左房機能低下は認知症発症と関連/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2022/04/01

 

 心エコーで評価した左房機能の低下は、その後の認知症のリスク増加と有意に関連しており、左房容積は関連していないことを、米国・ミネソタ大学のWendy Wang氏らが、地域住民を対象とした前向きコホート研究「Atherosclerosis Risk in Communities study:ARIC研究」で示した。著者は「今回の所見は、左房機能障害が認知症のリスク因子になり得ることを示唆するものである」とまとめている。左房の機能や大きさの変化が特徴である心房ミオパチーは、心房細動とは無関係に虚血性脳卒中と関連していることが知られる。心房ミオパチーの心電図マーカーは認知症と関連しているが、断層(2D)心エコーで評価した左房機能や大きさが認知症と関連しているかどうかについては不明であった。JAMA誌2022年3月22日・29日号掲載の報告。

前向きコホート研究で、左房機能や容積と認知症との関連を探索的に解析

 ARIC研究は、登録開始時(1987~89年)の年齢が45~64歳の黒人および白人からなる地域住民を対象とした前向きコホート研究で、米国の4つの地域(ノースカロライナ州フォーサイス郡、ミシシッピ州ジャクソン、メリーランド州ワシントン郡、ミネソタ州ミネアポリス近郊)から1万5,792例が参加した。今回の解析は、5回目の定期受診時(2011~13年)に断層心エコーを受け、心房細動、脳卒中および認知症を有していない参加者を対象とし、2019年12月31日まで追跡調査した。

 断層心エコーで左房機能(reservoir strain、conduit strain、contractile strain、emptying fraction、passive emptying fraction、active emptying fraction)、および左房容積(最大および最小左房容積係数)を評価するとともに、対面および電話での認知機能評価、入院コード、死亡診断書により認知症症例を特定し、Cox比例ハザードモデルを用いて探索的に左房機能と認知症発症との関連を解析した。

左房機能低下は認知症のリスク増加と関連あり

 解析対象は4,096例(平均年齢75[SD 5]歳、女性60%、黒人22%)であった。このうち、追跡期間中央値6年において、531例が認知症を発症した。

 認知症発生率(100人年当たり)は、すべての左房機能指標において最低五分位群で最も高かった(reservoir strain 4.80、conduit strain 3.94、contractile strain 3.29、emptying fraction 4.20、passive emptying fraction 3.67、active emptying fraction 3.27)。

 すべての共変量を補正後、LA passive emptying fraction以外の左房機能と認知症との間に統計学的に有意な関連が認められた。最高五分位群に対する最低五分位群のハザード比は、reservoir strainで1.98(95%信頼区間[CI]:1.42~2.75)、conduit strainで1.50(1.09~2.06)、contractile strainで1.57(1.16~2.14)、emptying fractionで1.87(1.31~2.65)、active emptying fractionで1.43(1.04~1.96)、passive emptying fractionで1.26(0.93~1.71)であった。

 最大左房容積係数の最高五分位群の認知症発生率(100人年当たり)は3.18で、最低五分位群に対する最高五分位群のハザード比は0.77(95%CI:0.58~1.02)であった。また、最小左房容積係数の最高五分位群の認知症発生率は3.50で、最低五分位群に対する最高五分位群のハザード比は0.95(0.71~1.28)であった。いずれも、認知症との有意な関連は認められなかった。

 これらの結果は、心房細動または脳卒中を発症した参加者を除外した感度解析でも頑健性が示された。

 なお、著者は認知症発症日の特定が困難であること、認知症の診断方法がさまざまであったこと、高齢者が多く若年者に一般化できない可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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