糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

1日の心拍数を歩数で割った値がCVリスクの評価に有用

 健康増進のためにスマートウォッチを使って毎日の歩数を測定している人は少なくない。しかし、新たな研究によると、スマートウォッチは歩数だけでなく、健康にとって重要な別の指標も測定しており、それら両者のデータを用いることで、より高い精度で健康効果を予測できる可能性があるという。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のZhanlin Chen氏らの研究の結果であり、米国心臓病学会(ACC.25、3月29~31日、シカゴ)で報告された。  一般的に、健康のために1日1万歩歩くことが推奨されている。しかし実際には、研究によって、最適とされる歩数は異なる値が報告されている。一方、Chen氏らの研究結果は、単に歩数を測定するのではなく、1日の心拍数を歩数で割ると、心臓の健康状態をより高精度に評価できるというものだ。同氏は同大学発のリリースの中で、「われわれが開発した方法は、運動そのものではなく、運動に対して心臓がどのように反応するかという点に着目したものだ。身体活動が1日を通して変動する中で、ストレスが加わった時に心臓がそれに適応する能力を把握しようとする、より核心的な課題に迫る意義の高い方法である。われわれの研究は、スマートウォッチというウェアラブルデバイスでそれを捉える初の試みだ」と話している。

健康長寿を目指すなら、この食事がベスト

 高齢になっても健康を維持するためには、中年期にどのような食生活を送れば良いのだろうか。10万5,000人を超える男女を最長で30年間にわたって追跡し、8つのパターンの食事法について調べた研究からは、代替健康食指数(Alternative Healthy Eating Index;AHEI)が明確に優れていることが示された。コペンハーゲン大学(デンマーク)公衆衛生学准教授で、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の栄養学客員准教授でもあるMarta Guasch-Ferre氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に3月24日掲載された。  AHEIは2002年に、米国農務省(USDA)による米国の食事ガイドラインの遵守度の指標である健康食指数(Healthy Eating Index;HEI)の代替指標として、ハーバード大学の研究者らにより作成された。ハーバード大学によると、HEIとAHEIは似ているが、AHEIの方が慢性疾患のリスクを軽減することにより重点を置いた指標になっているという。AHEIの高い食事とは、果物や野菜、全粒穀物、ナッツ類、豆類、健康的な脂肪を豊富に摂取し、赤肉や加工肉、加糖飲料、塩分、精製穀物の摂取は控えた食事である。

糖尿病性腎症の世界疾病負荷、1990~2021年にかけて増大

 糖尿病性腎症の世界疾病負荷は1990~2021年にかけて増大しており、2050年まで増大が続く見込みである、とする研究結果が報告された。成都市第三人民病院(中国)のXiao Ma氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Endocrinology」に2月21日掲載された。  慢性腎臓病(CKD)は糖尿病の深刻な合併症であり、その世界的負担は徐々に増加している。 米国では2000~2019年の間に、約80万人の患者が糖尿病を主因とする腎不全により透析または腎移植を受けているという報告もある。糖尿病性腎症の独立したリスク因子としては、遺伝、高血糖、高血圧などが挙げられているものの、CKDを併発した糖尿病の発生率に関する完全な統計はない。そのような背景から、著者らは、世界疾病負荷研究(GBD)に基づき、1990~2021年のデータを使用して、1型および2型の糖尿病に起因するCKDの世界的な負荷の動向および今後の予測について分析した。

症状のない亜鉛欠乏症に注意、亜鉛欠乏症の診療指針改訂

「亜鉛欠乏症の診療指針2024」が2025年1月に発行された。今回の改訂は7年ぶりで、きわめて重要な8つの改訂点が診療指針の冒頭に明記され、要旨を読めば最低限の理解がカバーできる構成になっている。だが、本指針内容を日常診療へ落とし込む際に注意したいポイントがある。そこで今回、本指針の作成委員長を務めた脇野 修氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部 腎臓内科分野 教授)に、亜鉛欠乏症の現状や診断・治療を行う際の注意点などについて話を聞いた。

高齢糖尿病患者へのインスリン イコデク使用Recommendation公開/糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長])は、4月18日に「高齢者における週1回持効型溶解インスリン製剤使用についてのRecommendation」(高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会作成)を公開した。  週1回持効型インスリン製剤インスリン イコデク(商品名:アウィクリ注)は、注射回数を減少させ、持続的なインスリン作用をもたらすことから、ADLや認知機能の低下により自己注射が困難な高齢患者に血糖管理が可能になると期待される。  その一方で、週1回投与という特徴から、投与調節の柔軟性には制限があり、一部の患者では低血糖が重篤化する懸念がある。

女性の低体重/低栄養症候群のステートメントを公開/日本肥満学会

 日本肥満学会(理事長:横手 幸太郎氏〔千葉大学 学長〕)は、4月17日に「女性の低体重/低栄養症候群(Female Underweight/Undernutrition Syndrome:FUS)ステートメント」を公開した。  わが国の20代女性では、2割前後が低体重(BMI<18.5)であり、先進国の中でもとくに高率である。そして、こうした低体重や低栄養は骨量低下や月経周期異常をはじめとする女性の健康に関わるさまざまな障害と関連していることが知られている。その一方で、わが国では、ソーシャルネットワークサービス(SNS)やファッション誌などを通じ「痩せ=美」という価値観が深く浸透し、これに起因する強い痩身願望があると考えられている。そのため糖尿病や肥満症の治療薬であるGLP-1受容体作動薬の適応外使用が「安易な痩身法」として紹介され、社会問題となっている。

テレビを消すと糖尿病になりやすい人の心血管リスクが低下する

 2型糖尿病になりやすい遺伝的背景を持つ人は、心臓発作や脳卒中、末梢動脈疾患などのアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクも高い。しかし、そのリスクは、テレビのリモコンを手に取って「オフ」のスイッチを押すと下げられるかもしれない。香港大学(中国)のMengyao Wang氏らの研究によると、テレビ視聴を1日1時間以下に抑えると、2型糖尿病の遺伝的背景に関連するASCVDリスクの上昇が相殺される可能性があるという。この研究の詳細は、「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に3月12日掲載された。

経口セマグルチド、ASCVD/CKD合併2型DMでCVリスク減/NEJM

 経口セマグルチド(GLP-1受容体作動薬)は、2型糖尿病で心血管リスクの高い患者において心血管系の安全性が確立されている。米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのDarren K. McGuire氏らSOUL Study Groupは「SOUL試験」により、2型糖尿病でアテローム動脈硬化性心血管疾患または慢性腎臓病、あるいはこれら両方を有する患者において、プラセボと比較して同薬は、重篤な有害事象の発生率を増加させずに主要有害心血管イベント(MACE)のリスクを有意に減少させることを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年3月29日号で報告された。

転倒リスクの高い2型糖尿病治療薬は?/筑波大

 骨格筋量の低下によって転倒リスクが増大することが知られており、一部の2型糖尿病治療薬は体重減少作用が強く、骨格筋量の減少を引き起こすことで転倒リスクを増大させる可能性が示唆されている。この課題について筑波大学システム情報系知能機能工学域の鈴木 康裕氏らの研究グループは、筑波大学附属病院に入院中の2型糖尿病患者を対象に転倒調査を5年間行った。その結果、SGLT2阻害薬は転倒の危険因子であることが示唆された。この結果はScientific Reports誌2025年3月17日号に掲載された。

カピバセルチブ使用時の高血糖・糖尿病ケトアシドーシス発現についての注意喚起/日本糖尿病学会

 「内分泌療法後に増悪したPIK3CA、AKT1またはPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」を適応症として2024年5月に発売された経口AKT阻害薬カピバセルチブについて、日本糖尿病学会では2025年4月15日、高血糖・糖尿病ケトアシドーシス(DKA)発現についての注意喚起を発出した。以下に抜粋するとともに、これを受けて同日発表された日本乳癌学会からの見解についても紹介する。  インスリンシグナル伝達のマスターレギュレーターであるAKTを阻害するカピバセルチブにより、インスリン抵抗性が誘導され高血糖を発現するリスクが想定される。実際に臨床試験(CAPItello-291試験)では有害事象として16.9%に高血糖を認めており、わが国における市販直後調査(2024月5月22日~2024年11月21日)でも高血糖関連事象が33例報告され、そのうち1例がDKAにより死亡している(推定使用患者数約350例)。