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TAVI後のNOAC単剤はアスピリンを上回るか?/JAMA

 重症大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)後の非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)単剤療法は、アスピリン(ASA)単剤療法と比較し、低吸収性弁尖肥厚(HALT)の存在で定義した弁尖血栓症の発生率を有意に低下させるとともに、出血、血栓塞栓性イベントまたは死亡のリスクに関して非劣性であった。ノルウェー・オスロ大学のChristopher S. Dodgson氏らが、同国内でTAVIの大部分を担う3施設(3次病院2施設、地域病院1施設)において実施された無作為化非盲検評価者盲検試験「Anticoagulation vs Acetylsalicylic Acid After Transcatheter Aortic Valve Implantation:ACASA-TAVI試験」の結果を報告した。より若く健康状態が良好な重症大動脈弁狭窄症患者に対してTAVIを施行する機会が増えており、TAVI後の抗血栓療法は、弁の耐久性および臨床アウトカムを最適化するうえで重視されるようになっている。著者は「今回の結果は、特定の患者において、TAVI後は抗凝固薬単剤療法が有用となりうることを示唆するものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年8月30日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。NOAC群vs.ASA群、12ヵ月時の弁尖血栓症の発生と安全性を比較 研究グループは、重症大動脈弁狭窄症に対するTAVIが成功(Valve Academic Research Consortium 3[VARC-3]基準に基づく)した65~80歳の患者を、NOAC群またはASA群に1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月間治療を行った。 NOAC群では、TAVI後72時間以内に利用可能であった第Xa因子阻害薬の投与を標準用量で開始し、選択した薬剤の推奨事項にのっとり用量を減量調整した。ASA群では用量調整は行われず、ASA 75mgを投与した。 主要評価項目は、有効性と安全性を評価する共主要評価項目(co-primary end point)戦略を採用することが事前に規定された。有効性の主要評価項目はTAVI弁尖血栓症で、12ヵ月時の盲検下中央判定による4次元心臓CTでのHALTの存在と定義された。安全性の主要評価項目は、12ヵ月時におけるVARC-3基準に基づく出血イベント、血栓塞栓性イベント、全死因死亡の複合とした。NOAC群で、HALT発生が有意に低下、出血・血栓塞栓・死亡リスクは非劣性 2021年12月3日~2025年6月24日に1,983例がスクリーニングされ、うち360例が無作為化された。最終追跡評価日は2026年5月19日。患者背景は、平均年齢74.5歳(SD 3.7)、女性134例(37%)であった。336例が試験を完了した(各群168例)。 主要有効性評価項目である弁尖血栓症は、NOAC群で167例中27例(16.2%)、ASA群で168例中48例(28.6%)に認められた(リスク比:0.55、95%信頼区間[CI]:0.37~0.82、p=0.004)。 主要安全性評価項目である複合イベントは、NOAC群で13例(7.5%)、ASA群で19例(10.6%)に認められた(リスク群間差:-3.3%、95%CI:-9.5~2.8、非劣性のp<0.001)。

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第330回 アトピー当事者が語る、ステロイドの保険見直し問題

INDEXステロイド外用薬で思い出す、苦い過去外用剤といえども…共同声明の発表当事者でないとわからない感覚ステロイド外用薬で思い出す、苦い過去前回、OTC類似薬の一部保険外療養の負担に関して「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」の中間とりまとめに関する中央社会保険医療協議会総会への報告・説明、それに伴う議論を取り上げた。実はこの中間とりまとめについては、私個人もある点で驚きを隠せなかった。それはステロイド外用薬に関して「慢性・再発性疾患に使用される場合があるが、急性増悪時の短期使用が中心であり、別途負担の対象として整理する」という記述だ。これを読んだ時は一瞬、目が点になり、「嘘だろう」と思った。かくいう私は過去に本連載でも触れたが、アトピー性皮膚炎を持病として抱えている。これまでの人生を振り返ると、成人してからはほぼ問題なく過ごしてきたものの、およそ10数年周期で急性増悪を経験してきた。最悪だったのは今から30年以上前、上京して間もない大学1年生だった頃だ。当時は今のようなTARC*を測定しながらのプロアクティブ療法(急性増悪時にステロイド外用薬で一気に炎症の抑え込みにかかり、その後はステロイド外用薬の強さをレベルダウンさせながら、間欠使用に移行し、最終的に保湿剤での維持を続ける)は一般的ではなかった。むしろ記憶する限り、皮膚科クリニックを受診しても「これ塗っといてね」とステロイド外用薬のチューブを処方され、切り替えも塗布中止時期も何も説明されず、漫然と処方され続けたものだ。*アトピー性皮膚炎の重症度評価に用いられる検査当時は医療知識もなく、私自身いわゆる「脱ステロイド」に走った。その結果、全身真っ赤な象皮状態となり、一部からはリンパ液が流れ出し、朝起きるとTシャツの一部が真っ黄色になるほど。そんな生活を10ヵ月弱経験し、日本東洋医学会などでは必ずと言っていいほど名前が挙がる、ある自由診療の漢方治療診療所にたどり着いた。そこで煎じ薬である方剤を処方されたが、ほとんど効果は実感できなかった。2回目の受診の際、そのことを医師に告げると方剤は別のものに変わった。しかし、やはり結果は同じ。その後はこの2種類の方剤が何度も入れ替わる日々が4ヵ月ほど続いた。当時は大学1年生で経済的には親に依存していたが、それでも自由診療の漢方薬の代金は重荷で、ある時は窓口で薬代を払ったら、210円しか残っていなかった。今でも覚えているが、その日は金曜日の夕方。今のように土日にも銀行ATMが開いている時代ではない。携帯電話もない時代のため、同居していた姉にも連絡は取れない。自宅まで210円で帰れる駅を目指して、寒空の下を10kmほどとぼとぼ歩いた。しかも、体は象皮状態。日常動作でも皮膚が切れて出血する状態だったので正直歩くのもつらかった。歩きに歩いて、ようやく電車に乗り、自宅に着いた時は真っ暗。姉はまだ帰宅しておらず、自分の部屋でベッドに腰を掛け、泣き続けていた。その後、私は保険診療でエキス製剤を使って漢方治療をする診療所のことを知り、そこを訪ねた。診察をした医師は丁寧に腹脈をとって事細かに問診をし、自由診療の漢方診療所では単剤で交互に使用していた方剤を2剤併用する旨を告げた。それからわずか2週間ほどで、私の全身の皮膚は半ば忘れかけていた元の状態を取り戻した。外用剤といえども…さて、現在の私の急性増悪に話を戻そう。2026年4月末の診察時、医師には簡潔に過去のことを伝えた。すると、「今はステロイドに拒否感はあります?」と尋ねられた。それはない旨を告げると、「プロアクティブ療法をやっていくうえで、ステロイドは勿論だが、これを使うと上手くいきやすいんですよ。ちょっとお高いけど」と言われ、ジファミラスト(商品名:モイゼルト軟膏、PDE4阻害薬)とデルゴシチニブ(同:コレクチム軟膏、JAK阻害薬)を勧められた。私は一瞬ギョッとしてしまった。非ステロイド性の免疫抑制系外用薬を使わねばならないのかと。これは経口薬で治療を続けてきた2型糖尿病患者がインスリンを勧められた時に受けがちなショックと似た感覚かもしれない。とりあえずこれらは一旦辞退し、ステロイド外用薬のみの治療を開始した。2週間後に思い直してジファミラストを追加することになったが、この際、主治医に最初の提案に私が抱いた感覚を伝えたところ、「ああ、何かわかりますよ」と笑われた。現在は体幹と四肢はほぼ4日おきの外用ステロイド薬・ジファミラストの混合、間にはジファミラスト・ヘパリン類似物質の混合を塗布している。顔も当初は塗布間隔が体幹同様にまで延びたが、日差しが強いと日焼け止めを使っていても炎症が強くなり、今は暫定的に外用ステロイド薬・ジファミラストの混合とジファミラスト・ヘパリン類似物質の混合を1日おきに塗り分けている。一旦は急性増悪を抑え込めても、おそらく保湿剤のみに切り替えることができるまでには相当の時間を要するだろうと覚悟はしている。そんなこんなで今回の中間とりまとめで、私はOTC類似薬の一部保険外療養の負担の半ば当事者になってしまったのである。共同声明の発表さすがにアトピー性皮膚炎患者や皮膚科専門医もこの状態を黙認することはないだろうと思っていたが、実は前回は触れなかったが中医協総会でもアトピー性皮膚炎に関しては問題となった。9月3日に開催された社会保障審議会(医療保険部会)での患者団体へのヒアリングで、認定NPO法人・日本アレルギー友の会(理事長:武川 篤之氏)が患者団体としてこの件に関して強い反対を表明した。その論旨は以下のようなものだ。長くなるが引用する。「アトピー性皮膚炎は寛解と増悪を繰り返す慢性・再発性の疾患であり、急性増悪時だけを治療する病気ではありません。診療ガイドラインでは、抗炎症外用薬によって速やかに寛解を導入したうえで、毎日の保湿と再燃部位への間欠的な外用(プロアクティブ療法)によって再燃を防ぐ長期管理が標準とされています。ステロイド外用薬は、この長期管理を日常的に支える薬剤です。ステロイド外用薬は効果の強さによって5段階に分類され、症状の重症度、部位、年齢に応じて医師が選択し、量や範囲を細かく調整する必要があります。OTC医薬品は軽度の症状を対象としており、医療用のステロイド外用薬とは効能・効果が一致せず、医学的に代替性は成立しません。薬局で購入する場合には、強さを認識しないまま使用して副作用が生じたり、逆に症状に対して十分な効果を得ることができず炎症が持続したり重症化するおそれもあります。追加負担によって毎日の維持治療が細れば、結果として高額な生物学的製剤への移行や入院治療の増加につながりかねません」まったくの同感である。友の会は同日、日本皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会と共同で『OTC類似薬の保険給付見直し案に関する共同声明』1)も発表した。詳細は声明を参照してほしいが、「3.医学的誤認に基づく制度設計」は、前出のようなガイドラインなどを踏まえないもので私も一番驚いた点である。しかも、プロアクティブ療法で、保湿剤によるスキンケアに移行する直前は、(中間とりまとめの中で一部負担対象とされた)比較的効果が弱めのOTC類似薬のステロイド外用薬が長期にわたって使用される。そして声明の「5.歴史的教訓と現在の誤情報」もまさにその通りである。負担が過度に増えることになれば、エビデンスの乏しい民間療法(自然由来ハーブ・オイル療法、温泉療法など)に患者が走る恐れが高まる。さらに「7.患者・家族の生活実態」にある「外用薬は『生きるための薬』であり、寛解維持のための計画的外用が不可欠である」もまさにその通りだ。これに関連して中医協総会では日本医師会副会長の茂松 茂人氏が次のように語っている。「がん患者さん、難病患者さん、指定難病でなくとも重症で就職などができないといった患者さんもおられます。とくに成人のアトピー性皮膚炎では、正規雇用になれない非正規雇用の患者さんが多いとも聞いておりますので、その辺はヒアリングをしっかり聞いていただいて、対応を考えていただければと思います」当事者でないとわからない感覚自分も経験者だからわかるのだが、アトピー性皮膚炎は自分では隠し切れない皮膚に病変が出てしまうため、患者は劣等感を抱きがちだ。とくに顔の症状が強く、治療によるコントロールが十分得られなければ、患者は外出すら避けるようになる。そうなればなかなか正規雇用で働こうとは思わないことは、私自身は容易に想像がつく。再度、自分語りで恐縮だが、茂松氏の発言を聞いて思い出したことがある。まさに30数年前の急性増悪時、本当は外出したくなかったのだが、やむを得ない事情で外出した際のことだ。総武線の各駅停車に乗車中、席がなく顔が真っ赤で盛大に粉を吹いていたこともあり、私は車両の隅に隠れるよう立っていた。その時、着席していた中年女性が私を見るなり、こちらに向かって歩いてきて「お席代わりましょうか?」と申し出てきた。私は丁重に断ったが、明らかに親切心からの申し出にもかかわらず、「自分はよっぽどひどい病人に見えるのだろうな」と落ち込んだ覚えがある。幸いにして今回のOTC類似薬のステロイド外用薬の扱いについては、厚生労働省保険局が患者団体のヒアリングが行われた前述の社会保障審議会(医療保険部会)に提出された『OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について』2)の「実施に向けた論点について」において、「ステロイド外用薬は急性増悪時の短期使用が中心である一方で、アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬のプロアクティブ療法は、診療ガイドラインに位置づけられた計画的な間欠使用であることを踏まえ、長期使用等の例外としてどのように整理するか」と記載され、中間とりまとめに修正が加えられる方向となった。私自身は以前から言っているように、OTC類似薬の保険給付のあり方そのものを見直すことに異論はなく、たとえ自分がその対象になっても医学的・合理的理由があればやむなしとして受け入れるつもりである。しかし、今回のこの1件は医学的な観点から大いに疑問を感じた次第だ。ちなみにこの件に関連して同業の知人からは「国会終了直後、しかも来年施行という短過ぎる時間制約もあったので事務局を責めるのは酷すぎる」と言われた。知人の指摘はわからなくもない。ただ、アトピー性皮膚炎の総患者数は厚生労働省「令和5年(2023年)患者調査」3)では約125万3,000人とされるほど巨大な層である。しかも、患者調査の数字の算出方法を知っている人ならば百も承知だろうが、この数字はある意味最低ラインなのである。なんとかセルフスキンケアだけで凌いでいる人も含めれば、相当な患者数になるはずだ。当初の中間とりまとめの内容に驚いたアトピー性皮膚炎患者は少なくないだろう。そしてそのことで疎外感を抱いた患者もわりといたはずだ。ちなみに私は今も30数年前にコートのポケットの中で210円を握りしめながら歩いた経路を歩くのは、その一部であってもなるべく避けようとしてしまう。患者とはそこまで敏感な存在なのである。125万3,000分の1の「蟷螂の斧」として申し上げておきたい。参考1)日本皮膚科学会:OTC類似薬の保険給付見直し案に関する共同声明2)厚生労働省:OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について3)厚生労働省:令和5年(2023)患者調査の概況

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AF治療中に脳梗塞を招く潜在的要因とは

心房細動(AF)患者における経口抗凝固薬(OAC)投与は、脳梗塞予防の中心であるが、適切に治療されていても脳梗塞を発症する事例が存在する。こうしたブレークスルー脳梗塞(breakthrough ischemic stroke)の潜在的原因や、その後の予後への影響は十分に明らかになっていない。そこで、イタリア・University of L'AquilaのFederico De Santis氏らは、AFでOAC継続中に発症した脳梗塞患者を対象に、潜在的な原因と90日転帰との関連を検討した。その結果、潜在的な原因は約半数で認められ、90日以内の脳梗塞再発リスク上昇と関連していた。本研究結果は、Journal of Neurology誌オンライン版2026年8月17日号に掲載された。本研究は、欧州、北アフリカ、中東9ヵ国の脳卒中センター35施設のデータを用いた多施設共同後ろ向き観察研究で、2020年2月~2025年2月に、AFでOAC服用中に脳梗塞を発症した成人患者を対象に解析を行った。また、対象患者は、指標となる脳梗塞発症時にOACを継続的に服用している必要があり、直接経口抗凝固薬(DOAC)服用中の場合は「指標となる脳卒中発症前の7日間、服用を中断することなく、最後の服用が脳卒中症状発症の48時間前以内であること」、ビタミンK拮抗薬(VKA)服用中の場合は「最後の服用から脳卒中症状発症までの経過時間にかかわらず、国際標準化比(INR)が1.5以上であること」と定義された。ブレークスルー脳梗塞の潜在的原因は、OACと相互作用しうる併用薬、活動性がん、心原性塞栓以外の競合する脳梗塞病因とした。主要評価項目は90日以内の新規脳梗塞で、副次評価項目は90日時点のmodified Rankin Scale(mRS)スコア分布、心筋梗塞、全死亡、血管死(致死的な虚血性または出血性脳卒中、突然心臓死、心筋梗塞、またはそのほかの血管イベントによる死亡)、安全性評価項目は中等度~重度出血および頭蓋内出血とした。主な結果は以下のとおり。・解析対象1,649例の年齢中央値は80.4歳(四分位範囲[IQR]:73.2~85.6、女性860例[52.2%])であった。発症時の服用薬剤はDOAC1,275例(77.3%)、VKA374例(22.7%)であった。・ブレークスルー脳梗塞の潜在的原因が1つ以上認められた患者は724例(43.9%)で、潜在的原因が1つのみの患者は544例(33.0%)、複数の患者は180例(10.9%)であった。・潜在的原因の内訳は、OACと相互作用しうる併用薬が469例(28.4%)、心原性塞栓以外の競合する病因が401例(24.3%)、活動性がんが72例(4.4%)であった。併用薬ではプロトンポンプ阻害薬が450例(27.3%)と大半を占め、抗てんかん薬が31例(1.9%)、H2受容体拮抗薬が3例(0.2%)、デキサメタゾンが3例(0.2%)、ケトコナゾールが1例(0.1%)と続いた。・競合する病因では、頭蓋内/頭蓋外大血管アテローム性動脈硬化が240例(14.6%)で最も多かった。・潜在的原因の有無における結果は以下のとおり(その原因を有する患者vs.原因なしの患者)。・高血圧(87.3%vs.76.3%、p<0.001)・脂質異常症(58.1%vs.45.8%、p<0.001)・糖尿病(30.1%vs.24.3%、p=0.009)・心筋梗塞既往(29.3%vs.16.6%、p<0.001)・脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往(28.7%vs.21.8%、p=0.001)・慢性心不全(21.1%vs.13.4%、p<0.001)・慢性腎不全(20.4%vs.13.0%、p<0.001)・末梢動脈疾患(7.3%vs.2.9%、p<0.001)・90日追跡時点で、新規脳梗塞は57例(3.5%)、心筋梗塞は21例(1.3%)、全死亡は334例(20.3%、うち血管死は215例[13.0%])、中等度~重度出血は55例(3.3%)、頭蓋内出血は28例(1.7%)に認められた。・OAC再開までの期間中央値は7日(IQR:3~12)であった。・主要評価項目である90日以内の新規脳梗塞は、潜在的原因を1つ以上有する患者で4.8%、潜在的原因なしの患者で2.4%であり、潜在的原因を有する患者でリスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:2.04、95%信頼区間[CI]:1.18~3.53、p=0.011)。・一方、90日時点のmRSスコア分布のオッズ比は1.15(95%CI:0.97~1.37、p=0.106)で、90日以内の心筋梗塞(1.5%vs.1.1%、HR:1.70、95%CI:0.69~4.14、p=0.246)、90日以内の全死亡(22.7%vs.18.4%、HR:1.24、95%CI:0.99~1.55、p=0.057)、90日以内の血管死(13.7%vs.12.5%、HR:1.06、95%CI:0.80~1.40、p=0.697)は、潜在的原因の有無で有意差が認められなかった。・安全性評価項目についても、中等度~重度出血(4.0%vs.2.8%、HR:1.38、95%CI:0.80~2.38、p=0.245)および頭蓋内出血(2.1%vs.1.4%、HR:1.48、95%CI:0.69~3.18、p=0.310)は、潜在的原因の有無で有意差が認められなかった。・逆確率重み付け解析では、相互作用しうる併用薬あり818例となし831例が比較され、90日以内の新規脳梗塞は併用薬あり群4.3%、なし群4.0%で差はなかった(HR:1.08、95%CI:0.67~1.73、p=0.761)。一方、90日以内の心筋梗塞は併用薬あり群で2.3%、なし群で0.7%であり、併用薬あり群で有意に高かった(HR:3.26、95%CI:1.30~8.17、p=0.012)。本研究結果について著者らは、AFに対するOAC継続中に発症するブレークスルー脳梗塞では、薬物相互作用、心原性塞栓以外の脳梗塞病因、活動性がんといった同定可能で一部修正可能な潜在的原因が相当数で認められ、これらを体系的に同定し、積極的に管理することがブレークスルー脳梗塞の予防や2次予防の最適化につながる可能性があるとまとめている。

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第329回 医師にバトンは渡された、OTC類似薬の保険給付の見直し

INDEX負担の対象となる医療用医薬品「別途の負担を求めない者」と「求めない療養」の範囲医師にも判断が委ねられる負担の対象となる医療用医薬品6月5日に公布された改正健康保険法などにより、これまで懸案だった一部の医療用OTC類似薬の処方に関し、2027年3月より一部保険外療養として別途の負担が求められることが決まっている。新たな制度で対象となるのはOTC医薬品と成分・投与経路が同一で、1日最大用量が同じ医療用医薬品77成分。主な対応症状は、「鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状全般、腰痛・肩こり、みずむし、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥肌」などとされる。これらを使用する患者は、薬剤費の4分の1を保険外の別途負担として追加で支払うことになる1)。もっともこれを機械的に適用すると、一部の患者に不利益が生じる可能性がある。具体的には、がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱えているような医学的観点からOTC類似薬の長期使用が必要となる患者である。このため厚生労働省は「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」を設置し、6月から4回にわたって会合を開き、別途の負担を求めない患者や求めない療養の範囲について検討を行い、中間とりまとめを8月に公表した2)。まず前述のOTC類似薬77成分は、多くの場合、各成分とも医療用医薬品としての適応は複数ある。これと1日最大用量が同じ同一成分のOTC医薬品の適応を比較し、原則双方で適応が共通する場合は別途の負担の対象、医療用医薬品のみにある適応を別途の負担の対象外としている。この結果、77成分267適応のうち、184適応が対象、83適応が対象外となった。比較的わかりやすい事例を挙げると、抗アレルギー薬はOTC医薬品では花粉症に伴うアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎の適応で販売されているものが多く、この適応でのOTC類似薬側の処方は別途の負担の対象になるが、OTC医薬品が適応としていない気管支喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎などは対象外となっている。また、酸化マグネシウムではOTCの適応である便秘症は支払い対象、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、尿路シュウ酸カルシウム結石の発生予防では対象外である。「別途の負担を求めない者」と「求めない療養」の範囲一方、別途の負担を求めない患者やその療養範囲に関しては、患者分類などに応じて分かれている。まず、がん患者では「がんの治療中に、がんやその治療に関連して生じた状態」に対するOTC類似薬の使用は対象外。がん治療中の定義については「がんおよびその治療に関連して生じた状態に対し、現に治療行為を伴う診療を継続的に受けている場合または治療開始に向けて具体的な治療計画の下で継続的な診療管理を受けている場合」としている。これらの表現はややわかりにくいため、理解を深めるために『がん治療中(別途の負担の対象外)』には該当しない(=別途の負担が課される)事例を列挙する。がんの診断歴はあるものの、現在は再発なく、定期受診のみ継続しているがん術後で定期的な画像検査などによる経過観察を受けているものの、がんに対する薬物療法などの治療行為は終了がんの疑い・再発疑いで精査中前がん病変の状態がんやその治療に関連して生じた症状以外また、指定難病やそれに付随して発生する症状、国の公費負担医療の対象者が対象症状に対して用いる場合、医師の管理下で集中的かつ継続的な治療を受けている入院患者、検査・処置・手術の管理目的での14日以内の処方も、別途の負担の対象外となる。医師にも判断が委ねられる以上は比較的わかりやすいが、かなり判断がグレーになるのが「医師が対象医薬品の長期使用などが医療上必要と考える患者」である。ここでは、症状が季節や環境要因によらず持続し、医師の管理下で継続的な治療が行われている状態を指し、必ずしもその時点までのOTC類似薬の処方期間の長短を問わない。ただし、内服薬に関しては比較的使用期間が把握しやすいことから、年間処方日数がおおむね50週を目安としている。ただし、負担対象を判断する時点で50週の継続処方に該当しなくとも、初診から6ヵ月間にわたり、症状の持続・反復と対象OTC類似薬の継続的・反復的な使用が確認され、通年使用することが医療上必要であると医師が認めている場合は対象外である。さらに長期使用で問題になるのが、内服薬と異なり、使用量や使用頻度に個人差が大きく、処方量のみで長期使用が判断しにくい外用薬である。これについては、以下を踏まえて総合的に判断するとした。明確なようでかなり曖昧である。(1)慢性または反復性の疾患として明確に診断されている(2)該当成分の継続的または反復的な使用が症状緩和にとどまらない有用性・必要性があることが診療ガイドラインなどで示されている(3)継続の必要性が患者の自覚症状や使用感に過度に依存せず客観的に判断できる(4)同一または類似薬効群との均衡やOTC医薬品で対応している患者との公平性を確保できるちなみにこれ以外でも薬の類型による目安も設けられ、抗真菌外用薬、消毒薬、ステロイド外用薬、消炎鎮痛外用薬は、一時的な治療や急性増悪時に用いられることが多いとして、別途の負担の対象とし、皮膚保湿剤・保護剤はアトピー性皮膚炎に対するヘパリン類似物質と尿素、通年性アレルギーに対する点眼薬は対象外となった。この内容は8月26日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会でも事務方から報告され、この日の総会の議論の中心となった1)。とくに診療側委員から出た意見の中心は医療機関側の業務負担の増大である。以下は各診療側委員からの主な意見だ。<日本医師会常任理事 江澤 和彦氏>「これらの複雑な仕組みについて医師が患者さんの診察の都度判断し、医療機関として対応しなければならないこととなり、日常診療へ支障をおよぼすことにもなる。一般診療所の45%、一般病院の35%は紙カルテを用いて診療を行っており、この場合はこれらの管理は極めて困難をきたし、日々の診療に多大なる支障をきたすことが想定される」「今後の導入に向け、医師や医療機関の事務負担が最小限となる簡略なチェックリストの活用、あるいは電子カルテ・レセコンのベンダーに対する必要な情報の迅速な提供をお願いしたい」「制度が実施されると、医療機関の窓口で患者さんへの説明業務など混乱が生じることは明白。会計計算の複雑化など事務負担も非常に大きくなる。国が国民に対してこの制度についてわかりやすく説明いただくことが必須」<日本医療法人協会副会長 太田 圭洋氏>「対象薬を処方する際に、効能・効果、がんや難病との関連、長期使用の医学的必要性などを確認して、対象外の場合にはその理由をレセプトに記載するとともに、処方箋にも必要な情報を記載する形。これらを個々の医師が処方の度に確認して判断・入力することになれば、外来診療で相当な負担が生じることは明らか。年齢、公費、対象薬剤、過去の処方歴など機械的に判定できる項目は、可能な限りシステムで自動判定して、医師による入力は医学的判断が必要な最小限の項目に限定することが必要」「今後も当然、スイッチOTC化が進めば新たな成分が対象に加わることが想定される。その都度、医療機関や薬局にシステム改修やマスター更新を求めることになれば、恒常的な負担となる。対象薬の見直しを年1回など一定の時期に集約するとともに、対象薬の決定から実施まで十分な準備期間を設ける必要がある」<日本歯科医師会常務理事 大杉 和司氏>「歯科の特徴は院内処方で対応する小規模な歯科診療所が多いこと。窓口での患者説明や会計事務が新たに発生することが確実」<日本薬剤師会副会長 渡邊 大記氏>「長期収載品の選定療養と違い、対象患者(自身)が選択できない状況で負担が発生する。薬局は説明するというより、納得してもらう必要が生じてくる。その分、大変な業務負担がかかると思っている」<全国自治体病院協議会副会長 小阪 真二氏>「対象外の理由をレセプトに記載し査定があった場合は、最終的に患者自己負担として払うことになる。2~3ヵ月後に査定があったら、患者にもう一回請求するのか? 請求するならば当然事前に伝えねばならない。処方箋を渡す時に査定があったら2~3ヵ月後に再徴収がありますと説明しなければならないのか」中医協の診療側委員の意見は、一般論として「医療機関側の都合ばかり」と厳しい指摘もあるが、今回は「医療機関の混乱」≒「患者の混乱」の部分が多い。正直、私個人もこの制度には個別細部ではかなりモノ申したいことはそれなりにある。そもそもOTC類似薬の保険給付のあり方については、過去から同様の議論が行われながら、医学的・制度的な困難さと当事者からの反発で具体的な進展はなかったものだ。それが今回は政治主導、より踏み込んで言うならば自民党が連立を組む日本維新の会の主張に寄り添う形で性急に決められたものである。いわば結論ありきで帳尻合わせが行われている。少なくとも制度スタートまで半年を切った今、順調にスタートできそうだとはとても思えないのだが…。参考1)厚生労働省:OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(令和8年8月26日)2)OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会:OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ

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低用量リバーロキサバン、LAAO後の無症候性脳塞栓の減少や認知機能維持に効果/ESC2026

心房細動(AF)患者に対する左心耳閉鎖術(LAAO)後の抗血栓療法において、長期維持療法の最適なレジメンは確立されていない。今回、LAAO成功後のAF患者を対象に、低用量リバーロキサバン(10mg/日)が抗血小板療法と比較して無症候性脳塞栓(SCE)を減少させ、認知機能を維持しうるかを検討する「HALO-SCE試験」を実施。その結果、低用量リバーロキサバンは抗血小板療法と比較し、新規SCEの発生率を有意に低下させ、認知機能低下の抑制効果が認められることが明らかになった。本研究結果は、中国・南京医科大学第一附属病院のKexin Wang氏が8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表し、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月31日号に同時掲載された。本研究は、研究者主導の前向き多施設共同無作為化比較試験である(アウトカム評価は盲検下)。中国本土の3施設において、2022年12月~2025年2月にWatchmanまたはWatchman FLXを用いた経皮的LAAOを受け、術後45日時点の心臓CTまたは経食道心エコー(TEE)でデバイス関連血栓(DRT)がなく、有意なデバイス周囲リーク(3mm以上)を認めないLAAO成功例164例を対象とした。対象患者は、低用量リバーロキサバン(10mg/日)群または抗血小板療法群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。全例でLAAO直後から45日評価まではリバーロキサバン15mg+アスピリン100mgが投与された。無作為化後、抗血小板療法群では180日までアスピリン100mg+クロピドグレル75mg/日(DAPT)を、その後365日までアスピリン単剤(SAPT)が投与された。拡散強調MRI(DW-MRI)および認知機能評価(MMSE、MoCA)は、LAAO後90日、180日、365日時点で実施した。主要評価項目は追跡期間中に新たに検出されたSCEの患者単位の発生率とし、副次評価項目は認知機能の推移、SCE病変負荷(SCE burden)、複合臨床アウトカム(全死亡・臨床的血栓塞栓イベント・大出血)などとした。主な結果は以下のとおり。・低用量リバーロキサバン群82例、抗血小板療法群82例に割り付けられた。評価可能な追跡MRIはリバーロキサバン群80例、抗血小板療法群78例で得られ、評価可能な認知機能評価は各群80例であった。・全体の平均年齢は69.2±7.1歳、女性36.6%、脳卒中既往77.4%であった。平均CHA2DS2-VAScスコアは4.2±1.3、平均HAS-BLEDスコアは2.4±0.7であった。・追跡期間中のMRI実施回数は、リバーロキサバン群2.4±0.7回、抗血小板療法群2.3±0.8回であり、有意差は認められなかった(p=0.328)。・新規SCEの患者単位の発生率は、リバーロキサバン群12.2%(10例)で、抗血小板療法群31.7%(26例)より有意に低かった。・新規SCEが2個以上検出された患者割合は、リバーロキサバン群11.0%(9例)、抗血小板療法群25.6%(21例)で、患者ごとの累積病変数の分布も両群間で有意に異なった。・累積病変径が10mm超の患者は、リバーロキサバン群では認められなかったのに対し、抗血小板療法群では20.7%に認められた。・認知機能低下(MoCAスコア2点以上の低下)は全体で20.0%(32例)に発生し、リバーロキサバン群5.0%(4例)、抗血小板療法群35.0%(28例)であった。・365日時点のモデル推定による群間差は、MMSEで2.56点(95%信頼区間[CI]:1.11~4.01、p<0.001)、MoCAで2.67点(95%CI:1.07~4.26、p=0.001)と、いずれもリバーロキサバン群で良好であった。・事前に規定した複合臨床アウトカムは、リバーロキサバン群2.4%(2例)、抗血小板療法群11.0%(9例)に発生した。臨床的血栓塞栓イベントはそれぞれ1.2%、7.3%、大出血は0%、3.7%であった。・12ヵ月時点の治療継続率は、リバーロキサバン群95.1%、抗血小板療法群85.4%であった。本研究結果について著者らは、「45日時点で成功が確認されたLAAO後の経口抗凝固療法適格患者において、低用量リバーロキサバン(10mg/日)は抗血小板療法と比較して新規SCEの患者単位の発生率を低下させ、12ヵ月までの認知機能の推移も良好で、複合臨床イベントも数値上少なかった」とまとめた。

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第310回 インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省

<先週の動き> 1.インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省 2.OTC類似薬77成分に25%の特別負担 がん・難病患者への配慮を/患者団体 3.医療費5年連続最高、49.2兆円に 75歳以上が4割、介護費も12兆円に/厚労省 4.来年度の概算要求、過去最大36兆5,803億円 医療DXに約930億円/厚労省 5.医療DX工程表を提示 28年度に200床以上病院の電子カルテほぼ100%へ/厚労省 6.「9月の給与払えない」公立病院の資金繰り危機が表面化/日野市 1.インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省厚生労働省は8月28日、インフルエンザが全国的な流行シーズンに入ったと発表した。8月17~23日の第34週に全国約3,000ヵ所の定点医療機関から報告された患者数は4,094人、定点当たり1.11人となり、流行開始の目安である1.00人を上回った。感染症法施行後の1999年以降では、前年から流行が継続していた2023年を除き、2009年に次いで2番目に早い流行入りで、昨年の第39週より5週早い。全国の定点当たり報告数は第30週0.24人、第31週0.37人、第32週0.52人、第33週0.69人、第34週1.11人と、7月下旬以降増加が加速している。都道府県別では沖縄県4.43人が最多で、岩手県2.10人、青森県2.08人、神奈川県1.99人、埼玉県1.83人、千葉県1.80人などで高かった。東京都は1.49人で、患者の5割弱を10歳未満、8割弱を20歳未満が占めており、夏休み明けの学校・家庭内での感染拡大が懸念される。その一方で、愛知県は0.74人と現時点では流行開始目安を下回っている。厚労省の資料によると、第34週には全国約500ヵ所の基幹定点からインフルエンザによる入院患者167人が報告され、うちICU入室9人、人工呼吸器使用5人だった。高齢者や基礎疾患のある人では重症化リスクが高く、医療機関受診時や高齢者施設訪問時などにはマスク着用が推奨される。手洗い、咳エチケットなど基本的感染対策も重要となる。インフルエンザワクチンには発症抑制および重症化予防の効果があり、とくに高齢者や基礎疾患保有者への接種が重要とされる。定期接種の対象は(1)65歳以上の高齢者、(2)60~64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能障害やHIVによる免疫機能障害など(日常生活が極度に制限される障害)を有する者であり、新型コロナワクチンとの同日接種も可能である。 専門家は10月以降の速やかなワクチン接種を推奨している。また、新型コロナも同週に定点当たり1.18人と前週(1.12人)から増加傾向にあり、医療機関においては例年より早いインフルエンザ対応と重複流行への備えが求められる。 参考 1) インフルエンザの発生状況をお知らせいたします(厚労省) 2) インフルエンザ、全国で流行入り 2009年に次ぎ2番目の早さ(産経新聞) 3) インフルエンザが流行入り、1999年以降で2番目に早く・沖縄が最多…専門家「ワクチンを受けにいって」(読売新聞) 4) 昨年より5週早く、インフル流行開始目安到達東京都(CB news) 2.OTC類似薬77成分に25%の特別負担 がん・難病患者への配慮を/患者団体2027年3月から、OTC医薬品と同一成分などの医療用医薬品「OTC類似薬」について、患者に薬剤費の25%を特別料金として求める一部保険外療養制度が始まる。対象は2026年8月時点で77成分1,042品目(解熱鎮痛薬ロキソプロフェン、抗アレルギー薬フェキソフェナジン、保湿剤ヘパリン類似物質など)。残る75%部分には従来通り保険給付と自己負担が適用される。中間とりまとめでは、がん患者、指定難病患者、公費負担医療の対象者、入院患者、一定の長期使用などは条件付きで特別負担の対象外とする方針。ただし、がん治療終了後の短期・中期使用は扱いが曖昧で、患者団体から見直しを求める声が出ている。全国がん患者団体連合会は、乳房切除後疼痛症候群、リンパ浮腫に伴う疼痛、薬物療法後の関節痛や末梢神経障害、皮膚障害など、治療終了後にも鎮痛薬や外用薬、保湿剤などが必要となるケースを提示した。とくに問題となるのが「年間おおむね50週以上」とされる長期使用の判定である。同じ病態でも頓用・間欠投与となる患者では基準を満たさず、追加負担となる可能性がある。また、皮膚科や整形外科、かかりつけ医など、がん診療医以外が処方する場合に「がん治療との関連性」を判断しにくい点も指摘されているほか、処方時点で将来の使用期間を予測することも困難である。小児がん経験者は、治療終了後も内分泌障害や神経障害、心腎機能障害などの晩期合併症を長期間抱え、頓用薬を生涯使用する例もある。患者団体は、50週という期間だけでなく、治療歴、臓器機能、医師管理下での使用、代替可能性などを総合的に判断するよう求めている。厚労省は9月中に対象外となる患者の範囲などを取りまとめる予定。医療現場では、対象判定に加え、患者説明、処方箋・レセプト対応、システム改修も必要となるため、実務上分かりやすい基準作りが求められる。 参考 1) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(厚労省) 2) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ(同) 3) 全国がん患者団体連合会提出資料(同) 4) 対象外の範囲設定で「柔軟運用」求める声 医療保険部会 OTC類似薬の一部保険外療養巡る議論で(CB news) 5) 「OTC類似薬を使用する場合、患者特別負担がいくらになるのか」の具体例提示し、国民の不安を軽減せよ-社保審・医療保険部会(Gem Med) 3.医療費5年連続最高、49.2兆円に 75歳以上が4割、介護費も12兆円に/厚労省厚生労働省は、2025年度の概算医療費(速報値)が前年度比2.6%増の49兆2,000億円となり、5年連続で過去最高を更新したと発表した。受診延べ日数は0.7%減少した一方で、医療技術の高度化や抗がん剤など高額薬剤の使用増加が医療費を押し上げた。増加率2.6%の内訳は、医療技術の高度化など「それ以外の影響」が2.9%増、高齢化の影響が0.6%増、人口増の影響が0.5%減、診療報酬改定などの影響が0.39%減となった。診療種類別では、入院が2.3%増、入院外が1.6%増、歯科が3.5%増、調剤が3.9%増。歯科では貴金属価格上昇(歯科用貴金属医療費が10.1%増)、調剤では腫瘍用薬やホルモン剤などの使用増が影響した。年齢別では、75歳以上の医療費が20兆3,000億円(3.9%増)で全体の41.3%を占め、1人当たり医療費は98万9,000円と、75歳未満(26兆5,000億円、1人当たり26万1,000円)の3.8倍に達した。その一方で、2024年度の介護費は、高額介護サービス費などを含め12兆952億円となり、前年度比3.2%増加した。介護保険制度開始時の2000年度と比べると3.3倍の規模で、要介護・要支援認定者は720万7,000人に達した。介護給付費は居宅サービス3.4%増、地域密着型2.6%増、施設3.6%増となり、施設サービスの伸びも目立った。第1号被保険者の認定率は19.7%で、都道府県別では大阪府24.3%、茨城県16.5%と1.47倍の差がある。1人当たり介護給付費も29万6,300円と3.5%増えた。団塊世代が全員75歳以上となり、今後は85歳以上人口の比率上昇と現役世代の減少が同時に進む。医療・介護の複合ニーズが増す中、サービス確保や人材確保、質の向上に加え、給付の効率化と地域差の検証など、制度の持続可能性をどう確保するかが一段と重要になる。2027年度には介護報酬改定も予定されており、増大する需要と担い手不足をどう両立させるかが焦点となる。 参考 1) 医科医療費(電算処理分)の動向 ~令和7年度版~(厚労省) 2) 医療費総額49.2兆円、5年連続で過去最高を更新…高齢化・医療技術の高度化など要因(読売新聞) 3) 25年度の概算医療費、2.6%増49.2兆円 医療高度化で増加(日経新聞) 4) 2024年度の介護費、高額介護サービス費など含めれば12兆952億円で、前年度から3.2%の増加-介護保険事業状況報告(Gem Med) 4.来年度の概算要求、過去最大36兆5,803億円 医療DXに約930億円/厚労省厚生労働省は2027年度予算の概算要求として、2026年度当初予算比1兆5,370億円増の36兆5,803億円を計上した。要求段階では過去最大で、このうち年金・医療などの社会保障関係費は33兆6,872億円。高齢化などによる自然増として3,397億円を見込む。今回の特徴は、要求上限のない「『強く豊かな日本』投資枠」に1兆337億円を計上した点である。重点分野として、創薬・先端医療分野に約1,969億円(うち創薬スタートアップ支援・人材育成に355億円、治験・臨床試験体制強化に155億円、AI創薬環境整備に541億円)、感染症危機対応医薬品等の確保支援に2,129億円を要求した。医療DXの推進には934億円を要求し、標準仕様準拠の認証電子カルテの普及支援(604億円)やクラウドネイティブ化、全国的なデータ連携基盤整備を進める。さらに医療機関のサイバーセキュリティ対策や、医療・福祉分野におけるAI・ICTを活用した生産性向上・データ共有推進(829億円)などを盛り込んだ。その一方で、医療機関にとって最大の焦点となる物価・人件費高騰への対応は、診療報酬上の加算を含め金額を示さない「事項要求」とされた。2027年度の介護・障害福祉報酬改定も同様で、具体額は年末の予算編成で決まる。前年度の概算要求でも、物価高など重要政策は予算編成過程で検討する仕組みが示されており、病院経営が厳しさを増す中、年末にどこまで実効性ある財政支援が盛り込まれるかが注目される。 参考 1) 厚労省予算要求、最大の36兆円 創薬強化や福祉人材確保(共同通信) 2) 厚生労働省 概算要求で過去最大の36兆5,803億円を計上(NHK) 3) 厚労省概算要求、過去最大の36兆5千億円 投資枠で創薬力強化(朝日新聞) 4) 厚労省の概算要求は過去最大の33兆7,929億円に-『強く豊かな日本』投資枠に1兆337億円(日本医事新報) 5.医療DX工程表を提示 28年度に200床以上病院の電子カルテほぼ100%へ/厚労省厚生労働省は8月27日の社会保障審議会医療部会・医療保険部会を開き、医療DXの今後の工程を示す「医療情報化推進方針(案)」と電子カルテ情報共有サービスの進捗を報告した。第1期の対象期間は2026年10月1日~2030年3月31日までの3年半で、9月末までに厚生労働大臣が官報告示する予定。社会保険診療報酬支払基金は10月1日に「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(DX審査支払機構)」へ改組され、同方針に基づく中期計画を策定する予定。電子カルテ情報共有サービスは現在、全国10地域でモデル事業を実施中で、2026年度冬をめどに全国運用を開始する。共有対象はまず診療情報提供書、退院時サマリ、健診結果報告書の3文書と、傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査、処方の6情報。モデル事業では、感染症情報を患者への説明前に共有する場合の扱いや、院内コードと共有用コードの対応などの課題を検証している。運用開始時には、全国721の地域医療支援病院を対象に、電子診療録等情報の提供・利用体制の整備を努力義務とする方針であり、冬までに省令で規定する。運用開始後は普及状況を踏まえて対象を拡大する考えで、医療部会では特定機能病院や災害拠点病院、救急病院などへの拡大を求める意見も出された。厚労省の資料でも、まず地域医療支援病院を指定し、その後、普及計画の効果を見ながら努力義務の対象拡大を検討するとしている。同時に電子カルテ自体の普及も加速する。2027年度から共有サービスなどに対応する「認証クラウドネイティブ型電子カルテ」および「標準型電子カルテ(導入版)」の導入を進め、2028年度までに療養病床等が中心の病院を除く200床以上病院で普及率約100%、2030年末までに全医療機関で普及率約100%を目指す。オンプレミス型からクラウド型への移行により、業務効率化、セキュリティ強化、データの二次利用を含めた共有を推進する。医療・介護情報の連携も段階的に拡大する。2026年度から介護情報基盤を標準化対応済み自治体から順次開始し、2028年度をめどに全自治体へ広げる。あわせて2028年度には医科・DPC向け共通算定モジュールの請求支援機能や労災版モジュールの運用開始、電子カルテ情報を創薬等に二次利用するデータベースの運用開始を目指す。電子カルテ情報共有サービスでは2027年度に訪問看護指示書・計画書・報告書等を共有対象に加え、2029年度には歯科情報にも拡大する予定である。その一方で、医療部会では電子カルテの新規導入・更新費、クラウド利用時の通信費、停電や回線断絶時の事業継続性などへの懸念が相次いだ。厚労省は2027年度予算概算要求で、新規導入だけでなく更新・買い替えも含む支援を盛り込む方針。医療DXは構想段階から全国実装へ移りつつあり、医療機関には今後数年間で、システム更新時期や費用、地域連携、災害・サイバー対策を一体的に見据えた対応が求められる。 参考 1) 医療情報化推進方針案等について(厚労省) 2) 医療DXの進捗状況等について(同) 3) 2028年度までに療養除く200床以上病院で、30年度までに全医療機関で「電子カルテ導入率100%」を目指す-社保審・医療部会等(Gem Med) 4) 電子カルテ情報共有、地域医療支援病院に努力義務運用開始後に対象拡大検討 厚労省方針(CB news) 6.「9月の給与払えない」公立病院の資金繰り危機が表面化/日野市東京都日野市は、市立病院で9月の給与支払いに必要な資金が不足するとして、緊急に1億円を貸し付ける。医師、看護師ら約700人の給与は約2億7,000万円。9月の5連休で給与支給が18日に前倒しされる一方で、診療収入の入金は24日となるため、一時的に資金がショートする見通しとなった。ただし、朝日新聞の報道で原因とされている連休は直接のきっかけにすぎず、背景には長年の経営悪化がある。日野市立病院は300床の地域医療支援病院で、二次救急、周産期、災害・感染症医療などを担う。2023年策定の経営強化プランでは、病床利用率を高めて経常黒字化を目指していた。しかし、2026年5月の経営再建支援報告書によると、コロナ禍では補助金により黒字を維持したものの、補助金終了と人件費増で2023年度の経常利益率はマイナス15.2%、2024年度はマイナス18.6%、約14億円の赤字に悪化した。医業収支の赤字も約17億7,200万円で、同規模病院と比べ下位4分の1を下回る水準だった。収益面では、2024年度の病床稼働率は62.0%、DPC症例の1日単価は5万8,453円。黒字化には、単価を維持したままなら稼働率89.5%、稼働率を維持するなら1日単価8万4,401円が必要と試算され、現状との差は大きい。救急応需率も2024年度55.2%にとどまり、東京消防庁からの搬送要請を約半分断っていた。さらに、2024年度の経常収益約77億円に対し、損益分岐点は約90億円で、黒字化には約13億円の増収が必要とされた。赤字の積み重ねで手元資金が細り、市は昨年度10億円を貸し付け、今年度も別途10億円を支援する方針だった。そこへ入出金の6日間のずれが重なり、追加融資が必要となった。今回の事例は、低い病床稼働率(62.0%)、低水準の救急応需率、診療単価の低迷と高い固定費により、短期の資金ギャップを吸収できない財務体質に陥っていた結果といえる。日野市立病院は2026年4月に地方公営企業法「全部適用」へ移行して経営強化を進めていたが、全国自治体病院協議会の2025年度決算調査でも自治体病院の84%(有効回答494病院中)が経常赤字に陥っている実態が示されており、公立病院の経営難が決算上の赤字にとどまらず、日々の運転資金や給与支払いに直結する危機的局面を迎えていることを示している。 参考 1) 日野市立病院経営強化プラン(日野市立病院) 2) 令和7年度日野市立病院 経営再建支援業務委託報告書(日野市) 3) 日野市立病院「9月の給与払えない」財政難に連休も影響、市が支援へ(朝日新聞)

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外の海へ漕ぎ出せ!~血栓と出血の狭間で揺れる循環器内科医に届いた「1ヵ月」の福音~【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第99回

はじめに:血栓と出血、あちらを立てればこちらが立たず循環器内科の外来診察室では、日々このような静かな葛藤が繰り広げられています。患者「先生、歯茎から血が出るし、腕に大きな青あざができるんですけど……」医師「そうですよね……でも、お薬をやめると血管が詰まってしまう危険もあるんです。脳梗塞の心配もありますからね……」心房細動(AF)を合併し、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)によってステントを留置した患者の治療は、まさに綱渡りです。心房細動による脳梗塞を防ぐには抗凝固薬(DOAC)が必要です。一方で、留置したステントの血栓性閉塞を防ぐためには抗血小板薬(P2Y12阻害薬)が必要になります。その結果、「DOAC+抗血小板薬」という強力な2剤併用抗血栓療法を続けざるを得ません。ところが、血栓予防を強化すればするほど、必然的に出血リスクは高まります。血栓を防いで命を救っているのか。あるいは出血という新たな危険を招いているのか。医師の心は常にその狭間で揺れ続けます。「この2剤併用療法を、いったいいつまで続ければよいのか?」長年にわたり、「十分な期間しっかり続けるべきだ」という考え方と、「できるだけ早く減らして出血を防ぐべきだ」という考え方がせめぎ合ってきました。世界中の循環器医が明確な答えを求め続けてきたこの命題に、日本から極めて重要なエビデンスが投じられたのです。金字塔:『Lancet』誌への掲載という快挙2026年7月15日、医学界の最高峰の一つである国際総合医学雑誌『Lancet』に、日本発の臨床研究が掲載されました1)。「OPTIMA-AF試験」です。『Lancet』は『New England Journal of Medicine』『JAMA』『BMJ』と並び、世界中の臨床医と研究者が注目する総合医学雑誌です。そこに日本主導の無作為化比較試験が掲載されることは、日本の循環器領域にとって歴史的快挙と言ってよいでしょう。この研究は、大阪大学の外海 洋平(そとみ・ようへい)氏らを中心とする「OPTIMA-AF Investigators」によって施行されました。本試験は、非弁膜症性心房細動を合併した冠動脈疾患患者を対象に、PCI後のDOACとP2Y12阻害薬の併用期間を1ヵ月に短縮し、その後DOAC単剤へ移行する戦略の有効性と安全性を検証した多施設共同無作為化比較試験です。全国75施設から1,079例が解析対象として登録されました。オールジャパンの結集と「外の海」への船出臨床研究に携わった経験がある者なら、この数字の重みがわかるはずです。全国75施設にわたり1,000例を超える患者を登録し、長期間にわたって追跡を完遂することは容易ではありません。日常診療に追われながら厳格なプロトコールを守り、質の高いデータを収集し続けるためには、研究事務局だけでなく各施設の医師、CRC、看護師、薬剤師など、多くの人々の献身が必要です。特筆すべきは、本研究が従来の大学医局や系列病院の枠を超えた、まさに「オールジャパン」の体制によって成し遂げられたことでしょう。日本の医療界には、ともすれば組織の垣根や地域の壁が存在します。しかし「OPTIMA-AF」は、それらを超えて国内の力を結集し、世界へ向けて発信された成果でした。そして実務的に研究を牽引した外海 洋平氏の名前を見るたび、私はある光景を思い浮かべます。日本の臨床研究という「内海」から船出し、世界標準という「外の海」へと漕ぎ出していく研究者たちの姿です。その航海は決して平穏ではありません。資金、人材、英語、査読、国際競争。その幾重もの荒波を乗り越えた末に、ついに世界最高峰の舞台へ到達したのです。OPTIMA-AF試験の概要と解釈非弁膜症性心房細動CHADS2スコア1点以上PCI施行患者解析対象1,079例無作為に以下の2群へ割り付けられました。1ヵ月併用群(542例)DOAC+P2Y12阻害薬を1ヵ月投与その後DOAC単剤へ移行12ヵ月併用群(537例)同治療を12ヵ月継続その後DOAC単剤へ移行有効性(全死亡または血栓塞栓イベント)1ヵ月群:5.4%、12ヵ月群:4.3%、HR:1.25(95%信頼区間[CI]:0.73~2.17)事前に設定された基準を満たし、1ヵ月群の非劣性が示されました。安全性(ISTH大出血または臨床的に重要な非大出血)1ヵ月群:4.5%、12ヵ月群:8.8%、HR:0.50(95%CI:0.30~0.81)1ヵ月群では出血イベントが有意に減少し、出血リスクはほぼ半減しました。これらの結果は、「1ヵ月で抗血小板薬を中止しDOAC単剤へ移行する戦略は、主要有効性評価項目について12ヵ月併用療法に対する非劣性を示し、さらに出血を大幅に減らした」ことを意味します。もちろん、著者ら自身も慎重な解釈を促しています。実際の血栓イベント発生率は想定より低く、主要有効性評価項目については十分な注意をもって評価すべきであることが論文のDiscussion中で繰り返し述べられています。それでもなお、少なくとも本試験の条件下においては、抗血小板薬の早期中止によって出血を減らしながら、有効性を維持し得る可能性が示された意義は極めて大きいと言えるでしょう。おわりに:世界へ投じられた大きな一石OPTIMA-AF試験が示したのは、単に「薬を1剤減らせる」という話ではありません。血栓症を防ぐために出血リスクを受け入れるのか。出血を避けるために血栓リスクを甘受するのか。その長年のジレンマに対して、「よりよい均衡点が存在するかもしれない」という希望を、無作為化比較試験という最も信頼性の高い方法論によって示したのです。もちろん、この1本の研究だけですべての議論が終わるわけではありません。対象患者の大部分は慢性冠症候群であり、急性冠症候群や欧米集団への一般化には慎重さが求められます。また著者らも、主要有効性評価項目については今後さらなる検証が必要であると述べています。しかし、それでもなお、この成果は今後の国内外の診療ガイドラインや臨床実践に大きな影響を与える可能性を秘めています。明日からの循環器外来で、「ステントを入れて1ヵ月たちましたね。そろそろ薬を減らせるかもしれません」と語ることができる患者さんが増えるかもしれないのです。それは出血合併症を減らし、患者の負担を軽くし、より合理的な抗血栓療法への道を開くことにつながります。緻密な研究デザインのもと、全国の施設を束ね、多くの困難を乗り越え、世界最高峰の舞台へ到達したOPTIMA-AF研究グループに、心からの敬意と祝意を表したいと思います。Congratulations!血栓と出血の狭間で悩み続けてきた循環器医たちにとって、この研究は確かに一筋の光として届いたはずです。そして、外海 洋平氏らが切り開いた「外の海」への航路は、これから先も日本発の臨床研究を乗せた多くの船を世界へ導いていくに違いありません。 1) Sotomi Y, et al. Lancet. 2026 Jul 15. [Epub ahead of print]

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抗凝固療法が必要な症例に、PCIを行った後の至適な抗血栓療法とは(解説:山地杏平氏)

 抗凝固療法が必要な症例に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した際の抗血栓療法では、虚血イベントを抑制しながら、いかに出血リスクを低減するかが重要な課題となっています。これまでWOEST、PIONEER AF-PCI、RE-DUAL PCI、AUGUSTUS、ENTRUST-AF PCIなどの試験により、経口抗凝固薬にP2Y12阻害薬を加えた2剤併用療法は、3剤併用療法と比較して出血リスクを低減できることが示され、その安全性が確立されてきました。一方で、この2剤併用療法をどの程度の期間継続すべきかについては、依然として明確なエビデンスが不足していました。 少なくともPCIから1年以上経過した患者を対象としたOAC-ALONE試験や、AFIRE試験では、安定冠動脈疾患を有する心房細動患者において、抗凝固単独療法は、出血イベントのみならず複合臨床イベントも抑制することが示されました。今回発表されたOPTIMA-AF試験では、さらに期間を短縮し、PCI後1ヵ月で抗凝固単独療法とすることは、12ヵ月間2剤併用療法を継続するものと比較して、死亡・血栓塞栓イベントに対する非劣性を示すとともに、出血リスクを約50%減少させることが示されています。 一方で、本試験の対象患者は約94%が慢性冠症候群であり、急性心筋梗塞患者は含まれていないことには注意が必要です。また、主要有効性イベントの発生率は当初想定していた約10%ではなく4%程度にとどまりました。1ヵ月群の有効性は統計学的には非劣性を示したものの、真の差がまったくないとまでは証明できていません。これらを総合的に踏まえると、慢性冠症候群症例において、問題なくPCIが行われた症例に限定して、早期の抗凝固単独療法への移行を検討するというのが現実的であると考えられます。 最後に余談になりますが、本試験を主導された外海 洋平先生は、欧州留学中から質の高い臨床研究を次々と発表され、その活躍ぶりは周囲の研究者の間でも大きな話題となっていました。筆者も同時期に欧州に留学していましたが、新しい論文が次々と発表されるたびに、仲間内で「今月の月刊外海が出版された」と、その研究の質とスピードに驚かされたことをよく覚えています。 帰国後は、日本ならではの診療や研究体制の中で、本試験のような国際的に高く評価される研究をまとめ上げられました。日本発のランダム化比較試験がLancet誌に掲載されることは、わが国の循環器診療・研究にとっても大変意義深く、外海先生をはじめ、本試験に携わられたすべての先生方に心より敬意を表するとともに、心からお祝いを申し上げます。

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第307回 特定健診は初の6割台 メタボ該当・予備群は880万人で横ばい/厚労省

<先週の動き> 1.特定健診は初の6割台 メタボ該当・予備群は880万人で横ばい/厚労省 2.熊本地震で病院船が初出動 DMAT・JMATなど災害医療チームも活動/熊本県 3.OTC類似薬「薬剤費25%」が患者負担に、長期処方での配慮対象は限定的/厚労省 4.医療・介護AIに重点投資 AX・DX推進本部を設置/厚労省 5.国立大学の経営危機、東大にも波及 研究力低下への懸念強まる/東大ほか 6.正常な脳組織を誤って摘出 50代女性が自発呼吸不能の重篤状態/京大 1.特定健診は初の6割台 メタボ該当・予備群は880万人で横ばい/厚労省厚生労働省は、2024年度の特定健康診査・特定保健指導の実施状況を公表した。特定健診の対象者は約5,142万人、受診者は約3,161万人で、実施率は61.5%となり、前年度から1.6ポイント上昇した。2008年度の制度開始時は38.9%で、今回初めて6割を超えた。国は2029年度までに70%以上の実施を目標としている。性別では男性65.9%、女性57.0%で、男性が8.9ポイント高かった。年齢別では45~49歳が66.8%で最も高く、60歳未満ではおおむね6割台を維持した一方で、65~69歳は52.8%、70~74歳は47.5%まで低下した。保険者別では健康保険組合83.8%、共済組合83.3%に対し、全国健康保険協会60.6%、市町村国保38.8%と大きな差がみられた。特定保健指導は、対象者約524万人のうち約148万人が終了し、実施率は28.3%。前年度から0.7ポイント上昇し過去最高を更新したものの、2029年度目標の45%以上とはなお大きな開きがある。保険者別では単一健康保険組合が46.1%で最も高く、小規模市町村国保が45.3%で続いた。メタボリックシンドロームの該当者・予備群は約880万人で、2008年度比では17.2%減少しており、減少幅は前年度から横ばい推移となった。また、特定健診受診者の31.1%は高血圧症、糖尿病、脂質異常症の治療薬を1種類以上服用していた。受診率は着実に改善しているが、年齢や保険者による格差の縮小に加え、健診後の保健指導や必要な治療へ確実につなげることが今後の課題となる。 参考 1) 2024年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況(厚労省) 2) 特定健診、実施率は61.5%に上昇 24年度、保健指導は28.3%(MEDIFAX) 3) 特定健診実施率、初の6割超え24年度 29年度までに7割以上目標 厚労省(CB news) 2.熊本地震で病院船が初出動 DMAT・JMATなど災害医療チームも活動/熊本県政府は8月5日、7月28日に発生した令和8年熊本地震で多数の医療機関が被災した熊本県八代市の八代港で、防衛省による民間船舶(PFI船)を活用した医療提供(船舶活用医療)を初めて実施した。熊本県知事が8月1日に国へ要請したもので、2021年成立の「災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する法律」に基づく初の船舶活用医療となる。内閣府、防衛省、熊本県に加え、日本赤十字社、DMAT、JMATなどが連携。船内では発熱などの内科診療、熱中症や軽傷への対応、薬の処方などを行い、併せて被災者への入浴支援も実施した。8月5日午後2時から医療提供を開始し、初日の医療利用者は13人、活動した医療従事者は23人だった。その一方で、「はくおうII」への乗船者は187人、うち182人が入浴支援を利用した。台風13号の接近に伴い、同船は6日午前6時に八代港を出港し、医療提供も一時中断している。被災地ではDMAT、DPAT、日赤救護班、災害支援ナース、JMATなども活動を継続している。透析は一時13施設で実施が困難となったが、8月6日時点で実施困難な2施設についても他院での透析が手配済みとなった。船舶は陸上の医療機関やライフラインが被災した際にも、医療、衛生、生活支援を一体的に提供できる新たな災害医療拠点として期待される一方で、今回の台風による中断は、気象条件に左右される運用上の課題も示した。 参考 1) 令和8年熊本地震に係る被害状況等について(内閣府) 2) 令和8年熊本地震における船舶活用医療の実施について(同) 3) 熊本の被災地にあすから「病院船」、防衛省の船舶活用し初の取り組み…内科診療や熱中症治療・薬の処方も(読売新聞) 4) 防衛省チャーター舶「はくおうII」が入浴や医療提供 断水や猛暑に苦しむ熊本の被災者支援(産経新聞) 5) 避難者支援で医療チームが相次ぎ活動 熊本地震 DMAT・DPAT・災害支援ナースなど(CB news) 3.OTC類似薬「薬剤費25%」が患者負担に、長期処方での配慮対象は限定的/厚労省厚生労働省は8月5日、「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」で中間とりまとめを了承した。2027年3月から、市販薬と成分・投与経路が同一で1日最大用量も異ならないOTC類似薬について、薬剤費の25%相当を保険給付の対象外とし、通常の1~3割の自己負担とは別に「特別料金」として患者が負担する。8月時点の対象は77成分1,042品目で、解熱鎮痛薬、抗アレルギー薬、湿布、保湿剤など日常診療で使用頻度の高い薬剤が含まれる。ただし、一定の患者や使用場面には配慮措置を設ける。がんや指定難病の患者、公費負担医療の対象者は、原疾患や治療に関連する症状への処方であれば追加負担の対象外とする一方で、花粉症など原疾患と無関係な症状への処方は対象となる。18歳未満の子供や入院中・退院時の処方も対象外。外来・在宅でも、生検、処置、手術など侵襲的医療行為に伴い新たに処方する薬は原則14日分まで対象外とする。長期使用の扱いも焦点となる。内服薬は年間おおむね50週の処方が目安で、診療情報提供書、お薬手帳、オンライン資格確認の薬剤情報などで処方歴を確認する。初診で過去の処方歴が確認できない場合は、少なくとも6ヵ月間の症状の持続・反復と薬剤使用を確認した上で、医師が通年使用を必要と判断する。外用薬はさらに条件が厳しく、湿布などの鎮痛消炎外用薬は長期使用でも原則追加負担となる。ただし2028年度末までは、画像検査で重度の変形性膝関節症などが確認され、医師が毎日の継続使用を必要と判断する場合に限り対象外とする。アトピー性皮膚炎に対するヘパリン類似物質や尿素の通年使用は対象外となる。また、医療用薬とOTC薬で効能・効果が一致しない場合は追加負担を求めない。たとえばフェキソフェナジンは、OTCにない蕁麻疹や皮膚疾患に伴うそう痒への使用では対象外となる一方で、アレルギー性鼻炎では原則対象となる。7月にOTC薬が発売された睡眠薬ラメルテオンも対象成分に追加された。今回の制度変更は現場にも大きく影響する。医療機関には対象外と判断した根拠を診療報酬請求書などに記載することが求められる方向で、処方箋様式の変更や電子カルテ、レセコン改修も見込まれる。検討会でも、医師や薬剤師の確認業務が過度に複雑にならない簡素な運用を求める声が相次いだ。厚労省は8月6日から中間とりまとめへのパブリック・コメントを実施しており、8月20日が締め切りとなっている。全国保険医団体連合会(保団連)は、慢性疾患でも配慮対象にならないケースが多いうえ、対象外か否かを判断する医療現場の負担が大きいとして、医療関係者らに厚労省のパブコメへ意見を提出するよう呼びかけている。意見はe-Govのパブリック・コメントから提出できる。厚労省は今後、さらに医療保険部会や中医協で議論し、今秋に省令・告示、関連通知などを取りまとめる予定。 参考 1) 第4回OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会(厚労省) 2) 「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」について(同) 3) 入院患者は追加負担対象外 OTC類似薬で厚労省案 がんの主たる疾患や副作用の薬も(産経新聞) 4) OTC類似薬の技術的検討会が中間取りまとめ 湿布薬は慢性・重度の変形性膝関節症は除外 対象1042品目(ミクスオンライン) 5) OTC類似薬保険除外 厚労省が配慮措置(中間とりまとめ)のパブコメ募集開始 8月20日まで(保団連) 6) 湿布は長期使用でもOTC類似薬の追加負担に 厚労省検討会で了承(朝日新聞) 7) OTC類似薬の患者特別負担の詳細固まる、アトピーへの「ヘパリン類似物質・尿素」通年処方は特別負担対象外-厚労省技術的検討会(Gem Med) 8) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」に関する意見公募の実施について(パブリック・コメント) 4.医療・介護AIに重点投資 AX・DX推進本部を設置/厚労省厚生労働省は8月5日、医療・介護・福祉分野でAIやデジタル技術の活用を推進する「厚生労働省ヘルスケアAX・DX推進本部」の初会合を開いた。本部長を務める上野 賢一郎厚労相は、従来の医療DXに加え、AIトランスフォーメーション(AX)も省を挙げて戦略的、総合的に推進する方針を示し、各部局に2027年度予算の概算要求へ必要な事業や経費を盛り込むよう指示した。推進本部は、これまで各部局で進めてきたAI・DX関連施策を一元的に把握し、全省的に加速させる司令塔として4日に発足した。本部長に厚労相、副本部長に事務次官、厚生労働審議官、医務技監などを置き、関係部局長が参加するほか、「AI for ヘルスケア成長戦略室」を新設し、迫井 正深医務技監を室長として、具体的施策の検討や関係省庁との調整を行う。背景には、政府が日本成長戦略で「AI・半導体」を17の戦略分野の1つに位置付けたことがある。医療・介護ではAIロボットなどの「フィジカルAI」、医療・介護・福祉では領域特化型の「バーティカルAI」の開発・導入を進める。政府はフィジカルAIで2040年に世界シェア3割超、市場規模20兆円、バーティカルAIでは2030年までに世界で5兆円超の市場獲得を目標に掲げる。看護記録などの文書作成や福祉相談業務を支援するAIの普及、研究開発・実証、AI活用に必要なデータ基盤の整備などが想定される。創薬・先端医療でも、AIやデータ活用による研究開発プロセスの高度化・効率化を推進する。政府は成長戦略で新設した、予算要求上限を設けない「『強く豊かな日本』投資枠」も活用し、官民投資を促す方針。厚労省は今後、8月末の概算要求に向けて施策を具体化する。 医療DXが電子化や情報連携を中心としてきたのに対し、今後は診療・看護・介護など実務そのものをAIで変革するAXへ政策領域が広がることになる。 参考 1) 第1回厚生労働省ヘルスケアAX・DX推進本部 資料(厚労省) 2) 医療や介護のAI活用を支援 厚労省が推進本部設置(日経新聞) 3) 厚労省 ヘルスケアAX・DX推進本部が初会合 上野厚労相「日本成長戦略実現に向け概算要求へ」(ミクスオンライン) 4) 政府が医療・介護分野でAI活用推進へ「ヘルスケアAX・DX推進本部」初会合(CB news) 5.国立大学の経営危機、東大にも波及 研究力低下への懸念強まる/東大ほか東京大学が2026年度に2年連続の最終赤字となる見通しであることがわかった。国立大学法人化した2004年度以降、2年連続の赤字は初めて。25年度は数十億円、26年度は約40億円の赤字を見込み、大学の「貯金」に当たる繰越金も数年で枯渇する可能性がある。財務状況が改善しなければ、研究者数の削減など研究・教育体制の縮小も避けられないという。東大の年間収入は約3,000億円で国立大学最大規模。24年度は運営費交付金や補助金が約969億円、附属病院収入が約585億円、企業との共同研究や大型研究事業などの外部資金が約1,160億円だった。その一方で、実験機器・材料などの物件費は約1,794億円、人件費は約1,105億円に上る。人事院勧告に伴う給与上昇で人件費は5年間で約100億円増加し、物価高による研究機器や資材価格の上昇も経営を圧迫している。背景には国立大学法人全体の構造問題がある。国からの運営費交付金は26年度で1兆971億円と、法人化した04年度から1,445億円減少。科研費は増えたものの、その増加は649億円にとどまり、基盤的経費の減少を補えていない。わが国の大学の研究開発費も2000年から23年までに1.2倍にとどまり、米国の2.1倍、中国の16.5倍と大きな差がある。大学病院の経営難も大学本体に影響する。国立大学病院44施設のうち25年度は31病院が赤字となる見通しで、経常赤字は計244億円。高度医療や希少疾患診療では高額医薬品・資材の使用が避けられず、診療収入だけではコスト増を吸収しにくい。東大は国際卓越研究大学への認定を目指しているが、文部科学省による審査が継続中となっており、認定見送りとなれば財政改善はさらに厳しくなる。国立大学の研究力と高度医療を維持するため、安定した基盤財源の確保が改めて問われている。 参考 1) 東大が2年連続赤字へ 「貯金」数年で枯渇、研究者の削減不可避(日経新聞) 2) 国立大学法人モデル、岐路に 東大も自立運営困難 収入増、規制が足かせ 研究開発費は20年横ばい(日経新聞) 6.正常な脳組織を誤って摘出 50代女性が自発呼吸不能の重篤状態/京大京都大学医学部附属病院は8月7日、50代女性の脳腫瘍摘出手術で、腫瘍ではない正常な脳組織を誤って摘出し、脳幹などを損傷する医療事故があったと発表した。患者は術後、自発呼吸ができず人工呼吸器による管理が続き、手足も動かない重篤な状態となっている。病院によると、患者はめまいやふらつきはあったものの、手術前は生活に大きな支障はなく通常の生活を送っていた。検査により小脳橋角部に約3cmの良性腫瘍「髄膜腫」が疑われ、7月末に全身麻酔下で開頭手術を受けた。執刀したのは40代の脳神経外科医で、医師として20年以上の経験があり、同様の手術を約100例担当していた。手術中には、摘出した組織の一部を調べる術中病理診断が行われ、「腫瘍ではない」との結果が2度示された。それでも執刀医は、腫瘍の端の組織を採取したため腫瘍成分が含まれていなかった可能性があるなどと判断し、摘出を継続したという。約10時間の手術後も患者の意識や呼吸が十分に回復しなかったためMRI検査を実施したところ、本来摘出する予定だった腫瘍は残存しており、右小脳扁桃や呼吸機能に関わる脳幹の側面から背側にかけて大きな損傷があることが判明した。脳幹には呼吸など生命維持に不可欠な機能を担う神経中枢が集まっており、患者は現在も人工呼吸器を必要としている。京大病院は医療事故として患者と家族に謝罪し、厚生労働省や京都府警など関係機関にも報告した。高折 晃史病院長は「患者と家族に心よりおわび申し上げる」と陳謝。病院側は、執刀医の判断ミスや思い込みが影響した可能性にも言及しており、今後、外部有識者を含む事故調査委員会を設置し、手術中の判断過程や安全確認体制を検証し、原因究明と再発防止を進める方針だ。 参考 1) 脳腫瘍摘出術中の誤認による摘出部位誤り事例について(京大医学部附属病院) 2) 京都大病院、正常部位摘出し脳幹損傷 患者は重篤な状態(日経新聞) 3) 京大病院で医療事故 脳腫瘍の手術で誤って正常な脳の一部摘出(NHK) 4) 京都大病院が脳腫瘍手術で誤って正常な組織摘出、50代女性患者は呼吸に関わる脳幹損傷・人工呼吸器装着つづく(読売新聞)

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卵円孔開存を伴う片頭痛、抗血栓療法が有効か/BMJ

 卵円孔開存(PFO)は片頭痛、とくに前兆を伴う片頭痛と関連し、微小塞栓メカニズムの関与の可能性が示されている。小規模な研究で抗血小板療法(アスピリン、P2Y12阻害薬)の有効性が示唆されているが、これらのエビデンスには一貫性がなく、多くは非比較研究だという。中国医学科学院・北京協和医学院のZiping Li氏らは「COMPETE試験」において、PFOおよび片頭痛を有する患者のレスポンダー率に関して、アスピリン、クロピドグレル、リバーロキサバンはメトプロロールに対し非劣性であり、このうちリバーロキサバンは大出血イベントを増加させずに、レスポンダー率が有意に優れることを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年7月29日号で報告された。中国の無作為化実薬対照試験 COMPETE試験は、抗凝固薬や抗血小板薬を含む抗血栓療法が、PFOを有する患者における片頭痛の予防に有益かの評価を目的に、中国の39施設で実施した研究者主導型の非盲検(評価者盲検)無作為化実薬対照・仮説生成型臨床試験であり、2022年10月~2024年12月に参加者を登録した(CAMS Innovation Fund for Medical Sciencesなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18~64歳、片頭痛の診断を受けてから1年以上が経過し、片頭痛が月に4日以上発現し、心エコー図検査でPFOが確認された患者であった。 最大の解析対象集団984例(年齢中央値38.5歳、女性75.1%)を、アスピリン(247例:300mg、1日1回)、クロピドグレル(244例:75mg、1日1回)、リバーロキサバン(245例:20mg、1日1回)、メトプロロール(対照、248例:25mg、1日2回)の投与を受ける群に無作為に割り付け、12週間投与した。 主要評価項目は、ベースラインから9~12週目における、月間の片頭痛の発生日数または発作回数が50%以上減少した参加者の割合(レスポンダー率)とした。片頭痛完全消失率、MSQ総スコアも良好、大出血の発現なし ベースラインにおいて前兆を伴う片頭痛は234例(23.8%)に認められた。右左シャントは、グレード3(>30マイクロバブル)が586例(59.6%)、グレード2(10~30マイクロバブル)が233例(23.7%)、グレード1(1~9マイクロバブル)が165例(16.8%)であった。 主要評価項目のレスポンダー率は、アスピリン群が61.7%(148/240例)、クロピドグレル群が66.8%(157/235例)、リバーロキサバン群が78.4%(185/236例)、メトプロロール群は61.8%(144/233例)であった。 メトプロロール群との率差は、アスピリン群が1.0%(98.33%信頼区間[CI]:-9.9~11.8)、クロピドグレル群が4.7%(98.33%CI:-5.9~15.2)、リバーロキサバン群は16.2%(98.33%CI:6.0~26.4)であり、いずれも非劣性が示された(すべての非劣性のp<0.001)。また、メトプロロール群に比べリバーロキサバン群は、レスポンダー率が有意に優れた(優越性のp<0.001)。 さらに、メトプロロール群と比較してリバーロキサバン群のみで改善を認めた副次評価項目として、片頭痛の発生日数の減少(群間差:1.0日、95%CI:0~2.0)と発作回数の減少(群間差:1.0回、95%CI:0~2.0)、12週時の片頭痛の完全消失率(率差:12.5%、95%CI:4.1~20.8)、片頭痛特異的な生活の質(QOL)質問票(MSQ)の総スコア(群間差:18.7点、95%CI:7.9~30.0)などが挙げられた。 有害事象による介入中止は、アスピリン群で0例、クロピドグレル群で1例、リバーロキサバン群で2例、メトプロロール群で7例にみられた。試験薬関連の有害事象は、それぞれ48例(19.4%)、23例(9.4%)、42例(17.1%)、38例(15.3%)に認められた。 重篤な有害事象は2件発生した。リバーロキサバン群の1件は試験薬関連、メトプロロール群の1件は関連なしと判定され、いずれも治療により回復した。大出血はいずれの群でも発現しなかった。消化器症状はアスピリン群で多かった(それぞれ11.7%、2.0%、2.4%、1.6%)。塞栓が主因となる片頭痛のマーカーの可能性 著者は、「全体として、抗血栓療法は、有害事象の明らかな増加を伴わずに、片頭痛関連のアウトカムにおいて臨床的比較可能性または意義のある改善と関連しており、良好なリスク・ベネフィットプロファイルが示唆される」「これらの知見は、PFOを有する患者における片頭痛の発症に、微小塞栓メカニズムが関与している可能性を示すもの」としている。 また、「リバーロキサバン群で認めた数値上の優位性は、第1選択の予防治療に取って代わるエビデンスとしてではなく、むしろ塞栓が主因となる片頭痛の表現型を示す患者の特定に役立つ可能性のあるマーカーとして解釈すべきである」と指摘している。

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大量出血への備え【非専門医のための緩和ケアTips】第129回

大量出血への備え大量出血という状況は、頻度こそ高くはない一方で、発生したときの本人・家族の恐怖はとてつもなく、医療者にとってもつらい経験となることが多いでしょう。私も10年余りの緩和ケア実践の中で、何人かの患者を大量出血で亡くしています。今日の質問終末期の喉頭がんで在宅で過ごしている患者さんがいます。頸部の腫瘤が増大傾向で、頸動脈周囲にも浸潤しているため、大量出血をするのではないかと懸念しています。事前にどのような準備ができるでしょうか?質問者の方が指摘するとおり、頭頸部がんでは頸動脈穿破が大量出血の原因となることがあり、発生すれば数分で死亡するケースが大半です。私もそうした経過の患者を担当したことがあり、出血し始めてからの経過は非常に速く、手の打ちようがなかったことを覚えています。このような出血は1回生じると救命は非常に難しくなるため、事前の心構えと準備が大切です。質問者の方の素晴らしいところは、大量出血のリスク見積もりにきちんと取り組んでいる点です。頭頸部がんや食道・肺がんのように腫瘍が血管に近い部位にできるもの、腫瘍の露出や潰瘍化などを伴うものは要注意です。さらに放射線治療や抗凝固薬・抗血小板薬の使用もリスクを高めます。少量の出血を繰り返すこともリスクの高いサインです。大量出血のリスクを確認したら、次のアクションはリスクを医療チーム内で共有することです。ハイリスクであれば、それをどのように患者本人、家族と共有するかを検討します。私の場合、いたずらに不安をあおらないよう、「大量出血は必ず生じるものではありませんが、可能性はあるので、万一に備えておきましょう」といったように共有します。家族への説明については、具体的な行動と心構えを伝えることが重要です。今回のケースは自宅で過ごしているため、最初にその場に居合わせるのは家族である可能性が高いでしょう。そのため、大量出血が起きた際は命に関わること、たとえどのような状況であっても落ち着いて訪問看護ステーションに連絡すればよい旨を説明します。もし家族が慌ててしまいそうといった懸念があれば、連絡先や伝えるべきことをメモにして渡し、決められたところに貼るなど、より実務的な工夫も検討します。物品としては、黒や紺色といった濃い色のタオルを準備しておきます。大量出血の見た目は恐怖を増幅させるので、濃い色のタオルで覆って視覚刺激を減らすだけでも家族の動揺が軽減します。そのほか、手袋や替えのシーツ類も備えておくと対処しやすいでしょう。医療者側は、大量出血の連絡があった際の動きを共有しておきます。分単位で死亡に至ることが多く、混乱した家族への対応が求められる可能性が高いことも共有しておきましょう。医療者が救命できる状況ではないかもしれませんが、少なくともつらい経験をした家族と共にあることが大切です。ここまで、大量出血に対する対応を考えてみました。医療者にとっても忘れられない強烈な経験になることが多いでしょう。ぜひ医療チーム全体で話し合いながら対応してください。そして、実際に大量出血が起きた患者のケアをした場合は、関わったスタッフのケアを目的としたミーティングも開催しましょう。そのくらいショックを受けるスタッフも多いケースですので、お互いをケアし合うことを忘れず、チームの経験としていきましょう。今日のTips今日のTips大量出血のリスクを把握し、スタッフ、家族と共有することが大切です。

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AF合併PCI患者の2剤抗血栓療法、1ヵ月vs.12ヵ月(OPTIMA-AF試験)/Lancet

 心房細動を合併した主に慢性冠症候群を有する患者において、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に2剤併用抗血栓療法を1ヵ月行い、その後に直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)単剤療法を行った群は、2剤併用抗血栓療法を12ヵ月行った群と比較し、12ヵ月時の死亡または血栓塞栓性イベントに関して非劣性であることが示され、大出血または臨床的に問題となる非大出血(CRNM)は有意に減少した。大阪大学の外海 洋平氏らOPTIMA-AF Investigatorsが、国内75施設で実施した無作為化非盲検実薬対照並行群間試験「OPTIMA-AF試験」の結果を報告した。心房細動患者におけるPCI後の2剤併用抗血栓療法の至適期間は、依然として不明であった。なお著者は、「1ヵ月併用群で全体として臨床的プロファイルが良好であることが示唆されたが、イベント発生率が予想より低かったため有効性に関する解釈には注意が必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年7月15日掲載の報告。DOAC+P2Y12阻害薬併用1ヵ月後DOAC単剤vs.併用継続を比較 研究グループは、非弁膜症性心房細動を合併した、CHADS2スコアが1以上で、慢性冠症候群または不安定狭心症に対するPCIの適応があり、PCI施行後にDOACを用いた抗凝固治療継続が予定されている20歳以上の患者で、エベロリムス溶出ステント(XIENCE)留置に成功した適格患者を、1ヵ月併用群と12ヵ月併用群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 1ヵ月併用群では、DOAC+P2Y12阻害薬(クロピドグレル75mg/日またはプラスグレル3.75mg/日)を1ヵ月間併用投与した後、DOAC単剤療法に切り替えた。12ヵ月併用群では、同様の併用療法を12ヵ月間行った後、DOAC単剤療法に切り替えた。 有効性の主要評価項目は、12ヵ月時の全死因死亡または血栓塞栓性イベント(心筋梗塞、確定ステント血栓症、脳卒中または全身性塞栓症)の複合であった。安全性の主要評価項目は、12ヵ月時の国際血栓止血学会(ISTH)の定義による大出血またはCRNMで、盲検下独立委員会の判定に基づいた。 本試験では、有効性主要評価項目に対する非劣性検定を行い(非劣性マージンは絶対群間差の両側95%信頼区間[CI]の上限が5%)、非劣性が示された場合は、安全性の主要評価項目の優越性を検定し、同優越性が示された場合は有効性評価項目の優越性の検定を行う固定順序法が採用された。12ヵ月時の死亡または血栓塞栓性イベントは5.4%vs.4.3%、出血イベントは4.5%vs.8.8% 2019年10月7日~2024年9月3日に、1,101例の適格性評価が行われ、このうち1,088例が無作為化され、試験薬を少なくとも1回投与され事前に規定された基準を満たした1,079例が解析対象集団となった(1ヵ月併用群542例、12ヵ月併用群537例)。 患者背景は、年齢中央値76歳(四分位範囲[IQR]:70~81)、女性225例(21%)、男性854例(79%)、CHADS2スコア中央値は2(IQR:2~3)で、追跡期間中央値は540日(IQR:517~559)であった。 1ヵ月併用群は有効性に関して非劣性基準を満たし、出血リスクに関する優越性も示されたが、有効性に関する優越性は認められなかった。 有効性の主要評価項目のイベントは、1ヵ月併用群で29例、12ヵ月併用群で23例に発生し(Kaplan-Meier推定値5.4%vs.4.3%)、絶対群間差は1.1%(95%CI:-1.5~3.6)、ハザード比(HR)は1.25(95%CI:0.73~2.17)であった。 安全性の主要評価項目の大出血またはCRNMは、1ヵ月併用群で24例、12ヵ月併用群で47例に発生し(Kaplan-Meier推定値4.5%vs.8.8%)、絶対群間差は-4.4%(95%CI:-7.3~-1.4)、HRは0.50(95%CI:0.30~0.81)であった(優越性のp=0.0041)。

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高齢者DLBCL診療における治療強度の考え方【高齢者がん治療 虎の巻】第11回

講師紹介<今回のPoint>高齢者DLBCLでは暦年齢のみで判断せず、G8などのスクリーニングと高齢者機能評価(GA)でfit/unfit/frailを評価し、治療強度を検討する。層別化に応じて、fitには治癒を目指す標準治療、unfitにはR-miniCHOPなどの減量レジメンを検討する。frailでは治療目標を再確認し、低強度治療または緩和的治療を含めて個別に判断する。Pola-R-CHP療法は初発DLBCLの標準治療の一つであるが、80歳を超える患者では臨床試験のエビデンスが限られる。心機能、併存症、本人の希望を確認し、減量投与を含めて慎重に検討する。<症例>82歳、男性。2ヵ月前から頸部リンパ節腫大と食欲低下、体重減少を認め、近医から紹介された。頸部リンパ節生検の結果、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)と診断され、免疫染色の結果、Non-GCB型(Hans分類)に分類された。PET-CTを撮影したところ、腹腔内リンパ節にも病変を認め、臨床病期はLugano分類でStage III、LDH高値、ECOG Performance Status(PS)1で、国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)はhigh-intermediate riskだった。併存症は高血圧症、持続性心房細動、慢性心不全、2型糖尿病で、抗凝固薬、利尿薬、経口血糖降下薬を内服していた。退職後は自宅近くの畑仕事を日課としており、発症前のADLは自立、買い物や通院も自力で可能だった。最近は倦怠感のため畑に出る頻度が減っているが、身の回りのことは自立している。G8は11点、Charlson Comorbidity Index(CCI)は慢性心不全1点、糖尿病1点の計2点であった。本人は「また畑に出られるようになりたい。治る可能性があるなら、できる治療は受けたい」と話している。一方、家族は「年齢も心臓も心配なので、強い治療は避けたほうが良いのではないか」と不安を示している。高齢者DLBCLの治療方針悪性リンパ腫は高齢者に好発する代表的な造血器腫瘍であり、本邦では年間約3万6,000人が新たに診断され、その多くを70代から80代の患者が占めます1)。組織型としてはDLBCLが最も多く、高齢DLBCL患者を診療する機会は年々増加しています。DLBCLは高齢者であっても、薬物療法によって治癒が目指せる疾患ですが、若年者に比べて予後が不良であることが多く、その背景には生物学的要因や臨床的要因が複雑に絡み合っていると考えられています。『造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)』には、高齢者DLBCLに対する標準治療として、80歳未満に対しては若年者と同様の治療法が、80歳以上の高齢者に対しては、用量あるいはコース数を減らしたR-CHOP療法が妥当な治療選択肢の一つであると記載されています2)。高齢者機能評価(GA)に基づく治療強度の決定高齢者DLBCLでは、暦年齢のみで治療強度を決定するのではなく、患者個々の予備能を評価したうえで治療方針を定めることが重要です。『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』でも、初発高齢者DLBCLの治療方針の判断にGAを行うことが弱く推奨されています3)。GAは、身体機能(ADL・IADL)、併存症、認知機能、栄養状態、社会的サポートなどを多面的に評価する手法であり、これにより患者をfit(標準治療に忍容性がある)、unfit(標準治療は困難だが減量治療は可能)、frail(緩和的対応が中心)に層別化します。簡便なスクリーニングには本症例でも用いられているG8などが、より包括的な評価には総合的なGAが活用されます。fitと判断される患者には、若年者と同様に治癒を目指した標準治療が推奨されます。一方、unfitやfrailと判断される患者では、毒性を軽減しつつ一定の有効性を確保する目的で減量レジメンが選択され、なかでもR-miniCHOP療法が代表的な選択肢です。Peyradeらによる第II相試験では、80歳以上のDLBCL患者に対し、標準量の約半量に減量したR-miniCHOP療法が、忍容性良好でありながら治癒も期待できることが示され、高齢者に対する標準的選択肢の一つとして位置付けられています4)。Pola-R-CHP療法という新たな選択肢近年、初発DLBCLに対する治療は大きく変化しました。第III相POLARIX試験では、R-CHOP療法のビンクリスチンを抗体薬物複合体であるポラツズマブ ベドチン(商品名:ポライビー)に置き換えたPola-R-CHP療法が、従来のR-CHOP療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、本邦でも初発DLBCLに対する標準治療の一つとして位置付けられるようになりました5)。サブグループ解析では、60歳以上の高齢者やIPI高リスク群、Non-GCB(ABC)型などでPola-R-CHP療法の相対的な有用性が示唆されています。本症例のような高齢・Non-GCB型のDLBCLは、Pola-R-CHP療法の効果が期待される集団と考えられます。ただし、POLARIX試験の対象は18〜80歳であり、80歳を超える高齢者は含まれていません。したがって、本症例のような80歳を超える患者にどこまで適応を広げてよいかは、現時点で明確なエビデンスがありません。近年は80歳以上を含む実臨床でのデータ(リアルワールドデータ)が少しずつ報告されつつあり6)、ポラツズマブ ベドチンに併用するCHPを適切に減量することで、80歳以上でもPola-R-CHP療法を安全に実施しうる可能性が示されています。一方で、心機能低下例などアントラサイクリンの使用が難しい症例も少なくなく、適応は個々の予備能と併存症を踏まえて慎重に判断する必要があります。本症例への治療方針本症例を改めて整理すると、82歳と高齢であり、PS 1、ADLは自立していますが、G8 11点、CCI 2点で、機能的にはおおむねunfitに近い状態と評価できます。本人は治癒を目指した治療を希望していますが、持続性心房細動や慢性心不全といった心疾患を有し、ドキソルビシンによる心毒性のリスクには十分な注意が必要です。また、組織型はNon-GCB型であり、Pola-R-CHP療法の上乗せ効果が期待しやすい点は、治療選択の後押しとなります。以上を踏まえると、治療開始前に心エコーなどで心機能を評価し、ドキソルビシンの使用が許容される場合には、CHPを適切に減量したPola-R-CHP療法も選択肢となります。ただし、80歳を超える患者はPOLARIX試験の対象外であることから、現時点では実臨床データに基づく慎重な判断が必要です。もし心機能低下が明らかな場合には、ドキソルビシンを含まないレジメンも検討する必要があります。いずれの場合も、本人・家族の意向と予備能を共有しながら、治療強度を個別に最適化していく姿勢が重要です。G-POWER研究:日本の高齢DLBCLに合ったGAを目指して高齢DLBCLに対するGAの活用は国際的に進んでいますが、海外のデータをそのまま日本の実臨床に当てはめることには限界があります。生活環境、家族支援、医療アクセス、入院・外来治療の体制、介護保険を含む社会制度は国によって異なるためです。現在、国内において70歳以上の高齢DLBCL患者を対象に、GAの意義を明らかにする多施設前向き観察研究(G-POWER研究)が進められています7)。本研究では、G8、ADL、IADL、認知機能、うつ状態、併存症、Clinical Frailty Scaleなどを評価し、初回治療の内容、有害事象、治療完遂、予後との関連を検討します。日本の高齢DLBCL患者において、どのGA項目が治療選択や有害事象予測に本当に役立つのかを明らかにすることは、今後の実臨床に直結する課題です。GAを「評価して終わり」にせず、治療を支える具体的な介入につなげるためにも、本邦独自のエビデンス構築が期待されます。 1) がん情報サービス:全国がん登録 2) 日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版 2024年版. 金原出版. 2024. 3) 日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会編. 高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版. 南江堂. 2026. 4) Peyrade F, et al. Lancet Oncol. 2011;12:460-468. 5) Tilly H, et al. N Engl J Med. 2022;386:351-363. 6) Yamada T, et al. Ann Hematol. 2025;104:5191-5200. 7) UMIN-CTR:臨床登録試験情報(G-POWER研究)

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ECMO中の抗凝固療法、未分画/低分子ヘパリンでも出血低減/Lancet

 体外式膜型人工肺(ECMO)施行中の患者における抗凝固療法として、低用量のUFH(未分画ヘパリン)および治療用量のLMWH(低分子ヘパリン)は、重度出血・重度血栓塞栓性合併症・全死亡の複合エンドポイントに関して、標準用量のUFHに対し非劣性であることが認められた。オランダ・フローニンゲン大学医療センターのOlivier van Minnen氏らDutch ECLS Study Groupが、同国7施設の集中治療室(ICU)で実施した無作為化非盲検非劣性試験「RATE試験」の結果を報告した。ECMO中の血栓症リスク低減に対しては、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)をベースライン値の2.0~2.5倍に維持することを目標としたUFH静脈内投与が標準治療であるが、このアプローチは出血リスクを高める可能性が懸念されていた。著者は、「本結果は、抗凝固療法目標値を低く設定することで出血関連有害事象を低減できる可能性を示唆するものであり、ECMO中の抗凝固療法目標値の見直しを支持するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年7月7日号掲載の報告。低用量UFH、治療用量LMWHの標準用量UFHに対する非劣性を評価 研究グループは、治療チームにより可逆性があると判断された重度の呼吸不全または循環不全、あるいは移植の橋渡しとして開始された静脈-静脈(VV)または静脈-動脈(VA)-ECMOを受けている18歳以上の成人患者で、全量抗凝固療法の絶対的適応(例:機械弁僧帽弁など)がない患者を、標準用量UFH群(aPTTをベースラインの2.0~2.5倍として静脈内投与)、低用量UFH群(同1.5~2.0倍)、LMWH群(体重および腎機能に応じて調整した用量を1日2回皮下投与)のいずれかに、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。追跡調査担当の研究スタッフは、割り付けについて盲検化された。 主要アウトカムは、ECMO中の重度出血(Extracorporeal Life Support Organization[ELSO]レジストリの基準に基づく)、ECMO中の重度血栓塞栓性合併症、および6ヵ月時点の全死因死亡の複合であった。 解析は、6ヵ月後の追跡データがあり、意識回復後の事後同意が得られた無作為化されたすべての患者を対象として、ITTの原則に従って実施し、非劣性マージンは絶対リスク群間差の95%信頼区間(CI)の上限が7.5%ポイント未満とした。重度出血、重度血栓塞栓性合併症および全死亡の複合で、非劣性を検証 2020年10月22日~2024年9月12日に330例が標準用量UFH群、低用量UFH群、LMWH群に無作為に割り付けられた(各群110例)。このうち、6ヵ月時の主要解析の対象は、320例(男性225例[70%]、女性95例[30%]、年齢中央値56歳[四分位範囲:45~65]、白人255例[80%])であった。 主要アウトカムのイベント発生は、標準用量UFH群107例中87例(81%)に対して、低用量UFH群では108例中78例(72%)に認められ(絶対リスク群間差:-9.1%ポイント、95%CI:-20.3~2.1)、LMWH群では105例中79例(75%)に認められ(絶対リスク群間差:-6.1%ポイント、95%CI:-17.2~5.0)、いずれも非劣性基準を満たしていた。 重度出血は、標準用量UFH群70例(65%)に対して、低用量UFH群で63例(58%)、LMWH群で62例(59%)に認められ、重度血栓塞栓性合併症は、それぞれ12例(11%)、11例(10%)、9例(9%)に認められ、これらの差は統計学的に有意ではなかった。 6ヵ月時点の死亡は、標準用量UFH群で54例(50%)、低用量UFH群で45例(42%)、LMWH群で46例(44%)であった。

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診療科別2026年上半期注目論文5選(循環器内科編)

Left Atrial Appendage Closure or Anticoagulation for Atrial FibrillationDoshi SK, et al. N Engl J Med. 2026;394:2083-2094.<CHAMPION-AF試験>:心房細動患者で、左心耳閉鎖デバイスかDOACかの比較試験抗凝固療法適応の心房細動患者で、左心耳閉鎖術と直接経口抗凝固薬(DOAC)療法を比較したRCT試験の3年追跡結果です。左心耳閉鎖術は、心血管死・脳卒中・全身塞栓症の複合エンドポイントに対する有効性で非劣性を達成し、非手技関連出血を有意に減らしました。DOACを内服可能な患者に積極的に左心耳閉鎖術を行うべきか、という課題に応える画期的な研究といえます。ただし、3年間という追跡期間や熟練施設での成績であることを踏まえて解釈する必要があります。 Left Ventricular Unloading in Anterior ST-Segment Elevation Myocardial Infarction Without Shock: The ST-Segment Elevation Myocardial Infarction Door to Unload Randomized Controlled TrialKapur NK, et al. J Am Coll Cardiol. 2026;88:76-90.<STEMI-DTU試験>:前壁STEMI患者にImpellaによる左室アンローディングと再灌流遅延を検証急性心筋梗塞(STEMI)治療では、“Time is muscle”という概念のもと、PCIによる再灌流までの時間短縮が最重要視されてきました。STEMI-DTU試験では、Impellaによる左室アンローディングを先行させ、あえて30分間PCIを遅らせるという戦略が検証されました。この新規治療戦略は、即時PCIの標準治療に対して梗塞サイズを縮小させることはなく、出血・血管合併症は増加しました。Randomized, Placebo-Controlled Trial of Chronic Total Occlusion Percutaneous Coronary Intervention in Stable Angina: The ORBITA-CTO TrialKhan S, et al. J Am Coll Cardiol. 2026;88:4-18.<ORBITA-CTO試験>:CTO-PCIの症状改善効果をシャム手術対照で検証慢性完全閉塞(CTO)による安定狭心症患者を対象とした二重盲検シャム対照RCTです。CTOに対するPCIは、プラセボ効果や期待効果の影響を受けやすいという課題がありました。本試験では、PCI群とシャム手術(偽PCI群)を比較しています。PCI群で有意に改善効果は認めたものの、死亡や心筋梗塞など重篤イベントは差を認めず、効果は主に症状改善に限定されました。CTO-PCIの適応は、症状緩和のための戦略として考慮されるべきと解釈されます。Stem-Cell-Derived Biologic Ventricular Assist Tissue in Heart FailureZimmermann WH, et al. N Engl J Med. 2026;394:1991-2001.<BioVAT-HF試験>:iPS細胞由来“心筋パッチ”による再筋化治療の初期検証試験重症HFrEF患者(LVEF≦35%)に対しiPS細胞由来のシート状の心筋組織(BioVAT)を外科的に移植する第I/II相試験です。心筋壁厚増加、LVEF改善(約+4%)、QOL改善が観察されました。安全性はおおむね許容範囲で、再筋化による心機能改善の可能性が示されました。「心筋再生医療が実用化された」と結論付ける段階ではなく、「心筋再生医療が新たな段階に入った第一歩」と評価すべきです。Predictors of Long-Term Outcomes in Hypertrophic Cardiomyopathy: The NHLBI HCM RegistryHCMR Investigators. JAMA. 2026;335:1959-1969.<NHLBI HCM Registry>:多面的データ統合による肥大型心筋症の予後予測モデル検証研究 NHLBI HCM Registry(HCMR)は、2,700例の肥大型心筋症を前向き登録し平均約7年追跡し、臨床・遺伝子・バイオマーカー・心臓MRI(CMR)を統合して予後予測を検討している試験です。心臓MRI遅延造影とNT-proBNPが有用な予測因子でした。従来の突然死を中心としたモデルより予測精度が向上し、心不全や移植リスクも含めた包括的な有用性が示されました。

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英語でもある「血液をサラサラにする薬」の言い回し【患者と医療者で!使い分け★英単語】第67回

医学用語紹介:抗凝固薬 anticoagulantanticoagulantは「抗凝固薬」を意味する医学用語ですが、この医学用語を英語で伝えても患者さんには伝わりにくい場合がほとんどです。では、患者さんに説明するときは、どのように伝えたらよいでしょうか?講師紹介

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血栓回収療法成功後のtirofiban、機能的自立を改善/Lancet

 前方循環系の大血管閉塞による急性虚血性脳卒中を発症し血栓除去術(EVT)による再灌流が成功した患者において、糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬であるtirofibanの投与は、プラセボと比較し機能的自立を改善し、症候性頭蓋内出血の発生割合に有意差はなかったことが示された。中国・Tongji Medical CollegeのHao Huang氏らATTRACTION Investigatorsが、同国82施設で実施した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ATTRACTION試験」の結果を報告した。急性虚血性脳卒中でEVTにより再灌流に成功しても、必ずしも機能的自立が得られるわけではない。tirofibanは、静脈内血栓溶解療法後の急性虚血性脳卒中における補助的な抗血小板療法として検討されているが、EVT後の投与を支持する研究結果が示されていた。Lancet誌オンライン版2026年6月24日号掲載の報告。EVTで再灌流に成功した虚血性脳卒中患者を対象、tirofiban群vs.プラセボ群 研究グループは、18歳以上、最終健常確認時から24時間以内で、前方循環系の大血管閉塞に起因する急性虚血性脳卒中を発症しEVTにより再灌流が成功した患者を、施設で層別化した固定ブロック法を用い、tirofiban群(5μg/kgを動脈内ボーラス投与後0.1μg/kg/分で持続静脈内投与を最長24時間継続)、またはプラセボ群(同様の用量および投与)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 試験薬投与終了後の抗血栓療法およびその他の脳卒中治療は、最新のガイドラインに従って行われた。 有効性の主要アウトカムは、90日時の機能的自立(mRSスコア:0~2点)の患者割合で、無作為化されたすべての患者(ITT集団)を解析対象集団とした。 安全性のアウトカムは、無作為化後48時間以内の症候性頭蓋内出血および画像診断による頭蓋内出血所見、ならびに90日全死亡率などで、試験治療を受け少なくとも1回の安全性評価が行われた患者を解析対象集団とした。90日時の機能的自立、tirofiban群49%vs.プラセボ群43% 2024年4月9日~2025年9月29日に、1,686例がスクリーニングを受け、このうち1,380例がtirofiban群(689例)またはプラセボ群(691例)に無作為に割り付けられた。 患者背景は、年齢中央値71歳(四分位範囲:62~77)、女性が591例(43%)、男性が789例(57%)、漢民族が1,367例(99%)であり、90日時の追跡不能例は認められなかった。 90日時の機能的自立は、tirofiban群で340/689例(49%)、プラセボ群で299/691例(43%)に認められた(絶対リスク群間差:6.1%ポイント[95%信頼区間[CI]:0.8~11.3、p=0.023]、補正後リスク比:1.15[95%CI:1.03~1.27、p=0.0092])。 48時間以内の症候性頭蓋内出血は、tirofiban群で12%(82/687例)、プラセボ群で9%(65/691例)、48時間以内のあらゆる頭蓋内出血はそれぞれ34%(235例)、32%(219例)に認められ、90日死亡率はそれぞれ18%(126例)、19%(131例)であり、いずれも両群間に差はなかった。

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症候性リウマチ性心疾患でジゴキシンの追加は心不全の新規発症・悪化を減らす(解説:原田和昌氏)

 リウマチ性心疾患(RHD)は中低所得国の若年層における罹患および死亡の重要な原因であり、世界で4,000万人以上が罹患し、年120万件の心不全と約32万人の死亡を引き起こす。中低所得国で左室駆出率(EF)が保たれた心不全の25%を占め、死亡の大部分は心不全に関連する。RHD患者の心不全は主に僧帽弁狭窄症であり、心拍数の増加や心房細動の発症にて左心房圧と肺静脈圧が上昇し症状が悪化する。有症状患者のすべてが手術や介入治療の対象とはならず多くは薬物療法を受けているが、RHDの心不全に対する薬物療法は評価されていない。インドのKarthikeyan氏らは国内12施設で行われた二重盲検RCTであるDig-RHD試験にて、若年の症候性RHD患者で経口ジゴキシンは全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムのリスクを軽減することを示した。 心エコーでRHDと確定され、ジゴキシンの投与を受けているか、心不全、心房細動または心房粗動を有する患者1,769例を登録し、ジゴキシン(0.125~0.25mg)を1日1回経口投与する群(885例)またはプラセボ群(884例)に無作為に割り付けた。主要複合アウトカムは全死因死亡または心不全の新規発症・悪化であった。平均年齢46歳、72%が女性、70%が心房細動または心房粗動を有し、90%がNYHA心機能分類II~IV度、85%が中等度から重度の僧帽弁狭窄症を有していた。平均EFは58%、34%がジゴキシンの投与を受けており、約35%が経皮的僧帽弁形成術ないしは弁置換術を受けていた。 主要複合アウトカムはプラセボ群の35.5%に対し、ジゴキシン群は31.4%と有意に少なかった。心不全の新規発症・悪化はジゴキシン群で有意に低かった(HR:0.82)。中低所得国でみられるように、心不全の悪化のほとんどが入院を要せず、利尿薬の増量で治療された。全死因死亡に有意な差を認めなかった。心不全関連死または心不全の新規発症・悪化の複合はジゴキシン群で有意に良好であった(HR:0.82)。心不全関連死または心不全による入院の複合、心不全関連死、突然死に差はなかった。 β遮断薬、MRAを含む利尿薬、抗凝固薬などの治療を受けている症候性RHD患者において、ジゴキシン追加は全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムを低減した。これは心不全の新規発症・悪化の減少によってもたらされた。すでにジゴキシンを服用していた患者や心房細動を有していた患者で、ジゴキシンの有益性が大きかった。ジゴキシンが原因と疑われる毒性の発現は少なかったが、患者が若く、併存疾患が少なく、腎機能が良好であったからかもしれない。中低所得国の若年層のRHDにおいて少量のジゴキシンは安価であることもあり、非常に有用かもしれない。 DIG試験でジゴキシンは心不全入院を減らす一方、全死亡を減らさなかった。これまでジゴキシンはカルシウム過負荷を来し、心拍数抑制はむしろ安静時に強いこともあり生命予後を改善しないと考えられてきた。しかし、最近JAMA誌に掲載された、「HFrEF/HFmrEF患者に関するジギタリス配糖体のメタ解析(DIG試験を含む)」では、標準的心不全治療を行ってもなお心不全悪化リスクが残る患者において、低用量のジギタリス配糖体が心不全悪化・入院を減らしたという。年齢、基礎疾患、EF、基礎治療薬も異なる群ではあるが、(安価な)ジゴキシンを心不全悪化イベントを減らす補助薬として見直すべき時なのかもしれない。

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喀血の原因は、喉に住んでいたアイツ【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第309回

喀血の原因は、喉に住んでいたアイツ喀血の原因といえば、結核、肺アスペルギルス症、肺がん、気管支拡張症あたりが定番です。呼吸器内科医なら、喀血と聞いた瞬間に頭の中で鑑別がズラッと並びます。ところが今回の異物論文は、その鑑別リストに絶対載っていない犯人を連れてきました。Abd Alkareem AA, et al. Nasopharyngeal hirudiniasis, a rare cause of masked hemoptysis in an older patient: A case report. J Int Med Res. 2026 Jun;54(6):3000605261453283.患者は、高血圧以外は元気な62歳の男性。タバコは吸いません。2週間前から血を吐くようになり、喉の違和感も続いていました。発熱も、嗄声も、息切れもなし。地元の病院では原因がわからず、専門医に紹介されてきました。高齢男性で2週間も喀血が続けば、たとえ非喫煙者でも、普通は肺がんや結核、心血管系の病気を疑って精査に入ります。実際この論文でも、最初はそうした方向で考えられていました。ところが、診察医が喉を覗いた瞬間、事態は一変します。え? 喉の奥で、何かが動いている。しかも、見えたと思ったらスッと引っ込む。落ち着け…、落ち着けオレ…! そう思ったに違いありません。鼻咽腔内視鏡を入れてみると、上咽頭の壁に、何かがくっついて、もぞもぞ動いていました。もう、嫌な予感しかしません。口蓋垂を持ち上げて視野を確保し、鉗子でそいつをつかんで引っ張り出す。エエイッ!なんと、出てきたのは、体長およそ3cmの、 生きたヒルでした。いやああああ!!! またこのタイプの論文かよおおお!!!!なぜ、ヒルで喀血したのでしょうか。実はヒルの唾液には、ヒルジンという強力な抗凝固物質と、局所麻酔成分が含まれています。だから噛みついても痛くないし、いったん吸血を始めると血が止まりにくくなります。つまり出血の正体はヒルがせっせと分泌していた天然の抗凝固薬だったわけです。実際、ヒルを取り除いた瞬間、出血はピタッと止まりました。患者さんにあらためて話を聞くと、3週間ほど前に、処理していない池の水を飲んでいたとのこと。水と一緒に幼いヒルを飲み込み、上咽頭に定着してしまったようです。2次感染予防に抗菌薬を1週間処方し、2週間後の再診でも再発はありませんでした。よかったよかった。

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がん関連VTEのDOACによる出血リスク、新たな予測モデルが有用か

 直接経口抗凝固薬(DOAC)治療を受けるがん関連静脈血栓塞栓症(VTE)患者を対象に開発された出血リスク予測モデル「ONCO-DOAC BLEEDスコア」は、既存の出血リスクスコアと比較して大出血リスクを良好に層別化できることが示された。本結果は京都府立医科大学循環器内科の長井 智之氏や中西 直彦氏ら(COMMAND VTE Registry-2)が報告し、JACC:CardioOncology誌2026年6月号に掲載された。  本研究グループは、国内31施設において2015年1月~2020年8月の期間に、急性の症候性の肺塞栓症および深部静脈血栓症と診断された患者5,197例を登録した多施設共同の観察研究「COMMAND VTE Registry-2」のデータを使用。VTE診断時に活動性がんを有していた1,507例のうち、経口抗凝固療法未実施例、ワルファリン投与例、血栓溶解療法施行例を除外した1,166例を開発コホートとして作成、解析した。主要評価項目は、大出血(国際血栓止血学会[ISTH]基準)の発生とした。 多変量Cox比例ハザード解析より、大出血と独立して関連する予測因子(各1点)として、(1)大出血の既往、(2)慢性腎臓病(CKD)、(3)NSAIDsの使用、(4)遠隔転移のあるがん、(5)末期がん、(6)上部消化管がん、(7)膵臓がん、(8)子宮がんの8項目を特定し、「ONCO-DOAC BLEEDスコア」を構築。合計点に基づき、低リスク(0点)、中リスク(1点)、高リスク(2点以上)の3群に分類した。さらに、国内臨床試験のONCO DVT試験(601例)およびONCO PE試験(178例)の計779例を検証コホートとした。  主な結果は以下のとおり。・開発コホート(1,166例、追跡期間中央値163日)において127例(10.9%)が大出血を経験し、構築されたスコアの1年累積大出血発現率は低リスク群5.7%、中リスク群8.9%、高リスク群21.2%と、有意なリスク層別化が示された(p<0.001[Gray's test])。 ・開発コホートでのONCO-DOAC BLEEDスコアの識別能(C-index)は、Harrell's C-indexで0.68(95%信頼区間[CI]:0.62~0.73)、Uno's C-indexで0.67(95%CI:0.62~0.72)を示し、既存スコア(VTE-BLEED:0.55、RIETE:0.58、CAT-BLEED:0.58、Perform:0.54)と比較して有意に高い識別能を発揮した(p値はそれぞれ<0.001、0.004、0.002、<0.001)。 ・検証コホート(779例、うち53例が大出血を経験)においても、1年累積大出血発現率は低リスク群6.6%、中リスク群8.6%、高リスク群18.2%と段階的な上昇を示した(p=0.003[Gray's test])。 ・検証コホートにおける識別能はHarrell's C-indexで0.62(95%CI:0.54~0.70)、Uno's C-indexで0.63(95%CI:0.54~0.71)で、既存スコア(VTE-BLEED:0.60、RIETE:0.60、CAT-BLEED:0.55、Perform:0.53)と同等以上の予測能を維持し、キャリブレーションにより予測リスクと実際の観察イベント発生率との良好な一致が確認された。  研究者らは「ONCO-DOAC BLEEDスコアは、DOAC治療中のがん関連VTE患者での大出血リスク予測において、臨床的に意義のある層別化を可能にし、日常診療における個別化された治療意思決定をサポートしうる」とし、「本スコアを用いて高リスク患者を特定することは、より綿密な臨床フォローアップや併用薬(とくにNSAIDs)の見直し、病状モニタリングにつながり、安全な長期抗凝固療法の継続と最適ながん治療・VTE管理の両立に貢献することが期待される。ただし、本研究コホートは日本人のみで構成されているため、今後は欧米などほかの民族集団における外部検証を進める必要がある」と結論付けている。

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