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妊娠中の抗うつ薬使用パターンに関するコホート研究

 フランス・Bordeaux Population Health Research CenterのAnne Benard-Laribiere氏らは、妊娠中の抗うつ薬使用パターンについて調査を行った。British journal of clinical pharmacology誌オンライン版2018年4月17日号の報告。 フランス人口の約99%が加入している医療保険制度のデータを用いて、2014年に妊娠した女性を対象としたコホート研究を実施した。妊娠前または妊娠中に開始した抗うつ薬使用を評価するため、抗うつ薬治療の変化に関して、妊娠中の抗うつ薬の併用、切り替え、中止、再開について検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・コホート研究に含まれた妊娠件数は76万6,508件(75万5,529例)であった。・妊娠中の抗うつ薬使用は、1,000件当たり25.7件(95%CI:25.3~26.0)であった。・新規抗うつ薬使用は、1,000件当たり3.9件(95%CI:3.7~4.0)であり、最も使用された薬剤は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であった。妊娠第2・3三半期で最も使用された薬剤は、アミトリプチリン、三環系抗うつ薬であった。・ほとんどの抗うつ薬治療の変化は、妊娠前および妊娠第1三半期に観察された。妊娠1年前に行われていた抗うつ薬治療のうち63%が、受胎前に中止された。受胎後に継続されていた抗うつ薬治療のうち68%が、妊娠第1三半期に中止された。抗うつ薬の切り替えまたは併用は、妊娠前後または妊娠第1三半期に多く行われていた。・最初の抗うつ薬の種類にかかわらず、セルトラリンへの切り替えが最も多かった。・主な併用は、SSRIに加えて、三環系/四環系抗うつ薬、ミルタザピン/ミアンセリンであった。・妊娠中に抗うつ薬治療を中断した妊婦のうち22%は、治療を再開した。■関連記事妊娠中の抗うつ薬治療、注意すべきは妊娠中のSSRI使用、妊婦や胎児への影響は妊娠中、血中濃度変化に注意が必要な抗精神病薬は

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抗うつ薬は長期の体重増リスク/BMJ

 抗うつ薬処方と体重増加の関連を10年間フォローアップした結果、抗うつ薬処方は長期にわたる体重増のリスクと関連している可能性が示された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのRafael Gafoor氏らが、同国のプライマリケア・データベースを利用した住民ベースのコホート研究の結果、明らかにしたもので、BMJ誌2018年5月23日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「抗うつ薬治療の必要性を示す場合は、体重増加の可能性を考慮すべきである」とまとめている。肥満は世界的な課題で、抗うつ薬の使用は広がりつつある。これまで短期試験において、抗うつ薬使用と体重増加の強い関連性が示されているが、個々の抗うつ薬に関する長期的リスクのデータは存在していなかった。英国プライマリケア・データベースで住民コホート研究 研究グループは、英国内にある一般診療所のデータを集めたUK Clinical Practice Research Datalinkの2004~14年のデータを用いて、抗うつ薬処方と体重増加の長期的な関連性を調べた。被験者は、BMIに関する3つ以上の記録があった男性13万6,762例、女性15万7,957例。 主なアウトカムは、抗うつ薬処方、5%以上体重増の発生率、過体重または肥満への移行であった。年齢、性別、うつ病の記録、併存疾患、同時に処方された抗てんかん薬または抗精神病薬、所得レベル、喫煙、食事療法のアドバイスについて補正後のPoissonモデルを用いて、補正後率比を推算し評価した。5%以上の体重増、処方群は非処方群の1.21倍、体重増リスクは6年間以上持続 試験開始年において、抗うつ薬を処方されていたのは、男性1万7,803例(13.0%)、女性3万5,307例(22.4%)で、平均年齢は51.5歳(SD 16.6)であった。 フォローアップ183万6,452人年において、5%以上体重増の新たなエピソード発生率は、抗うつ薬非処方群で8.1/100人年、処方群で11.2/100人年と有意差が認められた(補正後率比:1.21、95%信頼区間[CI]:1.19~1.22、p<0.001)。 体重増のリスクは、フォローアップ中、少なくとも6年間は増大が続いていた。治療2年目に、抗うつ薬治療群で5%以上体重増の新たなエピソードを認める被験者数は、27例(95%CI:25~29)であった。また、試験開始時に正常体重であった被験者で、過体重または肥満に移行した被験者の補正後率比は、1.29(1.25~1.34)、過体重だった被験者が肥満に移行した同率比は、1.29(1.25~1.33)であった。 体重増加との関連について、抗うつ薬のクラス間には大きなばらつきがみられた。 著者は、関連には因果関係がない可能性があり、残余交絡因子が関連の過大評価に寄与している可能性があるとしている。

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普遍性と独自性の調和を目指す精神医学

 2018年6月4日、日本精神神経学会は、「2018年度プレスセミナー」を都内で開催した。セミナーでは、本学会の活動と将来展望、6月21~23日に神戸市で行われる本学会学術総会の概要・注目トピックスをテーマに、2名の演者が講演を行った。ICD-11発表間近 初めに、本学会 理事長の神庭 重信氏(九州大学大学院 医学研究院精神病態医学 教授)が、学会の活動について説明を行った。注目点として、WHOが公表する国際統計分類 第11版(ICD-11)の暫定版が今月下旬に出ることについて、国内における新しい精神科病名の検討結果を発表されている。今月末日までは、学会のホームページ上でパブリックコメントの募集を行っているという。また、わが国を含めた世界13ヵ国による、ICD-11第6章「精神、行動及び神経発達の疾患」の診断ガイドラインの信頼性・有用性の研究についても紹介された。 神庭氏は、日本専門医機構による新しい精神科専門医制度への取り組みとして、2019年4月の研修開始に向けて準備を行っていると説明。同氏は、「患者全体における精神科患者の割合に対して、医師全体における精神科医師の割合が少ない現状である。本学会が開催するサマースクールなどをきっかけに、実際の現場を見て、(専門医を目指す方々に)興味を持ってほしい」と語った。自殺者の半数以上は精神疾患を患っていた? 次に、本学会学術総会 会長の米田 博氏(大阪医科大学医学部 総合医学講座 神経精神医学教室 教授)が、学術総会の概要について説明した。本総会のテーマは、「精神医学・医療の普遍性と独自性―医学・医療の変革の中でー」であり、精神医学・医療は医学医療全般の一分野として重要な役割を担っており、独自の特異的な広がりと深さを併せ持っている、といったメッセージが込められているという。 わが国において、精神疾患を有する患者数の推移は増加傾向が続いており、15年前と比較してほぼ倍に増え、とくにアルツハイマー型認知症と気分障害が大きく増加している1)。また、自殺率については、近年やや減少傾向だが、依然としてOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で高い位置にある2)。海外のデータにおいて、自殺と精神疾患の関係性を調査した結果、自殺した人のうち、気分障害を持つ患者が35.8%、統合失調症は10.6%存在したという報告もされている3)。米田氏は、「時代の変遷により、精神医学・医療の役割も変化している。患者さん個別の症状に合わせた治療をするためにも、われわれは重要な役割を担っている」と述べた。 6月21~23日に開催予定の学術総会では、会長講演、特別講演などに加え、26もの委員会シンポジウムが行われ、その内容は精神科臨床、多剤併用、認知症診療、措置入院、性同一性障害、ガイドラインについてなど多岐にわたる。とくに注目のトピックとして、「精神科一般外来での自殺予防について考える」をテーマとしたものが、会期中2日目の委員会シンポジウムで開催される。「外来通院中の精神疾患患者が自殺し、主治医の責任が問われた事件」の先ごろ出された控訴審判決で、主治医の責任を裁判所が認めたことから、今後の精神科医療において方向を見誤ることが危惧される。そのため、この事件を取り上げ、医師をはじめとする医療者と弁護士などの法律家が、「患者の自殺予防」について議論を行う。 学術総会への参加を通じて、 最新の精神神経学だけでなく、転換点にある精神医学・医療の方向性についても知見を深めることができる。■参考資料1)厚生労働省 第1回これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会 参考資料2)McDaid D, et al. OECD Health Working Papers. 2017;No.97.3)Bertolote JM, et al. World Psychiatry. 2002;1:181-185.■参考公益社団法人 日本精神神経学会第114回 日本精神神経学会学術総会

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アルコール摂取量削減のためのサービングサイズ変更効果

 英国・リバプール大学のInge Kersbergen氏らは、アルコール飲料の標準サービングサイズを減らすことで、自発的なアルコール摂取量が減少するかについて、実験室内(研究1)およびリアルワールド環境下(研究2)にて調査を行った。さらに、英国でアルコール飲料の標準サービングサイズを減らすことによる公衆衛生上のメリットについてモデル化を行った。Addiction誌オンライン版2018年5月14日号の報告。 研究1および研究2は、クラスター無作為化試験として実施された。追加調査として、英国でアルコール飲料の標準サービングサイズを減らす政策が導入された場合、年間の死亡数と入院数がどの程度減少するかを、Sheffield Alcohol Policy Modelを用いて推定した。 研究1では、学生および大学スタッフ114例(平均年齢:24.8歳、女性の割合:74.6%)を対象に、半自然的(semi-naturalistic)実験室で実施した。対象者は、標準サービングサイズまたは25%減らしたサービングサイズによる飲酒セッションにランダムに割り付けられた。 研究2では、地域住民164例(平均年齢:34.9歳、女性の割合:57.3%)を対象に、英国・リバプールのバーで実施した。対象者は、標準サービングサイズまたは28.6~33.3%減らしたサービングサイズで、飲酒提供を受けた。 アウトカムの測定値は、1時間以内(研究1)および3時間以内(研究2)のアルコール摂取量とした。主な予測因子は、サービングサイズ条件とした。 主な結果は以下のとおり。・研究1では、サービングサイズが25%減ると、アルコール摂取量が20.7~22.3%減少した。・研究2では、サービングサイズが28.6~33.3%減ると、アルコール摂取量が32.4~39.6%減少した。・モデリング結果によると、一般的なアルコール飲料のサービングサイズを25%減少させると、年間アルコール関連入院数を4.4~10.5%、年間アルコール関連死亡数を5.6~13.2%減少させる可能性があることが示唆された。 著者らは「英国において、アルコール飲料のサービングサイズを減らすことは、1回の酒席でのアルコール摂取量の減少につながる可能性がある」としている。■関連記事アルコール関連での緊急入院後の自殺リスクに関するコホート研究うつ病とアルコールとの関係:2014年英国調査より認知症発症に対するアルコール使用障害の影響に関するコホート研究

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慢性期統合失調症患者の持効性抗精神病薬による機能改善予測因子

 長時間作用型持効性注射剤(LAI)の抗精神病薬は、経口剤と比較して、服薬アドヒアランスを改善し、入院率を低下させることができる。パリペリドンパルミチン酸(PP)やアリピプラゾール水和物(AOM)のLAI治療は、統合失調症患者の全身機能の改善と関連している。イタリア・ローマ・ラ・サピエンツァ大学のPaolo Girardi氏らは、PP、AOMで治療された慢性期統合失調症および統合失調感情障害患者における良好な全身機能の予測因子について評価を行った。Human psychopharmacology誌オンライン版2018年5月15日号の報告。 統合失調症または統合失調感情障害と診断された143例(男性:97例、女性:46例、平均年齢:38.24歳、SD=12.65)を、PP群またはAOM群の2群に割り付けた。LAI導入前および評価時点において、全身機能、経口剤投与量、経口治療のアドヒアランス、入院回数を評価した。 主な結果は以下のとおり。・全サンプルにおいて、より長いLAI治療時間(p<0.001)、経口剤投与量の減少(p<0.001)、LAI導入前の入院(p=0.002)、より短い罹病期間(p=0.038)は、機能の全体的評定尺度(GAF)スコアを高くすると予測された(R2=0.337)。 著者らは「統合失調症および統合失調感情障害患者の全身機能を改善するためには、AOM、PPによるLAI治療の早期開始および長期使用が重要な役割を果たす可能性がある。罹病期間の短い若年患者に対するAOM治療、再入院リスクのある患者に対するPP治療において、より良い機能改善が認められた」としている。■関連記事LAIを適切に使用するための5つのポイント維持期統合失調症、LAI使用で注意すべきポイント:慶應義塾大統合失調症の短期治療、2つのLAIでみられる違い

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不眠症とアルコール依存との関連

 アルコールを“睡眠補助”として使用した際のリスクを評価するため、米国・ウェイン州立大学のTimothy Roehrs氏らは、睡眠前のエタノールの鎮静・催眠効果での耐性の発現、その後のエタノール用量漸増、気分の変化、エタノール“愛好”について評価を行った。Sleep誌オンライン版2018年5月12日号の報告。 対象は、不眠症以外に関しては医学的および精神医学的に健康であり、アルコール依存および薬物乱用歴のない21~55歳の不眠症患者。試験1において、24例に対し睡眠前にエタノールを0.0、0.3、0.6g/kg(各々8例)投与し、夜間睡眠ポリグラフ(NPSG)を8時間収集した。試験2において、エタノール0.45g/kgまたはプラセボによる6日間の前処置を行った後、睡眠前のエタノールまたはプラセボのどちらを選ぶか、7日以上の選択の夜にわたり評価した。 主な結果は以下のとおり。・エタノール0.6g/kg投与は、総睡眠時間および第2夜の第3~4段階の睡眠を増加させたが、これらの効果は第6夜には失われた(p<0.05)。・6日間のエタノールでの前処置は、プラセボでの前処置と比較し、選択の夜におけるエタノール自己投与が多かった(p<0.03)。 著者らは「本研究は、不眠症患者の“睡眠補助”としてのアルコール使用に伴うリスクを明示する最初の研究である。エタノール投与開始の初期には、NPSGの睡眠および鎮静作用の自己報告が改善したが、第6夜には消失した。耐性については、睡眠前のエタノール自己投与の増加と関連が認められた」としている。■関連記事アルコール依存症患者における不眠症に関するメタ解析うつ病とアルコールとの関係:2014年英国調査よりアルコール依存症治療に期待される抗てんかん薬

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自閉スペクトラム症におけるうつ病や自殺念慮のリスクと保護因子

 自閉スペクトラム症(ASD)患者では、自殺願望や自殺行為のリスクが有意に増加している。ASD患者の社会的困難さは、しばしば社会的隔離につながり、そのことでうつ病リスクを高める可能性があると考えられる。オーストラリア・ラ・トローブ大学のDarren Hedley氏らは、ASD患者の孤独感や社会的支援が、うつ病や自殺念慮に関連する潜在的なリスクおよび保護因子に及ぼす影響について検討を行った。Depression and anxiety誌オンライン版2018年4月16日号の報告。自閉症患者の36%は最近の自殺念慮を報告 対象は、全国調査に参加した14~80歳のASD患者185例(女性:92例)。 主な結果は以下のとおり。・対象の自閉症患者の49%にうつ病が認められ、36%は最近の自殺念慮を報告した。・対象の自閉症患者の約半数を占める女性において、男性よりもうつ病スコアが高かったが、自殺念慮に関しては、男女間で差は認められなかった。・回帰分析では、孤独感、社会的支援の満足度、ASD特性がうつ病スコアの予測因子であった。・社会的支援に対する満足度は、自殺念慮の予測因子とみられたが、うつ病の影響を考慮した後、有意ではなくなった。・パス解析では、ASD特性の重症度がうつ病と独立して関連していることが示唆された。また、うつ病に対する社会的支援数の効果は、孤独感と社会的支援の満足度によりもたらされ、自殺念慮に対する孤独感と社会的支援の満足度は、うつ病によりもたらされることが示唆された。・関連パターンは、男女ともに同様であった。 著者らは「本研究から、ASD患者における孤独感や社会的支援は、うつ病や自殺念慮の保護因子、リスク因子とするモデルを支持する結果が得られた」としている。

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電気痙攣療法によるうつ病患者の脳体積への影響に関するメタ解析

 デンマーク・Mental Health Centre GlostrupのK. Gbyl氏らは、脳構造に対する電気痙攣療法(ECT)の影響に関する文献レビューを行った。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2018年4月29日号の報告。 MRIを用いたECTで治療されたうつ病患者の縦断研究のシステマティック文献レビューおよび海馬体積の対するECTの影響に関するメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・32研究より、患者群467例、対照群285例が抽出された。・MRI研究では、ECTと脳のダメージとの関連を示すエビデンスは見つからなかった。・新しいMRIによる体積測定試験の1つを除き、特定の脳領域(多くの場合、海馬)におけるECT誘発性体積増加は、認められなかった。・海馬体積に対するECTの影響に関するメタ解析では、プールされた効果量は、右海馬でg=0.39(95%CI:0.18~0.61)、左海馬でg=0.31(95%CI:0.09~0.53)であった。・DTI研究では、前頭葉および側頭葉における白質経路の完全性におけるECT誘発性増加が示唆された。・体積増加と治療効果との間の相関結果は、一貫していなかった。 著者らは「MRI研究では、ECTが脳のダメージを引き起こすとの仮説を支持せず、むしろ治療により、前辺縁領域の体積増加を誘発する。今後、これらの体積増加、治療効果、認知的副作用との関連を研究すべきである」としている。■関連記事うつ病患者に対する継続ECTの新たな戦略精神疾患患者に対するECT後の転帰を予測することは可能かうつ病治療に対する、電気けいれん療法 vs 磁気けいれん療法

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統合失調症におけるアドヒアランス不良と医療費との関係

 統合失調症治療における服薬アドヒアランス不良は、重大な問題となっている。アドヒアランス不良が医療費に及ぼす影響を理解することは、治療アドヒアランスが懸念される際に行われる介入の費用対効果を評価するうえで重要である。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMark Pennington氏らは、統合失調症治療における抗精神病薬のアドヒアランス不良が医療費へ与える影響に関して、利用可能な文献による包括的なレビューを行った。PharmacoEconomics誌オンライン版2018年4月26日号の報告。 2018年2月までに報告された、統合失調症患者の抗精神病薬のアドヒアランスと医療費との関連を調査した研究について、複数のデータベース(MEDLINE、Embase、PsycINFO、Health Management Information Consortium)を用いて検索を行った。対象とした研究には、行動介入試験は含まれたが、異なる薬理学的介入の比較試験は除外された。また、対象患者の1/3以上が統合失調症患者であり、医療費が報告された研究についてレビューした。 主な結果は以下のとおり。・28研究、34件の文献が包括基準を満たした。・20研究は、行政データベース(主にメディケイド)の分析を報告していた。・医療費の調査結果は混在していたが、アドヒアランス不良患者における薬剤費の低下は、入院費(薬価が比較的高い)の増加を上回る可能性があることが示唆された。・いくつかの研究において、プロスペクティブコホートデータの分析や、主に欧州におけるアドヒアランスに影響を及ぼす行動介入試験について発表されていた。・調査結果は再び混在していたが、アドヒアランスの向上は、医療費の低下に関連しないことが示唆された。 著者らは「行政データの分析からの推論は、選択バイアスのリスクにより制限される。また、試験からの推論は、小さいサンプルサイズにより制限される。これらの文献から、アドヒアランス不良が医療費を増加させるとの仮説は、一貫して支持されるものではない」としている。■関連記事統合失調症、服薬アドヒアランス研究の課題とは抗精神病薬の種類や剤形はアドヒアランスに影響するのか統合失調症、双極性障害に対する持効性注射剤使用と関連コスト

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統合失調症の超長期的アウトカム

 統合失調症および統合失調症スペクトラム障害の超長期的アウトカムに関する最近のデータについて、チェコ・カレル大学のJan Volavka氏らが検討を行い、治療介入を含むアウトカムに影響を及ぼす要因について調査した。International journal of clinical practice誌オンライン版2018年4月24日号の報告。 2008~17年に発表された、統合失調症または統合失調症スペクトラム障害を対象とし、5年以上のフォローアップ期間を設け、適切なアウトカムの情報を有するプロスペクティブコホート研究を、PubMedおよびScopusデータベースより検索した。参考文献リストおよび著者の参照ライブラリを追加文献に含んだ。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ時に症状寛解を有する患者の割合は、抗精神病薬による計画的な治療の患者で37.5%、未治療患者で16.4%であった。・フォローアップ時の良好なアウトカムは、低用量の抗精神病薬で治療を行っていた患者および薬物治療開始時に薬理学的な治療を行っていなかった患者において観察された。・初回エピソード時の早期発見および集中的な治療とともに、継続的な心理社会的治療、その後の継続的なサポートが、より良いアウトカムと関連していた。 著者らは「統合失調症の長期的アウトカムは、メンタルヘルスケアへのアクセス、精神症状の早期発見、薬理学的治療により、非常に多様であった。最近のデータは、一部の患者における長期的な低用量の抗精神病薬による治療の有効性を裏付けるものであった。初回エピソードの統合失調症患者のうち20%程度は、長期的な抗精神病薬の維持治療を必要としないと考えられる。その割合は、統合失調症スペクトラム障害において、より高い可能性がある。しかし、これらの患者が長期的な治療を必要としない理由は明白ではない。このサブグループを予測する方法は、個々の患者において臨床応用するには、まだ不十分である」としている。■関連記事初回エピソード統合失調症患者における抗精神病薬中止後の長期的な影響統合失調症の維持治療に対するブレクスピプラゾールの長期安全性評価研究安定期統合失調症、抗精神病薬は中止したほうが良いのか

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認知症の薬はいったいいつできるのか? バプティスト史観から(解説:岡村毅氏)-855

本論文はメルク社の研究チームからの直球の論文である。アルツハイマー型認知症の病理の中核にアミロイドがあるが、それをつくる酵素(BACE)の阻害薬を軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の方に投与したが、効果はみられなかったというものだ。21世紀に入りアルツハイマー型認知症に関して、多くの薬がパイプラインに乗ったという報告がなされた。近い将来(つまり2018年の今ごろ?)根本治療薬が開発されるのではと思った方も多かったのでは。しかしここ数年、失敗の報告が相次いでいる。ファイザー社は中枢神経系の開発自体を諦めてしまった。いったいいつできるのか? あるいは、できないのか? 21世紀の前半を生きる私たちの立ち位置を改めて眺めてみよう。(1)アルツハイマー型認知症に関して現在ある薬は、アミロイドの病理とはまったく関係なく、アセチルコリン系を賦活して脳の働きを活発にする対症療法薬である。アミロイド自体に介入する薬は失敗が続いている。(2)しかし国際的な大規模縦断観察研究(ADNI)が明らかにしたように、症状が出た時点ではアミロイドはすでに蓄積している。診断されてからアミロイドに介入しても無意味なのかもしれない。(3)現在、症状はないが、脳内にアミロイドがたまっているプレクリニカル期で研究が行われている。ここでBACE阻害薬やAβ抗体が効果を示す可能性は十分にある。以上はアミロイド中心主義(ベータアミロイド[β-amyloid]からバプティスト[Baptists]などと言われる)史観ともいえるだろう。私は根本治療薬の開発を支持するが、さらに広い視野で眺めてみよう。(A)先進国ではアルツハイマー型認知症の発症率は低下しており、教育年数との関連が示されている。また糖尿病がアルツハイマー型認知症の発症の危険因子であることもわかってきた。公衆衛生的アプローチは効果的だ。(B)レビー小体病、前頭側頭葉変性症の根本治療薬に関しては、まったくめどが立っていない。(C)予防薬の開発も重要だが、それのみが強調されると、すでに認知症と診断された人には救いがない。診断後支援やケアラー支援の重要性がようやく認められつつある。Living well with dementiaは知っておくべき言い回しだろう。(D)認知症を持つ人も、当たり前だが、私たちと同じ人間であり、同じ権利を持つのだから、彼ら自身の選択を尊重しようという考え方もようやく共有されてきた。当事者の発信も増えている。障害の領域でのNothing about us without usに対応。(E)脱施設の流れは加速するが、地縁血縁の弱体化、長寿化(と格差の拡大)、家族形態の変化および独居の増加、プライバシーの保護などは、むしろ地域ケアへの挑戦かもしれない。一方でITやロボットなどが急激に実用化に向かいつつある。21世紀の半ばにはわが国の人口の10%程度が認知症を有する可能性もある。今後数十年、認知症の専門家は嵐のような日々であろう。今回は現在の私たちの立ち位置を備忘録的に記した。知っておいて損はないと思う。

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高齢者の処方見直しで諸リスク低減へ

 2018年5月11日、日本老年医学会は、「高齢者とポリファーマシー」に関するメディアセミナーを都内で開催した。本学会が策定した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を踏まえ、医療現場でポリファーマシー対策に取り組む3人の演者が講演を行った。ポリファーマシーが老年症候群に拍車をかける? はじめに、秋下 雅弘氏(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学 教授)が、ポリファーマシー対策の動向について語った。わが国では6剤以上がポリファーマシーと定義され、薬剤性老年症候群などの原因として懸念されている。老年症候群は、転倒、記憶障害、意欲低下や排泄機能障害など、加齢・疾患によるものも含まれるが、その症状がポリファーマシーにより助長されている可能性を秋下氏は指摘した。 同氏は、「ポリファーマシーは、例えればさまざまなお酒を一度に飲むと悪酔いするようなもので、多剤服用のみを指すのではない。薬を減らす際には生活習慣の是正など、非薬物療法がより重要になる。医師・薬剤師を中心に、医療スタッフが連携する必要がある」と語った。3剤以上の見直しでリスク低減の可能性 次に、溝神 文博氏(国立長寿医療研究センター 薬剤部)が、院内でポリファーマシーを提案する「高齢者薬物療法適正化チーム」の活動について紹介した。チームは、内科・循環器内科の医師、薬剤師を中心に構成され、週1回カンファレンスを実施している。 チーム介入症例の解析では、薬物有害事象などが疑われる58症例に対し、平均4剤の見直し提案を行った。対象薬は降圧薬が最も多く、次いで消化器薬、糖尿病薬、スタチン系が多かった。結果、3剤以上削減した群で薬物有害事象の発生頻度が53%から9%と7日間で有意に減少し、60日後まで維持されていた。一方で、3剤未満の削減だと有意差がなく、60日後には再燃する傾向がみられた。 溝神氏は、「チーム結成によって意識変化が起こり、慎重に処方を行う医師が増加した。しかし、服薬環境も適正化されないと十分ではない。患者・家族への説明でポリファーマシーへの正しい理解を促し、地域レベルで対策する必要がある」と語った。短時間の睡眠が不眠症とは限らない? 最後に、水上 勝義氏(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授)が、向精神薬の適正使用について説明した。回復可能な認知症の原因として、1位がうつ病、2位が薬剤性という報告1)を挙げ、原則として非薬物療法を優先し、向精神薬は慎重に使用するよう呼びかけた。 高齢者が訴える不眠症に対し、水上氏は、「高齢になると深睡眠が減る傾向にある。しかし、日中の生活に支障がなければ、睡眠時間が短くても不眠症にならない」と指摘した。また、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)などに使用される抗精神病薬には、新規投与後6ヵ月まで死亡リスクが上昇するという報告2)があるという。同氏は、漢方薬の過剰投与にも言及し、「十分な治療効果が認められた患者では減量・中止を検討すべきだ」と語った。 さらに、スルピリドによる錐体外路症状、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によるアパシーの発現などの副作用を例に挙げ、「頻用される薬でも、高齢者には注意が必要。薬剤によって諸症状が出ている可能性も考慮すべき」と締めた。 本学会は、エビデンスが少ない高齢者医療における課題などに対し、具体的にどのような対応をするのか明確にするため、「健康長寿達成を支える老年医学推進5か年計画」を策定した。2018年6月、学術集会で発表予定。■参考文献1)Weytingh MD, et al. J Neurol. 1995;242:466-471.2)Arai H, et al. Alzheimers Dement. 2016;12:823-830.■参考一般社団法人 日本老年医学会第60回日本老年医学会学術集会■関連記事身体能力低下の悪循環を断つ診療

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うつ病に関する理解とスティグマの調査

 うつ病による負荷は、世論、スティグマ、そしてその結果として生じる行動から影響を受ける。うつ病患者やその周囲に関する知識の欠如、誤解、スティグマは、彼らのメンタルヘルスを改善するうえで障壁となっている。筑波大学の横谷 省治氏らは、うつ病に関する世論、とくに認知、治療法、スティグマについて調査を行った。Journal of clinical medicine research誌2018年3月号の報告。 年1回の健康診断の受診者を対象に、自己管理アンケートを配布し、次の4つの短い設問への合致を調査した。(1)「明るく行動する人では、うつ病を心配する必要はない」(うつ病患者の行動に関する誤解)、(2)「うつ病の治療に休息は重要である」(休息の必要性に関する理解)、(3)「うつ病治療に医療は有効である」(薬物療法の有効性に関する理解)、(4)「弱い人格がうつ病を引き起こす」(うつ病の原因に関するスティグマ)。そして、これらの考えと、健康リテラシー、外来診療への定期的な通院、うつ病歴、人口統計的変数などの因子との関連についても分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・回答者は1,085例、回答率は75.0%であった。・各設問に対し、適切な回答を行った割合は、(1)54.5%、(2)75.6%、(3)58.9%、(4)70.8%であった。・うつ病の原因に関するスティグマについて、弱い人格がうつ病を引き起こすと回答した割合は30.7%であった。・女性および若者は、適切な回答と関連が認められた。・健康リテラシーは、薬物療法の有効性に関する適切な理解とのみ、関連が認められた。 著者らは「本調査では、実に30%が、弱い人格がうつ病を引き起こすと考えていた。また、うつ病の薬物療法の有効性については、58.9%しか認識されていなかった。70%超は休息の必要性を理解しており、明るく行動する人でもうつ病になる可能性があることを認知していた。一般的な健康リテラシーだけでは、うつ病に関する知識や理解が深まるとは限らない。うつ病へのスティグマの減少と、うつ病治療に関する知識の向上のための、教育的介入またはキャンペーンが必要である」としている。■関連記事うつ病患者とかかりつけ医、認識のギャップが浮き彫りに統合失調症への偏見は軽減されたのか:東京大学呼称変更により統合失調症患者へのスティグマは減少したのか:日本医科大学

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抗コリン作用は認知症リスクを高める…となると現場は大変だ!(解説:岡村毅氏)-854

 言うまでもなく、さまざまな薬に抗コリン作用がある。とりわけ腹痛、鼻汁、頻尿などを止める効果があるので、風邪薬などの非常に身近な薬にも多く含まれるのである。 一方で抗コリン作用を持つ薬と認知症の関係が長年いわれている。アセチルコリン系は脳内の覚醒に関わるので、抗コリン作用を持つ薬剤を内服している間は認知機能が低下するといわれる。加えて、抗コリン作用を持つ薬を長年飲み続けると認知症発症のリスクが上がるともいわれている。それを検証したのが今回の論文である。 しかし、真の因果関係を検証するのは難しい。たとえば多くの抗うつ薬には抗コリン作用がある。そして、老年期のうつは認知症の危険因子あるいは初期症状でもある。したがって認知症になる前に内服していた薬を調べて、抗うつ薬などの抗コリン作用の強い薬剤を内服していた人が多いからといって、すぐに抗コリン作用が悪さをしたとも言い切れない。認知症の初期症状としてのうつ症状であったかもしれないからだ。 この論文は調整因子を幅広く取り、当該薬の(1)抗コリン作用の程度、(2)量、(3)薬効、(4)曝露時期で分けて詳細に検討しているので、臨床的価値が大きい。多くの薬剤が持つ抗コリン作用と認知症発症が関係するなら、多剤併用を避ける大きな根拠にもなろう。 多剤併用の弊害が広く知られるようになった。以前は「先生、これとこれとあれの症状もあるので、薬ください」などと大量の薬の処方を求められたものである。もちろん、いちいち諭すわけだが、こわもての患者さんに「症状があると言ってんだよ!」とか「言われたとおり処方しろよ!」などと悪態をつかれたことは皆さんもあることだろう。こういう経験を重ねると、プライマリケアの現場では、心折れて何も考えずに処方することになってしまう方もいるだろうなと思う。最近は「ダマされるな! 医者に出されても飲み続けてはいけない薬」(週刊現代2016年6月11日号)などといった記事のためか、受診はしたものの、かたくなに処方を拒絶する患者さんもいる。 人生の黄昏時には、体は思うようにならないものである。治らない症状を持つ人も多いことだろう。意味のない多剤併用は論外だが、命が有限であり、体は衰えていくものだということがわからずに焦燥に駆られた患者さんや家族に、一応症状はあり、何とか薬をくださいなどと言われては、こちらも困ってしまう。人間の弱さも引き受けた診療をするしかない、と言うと怒られてしまうだろうか。 さて、あらためて本論文を見てみよう。・まず単純な解析では、抗コリン作用が強いもの(ACB score of 3)では確かに認知症発症と関連している。・しかし認知症発症の15年以上前の曝露では、ほとんどの薬では関連は消え、三環系抗うつ薬等と泌尿器薬でははっきり残る。これらの薬が危険ともいえるし、たとえ15年以上前であっても、うつや頻尿は認知症の微細な初期症状なのかもしれない。・さらに、15年以上前の解析で、抗うつ薬の中でも抗コリン作用が弱いSSRIなど(ACB score of 1)では因果関係は明らかではなく、抗コリン作用が強い三環系抗うつ薬(ACB score of 3)では関係がある。となるとやはり抗コリン作用が悪さをしている可能性は大である。・とはいえ「強い抗うつ薬」を使う病態と「弱い抗うつ薬」を使う病態は明らかに異なる。前者のみが認知症発症と関連する可能性も、やや苦しいが、まだある。・抗パーキンソン薬は、直近の使用のみが関連している。認知症発症は、抗パーキンソン薬の影響ではなく、脳内の神経変性の進行を反映しているかもしれない。 まとめるとこうなる。抗コリン作用と認知症発症は、まだ解明されたとはいえない。ざっくり見れば関連はある。専門的に眺めると、事態はまだ複雑だ。三環系抗うつ薬や泌尿器系薬は、可能性は高い。とはいえ「臨床現場で処方ができない」とパニックになる必要はまったくない。同時に、なるべく少ない処方でマネジメントすることは常に心掛けねばならない。

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自殺リスク患者に対するesketamine鼻腔内投与の有効性、安全性に関する二重盲検ランダム化比較試験

 自殺リスク患者において、標準治療にesketamine鼻腔内投与を追加した際の、抑うつ症状の急速軽減効果について、米国・ヤンセン・リサーチ&ディベロップメントのCarla M. Canuso氏らが、検討を行った。併せて、自殺リスクについても検討を行った。The American journal of psychiatry誌オンライン版2018年4月16日号の報告。 本研究は、患者68例を対象とし、包括的な標準治療にesketamine(84mg)鼻腔内投与またはプラセボの週2回追加投与を4週間実施した、二重盲検多施設ランダム化概念実証研究として行われた。主要有効性エンドポイントは、ベースラインから初回投与後4時間までのMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコアの変化量とした。臨床医による自殺リスクの全体的な評価は、自殺念慮と行動評価ツールを用いて実施した。副次的エンドポイントは、24時間および二重盲検試験終了時の25日目でのこれら測定値とした。 主な結果は以下のとおり。・esketamine群は、プラセボ群と比較し、投与4時間後のMADRSスコアの有意な改善が認められた(最小二乗平均差:-5.3、SE:2.10、エフェクトサイズ:0.61)。また、24時間以内においても同様に、有意な改善が認められたが(最小二乗平均差:-7.2、SE:2.85、エフェクトサイズ:0.65)、25日目では認められなかった(最小二乗平均差:-4.5、SE:3.14、エフェクトサイズ:0.35)。・esketamine群は、投与4時間後のMADRS自殺念慮項目スコアの有意な改善が認められたが(エフェクトサイズ:0.67)、24時間(エフェクトサイズ:0.35)、25日目(エフェクトサイズ:0.29)では認められなかった。・両群間の臨床医による自殺リスクの全体的な評価スコアの減少は、どの時点においても統計学的に有意な変化が認められなかった。・esketamine群における最も一般的な有害事象は、悪心、めまい、解離、味覚異常、頭痛であった。 著者らは「これらの予備的所見は、自殺リスクを有するうつ病患者に対し、包括的な標準治療にesketamine鼻腔内投与を追加することで、プラセボと比較し、自殺念慮を含む有意な抑うつ症状の急速改善が可能であることを示す」としている。■関連記事うつ病成人の自殺傾向に対するSSRIの影響うつ病と双極性障害、自殺企図リスクが高いのはケタミンは難治性うつ病に使えるのか

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双極性障害と統合失調症患者の興奮症状の特徴

 興奮症状は、内的な緊張や不安から暴力、攻撃性に至るまでの症状を含む、双極性障害や統合失調症にみられる共通の症状である。これまでの文献の多くは、急性の興奮症状に焦点を当てており、患者の体験に関しては不十分であった。英国・Adelphi Real WorldのJenna Roberts氏らは、コミュニティに焦点を当て、患者視点の興奮症状の特徴とそのマネジメントに関して調査を行った。BMC psychiatry誌2018年4月16日号の報告。 対象患者は、ドイツ、スペイン、英国における興奮エピソードを経験した統合失調症または双極性障害の住民583例。患者募集は、医師または患者支援グループを通じて行った。本調査では、人口統計、疾患の特徴、興奮エピソードの頻度、軽度から重度までの事前に定義した重症度レベル、エピソード中に経験した症状、興奮の自覚、患者自身による対処法に関する情報を収集し、記述統計を用いてデータの性質を調べた。 主な結果は以下のとおり。・興奮エピソード中に最も一般的に報告された症状は、不安(373例、64%)、不穏(368例、63%)、緊張(368例、63%)であった。・過去12年間に患者が経験した平均エピソード回数は、軽度22.4回(SD:57.2)、中等度15.4回(SD:61.2)、重度2.9回(SD:24.4)であり、通院が必要であった回数は、平均2.7回(SD:6.8)であった。・興奮症状のため通院が必要であった患者は、約半数(313例)であった。・全体として、興奮症状を常にまたは時々経験していると認識していた患者は、71%(412例)、そのきっかけを認識していた患者は、61%(347例)であった。・大部分の患者(329例、56%)は、時々興奮症状をコントロールできると報告していたが、患者の16%(94例)は、通常何もできないと報告していた。・エピソードに対処するため処方薬を服用していると報告した患者は、統合失調症患者の55%(125例)、双極性障害患者の66%(234例)であった。 著者らは「コニュニティベースの統合失調症および双極性障害の患者は、不安、不穏、緊張のような、最も一般的に定義される興奮エピソードを頻繁に経験していると報告している。さまざまな対処法が報告されているが、必ずしもうまくいっているとは限らず、このような患者にとって重要なアンメットニーズである」としている。■関連記事精神疾患患者の激越症状に対する新旧治療戦略統合失調症、双極性障害の急性期興奮状態に対する治療:アリピプラゾール筋注に関するコンセンサス・ステートメント(英国)認知症患者の興奮症状に対し、抗精神病薬をどう使う

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うつ病に対するアリピプラゾールとセルトラリン併用療法の二重盲検ランダム化比較試験

 昭和大学の上島 国利氏らは、セルトラリン100mg/日で効果不十分なうつ病患者を対象に、アリピプラゾール併用またはプラセボ併用による有効性および安全性の比較検討を行った。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2018年4月16日号の報告。 本研究は、スクリーニング期間、8週間のセルトラリン治療期間(単盲検、25~100mg/日)、6週間のアリピプラゾールまたはプラセボ併用期間(二重盲検)で構成された。対象は、DSM-5で定義されたうつ病診断患者。セルトラリン治療後の非治療反応患者は、アリピプラゾール併用群(アリピプラゾール3~12mg/日とセルトラリン100mg/日)またはプラセボ併用群(プラセボとセルトラリン100mg/日)にランダムに割り付けられた。主要有効性エンドポイントは、ベースラインから6週までのMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)総スコアの平均変化量とした。 主な結果は以下のとおり。・合計412例の患者が、アリピプラゾール併用群(209例)またはプラセボ併用群(203例)にランダムに割り付けられた。・MADRS総スコアの平均変化量は、プラセボ併用群(-7.2)と比較し、アリピプラゾール併用群(-9.2)で有意に大きかった(p=0.0070)。・アリピプラゾール併用群およびプラセボ併用群において、10%以上で発現した治療上の有害事象は、鼻咽頭炎(各々、13.4%、11.3%)およびアカシジア(各々、12.9%、3.4%)であった。・アリピプラゾール併用群で発現した治療上の有害事象は、すべて軽度~中等度であった。・治療上の有害事象による治療中断は、アリピプラゾール併用群で1.9%、プラセボ併用群で1.5%と、いずれも低値であった。・安全性評価において、アリピプラゾール併用群は、プラセボ併用群と比較し、顕著な問題は認められなかった。 著者らは「セルトラリン100mg/日での治療で効果不十分なうつ病患者では、アリピプラゾール併用療法は有用であり、忍容性も良好であった」としている。■関連記事SSRI治療抵抗性うつ病に対する増強療法の比較治療抵抗性うつ病に対する非定型抗精神病薬の比較アリピプラゾール増強が有効な治療抵抗性うつ病患者の3つの特徴

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オランザピンおよびリスペリドンの体重増加に関するメタ解析

 体重増加が抗精神病薬の投与と関連していることは、メタ解析と同様に、単一研究から報告された多くのデータにより示されている。しかし、抗精神病薬誘発性の体重増加に、潜在的な性差が認められるかについては、検討されていない。スイス・ベルン大学精神医学病院のG. Schoretsanitis氏らは、女性患者の場合、有害な薬物反応に対する感受性が高いため、男性と比較し、体重が増加しやすいのではないかとの仮説について検討を行った。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2018年3月30日号の報告。 抗精神病薬による臨床試験の中で、体重変化について男女別に報告している研究を対象に、メタ解析を実施した。抗精神病薬の使用期間により、6週間未満、6~16週間、16~38週間、38週超の4つのカテゴリに分類した。男女別にフォレストプロットを作成し、抗精神病薬の使用期間で層別化を行った。性差は、メタ回帰を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・本検討の分析には、26件の研究より、オランザピン、リスペリドン、未治療群の利用可能なデータを使用した。・オランザピンあるいはリスペリドンへの切り替えまたは使用開始の後に、男女とも著しい体重増加を来したが、メタ回帰分析においては性差が認められなかった。 著者らは「抗精神病薬誘発性の体重増加における性差に関して、現在のメタ解析では、性別の特異的なパターンの検出が妨げられている。慢性期患者に対する、短期または中期的な治療でのオランザピンまたはリスペリドンへの切り替えでは、男女ともに体重増加が認められたが、有意な性差は報告されなかった」としている。■関連記事オランザピン誘発性体重増加のメカニズム抗精神病薬の体重増加リスクランキング非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か

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双極性障害患者のパニック症の有病率と治療に関するメタ解析

 最近のデータによれば、不安症は、単極性うつ病と同様に双極性障害(BD)と頻繁に合併する。イタリア・カリアリ大学のAntonio Preti氏らは、BDに合併するパニック症(PD)に関する文献のシステマティックレビュー、メタ解析を行った。Evidence-based mental health誌オンライン版2018年4月10日号の報告。 システマティックレビューとメタ解析による優先報告項目について、文献調査や利用可能なエビデンスの選択と報告を徹底的にフォローした。メタ解析には、分散安定化Freeman-Tukey二重逆正弦変換を用いて、推定有病率を計算した。すべての研究における統合効果を推定するため、固定効果モデルとランダム効果モデルを使用し、逆分散法を行った。不均一性の測定と評価には、CochranのQ検定、I2統計量を用いた。 主な結果は以下のとおり。・プールされた推定値の算出には、横断的な有病率に関する研究15報(3,391例)および独立した生涯研究25報(8,226例)を用いた。・潜在的な異常値の研究を除いた後、BD患者におけるPDの全体的なランダム効果の時点有病率は13.0%(95%CI:7.0~20.3%)であり、全体的なランダム効果の生涯有病率は15.5%(95%CI:11.6~19.9%)であった。・双極I型障害と双極II型障害との間に差は認められなかった。・両推定値の有意な不均一性が報告された(I2>95%)。 著者らは「公表された研究から導き出された推定値では、BD患者のPD有病率は、一般集団で報告された値よりも高いことが示唆された。PDの合併は、自殺行為リスクの増加やBDのより重度な経過と関連している。しかし、PDを合併したBD患者に対する治療は明確になっていない。本メタ解析により、BDにPDは高頻度に合併しており、このPDは、慢性的な経過をたどる可能性がある」としている。■関連記事双極性障害と全般性不安障害は高頻度に合併パニック症に対し第2世代抗精神病薬は有用か双極性障害と強迫症、併存率が高い患者の特徴

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抗コリン薬、認知症発症と強く関連/BMJ

 英国・イースト・アングリア大学のKathryn Richardson氏らによる症例対照研究の結果、うつ病、泌尿器系およびパーキンソン病の治療に用いられる抗コリン薬の使用が、将来的な認知症発症と強く関連していることが明らかとなった。この関連は、認知症と診断される15~20年前の曝露でさえ観察されたという。ただし、消化器および心血管系の抗コリン薬では認知症との明らかな関連は認められなかった。これまで、抗コリン作用のある薬剤の使用が、短期的な認知障害と関連があることは知られていた。しかし、報告されている抗コリン薬の使用と将来的な認知機能低下や認知症発症との関連が、抗コリン作用に起因するかどうかは不明であった。BMJ誌2018年4月25日号掲載の報告。認知症患者約4万例と対照約28万例で抗コリン薬の曝露認知症リスクを評価 研究グループは、さまざまなクラスの抗コリン薬の曝露期間および曝露量と、その後の認知症発症との関連を評価する目的で、症例対照研究を行った。英国プライマリケア医の電子カルテを含むデータベース(Clinical Practice Research Datalink:CPRD)を用い、2006年4月~2015年7月に認知症と診断された65~99歳の患者4万770例と、認知症と診断されていない対照28万3,933例を特定し、Anticholinergic Cognitive Burden(ACB)スケールで分類された抗コリン薬の1日投与量について、曝露期間中全体およびサブクラス別に比較した。認知症と診断される4~20年前の抗コリン薬の処方が含まれた。 主要評価項目は、患者背景等の共変量について調整した認知症発症のオッズ比とし、多変量条件付きロジスティック回帰分析を用いて解析した。うつ病、泌尿器系、パーキンソン病治療の抗コリン薬で認知症リスクが増大 曝露期間中、ACBスコア3(明らかな抗コリン作用)に分類される抗コリン薬を1つ以上処方されていたのは、認知症患者1万4,453例(35%)、対照8万6,403例(30%)で、ACBスコア3の抗コリン薬の調整オッズ比は1.11(95%信頼区間[CI]:1.08~1.14)であった。認知症は、ACBスコアの平均値の増加と関連していた。 薬剤のクラス別では、ACBスコア3および1の消化器系薬や、ACBスコア1の心血管系薬の使用においては、認知症との明確な関連はみられなかった。 一方、ACBスコア3に分類される抗うつ薬・泌尿器系治療薬・抗パーキンソン病薬は、曝露が大きいほど認知症のリスクの増大がみられ、その関連性は認知症発症の15~20年前の抗コリン薬の曝露でも認められた。

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