Luminal A乳がん、温存術後の放射線療法は省略可?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/08/24

 

 T1N0(腫瘍径2cm未満、リンパ節転移陰性)、Grade1/2のLuminal Aタイプ乳がんで、乳房温存手術を行った55歳以上の患者において、術後放射線療法を実施しない場合でも5年局所再発率は2.3%と低かったことが、カナダ・Hamilton Health SciencesのTimothy J. Whelan氏らが500例を対象に行った前向きコホート試験の結果で示された。術後放射線療法は、乳房温存手術後の局所再発リスクを低減するために行われるが、利便性が低く、高額で、短期・長期の副作用を伴う。臨床病理学的因子のみでは、放射線療法の省略が可能な局所再発リスクが低い女性の同定に有用ではない。分子的に定義された乳がんの内因性サブタイプは、付加的な予後情報を得られる可能性があることから、本試験が行われた。NEJM誌2023年8月17日号掲載の報告。

Ki67指数13.25%以下の患者を対象に、放射線療法を未実施

 研究グループは、T1N0、Grade1/2のLuminal Aタイプ乳がん(定義:エストロゲン受容体陽性率1%以上、プロゲステロン受容体陽性率20%超、ヒト上皮成長因子受容体2陰性、Ki67指数13.25%以下)で乳房温存手術を行い、術後に内分泌療法を受けた55歳以上の女性を対象に前向きコホート試験を行った。Ki67の免疫組織化学的解析は中央で実施。Ki67指数が13.25%以下の患者を試験に組み入れ、放射線療法を実施しなかった。

 主要アウトカムは、同側乳房の局所再発とした。放射線腫瘍医と乳がん患者の協議のうえで、5年時点の累積発生率の両側90%信頼区間(CI)の上限が5%未満であれば、5年局所再発のリスクは許容範囲であるとした。

5年局所再発率の90%CI上限は3.8%、事前規定の5%未満内

 2013年8月~2017年7月に登録した740例のうち、臨床的基準を満たした500例を対象に試験を行った。

 試験参加後5年時点で、局所再発が報告された患者は2.3%(90%CI:1.3~3.8、95%CI:1.2~4.1)であり、事前規定の上限を超えず、5年局所再発リスクは許容範囲だった。

 対側乳房の乳がん発生率は1.9%(90%CI:1.1~3.2)で、局所、領域、遠隔を問わないすべての再発率は2.7%(1.6~4.1)だった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)