放射線科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:8

血清PSAとMRIによる前立腺がんスクリーニングで、標的生検によって得られるメリット(解説:宮嶋哲氏)

前立腺がんスクリーニングにおける問題は、overdiagnosisであり、対策型検診における最も適切なアルゴリズムは確定していない。本研究(GOTEBORG-2 trial)では、50〜60歳の男性3万7,887例を対象に血清PSA(前立腺特異抗原)スクリーニングを施行した。血清PSA値が3ng/mL以上の被験者には前立腺MRIを行い、以下の要領で無作為に割り付けた。1/3の被験者を対照群としてMRIで前立腺がんが疑われる病変に対する標的生検と系統的生検を行い、残りの2/3の被験者は実験群として前立腺がんが疑われる病変にMRI標的生検のみを施行した。主要評価項目はGleason score3+3以下の臨床的に有意でない前立腺がん(insignificant cancer)の検出とし、副次評価項目はGleason score3+4以上の臨床的に意義のある前立腺がんの検出、ならびに安全性と定義した。

前立腺がんスクリーニング、MRI後標的生検のみは有用か?/NEJM

 前立腺特異抗原(PSA)高値者でのスクリーニングと早期発見に関して、系統的生検を避けMRIを用いた標的生検の実施は、過剰診断のリスクを半減するが、少数の患者で中リスクのがん発見が遅れるという代償を伴うことが、スウェーデン・Sahlgrenska University HospitalのJonas Hugosson氏らが行った無作為化試験「GOTEBORG-2試験」の結果、示された。前立腺がんのスクリーニングは過剰診断率の高さが難点で、住民ベースのスクリーニングに最適なアルゴリズムは明らかになっていない。NEJM誌2022年12月8日号掲載の報告。  研究グループは、PSA検査後、MRI検査陽性者に標的生検のみを行うスクリーニングアルゴリズムが、現在推奨されているスクリーニングと比較して過剰診断が少ないかどうかを検証した。Swedish Population Registerを用いて、2015~20年にスウェーデンのヨーテボリまたはその周辺の10の自治体に居住していた50~60歳の男性3万7,887例に対し、定期的PSAスクリーニングへの参加を促した。PSA検査を受け、試験への参加に同意した1万7,980例(47%)を、対照群、実験群1および2の3群に1対1対1の割合で割り付けた。  対照群では、PSA値3ng/mL以上の男性について全例MRIによる評価と系統的生検を行い、前立腺画像報告データシステム(PI-RADS)version 2のスコアが3~5点の場合は標的生検を追加した。実験群1では、PSA値3ng/mL以上の男性について、MRIによる評価を行い、疑わしい病変が発見された場合に標的生検のみを行った。また、PSA値10ng/mL以上の場合は、MRIの結果にかかわらず系統的生検(±標的生検)を実施した。実験群2は、実験群1と同様であるが、MRI実施のPSAカットオフ値を1.8ng/mLとした。

術前化療でリンパ節転移が陰性化した乳がんのALND省略後の再発、SLNBとTADの比較(OPBC-04/EUBREAST-06/OMA)/SABCS2022

 リンパ節転移陽性乳がんで術前化学療法により転移が陰性化した患者において、診断がセンチネルリンパ節生検(SLNB)単独または標的腋窩郭清(TAD)併用のいずれであっても、腋窩リンパ節郭清(ALND)省略後の早期腋窩再発が非常にまれであったことを、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのGiacomo Montagna氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。再発率は、標的腋窩郭清併用でもセンチネルリンパ節生検単独より有意に低くはなかったという。

AIで乳がん病変の悪性鑑別を~非侵襲的かつ鑑別精度の高い手法の開発目指す

 GEヘルスケア・ジャパン株式会社(以下、GEヘルスケア)と愛媛大学は、乳がんの早期発見・診断精度向上に向けた非侵襲的な検査方法を開発するべく2021年より共同研究を開始している。本研究では同医学部附属病院で得られた乳腺病変のデータに人工知能技術を使用した解析を行っており、その結果、画像データから乳腺病変の良悪性を鑑別できる可能性が示唆された。本結果は、12月6日の記者会見で発表されたもので、将来的に乳がんの診断や治療に伴う身体的負担や心理的不安、検査コストの低減につながる可能性がある。  乳がん領域において、検診のマンモグラフィ画像から病変検出や良悪性判定するためにCAD(Computer-aided diagnosis)が活用されるなど、人工知能による乳がん発症予測の実現化が期待され、実際に陰性のマンモグラフィ検査後5年以内の乳がん発症リスクを推定できることも報告されている1)。一方、精密検査では超音波検査や乳腺MRIを実施した後、米国放射線専門医会(ACR)が中心となって作成したガイドラインBreast imaging reporting and data system(BI-RADS)を用いて良悪性診断を行うが、人間による腫瘤の形・辺縁の評価や判別には限界があることから、診断方法の確立が望まれている。

術前化療で完全奏効のTN or HER2+乳がん、手術省略できるか/Lancet Oncol

 トリプルネガティブ(TN)およびHER2陽性乳がん患者において、術前化学療法により病理学的完全奏効を達成した場合は予後良好とされ、経皮的画像ガイド下吸引補助式乳房組織生検(VACB)により正確に判断することが可能である。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのHenry M. Kuerer氏らは、術前化学療法を受けたTNまたはHER2陽性の早期乳がん患者において、画像ガイド下VACBにより病理学的完全奏効と判定された場合に、手術を省略し放射線治療のみにできるかどうか検討した。The Lancet Oncology誌2022年12月号に掲載。  本試験は米国の7施設による多施設共同単群第II相試験で、対象はcT1-2N0-1M0のTNまたはHER2陽性乳がんの妊娠していない40歳以上の女性で、標準的な術前化学療法後に残存病変が画像上2cm未満の患者とした。画像ガイド下VACBで浸潤性・潜在性がんが確認されなかった場合、手術を省略し、標準的な全乳房放射線治療を行った。主要評価項目は、生検による同側乳がん再発率、安全性はVACBを受けた全患者を対象に評価した。  主な結果は以下のとおり。

脳のエイジングはブラックボックス、画像で認知症予防を実現『MVision』

 脳画像のAI分析によるデータ解析ソフトの開発や医療機関向けの導入・運用サービス提供を行う株式会社エム(以下、エム社)は、第4回ヘルスケアベンチャー大賞において、「脳MRI画像解析に基づく全脳の構造別体積・健康状態の可視化、認知症予防」と題し、それらを実現できる技術を紹介して、見事に大賞を受賞した。本大賞は今年、5つの企業・団体と個人1名が最終審査会まで勝ち抜き、接戦を繰り広げた。  今回、エム社の創業者である森 進氏(ジョンズ・ホプキンズ大学医学部放射線科教授)に、開発経緯から技術提供の将来展望について話を聞いた。  2025年、日本は超高齢化社会を迎える。これは軽度認知障害(MCI)の発症者が約5人に1人(約700万人)と過去最大にまで増加することを意味し、国も認知症対策として新オレンジプランを掲げている。また、先日にはエーザイ・バイオジェンがMCIとアルツハイマー病を対象とした第III相CLARITY AD検証試験で主要評価項目を達成するなど、症状抑制に対する動きは活発である。

放射線ファーマシスト、健康・食品への不安に寄り添う/日本薬剤師会学術大会

 福島県薬剤師会副会長の松下 敦氏は第55回日本薬剤師会学術大会の分科会「災害時の薬剤師の役割」で、同県薬剤師会が2013年から開始した「放射線ファーマシスト」の活動を紹介。過去6年間の相談実績では、放射線ファーマシストの説明内容への市民の納得度は90%超に上ると報告した。  2011年の東日本大震災では福島県双葉郡双葉町と同郡大熊町にまたがる東京電力・福島第一原子力発電所で電源喪失に伴う過酷事故が発生。同原発から半径20km圏内は災害対策基本法に基づく「警戒区域」に定められたほか、その圏外で放射線量が高い地域を原子力災害対策特別措置法に基づく「計画的避難区域」や「緊急時避難準備区域」とし、これら地域で約14~15万人が避難を強いられた。避難区域はその後再編され、避難指示が解除された地域もあるものの、現時点でも原則住民が帰宅できない「帰還困難区域」は、名古屋市の面積とほぼ同じで同県面積の約2.4%を占めている。なお、福島第一原発に関しては現在も廃炉作業は継続中である。

転移乳がんへの局所療法はescalationなのか?/日本癌治療学会

 転移乳がんに対する積極的な局所療法の追加は、がんが治癒しなくても薬剤使用量を減らすことができればescalationではなくde-escalationかもしれない。第60回日本癌治療学会学術集会(10月20~22日)において、岡山大学の枝園 忠彦氏は「転移乳がんに対する局所療法はescalationかde-escalationか?」と題した講演で、3つのクリニカルクエスチョンについて前向き試験の結果を検証し、転移乳がんにおける局所療法の意義について考察した。  転移乳がんにおいて治癒は難しいが、ある特定の患者ではきわめて長期生存する可能性があり、近年そのような症例が増えてきているという。枝園氏はその背景として、PETなどの画像検査の進歩により術後早期に微小転移の描出が可能となったこと、薬物療法が目まぐるしく進歩していること、麻酔や手術が低侵襲で安全になってきていること、SBRT(体幹部定位放射線治療)が保険適用され根治照射が可能になったことを挙げた。この状況の下、3つのクリニカルクエスチョンについて考察した。

侵襲的冠動脈造影とCT、MACEリスクに性差はあるか/BMJ

 侵襲的冠動脈造影(ICA)のために紹介された、安定胸痛を有する閉塞性冠動脈疾患(CAD)の検査前確率が中程度の患者において、初期画像診断に用いるCTはICAと比較して、有害心血管イベントのリスクは同等であることがすでに報告されているが、その有効性に男性と女性で差はないことが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のKlaus F. Kofoed氏ら「DISCHARGE試験」グループが報告した。CTは、CADの検査前確率が低~中程度の患者において、閉塞性CADを除外することが可能であるが、男性より女性で精度が低くなる可能性があり、CADの診断および臨床管理において、CTとICAの臨床転帰に関する有効性の男女差はこれまで不明であった。BMJ誌2022年10月19日号掲載の報告。

センチネルリンパ節転移乳がん、ALNDとRNIの必要性についての検討/日本癌治療学会

 センチネルリンパ節転移陽性乳がんにおいて、腋窩リンパ節郭清(ALND)や領域リンパ節照射(RNI)がどのような症例で必要となるのかについては議論がある。Sentinel Node Navigation Surgery研究会では、センチネルリンパ節転移陽性例において、センチネルリンパ節生検(SNB)単独群とSNB後の腋窩リンパ節郭清(ALND)群を比較する多施設共同前向きコホート研究を実施。井本 滋氏(杏林大学)が、第60回日本癌治療学会学術集会(10月20~22日)で結果を報告した。  本研究では、cT1-3N0-1M0の女性乳がん患者を対象とし、組織学的または分子生物学的診断で1~3個のセンチネルリンパ節微小転移またはマクロ転移陽性が確認された場合に、医師の裁量でSNB単独またはALNDの追加を決定した。SNB前後の化学療法は可とし、両側および遊離腫瘍細胞(ITC)の症例は除外された。