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尋常性乾癬治療剤ドボベットのフォームタイプ新発売/レオファーマ・協和キリン

 レオファーマと協和キリンは、2021年6月18日、尋常性乾癬治療剤ドボベットの新剤形「ドボベットフォーム」を新発売した。 本剤は、既存の軟膏の有効性を担保したうえで、簡易性と利便性の観点から治療の新たな選択肢を提供することを目的に開発が進められ、2015年に米国で初めて承認された。以来、すでに欧州諸国など世界40ヵ国以上で承認されている。 ドボベットは、尋常性乾癬の外用剤としてレオファーマの親会社LEO Pharma A/Sが開発し、本邦では2014年9月にドボベット軟膏が、2018年6月にドボベットゲルが発売されている。今回、軟膏及びゲルに加え、本剤をラインナップに追加することで、両社はより多くの患者QOL向上への貢献を目指す。製品名:ドボベットフォーム 一般名:カルシポトリオール水和物 / ベタメタゾンジプロピオン酸エステル 効能又は効果:尋常性乾癬 用法及び用量:通常1日1回、患部に適量塗布する。 包装:60g (1本) 承認取得日:2021年1月6日 薬価収載日:2021年6月18日 薬価:221.30円/g 販売:協和キリン株式会社 製造販売:レオ ファーマ株式会社

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慢性掻痒でピンッとくるべき疾患は?【Dr.山中の攻める!問診3step】第3回

第3回 慢性掻痒でピンッとくるべき疾患は?―Key Point―皮膚に炎症がある場合は皮膚疾患である可能性が高い82歳男性。2ヵ月前から出現した痒みを訴えて来院されました。薬の副作用を疑い内服薬をすべて中止しましたが、改善がありません。抗ヒスタミン薬を中止すると痒みがひどくなります。一部の皮膚に紅斑を認めますが、皮疹のない部位もひどく痒いようです。手が届かない背中以外の場所には皮膚をかきむしった跡がありました。皮膚生検により菌状息肉腫(皮膚リンパ腫)と診断されました。この連載では、患者の訴える症状が危険性のある疾患を示唆するかどうかを一緒に考えていきます。シャーロックホームズのような鋭い推理ができればカッコいいですよね。◆今回おさえておくべき疾患はコチラ!【慢性掻痒を起こす疾患】(皮膚に炎症あり)アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾皮症、虫刺され、乾癬、疥癬、表在性真菌感染(皮膚に炎症なし)胆汁うっ滞、尿毒症、菌状息肉腫、ホジキン病、甲状腺機能亢進症、真性多血症、HIV感染症、薬剤心因性かゆみ(強迫神経症)、神経原性掻痒(背部錯感覚症、brachioradial pruritus)【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】慢性掻痒の原因を見極める、診断へのアプローチ■鑑別診断その1皮膚に目立った炎症があるアトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾皮症、虫刺され、乾癬、疥癬、表在性真菌感染家族や施設内に同様の掻痒患者がいる場合には疥癬を疑う。皮疹の部位が非常に重要である。陰部、指の間、腋窩、大腿、前腕は疥癬の好発部位である。皮膚に問題がない場合でも、慢性的にかきむしると苔癬化、結節性そう痒、表皮剥脱、色素沈着が起きることがある。■鑑別診断その2正常に近い皮膚なら全身性疾患によるそう痒を考え、以下を考慮する胆汁うっ滞、尿毒症、菌状息肉腫、ホジキン病、甲状腺機能亢進症、真性多血症、HIV感染症、薬剤薬剤が慢性掻痒の原因となることがあるかゆみを起こす薬剤:降圧薬(カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、サイアザイド)、NSAIDs、抗菌薬、抗凝固薬、SSRI、麻薬上記の鑑別疾患時に必要な検査と問診検査:CBC+白血球分画、クレアチニン、肝機能、甲状腺機能、血沈、HIV抗体、胸部レントゲン写真問診:薬剤歴■鑑別診断その3慢性的なひっかき傷がある時は、以下の疾患を想起すること心因性かゆみ(強迫神経症)、神経原性掻痒(背部錯感覚症、brachioradial pruritus)背部錯感覚症は背中(Th2~Th6領域)に、brachioradial pruritusは前腕部に激烈なかゆみを起こす。原因は不明。【STEP3】治療や対策を検討する薬が原因の可能性であれば中止する。以下3点を日常生活の注意事項として指導する。1)軽くてゆったりした服を身に着ける2)高齢者の乾皮症(皮脂欠乏症)は非常に多い。皮膚を傷つけるので、ナイロンタオルを使ってゴシゴシと体を洗うことを止める3)熱い風呂やシャワーは痒みを引き起こすので避ける入浴後は3分以内に皮膚軟化剤(ワセリン、ヒルドイド、ケラチナミン、亜鉛華軟膏)や保湿剤を塗る。皮膚の防御機能を高め、乾皮症やアトピー性皮膚炎に有効である。アトピー性皮膚炎にはステロイド薬と皮膚軟化剤の併用が有効である。副作用(皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡、ステロイド紫斑)に注意する。Wet pajama療法はひどい皮膚のかゆみに有効である。皮膚軟化剤または弱ステロイド軟膏を体に塗布した後に、水に浸して絞った濡れたパジャマを着て、その上に乾いたパジャマを着用して寝る。ステロイドが皮膚から過剰に吸収される可能性があるので1週間以上は行わない。夜間のかゆみには、抗ヒスタミン作用があるミルタザピン(商品名:リフレックス、レメロン)が有効ガバペンチン(同:ガバペン)、プレガバリン(同:リリカ)は神経因性のそう痒に有効である。少量のガバペンチンは透析後の痒みに効果がある。<参考文献・資料>1)Yosipovitch G, et al. N Engl J Med. 2013;368:1625-1634.2)Moses S, et al. Am Fam Physician. 2003;68:1135-1142.

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痒みの悩みは軽そうでじつは重い問題/マルホ

 マルホ株式会社は、同社の実施した「頭皮トラブルを抱える生活者実態調査の結果」がまとまったことから「頭部の皮膚炎特有の悩みがもたらすQOL への影響と治療法の広がり」をテーマにWEB上でメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、調査結果の概要とともに最新の頭部皮膚炎の治療法などの説明が行われた。頭皮トラブルで通院が必要とだと考えていない人が47% はじめに「頭皮トラブルを抱える患者の実態とQOLへの影響」をテーマに江藤 隆史氏(あたご皮フ科 副院長)が講演を行った。 頭皮のトラブルの原因となる疾患では、「アトピー性皮膚炎」、「脂漏性皮膚炎」、「接触皮膚炎」などが挙げられる。とくにアトピー性皮膚炎では、42%の患者が頭部・顔面・頸部に病変を有し、34%は頭部湿疹を有するとの報告もある。 今回の「頭皮トラブルを抱える生活者実態調査」は、全国の頭皮トラブルを抱える16~69歳の男女1,200名を対象にインターネットで行われた。 調査結果によると「頭皮トラブルを抱える人の割合」は20.7%で、人口割合に換算すると約1,700万人が同様の悩みを抱えていると推定される。 主な頭皮トラブルの症状は、「痒みのみ」(29.4%)が一番多く、つぎに「痒みとフケ」(15.8%)、「痒みとフケとぶつぶつ・炎症・赤み」(15.0%)が上位を占めた。 「悩んでいる期間」に注目してみると、たとえば回答数が1番多い「痒み」について回答者の59.6%が1年以上前から悩んでおり、解決策を見出せないという。 この「痒みの影響」について、とくに頭皮の痒みについての回答では、「気が付くとずっとかいている」と回答した人が36.9%、「眠れない、または眠りが浅い」と「じっとしていられない」が同数で22.6%の順で多く、日常生活で不便な生活をもたらす結果となっていることがわかった。また、関連として「フケ」について聞いたところ、「いつも洋服の肩口にフケが積もっている」が37.5%、「かみの毛に白く浮いているのが目立つ」が35.3%、「フケのために掃除が必要」が22.7%の順で多く、「頭皮の悩み」が「どのような精神的影響を与えているか」を聞いたところ「周囲の目が気になる」(24.0%)、「頭皮が気になり、集中できない」(21.4%)、「すべてに消極的になる」(15.8%)の順で回答が多かった。 こうした頭皮のトラブルへの対処について現在行っていることは「市販のシャンプーやコンディショナーをしっかり洗い流す」(41.8%)、「市販のシャンプーを変える」(33.9%)、「髪、頭皮の洗い方を変える」(27.8%)の順で多く、「病院に通う」は12.7%と医療機関に通院する人は少なく、また、「何も行っていない」という人も27.6%と多かった。「医療機関に通ったことがない」その理由としては、「通院するほどの症状ではないから」(47.0%)、「お金がかかってしまいそうだから」(34.6%)、「病気だと思っていないから」(30.4%)の順で多かった。 これらの調査から頭皮トラブルがある人は長期間悩みを抱えながらも、諦めている人が多く、そのトラブルゆえにQOLが低下している人が多いことが判明した。 江藤氏は、頭皮などのトラブルを放置したときの問題点として「症状の悪化」、「治療経過の悪化」、「脱毛や難治化」などを挙げ、「気になる症状があれば早めに皮膚科を受診して、正しい診断と治療を受けてほしい」と語り、説明を終えた。頭皮トラブルをシャンプーで治療する 次に五十嵐 敦之氏(NTT東日本関東病院 皮膚科部長)が、「頭部の痒み/湿疹・皮膚炎の治療法の広がり ~実臨床における最新トピックス~」をテーマに頭皮トラブルの診療について説明した。 頭部の痒み、フケなどを有する主な皮膚疾患としては、乾癬、湿疹・皮膚炎が代表であり、とくに皮膚炎では刺激物質との対応が明確な接触皮膚炎、光接触皮膚炎と刺激物質との対応が不明確なアトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹などがある。 たとえばアトピー性皮膚炎では、成長するにつれて軽快傾向を示すが最近では成人でも症状が残る例も増えている。一般的に痒みが強く、屈曲部、上肢、頭部、頸部、顔面などに多く発症する。そして、頭皮に長期にわたり持続すると、炎症性障害が毛球部にまで波及し、まれに休止期性脱毛に進展する。 こうした皮膚疾患には、ステロイド外用薬や抗ヒスタミンなどの内服薬が治療で使われ、アトピー性皮膚炎では免疫抑制剤や保湿剤が、脂漏性皮膚炎では抗真菌剤、非ステロイド性抗炎症剤外用薬、尿素外用薬、ビタミン剤なども治療で使用されている。同時にアトピー性皮膚炎では服や洗濯への配慮が、脂漏性皮膚炎ではストレス軽減、食事、嗜好品など日常生活での注意も必要とされている。 外用薬では、患者アンケートなどから「べたつき」「塗りにくさ」「垂れる」などの不満の声も聞かれ、患者の希望やライフスタイルの合わせた薬剤や剤形を選択しての治療が望まれている。 こうした声に対応するかたちで最近では、シャンプー剤による頭部の疾患(尋常性乾癬、湿疹・皮膚炎)に有用な治療法としてステロイドシャンプーによる“Short contact therapy”が保険適用となり、治療の幅は拡大している。 五十嵐氏も最後に「頭皮のトラブルはQOLに影響するため、気になる症状があれば、早めの皮膚科受診をしてほしい」と専門医への診療を促し、説明を終えた。

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アダリムマブ、バイオシミラーへの切り替えでアウトカムは?

 2021年4月現在、日本では15種のバイオシミラー(バイオ後続品)が承認されており1)、アダリムマブ(先発品:ヒュミラ)もその1つだが、アダリムマブバイオシミラーへの切り替え後のアウトカムについて、デンマークの乾癬患者に関するコホート研究の結果が、同国・コペンハーゲン大学のNikolai Loft氏らにより示された。切り替え群と非切り替え群の計726例を対象とした検討で、両群間の1年治療継続率の有意差はなかったという。アダリムマブバイオシミラーの有効性は、臨床試験で先発品と同等であることが示されているが、リアルワールドにおけるデータは限定的である。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年4月7日号掲載の報告。アダリムマブ先発品からバイオシミラーに切り替えた群とアダリムマブ先発品の治療群を比較 研究グループは、2007年以降のデンマーク国内全乾癬患者が登録されているBiological Treatment in Danish Dermatology(DERMBIO)レジストリを利用して、アダリムマブの先発品からバイオシミラーへの義務的な切り替え後のアウトカムを評価するコホート研究を行った。 2018年11月1日~2019年5月1日にアダリムマブを先発品からバイオシミラーに切り替えた全患者(バイオシミラー群)と、2017年5月1日~11月1日に受診し、アダリムマブ先発品で治療を受けていた全患者(先発品群)を比較した。データの解析は、2020年6月1日~10月10日に行われた。 主要アウトカムは、1年治療継続率で、バイオシミラー群と先発品群の治療継続率を粗率および補正後について算出し、ロバスト分散を用いたCox比例ハザード回帰法で比較した。 アダリムマブを先発品からバイオシミラーに切り替えたアウトカムを評価した主な結果は以下のとおり。・バイオシミラー群に計348例(平均年齢52.2[SD 13.6]歳、男性251例[72.1%])が、先発品群には378例(51.1[14.1]歳、男性272例[72.0%])が包含された。・1年治療継続率は、バイオシミラー群92.0%(95%信頼区間[CI]:89.0~94.9)、先発品群92.1%(89.4~94.8)であった。・両群間に観察されたハザード比(HR)は同等であった。・バイオシミラー群と先発品群を比較した、すべての治療中断に関する粗HRは1.02(95%CI:0.61~1.70、p=0.94)、効果不十分に関する粗HRは0.82(0.39~1.73、p=0.60)、有害事象に関する粗HRは1.41(0.52~3.77、p=0.50)であった。

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JAK阻害薬upadacitinib、対アダリムマブの優越性は?/NEJM

 乾癬性関節炎患者の治療において、ウパダシチニブはプラセボおよびアダリムマブと比較して、12週時に米国リウマチ学会(ACR)基準で20%の改善(ACR20)を達成した患者の割合が高いが、プラセボに比べ有害事象が高頻度にみられることが、英国・グラスゴー大学のIain B. McInnes氏らが行った「SELECT-PsA 1試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年4月1日号に掲載された。ウパダシチニブは、可逆的な経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬で、関節リウマチの治療薬として承認されている。また、アダリムマブは、腫瘍壊死因子α阻害薬であり、関節リウマチおよび乾癬性関節炎の治療に使用されている。2種の用量を評価する国際的な二重盲検第III相試験 本研究は、非生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の効果が不十分な乾癬性関節炎患者におけるウパダシチニブの有用性を、プラセボおよびアダリムマブと比較する24週の二重盲検第III相試験であり、日本を含む45ヵ国281施設が参加し、2017年4月~2019年12月の期間に実施された(AbbVieの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、乾癬性関節炎と診断され、「乾癬性関節炎分類基準(Classification Criteria for Psoriatic Arthritis)」を満たし、過去または現在、尋常性乾癬に罹患している患者であった。 被験者は、ウパダシチニブ15mgまたは30mgを1日1回経口投与する群、プラセボ群、アダリムマブ40mgを隔週で皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、プラセボと比較した12週時のACR20の達成とした。ACR20は、圧痛・腫脹関節数の20%以上の減少、および他の5つの項目(疾患活動性の患者・医師による評価、質問票による身体機能の評価、患者による疼痛評価、高感度C反応性蛋白)のうち少なくとも3つの20%以上の改善と定義された。副次エンドポイントには、アダリムマブとの比較が含まれた。15mg群は、アダリムマブ群に対する優越性はない 1,704例が、少なくとも1回の実薬またはプラセボの投与を受けた。ウパダシチニブ15mg群が429例(平均年齢[SD]51.6±12.2歳、女性55.5%)、同30mg群が423例(49.9±12.4歳、55.8%)、プラセボ群が423例(50.4±12.2歳、49.9%)、アダリムマブ群は429例(51.4±12.0歳、51.7%)であった。 12週の時点で、ACR20を達成した患者の割合は、ウパダシチニブ15mg群が70.6%、同30mg群が78.5%、プラセボ群が36.2%、アダリムマブ群は65.0%であった。15mg群とプラセボ群の差は34.5ポイント(95%信頼区間[CI]:28.2~40.7、p<0.001)、30mg群とプラセボ群の差は42.3ポイント(36.3~48.3、p<0.001)であり、ウパダシチニブの2つの用量はいずれもプラセボ群に比べ有意に優れた。 また、15mg群とアダリムマブ群の群間差は5.6ポイント(95%CI:-0.6~11.8)、30mg群とアダリムマブ群との群間差は13.5ポイント(7.5~19.4、p<0.001)であった。12週時のACR20達成割合に関して、ウパダシチニブの2つの用量はいずれも、アダリムマブ群に対し非劣性であった。優越性は、30mg群では認められたものの、15mg群ではみられなかった。 24週までの有害事象の発生率は、ウパダシチニブ15mg群が66.9%、同30mg群が72.3%、プラセボ群が59.6%、アダリムマブ群は64.8%であった。重篤な感染症は、それぞれ1.2%、2.6%、0.9%、0.7%に発現し、ウパダシチニブ群で多かった。肝障害は、15mg群が9.1%、30mg群が12.3%でみられたが、Grade3のアミノトランスフェラーゼ上昇の発生は全群で2%以下だった。 著者は、「ウパダシチニブの効果とリスクを明らかにし、その効果を乾癬性関節炎の治療に使用されている他の薬剤と比較するには、より長期で、より大規模な試験が求められる」としている。

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HPVワクチン接種と33の重篤な有害事象に関連なし、韓国/BMJ

 韓国のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種を受けた11~14歳の女子において、コホート分析では33種の重篤な有害事象のうち片頭痛との関連が示唆されたものの、コホート分析と自己対照リスク間隔分析(self-controlled risk interval[SCRI] analysis)の双方でワクチン接種との関連が認められた有害事象はないことが、同国・成均館大学校のDongwon Yoon氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年1月29日号に掲載された。HPVワクチン接種後の重篤な有害事象は、このワクチンの接種に対する大きな懸念と障壁の1つとなっている。HPVワクチンの安全性に関する実臨床のエビデンスは、西欧では確立しているが、アジアのエビデンスは十分ではないという。韓国の大規模データベースを用いたコホート研究 研究グループは、韓国の思春期女子におけるHPVワクチン接種と重篤な有害事象の関連を評価する目的で、コホート研究を実施した(韓国Government-wide R&D Fund project for infectious disease research[GFID]などの助成による)。 韓国予防接種登録情報システムと国立保健情報データベースのデータを統合し、2017年に11~14歳だった女子の同年1月~2019年12月の大規模データベースを構築した。 44万1,399人のデータが解析に含まれた。このうち、38万2,020人が42万9,377回のHPVワクチン接種を受け(HPVワクチン接種群)、残りの5万9,379人はHPVワクチン接種を受けず、8万7,099回の日本脳炎ワクチンまたは破傷風・ジフテリア・無細胞性百日咳混合ワクチンの接種を受けた(HPVワクチン非接種群)。 主要アウトカムは、33種の重篤な有害事象とした。重篤な有害事象には、内分泌(グレーブス病、橋本甲状腺炎など)、消化器(クローン病、潰瘍性大腸炎など)、心血管(レイノー病、静脈血栓塞栓症など)、筋骨格・全身性(強直性脊椎炎、ベーチェット症候群など)、血液(特発性血小板減少性紫斑病、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)、皮膚(結節性紅斑、乾癬)、神経系(ベル麻痺、てんかんなど)の疾患が含まれた。 主解析はコホートデザインで行い、SCRI分析を用いて2次解析を実施した。4価ワクチン接種者で片頭痛が増加 ワクチン接種時の平均年齢は、HPVワクチン接種群が12.42(SD 0.82)歳、HPVワクチン非接種群は11.84(0.56)歳であった。接種群のうち38.7%は1回、61.3%は2回のHPVワクチン接種を受け、29万5,365人が4価、8万6,655人は2価ワクチンの接種を受けた。合計51万6,476回のHPVワクチン接種が行われた。 コホート分析では、たとえば橋本甲状腺炎(10万人年当たりの発生率:接種群52.7 vs.非接種群36.3、補正後率比[RR]:1.24、95%信頼区間[CI]:0.78~1.94)や、関節リウマチ(168.1 vs.145.4、0.99、0.79~1.25)などではHPVワクチン接種との関連はみられず、唯一の例外として片頭痛(1,235.0 vs.920.9、1.11、1.02~1.22)で関連が認められた。 SCRI分析による2次解析では、片頭痛(補正後相対リスク:0.67、95%CI:0.58~0.78)を含め、HPVワクチン接種と重篤な有害事象には関連がないことが確かめられた。 フォローアップ期間の違いやHPVワクチンの種類別でも、結果の頑健性は高かった。また、2価ワクチン接種者では、片頭痛の有意な増加はみられなかった(補正後RR:1.07、0.96~1.20)が、4価ワクチン接種者では非接種者に比べ片頭痛が有意に増加していた(1.13、1.03~1.24)。 著者は、「これらの結果は、西欧の集団でHPVワクチン接種の安全性を示した試験と一致する」とまとめ、「片頭痛に関する矛盾した知見については、その病態生理と関心対象の集団を考慮して慎重に解釈すべきである」と指摘している。

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免疫チェックポイント阻害薬関連の乾癬、重症度や対処法は?

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に関連した乾癬について、ギリシャ・アテネ大学のVasiliki Nikolaou氏らが欧州9施設から報告された115例について、重症度等のデータを明らかにし、段階的な治療アルゴリズムの提案を検討した。ICIに関連した乾癬は、診断上および治療上の重大な課題をもたらすが、検討によりacitretin、アプレミラスト、メトトレキサートは安全で効果的な治療法であり、ほとんどの場合でICI投与を中断することなく完了できることを示した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年12月3日号掲載の報告。 研究グループは、前例のない最大コホートから報告されたICIに関連した乾癬に関するデータを報告し、段階的な治療アルゴリズムを提案するため、欧州の9施設で組織するEuropean Network for Cutaneous ADverse Event to Oncologic drugs(ENCADO)のデータを用いて検討した。 9施設からの、ICIに関連した乾癬を呈した全患者の医療記録をレトロスペクティブにレビューした。 主な結果は以下のとおり。・コホートに包含した患者は115例であった。・報告された疾患重症度は、グレード1が60/105例(57.1%、10例は欠損データ)、グレード2が34/105例(32.4%)、グレード3が11/105例(10.5%)であった。・乾癬の新規症例と悪化症例の比率は21/90例(23.3%)であった。・最も一般的な全身療法はacitretin(23例、20.1%)であり、続いて全身ステロイド(8例、7%)、アプレミラスト(7例、6.1%)、メトトレキサート(5例、4.3%)、生物学的製剤(4例、3.6%)であった。・全体として、乾癬のためにICIを中断したのは29/112例(25.9%)であり、永久中止となったのは20/111例(18%)であった。・ベースラインで、BSA>10%の場合、ICI治療の変更リスクは3.6倍(オッズ比[OR]:3.64、95%信頼区間[CI]:1.27~10.45、p=0.03)、永久中止のリスクは6.4倍(6.41、2.40~17.11、p<0.001)それぞれ増大することが示された。・滴状乾癬およびグレード2/3が、ICIの抗腫瘍反応の有意な陽性予測因子であった。一方で、そう痒症は陰性予測因子であった。・本検討は、後ろ向きデザインという点で結果は限定的なものである。

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乾癬患者における、COVID-19の重症化因子は?

 COVID-19への決定的な対策はいまだ見いだされていないが、入院・重症化リスクを捉えることで死亡を抑え込もうという世界的な努力が続いている。本稿では、乾癬患者のCOVID-19に関する国際レジストリ「PsoProtect」へ寄せられた25ヵ国からの臨床報告に基づき、英国・Guy's and St Thomas' NHS Foundation TrustのSatveer K. Mahil氏らが乾癬患者の入院・重症化リスクを解析。「高齢」「男性」「非白人種」「併存疾患」がリスク因子であることを明らかにした。また、乾癬患者は複数の疾患負荷と全身性の免疫抑制薬の使用によってCOVID-19の有害アウトカムのリスクが高まる可能性があるとされているが、これまでデータは限定的であった。今回、著者らは「生物学的製剤の使用者は、非使用者と比べて入院リスクが低かった」とも報告している。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌オンライン版2020年10月16日号掲載の報告。 研究グループは、乾癬患者におけるCOVID-19の臨床経過を明らかにし、入院と関連する因子を特定するため、国際レジストリ「PsoProtect」を通じて、COVID-19確認/疑いと臨床医が報告した乾癬患者を対象に、多重ロジスティック回帰法にて、臨床/人口統計学的特性と入院との関連を評価した。また、患者自身が報告する別のレジストリ「PsoProtectMe」のデータから、リスクの回避行動を明らかにした。 主な結果は以下のとおり。・評価は、臨床医からの報告症例である25ヵ国374例(確認例172例[46%]、疑い例202例[54%])の患者を対象に行われた。36%が英国、21%がイタリア、15%がスペインの患者で、年齢中央値は50歳、男性61%、白人種85%であった。喫煙歴なし54%、現在喫煙者は15%だった。・71%の患者が生物学的製剤による治療を受けていた。非生物学的製剤による治療を受けていた患者は18%、全身療法が行われていなかったのは10%だった。・COVID-19から完全に回復したのは348例(93%)であった。入院を要したのは77例(21%)、死亡は9例(2%)であった。・入院リスクの増大因子は、高齢(多変量補正後オッズ比[OR]:1.59/10歳、95%信頼区間[CI]:1.19~2.13)、男性(2.51、1.23~5.12)、非白人種(3.15、1.24~8.03)、慢性肺疾患の併存(3.87、1.52~9.83)であった。・入院率は、生物学的製剤使用患者よりも非使用患者で高率だった(OR:2.84、95%CI:1.31~6.18)。生物学的製剤のクラスの違いによる有意差はなかった。・患者報告のデータ(48ヵ国1,626例)から、生物学的製剤使用患者と比べて非使用患者はソーシャルディスタンスのレベルが低いことが示唆された(OR:0.68、95%CI:0.50~0.94)。

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TNF阻害薬・MTX服用者、COVID-19入院・死亡リスク増大せず

 COVID-19の治療法確立には、なお模索が続いている。米国・ウェストバージニア大学のAhmed Yousaf氏らは、エビデンスデータが不足している生物学的製剤および免疫抑制剤のCOVID-19関連アウトカムへの影響を、多施設共同リサーチネットワーク試験にて調べた。5,351万人強の患者の医療記録を解析した結果、腫瘍壊死因子阻害薬(TNFi)および/またはメトトレキサート(MTX)曝露のあるCOVID-19患者は非曝露のCOVID-19患者と比べて、入院や死亡が増大しないことが示されたという。結果について著者は「COVID-19と生物学的製剤の使用に関する現行ガイドラインは、厳密な統計学的解析ではなく主として専門家の見解(opinion)に基づくものである。今回のわれわれの試験結果は、TNFiやMTXの使用を継続することを支持し、COVID-19関連アウトカムが不良となる可能性の懸念による治療の中断に異を唱えるものである」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年9月11日号掲載の報告。TNF阻害薬および/またはMTX治療群と非治療群を3万2,076例で比較 研究グループは、TNF阻害薬および/またはMTXを服用する患者について、COVID-19関連アウトカムのリスクが増大するかどうかを調べる大規模比較コホート試験を行った。 試験では、リアルタイム検索と解析で、COVID-19と診断された成人患者について、TNF阻害薬および/またはMTX治療群と非治療群を比較。入院および死亡の尤度を、交絡因子に関する傾向スコアマッチングの有無別群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・5,351万1,836例の患者記録を解析した。・そのうち3万2,076例(0.06%)が、2020年1月20日以降にCOVID-19に関連する診断を受けたことが記録されていた。・214例のCOVID-19患者が、TNF阻害薬またはMTXへの最近の曝露が確認され、3万1,862例のCOVID-19患者は、TNFiまたはMTXに非曝露であった。・傾向マッチング後、入院および死亡の尤度について、TNF阻害薬および/またはMTX治療群と非治療群で有意差はなかった。入院のリスク比は0.91(95%信頼区間[CI]:0.68~1.22、p=0.5260)、死亡のリスク比は0.87(0.42~1.78、p=0.6958)であった。・本検討は、すべてのTNF阻害薬が同様の影響をもたらすとは限らない、という点で限定的である。

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セクキヌマブ、体軸性脊椎関節炎にFDA承認 /ノバルティス

 ノバルティス ファーマ株式会社は、同社が製造販売するセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)が、X線基準を満たさない活動性の体軸性脊椎関節炎(以下「nr-axSpA」という)の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の効能追加承認を取得したと発表した。 体軸性脊椎関節炎(以下「axSpA」という)は、慢性炎症性背部痛を特徴とする慢性炎症性疾患。axSpAの疾患スペクトラムには、X線基準により仙腸関節の損傷が確認される強直性脊椎炎(以下「AS」という)と、X線基準により明らかな関節損傷が認められないnr-axSpAが含まれる。axSpAによる身体的な制限は、患者のADLやQOLに重大な影響を与える疾患である。安全に主要評価項目を達成し患者QOLなどを改善 セクキヌマブ(以下「本剤」という)の効能追加承認では、nr-axSpAの第III相臨床試験であるPREVENT試験の有効性および安全性に基づいて行われた。 PREVENT試験は、生物学的製剤による治療経験の無い患者もしくは以前にTNF-α阻害剤による治療で効果が不十分であったり、忍容性不良であった活動性nr-axSpAの成人患者555例が参加して行われた試験。 本剤群は、プラセボ群と比較し、生物学的製剤による治療経験の無い患者で52週目において国際脊椎関節炎評価学会が作成した指標(ASAS40)で評価したnr-axSpAの兆候と症状が統計的に有意な改善を示し主要評価項目を達成した。 本剤の導入投与有り、導入投与無しの両群において、nr-axSpA患者は、プラセボ群と比較して、強直性脊椎炎QOL(ASQoL)質問票において16週目で健康関連QOLの改善を示した(最小二乗平均変化:それぞれ16週目:-3.5および-3.6対-1.8)。 健康状態および生活の質を、Short Form Health Survey(SF−36)で評価した結果、16週目において本剤で治療された患者では、SF-36身体要素スコア(PCS)および精神要素スコア(MCS)において、ベースラインから改善を示した。 安全性では、PREVENT試験における本剤の安全性プロファイルは、以前の臨床試験と一致することが示され、新たな安全性シグナルは報告されなかった。セクキヌマブの概要 セクキヌマブは、初のヒト型生物学的製剤で、乾癬性関節炎、中等度から重度の尋常性乾癬、ASおよびnr-axSpAの炎症と発症に中心的役割をもつサイトカインであるインターロイキン17A(IL-17A)を直接阻害する。 セクキヌマブは上市以来、世界で34万人を超える患者が投与を受けており、日本では「尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、強直性脊椎炎」(いずれも既存治療で効果不十分の場合)の4つの疾患で適応を取得している。

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長期の生物学的製剤使用、メラノーマのリスクを増大?

 炎症性疾患に対する長期にわたる生物学的製剤の使用は、メラノーマのリスクを増大するのか。英国・マンチェスター大学のShamarke Esse氏らは、システマティック・レビューとメタ解析の結果、「その可能性を否定できない」とする所見が得られたことを報告した。生物学的製剤は、炎症性疾患の治療薬として幅広く処方されるようになっている一方で、免疫が介在した炎症性疾患である炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、乾癬の患者において、長期にわたる生物学的製剤治療は従来の全身治療と比べてメラノーマのリスクを増大するのではないか、との懸念が出ている。今回の結果を踏まえ、著者は「生物学的製剤による治療の長期安全性の問題を解決するためにも、主要なリスク因子を調整した大規模な研究が必要だ」と提言している。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年5月20日号掲載の報告。 検討では、Embase、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)をデータソースとして、1995年1月1日~2019年2月7日に公開された論文を検索した。適格条件は、無作為化臨床試験、コホート試験、IBD・RA・乾癬患者におけるメラノーマリスクについて生物学的製剤治療群と従来の全身治療群を比較し定量化したネステッド・ケースコントロール試験とした。 2人のレビュアーがそれぞれ主要な試験特性とアウトカムデータを抽出。試験に特異的な推定リスクをプールし、ランダム・固定効果モデルを用いてメタ解析を行った。不均一性はI2統計法で評価した。レビューは、疫学分野における観察研究のメタアナリシス報告のためのガイドライン(MOOSE)に準じて作成された。 主要評価項目は、IBD・RA・乾癬患者における、従来全身治療群と比較した生物学的製剤治療群のメラノーマ発生のプール相対リスク(pRR)であった。 主な結果は以下のとおり。・7コホート試験が適格基準を満たし、生物学的製剤治療群3万4,029例と、同未治療の従来全身治療群13万5,370例が包含された。・生物学的製剤治療は、各疾患患者のメラノーマ発生と正の相関がみられた。ただし、統計的有意差は認められなかった。・pRRは、IBD患者群1.20(95%信頼区間[CI]:0.60~2.40)、RA患者群1.20(同:0.83~1.74)、ハザード比は乾癬患者群で1.57(95%CI:0.61~4.09)だった。・ほかのリスク因子の調整は、ほとんどの研究で行われていなかった。

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COVID-19治療薬、ヒドロキシクロロキンに乾癬発症のリスク?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として期待された抗マラリア薬ヒドロキシクロロキン(HCQ)について、乾癬の発症・増悪・再発を誘発する可能性があることを、カナダ・トロント大学のMuskaan Sachdeva氏らが示した。乾癬に関連したHCQ治療の重大な影響を調べた試験報告を統合したシステマティックレビューの結果に基づくもので、著者は、「COVID-19患者へのHCQ治療においては、その重大な影響をモニタリングする必要がある。また、安全性プロファイルを明らかにする臨床試験の実施が不可欠だ」と述べている。HCQはCOVID-19患者のウイルス量を低減する可能性が示された一方で、治療の影響と思われる重大な皮膚有害事象の症例報告が複数寄せられていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年5月19日号掲載の報告。 研究グループは、HCQ治療後の乾癬発症、増悪もしくは再発の症例報告をシステマティックレビューした。乾癬へのHCQ治療の重大な影響を検討していたオリジナル研究をEMBASE、MEDLINEで統合的に検索し、被験者の人口統計学的特性、HCQ治療の詳細、乾癬の診断について抽出した。 主な結果は以下のとおり。・15論文から該当する乾癬発症患者18例のデータを抽出した。・乾癬発症例を性別で分析すると、女性が有意に多かった(女性14例[77.8%]vs.男性2例[11.1%]vs.性別不明2例[11.1%])。・発症例の50%(9例)は、HCQ服用前に乾癬の既往はなかった。・18例のうち、50%(9例)がde novo乾癬で、27.8%(5例)は乾癬性症状の増悪例で、22.2%(4例)はHCQ治療後の乾癬再発例であった。

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JAK1を強く阻害する関節リウマチ治療薬「リンヴォック錠7.5mg/15mg」【下平博士のDIノート】第51回

JAK1を強く阻害する関節リウマチ治療薬「リンヴォック錠7.5mg/15mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「ウパダシチニブ水和物(商品名:リンヴォック錠7.5mg/15mg、製造販売元:アッヴィ合同会社)」を紹介します。本剤は、中等度から重度の関節リウマチ患者において、メトトレキサート(MTX)などとの併用の有無にかかわらず、1日1回の投与で臨床的寛解を達成することが期待されています。<効能・効果>本剤は既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)の適応で、2020年1月23日に承認され、4月24日に発売されました。なお、2021年5月に「既存治療で効果不十分な関節症性乾癬」、同年8月に「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」の効能・効果が追加されました。<用法・用量>通常、成人にはウパダシチニブとして15mgを1日1回経口投与します。なお、患者の状態に応じて7.5mgを1日1回投与することもできます。免疫抑制作用の増強により感染症リスクの増加が予想されるので、本剤とほかのJAK阻害薬や生物学的製剤、タクロリムス、シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾリビンなどの免疫抑制薬(局所製剤以外)との併用はできません。<安全性>関節リウマチ患者を対象とした本剤のプラセボ対照第III相試験において、本剤が投与された1,035例中275例(26.6%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、悪心23例(2.2%)、上気道感染、頭痛、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加各19例(1.8%)、血中クレアチンホスホキナーゼ増加17例(1.6%)、気管支炎16例(1.5%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、肺炎(0.1%未満)、帯状疱疹(0.7%)、結核(頻度不明)などの重篤な感染症(日和見感染症を含む)、消化管穿孔(頻度不明)、好中球減少(1.4%)、リンパ球減少(0.8%)、ヘモグロビン減少(貧血:0.7%)、ALT上昇(1.8%)、AST上昇(1.4%)、間質性肺炎(頻度不明)および静脈血栓塞栓症(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬はJAKという酵素を強く阻害することで、関節リウマチの症状を改善します。2.薬の成分が少しずつ出るようにコーティングされているので、かみ砕かないでください。3.本剤の服用を長期間続けると、免疫力が低下する可能性があります。持続する発熱やのどの痛み、息切れ、咳、倦怠感、水疱、痛みを伴う皮疹などが現れた場合は、すぐにご連絡ください。4.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合は主治医に相談してください。5.(妊娠可能年齢の女性の場合)この薬を服用中および最終服用後一定の期間は、適切な避妊を行ってください。なお、国内治験においては、最終投与から30日まで避妊を行うよう定められていました。<Shimo's eyes>関節リウマチの薬物療法は近年大きく進展しています。通常、発症初期はMTXをはじめとする従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)が使用されますが、十分量用いても効果が不十分な場合には、生物学的製剤、もしくは本剤のようなJAK阻害薬が選択されます。本剤は、関節リウマチに適応を持つ4番目のJAK阻害薬です。JAKには4種類のサブタイプ(JAK1、JAK2、JAK3、Tyk2)があり、本剤は炎症性サイトカインシグナルの伝達においてとくに重要な役割を持つJAK1を強く阻害することで、TNFαやIL-6の働きを遮断し、炎症性サイトカインの産生を抑制すると考えられています。本剤は、MTXで効果不十分な関節リウマチ患者を対象とした第III相無作為化二重盲検比較試験で、12週時のACR50改善率、患者による疼痛評価およびHAQ-DIのベースラインからの変化量において、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)に対する優越性が示されました。また、ウパダシチニブ+MTX群では、プラセボ+MTX群およびアダリムマブ+MTX群と比較して、有意に高い臨床的寛解達成率が示されました。安全性に関する留意事項としては、警告欄で結核、肺炎などの重篤な感染症について注意喚起されています。また、トファシチニブ(同:ゼルヤンツ)、ペフィシチニブ(同:スマイラフ)と同様に、重度の肝機能障害患者には禁忌となっています。本剤は徐放性フィルムコーティング錠であり、調剤時に半割・粉砕することはできません。患者に対しても、割ったりかみ砕いたりしないように伝えましょう。※2022年3月、添付文書の改訂情報を基に一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA添付文書 リンヴォック錠7.5mg/リンヴォック錠15mg

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ステロイド恐怖症、教育介入で改善するか?

 ステロイド恐怖症(steroid phobia)は、服用薬はもとより外用薬に対しても例外ではない。皮膚科部門では、コルチコステロイドの副作用に対する恐れが一般的にみられ、そのことが治療のノンアドヒアランスを招いている。これらを背景に、シンガポール・National University Health SystemのEllie Choi氏らは教育介入による、ステロイド外用薬恐怖症の軽減効果を調べる二重盲検無作為化試験を行った。不安評価尺度TOPICOP(TOPIcal COrticosteroid Phobia)を用いた評価において、知識ドメインについて改善は認められたが、恐怖ドメインについては認められなかったという。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年3月11日号掲載の報告。ステロイド恐怖症のスコア改善、恐怖/行動ドメインでは認められず 研究グループは、ステロイド外用薬恐怖症を減らす教育介入による有効性を調べる検討を行った。介入群の被験者には、教育用ビデオを提供し、コルチコステロイド外用薬に関してよくみられる誤った認識にターゲットを絞ったリーフレットを作成し、情報提供した。 ステロイド外用薬恐怖症についてTOPICOPスケールで評価し、また、治療アドヒアランスをECOBスコアで、QOLをDLQIで評価した。 ステロイド恐怖症、教育介入軽減効果を調べた主な結果は以下のとおり。・275例の患者が無作為化を受けた。・教育介入群のTOPICOPスコアの平均(SD)は、41.9(SD 17.4)点から、1ヵ月時点で37.1(20.0)点に、3ヵ月時点で33.8(19.0)点に低下し、ステロイド恐怖症のスコア改善が認められた。・しかし、ステロイド恐怖症のスコアの改善は、知識ドメインでの低下を反映したもので、恐怖ドメインや行動ドメインでは認められなかった。・それらのステロイド恐怖症のスコアは、人口統計学的交絡因子で補正後も、4.22点の低下が期待されたが、統計学的に有意な差はなかった(p=0.031)。・人口統計学的因子で補正後、治療アドヒアランスおよびQOLに、統計学的な差は認められなかった。

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乾癬患者、生物学的製剤の用量低減戦略vs.通常ケア

 「生物学的製剤は、乾癬治療に革命をもたらした」。では、次なる一手として、症状が安定した後の同製剤の用量低減戦略は、通常ケアに対して非劣性なのか。オランダ・ラドバウド大学医療センターのSelma Atalay氏らによる無作為化試験の結果、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)スコアベースの評価では非劣性は示されなかったが、健康関連QOL(Dermatology Life Quality Index:DLQIなど)をベースとした評価では用量低減戦略の非劣性が示されたという。結果を踏まえて著者は、「リアルライフの設定で用量低減は可能だが、PASIとDLQIをモニタリングする厳格なスキームが不可欠である」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年2月12日号掲載の報告。 試験はオランダの6つの皮膚科部門で、2016年3月1日~2018年7月22日に行われた(実際的な非盲検前向き対照の非劣性無作為化臨床試験)。被験者は、慢性尋常性乾癬患者でアダリムマブ、エタネルセプト、ウステキヌマブによる治療を受け、疾患活動性が低く安定している120例。無作為に1対1の割合で用量低減群(60例)または通常ケア群(60例)に割り付けられ、用量低減群は皮下注投与の間隔を徐々に延長して、オリジナル投与量の67~50%となるまで用量が漸減された。 主要アウトカムは、12ヵ月時点でベースラインと比べて修正された疾患活動性スコアの群間差であり、事前規定の非劣性マージンは0.5とした。副次アウトカムは、PASIスコア、健康関連QOL(DLQI、SF-36など)、短期および持続性の発赤(PASIおよび/またはDLQIスコアの5超が3ヵ月以上と定義)を呈した患者の割合、用量漸減に成功した患者の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・被験者120例(平均年齢54.0[SD 13.2]歳、男性82例[68%])のうち、追跡不能2例、プロトコール違反2例、プロトコール逸脱5例を除いた111例(用量低減群53例、通常ケア群58例)を対象にper-protocol解析が行われた。・12ヵ月時点のPASIスコア中央値は、用量低減群3.4(四分位範囲[IQR]:2.2~4.5)、通常ケア群2.1(0.6~3.6)で、平均群間差は1.2(95%信頼区間[CI]:0.7~1.8)であり、用量低減の通常ケアに対する非劣性は示されなかった。・12ヵ月時点のDLQIスコア中央値は、用量低減群1.0(IQR:0.0~2.0)、通常ケア群0.0(0.0~2.0)で、平均群間差は0.8(95%CI:0.3~1.3)であり、用量低減の通常ケアに対する非劣性が示された。・持続性の発赤に関して両群間に有意差は認められなかった(両群とも発生は5例)。・12ヵ月時点で用量漸減に成功していた用量低減群の被験者は28例(53%、95%CI:39~67)であった。・介入に関連した重篤な有害事象の発生は報告されなかった。

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若年性特発性関節炎〔JIA:juvenile idiopathic arthritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis:JIA)は、滑膜炎による関節の炎症が長期間繰り返す結果、関節軟骨および骨破壊が進行し関節拘縮や障害を引き起こすいまだ原因不明の慢性の炎症性疾患であり、小児期リウマチ性疾患の中で最も頻度が多い。「16歳未満で発症し、6週間以上持続する原因不明の関節炎で、他の病因によるものを除外したもの」と定義されている1)(表)。表 JIAの分類基準(ILAR分類表、2001、Edmonton改訂)画像を拡大する■ 疫学本疾患の頻度は、わが国では海外の報告と同程度の小児人口10万人対10〜15人といわれ、関節リウマチの1/50~1/100程度である。■ 病因、発症病理各病型により病態が大きく異なることが知られている。全身型は、自己免疫よりも自己炎症の要素が強い。関節型に包含される少関節型やリウマトイド因子(rheumatoid factor:RF)陽性多関節型は、自己抗体の頻度が高く液性免疫の関与が強い。RF陰性多関節型や腱付着部炎関連型ではHLA遺伝子多型の関与が示されている。いずれも活性化したT細胞やマクロファージが病態に深く関わっていると推測されている。また、家族歴が参考となる病型を除き、通常家族性発症は認めない。近年、炎症のメカニズムについての知見が集積し、関節炎の炎症病態形成における炎症性サイトカインの関与が認識されるようになった。全身型ではインターロイキン(interleukin:IL)-1βとIL-6が、関節型では腫瘍壊死因子(tumornecrosis factor:TNF)-α、IL-1β、IL-6のいずれもが、炎症の惹起・維持に主要な役割を果たしている。現在治療として重要な地位を占める生物学的製剤の臨床応用が、全身炎症と関節炎症における個々のサイトカインの役割について重要な示唆を与えている。■ 症状1)全身型発熱、関節痛・関節腫脹、リウマトイド疹、筋肉痛や咽頭痛などの症状を呈する。3割は発症時に関節症状を欠く。マクロファージ活性化症候群(macrophage activation syndrome:MAS)(8%)、播種性血管内凝固症候群(5%)などの重篤な合併症に注意を要する。2)関節型(1)少関節型関節痛・関節腫脹、可動域制限、朝のこわばりなどに加え、ぶどう膜炎の合併が見られる。少関節型に伴うぶどう膜炎は女児、抗核抗体(antinuclear antibody:ANA)陽性例に多く無症候性で前部に起こり、放置すれば失明率が高い(15~20%)。5〜10年の経過では、3割が無治療、5割が無症状であった。ぶどう膜炎は10〜20%に認め、関節炎発症後5年以内に発病することが多い。関節機能は正常~軽度障害が98%で、最も関節予後はよい。(2)多関節型(RF陰性)関節痛・関節腫脹、可動域制限、朝のこわばりに加え、4割で発熱を認める。5〜10年の経過では、3割が無治療で4割が無症状であった。関節可動域制限や変形を認める例があるものの、95%が関節機能正常~軽度障害と、少関節型に次いで関節予後はよい。(3)多関節型(RF陽性)この病型は関節リウマチに近い病態である。関節痛・関節腫脹・可動域制限・朝のこわばりが著明で、初期にすでに変形を来たしている例もある。皮下結節は2.5%と欧米の報告(30%)に比べ少ない。5〜10年の経過では、無治療はわずか8%で、無症状は3割とほとんどの患者が治療継続し、症状も持続していた。可動域制限を7割、変形を2割で認め、16%に中等度~重度の関節機能障害を認める。■ 分類疾患は、原因不明の慢性関節炎を網羅するため7病型に分けられているが、病型ごとの頻度は図1に示した通りである2)。ここでは、わが国の小児リウマチ診療の実情に合わせ、本疾患群を病態の異なる「全身型」(弛張熱、発疹、関節症状などの全身症状を主徴とし、症候の1つとして慢性関節炎を生じる)、「関節型」(関節炎が病態の中心となり、関節滑膜の炎症による関節の腫脹・破壊・変形を引き起こし機能不全に陥る)の2群に大別して考えていくことにする。また、乾癬や潰瘍性大腸炎などに併発して、二次的に慢性関節炎を呈するものは「症候性」と別に分類する。図1 JIA発症病型の割合画像を拡大する■ 予後全身型、関節型JIAとも、生物学的製剤が出現する以前は全患者の75%に程度の差はあるが身体機能障害が存在していたものの、普及した後は頻度が明らかに減少した。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)日本小児リウマチ学会と日本リウマチ学会は、共同でJIAの適切な診断と標単的な治療について、わが国の一般小児診療に関わる医師のために「初期診療の手引き2015年版」3)を作成しているので、詳細は成書にてご確認願いたい。1)全身型JIA全身型JIAではIL-6とIL-6受容体が病態形成の核となっていることが判明しており、高サイトカイン血症を呈する代表的疾患である。症状としては、とくに弛張熱が特徴的で、毎日あるいは2日毎に定まった時間帯に38~40℃に及ぶ発熱が生じ、数時間すると発汗とともに解熱する。発熱時は体全体にリウマトイド疹という発疹が出現し、倦怠感が強く認められる。本病型は、敗血症、悪性腫瘍、特殊な感染症あるいは感染症に対するアレルギー性反応などを除外した上で診断される。検査所見では、左方移動を伴わない好中球優位(全分画の80~90%以上)の白血球数の著増を認め、血小板増多、貧血の進行などが特徴である。赤血球沈降速度(erythrocyte sedimentation rate:ESR)、CRP値、血清アミロイドA値が高値となる。凝固線溶系の亢進があり、D-ダイマーなどが高値となる。炎症が数ヵ月以上にわたり慢性化すると、血清IgG値も高値となる。フェリチン値の著増例では、MASへの移行に注意が必要である。IL-6/IL-6Rの他に、IL-18も病態形成に重要であることが判明しており、血清IL-18値の著増も特徴的である。関節炎の診断には前述の通り、血清MMP-3値が有用である。鑑別診断として、深部膿瘍や腫瘍性病変が挙げられるが、これらの疾患に対して通常治療薬として使用するグルココルチコイド(glucocorticoid:GC)は疾患活動性を修飾し原疾患の悪化などを来す可能性がある。これらの鑑別のため、画像検査としては18F-FDG-positron emission tomography(PET)やガリウムシンチグラフィーが有用である。全身炎症の強く生じている全身型の急性期には骨髄(脊椎、骨盤、長管骨など)や脾臓への集積が目立つことが多い。2)関節型JIA関節炎が長期に及ぶと関節の変形(骨びらん、関節脱臼/亜脱臼、骨性強直)や成長障害が出現し、患児のQOLは著しく障害される。また、関節変形による変形性関節症様の病態が出現することもある。少関節炎では下肢の関節が罹患しやすく、多関節炎では左右対称に大関節・小関節全体に見られる。関節炎症の詳細な臨床的把握(四肢・顎関節計70関節+頸椎関節の診察)、血液検査による炎症所見の評価(赤沈値、CRP)、血清反応による関節炎の評価(MMP-3、ヒアルロン酸、FDP-E)、病型の判断(RF、ANA)を行う。また、抗CCP抗体は関節型で特異的に検出されるため、診断的意義と予後推定に有用である。関節部位の単純X線検査では、発症後数ヵ月の間は一般的には異常所見は得られないため、有意な所見がなくても本症を否定できない。関節炎が長期間持続した例では、X線検査で関節裂隙の狭小化や骨の辺縁不整などを認める。また、罹患関節の造影MRIにより、関節滑液の貯留と増殖性滑膜炎の存在を確認することも重要である。関節の炎症を検出し得る検査法として、MRIに加え超音波検査が有用である。ただし、発達段階の小児の画像評価を行う際は、成人と異なり、関節軟骨の厚さや不完全骨化に多様性があるため注意して評価する。鑑別疾患として、感染性関節炎、他の膠原病に伴う関節炎、整形外科的疾患(とくに十字靭帯障害)、小児白血病が挙げられる。外来診療で多いのは「成長痛」で、夕方から夜にかけて膝や足関節の痛みを訴えるところがJIAとの相違点である。関節型では関節炎が診察により明確に認められる対称性関節炎であり、関節症状は早朝から午前中に悪化する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 全身型(図2)図2 全身型に対する治療画像を拡大する1)初期対応全身型JIAにおいて非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)で対応が可能な例は確かに存在するが一部の症例に限られる。したがってGCが全身型JIA治療の中心であるが、これまでしばしば大量GCが漫然と長期にわたり投薬されたり、種々の免疫抑制薬も併用され続けたが不応である患児、MASへ病態移行した患児などを診療する機会も多く見受けられた。NSAIDs不応例にはプレドニゾロン(prednisolone:PSL)1~2mg/kg/日が適用される。メチルプレドニゾロン・パルス療法を行い、後療法としてPSL0.5~0.7mg/kg/日を用いると入院期間の著しい短縮に繋がる場合もある。免疫抑制薬としてシクロスポリン、メトトレキサート(methotrexate:MTX)が加えられることもあるが、少なくとも単独で活動期にある全身型の炎症抑制はできず、また併用効果も疑問である。また、関節炎に対しMTXの効果が期待されるが、一般に有効ではない。このことは、関節型JIAと全身型JIAとでは関節炎発症の機序が異なることを示唆している。本病型は、基本的には大量GCだけが炎症抑制効果をもつと考えられてきた。GCは他の薬剤と異なり、副腎という器官が生成する生理的活性物質そのものである。GCの薬理作用はすでに身体に備わっている受容体、細胞内代謝機構などを介して発現するので、一定量投与の後に減量に入ると、安定していたこれらの生体内機構の機能縮小が過剰に生じるため、直ちに再燃が起こることがある。したがってGCの減量はごく微量ずつ漸減するのが原則となる。2)生物学的製剤(抗IL-6レセプター抗体:トシリズマブ〔商品名:アクテムラ〕)の投与難治性JIAの場合、以下の条件を満たしたら、速やかに専門医に相談し、トシリズマブ(tocilizumab:TCZ)の投与を検討すべきである。(1)治療経過でGCの減量が困難である場合(2)MASへの病態転換が考えられる場合(3)治療経過が思わしくなく、次の段階の治療を要すると判断された場合TCZによる全身型JIAに対する治療は、臨床治験を経てわが国で世界に先駆けて認可され、使用経験が増加することで、有効性が極めて高く、副作用は軽微である薬剤であることが現在判明している。エタネルセプトなどの抗TNF治療薬の散発的な報告によると効果は10~30%程度といわれている。また、IL-1レセプターアンタゴニストは本症に有効であるとの報告が海外であるが、わが国でもカナキヌマブ(同:イラリス)が臨床試験を経て2018年7月に適用を取得することができた。■ 関節型(図3)図3 関節型への治療画像を拡大する1)診断確定まで臨床所見、関節所見、検査所見から診断が確定するまで1~2週間は要する。この間、NSAIDsであるナプロキセン(同: ナイキサン)、イブプロフェン(同: ブルフェンほか)を用いる。鎮痛効果は得られることが多く、一部の例では関節炎そのものも鎮静化するが、鎮痛に成功しても炎症反応が持続していることが多く、2〜3週間の内服経過で炎症血液マーカーが正常化しない場合は、次のステップに移る。NSAIDsにより鎮痛および炎症反応の正常化がみられる例ではそのまま維持する。2)MTXを中心とした多剤併用療法RF陽性型、ANA陽性型およびRF/ANA陰性型のうち多関節型の症例は、できるだけ早くMTX少量パルス療法に切り替える。当初スタートしたNSAIDsの効果が不十分であると判断された場合にも、MTX少量パルス療法へ変更する。MTXの効果発現までには少なくとも8週間程度の期間が必要で、この期間を過ぎて効果が不十分と考えられた例では、嘔気や肝機能障害が許容範囲内であるならば、小児最大量(10mg/m2)まで増量を試みる。また、即効性を期待して治療の初めからPSL5~10mg/日を加える方法も行われている。この方法では効果の発現は2~4週間と比較的早い。MTX効果が認められる時期(4~8週間)になれば、PSLは漸減し、維持量(3~5mg/日)とする。PSLによる成長障害や骨粗鬆症などの副作用の心配は少なく、かえって炎症を充分に抑制するため骨・軟骨破壊は多くない。3)生物学的製剤治療前述のMTXを中核におく併用療法にても改善がみられない症例では、生物学的製剤の導入を図る。生物学的製剤の導入の時期は、MTX投与後3〜6ヵ月が適当で、以下の場合が該当する。(1)「初期診療の手引き」に沿って3ヵ月間以上治療を行っても、関節炎をはじめとする臨床症状および血液炎症所見に改善がなく治療が奏効しない場合(2)MTX少量パルス療法およびその併用療法によってもGCの減量が困難またはステロイド依存状態にあると考えられる場合(3)MTX基準量にても忍容性不良(嘔気、肝機能障害など)である場合わが国では2008年にヒト化抗IL-6レセプター抗体トシリズマブ、2009年にはTNF結合蛋白であるエタネルセプト(同:同名)、2011年にはヒト化TNF抗体アダリムマブ(同:ヒュミラ)に加え、2018年にはCD28共刺激シグナル阻害薬アパタセプト(同: オレンシア)がいずれも臨床試験の優れた安全性および有効性の結果をもって、関節型JIAの症例に対して適応拡大を取得した。安全性についても、重篤な副作用はいずれの薬剤についてもみられていない。4 今後の展望上述の通り、わが国では、JIA治療に関わる生物学的製剤(全身型:トシリズマブ、カナキヌマブ、関節型:エタネルセプト、アダリムマブ、トシリズマブ、アバタセプト)が適用を取得したことで、小児リウマチ診療は大きく変貌し、“CARE”から“CURE”の時代が到来したと、多くの診療医が実感できるようになっている。今後もさまざまな生物学的製剤の開発が予定されており、その薬剤の開発、承認および臨床現場への早期実用化を目指すために、わが国での小児リウマチ薬の開発から承認までの問題点を可視化し、将来に向けての提案を行っている。5 主たる診療科小児科、(膠原病リウマチ内科、整形外科)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本小児リウマチ学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本リウマチ学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター 若年性特発性関節炎(一般利用者向けと医療従事者向けの公費助成などのまとまった情報)難病情報センター 若年性特発性関節炎(一般利用者向けと医療従事者向けの公費助成などのまとまった情報)患者会情報若年性特発性関節炎(JIA)親の会「あすなろ会」(患者とその家族および支援者の会)1)Fink CW. J Rheumatol. 1995;22:1566-1569.2)武井修治. 小児慢性特定疾患治療研究事業を利活用した若年性特発性関節炎JIAの二次調査.小児慢性特定疾患治療研究事業.平成19年度総括・分担研究報告書. 2008;102~113.3)日本リウマチ学会小児リウマチ調査検討小委員会. 若年性特発性関節炎初期診療の手引き(2015年). メデイカルレビュー社:2015.公開履歴初回2020年03月09日

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胎児・乳児・小児期のタバコ曝露と小児乾癬のリスク

 タバコは成人の乾癬における関連要因として知られているが、小児の乾癬においても同様であることが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のJonathan Groot氏らは、同国出生コホートから2万5,812例のデータを集め、胎児期、乳児期(月齢6ヵ月まで)、小児期(11歳まで)のタバコ曝露と小児乾癬の関連を調べた。その結果、胎児期のタバコ曝露が線形にリスクを増大することが示唆され、小児乾癬においてもタバコが発症原因の役割を果たす可能性が示されたという。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年1月20日号掲載の報告。 研究グループは、デンマーク出生コホートの参加者データを集めて、胎児期、乳児期、小児期のタバコ曝露が小児乾癬のリスクを増大するかを検討した。 データは、おおよそ在胎12週時および月齢6ヵ月時(乳児期)と11歳時(小児期)に集められ、完全データを得られた2万5,812例について、タバコ曝露と小児乾癬との関連オッズ比(OR)を推算して評価した。 なお、本研究はアウトカム状況の報告が母親によってなされている、という点から結果は限定的であるとしている。 主な結果は以下のとおり。・小児期の乾癬リスクが、胎児期にタバコに曝露していた集団で観察された(補正後OR:1.39、95%信頼区間[CI]:1.06~1.82)。・毎日の喫煙(紙巻きタバコ)量が多いほど、曝露反応関係が観察された(1日16本以上喫煙の補正後OR:2.92、95%CI:1.20~7.10、傾向のp=0.038)。・乳児期(補正後OR:1.17、95%CI:0.76~1.79)、および小児期(補正後OR:1.10、95%CI:0.77~1.58)のタバコ曝露との関連性は、出生前曝露で調整後は減弱することが示された。

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新規抗体薬bimekizumabは乾癬性関節炎に有効か?/Lancet

 活動性乾癬性関節炎患者において、IL-17AおよびIL-17Fを選択的に阻害するモノクローナル抗体bimekizumabの16mgまたは160mg投与(320mg負荷投与あり/なし)は、プラセボと比較しACR50改善率が有意に高く、安全性プロファイルは良好であることが認められた。米国・ロチェスター大学のChristopher T. Ritchlin氏らが、多施設共同48週間の無作為化二重盲検プラセボ対照第IIb相用量範囲試験「BE ACTIVE試験」の結果を報告した。今回の結果を受け著者は、「乾癬性関節炎の治療として、bimekizumabの第III相試験の実施が支持される」とまとめている。Lancet誌2020年2月8日号掲載の報告。bimekizumabの4用量による用量範囲試験 BE ACTIVE試験は、チェコ、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、ロシア、米国の41施設にて、6ヵ月以上症状を有する乾癬性関節炎の成人患者(18歳以上)を対象に行われた。 被験者を、プラセボ群、bimekizumab 16mg群、bimekizumab 160mg群、bimekizumab160mg+320mg 1回負荷投与群およびbimekizumab 320mg群に1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、4週ごとに12週間皮下投与した。12週後に、プラセボ群およびbimekizumab 16mg群の患者を再びbimekizumab 160mg群または320mg群のいずれかに1対1の割合で無作為に割り付け、その他の患者には当初割り付けられたbimekizumab投与量を最長48週間投与した。 主要評価項目は、1回以上治験薬の投与を受けた患者における、12週時の米国リウマチ学会分類基準の50%以上改善に達した患者の割合(ACR50改善率)であった。bimekizumab 16mgおよび160mg投与は主要評価項目を達成 2016年10月27日~2018年7月16日に308例がスクリーニングを受け、206例が5群に無作為に割り付けられた(プラセボ群42例、4つのbimekizumab群各41例)。 12週時のACR50改善率は、プラセボ群と比較して、bimekizumab 16mg群(オッズ比[OR]:4.2、95%信頼区間[CI]:1.1~15.2、p=0.032)、bimekizumab 160mg群(8.1、2.3~28.7、p=0.0012)、bimekizumab 160mg+320mg負荷投与群(9.7、2.7~34.3、p=0.0004)で有意に高かった。 12週時における試験治療下で発現した有害事象(TEAE)の発現率は、プラセボ群で42例中24例(57%)、bimekizumab群で164例中68例(41%)であり、そのほとんどは軽度~中等度であった。重篤なTEAEは9例の患者で確認され、そのうち8例がbimekizumabの投与を受けていた。死亡や炎症性腸疾患の報告は確認されなかった。

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慢性炎症性皮膚疾患、帯状疱疹リスクと関連

 アトピー性皮膚炎や乾癬などの慢性炎症性皮膚疾患(CISD)と帯状疱疹の関連が示された。米国における横断研究の結果、帯状疱疹ワクチン接種が低年齢層で推奨されているにもかかわらず、多くのCISDで帯状疱疹による入院増大との関連が認められたという。米国・ノースウェスタン大学フェインバーグ医学院のRaj Chovatiya氏らが報告した。CISD患者は、帯状疱疹の潜在的リスク因子を有することが示されていたが、CISDの帯状疱疹リスクについては、ほとんど知られていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、CISDに特異的なワクチンガイドラインを確立する必要があるだろう」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年1月17日号掲載の報告。 研究グループは、CISDと帯状疱疹の関連を明らかにする目的で、2002~12年の全米入院患者サンプル(Nationwide Inpatient Sample)のデータを用いて、米国の入院患者の代表コホート(小児と成人6,808万8,221例)について解析を行った。 年齢、性別、人種/民族、保険状況、世帯収入、および長期の全身性コルチコステロイド使用を含む多変量ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・帯状疱疹による入院と、アトピー性皮膚炎(補正後オッズ比[OR]:1.38、95%信頼区間[CI]:1.14~1.68)、乾癬(4.78、2.83~8.08)、天疱瘡(1.77、1.01~3.12)、類天疱瘡(1.77、1.01~3.12)、菌状息肉症(3.79、2.55~5.65)、皮膚筋炎(7.31、5.27~10.12)、全身性強皮症(1.92、1.47~2.53)、皮膚エリテマトーデス(1.94、1.10~3.44)、白斑(2.00、1.04~3.85)、サルコイドーシス(1.52、1.22~1.90)との関連が認められた。・扁平苔癬(補正前OR:3.01、95%CI:1.36~6.67)、セザリー症候群(12.14、5.20~28.31)、限局性強皮症(2.74、1.36~5.51)、壊疽性膿皮症(2.44、1.16~5.13)は、二変量モデルにおいてのみオッズ比の上昇が示された。・60歳未満および50歳未満の感度解析でも、類似の結果が示された。・CISDにおける帯状疱疹の予測因子は、「女性」「慢性症状がより少ない」「長期にわたるコルチコステロイドの全身使用」などであった。

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強直性脊椎炎に、選択的JAK1阻害薬upadacitinibが有効/Lancet

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)への反応が不十分またはNSAIDが禁忌の強直性脊椎炎患者の治療において、upadacitinibはプラセボに比べ、疾患活動性、腰背部痛、身体機能、炎症の統合指標(ASAS40)を改善し、忍容性も良好であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのDesiree van der Heijde氏らが行ったSELECT-AXIS 1試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年11月12日号に掲載された。体軸性脊椎関節炎は、炎症性の腰背部痛、脊椎可動性の制限、付着部炎、末梢関節/関節外症状を特徴とする慢性進行性のリウマチ性疾患であり、X線所見で仙腸関節炎の十分な証拠がある場合に、強直性脊椎炎と呼ばれる。JAKシグナル伝達経路は、強直性脊椎炎の治療標的となる可能性が示唆されている。upadacitinibは選択的JAK1阻害薬であり、乾癬性関節炎や潰瘍性大腸炎、クローン病、アトピー性皮膚炎などの免疫性炎症性疾患の治療薬としても開発が進められている。14週時ASAS40達成を評価するプラセボ対照無作為化試験 本研究は、日本を含む20ヵ国62施設が参加した多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照第II/III相試験であり、2017年11月30日~2018年10月15日の期間に患者の割り付けが行われた(AbbVieの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、ニューヨーク改訂基準を満たす強直性脊椎炎で、生物学的疾患修飾抗リウマチ薬(bDMARD)による治療歴がなく、2剤以上のNSAIDの効果が不十分か、不耐または禁忌の患者であった。 被験者は、upadacitinib(15mg、1日1回)またはプラセボを経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、14週の治療が行われた。 主要エンドポイントは、14週時における国際脊椎関節炎評価学会(ASAS)アウトカム評価の40%改善基準(ASAS40)の達成とした。解析は、最大の解析対象集団(FAS、無作為割り付けの対象となり、試験薬の投与を1回以上受けた患者)で行われた。14週時ASAS40達成率:52% vs.26% 187例が登録され、upadacitinib群に93例、プラセボ群には94例が割り付けられ、178例(95%、各群89例ずつ)が治療を完遂した。 ベースラインの全体の平均年齢は45.4(SD 12.5)歳、男性が71%で、症状発現からの平均期間は14.4(10.8)年、診断からの平均期間は6.9(8.9)年であった。76%がHLA-B27陽性、81%がNSAIDの投与を受けていた。 14週時のASAS40達成率は、upadacitinib群が52%(48/93例)と、プラセボ群の26%(24/94例)と比較して有意に優れ(p=0.0003)、治療群間差は26%(95%信頼区間[CI]:13~40)であった。 upadacitinib群はプラセボ群に比べ、14週時に、以下の項目についても改善が認められた。ASAS20(p=0.0010)、ASAS部分寛解(p<0.0001)、強直性脊椎炎疾患活動性指標の50%以上(BASDAI50)の改善(p=0.0016)、カナダ脊椎関節炎研究コンソーシアム(SPARCC)のMRI脊椎スコア(p<0.0001)とMRI仙腸関節スコア(p<0.0001)、疾患活動性スコア(ASDAS、p<0.0001)、身体機能指標(BASFI、p=0.0013)、マーストリヒト強直性脊椎炎付着部炎スコア(MASES、p=0.0488)、強直性脊椎炎測定指数(BASMI、p=0.0296)、強直性脊椎炎QOL(ASQoL、p=0.0156)、ASAS健康指標(p=0.0073)。 有害事象は、upadacitinib群が62%(58/93例)、プラセボ群は55%(52/94例)で報告された。upadacitinib群で最も頻度の高い有害事象は、クレアチン・ホスホキナーゼ上昇(9%[8例])であり、次いで下痢、鼻咽頭炎、頭痛がそれぞれ5%(5例)に認められた。重篤な感染症、帯状疱疹、悪性腫瘍、静脈血栓塞栓イベントおよび死亡はみられず、重篤な有害事象は1例ずつ(upadacitinib群:変形性脊椎関節症、プラセボ群:心血管疾患)で発現した。 著者は、「これらのデータは、体軸性脊椎関節炎の治療におけるupadacitinibのさらなる検討を支持するもの」としている。現在、非盲検下での90週の継続試験が進行中だという。

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