するrepotrectinibはROS1のトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)A/B/Cを選択的に阻害する低分子チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)である。repotrectinibは過去の臨床試験において、ROS1 G2032Rなどの耐性変異を含むROS1融合遺伝子陽性肺がんに対する活性が示された次世代のROS1-TKIとされている。 今回行われた「TRIDENT-1試験」の第I相試験の結果に基づき、repotrectinibの推奨用量は160mg、1日1回を14日間投与後、15日目以降は160mg、1日2回投与とされた。ROS1-TKI未治療の拡大コホート1に含まれた71例では、奏効率79%、PFS中央値35.7ヵ月と高い効果が示された。また化学療法治療歴がなくROS1-TKIで1種類の治療歴のある56例の拡大コホート4でも、奏効率38%、PFS中央値9.0ヵ月と期待される結果が示された。ベースラインに脳転移がない症例における、頭蓋内の12ヵ月時点でのPFS率は拡大コホート1で91%、拡大コホート4で82%と高い効果が示された。また、第II相試験の用量で治療された426例のうち、頻度の高い有害事象はめまい、味覚障害、異常感覚であり、Grade3以上の有害事象は29%であったと報告された。治療中止に至った有害事象は3%となっている。 第III相試験が行われたわけではないので、純粋に比べることはできないが、この「TRIDENT-1試験」の結果からは次世代ROS1-TKIであるrepotrectinibは既存の治療薬と並べても、奏効率も無増悪生存期間も期待できることがわかる。とくに拡大コホート4で行われたROS1-TKIが1種類使用された症例群においても奏効率38%、PFS 9.0ヵ月というのは有望である。既存のROS1-TKIでも制御が難しい脳転移に対しても、高い頭蓋内PFS率が示されたことも心強い結果であり、早期の承認が望まれる。 ただ、本研究に使用されたROS1融合遺伝子の検索は「Guardant360 CDx」あるいは「GeneseeqLite circulating tumor DNA-based assays」に基づいている。本邦の医療機関では一般的に扱っていない検査キットであり、今後、このrepotrectinibが実臨床で活用されるためにはコンパニオン診断の問題が出てくるのであろう。

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乳房温存術後の局所再発率、70遺伝子シグネチャーで予測可能か(MINDACT)/JCO

 乳房温存手術を受けた早期乳がん患者の局所再発リスクは、70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)によるリスクと独立して関連しないことが、EORTC 10041/BIG 03-04 MINDACT試験の探索的サブ解析で示された。また、術後8年間の局所再発率は3.2%と推定された。オランダ・Netherlands Cancer Institute-Antoni van Leeuwenhoek HospitalのSena Alaeikhanehshir氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年1月19日号で報告。 本解析は、EORTC 10041/BIG 03-04 MINDACT試験において、乳房温存手術を受け、臨床的リスクおよび70遺伝子シグネチャーによるリスクが判明している女性を評価した。主要評価項目は累積発生率で推定した8年の局所再発率だった。 主な結果は以下のとおり。・登録患者6,693例中5,470例(81.7%)が乳房温存手術を受け、そのうち98%が放射線治療を受けていた。・8年間で189例に局所再発が発生し、8年累積発生率は3.2%(95%信頼区間[CI]:2.7~3.7)であった。・70遺伝子シグネチャーによる低リスク患者における8年累積発生率は2.7%(95%CI:2.1~3.3)であった。・単変量解析では、化学療法で調整後、12変数のうち70遺伝子シグネチャーを含む5変数が局所再発と関連した。多変量解析では、術後内分泌療法、腫瘍径、悪性度と関連していた。 著者らは「この探索的解析では、局所再発イベント数が少なかったためか、70遺伝子シグネチャーは独立して局所再発を予測するものではなく、現在のところ、局所再発に関する臨床的意思決定には使用できない」とした。

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固形がん治療での制吐療法、オランザピン2.5mgが10mgに非劣性/Lancet Oncol

 オランザピンは効果的な制吐薬であるが、日中の傾眠を引き起こす。インド・Tata Memorial CentreのJyoti Bajpai氏らは、固形がん患者における催吐性の高い化学療法後の低用量オランザピン(2.5mg)と標準用量オランザピン(10mg)の有効性を比較することを目的に、単施設無作為化対照非盲検非劣性試験を実施。結果をLancet Oncology誌2024年2月号に報告した。 本試験はインドの3次医療施設で実施され、固形がんに対しドキソルビシン+シクロホスファミドまたは高用量シスプラチン投与を受けているECOG PS 0~2の13~75歳が対象。患者はブロックランダム化法(ブロックサイズ2または4)により2.5mg群(1日1回2.5mgを4日間経口投与)または10mg群(1日1回10mgを4日間経口投与)に1:1の割合で無作為に割り付けられ、性別、年齢(55歳以上または55歳未満)、および化学療法レジメンによって層別化された。研究スタッフは治療の割り当てを知らされていなかったが、患者は認識していた。 主要評価項目は、修正intent-to-treat(mITT)集団における全期間中(0~120時間)の完全制御(催吐エピソードなし、制吐薬追加なし、悪心なしまたは軽度の悪心で定義)。日中の傾眠は関心のある安全性評価項目とされた。非劣性は治療群間における完全制御割合の差の片側95%信頼区間(CI)の上限値が非劣性マージン10%未満の場合と定義された。 主な結果は以下のとおり。・2021年2月9日~2023年5月30日に、356例が適格性について事前スクリーニングを受け、うち275例が登録され、両群に無作為に割り付けられた(2.5mg群:134例、10mg群:141例)。・267例(2.5mg群:132例、10mg群:135例)がmITT集団に含まれ、うち252例(94%)が女性、242例(91%)が乳がん患者であった。・2.5mg群では132例中59例(45%)、10mg群では135例中59例(44%)が全期間において完全制御を示した(群間差:-1.0%、片側95%CI:-100.0~9.0、p=0.87)。・全期間において、2.5mg群では10mg群に比べ、Gradeを問わず日中の傾眠が認められた患者(65% vs.90%、p<0.0001)および1日目に重篤な傾眠が認められた患者(5% vs.40%、p<0.0001)が有意に少なかった。 著者らは、催吐性の高い化学療法を受けている患者においてオランザピン2.5mgは10mgと比較して制吐効果が非劣性で、日中の傾眠を減少させることが示唆されたとし、新たな標準治療として考慮されるべきとしている。

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CAR-T療法ide-cel、多発性骨髄腫の早期治療に承認の意義/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2023年12月に同社のCAR-T細胞療法イデカブタゲン ビクルユーセル(ide-cel、商品名:アベクマ)が、再発または難治性の多発性骨髄腫の早期治療に承認されたことを受け、2024年1月31日にメディア向けプレスセミナーを開催した。セミナーでは日本赤十字社医療センター・血液内科の石田 禎夫氏が「早期ラインとしての CAR-T 細胞療法(アベクマ)が多発性骨髄腫(MM)の治療にもたらすもの」と題した講演を行い、新たな承認が臨床に与える意味について解説した。 多発性骨髄腫は抗体を産生する形質細胞ががん化し、骨病変、腎障害、免疫不全などを引き起こす疾患。10万人当たり6.2人(2017年)が罹患、高齢者に多い疾患で、高齢化に伴い患者数は増加傾向にある。 多発性骨髄腫の治療戦略は、65歳未満の初発患者は化学療法+自家造血幹細胞移植となり、65歳以上や移植不適患者、再発時には複数薬剤を併用する化学療法の適応となる。2次治療以降に使われる薬剤は、大きく分けてプロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗体薬、HDAC阻害薬があり、これらにステロイド薬デキサメタゾンを組み合わせ、3剤にして投与するレジメンが主流となっている。承認されているレジメンは複数あり、これまで多発性骨髄腫治療におけるCAR-T療法の承認は、これらの薬剤クラスの組み合わせがすべて不適となった4次治療以降だった。 今回の3次治療における承認は、第III相KarMMa-3試験の中間解析結果に基づいたもの。同試験はプロテアソーム阻害薬、免疫調整薬、抗CD38モノクローナル抗体を含む2~4レジメンの前治療歴を有する患者を対象とし、ide-celと標準療法の有用性を比較した。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は、ide-cel群13.3ヵ月に対し標準療法群4.4ヵ月と、ide-cel群でPFSの有意な延長が認められ、かつ新たな安全性シグナルは認められなかった。 石田氏は「CAR-T療法は自身のT細胞を使うオーダーメードの治療法であり、投与までに2ヵ月ほどかかる。進行の速い患者さんでは手遅れになることもあり、早期段階で使えることには大きな意味がある。また、大量化学療法を受けて疲弊する前のリンパ球を使えることもメリットだ」とした。さらに「CAR-T療法が奏効した場合は、治療を停止することが可能となり、標準療法と比較して患者のQOLが上がることも大きな利点となる」と説明した。 今後、造血器腫瘍において広がりが見込まれる新規薬剤BiTE抗体(二重特異性T細胞誘導抗体)とCAR-T療法の使い分けについては、「BiTE抗体薬の作用機序として投与後に抗体が変異し、その後にCAR-T療法を行っても意味をなさない可能性がある。よってCAR-T療法を優先し、治療抵抗となったらBiTE抗体薬にスイッチする戦略が現実的ではないか」とした。

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TN乳がんの治療薬SG、日本での製造販売承認を申請/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは、2024年1月30日付のプレスリリースで、全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(HR-/HER2-)乳がん治療薬として開発を進めている抗体薬物複合体(ADC)sacituzumab govitecan(SG)について、同日に日本における製造販売承認申請を行ったと発表した。 HR-/HER2-(IHCスコア0、IHCスコア1+またはIHCスコア2+/ISH陰性)乳がん(トリプルネガティブ乳がん)は、最も悪性度の高いタイプの乳がんで、乳がん全体の約10%を占めるといわれている。HR-/HER2-乳がんの細胞は、エストロゲンとプロゲステロンの受容体の発現がなく、HER2の発現も限定的もしくはまったく認められない。HR-/HER2-乳がんはその性質上、他の乳がんに比べて有効な治療法がきわめて限られており、再発や転移の可能性が高く、他の乳がんにおける転移・再発までの平均期間が5年であるのに対し、HR-/HER2-乳がんでは約2.6年、5年生存率は、一般的な再発乳がんの女性においては28%、HR-/HER2-再発乳がんにおいては12%とされている。 SGは、90%以上の乳がんを含む複数のがん種で高発現する細胞表面抗原であるTrop-2蛋白を標的とするADCである。Trop-2が発現したがん細胞に取り込まれると、トポイソメラーゼI阻害薬であるSN-38を直接届けるとともに、バイスタンダー効果により周辺のがん細胞のDNAにも作用し、がん細胞を死滅させる。 今回の承認申請は、2つ以上の化学療法レジメンによる前治療後に再発した切除不能な局所進行または転移・再発のHR-/HER2-乳がん患者を対象に海外で実施した第III相試験(ASCENT試験)および国内第II相臨床試験(ASCENT-J02試験)の結果に基づく。

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切除可能III期NSCLC、toripalimab併用で無イベント生存期間が改善/JAMA

 切除可能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療では、周術期の化学療法にtoripalimab(プログラム細胞死タンパク質1のヒト化IgG4Kモノクローナル抗体)を追加すると、化学療法単独と比較して、無イベント生存期間が有意に改善し、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・上海交通大学のShun Lu氏らが実施した「Neotorch試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2024年1月16日号に掲載された。中国50施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 Neotorch試験は、中国の50施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年3月12日~2023年6月19日に参加者を登録した(中国・Shanghai Junshi Biosciencesの助成を受けた)。 年齢18~70歳、切除可能なStageII/IIIのNSCLC患者(非扁平上皮がんの場合はEGFRまたはALK遺伝子変異のない患者)を、術前補助療法として担当医が選択したプラチナ製剤ベースの化学療法(3サイクル)との併用で3週ごとにtoripalimab(240mg)またはプラセボを投与し、術後補助療法として同レジメンを1サイクル施行した後、維持療法として3週ごとにtoripalimab(240mg)単独またはプラセボを最長で13サイクル投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。病理学的奏効率も優れる 今回の中間解析(データカットオフ日:2022年11月30日)では、StageIIを除外したStageIIIのNSCLC患者404例(年齢中央値62歳、男性92%)を対象とした(toripalimab群202例、プラセボ群202例)。 主要評価項目である無イベント生存期間中央値は、プラセボ群が15.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.6~21.9)であったのに対し、toripalimab群は評価不能(NE)(95%CI:24.4~NE)であったが、統計学的に有意に優れた(ハザード比[HR]:0.40、95%CI:0.28~0.57、p<0.001)。 もう1つの主要評価項目である病理学的奏効(major pathological response、腫瘍床の生存腫瘍細胞が10%以下)の割合は、プラセボ群が8.4%(95%CI:5.0~13.1)であったのに比べ、toripalimab群は48.5%(41.4~55.6)と有意に高率であった(群間差:40.2%、95%CI:32.2~48.1、p<0.001)。予期せぬ治療関連毒性は認めない 副次評価項目である全生存期間中央値(NE vs.30.4ヵ月、HR:0.62、95%CI:0.38~1.00、p=0.05)、独立病理評価委員会の盲検下の判定による病理学的完全奏効(24.8% vs.1.0%、群間差:23.7%、95%CI:17.6~29.8、p<0.001)、担当医判定による手術を受けた患者の無病生存期間中央値(NE vs.19.3ヵ月、HR:0.50、95%CI:0.33~0.76、p<0.001)は、いずれもtoripalimab群で優れた。 試験期間中のGrade3以上の治療関連有害事象(toripalimab群63.4% vs.プラセボ群54.0%)、投与中止をもたらした治療関連有害事象(9.4% vs.7.4%)、致死的な有害事象(3.0% vs.2.0%)の発現率は両群で同程度であった。また、投与中止をもたらした有害事象(28.2% vs.14.4%)、免疫関連有害事象(42.1% vs.22.8%)はtoripalimab群で頻度が高かった。予期せぬ治療関連毒性は認めなかった。 著者は、「併用療法は、根治手術の割合が高く、R0切除率には影響を与えず、手術関連有害事象を増加させなかった」とし、「これらの知見は、切除可能なStageIIIのNSCLCに対する新たな治療選択肢として、toripalimabとプラチナ製剤ベースの化学療法との併用を支持するものである」と指摘している。

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膵がん患者に合併する静脈血栓塞栓症への対応法【見落とさない!がんの心毒性】第28回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別60代・女性既往歴虫垂炎術後服用歴テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(ティーエスワン配合OD錠T20)(2錠分2 朝夕食後)、クエン酸第一鉄Na錠50mg(1錠分1 朝食後)、ランソプラゾールOD錠15(1錠分1 朝食後)喫煙歴なし現病歴X年10月に食欲不振と食後嘔吐を主訴に消化器内科を受診した。腹部骨盤部造影CTで十二指腸水平脚の圧排を伴う膵鈎部がんおよび多発肝転移を認め、上部消化管内視鏡で十二指腸水平脚に腫瘍の直接浸潤に伴う潰瘍性病変を認めた(写真1、2)。画像を拡大する進行膵鈎部がん(T4,N1,M1 StageIVb)と診断し、十二指腸ステントを挿入し、同年11月に化学療法(ゲムシタビン[GEM]単剤)を開始した。その後、食欲は改善し、同年12月に退院した。外来で同化学療法計4クールを施行したが、X+1年3月にはPD判定となり、同月よりTS-1単剤での化学療法に変更となった(Performance Status[PS]3)。同年5月に、突然の呼吸困難を主訴に救急外来を受診し、バイタルは体温36.5℃、脈拍数111/分、血圧93/56mmHg、SpO2 94%(室内気)で、左下腿浮腫を認めた。血液検査でDダイマー46μg/mL、BNP 217pg/mLと上昇し、心エコー図検査で右室拡大によるD-shapeを認めた。造影CTで両側肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)、両下肢深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)と診断し、入院となった(写真3)。画像を拡大する循環器内科と連携し、入院時Hb 8.3mg/dLと貧血を認めたことから、出血リスクを考慮し、未分画ヘパリン10,000単位/日の低用量で抗凝固療法を開始した。入院2日目に明らかな吐下血は認めなかったものの、Hb 6.7mg/dLと貧血の悪化を認めた。【問題】下記のうち、この患者の静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)管理の方針や膵がん患者に合併するVTEに関する文章として正しいものはどれか。a.日本において膵がん患者におけるVTE予防目的に、低分子ヘパリン(LMWH)皮下注や直接経口抗凝固薬(DOAC)の予防投与が保険承認されている。b.本症例におけるVTEの初期治療として、DOAC単剤による抗凝固療法がより適切である。c.本症例では抗凝固療法の開始後、貧血の悪化を認めたが、明らかな出血事象が確認されない限り、抗凝固療法は継続すべきである。d.進行膵がんは診断後、3ヵ月以内のVTE発症が多く、定期的なDダイマー測定がVTEの診断に有用である。まとめ膵がん患者では予防的抗凝固療法による生存期間延長の利益について、一定の見解は得られていない。自施設の日本人の膵がん患者432名を対象とした検討では、膵がん診断後の生存期間は、VTE群と非VTE群で有意差はなかった。膵がん自体の予後が不良で、VTEの発症は予後悪化に寄与しない可能性がある5)。しかし、VTEはひとたび発症すると致命的な病態となり得ることや、他臓器のがんではVTE発症により生存期間が短縮するという研究が多いため、今後、膵がん治療・患者管理の進歩により、VTE発症の生命予後への影響が明確化する可能性ある。1)Khorana AA, et al. Cancer. 2013;119:648-655.2)Schunemann HJ, et al. Lancet Haematol. 2020;7:e746-755.3)Wang Y, et al. Hematology. 2020;25:63-70.4)Maraveyas A, et al. Eur J Cancer. 2012;48:1283-1292.5)Suzuki T, et al. Clin Appl Thromb Hemost. 2021;27:1-6.講師紹介

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PARP阻害薬タラゾパリブ、BRCA変異陽性乳がん、前立腺がんに承認/ファイザー

 ファイザーは2024年1月18日、PARP阻害薬タラゾパリブ(商品名:ターゼナ)について、同剤の単剤療法による「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」、および同剤とエンザルタミドとの併用による「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌」の治療薬として、国内における製造販売承認を取得した。  今回の承認は、乳がんについての海外第III相試験(EMBRACA試験)および国内第I相試験の結果等、前立腺がんについては国際共同第III相試験(TALAPRO-2試験の結果等に基づいている。 EMBRACA試験は、化学療法歴がある生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性の転移を有する乳がんを対象に、同剤と化学療法を比較する第III相非盲検無作為化並行2群多施設共同試験である。タラゾパリブ群は化学療法群と比較して、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)の延長を示し、忍容性は良好であった。  TALAPRO-2試験は、全身治療歴がない転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(相同組換え修復遺伝子変異の有無を問わず)を対象に、同剤とエンザルタミドの併用を評価する第III相二重盲検無作為化プラセボ対照多施設共同試験である。同剤とエンザルタミド併用群は、エンザルタミド群と比較して、主要評価項目の画像診断に基づくPFSの延長を示した。

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プラチナ治療歴のある進行TN乳がんの維持療法、オラパリブ±デュルバルマブが有効(DORA)

 プラチナ製剤ベースの化学療法に感受性のある進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する維持療法として、オラパリブ±デュルバルマブの有効性を検討した第II相DORA試験において、デュルバルマブ併用/非併用のいずれの群も化学療法による維持療法のヒストリカルコントロールより無増悪生存期間(PFS)が長く、BRCA野生型プラチナ製剤感受性の進行TNBCの患者集団において、化学療法なしの維持療法で持続的な病勢コントロールが可能なことが示唆された。シンガポール・国立がんセンターのTira J. Tan氏らがClinical Cancer Research誌オンライン版2024年1月18日号で報告した。 本試験は国際多施設第II相試験で、プラチナ製剤ベースの化学療法による1次治療もしくは2次治療で病勢安定(SD)持続または完全/部分奏効(CR/PR)が得られたTNBC(エストロゲン/プロゲステロン受容体発現率10%以下)患者を対象とし、オラパリブ単独群(オラパリブ300mg1日2回)とデュルバルマブ併用群(4週ごとにデュルバルマブ1,500mgを併用)に1:1で無作為に割り付けた。主要評価項目はPFSで、化学療法を継続するヒストリカルコントロールと比較した。 主な結果は以下のとおり。・計45例をオラパリブ単独群23例、デュルバルマブ併用群22例に無作為に割り付けた。・追跡期間中央値9.8ヵ月の時点で、無作為化からのPFS中央値はオラパリブ単独群で4.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:2.6~6.1)、デュルバルマブ併用群で6.1ヵ月(同:3.7~10.1)であり、いずれもヒストリカルコントロールより有意に長かった(順にp=0.0023、p<0.0001)。・臨床的有用率(SDが24週以上またはCR/PR)は、オラパリブ単独群で44%(95%CI:23~66)、デュルバルマブ併用群で36%(同:17~59)であった。・生殖細胞系列BRCA遺伝子変異やPD-L1発現にかかわらず、持続的な臨床的有用性が認められ、とくにオラパリブ単独群ではプラチナ製剤の前治療に対するCR/PRと関連する傾向がみられた。・安全性に関する新たなシグナルは報告されなかった。

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ROS1融合遺伝子陽性NSCLC、repotrectinibが有望/NEJM

 ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、repotrectinibはROS1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の治療歴を問わず、持続的な臨床活性を示したことが、米国・スローンケターリング記念がんセンターのAlexander Drilon氏らが行った第I/II相試験(「TRIDENT-1試験」)で示された。有害事象は主にグレードが低く、長期の投与に適するものであった。ROS1融合遺伝子陽性NSCLCの治療に承認されている初期世代のROS1 TKIは、抗腫瘍活性を有するが、耐性が生じ、頭蓋内活性が最適とはいえない。repotrectinibは、前臨床試験においてROS1 G2032Rなどの耐性変異を含むROS1融合遺伝子陽性がんに対する活性が示された次世代のROS1 TKIであり、研究グループは承認申請のため本検討を行った。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。奏効率、奏効期間、無増悪生存期間などを評価 研究グループは、ROS1融合遺伝子陽性NSCLCを含む進行固形がん患者を対象に、repotrectinibの有効性と安全性を評価する第I/II相試験を行った。 第II相試験の有効性の主要評価項目は奏効率だった。有効性の解析は、第I相および第II相試験の被験者を対象に行った。第II相試験の副次評価項目は、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、および安全性であった。ROS1 TKI未治療患者のDOR中央値は34.1ヵ月 第I相試験の結果に基づき、第II相試験でのrepotrectinibの推奨用量は、160mg/日を14日間投与後、160mgを1日2回とされた。 ROS1 TKI未治療のROS1融合遺伝子陽性NSCLC患者において、奏効が認められたのは71例中56例(79%、95%信頼区間[CI]:68~88)であり、DOR中央値は34.1ヵ月(95%CI:25.6~推定不能)、PFS中央値は35.7ヵ月(27.4~推定不能)だった。 1種類のROS1 TKIによる治療歴があり、化学療法歴のないROS1融合遺伝子陽性NSCLC患者において、奏効が認められたのは56例中21例(38%、95%CI:25~52)であり、DOR中央値は14.8ヵ月(95%CI:7.6~推定不能)、PFS中央値は9.0ヵ月(6.8~19.6)だった。 ROS1 G2032R変異陽性の患者において、奏効が認められたのは17例中10例(59%、95%CI:33~82)だった。 第II相試験用量の投与を受けた426例のうち、頻度が高かった治療関連有害事象は、めまい(58%)、味覚障害(50%)、錯感覚(30%)であった。治療関連有害事象のためrepotrectinibを中止したのは3%だった。

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炎症性乳がんへのNAC、1ラインvs.2~3ラインで転帰の差は

 多くのStageIII炎症性乳がん患者は、第1選択治療として術前化学療法(NAC)を受け、十分な反応を示し手術可能となるが、追加のNACが必要となるケースもある。米国・ハーバード大学医学大学院のFaina Nakhlis氏らは、1ラインvs.2~3ラインのNACを受けた患者における臨床転帰を評価した。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年12月28日号への報告。 2施設において、1ラインまたは2~3ラインのNACを受けたStageIII炎症性乳がん患者が特定された。ホルモン受容体とHER2の状態、グレード、および病理学的完全奏効(pCR)が評価され、乳がんのない生存期間(BCFS)および全生存期間(OS)はKaplan-Meier法により評価された。多変数Coxモデルを用いてハザード比(HR)が推定された。 主な結果は以下のとおり。・808例の適格患者が特定された(1997~2020年、年齢中央値:51歳、追跡期間中央値:69ヵ月)。・733例(91%)が1ライン、75例(9%)が2~3ラインのNACを受けていた。2~3ラインのNACを受けた患者において、グレード3、トリプルネガティブ、HER2陽性の乳がんがより多かった。・1ラインの患者178例(24%)、2~3ラインの患者14例(19%)でpCRを達成した。・5年BCFSは2~3ラインの患者で不良であったが(33% vs.46%、HR:1.37、95%信頼区間[CI]:0.99~1.91)、pCRを達成した192例では同様であった(1ラインの患者:76% vs.2~3ラインの患者:83%)。・308例(1ラインの患者:276例、2~3ラインの患者:32例)が死亡した。・5年OSは1ラインの患者:60% vs.2~3ラインの患者:53%(HR:1.32、95%CI:0.91~1.93)、 pCR達成例では1ラインおよび2~3ラインの患者でともに83%であった。 著者らは、「StageIII炎症性乳がん患者において、pCR率はNACのライン数によらず同様であり、pCRを達成した患者におけるBCFSおよびOSは同程度であった」としている。

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高齢者肺がんに対するアテゾリズマブの有用性(IMpower130・IMpower132統合解析)/ESMO Asia2023

 高齢者および腎機能が低下した非扁平非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、アテゾリズマブ+化学療法の有用性を評価した第III相試験の統合解析が示された。 肺がん患者は高齢者が多くを占めるが、高齢進行NSCLCに対する第III相臨床試験は少ない。そのような中、75歳以上のNSCLC患者におけるアテゾリズマブ+化学療法の有効性と安全性を評価した事後解析が、欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2023)で発表された。 この探索的研究は、非扁平NSCLCにおけるアテゾリズマブ+化学療法を評価した第III相試験であるIMpower130試験とIMpower132試験の統合解析から、75歳以上の患者を抽出したものである。75歳以上の生存ベネフィットと共に、腎機能による評価が試験ごとに行われた。有効性評価は1,181例、安全性評価は1,202例で行われ、75歳以上は131例(アテゾリズマブ含有群80例、化学療法群51例)であった。 主な結果は以下のとおり。<75歳以上の生存成績、全集団との比較>・解析全集団の無増悪生存期間(PFS)中央値はアテゾリズマブ+化学療法群7.2ヵ月、化学療法群5.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.54〜0.71)、75歳以上ではそれぞれ8.4ヵ月と7.1ヵ月(HR:0.59、95%CI:0.40〜0.88)であった。・解析全集団の全生存期間(OS)中央値はアテゾリズマブ+化学療法群18.6ヵ月、化学療法群13.9ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.68〜0.95)、75歳以上ではそれぞれ28.2ヵ月と15.9ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.39〜1.07)であった。・解析全集団の奏効率はアテゾリズマブ+化学療法群57.6%、化学療法群40.3%、75歳以上ではそれぞれ58.8%と39.2%であった。<腎機能と生存成績:試験(レジメン)ごとの比較>[IMpower130:アテゾリズマブ+カルボプラチン+nabパクリタキセル(CnP)]・CCr≧60mL/minにおけるアテゾリズマブ+CnP群のPFS中央値は7.0ヵ月、CnP群5.6ヵ月(HR:0.64、95%CI:0.53〜0.78)、45≦CCr<60ではそれぞれ7.0ヵ月と2.9ヵ月(HR:0.46、95%CI:0.25〜0.86)、CCr<45ではそれぞれ8.3ヵ月と6.1ヵ月(HR:0.49、95%CI:0.16〜1.52)であった。・CCr≧60mL/minにおけるアテゾリズマブ+CnP群のOS中央値は18.6ヵ月、CnP群14.2ヵ月(HR:0.80、95%CI:0.64〜1.01)、45≦CCr

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転移乳がんへのnab-PTX、3投1休vs.2投1休

 HER2陰性転移乳がん患者を対象に、nab-パクリタキセルの2投1休と3投1休スケジュールを比較した無作為化第II相試験の結果、2投1休スケジュールでより良好な抗腫瘍活性と安全性プロファイルが示された。中国・北京大学のYaxin Liu氏らによるOncologist誌2023年12月11日号への報告。 本試験では、HER2陰性転移乳がん患者がnab-パクリタキセルの2投1休群(1・8日目に125mg/m2、1週間休薬)および3投1休群(1・8・15日目に125mg/m2、1週間休薬)に1:1で無作為に割り付けられた(病勢進行または治療不耐性まで投与)。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)。許容できない毒性がみられた患者では、維持療法として内分泌療法もしくは経口化学療法を受けることが認められた。 主な結果は以下のとおり。・94例が組み入れられ、各群に47例ずつ割り付けられた。・2投1休群では、3投1休群と比較してより長いPFS中央値が観察された(未達vs.6.8ヵ月、ハザード比:0.44、p=0.029)。・全生存期間(28.0ヵ月vs.25.8ヵ月)、客観的奏効率(51.1% vs.48.9%)、および病勢コントロール率(93.6% vs.80.9%)は両群で同様であった。・2投1休群では、毒性による治療中止(8.5% vs.29.8%)および投与延期(6.4% vs.23.4%)が少なかった。

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2023年、がん専門医に読まれた記事は?Doctors’Picksランキング

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」は、2023年の1年間で、がん専門医によく読まれた記事ランキングを発表した(対象期間は2023年1月1日~12月19日)。 昨年まで上位に入っていた新型コロナ関連の話題はトップ10から姿を消し、国内外の臨床腫瘍に関する学会の話題や、注目の臨床試験の結果を掲載したジャーナルの紹介記事が上位にランクインしている。【1位】第20回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2023|CareNet.com(2/22公開) 2023年3月16~18日に開催された日本臨床腫瘍学会学術集会。2月16日に開催されたプレスセミナーで、会長の馬場 英司氏(九州大学)らが注目演題を発表した。【2位】Doctors' Picks 2023 ASCO特設サイト|CareNet.com(5/31公開) 2023年6月2~6日(現地時間)、世界最大の腫瘍学会であるASCO2023(米国臨床腫瘍学会年次総会)が米国シカゴとオンラインのハイブリッド形式で開催。がん種別のお勧め演題をエキスパートのコメントと共に紹介。【3位】EGFR陽性NSCLCの術後補助療法としてのオシメルチニブ/ADAURA試験OS解析|ASCO(4/27公開) EGFR陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法としてのオシメルチニブはすでに有用な結果が報告されているが、この第III相ADAURA試験の全生存期間(OS)の解析結果が国臨床腫瘍学会(ASCO2023)のPlenary Sessionで発表された。【4位】ASCO2023 FLASH 消化器がん/国立がん研究センター中央病院 大場 彬博氏|CareNet.com(6/6公開) 2023年6月2日から6日まで開催された2023 ASCO Annual Meetingで発表されたplenary sessionのPROSPECT試験をはじめとした消化器腫瘍のトピックを、国立がん研究センター中央病院の大場 彬博氏が動画でレビュー。【5位】Guardant360 CDxリキッドパイオプシー検査が保険償還|GUARDANT(7/11公開) 米国Guardant Healthは、同社のGuardant360 CDxリキッドバイオプシー検査について、7月24日付で日本国内における保険償還が承認される見通しだと発表した。 6~10位は以下のとおり。【6位】ESMO2023、肺がん領域の注目演題/新潟県立がんセンター新潟病院 三浦 理氏|ESMO(10/16公開)【7位】MSI-High固形がんに対するペムブロリズマブ/KEYNOTE-164最終解析|Clinical Cancer Research(5/16公開)【8位】神経内分泌がん、化学療法耐性後のFOLFIRI vs.FOLFIRI+ベバシズマブ|Lancet Oncology (2/7公開)【9位】IO+Chemo後のラムシルマブ+ドセタキセルの評価/NEJ-051|Eur J Cancer(3/14公開)【10位】ASCO2023 FLASH 肺がん/神奈川県立循環器呼吸器病センター 池田 慧氏|CareNet.com(6/8公開)

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移植適応多発性骨髄腫の1次治療、ダラツムマブ上乗せでPFS延長/NEJM

 新規に診断された移植適応多発性骨髄腫患者において、ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(VRd)の導入/地固め療法+レナリドミド維持療法へのダラツムマブ皮下投与上乗せにより、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長した。オランダ・エラスムスMCがん研究所のPieter Sonneveld氏らが、欧州およびオーストラリアの14ヵ国115施設で実施された多施設共同無作為化非盲検第III相試験「PERSEUS試験」の結果を報告した。ヒト型抗CD38モノクローナル抗体のダラツムマブは、多発性骨髄腫に対する標準的な治療レジメンとして承認されているが、新規診断の移植適応多発性骨髄腫患者におけるダラツムマブ皮下投与とVRd併用療法の評価が求められていた。NEJM誌オンライン版2023年12月12日号掲載の報告。ダラツムマブ皮下投与+VRd(D-VRd)vs.VRd単独に無作為化 研究グループは、2019年1月19日~2020年1月3日に、18~70歳で新たに多発性骨髄腫と診断され、大量化学療法および自家造血幹細胞移植の適応があるECOG PS 0~2の患者709例を、移植前VRd導入療法+移植後VRd地固め療法+レナリドミド維持療法にダラツムマブ皮下投与を併用する群(D-VRd群)と、併用しない群(VRd群)に、国際病期分類(I、II、III)および細胞遺伝学的リスク(標準、高)で層別化し1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要評価項目はPFSとし、重要な副次評価項目は完全奏効以上の患者の割合(CR率)、微小残存病変が陰性(閾値10-5)の患者の割合(MRD陰性化率)、全生存期間(OS)であった。D-VRd群でPFSが有意に延長、疾患進行または死亡のリスクはVRd群より58%低下 追跡期間中央値47.5ヵ月(範囲:0~54.4)の時点で、D-VRd群では355例中50例(14.1%)、VRd群では354例中103例(29.1%)に病勢進行または死亡を認めた。 48ヵ月無増悪生存率は、D-VRd群84.3%(95%信頼区間[CI]:79.5~88.1)、VRd群67.7%(62.2~72.6)、D-VRd群のVRd群に対する病勢進行または死亡のハザード比(HR)は0.42(95%CI:0.30~0.59、p<0.001)であった。 CR率はD-VRd群がVRd群より高く(87.9% vs.70.1%、p<0.001)、MRD陰性化率も同様であった(75.2% vs.47.5%、p<0.001)。少なくとも12ヵ月間MRD陰性状態が持続した患者の割合は、D-VRd群64.8%、VRd群29.7%であった。 死亡はD-VRd群34例、VRd群44例であった。 Grade3または4の有害事象の発現率はD-VRd群91.5%、VRd群85.6%で、主な事象は好中球減少症(それぞれ62.1%、51.0%)、血小板減少症(29.1%、17.3%)、下痢(10.5%、7.8%)、肺炎(10.5%、6.1%)、発熱性好中球減少症(9.4%、10.1%)であった。重篤な有害事象はD-VRd群で57.0%、VRd群で49.3%に発現した。

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