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乳がん発見のためのWGSを用いたctDNAアッセイ

 乳がんにおいて、全ゲノムシークエンス(WGS)を用いた循環腫瘍DNA(ctDNA)アッセイにより、ベースライン時および追跡調査時の検出が改善され、臨床的な再発診断までの期間(リードタイム)が長くなることが、英国・The Institute of Cancer ResearchのIsaac Garcia-Murillas氏らによる後ろ向き研究で示唆された。Annals of Oncology誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。 ctDNAに基づく分子的残存病変(MRD)の検出は、再発リスクの高い患者を特定するための戦略となる。今回、WGSに基づく超高感度のtumor-informed ctDNA プラットフォームを使用して早期乳がん患者のプロファイリングを実施した。本研究では、転移のない原発性乳がん78例(トリプルネガティブ乳がん23例、HER2+乳がん35例、HR+乳がん18例、不明2例)の血漿617検体(中央値:8、範囲:2~14)を分析。検体は、診断時(治療前)、術前化学療法の2サイクル目、術後(術前化学療法を受けた場合)、術後1年間は3ヵ月ごと、その後は6ヵ月ごとに採取された。血漿DNAはNeXT Personal MRDプラットフォームを用いて分析され、1例当たり1,451バリアント(中央値)を追跡する個別化ctDNAシークエンスパネルを作成した。MRD検出は臨床転帰と相関していた。  主な結果は以下のとおり。・ctDNAは2.19~204,900PPM(中央値:405)の範囲で検出され、検出されたctDNAの39%は100PPM未満の超低レベルであった。・診断時の検体があった50例中49例(98%)は、治療前にctDNAが検出されていた。・追跡期間中央値76ヵ月(範囲:5~118)において、ctDNAの検出は、再発高リスク(log-rank検定:p<0.0001)と全生存期間の短縮(p<0.0001)に関連し、ctDNA検出から臨床的な再発までのリードタイム中央値は15ヵ月(範囲:0.9~61.5)であった。・再発した11例すべてでMRDが同定され、MRD初回検出時のctDNA中央値は13.1PPMであった。・ctDNAが検出されなかった64例はすべて、追跡期間中に再発がみられなかった。・エクソームを用いたMRD検出アッセイより、感度とリードタイムが改善した。 本研究の結果、全ゲノムを利用したMRDアッセイでは乳がん再発までのリードタイムが長く、無再発生存と強く関連していた。また、診断時のctDNA検出率は、エクソームを利用したtumour-informedアッセイで報告された検出率より高かった。

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ASCO-GI 2025会員レポート

レポーター紹介2025年1月23~25日に米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025)が米国・サンフランシスコで開催された。東北大学・腫瘍内科の笠原 佑記氏(上部消化器がん担当)と大内 康太氏(下部消化器がん担当)が重要演題をピックアップし、結果を解説する。食道がんPhase II study of neoadjuvant chemotherapy with fluorouracil, leucovorin, oxaliplatin and docetaxel for resectable esophageal squamous cell carcinoma.(abstract#418)切除可能な局所進行食道扁平上皮がんに対する、フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル(FLOT療法)による術前化学療法の安全性と有効性を評価した、日本発の第II相多施設共同試験の結果が報告された。病理学的奏効率(pRR)は43.4%(95%信頼区間[CI]:29.8~57.7、p=0.00002)であり、主要評価項目を達成した。また、R0切除率は83.0%、病理学的完全奏効率(pCR)は13.2%と良好な結果が得られた。とくに注目すべき点として、DCF(ドセタキセル+シスプラチン+5-FU)療法で課題とされる発熱性好中球減少症の発生率が1.9%と相対的に低かったことが挙げられる。これにより、FLOT療法は効果と安全性のバランスに優れた新たな治療選択肢となりうる可能性が示された。胃がんNivolumab (NIVO) + chemotherapy (chemo) vs chemo as first-line (1L) treatment for advanced gastric cancer/gastroesophageal junction cancer/esophageal adenocarcinoma (GC/GEJC/EAC): 5-year (y) follow-up results from CheckMate 649.(abstract#398)ニボルマブ+化学療法の有効性と安全性について、CheckMate 649試験の5年フォローアップデータが報告された。PD-L1 CPS≧5の患者群における全生存期間(OS)中央値は、ニボルマブ+化学療法群で14.4ヵ月(95%CI:13.1~16.2)、化学療法単独群で11.1ヵ月(95%CI:10.1~12.1)であり、ハザード比(HR)は0.71(95%CI:0.61~0.82)であった。60ヵ月時点の生存割合は、ニボルマブ+化学療法群で16%、化学療法単独群で6%であった。昨年のASCO-GI 2024で報告された48ヵ月時点での生存割合(それぞれ17%、8%)と比較すると、ニボルマブ併用により生存率の改善と長期奏効がもたらされていることが示唆される。本試験の結果は、CheckMate 649試験が胃がんの1次治療の標準を大きく変えた重要な試験であることをあらためて認識させるものであった。Final analysis of the randomized phase 2 part of the ASPEN-06 study: A phase 2/3 study of evorpacept (ALX148), a CD47 myeloid checkpoint inhibitor, in patients with HER2-overexpressing gastric/gastroesophageal cancer (GC).(abstract#332)HER2陽性胃・食道胃接合部がんの2次・3次治療における、抗CD47抗体evorpacept併用療法の有効性と安全性を評価した第II相無作為化比較試験(ASPEN-06)の結果が報告された。evorpaceptは、CD47に対する高い親和性を持ちつつ、不活性化されたFc領域を有することで、従来のCD47阻害による課題の1つであった赤血球減少を回避しながら、抗体依存性細胞貪食(ADCP)を増強することが可能な薬剤である。本試験では、トラスツズマブ+ラムシルマブ+パクリタキセル(TRP群)と、これにevorpaceptを併用した群(Evo-TRP群)に患者を無作為に割り付けた。奏効率(ORR)は、Evo-TRP群で40.3%、TRP群で26.6%であり、主要評価項目であるヒストリカルコントロール(ラムシルマブ+パクリタキセル療法、想定奏効率30%)との比較では統計学的有意差を示すことはできなかった(p=0.095)。しかしながら、治療前の生検にてHER2陽性が確認された患者に限定すると、Evo-TRP群の奏効率は54.8%と高く、evorpaceptが抗HER2療法の効果を高める可能性が示唆された。evorpaceptは、その作用機序からトラスツズマブ以外の抗体薬との併用においても抗腫瘍効果の増強が期待できる薬剤であり、今後のさらなる臨床応用の発展が期待される。大腸がんASCO-GI 2025では、切除不能大腸がんにおけるTargeted TherapyとImmunotherapyの双方においてPractice changingな発表が行われた。本稿では3つの注目演題を中心に報告する。BREAKWATER: Analysis of first-line encorafenib + cetuximab + chemotherapy in BRAF V600E-mutant metastatic colorectal cancer.(abstract#16)1つ目の注目演題は、BRAF V600E変異を有する未治療の切除不能大腸がん患者を対象に実施されたBREAKWATER試験である。 BRAF V600E変異陽性大腸がんに対しては、BEACON試験(Kopetz S, et al. N Engl J Med. 2019;381:1632-1643.)の結果から、現在は2次治療あるいは3次治療でエンコラフェニブ+セツキシマブ(EC)の2剤併用療法もしくはエンコラフェニブ+セツキシマブ+ビニメチニブの3剤併用療法が標準治療として用いられている。2剤併用療法と3剤併用療法の使い分けについては、BEETS試験(abstract#164)の結果から2剤併用療法の有用性が示されたが、3ヵ所以上の遠隔転移など予後不良因子を有する群においては3剤併用療法が有用である可能性が示唆された。今回報告されたBREAKWATER試験は、 BRAF V600E変異陽性の切除不能大腸がんに対する1次治療として、EC±化学療法と標準治療を比較した非盲検多施設共同第III相試験である。本試験は当初、EC群、EC+mFOLFOX6併用療法群もしくは標準治療群の3群に割り付けを行う試験デザインで開始されたが、その後EC+mFOLFOX6併用療法群もしくは標準治療群の2群に1対1で割り付ける試験デザインに変更された。2022年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)では、Safety Lead-inパートにおける忍容性とPK(薬物動態)の解析結果に加え、少数例での予備的なデータではあるが有望な抗腫瘍効果が示され、注目を集めていた。ASCO-GI 2025では、主要評価項目の1つであるEC+mFOLFOX6併用療法群および標準治療群における盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率の主解析結果、OSの中間解析結果および安全性に関する報告が行われた。EC+mFOLFOX6併用療法群に236例が、標準治療群に243例が無作為に割り付けられ、原発巣占居部位を含む患者背景に有意な偏りは認めなかった。データカットオフ時点での確定奏効率は、EC+mFOLFOX6併用療法群が標準治療群に比べて有意に高い結果であった(60.9%vs. 40.0%、オッズ比:2.443[95%CI:1.403~4.253]、p=0.0008)。中間解析時点でのOSの中央値は、EC+mFOLFOX6併用療法群で未到達(95%CI:19.8~NE)、標準治療群で14.6ヵ月(95%CI:13.4~NE)であり、immatureではあるがHR:0.47(95%CI:0.318~0.691)という驚くべき数値をもってEC+mFOLFOX6併用療法群で有意に延長していた(p=0.0000454)。Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)発現割合は、EC+mFOLFOX6併用療法群で69.7%、標準治療群で53.9%であり、安全性のプロファイルはこれまで報告されているものと一致していた。以上の結果を受け、FDA(米国食品医薬品局)は2024年12月に BRAF V600E変異陽性の切除不能大腸がんの1次治療としてエンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6併用療法を迅速承認しており、本邦においても承認が待たれる。また、今後は BRAF阻害薬がfrontlineで投与される可能性が高いことから、 BRAF阻害薬を含む治療に耐性となった BRAF V600E変異陽性切除不能大腸がんに対する2次治療以降の治療戦略の開発にも注目していきたい。First results of nivolumab (NIVO) plus ipilimumab (IPI) vs NIVO monotherapy for microsatellite instability-high/mismatch repair-deficient (MSI-H/dMMR) metastatic colorectal cancer (mCRC) from CheckMate 8HW.(abstract#LBA 143)2つ目の注目演題は、CheckMate-8HW試験である。MSI-HまたはdMMRの切除不能大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)として、現行のガイドライン(『大腸癌治療ガイドライン医師用 2024年版』大腸癌研究会編)では、第III相試験(KEYNOTE-177試験)の結果から1次治療においてはペムブロリズマブ単剤療法が、第II相試験(KEYNOTE-164試験、CheckMate 142試験)の結果からICI未投与の既治療例においてはペムブロリズマブ単剤療法、ニボルマブ(Nivo)単剤療法もしくはイピリムマブ+ニボルマブ(Ipi+Nivo)併用療法がそれぞれ強く推奨されている。しかし、Nivo単剤療法とIpi+Nivo併用療法とを直接比較した試験はこれまでに行われていなかった。CheckMate-8HW試験は、ICI未投与のMSI-H/dMMR切除不能大腸がんを対象として、Ipi+Nivo併用療法の有効性と安全性をNivo単剤療法または医師選択化学療法と比較検討した多施設共同非盲検第III相試験である。昨年開催されたASCO-GI 2024では、本試験の主要評価項目の1つである1次治療におけるIpi+Nivo併用群と医師選択化学療法群とを比較したBICRの評価による無増悪生存期間(PFS)の解析結果が報告され、HR:0.21(95%CI:0.13~0.35)と大きなインパクトを伴ってIpi+Nivo併用群で有意にPFSが延長していた。ASCO-GI 2025では、もう1つの主要評価項目である、全治療ラインにおけるIpi+Nivo併用群とNivo単剤群とを比較したBICRの評価によるPFSの解析結果、および安全性に関する報告が行われた。Ipi+Nivo併用群に354例が、Nivo単剤群に353例が無作為に割り付けられ、PD-L1発現状態や遺伝子異常を含む患者背景に有意な偏りは認めなかった。データカットオフ時点でのPFSの中央値は、Ipi+Nivo併用群で未到達(53.8~NE)、Nivo単剤群で39.3ヵ月(22.1~NE)であり、Ipi+Nivo併用群で有意に延長していた(HR:0.62、95%CI:0.48~0.81、p=0.0003)。BICRに基づく確定奏効率は、Ipi+Nivo併用群で71%(95%CI:65~76)、Nivo単剤群で58%(95%CI:52~64)であり、有意にIpi+Nivo併用群で高かった(p=0.0011)。Grade3/4のTRAE発現割合は、Ipi+Nivo併用群で22%、Nivo単剤群で14%であり、安全性のプロファイルはこれまで報告されているものと一致していた。CheckMate-8HW試験の結果から、主要評価項目であるPFSの比較において、ASCO-GI 2024では標準化学療法に対する優越性が、今回のASCO-GI 2025ではNivo単剤療法に対する優越性が検証されたことから、Ipi+Nivo併用療法はMSI-H/dMMRの切除不能大腸がんに対する標準治療として確立されていくものと予想される。今後の課題としては、2剤併用療法を用いることで想定される免疫関連有害事象のリスクマネジメントが挙げられ、また本試験ではニボルマブの最長投与期間が2年に設定されていたため、長期病勢制御が得られた場合の適切な治療期間についてはさらなる検討が必要と考えられる。Final analysis of modified (m)-FOLFOXIRI plus cetuximab versus bevacizumab for RAS wild-type and left-sided metastatic colorectal cancer: The DEEPER trial (JACCRO CC-13). (abstract#17)3つ目の注目演題は、DEEPER試験である。本試験はRAS野生型切除不能大腸がんの1次治療において、3剤併用化学療法(mFOLFOXIRI)のパートナーとして、抗EGFR抗体薬(セツキシマブ)と抗VEGF抗体薬(ベバシズマブ)のいずれがより適しているかを比較検討した無作為化第II相試験である(Shiozawa M, et al. Nat Commun. 2024;15:10217.)。主要評価項目は最大腫瘍縮小率(DpR)に設定され、2021年の米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)では、セツキシマブ(CET)併用群ではベバシズマブ(BEV)併用群に比べて有意にDpRが高いことが報告された。ASCO-GI 2025では、副次評価項目である生存期間(PFSおよびOS)に関する最終解析の結果が報告された。本試験ではCET併用群に179例、BEV併用群に180例が無作為に割り付けられ、それぞれ159例、162例がper protocol setとして解析対象となった。データカットオフ時点での左側症例におけるPFSの中央値はCET併用群で13.9ヵ月(95%CI:12.2~17.5)、BEV併用群で12.1ヵ月(95%CI:10.9~14.1)であり、両群間で有意な差は認めなかった(HR:0.81[95%CI:0.63~1.05]、p=0.11)。左側症例におけるOSの中央値はCET併用群で45.3ヵ月(95%CI:37.6~53.1)、BEV併用群で41.9ヵ月(95%CI:34.1~48.7)であり、両群間で有意な差は認めなかった(HR:0.85[95%CI:0.64~1.12]、p=0.25)。一方で、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例(178例)に対象を限定して行われた探索的な解析では、PFSの中央値はCET併用群で14.8ヵ月(95%CI:12.6~19.4)、BEV併用群で11.9ヵ月(95%CI:10.8~14.6)であり、CET併用群で有意にPFSが延長していた(HR:0.71[95%CI:0.52~0.97]、p=0.029)。OSの中央値はCET併用群で50.2ヵ月(95%CI:39.9~56.0)、BEV併用群で40.2ヵ月(95%CI:33.5~48.8)であり、CET併用群では50ヵ月を超えるOS中央値が示されたものの、統計学的有意差は認めなかった(HR:0.74[95%CI:0.53~1.05]、p=0.091)。さらに、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例から肝限局転移症例を除外して行われた探索的な解析(125例)では、OSの中央値はCET併用群で50.2ヵ月(95%CI:39.6~60.1)、BEV併用群で38.6ヵ月(95%CI:30.5~45.2)であり、CET併用群で有意にOSが延長していた(HR:0.60[95%CI:0.40~0.90]、p=0.014)。これらの結果から、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例、なかでも非肝限局転移症例においてはmFOLFOXIRI+セツキシマブ併用療法が有望な治療オプションとなる可能性が示されたが、皮疹や下痢などの有害事象発現のリスクや、あくまで探索的な解析結果である点には十分留意してdecision makingに反映する必要がある。なお、未治療のRAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例を対象とした非盲検多施設共同第III相試験(TRIPLETE試験、Rossini D, et al. J Clin Oncol. 2022;40:2878-2888.)では、抗EGFR抗体薬(パニツムマブ)に併用する化学療法として3剤併用療法(mFOLFOXIRI)の2剤併用療法(mFOLFOX)に対する優越性が検討されたが、積極的に3剤併用療法を選択するエビデンスは示されなかった。したがって、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例に対する1次治療において、抗EGFR抗体薬に2剤併用療法を選択するのか、3剤併用療法を選択するのかという点についても引き続き議論が必要であるが、DEEPER試験で示された転移臓器との関連がキーポイントとなるかもしれない。今回紹介した注目演題で検討された試験治療は、いずれも有望な抗腫瘍効果を示した一方で、従来の標準治療に比べて相応の有害事象発現リスクの上昇を伴うものである。今後のトランスレーショナルリサーチ(TR)研究によって、真にベネフィットが期待される患者集団の絞り込みや、耐性克服につながる治療戦略が開発されることを期待したい。

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日本の乳がん統計、患者特性・病理・治療の最新データ

 2022年にNCD(National Clinical Database)乳がん登録に登録された日本国内1,339施設の乳がん症例10万2,453例の人口学的・臨床病理学的特徴を、兵庫医科大学の永橋 昌幸氏らがBreast Cancer誌2025年3月号に報告した。 日本乳癌学会では1975年に乳がん登録制度(Breast Cancer Registry)を開始し、2012年からはNCD乳がん登録のプラットフォームへ移管された。NCDに参加する医療機関で新たに乳がんと診断された患者は、乳房手術の有無にかかわらず登録対象となっており、2012~21年の10年間で累計89万2,021例が登録されている。 主な結果は以下のとおり。・女性患者は10万1,793例(99.4%)で、診断時の年齢中央値は62歳(四分位範囲:50~73歳)、29.4%が閉経前であった。・1万5,437例(15.2%)がStage0、4万2,936例(42.2%)がStageIと診断された。・エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)の陽性率は、それぞれ78.7%、69.4%、12.8%であった。・遠隔転移のない9万7,154例のうち、4万521例(41.7%)が乳房温存手術を受け、5,780例(5.9%)が乳房切除時に乳房再建手術を受けていた。・6万6,894例(68.9%)がセンチネルリンパ節生検を受け、7,155例(7.4%)がセンチネルリンパ節生検に続き腋窩リンパ節郭清を受けていた。・乳房温存手術を受けた4万521例のうち、2万9,500例(72.8%)が全乳房照射を受けていた。・分子標的治療の有無にかかわらず術前化学療法を受けた1万3,950例のうち、4,308例(30.9%)が病理学的完全奏効(pCR)を達成し、とくにホルモン受容体陰性/HER2陽性の患者でpCR率が最も高く、60.5%であった。

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日本人PD-L1低発現の切除不能NSCLC、治験不適格患者へのICI+化学療法の有用性は?

 PD-L1低発現の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法の有用性は臨床試験ですでに検証されている。しかし、実臨床では臨床試験への登録が不適格となる患者も多く存在する。そこで、研究グループはPD-L1低発現の切除不能NSCLC患者を臨床試験への登録の適否で分類し、ICI+化学療法の有用性を検討した。その結果、臨床試験への登録が不適格の集団は、適格の集団よりも全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が短かったものの、ICI+化学療法化学療法単独よりも有用であることが示唆された。ただし、PS2以上、扁平上皮がんではICI+化学療法によるOSの改善はみられなかった。本研究結果は、畑 妙氏(京都府立医科大学大学院 呼吸器内科学)らにより、Lung Cancer誌2025年2月号で報告された。 本研究は、多施設共同後ろ向きコホート研究として、日本の19施設において実施された。対象患者は、PD-L1低発現(TPS 1~49%)のStageIIIB、IIIC、IV(TNM分類第8版)のNSCLC患者のうち、ICI+化学療法または化学療法単独による治療を行った728例とした。対象患者を第III相試験への登録基準への適否で分類し(適格集団/不適格集団)、OSやPFSなどを検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者728例のうち、適格集団は333例、不適格集団は395例であった。・対象患者の年齢中央値は70歳(範囲:36~89)、男性が79%、現/元喫煙者が89%、組織型は腺がんが58%、扁平上皮がんが32%であった。・OSは適格集団、不適格集団のいずれにおいてもICI+化学療法群が化学療法群と比べて有意に長かった。しかし、不適格集団のPS2以上、扁平上皮がんに限定した解析では、有意差はみられなかった。OS中央値は以下のとおり。<適格集団> ICI+化学療法群25.1ヵ月、化学療法群18.5ヵ月(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.54~0.97、p=0.03)<不適格集団> ICI+化学療法群18.2ヵ月、化学療法群14.9ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.59~0.95、p=0.018)<PS2以上の不適格集団> ICI+化学療法群12.2ヵ月、化学療法群9.2ヵ月(p=0.21)<扁平上皮がんの不適格集団> ICI+化学療法群12.9ヵ月、化学療法群13.1ヵ月(p=0.27)・PFSは適格集団、不適格集団のいずれにおいてもICI+化学療法群が化学療法群と比べて有意に長かった。不適格集団のうち扁平上皮がんに限定した解析では、ICI+化学療法群が有意に長かったが、PS2以上に限定した解析では有意差はみられなかった。PFS中央値は以下のとおり。<適格集団> ICI+化学療法群9.3ヵ月、化学療法群6.1ヵ月(p<0.0001)<不適格集団> ICI+化学療法群7.0ヵ月、化学療法群5.1ヵ月(p<0.0001)<PS2以上の不適格集団> ICI+化学療法群5.7ヵ月、化学療法群4.0ヵ月(p=0.17)<扁平上皮がんの不適格集団> ICI+化学療法群6.1ヵ月、化学療法群5.0ヵ月(p=0.008) 本研究結果について、著者らは「PS2以上、扁平上皮がんを除き、臨床試験への登録が不適格の集団においてもICI+化学療法の有用性が示唆された」とまとめた。

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HER2+早期乳がん、TILが20%以上ならde-escalation可能か

 第III相ShortHER試験の長期追跡データを用いて、HER2+の早期乳がん患者における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)と予後との関連性を評価した結果、TILが高値であるほど遠隔無病生存期間(DDFS)および全生存期間(OS)が良好で、TIL量が20%以上の場合はde-escalationの術後補助療法であっても過剰なリスクは認められなかったことを、イタリア・パドヴァ大学のMaria Vittoria Dieci氏らが明らかにした。JAMA Oncology誌オンライン版2025年2月13日号掲載の報告。 ShortHER試験は、2007年12月~2013年10月にHER2+の早期乳がん患者1,253例を登録し、術後化学療法と併用したトラスツズマブの9週間投与と1年間投与を比較したイタリアの多施設共同ランダム化非劣性試験。1年投与群に対する9週投与群の非劣性は認められなかったが、N0およびN1~3の集団では10年OS率が非常に類似していた。研究グループは、TILの予後因子としての可能性を探るため、追跡期間中央値9年のデータを2023年2月~2024年8月に解析し、TIL量(5%刻み)が予後に与える影響を評価した。評価項目はDDFSおよびOSで、Cox回帰モデルを使用してハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・全参加者1,253例のうち、評価可能なTILデータを有したのは866例(69%)であった。年齢中央値は56歳で、TIL量の中央値は5%(四分位範囲:1~15)であった。・TILデータがある集団における9週群vs.1年群のDDFSのHRは1.44(95%CI:0.98~2.10)、OSのHRは1.11(95%CI:0.71~1.76)であった。・TIL量が5%増加するごとにDDFSイベントリスクは13%減少し(HR:0.87、95%CI:0.80~0.95、p=0.001)、OSリスクは11%減少した(HR:0.89、95%CI:0.81~0.98、p=0.01)。・TILが低値の集団よりも高値の集団のほうが10年DDFS率および10年OS率は良好で、TIL量が20%以上の集団では89.8%および91.3%、30%以上の集団では91.7%および93.3%、50%以上の集団では96.9%および98.1%であった。・10年DDFS率および10年OS率は、TIL量が20%未満の集団では1年群のほうが9週群よりも良好であったが、TIL量が20%以上の集団では9週群のほうが良好であった。

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第22回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2025

 日本臨床腫瘍学会は2025年2月13日にプレスセミナーを開催し、3月6~8日に神戸で開催される第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)の注目演題などを紹介した。今回の会長は徳島大学の高山 哲治氏が務め、「Precision Oncology Toward Practical Value for Patients」というテーマが設定された。 2019年にがん遺伝子パネル検査が保険収載となり今年で5年を迎える。検査数は毎年順調に増加しているものの、「検査を受けられるのは標準治療終了後、または終了見込み時に限られる」「保険適用となる薬剤が限られ、かつ承認外薬を使うのは煩雑」などの要因から、検査後に推奨された治療に到達する患者は10%程度に限られる現状がある。日本臨床腫瘍学会をはじめとしたがん関連学会は長くこの状況を問題とし、改善を図る活動を行ってきた。今回のテーマにもそうしたメッセージが込められている。 今年の演題数は計1,267題、うち509題は海外からのものだ。また12月中旬まで臨床試験の結果を待って最新の内容を盛り込む「Late Breaking Abstract」をはじめて採用し、約20題が採択された。以下、主な演題を紹介する。プレジデンシャルセッション・全16演題Presidential Session 1 呼吸器 血液3月6日(木)8:30~11:101)PS1-1 TTF-1陰性の進行非扁平上皮非小細胞肺癌に対するカルボプラチン+nab-パクリタキセル+アテゾリズマブ併用療法の第II相試験:F1NE TUNE(LOGIK2102)2)PS1-2 完全切除後のALK遺伝子転座陽性非小細胞肺癌に対する術後Alectinibの第III相試験(ALINA試験):日本人薬物動態、安全性解析3)PS1-3 Phase I/II study of tifcemalimab combined with toripalimab in patients with previously treated advanced lung cancer4)PS1-4 In-depth Responder Analysis of PhALLCON, a Phase 3 Trial of Ponatinib Versus Imatinib in Newly Diagnosed Ph+ ALLPresidential Session 2 泌尿器 頭頸部 TR・臨床薬理3月7日(金)15:00~17:405)PS2-1 未治療切除不能尿路上皮癌に対してエンホルツマブベドチン+ペムブロリズマブ併用療法と化学療法を比較したEV-302試験:アジア人サブグループ解析6)PS2-2 Safety profile of belzutifan monotherapy in patients with renal cell carcinoma: A pooled analysis of 4 clinical trials7)PS2-3 LIBRETTO-531:RET遺伝子変異陽性甲状腺髄様癌に対する一次治療としてのSelpercatinibの有効性・安全性・生存のアップデート8)PS2-4 血中遊離DNAによりHER2遺伝子増幅が認められた固形がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの多施設共同臨床第II相試験(HERALD/EPOC1806試験) データ アップデートPresidential Session 3 消化管3月7日(金)8:20~11:009)PS3-1 RAS野生型大腸癌におけるmodified-FOLFOXIRI+セツキシマブ療法の効果予測臨床因子:DEEPER試験(JACCRO CC-13)10)PS3-2 血中循環腫瘍DNA陽性の治癒切除後結腸・直腸がん患者を対象としたFTD/TPI療法とプラセボとを比較する無作為化二重盲検第III相試験(CIRCULATE-Japan ALTAIR/EPOC1905)11)PS3-3 再発高リスクStage II結腸癌に対するオキサリプラチン併用術後補助化学療法の至適投与期間に関する第III相試験:ACHIEVE-2試験12)PS3-4 進行食道がんに対するNivolumab+Ipilimumab or 化学療法:CheckMate648における日本人サブグループの45ヶ月フォローアップPresidential Session 4 肝胆膵 希少がん 乳腺3月8日(土)8:30~11:1013)PS4-1 CRAFITYスコア2点の肝細胞癌に対する一次薬物療法:レンバチニブと免疫療法の治療効果の比較14)PS4-2 Final Results of TCOG T5217 Trial:SLOG vs Modified FOLFIRINOX as First-Line Treatment in Advanced Pancreatic Cancer15)PS4-3 消化管・膵原発の切除不能進行・再発神経内分泌腫瘍に対するエベロリムス単剤療法とエベロリムス+ランレオチド併用療法のランダム化第III相試験:JCOG190116)PS4-4 脳転移を伴う又は伴わない治療歴のあるHER2陽性の進行/転移性乳癌患者を対象とするトラスツズマブ デルクステカンの試験結果(DESTINY-Breast12)会長企画・特別セッション特別講演がんの近赤外光線免疫療法(光免疫療法)The Era of Liquid Biopsy Biomarkers and Precision Medicine in Gastrointestinal Cancers特別企画腫瘍循環器学の重要性と実態:小室班研究を踏まえて会長企画シンポジウム全ゲノムシークエンスの臨床実装ゲノム医療で推奨された保険適応外薬をどのように使うか?激論!『条件付き承認制度』の活用はドラッグ・ロス対策に有用か!?ctDNAに基づくがん治療希少がんの遺伝性腫瘍がん遺伝子パネル検査は1次治療開始前に実施するべきか?大腸がんに対する新たな分子標的治療薬注目のシンポジウム 今回の学会テーマと深く関連するがん遺伝子パネル検査の課題と今後の方向性については上記シンポジウムで2つのテーマが設定されている。京都大学の武藤 学氏が関連する2つのセッションの概要を説明した。会長企画シンポジウム2:ゲノム医療で推奨された保険適用外薬をどのように使うか?3月6日(木)14:00~15:30 遺伝子変異に基づいて推奨された治療薬は日本の医療制度では保険適用外で使用困難な現状があり、治験や先進医療の活用が求められるものの、制度上の制約が多い。欧米では患者支援プログラム(PAP)やコンパッショネート・ユースの仕組みがある。東京科学大学の池田 貞勝氏が基調講演を行い、医師、患者代表、経済学者がそれぞれの立場から発表を行う。会長企画シンポジウム6:がん遺伝子パネル検査は1次治療開始前に実施するべきか?3月8日(土)14:00~15:30 日本において保険収載の遺伝子パネル検査は標準治療終了後に行うこととされているが、患者の状態が悪化し、推奨された治療を受けられないケースも多い。海外では1次治療前の検査が推奨されており、日本でも早期検査の意義が議論されている。早期のパネル検査の有効性を検討する臨床試験の結果を共有し、がん種別の検討や厚労省の見解を発表する。 さらに、昨年の学会で初めて行われたSNSを使った学会広報に関する活動に関する報告も引き続き行われる。これまでJSMOのSNSワーキンググループ(SNS-WG)は、昨年の学会において対象プログラムのスライド撮影およびSNS投稿解禁を実現し、今年の学会ではSNS投稿時の公式ハッシュタグを「#JSMO25」に統一することとした。これまで国内では「#JSMO2024」、海外では「#JSMO24」が多く使われ、SNS上で分断が起こっていたことに対処したものだ。委員会企画 禁煙推進セッション/SNSワーキンググループシンポジウム オンコロジー領域におけるSNS利用3月6日(木)8:30~10:00 インターネット上の医療情報のファクトチェックをテーマとした論文を執筆した豊川市民病院の呉山 菜梨氏、SNSを使った医療コミュニケーション経験が豊富な帝京大学ちば総合医療センターの萩野 昇氏が講演を行い、SNS-WGメンバーの東海大学・扇屋 大輔氏が昨夏の「医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー」においてWGが行った情報発信と成果について報告する。―――――――――――――――――――第22回日本臨床腫瘍学会 開催概要会期:2025年3月6日(木)〜8日(土)会場:神戸コンベンションセンター開催形式:現地(現地主体、一部ライブ配信+オンデマンド配信)SNSハッシュタグ:#JSMO25学会サイト:https://site2.convention.co.jp/jsmo2025/―――――――――――――――――――

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HER2陽性早期乳がん術前化学療法後non-pCRに対するT-DM1のアップデート(解説:下村昭彦氏)

 術前化学療法(分子標的薬併用を含む)は早期乳がんに対する標準治療として確立している。HER2陽性乳がんやトリプルネガティブ乳がんでは、術前化学療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られた場合は再発のリスクが下がることが知られているが、得られなかった場合(non-pCR)の再発リスクが高いことがunmet medical needsとして認識されてきた。そのため、non-pCRに対する術後治療に対するエビデンスがここ10年で蓄積し、また現在も開発されている。 トラスツズマブ併用術前化学療法を受けたHER2陽性早期乳がんで、手術病理でnon-pCRであった症例を対象としてT-DM1の有効性を示した試験がKATHERINE試験である。2019年にNEJM誌に報告され(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2019;380:617-628.)、日本国内でも2020年に適応拡大されている。KATHERINE試験は、タキサンならびにトラスツズマブを含む術前化学療法を受け、乳房または腋窩リンパ節に浸潤がんが遺残していたHER2陽性乳がんに対し、術後治療として当時の標準療法であるトラスツズマブ単剤とT-DM1を比較した試験である。ホルモン受容体陽性の場合はホルモン療法が併用された。 今回、KATHERINE試験の長期フォローアップの結果がNEJM誌に発表された(Geyer CE Jr, et al. N Engl J Med. 2025;392:249-257.)。追跡期間中央値8.4年で、主要評価項目である無浸潤疾患生存(iDFS)はハザード比(HR)0.54(95%CI:0.44~0.66)とT-DM1群で有意に良好であった。イベントはT-DM1群で19.7%、トラスツズマブ群で32.2%に発生し、7年iDFS率はT-DM1群80.8%、トラスツズマブ群67.1%であった。副次評価項目の全生存(OS)のHRは0.66(95%CI:0.51~0.87、p=0.003)とT-DM1群で統計学的有意に良好であった。 Non-pCRに対する術後T-DM1はすでに実臨床で用いられている確立した標準治療である。実臨床の根拠を強くする結果であるといえよう。KATHERINE試験の解釈で注意が必要なのは、本試験ではペルツズマブが使用されていないことである。HER2陽性早期乳がんにおけるペルツズマブは、pCRの改善を目的とした術前化学療法では標準的に併用され、また術後治療における標準治療ともなっている(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2017;377:122-131.)。術後抗HER2療法を実施する場合は、トラスツズマブ単剤が選択されるケースは多くはない。転移乳がんにおけるT-DM1療法の効果は、ペルツズマブ治療歴があると弱まることが知られている(Dzimitrowicz H, et al. J Clin Oncol. 2016;34:3511-3517.、Noda-Narita S, et al. Breast Cancer. 2019;26:492-498.)。このことが術後治療におけるT-DM1の価値に直接影響するわけではないが、エビデンスの解釈の際には意識する必要がある。

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化学療法誘発性末梢神経障害患者の10人に4人が慢性的な痛みを経験

 化学療法誘発性の末梢神経障害(chemotherapy induced peripheral neuropathy;CIPN)の診断を受けたがん患者の10人に4人が慢性的な痛みを抱えていることが、新たなシステマティックレビューとメタアナリシスにより明らかになった。米メイヨー・クリニックの麻酔科医であるRyan D’Souza氏らによるこの研究は、「Regional Anesthesia & Pain Medicine」に1月29日掲載された。D’Souza氏は、「われわれの研究結果は、慢性的な痛みを伴うCIPNは、末梢神経障害と診断された人の40%以上に影響を及ぼす、世界的に見ても重大な健康問題であることを明示している」と述べている。 化学療法薬はがん細胞を殺すが、同時に健康な細胞や組織、神経系にもダメージを与え、特に末梢神経への影響が大きい。CIPNの症状には、バランスや協調運動の喪失などの運動障害と、感覚の喪失、しびれ、うずき、「針で刺されたような感覚」、皮膚の灼熱感などの感覚障害がある。CIPNの有病率については、これまでにも複数の研究で報告されているが、どの程度が慢性的な痛みを経験するのかについては明らかになっていない。 この点を明らかにするために、D’Souza氏らは、28カ国でCIPNの診断を受けた計1万962人を対象に実施された77件の研究データを用いて解析を行い、慢性的な(3カ月以上)痛みを伴うCIPNの統合有病率を推定した。28カ国のうち実施研究数が最も多かったのは、米国での13件、次いで日本での10件だった。また、研究の多く(45.45%)は前向き観察研究であり、その他は、後ろ向き観察研究(37.66%)、ランダム化比較試験(16.88%)などであった。対象者のがん種としては、大腸がん(25件の研究、32.47%)、乳がん(17件の研究、22.08%)が多かった。 解析の結果、対象者における慢性的な痛みを伴うCIPNの統合有病率は41.22%であることが明らかになった。化学療法の種類別に解析を行うと、同有病率が最も高かったのはプラチナ系抗がん薬での40.44%、次いでタキサン系抗がん薬での38.35%であった。がん種別に見ると、肺がん患者を対象にした研究で最も高い有病率(60.26%)、卵巣がん患者(31.40%)とリンパ腫患者(35.98%)を対象にした研究で最も低い有病率が報告されていた。 研究グループは、「今後の研究では、化学療法が神経痛を引き起こす具体的な機序を解明するとともに、命を救うための治療を受けているがん患者をその痛みから守ることができる治療法の開発に焦点を当てるべきだ」と話している。

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胃がんの術後補助化学療法、75歳超の高齢者にも有効/国立国際医療研究センターなど

 StageII/IIIの切除可能胃がん患者では、手術単独では再発リスクが高いため術後補助化学療法が標準治療となっている。しかし、臨床試験では75歳超高齢患者の参加が限られ、75歳超高齢者に対する術後化学療法に関しては、これまで明確なエビデンスが得られていなかった。 国立国際医療研究センター・山田 康秀氏らの研究グループは、日本胃癌学会が管理する全国胃癌登録のデータを用いて75歳超の高齢患者を含めた胃がん患者の特徴を解析、生存期間に影響を与える因子を特定し、術後補助化学療法の効果を検証した。本試験の結果はGlobal Health and Medicine誌オンライン版2025年1月25日号に掲載された。 主な結果は以下のとおり。・2011~13年に国内421施設で胃がん治療を受けた3万4,931例から、StageII/IIIの1万5,848例、腹腔細胞診が陽性でほかの遠隔転移がないCY1(StageIV)の2,052例を解析対象とした。年齢、性別、全身状態(ECOG-PS)などを用いて傾向スコアマッチングを行った。・術後補助化学療法はStageII/IIIでは全体の53.5%、75歳超の28.5%が受けており、使用された薬剤はS-1単剤が最も多かった。・術後補助化学療法群は手術単独群に比べ、全生存期間(OS)が有意に延長した(StageIIのハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.54~0.69、StageIIIのHR:0.54、95%CI:0.50~0.59)。・StageIIの患者の5年OS率は、術後補助化学療法群83.1%に対し、手術単独群は75.5%だった。75歳超の高齢者に限ると、この差は74.4%対60.5%となった。 研究者らは以下のようにまとめている。・再発予防を目的としたStageII/III胃がん患者に対する切除後の補助化学療法は、多くの臨床試験で対象となる75歳以下の患者同様、75歳超の患者にも有効であった。・術後化学療法は全年齢を通じて有効であったが、75歳超の患者は75歳以下の患者に比べて5年OS率が10ポイント程度低く、予後不良であった。・75歳以下、女性、手術前に何も症状がない、術前腎機能が正常、胃全摘術を受けていない、腹腔鏡手術を受けた患者の生存期間が長かった。・術後化学療法は、残胃がん、腹腔内以外に遠隔転移がないCY1の患者に有効であった。「胃癌治療ガイドライン(2021年版)」では、胃切除術後の予後が不良であるCY1胃がんに対してS-1単剤療法が推奨されているが、これまでエビデンスレベルは高くなかった。本研究の結果、CY1胃がんに対する術後化学療法の有用性が示された。・胃全摘術は術後合併症および術後補助化学療法コンプライアンス(服薬継続)低下のハイリスク因子の1つであった。今後は、幽門保存胃切除術、噴門側胃切除術に加え、胃分節切除術または胃局所切除術の検討や、その有用性を臨床試験で評価することが望まれる。

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早期TN乳がんへの術後アテゾリズマブ、iDFSを改善せず(ALEXANDRA/IMpassion030)/JAMA

 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、術後化学療法へのアテゾリズマブ上乗せは、ベネフィットが示されなかった。ベルギー・Institut Jules BordetのMichail Ignatiadis氏らが無作為化試験「ALEXANDRA/IMpassion030試験」の結果を報告した。TNBC患者は、転移のリスクが高く、若年女性や非ヒスパニック系の黒人女性に多いことで知られている。さらにStageII/IIIのTNBC患者は、最適な化学療法を受けても約3分の1が早期診断後2~3年に転移再発を経験し、平均余命は12~18ヵ月である。そのため、化学療法の革新にもかかわらずアンメットニーズが存在する。直近では、TNBC患者の早期治療戦略の1つは術後化学療法であったが、免疫療法を上乗せすることのベネフィットについては明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2025年1月30日号掲載の報告。31ヵ国330施設超で行われた第III相国際非盲検無作為化試験、iDFSを評価 ALEXANDRA/IMpassion030試験は、31ヵ国330施設超で行われた第III相の国際非盲検無作為化試験であり、初回治療として手術を受けた18歳以上のStageII/IIIのTNBC患者を対象とした。被験者登録は2018年8月2日~2022年11月11日、最終フォローアップは2023年8月18日であった。 被験者は1対1の割合で、標準化学療法(20週間)に加えアテゾリズマブの投与(最長1年間)を受ける群(アテゾリズマブ群、1,101例)または標準化学療法のみを受ける群(化学療法群、1,098例)に無作為化された。標準化学療法は、パクリタキセル80mg/m2を週1回12サイクルに続き、アントラサイクリン(エピルビシン90mg/m2またはドキソルビシン60mg/m2)+シクロホスファミド600mg/m2を2週間ごと4サイクル投与した。アテゾリズマブは、840mgを2週ごと10サイクル、その後1,200mgを3週間ごととし、最長で計1年間投与した。 主要評価項目は、無浸潤疾患生存期間(iDFS)で、無作為化から同側または対側乳房の浸潤乳がん発生、遠隔転移、またはあらゆる原因による死亡までの期間と定義した。 予定被験者登録数は2,300例であったが、独立データモニタリング委員会の勧告に基づき2,199例で登録は中止となった。全患者が、計画された早期中間解析および無益性解析の後にアテゾリズマブの投与を中止された。試験は、前倒しされた最終解析まで継続した。iDFSイベント発生、アテゾリズマブ群12.8%、化学療法群11.4% 登録被験者の年齢中央値は53歳で、自己申告に基づく人種/民族は、ほとんどがアジア人または白人であり、ラテン系またはヒスパニックはわずかであった。 iDFSイベントが発生したのは、アテゾリズマブ群141例(12.8%)、化学療法群125例(11.4%)であり(追跡期間中央値32ヵ月)、最終的なiDFSの層別化ハザード比は1.11であった(95%信頼区間:0.87~1.42、p=0.38)。 化学療法群と比較して、アテゾリズマブ群ではGrade3または4の治療関連有害事象が多かったが(54% vs.44%)、死亡に至った有害事象(0.8% vs.0.6%)および試験中止に至った有害事象の発現は同程度であった。化学療法曝露は両群で同等であった。

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MSI-H/dMMR進行大腸がん、ニボルマブ+イピリムマブvs.ニボルマブ単剤の中間解析/Lancet

 高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の転移を有する大腸がん患者において、ニボルマブ単剤療法と比較してニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、治療ラインを問わず無増悪生存期間が有意に優れ、安全性プロファイルは管理可能で新たな安全性シグナルの発現はないことが、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らが実施した「CheckMate 8HW試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年2月1日号で報告された。23ヵ国の無作為化第III相試験 CheckMate 8HW試験は、(1)1次治療におけるニボルマブ+イピリムマブ併用療法と化学療法との比較、および(2)すべての治療ラインにおけるニボルマブ+イピリムマブ併用療法とニボルマブ単剤療法との比較を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2019年8月~2023年4月に日本を含む23ヵ国128病院で患者を登録した(Bristol Myers SquibbとOno Pharmaceuticalの助成を受けた)。(1)の結果はすでに発表済みで、本論では(2)の中間解析の結果が報告されている。 年齢18歳以上、切除不能または転移を有する大腸がんと診断され、各施設の検査でMSI-HまたはdMMR(あるいはこれら両方)の患者を対象とした。これらの患者を、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法、ニボルマブ単剤療法、化学療法(±標的治療)を受ける群に、2対2対1の割合で無作為に割り付けた。 (2)の主要評価項目は、中央判定でもMSI-H/dMMRであった患者におけるすべての治療ラインの無増悪生存とし、盲検下独立中央判定によって評価した。奏効率も良好 (2)の2つの治療群に707例を登録し、ニボルマブ+イピリムマブ群に354例(年齢中央値62歳[四分位範囲[IQR]:52~70]、女性192例[54%]、未治療例202例[57%])、ニボルマブ群に353例(63歳[51~70]、163例[46%]、201例[57%])を割り付けた。それぞれ296例(84%)および286例(81%)が、中央判定でもMSI-H/dMMRであり、主要評価項目の評価の対象となった。データカットオフ日(2024年8月28日)の時点における追跡期間中央値は47.0ヵ月(IQR:38.4~53.2)だった。 中央判定でMSI-H/dMMRであった集団では、ニボルマブ群と比較してニボルマブ+イピリムマブ群は、無増悪生存期間が有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比:0.62、95%信頼区間[CI]:0.48~0.81、p=0.0003)。無増悪生存期間中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群が未到達(95%CI:53.8~推定不能)、ニボルマブ群は39.3ヵ月(22.1~推定不能)であった。また、12ヵ月、24ヵ月、36ヵ月時の推定無増悪生存率は、ニボルマブ+イピリムマブ群がそれぞれ76%、71%、68%、ニボルマブ群は63%、56%、51%だった。 盲検下独立中央判定による奏効率(完全奏効+部分奏効)は、ニボルマブ群が58%であったのに対しニボルマブ+イピリムマブ群は71%と有意に優れた(p=0.0011)。奏効期間中央値は両群とも未到達で、奏効までの期間中央値は両群とも2.8ヵ月だった。Grade3/4の治療関連有害事象は22%で 併用療法の安全性プロファイルは管理可能で、新たな安全性シグナルの発現は認めなかった。全Gradeの治療関連有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ群で352例中285例(81%)、ニボルマブ群で351例中249例(71%)に、Grade3または4の治療関連有害事象はそれぞれ78例(22%)および50例(14%)に発現した。最も頻度の高い治療関連有害事象はそう痒(ニボルマブ+イピリムマブ群26%、ニボルマブ群18%)で、投与中止に至った治療関連有害事象の頻度(14%、6%)も併用群で高かった。 最も頻度の高いGrade3または4の免疫介在性有害事象は、下痢または大腸炎(ニボルマブ+イピリムマブ群3%、ニボルマブ群2%)、下垂体炎(3%、1%)、副腎機能不全(3%、<1%)であった。治療関連死は3例に認め、ニボルマブ+イピリムマブ群で2例(それぞれ心筋炎および肺臓炎による死亡)、ニボルマブ群で1例(肺臓炎)であった。 著者は、「これらの結果は、1次治療において化学療法と比較してニボルマブ+イピリムマブ併用療法で優れた無増悪生存期間を示した結果と併せて、この免疫療法薬の2剤併用療法が転移を有するMSI-H/dMMR大腸がん患者に対する新たな標準治療となる可能性を示唆する」としている。

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日本人HER2+進行乳がんへのペルツズマブ再投与、OS最終解析結果(PRECIOUS)/JCO

 ペルツズマブ治療歴のある、HER2陽性局所進行/転移乳がんに対し、ペルツズマブ再投与(ペルツズマブ+トラスツズマブ+主治医選択による化学療法)はトラスツズマブ+主治医選択による化学療法と比較して治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが、第III相PRECIOUS試験の主要解析結果として報告されている。今回、熊本大学の山本 豊氏らは、同試験の全生存期間(OS)の最終解析結果をJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年1月24日号で報告した。 PRECIOUS試験では、局所進行/転移乳がんに対する1次または2次治療としてペルツズマブを含む治療歴を有する患者を、ペルツズマブ再投与群(PTC群)とトラスツズマブ+主治医選択による化学療法群(TC群)に1:1の割合で無作為に割り付けた(PTC群110例、TC群109例)。主要評価項目は治験責任医師評価によるPFS、重要な副次評価項目はOS、独立中央評価によるPFSであった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値25.8ヵ月において、PTC群ではTC群と比較してOS中央値を延長した(36.2ヵ月vs.26.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.73、片側95%信頼区間[CI]上限:0.97)。・治験責任医師評価によるPFS中央値のアップデート解析結果についても、PTC群で良好であった(5.5ヵ月vs.4.2ヵ月、HR:0.81、片側95%CI上限:1.02)。・独立中央評価によるPFS中央値については、両群間で差はみられなかった(4.4ヵ月vs. 4.4ヵ月、HR:1.03、片側95%CI上限:1.36)。 著者らは、ペルツズマブ+トラスツズマブによる二重HER2阻害療法が、ペルツズマブを含むレジメンによる治療歴を有するHER2陽性局所進行/転移乳がん患者においてOS改善に寄与する可能性が示唆されたと結論付けている。独立中央評価によるPFS中央値の改善が認められなかったことについては、解析対象集団やPFSイベントの評価方法の違いによる影響を指摘している。

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髄膜播種の症状は難しい【非専門医のための緩和ケアTips】第93回

髄膜播種の症状は難しい緩和ケアではたまに出合う難しい症状があるのですが、そのうちの1つが「髄膜播種」に関連した症状です。脳や脊髄の周りを流れている「脳脊髄液(CSF)」にがん細胞が入り込み、それが髄膜全体に広がってしまうことで起こります。病態の解決は難しいのですが、その難しさを理解し、少しでも患者さんにできることを考えてみましょう。今回の質問訪問診療で診ていたがん患者が頭痛を訴えたため、薬物療法を試してみたものの効果がなく、嘔気も出てきて基幹病院に入院となりました。その後、原疾患の髄膜播種だったとの報告をもらったのですが、疑うことができなかったと反省しています。どうすれば気付けたのでしょうか?がん患者を担当していると、まれに経験するのが髄膜播種です。今回の質問のように診断が難しく、気付かれないケースも多いと感じます。前提として原疾患の進行があり、予後が限られた状態で生じることが多いため、さらに診断を難しくします。ましてや在宅診療であれば、適切なタイミングでの診断はなかなか難しいのが現実でしょう。髄膜播種の症状としては、頭痛と嘔気が代表的です。ただ、ここに神経症状が加わるため、症状が多彩になります。意識障害、認知機能の低下はまだわかりやすいのですが、視覚・聴覚障害という局所的な神経症状があることがさらに診断を難しくします。私自身、担当するがん患者さんが難聴を訴え、調べていくと髄膜播種を併発していた、という経験を何度かしています。ほかにも下肢の感覚異常や尿閉なども髄膜播種の一症状であることがあります。典型症状だけに捉われていると、見逃しやすい病態なのです。髄膜播種の診断には、髄液検査やMRIを用います。ただし、これらは血液検査のように手軽にできるものではないため、検査前確率が高いことが求められます。進行がん患者で新規の神経症状があった際には、まずは髄膜播種を疑うことから始めましょう。髄膜播種の症状緩和はなかなか難しいのですが、一般的なオピオイドなどの疼痛緩和に加え、ステロイドの投与を考慮します。頭痛は頭蓋内圧亢進が症状を悪化させると考えられており、ステロイドによりこれらの改善が見込まれるためです。加えて、化学療法や放射線治療は原疾患への治療効果だけでなく、症状緩和の観点からも有効とされています。ただし、これは予想される予後などを含め、がん治療医の判断によることになるでしょう。私は進行した患者さんを担当することが多く、髄膜播種併発例に侵襲的な治療が適応となることは少ない印象です。最後に、こういった中枢神経に影響が及ぶ状況になると、痙攣が生じる可能性に留意する必要があります。入院していれば、抗けいれん薬をすぐに投与できるでしょうが、在宅であれば備えが必要です。在宅での痙攣の対応については次回にまとめますが、まずはベンゾジアゼピンの注射薬や坐薬を常備することを覚えておきましょう。以上、診断だけでなく、対応も難しい髄膜播種についてお話ししました。多彩で難治の症状に悩まされることも多いですが、丁寧にアセスメントをしながら対応してみてください。今回のTips今回のTips多彩な症状を特徴とする髄膜播種、まずは「疑う」ことが大切。

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とくに注意すべき血液検査のパニック値とは?死亡事例の分析と提言~医療安全調査機構

 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は、血液検査パニック値が関与していた死亡事例の分析を実施し、事故防止のための提言(医療事故の再発防止に向けた提言 第20号)を公表した(2024年12月)1)。パニック値とは「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値」とされ、緊急異常値や緊急報告検査値などとも呼ばれる。今回、死亡に至った過程で血液検査パニック値が関与していた12事例が分析対象とされ、分析を基に5つの提言が示された。 今回の提言では、医療事故調査・支援センターに届けられた医療事故報告(2015年10月~2023年8月)のうち院内調査結果報告書2,432件の中から、死亡に至った過程で血液検査パニック値が関与していた17例を抽出。パニック値は検査項目や閾値が医療機関により異なるため、今回の分析では、日本臨床検査医学会『臨床検査「パニック値」運用に関する提言書(2024年改定版)』2)で示された“パニック値の例”(今回の提言書では資料1として掲載、32の検査項目のパニック値の例が示されている)に該当した9例と、医療機関内で設定されていたパニック値に該当していた事例3例の計12例を対象としている。その他の5例は化学療法前の検査値に関連した2例と、パニック値の項目として取り扱うか議論があるD-dimerに関連する3例で、今回の分析では参考事例とされている。 12例中、カリウム(K)がパニック値として検出された事例は5例あり、4例で致死的な不整脈の出現を認めた。また、プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)がパニック値であった事例は2例あり、脳出血に至っていた。 5つの提言は以下の通り。提言1(パニック値の項目と閾値の設定):医療機関は、診療状況に応じてパニック値の項目(グルコース[Glu]、K、ヘモグロビン[Hb]、血小板[Plt]、PT-INRなど)と閾値を検討し、設定する。※今回の提言書では、日本臨床検査医学会『臨床検査「パニック値」運用に関する提言書(2024年改定版)』2)からパニック値の例を示しており、上記とくに優先して設定することが望ましいとした5項目については、以下の数値が例示されている。Glu:低値50mg/dL、高値350mg/dL(外来)・500mg/dL(入院)K:低値1.5mmol/L、高値7.0mmol/LHb:低値5g/dL、高値20g/dLPlt:低値3万/μL、高値100万/μLINR:高値2.0(ワルファリン治療時は4.0)提言2(パニック値の報告):パニック値は、臨床検査技師から検査をオーダーした医師へ直接報告することを原則とする。また、臨床検査部門は報告漏れを防ぐため報告したことの履歴を残す。提言3(パニック値への対応):パニック値を報告された医師は、速やかにパニック値への対応を行い、記録する。また、医師がパニック値へ対応したことを組織として確認する方策を検討することが望まれる。提言4(パニック値の表示):パニック値の見落としを防ぐため、臨床検査情報システム・電子カルテ・検査結果報告書において、一目で「パニック値」であることがわかる表示を検討する。提言5(パニック値に関する院内の体制整備):パニック値に関する院内の運用を検討する担当者や担当部署の役割を明確にし、定期的に運用ルールを評価する体制を整備する。さらに、決定した運用ルールを院内で周知する。 提言書では、各事例の概要やパニック値検出時の対応フローのほか、D-dimerをパニック値項目として扱う際の課題などについてもまとめられている。

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切除可能食道腺がん、FLOTによる周術期化学療法が有効/NEJM

 切除可能な食道腺がん患者の治療において、術前化学放射線療法と比較してフルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン+ドセタキセル(FLOT)による周術期化学療法は、3年の時点での全生存率を有意に改善し、3年無増悪生存率も良好で、術後合併症の発現は同程度であることが、ドイツ・Bielefeld大学のJens Hoeppner氏らが実施した「ESOPEC試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年1月23日号に掲載された。ドイツの医師主導型無為化第III相試験 ESOPEC試験は、切除可能食道がんの治療におけるFLOTによる周術期化学療法の有用性の評価を目的とする医師主導の非盲検無作為化対照比較第III相試験であり、2016年2月~2020年4月にドイツの25の施設で患者を登録した(ドイツ研究振興協会の助成を受けた)。 年齢18歳以上、組織学的に食道の腺がんが確認され、食道の腫瘍または食道胃接合部の原発巣から食道へ進展した腫瘍を有し、原発巣のUICC病期分類がcT1 cN+、cT2-4a cN+、cT2-4a cN0のいずれかで、遠隔転移がなく、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance status(ECOG PS)のスコアが0、1、2点の患者を対象とした。 被験者を、FLOTによる周術期化学療法+手術を受ける群、または術前化学放射線療法+手術を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。FLOT群では、術前に2週を1サイクルとする化学療法(FLOT)を4サイクル施行し、術後に同様の化学療法を4サイクル(退院から4~6週後に開始)行った。術前化学放射線療法群では、カルボプラチン+パクリタキセル(週1回[1、8、15、22、29日目]、静脈内投与)と放射線治療(総線量41.4Gy:23分割、1.8Gy/日)を施行した後に手術を行った。 主要エンドポイントは全生存とした。全生存期間は66ヵ月vs.37ヵ月 438例を登録し、FLOT群に221例(年齢中央値63歳[範囲:37~86]、男性89.1%)、術前化学放射線療法群に217例(63歳[30~80]、89.4%)を割り付けた。FLOT群の193例、術前化学放射線療法群の181例が手術を受けた。全体の追跡期間中央値は55ヵ月だった。 3年の時点での全生存率は、術前化学放射線療法群が50.7%(95%信頼区間[CI]:43.5~57.5)であったのに対し、FLOT群は57.4%(50.1~64.0)と有意に高い値を示した(死亡のハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.53~0.92、p=0.01)。全生存期間中央値は、FLOT群が66ヵ月(36~評価不能)、術前化学放射線療法群は37ヵ月(28~43)だった。 また、3年時の無増悪生存率は、FLOT群が51.6%(95%CI:44.3~58.4)、術前化学放射線療法群は35.0%(28.4~41.7)であった(病勢進行または死亡のHR:0.66、95%CI:0.51~0.85)。術後の病理学的完全奏効は16.7% vs.10.1% 完全切除(R0)は、FLOT群の193例中182例(94.3%)、術前化学放射線療法群の181例中172例(95.0%)で達成した。術後の病理学的完全奏効(ypT0/ypN0:切除された原発巣およびリンパ節に浸潤がんの遺残がない)は、それぞれ192例中32例(16.7%)および179例中18例(10.1%)で得られた。 Grade3以上の有害事象は、FLOT群で207例中120例(58.0%)、術前化学放射線療法群で196例中98例(50.0%)に発現した。重篤な有害事象は、それぞれ207例中98例(47.3%)および196例中82例(41.8%)にみられた。手術を受けた患者における術後の手術部位および手術部位以外の合併症の頻度は両群で同程度であり、術後90日の時点での死亡はそれぞれ6例(3.1%)および10例(5.6%)であった。 著者は、「病理学的完全奏効の解析は、各試験を通じて標準化するのが困難な因子に依存するため、先行試験との比較では慎重に解釈する必要がある」「併存症のためFLOTが施行できない患者やFLOT関連有害事象を呈する患者では、2剤併用化学療法へのde-escalationや術前化学放射線療法への切り換えが望ましいアプローチであるかは、本試験では回答できない問題である」としている。

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BRAF V600E変異mCRC、1次治療のエンコラフェニブ+セツキシマブが有用(BREAKWATER)

 前治療歴のあるBRAF V600E変異型の転移大腸がん(mCRC)に対して、BRAF阻害薬・エンコラフェニブと抗EGFRモノクローナル抗体・セツキシマブの併用療法(EC療法)はBEACON試験の結果に基づき有用性が確認され、本邦でも承認されている。一方、BRAF V600E変異mCRCに対する1次化学療法の有効性は限定的であることが示されており、1次治療としてのEC療法の有用性を検証する、第III相BREAKWATER試験が計画・実施された。 1月23~25日、米国・サンフランシスコで行われた米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025)では、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのScott Kopetz氏が本試験の解析結果を発表し、Nature Medicine誌オンライン版2025年1月25日号に同時掲載された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のBRAF V600E変異mCRC、ECOG 0~1・試験群:EC群:エンコラフェニブ+セツキシマブEC+mFOLFOX6群:エンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6(オキサリプラチン、ロイコボリン、5-FU)・対照群:標準化学療法(SOC)群:CAPOX or FOLFOXIRI or mFOLFOX6±ベバシズマブ・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、安全性など※試験中にプロトコルが変更され、EC+mFOLFOX6群とSOC群を比較する試験デザインとなった。今回はORRの1次解析、OSの暫定的解析が報告され、PFSをはじめとするほかの評価項目は解析中で、後日報告される予定だ。 主な結果は以下のとおり。・2021年11月16日~2023年12月22日にEC+mFOLFOX6群に236例、SOC群243例が割り付けられた。治療期間中央値はEC+mFOLFOX6群で28.1週間、SOC群で20.4週間であり、データカットオフ(2023年12月22日)時点でEC+mFOLFOX6群は137例、SOC群は82例が治療継続中だった。・ORRはEC+mFOLFOX6群60.9%、SOC群40.0%だった(オッズ比:2.44、95%信頼区間[CI]:1.40~4.25、p=0.0008)。奏効期間中央値は13.9ヵ月対11.1ヵ月であった。設定されたすべてのサブグループにおいて同様の結果が認められた。DORが6ヵ月または12ヵ月を超える患者の割合は、EC+mFOLFOX6群ではSOC群の約2倍だった。・OSデータは未成熟であったが、EC+mFOLFOX6群が優位な傾向が見られた。・重篤な有害事象の発現率は、37.7%と34.6%であった。安全性プロファイルは既知のものと同様であった。 研究者らは、「本試験では、BRAF V600E変異を有するmCRC患者を対象に、1次治療としてのEC+mFOLFOX6併用療法がSOC療法と比較して、有意に高い奏効率を示し、その奏効が持続することが示された」とした。なお、2024年12月、米国食品医薬品局(FDA)は、本試験の結果に基づき、エンコラフェニブとセツキシマブの併用療法をBRAF V600E変異を有するmCRCの1次治療として迅速承認している。

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Austrian症候群【1分間で学べる感染症】第20回

画像を拡大するTake home messageAustrian症候群は、肺炎球菌による肺炎、髄膜炎、感染性心内膜炎の3つがそろった症候群。とくに脾臓摘出後の患者を中心に液性免疫低下患者では、脾臓摘出後重症感染症(overwhelming postsplenectomy infection:OPSI)と呼ばれる致死率の高い重症感染症を引き起こすことがある。皆さんは、Austrian症候群という言葉を聞いたことがありますか。Austrian症候群は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を原因菌とする肺炎、髄膜炎、感染性心内膜炎の3つが、同時または短期間に発生することを特徴とする疾患です。疾患名を覚えることは必須ではありませんが、肺炎球菌による感染症はこれまで取り上げた感染症の中でも頻度が高い感染症であり、肺炎球菌は世界的にも重要な菌の1つです。今回は、Austrian症候群を入口として、肺炎球菌感染症について学んでいきます。背景Austrian症候群はRichard Heschlがドイツで最初に提唱したとの記述がありますが、正式には1881年にWilliam Oslerによって「Osler's triad(オスラーの3徴)」として報告されました。そして、1957年にRobert Austrianが詳細な臨床報告を発表したことから、その名を取ってAustrian症候群という疾患名で広く認知されています。リスク因子肺炎球菌は、市中肺炎や細菌性髄膜炎、さらに菌血症の原因菌として最も頻度が高い病原体の1つです。リスク因子を持つ患者では、通常よりも侵襲性感染症に進行する可能性が高くなります。具体的には、アルコール多飲、高齢、脾摘後や脾機能低下、免疫抑制(HIV感染者や化学療法中の患者など)が主なリスク因子として挙げられます。臨床症状近年では、Austrian症候群の「オスラーの3徴」がすべてそろうことはまれですが、3つの中で最も頻度の高い肺炎球菌による肺炎患者において、頭痛、発熱、意識障害、項部硬直など髄膜炎を疑う症状を合併する、心雑音、塞栓症状、持続的菌血症などを伴い感染性心内膜炎を疑う所見を合併する、といった場合には、血液培養のみならず髄液検査、心エコー検査(とくに経食道エコー)など、それぞれの診断のための精査を進めることが求められます。治療法、予防Austrian症候群は致死率が高いため、迅速な治療が求められます。臨床的に髄膜炎を疑った段階では、抗菌薬の髄液移行性とペニシリン耐性肺炎球菌の可能性を考慮し、セフトリアキソンとバンコマイシンの併用療法をただちに開始します。とくに脾摘後患者を中心に液性免疫低下患者では、致死率が高い脾臓摘出後重症感染症を引き起こすことがあります。こうしたリスクのある患者に対しては、肺炎球菌感染症の予防のために、積極的な肺炎球菌ワクチン接種やペニシリンの予防内服が推奨されます。1)AUSTRIAN R. AMA Arch Intern Med. 1957;99:539-544.2)Rakocevic R, et al. Cureus. 2019;11:e4486.3)Rubin LG, et al. N Engl J Med. 2014;371:349-356.

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T-DXd、米国で化学療法未治療のHER2低発現/超低発現の乳がんに承認取得/第一三共

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)が、米国食品医薬品局(FDA)より、1つ以上の内分泌療法を受けた化学療法未治療のホルモン受容体(HR)陽性かつHER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)またはHER2超低発現(膜染色を認めるIHC 0)の転移/再発乳がんに承認されたことを、2025年1月28日、第一三共が発表した。 本適応は2024年10月にFDAより承認申請が受理され、画期的治療薬(Breakthrough Therapy)指定および優先審査のもとで承認された。この承認は、2024年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)で発表された、化学療法未治療のHR陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移/再発乳がん患者を対象とした国際第III相試験(DESTINY-Breast06)の結果に基づくもの。※日本における効能・効果は、以下のとおり(2025年1月現在)。◯化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌◯化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能又は再発乳癌◯がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌◯がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌

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T1cN0M0のHER2+乳がんへの術前vs.術後補助療法、OSに差は?

 T1cN0M0のHER2+乳がん患者において、術前補助療法は術後補助療法と同等の全生存期間(OS)および乳がん特異的生存期間(BCSS)を示したことを、中国・ハルビン医科大学のXuelian Wang氏らが明らかにした。これまで、腫瘍径が小さく、リンパ節転移のないHER2+乳がん患者おける術前補助療法の術後補助療法に対する優位性については議論が続いていた。Cancer誌2025年1月1日号掲載の報告。 研究グループは、米国・Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースから、2010~20年に化学療法と手術を受けたT1cN0M0のHER2+乳がん患者のデータを抽出した。傾向スコアマッチングにより、術前補助療法群と術後補助療法群の背景因子が一致するコホートを作成した。術前補助療法群と術後補助療法群のOSとBCSSを、カプランマイヤー法とCox比例ハザードモデルによって解析した。さらに、ロジスティック回帰モデルを使用して、術前補助療法に対する病理学的完全奏効(pCR)の予測因子を探索した。 主な結果は以下のとおり。●バランスのとれた2,140組が傾向スコアマッチングした。●術前補助療法群と術後補助療法群のOSおよびBCSSは同等であった。●術前補助療法後にpCRを達成した場合、術後補助療法群よりもOSおよびBCSSが有意に良好であった。 ・OSのハザード比(HR):0.52、95%信頼区間(CI):0.35~0.77、p<0.001 ・BCSSのHR:0.60、95%CI:0.37~0.98、p=0.041●白人患者およびHR-が独立したpCR予測因子であることが明らかになった。

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HER2+早期乳がんへの術後T-DM1、iDFS改善を長期維持しOS有意に延長/NEJM

 トラスツズマブを含む術前化学療法後に浸潤がんの残存が認められたHER2陽性(HER2+)早期乳がん患者において、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)はトラスツズマブと比較して、全生存期間(OS)を延長し、無浸潤疾患生存期間(iDFS)の改善が維持されていた。米国・National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project (NSABP) FoundationのCharles E. Geyer Jr氏らが、第III相無作為化非盲検比較試験「KATHERINE試験」のiDFSの最終解析およびOSの2回目の中間解析の結果を報告した。術前化学療法後に浸潤がんが残存するHER2+早期乳がん患者は、再発および死亡のリスクが高い。KATHERINE試験では、iDFSの1回目の中間解析においてT-DM1のトラスツズマブに対する優越性が検証され(非層別ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.39~0.64、p<0.001)、この結果に基づき「HER2+の乳がんにおける術後療法」の適応追加が承認されていた。NEJM誌2025年1月16日号掲載の報告。術前療法で浸潤がん残存HER2+早期乳がん、T-DM1 vs.トラスツズマブを比較 研究グループは、タキサン系化学療法およびトラスツズマブを含む術前薬物療法を受け、手術後、乳房または腋窩リンパ節に浸潤がんの残存が認められたHER2+早期乳がん患者を、T-DM1群またはトラスツズマブ群に1対1の割合で無作為に割り付け、14サイクル投与した。 主要評価項目はiDFSとし、重要な副次評価項目はOSなどであった。iDFSの定義は、同側浸潤性乳がん再発、同側局所の浸潤性乳がんの再発、遠隔再発、対側乳房の浸潤性乳がん、全死因死亡のいずれかが無作為化から最初に認められた日までの期間とされた。 有効性の解析はITT解析とし、iDFSの最終解析およびOSの2回目の中間解析は、iDFSのイベントが384件発生後に行うことと規定された。 ITT集団には各群743例の患者が組み込まれた。中央値8.4年追跡後もiDFSの改善は維持、OSの有意な改善を認める 追跡期間中央値8.4年において、iDFSのイベントはT-DM1群で146例(19.7%)、トラスツズマブ群で239例(32.2%)に報告された。浸潤性疾患または死亡の非層別HRは0.54(95%CI:0.44~0.66)であり、iDFSの改善が維持されていた。 7年iDFS率は、T-DM1群80.8%、トラスツズマブ群67.1%であった(群間差:13.7%ポイント)。 死亡は、T-DM1群89例(12.0%)、トラスツズマブ群126例(17.0%)が報告された。死亡のHRは0.66(95%CI:0.51~0.87、p=0.003)で、事前に規定された有意水準(p<0.0263、HR:0.739に相当)を超えており、T-DM1群はトラスツズマブ群より死亡リスクが有意に低いことが認められた。推定7年OS率はT-DM1群89.1%、トラスツズマブ群84.4%であった(群間差4.7%ポイント)。 Grade3以上の有害事象は、T-DM1群で26.1%、トラスツズマブ群で15.7%に報告された。

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