循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:114

アントラサイクリンベース化療中の乳がん、心保護薬の併用でLVEF低下を予防

 イタリア・フィレンツェ大学Lorenzo Livi氏らがアントラサイクリンベースの化学療法で治療を受けている乳がん患者の無症候性の心臓損傷を軽減できるかどうかを調査した結果、β遮断薬のビソプロロールやACE阻害薬のラミプリル(日本未承認)を投与することで、がん治療に関連するLVEF低下や心臓リモデリングから保護する可能性を示唆した。JAMA Oncology誌2021年8月26日号オンライン版ブリーフレポートでの報告。  本研究であるSAFE試験は、イタリアの8施設の腫瘍科で実施された多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験で、12ヵ月で心臓評価を完了した最初の174例に関する中間分析。対象者の募集は2015年7月~2020年6月の期間で、中間分析は2020年に実施された。

世界の高血圧患者数、30年で2倍に/Lancet

 1990~2019年における高血圧有病率、治療率およびコントロール率の改善は、国・地域によって大きく異なり、一部の中所得国がほとんどの高所得国を上回っている現状が明らかにされた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのBin Zhou氏らが、約200の国・地域の研究1,201件、計1億400万人のデータの解析結果を報告した。著者は、「高所得国だけではなく低所得国や中所得国においても、高血圧の1次予防と治療およびコントロールの強化を介して高血圧有病率を減少させる二元的アプローチ(dual approach)は達成可能である」と強調している。Lancet誌オンライン版2021年8月24日号掲載の報告。

ファイザーワクチン後の重篤な有害事象リスク、感染後より低い/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の接種は、ほとんどの臨床的に重要な有害事象のリスク増大とは関連しておらず、ワクチン接種と心筋炎の過剰リスクとの関連は認められたが(10万人当たり1~5件)、これら心筋炎を含めた重篤有害事象リスクは、SARS-CoV-2感染後のほうが大幅な増大が認められた。イスラエル・Clalit Research InstituteのNoam Barda氏らが、イスラエルの半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析を行い報告した。NEJM誌オンライン版2021年8月25日号掲載の報告。

特許切れの悪夢(製薬企業にとって)と新薬開発(解説:後藤信哉氏)

製薬企業にとって自社製品の特許切れは大きな痛手である。直近ではARB、クロピドグレルなどの特許切れが業界に大きなインパクトを惹起した。日本ではあまり実感しないが、米国では特許切れと同時に価格が10分の1以下のジェネリック品に置き換わる。新薬開発メーカーは特許期間内に手厚く守られると同時に、特許切れショックを覚悟する必要がある。2019年、世界で最も売れた薬(AnswersNews)を見ると、アピキサバンが2位(134億ドル!)、リバーロキサバンが第4位(103億ドル)となっている。すなわち、両者ともに1兆円を超える売り上げが毎年ある。特許が切れれば売り上げは急速にゼロになる。現在の仕組みでは、利潤をゆっくり上げることはできない。投資の損失を短期間に回収し、同時に特許切れに備えた革新的新薬開発が必須である。DOACはいずれも、第III相試験の結果を「エビデンス」として特許期間内の販売戦略に利用してきた。Xa阻害薬を超える有効性、安全性を持つ新薬を開発しないと特許切れに耐えられないが、特許期間内にはXa阻害薬の欠点が論じられると売り上げが落ちる。抗血栓薬の開発メーカーは現在の膨大な利潤を保持しつつ、現在のXa阻害薬の欠点を明らかにして、その欠点を乗り越える新薬を速やかに開発しなければならないとの困難な状態に置かれている。

新しい病気の登場(解説:後藤信哉氏)

人類は時代に応じて各種疾病と戦ってきた。ペストの時代があり、結核の時代があり、心血管病の時代があった。数の多い疾病に対して、発症メカニズムを解明し、予防、治療手段を開発してきた。新型コロナウイルスも人類が克服すべき疾病である。ワクチンは新型コロナウイルス感染に対する人類の反撃の第一歩である。 ヒトの細胞にウイルスの蛋白を作らせる新型コロナウイルスワクチンも歴史的な医学の進歩として記録されるだろう。しかし、革新的ワクチン特有の副反応も見つかってきた。ワクチンによる免疫血栓症(vaccine-induced immune thrombotic thrombocytopenia(VITT)も新規に出現した問題である。実証的な英国医学では理論よりも現実を注視する。英国の規制当局は、ワクチン接種を担う医師たちにワクチン接種後の脳静脈洞血栓症の報告を依頼した。本研究では2021年4月1日から5月20日までに報告された99例の脳静脈血栓症のまとめである。70例はVITTとされた。新しい病気に対する新しいワクチンなので、どんな合併症がどれだけ起こるか、誰も知らない。新型コロナウイルス感染による死亡を減らせるのであれば、まずワクチンを使ってみよう! しかし、合併症があれば、公開してみんなで議論しよう! というのは英国人の良いところである。

科学的情報早期共有の重要性(解説:後藤信哉氏)

新型コロナウイルス感染のすべてが解明されているわけではない。予防ワクチンの副反応もすべてが解明されているわけではない。生命現象は複雑精妙な調節系であり、基本原理は未知である。実際に疾病にかかってみる、あるいは実際にワクチンを受けてみる、ことにより反応を実証的に積み重ねていかないと正解にはたどり着けない。法律、規制のYes/Noはヒトが決めることができる。しかし、規制当局が承認した薬剤、ワクチンがすべての症例に有効、安全であるわけではない。アストラゼネカ(AZ)ワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)では血栓症の発症がファイザー、モデルナワクチンよりも多いように報道されている。AZワクチンによる血栓症についても実態を正確に把握する必要がある。NEJMは、世界で最も信頼されている医学雑誌である。本研究は約1,600万人の50歳以上の症例と約800万人の50歳以下の、最低1回AZワクチンを受けた症例からワクチンによる血栓症を疑われた294例の専門家による解析結果である。実際に、ワクチンによる免疫血栓症(vaccine induced immuno-thrombosis:VIIT)を疑われた症例のうち、170例は確実にVIIT、50例はVIIT疑いとされた。VIIT発症者の中間年齢は48歳、ワクチン接種から発症までの期間の中間値は14日であった。リスクの高い症例を事前予測する性別などのリスク因子を明確にすることはできなかった。VIITによる死亡率は22%であった。死亡率の高い症例は脳静脈洞血栓症、経過中の血小板減少、経過中のフィブリノゲン減少などであった。本研究は英国における経験である。健常者のワクチン接種により致死的合併症が起こることを容認できないヒトもいるかもしれない。VIITの死亡率22%を容認できないヒトもいるかもしれない。世の中にはいろいろな考えるのヒトがいるものだ。しかし、2千万人以上のワクチン接種の経験を速やかに論文発表してpublic domainにする英国には強さを感じる。結果を数値にして公表してしまえば、メディアでも国会でも数値を客観的事実として共有するのみである。

疑問点ばかりが浮かぶ研究(解説:野間重孝氏)

ショックとは「生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果、重要臓器の血流が維持できなくなり、細胞の代謝障害や臓器障害が起こり、生命の危機に至る急性の症候群」と定義される。ショックの分類については、近年は循環障害の要因による新しい分類が用いられることが多く、次のように分類される。(1)循環血液量減少性ショック(hypovolemic shock)出血、脱水、腹膜炎、熱傷など(2)血液分布異常性ショック(distributive shock)アナフィラキシー、脊髄損傷、敗血症など

日本人高齢者における慢性疾患治療薬の使用と新規抗認知症薬使用との関連

 新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。  首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。

コロナワクチン接種後の脳静脈血栓症、VITT併存で重症化/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種後の脳静脈血栓症は、ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)が併存すると、これを伴わない場合に比べより重症化し、非ヘパリン抗凝固療法や免疫グロブリン療法はVITT関連脳静脈血栓症の転帰を改善する可能性があることが、英国・国立神経内科・脳神経外科病院のRichard J. Perry氏らCVT After Immunisation Against COVID-19(CAIAC)collaboratorsの調査で示された。研究グループは、これらの知見に基づきVITT関連脳静脈血栓症の新たな診断基準を提唱している。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年8月6日号で報告された。

新「内科専門医」と「総合内科専門医」、年代・診療科別の取得予定は?医師1,000人に聞きました

 9月に実施が予定されていた「総合内科専門医」試験は来年度に延期となったが、新「内科専門医」試験は2021年7月に初めて実施され、従来の「認定内科医」試験は6月が最後の試験となった。今後の取得予定について、医師たちはどのように考えているのか? CareNet.comの内科系診療科の会員医師1,000人を対象にアンケートを行った(2021年度総合内科専門医試験について延期発表前の2021年8月12日~13日実施)。  回答者の属性としては、30代が35.6%と最も多く、40代(26.6%)、50代(20.5%)と続いた。既取得の認定医・専門医・指導医資格としては「内科認定医」が最も多く、60%以上が取得していた。総合内科専門医についても約36%の医師が既取得であり、約14%が内科指導医資格を有していた。