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ASCO2026 レポート 乳がん

レポーター紹介[目次]persevERA試験SERENA-6試験JCOG1919E (AMBITION)試験SAKK96/12 REDUSE試験OPTIMA試験PRO-MOTE試験はじめに2026年5月29日~6月2日までシカゴで開催されたASCO年次総会は、「The Science and Practice of Translation: Improving Cancer Outcomes Worldwide」がテーマで、研究成果を臨床に迅速に届け、地域社会や資源の限られた国々へ広げる取り組みが強調された。航空運賃の高騰、円安、米国内のインフレなど学会参加コストの上昇から、日本からの参加者はコロナ前と比べてあまり戻っていない印象だが、それでも多くの研究者と交流できた。また、6月3日に台風チャンミーが日本を直撃し、多くの国際線・国内線が欠航になる中、帰国に影響があった参加者も多かったようである。私は外来日の関係で帰国が1日早かったので、幸い影響を受けなかった。今回は直接日常臨床を変える試験は多くなかったが、将来の開発の方向性を考えるうえで重要だと考えられた6試験を紹介する。目次に戻るpersevERA試験:ESR1で絞り込まない経口SERDの可能性persevERA試験は、ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)転移乳がん(MBC)の1次治療として、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)のgiredestrant+パルボシクリブ療法とレトロゾール+パルボシクリブ療法を比較した第III相試験である。すでにプレスリリースで公開されているようにnegative studyであった。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)は、giredestrant群33.1ヵ月、レトロゾール群28.2ヵ月でハザード比[HR]:0.89(95%信頼区間[CI]:0.76~1.05、p=0.1553)と数値的な延長を示したが、統計学的有意差には至らず、また副次評価項目の全生存期間(OS)は未成熟で明確な差はなかった。奏効率と臨床的ベネフィット率はほぼ同等で、奏効期間は経口SERD群でやや長かった。主な有害事象は好中球減少、貧血などで、両群とも管理可能だった。ESR1変異を有する集団における有効性のデータの多い経口SERDにおいて、本試験ではESR1変異の有無が適格基準となっていない点が特徴である。同様のセッティングで行われる他剤の結果などを含めて、経口SERDの今後の開発の方向性に影響する試験といえるだろう。目次に戻るSERENA-6試験:ctDNAでのESR1変異検出後の早期スイッチSERENA-6試験は、アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬併用療法を受けるHR+HER2-MBC患者で、血中ctDNA検査によりESR1変異が検出され、画像上病勢進行(PD)がない時点でcamizestrantに早期スイッチするか、AIを継続するかをPFSをエンドポイントとして検証したランダム化第III相試験である。主要評価項目の結果は昨年のASCOのplenaryで発表され、AI継続群に比べ、camizestrant+CDK4/6阻害薬群はPFSが7.6ヵ月延長(16.8ヵ月vs.9.2ヵ月)し、HR:0.45(95%CI:0.34~0.59)と統計学的有意差を示した。今回は副次評価項目である2次PFS(PFS2)の結果が報告され、25.7ヵ月vs.19.1ヵ月、HR :0.63(95%CI:0.46~0.86、p=0.00373)と、PFSでの効果がそのままPFS2に持ち越されていた。総ctDNAのクリアランス率は51%vs.2%と差が顕著で、化学療法/ADCフリー生存期間が延長し、患者報告アウトカムも改善した。ESR1変異出現を2〜3ヵ月に1回検査する必要があり、検査費用やモニタリング体制、検査に対する患者の不安が課題となる。臨床増悪時にスイッチする戦略や他の併用との比較は行われておらず、米国食品医薬品局(FDA)での審査においても試験デザインに対する懸念が報告されている(でも、試験開始前にFDAと相談してこのデザインになったのでは?)。日本での承認も見込まれるが、ESR1検査の保険適用や体制の整備が必要であり、今後の適正導入に向けた議論が求められる。目次に戻るJCOG1919E (AMBITION)試験:HR+HER2-乳がんにおける免疫療法日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が実施したJCOG1919E(AMBITION)試験は、HR+HER2-進行乳がん患者281例を対象に、パクリタキセル+ベバシズマブに免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブを上乗せする意義を検討した第III相試験である。JCOG乳がんグループ初の医師主導治験であり、研究事務局の愛知県がんセンター原 文堅先生が発表された。主要評価項目のPFSはアテゾリズマブ併用群12.4ヵ月vs.対照群11.2ヵ月(HR:0.876、95%CI:0.670~1.145、p=0.168)と有意差を示さず、免疫療法追加の恩恵は確認できなかった。OSは39.1ヵ月vs.31.2ヵ月(HR:0.804、p=0.091)と数値的な延長傾向が認められたが統計学的有意差は認められなかった。安全性はおおむね既知のプロファイルに一致し、免疫関連有害事象は追加されたものの管理可能であった。HR+HER2-乳がんは免疫学的に“cold”とされており、VEGF阻害薬+細胞障害性抗がん薬+免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の組み合わせでも効果は限定的であった。HR+HER2-MBCにICIを併用した日本から初めての無作為化第III相試験であり、現在進行中のトランスレーショナルリサーチにより、ICI追加のメリットの得られるサブグループの同定に期待したい。目次に戻るSAKK96/12 REDUSE試験:デノスマブ投与間隔を12週に延長MBCに対する支持療法の試験も紹介する。SAKK96/12 REDUSE試験は、骨転移を有する転移乳がんおよび去勢抵抗性前立腺がん患者1,380例を対象に、デノスマブ120 mgを4週間ごと(従来)と12週間ごとの維持投与にランダム化した非劣性試験である。主要評価項目は初回症候性骨関連事象までの期間であり、12週投与群のハザード比は1.023(90%CI: 0.874~1.197)で非劣性の閾値1.20を下回り、中央値はどちらも約56.5ヵ月と同等であった。副次評価項目では12週群で低カルシウム血症や顎骨壊死が有意に少なく、OSも大きな差はなかった。試算では投与間隔延長により薬剤費が約半減し、スイスでは年間1,500万CHF程度の医療費削減が見込まれる。日本でもデノスマブは骨関連事象予防の標準薬であり、12週投与への変更は患者の通院負担を軽減し、医療資源の効率化につながる。また骨修飾薬には非定型骨折など特徴的な有害事象があり、今後は12週間隔投与が標準となると考えられるが、論文化されたデータを確認して日常臨床に適用していきたい。目次に戻るOPTIMA試験:PAM50を用いた遺伝子検査による化学療法削減OPTIMA試験は、臨床的に高リスクと判断されるHR+HER2-早期乳がん患者約4,400例を対象に、従来の術後化学療法を一律に行う群と、50遺伝子のPAM50(Prosigna)検査結果に基づき化学療法の有無を決める群を比較した国際ランダム化非劣性試験である。対象は40歳以上で最大9個のリンパ節転移を認める症例まで含まれ、約2/3がリスクスコア60以下であった。浸潤乳がん再発または死亡のない生存期間は両群でほぼ同等で、試験群は化学療法群に対して5年時点の差が1.5%以下に収まり非劣性が確認された。低リスク腫瘍では化学療法の恩恵はごくわずかであり、100人中2人程度しか再発予防効果が得られないことが示された。この50遺伝子検査は、卵巣機能抑制下の40歳以上閉経前女性や4〜9個のリンパ節転移を有する症例でも補助化学療法の省略判断に活用できる。日本で用いられる21遺伝子検査(Oncotype DX)はリンパ節転移陰性もしくはリンパ節転移3個までの患者を対象とした臨床試験を有し、日本では保険適用ではないが多くの試験のあるMammaPrintも同様である。リンパ節転移4個以上9個までの、従来再発高リスクと考えられ、基本的に術後化学療法を提案していた患者が含まれている点が本試験の特徴である。一方で、検査費用(これは他のパネルも同様)やフォローアップ期間が63%の患者で5年以下と短いこと、40歳未満の若年者が除外されている点に留意が必要である。目次に戻るPRO-MOTE試験:日本最大規模のePRO試験最後にPRO-MOTE試験を紹介する。本試験は、日本の49施設が参加した進行がん患者501例を対象とする電子的患者報告アウトカム(ePRO)システムの実用性を検証したランダム化試験である。乳がんのみを対象とした試験ではないが、日本から報告された最大規模のePRO試験でありここで紹介する。神戸大学の清田 尚臣先生が発表された。PRO-MOTE試験はスマートフォンアプリによる週1回の症状報告と医師へのアラート送信を行う介入群と、通常診療のみの対照群を比較し、主要評価項目にEORTC QLQ-C30による24週時点のグローバルヘルスステータス(GHS)およびOSを設定した。中間解析ではePRO群のGHSは対照群に対して平均−0.61ポイント(95%CI:−3.03~1.82、p=0.625)と有意差がなく、OSもHR:0.91(95%CI:0.70~1.19、p=0.48)と差がなかった。一方でアンケート回答率は90%前後と高く、機能領域や症状の多くでePRO群に有利な改善がみられた。サブグループ解析では明確な恩恵を示す集団は見出されなかったが、デジタルツールの高い受容性と症状評価の質向上が示された。日本初の大規模ePRO試験として価値は高いものの、OSやGHSを主要エンドポイントとする設計では差が検出されず、今後のePRO研究では何をエンドポイントとして設定すべきか(症状制御や治療継続性など)について問題提起する報告であった。目次に戻る

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デュルバルマブ、切除可能胃がんの周術期治療で承認/AZ

 アストラゼネカは2026年6月19日、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が、「胃がんにおける術前・術後補助療法」の適応で厚生労働省の承認を取得したと発表した。これにより同薬は、日本で初めてかつ唯一の切除可能胃がんに対する周術期免疫療法として使用可能となった。 胃がんは世界で年間約100万人が新たに診断される主要ながんの1つであり、日本でも罹患数第3位、死亡数第4位を占める。切除可能症例では手術と周術期治療が治癒を目指す標準的アプローチであるものの、依然として再発率は高く、さらなる予後改善が課題となっている。 今回承認されたレジメンは、デュルバルマブとFLOT療法(フルオロウラシル、レボホリナート、オキサリプラチン、ドセタキセル)を組み合わせた周術期治療(D-FLOTレジメン)である。用法・用量は、術前および術後にそれぞれ最大2回、4週間間隔でデュルバルマブ1,500mgをFLOT療法と併用投与し、その後デュルバルマブ単剤を4週間間隔で最大10回投与する。 今回の承認は国際第III相MATTERHORN試験の結果に基づくもの。同試験は、切除可能なStageII~IVAの胃がんまたは食道胃接合部がん患者948例を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照国際共同第III相試験である。患者はデュルバルマブ+FLOT群またはプラセボ+FLOT群に割り付けられ、主要評価項目は無イベント生存期間(EFS)とされた。 計画された中間解析では、デュルバルマブ併用群は対照群と比較して病勢進行、再発または死亡のリスクを29%低下させた(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.86、p<0.001)。EFS中央値は対照群の32.8ヵ月に対し、デュルバルマブ群では未到達であった。24ヵ月時点のEFS率は67.4%対58.5%と、デュルバルマブ群で良好な結果が示された。 さらに最終全生存期間(OS)解析では、死亡リスクが22%低下した(HR:0.78、95%CI:0.63~0.96、p=0.021)。3年生存率はデュルバルマブ群69%、対照群62%であり、経時的に生存曲線の乖離が拡大する傾向が認められた。OSベネフィットはPD-L1発現状況にかかわらず確認された。 安全性については既知のプロファイルと概ね一致していた。Grade3以上の有害事象発現率はデュルバルマブ群71.6%、対照群71.2%と同程度であり、手術完遂率にも大きな差はみられなかった。 日本人サブグループ解析では、デュルバルマブ群40例、プラセボ群46例が登録され、有効性および安全性はいずれも全体集団と同様の傾向を示した。 愛知県がんセンターの室 圭氏は、「周術期D-FLOTレジメンは日本の患者にも新たな治療選択肢となり、周術期免疫療法が新たな標準治療となる可能性がある。切除可能胃がん治療における大きなパラダイムシフトである」とコメントした。また、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)胃がんグループ代表の吉川 貴己氏も、「依然として高い再発率を背景に、より強力な周術期治療が求められていた。本承認は切除可能胃がん患者の予後改善に向けた重要な選択肢となる」と期待を示した。 今回の承認により、切除可能胃がんに対する周術期治療戦略は、化学療法単独から免疫療法併用へと移行する可能性がある。【製品概要】(下線部が今回より追加)製品名:イミフィンジ点滴静注120mg、イミフィンジ点滴静注500mg一般名:デュルバルマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:・切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法・切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌・非小細胞肺癌における術前・術後補助療法・進展型小細胞肺癌・限局型小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法・治癒切除不能な胆道癌・進行・再発の子宮体癌・膀胱癌における術前・術後補助療法・胃癌における術前・術後補助療法

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複合がん免疫療法の近未来/日本臨床腫瘍学会

 がん免疫療法は、複数の免疫療法を組み合わせることで治療効果を最大化する新たなフェーズへと進展しつつある。2026年3月26~28日に開催された第23回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「複合がん免疫療法の近未来」をテーマとしたシンポジウムが企画され、次世代の治療戦略が議論された。腫瘍免疫の理解が深化する中で、がん免疫応答の多面的なメカニズムを考慮した新たな複合がん免疫療法の確立が期待される。持続型T細胞免疫システムとCD4陽性T細胞療法 冒頭、各務 博氏(埼玉医科大学国際医療センター)は、近年のがん免疫療法の進歩を背景に、免疫応答をいかに持続させるかが重要な課題となっていることを指摘した。そのうえで、腫瘍微小環境内に形成される三次リンパ様構造(TLS)を基盤とした持続型T細胞免疫システムと、CD4陽性T細胞を活用した新たな治療戦略について講演した。 TLSは腫瘍局所に形成されるリンパ組織様構造で、抗原特異的T細胞の増殖や機能維持を担う場として機能する。ここでは、前駆疲弊CD8陽性T細胞(Tpex)が中心的役割を果たしている。TpexはPD-1を発現しつつも自己複製能を保持し、抗原特異的T細胞を継続的に供給する貯蔵プールとして働く。PD-1阻害薬の投与によりTpexが増殖し、抗腫瘍効果を引き起こすことが知られている。 さらに、Tpexの維持には特定のCD4陽性T細胞群が関与することが明らかとなっている。Tpexと連動して長期的な免疫応答を維持する重要な細胞集団であるTh7Rは、Tpexと類似した遺伝子発現を示し、腫瘍内で近接して分布する。解析の結果、Th7RとTpexの細胞数は相関しており、CD4陽性T細胞がTpexの形成および維持に寄与する可能性が示唆されている。 モデルマウスを使用した研究では、Th7Rを投与することで腫瘍内のTpexが増加し、抗腫瘍効果の増強が確認された。また、PD-1やCTLA-4阻害薬との併用により、その効果が持続することも示された。これは、Tpex/Th7R相互作用の維持を目的とした細胞療法として、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療の有望な戦略となる可能性を示唆している。 臨床的にもCD4陽性T細胞の存在は予後と関連し、PD-1阻害薬による治療前後で血中のTh7Rが減少していない患者さんで5年生存例が多いことが報告されている。一方で、これらの細胞が減少すると再発や死亡につながる可能性がある。このため、CD4陽性T細胞を継続的に補充する細胞療法により、腫瘍微小循環を維持し、免疫応答を長期にわたって持続させる治療戦略が重要であると各務氏は指摘する。 総じて、腫瘍微小循環にはTLS・Tpex/Th7R相互作用に代表される持続型抗腫瘍細胞メカニズムが存在し、持続的ながん免疫の基盤となっている。腫瘍微小循環を維持する細胞療法の併用は、今後のICI治療の発展において重要な方向性になることが期待されている。ICIとADC併用療法の現状と展望 続いて、清水 俊雄氏(関西医科大学附属病院 新薬開発科)はICIと抗体薬物複合体(ADC)の併用療法について、その作用機序、臨床的課題、今後の展望などについて概説した。 ADCは、標的に特異的に結合する抗体、細胞障害作用を担うペイロード、そして両者を連結するリンカーの3要素から構成される。これら各要素の設計は、有効性と安全性を大きく左右する。とくにリンカーの安定性や薬物抗体比(DAR)は体内動態(PK/PD)や毒性に強く影響する。また、ペイロードの疎水性や膜透過性は、腫瘍細胞内での作用に加え、周囲細胞へも影響する重要な因子である。 臨床的課題としては、標的抗原を発現する正常組織にも作用するオンターゲット毒性と、非特異的にほかの組織へ影響を及ぼすオフターゲット毒性が挙げられる。さらに、ADCは体内で単一の形態として存在するわけではなく、完全体、ペイロードが解離した抗体、遊離ペイロードなど複数の分子種が時間とともに変動する。このような動的な分布が薬効と毒性のバランスを規定するため、PK/PDの理解と最適化が重要となる。 免疫学的観点では、ADCによる腫瘍細胞障害は腫瘍抗原の放出を促し、免疫応答を活性化する。これにより樹状細胞およびT細胞が活性化され、腫瘍細胞では主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子やPD-L1の発現が増加する。その結果、CD8陽性T細胞の腫瘍への浸潤が促進される。このような背景から、ICIとの併用による相乗的な抗腫瘍効果が期待されており、ADCとPD-1阻害薬の併用による有望な臨床試験の成績が報告されている。 一方で、併用療法の最適化にはいくつかの重要な課題がある。具体的には、標的抗原発現の維持、毒性の重複回避、ならびにADCの非特異的取り込みの抑制が挙げられる。さらに近年では、二重特異性抗体や二重ペイロードの導入、腫瘍特異的に活性化される設計、免疫刺激型ペイロードの活用など、機能を拡張した次世代ADCの開発が進んでいる。これらの新規ADCはまだ早期開発段階にあるものの、バイオマーカーの確立と臨床的有用性の検証が進めば、より精緻な個別化治療の実現が期待される。 最後に清水氏は、ADCとICIの併用療法は大きな可能性を有する一方で、その成功には分子設計、薬物動態、免疫学的作用、臨床戦略を統合的に理解することが不可欠となることを強調した。加えて、適切な薬剤選択や投与タイミングの最適化、さらには構造の改良による安全性と有効性の向上が、今後の治療成績を左右すると締めくくった。肺がん領域における二重特異性抗体の最前線 ICIの登場により、肺がん、とくに非小細胞肺がんの治療成績は大きく向上した。しかし、すべての患者さんに十分な効果が得られるわけではなく、新たな治療戦略の開発が求められている。こうした中で、最近は二重特異性抗体が注目されている。吉田 達哉氏(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科/先端医療科)は、肺がん領域における二重特異性抗体の臨床的展開について、最近の動向を報告した。 二重特異性抗体は、異なる2つの分子を同時に標的とすることを特徴とし、デュアルチェックポイント阻害型とT細胞誘導型(T細胞エンゲージャー)とに大きく分類される。前者は複数の免疫抑制シグナルを同時に阻害することで免疫応答を増強し、後者は腫瘍抗原とT細胞上の分子を橋渡ししてT細胞を直接腫瘍へ誘導・活性化する。造血器腫瘍ではT細胞エンゲージャーの成功例が多く報告されている一方、固形腫瘍である肺がんでは、これらを単独あるいはICIと組み合わせて用いる戦略が活発に検討されている。 肺がん領域では、特定のドライバー変異に関連する受容体を同時に標的とするアプローチや、腫瘍特異的抗原とT細胞を結び付けるT細胞エンゲージャーが臨床開発の段階から実臨床へと移行しつつある。前者は分子標的薬との併用により生存期間の延長が示唆され、後者は小細胞肺がんにおいて化学療法との併用で良好な治療成績が報告されており、新たな標準治療となる可能性がある。 一方で、患者選択の指標として用いられてきたPD-L1発現のみでは、ICIによる治療効果を十分に予測することが難しく、腫瘍変異量、抗原提示細胞や制御性T細胞の分布など、免疫微小環境をより詳細に解析する必要がある。こうした多面的なバイオマーカーの開発が、今後の個別化医療の鍵を握ると吉田氏は指摘する。 また、二重特異性T細胞エンゲージャーは腫瘍内の局所的なT細胞浸潤と免疫チェックポイント分子の発現を誘導し、ICI併用の有効性を示唆する一方で、抗原喪失などの免疫逃避が課題となる。 現在、T細胞エンゲージャーとICIの併用を検証する後期臨床試験が進行中であり、最適な併用方法や投与タイミングの確立が期待されているという。肺がん治療は、免疫療法のさらなる進展により新たな段階へと移行しつつあると、吉田氏は講演をまとめた。ICIとネオ抗原ワクチンの併用療法 近年、感染症領域におけるmRNAワクチンの成功を契機として、個別化がんワクチンの開発が大きく加速している。北野 滋久氏(がん研究会有明病院 先端医療開発科/がん免疫治療開発部)は、免疫学の観点からICIとネオ抗原ワクチンとの併用療法について概説した。 従来のがん抗原は自己由来成分に近く、十分な免疫応答を誘導できないことが多く、ワクチン療法としての成功例は限られてきた。これに対し、ネオ抗原は腫瘍細胞に特異的に生じた遺伝子変異に由来する新規タンパク質断片であり、後天的に獲得されるため免疫寛容の影響を受けにくく、高い免疫原性を持つ可能性がある。 ネオ抗原は、がん細胞内で産生された変異タンパク質が分解され、ヒト白血球抗原(HLA)に提示されることでT細胞に認識される。主にクラスIではCD8陽性T細胞、クラスIIではCD4陽性T細胞を活性化する。この過程には個人ごとのHLA型や遺伝子変異の違いが大きく影響するため、治療には患者さんごとの個別化が不可欠となる。近年では、DNAおよびRNAのシーケンシングと計算アルゴリズムを組み合わせることで、有望なネオ抗原候補を予測する技術が進歩し、個別化ワクチン開発が現実味を帯びてきた。 ワクチンにはペプチド、mRNA、DNA、ウイルスベクターなど多様な種類があり、とくにmRNAワクチンは柔軟性と開発の速さから注目されている。早期臨床試験ではネオ抗原特異的な免疫応答が確認され、ICIとの併用により抗腫瘍効果の向上が期待される。免疫応答は主にCD8陽性T細胞が担い、CD4陽性T細胞も補助的に関与する。安全性については、腫瘍特異的標的であるため理論上重篤な副作用はほとんどないと考えられる。 さらに、従来は注目されていなかったイントロンを含む非コード領域(いわゆるダークゲノム)や、スプライシング異常に由来するネオ抗原の存在も明らかになりつつあり、抗原候補の幅が大きく広がっている。全ゲノム解析を活用することで、これまで見逃されていた免疫標的の同定が進み、新たな治療戦略につながる可能性がある。 北野氏は、こうした科学的進展に加え、産学連携や国家レベルの研究基盤整備も進展しており、個別化ネオ抗原ワクチンと免疫療法の統合的アプローチは、がん治療の新たな柱として実用化に向けた期待が高まっていることを強調した。

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腹膜播種を伴う胃がん、腹腔内パクリタキセル追加でOS延長(DRAGON-01)

 腹膜播種を伴う胃がんは予後不良であり、1次治療として全身化学療法が行われるものの全生存期間(OS)中央値は1年未満にとどまる。中国で実施された第III相ランダム化比較試験DRAGON-01において、腹腔内パクリタキセルを静脈内パクリタキセル+S-1療法に追加することで、OSが有意に延長することが報告された。JAMA Oncology誌オンライン版2026年5月21日号掲載の報告。 パクリタキセルは腹膜腔内で高濃度を長時間維持できることから、腹腔内投与による局所制御向上が期待されてきた。DRAGON-01試験は、中国9施設で実施された多施設共同第III相比較試験であり、対象は胃腺がんかつ腹腔鏡で確認された腹膜転移を有し、腹膜外転移および既治療歴のない成人患者であった。 患者はIP群(パクリタキセル50mg/m2静注+パクリタキセル20mg/m2腹腔内+S-1)とPS群(パクリタキセル70mg/m2静注+S-1)に2対1で割り付けられた。主要評価項目はOS、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、安全性、コンバージョン手術施行率などであった。 主な結果は以下のとおり。・222例(IP群148例、PS群74例)が解析対象となった。年齢中央値は59歳、腹膜播種指数(PCI)中央値は15で、比較的進行した腹膜病変を有する集団であった。・追跡期間中央値72.2ヵ月時点で、OS中央値はIP群19.4ヵ月、PS群13.9ヵ月で、IP群で有意な延長を示した(ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.50~0.90)。・PFS中央値はIP群11.2ヵ月、PS群7.2ヵ月でこちらもIP群で有意な延長を示した(HR:0.72、95%CI:0.54~0.96)。・3年OS率はIP群25.0%、PS群12.2%であり、長期生存割合にも差がみられた。・コンバージョン手術施行率はIP群50.7%に対しPS群35.1%、ベースラインで腹膜細胞診陽性だった患者の陰性化率はIP群83.6%に対しPS群52.6%と、いずれもIP群で高かった。・Grade3/4の有害事象はIP群38.5%、PS群41.9%で発生し、両群に大きな差はなかった。主な重篤有害事象は好中球減少、白血球減少、貧血などであり、治療関連死亡は認められなかった。・IPポート関連合併症は27.0%に認められたが、多くは試験初期に発生しており、施設経験の蓄積による改善が示唆された。 著者らは、「静脈内パクリタキセル+S-1療法への腹腔内パクリタキセル追加は、重篤な毒性を増加させることなく、OSを有意に改善した」と結論付けた。一方で、本試験には現在標準となりつつある免疫チェックポイント阻害薬併用療法が導入されておらず、PD-L1やMSI情報も未取得であった。今後は免疫療法との併用を含めた検証が必要とされる。

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EGFR exon20挿入変異陽性進行NSCLCの初回治療、経口sunvozertinibが有効(WU-KONG28)/NEJM

 EGFR exon20挿入変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)の初回治療として、sunvozertinibはプラチナベースの化学療法よりも有効性に優れることが示された。中国・Shanghai East HospitalのCaicun Zhou氏らWU-KONG28 Investigatorsが、15ヵ国154施設で被験者を募り実施した海外第III相無作為化試験の結果を報告した。sunvozertinibは、WU-KONG1B試験およびWU-KONG6試験の結果に基づき、米国および中国で、既治療のEGFR exon20挿入変異陽性の進行NSCLC患者に対する治療薬として迅速承認された経口薬。早期相の試験において、初回治療の選択薬としてもベネフィットをもたらす可能性が示唆され、有効性および安全性の検証が求められていた。NEJM誌オンライン版2026年5月29日号掲載の報告。主要評価項目はPFS 研究グループは、EGFR exon20挿入変異陽性の進行非扁平上皮NSCLC患者を、sunvozertinib群または化学療法群(カルボプラチン+ペメトレキセド)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。ベースラインの脳転移の有無で層別化した。 sunvozertinib群の患者には、プロトコールで定義した病勢進行またはその他の投与中止基準に該当するまで、sunvozertinibが1日1回300mg経口投与された。化学療法群の患者は、治験担当医師の判断で最長4または6サイクルのカルボプラチン(AUC5)+ペメトレキセド(500mg/m2)投与を受け、その後に病勢進行またはその他の投与中止基準に該当するまでペメトレキセドの投与を受けた。化学療法は3週ごとの静脈内投与とした。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)であった。化学療法群は、病勢進行確認後にsunvozertinibへのクロスオーバーが許容された。 副次評価項目は、全生存期間(OS)、治験担当医師評価のPFS、奏効率(ORR)、腫瘍径の変化、奏効期間(DOR)などとした。化学療法群よりも、PFSが有意に延長 2022年12月~2025年5月に449例がスクリーニングされ、324例が無作為化された(sunvozertinib群163例、化学療法群161例)。両群の人口統計学的および臨床的な特性は、sunvozertinib群で男性が多く、ベースラインで腫瘍病変を認める臓器数が4つ以上の患者が多かったことを除き、バランスが取れていた。被験者のうち約31%が、北米(米国、カナダ)または欧州からの登録であった。 sunvozertinib群では化学療法群よりも、PFSが有意に延長した(PFS中央値:10.3ヵ月vs.7.5ヵ月、病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.50~0.85、p<0.001)。 12ヵ月PFS率は、sunvozertinib群46.1%、化学療法群26.7%であった。OSのデータは未成熟であった(成熟度38.9%)。ORRは、sunvozertinib群58.9%、化学療法群31.1%。腫瘍径の最良変化率中央値はそれぞれ-42.1%と-24.7%、DOR中央値は11.2ヵ月と7.1ヵ月であった。 Grade3以上の有害事象は、sunvozertinib群75.5%、化学療法群56.7%の患者で報告された。sunvozertinib群で多くみられたGrade3以上の有害事象は、血清クレアチンキナーゼ値上昇、下痢、貧血であった。治験担当医師がsunvozertinibに関連すると判定した死亡例はなかった。

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新規診断AML、経口decitabine-cedazuridine+ベネトクラクスが有用/NEJM

 新たに診断された75歳以上または強力な寛解導入療法非適応の急性骨髄性白血病(AML)患者において、経口decitabine-cedazuridineとベネトクラクスの併用療法により、骨髄抑制作用が認められたものの、薬物相互作用を起こすことなく約半数の患者で完全寛解が認められた。米国・New York Presbyterian HospitalのGail J. Roboz氏らが、第I/II相多施設共同非盲検非無作為化臨床試験「ASCERTAIN-V(ASTX727-07)試験」の結果を報告した。75歳以上または強力な寛解導入療法非適応のAML患者に対しては、アザシチジンまたはdecitabineとベネトクラクスの併用療法が標準治療であるが、非経口投与は患者と医療従事者の双方に負担となっている。経口配合薬であるdecitabine-cedazuridineはAML治療薬として欧州で承認されており、静脈内投与のdecitabineと同等の薬物動態特性を有するが、単剤療法での生存期間延長効果は限定的であった。NEJM誌2026年6月4日号掲載の報告。第I/II相試験で、薬物動態と完全寛解率を評価 研究グループは、75歳以上の患者または18歳以上で強力な化学療法が非適応の、新たにAMLと診断された患者に、decitabine-cedazuridineおよびベネトクラクスを経口投与した。 全例に、1サイクルを28日として、1日目から5日目までdecitabine-cedazuridine(decitabine 35mg、cedazuridine 100mg)を経口投与し、ベネトクラクス400mgを1日1回経口投与した。ベネトクラクスは、腫瘍崩壊症候群を軽減するため第1サイクルに用量漸増投与(1日目100mg、2日目200mg、3日目以降400mg)を行った。 第IIb相では、第I相で観察された骨髄抑制を軽減するため、骨髄芽球の消失が確認された場合、decitabine-cedazuridineおよびベネトクラクスの投与期間を短縮することが推奨された。 主要評価項目は、第I相では第2サイクルの5日目および15日目に評価したベネトクラクスの血中濃度曲線下面積(AUC0-24)および最高血中濃度(Cmax)(decitabine-cedazuridine併用不問)とし、第IIa相では第2サイクルの5日目および15日目のベネトクラクスのAUC0-24およびCmax、ならびに完全寛解とし、第IIb相では完全寛解とした。薬物相互作用は認められず、完全寛解率は47% 2021年1月~2022年2月に30例(第I相)、2021年11月~2024年3月に58例(第IIa相)および101例(第IIb相)の、計189例が登録された。 第I相および第IIa相の薬物動態解析の結果、decitabine-cedazuridineとベネトクラクスの間に薬物相互作用は認められなかった。 第IIb相において、完全寛解は47%(95%信頼区間[CI]:36~57)に認められた。また、副次評価項目である完全寛解または血液学的回復が不完全な完全寛解の患者の割合は63%(95%CI:53~73)で、全生存期間中央値は15.5ヵ月(95%CI:7.6~推定不能)であった。 第IIb相におけるGrade3以上の有害事象の発現率は、貧血30%、好中球減少症26%、発熱性好中球減少症25%で、30日時点の死亡率は3%、60日時点の死亡率は10%であった。

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EGFR遺伝子変異陽性肺がんの耐性機序と新規治療から見た今後の展望/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性肺がんの治療は、分子標的薬の登場によって大きく進歩してきた。一方で、治療経過で生じる薬剤耐性、EGFRエクソン20挿入変異やHER2変異をはじめとするuncommon変異への対応、さらに治療シークエンスや併用療法に伴う有害事象の管理など、なお多くの課題が残されている。 2026年3月26〜28日に開催された第23回日本臨床腫瘍学会学術集会のシンポジウム「EGFR遺伝子変異陽性肺癌の治療課題と新規治療の展望」では、EGFR変異陽性肺がん診療が直面する近年の課題を踏まえ、その解決に向けた最新のエビデンスや治療戦略について幅広い議論が交わされた。EGFR変異陽性肺がんの耐性機序と後治療開発 James Chih-Hsin Yang氏(台湾・国立台湾大学)は、EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)における一次治療後の耐性機序に着目し、第3世代EGFR-チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であるオシメルチニブ単剤、オシメルチニブ+化学療法、EGFRとMETを標的とする二重特異性抗体であるアミバンタマブ+第3世代EGFR-TKIであるラゼルチニブでは、耐性化のパターンが異なることを示した。とくに、オシメルチニブによる治療ではMET増幅が重要な耐性機序となる一方、METも同時に抑制するアミバンタマブ併用では、その出現頻度が低い傾向が示された。初回治療の選択が、その後の腫瘍進化の方向性を規定しうる点は重要な示唆といえる。 また、MET関連耐性に対する治療戦略として、バイオマーカーに基づく症例選択の重要性を強調した。オシメルチニブによる一次治療後に病勢進行したEGFR変異陽性でMET過剰発現かつ/またはMET増幅を有するNSCLC患者を対象に、オシメルチニブ+新規MET阻害薬の併用療法を評価した国際共同第II相試験「SAVANNAH試験」では、MET過剰発現またはMET増幅を基準とした患者選択により、一定の奏効率と奏効期間が得られたことから、今後の第III相試験の結果が注目されるとした1)。 さらに、既治療EGFR変異陽性NSCLC患者に対する後治療として、抗TROP2抗体薬物複合体やPD-1/VEGF二重特異性抗体など、複数の新規薬剤の開発状況を紹介した。その中で、EGFRエクソン20挿入変異やその他の希少EGFR変異を標的とする低分子薬の開発も進んでいるが、薬剤ごとに活性に差があり、EGFR野生型への作用に伴う有害事象が治療強度を制限しうる点が課題として挙げられた。加えて、EGFRを分解させる抗体や、がん細胞に毒素を送達する抗体ベースの治療も有望視される一方、副作用への十分な配慮が必要だとした。Yang氏は、「EGFR変異陽性肺がんにおける二重標的治療やPD-1/PD-L1阻害薬の位置付けについても、なお活発な検討が続いている」とまとめた。EGFR変異陽性肺がんにおけるアミバンタマブの位置付け Byoung Chul Cho氏(韓国・延世がんセンター/延世大学医学部)は、アミバンタマブの臨床的意義を最新データとともに総括した。まず、本剤はEGFRとMETを同時に標的とするだけでなく、抗体依存性細胞傷害(ADCC)や抗体依存性細胞貪食(ADCP)といった免疫学的作用も有する点を特徴として挙げた。このような作用により、単なるシグナル阻害にとどまらず、腫瘍微小環境にも働きかけうることが長期にわたる有効性の背景にあるとの見方を示した。 MARIPOSA試験については、一次治療におけるアミバンタマブ+ラゼルチニブが、無増悪生存期間(PFS)だけでなく全生存期間(OS)も改善した点を強調した2)。また、アジア人集団においても一貫したOSの改善が見られたことを重視し、EGFR変異陽性肺がんにおいてアジアは単なるサブセットではなく、世界的な中心集団として捉えることも可能かもしれないと論じた。さらに、本試験は脳MRIを全例で継続的に評価した唯一の第III相試験であり、頭蓋内PFSや頭蓋内奏効期間の持続性という観点からも高く評価できるとした。 加えて、アミバンタマブ併用ではMET増幅や二次EGFR変異が減少し、耐性機序の複雑化そのものを抑制しうることを示した。Cho氏は、「アミバンタマブベースの二次治療の有用性を評価した複数の臨床試験成績を踏まえると、こうした治療はcommon変異、EGFRエクソン20挿入変異、atypical変異にわたり幅広い有効性が示唆され、EGFR変異陽性NSCLC全体の治療を変える基盤となりうる」と述べた。EGFRエクソン20挿入変異とuncommon変異に挑む新規治療開発 EGFRエクソン20挿入変異は、EGFR変異の中で3番目に多いサブタイプでありながら、従来のEGFR-TKIの効果が乏しいことが課題となっている。宇田川 響氏(国立がん研究センター東病院)は、その分子構造的背景としてP-loopやαC-helixの位置変化により薬剤結合ポケットが狭くなり、TKIの結合が妨げられていることを解説した。 こうした課題に対し、EGFRエクソン20挿入変異に高い選択性を有する新規TKIの開発が進んでいる。前臨床試験では複数の薬剤が有望視されており、臨床試験でも一定の奏効率と奏効期間が報告されていることから、今後の第III相試験の結果に期待が寄せられるとした。 さらに、G719X、S768I、L861Qなどのuncommon変異については、PACC(P-loop αC-helix compressing)変異という構造分類の考え方が紹介された。これらに対しては第2世代EGFR-TKIであるアファチニブが標準治療とされる一方、変異ごとの立体構造に応じて薬剤感受性が異なるため、今後はより広い変異スペクトラムに対応した次世代TKIの開発が重要になるとの見解を示した。融合遺伝子、多ドライバー化で生じるTKI耐性の克服に向けて 小林 祥久氏(国立がん研究センター研究所)は、EGFR-TKI耐性克服に向けた基礎研究を取り上げた。CRISPRゲノム編集技術を用いてEGFR変異細胞にKRAS変異やALK、RET、BRAF、FGFR3融合を導入し、耐性化を人工的に再現することで併用療法の最適化を検討したところ、BRAF融合モデルではBRAF阻害薬よりもMEK阻害薬であるトラメチニブの併用が有効であり、この知見が実臨床への応用にもつながった経緯が紹介された。 一方で、がんは併用療法に対してもさらに耐性を獲得しうる。RET融合モデルではRET G810S変異やRET融合増幅、FGFR3融合モデルではKRAS点突然変異など、多様な二次耐性の出現が認められたという。小林氏は、「単一ドライバーではなく、複数の腫瘍ドライバーが同時に存在する“多ドライバー腫瘍”という視点は、今後の耐性克服戦略においてきわめて重要である」と述べた。

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ASCO2026 レポート 消化器がん

レポーター紹介[目次]RASolute 302試験FIGHT-302試験BREAKWATER Cohort3試験EPISODE-III/JCOG1503C試験欧州CIRCULATE/日本発GALAXY試験ONO-4578-08試験PANKU-Esophagus01試験膵がんRASolute 302試験:daraxonrasibが膵がん薬物療法の地図を塗り替える可能性RASolute 302は、前治療歴を有する転移のある膵管腺がん(PDAC)を対象に、経口RAS(ON) multi-selective inhibitorであるdaraxonrasibと医師選択化学療法(GnP、mFOLFIRINOX、Nal-IRI+5FU/LV、FOLFOX)を比較した国際共同非盲検第III相試験である。主要評価項目はRAS G12変異例における全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)で、全体集団500例のうち91.8%がRAS G12変異例であった。RAS G12変異例では、OS中央値が13.2ヵ月vs.6.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.40)、PFS中央値が7.3ヵ月vs.3.5ヵ月(HR:0.45)と、daraxonrasib群で有意に改善した。全体集団でもOS中央値13.2ヵ月vs.6.7ヵ月(HR:0.40)、PFS中央値7.2ヵ月vs.3.6ヵ月(HR:0.49)と一貫した効果が示され、RAS G12以外やRAS変異未同定例を含めた広い集団で有効性が確認された。客観的奏効率(ORR)もRAS G12変異例で33.2%vs.11.8%(p<0.0001)、全体集団で31.6%vs.11.2%(p<0.0001)と改善した。QOLも改善し、有害事象は発疹(全Grade:85%、Grade3以上:14%)・口内炎(全Grade:53%、Grade3以上:12%)などが中心である。臨床的インパクトは非常に大きく、主要評価項目であるOSの有意な結果が報告されたタイミングでスタンディングオベーションが起き、発表と同時にNEJM誌にも掲載された1)点も注目される。daraxonrasibはFDAからBreakthrough Therapy designationおよびOrphan Drug designationを受けており、膵がんで長く創薬困難とされてきたRASを、G12C単独ではなくG12D/V/Rを含む広いRAS変異に対して標的化できることを第III相試験で示した意義は大きく、PDACの治療体系を大きく変えると思われる。RAS阻害薬はほかにも多数の薬剤が開発中であり、初回治療例を対象にdaraxonrasib単剤vs.daraxonrasib+GnP vs.GnPを検証するRASolute 303試験をはじめ、術後補助療法におけるエビデンス創出など、今後の拡大が期待される。1)O'Reilly EM, et al. N Engl J Med. 2026 May 31. [Epub ahead of print]目次に戻る胆道がんFIGHT-302試験:FGFR2融合・再構成陽性胆管がんで1次治療FGFR阻害の可能性を検証FGFR2融合・再構成陽性胆管がんでは、既治療例を対象とした第II相FIGHT-202試験でペミガチニブの有効性が示され、最終解析ではORR 37.0%、PFS中央値7.0ヵ月、OS中央値17.5ヵ月、奏効期間(DoR)中央値9.1ヵ月であった2)。これを背景に、ペミガチニブは既治療のFGFR2融合・再構成陽性胆管がんで承認されており、FIGHT-302試験では1次治療への前倒しが検証された。FIGHT-302は、未治療の切除不能・転移FGFR2再構成陽性胆管がんを対象に、ペミガチニブ単剤とゲムシタビン+シスプラチン(GC)を比較した国際共同非盲検第III相試験である。希少な分子サブタイプを対象とするため登録は難航し、4,000例超を事前スクリーニングしたものの、最終的なランダム化例数は167例で、試験は早期終了となった。主要評価項目のPFS中央値は8.3ヵ月vs.6.8ヵ月(HR:0.58、nominal p=0.0078)とペミガチニブ群で延長し、ORRも47.0%vs.15.5%、DoR中央値も14.2ヵ月vs.6.3ヵ月と良好であった。一方、OS中央値は24.4ヵ月vs.25.0ヵ月と同程度であった。化学療法群では進行後に42例がペミガチニブへクロスオーバーしており、OS解釈には注意を要する。本試験は、FGFR2陽性胆管がんで1次治療から標的治療を用いる可能性を示した点で重要であり、同時にJournal of Clinical Oncology誌にも掲載された3)。とくにORRはペミガチニブ群47.0%と、胆道がん全体を対象としたTOPAZ-1/KEYNOTE-966のGC+免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)におけるORRが約27~29%であったことを踏まえると、クロストライアル比較ながら腫瘍縮小を重視するFGFR2再構成陽性例では魅力的に映る。一方で、FIGHT-302の対照群はGC単独であり、現在の1次治療標準であるGC+ICIsとの直接比較ではない。また、OS非改善、早期終了による検出力の限界、クロスオーバーの影響、FGFR阻害薬後の耐性変異を踏まえると、ただちに1次治療を置き換えるというより、診断時からFGFR2検査を行い、FGFR2陽性例における1次治療・2次治療の最適なシーケンスを考えるデータと整理するのが妥当である。2)Abou-Alfa GK, et al. Lancet Oncol. 2020;21:671-684.3)Bekaii-Saab TS, et al. J Clin Oncol. 2026 Jun 1. [Epub ahead of print]目次に戻る大腸がんBREAKWATER Cohort3試験:FOLFIRIバックボーンでも良好な治療効果BRAF V600E変異陽性転移性大腸がんは予後不良な分子サブタイプであり、1次治療からBRAF/EGFR阻害を組み込む治療開発が進められてきた。第III相BREAKWATER試験では、エンコラフェニブ+セツキシマブ(EC)+mFOLFOX6が標準治療に対し、ORR:65.7%vs.37.4%、PFS中央値12.8ヵ月vs.7.1ヵ月、OS中央値30.3ヵ月vs.15.1ヵ月と良好な結果を示した。これを受け、本邦でも2025年11月にエンコラフェニブが1次治療へ適応拡大され、FOLFOX+ECはBRAF V600E変異陽性切除不能進行・再発大腸がんにおける初回治療の標準的選択肢として位置付けられている。一方、ASCO GI 2026では、BREAKWATERの別コホートとして、EC+FOLFIRIをFOLFIRI±BEV(ベバシズマブ)と比較した成績が報告され、BICR評価のORRは64.4%vs.39.2%(片側p=0.0011)と有意に改善していた。今回のASCO 2026ではPFSおよびOS解析が発表され、PFS中央値は15.2ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.44、片側p=0.0002)と有意に延長した。OS中央値も、未到達vs.20.3ヵ月(HR:0.56)であり、OSも良好な傾向を示した。本結果はASCO 2026で発表されるとともに、Annals of Oncology誌に同時掲載された4)。FOLFOX+ECが本邦でも1次治療標準として位置付けられた一方、今回のFOLFIRIコホートは、オキサリプラチン不適例や末梢神経障害を避けたい症例における将来的な代替バックボーンとしての可能性を示した。ただし、EC+FOLFIRIの国内実装には薬事・ガイドライン上の位置付けの整理が必要である。4)Kopetz S, et al. Ann Oncol. 2026 May 31. [Epub ahead of print]目次に戻る大腸がん・日本発EPISODE-III/JCOG1503C試験:アスピリン補助療法は“全例投与”から“分子選択”か?術後大腸がんに対するアスピリン/COX阻害薬は、非選択集団では明確な上乗せ効果に乏しい一方、PI3K経路異常例では有望な可能性が示されている。非選択大腸がんを対象としたASCOLT試験では、アスピリン200mgを3年間投与しても5年DFSは77.0%vs.74.8%(HR:0.91)で主要評価項目は未達であった5)。また、PI3K経路異常を有する局所大腸がんを対象としたALASCCA試験では、アスピリン160mg・3年間によりPIK3CA exon 9/20変異例、その他PI3K経路異常例のいずれでも再発リスク低下が示された6)。COX-2阻害薬セレコキシブについても、CALGB/SWOG 80702試験の解析でPIK3CA gain-of-function変異例におけるDFS/OS改善が報告されている7)。EPISODE-III/JCOG1503Cは、下部直腸がんを除くR0切除後StageIII大腸がん882例を対象に、標準的な術後補助化学療法へ低用量アスピリン100mgを3年間上乗せする意義を検証した、日本発の二重盲検プラセボ対照第III相試験である。ASCO 2026では、国立がん研究センター中央病院の高島 淳生氏により、主要解析結果がLate-Breaking Abstract(LBA3508)として発表された。主要評価項目の3年DFSは、アスピリン群78.8%vs.プラセボ群75.4%と数値上はアスピリン群で良好であったが、HR:0.84、片側p=0.0987で統計学的有意差には至らなかった。RFSも79.5%vs.77.2%(HR:0.87)と同方向の傾向にとどまり、OSは未成熟であった。安全性はおおむね許容範囲であったが、下部消化管出血はアスピリン群でやや多かった(全Grade:2%vs.0.2%)。アスピリンによる再発抑制機序としては、COX-1/COX-2阻害を介したプロスタグランジン産生低下、血小板凝集抑制による循環腫瘍細胞の転移形成阻害、炎症性腫瘍微小環境の抑制などが想定される。JCOG1503Cは、非選択のStageIII大腸がん全例にアスピリンを追加する方針を支持する結果ではなかった。一方で、本試験は当時のエビデンス状況を踏まえた重要な全例対象試験であり、今後のPI3K/PIK3CA解析により、COX阻害薬を分子選択的な術後補助療法として再評価する足掛かりになる可能性がある。5)Chia JWK, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2025;10:198-209.6)Martling A, et al. N Engl J Med. 2025;393:1051-1064.7)Meyerhardt JA, et al. JAMA. 2021;325:1277-1286.目次に戻る大腸がん欧州CIRCULATE/日本発GALAXY試験:本邦におけるMRD元年大腸がん術後のctDNA/MRD検査は、再発リスクを高精度に層別化する手法として期待されており、ASCO 2026ではctDNAを単なる予後予測マーカーにとどめず、術後補助化学療法(ACT)の要否や期間を決める“治療設計ツール”としての可能性が示された。StageII pMMR/MSS結腸がんを対象とした欧州CIRCULATE(AIO-KRK-0217/ABCSG)試験では、tumor-informed型のアカデミックMRDアッセイを用い、術後ctDNA陽性例をACT群と観察群にランダム化した。本試験はドイツ・オーストリアで実施された前向きランダム化第III相試験で、ctDNA陽性例は41例、ITT解析対象はACT群26例、観察群15例であった。主要評価項目の3年DFSは、ACT群61%vs.観察群38%(HR:0.55、p=0.12)で、統計学的有意差には至らなかった。一方、事前規定のper-protocol解析では、ACT群に割り付けられたものの治療を開始しなかった5例を除外し、実際にACTを受けた21例と観察群15例を比較した。その結果、3年DFSは77%vs.38%(HR:0.31、p=0.021)、3年再発率はACT群19%vs.観察群62%(HR:0.23、p=0.009)と、ACT群で良好であった。本試験ではctDNA陽性率が2.9%と低く、早期終了により検出力が限られた点には注意が必要であるが、ctDNA陽性StageII結腸がんにおいて、術後補助化学療法による再発抑制が期待できることを示した前向きランダム化データとして意義は大きい。さらに日本発のCIRCULATE-Japan/GALAXY解析では、SignateraによるACT中のctDNA変化とACT期間との関係について、九州大学の沖 英次氏により報告された。対象は、ACTを受け、術後6ヵ月以内に2回以上ctDNA測定が行われた1,028例であり、ACT期間は90日以上をlong ACT、90日未満をshort ACTとして比較された。ctDNAが一貫して陰性であった症例では、long ACTによる明確なDFS改善は認められなかった(HR:0.71、95%CI:0.46~1.09)。また、ACT治療中にctDNAが陰転化した症例でも、ACT延長の上乗せ効果は明確ではなかった(HR:1.06、95%CI:0.57~1.97)。一方、ctDNAは低下したものの陽性が残るpartial molecular response例では、DFS中央値がlong ACT群5.9ヵ月vs.short ACT群1.7ヵ月と、long ACT群で良好であった(short vs.long:HR:3.64、95%CI:1.33~9.97、p=0.008)。この結果から、ctDNAが残存する一部の症例では、ACT期間の延長が有益となる可能性が示された。ただし、本解析は観察研究であり、現時点ではctDNA動態のみでACT期間を決定する段階ではなく、今後の前向き試験による検証が求められる。CIRCULATE-Japan/GALAXYではNatera社のSignateraが用いられており、術後ctDNAは再発リスクや補助化学療法効果の予測に有用であることがすでに報告されている。2026年5月に本邦でMRD検査の薬事承認が了承された8)ことで、2026年は「MRD実装元年」ともいえる局面を迎えたが、実臨床での普及には、保険適用時期、算定要件、測定タイミング、MRD陽性例に対する介入の整理が今後の課題と考える。8)日経バイオテク(2026年6月3日付)目次に戻る胃がんONO-4578-08試験:EP4阻害でPD-1阻害薬+化学療法の効果を高める新戦略ONO-4578は、PGE2受容体の1つであるEP4を阻害する経口EP4拮抗薬で、腫瘍微小環境における免疫抑制を解除し、PD-1阻害薬の効果を高めることが期待される。ONO-4578-08試験は、HER2陰性の未治療切除不能進行・再発胃がん/食道胃接合部がんを対象に、ONO-4578+ニボルマブ+SOX/CAPOXを、プラセボ+ニボルマブ+SOX/CAPOXと比較した、日本・韓国・台湾の多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化第II相試験であり、ASCO 2026での発表に合わせてJCO誌オンライン版に掲載された9)。主要評価項目である治験担当医評価PFS中央値は9.0ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.67、p=0.040)と、事前規定の統計設定で有意に延長した。OS中央値は未到達vs.12.7ヵ月(HR:0.60)と未成熟ながらONO-4578群で良好であり、ORRも62.0%vs.48.7%と上回った。とくにPD-L1 CPS≧1集団では、PFS中央値9.9ヵ月vs.5.7ヵ月(HR:0.52)、OS HR:0.44、ORR:70.9%vs.50.9%と、より明瞭なベネフィットが示された。一方で、CPS<1/判定不能例では明確な上乗せ効果は示されておらず、今後の患者選択が重要となる。安全性ではGrade3以上の有害事象が79.2%vs.69.3%とONO-4578群で多く、下痢、貧血、低アルブミン血症、消化管潰瘍などには注意を要する。消化管潰瘍の予防目的でPPI投与が推奨され、ONO-4578群内ではPPI使用例で消化管潰瘍が少なかった(3.4%vs.10.0%)。第II相試験であり、ただちに標準治療を変える段階ではないが、PD-1阻害薬+化学療法が標準となったHER2陰性胃がん1次治療に、免疫微小環境制御を上乗せする新しい戦略として重要である。今後は、PD-L1陽性例を中心とした第III相試験での検証が注目される。9)Nakayama I, et al. J Clin Oncol. 2026 Jun 1. [Epub ahead of print]目次に戻る食道扁平上皮がんPANKU-Esophagus01試験:中国発新規EGFR×HER3二重特異性ADCizalontamab brengitecan(iza-bren/BL-B01D1)は、EGFRとHER3を標的とする二重特異性抗体薬物複合体(ADC)である。ASCO 2026では、再発・転移性食道扁平上皮がんを対象とした中国の第III相PANKU-Esophagus01の中間解析結果が報告された。対象は、1次治療のPD-1/PD-L1阻害薬+プラチナ系化学療法後に進行した患者で、iza-bren群249例もしくは医師選択化学療法(イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル)群248例に割り付けられた。主要評価項目であるOS中央値は9.8ヵ月vs.7.2ヵ月(HR:0.64)、PFS中央値は4.2ヵ月vs.2.0ヵ月(HR:0.50)と、いずれもiza-bren群で有意に改善した。ORRも35.3%vs.13.1%と良好であった。安全性では、Grade3以上の治療関連有害事象は85.1%vs.60.2%とiza-bren群で多く、主に血液毒性が中心であった。一方、治療関連有害事象による中止は2.0%vs.3.3%、治療関連死亡は1.2%vs.1.6%であり、間質性肺疾患の頻度も低かった(全Grade:1.6%vs.0.4%、Grade3以上:0.8%vs.0%)。1次治療で免疫チェックポイント阻害薬+化学療法が標準化した後の食道扁平上皮がんでは、2次治療の選択肢が限られており、iza-brenは新たな標準治療候補として注目される。ただし、中国の試験の結果であり、医師選択化学療法の詳細も未発表である。今後、日本を含むグローバルでの開発・承認動向を見極める必要がある。目次に戻る

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第299回 子供の軽症時、保護者の7割が「まず医療機関」 医療費構造の認知に課題/健保連

<先週の動き> 1.子供の軽症時、保護者の7割が「まず医療機関」 医療費構造の認知に課題/健保連 2.令和5年度病院立入検査、医師・看護師・薬剤師の人員適合率が低下/厚労省 3.高額療養費見直しでパブコメ開始、2026年8月から月額上限引き上げへ/厚労省 4.病院の情報管理に警鐘、研究用PC端末と廃棄媒体から患者データ流出か/九大ほか 5.チルゼパチド製剤の不適切使用に注意喚起、違法流通にも警鐘/リリー 6.髄腔内注射後に死亡、事故調が報告書概要 混入経路は特定できず/埼玉県 1.子供の軽症時、保護者の7割が「まず医療機関」 医療費構造の認知に課題/健保連健康保険組合連合会は6月3日、全国の20~80代3,000人を対象に2026年1月に実施した「医療・介護に関する国民意識調査」の速報版を公表した。医療費・介護費の増加と支え手の減少が進む中、保険料負担を「非常に重い」「やや重い」と感じる人は62.7%に上り、健保連は保険料のさらなる引き上げには限界感があるとみている。医療保険の給付と負担のあり方では、「給付を大幅に絞り込み、負担を軽減」が15.0%、「給付を絞り込み、負担の水準を維持」が25.0%で、給付範囲の見直しを求める回答が計40.0%となった。増加する医療費を賄う方法としては、「自己負担の増加(患者本人の窓口負担)」を選んだ人が30.2%に上り、税金の引き上げまたは新設(12.0%)や保険料の引き上げ(10.8%)を上回った。ただし「わからない」が44.1%と最多で、制度や財源構造への理解不足も示された。世代間負担では、「高齢者の負担増はやむを得ない」が37.1%で、「高齢者負担増は難しく、現役世代の負担増はやむを得ない」の18.1%を大きく上回った。75歳以上でも40.0%が高齢者自身の負担増を容認していた。高齢者医療では、70~74歳の原則2割負担の対象年齢を5歳引き上げる案に賛成35.7%、反対22.5%。将来的に高齢者の窓口負担を原則3割に見直す案も賛成34.2%が反対29.9%を上回ったが、60代以上では慎重姿勢が目立った。その一方で、軽度の体調不良時の受診行動では、大人で「まず医療機関を受診する」は30.6%にとどまるのに対し、18歳未満の子どもでは69.2%に達した。自治体の子供医療費助成について、自己負担が無料でも残りの多くは保険料で賄われることを「知らない」は全体で67.1%、子育て世帯でも54.4%だった。小児の軽症受診には不安軽減という側面がある一方で、時間外受診や小児科・救急外来の負荷にもつながる。健保連は、「無償化の下でも必要性に応じた適切な受診を考えて欲しい」としている。2026年度の健保組合収支は2,890億円の赤字見通しで、約7割の組合が赤字とされる。現役世代の保険料負担、高齢者医療への拠出、子供・子育て支援金の上乗せが重なる中、制度改革には国民への丁寧な説明が欠かせない。医療現場には、単なる受診抑制ではなく、救急性の見極め、家庭での観察、市販薬の活用、適正受診を患者・家族に伝える役割が一段と求められる。 参考 1) 医療・介護に関する国民意識調査-速報版-(健保連) 2) 医療費が増加する中で「患者の窓口負担増で対応すべき」「高齢者の負担増もやむなし」と考える国民が比較的多い-健保連(Gem Med) 3) 体調不良、子ども7割すぐ受診 「無償でも適切利用を」-健保連(時事通信) 4) 健康保険組合 2026年度は「2,890億円赤字」の見通し 加盟組合の約7割が赤字 高齢者医療費への拠出増などで 健保連が集計(TBSテレビ) 2.令和5年度病院立入検査、医師・看護師・薬剤師の人員適合率が低下/厚労省厚生労働省は、2023年度の「医療法第25条に基づく病院に対する立入検査結果」を公表した。対象は全国8,138病院で、7,587病院に検査を実施。実施率は93.2%と前年度から5.4ポイント上昇し、コロナ禍前に近い水準まで回復した。検査は、病院が医療法上の人員、構造設備、管理体制を満たしているかを確認するものだ。その一方で、医療法に基づく医療従事者の標準数への適合率は、主要職種でそろって低下した。医師数は97.9%で前年度比0.4ポイント減、看護師・准看護師数は99.4%で0.1ポイント減、薬剤師数は97.7%で0.4ポイント減だった。医師数では、北海道・東北が94.2%、北陸・甲信越が97.1%と低く、東海99.0%、近畿99.6%との差が目立った。病床規模別では、20~49床の一般病院で医師95.3%、看護師など98.1%、薬剤師93.9%と、小規模病院ほど人材確保の厳しさが示された。医師と看護師などの双方が標準数を満たした病院は全体の97.0%で、前年度の97.5%から低下。医師のみ不足する病院は155施設、看護師などのみ不足する病院は65施設、双方不足は5施設だった。薬剤師は中国地方95.2%、九州96.2%などで低く、病院薬剤師不足の地域差も浮き彫りとなった。管理面では、最も適合率が低かった項目が「サイバーセキュリティの確保」の91.1%だった。次いで職員の健康管理92.1%、医療法許可事項の変更92.7%が低かった。医療情報システムへの攻撃が診療継続を脅かす中、サイバー対策は医療安全上の重要課題として、立入検査でも確認が強まっている。人員不足と情報セキュリティの遅れは、地域医療提供体制と病院運営の持続性に直結する論点となる。人員適合率は医師の働き方改革、地域医療構想、薬剤師確保計画とも重なる課題として、各病院には自院だけでなく地域単位での人材配置と安全管理の再点検が求められる。 参考 1) 医療法第25条に基づく病院に対する立入検査結果について[令和5年度](厚労省) 2) 医療法に基づく人員の適合率、医師、看護職員、薬剤師とも低下-23年度病院立入検査(日本医事新報) 3) 病院の医師配置適合率は97.9%、看護師等は99.4%に低下、サイバーセキュリティ確保が遅れている-2023年度立入検査結果(Gem Med) 3.高額療養費見直しでパブコメ開始、2026年8月から月額上限引き上げへ/厚労省厚生労働省は6月6日、高額療養費制度の見直しに伴う健康保険法施行令等の改正案について、パブリック・コメントの募集を開始した。意見提出の期限は7月6日で、政令案と省令案の双方が対象となる。改正案は、2026年8月から月額負担上限額を1人当たり医療費の伸びに応じて見直し、2027年8月からは応能負担の観点で所得区分を細分化する内容で、公布は2026年7月、施行は同年8月1日を予定している。高額療養費制度は、重い疾病や高額な治療を受ける患者にとって、医療費負担を一定範囲に抑える公的医療保険の中核的なセーフティネットである。今回の見直しでは、低所得者や長期療養者への配慮として、多数回該当の限度額は原則維持し、年収約200万円未満の課税世帯では2027年8月から引き下げる。また、2026年8月から新たに年間上限を設け、長期にわたり継続治療を受ける患者への負担軽減を図るとしている。見直しを巡っては、2025年3月に当時の石破 茂首相がいったん実施見合わせを表明し、その後、社会保障審議会医療保険部会の専門委員会で患者団体、保険者、医療者、有識者へのヒアリングを重ねてきた経緯がある。その一方で、患者団体や保険医協会からは、月額上限の引き上げが治療継続や生活に与える影響を懸念する声が出ている。全国がん患者団体連合会と日本難病・疾病団体協議会の共同声明は、制度の一定の見直し自体には理解を示しつつ、月ごとの限度額については十分に抑制されていないと指摘している。例として、70歳未満で年収約650~770万円の区分では、現行の月額8万100円に医療費超過分の1%を加える水準から、見直し案では11万400円となり、37%増になるとしている。医療現場では、高額薬剤、がん治療、難病治療、透析、免疫疾患治療など、継続的に高額医療を必要とする患者への説明が重要になる。制度変更は、単なる「上限額の引き上げ」にとどまらず、月額負担、多数回該当、年間上限、所得区分の変更を組み合わせて患者ごとの実負担が変わる点に注意が必要となる。受診抑制や治療中断を避けるため、医療機関には、医療ソーシャルワーカーや医事課と連携し、限度額適用認定証、付加給付、自治体制度、分割払い相談などを含めた支援体制の再確認が求められる。 参考 1) 健康保険法施行令等の一部を改正する政令案に関するご意見の募集について(厚労省) 2) 健康保険法施行規則等の一部を改正する省令案に関するご意見の募集について(同) 3) 高額療養費見直し、厚労省が意見募集 7月5日まで(CB news) 4) 今年8月からの高額療養費「値上げ」 厚労省が意見募集開始(保団連) 5) 【募集】高額療養費制度の見直しについてのパブリック・コメント(日本難病・疾病団体協議会) 4.病院の情報管理に警鐘、研究用PC端末と廃棄媒体から患者データ流出か/九大ほか九州大学は6月10日、九州大学病院の患者43人分の氏名と手術動画データが外部に流出した可能性が否定できないと発表した。病院キャンパス内の研究室が管理する研究用端末1台が5月25日に不正アクセスを受け、ランサムウェアに感染したとみられる。教員が端末を起動した際、金銭を求める脅迫文が表示され、大学は直ちにネットワークから遮断した。端末は診療用ネットワークとは分離されており、電子カルテや診療業務への影響は確認されていない。情報の公開や悪用も現時点では確認されておらず、対象患者には個別に連絡し、謝罪している。大学では福岡県警とも連携し、侵入経路や被害範囲を調査する。その一方で、国立病院機構は6月8日、北海道医療センターと北海道がんセンターで廃棄処理を委託したハードディスクがインターネットオークションに転売され、患者や職員の個人情報が流出した可能性があると発表した。回収した90点のうち、31点が北海道医療センター、2点が北海道がんセンターで電子カルテシステムなどに使われていた。少なくとも約18万6,900人分、最大で約51万人分の氏名、住所、疾患名などが含まれる可能性がある。現時点で不正利用は確認されていないが、同機構は処分を受託した石狩市の産業廃棄物処理業者を廃棄物処理法違反の疑いで刑事告発した。2つの事案は、医療情報の漏えいリスクが電子カルテ本体へのサイバー攻撃だけではないことを示す。研究室端末に保存された手術動画、廃棄予定媒体に残った電子カルテ情報のいずれも、診療・研究・教育・廃棄の周辺工程で発生した。医療機関には、端末のアクセス管理、研究データの匿名化、ネットワーク分離、外部記録媒体の暗号化、廃棄時の物理破壊確認、委託先監査まで含めた情報管理体制の再点検が求められる。 参考 1) 九州大学 病院の患者データ 外部流出の可能性否定できない(NHK) 2) 手術動画流出の可能性、九大病院患者43人分 ランサムウェア感染か(朝日新聞) 3) 不正アクセスで手術動画データなど流出か 九州大病院 診療業務は通常通り(CB news) 4) 北海道がんセンターなどの患者情報が流出、最大51万人分…処分予定のHDDがネットオークションに転売(読売新聞) 5.チルゼパチド製剤の不適切使用に注意喚起、違法流通にも警鐘/リリー日本イーライリリーは6月10日、2型糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)の不適切使用に関する声明を公表した。SNSや広告で、美容・痩身・ダイエット目的の使用を推奨していると受け取れる情報が拡散し、さらに許可なく同薬を売買した疑いで男女3人が書類送検されたことを受けた対応。上野 賢一郎厚生労働大臣も、個人間売買は違法であり、適応外使用では思わぬ副作用につながる可能性があるとして、適正使用を呼びかけている。同社は、「国内で承認されているチルゼパチドの効能・効果は『2型糖尿病』のみであり、医師の診断、管理、指導のもと、電子添付文書に則って使用される処方箋医薬品だ」と強調した。2型糖尿病以外の人が美容目的などで使用した場合の有効性・安全性は医学的に確認されていない。また、医薬品を許可なく個人間で売買・転売する行為は薬機法違反であり、管理されていない流通経路で入手した製品は品質や安全性が担保されず、本来の効果が得られないだけでなく、重篤な健康被害を招くリスクがあると警告した。その一方で、同一成分のチルゼパチド製剤には、肥満症治療薬「ゼップバウンド」もある。ただし、対象は高血圧、脂質異常症、耐糖能障害などを伴い、食事療法・運動療法で十分な効果が得られない肥満症患者などに限られ、単なる美容目的の減量とは異なる。医師による客観的診断と適切な処方プロセスが前提となる。報道では、使用済み注射針の不適切廃棄も問題化している。公共トイレなどへの投棄は清掃員らの針刺し事故や血液媒介感染のリスクにつながる。医療機関には、適応、禁忌、副作用説明に加え、入手経路や廃棄方法まで含めた患者教育が求められる。GIP/GLP-1受容体作動薬の需要が急拡大する中、適正使用、違法流通対策、供給管理は、糖尿病診療と肥満症治療の信頼性を守る医療安全上の課題となっている。 参考 1) 当社製品の適正使用に関する取り組み(日本イーライリリー) 2) 美容目的「マンジャロ」使用、製造元日本法人が警告 不適切使用や違法売買「容認できず」(J-CASTニュース) 3) 2型糖尿病治療薬「マンジャロ」の適正使用を推進 日本イーライリリーが不適切使用や違法転売に注意喚起(糖尿病ネットワーク) 4) 「マンジャロ注射針」不法投棄が横行で感染リスクへの懸念も…東京メトロが明かした“針刺し事故”の実例(女性自身) 6.髄腔内注射後に死亡、事故調が報告書概要 混入経路は特定できず/埼玉県埼玉県立小児医療センターは6月12日、白血病患者が抗がん剤の髄腔内注射後に神経症状を発症し、1人が死亡、2人が重体となった問題で、医療事故調査委員会の報告書概要を公表した。センターでは2025年1~10月、髄腔内化学療法を受けた患者5人に発熱、四肢疼痛、意識障害、呼吸障害などの神経症状が出現。死亡した10代男性を含む一部症例の保存髄液から、髄腔内に投与されるはずのない抗がん剤ビンクリスチンが検出された。委員会は、ビンクリスチンが通常の静脈内投与で中枢神経系へ移行する可能性は限定的であることなどから、「髄注薬に混入した状態で投与された可能性が極めて高い」と判断した。その一方で、混入経路を直接示す客観的証拠は確認されず、具体的な工程の特定には至らなかった。搬送、病棟保管、投与の各工程では、専用接続部品が注射筒に装着されていたことなどから、混入は極めて考えにくいと評価した。焦点となったのは無菌調製室での薬剤調製工程だ。報告書は、髄注薬とビンクリスチンが同じ空間に存在し得る運用で、空間的・時間的分離が十分とは言えなかったと指摘。調製完了時刻を客観的に確認できる記録や映像記録がなく、複数名によるリアルタイムの相互確認体制も整備されていなかったため、「調製時に混入した可能性を否定できない」と結論付けた。再発防止策として、髄注薬とビンカアルカロイド系抗がん剤の空間的・時間的分離、薬剤師2人によるダブルチェック、在庫・廃棄管理の強化、監視カメラ設置、マニュアル改定、投与前確認や廃棄工程の標準化、シリンジ払い出し廃止とミニバッグ化、定期監査、継続的な安全教育の9項目を提言した。センターは現在、髄腔内化学療法を中止しており、岡 明病院長は「まずは再発防止策を徹底して安全確保を図る」と述べ、再開時期は県や保健所と協議して検討する考えを示している。 参考 1) 使われるはずない薬「調製時混入の可能性」 埼玉・小児医療センター(朝日新聞) 2) 劇薬管理強化へ9項目 事故調報告書 小児医療センター(毎日新聞) 3) 埼玉の病院の医療死亡事故、調査報告「調剤時の混入否定できず」(日経新聞)

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完全切除NSCLCへのニボルマブ、DFSを改善せず(EA5142/ALCHEMIST)/JAMA

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の治療では、抗PD-1抗体ニボルマブによる術前および周術期(術前・術後)の補助療法は無イベント生存期間(EFS)を改善することが知られているが、初回手術後の補助療法におけるニボルマブの役割は明らかにされていない。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのJamie E. Chaft氏らは「ECOG-ACRIN EA5142試験」において、切除術を受けたNSCLC患者に補助化学療法または放射線療法(あるいは両方)を行った後にニボルマブを投与したところ、無病生存期間(DFS)は改善しなかったと報告した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年6月1日号に掲載された。米国の無作為化第III相試験 ECOG-ACRIN EA5142試験は、全米臨床試験ネットワーク(NCTN)に加盟する378施設で実施した非盲検無作為化第III相試験(米国国立がん研究所の助成を受けた)。2016年5月~2019年9月に参加者を登録した。 対象は、切除腫瘍径4cm以上またはリンパ節転移陽性(N1/N2)、あるいはこれら両方の要件を満たし、予定された標準的な術後補助療法(化学療法または放射線療法、あるいはこれら両方)を完了した腺がん(EGFRおよびALKに感受性変異がない)または扁平上皮がんの患者であった。 被験者を、ニボルマブ(480mg、4週ごと、最長1年間)を静脈内投与する群、または標準治療で経過観察を行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要複合評価項目は、ITT集団およびPD-L1を発現した腫瘍の割合が50%以上の患者集団におけるDFS(無作為化から再発、新規肺がん、全死因死亡のいずれかが発生するまでの期間)とした。 本試験は、75%のデータが収集された時点で、中間解析の結果に基づき無効中止となった。全生存期間にも差はない 935例を登録し、ニボルマブ群に466例(年齢中央値66歳、男性241例[52%])、経過観察群に469例(67歳、245例[52%])を割り付けた。 追跡期間中央値72.6ヵ月(範囲:0.03~109)の時点でのITT集団におけるDFS中央値は、ニボルマブ群が71.3ヵ月、経過観察群は68.8ヵ月であり、両群間に有意差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.97[97%信頼区間[CI]:0.79~1.20、95%CI:0.81~1.17]、片側p=0.39)。 また、同時点での腫瘍の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者におけるDFS中央値は、ニボルマブ群が89.8ヵ月、経過観察群は78.5ヵ月だった(HR:0.86[98%CI:0.55~1.34、95%CI:0.59~1.25]、片側p=0.22)。 全生存期間中央値は、ITT集団ではニボルマブ群が95.9ヵ月、経過観察群は未到達であり(HR:1.02、95%CI:0.82~1.26)、腫瘍の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者ではそれぞれ95.9ヵ月および未到達であった(HR:0.82、95%CI:0.53~1.28)。25%でGrade3~5のニボルマブ関連有害事象、術後補助ICI療法の有益性に疑問 ニボルマブに関連するGrade3~5の有害事象は116例(25%)で報告された。内訳は、Grade3が103例(22%)、Grade4が11例(2%)、Grade5が2例(1%未満)であった。 Grade5の2例は、いずれも呼吸器系のものであった。1例は肺切除術および術後補助化学療法を受けた患者で、もう1例は術後放射線療法から4週間未満で無作為化が行われたため、後に不適格とみなされた患者であった。 著者は、「両群ともDFSの目標値(54ヵ月)を上回ったが、これは術前病期分類の改正、あるいは登録前に再発した高リスク例の除外を含むその他の患者選択基準を反映している可能性がある」としている。 また、「先行研究におけるデュルバルマブ(抗PD-L1抗体)による術後補助療法に関する否定的な結果や、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)およびアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)の術後補助療法で観察された一貫性のない結果を踏まえると、本研究の結果は、NSCLCにおける免疫チェックポイント阻害薬による術後補助療法の有益性について疑問を投げかけるものである」と指摘している。

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がん関連症状:呼吸困難【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第9回

今回はがん患者の呼吸困難についてです。呼吸困難は、がん患者の約35%が経験するという頻度の高い症状です。初診から終末期までの経過を通じて、一度も呼吸困難を経験せずに過ごせる患者さんはわずか11%のみとも報告されています。呼吸困難による患者さんの苦痛や不安が非常に強い一方、その原因や重症度はさまざまであり、外来で対応に迷う場面も少なくありません。今回は、呼吸困難を訴える患者さんについて、症例を通して、鑑別のポイントと外来での対応を解説します。【症例1】74歳、男性主訴労作時呼吸困難病歴進行肺腺がん(StageIV)に対して化学療法後、best supportive careの方針となっている。以前より軽度の呼吸困難はあったが、2週前より徐々に歩行時の息苦しさが増悪し、外来を受診した。診察所見呼吸数22回/分、SpO2 97%(室内気)、体温36.7℃。会話は可能。右下肺野で呼吸音の減弱あり。下腿浮腫なし。【症例2】57歳、女性主訴咳嗽、呼吸困難病歴再発乳がんに対して化学療法施行中。2週間前より免疫チェックポイント阻害薬を含む治療を開始していた。数日前から乾性咳嗽が出現し、本日より労作時呼吸困難と発熱を認めたため受診。診察所見呼吸数30回/分、SpO2 82%(室内気)、体温38.1℃。会話は短文のみ可能。両側肺野にfine cracklesを聴取。ステップ1 呼吸困難のアセスメント呼吸困難は、「呼吸の際に生じる不快な感覚という主観的な経験」と定義されており、SpO2や血液ガス所見が正常で、呼吸不全を伴わない場合でも生じることがあります。呼吸困難を訴える患者さんを診た際には、まず症状の経過や随伴症状、診察所見などから原因をアセスメントする必要があります。下記にがん患者における呼吸困難の主な原因を示します(表1)。表1 呼吸困難の原因(参考文献3より一部筆者改変)画像を拡大する症例1では、SpO2は97%と保たれているものの、ここ1週間で労作時呼吸困難が徐々に増悪しています。また、右下肺野で呼吸音の減弱を認めており、胸水貯留による呼吸困難が考えられます。この症例では、発熱や咳嗽はなく、急激な症状悪化ではないことから、感染症や肺塞栓などの急性疾患の可能性は低いと考えられます。一方、症例2では、免疫チェックポイント阻害薬を含む治療歴があり、数日前からの乾性咳嗽に加えて、発熱と急速に進行する呼吸困難を認めています。さらに、SpO2低下、頻呼吸、両側肺野のfine cracklesを認めることから、まず薬剤性肺障害を疑う状況です。化学療法中の患者さんでは、薬剤性肺障害は急速に重症化することがあり注意が必要です。本症例では、会話も短文のみ可能であり、呼吸状態の急速な悪化を認めていることから、重症度の高い呼吸困難と考えられます。なお、肺炎などの感染症も重要な鑑別疾患となります。このように、呼吸困難ではSpO2のみで重症度を判断するのではなく、症状の経過や随伴症状、身体所見をもとに原因と緊急性をアセスメントすることが重要です。呼吸困難では、原因となる病態ごとに治療が異なり、早期介入を要する緊急性の高い病態も存在するため、外来での適切な評価が求められます。ステップ2 外来での対応上述のように、呼吸困難では原因となる病態ごとに治療方針が大きく異なります(表2)。そのため、外来では原因と重症度を踏まえた対応が重要となります。表2 呼吸困難の治療(参考文献4より一部筆者改変)画像を拡大する症例1は、SpO2は保たれており、会話も可能であることから、まずは外来での症状緩和を検討します。呼吸困難に対しては、体位調整や送風に加えて、少量オピオイド投与が症状緩和に有効な場合があります。また、本症例では胸水貯留が疑われることから、胸水ドレナージの適応評価も含めて、X線/CT検査や胸腔穿刺が可能な施設との連携を検討します。一方、症例2では、低酸素血症に加えて頻呼吸を認め、会話も短文のみ可能であることから、重症度の高い呼吸困難と考えられます。薬剤性肺障害では急速に呼吸状態が悪化することがあり、早期のステロイド導入が必要となる場合もあるため、外来での経過観察ではなく、速やかな病院への相談・紹介が必要です。呼吸困難は、がんそのものだけでなく、治療関連有害事象や併存疾患など、さまざまな病態によって生じます。外来では、原因と重症度を適切にアセスメントしたうえで、必要に応じて治療医や専門医療機関と連携しながら対応していくことが求められます。まとめ呼吸困難は、SpO2などの客観的所見だけでは評価しきれない症状です。そのため、日々患者さんを診ているかかりつけの先生方による症状経過や呼吸状態の細やかな観察が非常に重要となります。そうした情報共有は、病院側にとっても病態把握や早期介入の大きな助けとなります。クリニックと病院がそれぞれの立場から情報を共有しながら、一緒に患者さんの呼吸困難を支えていくことが大切だと考えます。 1) Teunissen SCCM, et al. J Pain Symptom Manage. 2007;34:94-104. 2) Currow DC, et al. J Pain Symptom Manage. 2010;39:680-690. 3) 日本緩和医療学会編. 進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン(2023年版). 金原出版;2023. 4) 余宮 きよみ著. ここが知りたかった緩和ケア 改訂第3版. 南江堂;2023. 講師紹介

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大腸がん、ctDNAによる術後化学療法と投与期間の選択(CIRCULATE・GALAXY後方解析)/ASCO2026

 StageII/III大腸がんにおける術後補助化学療法は複数のレジメンがあり、最適な投与期間も明らかになっていない。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)では、術後のctDNAを予後マーカーとして、術後補助療法のベネフィットを受ける患者層の特定や最適な投与期間を検討した2つの試験結果が発表された。1)CIRCULATE試験・試験デザイン:多施設共同・前向き観察コホート研究・対象:pMMRのStageII結腸がん、術後にctDNA検査を施行。ctDNA陽性→2:1で ・補助化学療法(adjuvant chemotherapy:ACT)群 ・経過観察(観察群)へ割り付けctDNA陰性→1:4で ・試験内観察  ・試験外観察 へ割り付け・主要評価項目:ctDNA陽性群における3年無病生存期間(DFS)・1,400例がランダム化されたがctDNA陽性率は2.9%にとどまり、41例のctDNA陽性例がACT群26例、観察群15例に割り付けられた。ACT群では81%がカペシタビンを投与され、うち33%がオキサリプラチン併用だった。・主要評価項目であるctDNA陽性群の3年DFSは、ACT群61%、観察群38%(HR:0.55、p=0.12)となり、統計学的有意差は認められなかった。・一方、事前に規定されたper-protocol解析で、ACT群に割り付けられたものの治療未施行だった5例を除外した解析結果では、3年DFSはACT群77%、観察群38%(HR:0.31、p=0.021)となり、3年再発率もACT群19%、観察群62%(HR:0.23、p=0.009)と、ACT群で良好であった。・3年再発率はctDNA陰性群12%、ctDNA陽性ACT群35%、ctDNA陽性未治療群62%だった。 発表したドイツ・ドレスデン工科大学のGunnar Folprecht氏は「ctDNA陽性率が約3%と低く、予定症例数へ到達できず、信頼区間が広くなったことが主要評価項目を達成できなかった一因だ。術後ctDNAは極めて強力な予後マーカーであることは本試験でも裏付けられ、pMMR StageII結腸がんにおいてctDNAに基づく治療エスカレーション戦略を支持する結果である」とした。2)CIRCULATE-Japan GALAXY試験の後方解析・試験デザイン:国内多施設共同研究・対象:術前化学療法なし、切除後StageI~IV大腸がん患者1,028例。ctDNA検査はACT前と長期ACT群(ACT施行期間>90日)は治療中、短期ACT群(ACT施行期間≦90日)は治療後に行い、ctDNAの結果によって4群に分類し、DFSとの関連をみた。1)陰性群(Sustained negativity):開始前陰性→3ヵ月後陰性2)クリアランス群(Clearance):陽性→陰性3)部分奏効群(Partial molecular response):陽性→陽性だが減少4)上昇群(Rising):陽性→陽性かつ増加・治療前ctDNA陽性患者に着目すると、クリアランス群は長期ACT、上昇群は短期ACTが多いことが観察された。・ctDNA動態とDFSは4群で明確に分離した。予後は1)~4)の順番で良好だった。・1)陰性群では、長期ACTによる利益は認められなかった。ACT期間にかかわらず予後はきわめて良好で、むしろ短期ACT群の方がわずかに良好だった。・2)クリアランス群でも、長期ACTによる追加利益は認められなかった。ACT期間にかかわらず良好な予後が得られた。・3)部分奏効群では、長期ACT群によって予後改善傾向が認められた。・4)上昇群では、ACT期間に関係なく予後は不良であり、長期ACTを行っても有意な生存利益は認められなかった。・部分奏効群のうち長期ACTを受けた患者を対象に、治療中の残存ctDNA量で層別化すると、残存ctDNA量が低い患者のほうが良好なDFSを示した。 発表した九州大学の沖 英次氏は「部分奏効群ではACT期間延長による利益があり、このことは奏効例では3ヵ月超のACT継続が有益である可能性を示している。一方で、上昇群はACT期間に関係なく予後不良であり、このことは分子学的進行が認められた時点で、同一の化学療法を継続する意義は限定的であることを示唆している。ACT開始後約3ヵ月時点のctDNA動態はACTへの分子学的反応を反映し、再発リスクを有意に層別化できた。本結果は、大腸がんにおけるACT期間の最適化および個別化周術期治療戦略の構築に寄与する可能性がある」とした。

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ivonescimab、進行扁平上皮NSCLCの1次治療でOSも延長(HARMONi-6)/Lancet

 未治療の進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、ivonescimab+化学療法はチスレリズマブ+化学療法と比較して全生存期間(OS)を有意に延長したことが、中国・上海交通大学のShun Lu氏らが同国の50施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「HARMONi-6試験」の事前規定の中間解析の結果で示された。HARMONi-6試験に関してはこれまでに、ivonescimab+化学療法がチスレリズマブ+化学療法と比較し、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが報告されていた(ジャーナル四天王「進行扁平上皮NSCLCの1次治療、ivonescimab併用がICI併用と比較しPFS改善(HARMONi-6)/Lancet」)。Lancet誌オンライン版2026年5月31日号掲載の報告。ivonescimab vs.チスレリズマブで、OSの中間解析を実施 HARMONi-6試験の対象は、年齢18~75歳、病理学的に確認された切除不能なStageIIIB/IIICまたはStageIVの扁平上皮NSCLCで、全身療法の治療歴がなく、ECOG PSが0または1の患者である。 研究グループは適格患者を、ivonescimab+化学療法群(ivonescimab群)またはチスレリズマブ+化学療法群(チスレリズマブ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化の層別因子は、臨床病期(StageIIIB/IIIC期vs.IV期)およびPD-L1発現(TPS≧1%vs.<1%)であった。 ivonescimab群ではivonescimab 20mg/kg、チスレリズマブ群ではチスレリズマブ200mgに加えて、いずれもカルボプラチン(AUC 5mg/mL/分)およびパクリタキセル(175mg/m2)を3週ごとに4サイクル静脈内投与し、その後維持療法として同用量のivonescimabまたはチスレリズマブを3週ごとに投与した。治療期間は最長24ヵ月、または試験責任医師の判断による臨床効果の消失、許容できない毒性の発現のいずれか早い時点までとした。 主要評価項目は、独立画像判定委員会(IRRC)の評価によるRECIST ver.1.1に基づくPFSであり、重要な副次評価項目がOSであった。有効性の解析対象集団は無作為化されたすべての患者、安全性の解析対象集団は無作為化され試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者とした。 重要な副次評価項目であるOSについては、中間解析1回および最終解析を行うこととされ、中間解析はOSイベントが約225件観察された時点で計画されていたが、規制当局の期限に合わせ204件に達した時点で実施された。したがって、中間解析の有意水準は片側0.0049であった。OS中央値はivonescimab群27.9ヵ月、チスレリズマブ群23.7ヵ月 2023年8月17日~2025年1月21日に761例がスクリーニングされ、適格基準を満たした532例が無作為化された(各群266例)。患者背景は、年齢中央値64歳(四分位範囲[IQR]:59~69)、男性494例(93%)、女性38例(7%)であった。 データカットオフ日の2026年2月27日時点(追跡期間中央値21.4ヵ月、95%信頼区間[CI]:20.27~21.91)で、204例の死亡が確認された。ivonescimab群が84例(32%)、チスレリズマブ群が120例(45%)であった。 OS中央値は、ivonescimab群27.9ヵ月(95%CI:27.89~評価不能[NE])、チスレリズマブ群23.7ヵ月(95%CI:20.11~NE)であり、死亡のハザード比は0.66(95%CI:0.50~0.87、片側p=0.0017)で、事前に規定された有意水準を満たした。 ivonescimab群のOS延長効果は、事前に規定されたサブグループ解析でもほぼ一貫していた。 Grade3以上の治療関連有害事象は、ivonescimab群で266例中184例(69%)、チスレリズマブ群で265例中156例(59%)に発現した。Grade3以上の治療関連出血は、それぞれ7例(3%)および2例(1%)に認められた。

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CDK4/6阻害薬治療後のER+/HER2-進行乳がん、giredestrant+エベロリムスがPFS2を改善(evERA BC)/ASCO2026

 CDK4/6阻害薬+内分泌療法後のエストロゲン受容体陽性(ER+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対して、新規経口SERDであるgiredestrant+エベロリムスを標準的内分泌療法+エベロリムスと比較した国際共同無作為化非盲検第III相evERA BC試験において、無増悪生存期間(PFS)が有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことはすでに報告されている(ESMO2025)。今回、探索的評価項目であるPFS2および化学療法フリー生存期間を解析した結果、どちらもgiredestrant+エベロリムスで改善が示されたことを、米国・Memorial Sloan-Kettering Cancer Center and Weill Cornell Medical CollegeのKomal L. Jhaveri氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:CDK4/6阻害薬+内分泌療法の治療中もしくは治療後に病勢進行/再発が認められたER+/HER2-進行乳がん(進行がんに対する内分泌療法は2ライン以下、化学療法なし)・試験群:giredestrant(30mg1日1回経口)+エベロリムス(10mg) 183例・対照群:医師選択の内分泌療法(エキセメスタン/フルベストラント/タモキシフェン)+エベロリムス 190例・評価項目:[主要評価項目]ESR1変異陽性患者および全体集団における治験責任医師評価によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)など[探索的評価項目]PFS2、化学療法フリー生存期間、病勢進行後治療 主な結果は以下のとおり。・PFS2は、全体集団、ESR1変異陽性集団、ESR1変異陰性集団のすべてでgiredestrant+エベロリムス群が長く、ハザード比(HR)は順に0.69(95%信頼区間[CI]:0.51~0.92)、0.61(同:0.40~0.93)、0.77(同:0.51~1.17)であった。giredestrant+エベロリムス群のPFS2中央値は、全体集団およびESR1変異陽性集団で19.02ヵ月、ESR1変異陰性集団で17.25ヵ月であった。・化学療法フリー生存期間においても、全体集団、ESR1変異陽性集団、ESR1変異陰性集団のすべてでgiredestrant+エベロリムス群が長く、HRは順に0.61(95%CI:0.47~0.78)、0.46(同:0.32~0.66)、0.80(同:0.57~1.14)であった。・OSの中間解析では、giredestrant+エベロリムス群で良好な傾向がみられ、OS中央値は全体集団、ESR1変異陽性集団、ESR1変異陰性集団とも未到達であった。・後治療は、各群でおおむねバランスが取れており、現在の標準治療を代表するものだった。

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PD-L1陽性胃がん、周術期serplulimab療法でEFS改善(ASTRUM-006)/Lancet

 切除可能なPD-L1陽性胃がんまたは胃食道接合部腺がんにおいて、術前S-1+オキサリプラチン(SOX)+術前・術後serplulimabは、術前・術後SOX単独と比較して無イベント生存期間(EFS)を改善し、安全性プロファイルは良好であることが示された。中国・北京大学がん病院・研究所のLin Shen氏らASTRUM-006 Study Groupが無作為化二重盲検多施設共同の第III相試験「ASTRUM-006試験」の結果を報告した。先行研究で周術期免疫化学療法は、胃がんまたは胃食道接合部腺がんにおいてさまざまなアウトカムを示している。今回の試験結果を踏まえて著者は、「術後の化学療法スペアリングに対するserplulimab+SOXによる周術期療法の優位性を確立するためには、さらなる追跡調査による全生存期間(OS)のデータが必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年6月1日号掲載の報告。術前serplulimab+SOX→術後serplulimabのEFSを評価 ASTRUM-006試験は、中国およびタイの75病院で患者をスクリーニングして行われた。18~70歳、PD-L1 CPS(Combined Positive Score)≧5の切除可能な胃がんまたは胃食道接合部腺がんの適格患者を、術前補助療法としてserplulimab(4.5mg/kgをday1に静脈内投与)+SOX(オキサリプラチン130mg/m2をday1に静脈内投与+S-1 40~60mgをday1~14に1日2回経口投与)を3サイクル(1サイクル21日)受け、術後補助療法としてserplulimab単独を最長17サイクル受ける群(serplulimab群)、または術前にSOX+プラセボを3サイクル受け、術後にSOXを5サイクル受ける群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要評価項目は、試験担当医師の評価によるEFS(無作為化から病勢進行または局所再発あるいは遠隔再発、新たな悪性腫瘍、死亡までの期間として定義)。有効性の評価は、最初にPD-L1 CPS≧10の集団で行い、次いでITT集団(CPS≧5)で行った。PD-L1 CPS≧10集団、ITT集団(CPS≧5)でEFSが有意に延長 2019年11月26日~2024年4月19日に、1,646例がスクリーニングされ、そのうち中国の57病院で588例がserplulimab群(292例)またはプラセボ群(296例)に無作為化された。588例は年齢中央値61.0歳(四分位範囲[IQR]:55~66)、女性124例(21%)、男性464例(79%)であった。 追跡期間中央値42.7ヵ月(IQR:24.3~53.6)において、PD-L1 CPS≧10集団におけるEFS中央値は、serplulimab群がプラセボ群よりも有意に延長した(未到達vs.42.0ヵ月、ハザード比[HR]:0.65[95%信頼区間[CI]:0.47~0.90]、p=0.0082)。 また、追跡期間中央値35.9ヵ月(IQR:23.5~49.4)において、ITT集団(CPS≧5)におけるEFS中央値も、serplulimab群がプラセボ群よりも有意に延長した(未到達vs.35.9ヵ月、HR:0.73[95%CI:0.56~0.94]、p=0.015)。 Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現は、serplulimab群で136例(47%)、プラセボ群で172例(59%)報告された。治療中止に至ったTRAEは、各群19例(7%)および31例(11%)に認められた。

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KRAS G12C陽性NSCLCの1次治療、divarasib+ペムブロリズマブが有望(Krascendo-170)/ASCO2026

 KRAS G12C変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では、免疫チェックポイント阻害薬単剤または化学療法との併用が標準治療として用いられている。しかし、全生存期間中央値は約1.5年であり、アンメットニーズが存在する。KRAS G12C阻害薬としてはソトラシブが臨床応用されているが、2次治療以降での使用が適応となっている。 そこで、1次治療において経口KRAS G12C阻害薬divarasibとペムブロリズマブの併用療法の安全性・有効性を検討する国際共同第Ib/II相試験「Krascendo-170試験」が実施されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、本試験の解析結果が報告され、PD-L1≧1%コホート、PD-L1<1%コホートのいずれにおいても良好な奏効が得られ、管理可能な安全性プロファイルが示された。Ferdinandos Skoulidis氏(米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)が、本解析結果を報告した。 Krascendo-170試験は、未治療のKRAS G12C変異陽性進行・転移非扁平上皮NSCLC患者を対象とした国際共同第Ib/II相非盲検用量探索・用量拡大試験である。今回は、PD-L1≧1%コホート(コホートA1)におけるdivarasib 400mg 1日1回+ペムブロリズマブ200mg 3週ごと投与の主要解析、PD-L1<1%コホート(コホートA2)における同用量の予備的解析の結果が報告された。主要評価項目は安全性であり、主要な副次評価項目として奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、患者報告アウトカム、薬物動態、推奨用量が評価された。 主な結果は以下のとおり。【PD-L1≧1%コホート】・divarasib 400mg+ペムブロリズマブによる治療を受ける群に59例が組み入れられた。年齢中央値は67歳で、男性の割合は62.7%であった。PD-L1 1~49%が37.3%、≧50%が61.0%であった。追跡期間中央値は12.2ヵ月。・確定ORRは72.9%(CR 10.2%、PR 62.7%)で、DOR中央値は未到達であった。・PFS中央値は19.3ヵ月で、6ヵ月PFS率は83.5%であった。なお、PFSのデータは未成熟であった。【PD-L1<1%コホート】・登録された23例の年齢中央値は72歳で、男性の割合は69.6%であった。追跡期間中央値は3.4ヵ月。・ORRは69.6%(すべてPR)で、初回奏効までの期間中央値は40.5日であった。・PFSデータは未成熟であった。【PD-L1≧1%コホート+PD-L1<1%コホート】・安全性は、PD-L1≧1%コホートおよびPD-L1<1%コホートを併合した安全性解析対象78例で評価された。有害事象は全例に認められ、Grade3以上の有害事象は76.9%、重篤な有害事象は50.0%に発現した。・治療関連有害事象(TRAE)は98.7%に認められ、Grade3/4のTRAEは65.4%、重篤なTRAEは28.2%に発現した。Grade5のTRAEは0例であった。・divarasibの減量に至ったTRAEは52.6%、中断に至ったTRAEは69.2%、試験治療中止に至ったTRAEは12.8%に認められた。・主なTRAE(40%以上に発現)は、下痢(74.4%)、悪心(64.1%)、ALT上昇(52.6%)、AST上昇(48.7%)であった。Grade3/4の下痢、ALT上昇、AST上昇はそれぞれ17.9%、23.1%、17.9%に認められた。 本試験結果について、Skoulidis氏は「KRAS G12C変異陽性の進行NSCLC患者において、1次治療としてのdivarasib+ペムブロリズマブは良好な臨床活性を示した。頻度の高いTRAEは、低Gradeが多く可逆的であり、管理可能であった。なお、有害事象の予防レジメン、有害事象管理アルゴリズム、忍容性に応じた用量調整方法が本試験中に段階的に開発されており、第III相Krascendo-2試験では患者の臨床アウトカムを最適化するために、試験開始時から導入されている」とまとめた。 なお、未治療のKRAS G12C変異陽性の進行・転移NSCLC患者を対象とする国際共同第III相試験「Krascendo-2試験」が進行中であり、KRAS G12C変異陽性のStageIIIA/IIIBの完全切除NSCLC患者を対象として、術後療法におけるdivarasibの有用性を検証する国際共同第III相試験「Krascendo-3試験」が計画されている。

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HER2+胃食道腺がん1次治療、zanidatamab+化学療法±チスレリズマブがPFS延長(HERIZON-GEA-01)/NEJM

 HER2陽性胃食道腺がんの1次治療において、従来の標準治療であるトラスツズマブと化学療法の併用と比較して、zanidatamab(HER2の細胞外ドメイン2および4に結合する二重特異性IgG1様抗体)と化学療法の併用は、チスレリズマブ(抗PD-1抗体)の併用、非併用のいずれの場合でも、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、チスレリズマブとの併用では全生存期間(OS)に関しても有意な有益性をもたらすことが、国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏らHERIZON-GEA-01 Investigatorsが実施した「HERIZON-GEA-01試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2026年5月28日号で報告された。日本を含む33ヵ国の無作為化第III相試験 研究グループは、zanidatamabの補体依存性細胞傷害作用を含む免疫介在性効果と、チスレリズマブによるPD-1阻害作用を併用することで、HER2陽性胃食道腺がんにおける抗腫瘍免疫がさらに増強するとの仮説を立て、これを検証する目的で非盲検無作為化実薬対照第III相試験を行った(Jazz Pharmaceuticalsなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、未治療で切除不能な局所進行または転移・再発のあるHER2陽性胃・胃食道接合部・食道腺がんの患者であった。 被験者を、zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法、zanidatamab+化学療法、トラスツズマブ+化学療法のいずれかを受ける群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。化学療法は、カペシタビン+オキサリプラチンまたはフルオロウラシル+シスプラチンのいずれかを選択した。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定によるPFSとOSの2つとした。 2021年12月~2025年2月に、日本を含む33ヵ国の225施設で914例を登録した。zanidatamab+チスレリズマブ群に302例(年齢中央値63歳[範囲:22~81]、女性58例[19.2%])、zanidatamab群に304例(62.5歳[25~87]、60例[19.7%])、トラスツズマブ群に308例(64歳[21~84]、70例[22.7%])を割り付けた。奏効率、奏効期間も良好 追跡期間中央値25.9ヵ月の時点における中間解析で、PFS中央値は、トラスツズマブ群が8.1ヵ月であったのに対し、zanidatamab+チスレリズマブ群は12.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.51~0.78、p<0.001)、zanidatamab群は12.4ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.52~0.81、p<0.001)と、いずれも有意に延長した。 OS中央値は、トラスツズマブ群の19.2ヵ月に比べ、zanidatamab+チスレリズマブ群は26.4ヵ月と有意に長かった(HR:0.72、95%CI:0.57~0.90、p=0.004)。一方、zanidatamab群のOS中央値は24.4ヵ月であり、この初回中間解析時にはトラスツズマブ群との間に有意差を認めなかった(HR:0.80、95%CI:0.64~1.01、p=0.06)。 奏効率は、zanidatamab+チスレリズマブ群が70.7%、zanidatamab群が69.6%、トラスツズマブ群は65.7%であり、このうち完全奏効を達成した患者の割合はそれぞれ19.6%、17.1%、11.0%であった。また、奏効例における奏効期間中央値は、それぞれ20.7ヵ月、14.3ヵ月、8.3ヵ月だった。下痢の頻度が高い Grade3以上の有害事象はzanidatamab+チスレリズマブ群で83.3%、zanidatamab群で73.8%、トラスツズマブ群で74.5%に発現した。このうち下痢の頻度が最も高く、それぞれ24.8%、20.0%、12.9%の患者に認めた。薬剤関連の下痢によるHER2標的療法(zanidatamab、トラスツズマブ)の中止は、zanidatamab+チスレリズマブ群の4.1%とzanidatamab群の1.3%で生じた。 重篤な有害事象は、zanidatamab+チスレリズマブ群の58.5%、zanidatamab群の49.2%、トラスツズマブ群の42.4%に発現し、HER2標的療法の中止に至った有害事象は、それぞれ13.3%、10.5%、5.6%に認めた。免疫介在性有害事象は、zanidatamab+チスレリズマブ群の37.8%で報告され、発疹(14.3%)の頻度が最も高かった。Grade5の薬剤関連有害事象(死亡)は、zanidatamab+チスレリズマブ群で多かった(それぞれ2.4%、0.3%、1.3%)。 著者は、これらの結果について、「チスレリズマブの併用の有無にかかわらず、zanidatamabはHER2陽性胃食道腺がん患者にとって、有望な標的治療の選択肢であることを裏付けている」「単一のHER2ドメインにのみ結合するトラスツズマブよりも、zanidatamab独自の二重のHER2標的化メカニズムが、大きな臨床的利益をもたらすことが示唆される」としている。

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PD-L1陽性転移TN乳がん1次治療のSG+ペムブロリズマブ、PFS2と後治療までの期間を改善(ASCENT-04)/ASCO2026

 ASCENT-04試験において、PD-L1陽性の転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療で、サシツズマブ ゴビテカン(SG)+ペムブロリズマブが化学療法+ペムブロリズマブより無増悪生存期間(PFS)を改善したことがすでに報告されている。今回、PFS2と後治療について解析した結果、化学療法+ペムブロリズマブ群からSG単剤療法へのクロスオーバー率が高かったにもかかわらず、PFS2はSG+ペムブロリズマブ群で長く、長期的なベネフィットが持続することが示唆された。また、最初と2番目の後治療までの期間はどちらもSG+ペムブロリズマブ群で長かった。米国・Winship Cancer Institute of Emory UniversityのKevin Kalinsky氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:PD-L1陽性(CPS≧10)で未治療(根治治療の完了から6ヵ月以上経過)の局所進行切除不能/転移TNBC患者・試験群:SG(21日サイクルの1、8日目に10mg/kg点滴静注)+ペムブロリズマブ(21日サイクルの1日目に200mg)221例・対照群:化学療法(パクリタキセルもしくはnab-パクリタキセルもしくはゲムシタビン+カルボプラチン)+ペムブロリズマブ 222例、病勢進行後SG単剤への変更を許容・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]全生存期間、BICRによる奏効率・奏効期間、安全性、QOL[探索的評価項目]PFS2、最初の後治療までの期間(TFST)、2番目の後治療までの期間(TSST)など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2025年3月3日)時点で追跡期間中央値は14.0ヵ月であり、SG+ペムブロリズマブ群では43%、化学療法+ペムブロリズマブ群では23%が試験治療を継続していた。・治療中止例のうち何らかの後治療を受けたのは、SG+ペムブロリズマブ群が55%、化学療法+ペムブロリズマブ群が70%であった。SG+ペムブロリズマブ群では19%がADC(うち3例がSG)、化学療法+ペムブロリズマブ群では82%がADCの投与を受け、ほとんどがSGであった。両群共に3次治療を受けたのは14%と17%だった。・PFS2は、化学療法+ペムブロリズマブ群のクロスオーバー率が高いにもかかわらずSG+ペムブロリズマブ群で長く、PFS2中央値は、SG+ペムブロリズマブ群では未到達、化学療法+ペムブロリズマブ群で21.0ヵ月であり、層別ハザード比(HR)は0.67(95%信頼区間[CI]:0.48~0.95)であった。・TFST中央値はSG+ペムブロリズマブ群17.3ヵ月、化学療法+ペムブロリズマブ群9.8ヵ月であり、層別HRは0.59(95%CI:0.46~0.76)、TSST中央値はSG+ペムブロリズマブ群は未到達、化学療法+ペムブロリズマブ群21.0ヵ月であり、層別HRは0.82(95%CI:0.59~1.14)であった。 Kalinsky氏は、「これらの結果は、PD-L1陽性の転移TNBC患者の1次治療としてSG+ペムブロリズマブの併用投与をさらに支持するものである」と結んだ。

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EGFR L858R陽性NSCLC、エルロチニブ+ラムシルマブvs.オシメルチニブ(REVOL858R/WJOG14420L)/ASCO2026

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)のうち、L858R変異陽性例はexon19欠失例と比較してEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)への感受性が低く、予後不良である可能性が指摘されている。一方で、エルロチニブ+ラムシルマブの有用性を検討した国際共同第III相試験「RELAY試験」1)では、L858R変異陽性例における全生存期間(OS)中央値が52ヵ月であったことが報告され、EGFR-TKIへのラムシルマブの上乗せによりexon19欠失例と同等の予後が、L858R変異陽性例において得られる可能性が考えられた2)。 そこで、L858R変異陽性例を対象に、エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法で治療を開始し、治療中にT790M変異が検出された場合にオシメルチニブへ移行する逐次治療戦略の有用性について、オシメルチニブとの比較により検討する国内第III相試験「REVOL858R試験」が実施された。その結果、エルロチニブ+ラムシルマブ後にオシメルチニブを投与する治療戦略は、初回オシメルチニブ単剤療法と比較して、治療戦略成功期間(TFS:Time to Failure of Strategy)を改善しなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、試験事務局を務めた原武 直紀氏(九州がんセンター 呼吸器腫瘍科)が結果を報告した。試験デザイン:国内第III相無作為化非盲検試験対象:未治療の進行または再発を有するEGFR遺伝子L858R変異陽性NSCLC患者試験群(エルロチニブ+ラムシルマブ群):エルロチニブ(150mg、1日1回)+ラムシルマブ(10mg/kg、2週ごと)→再生検またはリキッドバイオプシーによる遺伝子検査→T790M陽性例ではオシメルチニブ(80mg、1日1回)、T790M陰性例ではプロトコール治療を終了 116例対照群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 116例評価項目:[主要評価項目]TFS(治療開始からオシメルチニブで病勢進行または死亡まで、もしくはオシメルチニブ導入不可の場合は初回の病勢進行または死亡までの期間)[副次評価項目]OS、無増悪生存期間(PFS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者背景は両群でおおむねバランスがとれていた。全体の年齢中央値は73歳、女性の割合は62%であった。ベースライン時に脳転移を有していた割合は29%であった。・主要評価項目であるTFS中央値は、エルロチニブ+ラムシルマブ群16.6ヵ月、オシメルチニブ群14.8ヵ月であり、エルロチニブ+ラムシルマブ群の有意な改善は認められなかった(ハザード比[HR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.78~1.38)。・TFSに関する事前に規定されたサブグループ解析でも、明確な治療効果の差が示される集団はみられなかった。・副次評価項目のOS(HR:0.98、95%CI:0.66~1.45)、PFS(同:1.08、0.81~1.44)も両群間に差はみられなかった。・安全性について、Grade3以上の有害事象は、エルロチニブ+ラムシルマブ群72%、オシメルチニブ群44%に発現し、エルロチニブ+ラムシルマブ群で多かった。治療中止に至った有害事象は、それぞれ36%、21%にみられた。一方で病勢進行による治療中止は、エルロチニブ+ラムシルマブ群で23%にとどまり、オシメルチニブ群では52%であった。・間質性肺疾患(ILD)は、エルロチニブ+ラムシルマブ群2%、オシメルチニブ群10%に認められ、エルロチニブ+ラムシルマブ群のほうが少ない傾向がみられた。・エルロチニブ+ラムシルマブ群でT790M変異の検査が実施された割合は41%で、T790M変異陽性は全体の13%にとどまった。 本結果について、原武氏は「オシメルチニブ群のPFS中央値(14.8ヵ月)は、FLAURA試験3)の報告(14.4ヵ月)と同様であったが、エルロチニブ+ラムシルマブ群のPFS中央値(14.9ヵ月)は、RELAY試験の報告(19.4ヵ月)よりも数値的に短かった」と指摘した。また「EGFR遺伝子L858R変異を有するNSCLCには、アンメットニーズが存在するため、今回のシークエンス治療の長期的なOSへの影響について、長期追跡が進行中である」とまとめた。 また、会場から今後の臨床現場におけるエルロチニブ+ラムシルマブ療法の役割を問われ、原武氏は「本試験はネガティブな結果であったことを考慮すると、EGFR遺伝子L858R変異を有するNSCLCの標準治療は、MARIPOSAレジメン(アミバンタマブ+ラゼルチニブ)もしくはFLAURA2レジメン(オシメルチニブ+化学療法)であると考える。ただし、エルロチニブ+ラムシルマブはILDの発現割合が低かったことを考慮すると、一部の患者でこのレジメンの恩恵を得られる可能性がある。恩恵が得られる患者集団を明らかにするため、追加のサブグループ解析やOSに関する長期追跡が進行中である」と述べた。

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小細胞肺がん脳転移例の2次治療、タルラタマブがCNS進行リスクを低下(DeLLphi-304)/ASCO2026

 小細胞肺がん(SCLC)では脳転移を来す患者が多く、脳転移を有する患者の予後は不良である。しかし、脳転移を有するSCLCの2次治療において、タルラタマブが良好な治療成績を示す可能性がある。プラチナ製剤を含む化学療法後に進行したSCLC患者を対象とした国際共同第III相試験「DeLLphi-304試験」1)において、ベースライン時に脳転移を有する患者のpost-hoc解析が実施された。その結果、タルラタマブは化学療法と比較して、中枢神経系無増悪生存期間(CNS PFS)を延長し、全生存期間(OS)も改善した。本研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Giannis S. Mountzios氏(ギリシャ・Henry Dunant Hospital Center)によって報告された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化非盲検比較試験・対象:プラチナ製剤を含む化学療法±抗PD-1/PD-L1抗体薬による1次治療を受けたSCLC患者(無症候性の脳転移は治療歴を問わず許容)・試験群(タルラタマブ群):タルラタマブ(1日目に1mg、8、15日目に10mgを点滴静注し、以降は2週間間隔で10mgを点滴静注) 254例・対照群(化学療法群):化学療法(トポテカン、アムルビシン、lurbinectedinのいずれか)※ 255例・評価項目:[主要評価項目]OS[主要な副次評価項目]PFS、患者報告アウトカム[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など※:日本はアムルビシン 今回のpost-hoc解析では、ベースラインで脳転移を有する患者を対象に、盲検下独立中央判定(BICR)によるCNS PFS、CNS奏効、CNS病勢コントロール率(CNS DCR)などが評価された。また、ベースライン時の脳転移の有無別にみたOSおよび安全性も評価された。主な結果は以下のとおり。・全体集団において、治験担当医師評価によるCNS PFS中央値は、タルラタマブ群で未到達、化学療法群で7.2ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.39~0.75)であった。・ベースライン時に脳転移を有する患者は、タルラタマブ群98例、化学療法群99例であった。このうち、ベースライン時および1回以上のベースライン後の脳画像評価を有するCNS Full Analysis Set(CNS FAS)は、タルラタマブ群67例、化学療法群56例であった。・CNS FASにおける年齢中央値はタルラタマブ群64.0歳、化学療法群63.5歳で、男性の割合はそれぞれ75%、70%であった。脳転移に対する前治療として放射線療法または手術を受けていた患者の割合はそれぞれ75%、71%で、10mm以上のCNS病変を有する患者の割合はそれぞれ23.9%、23.2%であった。・CNS FASにおけるBICR評価によるCNS PFS中央値はタルラタマブ群6.5ヵ月、化学療法群4.2ヵ月であり、タルラタマブ群でCNS PFSの延長がみられた(HR:0.40、95%CI:0.24~0.66)。6ヵ月CNS PFS率はそれぞれ53.9%、27.0%であった。・CNS完全奏効(CNS CR)はタルラタマブ群14.9%、化学療法群5.4%に認められた。CNS CR期間中央値はタルラタマブ群未到達、化学療法群3.6ヵ月。・CNS DCRはタルラタマブ群77.6%、化学療法群71.4%に認められた。CNS DCR期間中央値はそれぞれ8.2ヵ月、5.2ヵ月。・ベースライン時に脳転移を有する患者におけるOS中央値はタルラタマブ群13.9ヵ月、化学療法群6.8ヵ月であり、タルラタマブ群でOSの延長がみられた(HR:0.51、95%CI:0.34~0.74)。12ヵ月OS率はそれぞれ51.1%、26.0%であった。・ベースライン時に脳転移を有する患者の安全性解析対象は、タルラタマブ群98例、化学療法群93例であった。・Grade 3以上の有害事象は、タルラタマブ群54.1%、化学療法群87.1%に認められた。治療中断または減量に至った治療関連有害事象(TRAE)はそれぞれ18.4%、54.8%に発現し、中止に至ったTRAEはそれぞれ7.1%、32.3%にみられた。・タルラタマブ投与例において、ベースライン脳転移の有無別にサイトカイン放出症候群(CRS)と免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)の発現割合を比較したところ、CRSは脳転移ありで53.1%、脳転移なしで56.5%にみられた。ICANSはそれぞれ9%、4%であった。 本解析結果について、Mountzios氏は「これらの結果は、脳転移を有するSCLC患者においても、タルラタマブがSCLCの2次治療における標準治療となることを支持するものである」とまとめた。

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