日本人NSCLCのオシメルチニブ早期減量は脳転移の発生/進行リスク

肺がんは初診時に脳転移が発生していることも多く、非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち20~40%は治療経過中に脳転移が発生するとされている1,2)。NSCLC患者はEGFR変異があると脳転移のリスクが上昇するとされており、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の脳転移制御に対する役割が注目されている。そこで、日本医科大学付属病院の戸塚 猛大氏らの研究グループは、オシメルチニブの早期減量が脳転移に及ぼす影響を検討した。その結果、オシメルチニブの早期減量は脳転移の発生または進行のリスクであり、治療開始前に脳転移がある患者、75歳以下の患者でリスクが高かった。本研究結果は、Cancer Medicine誌オンライン版2023年9月11日号に掲載された。
2018年8月~2021年10月の期間に1次治療としてオシメルチニブを投与されたEGFR変異(ex19del/L858R)を有するNSCLC患者79例を後ろ向きに追跡した。オシメルチニブ早期減量の影響を評価するため、治療開始4ヵ月時点においてオシメルチニブによる治療を継続し、病勢コントロールが達成されている患者62例を解析対象とした。対象患者を治療開始後4ヵ月以内のオシメルチニブ減量の有無によって2群に分類し(通常用量群、減量群)、脳転移の発生または進行までの期間、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を検討した。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者62例中13例が治療開始4ヵ月以内のオシメルチニブ減量を経験した。減量群13例の内訳は、オシメルチニブ40mgを1日1回投与が7例、オシメルチニブ80mgを隔日投与が6例であった。
・早期減量の主な理由は、消化器毒性(4例)、皮疹(3例)であった。
・脳転移の発生または進行までの期間は、減量群が通常群と比べて短かった(ハザード比[HR]:4.47、95%信頼区間[CI]:1.52~13.11)。
・治療開始1年間における脳転移の発生または進行の累積発生率は、減量群23.1%、通常用量群5.0%であった。
・治療開始前に脳転移ありのサブグループ(HR:6.23、95%CI:1.12~34.64)、75歳未満のサブグループ(同:4.84、1.40~16.76)において、減量群が通常用量群と比べて脳転移の発生または進行のリスクが高かった
・PFS中央値は減量群が22.3ヵ月であったのに対して、通常用量群は24.6ヵ月であり、有意差は認められなかった(HR:1.49、95%CI:0.67~3.32)。
・OSについても有意差は認められなかった(HR:1.06、0.22~4.99)。
(ケアネット 佐藤 亮)
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