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日本人の職場環境とストレス・うつ病との関連

 日本において、さまざまな労働環境因子がストレスやうつ病に及ぼす影響を調査した研究は、十分ではない。慶應義塾大学の志賀 希子氏らは、日本の労働者における労働環境因子とストレスやうつ病との関連について、調査を行った。その結果、日本人労働者のストレスやうつ病には、仕事の要求、仕事のコントロール、職場でのハラスメント、心理的安全性などが関連していることが示唆された。Work誌オンライン版2022年6月18日号の報告。 日本で主にデスクワークに従事する労働者を対象に、アンケート調査を実施した。ストレス、うつ病、職場環境の評価には、知覚されたストレス尺度(PSS)、こころとからだの質問票(PHQ-9)、身体的および心理的な職場環境アンケートをそれぞれ用いた。対象者をPSSスコア(中央値で、低ストレス群または高ストレス群に分割)およびPHQ-9スコア(5未満:非うつ病群、5以上:うつ病群)に基づいて分類し、労働環境の群間比較を行った。加えて、重回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・210人より回答が得られた。・重回帰分析では、ストレスには「自分のペースで仕事をこなす能力」「個人的な視点を仕事に活かす能力」などが影響を及ぼすことが明らかとなった。・うつ病には「職場でのハラスメント」「同僚のサポート」などが影響を及ぼすことが示唆された。

642.

抗うつ薬治療抵抗性うつ病に対する増強療法のブレクスピプラゾール最適用量~メタ解析

 ブレクスピプラゾールの増強は、治療抵抗性うつ病の効果的な治療戦略であるといわれているが、その最適な投与量はよくわかっていない。東京武蔵野病院の古川 由己氏らは、他の抗うつ薬の増強療法に用いるブレクスピプラゾールの最適な投与量について、検討を行った。その結果、抗うつ薬治療抵抗性うつ病患者に対する増強療法のブレクスピプラゾールは、1~2mgの用量で有効性、忍容性、受容性の最適なバランスが得られる可能性が示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年6月18日号の報告。 2021年9月16日までに公表された、1つ以上の抗うつ薬治療に反応しない18歳以上のうつ病患者を対象にブレクスピプラゾール増強療法を評価した二重盲検ランダム化プラセボ対照固定用量試験を、複数の電子データベースより検索した。アウトカムは、8週間(範囲:4~12週間)の有効性(治療反応の定義:うつ病重症度50%以上低下)、忍容性(副作用による脱落)、受容性(何らかの理由による脱落)とした。制限3次スプライン解析を用いて、メタ解析(ランダム効果、1段階用量効果)を実施した。 主な結果は以下のとおり。・6研究、1,671例が選択基準を満たした。・用量効果曲線は、約2mg(オッズ比[OR]:1.52、95%信頼区間[CI]:1.12~2.06)まで増加し、その後は3mg(OR:1.40、95%CI:0.95~2.08)まで減少傾向を示した。・用量忍容性曲線の形状は用量効果曲線と同様であり、用量受容性曲線の形状はより単調な増加傾向が認められたが、いずれも信頼帯は広かった。・本研究は該当試験数が少ないため、結果の信頼性が制限される。

643.

うつ病患者における抗うつ薬の継続と慢性疼痛発症率~日本でのレトロスペクティブコホート

 うつ病と慢性疼痛との関連は、よく知られている。しかし、うつ病患者における抗うつ薬の治療継続およびアドヒアランスと慢性疼痛発症との関連は不明なままであった。これらの関連を明らかにするため、ヴィアトリス製薬のShingo Higa氏らは、日本国内のデータベースを用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。その結果、うつ病患者に対する6ヵ月以上の抗うつ薬の継続処方は、慢性疼痛発症を低減させる可能性があることが示唆された。Journal of clinical psychopharmacology誌2022年5-6月号の報告。慢性疼痛発症リスクは継続群のうつ病患者で有意に低かった 日本の保険請求データベースより、2014年4月~2020年3月に抗うつ薬を処方された成人うつ病患者のデータを抽出した。抗うつ薬の継続処方期間(継続群:6ヵ月以上、非継続群:6ヵ月未満)およびMPR(medication possession ratio、アドヒアランス良好群:80%以上、アドヒアランス不良群:80%未満)に応じて患者を分類した。アウトカムは、慢性疼痛発症とし、その定義は、3ヵ月超の鎮痛薬継続処方および抗うつ薬の継続処方中断後の疼痛関連診断とした。慢性疼痛発症リスクを、ペア群間で比較した。 うつ病患者における抗うつ薬の治療継続と慢性疼痛発症との関連を研究した主な結果は以下のとおり。・対象うつ病患者は、1,859例(継続群:406例、非継続群:1,453例およびアドヒアランス不良群:1,551例、アドヒアランス不良群:308例)であった。・重み付き回帰(standardized mortality ratio weighting)を介して交絡因子を調整した後、慢性疼痛発症リスクは、非継続群よりも、継続群のうつ病患者で有意に低かった(ハザード比:0.38、95%信頼区間:0.18~0.80、p=0.011)。・アドヒアランス良好群と不良群の間に、有意差は認められなかった。

644.

双極性障害患者における生涯の自殺企図と関連する要因~BiD-CoIN研究

 インド・Post Graduate Institute of Medical Education & ResearchのSandeep Grover氏らは、双極性障害患者の生涯における自殺企図について、関連するリスク因子を評価するため検討を行った。その結果、双極性障害患者の約3分の1は生涯において自殺企図を経験しており、それらの患者は臨床経過がより不良であることを報告した。Nordic Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年6月22日号の報告。 10年以上の疾患歴を有し、臨床的寛解状態にある双極性障害患者773例を対象に、生涯の自殺企図を評価した。自殺企図の有無にかかわらず、さまざまな人口統計学的および臨床的なリスク因子について比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象の双極性障害患者のうち、自殺企図歴を有する患者は242例(31.3%)であった。・自殺企図歴を有する患者は、そうでない患者と比較し、以下の特徴が認められた。 ●教育歴が短い ●多くの場合、女性である ●エピソード期間が長い ●総エピソード数が有意に多い(生涯、発症後5年間、1年ごと) ●うつ病の総エピソード数が有意に多い(生涯、発症後5年間、1年ごと) ●うつ病エピソード期間が長い ●より重篤なうつ病エピソードがある ●初回エピソードがうつ病である場合が多い ●躁/軽躁/混合エピソード期間が長い ●うつ症状または躁症状の残存が多い ●生涯においてラピッドサイクラーの場合が多い ●依存症として大麻を使用している ●自身の疾患について洞察力が乏しい ●障害レベルの高さ(とくにIndian disability evaluation assessment scaleの4領域中3領域)

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ドパミン過感受性精神病患者に対する長時間作用型注射剤による長期治療の有効性

 ドパミン過感受性精神病(DSP)は、抗精神病薬によるドパミンD2受容体のアップレギュレーションに起因すると考えられ、統合失調症患者の不安定な精神症状と関連している。抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)は、ドパミン過感受性のコントロールに有用である可能性が示唆されているが、LAIによる長期治療がドパミン過感受性精神病の発生や悪化にどのような影響を及ぼすかは、よくわかっていない。千葉大学の小暮 正信氏らは、ドパミン過感受性精神病の有無によりLAIによる長期治療の効果に違いがみられるかを検討した。その結果、ドパミン過感受性精神病患者に対する少なくとも3年間のLAI治療の有効性が確認され、LAI治療がドパミン過感受性精神病を悪化させる可能性は低いことが示唆された。著者らは、その要因として、LAI導入による抗精神病薬の総投与量の大幅な減少が挙げられる可能性があるとしている。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2022年6月17日号の報告。ドパミン過感受性精神病群と非ドパミン過感受性精神病群でLAIの効果比較 対象は、3年以上のLAI治療が行われた統合失調症患者58例。LAI導入前3年間の医療記録からドパミン過感受性精神病の有無を確認し、ドパミン過感受性精神病群(30例)または非ドパミン過感受性精神病群(28例)に分類した。LAI導入後3年間の臨床経過を評価するため、LAI治療の効果を両群間で比較した。 ドパミン過感受性精神病の有無によりLAIによる長期治療の効果に違いがみられるかを検討した主な結果は以下のとおり。・ドパミン過感受性精神病群と非ドパミン過感受性精神病群ともに、抗精神病薬投与量(LAIと経口剤の併用)の有意な減少、臨床全般印象度の改善度(CGI-I)の測定による有意な改善が認められた。・各指標について両群間で差が認められなかったことから、ドパミン過感受性精神病の有無にかかわらずLAIの長期治療効果が類似していることが示唆された。・平均して、ドパミン過感受性精神病群は非ドパミン過感受性精神病群と比較し、LAI導入前は高用量の抗精神病薬で治療されていたが、LAI導入後にそれらは標準用量の範囲内まで減少した(LAI導入前:1,004.8mg、LAI導入後:662.0mg)。

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日本における統合失調症の人的および経済的負担

 統合失調症においては、患者だけでなくその家族や社会に多大な人的および経済的負担がのしかかり、併存症状の有無によりその負担は大きく影響されるといわれている。住友ファーマの馬塲 健次氏らは、日本における統合失調症の生涯有病率を推定し、併存症状(抑うつ症状、睡眠障害、不安障害)の有無による患者の健康関連QOL、仕事生産性、間接費の評価を行った。その結果、日本人統合失調症患者にみられる併存症状は、QOL、仕事生産性、間接費に大きな影響を及ぼすことが報告された。BMC Psychiatry誌2022年6月18日号の報告。 2019年「国民健康・栄養調査」で収集されたデータを用いて、2次分析を実施した。PHQ-9スコア、自己報告による睡眠障害および不安障害の結果により、統合失調症患者を分類した。生涯有病率の推算は、分子に統合失調症診断患者数、分母に調査回答者数を用いて行った。健康関連QOLの評価には、SF-12v2、EQ-5Dを用いた。仕事生産性と年間間接費は、WPAI(Work Productivity and Activity Impairment)と月給を用いて評価した。多変量解析には、一般化線形モデルを用いた結果の比較を含めた。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、統合失調症患者178例(平均年齢:42.7歳、推定生涯有病率:0.59%[95%CI:0.51~0.68])であった。・睡眠障害、より重度な抑うつ症状、不安障害が併存している患者は、これらの併存症状がない患者と比較し、健康関連QOLの低下、より高い欠勤率、プレゼンティズム、総仕事生産性と活動の障害が認められ、間接費も約2倍となっていた。

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高齢者の多疾患罹患とうつ病に関する性差

 これまでの研究では、多疾患罹患はうつ病リスクが高いといわれている。しかし、うつ病と多疾患罹患との関連において、性差を調査した研究はほとんどなかった。韓国・乙支大学校のSeoYeon Hwang氏らは、男女間でうつ病と多疾患罹患の関連に違いがあるかを調査した。その結果、韓国の高齢者において、多疾患罹患とうつ病との関連に性差が認められたとし、多疾患罹患の高齢者におけるうつ病の軽減には、性別ごとの適切なケアを提供する必要があることを報告した。Epidemiology and Health誌オンライン版2022年5月24日号の報告。 対象は、韓国の高齢者調査(2011~17年)より得られた65歳以上の3万138例。うつ病の評価には、老年期うつ病評価尺度の韓国語版(GDS-K)を用いた。多疾患罹患患者の定義は、関節炎、糖尿病、心臓病、高血圧、肺疾患、がん、脳卒中、骨粗鬆症のうち2つ以上の慢性疾患を有する患者とした。うつ病と多疾患罹患との関連を分析するため、多重ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・多疾患罹患患者のうつ病有病率は、男性で22.17%、女性で30.67%であった。・多疾患罹患患者は、そうでない人と比較し、うつ病リスクが高く、男性のリスク差は女性よりも大きかった。・とくに女性において、年齢はモデレーターである可能性が高かった。・統合分析では肺疾患、脳卒中、がんの影響が大きかったが、性差は、心臓病を有する患者の慢性疾患数で認められた。

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認知症と犯罪【コロナ時代の認知症診療】第16回

老年医学の名著「最不適者の生き残り」「よもぎ」は雑草と思われがちだが、実はハーブの女王とも呼ばれる。国内のいたるところで見られ、若芽は食用として餅に入れられることから、餅草とも呼ばれる。筆者にとってよもぎが、馴染みの深いのも実はこの餅にある。子供の頃、祖母に言われて道端のよもぎを摘んできて、よもぎ餅を一緒に作った記憶がある。この話を生物学に造詣の深いシステムエンジニアにした。にんまりと笑って言うには、子供の頃に私が摘んだものは道端の犬の小水がかかった汚いものだった可能性が高いと言う。「どうしてか? を観察すると散歩が楽しくなるかも」といった。そして分布ぶりから植物の生存競争の一端がわかるからと加えた。確かに色々な観察をした。最も記憶に残ったのは、背丈はたかだか1m以内とされるのに2mを超えるよもぎがあることだ。それらには共通性がある。ネット状フェンスや金属の柵にぴったり沿って生えていることだ。高い丈は子孫を伝えていく上で花粉が広く飛散しやすく有利だ。生物の生存競争では、最も環境に適した形質をもつ個体が生き残るとしたダーウィンの「適者生存」の法則が有名だ。よもぎの成長にとって重要な日光だが、フェンスや柵に寄り添ったよもぎは日陰に覆われる時なく十二分に太陽の光を浴びられる。もっと大切なのは風雨でも支えてもらえることだろう。さて「適者生存」と聞くと思い出すのが、“Survival of the unfittest”(最不適者生存の生き残り)1)という書である。これはイギリス老年医学の黎明期1972年にアイザック医師によってなされた著作である。私はこの書が出てから、10余年の後に留学先の図書館で読んだ。隅々まで頭にしみて、老年医学・医療が生まれた背景を理解できた気になれた。さまざまな背景により、高齢に至って多くのハンディキャップを背負った人がいかに生きていくか?そこで医者は何ができるかを問うた名著として読んだ。「生老病死」の「老」についての宗教観さえ感じた。初版時から50年以上が経過したが、その内容は日本における現状との違和感がない。それも残念だが…。ピック病とは限らない? 高齢者犯罪と疾患先頃、ある区役所の職員に連れ添われて60代初めの身寄りのない女性が来院した。記憶力はそう悪くないし、若い頃には窃盗歴などなかったのに、数ヵ月の間に万引きを重ね反省の色もなくおかしい。認知症があるのではないか調べて欲しいという。すぐにピック病を疑い、精査の結果でもピック病と確認した。1年に数人はこうした犯罪絡みの受診がある。認知症の犯罪となるとピック病と誰もが連想する。けれども、当院での経験では、意外なほどレビー小体型認知症が多い。この病気における意識・注意の変動や、てんかんの合併しやすさ、また認知機能の統合能低下などもあるのではないかと考えている。また認知症と並んで複雑部分発作などてんかん性の疾患が多い。裁判官にわかってもらう難しさ中には複数の犯罪を重ねて刑事裁判に至るケースもある。そこで意見書を求められると、「かくかくの認知症疾患があり、犯行当時の責任能力に影響を及ぼしたと推測される症状があったと考える」と書くことが多い。重度の認知症であれば、裁判官も本人と面接して、「ああこれでは」と思ってくれる。しかし軽度認知障害から軽度の認知症、それも前頭側頭型認知症だと難しい。というのは裁判官の世界では、精神神経疾患の犯罪とくると、統合失調症における放火や殺人事件に対する責任能力という古典的な命題が今も中核になっているのではと思えるからである。当方のケースは、統合失調症による幻覚や妄想に支配されてやってしまったかと分かるというレベルではない。長谷川式やMMSEは20点以上が多いから、裁判所における質問への理解力や発言、態度には不自然さがない。だから裁判官が私に向ける視線には、「これでも責任能力がないのですか?」と言いたげな気持ちがこもっている。8.5%で認知症性疾患罹患中に犯罪歴認知症患者における犯罪実態の系統的報告がある2)。研究対象は1999~2012年の間に認知症と診断され、米国の記憶・加齢センターで診察された2,397人の認知症患者である。米国、オーストラリア、スウェーデンの専門家により認知症性疾患と犯罪の関係が回顧的に調査された。全対象のうちの8.5%に認知症性疾患罹患中に犯罪歴があった。2,397人中の545人を占めたアルツハイマー病では犯罪率は7.4%であったのに対し、171人と総数では少ない前頭側頭型認知症における犯罪率は37.4%であった。この数字は本研究で調査対象となった5つの認知症性疾患の中で最多であった。この本報告は従来の小報告の結果を確認したと言える。さて米国における認知症の人の裁判状況は、私の経験とあまり違わないもののように思われる。と言うのは、本研究の結論として、「中年期以降に変性性の疾患と診断され、従来のその人らしさを失ってしまった患者に遭遇した医師は、その人が法的処罰の対象にならないように擁護に尽力すべきだ」と強調しているからである。終わりに。最近の生物界では、「適者生存」でなく「運者生存」が正しいとされるそうだ。フェンスの横におちたよもぎの種子は、まさにそれだろう。件の連続万引きの独居女性は、この事件のおかげで認知症がわかり、役所から手厚い支援が差し伸べられるようになったばかりか、不起訴にもなった。ある意味、幸運であった彼女は、“Survival of the unfittest”を実現したかなと考える。参考1)B. Isaacs, et al. Survival of the Unfittest: A Study of Geriatric Patients in Glasgow. Routledge and K. Paul;1972.2)Liljegren M, et al. JAMA Neurol. 2015 Mar;72:295-300.

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感染2年後も55%がlong COVID~武漢の縦断コホート研究

 COVID-19の流行が続く中、COVID-19から回復した人のかなりの割合が、複数の臓器やシステムに長期的な影響を受けていることを示すエビデンスが増えている。初期にCOVID-19が流行した中国において、2年にわたって既感染者の健康状態を調べた研究結果がLancet Respiratory Medicine誌オンライン版2022年5月11日号に掲載された。 2020年1月7日~5月29日にCOVID-19によってJin Yin-tan Hospital(中国・武漢)に入退院した人を対象に縦断コホート研究を実施。症状発現後6ヵ月(2020年6月16日~9月3日)、12ヵ月(2020年12月16日~2021年2月7日)、2年(2021年11月16日~2022年1月10日)時点の健康状態を、6分間歩行距離(6MWD)検査、臨床検査、退院後の症状、メンタルヘルス、健康関連QOL、職場復帰、医療利用に関する一連の質問票を使用して測定した。各インタビュー時には肺機能検査と胸部画像診断を行った。 年齢、性別、合併症をマッチさせたCOVID-19非感染者(対照群)と比較し、試験群の2年後の回復状態を調べた。主要評価項目は、症状、mMRC呼吸困難尺度、健康関連QOL(HRQoL)、6MWD、職場復帰状況で、3回のフォローアップすべてに参加した人を対象に評価した。症状、mMRC呼吸困難尺度、HRQoLは対照群でも評価した。 主な結果は以下のとおり。・1,192例が3回のフォローアップを完了し、最終解析に含まれた。うち1,119例(94%)が2年後の対面インタビューに参加した。・退院時の年齢中央値は57.0(48.0~65.0)歳、551例(46%)が女性だった。症状発現後の追跡期間の中央値は、6ヵ月目が185(IQR:175~197)日、12ヵ月目が349(337~360)日、2年目が685(675~698)日だった。・少なくとも1つのlong COVID症状を持っていたのは、6ヵ月時点で777/1,149例(68%)から、2年時点で650/1,190例(55%)へと有意に減少した(p<0.0001)。疲労または筋力低下が最も多くみられた。・mMRCスコアが1以上だった人の割合は、6ヵ月時点で288/1,104例(26%)から、2年時点で168/1,191例(14%)へと有意に減少した(p<0.0001)。・HRQoLはほぼ全領域で改善を続け、とくに不安やうつ病の症状を持つ人の割合は、6ヵ月時点の256/1,105例(23%)から、2年時点で143/1,191例(12%)へと大きく減少した(p<0.0001)。・感染前に仕事に就いていた人のうち、2年後に元の仕事に復帰していたのは438/494例(89%)だった。・2年時点でlong COVID の症状が見られた参加者は、そうでない参加者に比べ、退院後のHRQoL低下、運動能力低下、メンタルヘルス異常の増加、医療利用の増加がみられた。・試験群は対照群に比べ、2年後においても、より多くの有病率、疼痛または不快感、不安またはうつ病の問題を有していた。・試験群のうち、入院中に高次の呼吸補助を受けていた人は対照群に比べ、肺拡散障害(65%対36%、p=0.0009)、残気量減少(62%対20%、p<0.0001)、総肺気量減少(39%対6%、p<0.0001)などが有意に多くみられた。 著者らは「初期の重症度にかかわらず、HRQoL、運動能力、精神衛生状態は2年間を通して改善し続けたが、約半数は2年後もlong COVIDが残っていた。long COVIDの要因をさらに研究し、症状を管理または緩和する治療の研究が必要だ」としている。

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精神疾患患者の認知症リスク

 統合失調症、双極性障害、うつ病などの重度の精神疾患は認知症と関連しているといわれているが、これらの関連を直接比較した研究はあまり行われていない。台湾・台北栄民総医院のYing-Jay Liou氏らは、重度の精神疾患と認知症リスクとの関連を明らかにするため、台湾全民健康保険データベースを用いてレトロスペクティブに分析を行った。その結果、重度の精神疾患患者は対照群と比較し、アルツハイマー病および血管性認知症リスクが高いことが示唆されたとし、中年および高齢の精神疾患患者では、認知機能の変化を綿密にモニタリングする必要があることを報告した。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2022年4月26日号の報告。 対象は、2001~09年に統合失調症(1万4,137例)、双極性障害(1万4,138例)、うつ病(1万4,137例)のいずれかに診断された45~69歳の患者およびマッチさせた対照群(4万2,412例)。診断時年齢に基づき4群をマッチさせた。アルツハイマー病および血管性認知症を含むすべての認知症の発症は、2011年末までの診断データより特定した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中のアルツハイマー病リスクは、統合失調症患者および対照群と比較し、双極性障害患者およびうつ病患者でより高かった。 【統合失調症】ハザード比[HR]:4.50、95%信頼区間[CI]:2.84~7.13 【双極性障害】HR:10.37、95%CI:6.93~15.52 【うつ病】HR:8.92、95%CI:5.93~13.41・フォローアップ期間中の血管性認知症リスクは、うつ病患者および対照群と比較し、統合失調症患者および双極性障害患者でより高かった。 【統合失調症】HR:4.55、95%CI:3.14~6.59 【双極性障害】HR:4.45、95%CI:3.13~6.31 【うつ病】HR:3.18、95%CI:2.21~4.58・信頼区間に重なりが認められることから、各群間における統計学的な有意差は認められなかった。

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思春期女性の食事行動とうつ病との関連

 うつ病の増加は、公衆衛生上の重大な問題となっている。うつ病と食事行動との関連が示唆されているものの、そのエビデンスは限られている。イラン・Shahid Sadoughi University of Medical SciencesのAbbas Ali Sangouni氏らは、食事行動とうつ病スコアとの関連を評価するため、横断的研究を実施した。その結果、いくつかの摂食行動とうつ病スコアとの有意な関連が認められたことを報告した。BMC Public Health誌2022年6月11日号の報告。 対象は、12~18歳のイラン人の思春期女性933人。うつ病重症度スコアにはベックうつ病評価尺度のペルシャ語版を用いて評価した。食事行動は事前に定義し、10項目の標準的な質問票を用いて評価した。食事行動とうつ病スコアとの関連を評価するため、租分および調整済みモデル線形回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・軽度~重度のうつ症状が認められた女性は32.3%、うつ症状がないまたは非常に軽度であった女性は67.7%であった。・うつ病スコアとの有意な逆相関が認められた因子は、以下のとおりであった。 ●メインディッシュの消費量:β=-0.141(95%CI:-3.644~-1.000)、p=0.001 ●スナック菓子の消費量:β=-0.100(95%CI:-2.400~-0.317)、p=0.002 ●通常の食事摂取量:β=0.23(95%CI:0.13~0.42)、p=0.001 ●咀嚼:β=-0.152(95%CI:-2.279~-0.753)、p=0.03これらの関連は、交絡因子で調整した後でも有意なままであった。・租分モデルにおいて、うつ病スコアとの直接的な関連が認められた因子は、以下のとおりであった。 ●食事内水分摂取の頻度:β=0.096(95%CI:0.288~1.535)、p=0.004 ●辛い食品の消費量:β=0.076(95%CI:0.098~1.508)、p=0.02これらの関連は、完全に調整されたモデルでは消失した。・朝食の摂取量、揚げ物の摂取量、咀嚼能力、歯の喪失は、うつ病スコアとの有意な関連は認められなかった(p>0.05)。

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統合失調症患者の第一度近親者の神経認知機能障害

 統合失調症患者だけでなく、その第一度近親者(FDR)も神経認知機能障害を有している可能性が示唆されているものの、これまで十分に評価されていなかった。インド・Topiwala National Medical CollegeのSachin P. Baliga氏らは、統合失調症患者のFDRにおける認知的洞察と客観的認知機能、精神病的体験歴、社会的機能との関連について評価を行った。その結果、統合失調症患者のFDRは、統合失調症患者と同様に認知的洞察が不良であることが確認された。Indian Journal of Psychological Medicine誌2022年3月号の報告。 3次医療教育病院の外来部門で横断的研究を実施した。対象は、統合失調症患者のFDR 100人。評価項目は、精神病的体験歴、Subjective Scale to Investigate Cognition in Schizophrenia(SSTICS)を用いた主観的な認知機能障害(SCC)、National Institute of Mental Health and Neurosciences評価バッテリーの神経認知機能テストを用いた客観的認知機能、SCARF Social Functioning Indexを用いた社会的機能とした。 主な結果は以下のとおり。・規範的データと比較し、最も多く認められた認知機能障害はエピソード記憶(FDRの最大72%)であり、次いで作業記憶、注意、実行機能であった。・対応する認知領域におけるSCCと神経心理学的検査スコアとの間に相関は認められず、認知的洞察が不良であることが示唆された。・FDRの15%に精神病的体験歴が認められた。・精神病的体験歴を有するFDRでは、有さないFDRと比較し、SCCが有意に高かった(U=0.366、p=0.009、r=0.26)。・回帰分析では、SCCが1単位増えるごとに社会的機能が0.178単位減少することが確認された(F[1,98]=5.198、p=0.025)。・SCCの重症度および進行は、FDRの精神疾患リスクのスクリーニングおよびモニタリングに役立つ可能性が示唆された。・現在影響を受けていないと考えられるFDRであっても、SCCは社会職業的機能に影響を及ぼす可能性がある。

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第117回 英国の小児の原因不明の急な肝炎は減少傾向 / 血中のアミノ酸・プロリンとうつ症状が関連

英国の小児の原因不明の急な肝炎は減少傾向今年に入ってから6月13日までに英国ではA~E型以外の原因不明の急な肝炎が260人の小児に認められており、死亡例はありませんが12人(4.6%)が肝臓移植を必要としました1)。新たな発生は続いているものの一週間当たりの数はおおむね減っています。いまだはっきりしない病原の検査ではアデノウイルスの検出が引き続き最も多く、検査した241例中156例(約65%)からアデノウイルスが見つかりました。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は入院の際の検査結果がある196人のうち34人(約17%)から検出されています。ほとんどはSARS-CoV-2ワクチン接種の対象年齢ではない5歳までの乳幼児に発生しており、SARS-CoV-2ワクチンとの関連は認められていません。英国の状況報告と時を同じくして米国からも報告があり、小児の肝炎と関連した救急科治療/入院や肝臓移植はSARS-CoV-2感染(COVID-19)流行前に比べて増えてはおらず2017年以降一定でした2)。たとえば0~4歳の小児の1ヵ月当たりの肝炎関連入院数はより最近の2021年10月~2022年3月までは22件、COVID-19流行前は19.5件であり、有意な変化はありませんでした。それに、原因不明の肝炎小児からアデノウイルス41型が検出されていますが、米国での調査ではアデノウイルス40/41型陽性の小児の割合の増加も認められませんでした(40と41型が一括りになっているのは市販の検査のほとんどがそれらを区別できないため)。だからといって小児の原因不明の肝炎はもはや心配する必要がないというわけではないと米国カリフォルニアの小児病院のリーダーRohit Kohli氏はMedscapeに話しています3)。小児肝炎の増加が認められている英国などの他の国のデータと違いがあるからです。血中のアミノ酸・プロリンが多いこととうつ症状が関連軽度~かなりのうつ病やうつでない人あわせて116人を調べたところ腸内細菌の組成に依存して血中(血漿)のアミノ酸・プロリン濃度が高いこととより重度のうつ症状の関連が認められました4-6)。プロリンはどうやらうつ発症の引き金となるらしく、マウスにプロリンを余分に与えたところうつを示す振る舞いが増えました。また、うつ症状と血漿プロリン濃度の関連が強い被験者20人の糞、つまり腸内微生物をマウスに移植したところ、血中のプロリンが多くてより重症のうつ患者の微生物が移植されたマウスほどプロリンを余分に与えた場合と同様にうつを示す振る舞いをより示しました。さらに遺伝子発現を調べたところ、微生物が移植されてよりうつになったマウスの脳ではプロリン輸送体遺伝子Slc6a20などの発現がより増えていました。そこで、プロリン輸送体のうつ症状への寄与がハエ(ショウジョウバエ)を使って調べられました。Slc6a20のショウジョウバエ同等遺伝子CG43066を抑制したショウジョウバエ、すなわち脳がプロリンを受け付けないショウジョウバエはうつを示す振る舞いを示し難くなりました。また、マウスでうつになり難いことと関連し、GABAを大量に生成する乳酸菌(ラクトバチルス プランタルム)を移植したショウジョウバエもうつ様になり難いことが確認されています。GABAやグルタミン酸はプロリンの分解で最終的に生み出されうる神経伝達物質であり、プロリンの蓄積はGABA生成やグルタミン酸放出を妨げてシナプス伝達を害しうることが先立つ研究で示されています7,8)。そういった先立つ研究と同様に今回の研究でもプロリンがGABA/グルタミン酸分泌シナプスのいくつかの経路と強く関連することが示されています。どうやら共生微生物はプロリン代謝に手出ししてグルタミン酸やGABA放出の均衡を妨害してうつに寄与しうるようであり、グルタミン酸やGABAの使われ方へのプロリンの寄与に共生微生物がどう関わるかを調べることがうつ病によく効く新しい治療の開発に必要でしょう4)。そういう今後の課題はさておき、今回の新たな研究によるとプロリンが控えめな食事をすることでうつ症状は大いに緩和できる可能性があります。参考1)Investigation into acute hepatitis of unknown aetiology in children in England: case update / gov.uk2)Kambhampati AK,et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Jun 17;71:797-802.3)Pediatric Hepatitis Has Not Increased During Pandemic: CDC / Medscape4)Mayneris-Perxachs J, et al.Cell Metab. 2022 May 3;34:681-701.5)Study Links Depression with High Levels of an Amino Acid / TheScientist6)A study confirms the relationship between an amino acid present in diet and depression / Eurekalert7)Crabtree GW, et al. Cell Rep. 2016 Oct 4;17(2):570-582.8)Wyse AT, et al. Metab Brain Dis. 2011 Sep;26:159-72.

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精神科入院患者の重症度に応じたうつ病の薬理学的治療

 ICD-10では、うつ病を重症度に応じて分類している。また、ガイドラインでは、重症度に応じたうつ病治療に関する推奨事項を記載している。ドイツ・ハノーファー医科大学のJohanna Seifert氏らは、実臨床における精神科入院患者に対するうつ病の重症度に基づいた向精神薬の使用について評価を行った。その結果、ガイドラインの推奨事項と実臨床での薬物治療には乖離があり、精神科入院うつ病患者の治療における臨床ニーズをガイドラインに十分反映できていない可能性が示唆された。Journal of Neural Transmission誌オンライン版2022年5月7日号の報告。 精神医学における医薬品の安全性(AMSP)プログラムを用いて、うつ病の重症度に基づく薬物治療のデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・2001~17年に、参加病院で治療を受けた精神科入院うつ病患者は、4万3,868例であった。・多くの患者は、複数の抗うつ薬による治療を受けていた(中等度うつ病患者:85.8%、重度うつ病患者:89.8%、精神病性うつ病患者:87.9%)。・より重度の患者では、SNRIやミルタザピンで治療されることが多く、SSRIで治療されることは少なかった(各々、p<0.001)。・重症度の上昇とともに、抗精神病薬、とくに第2世代抗精神病薬使用の有意な増加が認められた(中等度うつ病患者:37.0%、重度うつ病患者:47.9%、精神病性うつ病患者:84.1%[各々、p<0.001])。・併用では、抗精神病薬+抗うつ薬が最も多く(中等度うつ病患者:32.8%、重度うつ病患者:43.6%、精神病性うつ病患者:74.4%)、次いで抗うつ薬の2剤併用であった(中等度うつ病患者:26.3%、重度うつ病患者:29.3%、精神病性うつ病患者:24.9%)。・リチウムの使用は少なかった(中等度うつ病患者:3.3%、重度うつ病患者:6.1%、精神病性うつ病患者:7.1%)。・向精神薬の数は、うつ病の重症度とともに増加が認められ、精神病性うつ病患者では、向精神薬の使用率が最も高かった(中等度うつ病患者:93.4%、重度うつ病患者:96.5%、精神病性うつ病患者:98.7%[各々、p<0.001])。・抗うつ薬単剤治療の割合は、重症度が低い場合でもあまり多くなかった(中等度うつ病患者:23.2%、重度うつ病患者:17.1%、精神病性うつ病患者:4.4%)。

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初回入院統合失調症患者の再入院予防に対する抗精神病薬の有効性比較

 抗精神病薬治療は、統合失調症の最も主要な治療法であるが、その有効性を比較することは簡単ではない。国立台湾大学のYi-Hsuan Lin氏らは、アジア人初回入院統合失調症患者の再入院予防に対する抗精神病薬のリアルワールドでの有効性を比較するため、検討を行った。その結果、統合失調症の初回入院後に抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)による治療を行うことで、再入院予防に対する顕著なベネフィットが確認されたことから、初期段階でのLAI使用が再入院予防の重要な治療戦略であることを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2022年5月15日号の報告。 2001~17年の初回入院統合失調症患者(ICD-9-CM:295、ICD-10-CM:F20およびF25)を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象患者は台湾全民健康保険研究データベース(NHIRD)より特定し、退院後に使用された抗精神病薬を調査した。主要アウトカムは、精神病性障害による再入院リスクとし、調整済みハザード比(aHR)を算出した。経口リスペリドン使用患者を対象に、使用期間を対照期間とした個人内変動Coxモデルによる分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、台湾の初回入院統合失調症患者7万5,986例(男性の割合:53.4%、平均年齢:37.6±12.0歳、平均フォローアップ期間:8.9±5.0年)。・4万7,150例(62.05%)は、4年以内に1回以上の再入院が認められた。・経口リスペリドン使用期間と比較し、LAI抗精神病薬単剤治療期間では、精神病性障害による再入院リスクが最も低く、15~20%のリスク低下が認められた。・しかし、フォローアップ期間中のLAI使用率は低かった(10%未満)。

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日本における統合失調症に対する抗コリン薬使用の特徴

 統合失調症のさまざまな臨床ガイドラインにおいて、抗コリン薬の長期使用は推奨されていない。福岡大学の堀 輝氏らは、向精神薬使用のパターンおよび病院間での違いを考慮したうえで、統合失調症患者に対する抗コリン薬使用の特徴について、調査を行った。その結果、抗精神病薬の高用量および多剤併用、第1世代抗精神病薬の使用に加え、病院の特性が抗コリン薬の使用に影響を及ぼすことが示唆された。Frontiers in Psychiatry誌2022年5月17日号の報告。統合失調症に対する抗コリン薬処方率は0~66.7%と病院ごとに大きく異なる 日本の医療機関69施設の統合失調症患者2,027例を対象に、退院時治療薬に関する横断的レトロスペクティブ調査を実施。抗コリン薬と向精神薬使用との関連を調査した。各病院を抗コリン薬の処方率に応じて、低、中、高の3グループに分類し、抗コリン薬処方率と抗精神病薬使用との関連を分析した。 統合失調症患者に対する抗コリン薬使用の特徴について調査を行った主な結果は以下のとおり。・抗コリン薬が処方されていた統合失調症患者数は618例(30.5%)であり、抗精神病薬の高用量、多剤併用、第1世代抗精神病薬使用の患者で有意に高かった。・抗コリン薬処方率は0~66.7%と病院ごとに大きく異なり、低・中グループと比較し高グループにおいて、抗精神病薬の単剤治療、多剤併用、標準および高用量使用患者で有意に高かった。・高グループにおける第2世代抗精神病薬単剤治療患者の抗コリン薬処方率も、低・中グループと比較し有意に高かったが、第1世代抗精神病薬単剤治療患者では、有意な差が認められなかった。

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入院うつ病患者の自殺リスクに対する不眠症の影響

 不眠症は、うつ病に関連する重要な症状であり、自殺のリスク因子の1つであるといわれている。いくつかの研究によると、うつ病患者では不眠症と自殺行動との関連が示唆されているが、入院患者の大規模サンプルによる評価は十分に行われていなかった。米国・ハーバード大学医学大学院のZeeshan Mansuri氏らは、入院うつ病患者を対象に不眠症の有無による自殺リスクの評価を行った。その結果、うつ病患者の不眠症は自殺リスクと有意に関連することが示唆されたことから、不眠症を合併しているうつ病患者では、自殺行動をより注意深くモニタリングする必要があると報告した。Behavioral Sciences誌2022年4月19日号の報告。 ICD-9のコードを用いたNational Inpatient Sample(NIS 2006-2015)データベースより、1次診断時うつ病と診断され、不眠症状を併発していた患者(MDD+I群)のデータを収集した。比較対照を行うため、MDD+I群と1対2でマッチさせた不眠症のないうつ病患者を対照群として設定した。両群間の自殺念慮および自殺企図に関するデータを比較するため、多変量ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・分析には、MDD+I群13万9,061例と対照群27万6,496例が含まれた。・MDD+I群は、対照群と比較し、より高齢であった(47歳 vs.45歳、p<0.001)。・自殺念慮および自殺企図の割合は、MDD+I群で56.0%、対照群で42.0%であった(p<0.001)。・年齢、性別、人種、境界性パーソナリティ障害、不安症、物質使用障害で調整した後、不眠症は、入院うつ病患者における自殺行動の1.71倍増加と関連することが認められた(オッズ比:1.71、95%CI:1.60~1.82、p<0.001)。

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COVID-19パンデミックによる日本人医学生の座位行動とうつ病との関連

 2019年に発生したCOVID-19により人々の行動が変化し、座りがちな行動の割合が増え、うつ病の増加につながっていることが示唆されている。医学生におけるこのような影響は、今後の医療提供体制に負の作用をもたらす可能性がある。広島大学の田城 翼氏らは、日本人医学生を対象にCOVID-19パンデミック中の座位行動とうつ病との関連を調査した。その結果、COVID-19パンデミック下の日本人医学生のうつ病リスクを減少させるためには、座位時間および余暇でのスクリーンタイムの減少が有効である可能性が示唆された。著者らは、これらの結果に基づき、うつ病の予防や治療を行うための適切な介入の開発が求められると報告している。BMC Psychiatry誌2022年5月20日号の報告。 2021年7月30日~8月30日に匿名アンケートシステムを用いてオンライン調査を実施し、日本人大学生1,000人を対象に社会人口統計学的特性、身体活動、座位行動に関するデータを収集。うつ病は、Patient Health Questionnaire-2(PHQ-2)を用いて評価した。484人の回答者データをステップワイズ法で分析し、モデル1として医学生と非医学生の違いを、モデル2としてうつ病を有する医学生と非うつ病の医学生の違いを評価した。両モデルの群間比較には、社会人口統計学的特性ではカイ二乗検定、身体活動および座位行動ではマン・ホイットニーのU検定を用いた。モデル2では、医学生のうつ病に関連する因子を分析するため、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・モデル1では、医学生は非医学生と比較し、身体活動時間が短く(p<0.001)、座位時間が長く(p<0.001)、PHQ-2スコアが高かった(p=0.048)。・モデル2では、うつ病医学生は非うつ病医学生と比較し、座位時間が長く(p=0.004)、余暇のスクリーンタイムが長かった(p=0.007)。・潜在的な交絡因子で調整後のロジスティック回帰分析では、座位時間(OR:1.001、p=0.048)と余暇のスクリーンタイム(OR:1.003、p=0.003)が医学生のうつ病と有意に関連していることが示唆された。

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若年性双極性障害およびうつ病患者における自殺行動~メタ解析

 うつ病または双極性障害の小児および青年における自殺行動の割合や死亡率を評価するため、イタリア・IRCCS Bambino Gesu Pediatric HospitalのGiulia Serra氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、気分障害と診断された若者の死亡率(自殺企図当たりの死亡者数)は、一般的な若者よりも高いものの、成人よりは低いことを報告した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2022年5月16日号の報告。双極性障害の自殺企図の平均発生率はうつ病より高い 18歳以下の自殺行動に関する報告をシステマティックにレビューし、プールされたデータから自殺行動リスクや1年発生率を評価するため、ランダム効果メタ解析および多変量線形回帰モデルを用いた。 双極性障害またはうつ病の小児および青年における自殺行動の割合や死亡率を評価した主な結果は以下のとおり。・対象は、15ヵ国で検討された研究41件(1995~2020年)より抽出された10万4,801例(うつ病:10万2,519例、双極性障害:2,282例)。自殺行動リスクは0.80~12.5年であった。・メタ解析では、自殺企図の発生率は、双極性障害で7.44%/年(95%CI:5.63~9.25)、うつ病で6.27%/年(95%CI:5.13~7.41)であった。・うつ病および双極性障害の患者群を用いた研究5件のメタ解析では、双極性障害患者はうつ病患者と比較し、自殺企図リスクが有意に高かった(OR:1.59、95%CI:1.24~2.05、p<0.0001)。・6件の研究における若年性気分障害を伴う平均自殺率は、10万人当たり125人/年(56.9~236)であった。この値は成人と同様で、一般的な若者の30倍以上に当たり、年齢が上がるごとにリスクが高まった。・若年性気分障害患者の自殺企図/自殺の比率(A/S)は52.6であり、一般的な若者(A/S≧250)よりも死亡率が高かったが、成人で推定される死亡率(A/S:約30)よりも低かった。・若年性気分障害における自殺企図の平均発生率は10万人当たり6,580人/年であり、うつ病患者よりも双極性障害患者のほうが高く、観察期間が短いほど高かった。

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統合失調症に対する抗精神病薬の治療継続の意義~メタ解析

 統合失調症治療では、主に抗精神病薬が用いられており、急性期症状の軽減に有効であるとされている。2012年に公表された現在のレビューのオリジナルバージョンでは、統合失調症または統合失調症様障害の患者に対する抗精神病薬の再発予防効果について、ランダム化試験のエビデンスに基づき検討が行われた。イタリア・ASST Spedali CiviliのAnna Ceraso氏らは、寛解とリカバリー率、社会的機能やQOLの変化に着目したいくつかの新たな調査結果に焦点を当て、レビューの更新を行った。その結果、統合失調症患者に対する抗精神病薬による維持療法は、再発および再入院を予防するだけでなく、患者のQOLや機能、持続的な寛解にもベネフィットをもたらすことが示唆された。著者らは、抗精神病薬によるこれらの肯定的な効果は、副作用を背景として比較検討する必要があると報告している。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2022年5月12日号の報告。 レビューの更新には、1959~2017年に公表された75件のランダム化比較試験(RCT)より、9,145例を含めた。 主な結果は以下のとおり。・バイアスの潜在的ないくつかの原因により全体的な質は制限されたが、統合失調症の維持療法に対する抗精神病薬の有効性は、一連の感度分析に対して明確かつ堅牢であった。・抗精神病薬は、プラセボと比較し、1年後の再発予防(薬物療法:24%、プラセボ:61%、30 RCT、4,249例、RR=0.38、95%CI:0.32~0.45)および入院率減少(薬物療法:7%、プラセボ:18%、21 RCT、3,558件、RR=0.43、95%CI:0.32~0.57)に有効であった。・抗精神病薬治療患者では、QOL(7 RCT、1,573例、SMD=-0.32、95%CI:-0.57~-0.07)および社会的機能(15 RCT、3,588例、SMD=-0.43、95%CI:-0.53~-0.34)も良好であった。・少数の研究データに基づくものの、維持療法は症状寛解達成率(薬物療法:53%、プラセボ:31%、7 RCT、867例、RR=1.73、95%CI:1.20~2.48)を高め、その効果を6ヵ月間維持(薬物療法:36%、プラセボ:26%、8 RCT、1,807例、RR=1.67、95%CI:1.28~2.19)することが示唆された。・リカバリー率に関するデータはなかった。・抗精神病薬治療患者では、運動障害(薬物療法:14%、プラセボ:8%、29 RCT、5,276例、RR=1.52、95%CI:1.25~1.85)や体重増加(薬物療法:9%、プラセボ:6%、19 RCT、4,767例、RR=1.69、95%CI:1.21~2.35、NNTH=25、95%CI:20~50)などの副作用が認められる割合が高かった。

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