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70歳以上のER+/HER2-高リスク乳がん、術後化学療法追加は有益か/Lancet

 genomic grade index(GGI)高リスクのエストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)の70歳以上乳がん女性患者において、術後内分泌療法への化学療法追加は、生存ベネフィットをもたらさず有害事象の増加と関連していた。フランス・Institut CurieのEtienne Brain氏らGERICO&UCBG/Unicancerが第III相無作為化優越性試験の結果を報告した。70歳以上のER+/HER2-浸潤性乳がん女性において、標準的な術後補助療法は内分泌療法である。術後化学療法については、高齢乳がん患者に関するエビデンスは少なく、エビデンスの不足は主にER+患者に関係していることから、研究グループは進展するゲノムシグネチャーの技術がER+乳がん患者における術後化学療法の選択改善に役立つ可能性があるとして、高い予後識別能のエビデンスレベルを有するGGI検査を活用して被験者を絞り込み、本検討を行った。結果を踏まえて著者は、「試験結果は、高齢乳がん患者群における術後内分泌療法への化学療法追加のベネフィット・リスクバランスについて、重要なデータを提供するものであった」とまとめている。Lancet誌2025年8月2日号掲載の報告。GGI高リスクのER+/HER2-乳がん患者を対象に試験 試験は、フランスおよびベルギーの84医療施設で、70歳以上、ER+/HER2-の原発乳がんまたは局所再発で、完全切除後かつ全身治療前の女性患者を対象に行われた。GGI検査(Ipsogen開発)は中央判定で、パラフィン包埋腫瘍組織を用いてRT-PCR法により8つの遺伝子を調べて行われた。 GGI高リスクであった患者を、タキサンベースまたはアントラサイクリンベースの術後化学療法を3週ごと4サイクル、その後に内分泌療法を受ける群(化学療法群)、または内分泌療法のみを受ける群(化学療法なし群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化では、フレイルの状態(G8スクリーニングツールスコアで14以下vs.14超)、リンパ節転移(転移ありvs.転移なし)、試験施設による層別化も行われた。 主要評価項目は、全生存期間(OS)であった。化学療法あり・なし群のOS、統計学的有意差なし 2012年4月12日~2016年4月14日に1,969例がGGIに関するスクリーニングを受け、高リスクであった1,089例が化学療法群(541例)または化学療法なし群(548例)に無作為化された。年齢中央値は75.1歳(四分位範囲[IQR]:72.5~78.7)、フレイル(G8スコア14以下)が認められた患者は437例(40%)であった。化学療法群では281例(52%)がタキサンベース、148例(27%)がアントラサイクリンベースのレジメンを受けた(111例[21%]は化学療法を受けなかった)。 追跡期間中央値7.8年(95%信頼区間[CI]:7.5~7.8)において、OS率は、化学療法群が4年時点90.5%(95%CI:87.6~92.8)、8年時点72.7%(67.8~77.0)、化学療法なし群は4年時点89.3%(86.2~91.6)、8年時点68.3%(63.3~72.7)であった(層別化log-rank検定のp=0.2100、ハザード比:0.83[95%CI:0.63~1.11])。OSの絶対群間差は統計学的に有意ではなく、4年時点1.3%ポイント(95%CI:-2.4~5.0)、8年時点4.5%ポイント(-2.1~11.1)であった。 安全性の解析結果は、化学療法なし群のほうが好ましいものであった。Grade3以上の有害事象が少なくとも1件発現したのは、化学療法なし群では52/548例(9%)であった(治療に関連しない死亡1例含む)が、化学療法群は183/541例(34%)であった(死亡3例、うち1例は治療に関連)。

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オランザピンの制吐薬としての普及率は?ガイドライン発刊後の状況を聞く

 『制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂第3版』が発刊され、約2年が経過しようとしている。改訂による大きな変更点の一つは、“高度催吐性リスク抗がん薬に対するオランザピン5mgの使用を強く推奨する“ことであったが、今現在での医師や医療者への改訂点の普及率はどの程度だろうか。前回の取材に応じた青儀 健二郎氏(四国がんセンター乳腺外科 臨床研究推進部長)が、日本癌治療学会のWebアンケート調査「初回調査結果報告書」とケアネットがCareNet.com医師会員を対象に行ったアンケート「ガイドライン発刊から6ヵ月が経過した現在の制吐薬の使用状況について」を踏まえ、実臨床での実態や適正使用の普及に対する課題を語った。 なお、日本癌治療学会は『制吐薬適正使用ガイドライン』普及率に関するWebアンケート調査(第2回)』を現在実施しており、医師・看護師・薬剤師の方々からのアンケート回答を募集している(回答期間は2025年8月22日まで)。発刊6ヵ月後にはオランザピン処方の意義浸透か ガイドライン発刊直前に行われた日本癌治療学会による初回調査は、制吐療法の情報均てん化などの検討を考慮するため、論文等で公表されているエビデンスと実診療の乖離(Evidence-Practice Gap:EPG)の程度、職種、診療科、所属施設ごとの結果を解析した。その調査とケアネットが独自で行った調査を比較し、青儀氏は「乳がん治療での制吐薬処方に関し、われわれの初回調査ではFECでの4剤の処方率は16.8%だった。ガイドライン発刊から半年後の(CareNet.com)調査では、90%以上(該当レジメンを使用する全員に処方している:44%、患者背景を考慮して処方している:50%)であることが明らかとなり、オランザピンを推奨する意義が結果となってみられた印象」と話した。全体的にオランザピン処方の際に患者背景を考慮して処方していると回答した割合が多かった理由について、同氏は「糖尿病や耐糖能異常に加え、ふらつきのリスクを有する、睡眠薬を服用中の患者に処方しづいからではないか」とコメントした。患者の吐き気への不安と医師の処方不安、優先順位を間違えてはいけない オランザピンが向精神薬の位置付けで使用される薬剤であることが処方を慎重にさせる要因と考えられるが、実際に処方医が感じる不安は「糖尿病に禁忌」「耐糖能異常」に対してであることが今回の調査から明らかになった。これについて同氏は、「すでに制吐薬としてステロイドを処方している患者はステロイドによる耐糖能異常リスクを有している。また、オランザピンが推奨される以前より化学療法中の耐糖能異常に対するフォロー不足は問題視されていたので、このフォロー体制をしっかり構築したうえで、オランザピン投与を行ってほしい」とコメント。「オランザピンの制吐薬としての有用性の理解が進めばこの問題はクリアできるのではないか」と有害事象の発生を観察、コントロールしながら使用する価値について説明した。ただし、禁忌とされる糖尿病患者への対応については、従来の3剤併用療法を行うことがガイドラインに示されている(CQ1「高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として、3剤併用療法[5-HT3受容体拮抗薬+NK1受容体拮抗薬+デキサメタゾン]へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか?」参照)。 また、実臨床で多く経験する傾眠への具体的な対応策として、「推奨は5mgではあるが、今後、各施設での使用経験や研究などを基に日本人に適切な投与量を決定していきたい。たとえば、当院ではオランザピン5mgを処方する際、調節できるように2.5mg×2錠で処方している。薬剤師と相談し、副作用を回避しつつ制吐に対する効果が得られるのであれば、2.5mgで処方している」と述べた。適切な制吐薬治療の普及に必要なツール 学会側の調査項目の1つである患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome:PRO)の利用状況や頻度については、「PROについてはまだまだ開発途上。臨床研究などでPROを活用して有害事象を拾い上げることについては広がりつつある。さまざまなPROが出てきていることからも、今後の臨床研究に欠かせないツールになっていくことは間違いないだろう。患者の情報が一つひとつアップデートされて入ってくることが重要なポイント」と述べた。その一方で、PROには紙媒体のものとネット環境が必要なものがあるが、後者はセキュリティー問題やコスト面の影響がある。「紙媒体での評価にも十分な有用性が示されている。当院ではICI投与患者の免疫関連副作用(immune-related Adverse Events:irAE)に関する評価ツールを導入しているが、ネット導入のハードルが高いことから紙媒体で実施している」と述べ、「現状、PROが限られた施設や学会でしか利用されていないため、抗がん剤全般での利用を広めていくことが次の課題」と説明し、まずは紙媒体で評価を進めていくことを推奨した。 最後に同氏は「制吐療法については、単に処方薬を増やすことが良いとは考えていない。次回の改訂までに綿密な使い分けができるようなエビデンスが出てくるのではないか」と締めくくった。<日本癌治療学会アンケート概要>調査内容:発刊直前と発刊1年後に同じ項目のアンケートを実施することで、ガイドラインによる診療動向の変化を調査実施期間:2023年10月2~18日調査方法:インターネット対象:日本癌治療学会ほか、各学会(日本臨床腫瘍学会、日本サイコオンコロジー学会、日本がんサポーティブケア学会、日本放射線腫瘍学会、日本医療薬学会、日本がん看護学会)所属の1,276人《CareNet.comアンケート概要》調査内容:ガイドライン発刊から6ヵ月経過時点の制吐薬の使用状況について実施期間:2024年5月23~29日調査方法:インターネット対象:20床以上の施設に所属するケアネット会員医師206人(乳腺外科:50人、血液内科:50人、呼吸器科:52人、消化器科:36人、外科:18人)

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副作用編:発熱(抗がん剤治療中の発熱対応)【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第3回

今回は化学療法中の「発熱」についてです。抗がん剤治療において発熱は切っても切り離せない合併症の1つです。原因や重症度の判断が難しいため、抗がん剤治療中の患者さんが高熱を主訴に紹介元であるかかりつけ医に来院した場合は、多くが治療施設への相談になると思います。今回は、かかりつけ医を受診した際に有用な発熱の鑑別ポイントや、患者さんへの対応にフォーカスしてお話しします。【症例1】72歳、女性主訴発熱病歴局所進行大腸がん(StageIII)に対する術後補助化学療法を実施中。昨日から38.5度の発熱があったため、手持ちの抗菌薬(LVFX)の内服を開始した。解熱傾向であるが、念のためかかりつけ医(クリニック)を受診。診察所見発熱なし、呼吸器症状、腹部症状なし。食事摂取割合は8割程度。内服抗がん剤カペシタビン 3,000mg/日(Day11)【症例2】56歳、男性主訴発熱、空咳病歴進行胃がんに対して緩和的化学療法を実施中。3日前から38.2度の発熱と空咳が発現。手持ちの抗菌薬(LVFX)内服を開始したが、改善しないためかかりつけ医(クリニック)を受診。診察所見体温38.0度、SpO2:93%、乾性咳嗽あり、労作時呼吸苦軽度あり。腹部圧痛なし。食事摂取は問題なし。抗がん剤10日前に免疫チェックポイント阻害薬を含む治療を実施。ステップ1 鑑別と重症度評価は?抗がん剤治療中の発熱の原因は多岐にわたります。抗がん剤治療中であれば、まず頭に浮かぶのは「発熱性好中球減少症(FN:febrile neutropenia)かも?」だと思いますが、他の要因も含めて押さえておきたいポイントを挙げます。(1)発熱の原因が本当に抗がん剤かどうか確認服用中または直近に投与された抗がん剤の種類と投与日を確認。他の原因(主に感染:インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、尿路感染症など)との鑑別。発熱以外の症状やバイタルの変動を確認。画像を拡大するFNは、末梢血の好中球数が500/µL未満、もしくは48時間以内に500/µL未満になると予想される状態で、腋窩温37.5度(口腔内温38度)の発熱を生じた場合と定義されています。FNは基本的には入院での対応が必要ですが、外来治療を考慮する場合には、下記のようなリスク評価が重要です。1)MASCC( Multinational Association for Supportive Care in Cancer)スコアMASCCスコアは、FN患者の重症化リスクを予測するための国際的に認知されたスコアリングシステムであり、低リスク群(21点以上)は外来加療が可能と判断されることがあります。画像を拡大する※該当する項目でスコアを加算し、スコアが高いほど低リスク。21点以上で低リスクとなる。2)CISNE(Clinical Index of Stable Febrile Neutropenia)スコア臨床的に安定している固形腫瘍患者では、CISNEスコアによる評価も推奨されています。画像を拡大する※低リスク群(0点)、中間リスク群(1~2点)、高リスク群(3点以上)。高リスクでは入院治療を考慮する。低リスク群:合併症1.1%、死亡率0%、中間リスク群:合併症6.2%、死亡率0%、高リスク群:合併症36%、死亡率3.1%。ステップ2 対応は?では、冒頭の患者さんの対応を考えてみましょう。【症例1】の場合、すでに抗菌薬を内服開始しており、解熱傾向でした。Vitalも安定しており、胸部X線写真でも異常陰影を認めませんでした。念のためインフルエンザおよび新型コロナウイルス感染症抗原検査を実施しましたが陰性でした。このケースでは抗菌薬の内服継続と解熱薬(アセトアミノフェン)処方、および抗がん剤の内服中止と治療機関への連絡(抗がん剤の再開時期や副作用報告)、経口補水液の摂取を説明して帰宅としました。【症例2】の場合、免疫チェックポイント阻害薬が投与されていて、SpO2:93%と低下しています。インフルエンザおよび新型コロナウイルス感染症抗原検査は陰性。胸部X線検査を実施したところ、両肺野に間質影を認めました。ただちに治療機関への連絡を行い、irAE肺炎の診断で即日入院加療となりました。画像を拡大する抗がん剤治療中の発熱対応フロー抗がん剤治療中の発熱は原因が多岐にわたるため、抗がん剤治療中に発熱で受診した場合は治療機関への受診を促してください。上記のケースはいずれも「低リスク」へ分類されますが、即入院が必要なケースが混在しています。詳細な検査や診察を行った上でのリスク評価が重要です。内服抗がん剤を中止してよいか?診察時に患者さんより「発熱しても抗がん剤を継続したほうがよいか?」と相談を受けた場合、基本的に内服を中止しても問題ありません。当院でも、「38度以上の発熱が発現した場合は、その日はお休みして大丈夫です」と説明しています。抗がん剤の再開については受診翌日に治療機関へ問い合わせるよう、患者さんへ説明いただけますと助かります。<irAEと感染>免疫チェックポイント阻害薬の普及した現代では、irAEはもはや日常的な有害事象となってしまいました。重篤なirAEに対して高用量のステロイド治療を導入することは年間で複数回経験します。その中で、最も注意が必要なのは、ステロイド治療中の感染症は発熱が「マスク」されるということです。採血検査ではCRPもあまり上昇しません。日々の身体診察がいかに重要であるかを痛感します。先日もirAE腎炎を発症した胆道がんの患者さんに対して、入院で高用量のステロイドを導入しました。順調に腎機能も改善し、ステロイド漸減に伴い外来へ切り替えてフォローしていましたが、ある日軽い腹痛で来院されました。発熱もなく、採血検査では炎症反応もさほど上昇していません。しかし、「何かおかしいな…」と思い、しつこく身体診察をすると右季肋部痛をわずかに認めました。胆管ステントを留置していたこともあり、念のためCT検査を実施してみると、以前存在した胆管内ガス(pneumobilia)の消失を認め、胆管ステント閉塞が疑われました。黄疸は来していないものの、ステント交換を依頼してドレナージをしてもらうと胆汁とともに膿汁が排液されました。初歩的なことですが、ステロイドカバー中は発熱もマスクされ、採血検査もアテにならないことが多いです。やっぱり基本は身体診察ですね。1)日本臨床腫瘍学会編. 発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン(改訂第3版). 南江堂;2024.2)Klastersky J, et al. J Clin Oncol. 2000;18:3038-3051. 3)Carmona-Bayonas A, et al. J Clin Oncol. 2015;33:465-471.

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重度irAE後のICI再治療、名大実臨床データが安全性と有効性を示唆

 免疫チェックポイント阻害剤(ICI)はがん治療に革命をもたらしたが、重度の免疫関連有害事象(irAE)を引き起こす可能性がある。今回、irAE発現後にICIによる再治療を行った患者でも、良好な安全性プロファイルと有効性が示されたとする研究結果が報告された。研究は、名古屋大学医学部附属病院化学療法部の水野和幸氏、同大学医学部附属病院消化器内科の伊藤隆徳氏らによるもので、詳細は「The Oncologist」に6月14日掲載された。 抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体を含むこれらのICIは、単剤または併用療法として患者の予後を大きく改善してきた。ICIは抑制性シグナル伝達経路を阻害することで抗腫瘍免疫応答を高める一方、重度のirAEを引き起こす可能性がある。irAEは一般的に内分泌腺、肝臓、消化管、皮膚などに発生する。グレード3以上の重度の非内分泌irAEに対しては、現行のガイドラインに基づき、ICIの一時的または恒久的な中止が推奨される。このため、重度のirAE発症後のICI再治療は、効果と再発リスクのバランスが課題となる。過去の報告ではirAE再発率は約30%とされているが、患者背景や重症度の詳細が不十分だった。既存のメタ解析も、研究間の異質性やイベント報告の不備が課題とされている。こうした背景から、著者らは重度のirAE後のICI再治療の安全性と有効性を明らかにすることを目的に、ICI再治療後のirAE発生と患者の転帰に焦点を当てた後ろ向き解析を実施した。 解析対象には、2014年9月~2023年6月までに名古屋大学病院で悪性腫瘍に対してICIによる治療を受けた患者1,271名が含まれた。PD-1/PD-L1阻害剤および/またはCTLA-4阻害剤を、単独療法または他の薬剤との併用療法として少なくとも1サイクル投与された患者を適格とした。CTCAE(Ver 5.0)に従い、グレード3以上のirAEを「重度」と定義した。連続変数はt検定またはMann-WhitneyのU検定、カテゴリ変数はカイ二乗検定またはFisherの正確確率検定を用いて、それぞれ群間比較を行った。 解析対象1,271人のうち、重度のirAEは222人(17.5%)に発現した。これらのirAEには内分泌障害、肝毒性、皮膚炎などが含まれた。そこから単独の内分泌障害を有する患者60人が除外され、162人のうち46人(28.4%)がICIによる再治療を受けた。再治療後、14例(30.4%)でirAEの再発または新たなグレード2以上のirAEが発現した。初回ICI治療時に肝毒性(グレード3)を発現した1人でグレード4の再発が認められた。 抗腫瘍効果については、ICI再治療を受けた46人の客観的奏効率は28.3%(13人)であり、完全奏効が10.9%(5人)、部分奏効が17.4%(8人)だった。病勢安定は30.4%(14人)、病勢進行は34.8%(16人)に認められた。再治療後のICI投与期間の中央値は218日(95%信頼区間〔CI〕84~399)であり、全生存期間および無増悪生存期間の中央値はそれぞれ665日(95%CI 443~929)、178日(95%CI 70~301)だった。 競合リスクモデルによる再治療1年後の治療中止理由の内訳は、irAEが15.4%(95%CI 6.8〜27.4)、病勢進行が44.4%(95%CI 29.7〜58.1)、投与スケジュール完了が6.6%(95%CI 1.7〜16.3)だった。また、33.4%(95%CI 20.3~47.2)の患者でICI治療が継続された。 本研究について著者らは、「本研究は、名古屋大学病院内の診療科の垣根を越えて実施され、重度のirAE後のICI再治療に関する重要な指針を示した。再治療は、グレード2以上のirAEの再発・新規発現リスクが30.4%ある一方で、客観的奏効率は28.3%と一定の有効性も確認された。本研究の知見は、臨床医がICI再治療の可否をより十分な情報に基づいて判断する一助となり、重度のirAEを経験したがん患者に対する治療機会の拡大につながる可能性がある」と述べている。

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大気汚染物質への曝露は髄膜腫リスクを高める

 大気汚染物質を吸い込む量が多い人は、髄膜腫と呼ばれる脳腫瘍のリスクが高いことが、新たな研究で示された。髄膜腫は、脳や脊髄を覆う組織の層にできる脳腫瘍の中でも発生頻度が高い腫瘍だが、ほとんどは良性である。この研究では、粒子状物質や二酸化窒素など複数の種類の大気汚染物質が髄膜腫のリスクを高める可能性のあることが示された。デンマークがん研究所のUlla Hvidtfeldt氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に7月9日掲載された。Hvidtfeldt氏は、「さまざまなタイプの大気汚染物質が健康に悪影響を与えることが示されてきた。このうち超微小粒子は極めて小さく、血液脳関門を通過できるため、脳組織に直接的な影響を与える可能性がある」と話している。 米クリーブランド・クリニックによると、米国では毎年17万人以上が髄膜腫と診断されている。髄膜腫の症状は、頭痛、めまい、吐き気、視力の変化、難聴、けいれん、記憶障害、筋力低下または麻痺、行動や性格の変化などで、主な治療法は手術や放射線療法、化学療法である。  Hvidtfeldt氏らは今回の研究で、デンマークの成人395万9,619人(平均年齢35歳、女性49.6%)を対象に、21年間にわたって追跡し、大気汚染物質への曝露と中枢神経腫瘍(脳や脊髄の腫瘍)との関連を検討した。追跡期間中に1万6,596人が中枢神経腫瘍を発症しており、そのうち4,645人は髄膜腫だった。大気汚染物質は、直径0.1μm未満の超微小粒子、直径2.5μm以下の微粒子物質(PM2.5)、二酸化窒素、元素状炭素を対象とし、10年間の平均曝露量を住所から推定した。 その結果、髄膜腫の発症率は、大気汚染物質への曝露量が最も少なかった人で0.06%であったのに対し、最も多かった人では0.2%と約3倍に達していたことが明らかになった。対象とした各大気汚染物質への曝露量が四分位範囲当たり増加するごとの髄膜腫発症のハザード比は、二酸化窒素が(8.3μg/m3増加)で1.12、直径0.1μm未満の超微小粒子(5,747個/cm3増加)で1.10、PM2.5(0.4μg/m3増加)で1.21、元素状炭素(4μg/m3増加)で1.03であった。ただし、これらの大気汚染物質とより悪性度の高いタイプの脳腫瘍の間には明確な関連は認められなかった。 Hvidtfeldt氏は、「われわれの研究は、交通やその他の原因による大気汚染物質への長期的な曝露が髄膜腫の発症に関与している可能性があることを示唆している。またこの研究は、大気汚染が心臓や肺だけでなく脳にも影響を及ぼすというエビデンスの蓄積にも寄与するものだ」と付け加えた。 さらにHvidtfeldt氏らは、この研究デザインでは大気汚染物質と髄膜腫に直接的な因果関係があることは証明できず、今回はこれらの間の関連性を示したに過ぎないことも付け加えている。Hvidtfeldt氏は、「この結果を確認するためにさらなる研究が必要だが、もし、大気の清浄化によって脳腫瘍のリスクが下がるのであれば、公衆衛生に大きな変化をもたらす可能性がある」と話している。

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monarchE適格基準を満たす乳がんの予後、サブグループ間でばらつき

 monarchE試験において、高リスクHR+/HER2-早期乳がんに対する術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加のベネフィットが示されているが、高リスク患者のサブグループごとの再発リスクの差異については不明である。そこで、国立がん研究センター中央病院の星野 舞氏らは自施設の症例を対象に、monarchEコホート1の適格基準(リンパ節転移4個以上、リンパ節転移1~3個で腫瘍径5cm超または組織学的グレード3)のサブグループ別に予後を解析したところ、ばらつきがあることが示された。Breast Cancer誌オンライン版2025年7月28日号に掲載。 本研究は、2017年1月~2019年8月に国立がん研究センターで手術を受けたHR+/HER2-乳がん患者989例を後ろ向きに解析した。患者を非適格群(monarchEコホート1適格基準を満たさない)、N1+>5cm群(腫瘍径5cm超かつリンパ節転移1~3個)、N1+G3群(組織学的グレード3かつリンパ節転移1~3個)、≧N2群(リンパ節転移4個以上)の4群に分け、無浸潤疾患生存期間(iDFS)、遠隔無病生存期間、全生存期間を含む生存アウトカムを、Kaplan-MeierモデルおよびCox比例ハザードモデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・5年iDFS率は、非適格群94.7%、N1+>5cm群88.9%、N1+G3群83.3%、≧N2群77.3%であった(p<0.001)。・多変量解析では、予後不良因子としてN1+G3(ハザード比[HR]:3.38、p=0.005)、≧N2(HR:3.39、p<0.001)、術前化学療法(HR:2.71、p=0.003)が同定された。 これらの結果から著者らは、「HR+/HER2-乳がんにおける術後療法のベネフィットを最適化するために、個別のリスク評価が鍵となるだろう」とまとめている。

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HR+/HER2-進行再発乳がん、CDK4/6i直後のS-1の有用性は?/日本乳癌学会

 HR+/HER2-の進行・再発乳がんに対して、CDK4/6阻害薬による治療直後の経口フッ化ピリミジン系薬剤(以下「経口5-FU」)は有望な選択肢になり得ることを、九州がんセンターの厚井 裕三子氏が第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。 HR+/HER2-の進行・再発乳がんの標準療法は、CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用療法である。乳癌診療ガイドラインにおいて、S-1やカペシタビンなどの経口5-FUは、HR+/HER2-の転移・再発乳がんの1次・2次化学療法として弱く推奨されているが、これらの推奨の根拠となる臨床試験はCDK4/6阻害薬が臨床導入される以前の試験であるため、CDK4/6阻害薬の前治療歴がない患者が対象となっている。そこで研究グループは、HR+/HER2-の進行・再発乳がんに対するCDK4/6阻害薬治療後の経口5-FUの治療効果を調査した。 対象は、2018年1月~2023年12月に九州がんセンターにおいて、CDK4/6阻害薬による治療の直後に経口5-FUを投与されたHR+/HER2-の進行・再発乳がん患者40例であった。患者データをレトロスペクティブに診療録より抽出して解析した。治療成功期間(TTF)はカプランマイヤー法を用いて推定した。StageIV治療開始日または再発確認日からの観察期間中央値は4.8年(範囲:1.8~11.3)であった。 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値は53歳、術後再発が82.5%、de novo StageIVが17.5%。内臓転移ありが87.5%で、転移部位が1ヵ所は17.5%、2ヵ所は35.0%、3ヵ所以上は47.5%。進行・再発に対する内分泌療法が1ラインだったのは15.0%、2ラインは37.5%、3ライン以上は47.5%。経口5-FUの前に投与されたCDK4/6阻害薬はアベマシクリブが97.5%で、CDK4/6阻害薬の治療期間中央値は13.0ヵ月(範囲:2.1~37.9)。投与された経口5-FUは、S-1が95.0%、カペシタビンが5%。7例がS-1継続中。・経口5-FUのTTF中央値は13.3ヵ月(範囲:1.2~28.9、95%信頼区間:7.4~13.9)であった。・完全奏効(CR)が0%、部分奏効(PR)が37.5%、安定(SD)が40.0%、病勢進行(PD)が22.5%であった。・Grade3以上の有害事象は17.5%(7例)に発現した(好中球減少症2例、貧血2例、ALT上昇2例、浮腫1例)。いずれも減量によってマネジメントが可能であり、治療中止に至った症例はなかった。・単変量解析では、経口5-FUの治療効果の持続期間に関する有意な因子は認められなかった。内臓転移のない症例は、内臓転移のある症例に比べて持続期間が長い傾向にあったが、統計学的な有意差は認められなかった(ハザード比:0.44、p=0.089)。 厚井氏は考察として、本研究における経口5-FUのTTF(13.3ヵ月)は他のランダム化比較試験で示されたTTF/無増悪生存期間と類似した結果であったことに言及したうえで、「益と害のバランスを考慮する必要があるが、経口5-FUはCDK4/6阻害薬後の化学療法の選択肢になり得る」とまとめた。

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小細胞肺がんへのタルラタマブ、プラチナ製剤後の2次治療に有効(DeLLPhi-304)/NEJM

 白金製剤ベースの化学療法の施行中または終了後に病勢が進行した小細胞肺がん(SCLC)の2次治療において、化学療法と比較してタルラタマブ(二重特異性T細胞誘導[BiTE]分子製剤)は、全生存期間(OS)が有意に延長し、無増悪生存期間(PFS)も有意に良好で、がん関連呼吸困難や咳嗽が少ないことが、ギリシャ・Henry Dunant Hospital CenterのGiannis Mountzios氏らDeLLphi-304 Investigatorsが実施した「DeLLphi-304試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年7月24日号で報告された。30ヵ国の第III相無作為化試験の中間解析 DeLLphi-304試験は、SCLCの2次治療におけるタルラタマブの有効性と安全性の評価を目的とする第III相非盲検無作為化対照比較試験であり、2023年5月~2024年7月に日本を含む30ヵ国166施設で参加者を登録した(Amgenの助成を受けた)。今回は、事前に規定された中間解析の結果が報告された(データカットオフ日:2025年1月29日)。 年齢18歳以上、白金製剤ベースの化学療法による1次治療中または終了後に病勢が進行したPS0~1のSCLC患者を対象とした。脳転移を有する場合も症状がなく、病態が臨床的に安定していれば組み入れ可能とした。被験者を、タルラタマブまたは化学療法薬(トポテカン[和名:ノギテカン]、lurbinectedin、アムルビシンから選択[日本での選択肢はアムルビシンのみ])の投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目はOSであった。客観的奏効、奏効期間も良好 509例を登録し、タルラタマブ群に254例、化学療法群に255例を割り付けた。化学療法は、185例(73%)でトポテカン、47例(18%)でlurbinectedin、23例(9%)でアムルビシンが投与された。ベースラインの全体の年齢中央値は65歳(範囲:20~86)で、45%が脳転移を、35%が肝転移を有しており、71%が過去にPD-1またはPD-L1阻害薬による治療を受けていた。 ITT集団におけるOS中央値は、化学療法群が8.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.0~10.2)であったのに対し、タルラタマブ群は13.6ヵ月(11.1~未到達)と有意に延長した(死亡の層別化ハザード比[HR]:0.60[95%CI:0.47~0.77]、p<0.001)。6ヵ月OS率は、タルラタマブ群が76%、化学療法群が62%、12ヵ月OS率はそれぞれ53%および37%だった。 また、12ヵ月時のPFSの境界内平均生存期間(restricted mean survival time:RMST)は、化学療法群の4.3ヵ月に比べ、タルラタマブ群は5.3ヵ月であり有意に優れた(p=0.002)。無作為化から3ヵ月の前後のイベント数で重み付けした、病勢進行または死亡の区分加重平均HRは0.71(95%CI:0.59~0.86)であった。6ヵ月PFS率は、タルラタマブ群が31%、化学療法群が23%、12ヵ月PFS率はそれぞれ20%および4%だった。 客観的奏効率は、タルラタマブ群35%(完全奏効3例[1%]、部分奏効86例[34%])、化学療法群20%(同0例、52例[20%])、奏効期間中央値はそれぞれ6.9ヵ月および5.5ヵ月であった。サイトカイン放出症候群、ICANSはほとんどが軽度 患者報告アウトカムのうち、ベースラインから19週までに化学療法群に比べタルラタマブ群で有意な改善を示したものとして、呼吸困難(症状スコアの変化量の群間差:-9.14点[95%CI:-12.64~-5.64]、p<0.001)と、咳嗽(咳スコア低下のオッズ比:2.04[95%CI:1.17~3.55]、p=0.01、咳スコア低下のリスク比:1.74[95%CI:0.99~2.49])を認めた。 Grade3以上の有害事象(54%vs.80%)、投与中止に至った有害事象(5%vs.12%)は、いずれもタルラタマブ群のほうが低頻度であった。治療関連のGrade3以上の有害事象(27%vs.62%)、投与中止に至った治療関連の有害事象(3%vs.6%)もタルラタマブ群で少なかった。また、治療関連の重篤な有害事象は、タルラタマブ群の28%、化学療法群の31%に認めた。 タルラタマブ群では、サイトカイン放出症候群を56%に認めたが、多くがGrade1(42%)または2(13%)で、Grade3は1%、Grade4/5は発現しなかった。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)はタルラタマブ群の6%(15例)にみられ、1例(Grade5)を除きGrade1または2であった。 著者は、「この再発例を対象とした研究の結果は、より早期の治療ラインにおいてタルラタマブの評価を行うことの重要性を強調しており、そのような試験(DeLLphi-305、DeLLphi-306、DeLLphi-312)が進行中である」としている。

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群馬大学医学部 腫瘍内科【大学医局紹介~がん診療編】

高張 大亮 氏(教授)櫻井 麗子 氏(助教)山田 真紀子 氏(助教)大崎 洋平 氏(助教)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴群馬大学腫瘍内科では、外来化学療法センター、緩和ケアセンター、がんゲノム外来を一体的に運用し、がんとともに生きる患者さんを包括的に支える体制を整えています。治療に伴う身体的・精神的な負担にも丁寧に対応し、患者さん一人ひとりに最適ながん医療を提供しています。また、日常診療に加えて、企業治験や臨床試験、ゲノム医療にも積極的に取り組み、最先端のがん治療を実践できる環境を備えていることが、私たちの大きな強みです。地域のがん診療における医局の役割当科は群馬県内のがん薬物療法の中核として、院内の各診療科や地域の医療機関と緊密に連携し、がん医療の質の向上に取り組んでいます。さらに、がんゲノム医療連携病院として、がん研有明病院をはじめとする中核拠点病院と協力しながら、北関東全体の高度ながん医療を支える役割も担っています。地域におけるアクセス格差や情報格差の解消にも力を注ぎ、患者さんが適切な医療につながるための支援体制を整えています。医師の育成方針診療・研究・教育のすべてにバランスよく関わることができる環境の中で、腫瘍内科医としての専門性だけでなく、人間性をも高めていける医師の育成を目指しています。技術や知識に加え、患者さんに寄り添う姿勢を大切にすることを重視しています。内科専門医やがん薬物療法専門医の取得はもちろん、大学院進学、基礎研究、がん専門病院への国内外の留学、企業での薬剤開発、医系技官としての医療行政への参画など、多彩なキャリアパスを提案できる点も当科の魅力です。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力臨床試験・治験を行うことにより今後の標準治療を確立するための一助を担うこと、日常診療では他科と連携して最新の治療を行っていくこと、がんゲノム医療連携病院として県内の患者さんへのゲノム治療へ貢献すること、緩和ケアにて疼痛コントロールや気持ちのサポートをすることといった、個々の患者さんにとって最善最適ながん診療を提供していけることが当医局のやりがい・魅力であり、かつ私たちの最大の使命と考えております。医局の雰囲気、魅力それぞれの得意とする専門性から活発な意見交換がされ、また他の診療科や多職種との関わり合いからも、臓器横断的に集学的に、がん診療について多くのことが学べる環境です。医学生/初期研修医へのメッセージ腫瘍内科学の分野は、免疫チェックポイント阻害薬・遺伝子異常に基づいたがん分子標的治療・がんゲノム医療の開発とその臨床導入など大きく進歩してきており、今後もさらに発展していく分野です。その担い手になる皆さんをお待ちしています。まずは見学から! お待ちしています。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力腫瘍内科に設置されている緩和ケアセンターで、緩和ケアの担当医をしております。院内のさまざまな診療科から痛みや嘔気などの体のつらさや気持ちのつらさに対してコンサルテーションをいただきます。「まさか自分ががんになるなんて」とがん診断時の心理的つらさを抱えた状態から、がん治療がスムーズに進んでいくための心と体を整えるサポートを緩和ケア認定看護師さんたちと提供しています。現在、がん治療にはさまざまな選択肢があり、またがん薬物療法にも本当にたくさんの治療薬があり、患者さんに適した治療を提供するには高い専門性が必要となります。そのための腫瘍内科において、治療の副作用を和らげる対応や治療を頑張っていこうとする患者さんのお気持ちを支えるサポートに非常にやりがいを感じています。がん治療を総合的に提供できる当医局は非常に魅力的なところです。医学生/初期研修医へのメッセージ私は現在子供3人を育てつつ、仕事と育児の両立、研究活動やキャリアアップを目指しながら日々取り組んでいます。やりがいを感じ、自己実現していくための選択肢の1つとして当医局にまずは見学に来ませんか? お待ちしております。医学生/初期研修医へのメッセージ私は血液内科を専門として医師の道をスタートして、がん薬物療法専門医を取得、現在に至ります。昨今のがん薬物療法の進歩は目覚ましく、より複雑化・高度化しています。がんゲノム医療も現場に導入され、特定のがん種だけではないがん薬物療法の専門家への需要は今後益々高まっていくと考えます。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力当院では、各診療科とのキャンサーボードに腫瘍内科医師が参加し、複雑な合併症を持つ症例や、新薬の登場時などは腫瘍内科が薬物療法を担当するといった協力体制が整っています。そのため、多様ながん種の多様なレジメンを経験することができます。薬物療法をメインに行っていますが、受け持った患者さんが手術をすることもあれば、放射線療法が適応となる場合もあります、患者さんを通じて、臓器横断的・集学的ながん診療を学ぶことができるのは、当科の特徴です。医局の雰囲気、魅力2024年に設立された新しい診療科です。僕自身も子育てをしながらの毎日を過ごしていますが、子育てに限らず、ライフイベントをサポートしながらのキャリア形成にはとても理解の深い医局だと思っています。ぜひ、一度見学にお越しください!群馬大学大学院医学系研究科 腫瘍内科住所〒371-8511 群馬県前橋市昭和町三丁目39番15号問い合わせ先医会長 大崎洋平(yosaki@gunma-u.ac.jp)医局ホームページ群馬大学大学院医学系研究科 腫瘍内科専門医取得実績のある学会日本内科学会(総合内科専門医)日本臨床腫瘍学会(がん薬物療法専門医)日本がん治療認定医機構(がん治療認定医)臨床遺伝専門医制度委員会(臨床遺伝専門医)研修プログラムの特徴(1)地域に根差した一貫した医療の実践県内の医学科を有する大学は群馬大学のみであり、大学での教育・診療が、地域の医療にダイレクトに結びついているのは群馬県の特徴の1つです。県下から集まる一人ひとりの患者さんの診断から治療、治験や臨床試験に至るまでを一貫して経験することができます。(2)学位取得、研究のサポート本学にはさまざまな学位取得に向けたプランがあり、在学中、初期研修、後期研修と並行した学位取得が目指せます。研究資金の獲得、臨床試験の立案から運営、研究発表まで、当科スタッフがサポートします。現在は、在学中の学生とアピアランスケアに関連した臨床研究、がん患者さんのQOLを上げる商品開発を企業と共同で行っています。(3)多様なキャリア形成、ライフイベントのサポート当科で腫瘍内科医としてのキャリアをスタートした後、現場で働く医師としてのキャリアアップだけでなく、国内国外企業における創薬への挑戦、医系技官として医療行政へと携わる道などさまざまな進路を選択、提示が可能です。またライフイベントに合わせた働き方の調整にも柔軟に対応いたします。

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腋窩リンパ節郭清省略はどこまで進むのか~現状と課題/日本乳癌学会

 乳がん治療においては、近年、術前化学療法(NAC)の高い完全奏効率から手術のde-escalationが期待されるようになり、なかでも腋窩リンパ節郭清(ALND)省略はQOLを改善する。第33回日本乳癌学会学術総会で企画されたパネルディスカッション「腋窩リンパ節郭清省略はどこまで進む?」において、昭和医科大学の林 直輝氏が腋窩リンパ節郭清省略の現状と課題について講演した。最近のトピック、SNB省略とASCOガイドライン ALNDのde-escalationは、リンパ浮腫などの合併症を減らすメリットと、不十分な局所コントロールが予後を悪化させるリスクがあるため、そのバランスが非常に大事である。その対応は、手術先行かNAC実施か、臨床的腋窩リンパ節転移陰性(cN0)か陽性(cN+)か、さらにそれが消失したかどうかによって変わるため、非常に複雑である。 手術先行の場合は、最近、ホルモン受容体(HR)陽性例において、cN0の場合はセンチネルリンパ節生検(SNB)そのものを省略可能であることが示された(SOUND試験、INSEMA試験)。また、SNBを実施する場合、病理学的リンパ節転移陽性(pN+)でも、センチネルリンパ節転移が2個以下の場合はALNDを省略可能であることが示唆されている(ACOSOG Z0011試験)。 SOUND試験およびINSEMA試験に基づいて、ASCOの早期乳がんにおけるSNBに関するガイドラインが2025年4月に改訂され、腫瘍径2cm以下、術前超音波検査でN0、50歳以上、閉経後、グレード1~2、HR陽性、HER2陰性で、乳房温存術後に放射線治療を受ける予定の患者はSNBを省略できるという選択肢ができた。自施設(昭和医科大学)においても、ASCOガイドラインに準じて、腫瘍径2cm以下、50歳以上の閉経女性、グレードの低いHR陽性、放射線治療を伴う部分切除予定の患者に対してSNB省略を開始している。ただし、適応を絞ったうえで、患者とよく相談し実施しているという。ALNDのde-escalationの2つのコンセプト、TASとTAD 次に林氏は、N+症例にNACを実施してALNDを省略するde-escalationの方法としてTailored axillary surgery(TAS)とTargeted axillary dissection(TAD)を解説し、これらによる試験を紹介した。TASはNAC後に最小限の転移リンパ節を摘出して腫瘍量を減らす方法で、TADはNAC後に事前にクリップを留置しておいた転移リンパ節の摘出とSNBを行う方法である。 手術先行の場合、cN+症例に対してALNDとTASの選択肢があり、TASについてはTAXIS試験のほか、JCOGでも現在HR陽性乳がんにおける試験が進行中で、結果が待たれる。 一方、NACによる腫瘍消失はHER2陽性やトリプルネガティブ乳がんで意味があるという。NACでycN0になった場合はTADとSNB単独の選択肢があるが、SNB単独では偽陰性率が高い。TADによる効果を検証したSenTa試験では、3年無浸潤がん生存率がTAD群91.2%、腋窩郭清群82.4%、腋窩再発率がTAD群1.8%、腋窩郭清群1.4%と同様であった。わが国でも、林氏らのN+患者におけるNAC後ALND省略を検討する多施設共同LEISTER試験が進行中である。SNB単独においても、前向き試験のSENATURK OTHER-NAC試験、後ろ向き試験のKROG21-06試験とI-SPY2試験の結果、SNB単独でも予後が良好である結果も出ている。また、前向き試験のSenTa試験でTADをSNBと実施した場合に治療効果が大きいことが報告されている。ALNDのde-escalationにおけるポイントと臨床での課題 林氏は、ALNDのde-escalationで重要なポイントとしてエビデンスとなる試験のデザインを挙げ、前向き試験なのか、無作為化されているか、サンプルサイズ、適応のサブタイプが非常に大事であると述べた。また、ベースラインでのリスクが重要であることから、NAC前のリンパ節のステータスが正確に評価されているか、また、もともとたくさんのリンパ節に転移していた患者を同じように扱っていくのか、という点を挙げた。 最後に林氏は、de-escalationにおける臨床での課題として、長期予後への影響、適切なフォローアップ頻度と方法(どのモダリティで、何ヵ月おきに、いつまでフォローするか)が確立されていないことを挙げ、さらに、保険が適用されないことやTAS/TADの方法の標準化ができていないことを指摘し、「患者さんが何を求めるのか、何をしてあげるべきかをバランスよく考えたうえで、エビデンスをしっかり積み重ねて評価していく必要がある」と述べた。

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リンパ腫Expertsが語る、診断・治療のTips/日本リンパ腫学会

 2025年7月3~5日に第65回日本リンパ腫学会学術集会・総会/第28回日本血液病理研究会が愛知県にて開催された。 7月5日、三好 寛明氏(久留米大学医学部 病理学講座)、丸山 大氏(がん研究会有明病院 血液腫瘍科)を座長に行われた教育委員会企画セミナーでは、「Expertsに聞く!リンパ腫診断と治療のTips」と題して、低悪性度B細胞リンパ腫(LGBL)の鑑別診断を高田 尚良氏(富山大学学術研究部 医学系病態・病理学講座)、T濾胞ヘルパー細胞(TFH)リンパ腫の診断と変遷について佐藤 啓氏(名古屋大学医学部附属病院 病理部)、悩ましいシチュエーションにおけるFL治療の考え方を宮崎 香奈氏(三重大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)、二重特異性抗体療法の合理的な副作用マネジメントについては蒔田 真一氏(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)から講演が行われた。CD5陽性/CD23陽性だからといってCLL/SLLとは限らない LGBLは、臨床的には緩やかに進行するB細胞由来のリンパ腫であり、病理組織学的には小〜中型のリンパ腫細胞で構成され低増殖能を呈する腫瘍で定義される。このLGBLは、主に慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、脾臓原発悪性リンパ腫/白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)が含まれる。高田氏は、いくつかの症例について病理所見を提示しながらLGBL鑑別のコツを紹介した。まず、免疫組織化学のパネルとしてCD10、BCL6、cyclinD1、LEF1までは初回時の染色で行い、必要に応じてIRTA1、MNDA、SOX11などを追加することを推奨した。CD5陽性の場合には、CLL/SLLやMZL(稀にFL)も念頭に置き鑑別診断を行うと良い。また、CLL/SLLの診断では、CD5陽性およびCD23陽性であれば必ずしも診断できるわけではなく、鑑別診断ではLEF1、IRTA1、MNDAなどが必要になることがあり、場合によってはIGH::BCL2の転座の確認が必要となる。さらに、LGBL, NOSは、LGBL全体の5%程度であるが、治療選択肢を考慮し、できるだけ亜型分類を行うことが重要であると述べた。nTFHL診断時に病理医が着目する所見は Nodal TFHリンパ腫(nTFHL)はWHO分類第5版において、nTFHL, angioimmunoblastic type(nTFHL-AI)、nTFHL, follicular type、nTFHL-NOSへ名称変更が行われた成熟T細胞リンパ腫の1つである。これら3型に共通する特徴として、臨床像が類似しており、60代以降に多く、全身リンパ節腫脹、肝脾腫、B症状、胸腹水がみられ、自己免疫疾患様の症状および検査所見を呈し、一般的に予後不良であるなどが挙げられる。免疫染色においては、PD-1、ICOS、CXCL13、BCL6、CD10などのTFHマーカーのうち2〜3個以上が陽性で、濾胞樹状細胞の増生が特徴となる。TFHマーカーの免疫染色で覚えておきたいポイントとして、PD-1、ICOSは「感度は高いが、特異度が低い」、CXCL13、CD10、BCL6は「特異度は高いが、感度が低い」点を挙げている。また、70〜95%の症例で非腫瘍性B細胞にEBER陽性を示すことも重要なポイントである。近年、次世代シークエンサーを用いた解析でも、3型において類似した遺伝子プロファイルが報告されており、ひとくくりにすることが支持される裏付けともなっている。最後に、とくに鑑別の難しいHodgkin/Reed-Sternberg(HRS)-like cellsの出現を伴うnTFHLと古典的ホジキンリンパ腫(CHL)との鑑別では、PD-L1、STAT6、pSTAT6の免疫染色が有用であることも紹介した。免疫細胞療法でFL治療は新たなステージに向かうのか 宮崎氏は、FL治療における悩ましいシチュエーションとして、初発低腫瘍量、初発高腫瘍量、POD24の具体的な3症例を取り上げ、解説を行った。低腫瘍量の初発FLに対する治療は、造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版において、未治療経過観察またはリツキシマブ単剤が推奨されているが、どちらを選択すべきなのか。経過観察は1つの選択肢であるとしながらも、リツキシマブ導入のメリットが大きいと述べている。その理由として、リツキシマブ単剤療法後、15年間の間に次の治療を行っていない患者が48%であり、次の治療の効果を減弱させない点、低腫瘍量であっても無イベント生存期間(EFS)が良好である点などを挙げられた。また、高腫瘍量の初発FLに対する維持療法の必要性に関しては、抗CD20抗体併用化学療法により奏効が得られた場合には、抗CD20抗体維持療法は、無増悪生存期間(PFS)の延長が期待できるとして推奨した。最後に、形質転換が高頻度でみられる予後不良なPOD24患者に対する治療について、さまざまなエビデンスを用いて解説した。CAR-T細胞療法、二重特異性抗体などの免疫細胞療法や新たな化学療法が治療選択肢として導入されつつあり、今後、至適治療が明らかになっていくことが望まれると述べた。二重特異性抗体登場で臨床医に求められるCRSマネジメント B細胞リンパ腫の治療では、CAR-T細胞療法の登場により、これまで治療困難であった殺細胞性抗がん剤に抵抗性を示す患者に対して持続的な奏効が得られるようになった。その一方で、CAR-T細胞療法は認定施設の少なさから多くの患者が容易にアクセスできる治療法ではないことが課題の1つとなっていた。より多くの患者がアクセス可能な免疫療法として、いくつかの抗CD3×CD20二重特異性抗体の開発が進められており、現在、4つの薬剤が承認あるいはまもなく承認される状況にある。また、二重特異性抗体の一次治療導入を検討したランダム化比較試験も進行中であり、B細胞リンパ腫における二重特異性抗体の位置付けは、今後ますます重要になると予想される。二重特異性抗体の使用に際しては、サイトカイン放出症候群(CRS)や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)のマネジメントが求められる。蒔田氏は「CRSマネジメントは、原則CAR-T細胞療法と同様である。発症のタイミングには個人差があるため、慎重なモニタリングを実施できる体制を構築し、速やかに支持療法を実施できるように整えておく必要がある。また、予防には比較的多量のステロイドが使用されるため、感染症や発熱を伴わないCRSにも注意する必要がある」とまとめた。

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次世代技術が切り拓くリンパ腫の未来/日本リンパ腫学会

 2025年7月3日~5日に第65回日本リンパ腫学会総会/第28回日本血液病理研究会が愛知県にて開催された。 7月4日、遠西 大輔氏(岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センター)、島田 和之氏(名古屋大学医学部附属病院 血液内科)を座長に行われたシンポジウム1では、国内外の最新の解析手法を用いたリンパ腫研究に携わる第一線の研究者であるClementine Sarkozy氏(Institut Curie, Saint Cloud, France)、杉尾 健志氏(Stanford University, Division of Oncology)、冨田 秀太氏(岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センター)、中川 雅夫氏(北海道大学大学院医学研究院 血液内科)より、次世代技術が切り拓くリンパ腫の未来と題し、最新の研究結果について講演が行われた。形質転換FLにおける悪性B細胞とTMEのco-evolution 濾胞性リンパ腫(FL)の形質転換は、予後不良と関連している。しかし、遺伝的進化や表現型との関係はほとんどわかっておらず、形質転換が変換遺伝子型を有する既存の遺伝子から発生するのか、診断時には存在しない遺伝的および表現型の形質転換によるものなのかは不明である。これらの課題を明らかにするために、単細胞トランスクリプトーム(scWTS)と全ゲノムシーケンシング(scWGS)を用いて、変換中の悪性B細胞のクローナルおよび表現型転換を特徴付け、腫瘍微小環境(TME)内における相互作用の解明が試みられた。 scWGSを用いた系統解析は、形質転換FLペア全体で不均一な進化パターンが認められ、scWTSデータを用いた形質転換FLペアからの悪性B細胞のクラスタリングは、FLとびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)サンプルの転写類似性が、以前の治療歴とは無関係に、サンプリング間の時間と逆相関していることが示唆され、Sarkozy氏は、とくに重要なのは、FLクラスターとDLBCLクラスターが十分に分離されたペアでは、一部のFL細胞が常にDLBCLクラスター(DLBCL様細胞)内にあり、その逆も同様である可能性が示された点であるとしている。 scWGSとscWTSの統合は、クローン腫瘍転換中にアップレギュレートされた悪性細胞経路を識別可能であるが、形質転換プロセスのすべての形質転換FLペアに当てはまるわけではない。実際、悪性B細胞表現型の変化と共進化(co-evolution)する、新たなTMEランドスケープも発見されている。これらの結果は、悪性B細胞とTMEの間の転換とシフトクロストーク中の悪性細胞のゲノムと表現型を組み合わせた新たな包括的な手法の可能性を示唆している。TCLの正確な病勢モニタリングのためのリキッドバイオプシー リキッドバイオプシーは、血液や体液を採取して得た検体を解析して、遺伝子異常の有無や種類などを調べる検査技術である。近年、cfDNA(cell-free DNA)を用いた病勢モニタリングの有用性が進展し、DLBCLに対するNCCNガイドラインにも記載されるようになった。DLBCLに限らず、ctDNA(circulating tumor DNA)を用いた病勢モニタリングの有用性は、多くのがんでも報告されている。杉尾氏らは、遺伝子変異だけでなく、コピー数異常、エピジェネティック変化、免疫レセプター解析を組み合わせたマルチモーダル解析を開発し、単なる病勢モニタリングにとどまらず、治療抵抗性や免疫逃避のメカニズムを包括的に評価する試みを進めている。本発表では、主にT細胞リンパ腫(TCL)におけるcfDNA/cfRNA解析の結果について報告した。 TCLに対するcfDAN解析用パネルを開発し、さまざまな解析手法を用いて530検体の解析を行った。その結果、TCL患者において、腫瘍組織のみの解析では腫瘍性TCRクロノタイプを同定できなかった症例の約30%において、cfDNA解析による同定が可能であった。また、治療終了時に血漿cfDNAから遺伝子変異や腫瘍性クロノタイプが検出されなかった症例では1年以上無再発生存率が100%であった。PET CR達成患者においても、ctDNAで予後の層別化が可能であった。さらに、ベースライン時のctDNA量も予後と関連しており、とくに未分化大細胞リンパ腫(ALCL)以外のTCLサブタイプでは化学療法後の予後との有意な関連が認められた。杉尾氏は「新たな病勢評価の手法は、とくにgermlineサンプルやtumorサンプルが利用できないまたはパネル検査においてマーカー遺伝子を特定できない場合、病勢をより正確に評価するための補助的役割を果たすと考えられる」と結論付けている。革新的な進展を遂げるデジタル空間プロファイリング解析技術 がんやリンパ腫などの疾患研究において、GeoMxやVisiumなどのデジタル空間プロファイリング(DSP)解析技術が革新的な進展を遂げている。この技術は、従来の網羅的な遺伝子発現プロファイリング(RNA-seq)解析、免疫組織化学染色解析、単一細胞RNAシーケンスでは困難であった。組織内の位置情報を保持したまま網羅的な遺伝子プロファイルを取得できる点において、従来の解析手法とは一線を画している。 岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センターでは、いち早く空間解析プラットフォームGeoMxを導入し、さまざまな疾患やがん種の解析を通して、データ取得からデータ解析までの環境の整備、構築を進めてきた。冨田氏らはGeoMxのメリットとして「任意の場所からトランスクリプトームの情報が取得できる点」「形態学的マーカーで染色できる点」などを挙げている。Yixing Dong氏らの報告によると、いずれのDSPでも高品質な再現性の高いデータが得られているとしながらも、腫瘍の不均一性と潜在的な薬物ターゲットの発見においてGeoMxよりもVisiumおよびChromiumがより優れていることが示唆されており、GeoMxではより専門的な作業が必要となる可能性があるとしている。これら各手法の長所、短所などがより明らかとなることで、精度の高い治療の推進に役立つことが期待される。解明が進むTCLにおける治療標的分子 複数の新規治療薬が導入されているにもかかわらず、TCLは依然として予後不良であり、その分子病態のさらなる理解と新規治療標的の探索は課題である。一方、近年のゲノム編集技術の進展により、疾患特異的な分子メカニズムや治療応答性の基盤解明が飛躍的に進んでいる。 これまで北海道大学では、genome-wide CRISPR library screeningを活用し、TCLにおける治療標的分子の解明に取り組んできた。その結果、最も予後不良なTCLである成人T細胞白血病/リンパ腫(ALTT)におけるPD-L1発現メカニズムを解明し、CRISPRスクリーニングによりPD-L1の発現が特定の分子ネットワークにより制御されていることを報告した。 さらに、CD30陽性TCLにおける抗CD30モノクローナル抗体の感受性メカニズムを解明し、CRISPRスクリーニングによる感受性に寄与する遺伝子として有糸分裂チェックポイント複合体(MCC)の阻害因子であるMAD2L1BPおよびANAPC15を同定した。加えて、これらの遺伝子による感受性調節メカニズムを解明し、MCC-APC/Cを標的とする新規治療戦略の可能性を明らかにした。 中川氏らは「これらの研究成果は、難治性疾患であるTCLにおける未解明の分子メカニズムを明らかにし、臨床応用に向けた新たな方向性を示すものである」とまとめている。

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高リスク早期TN乳がんへの術前・術後ペムブロリズマブ追加、日本のサブグループにおけるOS解析結果(KEYNOTE-522)/日本乳癌学会

 高リスク早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、ペムブロリズマブ+化学療法による術前療法およびペムブロリズマブによる術後療法は、術前化学療法単独と比較して、病理学的完全奏効(pCR)割合および無イベント生存期間(EFS)を統計学的有意に改善し、7回目の中間解析報告(データカットオフ:2024年3月22日)において全生存期間(OS)についてもベネフィットが示されたことが報告されている(5年OS率:86.6%vs.81.7%、p=0.002)。今回、7回目の中間解析の日本におけるサブグループ解析結果を、がん研究会有明病院の高野 利実氏が第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。・対象:T1c、N1~2またはT2~4、N0~2で、治療歴のないECOG PS 0/1の高リスク早期TNBC患者(18歳以上)・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、週1回)+カルボプラチン(AUC 1.5、週1回またはAUC 5、3週ごと)を4サイクル投与後、ペムブロリズマブ+シクロホスファミド(600mg/m2)+ドキソルビシン(60mg/m2)またはエピルビシン(90mg/m2)を3週ごとに4サイクル投与し、術後療法としてペムブロリズマブを3週ごとに最長9サイクル投与(ペムブロリズマブ群)・対照群:術前に化学療法+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS[副次評価項目]OS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・日本で登録されたのは76例で、ペムブロリズマブ群に45例、プラセボ群に31例が割り付けられた。・ベースラインの患者特性は、全体集団と比較してPD-L1陽性の患者が若干少なく(日本:ペムブロリズマブ群71.1%vs.プラセボ群74.2%/全体集団:83.7%vs.81.3%)、毎週投与のカルボプラチンの使用割合が高かった(日本:80.0%vs.77.4%/全体集団:57.3%vs. 57.2%)。また日本では、T3/T4の症例(24.4%vs.16.1%)およびリンパ節転移陽性の症例(53.3%vs.41.9%)がペムブロリズマブ群で多い傾向がみられた。・5年EFS率は、ペムブロリズマブ群84.4%vs.プラセボ群73.2%、ハザード比(HR):0.54、95%信頼区間(CI):0.20~1.50であった(全体集団では81.2%vs.72.2%、HR:0.65、95%CI:0.51~0.83)。・5年OS率は、ペムブロリズマブ群88.9%vs.プラセボ群86.5%、HR:0.82、95%CI:0.22~3.04であった(全体集団では86.6%vs.81.7%、HR:0.66、95%CI:0.50~0.87)。・5年EFS率について、pCRが得られた症例ではペムブロリズマブ群95.8%(24例)vs.プラセボ群100%(15例)、pCRが得られなかった症例では71.4%(21例)vs.46.7%(16例)であった。・5年OS率について、pCRが得られた症例ではペムブロリズマブ群95.8%vs.プラセボ群100%、pCRが得られなかった症例では81.0%vs.73.7%であった。・Grade3~4の治療関連有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群82.2%vs.プラセボ群76.7%(全体集団では77.1%vs.73.3%)、うち治療中止に至ったのは24.4%vs.16.7%であった。プラセボ群と比較して多くみられたのは(全Grade)、貧血(75.6%vs.63.3%)、味覚障害(44.4%vs.23.3%)、皮疹(40.0%vs.10.0%)などであった。・Grade3~4の免疫関連有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群20.0%vs.プラセボ群3.3%であった(全体集団では13.0%vs.1.5%)。 高野氏は、日本のサブグループ解析結果について、症例数が少ないためこの結果をもって統計学的な判断はできないが、OSはグローバルの全体集団と同様にペムブロリズマブ群で良好な傾向を示したとし、EFSについても6年以上のフォローアップで引き続き有効な傾向を示しているとまとめた。また安全性についても、既知のプロファイルと同様の結果が確認されたとしている。

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わが国の乳房部分切除術後の長期予後と局所再発のリスク因子~約9千例の後ろ向き研究/日本乳癌学会

 近年の乳がん治療の進歩によって、乳房部分切除術後の局所再発率と生存率が変化していることが推測される。また、乳房部分切除術の手技は国や解剖学的な違いによって異なり、国や人種の違いが局所再発リスクのパターンに影響する可能性がある。今回、聖路加国際病院の喜多 久美子氏らは、日本のリアルワールドデータを用いた多施設共同コホート研究で、近年の日本における乳房部分切除術後の局所再発率と予後、局所再発のリスク因子を検討し、第33回日本乳癌学会学術総会で報告した。本研究より、発症時若年、腫瘍径2cm以上、高Ki-67、脈管侵襲、術後療法や放射線療法を受けていないことが局所再発のリスク因子であり、術後療法はすべてのサブタイプで局所再発リスク低減に寄与することが示唆されたという。 本研究は多施設共同後ろ向きコホート研究で、2014~18年に国内25施設でStage0~III乳がんで乳房部分切除術を受けた患者を登録した。評価項目は、局所再発率、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)であった。  主な結果は以下のとおり。・計8,897例を登録し、平均年齢は57.1歳、99.8%がアジア系であり、59.4%がT1、51.0%がStage I、70.2%がER+/HER2-であった。治療は化学療法が31.1%、放射線療法は86.7%で実施されていた。切除断端陽性は7.3%にみられた。・追跡期間中央値は6.6年で、10年局所再発率は4.6%、DFS率は86.2%、OS率は94.1%であった。・局所再発率はStage I、DCIS、II、IIIの順に良好で、最も良好なサブタイプはER+/HER2-であった。・切除断端陽性と放射線治療なしは局所再発と有意に関連していた。・多変量解析の結果、以下の因子で局所再発リスクとの関連がみられた。 - 発症時40歳未満・腫瘍径2cm以上・高Ki-67:ER+/HER2-で高リスクと関連 - ER+:全集団で低リスクと関連 - 脈管侵襲:トリプルネガティブで高リスクと関連 - 術後療法:すべてのサブタイプで低リスクと関連 - 術前化学療法:ER+/HER2-で高リスクと関連 - 放射線療法:すべてのサブタイプで低リスクと関連 - 内分泌療法(ER+/HER2-のみ):低リスクと関連 喜多氏は「直接比較はできないが、ヒストリカルデータと比較して局所再発率は改善しており、治療や放射線療法の進歩、術前画像診断技術の向上によるのではないか」と考察した。また、ER+/HER2-で術前化学療法を受けた患者で局所再発率が高かったことから、「EBCTCGメタ解析でも同様の傾向が観察されたため、とくにER+/HER2-において術前化学療法後の局所再発を減少させるため、慎重な手術計画が必要かもしれない」と指摘した。最後に喜多氏は、「近年におけるわれわれのデータはわが国の乳房部分切除術の予後が以前より改善していることを示しており、毎年多くの新規全身療法が導入されるなか、最適な手術戦略を検討する際には最新データを反映させる必要がある」と述べ講演を終えた。

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選択的グルココルチコイド受容体拮抗薬はプラチナ抵抗性卵巣がんに有効も、日本ではレジメン整備に課題(解説:前田裕斗氏)

 グルココルチコイド受容体(GR)活性化は、化学療法抵抗性を誘導する。本研究はGR選択的拮抗薬であるrelacorilantとnab-パクリタキセルの治療効果をnab-パクリタキセル単独と比較した初のPhase3試験である。無増悪生存期間(Progression-free survival:PFS)が規定の評価基準を満たした(6.54ヵ月vs.5.52ヵ月)ため、全生存期間の最終解析を待たずに論文化となった。 プラチナ抵抗性の卵巣がんは予後不良で知られており、今回新たな機序で効果的な化学療法が登場したことは臨床的に価値がある。日本ではnab-パクリタキセルは卵巣がん適応外である。薬理学上は当然パクリタキセルとの併用でもいいわけだが、前処置でも用いるステロイド製剤の効果を減弱してしまうため、そう簡単にはいかないだろう。relacorilant自体は経口で化学療法3日前より連日の内服になるため使用は簡便だが、これを活かしたレジメンの整備が日本における課題となる。

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HR+/HER2-乳がんで術後S-1が本当に必要な再発リスク群は?/日本乳癌学会

 経口フッ化ピリミジン系薬剤S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)は、POTENT試験によって、HR+/HER2-乳がんに対する標準的な術後内分泌療法に1年間併用することで再発抑制効果が高まることが示され、2022年11月に適応が拡大した。しかし、POTENT試験の適格基準はStageI~IIIBと幅広く、再発リスク群によっては追加利益が得られないという報告もあるため、S-1の追加投与が本当に必要な患者に関する検討が求められていた。名古屋大学医学部附属病院の豊田 千裕氏らの研究グループは、S-1適応拡大以前の症例によるPOTENT試験に準じた適格基準別の予後を比較してS-1追加投与の意義について検討し、その結果を第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。 まず、名古屋大学医学部附属病院における、HR+/HER2-乳がんの術後補助療法としてのS-1併用の現状を報告した。S-1併用の現状・2022年9月~2024年9月に根治術を施行した原発性乳がんのうち、ER+/HER2-浸潤性乳がんのPOTENT適格(かつmonarchE不適格)で、術後補助療法として実際にS-1を併用したのは54例であった。・年齢中央値は56歳、観察期間中央値は17ヵ月、周術期化学療法施行が22.2%であった。POTENT試験の適格が79.6%、一部適格(2)が11.1%、一部適格(1)が5.6%、その他3.7%であった。・現在もS-1内服中が48.1%、減量なく完遂が24.1%、一段階減量で完遂が16.7%、中止が11.1%であった。中止理由は薬剤性肺炎または放射線肺臓炎疑い、肝機能異常(Grade2)、皮疹(Grade2)、悪心(Grade1/2)であり、Grade3以上の重篤な有害事象は認めなかった。・現時点で再発症例は認めていない。 小括として、S-1併用療法においてGrade3以上の重篤な副作用は認められなかったことや完遂率の高さについて触れたうえで、後半では名古屋大学医学部附属病院におけるS-1適応拡大前のHR+/HER2-乳がん症例(=S-1非併用症例)のPOTENT試験に準じた適格基準別の予後について報告した。S-1適応拡大前の症例における予後比較・2017年11月~2022年11月に根治術を施行したStageI~IIIBのHR+/HER2-浸潤性乳がんのうち、術後補助療法を施行して追跡可能であったのは520例であった。年齢中央値は54歳、観察期間中央値は53ヵ月であった。・POTENT試験の適格基準に準じて分類した結果、適格群42.3%、一部適格(2)群7.1%、一部適格(1)群3.7%、適格なし群46.7%であった。そのうち周術期に経静脈的化学療法を施行した患者はそれぞれ45.5%、24.3%、0%、0.4%であった。・5年全生存(OS)率は、適格群96.8%、一部適格群92.6%、適格なし群98.1%で有意差は認めなかった。一方、5年無病生存(DFS)率はそれぞれ90.2%、98.2%、98.9%と適格群では適格なし群よりも有意に不良であり(p<0.001)、適格群では再発抑制を目的とした術後補助療法の必要性が示唆された。・全体集団をPOTENT試験の追加解析の複合リスク評価に応じてgroup1(低リスク群)、group2(中間リスク群)、group3(高リスク群)の3群に分類したサブグループ解析では、5年OS率はgroup1が97.8%、group2が96.9%、group3が97.9%で有意差は認めなかった。一方、5年DFS率はそれぞれ98.5%、89.2%、83.8%とgroup3では有意に不良であり、高リスク群では再発抑制を目的とした術後補助療法の必要性が示唆された。・POTENT適格患者からmonarchE適格患者(腋窩リンパ節転移数が多いハイリスク患者)を除いたnon-monarchE群の5年OS率は、group1が97.7%、group2が87.8%、group3が78.8%であり、non-monarchE群でも中間および高リスク群で不良であった。・non-monarchE群を複合リスク別に分類し、術後の点滴静注化学療法の有無で比較した場合のDFS率は、group1では化学療法ありのグループのほうが不良な傾向にあったが(p=0.07)、group2および3では差を認めなかった(p=0.349およびp=0.618)。・non-monarchE群で術後の点滴静注化学療法を行わなかった場合は、group1のDFSが良好であった。 これらの結果より、豊田氏は「本研究は観察期間が短く他病死も多かったことから、今後も長期フォローアップが望まれる」としたうえで、「HR+/HER2-乳がんにおける再発高リスク群では、術後補助療法にS-1を併用することで再発率を有意に低下させる可能性がある。患者背景やリスク評価を踏まえた適応選択が、S-1補助療法の最大の効果を引き出すために重要」とまとめた。※POTENT試験の適格基準:以下の条件を満たすStageI~IIIBの症例

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ペムブロリズマブがHER2陽性切除不能胃がん1次治療に承認、14年ぶりのパラダイムシフト

 2025年5月、HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発胃がんの1次治療において免疫チェックポイント阻害薬(ICI)ペムブロリズマブ併用療法が承認された。これまでもHER2陰性胃がんには化学療法+ICI併用療法が使われてきたが、今回の適応拡大によりHER2発現にかかわらず、ペムブロリズマブが1次治療の選択肢として加わることになる。 6月23日にMSDが開催したメディアセミナーでは、愛知県がんセンターの室 圭氏が登壇し、「胃がん一次治療の新たな幕開け~HER2陽性・陰性にかかわらず免疫チェックポイント阻害薬が使用可能に~」と題した講演を行った。室氏 今回新たに承認されたペムブロリズマブ併用レジメンは、CAPOXまたはFP+トラスツズマブ+ペムブロリズマブという「4剤併用療法」だ。承認の根拠となったのは第III相国際共同KEYNOTE-811試験であり、未治療のHER2陽性胃がん患者を対象に、これまでの標準治療であるトラスツズマブ+化学療法(CAPOXまたはFP)にペムブロリズマブを上乗せする群と、プラセボ群を上乗せする群を比較した。 結果として、ペムブロリズマブ群は全生存期間(OS)・無増悪生存期間(PFS)ともに有意な延長が確認された。具体的には、CPS1以上の集団におけるOSのハザード比(HR)は0.79、PFSのHRは0.70と、いずれも統計学的有意差をもってICI併用の有用性が証明された。免疫関連有害事象として甲状腺機能低下、肺臓炎、大腸炎などが報告されたが、おおむねマネジメント可能な範囲だった。 ただし、本試験ではCPS1未満の患者には有効性が認められず、今回の承認もHER2陽性かつCPS1以上の症例に限定された。バイオマーカーとして、HER2およびPD-L1の両方を測定し、いずれも陽性であることが投与条件となる。とくにPD-L1はコンパニオン診断薬として22C3抗体を用いたCPS測定が必須となる点には注意が必要だ。 HER2陽性胃がんにおいては、ToGA試験でトラスツズマブ+化学療法が承認された2011年以降、長年1次治療が変わっていなかった。今回の改訂により、初めてICIが1次治療に組み込まれ、14年ぶりのパラダイムシフトが起きたといえる。4バイオマーカー同時検査が一層重要に ほかのがん種同様、胃がん診療においてもバイオマーカー検査が非常に重要となっている。現在の胃がん治療では、「HER2」「PD-L1」「MSI」「Claudin18.2」の4つのバイオマーカー検査が推奨されている。 日本胃癌学会では2024年4月に「切除不能進行・再発胃癌バイオマーカー検査の手引き」を発出し、1次治療開始前に4つのバイオマーカー検査を同時実施するよう推奨してきた。同時実施が難しい場合には1次治療の決定に直結するHER2とClaudin18.2検査を優先するよう推奨したが、今回のペムブロリズマブ承認を受け「手引き」を改訂し、PD-L1検査とMSI/MMR検査もできる限り一緒に検査すること(4検査同時)を強く推奨するかたちとなった。加えて、施設や患者さんの事情等でそれがかなわない場合もあるため、状況に応じて適宜適切に対応するように、との旨が付記された。 また、PD-L1検査にはニボルマブに対する28-8検査とペムブロリズマブに対する22C3検査の2種類がある。1次治療前のPD-L1検査はペムブロリズマブのコンパニオン診断薬である22C3検査に限定されるが、ペムブロリズマブ非適応の場合には、この検査値を読み替えることでニボルマブ投与も検討できるとした。新規治療で大きな変化、バイオマーカー二重陽性など治療選択の難しさも残る 今回、切除不能胃がんの1次治療は、HER2陽性・陰性にかかわらずICIを含むレジメンが標準の選択肢となった。日本における胃がん罹患率・死亡率はともに減少傾向にあるが、それでも依然として高い水準にあり、とくに高齢者層での罹患が増加している。実臨床では70歳以上の患者が大半を占め、90代も珍しくない印象だ。高齢・多疾患併存の患者に対し、治療選択には柔軟性と個別化が求められる中で、ICI+抗HER2療法の1次治療導入により、HER2陽性例における免疫治療の地位が確立されたことは治療戦略に大きな変化をもたらすと考えられる。 一方、HER2陽性かつCPS1以上という適応は、全体の胃がん患者の約10~15%と限られており、HER2陰性であればICI+化学療法やClaudin18抗体ゾルベツキシマブ+化学療法など、多様なレジメンから選択する必要がある。また、HER2陽性かつClaudin 18.2陽性など、バイオマーカーがオーバーラップする症例における治療選択の難しさもある。こうした依然残る臨床上の課題に対し、今後の議論や一層の治療開発が待たれる。

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診療科別2025年上半期注目論文5選(呼吸器内科編)

Addition of Macrolide Antibiotics for Hospital Treatment of Community-Acquired PneumoniaWei J, et al. J Infect Dis. 2025;231:e713-e722.<リアルワールドでの市中肺炎におけるマクロライド追加の有効性>:βラクタム薬にマクロライドを追加しても死亡率を改善せず英国のリアルワールドデータを用いた研究で、市中肺炎におけるβラクタム薬へのマクロライド系抗菌薬の追加は30日死亡率や入院期間に改善をもたらさないことが示されました。ACCESS試験後、マクロライド系抗菌薬追加を支持する声が高まる中、このデータはルーチンでの使用を支持しません。重症例への追加は国際ガイドラインで支持されていますが、すべての入院症例に併用が必要かについては議論が続くでしょう。Dupilumab for chronic obstructive pulmonary disease with type 2 inflammation: a pooled analysis of two phase 3, randomised, double-blind, placebo-controlled trialsBhatt SP, et al. Lancet Respir Med. 2025;13:234-243.<BOREAS・NOTUS試験統合解析>:デュピルマブは2型炎症を伴うCOPDの増悪を抑制COPD治療におけるIL-4/13受容体阻害薬デュピルマブの効果についての統合解析です。BOREAS試験とNOTUS試験の結果から、血中好酸球数が300/μL以上のCOPD患者に対し、デュピルマブがプラセボよりも有意に増悪を抑制することが示されました。「2型炎症」が関与するCOPDに対する新たな治療選択肢として期待されています。GOLDガイドライン2025でもデュピルマブが推奨に含まれました。Tarlatamab in Small-Cell Lung Cancer after Platinum-Based ChemotherapyMountzios G, et al. N Engl J Med. 2025 Jun 2. [Epub ahead of print]<DeLLphi-304試験>:タルラタマブ、進展型小細胞肺がんの2次治療に新標準を確立小細胞肺がん(SCLC)の治療における朗報です。プラチナ製剤抵抗性のSCLC患者に対する2次治療として、DLL3を標的とするBiTE免疫療法薬タルラタマブが標準化学療法より全生存期間(OS)を有意に延長しました(中央値13.6ヵ月vs.8.3ヵ月)。有効性が高く、Grade3以上の有害事象の頻度も低い(54%vs.80%)ため、今後はSCLC2次治療における標準治療となる可能性があります。Phase 3 Trial of the DPP-1 Inhibitor Brensocatib in BronchiectasisChalmers JD, et al. N Engl J Med. 2025;392:1569-1581.<ASPEN試験>:第III相試験でbrensocatibは気管支拡張の増悪を抑制本研究では、気管支拡張症患者において、brensocatib(ブレンソカチブ、10mgまたは25mg)の1日1回投与は、プラセボよりも肺増悪の年間発生率を低下させ、25mg用量のbrensocatibではプラセボよりもFEV1の低下が少なくなりました。これまで治療薬が存在しなかった気管支拡張症における待望の薬剤となります。世界初の気管支拡張症治療薬として、米国、日本で今後承認が期待されています。Nerandomilast in Patients with Idiopathic Pulmonary FibrosisRicheldi L, et al. N Engl J Med. 2025;392:2193-2202.<FIBRONEER-IPF試験>:nerandomilastが第III相試験でFVCの低下を抑制特発性肺線維症(IPF)に対する新規治療薬nerandomilast(ネランドミラスト)の第III相試験の結果です。本薬は、既存の抗線維化薬(ニンテダニブやピルフェニドン)を服用している患者も対象としており、その併用下でも努力肺活量(FVC)の低下を有意に抑制することが示されました。ただし、nerandomilast 9mg群においては、ピルフェニドン群で効果が落ちており、nerandomilastとの薬物相互作用が原因と考えられました。IPFの治療選択肢が増えることは、患者にとって大きな福音と考えられます。

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診療科別2025年上半期注目論文5選(消化器内科編~消化管領域)

Multicentre randomised controlled trial of a self-assembling haemostatic gel to prevent delayed bleeding following endoscopic mucosal resection (PURPLE Trial)Drews J, et al. Gut. 2025;74:1103-1111.<PURPLE試験>:十二指腸・大腸内視鏡的粘膜切除術後の後出血予防における止血ゲル、後出血率の低下効果は認められず欧州で行われた本ランダム化比較試験では、10mm以上の十二指腸腫瘍または20mm以上の大腸腫瘍に対する十二指腸・大腸内視鏡的粘膜切除術(EMR:Endoscopic mucosal resection)後において、止血ゲル投与群の後出血率は11.7%(14/120例)、非投与群の後出血率は6.3%(7/112例)であり、止血ゲルの後出血予防効果は示されませんでした。止血ゲルは、内視鏡治療後の人工潰瘍出血に対する新規の止血予防でしたが、その有効性が証明されなかった点は、今後の内視鏡治療において重要な知見です。Perioperative Chemotherapy or Preoperative Chemoradiotherapy in Esophageal CancerHoeppner J, et al. N Engl J Med. 2025;392:323-335.<ESOPEC試験>:切除可能食道進行腺がんへの周術期化学療法(FLOT療法)、術前化学放射線療法(CROSS療法)と比較して3年および5年生存率を有意に改善欧州で行われた本ランダム化比較試験では、切除可能食道進行腺がんに対して、FLOT(フルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン+ドセタキセル)周術期化学療法(術前+術後)の3年生存率は57.4%、5年生存率は50.6%であり、CROSS(カルボプラチン+パクリタキセル)術前化学放射線療法の3年生存率50.7%、5年生存率38.7%と比較して優越性が認められました。進行食道腺がんにおける周術期化学療法の生存率向上効果を示した重要な知見です。Stool-Based Testing for Post-Polypectomy Colorectal Cancer Surveillance Safely Reduces Colonoscopies: The MOCCAS StudyCarvalho B, et al. Gastroenterology. 2025;168:121-135.<MOCCAS試験>:大腸ポリープ切除後のサーベイランス、便検査の活用で大腸内視鏡検査の実施回数を削減できる可能性欧州で行われた本試験では、大腸ポリープ切除および結腸直腸がん治療後、家族性大腸がんリスクを有する集団に対して、大腸内視鏡検査施行前に実施したmt-sDNA testと2種類の便潜血検査1回法(FIT:Fecal Immunochemical Test)によるadvanced neoplasiaに対する曲線下面積(AUC)は0.72、0.59~0.61でした。オランダ人口モデルを用いたシミュレーションにより、大腸内視鏡検査後のサーベイランスに便検査を行うことで、大腸内視鏡検査回数を低下させ、コスト効率の向上が期待できることが示唆されました。Effect of an Endoscopy Screening on Upper Gastrointestinal Cancer Mortality: A Community-Based Multicenter Cluster Randomized Clinical TrialXia C, et al. Gastroenterology. 2025;168:725-740.<食道がん・胃がん死亡率への上部消化管内視鏡検診の効果>:高リスク地域で1回の上部消化管内視鏡検診が食道がん・胃がん死亡率を有意に低下本試験は、中国の40~69歳の住民を対象とするクラスターランダム化比較試験です。食道がんおよび胃がんの年齢調整死亡率が全国平均の3倍以上の中国の高リスク地域において、1回の上部消化管内視鏡スクリーニングが食道がんおよび胃がんの死亡リスクを7.5年間で22%低下させることが示されました。本試験は、上部消化管内視鏡検診の有効性を明確に示した初めてのランダム化比較試験です。Vonoprazan as a Long-term Maintenance Treatment for Erosive Esophagitis: VISION, a 5-Year, Randomized, Open-label StudyUemura N, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2025;23:748-757.<VISION研究>:H. pylori未感染の逆流性食道炎患者に対するボノプラザン長期維持療法、5年間の安全性を証明強力な胃酸分泌抑制は、高ガストリン血症を引き起こし、胃がんや胃神経内分泌腫瘍のリスクと懸念されています。本ランダム化比較試験では、Helicobacter pylori(H. pylori)未感染で維持療法が必要な日本の逆流性食道炎患者に対して、ボノプラザン10mg群とランソプラゾール15mg群を比較しました。その結果、5年間の追跡で両群ともに胃がんおよび胃神経内分泌腫瘍の発生は0人でした。本試験は、H. pylori未感染患者におけるボノプラザンの長期安全性を支持する重要なエビデンスを示しました。

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「日本版敗血症診療ガイドライン2024」改訂のポイント、適切な抗菌薬選択の重要性

 2024年12月、日本集中治療医学会と日本救急医学会は合同で『日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG 2024)』1)を公開した。今回の改訂では、前版の2020年版から重要臨床課題(CQ)の数が118個から78個に絞り込まれ、より臨床現場での活用を意識した構成となっている。5月8~10日に開催された第99回日本感染症学会総会・学術講演会/第73回日本化学療法学会総会 合同学会にて、本ガイドライン特別委員会委員長を務めた志馬 伸朗氏(広島大学大学院 救急集中治療医学 教授)が、とくに感染症診療領域で臨床上重要と考えられる変更点および主要なポイントを解説した。 本ガイドラインは、日本語版は約150ページで構成され、前版と比較してページ数が約3分の2に削減され、内容がより集約された。迅速に必要な情報へアクセスできるよう配慮されている。英語版はJournal of Intensive Care誌2025年3月14日号に掲載された2)。作成手法にはGRADEシステムが採用され、エビデンスの確実性に基づいた推奨が提示されている。また、内容の普及と理解促進のため、スマートフォン用アプリケーションも提供されている3)。CQ1-1:敗血症の定義 敗血症の定義は、国際的なコンセンサスであるSepsis-3に基づき、「感染症に対する生体反応が調節不能な状態となり、重篤な臓器障害が引き起こされる状態」とされている。CQ1-2:敗血症の診断と重症度 敗血症は、(1)感染症もしくは感染症の疑いがあり、かつ(2)SOFAスコアの合計2点以上の急上昇をもって診断する。敗血症性ショックは、上記の敗血症の基準に加え、適切な初期輸液療法にもかかわらず平均動脈圧65mmHg以上を維持するために血管収縮薬を必要とし、かつ血清乳酸値が2mmol/L(18mg/dL)を超える状態とされている。敗血症性ショックの致死率が30%を超える重篤な病態であり、志馬氏は「敗血症とは診断名ではなく、感染症患者の救命のための迅速な重症度評価指標であり、何よりも大事なのは、評価して認識するだけでなく、早期の介入に直ちにつながらなければならない」と述べた。CQ1-3:一般病棟、ERで敗血症を早期発見する方法は? ICU以外の一般病棟や救急外来(ER)においては、quick SOFA(qSOFA:意識変容、呼吸数≧22/min、収縮期血圧≦100mmHg)を用いたスクリーニングツールが提唱されている。qSOFAは、敗血症そのものを診断する基準ではなく、2項目以上が該当する場合に敗血症の可能性を考慮し、SOFAスコアを用いた評価につなげる。初期治療バンドル:迅速かつ系統的な介入の指針 敗血症が疑われる場合、直ちに実施すべき一連の検査・治療が「初期治療ケアバンドル」(p.S1171)にまとめられている。主要な構成要素は以下のとおり。これらの介入を、敗血症の認識から数時間以内に完了させることが目標とされている。―――――・微生物検査:血液培養を2セット。感染巣(疑い)からの検体採取。・抗菌薬:適切な経験的抗菌薬投与。・初期蘇生:初期輸液(調整晶質液を推奨)。低血圧を伴う場合は、初期輸液と並行して早期にノルアドレナリン投与。乳酸値と心エコーを繰り返し測定。・感染巣対策:感染巣の探索と、同定後のコントロール。・ショックに対する追加投与薬剤:バソプレシン、ヒドロコルチゾン。―――――抗菌薬治療戦略に関する重要な変更点と推奨事項 敗血症における抗菌薬治療のポイントは、「迅速性と適切性が強く要求される」という点が他の感染症と異なる。本ガイドラインにおける抗菌薬治療の項では、いくつかの重要な変更点と推奨が提示されている。CQ2-2:敗血症に対する経験的抗菌薬は、敗血症認知後1時間以内を目標に投与開始するか? 本ガイドラインでは、「敗血症または敗血症性ショックと認知した後、抗菌薬は可及的早期に開始するが、必ずしも1時間以内という目標は用いないことを弱く推奨する (GRADE 2C)」とされている。志馬氏は、投与の迅速性のみを追求することで不適切な広域抗菌薬の使用が増加するリスクや、1時間以内投与の有効性に関するエビデンスの限界を指摘した。メタ解析からは、1~3時間程度のタイミングでの投与が良好な予後と関連する可能性も示唆された4)。CQ2-3:経験的抗菌薬はどのようにして選択するか? 本ガイドラインでは「疑わしい感染巣ごとに、患者背景、疫学や迅速微生物診断法に基づいて原因微生物を推定し、臓器移行性と耐性菌の可能性も考慮して選択する方法がある(background question:BQに対する情報提示)」とされている。志馬氏は「経験的治療では、かつては広域抗菌薬から始めるという傾向があったが、薬剤耐性(AMR)対策の観点からも、広域抗菌薬を漫然と使用するのではなく、標的への適切な抗菌薬選択を行うことで死亡率が低下する」と適切な抗菌薬投与の重要性を強調した5)。 経験的治療の選択には、「臓器を絞る、微生物疫学を考慮する、耐性菌リスクを考慮する、迅速検査を活用する」ことによって、より適切な治療につなげられるという。敗血症の原因感染臓器は、多い順に、呼吸器31%、腹腔内26%、尿路18%、骨軟部組織13%、心血管3%、その他8%となっている6)。耐性菌リスクとして、直近の抗菌薬暴露、耐性菌保菌、免疫抑制を考慮し、迅速診断ではグラム染色を活用する。ガイドラインのCQ2-1では「経験的抗菌薬を選択するうえで、グラム染色検査を利用することを弱く推奨する(GRADE 2C)」とされている。グラム染色により不要な抗MRSA薬や抗緑膿菌薬の使用を削減できる可能性が示された7)。これらのデータを基に、本ガイドラインでは「原因微生物別の標的治療薬」が一覧表で示されている(p.S1201-S1206)。腎機能低下時、初期の安易な抗菌薬減量を避ける 講演では、敗血症の急性期、とくに初回投与や投与開始初日においては、腎機能(eGFRなど)の数値のみに基づいて安易に抗菌薬を減量すべきではない、という考え方も示された。志馬氏は、抗菌薬(βラクタム系)の用量調整は少なくとも24時間以後でよいと述べ、初期の不適切な減量による治療効果減弱のリスクを指摘した8)。これは、敗血症初期における体液量の変動や腎機能評価の困難性を考慮したものだ(CQ2-6 BQ関連)。βラクタム系薬の持続投与または投与時間の延長 CQ2-7(SR1)では、βラクタム系抗菌薬に関して「持続投与もしくは投与時間の延長を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B)」とされている。これにより、死亡率低下や臨床的治癒率の向上が期待されると解説された9)。一方でCQ2-7(SR2)では、「グリコペプチド系抗菌薬治療において、持続投与または投与時間の延長を行わないことを弱く推奨する」とされている(GRADE 2C)。また、デエスカレーションは弱く推奨されている(GRADE 2C)(CQ2-9)。ただし、志馬氏は臨床でのデエスカレーションの達成率が約4割と低い現状に触れ、そもそも途中でデエスカレーションをしなくていいように、初期に適切な狭域の抗菌薬選択をすることも重要であることを再度強調した。治療期間の短縮化:7日間以内を原則とし、プロカルシトニンも活用 CQ2-12では、「比較的短期間(7日間以内)の抗菌薬治療を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)」としている。RCTによると、敗血症においても多くの場合1週間以内の治療で生命予後は同等であり、耐性菌出現リスクを低減できることが示されている10~12)。 抗菌薬中止の判断材料として「プロカルシトニン(PCT)を指標とした抗菌薬治療の中止を行うことを弱く推奨する(GRADE 2A)」とし(CQ2-11)、PCT値の経時的変化(day5~7に0.5μg/L未満またはピーク値から80%減少した場合など)を指標にすることが提案されている13)。 本講演では、近年の国内および世界の敗血症の定義の変化を反映し、敗血症を診断名としてだけでなく、感染症の重症度を評価するための指標として捉えることの重要性が強調され、主に抗菌薬にフォーカスして解説された。志馬氏は「本ガイドラインのアプリも各施設で活用いただきたい」と述べ講演を終えた。■参考文献・参考サイト1)志馬 伸朗, ほか. 日本版敗血症診療ガイドライン2024. 日本集中治療医学会雑誌. 2024;31:S1165-S1313.2)Shime N, et al. J Intensive Care. 2025;13:15.3)日本集中治療学会. 「日本版敗血症診療ガイドライン2024 アプリ版」公開のお知らせ4)Rothrock SG, et al. Ann Emerg Med. 2020;76:427-441.5)Rhee C, et al. JAMA Netw Open. 2020;3:e202899.6)Umemura Y, et al. Int J Infect Dis. 2021;103:343-351.7)Yoshimura J, et al. JAMA Netw Open. 2022;5:e226136.8)Aldardeer NF, et al. Open Forum Infect Dis. 2024;11:ofae059.9)Dulhunty JM, et al. JAMA. 2024;332:629-637.10)Kubo K, et al. Infect Dis (Lond). 2022;54:213-223.11)Takahashi N, et al. J Intensive Care. 2022;10:49.12)The BALANCE Investigators, et al. N Engl J Med. 2025;392:1065-1078.13)Ito A, et al. Clin Chem Lab Med. 2022;61:407-411.

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