経口抗凝固療法中の慢性冠症候群患者、アスピリン併用は?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2025/09/29

 

 経口抗凝固薬を服用中のアテローム血栓症リスクが高い慢性冠症候群患者において、アスピリンの追加投与はプラセボと比較し、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、全身性塞栓症、冠動脈血行再建術または急性下肢虚血の複合アウトカムのリスクを増加させ、さらに全死因死亡および大出血のリスクも高める。フランス・リール大学のGilles Lemesle氏らが、同国の51施設で実施された二重盲検プラセボ対照無作為化試験「Assessment of Quitting versus Using Aspirin Therapy in Patients with Stabilized Coronary Artery Disease after Stenting Who Require Long-Term Oral Anticoagulation trial:AQUATIC試験」の結果を報告した。長期経口抗凝固療法中の高リスク慢性冠症候群患者に対する適切な抗血栓療法のレジメンは依然として明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2025年8月31日号掲載の報告。

ステント留置後6ヵ月以上経過した経口抗凝固療法中の慢性冠症候群患者が対象

 研究グループは、登録の6ヵ月以上前に冠動脈ステント留置術を受け、アテローム血栓症リスクが高く長期にわたり経口抗凝固療法を受けている慢性冠症候群成人患者を対象とし、アスピリン群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、経口抗凝固療法継続下でそれぞれ100mgを1日1回投与した。

 継続する抗凝固療法が経口抗凝固薬と1種類の抗血小板薬であった場合、その1種類の抗血小板薬がアスピリンであればアスピリン継続投与群または中止群に無作為に割り付け、経口抗凝固薬単独であった場合は、アスピリン開始群または非開始群に無作為に割り付けた。

 有効性の主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、全身性塞栓症、冠動脈血行再建術、急性下肢虚血の複合であった。安全性の主要アウトカムは大出血(国際血栓止血学会[ISTH]の定義による)とした。

アスピリン追加で全死因死亡率が増加

 2020年5月~2024年4月に計872例が無作為化され、アスピリン群433例、プラセボ群439例に割り付けられた。

 なお、本試験は追跡期間中央値2.2年後、アスピリン群における全死因死亡率の増加が認められため、独立データ安全性モニタリング委員会(IDSMB)の勧告に基づき、2024年4月16日に患者登録が中止された(最終追跡調査日2025年5月16日)。

 有効性の主要アウトカムのイベントは、アスピリン群で73例(16.9%)、プラセボ群で53例(12.1%)に発生した(補正後ハザード比[HR]:1.53、95%信頼区間[CI]:1.07~2.18、p=0.02)。全死因死亡の発生は、それぞれ58例(13.4%)、37例(8.4%)であった(補正後HR:1.72、95%CI:1.14~2.58、p=0.01)。

 大出血は、アスピリン群で44例(10.2%)、プラセボ群で15例(3.4%)に認められた(補正後HR:3.35、95%CI:1.87~6.00、p<0.001)。アスピリン群およびプラセボ群で、それぞれ201例467件、192例395件の重篤な有害事象が報告された。

(ケアネット)

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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏

東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授

J-CLEAR理事