医療一般|page:1

高所得のアジア太平洋地域の男性片頭痛、女性とは対照的に増加傾向

 片頭痛は有病率の高い神経疾患であり、年齢や性別を問わず生活の質に大きな影響を及ぼす疾患である。さまざまな人口統計学的グループでの影響が報告されているが、既存の研究は主に一般集団、女性、青少年に焦点が当てられており、男性が経験する片頭痛負担については、十分に調査されていなかった。中国・同済大学のHaonan Zhao氏らは、男性における30年にわたる片頭痛の影響に関する知見を明らかにするため、1990〜2021年の世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors study:GBD)のデータを用いて、10〜59歳の男性片頭痛の世界的な有病率、発症率、障害調整生存年(DALY)を評価した。Frontiers in Neurology誌2025年6月6日号の報告。

わが国の乳房部分切除術後の長期予後と局所再発のリスク因子~約9千例の後ろ向き研究/日本乳癌学会

 近年の乳がん治療の進歩によって、乳房部分切除術後の局所再発率と生存率が変化していることが推測される。また、乳房部分切除術の手技は国や解剖学的な違いによって異なり、国や人種の違いが局所再発リスクのパターンに影響する可能性がある。今回、聖路加国際病院の喜多 久美子氏らは、日本のリアルワールドデータを用いた多施設共同コホート研究で、近年の日本における乳房部分切除術後の局所再発率と予後、局所再発のリスク因子を検討し、第33回日本乳癌学会学術総会で報告した。本研究より、発症時若年、腫瘍径2cm以上、高Ki-67、脈管侵襲、術後療法や放射線療法を受けていないことが局所再発のリスク因子であり、術後療法はすべてのサブタイプで局所再発リスク低減に寄与することが示唆されたという。

医師にも経営能力とリーダーシップが不可欠な時代のソリューション

 医療機関の経営環境が厳しさを増すなか、医師にも経営能力が求められている。順天堂大学の猪俣 武範氏は、眼科の臨床・研究の傍ら病院管理学研究室の准教授も務める。米国でMBAを取得し順天堂医院の経営にも携わる猪俣氏が提案する、多忙な医師が効率的に経営能力を身に付けるための解決策とは?  今、わが国の病院経営は危機的な状況にあります。診療報酬は抑制される一方、慢性的な人手不足で医療現場は疲弊し、病院の6割は赤字だと報じられています。医師も経営をしっかり学ばなければならない時代になったといえるでしょう。

13年ぶり改定「尋常性白斑診療ガイドライン第2版」、ポイントは

 2012年の初版発表以降13年ぶりに、「尋常性白斑診療ガイドライン第2版2025」が公表された。治療アルゴリズムや光線療法の適応年齢の変更、2024年発売の自家培養表皮「ジャスミン」を用いた手術療法の適応の考え方などについて、ガイドライン策定委員会委員長を務めた大磯 直毅氏(近畿大学奈良病院皮膚科)に話を聞いた。  治療アルゴリズムの大きな変更点としては、疾患活動性を評価するための方法が明確になった点が挙げられる。尋常性白斑の疾患活動性に関連する臨床症状の評価および定量化のための方法として、2020年にVSAS(Vitiligo Signs of Activity Score)が発表された。

糖負荷後1時間血糖値は死亡予測マーカーになるか/東北大学

 将来起こりうる心疾患や悪性腫瘍を予防したいとは誰もが思う。これらを予測する生物学的マーカーについては、長年さまざまな研究が行われている。今回、この予測マーカーについて、東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝・内分泌内科学分野の佐藤 大樹氏らの研究グループは、岩手県花巻市大迫町の平均62歳の住民を対象に糖摂取後の血糖値と寿命の関係を調査した。その結果、ブドウ糖負荷後1時間血糖値(1-hrPG)が170mg/dL未満の群では、1-hrPG170mg/dL以上の群と比較して、心臓疾患などの死亡が少ないことが明らかになった。この研究結果は、PNAS NEXUS誌2025年6月2日号に掲載された。

コーヒー摂取量と便秘・下痢、IBDとの関連は?

 コーヒーは現在世界で最も広く消費されている飲料の1つであり、米国では成人の約64%が毎日コーヒーを飲み、1日当たり約5億1,700万杯のコーヒーが消費されているという。コーヒーに含まれるカフェインが消化器症状に与える影響は、世界中で継続的に議論されてきた。カフェイン摂取と排便習慣、および炎症性腸疾患(IBD)との関連性を調査した中国医学科学院(北京)のXiaoxian Yang氏らによる研究結果が、Journal of Multidisciplinary Healthcare誌2025年6月27日号に掲載された。  研究者らは、2005~10年の国民健康栄養調査(NHANES)のデータを利用し、カフェイン摂取量を導き出した。排便習慣(便秘・下痢)およびIBDはNHANESの自己報告データに基づいて定義された。ロジスティック回帰モデルを用いて、カフェイン摂取量と慢性便秘、慢性下痢、IBDとの関連を評価した。年齢、性別、人種、教育レベル、社会経済的地位、喫煙状況、飲酒状況、BMIなどの潜在的な交絡因子を調整した。

青年期統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールの長期安全性

 米国・Evolution Research GroupのSarah D. Atkinson氏らは、青年期統合失調症の維持療法として非定型抗精神病薬ブレクスピプラゾールを使用した際の長期的な安全性および忍容性を評価するため、24ヵ月多施設共同単群オープンラベル試験を実施し、その中間解析結果を報告した。JAACAP Open誌2024年5月27日号の報告。  対象は、13〜17歳の統合失調症患者。経口ブレクスピプラゾール1〜4mg/日(可変用量)を投与した。主要エンドポイントは、治療関連有害事象(TEAE)、重症度別TEAE、重篤なTEAE、治療中止に至った有害事象の発現率とした。  主な結果は以下のとおり。

慢性肝疾患急性増悪に遺伝子編集された豚の肝臓を用いる治験開始

 慢性肝疾患の急性増悪の治療として、豚の肝臓を利用する治験が米国で間もなく開始される。この治験では、豚の肝臓を患者に移植するのではなく、血液を体外で循環させ肝機能を豚の肝臓に代替させる。それによって患者の肝臓を一時的に休息させて、その間に肝機能が回復する可能性を期待できるという。  AP通信によると、遺伝子編集された豚の臓器を開発している米国マサチューセッツ州のeGenesis社がこのほど、米食品医薬品局(FDA)から、この種の治療としては初となる治験の実施を承認された。

子ども向けネット動画にジャンクフードの宣伝が氾濫

 YouTubeで動画を見ている子どもは、キャンディーや加糖飲料、ファストフード、甘いスナックや塩辛いスナックなどのジャンクフードを宣伝するメッセージを頻繁に目にしていることが、新たな研究で明らかにされた。この研究によると、6~8歳の子どもの75%、3~5歳の子どもの36%が、自分のモバイル端末で自由に選んだYouTubeまたはYouTube Kidsの動画を視聴中にジャンクフードの宣伝にさらされていたという。米コネチカット大学ラッド・センター・フォー・フードポリシー・アンド・ヘルス(以下、ラッド・センター)のJennifer Harris氏らによるこの研究結果は、「Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics」に6月25日掲載された。

入力ミスや俗語はAIの医療評価に影響する

 誤字・脱字や余分な空白などの一般的な入力ミスは、医療記録を確認して医療従事者を支援するために設計された人工知能(AI)プログラムに悪影響を及ぼす可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のAbinitha Gourabathina氏らによるこの研究結果は、米国計算機学会(Association for Computing Machinery;ACM)主催によるFAccT 2025(6月23〜25日、ギリシャ・アテネ)で発表された。  臨床現場における大規模言語モデル(LLM)の採用は増加傾向にあり、慢性疾患の管理、診断支援、文書作成、請求、患者とのコミュニケーションなどの管理タスクを含むさまざまな医療アプリケーション向けに開発されている。この研究は、Gourabathina氏が、患者から送られてくる症状報告や相談などのメッセージに記されている性別に関する手がかりを入れ替え、それをAIに提示する実験を行ったことから始まった。同氏は、単純な書式の誤りがAIの回答に意味のある変化をもたらすことに驚いたという。

最新の新型コロナワクチンは新たな変異株にも有効

 最新の新型コロナワクチンは、新たな新型コロナウイルス変異株に対しても有効であることが、新たな研究で示された。2023〜2024年版の新型コロナワクチンについて検討したこの研究では、ワクチンは特に重症化予防に対して明確な追加的効果のあることが確認されたという。米レーゲンストリーフ研究所生物医学情報センターのShaun Grannis氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月25日掲載された。  この研究では、米国の6つのヘルスケアシステムの2023年9月21日から2024年8月22日までのデータを用いて、新型コロナワクチン(オミクロン株XBB.1.5対応1価ワクチン)の有効性が検討された。主要評価項目は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による救急外来(ED)や緊急ケア(UC)受診、入院、および重症化(集中治療室〔ICU〕入室または入院死亡)の予防に対する有効性を検討した。なお、本研究の対象期間には、オミクロンXBB株およびJN.1株の流行期も含まれている。

昼~午後早い時間の昼寝、死亡リスクが上昇する可能性

 中高年層にとって午後の昼寝は魅惑的かもしれないが、大きな代償を伴う可能性があるようだ。特定の昼寝パターンを持つ人では、全死因死亡リスクが高まる可能性のあることが、米マサチューセッツ総合病院のChenlu Gao氏らによる研究で明らかになった、この研究結果は、米国睡眠医学会(AASM)と米睡眠学会(SRC)の合弁事業であるAssociated Professional Sleep Societies, LLC(APSS)の年次総会(SLEEP 2025、6月8〜11日、米シアトル)で報告された。  Gao氏は、「健康や生活習慣の要因を考慮しても、日中に長く眠る人や日中の睡眠パターンが不規則な人、正午から午後の早い時間に多く眠る人は全死因死亡のリスクが高かった」とAPSSのニュースリリースで述べている。

高齢の日本人男性で腸内細菌叢がサルコペニアと相関か

 我々の腸内には、約1,000種類・100兆個にも及ぶ細菌が存在している。これらの細菌は、それぞれ独自のテリトリーを維持しながら腸内細菌叢(GM)という集団を形成している。近年では、GMが全身疾患と関連していることが明らかになってきた。今回、日本の高齢者を対象とした研究において、男性サルコペニア(SA)患者では、非SA患者に比べてGMのα多様性が有意に低下しβ多様性にも有意な違いを認めることが報告された。研究は順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター消化器内科の浅岡大介氏らによるもので、詳細は「Nutrients」に5月21日掲載された。

HR+/HER2-乳がんで術後S-1が本当に必要な再発リスク群は?/日本乳癌学会

 経口フッ化ピリミジン系薬剤S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)は、POTENT試験によって、HR+/HER2-乳がんに対する標準的な術後内分泌療法に1年間併用することで再発抑制効果が高まることが示され、2022年11月に適応が拡大した。しかし、POTENT試験の適格基準はStageI~IIIBと幅広く、再発リスク群によっては追加利益が得られないという報告もあるため、S-1の追加投与が本当に必要な患者に関する検討が求められていた。名古屋大学医学部附属病院の豊田 千裕氏らの研究グループは、S-1適応拡大以前の症例によるPOTENT試験に準じた適格基準別の予後を比較してS-1追加投与の意義について検討し、その結果を第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。

Lp(a)による日本人のリスク層別化、現時点で明らかなこと/日本動脈硬化学会

 第57回日本動脈硬化学会総会・学術集会が7月5~6日につくば国際会議場にて開催された。本稿ではシンポジウム「新たな心血管リスク因子としてのLp(a)」における吉田 雅幸氏(東京科学大学先進倫理医科学分野 教授)の「今こそ問い直すLp(a):日本におけるRWDから見えるもの」と阿古 潤哉氏(北里大学医学部循環器内科学 教授)の「二次予防リスクとしてのLp(a)」にフォーカスし、Lp(a)の国内基準として有用な値、二次予防に対するLp(a)の重要性について紹介する。

老年期気分障害における多様なタウ病理がPET/剖検で明らかに

 老年期気分障害は、神経変性認知症の前駆症状の可能性がある。しかし、うつ病や双極症を含む老年期気分障害の神経病理学的基盤は依然としてよくわかっていない。国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の黒瀬 心氏らは、老年期気分障害患者におけるアルツハイマー病(AD)および非ADタウ病態の関与について調査した。Alzheimer's & Dementia誌2025年6月号の報告。  対象は、老年期気分障害患者52例および年齢、性別をマッチさせた健康対照者47例。18F-florzolotauおよび11C-Pittsburgh compound Bを用いたtau/Aβ PET検査を実施した。さらに、さまざまな神経変性疾患を含む208例の剖検例における臨床病理学的相関解析を行った。

前立腺全摘除術後3カ月以上のPSAモニタリングで過剰治療リスクが低減

 前立腺がんに対する根治的前立腺全摘除術(RP)後は前立腺特異抗原(PSA)値を3カ月以上にわたり測定することで、RP後の過剰治療リスクを最小限に抑えられる可能性があるという研究結果が「JAMA Oncology」に3月13日掲載された。  ハンブルク・エッペンドルフ大学病院(ドイツ)のDerya Tilki氏らは、RP後の持続的なPSA値を正確に記録するために必要なモニタリング期間について、コホート研究で調査を行った。この研究には、1992年から2020年の間に2カ所の大学病院でRPを受けたT1N0M0からT3N0M0の前立腺がん患者を対象とした。探索コホートには3万461人の患者が、検証コホートには1万2837人の患者が含まれた。

悪夢は早期死亡リスクを高める

 悪夢に関しては、「死ぬほど怖い」という表現が当てはまる可能性があるようだ。悪夢を頻繁に見る人は生物学的年齢が進んでおり、早死にするリスクが約3倍高まることが、新たな研究で明らかにされた。この研究結果は、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(UCL)の神経科学者であるAbidemi Otaiku氏により、欧州神経学会(EAN 2025、6月21〜24日、フィンランド・ヘルシンキ)で発表された。  Otaiku氏は、「睡眠中の脳は夢と現実を区別することができない。それゆえ、悪夢を見て目が覚めたときにはたいていの場合、汗をかいて息を切らし、心臓がドキドキしている。これは、闘争・逃走反応が引き起こされているからだ。このストレス反応は、起きている間に経験するどんなことよりも激しい場合がある」と同氏は話す。

実臨床でのGLP-1RAの減量効果は治験の成績ほどでない

 減量目的で使われているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の実臨床における有効性は、治験段階で認められたほどには高くないようだ。米クリーブランドクリニックのHamlet Gasoyan氏らの研究によるもので、詳細は「Obesity」に6月10日掲載された。  GLP-1RAは、血糖降下作用とともに、食欲抑制作用などを介して減量効果を発揮する薬。セマグルチド(商品名はウゴービ)やチルゼパチド(同ゼップバウンド)などがあり、それらが承認される根拠となった治験では、15~21%の体重減が報告されていた。しかし今回の研究では、実際に処方された患者の1年後の体重変化は、平均9%弱の減少にとどまっていた。研究者によると、実臨床では治療を中止する人や、治験で使われた用量より少ない量が処方されているケースが多いことが、有効性低下の理由として考えられるという。

新型コロナでがん患者の自宅看取りが増加/がん研究センター

 国立がん研究センターがん対策研究所(所長:松岡 豊)は、2021年に死亡した患者の遺族を対象に、人生の最終段階で受けた医療や療養生活の実態を把握する全国調査を実施し、その結果をまとめ、公表した。  今回の調査は、新型コロナウイルス感染症の流行期とアンケート実施時期が重なったことから、特殊な社会環境下における人生の最終段階の医療や療養生活に関する情報も得られた。