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ファイザー製ワクチン4回目、オミクロン株への予防効果は/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のB.1.1.529(オミクロン変異株)の流行中に行った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の4回目接種は、3回のみ接種と比べて、SARS-CoV-2感染率およびCOVID-19重症化率を低下した。イスラエル・ワイツマン科学研究所のYinon M. Bar-On氏らが、オミクロン変異株流行中に同ワクチン4回目を接種した60歳以上125万人超を対象に行った試験の結果を報告した。イスラエルでは、2022年1月2日に、60歳以上を対象としたBNT162b2ワクチンの4回目接種を開始していた。NEJM誌オンライン版2022年4月5日号掲載の報告。対COVID-19感染・重症化予防効果を疑似ポアソン回帰で分析 研究グループはイスラエル保健省データベースを用いて、オミクロン変異株流行期間中(2022年1月10日~3月2日)にCOVID-19ワクチン4回目接種の対象だった60歳以上125万2,331人に関するデータを抽出・解析した。 感染率と重症COVID-19について、ワクチン4回目接種後8日以上経過した(4回接種)群と、3回のみ接種した(3回接種)群、また4回目接種後3~7日(4回接種早期)群を比較。発生率は疑似ポアソン回帰モデルを用い、年齢、性別、人口統計上の集団、暦日によって補正を行い推算した。重症COVID-19、3回接種群が4回接種群の3.5倍 補正前の重症COVID-19発生率は、4回接種群が1.5/10万人に対し、3回接種群は3.9/10万人、4回接種早期群は4.2/10万人だった。 疑似ポアソン回帰分析の結果、重症COVID-19の補正後発生率は、3回接種群が4回接種後4週経過群と比べて3.5倍(95%信頼区間[CI]:2.7~4.6)高かった。また4回接種早期群は、4回接種後4週経過群と比べて2.3倍(1.7~3.3)高かった。 3回接種群の同発生率は、4回目接種後2週経過群と比べても2.4倍(2.0~2.9)高かった。COVID-19重症化に対するワクチン予防効果は、4回目接種後6週間は減弱がみられなかった。 補正前の感染率は、4回接種群が177/10万人、3回接種群は361/10万人、4回接種早期群は388/10万人だった。補正後感染率は、3回接種群が4回接種後4週経過群と比べて2.0倍(95%CI:1.9~2.1)高く、4回接種早期群は4回接種後4週経過群よりも1.8倍(1.7~1.9)高かった。しかしながら、感染に対するワクチンの予防効果は、ワクチン接種後約4週間でピークに達し、その後は徐々に減弱し、8週後には感染リスクは3回接種群とほぼ同等だった。

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ウクライナ語を新たに追加、医療通訳サービス活用を/日医

 ウクライナからの避難者やその親族等の支援として、日本医師会では医療通訳サービスに、2022年4月6日より新たにウクライナ語を追加した。同サービスは医師賠償責任保険の付帯サービスとして実施されているもので、ウクライナ語を含む19言語に対応。通訳者を介して話すことができる電話医療通訳とアプリを活用した機械翻訳の2つのサービスからなる。同日開催された日本医師会定例記者会見で、松本 吉郎常任理事が発表した。併せて、新型コロナウイルス感染症の影響や未収金発生状況等について審議結果をまとめた「令和2年・3年度外国人医療対策委員会報告書」の内容が公開された。特別な設備は不要、電話1本で利用可能 同サービスは当初東京オリンピックの開催に伴う外国人患者増加に向けた施策の一環として開始されたものだが、現在も継続されている。[電話医療通訳サービス概要]対応言語:19言語(英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・ベトナム語・タイ語・ロシア語・タガログ語・フランス語・ヒンディー語・モンゴル語・ネパール語・インドネシア語・ペルシャ語・ミャンマー語・広東語・アラビア語・ウクライナ語)対応時間:毎日8:30~24:00利用対象者:開設者・管理者が日本医師会A1会員である医療機関の医師・職員利用料:A1会員1人当たり年間20回まで無料※ウクライナから避難された患者やその親族における電話医療通訳については、対象言語に関わらず、年間20回の回数制限を除外して対応利用方法:事前登録完了後に通訳直通電話番号を案内→電話1本で利用可能外国人COVID-19患者への対応や未収金の発生防止にも活用を 「令和2年・3年度外国人医療対策委員会報告書」では、新型コロナワクチン接種のための手続きが日本語が十分に使える状況にない来日外国人にとって非常に難易度が高いこと、日本人と比べ自宅療養の比率が高くなる傾向が報告されていること、陽性判明から入院・入所までの手続きにおけるコミュニケーションが十分にとれていないケースも散見されることなどが指摘されている。 また、未収金の発生状況についても、厚生労働省「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」(令和3年3月)よりデータがまとめられている。令和2年10月の1ヵ月間で、外国人患者の受入実績のある2,195病院のうち、363病院(16.5%)が外国人患者による未収金を経験していた。発生件数は平均4.4件、総額は平均37.0万円で、500万円を超える事例が6件あり、最高額は約989万円だった。 松本氏は、ウクライナからの避難民や新型コロナ感染症患者への対応はもちろん、未収金の発生防止対策の1つとしても、円滑なコミュニケーション推進のために医療通訳サービスを活用してほしいと話した。

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HPVワクチン接種者へのスクリーニング、陽性者にはコルポスコピーを/BMJ

 子宮頸がんの予防では、ヒトパピローマウイルス(HPV)の1次スクリーニングは細胞診よりも有効性が高いとされる。オーストラリア・シドニー大学のMegan A. Smith氏らは、これまでに十分な検討が行われていないHPVワクチン接種を受けた女性における子宮頸がんの1次スクリーニング検査の効果を評価し、コルポスコピー検査導入の決定に際しては、基本となるがんのリスクを考慮する必要があり、これに基づいてHPVスクリーニング検査を行えば、その結果がHPV16/18陽性の女性では、細胞診の結果にかかわらず、過去に繰り返しスクリーニング検査を受けている女性であっても、コルポスコピー検査で前がん病変やがんが発見される可能性が高いことを示した。研究の詳細は、BMJ誌2022年3月30日号に掲載された。オーストラリア350万女性の観察研究 研究グループは、オーストラリアのHPVワクチン接種済みの女性において、子宮頸がんの1次スクリーニング検査プログラムの開始から2年間の実態を調査する目的で、観察研究を行った(筆頭著者らはオーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]から給与支援を受けた)。 対象は、2017年12月1日~2019年12月31日の期間にHPVの1次スクリーニング検査を受けた女性であった。 1次スクリーニング検査でHPV16またはHPV18が陽性であった場合、液状処理細胞診でのhigh grade、low grade、陰性、不十分の集団に、HPV16/18以外の高リスクHPV型陽性者では液状処理細胞診でhigh gradeの集団に、コルポスコピー検査が行われた。 また、HPV16/18以外の高リスクHPV型陽性者には、液状処理細胞診によるトリアージが行われ、中等度リスク(low grade、陰性)の集団には、12ヵ月間のフォローアップHPV検査が推奨され、期間中に高リスクHPV型(HPV16/18およびHPV16/18以外)が陽性となった時点でコルポスコピー検査が導入された。 主要アウトカムは、初回HPVスクリーニング検査で陽性となり、コルポスコピー検査を受けた女性の割合と、子宮頸部上皮内新生物(CIN)Grade3以上、同Grade2以上およびがんの検出の短期的なリスクとされた。 スクリーニング検査の対象となった25~69歳の女性642万8,677例のうち350万7,281例(54.6%)が、2019年末までに初回HPVスクリーニング検査を受けた。がん検出率:HPV16/18陽性者0.98%、細胞診陰性でも0.32% 定期的にスクリーニング検査を受けた25~69歳の女性304万5,844例では、HPV16/18陽性率は2.0%、HPV16/18以外のHPV型陽性率は6.6%であり、ワクチン接種率が高い25~34歳の女性(76万8,362例)では、それぞれ2.2%および13.3%であった。 コルポスコピー検査を受けた女性の割合は3.5%で、12ヵ月間の再HPV検査を終了していない女性を考慮すると、6.2%に増加すると推定された。 子宮頸がんは、ベースライン時にHPV16/18陽性の女性の0.98%(456/4万6,330例)で検出された。このうち細胞診でhigh gradeの女性は子宮頸がんの検出率が4.4%(330/7,583例)とリスクが最も高く、陰性の女性でも0.32%(89/2万8,003例)と相対的に高いリスクを示し、これはlow gradeの0.26%(26/9,821例)と同程度であった。 ベースラインと12ヵ月後の双方においてHPV16/18以外のHPV型が陽性で、細胞診が陰性またはlow gradeの中等度リスクの女性(2万19例)は、重篤な病態のリスクが低かった(CIN Grade3以上:3.4%、がん:0.02%)が、このスクリーニングアルゴリズムでは、コルポスコピー検査を受けた62.0%に当たると推定された。 著者は、「これらの結果は、HPV16/18陽性の女性は子宮頸がんのリスクが高い(0.98%)ため、細胞診の結果にかかわらず、コルポスコピー検査を考慮する必要があることを示唆する」とし、「HPV16/18以外のHPV型が陽性で、細胞診が陰性またはlow gradeの女性では重篤な病態のリスクが低かったが、コルポスコピー検査を受けた女性の多くを占めていたことから、HPV検査を1回ではなく2回繰り返すことで安全に管理できる可能性がある」としている。

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子宮頸がん撲滅に向けて:HPVワクチン接種の意義とは

 2022年3月29日、MSD株式会社は子宮頸がん予防に関するメディアセミナーを開催した。 今回のセミナーでは、「子宮頸がん予防の重要性ついて」を近藤 一成氏が、「ワクチン接種を検討する方へ伝えるべきポイント」について勝田 友博氏が説明した。若年女性で多い子宮頸がん 主要先進7ヵ国、G7の中で日本は子宮頸がん罹患率が最も高く、年間約1万人が子宮頸がんに罹患し、約3,000人が死亡している。2019年の1年間であれば、死亡者のうち571人が25~49歳と若年の女性であった。つまり、子宮頸がん予防の遅れが課題となっている。 「子宮頸がんは人生を変えてしまう疾患である」。子宮頸がんが原因で離婚することになった患者、幼い子供がいながら余命宣告をされた患者など多くの患者を診てきた近藤氏は、子宮頸がんをそう評価する。子宮頸がん撲滅のために 子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)感染によるものであり、HPVは性交経験のある女性のうち約80%が感染しているとされ、誰にでも起こりえるといえる。実際に、HPVに感染していない子宮頸がんはほとんどないといわれている。 子宮頸がんはHPVに感染した後、軽度異形成から中等度、高度異形成、そして上皮内がんへと進行する。がん検診で早期発見できるのは、高度異形成以上であるため、検診率が80%台になっても罹患率の減少は35%程度しか見込めないと近藤氏は指摘する。さらに、細胞診の感度は53~78%であり、一定の割合で偽陰性が生じることや、最近増加傾向にある子宮頚部腺がんは検出が難しい。そのため、子宮頸がんの予防戦略としては1次予防でHPVワクチン、検診は2次予防である、と近藤氏は訴えた。 実際にHPVワクチンの接種率向上によって、スコットランドでは子宮頸がんやその前段階である異形成が減少したと報告されており、スウェーデンやイングランドにおいても同様の報告がなされている。 「このままでは子宮頸がんは日本の風土病になってしまう」、諸外国の状況と日本の現状を比べて近藤氏はそう語った。HPVワクチンの積極的勧奨が再開された今、早期のHPVワクチン接種が望まれる、と述べて近藤氏は講演を終えた。正確な情報をもとに判断する 続いて、「ワクチン接種を検討する方に伝えたい留意点」と題して勝田 友博氏が講演を行った。 HPVワクチンと聞くと真っ先に思い浮かぶのが、接種後の痛みや手足の動かしにくさ、不随意運動などの身体機能症状である。これらの身体機能症状がHPVワクチンによるものなのではないか、という点を気にしてHPVワクチンを接種しない選択をした方も多くいることが想像できる。 しかし、HPVワクチンと多様な身体機能症状の関連について調査した名古屋Studyでは、月経量の異常だけが接種群において非接種群よりも頻度が増加していた。また、『青少年における疼痛または運動障害を中心とする多様な症状の受領状況に関する全国疫学調査』によると、HPVワクチンの接種歴がなくても接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈するものが一定数存在することが報告されている。 HPVワクチンに関する情報が溢れている昨今、その中から正確な情報をもとに接種希望者には判断をしてもらう必要がある。とくに医療従事者は正確で透明性の高い情報をわかりやすく提供し、判断の助けをする必要がある、と勝田氏は語った。今後のHPVワクチン接種体制 現在、日本国内で2000年度以降に生まれた女性におけるHPVワクチン接種率がかなり低い状況にある。そのため、キャッチアップ接種の必要性があるとされており、対象は1997~2005年生まれの女性となる。 HPVワクチンは接種年齢が遅れるとワクチンの効果が低下するため、接種機会を得たら速やかに接種することを勝田氏は推奨している。 ワクチン接種の重要性も接種する本人、または保護者に伝わらないと意味がない。将来「知らなかった」で後悔しないよう、ワクチン接種するかどうかを、本人や保護者に正確な情報をもとに判断してもらうためにも、国や医療従事者が正確かつ透明性の高い情報をわかりやすく提供することが重要だ、と勝田氏は述べ、講演を締めくくった。

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第96回 COVID-19レジストリ研究“ダッシュボード”公開/国立国際医療研究センター

<先週の動き>1.COVID-19レジストリ研究“ダッシュボード”公開/国立国際医療研究センター2.感染拡大を懸念し、新型コロナウイルス感染症対策分科会が緊急メッセージ3.医師大量退職の大津市民病院、理事長に次いで院長も辞任4.2021年の救命救急センター評価、S評価は96ヵ所/厚労省5.ヤングケアラー実態調査で小学6年生の15人に1人が家族の世話6.精神病院での身体拘束後の死亡事件、遺族と病院が和解1.COVID-19レジストリ研究“ダッシュボード”公開/国立国際医療研究センター国立研究開発法人 国立国際医療研究センターは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例データベース研究「COVID-19 REGISTRY JAPAN(COVIREGI-JP)」に登録されたデータ等を活用したダッシュボードを公開した。COVID-19と診断され、日本国内の医療機関に入院した患者を対象として、以下の情報が登録されている。(1)基本情報(年齢、性別、出生国、人種、感染に関する疫学的情報、基礎疾患、内服歴・治療歴など)(2)入院や治療に関する情報(症状、入院期間、治療方法、血液・画像検査の結果など)(3)感染症に関する情報(COVID-19の検査結果、その他病原体検査結果など)(4)その他(妊婦:妊娠期間、妊娠中の異常、妊娠転帰/小児:出生歴、ワクチン接種の有無など)本研究は、国際感染症センターと全国700余りの医療機関が共同で6万3,000例以上の症例を登録し、わが国で最大級のCOVID-19入院患者データを蓄積するレジストリとなっている。今後も研究を推進させるため、引き続きデータ登録や研究への参画を呼びかけている。ダッシュボードでは、重症患者の推移、年齢男女構成、症状、併存疾患、薬物治療、呼吸補助治療、喫煙状況などを一覧することができる。2022年4月11日時点のダッシュボード画面画像を拡大する(参考)コロナ入院患者の症状推移や治療状況などまとめたサイト公開(NHK)COVIREGI-JPダッシュボード公開について~COVID-19・レジストリ登録データを見える化しました~(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター)2.感染拡大を懸念し、新型コロナウイルス感染症対策分科会が緊急メッセージ政府は8日、新型コロナウイルス感染症対策分科会を開催した。今後の急激な感染拡大を防止して、社会経済活動を継続するための緊急メッセージを発信し、国民へ可能な限り早めの3回目接種などを呼び掛けた。まん延防止等重点措置の解除後、わが国でも海外と同様に、陽性者でオミクロン株BA.2が占める割合が増加し、感染再拡大の兆候が見られているため、適切なマスク着用など基本的感染対策の徹底が求められる。また、医療機関や自治体に対しては、高齢者施設で感染が疑われる人が出た場合、早期の医療介入や施設での感染対策のために手厚い支援をするよう求めている。(参考)高齢者対策重点に 感染急拡大で医療逼迫も 分科会(産経新聞)急拡大防止“追加接種やマスク着用を”分科会が緊急メッセージ(NHK)第7波対策、分科会で議論 社会経済活動の制限に賛否(日経新聞)3.医師大量退職の大津市民病院、理事長に次いで院長も辞任京都大学から派遣されている外科・消化器外科・乳腺外科などの医師19人の相次ぐ退職見込みが報道されている滋賀・大津市民病院は、若林 直樹院長が一連の責任をとる形で辞任することを明らかにした。後任の院長には、京都府立医大出身の日野 明彦氏(現・済生会滋賀県病院 院長補佐)が4月18日に就任する。なお、院長を辞任した若林氏は副理事長として、引き続き病院運営や診療に携わり新院長をサポートしていくとされる。一方、後任の理事長はまだ決まっておらず、大津市長が人選を急いでいる。(参考)大津市民病院 院長辞任発表“多くの医師退職問題で責任とる”(NHK)院長辞任→院長代行に 大津市民病院(読売新聞)大津市民病院の院長が辞任「責任を痛感」 医師大量退職問題、副理事長は継続(京都新聞)4.2021年の救命救急センター評価、S評価は96ヵ所/厚労省厚生労働省が、2021年「救命救急センターの充実段階評価の評価結果」を公表した。全国298ヵ所の救命救急センターが対象に行われた本調査は、1999年度から救命救急センター全体のレベルアップを図ることを目的として実施されており、最もランクの高い「S」評価を得たのは、東北大学病院、福島県立医科大学附属病院、筑波大学附属病院、自治医科大学附属病院、埼玉医科大学総合医療センター、手稲渓仁会病院、東京都立墨東病院、亀田総合病院、慈泉会相澤病院など96ヵ所。評価としては「A」が196ヵ所で最も多く、「B」は5ヵ所、「C」は1ヵ所となっている。評価の結果は、救命救急センター運営事業費の補助額と診療報酬に反映される。たとえば診療報酬では、「S」評価であれば救命救急入院料に救急体制充実加算1(1,500点)、「A」なら同加算2(1,000点)、「B」なら同加算3(500点)がそれぞれ上乗せされる。(参考)2021年の救命救急センターの評価、S:96か所、A:196か所、B:5か所、C:1か所に―厚労省(Gem Med)21年の充実段階評価「S」、救命センター96カ所「C」は1カ所、厚労省(CB news)5.ヤングケアラー実態調査で小学6年生の15人に1人が家族の世話厚労省は今年1月、介護など家族の世話をしている子供や若者(ヤングケアラー)の実態調査を行った。その結果、小学6年生の15人に1人、大学3年生では16人に1人が実際に家族の介護などをしていることが明らかとなった。平日1日あたり7時間以上を費やすと回答したヤングケアラーは7.1%であり、割合は家事や幼い兄弟姉妹の世話が多く、学業や健康面への影響が心配だ。(参考)“ヤングケアラー”国が初調査 小学生15人に1人「家族を世話」(NHK)ヤングケアラー、小6の15人に1人 1日7時間費やす例も 厚労省調査(日経新聞)小学生の15人に1人はヤングケアラー 長時間ケアが学校生活に影響(朝日新聞)6.精神病院での身体拘束後の死亡事件、遺族と病院が和解東京都足立区の精神科病院で、患者(当時54歳)が死亡したのは違法な身体拘束によるものとして、遺族が病院側に約6,200万円の損害賠償を求めた訴訟があり、東京高裁(足立 哲裁判長)で4月7日に和解が成立した。被告となった病院は、再発防止に努めるとともに、解決のため和解金を支払うこととなったが、金額は明らかにされていない。東京地裁の判決によると、双極性障害と診断されていた患者が2016年1月、足立区内の精神科病院を受診し、夫の同意下で入院したが、医療者側の指示に従わないため、医師の指示によって両腕・胴の拘束を開始した。7日後に解除されたが、直後に容体が急変し、肺塞栓症にて亡くなった。(参考)身体拘束後死亡、遺族と病院和解 東京高裁(日経新聞)身体拘束後に死亡、精神科病院側と遺族が和解 「一層の配慮」を約束(朝日新聞)

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妊娠中のコロナワクチン接種、周産期アウトカムへの影響は?/JAMA

 妊娠中の女性に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを接種しても、妊娠終了後の接種や非接種と比較して、母子における有害な周産期アウトカムのリスクの増加はほとんどみられないことが、カナダ・オタワ大学のDeshayne B. Fell氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年3月24日号に掲載された。オンタリオ州の後ろ向きコホート研究 研究グループは、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種の、周産期のアウトカムに及ぼす影響の評価を目的に、人口ベースの後ろ向きコホート研究を行った(カナダ公衆衛生庁の助成を受けた)。 解析には、カナダ・オンタリオ州のCOVID-19予防接種データベース(COVaxON)と連携させた出生レジストリ(Better Outcomes Registry & Network[BORN] Ontario)の2020年12月14日~2021年9月30日のデータが用いられた。 被験者は、妊娠中に少なくとも1回のCOVID-19ワクチン接種を受けた群、妊娠終了後に接種を開始した群、接種の記録がない群の3群に分けられた。 主要アウトカムは、母親では分娩後出血、絨毛膜羊膜炎、帝王切開による分娩(全体および緊急時)、新生児では新生児集中治療室(NICU)入室、分娩5分後の新生児Apgarスコア低値(7点未満)の発生とされた。リスク増大なし、ほとんどがmRNAワクチンである点に留意 9万7,590人(平均年齢 31.9[SD 4.9]歳)の妊婦が解析に含まれた。2万2,660人(23%)が妊娠中に少なくとも1回のワクチン接種を受け、このうち63.6%は妊娠第3期(妊娠期間中央値213日[在胎週数30週])に1回目の接種を受けており、99.8%(BNT162b2[Pfizer-BioNTech製]79.9%、mRNA-1273[Moderna製]19.9%)がmRNAワクチンであった。 これら妊娠中接種群は、妊娠終了後接種群(4万4,815人)と比較して、5つの有害な周産期アウトカムについて、統計学的に有意なリスクの増加は認められなかった。 すなわち、分娩後出血の発生率は、妊娠中接種群が3.0%、妊娠終了後接種群も3.0%(補正後群間リスク差:-0.28/100人[95%信頼区間[CI]:-0.59~0.03]、補正後リスク比:0.91[95%CI:0.82~1.02])で、絨毛膜羊膜炎はいずれも0.5%(-0.04/100人[-0.17~0.09]、0.92[0.70~1.21])と両群に差はなく、帝王切開による分娩は30.8%および32.2%(-2.73/100人[-3.59~-1.88]、0.92[0.89~0.95])と、妊娠中接種群のほうが低かった。また、新生児の2つのアウトカムはいずれも妊娠中接種群でリスクが低く、NICU入室は11.0%および13.3%(-1.89/100人[-2.49~-1.30]、0.85[0.80~0.90])、分娩5分後Apgarスコア低値は1.8%および2.0%(-0.31/100人[-0.56~-0.06]、0.84[0.73~0.97])だった。 また、非接種群(3万115人)と比較した場合の、妊娠中接種群における有害な周産期アウトカムの発生のリスクは以下のとおりであり、妊娠終了後接種群との比較とほぼ同程度であった。 分娩後出血(3.0% vs.3.4%、補正後リスク差:-0.32/100人[95%CI:-0.64~-0.01]、補正後リスク比:0.90[0.81~1.00])、絨毛膜羊膜炎(0.5% vs.0.3%、0.07/100人[-0.04~0.19]、1.20[0.90~1.59])、帝王切開による分娩(30.8% vs.28.5%、-0.97/100人[-1.81~-0.14]、0.97[0.94~1.00])、NICU入室(11.0% vs.12.8%、-0.93/100人[-1.52~-0.35]、0.92[0.87~0.97])、分娩5分後Apgarスコア低値(1.8% vs.2.0%、-0.23/100人[-0.47~0.02]、0.88[0.77~1.01])。 著者は、「これらの結果を解釈する際は、妊娠中のワクチン接種の多くは妊娠第2~3期に接種されたmRNAワクチンである点に留意する必要がある」としている。

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回復期患者血漿、ワクチン未接種のコロナ外来患者に有効か?/NEJM

 多くがワクチン未接種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の外来患者において、症状発現から9日以内の回復期患者血漿の輸血は対照血漿と比較して、入院に至る病態悪化のリスクを有意に低減し、安全性は劣らないことが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のDavid J. Sullivan氏らが実施した「CSSC-004試験」で確認された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年3月30日号に掲載された。米国23施設の無作為化対照比較試験 本研究は、COVID-19外来患者の重篤な合併症の予防における回復期患者血漿の有効性の評価を目的とする二重盲検無作為化対照比較試験であり、2020年6月3日~2021年10月1日の期間に、米国の23施設で参加者の登録が行われた(米国国防総省などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性で、COVID-19の症状発現から8日以内の外来患者であり、病態悪化のリスクやワクチン接種の有無は問われなかった。 被験者は、回復期患者血漿または対照血漿の輸血を受ける群(両群とも約250mLを単回投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、登録後24時間以内に約1時間をかけて輸血された後、30分間の経過観察が行われた。 対照血漿には、2019年に献血で得られたか、2019年12月以降にSARS-CoV-2陰性と判定された集団から得られた血漿が用いられた。 主要アウトカムは、輸血から28日以内のCOVID-19関連入院とされた。相対リスクが54%低下 1,225例(SARS-CoV-2陽性の判定はRNA検出が87%、抗原検出が13%)が無作為化の対象となり、このうち実際に輸血を受けた1,181例(年齢中央値43歳、65歳以上7%、50歳以上35%、女性57%[3例の妊婦を含む]、症状発現から輸血までの期間中央値6日)が修正intention-to-treat解析に含まれた(回復期患者血漿群592例、対照血漿群589例)。 ワクチンは、未接種が回復期患者血漿群83.3%、対照血漿群81.7%、部分接種がそれぞれ4.6%および5.3%、完全接種は12.2%および13.1%であった。 28日以内のCOVID-19関連入院は、回復期患者血漿群が592例中17例(2.9%)で認められ、対照血漿群の589例中37例(6.3%)と比較して有意に良好で(絶対リスク低下率:3.4ポイント、95%信頼区間[CI]:1.0~5.8、p=0.005)、相対リスクが54%低下した。1回の入院を回避するのに要する治療必要数は29.4例だった。 回復期患者血漿群の12例と対照血漿群の26例で、病態の悪化により酸素補給が行われた。対照血漿群の3例が、入院後に死亡した。 両群を合わせた入院患者54例のうち53例はワクチン未接種で、残りの1例は部分接種であり、完全接種はなかったため、ワクチン接種者における有効性の評価はできなかった。 Grade3/4の有害事象は89件発現し、回復期患者血漿群が34件、対照血漿群は55件であった。非入院患者では、16件のGrade3/4の有害事象が認められ、それぞれ7件および9件だった。 著者は、「これらの結果は、とくにワクチン配布に不均衡がみられる医療資源が乏しい地域において、公衆衛生上の重要な意味を持つ」とし、「将来のCOVID-19の世界的流行を想定すると、回復期患者血漿を迅速に投与できる輸血センターの設立が考慮すべき課題となるだろう。また、現在の世界的流行においても、モノクローナル抗体に対する耐性を持つSARS-CoV-2変異株が伝播し続けていることから、とくに地域で得られた最近の血漿には、循環する株に対する抗体が含まれるため、COVID-19回復期患者血漿の入手と配布の能力の開発が、有益性をもたらす可能性がある」と指摘している。

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第103回 24年度まで無料延長!今がチャンスの風疹抗体検査とワクチン接種

前回、新型コロナウイルス感染症の3回目接種の進捗が低調なのではないかと本連載で触れたが、以下の記事によると、実際にそうらしい。「ワクチン3回目、遅れる現役世代 対象の2割が未接種」(日本経済新聞)記事では3月末までに3回目の接種時期を迎えた現役世代の4人に1人は未接種とのデータを紹介。その背景について厚生労働省は副反応への懸念があると見ているとのこと。前回はそうした可能性があることを踏まえ、メッセンジャーRNAワクチンに比べて接種者が自覚する副反応頻度がやや低い「組み換えタンパクワクチン」の承認を急ぐべきだと私は主張したが、どうやらその点は実現しそうな見込みである。一方、岸田 文雄首相はワクチンの3回接種完了者向けにコンサートやスポーツ観戦などのイベントに割引を適用する「ワクワクイベント事業」の展開を検討していると報じられている。すでにこの種の振興事業に関しては、「Go To トラベル事業」の代替措置として観光庁が支援している「県民割」がある。これは新型コロナの感染状況がステージII以下の自治体で、新型コロナワクチンの2回接種完了あるいはPCR検査などの陰性を条件に居住県内あるいは隣接県への旅行代金を最大7割引にするというもので、4月6日現在、全国39道府県で実施中だ。4月1日からはこれが自県や隣接県のみならず、全国を6つに分けた地域ブロック内の旅行でも適用する「ブロック割」となり、条件も新型コロナワクチンの3回接種完了あるいはPCR検査などの陰性に切り替えられている(ただし、県内旅行の場合は知事の判断で従来のワクチン2回接種かPCR検査などの陰性結果の条件でも可)。この種の経済インセンティブによる「ニンジンをぶら下げ」手法には反発もあるようだが、行動変容などを促す場合にはある程度は必要だと個人的には思っている。さらに言えば、私はこのインセンティブ策を現在中断している「Go To Eat」へも拡大するとより効果的ではないかと考えている。ご存じのように、コロナ禍では飲食業界は新型インフルエンザ等特措法に基づく都道府県の営業自粛要請で最も大きな打撃を受けている。その意味では自粛要請期間すべてにきちんと応じた飲食店のみを対象に、前述のコロナワクチン接種の完了あるいは検査陰性を条件に飲食で割引が受けられるなどお得に使えるクーポン発行などをするという具合だ。ちなみにこうしたインセンティブ政策は、群馬県などのように地方自治体独自で行っているものもある。そうしたなかでさらに私見ではあるが、今回の新型コロナワクチンのインセンティブ策に乗っかる形で、時限措置としてインセンティブを与えたほうが良いのではないかと考えていることがある。それは中年男性への風疹ワクチン接種事業である。国内では2012~13年と2018~19年に風疹の大流行があり、その中核が過去に定期接種の機会がなく抗体保有率が低い中年男性だったことから、該当する1962年4月2日~79年4月1日生まれの男性約1,500万人を対象に無料抗体検査とその検査で風疹ウイルスに対する抗体価が低いと判断された場合のワクチン接種のクーポンが配布されてきた。この事業は本来ならば2021年度末で終了予定だったが、これまで検査を受けた人が約350万人と対象人口に比してかなり低い水準にとどまっていることから、2024年度末まで延長されることが決まった。コロナ禍による受診控えやワクチン接種がコロナにばかり注目が集まるなど、風疹ワクチン接種をめぐってはやや不運な状況が続いている。もっとも新型コロナをきっかけに良くも悪くもワクチンという存在に社会的注目が集まっていることや、4月からのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種勧奨再開などを踏まえれば、ワクチンを巡る状況にはフォローウインドの側面もある。中年男性への風疹ワクチン接種事業は対象も限定的なため、経済的インセンティブ措置を講じる場合も予算規模はより小さくて済む。さらにやや余計な物言いかもしれないが、風疹ワクチンが細胞性免疫の賦活効果が高い生ワクチンであることを考えれば、接種者では風疹以外の感染症への副次的効果も期待できる。その意味では今こそ風疹ワクチンの接種キャンペーンを行う絶好の機会だと思うのだ。

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HPVワクチン積極的勧奨再開にあわせたイベント&患者説明用フライヤー

 HPVワクチンは2013年に定期接種の対象となったが、その後に相次いで副反応疑いの事例が報告されたため、厚労省は接種を個別に呼びかける「積極的勧奨」を中断していた。その後、ワクチンの有効性に関するエビデンス1)が蓄積し、さらにはワクチン接種後の多様な症状とワクチン接種の関係を否定する報告2)などを背景に、今年4月より9年振りに積極的勧奨が再開されている。 今回の勧奨再開によって、定期接種の対象となる小学校6年生~中学3年生相当年齢の女子に対し、自治体から接種の案内が送付されるようになる。無料接種が可能なのは2価・4価ワクチンで、9価ワクチンや男性の接種は自費となる。併せて、積極的勧奨中断で接種機会を逃した1997~2006年生まれの女性が無料で接種を受けられる「キャッチアップ接種」や、定期接種の対象期間を過ぎて自費で接種を受けた人へ接種費用を払い戻す制度も用意されている。 HPVワクチンの普及啓発活動を行う一般社団法人みんなで知ろうHPVプロジェクト(通称みんパピ!)は、2020年8月の設立以来、HPV感染症について正確な知識を伝えるための活動を展開してきた。今回の積極的勧奨の再開にあたり、 4月9日の「子宮の日=子宮頸がん予防の日」に合わせ、さまざまな啓蒙活動を展開している。 具体的な活動は以下のとおり。人気医療マンガ『コウノドリ』の子宮頸がん編を限定無料公開 鈴ノ木 ユウ氏の人気医療漫画『コウノドリ』の「子宮頸がん」編(13巻40話・14巻41話)を出版社の協力により、「みんパピ!」サイト上で4月22日(金)まで限定無料公開。交通広告の展開 東京の渋谷駅、大阪の難波駅の大型ビジョンにワクチンについての、対象者向けのメッセージ広告を展開。4/9にYou Tubeライブを開催 医療政策などをテーマとした有識者を招いたYou Tubeライブを複数開催。患者説明用フライヤーを更新 従来から作成・配布してきた、医療機関に向けた患者説明用フライヤーの内容を更新(「みんパピ!」サイトでダウンロード可)。 みんパピ!の副代表を務める医師の木下 喬弘氏はプレスセミナーの中で「日本のHPVワクチンの接種率は2019年度で1.9%と他国に比べて恐ろしいほど低い。みんパピ!が昨年行った独自調査(参考記事)では14.4%と上昇してきたが、それでも他先進国の6~9割という接種率には程遠い。今後の急速な接種率回復が今後の子宮頸がんの罹患率・死亡率を下げることは明らかで、メディアとも協力しつつ、対象者と親、学校等への啓蒙活動を続けていきたい」とした。

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3回目接種情報サイトを開設/モデルナ・ジャパン

 2022年4月4日、モデルナ・ジャパン株式会社(以下モデルナ社)はCOVID-19ワクチンの3回目接種を啓発・支援するため、新型コロナウイルスワクチン3回目接種情報サイト「どうする3回目接種?」を開設したことを公表した。 同サイトでは、ワクチン3回目の追加接種についての疑問や悩みに答えるべく、3つの知っておきたいこと(「3回目接種の必要性」、「交互接種について」、「3回目接種の副反応」)に関して、わかりやすい情報と動画を掲載。柔道家のウルフ・アロン氏、パラトライアスリートの谷真海氏がインタビュアーとしてそれぞれの目線で質問し、医師が解説する動画を視聴することができる。解説役はさくら・はるねクリニック銀座/順天堂大学 富坂美織氏、桜新町アーバンクリニック 遠矢純一郎氏の2名が務める。 モデルナ社はよりわかりやすい情報提供を通じて、3回目のワクチン接種の啓発と理解促進につながることを期待しているという。新型コロナウイルスワクチン3回目接種情報サイト「どうする3回目接種?」

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妊婦への新型コロナワクチン、胎児への悪影響なし/JAMA

 妊娠中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンの接種は、非接種者と比べて有害妊娠アウトカムのリスク増大と有意に関連しないことが示された。ノルウェー・Norwegian Institute of Public HealthのMaria C. Magnus氏らが、スウェーデンとノルウェーの妊婦約16万人を対象に行った、後ろ向きコホート試験の結果を報告した。結果について著者は「ワクチン接種の大多数は、妊娠第2~3期にmRNAワクチンを使用して行われており、今回の調査結果で考慮すべき点である」と述べている。妊娠中の新型コロナワクチンの安全性に関するデータは限定的であった。JAMA誌オンライン版2022年3月24日号掲載の報告。スウェーデン10万人超、ノルウェー5万人超を対象に試験 研究グループはスウェーデンとノルウェーでレジストリベースの後ろ向きコホート試験を行い、妊娠中の新型コロナワクチン接種後の有害妊娠アウトカムのリスクを調べた。被験者は、スウェーデンで2021年1月1日~2022年1月12日に、またノルウェーで2021年1月1日~2022年1月15日に、妊娠22週以降で単胎児を出産した妊婦15万7,521人(スウェーデン:10万3,409人、ノルウェー:5万4,112人)。 Pregnancy Register in SwedenとMedical Birth Registry of Norwayを、ワクチン接種およびその他のレジストリと結びつけ、ワクチン接種情報や被験者背景に関する情報を入手し解析した。mRNAワクチン(BNT162b2[Pfizer-BioNTech製]、mRNA-1273[Moderna製])および1バイアルベクターワクチン(AZD1222[AstraZeneca製])に関するデータは、全国ワクチンレジストリから得た。 主要評価項目は、早産と死産リスクで、妊娠日齢やワクチン接種(時間依存性曝露)を変数に用いたCox回帰モデルを用いて評価し、低出生体重児、アプガー指数低スコア、新生児入院のリスクは、ロジスティック回帰分析で評価。ランダム効果モデルメタ解析で、2国間の結果を統合した。妊娠中COVID-19ワクチン接種率は18% 被験者の分娩時平均年齢は31歳だった。妊娠中に新型コロナワクチンを接種したのは2万8,506人(18%)で、うちBNT162b2が12.9%、mRNA-1273が4.8%、AZD1222が0.3%だった。接種時期の内訳は、妊娠第1期が0.7%、第2期が8.3%、第3期が9.1%だった。 妊娠中の新型コロナワクチン接種は、早産(非接種群6.2/1万妊娠日vs.接種群4.9/1万妊娠日、補正後ハザード比[aHR]:0.98[95%信頼区間[CI]:0.91~1.05]、I2=0%、異質性のp=0.60)、死産(2.1 vs.2.4/10万妊娠日、aHR:0.86[95%CI:0.63~1.17])、低出生体重児(7.8% vs.8.5%、群間差:-0.6%[95%CI:-1.3~0.2]、補正後オッズ比[aOR]:0.97[95%CI:0.90~1.04])、アプガー指数低スコア(1.5% vs.1.6%、群間差:-0.05%[95%CI:-0.3~0.1]、aOR:0.97[95%CI:0.87~1.08])、新生児入院(8.5% vs.8.5%、群間差:0.003%[95%CI:-0.9~0.9]、aOR:0.97[95%CI:0.86~1.10])の有害妊娠アウトカムについて、いずれもリスク増大との有意な関連は認められなかった。

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小児へのファイザー製ワクチン、オミクロン株でも重症化に有効/NEJM

 BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)ワクチンは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株に関連した入院リスクを、5~11歳の小児で約3分の2に低減することが示された。12~18歳の青少年では、2回接種の入院に対する保護効果は、デルタ変異株よりもオミクロン変異株で低下したが、いずれの変異株についてもワクチン接種による重症化を予防する効果が認められたという。米国疾病予防管理センター(CDC)のAshley M. Price氏らによる診断陰性症例対照試験の結果で、NEJM誌オンライン版2022年3月30日号で発表された。5~11歳、12~18歳のCOVID-19入院・重症化に対するワクチン有効性を推定 研究グループは、診断陰性デザインによる症例対照試験で、検査で確定した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院および重症化(生命維持装置使用や死亡に結び付くなど)へのワクチンの有効性を評価した。 2021年7月1日~2022年2月17日にかけて、米国23州・31ヵ所の病院で、COVID-19患者とその対照(非COVID-19患者)を登録。COVID-19患者と対照における、ワクチン完全接種群(mRNAワクチンBNT162b2を2回接種から2週間以上経過)と非接種群のオッズ比を比較し、ワクチン有効性を推定した。オッズ比比較は、12~18歳の患者でワクチン接種からの経過期間別に、また5~11歳と12~18歳の患者ではデルタ変異株流行期間(2021年7月1日~12月18日)とオミクロン変異株流行期間(2021年12月19日~2022年2月17日)それぞれについて行った。デルタ変異株流行期、12~18歳の入院に対するワクチン有効性は92~93% COVID-19患者群1,185例(1.043例[83%]がワクチン未接種、生命維持装置使用291例[25%]、死亡14例)、対照群1,627例が試験に登録された。 デルタ変異株流行期間中、12~18歳のCOVID-19入院に対するBNT162b2ワクチン有効性は、ワクチン接種後2~22週間で93%(95%信頼区間[CI]:89~95)、23~44週間で92%(80~97)だった。 オミクロン変異株流行期間中、12~18歳(ワクチン接種からの経過日数中央値:162日)のCOVID-19入院に対するワクチン有効性は40%(95%CI:9~60)、重症化に対しては79%(51~91)であり、非重症化に対しては20%(-25~45)だった。 オミクロン変異株流行期間中の5~11歳のCOVID-19入院に対するワクチン有効性は、68%(95%CI:42~82、ワクチン接種からの経過日数中央値:34日)だった。

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3回目接種後の心筋炎、若年者での発生状況とその転帰/JAMA

 とくに若い男性で、ごく稀ではあるもののmRNAワクチン接種後の心筋炎の発生が報告されている。1回目よりも2回目接種後に多い傾向が報告されているが、3回目接種後の発生率についてのデータは十分でない。イスラエル国防軍医療部隊のLimor Friedensohn氏らは、同軍の新兵における3 回目のワクチン接種と心筋炎リスクとの関連について、解析結果を報告。JAMA誌オンライン版2022年3月17日号にリサーチレターとして掲載された。 2021年8月15日、イスラエル国防軍(IDF)は、ファイザー社のBNT162b2ワクチンによる3回目接種を開始した。本研究では、2021年9月30日までにBNT162b2の3回目接種を受け、2021年10月14日までに心筋炎と診断されたすべての軍人を対象としている。心筋炎が疑われる症例はすべて病院に紹介され、診断は、臨床検査、心電図、心エコー、心臓MRI所見に基づき行われた。すべての診断は、独立した心臓専門医によって再確認されている。集計データをもとに、ワクチン接種後1週間と2週間における心筋炎発症率を算出した。 主な結果は以下の通り。・12万6,029人のIDF隊員がBNT162b2ワクチンによる3回目接種を受けた。・男性の79%、女性の90%が18~24歳だった。・追跡期間中、9例(すべて若い男性)が心筋炎と診断された。1例はCOVID-19後に発生したため除外され、残りの8例は診断時のRT-PCR検査で陰性だった。・4例は接種後1週間以内に、3例は接種後8~10日目、1例は接種後2週間以上経ってから症状が出た(解析からは除外)。・全例で不整脈やうっ血性心不全の兆候はなく、軽症だった。また退院時に心臓に損傷が残っていないことも確認された。・3回目のワクチン接種後1週間および2週間における心筋炎の発生率は、それぞれ10万回接種当たり3.17(95%CI:0.64~6.28)および5.55(95%CI:1.44~9.67)だった。・心筋炎の症例はすべて若い男性(18~24歳)であったため、この特定の集団に対する発生率をみると、3回目のワクチン接種後1週間および2週間における心筋炎の発生率は、それぞれ10万回接種当たり6.43(95%CI:0.13~12.73)、11.25(95%CI:2.92~19.59) と推定された。 本研究における心筋炎発生率は、同様のイスラエル軍集団における2回目のワクチン接種後1週間に観察された発生率(10万回接種当たり5.07)よりも低かった。一方で18~24歳の男性における心筋炎発生率は、フォローアップ期間や心筋炎の定義が異なるため単純な比較には注意が必要なものの、米国の男性集団で観察された値(10万回接種当たり5.243)よりも高かった。 著者らは、本研究の限界として心筋炎と診断された症例数が少ないこと、主に若い男性が多い集団を対象としていることを挙げたうえで、3回目接種後の心筋炎リスクは2回目接種後と比較して低い可能性が示唆されたとし、この理由については今後の研究が必要としている。

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オミクロン株への感染で他の変異株への感染を防げるか/NEJM

 新型コロナウイルスにおけるオミクロン株感染後の中和抗体プロファイルについては、ほとんどわかってない。オーストリア・Medical University of InnsbruckのAnnika Rossler氏らは、オミクロンBA.1株に感染した人の回復後の血清サンプルについて6つの変異株に対する中和抗体価を分析し、他の株への感染歴やワクチン接種歴別に検討した。その結果、オミクロンBA.1株にのみ感染したワクチン未接種者は、オミクロンBA.1株以外の株による感染を予防できない可能性があることが示唆された。NEJM誌オンライン版2022年3月23日号のCORRESPONDENCEに掲載。オミクロン株のみの感染後は他の株に対する中和抗体がほとんど含まれていなかった 本研究は後ろ向き研究で、BA.1株に感染しPCR検査陽性となった日の5〜42日後に血清サンプルを採取。BA.1株に感染する前に、他の新型コロナ感染歴なしのワクチン接種者(15例)、他の新型コロナ感染歴なしのワクチン未接種者(18例)、野生株またはアルファ株またはデルタ株への感染歴ありのワクチン接種者(11例)、野生株またはアルファ株またはデルタ株への感染歴ありのワクチン未接種者(15例)の4群で検討した。野生株、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、オミクロンBA.1株に対する中和抗体価を分析した。 オミクロン株感染後の中和抗体価を分析した主な結果は以下のとおり。・オミクロンBA.1株に感染したワクチン接種者と、オミクロンBA.1株感染前に野生株またはアルファ株またはデルタ株に感染歴のあるワクチン接種者またはワクチン未接種者において、すべての株に対する中和抗体価が高かった。・ワクチン接種者でのオミクロンBA.1株に対する中和抗体価の平均は、他の株に対する中和抗体価の平均より低かったが、オミクロンBA.1株感染前に野生株またはアルファ株またはデルタ株への感染歴のあるワクチン未接種者での他の株に対する中和抗体価の平均と同等だった。・オミクロンBA.1株感染前に新型コロナ感染歴のないワクチン未接種者から得られた血清サンプルでは、大部分がオミクロンBA.1株に対する中和抗体で、他の株に対する中和抗体はほとんど含まれていなかった。 著者らは、「本研究にはサンプル数の少なさ、後ろ向き研究といった限界はあるが、オミクロンBA.1株が強力に免疫を回避し、他の株との交差反応性がほとんどないという仮説を支持している。したがって、ワクチン未接種で、以前の株の感染歴がなくオミクロンBA.1株にのみ感染した人は、オミクロンBA.1株以外の株による感染を十分に予防できない可能性があり、完全に予防するにはワクチン接種が必要」と考察している。

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第102回 オミクロン再増加を救う手立ては…某ワクチン承認をFDAより先行すること!?

年初から始まったオミクロン株による新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染者急増、通称・第6波。全国各地に発出されていた新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」は、3月21日をもって最後まで残っていた18都道府県でも解除された。しかし、何とも嫌なことに翌日の22日から新規陽性者数はジリジリと増加傾向となって約10日が経過している。また、日ごとに報告されている死者数は二桁後半で、感染時に重症化しやすいと言われたデルタ株による第5波時よりも多いという現実も重なっている。オミクロン株に対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの効果は、重症化予防効果も含め対デルタ株に比べて低下傾向にあるとはいえ、今でも主要な対抗手段の一つであることには変わりはない。最新の3回目接種完了率は3月29日現在、全人口の39.8%、65歳以上の高齢者では80.7%となっている。高齢者ではかなり進展してきたものの、全人口で見るとやや心もとない。ほかのワクチンに比べ、発熱など患者が自覚できる副反応の頻度が高いことが3回目接種完了率の伸びに影響している可能性は少なくなさそうだ。また、この副反応問題とmRNAワクチンがまったくの新規技術ワクチンであることが相まって、小児対象の接種開始とともにワクチンに否定的な運動も活発化している。各地の医療機関には無差別に小児への接種を止めるよう求める文書が届いているという。そしてSNS上などを眺めていると、3回目接種もまだ進展中の環境で、4回目接種の議論が出てきたことで、これまでそれほど新型コロナワクチンに否定的ではなかった層からも懐疑的な意見が目立つようになった。この件はとくにイスラエルから発表された4回目接種の結果から、こと感染予防効果に関して言えば、ほとんど期待できないことが明らかになったことが拍車をかけているようにも見える。その意味では今のmRNAワクチンを軸とした対策もターニングポイントに差し掛かっているともいえそうだ。そうした中で私個人が気になっているのは、国内では昨年12月に製造承認申請が行われた米・ノババックス社の組み換えタンパクワクチンの導入だ。米を中心に約3万人を対象に行った臨床試験では、発症予防効果が90.4%、重症化予防効果が100%と良好な成績が示されている。また、最近では英国で約1万5,000人を対象に実施した第III相試験の長期データから、2回接種完了から6ヵ月後の無症候も含む感染予防効果が82.5%であることも示されている。ちなみにこの半年後の長期効果は評価期間が2020年11月~2021年5月で、現在主流のオミクロン株での効果は不明であるため、同社はすでにオミクロン株用ワクチンの開発にも着手している。そして何よりもこのワクチンの注目点は現在判明している有害事象が、mRNAワクチンよりは軽度と言えそうなことだ。主な副反応は頭痛、接種部位(筋肉)疼痛、倦怠感など。2回目接種の同ワクチンは、やはり2回目のほうが副反応頻度は高くなるが、その場合でも前述の主要な有害事象の発現率は40%前後。発熱に至っては数%である。また、このワクチンは冷蔵保存が可能である。超低温冷凍庫による保管が必要で、温度変化に弱いmRNAワクチンと比べれば扱いやすさは比較にならないだろう。また、ノババックス社は日本国内で武田薬品と提携し、同社の山口県光市の工場で生産されるため、安定供給に対する不安もかなり解消される。さらにmRNAワクチンを嫌う人たちが組み換えタンパクワクチンだから受け入れるという単純なことにはならないだろうが、それでもmRNAワクチンの接種を迷っている動揺層や自分自身は接種しながら子供に関しては様子見という大人には、ある程度考慮しうる選択肢になるだろうと個人的には想像している。少なくともすでに使われている技術を応用したワクチンという点でも安心感を提供できる側面もある。これまでの経緯からすると、ノババックス社ワクチンに関して厚生労働省はアメリカでの緊急使用許可の承認を待ってからの承認を狙っているのかもしれない。もっともすでに日本と医薬品承認のレギュレーションレベルにほとんど差がないEUや韓国で承認されていることを考えれば、日本はこの点ではそろそろ一歩前進しても良いのではないか。前回言及した塩野義製薬の3CLプロテアーゼ阻害薬に対して条件付き早期承認を与えることと比べれば、ノババックス社ワクチンを承認することは科学的合理性も含め、ほとんど問題ないだろうと、個人的には考えている。

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医療従事者への4回目接種、その効果は?/NEJM

 イスラエルの医療従事者を対象に、3回目接種から4ヵ月後にファイザー製およびモデルナ製の新型コロナワクチンを投与した結果、4回目接種後の中和抗体価は投与前の9~10倍に増加した。一方で3回目接種後のピーク反応との比較から、著者らはmRNAワクチンの免疫原性は3回の接種で最大となる可能性が示唆されたとしている。イスラエル・Sheba Medical CenterのGili Regev-Yochay氏らによる非盲検非無作為化臨床試験の結果が、NEJM誌オンライン版2022年3月16日号のCORRESPONDENCEに掲載された。医療従事者への4回目接種による効果、感染予防より発症予防のほうがより高い Sheba HCW COVID-19コホートに登録された適格な医療従事者1,250人のうち、154人が3回目接種から4ヵ月後にBNT162b2(ファイザー製)の4回目の投与を受け、その1週間後に120人がmRNA-1273(モデルナ製)を投与された。それぞれの参加者について、残りの参加者の中から年齢をマッチさせた2人の対照者が選定された。 研究期間はBNT162b2投与群が2021年12月27日~2022年1月30日、mRNA-1273投与群が2022年1月5日~2022年1月30日。同期間は感染率が極めて高く、毎週PCR検査による綿密なアクティブサーベイランスが行われていたため、ポアソン回帰モデルによりワクチンの有効性も評価された。期間中分離された株の100%がオミクロン株であった。 医療従事者への4回目接種の効果を研究した主な結果は以下のとおり。・BNT162b2投与群の平均年齢は59.0(30~85)歳、mRNA-1273投与群の平均年齢は55.1(29~87)歳だった。・医療従事者への4回目接種後、どちらのmRNAワクチンもSARS-CoV-2受容体結合ドメインに対するIgG抗体を誘導し、中和抗体価が上昇した。・4回目接種後の各測定値は9~10倍に増加し、3回目の投与後に達成された抗体価よりもわずかに高くなり、2つのワクチン間に有意差はなかった。・両ワクチンとも、オミクロン株およびその他のウイルス株(デルタ株、野生株)に対する中和能が約10倍に増加し、3回目の投与後の反応と同様であった。・4回目接種後、多くの接種者で軽度の全身および局所症状が報告されたものの、実質的な有害事象の報告はなかった。・試験期間中、対照群では25.0%がオミクロン株に感染していたのに対し、4回目接種のBNT162b2群では18.3%、mRNA-1273群では20.7%だった。・SARS-CoV-2感染に対する4回目接種によるワクチン有効性は、BNT162b2では30%(95%信頼区間[CI]:-9~55)、mRNA-1273では11%(95%CI:-43~44)だった。・感染した医療従事者の多くは、対照群、介入群ともに、ごく軽度の症状を訴えた。しかし多くは、比較的高いウイルス量(Ct値≤25)を有していた。・また、4回目接種によるワクチンの効果は発症予防効果のほうがより高いと推定された(BNT162b2群で43%、mRNA-1273群で31%)。 著者らは、本データは4回目のmRNAワクチン接種が、免疫原性、安全性、およびある程度の有効性(主に症候性疾患に対して)を有することを示すとした一方、4回目接種による初期反応と3回目接種によるピーク反応を比較したところ、体液性反応やオミクロン特異的中和抗体のレベルには大きな違いは見られなかった。 これらの結果から、mRNAワクチンの免疫原性は3回の接種で最大になり、4回目の接種で抗体レベルが回復する可能性が示唆されたとし、医療従事者の感染に対するワクチン有効性は低く、ウイルス量が比較的多いことから、感染者が感染能を有することがわかった。高齢者や脆弱な集団に対する評価は行われていないが、健康な若い医療従事者への4回目のワクチン接種は、わずかな利益しか得られない可能性があるとしている。

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J&J製ワクチン、第III相試験で重症化・死亡に対する有効性確認/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のAd26.COV2.Sワクチン(Johnson & Johnson製)単回接種は、ベータ変異株およびデルタ変異株のいずれにおいても重症COVID-19およびワクチン接種後のCOVID-19関連死に対して有効であることが認められた。南アフリカ共和国・Desmond Tutu HIV CentreのLinda-Gail Bekker氏らが、医療従事者を対象とした単群非盲検第IIIB相試験「Sisonke試験」の結果を報告した。Lancet誌2022年3月19日号掲載の報告。南アフリカ共和国の医療従事者約48万人で検証 研究グループは、南アフリカ共和国の18歳以上の医療従事者を全国のワクチン接種会場122施設のいずれかに招待し、Ad26.COV2.Sワクチン(ウイルス粒子量5×1010)単回接種を実施した。ワクチンの有効性を評価するため、2つの大規模な医療保険組織またはマネジドケア組織(Discovery Healthが管理する医療制度[A]と、Government Employees Medical SchemeおよびMedSchemeが管理する医療制度[B])の個人データを用い、ワクチン接種済みの医療従事者を一般集団のワクチン未接種者とマッチングさせた。 主要評価項目は、一般集団と比較した重症COVID-19(COVID-19関連の入院、救命救急または集中治療を必要とする入院、死亡と定義)に対するワクチンの有効性で、ワクチン接種またはマッチングから28日以降のデータカットオフ日まで評価した。 2021年2月17日~5月17日の期間に、医療従事者47万7,102例が登録されワクチン接種を受けた。女性が35万7,401例(74.9%)、男性が11万9,701例(25.1%)、年齢中央値42歳(IQR:33.0~51.0)であった。このうちワクチン接種者21万5,813例を、ワクチン未接種者21万5,813例とマッチングし分析した。COVID-19関連死の予防効果は83%、COVID-19関連入院の予防効果は67% データカットオフ日(2021年7月17日)時点で、マッチングされた全コホートにおけるワクチンの有効性は、COVID-19関連死の予防が83%(95%信頼区間[CI]:75~89)、救命救急または集中治療を必要とするCOVID-19関連入院の予防が75%(69~82)、COVID-19関連入院の予防が67%(62~71)であった。 3つの評価項目に対するワクチンの有効性は、A制度とB制度で一貫していた。また、ワクチンの有効性は、高齢の医療従事者やHIV感染症を含む併存疾患を有する医療従事者においても維持されていた。 本試験の期間中にベータ変異株(B.1.351)、その後、デルタ変異株(B.1.617.2)が流行したが、ワクチンの有効性は一貫しており、全コホートのCOVID-19関連入院に対する有効性はベータ変異株流行中で62%(95%CI:42~76)、デルタ変異株流行中で67%(62~71)、COVID-19関連死に対する有効性は、ベータ変異株流行中で86%(57~100)、デルタ変異株流行中で82%(74~89)であった。

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米国でのオミクロン、デルタ、アルファ株におけるCOVID-19の臨床的重症度とmRNAワクチンの有効性の違い(解説:寺田教彦氏)

 2019年末より新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症は世界的に拡大し、2022年3月現在でも、流行は続いている。この間に、新型コロナウイルスの特徴も判明し、ワクチン開発、治療方法の整備も進んだが、新型コロナウイルスも変異を繰り返し、流行の終息はまだ見えていない。 本研究は、2021年3月11日から2022年1月14日までに米国21病院が参加した前向き研究で、mRNA COVID-19ワクチンのアルファ変異株、デルタ変異株、オミクロン変異株に対するCOVID-19関連入院の予防効果、COVID-19関連入院患者における変異株ごとの重症化率、死亡率について検討され、BMJ誌2022年3月9日号で報告された。 本研究以前より知られている事実として、mRNAワクチンの2回接種はアルファ株やデルタ株による入院予防に非常に効果的だったこと、ワクチンの有効性を長期的に維持するために2021年8月以降mRNA COVID-19ワクチンの3回目接種が認可されていたことがある。ちなみに2021年8月は、世界的にはデルタ株が臨床的な問題となっていた期間であり、本研究でも同時期はデルタ株の流行時期として取り扱われている。 本研究における新規知見は3点挙げられている。1点目は、mRNAワクチン2回接種に伴うCOVID-19関連入院の予防効果は、アルファ株やデルタ株よりもオミクロン株のほうが低い(それぞれアルファ株:85%、デルタ株:85%、オミクロン株:65%)が、オミクロン株に対しても3回目のワクチン接種を行うことで、アルファ株やデルタ株に対する2回接種と同様の有効性(86%)を達成すること。2点目は、COVID-19関連入院患者の重症度はオミクロン株のほうがデルタ株よりも低いこと。3点目は、オミクロン株でも15%の患者に侵襲的人工呼吸器管理が必要となり、7%の患者が死亡したことである。それぞれについて本邦の新型コロナウイルス感染症診療と照らし合わせて考察する。 現在、日本でもオミクロン株の流行が続いており、3回目のワクチン接種が行われている。今回の研究結果は、3回目のワクチン接種により、2021年12月26日から2022年1月14日の間におけるオミクロン株感染による入院予防効果が高かったことが示されている。本邦でも、オミクロン株の流行が続いており、米国よりもワクチン接種が遅れて開始したことを考えると、本邦での3回目のワクチン未接種者に対してワクチン接種を支持する根拠となるだろう。さて、本論文では、オミクロン株でも3回ワクチンを接種することで、他の株と同様の予防効果が期待されるとしているが、単純に株の問題のみに結び付けてよいかは疑問が残る。米国で、3回目のワクチン接種(ブースター接種)が開始された時期は、米国ではまだデルタ株が流行しており、当時の時点でもデルタ株に対してワクチン効果が落ちはじめていることが指摘されていた。実際に本論文でも、Fig.2において、2回目ワクチン接種後150日以内の患者のほうが、150日以降の患者よりも入院予防効果は高かった。オミクロン株の流行時期は2回のみのワクチン接種者の場合には、ワクチン接種後すでに時間が経過していたために効果が下がっていた可能性も考えられる。そのため、単純に株の種類とワクチン接種の回数問題のみでワクチンの予防効果は結論付けられないかもしれない。ブースター接種に関しては、本邦でも4回目のワクチン接種の是非について検討されている。2022年3月末までに報告されているデータでは、オミクロン株に対して4回目のワクチン接種では抗体獲得効果が不十分である可能性を示唆するイスラエルからの報告がある。ただし、ワクチンの4回目接種の是非を判断する十分なデータではないため、今後のデータを待つ必要があるだろう。 2点目の、オミクロン株がデルタ株よりは重症度が低いことに関しては、本邦での診療経験やこれまでの過去の論文報告とも合致するだろう。 最後に、オミクロン株でも重症化率や死亡率がいまだに高いことが本研究で指摘された。筆者も本邦の医療機関で新型コロナウイルス感染症治療に従事しているが、オミクロン株による入院患者の死亡率が7%という本研究の死亡率はやや高い印象がある。本研究は、米国21施設の入院患者を対象としており、米国で新型コロナウイルス感染症に罹患した患者全体を対象としたわけではない。本邦の新型コロナウイルス感染症患者の入院閾値が米国よりも低いために、本研究の重症化率や死亡率を高く感じるのかもしれない。とはいえ、米国の医療機関でオミクロン株による重症化率や死亡率が比較的高いことは事実であり、新型コロナウイルス感染症はいまだ軽視するわけにはいかないことを再認識させられる。 本研究を通して、米国で流行した新型コロナウイルスの各株の特徴やそれぞれの株に対するワクチンの効果を確認することができた。本邦を含め世界的にはオミクロン株の流行が続いており、今後は4回目のワクチン接種の効果や副反応の知見を基にブースター接種の是非を判断していくとともに、新型コロナウイルス流行の抑制に役立つ薬剤等を含めた技術開発を期待したい。

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第102回 反ワクチン派の陰謀?接種協力医療機関への訴訟示唆する不可解現象

国内のコロナワクチン3回目接種率は、3月中旬で3割を超え、主要7カ国(G7)の最下位から何とか脱した。ただ、接種率が一定を超えると伸び悩む「7割の壁」が課題となり、依然ワクチンへの疑念や拒絶感を抱く人たちは少なくないようだ。ワクチン反対やノーマスクを訴えるデモを時折見かけるが、最近では接種に協力する医療機関に対し訴訟をちらつかせる悪質なビラが投函されている。筆者が住む自治体でも、ワクチン接種を行っている複数の医療機関に対し、訴訟を示唆するビラが投げ込まれていたようだ。中には、接種を行っていないクリニックにまで投函されており、当該の院長は困惑している。院長がワクチン接種をやめる決断をした経緯「反ワクチン運動」と言っても、欧米と日本では動機が異なる。欧米ではワクチン接種義務への反発から起きているが、日本の場合は陰謀論的な言説に惑わされている人が多いようだ。ただ、コロナワクチンを巡るさまざまな影響が明らかになりつつある中、一部の医療従事者でもワクチンへの疑念が生じているようだ。たとえば前述の院長の場合、訪問診療先の老人ホームにおいて、昨年、入居者にコロナワクチンを接種したところ、その翌日から1ヵ月以内に複数人が死亡したという。施設長は死因を「老衰」と遺族に説明したが、院長はワクチン接種との因果関係を疑っている。このようなこともあり、院長は自院でのワクチン接種を実施していない。ちなみに、ワクチン接種後の死亡として報告された事例は、今年1月下旬時点で1,400件を超えるが、厚労省は「ワクチン接種との因果関係があると結論付けられた事例はない」としている。別の医療従事者に「コロナワクチン接種後に体内で生成されるスパイク蛋白が卵巣に溜まり、長期的に不妊症を引き起こす可能性が欧米で明らかになってきている」と懸念する人もいたが、すでにさまざまな研究で、「ワクチンによる不妊」といった情報は科学的根拠がないことが立証されている。しかしながら、大量の医療情報が絶え間なく流布する中、医療従事者であっても、情報の正確さを判断するのがより難しい状況になっているといえるだろう。打たない人の理由も聞いてみた。ある会社経営者の場合、知人2人(50代と70代)が昨年、ワクチン接種直後に相次いでくも膜下出血で倒れたからだという。幸い2人とも家族に早期発見され、処置を受けたため、重い後遺症は残らなかった。会社経営者は、ワクチンの副反応によるものではないかと考えているようだ。人は時として、科学的根拠のある情報を理解しながらも、個人的な経験を無意識に優先して判断することが往々にしてあるものだ。さらに昨今では、SNSの普及によって、自分と同じ傾向の意見を見聞きし続けることで、自らの意見が増幅・強化される「エコーチェンバー現象」という言葉が話題になっているが、こうした状況も偏った思考や行動への傾倒を助長しているのかもしれない。頻繁なワクチン接種が人体の免疫に悪影響を及ぼす懸念政府は今夏にも4回目接種を行う検討に入ったが、欧州連合(EU)の欧州医薬品庁(EMA)は1月、コロナワクチンの追加接種を短い間隔で繰り返すことに懸念を表明、頻繁なワクチン接種が人体の免疫に悪影響を及ぼす可能性も指摘した。コロナ感染の後遺症は少しずつわかってきたが、コロナワクチン接種の重篤な副反応や後遺症はあまりわかっていない。政府は、国民の接種に対する疑問や不安に対して、新たな研究成果や海外の事例などに基づいて回答していくべきではないだろうか。ワクチンだけなく国や医療従事者に対する疑問も前出の会社経営者は「イスラエルや韓国などワクチン接種率の高い国々で感染爆発が起き、ワクチン接種効果が疑問視される中、ワクチンパスポートの廃止や規制解除が行われている。このような状況下、接種ありきの国のやり方に対し疑問を持つ人は少なくないのでは」と述べる。それが医療機関訴訟という行動となって表れているというのである。個々人の信条を裁判で白黒付けようという行動は、不可解で突飛としか言いようがないが、ワクチンを接種する側・される側に芽生えている不安は、納得のいく丁寧な説明でしか払拭できないのではないだろうか。

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ファイザー製ワクチン3回目、第III相試験で有効率95%/NEJM

 BNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の2回目接種から中央値で10.8ヵ月後に行われた3回目接種は、プラセボ接種(BNT162b2ワクチン2回接種)と比べ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する有効率が95.3%であった。ブラジル・オズワルドクルス財団のEdson D. Moreira氏らが、米国、南アフリカ共和国、ブラジルの123施設で実施した無作為化プラセボ対照第III相試験「C4591031試験」の結果を報告した。積極的なBNT162b2ワクチンの接種は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染によるCOVID-19パンデミック下での重要な予防手段となりうる。ワクチンの2回目接種から6ヵ月後には液性免疫が低下するという報告を踏まえ、16歳以上への3回目(ブースター)接種の安全性と有効性に関するデータが必要とされていた。Lancet誌オンライン版2022年3月23日号掲載の報告。2回接種済みの約1万人を、3回目接種群とプラセボ群に無作為化 研究グループは、2021年7月1日~8月10日に、BNT162b2ワクチン30μgの2回目接種を6ヵ月以上前に完了している参加者1万136例を、BNT162b2ワクチン3回目接種群(5,088例)またはプラセボ接種群(5,048例)に無作為に割り付けた。 安全性の主要評価項目は、接種1ヵ月後までの有害事象および接種6ヵ月後までの重篤な有害事象。有効性の主要評価項目は、接種後7日目までのCOVID-19発症とした。新たな安全性シグナルなし、心筋炎や心膜炎の症例は報告されず ワクチン3回目接種を受けた参加者は5,081例、プラセボ接種を受けた参加者は5,044例であった。ワクチン2回目接種から3回目接種までの期間中央値はワクチン群10.8ヵ月、プラセボ群10.7ヵ月であり、追跡期間中央値は2.5ヵ月であった。 ワクチン3回目接種による局所および全身の反応原性イベントは概して低グレードであり、新たな安全性シグナルは確認されず、心筋炎や心膜炎の症例は報告されなかった。接種後1ヵ月以内の有害事象の発現率は、ワクチン群(5,055例)で25.0%、プラセボ群(5,020例)で6.5%、データカットオフ日2021年10月5日までの重篤な有害事象の発現率はそれぞれ0.3%、0.5%であった。 SARS-CoV-2感染歴がなく評価が可能であった参加者において、3回目接種後7日目までのCOVID-19発症はワクチン群で6例、プラセボ群で123例に認められ、相対的なワクチン有効率は95.3%(95%信頼区間[CI]:89.5~98.3)であった。

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