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てんかん患者の喫煙率は

 てんかん患者における喫煙率に関するデータはあまり存在しない。スイス・ジュネーブ医科大学のOmar Torriani氏らは、フランス語圏のスイスに在住する成人てんかん患者を対象に調査を行った。Journal of neurology誌オンライン版2016年7月14日号の報告。 対象は、フランス語圏のスイスに在住する成人てんかん患者429例。過去6ヵ月間で少なくても1日1本のタバコの利用を現在喫煙者として定義した。てんかんタイプやタバコの消費量に関する質問が含まれたアンケートは、信頼性の高い診断を確実にするため、神経内科医付き添いのもとプロスペクティブに調査した。調査データは、毎年異なる言語地域におけるスイス人のタバコ利用習慣に関する詳細な情報を調査した「Tabakmonitoring」のデータ収集と比較した。 主な結果は以下のとおり。・てんかん患者の現在喫煙率は、32.1%であった(女性:28.8%、男性:35%)。また、同期間におけるフランス語圏スイス人の一般的な喫煙率は19.0%であった(OR:2.0、CI:1.6~2.5、p<0.001)。・特発性(素因性)全般てんかん患者の喫煙率は44.3%で最も高かった(その他のてんかん患者:27.8%、p=0.03)。・てんかん患者の喫煙率は、有意に高かった。・てんかんとニコチン中毒に共通する遺伝的感受性、てんかんに関連付けられるストレスやうつ病を介する間接的な併存疾患、てんかんに対するニコチンの有益な効果などの因果関係は不明なままであり、さらなる研究が求められる。関連医療ニュース 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか 成人てんかんに対するガイドライン準拠状況は てんかん患者の性的問題の現状

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統合失調症の病態生理とBDNFの関連:産業医科大

 統合失調症の病態生理には、カテコールアミン、脳由来神経栄養因子(BDNF)、サイトカインが関与するといわれている。産業医科大学の堀 輝氏らは、非定型抗精神病薬単独療法で治療された統合失調症患者における認知機能と血清BDNFレベル、血清カテコールアミン代謝物、サイトカインとの関連を検討した。The world journal of biological psychiatry誌オンライン版2016年7月13日号の報告。 統合失調症患者146例と年齢、性別をマッチさせた健常対照群の抹消生物学的マーカーおよび神経認知テストを調査した。 主な結果は以下のとおり。・血清BDNFレベルは、言語記憶、注意、処理速度のスコアだけでなく、陰性症状とも正の相関が認められた。・血漿ホモバニリン酸(HVA)レベルと運動機能に負の相関、血漿3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG)レベルと注意、処理速度に正の相関が認められた。・インターロイキン6(IL-6)またはTNF-αと認知機能との間に有意な相関は認められなかった。・HVA、MHPG、サイトカインの血漿レベルと臨床症状との間に有意な相関は認められなかった。 統合失調症患者において、言語記憶・注意の減退と血清BDNFレベル、また運動機能と血漿HVAレベル、また注意と血漿MHPGレベルについて、それぞれ相関が認められた。関連医療ニュース 統合失調症、大脳皮質下領域の新発見:東京大学 統合失調症治療、ドパミン調節の概念が変わる 統合失調症のバイオマーカーとなりうる低メチル化率:愛媛大

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統合失調症の再入院、剤形の違いで差はあるのか

 長時間作用型注射用抗精神病薬(LAI)または経口抗精神病薬による治療を受けた統合失調症患者における退院後の再入院率について、米国・Precision Health EconomicsのJoanna P MacEwan氏らは検討を行った。Psychiatric services誌オンライン版2016年7月15日号の報告。 重度な精神疾患により初回入院(2007年10月~2012年9月)し、第1世代または第2世代抗精神病薬を処方された統合失調症患者(18~64歳)の医療費請求を、Truven Health MarketScan Multi-State Medicaid Databaseのデータを基に分析した。統合失調症単独診断患者1,450例、および双極性障害やうつ病を併せて診断された患者を含むすべての統合失調症患者1万5,556例を分析した。初回入院30日後、60日後における全原因による再入院率は、多変量ロジスティック回帰と傾向スコアマッチング(PSM)法を用い評価した。PSMモデルは、LAI群と経口抗精神病薬群で、年齢、LAIまたは短時間作用型注射剤の使用、併存疾患でマッチした。 主な結果は以下のとおり。・LAI群では、経口抗精神病薬群と比較し、統合失調症単独診断患者(調整オッズ比:0.60、95%CI:0.41~0.90)および全患者(調整オッズ比:0.70、95%CI:0.52~0.95)において、60日後の再入院率が有意に低かった。・全患者におけるLAI群の再入院率の絶対差は、経口抗精神病薬群と比較し、60日後で5.0%有意に低かった。関連医療ニュース 統合失調症患者の入院、1日の気温差が影響 精神科再入院を減少させるには、雇用獲得がポイント 統合失調症の再入院、救急受診を減らすには

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双極性障害で高率にみられる概日リズム睡眠障害:東医大

 最近の研究によると、双極性障害(BD)と概日リズム睡眠障害との間に病態生理学的関連が認められることが示唆されている。しかし、BD患者における概日リズム睡眠・覚醒障害(CRSWD)の有病率を明らかにした研究はなかった。東京医科大学の高江洲 義和氏らは、BD患者におけるCRSWDの有病率と関連する要因を調査した。PLOS ONE誌2016年7月21日号の報告。 対象は、寛解期BD外来患者104例。対象者は、人口統計学的変数、BDの臨床経過、精神疾患と自殺の家族歴に関するアンケートに回答した。BDの重症度は、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)を用いて評価した。CRSWDは、睡眠ログと睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)を用い、臨床面接により診断した。 主な結果は以下のとおり。・CRSWD基準を満たした患者は、35例(32.4%)であった。・調査時点とBD発症時点の年齢は、CRSWD群において非CRSWD群よりも低かった。・精神疾患と自殺の家族歴を有する割合は、CRSWD群において非CRSWD群よりも高かった。・多重ロジスティック回帰分析では、CRSWDはBDの若年発症、自殺の家族歴との関連が認められた。・CRSWDの有病率は、BD患者ではきわめて高い可能性がある。関連医療ニュース 双極性障害患者の脳灰白質はどうなっている 双極性障害、ベンゾジアゼピン系薬の使用実態は 双極性障害の簡便な症状把握のために

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高プロラクチン血症、アリピプラゾール切り替えと追加はどちらが有効か

 高プロラクチン血症は、抗精神病薬の悪影響として重要な問題でありながら、しばしば見逃されている。いくつかの研究によると、アリピプラゾールへの切り替えや追加により、抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症が改善することが報告されている。しかし、これら2つの治療法の有効性、安全性を直接比較した報告はなかった。韓国・NHIC Ilsan HospitalのHui Woo Yoon氏らは、高プロラクチン血症に対するアリピプラゾールの切り替えと追加の効果について比較検討を行った。Clinical neuropharmacology誌オンライン版2016年7月19日号の報告。 対象は、抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症を有する患者52例。軽度の高プロラクチン血症(血清プロラクチン値:50ng/mL未満)を有する患者にアリピプラゾール投与を行った。重度の高プロラクチン血症(血清プロラクチン値:50ng/mL超)を有する患者は、アリピプラゾール追加群(前治療薬にアリピプラゾールを追加)とアリピプラゾール切り替え群(前治療薬からアリピプラゾールへ切り替え)に無作為に割り付けられた。血清プロラクチン値、月経障害、性機能障害、精神病理学、QOLを、0、1、2、4、6、8週目に調査した。 主な結果は以下のとおり。・両群ともに、有意な血清プロラクチン値や月経障害の低下および性機能障害の改善が認められた。・重度の高プロラクチン血症を有する患者において、切り替え群の高プロラクチン血症患者数、月経障害患者数は、追加群と比較し、8週目で有意に低かった。 著者らは「抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症や月経障害、性機能障害を含む高プロラクチン血症に関連する有害事象に対し、アリピプラゾールへの切り替え、追加のどちらでも有効であった。さらに、アリピプラゾールへの切り替えは、追加よりも、統合失調症患者の高プロラクチン血症や関連する有害事象の改善に有効であることが示唆された」としている。関連医療ニュース 抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症にアリピプラゾール補助療法 リスペリドン誘発性高プロラクチン血症への補助療法 統合失調症患者、そもそもプロラクチン値が高い

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うつ病女性に対する避妊法に関するレビュー

 うつ病や双極性障害の女性は、望まない妊娠をするリスクが高い。米国疾病対策予防センターのH Pamela Pagano氏らは、うつ病や双極性障害女性に対するホルモン避妊法の安全性を検討した。Contraception誌オンライン版2016年6月27日号の報告。 2016年1月までに発表された論文を対象に、うつ病や双極性障害を有する女性のうち臨床的診断またはスクリーニングツールによる検証で閾値レベル以上であった女性における、任意のホルモン避妊法を使用した際の安全性に関する論文を検索した。症状変化、入院、自殺、薬物療法の変更(増量、減量、薬剤変更)をアウトカムとした。 主な結果は以下のとおり。・2,376件中、6件が選択基準を満たした。・臨床的にうつ病や双極性障害と診断された女性に対する研究は以下のとおり。 1)経口避妊薬(OCs)は、双極性障害女性の月経周期全体にわたって気分を変動させなかった。一方、OCsを使用しなかった女性では月経周期全体にわたって気分が有意に変動した。 2)デポ型酢酸メドロキシプロゲステロン(depot medroxyprogesterone acetate:DMPA)、子宮内避妊用具(IUDs)、不妊手術を用いた女性における精神科入院頻度に有意な差は認められなかった。 3)OCsの使用有無にかかわらず、fluoxetine、プラセボのどちらの治療群においても、うつ病女性のうつ病尺度のスコア増加は認められなかった。・スクリーニングツールでの測定によりうつ病の閾値を満たした女性における結果は以下のとおり。 1)OCsを併用した思春期女性は、プラセボ群と比較し、3ヵ月後のうつ病スコアが有意に改善した。 2)OC使用者は、非使用者と比較し、フォローアップ時にうつでなかった割合は同程度であった。 3)OC併用者では、IUD使用者と比較して、11ヵ月にわたりうつ頻度が少ないことが示唆された。 著者らは「6件の限られた研究から得られた結果によると、OC、レボノルゲストレル放出IUD、DMPAを使用したうつ病または双極性障害の女性では、ホルモン避妊法を使用しなかった女性と比較して、症状の臨床経過の悪化との関連はみられなかった」としている。関連医療ニュース 妊娠中のSSRI使用、妊婦や胎児への影響は 妊娠に伴ううつ病、効果的なメンタルヘルス活用法 妊娠初期のうつ・不安へどう対処する

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統合失調症の維持治療では剤形変更を検討すべきか

 抗精神病薬による維持療法について、長時間作用型注射剤(LAI)と経口剤(AMT)における統合失調症患者の主観的ウェルビーイング、薬物に対する姿勢、QOLの違いを実臨床での証拠を提示するために、イタリア・フィレンツェ大学のF Pietrini氏らは検証を行った。European psychiatry誌オンライン版2016年7月18日号の報告。 対象は、オランザピンまたはパリペリドンを処方された統合失調症外来患者20例。維持療法での経口剤からLAIへの切り替え患者(LAI-AMT群)の選択は、切り替え前に行った。対照群は、主要な社会人口学的、臨床的および治療変数がマッチした、経口AMT治療統合失調症患者20例(経口AMT群)とした。参加者の治療アウトカムは、客観的(PANSS、YMRS、MADRS)および主観的(SWN-K、DAI-10、SF-36)な観点で、ベースライン(T0)と6ヵ月後(T1)に評価した。 主な結果は以下のとおり。・LAI-AMT群は、経口AMT群と比較しPANSS総合精神病理尺度、DAI-10、社会的統合を除くSWN-Kの項目において、有意に高い改善率を示した。・LAI-AMT群では、6ヵ月後の健康関連QOLと日常生活のほぼすべての機能について良好であった。・対照的に経口AMT群では、感情と社会的機能に関する健康関連QOLの悪化が報告された。 結果を踏まえ、著者らは「主観的経験の観点から、統合失調症維持治療におけるLAIの処方は、経口剤を上回る利点を示している」としている。関連医療ニュース LAIを適切に使用するための5つのポイント 錠剤埋め込み型服薬管理システムは、安全なのか パリペリドン持効性注射剤、国内市販後の死亡例分析結果

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うつ病への認知行動療法 vs.行動活性化療法/Lancet

 成人うつ病患者に対し、認知行動療法(cognitive behavioural therapy:CBT)よりも簡便な行動活性化療法(behavioural activation:BA)で、CBTに劣らない効果が得られることが、英国・エクセター大学のDavid A Richards氏らによる無作為化対照非劣性試験の結果、明らかにされた。CBTは最もエビデンスに優れた治療だが複雑でコストを要する。今回の結果を踏まえて著者は、「うつ病の効果的な治療は、コストを要せずとも、また高度な訓練を受けた専門家でなくても実施可能なようだ」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年7月22日号掲載の報告。行動活性化療法と認知行動療法を12ヵ月時点のPHQ-9によるうつ病重症度で比較 研究グループは、英国のデヴォン、ダラム、リーズ各都市のプライマリケアおよび精神科治療サービス部門でDSM-IVの大うつ病性障害の基準を満たした18歳以上成人を対象に試験を行った。精神科治療を受けている人、アルコール/薬物依存症の人、直近2ヵ月で自殺企図/未遂を図った人、認知障害、双極性障害、精神病/精神病性障害の人は除外した。 被験者を、コンピュータを用いて無作為に1対1の割合で2群に割り付け、一方には精神療法の専門的訓練を受けていない下級の精神保健従事者(junior mental health workers)による行動活性化療法を、もう一方には心理セラピスト(psychological therapists)による認知行動療法を行った。なお割り付け時に、Patient Health Questionnaire 9(PHQ-9)スコアで評価したうつ病重症度別(スコア19未満群と19以上群)の層別化も行った。無作為化は研究者にはマスキングされ、治療は非盲検下で行われたが、アウトカム評価者には知らされなかった。 主要アウトカムは、12ヵ月時点のPHQ-9で評価したうつ症状だった。解析は、無作為化を受け完全データが揃っていたすべての人を対象に(修正ITT[mITT])、また、割り付けを受け完全データが揃っていた8セッション以上治療を受けた人(per protocol[PP])について行った。安全性はmITT集団で評価した。非劣性マージンはPHQ-9スコアで1.9ポイントとした。行動活性化療法の認知行動療法に対する非劣性が示された 2012年9月26日~2014年4月3日にかけて、BA群に221例(50%)、CBT群に219例(50%)を無作為に割り付けた。mITT集団(主要アウトカム)評価が可能だったのは、BA群175例(79%)に対してCBT群189例(86%)だった。PP集団はそれぞれ135例(61%)に対して151例(69%)だった。 結果、行動活性化療法の認知行動療法に対する非劣性が示された。mITT解析でのPHQ-9スコアはCBT群8.4(SD 7.5)ポイント、BA群8.4(SD 7.0)ポイント、平均差0.1ポイント(95%信頼区間[CI]:-1.3~1.5、p=0.89)だった。PP解析では、CBT群7.9(SD 7.3)ポイント、BA群7.8(SD 6.5)ポイント、平均差0.0ポイント(95%CI:-1.5~1.6、p=0.99)だった。 試験に関連しない死亡が2例(1%)(多剤毒性によるBA群1例[1%]、がんによるCBT群1例[1%])、うつ病関連の治療に関連していない重篤有害事象15件(BA群3件、CBT群12件)が報告された。15件は、BA群の被験者3例(2%)(過剰摂取2例[1%]、自傷行為1例[1%])、およびCBT群8例(4%)(過剰摂取7例[4%]、自傷行為1例[1%])で発生したものだった。

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うつ病患者に対する継続ECTの新たな戦略

 米国・マウントサイナイ医科大学のCharles H Kellner氏らは、うつ病高齢者に対する寛解延長を評価したthe Prolonging Remission in Depressed Elderly(PRIDE)研究のフェーズ2において、フェーズ1でECT成功後のうつ病高齢患者を対象として継続ECTと薬物療法併用の有効性と忍容性を、薬物療法単独と比較し、評価した。The American journal of psychiatry誌オンライン版2016年7月15日号の報告。 PRIDEは、2相マルチサイト研究である。フェーズ1は、右片側性刺激でのultrabrief Pulse ECTとベンラファキシン増強の急速コースであった。フェーズ2では、薬物治療単独群(ベンラファキシンとリチウムを24週間)とECTに薬物治療併用群(4連続ECTを1ヵ月以上、必要に応じて追加、アルゴリズムベースの長期的ECT [STABLE] アルゴリズム、ベンラファキシンとリチウムを継続)の2つの無作為化治療群を比較した。intention-to-treat集団は、フェーズ1における寛解例120例を含んでいた。有効性の主要評価項目は、24項目ハミルトンうつ病評価尺度スコア(HAM-D)とし、副次的有効性評価は、臨床全般印象・重症度スコア(CGI-S)とした。ほかで報告された神経認知パフォーマンスにより測定された忍容性は、MMSEのような包括的認知機能尺度である大規模試験バッテリーを用いて評価した。有効性や包括的認知機能アウトカムをECTと薬物療法併用群と薬物治療単独群を比較するため、長期混合効果反復測定モデルを使用した。 主な結果は以下のとおり。・24週時点で、ECTと薬物療法併用群は、薬物療法単独群よりも統計学的に有意に低いHAM-Dスコアを示した。・試験終了時点での調整平均HAM-Dスコアの差は4.2(95%CI:1.6~6.9)であった。・ECTと薬物療法併用群では、薬物療法単独と比較し、CGI-Sで「まったく病気ではない」と評価された患者が有意に多かった。・MMSEスコアは、両群間に統計学的に有意な差は認められなかった。・追加ECT後の寛解は、多くの患者の気分改善を維持するうえで有益であった。関連医療ニュース うつ病へのECT、ケタミン併用の検討が進行 精神疾患患者に対するECT後の転帰を予測することは可能か 日本人治療抵抗性うつ病患者へのCBT併用試験とは:FLATT Project

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向精神薬継続のカギは「薬への不安と期待のバランス整調」にあり

 精神疾患における薬物療法で課題となるのが、抗うつ薬のアドヒアランス低下にどう対処するかであり、医療者が少なからず頭を悩ませるところである。先月、日本精神神経学会が都内で開いたプレスセミナーにおいて、向精神薬の現状と課題をテーマに専門医3氏が講演を行った。本稿では、菊地 俊暁氏(杏林大学神経科学教室)による講演「薬物療法にまつわる患者の気持ち~患者が抱く期待と不安~」を取り上げる。期待と不安に揺れる患者の心理 精神疾患に対する薬物療法は、目に見える形で効果を実感しづらい。だからこそ患者は薬に対する期待と不安がない交ぜになるのだ、と菊地氏は語る。症状が良くなったことで服薬を中止するのならばやむを得ないが、実際にはそうではない理由で中止するケースが多いのだという。2009年の国内研究によると、初診のうつ病患者367人のアドヒアランスを追跡したところ、抗うつ薬を服用して6ヵ月の時点で、約5~6割の患者は、治療途中にもかかわらず服薬を中止していることがわかった。 なぜ服薬をやめてしまうのか。菊地氏はフィンランドの研究データ(2005年)を引いて説明する。それによると、抗うつ薬のアドヒアランス低下の理由として最も多かったのが「薬物依存への恐怖心」(43%)であり、次いで「副作用への恐怖心」(41%)が多くを占めた。アドヒアランス低下の3因子 さらに別の研究データによると、アドヒアランス低下の理由には、大きく3つの因子が考えられるという。すなわち、(1)病気の否定(病識の欠如、疾病の否認、自責・自己否定)、(2)治療継続の負担(服薬習慣やモチベーション維持、服薬スケジュールの順守、副作用や治療コスト、周囲の援助の欠如など)、(3)治療への不安(依存や副作用・治療効果への不安、家族の否定的な捉え方、不調な患者-医師関係)、である。なかでも、治療への不安の背景には、服薬をめぐる医師と患者のコミュニケーションのずれがある。医師と患者のコミュニケーションは、アドヒアランスを大きく左右するカギとなっているが、「医師が思うほど患者には説明が十分に伝わっていない」という認識のずれは、アドヒアランス低下の見過ごせない要因であるという。 JAMA 誌2002年9月号に掲載された論文によると、うつ病患者538人とその担当医師に対する調査で、72%の担当医師が「服薬が少なくとも6ヵ月以上は必要であることをその都度説明している」と報告しているのに対し、「医師からそのように説明を受けた」と認識している患者は34%(137人)にとどまり、56%(228人)については「何も説明を受けていない」と答えている。この認識のずれが、適切なコミュニケーションにより是正されれば、患者の不安軽減につながり、ひいては治療継続につながるため非常に重要なポイントである。プラセボにも“一定の効果”あり 一方で、薬に対する患者の期待が大きいことも事実である。菊地氏は、過去の臨床試験からみる薬の治療効果について、興味深いデータを紹介した。それによると、抗うつ薬服用群とプラセボ服用群で比較すると、治療開始から40日経過後、抗うつ薬服用群では約8割で治療効果がみられ、プラセボ服用群においても約6割で好転反応がみられたという。この結果からわかることは、うつ病治療の臨床では、治療において薬の効果とそれ以外の効果が少なからずあるということである。また、このプラセボ効果は、薬物療法のみならず精神療法でも期待できるのだという。 菊地氏は、「医療者は、患者が抱える不安と期待のバランスをいかに整えていくかが非常に重要。適切なコミュニケーションにより不安を和らげ、期待を適切な状態に保つことが、アドヒアランスの向上および治療継続のカギになる」と述べた。

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第32回 精神科領域の巡回看視義務の範囲は?

■今回のテーマのポイント1.精神科疾患で1番訴訟が多いのは統合失調症、次いでうつ病であり、ともに約1/3を占めている2.統合失調症に関する訴訟では、巡回・看視義務が主として争われている3.統合失調に関する訴訟は、器質的疾患に関する訴訟と比し、原告勝訴率が低いことが特徴である■事件のサマリ原告患者Xの遺族被告Y病院争点不当拘束、診療の不措置、注意義務違反などによる死亡の損害賠償責任結果原告敗訴事件の概要36歳女性(X)。平成7年5月頃より、幻聴、独語、空笑などが出現したため、Y病院に入院し、以後も、情動不安定で興奮状態になることがあり、平成13年までの間に計6回入院して治療を受けていました。平成15年10月14日、被告病院を受診した際、急に暴れだして錯乱状態に陥ったことから、医療保護入院となり、保護室において身体拘束を実施されて治療を受けることとなりました。Xは点滴加療を受けていたものの、状態は不安定で、興奮も見られたことから、Xに対する身体拘束は継続されていました。身体拘束中、Xに対しては、看護師による約30分おきの巡回が行われていました。同月26日午前1時30分ころに行われた巡回時には、特に異常は認められなかったのですが、午前1時52分ころに看護師が巡回した際、Xは心肺停止の状態で発見されました。直ちに蘇生措置がとられ、救急病院への転送がなされましたが、結局、1度も心拍が再開することなく、午前2時55分に死亡が確認されました。これに対しXの遺族は、不必要な身体拘束をしたこと、肺動脈血栓塞栓症に対する予防措置をとるべきであったこと、および、巡回観察義務違反などを理由にY病院に対し、8,425万円の損害賠償請求をしました。事件の判決「約30分おきに臨床的観察等を実施すべき義務の違反」について原告らは、被告病院の担当医師又は担当看護師において、Xに対し、約30分おきに臨床的観察等をすべき義務があったのに、これを怠り、25日午後8時ころのA医師による回診以降、臨床的観察を実施しなかった旨主張する。しかし、上記認定事実によれば、本件において、上記回診以降も約30分おきに臨床的観察は実施され、26日の午前0時30分ころ、午前1時ころ及び午前1時30分ころの観察では異常は発見されず、午前1時52分ころの観察で異常が発見されたと認められるから、約30分おきの臨床的観察が法的に義務づけられるとしても、被告病院の担当の医師又は看護師においてその義務に違反したとはいえない。なお、Xは呼吸停止状態で発見されたこと、別紙知見によれば、呼吸停止後に人工呼吸を開始した時間が2分後だと約90パーセントの救命率があるが、3分後だと75パーセント、5分後だと25パーセント、8分後にはほとんどゼロとなるとされていることを踏まえると、本件において30分おきの観察によってXの異常を救命可能な段階で発見できたと認めるに足りる証拠はないというべきであり、そうすると、30分おきの観察とXの救命との間に相当因果関係を認めることはできない。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(東京地判平成18年8月31日)ポイント解説■精神科疾患の訴訟の現状今回は精神科疾患です。精神科疾患で最も訴訟が多いのは、統合失調症、次いでうつ病となっており、2疾患ともに約1/3を占めています。また、その後は境界性人格障害、アルコール依存症などと続いています(表1)。画像を拡大する精神科疾患に関する訴訟の特徴として、患者が疾患により希死念慮や自殺企図を抱き、その結果、入院・外来治療中に自殺したといったケースが多く見られること、そして、平均年齢が若いことから請求額および認容額が高額となることが挙げられます。その一方で、被害妄想や好訴妄想といった疾患自身の症状から訴訟に到ることがあるため、代理人を介さない本人訴訟の割合が高く、その結果、原告勝訴率が低くなっています(表2)。画像を拡大する■統合失調症に関する訴訟統合失調症に関する訴訟において最も多く争点となるのは、巡回・看視義務であり、次いで、薬剤の説明義務、救命措置、救急搬送と続いています(表3)。統合失調症に関する訴訟では、その多くで入院患者が自殺ないし突然死したことを受けて生じているため、これらの争点が多くなっているのです。画像を拡大するしかし、巡回監視義務違反が争われた11事例中、義務違反が認められた事例は3件ありますが、平成14年以降は、1度も巡回看視義務違反は認められていません。それは、そもそも本判決において示されているように、いくら定期的に巡回看視を行ったとしても、それによって自殺や突然死を回避することができないためです。巡回看視義務が争われる類型の1つに「転倒、転落」がありますが、転倒、転落に関する判決においても、「過失があると認められるためには、過失として主張される行為を怠らねば結果を回避することができた可能性(結果回避可能性)が認められることが必要であるところ、転倒はその性質上突発的に発生するものであり、転倒のおそれのある者に常時付き添う以外にこれを防ぐことはできないことからすると、被控訴人の動静を把握できないという上記職員らの行為がなければ本件事故を回避できたものと認めることはできない。(中略)…よって、職員らに、被控訴人の動静の把握を怠ったことを内容とする過失があったということはできない」(福岡高判平成24年12月18日)と本判決と同様の論理構成によって棄却する判断がなされています。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)東京地判平成18年8月31日福岡高判平成24年12月18日:この判例については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。

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錠剤埋め込み型服薬管理システムは、安全なのか

 精神疾患患者に対する非定型抗精神病薬アリピプラゾールのアドヒアランスを測定、記録するため、デジタル医療システム(DMS)が開発された。DMSは、錠剤に埋め込まれた摂取可能なセンサ、ウェアラブルセンサ、安全なモバイルとクラウドベースのアプリケーションの3つのコンポーネントで構成されている。技術開発を導くためのマルチプルサブスタディにおけるDMSの技術的性能や安全性を急速に評価するため、米国の大塚ファーマシューティカル D&CのDeborah Profit氏らは、umbrella type study protocolを行った。The Journal of clinical psychiatry誌オンライン版2016年7月5日号の報告。 2つの連続したサブスタディに、30人(2014年3~4月)と29人(2015年2~3月)の健康成人ボランティアが登録され、DMSによる摂取可能なセンサの検出精度、経口摂取とウェアラブルセンサやクラウドサーバによる摂取検出時間を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1件目のサブスタディで、ウェアラブルセンサとモバイルアプリケーションの初期バージョンを使用し、改善のための領域を特定した。・2件目のサブスタディで、コンポーネントのアップデートバージョンをテストし、全体の摂取検出率96.6%を達成した。・摂取検出時間の伝達平均待ち時間は、摂取からウェアラブルセンサ検出まで1.1~1.3分、ウェアラブルセンサ検出からサーバー検出まで6.2~10.3分であった。・伝達の半分は2分以内に完了し、90%が摂取後30分以内にスマートフォンに登録された。・重篤な有害事象、中止、臨床的に重要な検査値異常/バイタルサインの結果は報告されなかった。 結果を踏まえ、著者らは「DMSは、スマートフォンアプリケーションのバージョンを変更して実装し、ウェアラブルセンサは、高精度かつ許容可能な時間で錠剤の摂取を検知、報告する技術がある」とまとめている。関連医療ニュース 抗精神病薬の種類や剤形はアドヒアランスに影響するのか ドパミンD2受容体占有率が服薬に影響?:慶應義塾大学 アリピプラゾール持続性注射剤の評価は:東京女子医大

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抗精神病薬誘発性傾眠、薬剤間の違いは

 傾眠は、抗精神病薬の一般的な副作用の1つである。中国・Shanghai Hongkou District Mental Health CenterのFang Fang氏らは、統合失調症、躁病、双極性うつ病、双極性障害に対し抗精神病薬を処方された成人患者を対象としたプラセボまたは実薬対照無作為化二重盲検試験についてMEDLINE検索を行い、傾眠の副作用発現率を評価した。CNS drugs誌オンライン版2016年7月2日号の報告。 元文献より、傾眠の発現率を抽出し、精神状態別に各抗精神病薬の投与量に基づきプールした。その後、絶対リスクの増加(ARI)、抗精神病薬の相対的なNNHを推定し、精神状態別にプラセボまたは実薬(対照薬)との比較を行った。 主な結果は以下のとおり。●急性の統合失調症、双極性躁病、双極性うつ病における傾眠のARIは、以下に分類できた。・重度:クロザピン・中等度:オランザピン、ペルフェナジン、クエチアピン、リスペリドン、ziprasidone・軽度:アリピプラゾール、アセナピン、ハロペリドール、ルラシドン、パリペリドン、cariprazine●ブロナンセリン、brexpiprazole、クロルプロマジン、iloperidone、sertindole、ゾテピンによる傾眠リスクは、今後の調査が必要である。●傾眠の発現率は、いくつかの抗精神病薬において用量および投与期間と正の相関が認められた。●抗精神病薬自体を含む多くの要因(傾眠を測定する方法、患者集団、研究デザイン、投与スケジュール)が、抗精神病薬誘発性傾眠の発現率に影響を与える可能性がある。●抗精神病薬誘発性傾眠のメカニズムには、複数の要因がある可能性があり、ヒスタミン1受容体、α1受容体の遮断が重要な役割を担っていると考えられる。●抗精神病薬誘発性傾眠の管理のために、以下を行う必要がある。・睡眠衛生教育を行う・傾眠リスクの低い抗精神病薬を選択する・精神医学的診断に基づき低用量から開始し、ゆっくりと増量する・必要な場合、投与量を調整する・傾眠が起きやすい薬剤の併用を最小限とする●ほとんどの場合、傾眠は軽度~中等度であるため、抗精神病薬を中止する前に最低でも4週間は継続することが合理的である。関連医療ニュース リスペリドン誘発性高プロラクチン血症への補助療法 抗精神病薬誘発性持続勃起症への対処は オランザピン誘発性体重増加を事前に予測するには:新潟大学

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LAIを適切に使用するための5つのポイント

 最近のパリペリドンパルミチン酸エステルで治療された患者における心臓突然死(SCD)は、長時間作用型注射用抗精神病薬(LAI)の使用について議論を引き起こした。しかし、LAIとSCDとの関連は、十分に研究されていない。いしい記念病院の長嶺 敬彦氏は、LAIを適切に使用するために、LAIの市販直後調査結果のレビューを行った。International Medical Journal誌2016年6月号の報告。 LAIに関する市販直後調査の結果を確認し、D2受容体占有率を推定した。主な結果は以下のとおり。・2つの所見が確認された。 1)身体的リスクを有する患者へのLAI投与は、SCDを増加させる可能性が高い。 2)パリペリドンパルミチン酸エステルで治療された患者における4例のSCDは、心室性不整脈に起因することが疑われる。・パリペリドンパルミチン酸エステル150mg単回投与による推定D2受容体占有率は80%以上であった。・症状が不安定な患者に対しより高用量で投与した場合、重篤な身体的合併症のない患者でも、パリペリドンパルミチン酸エステルは、心室性不整脈のリスクを増加させる可能性がある。 結果を踏まえ著者は、臨床診療では以下の5点に注意し、LAIを使用することが重要であるとしている。 1)身体的合併症を有する患者では、非常に慎重に使用すること。 2)不必要な高用量での使用は避け、多剤併用患者に対しては非常に慎重に使用すること。 3)急性精神症状を有する患者へのLAI使用は避けること。 4)代謝機能不全や心血管疾患リスクの低い患者にLAIを選択すること。 5)定期的に体調をモニタリングし、ライフスタイルを向上させること。関連医療ニュース パリペリドン持効性注射剤、国内市販後の死亡例分析結果 アリピプラゾール持続性注射剤を使いこなすために 2つの月1回抗精神病薬持効性注射剤、有用性の違いは

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心不全に合併する「うつ」に抗うつ薬SSRIは効くのか?(解説:絹川 弘一郎 氏)-571

コメント対象論文Angermann CE, et al. JAMA. 2016;315:2683-2693. MOOD-HFは、うつを合併する慢性心不全患者(左室駆出率<45%)における選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitors:SSRIs)、escitalopramの有効性・安全性を検証した、プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験である。これまで、うつ合併の慢性心不全患者に対するSSRIの効果を調べた研究は SADHART-CHFのみで、この試験ではセルトラリンのうつ症状改善効果は示されなかった。また、治療期間が12週間と短期であった。MOOD-HFは、うつを合併する心不全患者におけるSSRIの長期効果を検証したという点で新規性があり、結果が注目されていた研究である。 MOOD-HFの分析対象者は372例、escitalopram群およびプラセボ群の治療期間(中央値)はいずれも18ヵ月であった。両群間で主要評価項目の「死亡および入院」および副次評価項目の「うつ症状」に有意差は認められず、安全性を評価した指標についても差はなかった。本結果はSADHART-CHFの結果と一致する。 サブ解析では、プラセボに比して、escitalopramがうつ症状および主要評価項目であった「死亡・入院」を増加させる可能性が示唆された。さらに、高齢患者や重症な心不全患者・重度のうつ症状を有する患者・認知障害を有する患者では、escitalopramによって全死亡・入院のリスクが高まる傾向が示唆された。これらは、大変興味深い結果である。 海外と同様に、本邦のうつ合併の慢性心不全患者は少なくなく、心不全入院および死亡リスクも高い。また、うつを合併する患者では、服薬などのセルフケアのアドヒアランスが低いことがわかっている。このような結果を鑑みれば、うつ病を合併する心不全患者、とくに高齢患者や重度のうつ症状を有する患者、認知障害を有する患者に対しては、SSRIを用いた治療ではなく、カウンセリングやセルフケア支援、運動療法、認知行動療法、家族サポートなどを効果的に組み合わせたケア提供が有効であるかもしれない。一方で、心不全が重症であるほど、うつ症状の頻度が高くなることもわかっている。それゆえ、ケアのみならずエビデンスの確立された心不全治療薬の最適化は、うつ症状改善のためにも不可欠であろう。 言い換えると、心不全に合併する「うつ」はうつ病のそれと似て非なるもので、実は心不全の一症状である可能性が高い。

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自殺予防の介入効果はどの程度あるのか

 多くの国において、最新で高品質なエビデンスを有する自殺予防戦略の開発が必要とされている。米国・コロンビア大学のGil Zalsman氏らは、2005年以降の自殺予防介入の有効性をアップデートした。The Lancet. Psychiatry誌2016年7月号の報告。 2005年1月1日~2014年12月31日に発表された研究を、自殺予防に関連する複数の用語を使用してPubMed、Cochrane Libraryより検索を行った。著者らは、公共および医師の教育、メディア戦略、スクリーニング、自殺手段へのアクセス制限、治療、インターネットまたはホットラインによるサポートの7つの介入について評価した。データより、自殺行動(自殺、自殺企図、自殺念慮)などの関心のある主要アウトカムと中間または副次的アウトカム(治療検討、個人リスクの同定、抗うつ薬の処方や使用率、専門医への紹介)を抽出した。13の欧州諸国の自殺予防の専門家18人により、文献をレビューし、オックスフォード基準を用いて、エビデンスの質を評価した。集団の異質性および方法論のため、本分析においてはメタ分析は許容されず、ナラティブ分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・1,797報の研究が抽出された。そのうち、システマティックレビュー23報、メタアナリシス12報、無作為化比較試験(RCT)40報、コホート研究67報、環境調査または集団ベース調査22報が含まれた。・自殺予防のための、致死的な自殺手段へのアクセス制限は、2005年以降強化されていた。とくに、鎮痛薬の制御に関しては43%の減少、飛び降り自殺のホットスポットは86%(79%~91%)減少していた。・学校ベースの認識プログラムは、自殺企図(OR:0.45、95%CI:0.24~0.85、p=0.014)、自殺念慮(OR:0.5、95%CI:0.27~0.92、p=0.025)を低減させることが示唆された。・クロザピンとリチウムの抗自殺効果が認められているが、これまで考えられていたよりもその効果は低い可能性がある。・うつ病に対する効果的な薬理学的および心理的な治療は、自殺予防に重要である。・プライマリケア、一般的な公共教育、メディアガイドラインにおけるスクリーニングの自殺予防に対する効果を評価するためのエビデンスは不十分であった。・ゲートキーパーのトレーニング、医師の教育、インターネットおよびヘルプラインサポートを含む他のアプローチについては、さらなる調査が必要とされる。・予防的介入の評価において、RCTの不足が主要な制限因子であった。 結果を踏まえ、著者らは「効果的な自殺予防の取り組みの探求は、単一の戦略では明らかにすることが難しい。個人レベルと集団レベルでの科学的根拠に基づいた戦略の組み合わせは、しっかりとした研究デザインで評価すべきである」としている。関連医療ニュース 自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か 自殺と不眠は関連があるのか 自殺リスクの危険因子の検証、年齢別のうつ症状との関係

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抗精神病薬の過量投与は減少しているのか

 薬物中毒の罹患率や死亡率は、30年間減少している。これは、より安全な薬が開発され、過量投与に対するより良いアウトカムが得られたことによる。オーストラリア・Calvary Mater NewcastleのIngrid Berling氏らは、26年間にわたり抗精神病薬の処方変更と過量投与の変化との関連を検討した。British journal of clinical pharmacology誌2016年7月号の報告。 1987~2012年のtertiary referral toxicology unitが発表したすべての抗精神病薬中毒を検討した。人口統計、薬物摂取情報、臨床効果、合併症、治療に関するデータをプロスペクティブに収集した。オーストラリアにおける抗精神病薬の使用率は、1990~2011年のオーストラリア政府出版物から収集し、郵便番号で過量投与入院とリンクさせた。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の過量投与は3,180件(第1世代抗精神病薬1,235件、第2世代[非定型]抗精神病薬1,695件、リチウム250件)であった。・26年間で、抗精神病薬の過量投与は1.8倍に増加した。第1世代抗精神病薬はピーク時より5分の1に減少し(80件/年~16件/年)、第2世代抗精神病薬は2倍に増加した(160件/年)。そのうち、オランザピンとクエチアピンが78%を占めていた。・すべての抗精神病薬過量投与において、ICU滞在時間中央値18.6時間、ICU入院15.7%、人工呼吸10.4%、院内死亡0.13%であり、第1世代、第2世代抗精神病薬ともに同様であった。・同期間の抗精神病薬処方は2.3倍に増加していた。第1世代抗精神病薬が減少する一方、第2世代抗精神病薬は急激に上昇した(主にオランザピン、クエチアピン、リスペリドンで79%)。 結果を踏まえ、著者らは「26年にわたる抗精神病薬処方の増加は、過量投与の増加と関連付けられる。抗精神病薬の種類は変更されているが、過量投与は増加しており、罹患率や死亡率は同じままである」としている。関連医療ニュース 抗精神病薬の併用療法、有害事象を解析 抗精神病薬多剤併用による代謝関連への影響は 統合失調症入院高齢患者、アジアでの多剤併用率は50%以上

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てんかん患者の性的問題の現状

 てんかん患者において、性機能不全は重大な問題であるが、しばしば軽視されている。ノルウェー・オスロ大学病院のOliver J Henning氏らは、てんかん患者の性的問題の有病率やタイプを調査し、一般集団の代表的なサンプルより得られた同様のデータとの比較を行った。Epilepsy & behavior誌オンライン版2016年6月29日号の報告。 対象は、ノルウェーてんかん国立センターの成人てんかん入院および外来患者227例。そのうち171例が、神経科医からのてんかんと性的特質に関するアンケート調査に回答した(回答率:75.3%)。ノルウェーの成人594例から得た同様なアンケート結果データと比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・てんかん患者における性的問題の有病率は、対照群と比較し有意に高かった(女性:75.3%対12.0%、男性:63.3%対9.6%)。・患者の30%超で報告された最も一般的な問題は、性欲の減少、オーガズムの問題、勃起の問題、膣の乾燥であった。・患者からは、性機能に関する多くの不満足感が報告された。・有意に多い性的問題は、QOLが低下した男女両方とうつ症状のある女性で認められた。・性的問題と、てんかん発症年齢、てんかんのタイプ、酵素誘導作用のある抗てんかん薬の使用との有意な関連は認められなかった。・性的初体験の年齢は、てんかん患者と一般集団で差はなかったが、てんかん男性は直近12ヵ月間でパートナーの人数がより少なかった。また、てんかん女性は、性交頻度が低かった。 著者らは「結論として、ノルウェーのてんかん患者の性的な問題は、一般集団よりも有意に多かった。てんかんタイプや治療から、特定の要因を同定することはできず、器質的および心理社会的な要因を含む複数の要因が関連している可能性が高いと考えられる」としている。関連医療ニュース てんかん患者の携帯電話使用、発作への影響は てんかん重積状態に対するアプローチは うつ病と性行為感染症リスク、その関連を検証

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統合失調症患者、そもそもプロラクチン値が高い

 ドパミン受容体遮断の副作用である高プロラクチン血症は、統合失調症や他の精神病性障害患者において一般的であり、無月経、乳汁漏出、性腺機能低下、低受胎、骨粗鬆症につながる可能性がある。ギリシャ・イオアニナ大学のPetros Petrikis氏らは、統合失調症および他の精神病性患者において、抗精神病薬治療開始前に高プロラクチン血症が発症するかを検討した。International journal of psychiatry in clinical practice誌2016年9月号(オンライン版2016年6月23日号)の報告。 対象は、新規に統合失調症および他の精神病性障害と診断された薬物治療未実施の患者群40例と年齢性別をマッチさせた健康成人群40例。血清プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、トリヨードサイロニン(T3)フリーテトラヨードサイロニン(FT4)、コルチゾールレベルが測定された。 主な結果は以下のとおり。・中央プロラクチン値は、患者群で12.5ng/ml(範囲:2~38 ng/ml)、健康成人群で8.6ng/ml(範囲:4~17.6 ng/ml)であった(p=0.011)。・患者群(平均:1.08ng/ml、SD:0.16)は、健康成人群(平均:1.18ng/ml、SD:0.18)と比較しT3レベルが低かった(p=0.008)。・血清TSH、FT4、コルチゾールレベルは、両群間で差はなかった。・重回帰分析によると、血清プロラクチン値の差は、甲状腺機能(TSH、FT4、T3)や血清コルチゾールレベルと関連していないことが明らかとなった。 ・新規に統合失調症および他の精神病性障害と診断された薬物治療未実施の患者において、健康成人と比較し、抗精神病薬開始前でも高血清プロラクチンレベルが認められた。関連医療ニュース 各種非定型抗精神病薬、プロラクチンへの影響を比較 抗精神病薬ナイーブ統合失調症患者におけるプロラクチンレベルは リスペリドン誘発性高プロラクチン血症への補助療法

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非定型抗精神病薬は治療中止率を改善させているのか

 統合失調症患者における抗精神病薬単独療法を中止するまでの期間について、イタリア・ミラノ大学のMassimiliano Buoli氏らは、36ヵ月のフォローアップ研究により比較検討を行った。Human psychopharmacology誌2016年7月号(オンライン版2016年6月13日号)の報告。 対象は、ミラノ大学とオランダ・ユトレヒト大学の精神科外来において抗精神病薬単独療法でフォローアップされた統合失調症患者220例。36ヵ月のフォローアップ期間の生存分析(Kaplan-Meier)は、単一治療群と比較した。エンドポイントは、再発、副作用、ノンコンプライアンスによる治療中止とした。 主な結果は以下のとおり。・ハロペリドール治療群は、他の治療群と比較し中止率が高かった(リスペリドン:p<0.001、オランザピン:p<0.001、クエチアピン:p=0.002、クロザピン:p<0.001、アリピプラゾール:p=0.002)。・有効性の欠如による再発が、オランザピン群よりもハロペリドール群で、より高頻度な理由であった(p<0.05)。・錐体外路系副作用(EPS)は、オランザピン群よりもハロペリドール群で、より高頻度であった(p<0.05)。・オランザピン群は、他の治療群よりも体重増加がより高頻度であったが、統計学的な有意差は認められなかった。 著者らは「非定型抗精神病薬治療群は、ハロペリドール治療群よりも、より長く薬物療法が継続できると思われる。また、非定型抗精神病薬は、ハロペリドールよりも再発に対し保護的であると考えられる。しかし、これらの結果は、潜在的な交絡因子に照らし合わせて慎重に解釈すべきである」としている。関連医療ニュース 抗精神病薬の変更は何週目が適切か 統合失調症治療、安定期の治療継続は妥当か 抗精神病薬の単剤化は望ましいが、難しい

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