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ASCO2019レポート 消化器がん(肝胆膵)

レポーター紹介ASCO会場のメインの通りに掲げられたテーマ2019年度のASCOが、2019年5月31日~6月4日の5日間、今年もシカゴのマコーミックプレイスにて開催された。毎年同じ開催場所である。今年のテーマは「Caring for Every Patient, Learning from Every Patient」で、患者のためのケア、患者から学ぶことを重要視した学会であった。そして、今年の肝胆膵領域の発表はOral presentationも多く、Plenary sessionで採択された演題もあり、非常に興味深い発表が多かった年で、いわゆる豊作の年となった。膵がんPOLO試験今回のASCOで、肝胆膵領域の最も注目すべき演題は、膵がんに対するPARP阻害薬であるオラパリブのPOLO試験であろう。生殖細胞系(Germline)BRCA1またはBRCA2の変異を有する転移性膵がん患者に対して、1次治療としてプラチナ製剤を含む化学療法を16週以上行い、抗腫瘍効果でCR、PRまたはSDが得られ、増悪を認めていない患者を、オラパリブ300mgを1日2回内服する群と、プラセボを内服する群に3:2にランダムに割り付けて、がんの増悪または忍容できない有害事象を認めるまで治療を継続した。主要評価項目は、RECIST v1.1での中央判定による無増悪生存期間であった。オラパリブ群に92例、プラセボ群に62例がランダム割り付けされた。主要評価項目である無増悪生存期間(中央値)はオラパリブ群7.4ヵ月、プラセボ群3.8ヵ月で、ハザード比は0.53(95%信頼区間[CI]:0.35~0.82)であり、有意に良好な結果(p=0.0038)が示された。生存期間はまだ十分に経過観察しえた結果ではないが、中央値でオラパリブ群18.9ヵ月、プラセボ群18.1ヵ月であり、ハザード比も0.91(95%CI:0.56~1.46)と有意な差は認めなかった(p=0.68)。有意差を認めなかった理由として、プラセボ群の後治療でPARP阻害薬を投与された患者が14.5%存在するなどの後治療の影響や十分な経過観察ができていないことが指摘されていた。有害事象は、疲労、悪心、下痢、腹痛、貧血、食欲低下などで、Grade 3以上の有害事象は貧血と疲労であり、忍容性は良好と判断された。また、プラチナ製剤に特有の末梢神経障害はあまり認めないことが、プラチナ製剤投与後の維持療法として使用するうえで好ましい点のように思われた。今後、BRCA1または2の遺伝子変異を有する膵がん患者には、まずプラチナ製剤を含むレジメン、たとえば、FOLFIRINOXやゲムシタビン+シスプラチンなどによる治療を開始し、4ヵ月以降でSD以上の抗腫瘍効果が得られていたら、維持療法としてオラパリブを投与することが標準治療になるものと思われる。本試験の結果は、日本では明日からの診療につながる話ではないが、その体制整備をしておく必要がある。まず、germline BRCA1/2を調べることから始まる。初回治療開始前にgermline BRCA1/2の変異の有無を調べてから結果が戻ってくるまでの時間を考慮すると、診断の早い段階で同意を取ったうえで、採血の検査をオーダーする必要がある。また、生殖細胞系変異を見つけることは、すなわち遺伝カウンセリングの体制整備が重要になる。日本は本試験に参加しておらず、われわれ肝胆膵領域の臨床腫瘍医にPARP阻害薬の経験が乏しいことが問題点であり、十分にPARP阻害薬のマネジメントに精通しておく必要がある。また、germline BRCA1/2の変異は膵がん患者の4~7%と言われており、プラチナ製剤とオラパリブが有効な対象はまだまだ限られた対象であることも理解しておくことが必要である。Plenary sessionの会場の光景:全部でモニターが12台、演者がかなり遠くに見える。このASCOのPlenary sessionは何千人入るかわからないほどの巨大な会場で行われた。今回も、巨大なモニターが会場内に12台設置され、椅子も所狭しと並んで、聴衆が間を開けることなくぎっしり座っていた。そこに、Prof Kindlerのゆっくりと丁寧な言葉で発表が進んだ。そんな巨大な会場で発表が行われている最中に、メールの配信で、New England Journal of MedicineからPOLO試験の論文掲載の案内が届き、まさに学会と論文の同時発表であり、ここまでタイムリーな対応に驚きを隠せない状況であった。発表が終わってからは拍手喝采が鳴りやまず、まさに圧巻で、一見の価値のある光景であった。APACT試験膵がんにおけるもうひとつの注目演題は、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法の補助化学療法であるAPACT試験である。膵がん切除後の補助療法としては、日本ではS-1による補助療法が主流であるが、海外ではゲムシタビンが汎用され、近年、ゲムシタビン+カペシタビンやmodified FOLFIRINOXなども使用されている。進行膵がんにおいて、ゲムシタビン+ナブパクリタキセルの高い有効性が示されていることから、膵がん切除後の補助療法としても期待され、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法とゲムシタビン単独療法を比較した第III相試験が計画された。R0または1の切除後の膵がん患者をゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法とゲムシタビン単独療法に1:1にランダムに割り付けて行われた。主要評価項目は無病生存期間、副次評価項目は全生存期間、安全性であった。全世界から866例が登録され、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法に432例、ゲムシタビン単独療法に434例がランダムに割り付けされた。主要評価項目である中央判定による無病生存期間(中央値)は、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群が19.4ヵ月、ゲムシタビン単独群が18.8ヵ月であり、ハザード比0.88(95%CI:0.729~1.063)、p=0.1824と有意差が示されなかった。しかし、担当医判断の無病生存期間(中央値)で、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群が19.4ヵ月、ゲムシタビン単独群が16.6ヵ月であり、ハザード比0.82(95%CI:0.694~0.965)、p=0.0168と有意差が示された。また、副次評価項目である全生存期間(中央値)もゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法群が40.5ヵ月、ゲムシタビン単独群が36.2ヵ月であり、ハザード比0.82(95%CI:0.680~0.996)、p=0.045と有意差が示された。ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法の安全性はこれまでの報告と違いはなかった。本試験はプラセボコントロールの試験ではないため、中央判定の無病生存期間が主要評価項目に用いられたが、膵がん切除後の再発判定は非常に難しく、担当医は全身状態や腫瘍マーカーなどから総合的に判断できるため、中央判定よりも担当医のほうが早期に再発を指摘しえたのかもしれない。プラセボコントロールで、担当医判断の無病生存期間が主要評価項目であったら、Positiveな結果であっただけに非常に惜しい試験である。肝細胞がん肝細胞がんにおいて注目された演題は、肝切除とラジオ波焼灼術(RFA)を比較したSURF試験、ソラフェニブに不応/不耐の肝細胞がんに対する2次治療としてペムブロリズマブとプラセボを比較したKEYNOTE-240試験である。ともに有意な結果は示されなかったが、日常診療に大きなインパクトを与える試験であった。また、進行がんに対する有望な薬物療法として、ニボルマブ+イピリムマブの併用療法の結果が報告された。SURF試験3cm、3個以下の小肝細胞がんに対して、肝切除とRFAのどちらが良いかは長年のClinical questionであった。これまでも4試験ほど、ランダム化比較試験の結果が報告されているが、切除が良好という結果や両者変わりないという結果など、一定の見解は得られていない。今回、日本から301例という症例数も多く、質も良好な試験の結果が報告された。初回の肝細胞がんで腫瘍径3cm以下、腫瘍数3個以下で、Child-Pugh 7点以下の20~79歳までの患者600例を目標に肝切除とRFAにランダムに割り付けた比較試験が行われた。主要評価項目は無再発生存期間、全生存期間であり、RFAに比べて肝切除の優越性を検証する試験デザインであった。2009年4月より登録を開始したが、2016年2月の段階で300例しか登録ができておらず、データモニタリング委員会から中止勧告が出され、登録は中止となった。最終的には、切除群150例、RFA群151例が適格で、解析対象となった。両群の患者背景に有意差は認めなかった。無再発生存期間(中央値)は、肝切除群2.98年、RFA群2.76年、ハザード比0.96(95%CI:0.72~1.28)で、p=0.793であり、肝切除の優位性は示されなかった。また、両群ともに死亡例は認めなかったが、入院期間や治療時間はRFA群が有意に良好であった。3cm以下の小肝細胞がんに対して、肝切除とRFAの無再発生存期間はほぼ同等であったと結論された。この発表のDiscussantは、これまでにランダム化比較試験が5試験行われたが、3cm以下、単発の腫瘍に関しては、ほぼRFAの非劣性が示されたと考えてよいだろうと。3cm以上や多発する場合には肝切除が選択肢になるであろうと。そして、患者登録も困難になることから、今後、同様のランダム化比較試験を行うべきではないだろうとまとめていた。長年、論争になっていた肝切除とRFAの比較にひとつの区切りがつけられたように思われた。KEYNOTE-240ソラフェニブ不応/不耐の肝細胞がん患者に対するペムブロリズマブとプラセボを比較した第III相試験の結果が報告された。肝細胞がんに対して初めての免疫チェックポイント阻害薬の第III相試験の結果であり、非常に注目された。対象は、ソラフェニブに不応/不耐の肝細胞がん患者で、Child-Pugh Aで測定可能病変を諭旨、門脈本幹腫瘍栓のない患者で、ペムブロリズマブ200mg/回を3週ごとの投与とプラセボに2:1に割り付けて投与する第III相試験である。主要評価項目は全生存期間と無増悪生存期間の2つであり、全生存期間はp値が0.0174未満で有意に、無増悪生存期間はp値が0.0020で有意になる設定であり、通常のp値が0.05未満よりは厳しい設定であった。ペムブロリズマブ群に278例、プラセボ群に135例が登録された。主要評価項目の全生存期間(中央値)は、ペムブロリズマブ群で10.6ヵ月、プラセボ群で10.6ヵ月、ハザード比は0.781(95%CI:0.611~0.998)で、p値は0.0238と当初設定した0.0174を下回らず、有意な結果は得られなかった。また、無増悪生存期間(中央値)は、ペムブロリズマブ群で3.0ヵ月、プラセボ群で2.8ヵ月、ハザード比は0.718(95%CI:0.570~0.904)で、p値は0.0022と当初設定した0.0020を下回らず、こちらも有意な結果は得られなかった。奏効割合はペムブロリズマブ群で18.3%、プラセボ群で4.4%であり、第II相試験(KEYNOTE-224)と同様に有意差が認められ(p=0.0007)、奏効期間(中央値)も13.8ヵ月とともに良好であった。有害事象はこれまでの報告と同様であった。本療法の後治療として、プラセボ群で47.4%と非常に高率で、抗PD-1/PD-L1抗体による治療が10.4%も含まれていた。本試験は、統計学的に有意差がついていそうな試験結果であったが、主要評価項目は達成しておらずNegativeな結果となった。この発表のDiscussantは、試験としてはNegativeであったが、マルチキナーゼ阻害薬に忍容性がないような患者に、2次治療の日常診療で抗PD-1抗体を継続することは問題ないであろうとコメントしており、有効性は評価していた。今後、中国を中心に行っているペムブロリズマブとプラセボの比較試験(KEYNOTE-394)の結果も参考にして、今後の本薬剤の承認までの方向性を検討することが必要であろうと結論づけた。また、今後の開発の方向性として、VEGF阻害薬との併用療法であるベバシズマブ+アテゾリズマブ、レンバチニブ+ペムブロリズマブの併用療法も期待されており、定位放射線やRadioembolization、肝動脈化学塞栓療法との併用療法の可能性なども示唆していた。会場入り口の階段にはWelcomeの文字がこの結果を受けて、1次治療としてのニボルマブとソラフェニブを比較した第III相試験の結果が期待されたが、2019年6月24日に本第III相試験も主要評価項目を達成しなかったことがプレスリリースされ、残念ながら免疫チェックポイント阻害薬単剤の結果は肝細胞がんにおいては厳しいものとなった。CheckMate-040ソラフェニブに不応/不耐の肝細胞がん患者を対象として、ニボルマブとイピリムマブの推奨投与量を決定する第I/II相試験が発表された。A群はニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgを3週ごとに4回投与後、ニボルマブ240mg/bodyの固定用量にて2週ごとの投与を継続し、B群はニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgを3週ごとに4回投与後、ニボルマブ240mg/bodyの固定用量にて2週ごとの投与を継続、C群はニボルマブ3mg/kgにて2週ごと、イピリムマブ1mg/kgにて6週ごとに投与を継続した。どの群もがんの増悪または忍容できない有害事象が出現するまで、投与を継続した。奏効割合はA群32%、B群31%、C群31%であり差は認めなかったが、生存期間(中央値)は、A群22.8ヵ月、B群12.5ヵ月、C群12.7ヵ月と、A群で良好であった。主な有害事象は、掻痒、皮疹、下痢、AST上昇などであり、免疫関連有害事象は、皮疹、肝障害、副腎不全、下痢、肺炎などであった。A群の有害事象はやや高率に認めていたが、忍容性は十分と判断され、A群(ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg)が推奨投与量と考えられた。ソラフェニブに不応/不耐の患者に対する良好な治療レジメンの登場により、今後、本レジメンの開発の動向が気になるところである。胆道がん胆道がんにおいて最も注目された演題は、ゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法の2次治療として、mFOLFOXと症状コントロールのみを比較したABC-06試験である。この結果は、長らく胆道がんにおける2次治療は確立していなかったのだが、mFOLFOXが2次治療の標準治療として確立することになった。ABC-06対象は、GC療法後に増悪を認めた進行胆道がん患者で、増悪を認めてから6週以内でPSが0または1で、臓器機能が保たれている患者を、A群:積極的な症状コントロールを行う群とB群:積極的な症状コントロールに加えて、mFOLFOXを行う群にランダム割り付けされた。主要評価項目は全生存期間であり、層別化因子は、1次治療のGC療法のプラチナ感受性があったかどうか、アルブミンが35g/L以上か未満か、局所進行か転移性か、であった。主要評価項目である全生存期間において、B群:mFOLFOX群は有意に良好な生存期間を示した(生存期間中央値、6ヵ月と12ヵ月生存割合:A群 5.3ヵ月、35.5%、11.4%、B群 6.2ヵ月、50.6%、25.9%、ハザード比0.69、95%CI:0.50~0.97、p=0.031)。1次治療のGC療法のプラチナ感受性別に検討したサブグループ解析では、プラチナ製剤に感受性がある群のみならず、プラチナ抵抗性のグループでも有意な差が認められ、プラチナ感受性にかかわらず、mFOLFOXは有用であることも示された。mFOLFOXの奏効割合は5%、病勢制御割合は33%、無増悪生存期間(中央値)は4.0ヵ月であった。また、主なGrade 3以上の有害事象は疲労、好中球減少、感染症などであり、忍容性は良好と判断された。GC療法後の2次治療として初めて延命効果を示した治療法であり、今後、標準治療として位置付けられることになるであろうと結論づけられた。Discussantも治療効果が高いわけではないが、新しい標準治療になるであろうと結論づけている。ただし、胆道がんではさまざまな治験や臨床試験が進行中である。1次治療として、化学療法+/-免疫チェックポイント阻害薬の併用療法や、GCにナブパクリタキセルの併用療法、mFOLFIRINOX療法などの3剤併用療法の開発が進行中であり、また、IDH1やFGFR、homologous Recombination Deficiencyなど遺伝子異常に基づいた分子標的治療薬の開発などが進行中であり、これらの動向にも注目する必要がある。まとめASCO2019では、膵がんに対してのゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法が補助療法としてはNegativeな結果であったが、PARP阻害薬が登場した。肝細胞がんでは、ペムブロリズマブの残念な結果が報告されたが、ニボルマブ+イピリムマブにおいて有望な結果が報告され、期待されている。また、切除とRFAは同等の治療成績であることが明らかになり、よりRFAが選択されるようになるかもしれない。そして、胆道がんではmFOLFOXが2次治療における標準治療として位置付けられており、日本もmFOLFOXを承認してもらうような準備が必要である。そのほかにも有望な治療法の開発が進行中であり、肝胆膵領域の化学療法の開発も活気づいており、海外に遅れをとらないように開発を進めていく必要がある。

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NSCLCのカルボプラチン+パクリタキセル、weeklyとbiweeklyを比べると?

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)の一般的なレジメンであるカルボプラチンとパクリタキセルの併用療法の投与間隔について、本邦で検討が行われた。京都府立医科大学の高山 浩一氏らは、アジア人患者における適切な化学療法の投与スケジュールを明らかにする目的で、カルボプラチンとパクリタキセルの隔週投与と毎週投与の有効性を評価する第II相臨床試験を実施。有意差はないものの毎週投与において、奏効率および無増悪生存期間が良好であることが示されたという。The Oncologist誌オンライン版2019年7月22日号掲載の報告。カルボプラチンとパクリタキセルの隔週投与群と毎週投与群に140例を無作為に割り付け 研究グループは、化学療法未治療でECOG PS 0~1のStageIIIB/IV NSCLC患者140例を、隔週投与群(パクリタキセル135mg/m2+カルボプラチンAUC 3、day1およびday15、4週ごと)と毎週投与群(パクリタキセル90mg/m2、day1、8、15+カルボプラチンAUC 6、day1、4週ごと)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は奏効率(ORR)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)とした。 カルボプラチンとパクリタキセルの併用療法の投与間隔を検討した主な結果は以下のとおり。・140例の患者が登録され、カルボプラチンとパクリタキセルの隔週投与群と毎週投与群に無作為に割り付けられた。・ORRは、隔週投与群28.1%、毎週投与群38.0%であった。・主な有害事象は好中球減少で、発現率は隔週投与群62.0%、毎週投与群57.8%であった。・PFS中央値は隔週投与群4.3ヵ月、毎週投与群5.1ヵ月であった。・OSはそれぞれ14.2ヵ月および13.3ヵ月であった。

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転移性前立腺がん患者に対してのエンザルタミドは、ファーストラインとしても有効(解説:宮嶋哲氏)-1088

 本研究は、アンドロゲン依存性転移性前立腺がん患者を対象にアンドロゲン除去療法(ADT)とともに、エンザルタミド追加群と標準治療群(通常の抗アンドロゲン薬追加)の2群において3年全生存率(OS)、無増悪生存期間(PFS)ならびに有害事象を評価項目としたオープンラベルランダム化比較第3相試験(ENZAMET trial)である。 対象となった1,125症例の平均観察期間は34ヵ月、患者年齢中央値は両群ともに69歳であった。症例の約60%がGleason score 8~10であり、平均臓器転移数は3ヵ所で、15~17%の患者でドセタキセル早期導入がなされていた。3年OSはエンザルタミド追加群80%に対し、標準治療群72%でエンザルタミドは有意に死亡リスクを低下させ、3年PFSでもエンザルタミド追加群67%に対し標準治療群37%で、エンザルタミドは有意に再発を低下させた。有害事象により治療困難となった症例はエンザルタミド追加群で多く(33症例)、とくに倦怠感とてんかん発作が著明であった。 去勢抵抗性前立腺がん患者においてアンドロゲン受容体阻害薬であるエンザルタミドはOSを延長することが知られ、エンザルタミドはセカンドラインという位置付けだが、内分泌未治療転移性前立腺がん患者においてもADTにエンザルタミドを併用することでOSとPFSに寄与することが示された。以上より、内分泌未治療転移性前立腺がんに対するファーストラインとしてエンザルタミドの有効性が示唆された。

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血小板機能を標的としたランダム化比較試験に意味があるか?(解説:後藤信哉氏)-1083

 新薬を開発するためには、過去の標準治療の欠点を挙げる必要がある。正直、クロピドグレルは革新的抗血小板薬であった。効果の不十分性をステント血栓症により実感させる冠動脈ステント例でも十分に有効とされた。頭蓋内出血などの出血合併症も決して多くはない。プラスグレル、チカグレロルと同種の薬剤が開発されたが、安価になったクロピドグレルを転換するインパクトはなかなか出せない。TRITON-TIMI 38試験ではプラスグレルにより優れた抗血栓薬効果を得るためには、出血死も含む重篤な出血の増加が必要なことが示された。試験のプロトコールを工夫したPLATO試験では出血増加を前面に出さずにチカグレロルの効果を示したが、冠動脈疾患以外への適応拡大は困難であった。 脳は心臓よりも出血に敏感である。抗血小板薬効果の増強とともに起こる出血リスク増加は避け難い。十分に有効、安全な標準治療(クロピドグレル)が役に立たない小集団を見つけるために、本研究では血小板機能をエンドポイントとした。筆者は血小板機能を指標とした臨床開発には反対である。血小板には多くの受容体と活性化経路がある。P2Y12 ADP受容体は、多くの受容体の1つにすぎない。VerifyNow P2Y12はP2Y12阻害と相関性があるが、他の受容体刺激によって結果は影響を受ける。 クロピドグレルの欠点としてCYP2C19による代謝と個人ごとの薬効のバラツキを考え、薬効不十分例を抽出する方法としてVerifyNow P2Y12が開発された。アプローチは論理的であるが、生体の複雑性が十分に反映されていない。クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロルはP2Y12 ADP受容体阻害薬である。当初からP2Y12 ADP受容体阻害率をきちんと計測する方法を確立すべきであった。

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毎週パクリタキセル療法の末梢神経障害、冷却療法による予防効果/日本乳癌学会

 乳がんに対する毎週パクリタキセル(PTX)療法に伴う末梢神経障害に対する予防方法として、冷却方法が有用である可能性が報告されている。今回、呉医療センター中国がんセンターの尾崎 慎治氏(4月より県立広島病院)らが無作為化比較第II相試験にて、frozen gloves/socksによる冷却療法を検証したところ、忍容性は良好であり、毎週パクリタキセル療法に伴う末梢神経障害の予防に有用と考えられた。第27回日本乳癌学会学術総会にて発表された。毎週パクリタキセル療法に伴う末梢神経障害は冷却療法群で有意に低かった 本試験では、毎週パクリタキセル療法を4サイクル施行予定の乳がん44症例を、毎週パクリタキセル療法開始時からfrozen gloves/socksによる予防的冷却療法を併用する試験群と、有意な末梢神経障害が発生した時点から冷却療法を併用開始するコントロール群の2群にランダム化した。併用群ではパクリタキセルの投与開始前15分から治療中を含め、治療終了後15分までの90分間、frozen gloves/socksを装着し、治療中に2個目のfrozen gloves/socksに切り替えた。末梢神経障害の評価はパクリタキセル各コースの投与前と4コース終了後に、患者アンケートとしてFACT-NTx subscale日本語版とPNQ(patient neurotoxicity questionnaire)を、また主治医評価としてCTCAE(commonterminology criteria for adverse event)v4.0を用いて評価した。FACT-NTxでは6ポイント以上または10%以上を、PNQではGradeD以上を、CTCAEではGrade2以上を有意な末梢神経障害として評価した。 毎週パクリタキセル療法に伴う末梢神経障害に対する冷却療法の予防効果を検証した主な結果は以下のとおり。・44症例を冷却療法群とコントロール群に22症例ずつ無作為化された。・冷却療法の忍容性については、22症例中15症例(68%)が良好であり、冷却療法に関連した副作用(凍傷、末梢循環不全、悪寒)は認めなかった。・FACT-NTxにおける有意な末梢神経障害の発生頻度は冷却療法群で有意に低かった(冷却療法群 vs.コントロール群: 41% vs.73%、p=0.03)。・PNQにおけるGradeD以上の末梢性感覚神経障害の発生頻度は冷却療法群で有意に低かった(冷却療法群 vs.コントロール群:14% vs.42%、p=0.02)。・CTCAEにおけるGrade2以上の末梢性感覚神経障害の発生頻度は冷却療法群で有意に低かった(冷却療法群 vs.コントロール群:9% vs.54%、p=0.001)。・冷却療法の忍容性不良例や、コース数の増加とともに末梢神経障害が悪化する症例が存在した。

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TN乳がん1次治療でのアテゾリズマブ+nab-PTX、日本人サブ解析(IMpassion130)/日本臨床腫瘍学会

 局所進行/転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療におけるアテゾリズマブとnab-パクリタキセル(nab-PTX)併用療法が、日本人においても有用であることが示された。国際共同無作為化二重盲検第III相試験(IMpassion130)の日本人65例のサブグループ解析結果について、埼玉県立がんセンターの井上 賢一氏が、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で発表した。 本試験では、局所進行または転移を有するTNBC患者を、アテゾリズマブ併用群(28日を1サイクルとして、アテゾリズマブ840mgを1日目と15日目に投与+nab-PTX 100mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与)と非併用群(プラセボ+nab-PTX)に1:1に無作為化し、有効性と安全性を評価した。主要評価項目は、ITT解析集団およびPD-L1陽性患者における無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性などであった。 日本人サブグループにおける主な結果は以下のとおり。・全体集団902例(各群451例)のうち日本人症例は65例で、アテゾリズマブ併用群34例(うちPD-L1陽性12例)、非併用群31例(うちPD-L1陽性13例)であった。・PFS中央値は、ITT解析集団では併用群7.4ヵ月 vs.非併用群4.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.25~0.90)、PD-L1陽性患者(25例)では10.8ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.04、95%CI:<0.01~0.35)であった。・OS中央値は、第2回中間解析(データカットオフ:2019年1月2日)において、ITT解析集団では21.1ヵ月 vs.21.8ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.32~1.37)、PD-L1陽性患者では21.1ヵ月 vs.17.7ヵ月(HR:0.31、95%CI:0.08~1.19)であった。・ORRは、ITT解析集団では67.6% vs.51.6%、PD-L1陽性患者では75.0% vs.53.8%であった。・DORは、ITT解析集団では5.6ヵ月 vs.3.7ヵ月、PD-L1陽性患者では9.1ヵ月 vs.3.7ヵ月であった。・日本人集団における全Gradeの有害事象発現率は全体集団とほぼ同様であった。一方、日本人集団では全体集団に比べて、脱毛、末梢性感覚ニューロパチー、好中球数減少の発現率が高かった。免疫関連有害事象については日本人集団では検査値異常がほとんどであるが、肝炎の発現率が高かった(併用群20.6%、非併用群26.7%)。・日本人集団において治療中止に至った有害事象発現率は、併用群5.9%、非併用群0%で、投与量減少または中断に至った有害事象は併用群64.7%、非併用群56.7%であった。重篤な有害事象発現率は両群でほぼ同様であった。 この結果から井上氏は、「日本人集団におけるアテゾリズマブとnab-PTX併用の有効性・安全性が全体集団と一致しており、日本人TNBC患者における1次治療として臨床的に有用である」と結論した。

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高齢者NSCLCの1次治療、カルボプラチン+ペメトレキセドがドセタキセルに非劣性/日本臨床腫瘍学会

 高齢者の進行期非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対しては、ドセタキセル単剤(DOC)が標準治療である。一方、カルボプラチン+ペメトレキセドからペメトレキセドの維持療法(CBDCA/PEM)は、その実用性から非扁平上皮NSCLCの1次治療として多く使われており、また高齢者の進行期非扁平上皮NSCLCの第II相試験においても有効性を示している。そのような中、徳島大学の軒原 浩氏らは、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会でCBDCA/PEMのDOC単剤治療に対する非劣性を検証するJCOG1210/WJOG7813L試験の結果を発表した。対象:化学療法未治療の75歳以上のStageIII/IVまたは術後再発非扁平上皮NSCLC試験薬:カルボプラチン(AUC5)+ペメトレキセド(500mg/m2)3週ごと4サイクル→ペメトレキセド(500mg/m2)3週ごと病勢悪化まで対照薬:ドセタキセル60mg/m2 3週ごと病勢悪化まで評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効割合(ORR)、症状スコア、有害事象などCBDCA/PEMの非劣性マージンは、ハザード比(HR)1.154に設定された。 主な結果は以下のとおり。・433例がドセタキセル群217例とCBDCA/PEM群216例に無作為に割り付けられた。治療対象は両群共に214例であった。・患者の年齢中央値は両群とも78歳、男性はCBDCA/PEM群57%とDOC群58%、StageIVが75%と76%、腺がんが98%と96%であった。・OS中央値はCBDCA/PEM群18.7ヵ月、DOC群15.5ヵ月(HR:0.850、95%CI:0.684~1.056、片側p<0.0029)と、予め設定された非劣性マージン(1.154)を達成し、CBDCA/PEMのドセタキセルに対する非劣性が証明された。・PFS中央値はCBDCA/PEM群6.4ヵ月、DOC群4.3ヵ月であった(HR:0.739:95%CI:0.609~0.896)。・ORRはCBDCA/PEM群36.8%、DOC群28.2%であった(p=0.0740)。・Grade3~4の好中球減少症の発現(46.3%対86.0%)および白血球減少の発現(28.0%対68.7%)はCBDCA/PEM群で低く、Grade3~4の血小板減少の発現(25.7%対1.4%)および貧血の発現(29.4%対1.9%)はCBDCA/PEM群で高かった。また、Grade3~4の発熱性好中球減少の発現(4.2%対17.8%)はCBDCA/PEM群で低かった。

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欧米と日本における切除可能進行胃がんに対する周術期化学療法の大きな乖離(解説:上村直実氏)-1079

 日本と西欧における胃がんの化学療法に大きな乖離が存在することを示す研究論文である。日本の胃がん治療ガイドラインでは手術可能な進行胃がんに対する周術期化学療法については欧米とまったく異なるレジメンが推奨されている。すなわち、日本における切除可能な進行胃がんに対する周術期化学療法は主に術後補助化学治療として施行されており、その主役はS-1である。手術可能な進行がんを対象として日本で行われたS-1+ドセタキセル併用療法と標準治療とされていたS-1単独を比較したRCT(JACCRO GC-07試験)において、主要評価項目である3年無再発生存(RFS)率は併用療法群が65.9%、S-1単独群が49.5%であり、前者が有意に優れていた。その結果、現在ではS-1+ドセタキセル併用療法が標準的な術後補助化学治療と考えられる。 一方、欧米における標準的周術期化学療法は術前および術後ともに行う方法が一般的であり、さらにS-1は承認されていないために主役どころかレジメンに含まれることはない。ドイツで施行されたFLOT4-AIO試験では、切除可能な局所進行胃・胃食道接合部腺がんの治療において、欧米における標準的周術期化学療法(術前・術後)とされているECF療法(エピルビシン+シスプラチン+フルオロウラシル)とドセタキセルベースの3剤併用レジメン(FLOT群)両群の有効性と安全性をRCTにより検討した結果、FLOTによる術前後の化学療法はECF療法群と比較して、全生存(OS)期間を1年以上延長すること(50ヵ月vs.35ヵ月)が示されたものであり、この結果は欧米においては驚くべき有効な治療選択肢が得られたとの評価を受けている。 以上のように、術前術後化学療法は欧米での標準的治療であるが、日本ではまだ術後の補助化学療法が主体であり、術前療法については手術不能胃がんに対する術前治療で手術可能な状態になるかをアウトカムとする臨床研究が進行中である。

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アスピリン前投与で免疫学的便潜血検査法の精度は向上しない (解説:上村直実氏)-1078

 本邦では、胃がんが減少する反面、大腸がん死亡者数が増加し、がん死亡順位で女性1位、男性3位となり、大腸がんに対する対策として、免疫学的便潜血検査(FIT)を用いた公的な検診の受診率を上げる方策が模索されている。一方、米国では『10年に1回の全大腸内視鏡検査(TCF)もしくは毎年のFITを行うことを推奨する』とされている。すなわち、微小ポリープが進行大腸がんになるためには10年必要との仮説を基に、大腸がんの検出に最も精度が高いTCFを10年に1回行うか、簡便で死亡率減少効果が示されているFITを毎年行うかのどちらかで大腸がんによる死亡を防ぐ方針である。毎年1回のFITは簡便で良い方法であるが、前がん病変の検出感度や病変的中率が高くないため、欧米では感度および的中率を上げる種々の工夫が報告されている。 今回は、ドイツにおいて、検査前に抗血栓薬であるアスピリンの服用がFITの感度を上げる方法として有用であるかどうかを検証する多施設共同無作為比較試験(RCT)が施行された。その報告では、便提出2日前にアスピリンを経口投与しても前がん病変の検出感度は有意に上昇しないことが示されている。この結果は、FITは進行した大腸がんの検出精度は高いが、日本では粘膜内がんとされている『advanced neoplasms』ないしは『前がん病変』の検出感度を改善しないとされた従来の観察研究の結果と一致するものであった。このような欧米からの報告を考慮すると、FITの検出精度を上げるための抗血栓薬の使用は不要であると結論してもよいと思われる。 大腸がん死亡を防ぐための大腸内視鏡検査による検診とFIT検診の比較に関しては、スペインにおいて一度のTCFを受ける群と2年ごとのFITを行う群の両群に分けて大腸がんによる10年死亡率を比較するRCT(Quintero E, et al. N Engl J Med. 2012;366:697-706.)が現在進行中であり、日本でも話題になっている大腸がん死亡の予防に必要な内視鏡検査の間隔に関しても、この研究結果報告が待望されている。

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ステントを捨てんといてな! 薬剤コーティングバルーンの好成績(解説:中川義久氏)-1074

 薬剤コーティングバルーン(Drug-coated balloon:DCB)は、ステント再狭窄病変や小血管への治療において有効とされてきた。血管径が十分に維持されたde-Novo病変を、バルーン拡張のみで終了することは、急性冠閉塞の危険性も高く再狭窄の懸念もあることから、金属製ステントの適応とされてきた。とくに薬剤溶出性ステント(DES)の成績向上とともに、DESの使用は確立したものと考えられていた。その確信に風穴を開けるような報告がLancet誌オンライン版2019年6月13日号にデビューした。その名も「DEBUT試験」である。出血リスクが高い患者に対するPCIにおいて、DCBはベアメタルステントに比べて勝っていることを示したものである。前拡張を適切に行い、血流を障害するような解離もなく、強いリコイルもないことを確認した場合にDCBで薬物を塗布して終了するという治療戦略である。確かに、この方法で急性閉塞や再狭窄などのイベントなく経過できれば、leave nothing behind(異物を残さない)というコンセプトを実現することができる。 一方で克服すべき課題もある。実臨床の現場から退場宣告を受けた状態にあるベアメタルステントへの優越性を証明したところでインパクトは小さい。比較すべきは、DCB vs.DESであろう。また、DCBのみで終了しても急性冠閉塞のリスクが本当にないのかは懸念がある。かつてバルーンのみでのPCI(当時はPTCAと呼んでいた)の時代に、急性冠閉塞の怖さを体験している自分には、その不安は払拭できないというのが正直な気持ちである。末梢動脈疾患へのDCB治療を巡る混乱についても注意が必要である。これは、大腿動脈・膝窩動脈へのパクリタキセルコートバルーンによる治療で死亡リスクが増すのではないかという懸念である。冠動脈領域であれば末梢動脈領域への治療よりも薬剤の曝露量は少ないことは推測される。しかし、この懸念へのエビデンス提示も必要と考えられる。 このような課題があるとはいえ、かつて生体吸収性スキャホールドが達成しようとして挫折した理想をDCBが具現化しようとしていることは興味深い。DCBは世界に先駆けて日本での使用実績が多い分野でもあり、本邦からの情報発信に期待したい。

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ASCO2019レポート 乳がん

レポーター紹介2019年5月31日~6月4日まで5日間にわたり、ASCO2019が開催された。2019年のテーマは“Caring for every patient, Learning from every patient”であった。薬物療法の大きな演題が少なかった代わりに、支持療法やサバイバーケアの演題が多く取り上げられているように感じた。乳がんにおいては直接私たちの実臨床を変えるような試験の発表はなかったが(残念ながらプレナリーセッションもなし)、日常臨床の中で解決しなければならないクリニカルクエスチョンに回答する試験、今後の開発の方向性を示唆する試験の発表が多かったように感じる。その一方で、日本が参加していない試験の報告も多く、わが国の世界の治療開発の中での課題を再認識させられた学会でもあった。乳がんのLocal/Regional口演から2演題、Metastatic口演から5演題を紹介する。臨床的リスク因子がOncotypeDXによる再発スコアに及ぼす影響(TAILORx追加解析)OncotypeDXは乳がん組織中の21遺伝子のメッセンジャーRNA発現を解析することにより再発リスクの予測、化学療法の上乗せ効果を予測する検査である。TAILORx試験は、再発スコア(RS)を11以下の低リスク、12~25の中間リスク、25以上の高リスクに分け、中間リスクに対する化学療法の上乗せ効果を検証した第III相試験である。主たる解析結果は昨年のASCOで発表され、中間リスクに対する化学療法の上乗せ効果は認められなかった。サブグループ解析では50歳以下でRSが16~20では2%の、21~25では7%の化学療法上乗せ効果が示唆された(Sparano JA, et al. N Engl J Med.2018;379:111-121.)。今回の発表では、RSに臨床的リスク因子を加えた解析が行われた。臨床的低リスクは3cm以下かつ低グレード、2cm以下かつ中間グレード、1cm以下かつ高グレードと定義され、臨床的低リスクに当てはまらない症例が臨床的高リスクと分類された。臨床的高リスクは30%であった。無病生存期間(disease free survival:DFS)および遠隔無再発生存期間は、RS11~25の中間リスクにおいて臨床リスクによる差を認めなかった。化学療法の有益性が示唆されている50歳以下のRS16~25に限った解析では、RS16~20かつ臨床低リスクでは化学療法上乗せ効果を認めなかった。また、この集団における化学療法の上乗せ効果は化学療法誘発閉経によるものである可能性が示唆された。今回の結果はOncotypeDXの実臨床での使い方に大きな影響を及ぼすものではないが、50歳以下(未閉経)RS16~25の場合に化学療法を上乗せするかどうかの参考にはなりえるかもしれない。本研究の結果は発表同日、論文発表された(Sparano JA, et al. N Engl J Med. 2019;380:2395-2405.)。HER2陽性乳がんに対する術前ペルツズマブ+化学療法vs.T-DM1+ペルツズマブ (KRISTINE試験)本試験はHER2陽性早期乳がんを対象とした、ペルツズマブ+トラスツズマブ+カルボプラチン+ドセタキセル(TCH+P)とT-DM1+ペルツズマブ(T-DM1+P)を比較する第III相試験である。各施設判定での主要評価項目は病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)率であり、pCRは56% vs.44%でTCH+P群で良好であった (Hurvitz SA, et al. Lancet Oncol. 2018;19:115-126.)。一方で、Grade3の有害事象や重篤な有害事象の発生頻度などでT-DM1+ペルツズマブ群のほうが安全性は良好であった。今回の発表では、副次評価項目の無イベント生存率(event free survival: EFS)、無浸潤がん生存率(invasive disease free survival:IDFS)などについて発表された。3年EFSはTCH+P群 vs.T-DM1+P群で94.2% vs.85.3%(層別化ハザード比:2.61、95%CI:1.36~4.98)とTCH+P群で良好であり、主要評価項目のpCR率と同様の傾向を示した。イベントとしては手術前の増悪がT-DM1+P群で15例(6.7%)と、イベントの約半数を占めていた。TCH+P群では0例であり、手術前の増悪がEFSの差につながったと考えられる。手術前に増悪した15例のうち14例についてHER2のmRNA発現が解析されており、全例で中央値を下回っていた。また、HER2の免疫組織化学染色は15例のうち10例(66.7%)が2+であり、このようなHER2の発現状況がT-DM1+Pの効果に影響を及ぼした可能性が考えられる。3年IDFSは92.0% vs.93.0%で両群に差は認めなかった。KATHERINE試験(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2019;380:617-628.)では術前治療で腫瘍が残存した症例に対してT-DM1の術後治療が無病生存(disease free survival:DFS)、全生存期間(overall survival:OS)を改善している。今回の結果との違いはHER2の発現の違いによる可能性は示唆されるが、さらなる検討が必要であろう。抗HER2療法で進行したHER2陽性転移乳がんに対するmargetuximab+化学療法 vs.トラスツズマブ+化学療法の比較第III相試験(SOPHIA試験)本試験は新しい抗HER2抗体であるmargetuximabと化学療法の併用をトラスツズマブと化学療法の併用と比較する試験である。margetuximabはトラスツズマブと同様の特異性と結合性の抗体認識部分を持ち、下流シグナルの抑制効果も同等である。トラスツズマブと異なるのはFCγ受容体結合部位であり、IgG1の野生型のままのトラスツズマブと異なり、CD16Aを活性化し、CD32Bを抑制するよう改変されている。CD16Aの遺伝子型が抗HER2抗体の治療効果予測因子となることが示唆されているため、margetuximabはCD16Aの変異型を有する腫瘍に対しても有効性が高いことが期待された。本試験は2レジメン以上の抗HER2治療歴(転移乳がんに対して1~3レジメン)の症例を対象として、主治医選択化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビンまたはビノレルビン)と併用して抗HER2抗体を1:1に割り付けた。margetuximab群に266例、トラスツズマブ群に270例が割り付けられた。主要評価項目は無増悪生存期間(progression free survival:PFS)およびOSであった。前治療としてトラスツズマブおよびペルツズマブは両群で全例が、T-DM1はそれぞれ約91%が受けていた。PFSの中央値は5.8ヵ月 vs.4.9ヵ月(ハザード比:0.76、95%CI:0.59~0.98、p=0.033)とmargetuximab群で良好であった。事前に計画されたCD16Aの遺伝子型によるサブ解析ではCD16A-FFもしくはFVではmargetuximab群で良好であったが、VVでは有意差を認めなかった。FF、FVのみでの解析では有意差を認めなかったが、margetuximab群で良好な傾向であった。また、OSについては有意差を認めなかった。奏効率、臨床的有用率についてもmargetuximabで良好であった。有害事象においてはmargetuximab群でinfusion-related reactionが多い傾向を認めた。今後、抗HER2抗体で進行した転移乳がんの治療として、margetuximabは1つの選択肢となってくる可能性があるが、残念ながら日本からはこの試験には参加していない。転移のあるHER2陽性乳がんにおけるneratinib+カペシタビンvs.ラパチニブ+カペシタビンの比較第III相試験(NALA試験)neratinibはHERファミリーのチロシンキナーゼドメインに不可逆的に結合することにより、下流シグナルを抑制する少分子化合物である。NALA試験は転移乳がんに対し2レジメン以上の抗HER2治療の既往がある症例を対象としてneratinib+カペシタビンvs.ラパチニブ+カペシタビンを比較する第III相試験で、主要評価項目はPFSおよびOSであった。neratinib群に307例が、ラパチニブ群に314例が登録された。PFSはハザード比0.76(p=0.0059)とneratinib群で良好であった。もう1つの評価項目であるOSではneratinib群で良好な傾向は認めたものの、統計学的には有意ではなかった。副次評価項目の中枢神経転移に対する介入の割合はneratinib群の22.8%に対し、ラパチニブ群で29.2%とneratinib群で良好であった(p=0.043)。有害事象は下痢(とくにGrade3/4の下痢)、悪心、嘔吐、食欲低下がneratinib群で多く、手足症候群はラパチニブ群で多い傾向にあった。患者報告によるQOLでは両群間に差を認めなかった。トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するアテゾリズマブ+nab-PTX併用試験のOSアップデート(IMpassion130)アテゾリズマブ+nab-PTX併用療法のTNBCに対する初回治療の結果は昨年の欧州臨床腫瘍学会で発表され、乳がんへの適応拡大が期待されている(Schmid P, et al. N Engl J Med. 2018;379:2108-2121.)。本試験ではPD-L1の発現(1%以上または未満)によって層別化が行われた。PD-L1は41%の症例で陽性であった。主要評価項目はPFSであり、ITT集団では7.2ヵ月 vs.5.5ヵ月、PD-L1陽性集団では7.5ヵ月 vs.5.0ヵ月で、アテゾリズマブ群で良好であった。今回は2回目の中間解析の結果が発表された。観察期間の中央値は18.0ヵ月であり、ITT集団で59%の死亡イベントが発生していた。ITT集団における生存期間中央値(median survival time:MST)は21.0ヵ月 vs.18.7ヵ月(ハザード比:0.86、95%CI:0.72~1.02、p=0.0777)、24ヵ月生存率は42% vs.39%であり、アテゾリズマブ群で良好な傾向を認めたものの、統計学的有意差は認めなかった。PD-L1陽性集団における解析はITT集団で陽性だった場合にのみ行う統計手法が用いられていたため参考値ではあるが、MSTは25.0ヵ月 vs.18.0ヵ月、24ヵ月生存率は51% vs.37%であり、より差が開く傾向がみられた。PD-L1陰性では、MSTは19.7ヵ月 vs.19.6ヵ月であり、アテゾリズマブ追加の有無にかかわらず差を認めなかった。MST、24ヵ月生存率のいずれもプラセボ群ではPD-L1陽性の場合に短い傾向がみられ、PD-L1が予後予測因子でもある可能性が示されている。乳がんにもついに免疫チェックポイント阻害剤の波が到達しようとしている。有害事象のマネジメントも含めて、先人たちに学びながら有効な治療を安全に患者さんに届けるようにしていきたい。なお、余談ではあるが本試験の共同演者には愛知県がんセンターの岩田 広治先生が入っていた。最近では国内からの参加のある国際共同試験の多くで共同演者に日本の先生が入っていることも多く、非常にうれしく感じている。ホルモン受容体陽性乳がんを対象としたエリブリン+ペムブロリズマブ併用療法とエリブリン単剤療法のランダム化第II相試験ホルモン受容体陽性乳がんは免疫学的には“コールド”と考えられており、免疫チェックポイント阻害剤の効果が得られにくいと考えられている。免疫チェックポイント阻害剤単剤では2.8~12%の奏効率が報告されている。一方で化学療法との併用の術前治療ではpCR率を上げることが報告されており、化学療法と免疫チェックポイント阻害剤の併用はホルモン受容体陽性乳がんの治療として有望である可能性が残されていた。本研究ではエストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体陽性HER2陰性で、2レジメン以上のホルモン療法歴(術後治療含む)、転移乳がんに対する0~2レジメンの化学療法歴を有する症例を対象として、エリブリン+ペムブロリズマブ併用療法とエリブリン単剤療法を比較した第II相試験である。主要評価項目はPFS、副次評価項目として奏効率・臨床的有用率とOSが設定されていた。44例が併用群、46例が単剤群に割り付けられた。PFSは4.1ヵ月 vs.4.2ヵ月(ハザード比:0.8、95%CI:0.5~1.3、p=0.33)であり両群間に差を認めなかった。PD-L1陽性集団に限った解析でも同様の傾向であった。奏効率はITT集団で27% vs.34%、PD-L1陽性集団で23% vs.45%と、併用群で低い傾向であった。OSは両群間に差を認めなかった。有害事象は多くの項目で両群間に大きな差を認めなかったが、併用群では2例の免疫関連有害事象による治療関連死を認め、単剤群では認めなかった。本試験の結果をもって、ホルモン受容体陽性乳がんに対する免疫チェックポイント阻害剤の有用性を結論付けることはできないが、併用群で奏効率が低下した理由についてはreverse translational researchが必要であろう。MONALEESA-7 副次評価項目の全生存期間の中間解析で有意に延長MONALEESA-7は閉経前転移乳がんを対象に1次ホルモン療法に対するCDK4/6阻害剤であるribociclibの上乗せをみた第III相試験である。ホルモン療法としてはタモキシフェンもしくはアロマターゼ阻害剤とLHRHアゴニストであるゴセレリンが併用された。前治療としてホルモン療法は許容されておらず、化学療法は1レジメンのみ許容されていた。主要評価項目はPFS、キー副次評価項目としてOSが設定されていた。PFSの結果は昨年のSan Antonio Breast Cancer Symposiumで発表され、ribociclib群で23.8ヵ月に対しプラセボ群で13ヵ月(ハザード比:0.55、95%CI:0.44~0.69、p<0.0001)とribociclib群で良好であり、閉経前の症例においてもこれまでに閉経後を対象として行われてきたCDK4/6阻害剤と同様の上乗せ効果が得られることが示された。今回の発表では観察期間中央値34.6ヵ月時点でのOSの中間解析結果が発表された。生存期間中央値はribociclib群では未達であり、プラセボ群では40.9ヵ月であり、中間解析に割り振られたp値を下回りribociclib群で有意に長かった(ハザード比:0.712、95%CI:0.535~0.948、p=0.00973)。点推定値では、36ヵ月で71.2% vs.64.9%、42ヵ月で70.2% vs.46.9%と観察期間が延長するにつれて差が開いていく傾向を認めた。本試験はCDK4/6の1次治療への上乗せを検証した試験の中で、OSの結果を公表し統計学的有意差を認めた初の試験である。本試験の対象は閉経前であるため、現在の国内で1次治療に使用できるCDK4/6阻害剤に直接応用することはできない。また、中間解析でありイベントが十分に発生していないことなどから、今後の結果については最終解析の結果を待つ必要がある。本試験結果は発表同日New England Journal of Medicine誌に論文公表された( Im SA, et al. N Engl J Med. 2019 Jun 4. [Epub ahead of print])。なお、ribociclibは国内での開発が中止となっているため、本試験には日本からは不参加である。閉経前に対するCDK4/6の国内における開発は非常に重要であり、閉経前後を含めてタモキシフェンにパルボシクリブの上乗せを検証する、日本を含めたアジア共同医師主導治験のPATHWAY試験(UMIN000030816)の症例集積が完了する見込みである。結果の公表が待たれる。

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ASCO2019レポート 泌尿器腫瘍

レポーター紹介# LBA2 転移性ホルモン感受性前立腺がんにおけるエンザルタミドの生存期間延長効果Sweeney C, et al. J Clin Oncol 37, 2019米国臨床腫瘍学会(ASCO)は毎年Plenary sessionとして時代を変える結果となった臨床試験を4題選択し、学会3日目にほかのsessionは行わず、単独で最も収容人数の多い会場で演題発表を行う。泌尿器がんでこの名誉あるPlenary sessionに選ばれたのが、ENZAMET試験であった。エンザルタミドは、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)においてドセタキセル後でもドセタキセル前であってもプラセボと比較し生存期間(OS)の延長効果が示され、日本でも保険償還されている。2019年2月のASCO-GUでは、ARCHES試験の結果が報告され、転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)においての画像上の無増悪生存期間(rPFS)の延長効果が報告され、アビラテロン+プレドニゾロン療法と同様にホルモン感受性期での使用のメリットが示されていた。今回ASCO2019で報告されたのは、オーストラリア・ニュージーランドの臨床試験グループが主導する国際共同臨床試験で、mHSPCに対し非ステロイド系抗アンドロゲン薬 (NSAA)とエンザルタミドをランダム化比較し、OSの延長効果を検証するデザインであった。このENZAMET試験において観察期間中央値34ヵ月時点における中間解析が報告された。対象患者は、転移量(High/Low volume)、早期ドセタキセルの計画(あり/なし)、Performance status(0~1/2)、骨修飾薬(あり/なし)、合併症(少ない/多い)、施設で割り付け調整され、テストステロン抑制療法に加えて通常のNSAA(ビカルタミド、フルタミド、lilutamide)を行う群と、エンザルタミド160mgを行う群の2群に分けられた。ARCHES試験と異なりドセタキセルの併用が許容されており、約45%が併用していた。プライマリエンドポイントの3年OSは、NSAA群で72%、エンザルタミド群で80%であり、ハザード比(HR)0.67(95%信頼区間[CI]:0.52~0.86、p=0.002)であった。セカンダリーエンドポイントの、PSA無増悪生存期間のHRは0.39(95%CI:0.33~0.47)であった。計画的に設定されたサブグループであるドセタキセルの併用群と非併用群の治療成績も発表され、非併用群では3年OSはNSAA群70%、エンザルタミド群83%(HR:0.53[95%CI:0.37~0.75])であったのに対し、併用群では75%と74%(HR:0.90[95%CI:0.62~1.31])であり、エンザルタミドの上乗せ効果は不明瞭であった。有害事象は、ドセタキセル併用なしでは倦怠感Grade2が3%から10%に増加する程度で、エンザルタミドの既報と大差はなかったが、ドセタキセルと併用した場合は知覚神経障害と爪の変化、流涙、倦怠感が増加した。この試験は、発表と同時にNew England Journal of Medicine誌にもオンライン出版された。mHSPCの標準治療は、転移量の多いHigh volume症例では早期ドセタキセルとアビラテロン+プレドニゾロン療法のいずれかであったが、本試験により転移量の少ないLow volume症例も含めたmHSPCの新たな治療オプションが選択可能となった。# 5006 転移性ホルモン感受性前立腺がんに対するアパルタミドの無増悪生存期間延長効果Chi KN, et al. J Clin Oncol 37, 2019アパルタミドはアンドロゲン受容体拮抗薬として遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)の標準治療として、日本でも2019年3月に承認となった新規ホルモン製剤である。ASCO2019では、mHSPCにおいてプラセボと比較した二重盲検国際第III相試験であるTITAN試験の結果がOral abstract sessionで報告された。mHSPCの症例のうち、アンドロゲン抑制療法+プラセボ群は527例、アンドロゲン抑制療法+アパルタミド群は525例であり、High volume症例は両群とも60%程度含まれていた。プライマリエンドポイントは、rPFS(α=0.005)とOS(α=0.045)の2つ設定しており、今回はrPFSの最終解析とOSの中間解析であった。2年rPFS割合はプラセボ群48%、アパルタミド群68%であり、HR:0.48(95%CI:0.39~0.60、p<0.0001)と有意にアパルタミド群で良好な結果となった。OSの中間解析ではα<0.009で有効性ありと判断される解析計画であり、観察期間中央値約22ヵ月の現時点において、2年OS割合はプラセボ群74%、アパルタミド群82%、HR:0.67(95%CI:0.51~0.89、p=0.0053)であった。独立データモニタリング委員会は、盲検下での試験継続は倫理性に問題が生じると判断し、盲検解除とプラセボ群にクロスオーバーでのアパルタミド投与を推奨した。rPFSやOSのサブグループ解析から、本試験前のドセタキセルの有無や腫瘍量によらず、アパルタミド群に良好な結果であった。有害事象は、All gradeで皮疹8.5% vs.27%、甲状腺機能低下症1.1% vs.6.5%など、アパルタミド群で多い傾向はあったが、痙攣は0.4% vs.0.6%と両群で差はなく、健康関連QOLも2群の差は認められなかった。ENZAMET試験とTITAN試験は、ほぼ同じmHSPCを対象として新規アンドロゲン受容体拮抗薬の有効性が再現性をもって証明されたが、薬剤の使い分けを要する臨床像は明らかではない。# 4504 尿路上皮がん化学療法後のペムブロリズマブ維持療法の可能性Galsky MD, et al. J Clin Oncol 37, 2019尿路上皮がんに対するペムブロリズマブ療法は、KEYNOTE-045試験の結果を受けてがん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がんに対し、日本でも2017年12月に承認された。1次治療のプラチナ併用療法は、シスプラチンの蓄積毒性の懸念から8サイクル程度までで終了することが一般的である。非小細胞肺がんでは、プラチナ併用療法後にペメトレキセドやエルロチニブを用いたswitch maintenance(1次治療で用いた薬剤から変更して維持療法を行うこと)の有効性が第Ⅲ相試験で示されており、今回の報告はその可能性を尿路上皮がんで評価したランダム化第II相試験である。転移性の尿路上皮がんを初回治療としてプラチナ併用療法を8コース以下で行い、病勢安定以上の効果を得ている症例を対象に、プラセボ群とペムブロリズマブ群にランダム化し、以後の治療を行った。プライマリエンドポイントはPFSであり、中央値は3.2ヵ月 vs.5.4ヵ月(HR:0.64[95%CI:0.41~0.98]、p=0.038)と有意に腫瘍進行を遅らせた。何らかの重篤な有害事象が生じた症例は、プラセボ群35%、ペムブロリズマブ群53%であり、有害事象の増加は否めないが、生存期間の延長が可能となるかどうか、第III相試験での検証が待たれる有望な結果であった。# Poster Discussion 肉腫様腎がんの新たな治療戦略Brugarolas J. Poster Discussion 3rd June, 2019肉腫様腎がんは2~11%の割合でさまざまな組織型に混在し、淡明細胞がんと比較すると予後不良であり、既存の血管新生阻害薬の効果も限定的である。ASCO2019では、大規模第III相試験の追加解析が3報報告され、ポスターディスカッションが企画された。IMmotion151試験からアテゾリスマブ+ベバシズマブ療法(#4512)、CheckMate214試験からニボルマブ+イピリムマブ療法(#4513)、ハーバード大学の後方視解析(#4514)、KEYNOTE-426試験からペムブロリズマブ+アキシチニブ療法(#4500)の治療成績をレビューした。これらの比較第III相試験はいずれもスニチニブを対照群としており、PFSはIMmotion151試験では中央値8.3ヵ月 vs.5.3ヵ月(HR:0.52[95%CI:0.34~0.79])、CheckMate214試験では8.4ヵ月 vs.4.9ヵ月(HR:0.61[95%CI:0.38~0.97])、KEYNOTE-426試験では1年PFS割合で57% vs.26%(HR:0.54[95%CI:0.29~1.00])と報告された。OS中央値は、IMmotion151試験では21.7ヵ月 vs.15.4ヵ月(HR:0.64[95%CI:0.41~1.01])、CheckMate 214試験では31.2ヵ月 vs.13.6ヵ月(HR:0.55[95%CI:0.33~0.90])、KEYNOTE-426試験では未報告である。ハーバード大学からの後方視コホートでは、肉腫様腎がんで免疫チェックポイント阻害薬を使用した症例と使用しなかった症例のOSは、中央値24.5ヵ月 vs.10.3ヵ月(adjusted 0.43[95%CI:0.30~0.63]、p<0.0001)と報告されていた。奏効割合は、IMmotion151試験では全組織型で41%であったのに対し肉腫様腎がんでは59%、CheckMate 214試験では53%と75%、KEYNOTE-426試験では65%と72%と報告され、肉腫様腎がんでの免疫チェックポイント阻害薬併用療法の効果は全体集団よりインパクトが大きい可能性が示唆された。肉腫様腎がんではProgrammed death-ligand 1(PD-L1)の発現割合が高いことや、遺伝子ではSETD2やTP53、NF2、BAP1などの変異が多く、またTumor Mutation Burdenや遺伝子不安定性が高いことが過去に報告されており、これらの免疫チェックポイント阻害薬の効果が高まる要因となっていると考えられる。Brugarolas氏は未解決の問題として、肉腫様腎がんの最適な治療レジメンがどれか、肉腫様腎がんのみの前向き試験が必要かどうか、肉腫成分の比率は治療経過に影響を与えるか、免疫療法に効果を示すメカニズムに関してなど、さまざまな課題があるものの、肉腫様腎がんは免疫チェックポイント阻害薬のよい適応となるだろう、と結んだ。

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デュルバルマブ、進展型小細胞肺がんのOSを有意に延長(CASPIAN)/AstraZeneca

 AstraZenecaは、2019年6月27日、進展型小細胞肺がん(SCLC)の1次治療を対象としたデュルバルマブの第III相CASPIAN試験で、主要評価項目である全生存率(OS)を達成したと発表。 CASPIAN試験は、進展型SCLC患者の1次治療における無作為化オープンラベル多施設共同国際第III相試験。この試験では、化学療法単独とデュルバルマブ+化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)およびデュルバルマブ+トレメリムマブ+化学療法(上記と同様)とを比較しており、米国、欧州、南米、アジア、中東を含む22ヵ国、200以上の施設で実施されている。 独立データモニタリング委員会による中間分析では、デュルバルマブ+化学療法(エトポシド+シスプラチン)群は、化学療法単独に比べ主要評価項目であるOSを統計学的に有意に改善した。デュルバルマブ併用療法の安全性と耐容性は、これらの既知の安全性プロファイルと一致していた。 AstraZenecaは、今後の医学会での発表のために、今回のデータを提出するとしている。

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ASCO2019レポート 消化器がん(Upper GI)

レポーター紹介今年のASCOも消化器がん領域では免疫チェックポイント阻害薬が主役であった。胃がん初回化学療法におけるペムブロリズマブの効果を検証したKEYNOTE-062試験の結果が報告された。また、ポスターセッションでは、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果をより高めるために、血管新生阻害薬との併用効果を検討したり、食道がん術前化学放射線療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した試験が多く認められた。膵臓がんでは、gBRCA陽性患者に対するPARP阻害薬のメンテナンス治療の効果をみた試験の結果がプレナリーセッションで報告された。また、支持療法では、消化器がんで用いることが多い、50mg/m2以上のCDDPを使用する患者に対して、4剤併用の有効性を検証したJ-FORCE試験が報告された。LBA-4007 胃がん初回化学療法KEYNOTE-062試験(Non-colorectal, Oral presentation)胃がんにおける免疫チェックポイントの位置付けは、3次治療以降でのニボルマブの単剤投与であり、昨年報告されたKEYNOTE-061試験の結果では、2次治療としてのペムブロリズマブは、パクリタキセル単剤に対してCPS(Combined Positive Score:腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞でのPD-L1陽性割合)が1%以上の胃がんでの優越性を示すことはできなかった。今回は初回化学療法例を対象に、5-FU(あるいはカペシタビン)+CDDP療法(C群)に対する、ペムブロリズマブ併用療法(C+P群)の優越性と、単剤療法(P群)の非劣性を検証したKEYNOTE-062試験の結果が報告された。対象はCPS 1%以上の切除不能再発胃がんで、763例が登録された。日本を含む東アジアからは約25%が登録され、欧州・米国・オーストラリアからの登録が約60%と多数を占めた。主要評価項目は4つあり、C群に対するP+C群の無増悪生存期間(PFS)の優越性(≧CPS 1)、全生存期間(OS)の優越性(≧CPS 1)および(≧CPS 10)、P群のOSでの非劣性(≧CPS 1)であった。C群とP群の比較においては、OS中央値、12ヵ月OS割合、24ヵ月OS割合は、C群とP群でそれぞれ11.1ヵ月と10.6ヵ月、46%と47%、そして19%と27%であり、HR:0.91(99.2%CI:0.69~1.18)と、HRの信頼区間の上限は、あらかじめ決めておいた非劣性マージン1.20を下回ったため、P群の非劣性が示された。探索的な検討であるが、≧CPS 10の患者群では、24ヵ月生存割合がC群とP群で22%と29%と、よりP群で良好な結果であった。しかし、PFS中央値は、C群とP群で6.4ヵ月と2.0ヵ月、12ヵ月PFS割合は19%と14%と、P群で不良な傾向であった。後治療はP群で52.8%実施されていることから、後治療を含めた治療により、長期生存が得られていると考えられた。C群とC+P群の比較では、OS中央値はC群とC+P群でそれぞれ11.1ヵ月と12.5ヵ月、12ヵ月OS割合は46%と53%、24ヵ月OS割合は19%と24%であり、HR:0.85(95%CI:0.70~1.03、p=0.046)と、統計学的に有意な生存期間の延長は認められなかった。驚いたことに、≧CPS 10の患者群でも両者のHRは0.85であり、より有効性が期待できる手段においてもC+P群の効果は変わらなかった。有害事象はいずれの群も許容される範囲内であった。まず、CPSにて対象を絞っても、他のがん種で示されているような、プラチナ併用初回化学療法に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用効果が胃がんでは示せなかったこと、C+P群で思ったほど治療効果が持続していないこと、KEYNOTE-061試験で示されたCPSでの対象選択が、併用群では打ち消されていることなど、いくつかのポイントがクエスチョンとして挙がってくるが、今後の検討が必要である。非劣性が示され、CPS 1以上の胃がんでの初回化学療法の選択肢となりうるとされたペムブロリズマブも、効果のある症例は長く持続するが、半数の患者が2ヵ月で病勢進行を来している。従来の化学療法を受ける機会を逸しないためにも、対象は慎重に選択されるべきで、CPS 10以外にも効果のありそうな対象が絞り込める情報が必要である。また、薬剤コストの面についても問題が指摘されており、臨床的意義についてディスカッションが必要である。また、現在実施中である、ATTRACTION-4試験(胃がん初回化学療法SOX/XELOX±ニボルマブ)、CheckMate-649試験(胃がん初回化学療法XELOX/FOLFOX±ニボルマブ、およびニボルマブ+イピリムマブ)の比較試験の結果がどうなるのか、同じ結果なのか、異なる結果になるのか、大変興味深い。消化管がんに対する免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬、放射線療法の併用(Non-colorectal, Developmental therapeutics, poster)KEYNOTE-062試験の結果で、改めて消化管がんの研究者が思ったことは、胃がんは免疫原性が低い、CPSも堅牢なバイオマーカーではなく、化学療法との併用も微妙で、より強力な治療が必要、である。以前より、ニボルマブ(Nivo)とラムシルマブの併用が有効性を高めることが報告されていたり、肝細胞がんでのペムブロリズマブとレンバチニブとの併用で、奏効割合の改善が報告されたりしていたが、同様に、免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の併用療法を検討した、Nivoとレゴラフェニブ(Rego)の併用Phase I試験の結果が報告された(#2522)。REGONIVO試験では、標準投与量のNivoにRegoを通常量の半量である80mgより併用し、毒性をみながら増量し安全性をみる試験である。Regoが腫瘍関連マクロファージ(TAM)を抑えることで免疫抑制状態を解除し、抗腫瘍効果を高めるということが報告されている。胃がん、大腸がんそれぞれ25例が登録されたが、Rego 80mgとRego 120mgのコホートでは用量制限毒性(DLT)を認めず、160mgへ増量された。160mgのコホートでは、3例中3例にDLT(皮膚毒性、蛋白尿、消化管穿孔)が認められ、また120mgのコホートでも継続投与にて頻繁にGrade3の皮膚毒性が認められたため、Rego 80mgが推奨投与量とされた。奏効割合はマイクロサテライト安定(MSS)大腸がんに対して36%、胃がんに対して44%と高い効果を認め、さらなる治療開発が期待されている。また、胃がん初回化学療法例に対して、XELOX療法に抗PD-1抗体であるcamrelizumabを併用し、4~6回投与した後、XELOXを休止、血管新生阻害薬であるapatinibとcamrelizumabの併用療法によるメンテナンスを行うPhase II試験(#4031)では奏効割合58.6%、食道扁平上皮がんの初回化学療法例に対するリポソーマルパクリタキセルと、ネダプラチンにcamrelizumabとapatinibの併用を評価したPhase II試験(#4033)では奏効割合80%と報告されている。いずれも併用により毒性が強くなるため、血管新生阻害薬の単剤での投与量を大幅に減量する必要があるが、有効性は、探索的な検討ながら、良好にみえる。さらなる結果を待って、使いどころを検討する必要がある。肺がんなど他がん腫ですでに示されている、放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬の探索的な試験の結果が報告されている。韓国からは食道扁平上皮がんに対する術前化学放射線療法にペムブロリズマブを併用したPhase II(#4027)が報告された。病理学的完全奏効割合(pCR)は46.1%と高く、懸念された間質性肺炎は認められなかったが、手術症例26例中2例がARDSなどの肺障害により死亡しており、術前のペムブロリズマブの影響が懸念された。また食道胃接合部腺がんに対しては、欧米での標準治療の1つである術前カルボプラチン+パクリタキセル+放射線療法に、PD-L1抗体であるアベルマブを併用し、術後にもアベルマブを継続するPhase I/II試験(#4041)が行われ、7例のPhase I部分のみの発表であったが、重篤な毒性はなく、pCR割合も43%と比較的良好であった。また、術前化学放射線療法後に切除を行った食道胃接合部腺がんの術後にデュルバルマブを1年投与するPhase II試験(#4058)では、重篤な有害事象はないと報告されている。今後の免疫療法は、“併用療法”“周術期”といったところへシフトしていくと思われる。LBA4 膵臓がんに対するPARP阻害薬メンテナンス:POLO試験(Plenary session)PARP阻害薬であるオラパリブは、生殖細胞系列遺伝子のBRCA(gBRCA)に変異のある乳がんや卵巣がんに用いられているが、他がん腫での検討はまれである。POLO試験では、gBRCA1/2に変異のある進行膵がんに対してプラチナ併用化学療法を行い、進行がみられなかった患者をオラパリブとプラセボに割り付け、メンテナンス治療としての有効性をみた試験である。gBRCA1/2変異は、3,315例の患者をスクリーニングし、247例(7.4%)に認められ、うち、92例がオラパリブ群、62例がプラセボ群に割り付けられた。前治療はFOLFIRINOXが約80%と多く、治療効果も群間で差異はなかった。主要評価項目である無増悪生存期間中央値はオラパリブ群7.4ヵ月、プラセボ群3.8ヵ月であり、HR:0.53と有意に改善が認められた。生存期間を評価するにはイベントは不十分であるが、中央値オラパリブ群18.9ヵ月、プラセボ群18.1ヵ月と差を認めなかった。有害事象は予想されたものであった。また、すべてのサブグループにて同様の傾向であった。日本ではこの試験は実施されておらず、この結果が今後の日常診療にどのように取り込まれるのか、今後注目される。#11503 標準的制吐薬に対するオランザピンの上乗せ効果を検証したJ-FORCE試験(Symptom and Survivorship, Oral presentation)高度催吐性化学療法(Highly Emetogenic Chemotherapy:HEC)における標準制吐療法である、アプレピタント(APR)、セロトニン受容体拮抗薬、デキサメタゾン(DEX)にオランザピン(OLZ)10mgを併用することが遅発期の制吐に有効であることが証明されているが、眠気が問題点であった。この試験では予備的試験を行ったうえ、OLZ:5mgを試験治療群とし、プラセボ群に対する、遅発期(CDDP投与開始24時間後から120時間以内)の嘔吐完全抑制割合における優越性を検証した。705例が登録され、試験治療群が354例、プラセボ群が351例、患者背景は、55歳以上が80%以上、男性が65%、肺がん(50%)、食道がん(20%)、婦人科がん(10%)、その他であった。主要評価項目である遅発期の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の66%に対して、試験治療群が79%(p<0.001)と有意に優れた結果であった。また、副次的評価項目である急性期の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の89%に対して、試験治療群が95%(p=0.002)、全期間の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の64%に対して、試験治療群が78%(p<0.001)と有意に良好な結果であった。試験治療群の有害事象のうち、全グレード(Grade3)の眠気が43%(0.3%)、めまいが8%(0%)と口腔内乾燥が21%(0%)と有意に多かったが、両群ともにGrade4は認めなかった。しかしながら、治療期間中の生活経過記録の解析結果から、試験治療群はプラセボ群と比較して有意(p<0.05)に良好であったことが示され、新たな標準治療であることが示された。日本の支持療法研究グループで行われた臨床試験が、世界の標準治療を塗り替えた非常に意義深い試験である。今回のASCOでも依然として免疫チェックポイント阻害薬の演題が多数を占めた。単剤の治療の時代から、併用療法や集学的治療へシフトしている。また、免疫細胞療法などの演題も多数認められ、新時代の到来を予感させられる。また、J-FORCE試験がOral Presentationに選ばれるなど、支持療法のエビデンス創出が日本でも盛んになってきており、今後にも期待したい。

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非扁平上皮NSCLCへの維持療法、Bev対Pem対Bev+Pem(ECOG-ACRIN 5508)/ASCO2019

 進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者における維持療法として、ベバシズマブ、ペメトレキセド、およびその併用の3群を比較した第III相ECOG-ACRIN 5508試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、米国・Winship Cancer Institute of Emory UniversityのSuresh Ramalingam氏が発表した。・対象:全身療法歴のない、ECOG PS 0~1の進行非扁平上皮NSCLC患者(カルボプラチン・パクリタキセル・ベバシズマブ併用3週ごと4サイクルの導入療法実施後、CR/PR/ SDとなった患者が、維持療法として、ベバシズマブ群とペメトレキセド群、ベバシズマブ・ペメトレキセド併用群に1:1:1の割合で無作為に割り付けられた)・試験群:ペメトレキセド3週ごとPDまで(Pem群)ベバシズマブ+ペメトレキセド3週ごとPDまで(Bev+Pem群)・対照群:ベバシズマブ3週ごとPDまで(Bev群)・評価項目:[主要評価項目]無作為化後の全生存期間(OS)[副次評価項目]無作為化後の無増悪生存期間(PFS)、RECIST1.1による奏効率(RR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・導入療法後、874例が3群に無作為化された(Bev群287例、Pem群294例、Bev+Pem群293例)。年齢中央値:64歳、男性:49%、ECOG PS1:55%。ベースライン特性は、3群でバランスがとれていた。・治療サイクル数の中央値はBev群およびPem群で6サイクル、Bev+Pem群8サイクルであった。無作為化後の追跡期間中央値は50.6ヵ月。・無作為化後のOS中央値はBev群14.4ヵ月に対し、Pem群15.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.70~1.07、p=0.12)、Bev+Pem群16.4ヵ月(HR:0.90、95%CI:0.73~1.12、p=0.28)。・無作為化後のPFS中央値はBev群4.2ヵ月に対し、Pem群5.1ヵ月(HR:0.85、95%CI:0.69~1.03、p=0.06)、Bev+Pem群7.5ヵ月(HR:0.67、95%CI:0.55~0.82、p<0.001)。・維持療法のRRはBev群13%、Pem群19%、Bev+Pem群21%であった。・維持療法におけるGrade3以上の有害事象は、Bev群29%、Pem群37%、Bev+Pem群50%と併用群で多い傾向がみられた。Pem群およびBev+Pem群で多くみられたのはリンパ球減少症(1%、5%、8%)、好中球減少症(1%、7%、11%)、血小板減少症(0%、3%、4%)など。Bev群で多くみられたのはタンパク尿(4%、1%、3%)、高血圧(16%、5%、19%)であった。 これらの結果を受けてRamalingam氏は、併用群では、Bev群と比較してPFS中央値を延長したものの、OS中央値は有意な差が認められなかったと結論付けている。

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軽症脳卒中/TIA患者への血小板反応性が低い薬物療法は?/BMJ

 チカグレロル+アスピリン併用療法を受けた軽症脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)患者、とくにCYP2C19機能喪失型変異保有者では、クロピドグレル+アスピリン併用療法を受けた患者と比較して、高い血小板反応性を示す患者の割合が低いことが示された。中国・首都医科大学のYilong Wang氏らが、軽症脳卒中/TIA患者を対象にチカグレロル+アスピリンのクロピドグレル+アスピリンに対する優越性を検証する第II相非盲検(評価者盲検)無作為化比較試験「Platelet Reactivity in Acute Stroke or Transient Ischaemic Attack trial:PRINCE試験」の結果を報告した。急性冠症候群においては、チカグレロル+アスピリン併用はクロピドグレル+アスピリン併用と比較し、CYP2C19の変異の有無にかかわらず有効であることが示されているが、軽症脳卒中/TIA患者では検証されていなかった。BMJ誌2019年6月6日号掲載の報告。675例を対象に、アスピリンへのチカグレロル併用vs.クロピドグレル併用を比較 PRINCE試験は、2015年8月~2017年3月の期間に、中国の26施設で実施された。対象は、軽症の急性脳卒中またはTIA患者675例で、発症24時間以内にチカグレロル(負荷投与量180mg、維持量90mg 1日2回)、またはクロピドグレル(負荷投与量300mg、維持量75mg/日)のいずれかと、アスピリン(100mg/日を最初の21日間)を併用する群(それぞれチカグレロル併用群、クロピドグレル併用群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、90日時点で高い血小板反応性を示す患者の割合であった。血小板反応性の高さは、VerifyNow P2Y12 reaction units(PRU)>208と定義した。 副次評価項目は、クロピドグレルの代謝に影響を及ぼす遺伝子変異を有する患者における、90日時点の高い血小板反応性と、90日・6ヵ月・1年時点でのあらゆる脳卒中(虚血性/出血性)の再発などであった。チカグレロル併用群で高い血小板反応性の患者が少なく、脳卒中再発率も低下 90日時点で高い血小板反応性を示したのは、チカグレロル併用群280例中35例(12.5%)、クロピドグレル併用群290例中86例(29.7%)であった(リスク比[RR]:0.40、95%信頼区間[CI]:0.28~0.56、p<0.001)。CYP2C19機能喪失型変異保有者では、10.8% vs.35.4%であった(RR:0.31、95%CI:0.18~0.49、p<0.001)。 脳卒中の発現率は、チカグレロル併用群6.3%(21/336例)、クロピドグレル併用群8.8%(30/339例)であった(ハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.40~1.22、p=0.20)。大動脈アテローム性硬化症患者では、チカグレロル併用群はクロピドグレル併用群と比較して、90日時点の脳卒中再発が減少した(6.0% vs.13.1%、HR:0.45、95%CI:0.20~0.98、p=0.04)。 大出血または小出血の発生頻度に、チカグレロル併用群とクロピドグレル併用群とで有意差はなかった(4.8% vs.3.5%、p=0.42)。

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薬剤コーティングバルーンが高出血リスク患者へのPCIに有効/Lancet

 出血リスクが高い患者に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)において、薬剤コーティングバルーンはベアメタルステントに比べ優れていることが示された。フィンランド・North Karelia Central HospitalのTuomas T. Rissanen氏らが、同国内5施設で実施した単盲検無作為化非劣性試験「Drug-Eluting Balloon in stable and Unstable angina Trial:DEBUT試験」の結果を報告した。抗血小板療法や抗凝固療法の進歩、あるいは新世代薬剤溶出ステント(DES)の導入にもかかわらず、現状では、高出血リスク患者におけるPCIの最適な技術はわかっていない。Lancet誌オンライン版2019年6月13日号掲載の報告。薬剤コーティングバルーンで治療可能な出血リスク因子1つ以上、対象血管径2.5~4.0mmの新規患者が対象 DEBUT試験の対象は、薬剤コーティングバルーンで治療可能な、対象血管径が2.5~4.0mmの新規冠動脈虚血性病変のある、1つ以上の出血リスク因子(経口抗凝固薬内服中、80歳以上、貧血または血小板減少症、活動性悪性腫瘍、脳梗塞または頭蓋内出血の既往、重度の腎機能障害または肝不全、BMI<20、治療を要する重大な出血など)を有する患者である。ST上昇型心筋梗塞患者、2つのステントを要する分岐部病変、ステント内再狭窄、前拡張後の標的血管の重度血管解離または高度再狭窄(>30%)を有する患者は除外された。 標的病変の前拡張成功後、対象患者を、パクリタキセルとイオプロミドでコーティングされたバルーンを用いるPCI(バルーン群)、またはベアメタルを用いるPCI(ベアメタル群)のいずれかに1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、9ヵ月時点での主要心血管イベント(MACE;心血管死、非致死性心筋梗塞、虚血による標的血管再血行再建の複合)である。絶対リスク差が3%未満の場合に非劣性とし、非劣性が検証された場合は優越性の検定を行った。intention-to-treat集団を対象に解析を行った。薬剤コーティングバルーンの優越性をMACEに関して確認 2013年5月22日~2017年1月16日の期間で、220例が募集され、そのうち208例がバルーン群(102例)とベアメタル群(106例)に無作為に割り付けられた。9ヵ月時点のMACEはバルーン群で1例(1%)、ベアメタル群で15例(14%)に発生した(絶対リスク比:-13.2ポイント[95%信頼区間[CI]:-6.2~-21.1]、リスク比:0.07[95%CI:0.01~0.52]、非劣性のp<0.00001、優越性のp=0.00034)。ベアメタル群ではステント血栓症(definite)が2例発生したが、バルーン群では急性の血管閉塞は確認されなかった。 著者は、予定より症例数が少なく、MACEの発生も予想より低かったことなどを研究の限界として挙げたうえで、「薬剤コーティングバルーンは出血リスクが高い患者に対する新しい治療戦略であり、今後、新世代DESを用いたPCIとの無作為化比較試験が必要である」とまとめている。

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ASCO2019レポート 肺がん

レポーター紹介2019年のASCO、とくに肺がん領域は、このところ続いた免疫チェックポイント阻害薬による新境地の開拓の連続とは異なり、比較的おとなしいエビデンスの報告が主体であった。その中でも、RELAY試験の中川先生、JIPANG試験の劔持先生、COMPASS試験の瀬戸先生、そして大規模な外科切除データに基づく発表が注目された津谷先生といった日本人演者のOral presentationが多数報告され、活況を呈した。今回はその中から、とくに注目すべき演題について概観したい。RELAY試験EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの患者を対象に、試験治療としてのエルロチニブとラムシルマブの併用療法を標準治療としてのエルロチニブと比較したRELAY試験の結果が報告された。本試験には、Exon19欠失変異、Exon21 L858R変異があり、PS 0-1、血管新生阻害薬の一般的な適格規準を満たし、脳転移のない患者が合計449例登録された。主要評価項目はPFS、副次評価項目は安全性、OS、奏効割合などが設定されている。本試験はこれまでのEGFR-TKIと血管新生阻害薬の試験に比べ多数の症例が登録されており、また、アジア例が77%、そのうち日本人が多数を占めるという点も特徴的である。主要評価項目であるPFS中央値は、試験治療群で19.4ヵ月、標準治療群で12.4ヵ月、ハザード比は0.591(95%信頼区間0.461~0.760)であり、有意にエルロチニブ+ラムシルマブ併用群が良好な成績であった。探索的に実施されたPFS2の解析でも、ハザード比0.690(95%信頼区間0490~0.972)であった。安全性に関しては、Grade 3以上の有害事象が試験治療群で72%、標準治療群で54%報告されており、両者の違いは多くは高血圧であり、皮膚障害などの有害事象はCTCAE Gradeでは大きな違いを認めなかった。脳転移のない患者集団であることは考慮する必要があるものの、PFSの中央値でオシメルチニブのFLAURA試験と同等の結果が得られたことは、今後明らかになる全生存期間の解析に期待が持たれる結果であった。ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの患者を対象に、試験治療としてゲフィチニブとカルボプラチン+ペメトレキセド療法を併用する治療と、標準治療としてのゲフィチニブを比較するPhase III試験の結果が、インドから報告された。本試験には、Exon 19欠失変異、Exon 21 L858R変異があり、PS 0~2の患者が350例登録された。主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、安全性、奏効割合などであった。本試験に登録された患者の年齢中央値は50代半ばであり、PSに関しては2の患者が21~22%登録されており、わが国で実施されたNEJ009試験とは患者集団が異なる可能性が高い試験である。PFS中央値は試験治療群で16ヵ月、標準治療群で8ヵ月であり、ハザード比0.51(95%信頼区間0.39~0.66)と、良好な成績であった。OSについては試験治療群の中央値は到達しておらず、ハザード比は0.45(95%信頼区間0.31~0.65)であり、副次評価項目ながら併用療法群が良好な結果であった。NEJ009試験で話題となったゲフィチニブ、カルボプラチン+ペメトレキセド療法がPDとなった後のPSや腫瘍量などについての情報は開示されなかったものの、同様にOSを延長する結果が得られたことは評価に値する。ただ、FLAURA試験の結果でオシメルチニブが初回治療で注目されており、オシメルチニブを基本として今回と同様のデザインでどのような結果が得られるか、注目がさらに集まっている。JCOG1210/WJOG7813L試験75歳以上の高齢者を対象として、試験治療としてのカルボプラチン+ペメトレキセド療法と標準治療ドセタキセルと比較したPhase III試験である、JCOG1210/WJOG7813L試験の結果も報告されている。本試験には未治療、PS 0~1の75歳以上の非扁平上皮非小細胞肺がん患者433例が登録され、試験治療としてカルボプラチン+ペメトレキセド併用療法とその後の維持療法が、標準治療としてドセタキセル単剤療法が実施された。主要評価項目はOSの非劣性であり、非劣性マージンはハザード比で1.154に設定された。登録された患者の年齢中央値は78歳、試験治療群では最高87歳、標準治療群では最高88歳の高齢患者が登録されている。OSは中央値で試験治療群が18.7ヵ月、標準治療群が15.5ヵ月、ハザード比は0.850(95%信頼区間は0.684~1.056)であり、カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法のドセタキセルに対する非劣性が証明された。安全性については、試験治療群で貧血が多い傾向にあり、標準治療群で白血球減少、好中球減少が多い傾向を認め、治療関連死はそれぞれ2例ずつ報告されている。FACT-LCを用いたQOL評価では、試験治療群が良いことが示されている。非劣性が証明され、かつ有害事象やQOLでも試験治療群が想定されたとおり良好な結果であったことを受け、カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法とそれに続くペメトレキセド維持療法が、75歳以上の高齢者における標準治療と考えて問題ない結果であった。サブセット、フォローアップ今回、肺がん領域では、主たる結果が発表済みの試験においても盛んにサブセット解析、フォローアップ解析の結果が報告された。IMpower150試験は、進行期非小細胞肺がんにおいて、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブにアテゾリズマブを上乗せすることの優越性を示したPhase III試験である。本試験ではこれまでのベバシズマブを用いた試験の結果を受け、肝転移の有無が層別化因子に加えられていた。今回報告された肝転移の有無で分けられたサブセット解析では、肝転移を有する症例で、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法に対し、アテゾリズマブを加えることで、PFS、OSのハザード比がそれぞれ0.41(95%信頼区間0.26~0.62)、0.52(95%信頼区間0.33~0.82)と、いずれも明らかに改善していることが認められた。AACRでは、KEYNOTE189試験において、層別化因子には含まれていなかったものの肝転移の有無でのサブセット解析結果が報告されており、同様に肝転移症例でも有効であることが示されている。肝転移症例が予後不良であることはすでに報告されており、この患者集団においてもプラチナ併用療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法の意義を示すエビデンスが積み重ねられている。一方、フォローアップデータとしては、KEYNOTE189試験のアップデート、PACIFIC試験のアップデート等が報告され、いずれも良好な傾向が維持されていることが示されている。なかでも注目を集めたのはLate breakingで報告されたKEYNOTE001試験の5年生存のデータである。KEYNOTE001試験は、ペムブロリズマブのPhase I試験であり、この中から同薬の安全性や至適投与量のデータだけでなく、PD-L1のTPSカットオフについての知見も得られている。今回報告された5年生存のデータでは、未治療患者、治療歴のある患者それぞれについて、PD-L1発現別のサブセットを含め長期生存のデータが評価された。5年生存割合は、未治療患者では23.2%、治療歴あるセカンドライン以降の患者では15.5%であった。すでにニボルマブの長期生存のデータが報告されており、既治療の患者集団での成績は大きく異ならない印象であった。一方、未治療の患者における23.2%の5年生存割合はこれまで報告されていなかった情報であり、初回治療から免疫チェックポイント阻害薬を使用する場合の5年生存割合の新たな指標として受け止められる結果であった。PD-L1 TPS別の解析結果でも、PD-L1 50%以上の集団では、未治療、既治療問わず、5年生存割合が25%を超えるという驚くべき結果であった。ただし、Phase I試験のデータであるなど、対象となった患者集団は日常臨床の患者集団とは異なる、具体的にはより状態が良い可能性もあり、この結果が一般臨床でも再現されるかは、今後の追加情報を待つ必要がある。周術期治療NEOSTAR:術前のニボルマブ+イピリムマブ併用療法の有効性と安全性を評価するPhase II試験である。本試験には、切除可能Stage I~IIIA(Single N2)症例44例が登録され、ニボルマブ単剤療法とニボルマブ+イピリムマブ併用療法にランダム化された。主要評価項目はMajor Pathologic Response(<10% viable tumor)とされた。両群併せて手術検体が得られた41例中10例(29%)、ニボルマブ単剤では20%、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法では43%でMPRが達成されていた。有害事象に関しては、ニボルマブ群1例でbronchopleural fistulaとそれに伴う肺臓炎による死亡例が報告されており、それ以外にも、肺臓炎、低酸素血症、低マグネシウム血症、下痢などがGrade 3の有害事象として報告されている。免疫チェックポイント阻害薬による術前導入療法については、本試験以外にも複数実施されており、注目が高まっている。評価手法として用いられたMPRについて、従来からあるpCRを含めた病理学的効果判定の意義や、長期生存のデータとの関連性等について今後さらなる解析が必要と考えられる。JIPANG:Stage II~IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がんの術後化学療法として、試験治療としてシスプラチン+ペメトレキセド併用療法を、標準治療であるシスプラチン+ビノレルビン併用療法と比較したPhase III試験である。本試験には、完全切除後のpStage II-IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がん患者804例が登録され、性別、年齢、pStage、EGFR遺伝子変異の有無、施設を層別化因子としてランダム化された。主要評価項目は無再発生存期間、副次評価項目はOS、安全性等とされ、優越性試験のデザインで実施された。無再発生存期間の中央値は、試験治療群で38.9ヵ月、標準治療群で37.3ヵ月、ハザード比は0.98(95%信頼区間0.81~1.20)であり、試験治療の優越性は証明されなかった。安全性に関しては、Grade 3以上の有害事象の発生頻度は、試験治療群で47.4%、標準治療群で89.4%であり、試験治療群がより良好な結果であった。確かに優越性は証明されなかったものの、有効性は大まかには同等といえ、かつ安全性においてもシスプラチン+ペメトレキセドが良好な傾向を示したことが、会場でも話題になっていた。分子標的薬今回のASCOではMET阻害薬のデータが複数報告された。capmatinibとtepotinibは従来からMET exon14 skipping変異に対する有効性が報告されており、今回もそのフォローアップならびに追加データが示された。capmatinibに関しては、MET amplificationに対しても開発が進められている。MET阻害薬の発表と同時に、クリゾチニブを中心としたMETに対するTKIの耐性機序についても小数例ながら報告が行われており、EGFR等と並んで耐性機序の克服についても将来的には課題となってくることが示唆された。EGFRについては、通常のEGFR-TKIでは効果が限定されるExon 20 insに対する治療薬である、TAK788のPhase I試験の有効性と安全性が報告された。一方、EGFR等Driver oncogeneに対する治療の耐性因子としてMETに対する治療開発も盛んであり、今回ADCであるTeliso-V、EGFRとc-METのbispecific抗体であるJNJ-61186372についても発表があった。EGFR遺伝子変異陽性患者におけるADCであるTeliso-Vとエルロチニブの併用療法、EGFRとc-METを標的とする抗体療法によって、EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおける新たな治療戦略が開拓されることが期待されている。最初に記載したとおり、今回のASCO肺がん領域では、いくつかの重要なPhase III試験の結果発表とともに、免疫チェックポイント阻害薬による術前治療、新たな分子標的薬等、近い将来の標準治療の変革を示唆する情報が多数報告された。今後の各学会、来年のASCOに期待したい。

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局所進行NSCLCにおけるCCRT+アテゾリズマブの評価(DETERRED)/ASCO2019

 デュルバルマブが局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線同時併用療法(CCRT)後の地固め療法の新たなスタンダードとなるなど、CCRTと免疫療法の併用によるサバイバルの改善が期待されている。そのような中、StageII~IIIのNSCLCにおいて、CCRTとアテゾリズマブの併用(地固めおよび維持療法)とCCRT単独を比較する第II相臨床試験DETERREDが実施された。その結果を米国・MDアンダーソンがんセンターのSteven H. Lin氏らが米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。 同試験の対象は手術不能でPS2以下、StageII~IIIの局所進行NSCLC患者40例。患者のステージは、StageIIが15%、IIIAが50%、IIIBが35%、組織型は腺がん58%、扁平上皮がん35%、分類不能が7%であった。 登録患者は40例で、パート1(10例)、パート2(30例)に割り付けられた。パート1はCCRT(カルボプラチン+パクリタキセル+放射線、毎週)後に地固め化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)+アテゾリズマブ3週ごとを2サイクル、さらにその後に維持療法として1年以内のアテゾリズマブを3週ごと。パート2はCCRT(パート1と同様)+アテゾリズマブ後に地固め化学療法(パート1と同様)+アテゾリズマブ3週ごとを2サイクル、さらにその後に維持療法として1年以内のアテゾリズマブ3週ごとという投与方法である。主要評価項目は安全性、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、Grade3以上の放射線肺臓炎など。 Grade3以上の有害事象発現頻度はパート1が60%、パート2が67%、試験薬の投与中止につながった有害事象発現頻度はそれぞれ30%、17%、Grade3以上のアテゾリズマブに関係する免疫関連有害事象の発現頻度はそれぞれ30%、20%だった。 PFS中央値はパート1が18.6ヵ月、パート2が13.2ヵ月、OS中央値はパート1が22.8ヵ月、パート2が未到達であった。

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局所進行子宮内膜がん、術後化学放射線療法vs.化学療法/NEJM

 StageIIIまたはIVAの子宮内膜がん患者において、化学療法と放射線療法の併用は化学療法単独と比較し、無再発生存期間を延長しないことが示された。米国・ノースウェスタン大学のDaniela Matei氏らが、第III相多施設共同無作為化試験「Gynecologic Oncology Group 258:GOG 258試験」の結果を報告した。StageIII/IVAの子宮内膜がんは全身または局所再発の重大なリスクがあり、これまで化学療法と放射線療法の併用について検証されてきたが、化学療法単独と比較した有効性については確認されていなかった。NEJM誌2019年6月13日号掲載の報告。813例を対象に試験、無再発生存期間を比較 研究グループは、FIGO StageIII/IVAの子宮内膜がん、またはStageI/IIの明細胞がんまたは漿液性子宮内膜がんで腹膜洗浄細胞診陽性の患者を、6ヵ月間の化学放射線療法群(シスプラチン+放射線療法→カルボプラチン+パクリタキセル)と、6サイクルの化学療法単独群(カルボプラチン+パクリタキセル)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は無再発生存期間。副次評価項目は全生存期間、安全性および生活の質(QOL)などとした。intention-to-treat集団にて、層別log-rank検定および線形混合モデルを用いて解析した。化学放射線療法と化学療法単独で無再発生存率に有意差なし 2009年6月29日~2014年7月28日に813例が登録され、適格基準を満たした736例(化学放射線療法群370例、化学療法単独群366例)が解析対象となった。このうち707例が無作為に割り付けられた介入を受けた(それぞれ346例および361例)。追跡期間中央値は47ヵ月であった。 60ヵ月時点における無再発生存率(Kaplan-Meier推定値)は、化学放射線療法群59%(95%信頼区間[CI]:53~65)、化学療法単独群58%(95%CI:53~64)であった(ハザード比[HR]:0.90、90%CI:0.74~1.10)。 化学放射線療法群は化学療法単独群と比較し、5年の膣再発率(2% vs.7%、HR:0.36、95%CI:0.16~0.82)および5年の骨盤・大動脈周囲リンパ節再発率(11% vs.20%、HR:0.43、95%CI:0.28~0.66)が低かった。しかし、遠隔再発率は化学放射線療法群が高率であった(27% vs.21%、HR:1.36、95%CI:1.00~1.86)。 Grade3以上の有害事象は、化学放射線療法群で202例(58%)、化学療法単独群で227例(63%)に認められた。

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