精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:10

統合失調症に対する簡易心理的介入の有効性~メタ解析

 統合失調症患者に対する認知行動療法(CBT)は、国際的な臨床ガイドラインで推奨されているにもかかわらず実施率が低い。そのため、CBTで推奨される最低16セッションより短い、簡易な短期の個別心理的介入の開発が進められてきた。英国・Hampshire and Isle of Wight Healthcare NHS Foundation TrustのBlue Pike氏らは、統合失調症患者に対する既存の簡易介入(brief intervention)をシステマティックに特定し、その有効性を評価する初めてのメタ解析を実施した。Psychological Medicine誌2025年5月13日号の報告。

男女の認知症発症リスクに対する性ホルモンの影響

 認知症は、世界的な公衆衛生上の大きな問題であり、そのリスクは性別により異なることが知られている。女性のアルツハイマー病およびその他の認知症発症率は、男性の約2倍であるといわれている。テストステロン値は、高齢者の認知機能に影響を及ぼすと考えられているが、これまでの研究では一貫性のない結果が報告されており、性ホルモンと認知症との関係は、依然として明らかになっていない。中国・山東大学のYanqing Zhao氏らは、大規模データベースを用いて、男女の認知症発症リスクに対する性ホルモンの影響を検討した。Clinical Endocrinology誌オンライン版2025年5月11日号の報告。

精神疾患を併存している肥満者は減量治療抵抗性/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の第68回年次学術集会(会長:金藤 秀明氏[川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学 教授])が、5月29~31日の日程で、ホテルグランヴィア岡山をメイン会場に開催された。  今回の学術集会は「臨床と研究の架け橋 ~translational research~」をテーマに、41のシンポジウム、173の口演、ポスターセッション、特別企画シンポジウム「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。  肥満や肥満症の患者では、うつ病、不眠などの精神疾患を併存しているケースが多い。こうした併存症は診療の際にアドヒアランスなどに影響するなど、臨床現場では治療の上で課題となっている。また、精神疾患が体重の増加などにも影響することが指摘されている。

統合失調症の認知機能低下に影響を及ぼす向精神薬

 認知機能低下は、統合失調症でみられる中心的な病態の1つであるが、確立された薬理学的治療法は、いまだ存在しない。統合失調症治療では、主に抗精神病薬が用いられるが、統合失調症患者の認知機能に及ぼす影響については、実臨床における日常的な研究は行われていなかった。米国・The Stanley Research Program at Sheppard PrattのFaith Dickerson氏らは、統合失調症患者を対象としたリアルワールドコホート研究における、向精神薬と認知機能との関連を評価した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2025年5月8日号の報告。

アリピプラゾールLAIへの切り替え、前治療薬による有用性の違いは?

 アリピプラゾールの持続性注射剤(LAI)は、統合失調症の治療において安全性および有効性が実証されている。しかし、アリピプラゾールに対する臨床反応には個人差があり、切り替え前に服用していた抗精神病薬によるD2パーシャルアゴニストおよびD2アップレギュレーションが関連している可能性が示唆されている。韓国・ソウル大学のEuitae Kim氏らは、臨床的に安定した統合失調症患者における経口抗精神病薬からアリピプラゾールLAI月1回(AOM)投与への切り替えについて、前治療の抗精神病薬を考慮し、症状悪化または有害事象の有無を評価した。Schizophrenia Research誌2025年7月号の報告。

世代を超えた自閉スペクトラム症と認知症との関係

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、認知機能低下や認知症のリスクが高いことを示唆するエビデンスが報告されている。この関連性が、ASDと認知症の家族的因子によるものかは不明である。スウェーデン・カロリンスカ研究所のZheng Chang氏らは、ASD患者の親族における認知症リスクを調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2025年5月14日号の報告。  スウェーデンのレジスターにリンクさせた家族研究を実施した。1980〜2013年にスウェーデンで生まれた個人を特定し、2020年までフォローアップを行い、ASDの臨床診断を受けた人を特定した。このASD患者と両親、祖父母、叔父/叔母をリンクさせた。ASD患者の親族における認知症リスクの推定には、Cox比例ハザードモデルを用いた。認知症には、すべての原因による認知症、アルツハイマー病、その他の認知症を含めた。親族の性別およびASD患者の知的障害の有無で層別化し、解析を行った。

身体活動量が十分でも座位時間が長いと認知機能は低下する?

 身体活動を毎日していてもソファで過ごす時間が長い高齢者は、アルツハイマー病(AD)を発症しやすい可能性があるようだ。新たな研究で、高齢者における長い座位時間は、認知機能の低下やADの発症に関連する脳領域の萎縮と関連していることが明らかになった。米ピッツバーグ大学神経学分野のMarisssa Gogniat氏らによるこの研究結果は、「Alzheimer’s & Dementia」に5月13日掲載された。  Gogniat氏らは、50歳以上の成人404人(平均年齢71±8歳、男性54%)を対象に、座位時間とADの関係を調査した。試験参加者は、腕時計型の活動量計を7日間装着して活動量を測定したほか、神経心理検査と脳の3T MRI検査を受けた。試験開始時の活動量計での測定時には、79%の参加者で認知機能に障害は見られなかった。また、87%が米疾病対策センター(CDC)が推奨する身体活動量(中〜高強度の運動〔MVPA〕を1週間当たり150分以上)を満たしており、1日当たりのMVPAの時間は平均61分だった。

高齢者の不安症状に最も効果的な薬剤クラスは?

 不安とその障害は、高齢者で頻繁にみられる症状である。高齢者における精神薬理学的治療リスクを考慮すると、不安のマネジメントに関する臨床的意思決定は、入手可能な最も強力なエビデンスに基づき行われるべきである。カナダ・マックマスター大学のSarah E. Neil-Sztramko氏らは、高齢者における不安の薬物療法に関するエビデンスを包括的に統合するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Lancet. Psychiatry誌2025年6月号の報告。

マウステーピングは睡眠の質を改善する?

 最近、ソーシャルメディアを席巻しているトレンドの一つであるマウステープの使用について、残念な研究結果が報告された。睡眠時にテープなどで口を閉じた状態にすること(マウステーピング)は、口呼吸を防いで鼻呼吸をサポートし、口腔内の乾燥を防ぎ、いびきや睡眠時の一時的な呼吸停止(睡眠時無呼吸)を防ぐことで睡眠の質を高めるとされている。しかし新たな研究で、マウステーピングが実際に睡眠の質の改善に有効であることを示すエビデンスは限定的であり、場合によっては窒息のリスクを高める可能性のあることが明らかにされた。ロンドン健康科学センター(カナダ)耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野のBrian Rotenberg氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に5月21日掲載された。

多疾患併存はうつ病リスクを高める?

 慢性疾患との闘いは人を疲弊させ、うつ病になりやすくするようだ。新たな研究で、長期にわたり複数の慢性疾患を抱えている状態(多疾患併存)は、うつ病リスクの上昇と関連することが明らかにされた。リスクの大きさは慢性疾患の組み合わせにより異なり、一部の組み合わせでは特にリスクが高くなることも示されたという。英エディンバラ大学一般診療学分野教授のBruce Guthrie氏らによるこの研究結果は、「Communications Medicine」に5月13日掲載された。  Guthrie氏らは、UKバイオバンク研究参加者のうち、ベースライン時に1つ以上の慢性疾患を有していた37〜73歳の成人14万2,005人のデータを、69種類の慢性疾患の有無に基づき分類した。次いで、4種類のクラスタリング手法を比較検討し、最適と判断されたモデルを選定した。その後、ベースライン時にうつ病の既往のなかった14万1,011人(うち3万551人はベースライン時に身体疾患のなかった対照)を対象に、多疾患併存の特徴による分類(クラスター)ごとに、その後のうつ病発症との関連を比較検討した。