精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:10

自分のトリセツを知るとだいぶ楽になる(解説:岡村毅氏)

認知行動療法について、皆さんはどのくらい知っているだろうか? 医療が「悪いところを取る」「折れたものをつなげる」「薬を飲んで治す」といった領域だけだと思っているシンプルな人にはなかなかわかってもらえない。大学生などに説明するときに使っているのは「自分のトリセツを知ることだ」という説明である。たとえば、こうである…。最近とても暑いので、精神科の外来では調子の悪いパニック症の人によく出会う。「空気が熱いと息苦しい感じがする。パニック発作のときみたいな体験をする。そうなると不安が亢進し、呼吸が速くなり、確かにパニック発作が起きてしまう」と説明すると、多くの患者さんは良くなる。自分の身に何が起きているかわかるからである。

日本の認知症動向、その傾向と地域差

 アルツハイマー病やその他の認知症は、深刻な公衆衛生上の懸念事項であり、日本においてはさらに重要な課題となっている。ベトナム・RMIT University VietnamのDeepak Kumar Behera氏らは、アルツハイマー病やその他の認知症負担の経時的傾向を調査し、関連するリスク因子を特定し、時系列モデリングを用いて将来予測を行った。Alzheimer's & Dementia誌2025年7月号の報告。  世界疾病負担(GBD)研究2021のデータを用いて、日本におけるアルツハイマー病やその他の認知症の傾向を分析し、罹患率、死亡率、障害調整生存年(DALY)を評価した。リスク因子の特定には回帰分析を、2021〜30年までの疾病負担の予測には自己回帰統合移動平均(ARIMA)モデルを用いた。

孤独感は心身の健康に悪影響を及ぼす

 孤独感は、うつ病や体調不良のリスクを劇的に高めるようだ。新たな研究で、常に孤独を感じていると答えた人では半数(約50%)がうつ病の診断を受けると予測されたのに対し、孤独を感じたことがない人では10%弱にとどまると推定された。また、常に孤独を感じている人では、精神的・身体的な不調を感じる日も多かったという。米ハワード大学医学部のOluwasegun Akinyemi氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に7月9日掲載された。研究グループは、「孤独感は単なる感情状態ではない。心身の健康に明らかな影響を及ぼす。孤独感への対処は、うつ病を軽減し、全体的なウェルビーイングを改善するために、公衆衛生上の重要な優先事項となる可能性がある」と述べている。

早い時間に寝ると翌日の運動量が増える

 古くから「早寝早起き」は健康や気分、さらには運気にも良いとされているが、運動量を増やすというメリットもあることが報告された。モナッシュ大学(オーストラリア)のElise Facer-Childs氏らの研究によるもので、詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に6月30日掲載された。論文の上席著者である同氏は、「睡眠と身体活動はどちらも健康にとって非常に重要だが、それら両者がいかに複雑に絡み合っているかを、われわれは今まで十分に理解していなかった」と述べている。

医療従事者におけるベンゾジアゼピン使用が仕事のパフォーマンスに及ぼす影響

 不眠症や不安症の治療によく用いられるベンゾジアゼピン(BZD)は、スペインでの使用が増加しており、濫用や依存のリスクに対する懸念が高まっている。スペイン・Miguel de Cervantes European UniversityのCarlos Roncero氏らは、医療従事者におけるBZDおよびその他の向精神薬の使用状況を調査し、その使用率、関連因子、そしてCOVID-19パンデミック後のメンタルヘルス問題との関連性を評価した。Journal of Clinical Medicine誌オンライン版2025年6月16日号の報告。  Salamanca University Healthcare Complex(CAUSA)の医療従事者1,121人を対象に、2023年3月〜2024年1月に匿名オンライン調査を実施した。完全解答が得られた685人のデータを分析した。不眠症、不安症、うつ病の評価には、不眠症重症度質問票(ISI)および患者健康アンケート(PHQ-4)を用いた。

抗うつ薬中止後の離脱症状発生率とうつ病再発への影響

 抗うつ薬中止後にみられる離脱症状の発生率やその性質は依然としてよくわかっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMichail Kalfas氏らは、抗うつ薬の服用を中止した患者において、標準化された尺度(Discontinuation-Emergent Signs and Symptoms[DESS]など)を用いた離脱症状の有無およびそれぞれの離脱症状の発生率を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年7月9日号の報告。  2023年11月7日までに公表された研究をEmbase、PsycINFO、Ovid MEDLINE、Cochrane Libraryの各データベースよりシステマティックに検索した。対象研究は、抗うつ薬中止後に、標準化された尺度を用いて離脱症状を報告したランダム化臨床試験(RCT)、それぞれの離脱症状(有害事象など)を報告したRCTとした。抽出したデータは、2人のレビューアーによるクロスチェックを行った。11件のRCTより未発表のデータも追加で対象に含めた。抗うつ薬中止患者、抗うつ薬継続患者、プラセボ中止患者との標準化平均差(SMD)を算出するために、ランダム効果メタ解析を実施した。プラセボと比較したそれぞれの離脱症状の発生率を評価するため、割合およびオッズ比(OR)のメタ解析を行った。異なる抗うつ薬の比較は、サブグループ解析として実施した。データ解析は、2024年9〜12月に行った。主要アウトカムは、標準化された尺度または標準化されていない尺度を用いて測定した抗うつ薬中止に伴う離脱症状の発生率とその性質とした。

うつ病の維持期治療:患者さんの視点から/日本うつ病学会

 2025年、うつ病診療ガイドラインが改訂され、うつ病の維持期治療について新しく取り上げられることになった。寛解の後、どのように治療を継続するか、あるいは治療を終了するのかは非常に重要である。  2025年7月11日、第22回日本うつ病学会総会共催シンポジウムにて「うつ病の維持期治療~患者さんの声とともにリカバリーの課題について考える~」と題したセッションが開催され、うつ病の経験を持つ林 晋吾氏が患者さん本人の視点から講演を行った。  林氏は2010年にまずパニック障害を発症し、その後うつ病を発症した。現在は寛解状態にあり、うつ病などの精神疾患を持つ患者さんの家族向けのコミュニティサイトの運営を行っている。当事者としての経験と家族支援を通して見えた維持期における課題として、残遺症状とEmotional Blunting、そして患者家族を含めた環境整備を挙げた。

子供の自殺念慮に至る2つの経路が明らかに

 自殺念慮は、若者の間で大きな問題となっている。発達過程における軌跡と関連するメンタルヘルス症状については、これまで十分に解明されていなかった。カナダ・McGill UniversityのMarie-Claude Geoffroy氏らは、思春期初期から若年成人期における自殺念慮の軌跡を調査し、最適な予防策を検討するため、先行または併発するメンタルヘルス症状の特定を試みた。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年7月2日号の報告。  参加者、保護者、教師を含む最新の縦断的コホート研究であるカナダ・ケベック州児童発達縦断研究(QLSCD)のデータを用いて検討を行った。QLSCDは、同州で1997〜98年に生まれた2,120人の単胎児を対象とした人口ベースの出生コホート研究で、2023年(25歳)までフォローアップ調査が行われている。データ分析は、2024年9月〜2025年2月に実施した。主要アウトカムは、過去12ヵ月間の重篤な自殺念慮の有無とし、参加者への質問票により評価した(13、15、17、20、23、25歳時)。調査対象は、親および教師によるメンタルヘルス症状の報告(内向性、外交性など)、検証済み質問票を用いた自己報告とし、5つの発達段階(就学前:3〜5歳、児童期:6〜12歳、思春期前期:13歳、思春期中〜後期:15〜17歳、若年成人:20〜25歳)で標準化した。

統合失調症患者の認知機能改善に対するメトホルミンのメカニズム

 認知機能低下は、統合失調症の長期予後に悪影響を及ぼす病態であるが、効果的な臨床治療戦略は依然として限られている。トリカルボン酸(TCA)回路の破綻と海馬における脳機能異常が認知機能低下の根底にある可能性が示唆されているが、これらの本質的な因果関係は十分に解明されていない。とくに、ビグアナイド系糖尿病薬であるメトホルミンは、統合失調症患者のさまざまな認知機能領域を改善することが示されており、TCA回路を調節する可能性がある。中国・The Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのJingda Cai氏らは、以前、研究において、メトホルミン追加投与が統合失調症患者の認知機能を改善することを報告した。本研究では、認知機能改善とTCA回路代謝物および脳機能との関連を調査した。BMC Medicine誌2025年7月1日号の報告。

REM睡眠中の無呼吸は記憶固定化と関連する脳領域に影響を及ぼす可能性

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に関連した低酸素血症は、前頭頭頂葉脳血管病変と関連し、この病変は内側側頭葉(MTL)の統合性低下や睡眠による記憶固定化の低下と関連するという研究結果が、「Neurology」6月10日号に掲載された。  米カリフォルニア大学アーバイン校のDestiny E. Berisha氏らは、認知機能に障害のない高齢者を対象に、実験室内での終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)および睡眠前後の感情記憶識別能力を実施し、それらを評価する観察研究を行った。PSGから導出したOSAの変数には、無呼吸低呼吸指数、総覚醒反応指数、最低酸素飽和度が含まれた。研究の早期時点で、MRIを用いて脳全体および脳葉の白質高信号域(WMH)の体積とMTLの構造(海馬体積、嗅内皮質〔ERC〕の厚さ)を評価した。