循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:112

ハイリスク患者のPCI後のフォローアップ、定期心機能検査vs.標準ケア/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた高リスク患者において、PCI後1年時点で定期心機能検査を行うフォローアップ戦略は、標準ケアのみの場合と比較して、2年時点の臨床アウトカム改善に結び付かなかったことが、韓国・ソウルアサン病院のDuk-Woo Park氏らが1,706例を対象に行った無作為化試験の結果、示された。冠血行再建後のフォローアップ方法を特定するための無作為化試験のデータは限定的であり、今回検討したフォローアップ戦略については、明らかになっていなかった。NEJM誌2022年9月8日号掲載の報告。

ROSCした患者の血圧管理目標値はどのくらいがよいか?(解説:江口和男氏)

本研究は、院外心停止で蘇生され生存した昏睡状態の患者さんについて、平均血圧目標を63mmHgで保つ群と、77mmHgで保つ群にランダム化し予後を比較するという研究であった。主要アウトカムはあらゆる原因による死亡または神経学的予後不良状態での90日以内の退院の複合、2次アウトカムは血清神経特異エノラーゼ(NSE)レベル(高いと予後不良)、あらゆる原因による死亡、Montreal Cognitive Assessmentの点数(0~30の範囲で高いと認知機能良好)、そして、3ヵ月におけるmodified Rankin scaleおよびCerebral Performance Category(CPC)であった。

院外心停止蘇生昏睡患者の目標血圧値は?/NEJM

 院外心停止から蘇生した昏睡患者において、平均動脈圧目標値77mmHg(高値)群vs.63mmHg(低値)群で、全死因死亡、重篤な障害、または昏睡の割合に関して有意差は確認されなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学のJesper Kjaergaard氏らが、2×2要因デザインの無作為化二重盲検比較試験「Blood Pressure and Oxygenation Targets in Post Resuscitation Care trial:BOX試験」の結果を報告した。集中治療を受けている院外心停止昏睡生存者において、血圧目標値の選択に関するエビデンスは限定的だった。NEJM誌オンライン版2022年8月27日号掲載の報告。

観察研究でRCT模倣可能な“target trial emulation”/BMJ

 観察研究は研究デザインにかかわらず交絡の影響を受けやすいが、目標となる無作為化比較試験(RCT)の模倣が成功すれば、観察研究でRCTと同じ効果推定値が得られる。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAnthony A. Matthews氏らは、観察研究にRCTの研究デザイン原則を適用した“target trial emulation”のプロセスを概説した。BMJ誌2022年8月30日号掲載の報告。  観察研究は、費用、倫理的観点あるいは迅速性などの理由でRCTを実施できない場合に、介入の有効性に関するエビデンスを提供することができる。しかし、観察研究は、無作為化されていないため交絡バイアスが存在するだけでなく、誤った研究デザインの選択(追跡調査開始時期の指定など)が自らバイアスを引き起こす可能性もあり、因果推論には課題がある。

重度虚血性左室収縮障害、薬物療法へのPCI上乗せ効果はあるか/NEJM

 重度虚血性左室収縮障害患者において、至適薬物療法に加え経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の実施は、全死因死亡または心不全による入院の低減には結び付かなかった。半年、1年後の左室駆出分画率(LVEF)は同等で、2年後のQOLスコアについても有意差はなかった。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのDivaka Perera氏らが、700例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2022年8月27日号で発表された。重度虚血性左室収縮障害患者においてPCIによる血行再建は、無イベント生存および左室機能を改善するが、至適薬物療法単独(心不全について個別に調整した薬物療法およびデバイス療法など)との比較検討は行われていなかった。

院外心停止昏睡への酸素補給療法、制限的vs.非制限的/NEJM

 院外心停止蘇生後昏睡の成人生存者に対する酸素補給療法について、動脈血酸素分圧(Pao2)の目標値を制限した場合と制限しない場合の死亡や重度障害、昏睡の発生率は、同等であることが示された。デンマーク・オーデンセ大学病院のHenrik Schmidt氏らが、789例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。これまで、院外心停止昏睡の生存者における人工呼吸器の適切な酸素目標値は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2022年8月27日号掲載の報告。  試験は院外心停止昏睡の成人生存者を対象に、2×2要因デザイン法を用いて行われた。

NSTE-ACS患者の死亡リスク評価、GRACE 2.0には限界が/Lancet

 非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)の患者における、Global Registry of Acute Coronary Events(GRACE)2.0スコアによる死亡リスクの評価では、女性患者の院内死亡を過小評価するという限界があるが、新たに開発されたGRACE 3.0スコアの性能は性別を問わず良好で、リスク層別化における男女間の差を削減することが、スイス・チューリヒ大学のFlorian A. Wenzl氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年9月3日号で報告された。  研究グループは、NSTE-ACS患者におけるGRACE 2.0スコアの性特異的な性能を評価し、疾患特性における性別を考慮した新たなスコア(GRACE 3.0と呼ぶ)の開発を目的に検討を行った(スイス国立科学財団などの助成を受けた)。

アトピー性皮膚炎、JAK阻害薬はVTE発生と関連するか?

 アトピー性皮膚炎(AD)患者、とくにJAK阻害薬による治療を受ける患者は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高くなるなのか。これまで明らかになっていなかったこの懸念について、台湾・台北栄民総医院のTai-Li Chen氏らがシステマティック・レビューとメタ解析を行い、現状で入手可能なエビデンスで、ADあるいはJAK阻害薬とVTEリスク増大の関連を示すものはないことを明らかにした。著者は、「今回の解析結果は、臨床医がAD患者にJAK阻害薬を処方する際の参考となるだろう」としている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年8月24日号掲載の報告。  研究グループは、ADとVTE発生の関連を調べ、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTE発生リスクを評価した。

血管外ICD、誘発された心室性不整脈で高い除細動成功率/NEJM

 血管外植込み型除細動器(ICD)は、主に従来の経静脈ICDの血管リスクを回避するために開発が進められている。米国・メイヨークリニックのPaul Friedman氏らは、Extravascular ICD Pivotal Studyにおいて、血管外ICD(Medtronic製)は安全に植込みが可能で、植込み時に誘発された心室性不整脈を検出してこれを高率に停止でき、重大な合併症の頻度は高くないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年8月28日号に掲載された。  本研究は、血管外ICDの長期的な安全性と有効性の評価を目的とする前向きの非無作為化単群市販前試験であり、2019年9月~2021年10月の期間に、17ヵ国46施設で参加者の登録が行われた(Medtronicの助成による)。

スタチンによる筋肉痛・筋肉障害は本当?(解説:後藤信哉氏)

循環器医として、しばしばスタチンを処方している。心筋梗塞発症予防効果は臨床エビデンスから明確だが頭蓋内出血などの重篤な出血イベントが起こることも事実であるアスピリンと比較して、スタチンは心筋梗塞予防効果が確実でありながら、薬効と直結する重篤な副作用は明確ではない。すなわち、心筋梗塞の再発予防にも、多分初発予防にもスタチンは有用と思われる(筆者もLDLは高くないが時々飲んでいる)。スタチンの使用を始めたころ、「横紋筋融解症」のリスクが徹底教育された。幸いにして長年循環器医をしてスタチンを多用している筆者は、本物の「横紋筋融解症」を経験したことはない。スタチン開始直後に筋肉痛の症状を訴える症例に出合うことはまれではない。副作用の説明が重視される時代に、「筋痛があればすぐ受診してください」と教育されるために筋痛が多いのか、本当に薬の副作用として筋痛が多いのか、本当のところはわからなかった。