非心臓手術の血栓予防、DOAC vs.低分子量ヘパリン/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/23

 

 非心臓手術を受ける患者の血栓予防において、直接経口抗凝固薬(DOAC)と低分子量ヘパリン(LMWH)はいずれも、これらの投与を行わない場合に比べ症候性静脈血栓塞栓症の発現を抑制するが、これらの薬剤は同程度に大出血を増加させる可能性があり、DOACによる症候性静脈血栓塞栓症の予防効果はLMWHよりも大きいと考えられることが、カナダ・マックマスター大学のMaura Marcucci氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年3月9日号で報告された。

68件の試験の頻度論的ネットワークメタ解析

 研究グループは、非心臓手術を受ける患者の血栓予防において、DOACとLMWHが、有益性と有害性に及ぼす影響を評価する目的で、文献の系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。

 2021年8月までに医学データベース(Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials[CENTRAL])に登録された文献を検索した。対象は、非心臓手術を受ける18歳以上の成人患者の血栓予防において、LMWH(低用量[例:エノキサパリン40mg、1日1回、皮下投与]、高用量[例:同30mg、1日2回、皮下投与])、DOAC(ダビガトラン、アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバン)、積極的治療を行わない集団(プラセボまたは無治療)を比較した無作為化対照比較試験であった。

 主要アウトカムは、症候性静脈血栓塞栓症、症候性肺塞栓症、大出血とされた。多変量の変量効果モデルを用いた頻度論的ネットワークメタ解析で、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出し、GRADE(grading of recommendations, assessment, development, and evaluation)でエビデンスの確実性を評価した。

 68件(整形外科 51件、一般外科 10件、婦人科手術 4件、胸部手術 2件、泌尿器科手術 1件)の無作為化対照比較試験(4万5,445例)がネットワークメタ解析に含まれた。

症候性肺塞栓症はどの薬剤でも抑制されない

 症候性静脈血栓塞栓症の発現は、積極的治療を行わない群と比較して、低用量LMWH(OR:0.33、95%CI:0.16~0.67)、高用量LMWH(0.19、0.07~0.54)、DOAC(0.17、0.07~0.41)のいずれにおいても低下し(エビデンスの確実性:中~高)、絶対リスク差は、ベースラインのリスクに応じて1,000例当たり1~100件であった。

 DOACは、低用量LMWHに比べ症候性静脈血栓塞栓症の発現が有意に低かった(OR:0.53、95%CI:0.32~0.89)が、高用量LMWHとは差がなかった(0.93、0.51~1.71)(エビデンスの確実性:中)。

 症候性肺塞栓症は、どの薬剤によっても抑制されなかった(エビデンスの確実性:低~中)。

 大出血の発現は、積極的治療を行わない群と比較して、低用量LMWH(OR:2.04、95%CI:1.28~3.22)、高用量LMWH(3.07、1.39~6.77)、DOAC(2.01、1.08~3.73)のいずれでも増加し(エビデンスの確実性:中~高)、高リスク例では絶対リスク差が1,000例当たり50件であった。

 低用量LMWHと比較した場合、高用量LMWHでは症候性静脈血栓塞栓症が抑制されず(OR:0.57、95%CI:0.26~1.27)、大出血は増加した(1.87、1.06~3.31)のに対し、DOACでは症候性静脈血栓塞栓症が抑制され(0.53、0.32~0.89)、大出血は増加しなかった(1.23、0.89~1.69)。

 著者は、「個々の患者や手術に特有の静脈血栓塞栓症と出血のベースラインのリスクを知ることができれば、本研究の知見は、非心臓手術における静脈血栓塞栓症に関するネットベネフィットについて決定を行う際に、有益な情報をもたらす可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏

東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授

J-CLEAR理事

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